特許第6963148号(P6963148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマザキマザック株式会社の特許一覧

特許6963148回転シャフトロック装置、加工ヘッド、および、複合加工機
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6963148
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】回転シャフトロック装置、加工ヘッド、および、複合加工機
(51)【国際特許分類】
   B23B 19/02 20060101AFI20211025BHJP
   B23Q 5/04 20060101ALI20211025BHJP
   F16C 23/06 20060101ALI20211025BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B23B19/02 B
   B23Q5/04 F
   F16C23/06
   F16C19/16
【請求項の数】15
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2021-523518(P2021-523518)
(86)(22)【出願日】2020年12月25日
(86)【国際出願番号】JP2020048836
【審査請求日】2021年4月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114787
【氏名又は名称】ヤマザキマザック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100196003
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 洋人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公彦
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭60−029014(JP,B2)
【文献】 特開平10−225802(JP,A)
【文献】 特開2000−210826(JP,A)
【文献】 特開2004−034223(JP,A)
【文献】 特開2010−151313(JP,A)
【文献】 特開2013−170656(JP,A)
【文献】 特開2019−104066(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/129823(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102010048546(DE,A1)
【文献】 中国実用新案第202199874(CN,U)
【文献】 国際公開第2008/074296(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 19/02
B23Q 5/00−5/58
F16C 23/06
F16C 19/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具が取り付けられる取付部と、第1接触面とを有し、第1軸まわりを回転可能な回転シャフトと、
前記回転シャフトに支持される内リングと、外リングと、前記内リングと前記外リングとの間に配置される複数のボールとを有する第1アンギュラ玉軸受と、
前記第1接触面との接触により前記回転シャフトの回転をロックする第2接触面を有し、前記第1アンギュラ玉軸受を介して前記回転シャフトを回転可能に支持する支持部材と、
前記第1接触面が前記第2接触面に接触し、かつ、前記複数のボールに作用する予圧が減少されるように、前記回転シャフトおよび前記内リングを前記支持部材および前記外リングに対して前記第1軸に平行な第1方向に相対移動させる駆動装置と
を具備する
回転シャフトロック装置。
【請求項2】
前記回転シャフトおよび前記内リングの前記支持部材および前記外リングに対する前記第1方向への相対移動により、前記内リングおよび前記外リングに対して前記複数のボールの各々が任意の方向に相対移動することを許容する空間が形成される
請求項1に記載の回転シャフトロック装置。
【請求項3】
前記駆動装置は、前記回転シャフトおよび前記内リングを、前記支持部材および前記外リングに対して、前記第1方向に相対移動させることにより、前記回転シャフトの前記回転が許容されるロック解除状態から、前記回転シャフトの前記回転がロックされるロック状態に切り替え可能であり、
前記ロック状態において、前記複数のボールに作用する第1予圧は、前記ロック解除状態において、前記複数のボールに作用する第2予圧よりも小さい
請求項1または2に記載の回転シャフトロック装置。
【請求項4】
前記内リングは、第1肩部を有し、
前記外リングは、第2肩部を有し、
前記内リングが前記外リングに対して前記第1方向に相対移動するとき、前記第1肩部は前記第2肩部から離れる方向に移動する
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の回転シャフトロック装置。
【請求項5】
前記駆動装置は、前記回転シャフトを押圧する第1移動部材を有し、
前記第1移動部材は、前記第1アンギュラ玉軸受よりも後方に配置される
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の回転シャフトロック装置。
【請求項6】
前記回転シャフトの後端部に支持される第2内リングと、第2外リングと、前記第2内リングと前記第2外リングとの間に配置される第2のボール群とを有する第2アンギュラ玉軸受を更に具備し、
前記駆動装置は、前記第2アンギュラ玉軸受の全体、前記回転シャフト、および、前記内リングを、前記支持部材および前記外リングに対して、前記第1方向に相対移動させる
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の回転シャフトロック装置。
【請求項7】
前記第1接触面は、前記第1軸に対して傾斜する第1傾斜面を有し、
前記第2接触面は、前記第1軸に対して傾斜する第2傾斜面を有し、
前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との接触により、前記回転シャフトの前記回転がロックされる
