(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るモータ駆動装置50を示す図である。このモータ駆動装置50は、第1のモータ41及び第2のモータ42を駆動するためのものである。第1のモータ41及び第2のモータ42は、例えば、永久磁石同期モータである。この場合、第1のモータ41及び第2のモータ42は永久磁石を有し、第1のモータ41の回転子及び第2のモータ42の回転子には、それぞれ永久磁石が備えられている。
【0010】
モータ駆動装置50は、整流器2と、平滑部3と、インバータ4と、インバータ電流検出部5と、モータ電流検出部6と、入力電圧検出部7と、接続切替部8と、制御部10とを備える。
【0011】
整流器2は、交流電源1からの交流電力を整流して直流電力を生成する。
平滑部3は、コンデンサ等で構成され、整流器2からの直流電力を平滑してインバータ4に供給する。
【0012】
なお、交流電源1は、
図1の例では単相であるが、三相電源でも良い。交流電源1が三相であれば、整流器2としても三相の整流器が用いられる。
【0013】
平滑部3のコンデンサとしては、一般的には静電容量の大きなアルミ電解コンデンサを用いることが多いが、長寿命であるフィルムコンデンサを用いても良い。さらに静電容量の小さなコンデンサを用いることで、交流電源1に流れる電流の高調波電流を抑制するよう構成しても良い。
【0014】
また、交流電源1から平滑部3までの間に高調波電流の抑制或いは力率の改善のためにリアクトル(図示せず)を挿入しても良い。
【0015】
インバータ4は平滑部3の電圧を入力とし、周波数及び電圧値が可変の三相交流電力を出力する。インバータ4の出力には、第1のモータ41及び第2のモータ42が並列に接続されている。
【0016】
接続切替部8は、
図1に示される例では単一の開閉部9から成る。開閉部9は、第2のモータ42とインバータ4とを接続したり切り離したりすることが可能であり、開閉部9の開閉により同時に運転されるモータの台数を切替えることができる。
【0017】
インバータ4は、例えば、半導体スイッチング素子及び環流ダイオードの少なくとも一方で構成されている。インバータ4を構成する半導体スイッチング素子としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)或いはMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が用いられることが多い。
【0018】
なお、半導体スイッチング素子のスイッチングによるサージ電圧を抑制する目的で環流ダイオード(図示せず)を半導体スイッチング素子に並列に接続した構成としても良い。
半導体スイッチング素子の寄生ダイオードを還流ダイオードとして用いても良い。MOSFETを用いた場合、環流のタイミングでMOSFETをON状態とすることにより還流ダイオードと同様の機能を実現することが可能である。
【0019】
半導体スイッチング素子を構成する材料はケイ素Siに限定されず、ワイドバンドギャップ半導体である炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga
2O
3)、ダイヤモンド等を用いることが可能であり、ワイドバンドギャップ半導体を用いることで、低損失化及び高速スイッチング化を実現することが可能となる。
【0020】
同様に、還流ダイオードを構成する材料はケイ素Siに限定されず、ワイドバンドギャップ半導体である炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga
2O
3)、ダイヤモンド等を用いることが可能であり、ワイドバンドギャップ半導体を用いることで、低損失化及び高速スイッチング化を実現することが可能となる。
【0021】
開閉部9としては、半導体スイッチング素子の代わりに、機械的なリレー、コンタクタなどの電磁接触器を用いても良い。要するに、同様の機能を有するものであれば何を用いても良い。
【0022】
図1に示される例では、第2のモータ42とインバータ4との間に開閉部9を設けているが、第1のモータ41とインバータ4との間に開閉部9を設けても良い。接続切替部8は、2つの開閉部を有しても良い。この場合、1つの開閉部を第1のモータ41とインバータ4との間に設け、他の開閉部を第2のモータ42とインバータ4との間に設けても良い。2つの開閉部を用いる場合には、2つの開閉部により接続切替部8が構成される。
【0023】
図1に示される例では、インバータ4に2台のモータが接続されているが、3台以上のモータがインバータ4に接続されていても良い。3台以上のモータをインバータ4に接続する場合、開閉部9と同様の開閉部を全てのモータの各々とインバータ4との間に設けても良い。複数のモータの内の一部のモータに対してのみ、その各々とインバータ4との間に開閉部9と同様の開閉部を設けても良い。これらの場合、複数の開閉部により接続切替部8が構成される。
【0024】
インバータ電流検出部5は、インバータ4に流れる電流を検出する。例えば、インバータ電流検出部5は、インバータ4の3つの下アームのスイッチング素子にそれぞれ直列に接続された抵抗R
u,R
v,R
wの両端電圧V
Ru,V
Rv,V
Rwに基づいて、インバータ4のそれぞれの相の電流(インバータ電流)i
u_all、i
v_all、i
w_allを求める。
【0025】
モータ電流検出部6は、第1のモータ41の電流を検出する。モータ電流検出部6は、3つの相の電流(相電流)i
u_m、i
v_m、i
w_mをそれぞれ検出する3つのカレントトランスを含む。
入力電圧検出部7は、インバータ4の入力電圧(直流母線電圧)V
dcを検出する。
【0026】
制御部10は、インバータ電流検出部5で検出された電流値、モータ電流検出部6で検出された電流値、及び入力電圧検出部7で検出された電圧値に基づいて、インバータ4を動作させるための信号を出力する。
【0027】
なお、上記の例では、インバータ電流検出部5が、インバータ4の下アームのスイッチング素子に直列に接続された3つの抵抗により、インバータ4のそれぞれの相の電流を検出するが、この代わりに、下アームのスイッチング素子の共通接続点と平滑部3の負側電極との間に接続された抵抗により、インバータ4のそれぞれの相の電流を検出するものであっても良い。
【0028】
