(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロジン変性フェノール樹脂は、平均核体数が1.5〜3.0のレゾール樹脂と、ロジン類と、多価アルコールとを含む組成物の反応生成物である請求項1乃至9のいずれか一項に記載の酸化重合型オフセット印刷インキ組成物。
平均粒子径D50が10μm以上20μm以下のデンプンを含むことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の酸化重合乾燥型オフセット印刷インキ組成物。
リン酸、リン酸のアンモニウム塩、リン酸のアルカリ金属塩、リン酸のアルカリ土類金属二水素塩、クエン酸、クエン酸のアンモニウム塩、クエン酸のアルカリ金属塩、クエン酸のマグネシウム塩から成る群から選ばれる一つ以上の汚れ防止剤を含むことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の酸化重合乾燥型オフセット印刷インキ組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<酸化重合乾燥型オフセット印刷インキ組成物>
本発明の酸化重合乾燥型オフセット印刷インキ組成物は、ワニス、ドライヤー、顔料、石油系ワックスを含むことを特徴とする。以下、本発明の酸化重合乾燥型オフセット印刷インキ組成物について詳述する。また、以下では酸化重合乾燥型オフセット印刷インキ組成物を単に印刷インキともいう。
【0010】
本発明の印刷インキに用いるワニスは、必須の成分としてAFソルベント6号の曇点が100℃以上210℃以下のロジン変性フェノール樹脂を含み、必要に応じて他の樹脂類、植物油類または脂肪酸エステル類またはそれらの混合物、石油系溶剤、キレート化剤、その他助剤等を加熱溶解させて得られる。なお、本明細書においてAFソルベント6号の曇点とは、NOBOMATICS社自動曇点測定器CHEMOTORONIC IIを使用し、AFソルベント6号(JXTGエネルギー株式会社製)180質量部と樹脂20質量部とを加熱混合した際の、白濁下限温度である。
【0011】
このようなロジン変性フェノール樹脂は、例えば、ホルムアルデヒドおよび/またはパラホルムアルデヒドとフェノール類との加熱反応により得られる平均核体数が1.5〜3.0のレゾールを、ロジン類と多価アルコールとの反応により得られるロジンエステル樹脂と反応させて得られる樹脂や、あるいは、平均核体数が1.5〜3.0のレゾールとロジン類とを反応させた後、多価アルコールでエステル化して得られる樹脂を用いることができる。
【0012】
レゾールの調整に用いるフェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、アミルフェノール、p−ターシャリーブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ドデシルフェノール、ビスフェノールAなどが挙げられ、中でもp−ターシャリーブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ドデシルフェノール等の、パラ位に炭素原子数が4〜12の置換基を持つアルキルフェノールを用いることが好ましい。
【0013】
ロジン類としては、従来公知のものを用いることができ特に制限はない。ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、重合ロジン、酸変性ロジン、およびこれらのロジン類を蒸留等により精製したものなどが挙げられる。
【0014】
酸変性ロジンを用いる場合、ロジンの変性に用いる化合物としては、二塩基酸またはその無水物を用いることが好ましい。フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水トリメリット酸などが挙げられ、中でもフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく用いられる。
【0015】
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられ、中でもグリセリン、ペンタエリスリトールが好ましく用いられる。
【0016】
AFソルベント6号の曇点が100℃以上210℃以下であるロジン変性フェノール樹脂の重量平均分子量は15,000以上であることが好ましく、30,000以上であることがより好ましい。また、150,000以下であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0017】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC−8320GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSKgel 4000HXL、TSKgel 3000HXL、TSKgel 2000HXL、TSKgel 1000HXL
