【文献】
ホームズ アポロシャルム 3階,2021年08月05日,https://www.homes.co.jp/chintai/room/67ed46e15dc226549ec1f3b0a02675814c09d4c0/?bid=1039360055941
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、図面は模式的なものであり、各部の寸法などは現実のものと異なる点があることに留意すべきである。また、以下に説明する実施の形態はあくまでも例示であり、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0012】
[全体構造]
図1は、本発明の実施の形態における住戸1の間取り構造を示す平面図である。集合住宅の共用廊下100に沿って連続的に配置された複数の住戸のうちの1つの住戸1の間取り構造を示している。隣接する住戸のそれぞれの間取り構造は、必ずしも全て同一である必要はない。
【0013】
住戸1の間取り構造は、LDK(第1居室)10に寝室(第2居室)20を加えた1LDKの間取り構造である。住戸面積は限定されるものではないが、望ましくは40m
2(平方メートル)以下、より望ましくは35m
2以下である。
【0014】
具体的には、
図1に示すように、住戸1の奥行き方向に向けて、隣家との壁である戸境壁2,3が延びている。共用廊下100と平行する壁面4に玄関5が設けられ、玄関5に直結するLDK10が設けられ、LDK10に直結する寝室20が設けられている。LDK10に玄関たたき5Tが取り込まれているとともに、LDK10が玄関5から寝室20までの通路を兼ねている。住戸1の形状は、間口が狭く、奥行きが長い矩形である。LDK10の奥に寝室20が配置され、寝室20と対向する側にパウダールーム30と脱衣所40と風呂場50が配置されている。
【0015】
例えば、間口は3.64m、奥行きは9.1mである。間口を3.64mとしているため、メーターモジュール、尺モジュールと呼ばれる定尺の建築材料で端材が最も少なくなる効果がる。また、いわゆるツーバイフォー建築でのインチモジュールでも、3.6mは全く同じ効果が得られる定尺に相当する。すなわち、インチモジュールの材料は1フィート約30cmの倍数で6、9、12フィートが一般的な定尺であり、またツーバイフォー建築での柱の間隔は約40cmであるので、両方の公倍数が3.6mとなる。
【0016】
このような間取り構造にすれば、壁面の屈曲がほとんど無いため、建築費用を抑えることができる。また、利用価値の低い無駄な建築スペースがほとんど無いため、土地の利用効率を向上させ、35m
2以下の住戸1で1LDKを実現することができる。これにより、各戸を小さくして多くの住戸1を建築することができるため、様々な形、広さの土地に対して収益率の高い集合住宅を建築することが可能となる。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態における効果を説明するための模式図である。この図は模式的なものであり、各部の大きさの比率は正確ではない。
【0018】
ここでは、同じ四角の敷地200に対して、細長い31m
2の住戸211の集合住宅210を建築した場合(
図2(a)参照)と、真四角に近い31m
2の住戸221の集合住宅220を建築した場合(
図2(b)参照)を例示している。この場合、集合住宅210と比較して集合住宅220は細長くなってしまうため、戸数が減り、収益率が低くなる。そこで、このような細長い集合住宅220を1つの敷地200に2つ建築することも考えられるが、その場合は、建築基準法でいう一敷地一建物の原則に反する。また、敷地面積に対する建築面積の割合(建ぺい率)の問題もある。よって、上記したように、各戸を小さくして多くの住戸1を建築できるようにした方が、様々な形、広さの土地に対して収益率の高い集合住宅を建築することが可能と言える。
【0019】
[LDK]
以下、LDK10について更に詳しく説明する。なお、本明細書でいう「手前」「奥」「右」「左」の意味は、特に断らない限り、住戸1を正面から見た場合を基準に考える。
【0020】
LDK10は、リビングとダイニングとキッチンが一体となったスペースである。Lはリビング、Dはダイニング、Kはキッチンの意味である。「LDK」として表記するためには、8畳以上のリビングスペースを確保する必要がある。
【0021】
LDK10の形状は、間口方向の全幅にわたって形成された矩形である。共用廊下100と平行する壁面4には、採光および通風のための窓4Wが設けられている。LDK10に玄関たたき5Tが取り込まれているとともに、LDK10が玄関5から寝室20までの通路を兼ねている。
【0022】
具体的には、
図1に示すように、玄関ドア5Dを開くと、手前に8畳以上の広々としたリビングがあり、応接セット11が置かれている。その奥の右手には、戸境壁3に沿ってコの字型キッチンダイニングテーブル12があり、左手には、戸境壁2に沿ってデスク13がある。更に、コの字型キッチンダイニングテーブル12とデスク13の間には、寝室20に通じる寝室ドア14がある。