また、第1のモータ41の電流を検出するモータ電流検出部6に加えて、第2のモータの電流を検出するモータ電流検出部を、モータ駆動装置50に設けても良い。
【0029】
モータ電流の検出には、カレントトランスを用いる代わりに、ホール素子を用いても良く、抵抗の両端電圧から電流を算出する構成を用いても良い。
同様に、インバータ電流の検出には、抵抗の両端電圧から電流を算出する構成の代わりに、カレントトランス、ホール素子等を用いても良い。
【0030】
制御部10は、処理回路で実現可能である。処理回路は、専用のハードウェアで構成されていても良く、ソフトウェアで構成されていても良く、ハードウェアとソフトウェアの組合せで構成されていても良い。ソフトウェアで構成される場合、制御部10は、CPU(Central Processing Unit)を備えたマイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)等で構成される。制御部10は、CPUに加えて、コンピュータで読み取り可能な記録媒体としてのメモリを有しても良い。この場合、ソフトウェアはプログラムとしてこのメモリに格納することができる。
【0031】
図2は制御部10の構成を示す機能ブロック図である。
制御部10は、運転指令部101と、減算部102と、座標変換部103,104と、第1のモータ速度推定部105と、第2のモータ速度推定部106と、積分部107,108と、電圧指令生成部109と、脈動補償制御部110と、座標変換部111と、PWM信号生成部112とを有する。
【0032】
運転指令部101は、モータの回転数指令値ω
m*を生成して出力する。運転指令部101はまた、接続切替部8を制御するための切替制御信号Swを生成して出力する。
【0033】
減算部102は、インバータ電流検出部5で検出されたインバータ4の相電流i
u_all,i
v_all,i
w_allから第1のモータ41の相電流i
u_m,i
v_m,i
w_mを減算することで第2のモータ42の相電流i
u_sl,i
v_sl,i
w_slを求める。
これは、第1のモータ41の相電流i
u_m,i
v_m,i
w_mと第2のモータ42の相電流i
u_sl,i
v_sl,i
w_slの和がインバータの相電流i
u_all,i
v_all,i
w_allに等しいという関係を利用したものである。
【0034】
座標変換部103は、後述の第1のモータ41の位相推定値(磁極位置推定値)θ
mを用いて第1のモータ41の相電流i
u_m,i
v_m,i
w_mを静止三相座標系から回転二相座標系に座標変換して、第1のモータ41のdq軸電流i
d_m,i
q_mを求める。
【0035】
座標変換部104は、後述の第2のモータ42の位相推定値(磁極位置推定値)θ
slを用いて第2のモータ42の相電流i
u_sl,i
v_sl,i
w_slを静止三相座標系から回転二相座標系に座標変換して第2のモータ42のdq軸電流i
d_sl,i
q_slを求める。
【0036】
第1のモータ速度推定部105は、dq軸電流i
d_m,i
q_m及び後述のdq軸電圧指令値v
d*,v
q*に基づいて第1のモータ41の回転数推定値ω
mを求める。
同様に、第2のモータ速度推定部106は、dq軸電流i
d_sl,i
q_sl及び後述のdq軸電圧指令値v
d*,v
q*に基づいて第2のモータ42の回転数推定値ω
slを求める。
【0037】
積分部107は、第1のモータ41の回転数推定値ω
mを積分することで、第1のモータ41の位相推定値θ
mを求める。
同様に、積分部108は、第2のモータ42の回転数推定値ω
slを積分することで、第2のモータ42の位相推定値θ
slを求める。
【0038】
なお、回転数及び位相の推定には、例えば特許第4672236号明細書に示されている方法を用いることができるが、回転数及び位相が推定可能な方法であればどのような方法を用いても良い。また、回転数或いは位相を直接検出する方法を用いても良い。
【0039】
電圧指令生成部109は、第1のモータ41のdq軸電流i
d_m,i
q_mと、第1のモータ41の回転数推定値ω
mと、後述の脈動補償電流指令値i
sl*とに基づいて、dq軸電圧指令値v
d*,v
q*を算出する。
【0040】
座標変換部111は、第1のモータ41の位相推定値θ
mと、dq軸電圧指令値v
d*,v
q*とから、印加電圧位相θ
vを求め、印加電圧位相θ
vに基づき、dq軸電圧指令値v
d*,v
q*を回転二相座標系から静止三相座標系に座標変換して、静止三相座標系上の電圧指令値v
u*,v
v*,v
w*を求める。
【0041】
印加電圧位相θ
vは、例えば、dq軸電圧指令値v
d*,v
q*から
θ
f=tan
-1(v
q*/v
d*)
により得られる進み位相角θ
fを、第1のモータ41の位相推定値θ
mに加算することで得られる。
【0042】
図3(a)は、位相推定値θ
m、進み位相角θ
f、及び印加電圧位相θ
vの例を示す図である。
図3(b)は、座標変換部111で求められる電圧指令値v
u*,v
v*,v
w*の例を示す図である。
図3(c)は、PWM信号UP,VP,WP,UN,VN,WNの例を示す図である。
【0043】
PWM信号生成部112は、入力電圧V
dcと、電圧指令値v
u*,v
v*,v
w*とから
図3(c)に示されるPWM信号UP,VP,WP,UN,VN,WNを生成する。
PWM信号UP,VP,WP,UN,VN,WNはインバータ4に供給され、スイッチング素子の制御に用いられる。
【0044】
インバータ4には、PWM信号UP,VP,WP,UN,VN,WNに基づいて、それぞれ対応するアームのスイッチング素子を駆動する駆動信号を生成する、図示しない駆動回路が設けられている。
【0045】
制御部10は、上記のPWM信号UP,VP,WP,UN,VN,WNに基づいてインバータ4のスイッチング素子のオンオフを制御することで、インバータ4から周波数及び電圧値が可変の交流電圧を出力させる。これにより、制御部10は、第1のモータ41及び第2のモータ42にその交流電圧が印加されるように、インバータ4を制御することができる。
【0046】
電圧指令値v
u*,v
v*,v
w*は、
図3(b)に示される例では正弦波であるが、電圧指令値は、三次高調波を重畳させたものであっても良く、第1のモータ41及び第2のモータ42を駆動することが可能であればどのような波形のものであっても良い。
【0047】
電圧指令生成部109が、dq軸電流i
d_m,i