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC−8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0018】
本発明で用いられるAFソルベント6号の曇点が100℃以上210℃以下のロジン変性フェノール樹脂は、さらに、軟化点が150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。また、軟化点は200℃以下であることが好ましい。なお、本明細書における軟化点は、JIS K5601−2−2に準拠し環球法により測定したもので、具体的には試料を充填した黄銅製環をグリセリン浴中に水平に保持し、試料の中心に一定重量の鋼球をのせ、一定速度で浴温を上昇させ、試料が次第に軟化し、鋼球が下降し、ついに厚さ25mmの位置の底板に達したときの温度計の示度をもって軟化点とする。
【0019】
上述した、AFソルベント6号の曇点が100℃以上210℃以下のロジン変性フェノール樹脂と併用可能な他の樹脂としては、従来公知のものを使用することができ特に制限はない。ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル、石油樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、アルキド樹脂、石油樹脂変性ロジン・フェノール樹脂、石油樹脂変性ロジンエステル、石油樹脂変性アルキド樹脂、アルキド樹脂変性ロジン・フェノール樹脂、アルキド樹脂変性ロジンエステル、アクリル変性ロジン・フェノール樹脂、アクリル変性ロジンエステル、ウレタン変性ロジン・フェノール樹脂、ウレタン変性ロジンエステル、ウレタン変性アルキド樹脂、エポキシ変性ロジン・フェノール樹脂、エポキシ変性ロジンエステル、エポキシ変性アルキド樹脂等が例示される。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0020】
本発明の印刷インキが、AFソルベント6号の曇点が100℃以上210℃以下のロジン変性フェノール樹脂と、それ以外の樹脂とを含む場合、印刷インキに含まれる樹脂の合計のうち、AFソルベント6号の曇点が100℃以上210℃以下のロジン変性フェノール樹脂が占める割合が75質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0021】
ワニスの調整に用いられる溶剤としては、従来公知のものを用いることができ特に制限はない。
植物油類としては、ヒマシ油、落花生油、オリーブオイルなどの不乾性油、大豆油、綿実油、菜種油、ゴマ油、コーン油などの半乾性油、アマニ油、エノ油、桐油などの乾性油、再生植物油、植物エステル等の植物由来成分などを用いることができる。
【0022】
植物油類として、再生植物油を使用することもできる。再生植物油とは、調理等に使用された油を回収し、再生処理された植物油のことである。再生植物油としては、含水率を0.3質量%以下、ヨウ素価を90以上、酸価を3以下として再生処理した油が好ましく、より好ましくはヨウ素価100以上である。含水率を0.3質量%以下にすることにより水分に含まれる塩分等のインキの乳化挙動に影響を与える不純物を除去することが可能となり、ヨウ素価を90以上として再生することにより、乾燥性、すなわち酸化重合性の良いものとすることが可能となり、さらに酸価が3以下の植物油を選別して再生することにより、インキの過乳化を抑制することが可能となる。回収植物油の再生処理方法としては、濾過、静置による沈殿物の除去、および活性白土等による脱色といった方法が例示される。
【0023】
脂肪酸エステル類としては、例えば、大豆油脂肪酸メチルエステル、大豆油脂肪酸ブチルエステル、大豆油脂肪酸イソブチルエステル、大豆油脂肪酸2−エチルヘキシルエステル、亜麻仁油脂肪酸ブチルエステル、アマニ油脂肪酸イソブチルエステル、トール油脂肪酸ブチルエステル、トール油脂肪酸2−エチルヘキシルエステル、トール油脂オクチルエステル、トール油脂肪酸ペンタエリスリトールエステル、パーム油脂肪酸メチルエステル、パーム油脂肪酸ブチルエステル、パーム油脂肪酸イソブチルエステル、パーム油脂肪酸2−エチルヘキシルエステル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、ヒマシ油脂肪酸ブチルエステル、ヒマシ油脂肪酸イソブチルエステル、ヒマシ油脂肪酸2−エチルヘキシルエステル等が挙げられる。