【0023】
コの字型キッチンダイニングテーブル12は、L型キッチン12KとI型ダイニングテーブル12Dをコの字型に組み合わせたものであり、キッチンとダイニングの機能を兼ね備えている。L型キッチン12Kは、シンク12K
1などを備えた壁付けシステムキッチンである。L字の角部には炊飯器12K
3を置くことができ、L字の端部にはコンロ12K
2を置くことができる。コンロ12K
2の左には、寝室20への通路を遮らない程度の大きさの冷蔵庫15を置くことができる。I型ダイニングテーブル12Dは、カウンター型のダイニングテーブルである。I字の端部には、電気ポットまたはケトル12D
1を置くことができる。
【0024】
一般に、キッチンの上に取り付けられている棚には蓋が付いているため、電子レンジを置くことができない。また、電子レンジをキッチンの作業台に置くと、作業スペースが極端に狭くなり、キッチンとして使えなくなる問題がある。そのため、キッチンの後ろ側にキッチンボードを置いて、そこに電子レンジを置くのが一般的であるが、そうすると35m
2以下でLDKのスペースを確保できなくなる。
【0025】
そこで、本実施の形態では、戸境壁3に沿って、床から140cm程度の高さに平板状の棚12K
4を取り付けるようにしている。これにより、棚12K
4の上に電子レンジを置くことができるため、広い作業スペースを確保することが可能となる。
【0026】
[寝室側]
以下、寝室側について更に詳しく説明する。寝室側とは、LDK10の奥のスペースであり、「住戸1からLDK10を除いたスペース」と言い換えることもできる。左手に寝室20があり、右手にパウダールーム30と、脱衣所40と、風呂場50がある。
【0027】
具体的には、
図1に示すように、寝室ドア14を開くと、寝室20がある。寝室20の形状は、奥行き方向に長い矩形である。寝室20には、戸境壁2に沿って手前から順にワードローブ21とベッド22が配置されている。寝室20の奥の壁面6には、採光および通風のための窓6Wが設けられている。
【0028】
寝室20と対向する側には、戸境壁3に沿って手前から順にパウダールーム30と、脱衣所40と、風呂場50が配置されている。寝室20の手前側のドア23を開くと、パウダールーム30がある。パウダールーム30には、充分な大きさの洗面台31とタンクレス便器32を設置することができる。寝室20はプライベートな空間であり、他人に見られたくない場合があるため、寝室20に入ってすぐパウダールーム30があると、来客にトイレを貸す場合でも比較的安心である。寝室20の奥側のドア24を開くと、脱衣所40がある。脱衣所40には、洗濯機41を設置することができるだけでなく、タンス42や棚43など、充分な大きさの収納スペースを確保することができる。脱衣所40内のドア44を開くと、風呂場50がある。風呂場50には、内径寸法が160cm×160cmである1616サイズのユニットバス51を設置することができる。
【0029】
なお、ここでは、手前からパウダールーム30、脱衣所40、風呂場50の順に配置されている場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、脱衣所40と風呂場50が隣り合わせであればよい。例えば、手前から脱衣所40、風呂場50、パウダールーム30の順に配置されていてもかまわない。
【0030】
以上のように、本発明の実施の形態における住戸1の間取り構造によれば、35m
2以下の1LDKにおいて、他のスペースとの取り合いを調整しながら最適な間取り構造を実現することが可能となる。すなわち、従来は、35m
2以下の1LDKを実現しようとすると、収納家具の引き出しを出せなくなったり、人の通路が確保できなくなったりする不具合があった。また、トイレのドアがリビング側に向く不具合が生じたり、居室の採光を定めた法律などをクリアできなくなる不具合もあった。従来、このような不具合が生じていたことは、非特許文献1に開示される40m
2程度の1LDKを見ても明らかである。本発明の実施の形態における住戸1の間取り構造によれば、40m
2以下はもちろんの事、35m
2以下の1LDKでさえも、これらの不具合を解決することが可能となる。
【0031】
[比較例]
以下、本発明の実施の形態における住戸1の間取り構造を更に詳しく説明するため、比較例を挙げる。比較例の間取り構造では、玄関から入ってすぐに玄関たたきがあり、その先に廊下があり、廊下の左または右にユニットバス、トイレ、寝室があると仮定する。また、廊下の奥にリビングがあり、リビングスペースの壁にI型流し台を設置していると仮定する。
【0032】
[比較例との対比1]
まず、比較例の間取り構造では、通路としての利用価値しかない玄関たたきや廊下のスペースが存在するため、35m