q_m及び第1のモータ41の回転数推定値ω
mのみに基づいて電圧指令を生成する構成であるとすれば、第1のモータ41が適切に制御される一方、第2のモータ42は、第1のモータ41のために生成された電圧指令値に応じて動作するだけであり、直接的には制御されていない状態にある。
【0048】
そのため、第1のモータ41及び第2のモータ42は、位相推定値θ
m及び位相推定値θ
slに誤差を伴う状態で動作し、特に低速域で誤差が顕著に現れる。
誤差が発生すると第2のモータ42の電流脈動が発生し、第2のモータ42の脱調、過大電流による発熱による損失悪化の恐れがある。さらに、過大電流に応じて回路遮断が行われて、モータが停止し、負荷の駆動ができなくなる恐れがある。
【0049】
脈動補償制御部110はこのような問題を解決するために設けられたものであり、第2のモータ42のq軸電流i
q_slと、第1のモータ41の位相推定値θ
mと、第2のモータ42の位相推定値θ
slとを用いて、第2のモータ42の電流脈動を抑制するための脈動補償電流指令値i
sl*を出力する。
【0050】
脈動補償電流指令値i
sl*は、第1のモータ41の位相推定値θ
mと、第2のモータ42の位相推定値θ
slとから、第1のモータ41と第2のモータ42との位相関係を判定し、判定結果に基づいて、第2のモータ42のトルク電流に該当するq軸電流i
q_slの脈動を抑制するように定められる。
【0051】
電圧指令生成部109は、運転指令部101からの第1のモータ41の回転数指令値ω
m*と第1のモータ41の回転数推定値ω
mとの偏差に対して比例積分演算を行って、第1のモータ41のq軸電流指令値I
q_m*を求める。
【0052】
一方、第1のモータ41のd軸電流は、励磁電流成分であり、その値を変化させることで、電流位相を制御すること、及び第1のモータ41を強め磁束又は弱め磁束で駆動させることが可能となる。その特性を利用し、先に述べた脈動補償電流指令値i
sl*を、第1のモータ41のd軸電流指令値I
d_m*に反映させることで、電流位相を制御し、これにより脈動を低減することが可能である。
【0053】
電圧指令生成部109は、上記のようにして求めたdq軸電流指令値I
d_m*,I
q_m*と、座標変換部103で求めたdq軸電流i
d_m,i
q_mとに基づいてdq軸電圧指令値v
d*,v
q*を求める。即ち、d軸電流指令値I
d_m*とd軸電流i
d_mとの偏差に対して比例積分演算を行ってd軸電圧指令値v
d*を求め、q軸電流指令値I
q_m*とq軸電流i
q_mとの偏差に対して比例積分演算を行ってq軸電圧指令値v
q*を求める。
【0054】
なお、電圧指令生成部109及び脈動補償制御部110については同様の機能を実現可能であれば、どのような構成のものであっても良い。
【0055】
上述のような制御を行うことで、第1のモータ41と第2のモータ42とを、第2のモータ42に脈動が生じないように、1台のインバータ4で駆動することが可能となる。
【0056】
次に、第1のモータ41と第2のモータ42が埋込磁石同期モータである場合の問題について説明する。
【0057】
図4は、電流進み角βと磁石トルクとの関係、電流進み角βとリラクタンストルクとの関係、及び電流進み角βと合成トルクの関係を示すグラフである。
埋込磁石同期モータは、磁石による磁石トルクに加えて、d軸インダクタンスとq軸インダクタンスの差によるリラクタンストルクを発生する。電流進み角βと磁石トルク及びリラクタンストルクとの関係は例えば
図4に示す如くであり、合成トルクは電流進み角βが0[deg]から90[deg]の間のある角度で最大となる。
【0058】
ここで、電流進み角βとは、逆起電力の方向、即ち、+q軸を基準とした電流の位相角であり、0[deg]から90[deg]の範囲では、q軸電流が一定であれば、d軸電流の絶対値を大きくすることで、電流進み角βが増加する。
【0059】
表面磁石同期モータの場合には磁石トルクのみであるため、電流進み角βが0[deg]であるときに合成トルクが最大となる。
【0060】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2に係る室外機100の内部構造を概略的に示す図である。
室外機100は、冷凍サイクル装置用の室外機である。例えば、室外機100は、冷凍サイクル装置において室内機と共に用いられる。室外機100は、実施の形態1で説明したモータ駆動装置50を有してもよい。これにより、室外機100は、実施の形態1で説明したモータ駆動装置50の利点が得られる。
図5に示される室外機100では、実施の形態1に係るモータ駆動装置50の内、第1のモータ41、第2のモータ42、インバータ4と、接続切替部8と、及び制御部10が示される。
【0061】
室外機100は、第1のモータ41と、第2のモータ42と、少なくとも1つの熱交換器(例えば、熱交換器43a及び43b)と、第1の導線44aと、第2の導線44bと、インバータ4と、接続切替部8と、制御部10と、これらの構成要素を覆う筐体45とを有する。
【0062】
室外機100は、さらに、基板46と、仕切り板47とを有する。インバータ4、接続切替部8、及び制御部10は、基板46に取り付けられている。
【0063】
図6は、室外機100の内部構造の他の一例を概略的に示す図である。
図6に示されるように、室外機100は、仕切り板47を有していなくてもよい。
【0064】
本実施の形態では、筐体45は、第1の筐体45aと第2の筐体45bとに分けられている。第1の筐体45a及び第2の筐体45bは、分離されていてもよく、互いに一体化されていてもよい。
【0065】
第1の筐体45aは、第1のモータ41、熱交換器43a、及びインバータ4を覆う。
図5に示される例では、第1の筐体45aは、基板46を覆う。したがって、
図5に示される例では、第1の筐体45aは、接続切替部8及び制御部10も覆う。
【0066】
第2の筐体45bは、第2のモータ42、熱交換器43bを覆う。
【0067】
筐体45は、少なくとも1つの第1の吸入口451aと、少なくとも1つの第2の吸入口451bと、少なくとも1つの第1の排出口452aと、少なくとも1つの第2の排出口452bとを有する。
【0068】
本実施の形態では、第1の筐体45aが、少なくとも1つの第1の吸入口451a及び少なくとも1つの第1の排出口452aを有し、第2の筐体45bが、少なくとも1つの第2の吸入口451b及び少なくとも1つの第2の排出口452bを有する。