【0024】
石油系溶剤としては、炭素数6〜20の炭化水素が好ましく用いられる。具体的には、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、n−ヘプタン、n−オクタン、トリメチルペンタンなどのパラフィン系溶剤、シクロヘキサン、シクロヘキシルメタン、オクタデシルシクロヘキサン、メチルイソプロピルシクロヘキサンなどのナフテン系溶剤、JXTGエネルギー株式会社製の「AFソルベント4号」、「AFソルベント5号」、「AFソルベント6号」、「AFソルベント7号」等が挙げられる。
【0025】
キレート化剤としては、例えば、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウム−iso−ブトキシド、アルミニウム−sec−ブトキシドの誘導体で、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基の各々の基の一つが、エチルアセテート、又は、メチルアセトアセテートで置換された化合物等を使用することができる。
【0026】
本発明の印刷インキに用いる着色顔料としては特に限定されず、種々の有機顔料、無機顔料を用いることができる。例えば、黄顔料としては、ジスアゾイエロー(ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー1)、ハンザイエロー等が挙げられ、紅顔料としては、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウォッチングレッド等が挙げられる。藍顔料としては、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー等が挙げられ、墨顔料としてはファーネスカーボンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。
【0027】
本発明の印刷インキはJIS K5701−1に記載のL型粘度計による方法にて測定した粘度が10Pa・s以上60Pa・s以下となるよう調整して用いられる。その際、本発明の印刷インキに含まれる顔料の含有量は、黄インキにおける黄顔料の含有量は印刷インキの7質量%以上15質量%以下であり、紅インキにおける紅顔料の含有量は印刷インキの13質量%以上20質量%以下であり、藍インキにおける藍顔料の含有量は16質量%以上23質量%以下であり、墨インキにおける墨顔料の含有量は17質量%以上24質量%以下である。
【0028】
着色顔料の他に体質顔料を含んでいてもよい。体質顔料としては特に限定されず、ろう石クレー等のクレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸バリウム、シリカ、ベントナイト、酸化チタン等、公知のものを1種類または2種類以上用いることができる。
【0029】
ドライヤーとしては、酸化重合乾燥型印刷インキに通常用いられるものならば特に制限なく用いることができる。例えば、コバルト、マンガン、鉛、鉄、亜鉛、カルシウム、セリウム、レアアース等の金属と、オクチル酸、ナフテン酸、ネオデカン酸、桐油酸、アマニ油酸、大豆油酸、樹脂酸等のカルボン酸との塩、すなわち金属石鹸、あるいは、コバルト、マンガン、鉛、鉄、亜鉛、カルシウム、セリウム、レアアース等の金属とのホウ酸塩等が挙げられる。これらのドライヤーを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明の印刷インキに用いられる石油系ワックスは、融点が80℃以下であり、常温で固体のものである。耐裏移り性をより良好なものとするため、融点が50℃以上のものを用いることが好ましい。石油系ワックスとは、石油の精製により得られる、不定形のものである。ノルマルパラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィン、およびこれらの混合物が例示され、本発明ではノルマルパラフィンを80質量%以上含むものを用いることが好ましく、ノルマルパラフィンを85質量%以上含むものを用いることがより好ましい。上述した、AFソルベント6号の曇点が100℃以上210℃以下のロジン変性フェノール樹脂と、このような石油系ワックスとを併用することにより、印刷インキの耐裏移り性を良好なものとすることができる。
【0031】
石油系ワックスはそのまま印刷インキに添加してもよいが、溶剤と加熱攪拌した後、室温まで冷却して得られるコンパウンドとして添加することがより好ましい。このとき用いる溶剤としては、上述したワニスの調整に用いるものと同様のものを適宜用いることができ特に制限はない。