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の回転シャフトロック装置。
【請求項8】
前記回転シャフトは、第1カップリングを有し、
前記支持部材は、第2カップリングを有し、
前記第1カップリングと前記第2カップリングとの嵌合により、前記回転シャフトの前記回転がロックされる
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の回転シャフトロック装置。
【請求項9】
前記支持部材は、第3カップリングと、前記第3カップリングに対して相対移動可能な前記第2カップリングとを有し、
前記駆動装置は、前記第2カップリングが、前記第1カップリングおよび前記第3カップリングの両方に篏合するように、前記第2カップリングを移動させる第2駆動装置を含む
請求項8に記載の回転シャフトロック装置。
【請求項10】
前記内リングの移動ストロークは、前記第2カップリングの移動ストロークよりも小さい
請求項9に記載の回転シャフトロック装置。
【請求項11】
前記第2カップリングは、前記第1カップリングおよび前記第3カップリングよりも後方側に配置される
請求項9または10に記載の回転シャフトロック装置。
【請求項12】
前記第2駆動装置は、前記第2カップリングと前記第1カップリングとが嵌合した状態で、前記第2カップリング、前記回転シャフト、および、前記内リングを、一体的に前記第1方向に移動させる
請求項11に記載の回転シャフトロック装置。
【請求項13】
前記駆動装置は、前記回転シャフトに対し、前記第1方向とは反対の第2方向に第2押圧力を付与する第1駆動装置を含む
請求項12に記載の回転シャフトロック装置。
【請求項14】
回転シャフトを第1軸まわりに回転させる第1回転駆動装置と、
前記回転シャフトを囲むハウジングと、
回転シャフトロック装置と
を具備し、
前記回転シャフトロック装置は、
工具が取り付けられる取付部と、第1接触面とを有し、前記第1軸まわりを回転可能な前記回転シャフトと、
前記回転シャフトに支持される内リングと、外リングと、前記内リングと前記外リングとの間に配置される複数のボールとを有する第1アンギュラ玉軸受と、
前記第1接触面との接触により前記回転シャフトの回転をロックする第2接触面を有し、前記第1アンギュラ玉軸受を介して前記回転シャフトを回転可能に支持する支持部材と、
前記第1接触面が前記第2接触面に接触し、かつ、前記複数のボールに作用する予圧が減少されるように、前記回転シャフトおよび前記内リングを前記支持部材および前記外リングに対して前記第1軸に平行な第1方向に相対移動させる駆動装置と
を備える
加工ヘッド。
【請求項15】
回転シャフトロック装置と、回転シャフトを第1軸まわりに回転させる第1回転駆動装置と、前記回転シャフトを囲むハウジングとを有する加工ヘッドと、
ワークを保持するワーク保持装置と、
前記加工ヘッドを、前記ワーク保持装置に対して相対移動させる加工ヘッド駆動装置と、
制御装置と
を具備し、
前記回転シャフトロック装置は、
工具が取り付けられる取付部と、第1接触面とを有し、前記第1軸まわりを回転可能な前記回転シャフトと、
前記回転シャフトに支持される内リングと、外リングと、前記内リングと前記外リングとの間に配置される複数のボールとを有する第1アンギュラ玉軸受と、
前記第1接触面との接触により前記回転シャフトの回転をロックする第2接触面を有し、前記第1アンギュラ玉軸受を介して前記回転シャフトを回転可能に支持する支持部材と、
前記回転シャフトおよび前記内リングを、前記支持部材および前記外リングに対して、前記第1軸に平行な第1方向に相対移動させる駆動装置と
を備え、
前記ワーク保持装置は、
前記ワークを保持するワーク保持具と、
前記ワーク保持具を第2軸まわりに回転可能に支持する第2支持部材と、
前記ワーク保持具を前記第2軸まわりに回転させる第2回転駆動装置と
を備え、
前記制御装置が前記加工ヘッド駆動装置に第1制御信号を送信すると、前記加工ヘッド駆動装置は、前記加工ヘッドを前記ワーク保持装置に対して相対移動させ、
前記制御装置が前記第1回転駆動装置に第2制御信号を送信すると、前記第1回転駆動装置は、前記回転シャフトを前記第1軸まわりに回転させ、
前記制御装置が前記第2回転駆動装置に第3制御信号を送信すると、前記第2回転駆動装置は、前記ワーク保持具を前記第2軸まわりに回転させ、
前記制御装置が前記駆動装置に第4制御信号を送信すると、前記駆動装置は、前記第1接触面が前記第2接触面に接触し、かつ、前記複数のボールに作用する予圧が減少されるように、前記回転シャフトおよび前記内リングを前記支持部材および前記外リングに対して前記第1方向に相対移動させる
複合加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転シャフトロック装置、加工ヘッド、および、複合加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械における主軸(換言すれば、スピンドル)を固定可能な主軸装置が知られている。
【0003】
関連する技術として、特許文献1には、工作機械における主軸装置が開示されている。特許文献1に記載の主軸装置は、前端壁の後方に配置された結合部材と、主軸外面に設けられたフランジに配置された結合部材との間の噛み合いにより、主軸の固定が行われる。特許文献1に記載の主軸装置は、ベアリングケースを後向きに加圧しうる第2流体圧手段と、ベアリングケースを前向きに加圧しうる第3流体圧手段を備える。特許文献1に記載の主軸装置では、ベアリングケースに作用する前向きの加圧力と、ベアリングケースに作用する後向きの加圧力とは同じ大きさで、向きが逆である。このため、主軸が固定されるときに、ベアリングに負荷が作用することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−52932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、回転シャフトの回転がロックされた状態において、アンギュラ玉軸受のボールに作用する負荷が低減される回転シャフトロック装置、加工ヘッド、および、複合加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施形態における回転シャフトロック装置は、工具が取り付けられる取付部と、第1接触面とを有し、第1軸まわりを回転可能な回転シャフトと、前記回転シャフトに支持される内リングと、外リングと、前記内リングと前記外リングとの間に配置される複数のボールとを有する第1アンギュラ玉軸受と、前記第1接触面との接触により前記回転シャフトの回転をロックする第2接触面を有し、前記第1アンギュラ玉軸受を介して前記回転シャフトを回転可能に支持する支持部材と、記第1接触面が前記第2接触面に接触し、かつ、前記複数のボールに作用する予圧が減少されるように、前記回転シャフトおよび前記内リングを前記支持部材および前記外リングに対して前記第1軸に平行な第1方向に相対移動させる駆動装置と、を具備する。