【0069】
筐体45が第1の筐体45a及び第2の筐体45bに分離されている場合、第1のモータ41を含むユニットを第1のユニット141と呼び、第2のモータ42を含むユニットを第2のユニット142と呼ぶ。
【0070】
図5に示される例では、第1のユニット141は、第1の筐体45aと、第1のモータ41と、熱交換器43aと、第1の導線44aと、インバータ4と、接続切替部8と、制御部10とを有し、第2のユニット142は、第2の筐体45bと、第2のモータ42と、熱交換器43bとを有する。
【0071】
室外機100が、第1のユニット141と第2のユニット142とに分離されているとき、仕切り板47は、第1のユニット141と第2のユニット142との境界である。ただし、仕切り板47は、第1のユニット141の構成要素であってもよく、第2のユニット142の構成要素であってもよい。
図6に示されるように、仕切り板47が室外機100に備えられていなくてもよい。
【0072】
第1のモータ41は、第1のファン41aと、第1の回転子41bとを有する。さらに、第1のモータ41は、第1の回転子41bに固定されたシャフトを有し、このシャフトは第1のファン41aにも固定されている。第1の回転子41bは、永久磁石を有する。第1のモータ41が駆動しているとき、第1のファン41aは、第1の回転子41bと共に回転する。これにより、第1のファン41aは気流(すなわち、後述する気流A1)を生成する。
【0073】
第2のモータ42は、第2のファン42aと、第2の回転子42bとを有する。さらに、第2のモータ42は、第2の回転子42bに固定されたシャフトを有し、このシャフトは第2のファン42aにも固定されている。第2の回転子42bは、永久磁石を有する。第2のモータ42が駆動しているとき、第2のファン42aは、第2の回転子42bと共に回転する。これにより、第2のファン42aは気流(すなわち、後述する気流A2)を生成する。
【0074】
第1の導線44aは、第1のモータ41及びインバータ4に電気的に接続されている。第2の導線44bは、第2のモータ42及び接続切替部8に電気的に接続されている。具体的には、
図5に示されるように、仕切り板47に孔47aが形成されており、第2の導線44bは、この孔47aを通して第2のモータ42及び接続切替部8に接続されている。
図5に示される例では、第1の導線44aは第2の導線44bよりも短いが、第1の導線44aの長さは第2の導線44bと同じでもよい。
【0075】
接続切替部8は、第2の導線44b、インバータ4、及び制御部10に電気的に接続されている。具体的には、接続切替部8は、インバータ4と第2のモータ42との間に配置されている。接続切替部8は、制御部10からの指示に従って、インバータ4から第2のモータ42に印加される電圧のオンオフを切り替える。接続切替部8は、例えば、ワイドバンドギャップ半導体で構成されている。これにより、低損失化及び高速スイッチング化を実現することが可能となる。
【0076】
接続切替部8は、電磁接触器で構成されていてもよい。この場合も、低損失化及び高速スイッチング化を実現することが可能となる。
【0077】
図7は、室外機100の内部構造のさらに他の一例を概略的に示す図である。
室外機100における、「少なくとも1つの熱交換器」は、1台の熱交換器でもよく、2台以上の熱交換器でもよい。室外機100における熱交換器が1台のとき、
図7に示されるように、熱交換器43a及び43bは、互いに一体化されている。この場合、熱交換器43aは、熱交換器の第1のファン41a側であり、熱交換器43bは、熱交換器の第2のファン42a側である。熱交換器の第1のファン41a側を「熱交換器の第1のユニット141側」又は「熱交換器の第1側」とも呼び、熱交換器の第2のファン42a側を「熱交換器の第2のユニット142側」又は「熱交換器の第2側」とも呼ぶ。
【0078】
少なくとも1つの熱交換器は、冷媒と熱交換を行う。本実施の形態では、熱交換器43aは冷媒と熱交換を行い、熱交換器43bも冷媒と熱交換を行う。
【0079】
上述のように、インバータ4は、複数のモータを駆動することができる。本実施の形態では、インバータ4は、第1の導線44a及び第2の導線44bを通して、第1のモータ41及び第2のモータ42にそれぞれ電圧を印加することができる。すなわち、インバータ4は、第1のモータ41及び第2のモータ42を駆動することができる。ただし、室外機100が3台以上のモータを有する場合、インバータ4は、その3台以上のモータを駆動することができる。
【0080】
インバータ4は、第2のモータ42よりも第1のモータ41の近くに配置されている。インバータ4は、第2のモータ42よりも第1のモータ41の近くにあれば、インバータ4の配置は本実施の形態に限定されない。
【0081】
上述のように、制御部10は、インバータ4及び接続切替部8を制御する。制御部10は、第2のモータ42よりも第1のモータ41の近くに配置されている。
【0082】
室外機100において、インバータ4及び制御部10を含む装置を、「モータ制御装置」ともいう。本実施の形態では、モータ制御装置は、第2のモータ42よりも第1のモータ41の近くに配置されている。
【0083】
本実施の形態では、基板46は、第2のモータ42よりも第1のモータ41の近くに配置されている。したがって、接続切替部8も第2のモータ42よりも第1のモータ41の近くに配置されている。
【0084】
図8は、第2のモータ42が停止しているときの室外機100内の気流の流れの一例を示す図である。
冷凍サイクル装置が空調能力を下げる場合、複数のモータの内、制御部10によって駆動されるモータを、マスターモータ又はメインモータと呼び、制御部10によって停止されるモータを、スレーブモータ又はサブモータと呼ぶ。
【0085】
本実施の形態では、冷凍サイクル装置が空調能力を下げる場合、第1のモータ41及び第2のモータ42のうちの一方が停止する。
図8に示される例では、冷凍サイクル装置が空調能力を下げる場合、第1のモータ41が駆動し、第2のモータ42の駆動が停止する。この場合、制御部10は、インバータ4及び接続切替部8を制御し、第1のモータ41を駆動させ、第2のモータ42を停止させる。これにより、第2のファン42aが停止する。
【0086】