2以下の住戸で1LDKを実現することは困難である(リビングスペースは8畳以上ないと「LDK」とは呼べず「DK」と呼ばれる)。
【0033】
それに対して、本発明の実施の形態における住戸1の間取り構造では、
図1に示すように、玄関たたき5Tと廊下スペースをリビングに取り込んでいる。これにより、同じ住戸面積で比較例以上のリビングスペースを確保することができるため、比較例よりも建築費用に対して高い収益率を確保することができる。また、この間取り構造により、建築戸数を増やせるため、土地の活用の面でも収益率を上げることができる効果もある。
【0034】
[比較例との対比2]
また、比較例の間取り構造では、トイレ内に十分な大きさの手洗いを付けるスペースを確保することが困難であるため、洗面台は、洗濯機と並べて脱衣スペースに置くことになる。そのため、脱衣スペースには収納スペースを殆ど確保できない。また、このことにより、便器は必然的に手洗い付タンクタイプになり、腰をかがめて手洗いすることを余儀なくされる。また、このタイプの手洗いは周りに水跳ねしやすく、清潔に保つためにはこまめな掃除、拭き取りが必要である。
【0035】
それに対して、本発明の実施の形態における住戸1の間取り構造では、
図1に示すように、洗面台31を脱衣所40から出すことによって脱衣所40に特段に多くの収納スペースを設けることができる。また、充分な大きさの洗面台31をパウダールーム30に設置し、便器32も設置することによって手洗い付き便器の必要性がなくなり、タンクレス便器32の設置が可能となる。そのため、汚物の排出力の増強、節水、水跳ね後の清掃の負担軽減が可能となり、また、かがまずに手を洗うことができる。
【0036】
[比較例との対比3]
また、比較例の間取り構造では、廊下の左または右にユニットバスを配置しているため、1616という標準規格サイズのユニットバスを配置するスペースの確保が難しい。
【0037】
それに対して、本発明の実施の形態における住戸1の間取り構造では、
図1に示すように、廊下などの通路スペースがない寝室側にユニットバス51を配置している。これにより、1LDKであっても、1616という標準規格サイズのユニットバス51を設置できる。
【0038】
[比較例との対比4]
また、比較例の間取り構造では、リビングスペースの壁にI型流し台を設置しているため、流し台は極めて狭い。特に、流し台の上には炊飯器、電子レンジ、トースター、電気ポットなどの調理器具を置くスペースはなく、作業性は極めて悪い。
【0039】
それに対して、本発明の実施の形態における住戸1の間取り構造では、
図1に示すように、比較例より広いリビングスペースを活用し、L型キッチン12KとI型ダイニングテーブル12Dをコの字型に組み合わせてコの字型キッチンダイニングテーブル12を構成し、カウンタースペースを特段に広くしている。これにより、カウンタースペースに炊飯器12K
3、電気ポット12D
1、電子レンジ、トースターなどの調理器具を多く乗せられるようになり、作業効率を格段に向上させることができる。
【0040】
[比較例との対比5]
また、比較例の間取り構造では、リビングスペースの壁にI型流し台を設置しているため、流し台の手前側が露出しており、清潔で綺麗な空間とすることが困難である。清潔で綺麗な空間とするには、相当にこまめに片付け清掃をしなければならない。この課題を解決するために、比較例の間取り構造のままカウンターキッチンスタイルにすると、リビングスペースが著しく狭くなる弊害が生じる。
【0041】
それに対して、本発明の実施の形態における住戸1の間取り構造では、
図1に示すように、コの字型キッチンダイニングテーブル12をリビングスペースに配置している。これにより、シンク12K
1がリビングスペースの想定主要滞在場所から遠ざかり、更に手前のI型ダイニングテーブル12Dにより目隠し状態となり、こまめな片付けをしなくても快適な環境を確保しやすくなる。また、カウンターキッチンスタイルで課題解決しようとした場合よりも、垂れ壁が無い分、更にキッチンスペースをリビングスペースに取り込んだ印象になり、より広いリビングスペースになった感覚をもたらすことができる。その結果、カウンターキッチンスタイルで生じるリビングスペースが狭くなるという弊害も解決することができる。
【0042】
[比較例との対比6]
また、比較例の間取り構造では、35m
2以下の住戸で1LDKを実現しようとすると、居室の採光を定めた法律などをクリアするために、屈曲した壁と利用価値の低い無駄な建築スペースを多くとる必要がある。その結果、建築費用が余計にかかることになり、収益率の高い集合住宅を建築することが困難である。
【0043】
それに対して、本発明の実施の形態における住戸1の間取り構造では、
図1に示すように、壁面の屈曲がほとんど無く、建築費用を抑えることができる。また、細長い1LDKの間取り構造により土地の利用効率を向上させやすくなる。その結果、集合住宅の運用上、収益性の向上が図れるようになる。