【0007】
いくつかの実施形態における加工ヘッドは、回転シャフトを第1軸まわりに回転させる第1回転駆動装置と、前記回転シャフトを囲むハウジングと、回転シャフトロック装置とを具備する。前記回転シャフトロック装置は、工具が取り付けられる取付部と、第1接触面とを有し、前記第1軸まわりを回転可能な前記回転シャフトと、前記回転シャフトに支持される内リングと、外リングと、前記内リングと前記外リングとの間に配置される複数のボールとを有する第1アンギュラ玉軸受と、前記第1接触面との接触により前記回転シャフトの回転をロックする第2接触面を有し、前記第1アンギュラ玉軸受を介して前記回転シャフトを回転可能に支持する支持部材と、前記第1接触面が前記第2接触面に接触し、かつ、前記複数のボールに作用する予圧が減少されるように、前記回転シャフトおよび前記内リングを前記支持部材および前記外リングに対して前記第1軸に平行な第1方向に相対移動させる駆動装置と、を備える。
【0008】
いくつかの実施形態における複合加工機は、回転シャフトロック装置と、回転シャフトを第1軸まわりに回転させる第1回転駆動装置と、前記回転シャフトを囲むハウジングとを有する加工ヘッドと、ワークを保持するワーク保持装置と、前記加工ヘッドを、前記ワーク保持装置に対して相対移動させる加工ヘッド駆動装置と、制御装置と、を具備する。前記回転シャフトロック装置は、工具が取り付けられる取付部と、第1接触面とを有し、前記第1軸まわりを回転可能な前記回転シャフトと、前記回転シャフトに支持される内リングと、外リングと、前記内リングと前記外リングとの間に配置される複数のボールとを有する第1アンギュラ玉軸受と、前記第1接触面との接触により前記回転シャフトの回転をロックする第2接触面を有し、前記第1アンギュラ玉軸受を介して前記回転シャフトを回転可能に支持する支持部材と、前記回転シャフトおよび前記内リングを、前記支持部材および前記外リングに対して、前記第1軸に平行な第1方向に相対移動させる駆動装置と、を備える。前記ワーク保持装置は、前記ワークを保持するワーク保持具と、前記ワーク保持具を第2軸まわりに回転可能に支持する第2支持部材と、前記ワーク保持具を前記第2軸まわりに回転させる第2回転駆動装置と、を備える。前記制御装置が前記加工ヘッド駆動装置に第1制御信号を送信すると、前記加工ヘッド駆動装置は、前記加工ヘッドを前記ワーク保持装置に対して相対移動させる。前記制御装置が前記第1回転駆動装置に第2制御信号を送信すると、前記第1回転駆動装置は、前記回転シャフトを前記第1軸まわりに回転させる。前記制御装置が前記第2回転駆動装置に第3制御信号を送信すると、前記第2回転駆動装置は、前記ワーク保持具を前記第2軸まわりに回転させる。前記制御装置が前記駆動装置に第4制御信号を送信すると、前記駆動装置は、前記第1接触面が前記第2接触面に接触し、かつ、前記複数のボールに作用する予圧が減少されるように、前記回転シャフトおよび前記内リングを前記支持部材および前記外リングに対して前記第1方向に相対移動させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、回転シャフトの回転がロックされた状態において、アンギュラ玉軸受のボールに作用する負荷が低減される回転シャフトロック装置、加工ヘッド、および、複合加工機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施形態における加工ヘッドの一部を模式的に示す概略断面図である。
図2図2は、第1の実施形態における加工ヘッドの一部を模式的に示す概略断面図である。
図3図3は、第1アンギュラ玉軸受の一部分の周辺を模式的に示す概略拡大断面図である。
図4図4は、第1アンギュラ玉軸受の一例を模式的に示す概略断面図である。
図5図5は、第1の実施形態における加工ヘッドを模式的に示す概略断面図である。
図6図6は、図5において円A1で示される部分の拡大図である。
図7図7は、図5において円A2で示される部分の拡大図である。
図8図8は、第1の実施形態における加工ヘッドを模式的に示す概略断面図である。
図9図9は、図8において円A3で示される部分の拡大図である。
図10図10は、第2の実施形態における加工ヘッドを模式的に示す概略断面図である。
図11図11は、図10において円A4で示される部分の拡大図である。
図12図12は、第1カップリングと第2カップリングとの間の嵌合が解除されている状態を示す模式図である。
図13図13は、第1カップリングの一例を模式的に示す概略斜視図である。
図14図14は、第2の実施形態における加工ヘッドを模式的に示す概略断面図である。
図15図15は、図14において円A5で示される部分の拡大図である。
図16図16は、第1カップリングと第2カップリングとが嵌合している状態を示す模式図である。
図17図17は、第3の実施形態における加工ヘッドを模式的に示す概略断面図である。
図18図18は、図17において円A6で示される部分の拡大図である。
図19図19は、第1カップリングと第2カップリングとの間の嵌合が解除されている状態を示す模式図である。
図20図20は、第3の実施形態における加工ヘッドを模式的に示す概略断面図である。
図21図21は、図20において円A7で示される部分の拡大図である。
図22図22は、第1カップリングおよび第3カップリングと、第2カップリングとが嵌合している状態を示す模式図である。
図23図23は、第4の実施形態における加工ヘッドを模式的に示す概略断面図である。
図24図24は、図23において円A8で示される部分の拡大図である。
図25図25は、第4の実施形態における加工ヘッドを模式的に示す概略断面図である。
図26図26は、図25において円A9で示される部分の拡大図である。
図27図27は、第1カップリングおよび第3カップリングの一例を示す模式図である。