第1のモータ41が駆動している間、第1のファン41aが回転し、第1のユニット141内において気流A1が発生する。具体的には、空気が第1の吸入口451aから第1のユニット141内に流入し、第1の排出口452aから室外機100(具体的には、第1のユニット141)の外部へ排出される。
【0087】
気流A1が通る経路は、第1の経路P1である。
図8に示される例では、気流A1は、第1のユニット141内の下側から上側へ流れる。したがって、
図8に示される例では、第1の経路P1は、第1のユニット141内の下側から上側に延在する。すなわち、第1の経路P1は、インバータ4及び熱交換器43aを通る。第1の経路P1は、インバータ4及び熱交換器43aに加えて制御部10を通ると望ましい。
【0088】
気流A1は、インバータ4及び熱交換器43aを通過する。これにより、インバータ4及び熱交換器43aが冷却される。
【0089】
図9は、第1のモータ41及び第2のモータ42が駆動しているときの室外機100内の気流の流れの他の一例を示す図である。
図9に示される例では、第1のモータ41及び第2のモータ42が駆動している。例えば、冷凍サイクル装置を通常の空調能力に維持する場合、又は冷凍サイクル装置の空調能力を上げる場合、制御部10は、インバータ4及び接続切替部8を制御し、第1のモータ41及び第2のモータ42を駆動させる。
【0090】
第1のモータ41が駆動している間、第1のファン41aが回転し、第1のユニット141内において気流A1が発生する。具体的には、空気が第1の吸入口451aから第1のユニット141内に流入し、第1の排出口452aから室外機100(具体的には、第1のユニット141)の外部へ排出される。
【0091】
同様に、第2のモータ42が駆動している間、第2のファン42aが回転し、第2のユニット142内において気流A2が発生する。具体的には、空気が第2の吸入口451bから第2のユニット142内に流入し、第2の排出口452bから室外機100(具体的には、第2のユニット142)の外部へ排出される。
【0092】
気流A2が通る経路は、第2の経路P2である。
図9に示される例では、気流A2は、第2のユニット142内の下側から上側へ流れる。したがって、
図9に示される例では、第2の経路P2は、第2のユニット142内の下側から上側に延在する。
【0093】
気流A1は、インバータ4及び熱交換器43aを通過する。これにより、インバータ4及び熱交換器43aが冷却される。気流A2は、熱交換器43bを通過する。これにより、熱交換器43bが冷却される。
【0094】
仮に、第2の経路P2上にインバータ4及び制御部10がある場合、基板46からの熱、特に、インバータ4及び制御部10の熱が第2のユニット142内に放出される。この状態において、第2のモータ42が停止すると、第2のユニット142内の熱が室外機100(具体的には、第2のユニット142)の外部へ排出されにくい。これにより、熱交換器の第2のユニット142側(本実施の形態では、熱交換器43b)に対する冷却効率が低下し、熱交換器の第2のユニット142側(本実施の形態では、熱交換器43b)の熱交換効率が低下する。
【0095】
一方、本実施の形態では、インバータ4は、第2のモータ42よりも第1のモータ41の近くに配置されている。具体的には、インバータ4は、第1の経路P1にあり、第2の経路P2にはインバータ4がない。この場合、インバータ4の熱は主に第1のユニット141内に放出されるので、熱交換器の第2のユニット142側(本実施の形態では、熱交換器43b)は、インバータ4からの熱の影響を受けにくい。したがって、第2のモータ42が停止している場合であっても、熱交換器の第2のユニット142側(本実施の形態では、熱交換器43b)の熱交換効率が低下することを防ぐことができる。その結果、従来の技術に比べて熱交換器の第2のユニット142側(本実施の形態では、熱交換器43b)の熱交換効率を向上させることができる。
【0096】
さらに、本実施の形態では、制御部10は、第2のモータ42よりも第1のモータ41の近くに配置されている。具体的には、制御部10は、第1の経路P1にあり、第2の経路P2には制御部10がない。この場合、気流A1は、制御部10及び熱交換器43aを通過する。制御部10の熱は主に第1のユニット141内に放出されるので、熱交換器の第2のユニット142側(本実施の形態では、熱交換器43b)は、制御部10からの熱の影響を受けにくい。したがって、第2のモータ42が停止している場合であっても、熱交換器の第2のユニット142側(本実施の形態では、熱交換器43b)の熱交換効率が低下することを防ぐことができる。その結果、従来の技術に比べて熱交換器の第2のユニット142側(本実施の形態では、熱交換器43b)の熱交換効率を向上させることができる。
【0097】
さらに、本実施の形態のように、基板46が第2のモータ42よりも第1のモータ41の近くに配置されていることが望ましい。この場合、気流A1は、基板46及び熱交換器43aを通過する。基板46からの熱は主に第1のユニット141内に放出されるので、熱交換器の第2のユニット142側(本実施の形態では、熱交換器43b)は、基板46からの熱の影響を受けにくい。したがって、第2のモータ42が停止している場合であっても、熱交換器の第2のユニット142側(本実施の形態では、熱交換器43b)の熱交換効率が低下することを防ぐことができる。その結果、従来の技術に比べて熱交換器の第2のユニット142側(本実施の形態では、熱交換器43b)の熱交換効率を向上させることができる。本実施の形態のように、基板46を、第2のユニット142内に配置せずに第1のユニット141内に配置することにより、熱交換器の第2のユニット142側(本実施の形態では、熱交換器43b)の熱交換効率をさらに改善することができる。
【0098】
以上に説明したように、本実施の形態に係る室外機100では、第2のモータ42を停止した場合であっても、室外機100内の冷却を効率的に行うことができ、その結果、熱交換器、特に、熱交換器の第2のユニット142側(本実施の形態では、熱交換器43b)の熱交換効率を向上させることができる。
【0099】
次に、第1の導線44aの構造及び第2の導線44bの構造について説明する。
図10は、室外機100の内部構造のさらに他の一例を示す図である。
【0100】