【0032】
石油系ワックスは、ノルマルパラフィンの含有量が印刷インキの0.1質量%以上となるよう用いることが好ましい。また、ワックスの含有量が多すぎると後加工性が悪くなるため、ノルマルパラフィンの含有量が印刷インキの3質量%以下となる範囲で用いられることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0033】
本発明の印刷インキは、上述した石油系ワックスに加えて、平均粒子径D50が2μm以上7μm以下の粒子を含むことが好ましい。なお、D50とはメディアン径とも呼ばれ、粒度分布において粒径の小さい方から数えて体積基準の累積粒度分布曲線の50%を表す。
このような粒子としては、真球状であってもよいし、不定形であってもよい。ポリエチレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、樹脂粒子やこれらの複合体が挙げられ、一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。石油系ワックスに加えてこのような粒子を併用することで、耐裏移り性、後加工性(滑性)を良好なものとすることができる。
【0034】
本発明の印刷インキは、上述した石油系ワックスに加えて、デンプンを併用することがより好ましい。石油系ワックスに加えてデンプンを併用することで、耐裏移り性をさらに良好なものとすることができる。平均粒子径D50が10μm以上20μm以下のものを用いることが好ましい。
印刷インキにおける、平均粒子径D50が2μm以上7μm以下の粒子と平均粒子径D50が10μm以上20μm以下のデンプンの含有量の合計は、0.5質量%以上であることが好ましく、3.0質量%以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の印刷インキは、リン酸、リン酸のアンモニウム塩、リン酸のアルカリ金属塩、リン酸のアルカリ土類金属二水素塩、クエン酸、クエン酸のアンモニウム塩、クエン酸のアルカリ金属塩、クエン酸のマグネシウム塩から成る群から選ばれる一つ以上の汚れ防止剤粒子を含むことが好ましい。汚れ防止剤粒子の含有量は、印刷インキの0.01質量%以上0.5質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.2質量%以下であることがより好ましい。印刷中の湿し水の使用量を抑制でき、セット遅延が防止され、耐裏移り性を良好なものとすることができる。
【0036】
本発明の印刷インキは、必要に応じて皮張り防止剤、粘度調整剤、分散剤、上述した以外の汚れ防止剤、乳化調整剤、酸化防止剤等の助剤を含んでいてもよい。本発明の効果を損なわない範囲で上述した石油系ワックスや平均粒子径D50が2μm以上7μm以下のワックス粒子以外のワックスを併用してもよい。これらの助剤としては、従来公知のものを好適に用いることができる。
【0037】
本発明の印刷インキが耐裏移り性に優れる理由は以下のように推察される。
本発明の印刷インキは、AFソルベント6号の曇点が100℃以上210℃以下のロジン変性フェノール樹脂を用いることにより、コート紙やマットコート紙に印刷した際のセット時間が短くなる。また、本発明のロジン変性フェノール樹脂と石油系ワックスの組み合わせは相溶性が低く、印刷後は分離しやすい。これらの相乗効果で石油系ワックスがインキ塗膜表面に集まりやすくなり、少量のワックスで効果的に裏移りを防止することができる。
【0038】
さらに印刷インキの粘度を10Pa・s以上60Pa・s以下とし、その際の顔料濃度を上述した範囲内とすることで、パイリング性と流動性に優れ、また印刷時にインキ塗膜に取り込まれる水の量が適性量となり、セット遅延を防止する事が出来る。これにより、効果的に裏移りを防止することができる。
【0039】
本発明の印刷インキは単独で、例えば本発明の黄インキと、通常の(本発明を用いない)紅インキ、藍インキ、墨インキとをセットで用いてもパウダーの散布量を削減し、かつ裏移りを防止することができる。さらに本発明の黄インキ、紅インキ、藍インキ、墨インキをセットで用いると、より効果的に、紙面に印刷された印刷インキがセットするまでの時間を短縮でき、耐裏移り性を良好なものとすることができる。
【0040】
<製造方法>
本発明の印刷インキは、上記の原料を用い、従来公知の方法で製造することができる。一例として、樹脂類、植物油類または脂肪酸エステル類またはそれらの混合物、さらに必要に応じて石油系溶剤、キレート化剤、その他助剤等を加熱溶解させて調整したワニスに、着色顔料、体質顔料、溶剤および他の添加剤を必要に応じて添加し、攪拌機で充分にプレミキシングを行なった後、ショットミル、ロールミル等で練肉を行う。練肉後、ワニス、石油系溶剤、植物油、その他ワックス、酸化防止剤、乳化調整剤等の助剤を添加し、充分に攪拌混合する。石油系ワックスは、プレミキシングの際に添加してもよいし、練肉後に添加してもよい。