図28図28は、第2カップリングの一例を示す模式図である。
図29図29は、第5の実施形態における複合加工機を模式的に示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、いくつかの実施形態における加工ヘッド1、回転シャフトロック装置10、および、複合加工機100について説明する。なお、以下の実施形態の説明において、同一の機能を有する部位、部材については同一の符号を付し、同一の符号が付された部位、部材についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1乃至図9を参照して、第1の実施形態における加工ヘッド1A、および、回転シャフトロック装置10Aについて説明する。図1および図2は、第1の実施形態における加工ヘッド1Aの一部を模式的に示す概略断面図である。なお、図1は、回転シャフト2が第1軸AX1まわりに回転可能な状態を示し、図2は、回転シャフト2の回転がロックされた状態を示す。図3は、第1アンギュラ玉軸受3の一部分の周辺を模式的に示す概略拡大断面図である。図4は、第1アンギュラ玉軸受3の一例を模式的に示す概略断面図である。図5は、第1の実施形態における加工ヘッド1Aを模式的に示す概略断面図である。図6は、図5において一点鎖線の円A1で示される部分の拡大図である。図7は、図5において一点鎖線の円A2で示される部分の拡大図である。図8は、第1の実施形態における加工ヘッド1Aを模式的に示す概略断面図である。図9は、図8において一点鎖線の円A3で示される部分の拡大図である。なお、図5および図6は、回転シャフト2が第1軸AX1まわりに回転可能な状態を示し、図8および図9は、回転シャフト2の回転がロックされた状態を示す。
【0013】
第1の実施形態における加工ヘッド1Aは、回転シャフト2の回転をロック可能な回転シャフトロック装置10Aと、回転シャフト2を囲むハウジングHとを備える。回転シャフト2の回転は、加工ヘッド1Aが有する第1回転駆動装置7(必要であれば、図5を参照。)によって行われる。また、回転シャフト2の回転のロックは、回転シャフト2の第1接触面C1を支持部材4の第2接触面C2に接触させることにより行われる(必要であれば、図2あるいは図9を参照。)。
【0014】
続いて、回転シャフトロック装置10Aについて説明する。
【0015】
図1に記載の例において、回転シャフトロック装置10Aは、回転シャフト2と、第1アンギュラ玉軸受3と、支持部材4と、駆動装置5とを具備する。
【0016】
回転シャフト2は、工具(例えば、ミル工具または旋削工具)が取り付けられる取付部22と、支持部材4の第2接触面C2に接触可能な第1接触面C1とを有する。
【0017】
回転シャフト2は、第1軸AX1まわりを回転可能である。図1に記載の例では、回転シャフト2は、回転シャフト本体20と、回転シャフト本体20の内側に配置される取付部22とを有する。図1に記載の例では、回転シャフト2は、複数の部品のアセンブリによって構成されている。
【0018】
回転シャフト2は、先端部21と、後端部とを備える。図1に記載の例では、回転シャフト2の先端部21に、上述の取付部22が設けられる。また、回転シャフト2の先端部21には、第1アンギュラ玉軸受3が配置される。
【0019】
第1アンギュラ玉軸受3は、内リング31と、外リング33と、複数のボール35(換言すれば、第1のボール群)とを有する。
【0020】
内リング31および外リング33からボール35に予圧が作用している状態において、内リング31とボール35との間の接触点E1と、外リング33とボール35との間の接触点E2とを結ぶ直線は、第1アンギュラ玉軸受3のラジアル方向DR3に対して傾斜する。図1に記載の例では、接触点E1は、接触点E2よりも前方に位置する。なお、本明細書において、「前方」とは、回転シャフト2の後端から回転シャフト2の先端に向かう方向を意味する。また、本明細書において、「後方」とは、回転シャフト2の先端から回転シャフト2の後端に向かう方向を意味する。
【0021】
内リング31は、回転シャフト2に支持される。より具体的には、内リング31は、回転シャフト2に固定される。図1に記載の例では、内リング31は、回転シャフト2の先端部21の周囲に配置されている。
【0022】
外リング33は、支持部材4に支持される。より具体的には、外リング33は、支持部材4に固定される。
【0023】
複数のボール35(換言すれば、第1のボール群)は、内リング31と外リング33との間に配置される。
【0024】
図1に記載の例では、内リング31は、外リング33に対して第1軸AX1に平行な方向に相対移動可能である。内リング31が外リング33に対して第1軸AX1に平行な方向に相対移動すると、複数のボール35に作用する予圧(換言すれば、複数のボール35が内リング31および外リング33から受ける予圧)が変化する。
【0025】
例えば、図1に記載の例において、内リング31が外リング33に対して第1軸AX1に平行な第1方向DR1に相対移動するとき、複数のボール35が内リング31および外リング33から受ける予圧は減少する(図2を参照。)。他方、図2に記載の例において、内リング31が外リング33に対して第1方向DR1とは反対の第2方向DR2に相対移動するとき、複数のボール35が内リング31および外リング33から受ける予圧は増加する。
【0026】
第1アンギュラ玉軸受3は、複数のアンギュラ玉軸受構造体30を有していてもよい。各アンギュラ玉軸受構造体30は、内リング31と、外リング33と、複数のボール35とを有する。図1に記載の例では、複数のアンギュラ玉軸受構造体30は、第1方向DR1に平行な方向に沿って配置されている。図1に記載の例では、第1アンギュラ玉軸受3は、第1方向DR1に平行な方向に沿って配置される複数のアンギュラ玉軸受構造体30で構成されている。代替的に、第1アンギュラ玉軸受3は、1つのアンギュラ玉軸受構造体30で構成されていてもよい。
【0027】
支持部材4は、第1接触面C1に接触可能な第2接触面C2を有する。支持部材4の第2接触面C2に、回転シャフト2の第1接触面C1が接触することにより、回転シャフト2の第1軸AX1まわりの回転がロックされる(図2を参照。)。また、第1接触面C1と第2接触面C2とが離間することにより、回転シャフト2の第1軸AX1まわりの回転が許容される(図1を参照。)。
【0028】
