特許第6963105号(P6963105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6963105液圧ブレーキシステムのためのブレーキ圧を生成する液圧ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963105
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】液圧ブレーキシステムのためのブレーキ圧を生成する液圧ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60T 11/16 20060101AFI20211025BHJP
   B60T 11/20 20060101ALI20211025BHJP
   B22D 21/04 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B60T11/16 Z
   B60T11/20 A
   B22D21/04 A
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-524792(P2020-524792)
(86)(22)【出願日】2018年10月16日
(65)【公表番号】特表2021-501720(P2021-501720A)
(43)【公表日】2021年1月21日
(86)【国際出願番号】EP2018078180
(87)【国際公開番号】WO2019096516
(87)【国際公開日】20190523
【審査請求日】2020年5月7日
(31)【優先権主張番号】102017220206.8
(32)【優先日】2017年11月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】399023800
【氏名又は名称】コンティネンタル・テーベス・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・オッフェネ・ハンデルスゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(72)【発明者】
【氏名】ローケ・イェルク
(72)【発明者】
【氏名】クレーマー・ホルスト
(72)【発明者】
【氏名】リュファー・マンフレート
(72)【発明者】
【氏名】ビショッフ・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ゲルバー・サシャ
(72)【発明者】
【氏名】クネーヴィッツ・インゴ
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 西独国特許出願公開第02820299(DE,A1)
【文献】 国際公開第92/002732(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/001282(WO,A1)
【文献】 西独国特許出願公開第01505460(DE,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104245449(CN,A)
【文献】 特開2017−144816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D1/00−5/04
21/00−23/06
25/00−25/08
B60T10/00−11/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧ブレーキシステムのためのブレーキ圧を生成する液圧ユニット(1)であって、
ハウジング(2)を備え、ハウジング(2)は、鋳造素材(2’)から製造されていて、鋳造素材(2’)は、少なくとも1つの収容キャビティ(3)を有し、収容キャビティ(3)が切削されて、流体容器に接続された接続管片(5)を封密に収容する収容成形部(4)が形成されるようになっていて、接続管片(5)は、挿入軸線(S)に沿って収容成形部(4)に挿入可能であり、ハウジング(2)は、少なくとも1つのピストン(8)を収容する少なくとも1つのピストン孔(7)を有し、ピストン孔(7)は、ピストン孔軸線(A)に沿って鋳造素材(2’)内に形成されている、液圧ユニット(1)において、
収容キャビティ(3)は、挿入軸線(S)に対して横方向の断面及び底部(6)で非円形であるとともに、ピストン孔軸線(A)に沿って伸長して形成されていて、ハウジング(2)は、収容キャビティ(3)をピストン孔(7)に液圧接続する接続孔(9)を有し、接続孔(9)は、キャビティ(3)の底部(6)に直接に穿孔されるとともに、底部(6)に対して直交方向に配向されていることを特徴とする、液圧ユニット(1)。
【請求項2】
収容キャビティ(3)は、開口(16)と底部(6)とを有して鉢状に形成されていて、底部(6)は、平らに形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の液圧ユニット(1)。
【請求項3】
底部(6)は、楕円形に設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の液圧ユニット(1)。
【請求項4】
底部(6)は、少なくとも1つの拡張面(13)を有する楕円形又は円形の基本形状(11)を有し、拡張面(13)は、ピストン孔軸線(A)に沿って基本形状(11)に続いているとともに、ピストン孔軸線(A)に対して横方向に基本形状(11)よりも狭く設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の液圧ユニット(1)。
【請求項5】
接続孔(9)は、ピストン孔(7)の周面に配置された径方向内溝(12)に開口することを特徴とする、請求項に記載の液圧ユニット(1)。
【請求項6】
