特許第6962992号(P6962992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962992
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】装飾品を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 37/22 20060101AFI20211025BHJP
   A44C 27/00 20060101ALI20211025BHJP
   A44C 5/00 20060101ALI20211025BHJP
   G04B 3/04 20060101ALI20211025BHJP
   G04B 45/00 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   G04B37/22 B
   A44C27/00
   A44C5/00 C
   G04B37/22 A
   G04B3/04 Z
   G04B45/00 C
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-219396(P2019-219396)
(22)【出願日】2019年12月4日
(65)【公開番号】特開2020-101530(P2020-101530A)
(43)【公開日】2020年7月2日
【審査請求日】2019年12月4日
(31)【優先権主張番号】18215880.8
(32)【優先日】2018年12月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508289992
【氏名又は名称】メコ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】エルヴェ・アヴリル
【審査官】 細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−104496(JP,A)
【文献】 特開2002−262909(JP,A)
【文献】 特開平03−206993(JP,A)
【文献】 特開平03−199994(JP,A)
【文献】 特開平02−182849(JP,A)
【文献】 特開2000−023718(JP,A)
【文献】 特開平07−188706(JP,A)
【文献】 特開2005−283235(JP,A)
【文献】 特開2007−126709(JP,A)
【文献】 特開2009−069049(JP,A)
【文献】 L’ACIER INOXYDABLE AUSTENITIQUE SANS NICKEL POUR L’HORLOGERIE DE HAUTE GAMME,オーストリア,BOEHLER,2021年09月27日,www.voestalpine.com/hpm/schweiz
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 − 99/00
A44C 1/00 − 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾品を製造するための方法であって、
− ニッケルを含まないオーステナイト系ステンレス鋼を含む金属材料を含む材料の射出成形によりブランクを作成するブランク作成ステップと、
− 製品を得るために前記ブランクを機械加工および/または研磨する加工ステップと、
− 前記製品を加工して、前記製品の表面の一部に浮き彫りまたは凹みのあるレリーフパターン(3)を印刷する印刷ステップであって、前記パターン(3)を有する前記製品が、前記装飾品を形成する、印刷ステップとを備えた方法。
【請求項2】
前記ステンレス鋼は、Bohler P570であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記装飾品は、プッシャ、リューズ、バルブ(2)、ミドルケース、裏蓋、ベゼル、ブレスレットリンク、ブレスレットクラスプ、およびダイヤルを含むリストから選択される外側計時器部品であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ブランクは、前記装飾品の寸法に実質的に同一の寸法を有する前記製品を得るために、前記加工ステップに施される半製品であることを特徴とする、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記装飾品は、バルブ(2)、リューズ、およびプッシャから選択される外側計時器部品であり、前記半製品は、円筒状ビレット(1)であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記円筒状ビレット(1)は、前記印刷ステップの前に、前記加工ステップを施されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記ブランク作成ステップによって生産された前記ブランクは、前記装飾品の寸法に実質的に同一の寸法を有することを特徴とする、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記印刷ステップは冷間プロセスであることを特徴とする、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記冷間プロセスは、パスの間に熱処理を伴う数回のパスで実行されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記ブランク作成ステップは、