支持部材4は、第1アンギュラ玉軸受3を介して、回転シャフト2を回転可能に支持する。図1に記載の例では、支持部材4は、前方側の端壁である第1端壁45と、第1アンギュラ玉軸受3を支持する第1ブロック46と、回転シャフト2の少なくとも中間部24を覆う側壁47とを備える。図1に記載の例では、支持部材4は、複数の部品のアセンブリによって構成されている。
【0029】
駆動装置5は、回転シャフト2および内リング31を、支持部材4および外リング33に対して、第1軸AX1に平行な方向に相対移動させる。図1に記載の例において、回転シャフト2および内リング31は、一体的に、支持部材4および外リング33に対して相対移動可能である。駆動装置5としては、ある部材を他の部材に対して相対移動させることが可能な任意の装置を採用することができる。
【0030】
図1に記載の例において、駆動装置5は、第1接触面C1が第2接触面C2に接触するように、回転シャフト2を支持部材4に対して第1軸AX1に平行な第1方向DR1に相対移動させることが可能である。第1接触面C1が第2接触面C2に接触することにより、回転シャフト2の回転がロックされる(図2を参照。)。
【0031】
また、図1に記載の例において、駆動装置5は、複数のボール35に作用する予圧(換言すれば、複数のボール35が、内リング31および外リング33から受ける予圧)が減少されるように、内リング31を外リング33に対して第1方向DR1に相対移動させることが可能である。なお、図1および図2に記載の例において、駆動装置5による内リング31の移動は、駆動装置5が、内リング31を支持する回転シャフト2を移動させることによって行われる。
【0032】
図1に記載の例では、駆動装置5は、回転シャフト2および内リング31を、支持部材4および外リング33に対して、第1方向DR1に相対移動させることにより、回転シャフト2の回転が許容されるロック解除状態(より具体的には、第1接触面C1が第2接触面C2から離間した状態)から、回転シャフト2の回転がロックされるロック状態(より具体的には、第1接触面C1が第2接触面C2に接触した状態)に切り替え可能である。ロック状態において、複数のボール35に作用する第1予圧(換言すれば、複数のボール35が内リング31および外リング33から受ける第1予圧)は、ロック解除状態において、複数のボール35に作用する第2予圧(換言すれば、複数のボール35が内リング31および外リング33から受ける第2予圧)よりも小さい。第1予圧は、実質的にゼロであってもよい。
【0033】
なお、本明細書において、「ロック解除状態」とは、回転シャフト2が第1軸AX1まわりを回転可能な状態のことを意味し、「ロック状態」とは、回転シャフト2が第1軸AX1まわりを回転不能な状態を意味する。
【0034】
第1の実施形態における回転シャフトロック装置10A、および、第1の実施形態における加工ヘッド1Aでは、駆動装置5が、回転シャフト2および内リング31を、支持部材4および外リング33に対して、第1方向DR1に相対移動させることにより、回転シャフト2の回転のロックと、複数のボール35に作用する予圧の減少との両方が実行される。こうして、回転シャフト2の回転がロックされた状態において、第1アンギュラ玉軸受3の複数のボール35に作用する負荷が低減される。
【0035】
さらに、回転シャフト2および内リング31の、支持部材4および外リング33に対する第1方向DR1への相対移動により、内リング31および外リング33に対して複数のボール35の各々が任意の方向(換言すれば、あらゆる方向)に相対移動することを許容する空間G(図2を参照。)が形成されるようにしてもよい。
【0036】
図3には、回転シャフト2および内リング31の支持部材4および外リング33に対する第1方向DR1への相対移動により、複数のボール35のうちの1つのボール(以下、「第1ボール35−1」という。)が、内リング31および外リング33に対して、任意の方向に相対移動可能とされた様子が示されている。図3において、内リング31の外面31n(より具体的には、後述の第1曲面31c)および外リング33の内面33n(より具体的には、後述の第2曲面33c)の両方に接する仮想球面Q(図3において、一点鎖線で示される円を参照。)は、第1ボール35−1の直径よりも大きい。この場合、当該仮想球面Qの内側の空間は、内リング31および外リング33に対して第1ボール35−1が任意の方向(換言すれば、あらゆる方向)に相対移動することを許容する空間Gとして機能する。当該空間Gは、複数のボール35の各々に対して形成される。なお、各々のボール35に対して形成される当該空間Gの形状が、真球形状に限定されないことは言うまでもない。
【0037】
回転シャフト2の回転がロックされた状態において、複数のボール35の各々の移動が許容されることは、第1アンギュラ玉軸受3の内リング31から複数のボール35に作用する負荷が、外リング33に伝達されないことを意味する。より具体的には、回転シャフト2の回転がロックされた状態において、第1アンギュラ玉軸受3の内リング31から複数のボール35に作用するアキシャル方向の負荷(換言すれば、第2方向DR2の負荷)は、外リング33に伝達されず、第1アンギュラ玉軸受3の内リング31から複数のボール35に作用するラジアル方向の負荷(換言すれば、第2方向DR2に垂直な方向の負荷)は、外リング33に伝達されない。
【0038】
例えば、回転シャフト2の回転がロックされた状態(図2を参照。)で、回転シャフト2の取付部22に取り付けられた旋削工具を用いてワークを旋削する場合を想定する。この場合、回転シャフト2の振動に起因して、複数のボール35とリング(31、33)との間の接触面にフレッチング(換言すれば、微小振動に起因する接触面の摩耗)が生じやすい。これに対し、第1の実施形態では、回転シャフト2の回転がロックされた状態において、複数のボール35に作用する予圧が低減されているため、上述のフレッチングが抑制される。典型的には、内リング31から複数のボール35に作用する負荷が外リング33へ伝達されなくなるため、上述のフレッチングがさらに抑制される。また、フレッチングが抑制されることにより、回転シャフト2の耐久寿命が長くなり、回転シャフト2を含む装置の信頼性が向上する。また、複数のボール35とリング(31、33)との間の接触面のフレッチングが抑制された状態に維持されることにより、回転シャフト2を第1軸AX1まわりに高速回転させることが許容される。換言すれば、回転シャフト2が高速回転で使用される場合であっても、回転シャフト2の耐久寿命が十分に確保される。