【0044】
[本発明の特徴的構成とその効果]
以上説明したように、本発明の実施の形態における住戸1の間取り構造は、少なくともリビングとキッチンが一体となった第1居室10に第2居室20を加えた間取りの住戸1の間取り構造であって、玄関5に直結する第1居室10と、第1居室10に直結する第2居室20とを備え、第1居室10に玄関たたき5Tが取り込まれているとともに、第1居室10が玄関5から第2居室20までの通路を兼ねている。これにより、各戸を小さくして多くの住戸1を建築することができるため、様々な形、広さの土地に対して収益率の高い集合住宅を建築することが可能となる。
【0045】
また、住戸1の形状は、間口が狭く、奥行きが長い矩形であり、第1居室10の奥に第2居室20が配置され、第2居室20と対向する側にパウダールーム30と脱衣所40と風呂場50が配置されているのが望ましい。これにより、細長い1LDKの間取り構造により土地の利用効率を向上させることが可能となる。
【0046】
また、第1居室10は、リビングとダイニングとキッチンが一体となったスペース(いわゆるLDK)であるのが望ましい。これにより、様々な形、広さの土地に対して収益率の高い1LDKの住戸1を建築することが可能となる。
【0047】
また、L型キッチン12KとI型ダイニングテーブル12Dをコの字型に組み合わせたコの字型キッチンダイニングテーブル12が第1居室10に配置されているのが望ましい。これにより、作業効率を向上させながら、清潔で綺麗な空間とすることが可能となる。
【0048】
また、コの字型キッチンダイニングテーブル12、パウダールーム30、脱衣所40、風呂場50の順に、同じ戸境壁3に沿って直列的に配置されているのが望ましい。これにより、35m
2以下の1LDKにおいて、他のスペースとの取り合いを調整しながら最適な間取り構造を実現することが可能となる。
【0049】
また、内径寸法が160cm×160cmである1616サイズのユニットバス51が風呂場50に設置されているのが望ましい。これにより、1LDKであっても、1616という標準規格サイズのユニットバス51を設置することが可能となる。
【0050】
なお、
図1の間取り構造の左右を入れ替えてもよいことはもちろんである。例えば、コの字型キッチンダイニングテーブル12、パウダールーム30、脱衣所40、風呂場50の順に、同じ戸境壁2に沿って直列的に配置されていてもよい。その場合、寝室20が戸境壁3に沿って配置されることになるのはいうまでもない。
【0051】
また、
図1では、玄関5は、戸境壁3に沿って住戸1の正面右側に配置されている場合を例示したが、玄関5の位置は特に限定されるものではない。例えば、玄関5は、戸境壁2に沿って住戸1の正面左側に配置されていてもよい。ただし、
図1に示すように、玄関5が戸境壁3に沿って住戸1の正面右側に配置されていると、玄関5を開けたとき、シンク12K
1を手前のI型ダイニングテーブル12Dにより目隠し状態にできるメリットがある。
【0052】
また、
図1では、リビングとダイニングとキッチンが一体となった第1居室10を例示したが、第1居室10は、少なくともリビングとキッチンが一体となったスペースであればよい。すなわち、「1LK」と表記している間取りであっても、本発明の特徴的構成を備える以上、本発明の適用範囲に含まれる。
【0053】
また、上記の説明では言及しなかったが、1616サイズのユニットバス51やL型キッチン12Kなどの設備はもちろん、家電や家具も当初から標準で備え付けられていてもよい。家電や家具の近くに必要数のコンセントを配置するのが望ましいことは言うまでもない。
【0054】
また、上記の説明では、1616サイズのユニットバス51を風呂場50に設置した場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、他の標準規格サイズ(1618サイズなど)のユニットバス51を風呂場50に設置してもよい。
【0055】
[その他の実施の形態]
以上のように、本発明の実施の形態について記載したが、開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【解決手段】集合住宅における1LDKの住戸1の形状は、間口が狭く、奥行きが長い矩形であり、住戸1の面積は、40平方メートル以下であり、集合住宅の共用廊下100と平行する壁面4に設けられた玄関5と、玄関5に直結するLDK10と、LDK10の奥に配置された寝室20と、寝室20と対向する側に配置されたパウダールーム30と、寝室20と対向する側に配置された脱衣所40と、寝室20と対向する側に配置された風呂場50とを備え、LDK10に玄関たたき5Tが取り込まれているとともに、LDK10が玄関5から寝室20までの通路を兼ねており、パウダールーム30と脱衣所40のそれぞれに寝室20に通じるドア23,24が設けられ、パウダールーム30と脱衣所40とが独立したスペースとして構成されている。