これらの原料は印刷インキに必要とされる粘度や流動性に合わせて使用量を調整する。また、これらの原料の添加時期は固定されたものではなく、混合状態に基づいて適切に調整される。
【0041】
<印刷物>
本発明の印刷物は、上述したような印刷インキ組成物を用いて平版オフセット印刷機により印刷させて得られる。基材としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、特にコート紙、マットコート紙、上質紙への印刷に適している。本発明の印刷物は、裏移りが少ないものとなる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例と比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。配合組成その他の数値は特記しない限り質量基準である。
【0043】
<ロジン変性フェノール樹脂の合成>
(ロジン変性フェノール樹脂1の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた4つ口フラスコに、パラターシャルブチルフェノール1000部、92%パラホルムアルデヒド360部、キシレン1000部、50%水酸化ナトリウム10部を仕込み、95度に昇温、同温度を維持しながら6時間反応させた後、水300部と塩酸13部を混合後加え中和後、さらに水1000部を加え、上澄みを上記と同様の装置に取り出し、120度に昇温して30分攪拌し、上澄みを取り出して、固形分57%のレゾール型フェノール樹脂1を得た。レゾール型フェノール樹脂1の重量平均分子量を測定した結果、平均核体数は1.7であった。
【0044】
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた4つ口フラスコに、酸価165mgKOH/gのガムロジン970部、無水マレイン酸14部を仕込み、180度に昇温し、ペンタエリスリトール107部、酸化亜鉛2部を加え、250度に昇温し同温度を維持しながら酸価が20mgKOH/g以下になるまで反応させた。その後180度に降温し、同温度を維持しながらレゾール型フェノール樹脂1を滴下ロートを用いて滴下速度2.5部/分で滴下し、50%トルエン溶液の25℃ガードナー粘度がF〜Gになった時点で滴下を停止、30分後樹脂を取り出し、ロジン変性フェノール樹脂1を得た。滴下したレゾール型フェノール樹脂1は570部であった。ロジン変性フェノール樹脂1の重量平均分子量は65000、AF−6号ソルベント曇点は110、軟化点は168度であった。
【0045】
(ロジン変性フェノール樹脂2の合成)
攪拌機および温度計を備えた加圧反応釜に、パラターシャルブチルフェノール1000部を仕込み120度にて加熱溶解し、92%パラホルムアルデヒド285部、水酸化カルシウム8部を加え、130度に昇温、同温度を維持しながら2時間反応させた後、脱圧しさらに同温で20分攪拌し、レゾール型フェノール樹脂2を取り出した。レゾール型フェノール樹脂2の重量平均分子量を測定した結果、平均核体数は3.0であった。
【0046】
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた4つ口フラスコに、酸価165mgKOH/gのガムロジン1050部、無水マレイン酸14部を仕込み、180度に昇温し、ペンタエリスリトール115部、酸化亜鉛2部を加え、250度に昇温し同温度を維持しながらで、酸価が20mgKOH/g以下になるまで反応させた。その後180度に降温し、同温度を維持しながらレゾール型フェノール樹脂2を段階的に投入し、50%トルエン溶液のガードナー粘度がF〜Gになった時点で投入を停止、30分後樹脂を取り出し、ロジン変性フェノール樹脂2を得た。投入したレゾール型フェノール樹脂2は700部であった。ロジン変性フェノール樹脂2の重量平均分子量は145000、AF−6号ソルベント曇点は195度、軟化点は176度であった。
【0047】
(ロジン変性フェノール樹脂3の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた4つ口フラスコに、パラターシャルブチルフェノール1000部、92%パラホルムアルデヒド445部、キシレン1000部、50%水酸化ナトリウム10部を仕込み、95度に昇温、同温度を維持しながら6時間反応させた後、水300部と塩酸13部を混合後加え中和後、さらに水1000部を加え、上澄みを取り出して、固形分58%のレゾール型フェノール樹脂3を得た。レゾール型フェノール樹脂3の重量平均分子量を測定した結果、平均核体数は1.0であった。