【0039】
図4に記載の例では、内リング31と外リング33との間の空間SPにオイルが存在する。当該オイルは、例えば、第1アンギュラ玉軸受3(より具体的には、外リング33)に設けられたオイル供給孔33hから供給される。代替的に、あるいは、付加的に、内リング31と外リング33との間の空間SPに、グリースが封入されてもよい。
【0040】
回転シャフト2の回転がロックされた状態では、内リング31が外リング33に対して相対回転しない。このとき、内リング31および外リング33からボール35に大きな予圧が作用していると、ボール35の周囲には油膜が十分に形成されない。しかし、図2に記載の例では、回転シャフト2の回転がロックされた状態において、ボール35に作用する予圧が低減されている。よって、ボール35の周囲を、オイルによって効果的に保護することができる。また、ボール35の周囲がオイルによって保護されることにより、ボール35とリング(31、33)との間の接触面にフレッチングが生じることがより一層効果的に抑制される。
【0041】
(任意付加的な構成)
続いて、図1乃至図9を参照して、第1の実施形態における回転シャフトロック装置10A、あるいは、第1の実施形態における加工ヘッド1Aにおいて採用可能な任意付加的な構成について説明する。
【0042】
(回転シャフト2のロックの解除)
図2に記載の例において、駆動装置5が、回転シャフト2を、支持部材4に対して、第1方向DR1とは反対の第2方向DR2に相対移動させることにより、回転シャフト2の第1接触面C1が、支持部材4の第2接触面C2から離間する(図1を参照。)。こうして、回転シャフト2のロックが解除される。また、駆動装置5が、内リング31を、外リング33に対して、第2方向DR2に相対移動させることにより、複数のボール35に作用する予圧が増加する(図1を参照。)。なお、図1および図2に記載の例において、駆動装置5による内リング31の移動は、駆動装置5が、内リング31を支持する回転シャフト2を移動させることによって行われる。
【0043】
図2に記載の例では、駆動装置5は、回転シャフト2および内リング31を、支持部材4および外リング33に対して、第2方向DR2に相対移動させることにより、回転シャフト2の状態を、ロック状態(図2を参照。)からロック解除状態(図1を参照。)に切り替え可能である。ロック解除状態において、複数のボール35に作用する第2予圧は、ロック状態において、複数のボール35に作用する第1予圧よりも大きい。
【0044】
図2に記載の例では、駆動装置5が、回転シャフト2および内リング31を、支持部材4および外リング33に対して、第2方向DR2に相対移動させることにより、回転シャフト2のロックの解除と、複数のボール35に作用する予圧の増加との両方が実行される。このため、回転シャフト2の回転が許容されるロック解除状態において、回転シャフト2に作用するアキシャル荷重が、第1アンギュラ玉軸受3によって好適に支持される。
【0045】
例えば、ロック解除状態(図1を参照。)で、回転シャフト2を第1軸AX1まわりに回転させることにより、回転シャフト2の取付部に取り付けられたミル工具を用いてワークを加工する場合を想定する。この場合、ミル工具から回転シャフト2が受けるアキシャル荷重が第1アンギュラ玉軸受3によって好適に支持される。
【0046】
(第1アンギュラ玉軸受3)
図4に記載の例では、第1アンギュラ玉軸受3は、内リング31と、外リング33と、複数のボール35とを有する。第1アンギュラ玉軸受3は、隣接する2つのボール35間の間隔を保持する保持部材37(より具体的には、リング状の保持部材)を有していてもよい。保持部材37には、複数のボール35をそれぞれ受容する複数の貫通孔37hが形成されている。
【0047】
図4に記載の例では、内リング31は、第1肩部310sを有し、外リング33は、第2肩部330sを有する。図4に記載の例において、内リング31が外リング33に対して第1方向DR1に相対移動するとき、第1肩部310sは第2肩部330sから離れる方向に移動する。第1肩部310sが第2肩部330sから離れる方向に移動することにより、複数のボール35に作用する予圧(換言すれば、複数のボール35が第1肩部310sおよび第2肩部330sから受ける予圧)は減少する。
【0048】
図4に記載の例では、第1肩部310sの後方側の面は、複数のボール35に斜め後ろ向きの予圧を付与する第1曲面31cであり、第2肩部330sの前方側の面は、複数のボール35に斜め前向きの予圧を付与する第2曲面33cである。内リング31が外リング33に対して第1方向DR1に相対移動するとき、第1曲面31cは第2曲面33cから離れる方向に移動する。
【0049】
図1に記載の例では、第1アンギュラ玉軸受3は、回転シャフト2の先端から回転シャフト2の後端に向かう方向のアキシャル荷重を支持する正面配置を有する。なお、本明細書において、「正面配置」とは、回転シャフト2の先端から回転シャフト2の後端に向かう方向のアキシャル荷重を支持可能な配置を意味する。典型的には、正面配置を有する第1アンギュラ玉軸受3において、内リング31の第1肩部310sは、外リング33の第2肩部330sよりも前方に配置される。
【0050】
図5に記載の例では、第1アンギュラ玉軸受3は、第1の軸受ユニットである第1のアンギュラ玉軸受構造体30aを有する。第1のアンギュラ玉軸受構造体30aは、回転シャフト2の先端から回転シャフト2の後端に向かう方向のアキシャル荷重を支持する正面配置を有する。
【0051】
図6に記載の例では、第1のアンギュラ玉軸受構造体30aは、内リング31aと、外リング33aと、内リング31aと外リング33aとの間に配置される複数のボール35aとを有する。
【0052】
第1のアンギュラ玉軸受構造体30aの内リング31aは、第1肩部310sを有し、外リング33aは、第1肩部310sに対向するカウンタボア330t(換言すれば、肩落とし部)を有する。また、第1のアンギュラ玉軸受構造体30aの外リング33aは、第2肩部330sを有し、内リング31aは、第2肩部330sに対向するカウンタボア310t(換言すれば、肩落とし部)を有する。
【0053】
図5に記載の例では、第1アンギュラ玉軸受3は、第2の軸受ユニットである第2のアンギュラ玉軸受構造体30bを有する。第2のアンギュラ玉軸受構造体30bは、第1のアンギュラ玉軸受構造体30aよりも第2方向DR2側に配置されている。第2のアンギュラ玉軸受構造体30bは、回転シャフト2の先端から回転シャフト2の後端に向かう方向のアキシャル荷重を支持する正面配置を有する。