収容キャビティ(3)は、鋳造素材(2’)においてピストン孔軸線(A)に対して横方向に外方へ突出する隆起部(15)に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の液圧ユニット(1)。
【請求項7】
鋳造素材(2’)は、金属鋳造法でアルミニウム合金から製造されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の液圧ユニット(1)。
【請求項8】
液圧ユニット(1)は、ピストン孔(7)内にタンデム構造で相前後して配置された第1のピストン(8)及び第2のピストン(8’)を有するマスタブレーキシリンダであることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の液圧ユニット(1)。
【請求項9】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の液圧ユニット(1)を備える、液圧式自動車用ブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の上位概念に記載の構成を有する、ブレーキ圧を生成する液圧ユニット、特に液圧式自動車用ブレーキシステムのためのメインブレーキシリンダび対応するブレーキシステムに関する。
【0002】
このようなユニットのハウジングは、多くの場合、軽金属合金から製造される。その際、通常、まずは成形法によって、たとえば金属鋳造法で、鋳造素材が製造される。このように製造された鋳造素材は、製造に起因して、まずは比較的広い寸法公差び表面公差を有し、その後で、鋳造材料に、切削法によって、必要とされる狭い公差の機能要素び成形部、たとえば各種の接続部、接続チャネル、孔、シール面、溝などが設けられ、場合によっては続いて保護層により被覆される。
【0003】
ゆえに、鋳造素材に、流体容器の接続管片を後で収容する収容キャビティを設けることが知られている。収容キャビィには、鋳造後、切削によって、たとえば穿孔、フライス加工は旋削によって、管片シールを封密に設置する特有の収容成形部が設けられる。
【0004】
収容キャビティは、接続孔を介して、いわゆる後流れ溝に、つまりピストン孔の周面に設けられた径方向内溝に接続される。この溝は、流体容器から到来するブレーキフルードでもってピストン外面を均一に濡らすのに役立つ。技術に起因して、この種の接続孔は、多くの場合、収容キャビティの旋削前に作製される。マスタブレーキシリンダの、エンジンコンパートメントに突出する部分を短縮して、この部分をますますコンパクトに構成するという絶え間ない要望によって、後流れ溝を、構造に起因して、対応付けられた収容キャビィの真下に配置することができず、軸方向にますます離れて配置しなければならなくなる。その結果、接続孔を斜めに穿孔しなければならない、はまずはより大きな広い公差の前穿孔、いわゆるパイロット孔を、収容キャビィの壁部の一部を通って作製しなければならない。次いで、狭い公差の接続孔が、前穿孔内に作製される。
【0005】
それに伴う工具交換、緊締の変更、は鋳造素材の位置変化が、工具マガジン内の長い滞留時間と相俟って、製造コストを大幅に増大させてしまう。
【0006】
したがって、本発明の課題は、改善された、特に製造技術的に最適化された液圧ユニットを提供することである。
【0007】
この課題は、本発明によれば、独立請求項1に記載の特徴の組み合わせを有する液圧ユニットによって解決される。従属請求項は、図面に関する説明と相俟って、本発明のさらに好適な構成び改良形態を提供する。
【0008】
本発明によれば、収容キャビティは、その横断面で、特にその底部で、非円形であるとともに、ピストン孔軸線に沿って伸長して形成されている。
【0009】
この場合、横断面び底部は、本発明による様々な形態に基づいて、たとえば略楕円形に設けられてよい、は少なくとも1つの拡張面を有する略楕円形のは円形の基本形状を有してよく、拡張面は、ピストン孔軸線に沿って基本形状に続いていて、ピストン孔軸線に対して横方向に基本形状よりも狭く設けられている。
【0010】
このように構成された鋳造輪郭によって、収容キャビティの底部を効果的に拡大することができ、ひいては穿孔工具を垂直に載置するための最適化された設置面を提供することができる。ゆえに、直交方向の接続孔が、狭い公差を維持しつつ、底部に直接に、その縁へ変位されて穿孔される。付加的な前穿孔は斜めの孔を省くことができる。加工時間びコストは、これに伴う工具交換ならびに緊締の変更の回避び切削量の低減によって大幅に削減される。
【0011】
予想を超えた副次効果として、鋳造量の低減によって、鋳造素材の重量も同様に節約されて、材料コストが削減される。
【0012】
特に好適には、本発明は、タンデムマスタブレーキシリンダのハウジングにおいて適用することができ、これにより、対応付けられた収容キャビティに対して相対的な、径方向内溝の、コンパクト性を促進する大きな軸方向の変位が実現される。
【0013】
さらに、本発明は、本発明に係る液圧ユニットが装着された液圧式自動車用ブレーキシステムを権利請求する。
【0014】
本発明のさらなる特徴び利点は、以下の実施の形態の説明び図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】未加工状態のタンデムマスタブレーキシリンダの、典型的な、上位概念による鋳造素材を、縮尺通りではなく大幅に簡略化して例示して断面図で示す。
図2】液圧ユニットの、切削によって作製された、略示された要素と、既知の斜めの接続孔と、前穿孔内に配置された別の既知の接続孔と、いくつかのコンポーネントとを有する、上位概念によるタンデムマスタブレーキシリンダのハウジングを、同様に大幅に簡略化して軸方向断面図で示す。
図3】切削によって作製された、略示された要素と、既知の斜めの接続孔とを有する収容キャビティの領域で、鋳造素材の拡大された一部を軸方向断面図で示す。