【0048】
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた4つ口フラスコに、酸価165mgKOH/gのガムロジン970部、無水マレイン酸14部を仕込み、180度に昇温し、ペンタエリスリトール107部、酸化亜鉛2部を加え、250度に昇温し同温度を維持しながら酸価が20mgKOH/g以下になるまで反応させた。その後180度に降温し、同温度を維持しながらレゾール型フェノール樹脂3を滴下ロートを用いて滴下速度2.5部/分で滴下し、50%トルエン溶液の25℃ガードナー粘度がF〜Gになった時点で滴下を停止、30分後樹脂を取り出し、ロジン変性フェノール樹脂3を得た。滴下したレゾール型フェノール樹脂3は480部であった。ロジン変性フェノール樹脂3の重量平均分子量は52000、AF−6号ソルベント曇点は60度、軟化点は162度であった。
【0049】
(ロジン変性フェノール樹脂4の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた4つ口フラスコに、パラターシャルブチルフェノール1000部、92%パラホルムアルデヒド300部、キシレン1000部、50%水酸化ナトリウム10部を仕込み、95度に昇温、同温度を維持しながら6時間反応させた後、水300部と塩酸13部を混合後加え中和後、さらに水1000部を加え、上澄みを上記と同様の装置に取り出し、120度に昇温して140分攪拌し、上澄みを取り出して、固形分56%のレゾール型フェノール樹脂4を得た。レゾール型フェノール樹脂4の重量平均分子量を測定した結果、平均核体数は3.8であった。
【0050】
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた4つ口フラスコに、酸価165mgKOH/gのガムロジン1010部、無水マレイン酸14部を仕込み、180度に昇温し、ペンタエリスリトール110部、酸化亜鉛2部を加え、250度に昇温し同温度を維持しながら、酸価が20mgKOH/g以下になるまで反応させた。その後180度に降温し、同温度を維持しながらレゾール型フェノール樹脂4を滴下ロートを用いて滴下速度2.5部/分で滴下し、50%トルエン溶液のガードナー粘度がF〜Gになった時点で滴下を停止、30分後樹脂を取り出し、ロジン変性フェノール樹脂4を得た。滴下したレゾール型フェノール樹脂4は1430部であった。ロジン変性フェノール樹脂4の重量平均分子量は215000、AF−6号ソルベント曇点は222度、軟化点は190℃であった。
【0051】
<印刷インキ用樹脂ワニスの調整>
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた4つ口フラスコに、ロジン変性フェノール樹脂1を450部、大豆サラダ油(日清オイリオ(株)製)400部を仕込み、180度で1時間過熱攪拌した。その後AF−6号ソルベント140部を加え、160度に降温し、エチルアセトアセテートアルミニウムジノルマルブチレート10部を加え、同温度を1時間保持し印刷インキ用樹脂ワニス1を得た。
ロジン変性フェノール樹脂1にかえて、ロジン変性フェノール樹脂2〜4をそれぞれ用いた以外は同様にして、印刷インキ用樹脂ワニス2〜4を得た。
【0052】
<ベースインキの調整>
(ベースインキYの調整)
SYMULER Fast Yellow GFconc(DIC(株)製)を18部、印刷インキ用樹脂ワニス1を72部、AF−6号ソルベントを10部仕込み、JIS K5701−1の練和度試験に記載の方法で測定した位置Aの溝の深さが7.5μm以下になるまで3本ロールミルを用いて練肉し、ベースインキY1を調整した。印刷インキ用樹脂ワニス1にかえて印刷インキ用樹脂ワニス2〜4をそれぞれ用いた以外は同様にして、ベースインキY2〜Y4を得た。
【0053】
(ベースインキMの調整)
SYMULER Brilliant Carmine 6B 226(DIC(株)製)を28部、印刷インキ用樹脂ワニス1を60.4部、AF−6号ソルベントを11.6部仕込み、JIS K5701−1の練和度試験に記載の方法で測定した位置Aの溝の深さが7.5μm以下になるまで3本ロールミルを用いて練肉し、ベースインキM1を調整した。印刷インキ用樹脂ワニス1にかえて印刷インキ用樹脂ワニス2〜4をそれぞれ用いた以外は同様にして、ベースインキM2〜M4を得た。
【0054】
(ベースインキCの調整)