上述のように、インバータ4は、第2のモータ42よりも第1のモータ41の近くに配置されている。これにより、第1の導線44aの長さを第2の導線44bよりも短くすることができる。しかしながら、第1の導線44aの長さ及び第2の導線44bの長さが互いに異なる場合、第1の導線44aを通るノイズ電流が第2の導線44bを通る信号電流に重畳する場合がある。この場合、第2の導線44bに流れる信号電流は、第1の導線44aからのノイズの影響を受ける。同様に、第1の導線44aの長さ及び第2の導線44bの長さが互いに異なる場合、第2の導線44bを通るノイズ電流が第1の導線44aを通る信号電流に重畳する場合がある。この場合、第1の導線44aに流れる信号電流は、第2の導線44bからのノイズの影響を受ける。
【0101】
図10に示される例では、室外機100は、ノイズ電流を低減するコア48を有する。コア48は、例えば、フェライトコアである。コア48をノイズフィルタともいう。
【0102】
図10に示される例では、コア48は第2の導線44bに取り付けられている。したがって、コア48は、第2の導線44bに流れるノイズ電流を低減する。これにより、第1の導線44aが第2の導線44bよりも短い場合でも、第2の導線44bからのノイズを低減することができる。コア48は第1の導線44aに取り付けられていてもよい。この場合、第1の導線44aからのノイズを低減することができる。これにより、第1のモータ41及び第2のモータ42の適切な制御が可能になる。
【0103】
図11は、室外機100の内部構造のさらに他の一例を示す図である。
図12は、コア48内において、第1の導線44aに流れる電流I1の向き及び第2の導線44bに流れる電流I2の向きを示す図である。
【0104】
図11に示される例では、第1の導線44aの長さは第2の導線44bと同じであり、第1の導線44aに流れる電流(具体的には、信号電流)は、第2の導線44bに流れる電流(具体的には、信号電流)と同期している。例えば、インバータ4から第1の導線44a及び第2の導線44bに同一の電流が供給される。すなわち、第1のモータ41及び第2のモータ42は同期運転をする。この場合、第1の導線44aに流れる信号電流が、第2の導線44bからのノイズの影響を受ける場合があり、第2の導線44bに流れる信号電流が、第1の導線44aからのノイズの影響を受ける場合がある。
【0105】
そこで、
図11に示される例では、室外機100は、ノイズ電流を低減するコア48を有する。コア48は、第1の導線44a及び第2の導線44bに取り付けられている。具体的には、
図12に示されるように、コア48内において、第1の導線44aに流れる電流I1及び第2の導線44bに流れる電流I2が互いに逆向きになるように、コア48が第1の導線44a及び第2の導線44bに取り付けられている。電流I1は、信号電流及びノイズ電流を含む。同様に、電流I2は、信号電流及びノイズ電流を含む。
【0106】
コア48内において電流I1及びI2が互いに逆向きであり、且つ第1の導線44aに流れる電流(具体的には、信号電流)は、第2の導線44bに流れる電流(具体的には、信号電流)と同期しているので、電流I1によって発生する磁束及び電流I2によって発生する磁束が互いに打ち消し合う。これにより、第1の導線44aからのノイズ及び第2の導線44bからのノイズが互いに打ち消し合う。その結果、第1の導線44a及び第2の導線44bにおけるノイズの影響を低減することができる。これにより、第1のモータ41及び第2のモータ42の適切な制御が可能になる。
【0107】
実施の形態3.
実施の形態3に係る冷凍サイクル装置800について説明する。冷凍サイクル装置800を冷凍サイクル適用機器ともいう。
【0108】
図13は、実施の形態3に係る冷凍サイクル装置800の構成の一例を示す図である。
冷凍サイクル装置800は、ヒートポンプ装置900を有する。本実施の形態では、ヒートポンプ装置900の一部の構成要素は、冷凍サイクル装置800の室外機800aを形成する。冷凍サイクル装置800は、室外機800aに加えて室内機(図示せず)を有する。
【0109】
室外機800aには、実施の形態2で説明した室外機100を適用することができる。これにより、冷凍サイクル装置800は、実施の形態2で説明した室外機100の利点を得られる。
図13に示される例では、熱交換器907が実施の形態2に係る室外機100の熱交換器43a,43bに対応し、ファン910a及び910bが実施の形態2に係る室外機100の第1のファン41a及び第2のファン42aに対応する。
【0110】
図14は、
図13に示すヒートポンプ装置900の冷媒の状態についてのモリエル線図である。
図14において、横軸は比エンタルピ、縦軸は冷媒圧力を示す。
ヒートポンプ装置900の回路構成の一例について説明する。
ヒートポンプ装置900は、圧縮機901と、熱交換器902と、膨張機構903と、レシーバ904と、内部熱交換器905と、膨張機構906と、熱交換器907とが配管により順次接続され、冷媒が循環する主冷媒回路908を備える。なお、主冷媒回路908において、圧縮機901の吐出側には、四方弁909が設けられ、冷媒の循環方向が切り替え可能となっている。
【0111】
冷凍サイクル装置800の室外機800aは、ヒートポンプ装置900の圧縮機901と、膨張機構903と、レシーバ904と、内部熱交換器905と、膨張機構906と、熱交換器907と、四方弁909と、膨張機構911と、ファン910aと、ファン910bとを有する。ただし、室外機800aの構成は、本実施の形態に限定されない。
【0112】
熱交換器907は第1の部分907a及び第2の部分907bを有し、これらには図示しない弁が接続されており、ヒートポンプ装置900の負荷に応じて冷媒の流れが制御される。例えば、ヒートポンプ装置900の負荷が比較的大きいときは、第1の部分907a及び第2の部分907bの双方に冷媒が流され、ヒートポンプ装置900の負荷が比較的小さいときは、第1の部分907a及び第2の部分907bの一方のみ、例えば、第1の部分907aにのみ冷媒が流される。
【0113】
第1の部分907a及び第2の部分907bには、それらの近傍に、それぞれの部分に対応してファン910a及び910bが設けられている。ファン910a及び910bはそれぞれ別個のモータの駆動力によって駆動される。例えば、ファン910aは、実施の形態1又は2で説明した第1のモータ41の第1のファン41aであり、ファン910bは、実施の形態1又は2で説明した第2のモータ42の第2のファン42aである。
【0114】