図4図3と同様の図であるが、収容キャビィの本発明による第1の実施形態で示す。
図5】前穿孔内に配置された接続孔を有する、別の既知の形態を平面図で示す。
図6】収容キャビィの本発明による第1の実施形態を平面図で示す。
図7】収容キャビィの本発明による別の実施形態を平面図で示す。
【0016】
図1
図示の例では、タンデムマスタブレーキシリンダの鋳造素材2’が示されている。鋳造素材2’は、多くの場合、金型鋳造法で、アルミニウム合金から製造され、続いて切削によって必要とされる成形部び機能要素が設けられ、これにより、特に図2に略示されているように、加工されたハウジング2へと変わる。鋳造素材2’には、第1の収容キャビィ3び第2の収容キャビィ3’が設けられていて、これらの収容キャビティ3,3’は、開口16と平坦な底部6,6’とを有して略鉢状に形成されている。両収容キャビティ3、3’は、それぞれピストン孔軸線Aに対して横方向に外方へ突出する第1の隆起部15び第2の隆起部15’に配置されていて、これにより、収容キャビティ3,3’は、それぞれ限られた厚さの壁部17によって径方向に包囲されている。
【0017】
図2
図2は、加工されたハウジング2を有する、上位概念による、タンデムマスタブレーキシリンダとして構成された液圧ユニット1のいくつかのコンポーネントを示していて図2では、切削によって作製された要素は、破線で示されている。ハウジング2内には、ピストン孔軸線Aに沿って袋状のピストン孔7が配置されている。ピストン孔7内で、タンデム構造で、第1のピストン8び第2のピストン8’が、摺動可能であるとともに、ピストンシール18によってピストン孔7に対して封密に収容されている。
【0018】
ピストン孔7の周面に設けられた第1の径方向内溝12び第2の径方向内溝12’が、それぞれ1つのピストン8,8’を取り囲み、ブレーキフルードを均一に分配するのに役立つ。
【0019】
収容キャビティ3,3’は、元来の鉢形状から切削することによって、それぞれ挿入軸線Sを中心に回転対称の収容成形部4,4’へと拡張される。収容成形部4,4’内に、それぞれ、図示されていない流体容器の接続管片5が、管片シール19とともに収容される。接続管片5び管片シール19は、挿入軸線に沿って挿入される。接続孔9,9’は、収容キャビティ3、3’を、対応付けられた径方向内溝12、12’に接続し、これにより、ピストン孔7に流体容器からブレーキフルードが供給される。
【0020】
両径方向内溝12,12’は、収容キャビティ3,3’の平坦な底面6,6’の直下に位置せずに、ピストン軸線Aに沿って変位されて位置決めされているので、第2の接続孔9’は、挿入軸線Sに対して斜めに非平行に穿孔されている。挿入軸線Sに対して平行に配向された第1の接続孔9は、予め収容キャビティ3に、部分的に壁部17に穿孔された別個の袋状の大きな前穿孔10内に位置決めされている。
【0021】
図3
斜めの接続孔9を有する、図2に示された構造手段が、別の一形態に基づいて、図3に拡大して示されている。
【0022】
図4
図4には、本発明による第1の実施形態が示されている。特に図6図7から分かるように、本発明による収容キャビティ3は、ピストン孔軸線Aに沿って伸長して形成されているので、収容キャビティ3は、ピストン孔軸線Aに沿って、横方向よりも大きな拡がりを有する。収容キャビティ3のこの伸長によって、収容キャビィ3の底部6もピストン孔軸線Aに沿って延長されている。接続孔9は、底部6の外縁14へ変位されて位置決めされているとともに、底部6に対して直交方向に底部6に直接に穿孔されていて、その際、対応付けられた径方向内溝12に当接する。
【0023】
図5
前穿孔10内に位置決めされた接続孔9を有する、図2に示された構造手段が、別の一形態に基づいて、図5に平面図で示されている。収容キャビティ3は、横断面で円形に回転対称に形成されている。接続孔9と比較して著しく大きい前穿孔10が、収容キャビィ3に穿孔され、これにより、必要とされる、接続孔9のための設置面が提供される。接続孔9の穿孔工具は、狭い公差び比較的小さな直径によって、壁部17の部分的な穿孔に際して生じるであろう横力にさらされてはならない。
【0024】
図6
図6には、収容キャビティ3の、本発明による第1の形態が平面図で示されている。図5による既知の形態とは相違して、本発明による収容キャビィ3は、その断面が、挿入軸線Sに対して横方向に非円形であるとともに、ピストン孔軸線Aに沿って伸長して形成されている。底部6の縁14は、収容キャビティ3の横断面成形部に追従している。
【0025】
この場合、収容キャビティ3の底部6ひいては横断面成形部も、略円形の基本形状11を有し、基本形状11には、2つの拡張面13,13’が続いていて、ゆえに、収容キャビィ3の底部6ひいては横断面成形部も、ピストン孔軸線Aに沿って拡張される。この場合、接続孔9は、拡張面13内に位置決めされている。
【0026】
基本形状11は、本発明の範囲内で、楕円、丸み付けられた角を有する多角形などと同様の非円形の形状を有してもよい。
【0027】
図7
図7には、本発明による別の実施形態が示されている。収容キャビィ3の底部6ひいては横断面成形部も、図7では、図6による実施形態とは相違して、略楕円形に設けられている。接続孔9は、図7では、楕円の長軸上で頂点の付近に位置決めされている。
【符号の説明】
【0028】
1 液圧ユニット
2 ハウジング
2’ 鋳造素材
3 収容キャビティ
4 収容輪郭輪郭
5 接続管片
6 底部
7 ピストン孔
8 ピストン
8’ ピストン
9 接続孔
10 前穿孔
11 基本形状
12 径方向内溝
13 拡張面
14 縁
15 隆起部
16 開口
17 壁部
18 ピストンシール
19 管片シール
A ピストン孔軸線
B 孔軸線
S 挿入軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7