a)ニッケルを含まないオーステナイト系ステンレス鋼を含む金属粉末および有機バインダ系を含む原料を作成することであって、前記金属粉末は、0.1から20μm、好ましくは8から15μmのd50を有する、サブステップと、
b)前記ブランクを形成するために射出成形するサブステップと、
c)前記ブランクを脱バインダするサブステップと、
d)不活性雰囲気下で、1から10時間、好ましくは2から6時間からなる時間、1100から1500°C、好ましくは1200から1350°Cの温度で焼結するサブステップとを含むことを特徴とする、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記印刷ステップの後、前記パターン(3)を有する製品は、電気化学処理、サテン仕上げまたは研磨処理などの仕上げ処理を施されることを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ニッケルを含まないオーステナイト系ステンレス鋼を含む金属粉末および有機バインダ系を含む材料による焼結品からなる装飾品であって、その表面の一部に、浮き彫りまたは凹みのあるレリーフパターン(3)を有することを特徴とする、装飾品。
【請求項13】
前記装飾品は、プッシャ、リューズ、バルブ(2)、ミドルケース、裏蓋、ベゼル、ブレスレットリンク、およびブレスレットクラスプを含むリストから選択される外側計時器部品であることを特徴とする、請求項12に記載の装飾品。
【請求項14】
前記ステンレス鋼は、Bohler P570であることを特徴とする、請求項12に記載の装飾品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾品、特に外側計時器部品をMIM(金属射出成形)により製造するための方法に関する。より正確には、射出成形および機械加工または仕上げのステップの後、エンボス加工またはデボス加工して、装飾品の表面の一部に浮き彫りまたは凹みのあるレリーフ構造を印刷することを意図された装飾品の製造方法に関する。また、この製造方法により得られた装飾品に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの腕時計メーカは、計時器にブランドを表示するために、浮き彫りまたは凹みのあるレリーフにロゴを使用している。現在、冷間加工は、金属構成要素の表面仕上げが非常に良好なエンボスまたはデボス印刷を作成する最も経済的な手法である。一部の材料は、構成要素をマークするために、加工プロセス中に大きな応力を加える必要がある高い弾性限界を有し得る。特に、グレード5のチタン(Ti−6Al−4V)を含むチタン合金は、低密度と組み合わせた優れた機械的特性が求められているため、エンボス/デボスが非常に困難である。これは、伸線または引抜プロセス中、材料の冷間加工が施された直径5〜15mmのワイヤで製造されたリューズ、プッシャ、またはバルブなどの計時器構成要素に特に当てはまる。特にエンボス加工/デボス加工作業中に高い応力が加わると、加工工具の摩耗率が高くなり、それに対応して製造コストが増加する。さらに、弾性限界が高い材料で製造された部品のエンボス加工/デボス加工が困難なため、部品のスクラップ率が高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、エンボス加工/デボス加工工具のスクラップ率および摩耗を低減する製造方法を提案することにより、前述の欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的のために、本発明は、MIMとしても知られる射出成形によりブランクを製造するステップを含む、装飾品、特に外側計時器部品を製造するための方法を提案し、金属はバインダと混合され、その後、金型に射出され、ワークピースは、その後、制御された雰囲気の炉で「脱バインダ」され、その後、焼結される。この方法は、伸線、圧延、引抜などの変形製造プロセスに固有の冷間加工を回避する。加工ステップ、特にエンボス加工またはデボス加工が低応力で実行されると、一方で工具の摩耗が制限され、他方でエンボス加工/デボス加工が容易になり、従来の引抜、圧延、または伸線がなされた材料から製造されたエンボス/デボス加工された装飾品と比較して、スクラップ率が低下する。
【0005】
好ましくは、射出成形によって生産されたブランクは、加工プロセスの前の後続の機械加工ステップ中に寸法決めされることが意図された半製品を形成する。これにより、たとえばビレットまたはインゴットの形態の単純な所定の幾何形状を有する金型を使用して、様々な形状の装飾品を製造することが可能になる。これにより、製造コストが低減される。
【0006】
本発明による方法は、Ti6Al4Vまたはステンレス鋼などの高い弾性限界を有する材料で製造された装飾品の製造に、より具体的に適合される。しかしながら、本発明は、より低い弾性限界を有する材料にこの方法を使用することを妨げるものでもない。