FASTGEN BlueFA5375(DIC(株)製)を30部、印刷インキ用樹脂ワニス1を58部、AF−6号ソルベントを12部仕込み、JIS K5701−1の練和度試験に記載の方法で測定した位置Aの溝の深さが7.5μm以下になるまで3本ロールミルを用いて練肉し、ベースインキC1を調整した。印刷インキ用樹脂ワニス1にかえて印刷インキ用樹脂ワニス2〜4をそれぞれ用いた以外は同様にして、ベースインキC2〜C4を得た。
【0055】
(ベースインキBの調整)
カーボンブラックMA7(三菱ケミカル(株)製)を28部、印刷インキ用樹脂ワニス1を60.4部、AF−6号ソルベントを11.6部仕込み、JIS K5701−1の練和度試験に記載の方法で測定した位置Aの溝の深さが7.5μm以下になるまで3本ロールミルを用いて練肉し、ベースインキB1を調整した。印刷インキ用樹脂ワニス1にかえて印刷インキ用樹脂ワニス2〜4をそれぞれ用いた以外は同様にして、ベースインキB2〜B4を得た。
【0056】
<印刷インキの調整>
ベースインキY1を69.0部、印刷インキ用樹脂ワニス1を24.5部、石油系ワックスコンパウンド0.3部、PTFEワックスを0.1部、オクチル酸コバルト溶液を1.0部、AF−6号ソルベントを5.1部用いて黄インキY1を得た。黄インキY1におけるノルマルパラフィンの含有量は0.13質量%、顔料の含有量は14.0質量%であった。
【0057】
同様にして、表1〜表4に示す配合で、黄インキY2〜Y11、紅インキM1〜M11、藍インキC1〜C11、墨インキB1〜B11を調整した。黄インキY1〜Y11、紅インキM1〜M11、藍インキC1〜C11、墨インキB1〜B11の粘度は10Pa・s〜60Pa・sの範囲内であった。なお、インキの粘度はL型粘度計を用い、JIS K 5701−1に記載の方法で測定した。インキの調整に用いたベースインキ、印刷インキ樹脂ワニス以外の成分は以下のようなものである。
【0058】
(石油系ワックスコンパウンド)
融点が61℃、ノルマルパラフィンの比率が90%の石油系ワックス35部を、AF6号ソルベント65部と加熱攪拌した後、室温まで冷却してコンパウンドとしたものを用いた。
(デンプンコンパウンド)
平均粒子径D50が20μmのデンプン20部を、80部の印刷インキ用樹脂ワニス1で分散したものを用いた。
【0059】
(汚れ防止剤コンパウンド)
ヘキサメタリン酸ナトリウム20部を、80部の印刷インキ用樹脂ワニス1でJIS K5701−1の練和度試験に記載の方法で測定した際の位置Aの溝の深さが7.5μm以下になるまで分散、練肉したものを用いた。
(オクチル酸コバルト溶液)
オクチル酸コバルト50部を大豆油50部で溶解した溶液を用いた。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
<評価>
調整した印刷インキを用いて以下の条件にて印刷し、印刷物の性能評価を行った。結果を表5〜表8にまとめた。
(印刷条件)
印刷機;マンローランド社製 ローランド704印刷機(セパレート連続給水方式)
湿し水;プレサートSD100(DICグラフィックス(株)製) 濃度2.0%
印刷速度;8,000枚/時
温度・湿度;室温25℃、湿度55%
印刷用紙;OKトップコートN(王子製紙(株)製)
【0065】
(耐裏移り性)
ベタ部分と非画線部分からなる絵柄を3,000部印刷し、上に積み重ねた。6時間経過後、インキの裏移りがないか目視で評価した。
○…良好。紙面上のインキのしっとり感の高低を+の数で評価。
+が多い程しっとり感が低く良好。
△…裏移りが僅かに見られる。
×…裏移りしている部分が多く、印刷物同士がくっついてしまうブロッキング発生。
【0066】
(パイリング性)
3,000枚印刷後の印刷機ローラー上、ブランケット上の堆積状況を目視と指触にて評価した。
○…良好。
△…堆積物が僅かに見られる。
×…堆積物が多い。
【0067】
(流動性)
印刷機のインキつぼにインキを入れ、印刷中のインキの流動状態を目視で評価した。
○…良好。
×…インキが均一に消費されず、つぼの中にインキの動かない部分が発生。
【0068】
(後加工適性)
バーコーターN0.6を用いて、印刷物に水性ニス(DICグラフィックス(株)製、ディックセーフC1151)を塗布し、常温で1晩乾燥させた。翌日、セロハンテープによる剥離試験にて後加工適性を評価した。
〇…セロハンテープが印刷物の下地部分から取れる。
△…セロハンテープがインキ面から一部とれる。
×…セロハンテープがインキとニスの界面から剥がれる。
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
【表7】
【0072】
【表8】
【0073】
表5〜8から明らかなように、本発明の印刷インキは優れた耐裏移り性、パイリング性、流動性、後加工性を示した。