【0054】
図6に記載の例では、第2のアンギュラ玉軸受構造体30bは、内リング31bと、外リング33bと、内リング31bと外リング33bとの間に配置される複数のボール35bとを有する。
【0055】
図6に記載の例では、回転シャフト2の先端部21に配置される第1のアンギュラ玉軸受構造体30aが正面配置を有し、回転シャフト2の先端部21に配置される第2のアンギュラ玉軸受構造体30bが正面配置を有する。この場合、駆動装置5は、回転シャフト2、第1のアンギュラ玉軸受構造体30aの内リング31a、および、第2のアンギュラ玉軸受構造体30bの内リング31bを、支持部材4、第1のアンギュラ玉軸受構造体30aの外リング33a、および、第2のアンギュラ玉軸受構造体30bの外リング33bに対して、第1方向DR1に相対移動させることができる。また、当該相対移動により、複数のボール(35a、35b)に作用する予圧が低減された状態(典型的には、外リング33および内リング31に対して、複数のボール35の各々が、任意の方向に相対移動可能とされた状態)で、第1接触面C1を第2接触面C2に接触させることができる。
【0056】
図6に記載の例では、回転シャフト2の先端部21に配置される第1アンギュラ玉軸受3が、正面配置を有する2つのアンギュラ玉軸受構造体(30a、30b)を有する。代替的に、回転シャフト2の先端部21に配置される第1アンギュラ玉軸受3は、正面配置を有する3つ以上のアンギュラ玉軸受構造体を有していてもよい。
【0057】
図6に記載の例では、第1のアンギュラ玉軸受構造体30aの内リング31aと、第2のアンギュラ玉軸受構造体30bの内リング31bとの間に、内リング31aと内リング31bとの間の間隔を維持する第1スペーサー部材361が配置されている。また、第1のアンギュラ玉軸受構造体30aの外リング33aと、第2のアンギュラ玉軸受構造体30bの外リング33bとの間に、外リング33aと外リング33bとの間の間隔を維持する第2スペーサー部材362が配置されている。なお、これらのスペーサー部材(361、362)は、省略されても構わない。
【0058】
(回転シャフト2の取付部22に取り付けられる工具T)
図5に記載の例では、回転シャフト2の回転が許容される状態において、回転シャフト2の取付部22には、ミル工具T1が取り付けられている。他方、図8に記載の例では、回転シャフト2の回転がロックされる状態において、回転シャフト2の取付部22には、旋削工具T2が取り付けられている。ミル工具T1から旋削工具T2への交換、あるいは、旋削工具T2からミル工具T1への交換は、例えば、工具自動交換装置によって行われる。
【0059】
(駆動装置5)
図5に記載の例では、駆動装置5は、回転シャフト2および内リング31を、支持部材4および外リング33に対して、第1方向DR1に相対移動させることが可能である。第1方向DR1は、回転シャフト2の後端部26から回転シャフト2の先端部21に向かう方向である。図8に記載の例では、駆動装置5は、回転シャフト2および内リング31を、支持部材4および外リング33に対して、第2方向DR2に相対移動させることが可能である。第2方向DR2は、回転シャフト2の先端部21から回転シャフト2の後端部26に向かう方向である。
【0060】
図5に記載の例では、駆動装置5は、回転シャフト2を直接的または間接的に押圧する第1移動部材510を備える。第1移動部材510は、回転シャフト2を第1方向DR1に押圧可能である。また、第1移動部材510は、回転シャフト2を第2方向DR2に押圧可能である。
【0061】
図5に記載の例では、第1移動部材510は、第1アンギュラ玉軸受3よりも後方(より具体的には、第2方向DR2側)に配置されている。
【0062】
第1移動部材510が、第1アンギュラ玉軸受3よりも後方に配置される場合、第1アンギュラ玉軸受3よりも前方側の構造をシンプルにすることができる。その結果、回転シャフト2の先端と第1アンギュラ玉軸受3との間の距離を低減することができる。また、回転シャフト2の先端と第1アンギュラ玉軸受3との間の距離が低減されることにより、回転シャフト2のラジアル剛性が向上する。この場合、回転シャフト2に取り付けられたミル工具T1を、第1軸AX1まわりに安定的に回転させることができる。
【0063】
図5に記載の例では、駆動装置5は、第1移動部材510を移動させる第1駆動装置51を有する。また、図5に記載の例では、第1駆動装置51は、第1オイル室513と、第1オイル室513にオイルを供給する第1配管514とを有する。第1駆動装置51は、第1配管514内のオイルの流れの向きを制御する第1バルブV1を有していてもよい。
【0064】
図5に記載の例において、第1配管514から第1オイル室513にオイルが供給されると、第1移動部材510は、第1方向DR1に移動する。第1移動部材510が第1方向DR1に移動すると、第1移動部材510は、回転シャフト2を第1方向DR1に押圧する。図5に記載の例では、第1移動部材510は、油圧によって駆動される第1ピストン511を含む。第1移動部材510は、1つの部品によって構成されていてもよいし、複数の部品のアセンブリによって構成されていてもよい。
【0065】
図5に記載の例では、第1移動部材510は、回転シャフト2の後端部26に配置される第2アンギュラ玉軸受6を介して、回転シャフト2を押圧する。代替的に、第1移動部材510は、回転シャフト2を直接的に押圧するようにしてもよい。
【0066】
図7に記載の例では、第1移動部材510は、第1押圧部510aと、第2押圧部510bとを有する。図7に記載の例では、第1移動部材510が第1方向DR1に移動すると、第1移動部材510の第1押圧部510aは、第2アンギュラ玉軸受6を介して、回転シャフト2を第1方向DR1に押圧する。他方、第1移動部材510が第2方向DR2に移動すると、第1移動部材510の第2押圧部510bは、第2アンギュラ玉軸受6を介して、回転シャフト2を第2方向DR2に押圧する。
【0067】
図7に記載の例では、第1移動部材510(より具体的には、第1ピストン511)は、油圧を受ける受圧面511sを有する。また、図7に記載の例では、第1駆動装置51は、第1移動部材510の周囲に配置され、第1移動部材510の移動をガイドする複数の転動体517を有する。複数の転動体517は、第1移動部材510の外周面と、支持部材4の内周面との間に配置される。