【0007】
本発明はまた、この方法により生産された装飾品に関し、これは、加工により作られた表面の一部にエンボスまたはデボスパターンを有する焼結構造によって特徴付けられる。
【0008】
装飾品は、より具体的には外側計時器部品であり、特に、バルブ、リューズ、またはプッシャである。
【0009】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、非限定的な例として与えられる好ましい実施形態の以下の説明に現れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1a図1aは、本発明に従ってバルブの製造中に実施される様々なステップを概略的に示す図である。
図1b図1bは、本発明に従ってバルブの製造中に実施される様々なステップを概略的に示す図である。
図1c図1cは、本発明に従ってバルブの製造中に実施される様々なステップを概略的に示す図である。
図2図2は、本発明による方法により得られたバルブの三次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、金属材料から製造される装飾品を製造するための方法に関する。装飾品は、腕時計、宝石、ブレスレット、ブローチ、ネックレスなどの構成要素であり得る。時計の分野では、装飾品は、バルブ、プッシャ、リューズ、ミドルケース、裏蓋、ベゼル、ブレスレットリンク、ブレスレットクラスプ、ダイヤルなどの外側部品であり得る。より詳細には、リューズまたはプッシャなどの制御部材、またはより一般的にはバルブなどのユーザ作動部材である。実例として、本発明の方法によって製造された、バルブヘッド上に3で示されるロゴHeを有するヘリウム放出バルブ2が図2に示されている。装飾品は、好ましくは、重量で6%のアルミニウムおよび4%のバナジウムを含むグレード5のチタン(Ti−6Al−4V)などのチタン合金で製造される。また、ステンレス鋼、好ましくは、Bohler P570などのニッケルを含まないオーステナイト系ステンレス鋼、または316Lステンレス鋼などのニッケルを含むものでもよい。
【0012】
装飾品を製造するための方法は、連続した、ブランクを射出成形する(MIMとも呼ばれる)ステップ、ブランクを機械加工および/または研磨するステップ、および浮き彫りまたは凹みのあるレリーフパターンを、機械加工および/または研磨されたブランクに印刷する加工ステップを含む。好ましくは、ブランクは、機械加工ステップ中に寸法決めされることを意図された半製品である。したがって、バルブ2について図1a〜図1cに概略的に示すように、MIM製造プロセスは、標準寸法の円筒状ビレット1(図1a)を製造することからなり、次にそれを切断機械加工(たとえば、バー旋削)および研磨することにより、所定の幾何形状および仕上げを与える(図1b)。この変形は、同じ金型から異なる幾何形状を有する部品のセットを製造可能とするため、好ましい。金型の形状は、製造される装飾品のタイプに従って調整され、インゴット形状などの別の単純な形状を有することができることが明らかである。また、MIMプロセスによって生産されたブランクが、最終製品の幾何形状と実質的に同一の幾何形状を有することも考えられる。そのような場合、機械加工および/または研磨ステップは、寸法設定ステップではなく、仕上げステップに類似している。次に、機械加工および/または研磨から得られる製品にエンボス加工を施して、図示された例では、浮き彫りされたレリーフに、パターン3(図1c)を印刷する。
【0013】
より詳細には、製造方法は以下のステップを含む。
a)金属材料を含む材料の射出成形によりブランクを作成するステップ。既知の方式では、ブランクを射出成形(MIM)するステップは、金属粉末および有機バインダ系(パラフィン、ポリエチレンなど)を含む原料を準備することにある。次に、たとえば熱分解により、または溶媒への溶解により、原料が注入され、脱バインダされる。次に、ブランクが焼結される。本発明によれば、金属粉末は、0.1から20μm、好ましくは8から15μmのd50を有し、焼結は、たとえばアルゴンのような不活性雰囲気下で、1から10時間、好ましくは2から6時間からなる時間、1100から1500°C、好ましくは1200から1350°Cの温度で実行される。
b)製品を得るためにブランクを機械加工および/または研磨するステップ。機械加工は、あらゆる材料除去技術によって実行され得る。
c)製品を加工して、前記製品の表面の一部に、浮き彫りまたは凹みのあるレリーフパターンを印刷するステップ。構造とも呼ばれ得るパターンを印刷するための最終ステップは、冷間プロセスであることが好ましい。1回または複数回のパスで実行でき、パスの間に熱処理を行うこともできる。
【0014】
加工後、製品は、電気化学処理(陽極酸化、研削など)などの仕上げ処理、またはサテン仕上げまたは研磨処理などの装飾処理が施され得る。
【0015】
この製造方法により生産された装飾品は、その表面の一部に、加工によって製造された浮き彫りまたは凹みのあるレリーフパターンを有する焼結材料で製造されているという特徴を有する。
【符号の説明】
【0016】
1 円筒状ビレット
2 装飾品、ヘリウム放出バルブ
3 レリーフパターン
図1a
図1b
図1c
図2