さらに、ヒートポンプ装置900は、レシーバ904と内部熱交換器905との間の接続点から、圧縮機901のインジェクションパイプまでを配管により繋ぐインジェクション回路912を備える。インジェクション回路912には、膨張機構911、内部熱交換器905が順次接続される。
【0115】
熱交換器902には、水が循環する水回路913が接続される。なお、水回路913には、給湯器、ラジエータ、床暖房等の放熱器等の水を利用する装置が接続される。
【0116】
まず、ヒートポンプ装置900の暖房運転時の動作について説明する。暖房運転時には、四方弁909は実線方向に設定される。なお、この暖房運転は、空調で使われる暖房だけでなく、給湯のための水の加熱をも含む。
【0117】
圧縮機901で高温高圧となった気相冷媒(
図14の点1)は、圧縮機901から吐出され、凝縮器であり放熱器となる熱交換器902で熱交換されて液化する(
図14の点2)。このとき、冷媒から放熱された熱により、水回路913を循環する水が温められ、暖房、給湯等に利用される。
【0118】
熱交換器902で液化された液相冷媒は、膨張機構903で減圧され、気液二相状態になる(
図14の点3)。膨張機構903で気液二相状態になった冷媒は、レシーバ904で圧縮機901へ吸入される冷媒と熱交換され、冷却されて液化される(
図14の点4)。レシーバ904で液化された液相冷媒は、主冷媒回路908と、インジェクション回路912とに分岐して流れる。
【0119】
主冷媒回路908を流れる液相冷媒は、膨張機構911で減圧され気液二相状態となったインジェクション回路912を流れる冷媒と内部熱交換器905で熱交換されて、さらに冷却される(
図14の点5)。内部熱交換器905で冷却された液相冷媒は、膨張機構906で減圧されて気液二相状態になる(
図14の点6)。膨張機構906で気液二相状態になった冷媒は、蒸発器となる熱交換器907で外気と熱交換され、加熱される(
図14の点7)。そして、熱交換器907で加熱された冷媒は、レシーバ904でさらに加熱され(
図14の点8)、圧縮機901に吸入される。
【0120】
一方、インジェクション回路912を流れる冷媒は、上述したように、膨張機構911で減圧されて(
図14の点9)、内部熱交換器905で熱交換される(
図14の点10)。内部熱交換器905で熱交換された気液二相状態の冷媒(インジェクション冷媒)は、気液二相状態のまま圧縮機901のインジェクションパイプから圧縮機901内へ流入する。
【0121】
圧縮機901では、主冷媒回路908から吸入された冷媒(
図14の点8)が、中間圧まで圧縮、加熱される(
図14の点11)。中間圧まで圧縮、加熱された冷媒(
図14の点11)に、インジェクション冷媒(
図14の点10)が合流して、温度が低下する(
図14の点12)。そして、温度が低下した冷媒(
図14の点12)が、さらに圧縮、加熱され高温高圧となり、吐出される(
図14の点1)。
【0122】
なお、インジェクション運転を行わない場合には、膨張機構911の開度を全閉にする。つまり、インジェクション運転を行う場合には、膨張機構911の開度がある値よりも大きくなっているが、インジェクション運転を行わない際には、膨張機構911の開度を上記のある値より小さくする。これにより、圧縮機901のインジェクションパイプへ冷媒が流入しない。膨張機構911の開度は、マイクロコンピュータ等で構成された制御部により電子制御される。
【0123】
次に、ヒートポンプ装置900の冷房運転時の動作について説明する。冷房運転時には、四方弁909は破線方向に設定される。なお、この冷房運転は、空調で使われる冷房だけでなく、水の冷却、食品の冷凍等をも含む。
【0124】
圧縮機901で高温高圧となった気相冷媒(
図14の点1)は、圧縮機901から吐出され、凝縮器であり放熱器となる熱交換器907で熱交換されて液化する(
図14の点2)。熱交換器907で液化された液相冷媒は、膨張機構906で減圧され、気液二相状態になる(
図14の点3)。膨張機構906で気液二相状態になった冷媒は、内部熱交換器905で熱交換され、冷却され液化される(
図14の点4)。内部熱交換器905では、膨張機構906で気液二相状態になった冷媒と、内部熱交換器905で液化された液相冷媒を膨張機構911で減圧させて気液二相状態になった冷媒(
図14の点9)とを熱交換させている。内部熱交換器905で熱交換された液相冷媒(
図14の点4)は、主冷媒回路908と、インジェクション回路912とに分岐して流れる。
【0125】
主冷媒回路908を流れる液相冷媒は、レシーバ904で圧縮機901に吸入される冷媒と熱交換されて、さらに冷却される(
図14の点5)。レシーバ904で冷却された液相冷媒は、膨張機構903で減圧されて気液二相状態になる(
図14の点6)。膨張機構903で気液二相状態になった冷媒は、蒸発器となる熱交換器902で熱交換され、加熱される(
図14の点7)。このとき、冷媒が吸熱することにより、水回路913を循環する水が冷やされ、冷房、冷却、冷凍等に利用される。そして、熱交換器902で加熱された冷媒は、レシーバ904でさらに加熱され(
図14の点8)、圧縮機901に吸入される。
【0126】
一方、インジェクション回路912を流れる冷媒は、上述したように、膨張機構911で減圧されて(
図14の点9)、内部熱交換器905で熱交換される(
図14の点10)。内部熱交換器905で熱交換された気液二相状態の冷媒(インジェクション冷媒)は、気液二相状態のまま圧縮機901のインジェクションパイプから流入する。
圧縮機901内での圧縮動作については、暖房運転時と同様である。
【0127】
なお、インジェクション運転を行わない際には、暖房運転時と同様に、膨張機構911の開度を全閉にして、圧縮機901のインジェクションパイプへ冷媒が流入しないようにする。
【0128】
また、上記の例では、熱交換器902は、冷媒と、水回路913を循環する水とを熱交換させるプレート式熱交換器のような熱交換器であるとして説明した。熱交換器902は、これに限らず、冷媒と空気を熱交換させるものであってもよい。水回路913は、水が循環する回路ではなく、他の流体が循環する回路であってもよい。
【0129】
上記の例では、熱交換器907が第1の部分907a及び第2の部分907bを有するが、代わりに、或いはそれに加えて、熱交換器902が2つの部分を有してもよい。そして、熱交換器902が冷媒と空気を熱交換させるものである場合、上記の2つの部分がそれぞれファンを有し、これらのファンが別個のモータの駆動力で駆動される構成とされることもある。
【0130】
上述のように、熱交換器902又は907が2つの部分を有する構成について説明したが、代わりに、或いはそれに加えて、圧縮機901が第1の部分(第1の圧縮機構)及び第2の部分(第2の圧縮機構)を有してもよい。その場合、ヒートポンプ装置900の負荷が比較的大きいときには、第1の部分及び第2の部分の双方が圧縮動作を行い、ヒートポンプ装置900の負荷が比較的小さいときは、第1の部分及び第2の部分の一方のみ、例えば、第1の部分のみが圧縮動作を行うように制御される。
【0131】
このような構成の場合、圧縮機901の第1の部分及び第2の部分には、それらを駆動する別個のモータが設けられる。例えば、実施の形態1又は2で説明した第1のモータ41及び第2のモータ42がそれぞれ第1の部分及び第2の部分の駆動に用いられる。
【0132】
上述のように、熱交換器902及び907の少なくとも一方が2つの部分を有し、熱交換器902及び907の少なくとも一方に対しファンが2台設けられている構成について述べたが、熱交換器が3以上の部分を有してもよい。一般化して言えば、熱交換器902及び907の少なくとも一方は複数の部分を有することがあり、それぞれの部分に対応してファンが設けられていてもよい。そのような場合、実施の形態1又は2で説明したように、複数のモータを1台のインバータ4で駆動することが可能である。
【0133】
また、圧縮機901が2つの部分を有する構成について述べたが、圧縮機901が3以上の部分を有してもよい。一般化して言えば、圧縮機901は複数の部分を有することがあり、それぞれの部分に対応してモータが設けられていてもよい。そのような場合、実施の形態1又は2で説明したように、複数のモータを1台のインバータ4で駆動することが可能である。
【0134】
実施の形態3で説明したヒートポンプ装置900と、実施の形態1で説明したモータ駆動装置50とを組み合わせてもよい。
【0135】
上記のように、実施の形態3の圧縮機901、或いは熱交換器902又は907のファンを駆動するモータが複数台ある場合に、実施の形態1又は2で説明した構成を適用することで、1台のインバータ4を用いて複数台のモータを駆動することが可能となり、ヒートポンプ装置900及び冷凍サイクル装置800の低コスト化及び小型軽量化を図ることが可能となる。
【0136】
また、モータが熱交換器のファンの駆動に用いられるものである場合、モータ駆動装置50が小型化した分、熱交換器のサイズを大きくすることができ、これにより、さらに熱交換効率が上がり、高効率化を図ることも可能となる。
【0137】
また、開閉部(9,9−1〜9−4)を動作させることで、インバータ4により駆動されるモータの台数を調整することが可能となるため、例えば負荷が比較的小さいときには、複数台のモータのうちの一部のモータ、例えば第1のモータ41のみ運転を行い、負荷が比較的大きいときには、より多くのモータ、例えば第1のモータ41と第2のモータ42の双方を運転させることができ、このように負荷に応じて駆動台数を変えることで、常に必要最小限の台数のみ運転を行うことが可能となり、ヒートポンプ装置の効率をさらに高めることが可能である。
【0138】
また、実施の形態1又は2で説明した制御を圧縮機901の駆動用モータに適用した場合には、脱調の恐れが無くなるため、安定した圧縮動作を継続できるだけでなく、電流脈動による振動の抑制が可能となるため、騒音の低減だけでなく主冷媒回路908を構成する配管などの振動による破損を抑制することができる。
【0139】
さらに、実施の形態1又は2で説明した制御を熱交換器902又は907のファンの駆動用モータに適用した場合には、脱調の恐れが無くなるため、安定した熱交換動作を継続できるだけでなく、電流脈動による振動の抑制が可能となるだけでなく、ファン相互間の速度差に起因した差音の発生を防止できるため、騒音を低減させることが可能となる。
【0140】
実施の形態4.
実施の形態1のモータ駆動装置50と実施の形態3のヒートポンプ装置900との組合せによって構成される冷凍サイクル装置(例えば、実施の形態3に係る冷凍サイクル装置800)においては、冷凍サイクル装置の負荷、即ち、ヒートポンプ装置の負荷の変化に対応して、ヒートポンプ装置900の動作モードが切換えられ、これに伴って圧縮機或いは熱交換器のうちの圧縮動作或いは熱交換動作をする部分が切り替えられ、それに対応して駆動されるモータの数が変えられる。
【0141】
熱交換器のうちの熱交換動作を行う部分の切替えと、熱交換器のそれぞれの部分に送風するファンを駆動するモータの切替えとは以下に述べるように若干の時間差があっても良い。
【0142】
例えば、熱交換器がn個の部分を有し、n台のモータが上記n個の部分に対応して設けられており、冷凍サイクル装置の負荷に応じて、n個の部分のうちの熱交換動作を行う部分が切り替えられ、n台のモータの各々は対応する部分が熱交換動作を行うときにインバータ4により駆動される構成を想定する。
【0143】
その場合、n台のモータの各々の上記インバータによる駆動は当該モータに対応する熱交換器の部分が熱交換動作を開始した後で開始されるようにしても良い。そうすることで、ヒートポンプ装置のヒートポンプ作用の効果が現れた後にモータの駆動が開始されることになり、モータによる電力消費を少なくすることができる。
【0144】
逆に、n台のモータの各々の上記インバータによる駆動は当該モータに対応する熱交換器の部分が熱交換動作を開始する前に開始されるようにしても良い。そうすることで、ヒートポンプ装置のヒートポンプ作用の効果が現れるときにはモータの駆動が開始されているので、ヒートポンプ作用の結果を有効に利用することが可能になる。
【0145】
また、n台のモータの各々の上記インバータによる駆動は当該モータに対応する熱交換器の部分が熱交換動作を停止した後で停止されるようにしても良い。そうすることで、ヒートポンプ作用の効果を有効に利用することが可能になる。
【0146】
逆に、上記n台のモータの各々の上記インバータによる駆動は当該モータに対応する熱交換器の部分が熱交換動作を停止する前に停止されるようにしても良い。そうすることで、モータによる電力消費を少なくすることが可能になる。
【0147】
なお、以上の実施の形態に示した構成は、本発明の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能である。