【0068】
図7に記載の例では、第1駆動装置51は、第1移動部材510に付勢力を付与する第1付勢部材516(例えば、ばね)を有する。第1付勢部材516は、第1移動部材510を第2方向DR2に付勢する。図7に記載の例では、第1付勢部材516は、第1移動部材510と支持部材4との間に配置されている。図7に記載の例において、第1オイル室513から第1配管514を介してオイルが排出されると、第1付勢部材516の付勢力によって、第1移動部材510は第2方向DR2に移動する。第1移動部材510が第2方向DR2に移動すると、第1移動部材510は、回転シャフト2を第2方向DR2に押圧する。
【0069】
図8に記載の例において、第1付勢部材516から付勢力を受ける第1移動部材510は、回転シャフト2の第1接触面C1が支持部材4の第2接触面C2から離間し、かつ、第1アンギュラ玉軸受3の複数のボール35に作用する予圧が増加されるように、回転シャフト2および内リング31を、支持部材4および外リング33に対して、第2方向DR2に相対移動させる。こうして、回転シャフト2のロックが解除される。
【0070】
第1付勢部材516は、第1移動部材510、回転シャフト2、および、内リング31に、第2方向DR2(換言すれば、第1方向DR1とは反対方向)に付勢力を付与する。図5に記載の例では、回転シャフト2の回転が許容されるロック解除状態において、複数のボール35は、内リング31から、第1付勢部材516による付勢力の大きさに応じた予圧を受ける。また、駆動装置5が、第1付勢部材516による付勢力に抗して、回転シャフト2および内リング31を、支持部材4および外リング33に対して、第1方向DR1に相対移動させることにより、複数のボール35に作用する予圧が減少する。
【0071】
(第2アンギュラ玉軸受6)
図5に記載の例では、回転シャフトロック装置10Aは、回転シャフト2の後端部26に配置される第2アンギュラ玉軸受6を有する。図5に記載の例では、第2アンギュラ玉軸受6は、第2内リング61と、第2外リング63と、複数のボール65(換言すれば、第2のボール群)とを有する。
【0072】
第2内リング61は、回転シャフト2に支持される。より具体的には、第2内リング61は、回転シャフト2に固定される。図5に記載の例では、第2内リング61は、回転シャフト2の後端部26の周囲に配置されている。
【0073】
図5に記載の例では、第2外リング63は、第1移動部材510に支持される。より具体的には、第2外リング63は、第1移動部材510に固定される。
【0074】
複数のボール65(換言すれば、第2のボール群)は、第2内リング61と第2外リング63との間に配置される。
【0075】
図7に例示されるように、第2アンギュラ玉軸受6は、複数のアンギュラ玉軸受構造体60を有していてもよい。各アンギュラ玉軸受構造体60は、第2内リング61と、第2外リング63と、複数のボール65とを有する。図7に記載の例では、第2アンギュラ玉軸受6は、第1方向DR1に平行な方向に沿って配置される複数のアンギュラ玉軸受構造体60で構成されている。代替的に、第2アンギュラ玉軸受6は、1つのアンギュラ玉軸受構造体60で構成されていてもよい。
【0076】
図7に記載の例では、第2アンギュラ玉軸受6は、回転シャフト2の後端から回転シャフト2の先端に向かう方向のアキシャル荷重(換言すれば、第1方向DR1のアキシャル荷重)を支持する背面配置を有する。後述の第2の実施形態乃至第5の実施形態においても、回転シャフト2の後端部26に配置される第2アンギュラ玉軸受6は、背面配置を有することが好ましい。なお、本明細書において、「背面配置」とは、回転シャフト2の後端から回転シャフト2の先端に向かう方向のアキシャル荷重を支持可能な配置を意味する。
【0077】
典型的には、背面配置を有する第2アンギュラ玉軸受6において、第2内リング61の第3肩部610sは、第2外リング63の第4肩部630sよりも後方に配置される。第2アンギュラ玉軸受6の複数のボール65が、第3肩部610sと第4肩部630sとによって挟まれることにより、当該複数のボール65には予圧が作用する。
【0078】
図7に記載の例では、回転シャフト2が、第1方向DR1に平行な方向に移動するとき、第2アンギュラ玉軸受6の第2内リング61、および、第2アンギュラ玉軸受6の第2外リング63は、回転シャフト2とともに第1方向DR1に平行な方向に移動する。換言すれば、回転シャフト2が、第1方向DR1に平行な方向に移動するとき、第2アンギュラ玉軸受6の全体が、回転シャフト2とともに第1方向DR1に平行な方向に移動する。この点は、回転シャフト2が第1方向DR1に平行な方向に移動するとき、第1アンギュラ玉軸受3の外リング33が第1方向DR1に平行な方向に移動しないことと対照的である。
【0079】
以上のとおり、図5に記載の例では、駆動装置5は、第2アンギュラ玉軸受6の全体、回転シャフト2、および、第1アンギュラ玉軸受3の内リング31を、支持部材4および第1アンギュラ玉軸受3の外リング33に対して、第1方向DR1に相対移動させることが可能である。
【0080】
図5に記載の例では、駆動装置5が、回転シャフト2の状態を、ロック解除状態からロック状態に切り替えるとき、複数のボール35(換言すれば、第1のボール群)に作用する予圧は低減される。他方、駆動装置5が、回転シャフト2の状態を、ロック解除状態からロック状態に切り替えるとき、複数のボール65(換言すれば、第2のボール群)に作用する予圧は、低減されてもよいし、実質的に維持されてもよい。
【0081】
(内リング31の前端面31fと外リング33の前端面33f)
図9に記載の例では、回転シャフト2の回転がロックされた状態において、内リング31の前端面31fは、外リング33の前端面33fよりも前方(換言すれば、第1方向DR1)に位置する。他方、図6に記載の例では、回転シャフト2の回転が許容される状態において、内リング31の前端面31fの第1軸AX1に沿う方向における位置は、外リング33の前端面33fの第1軸AX1に沿う方向における位置と略一致している。
【0082】
(第1回転駆動装置7)
図5に記載の例では、加工ヘッド1Aは、回転シャフト2を第1軸AX1まわりに回転させる第1回転駆動装置7を備える。第1回転駆動装置7は、第1モータであってもよい。図5に記載の例では、第1回転駆動装置7(より具体的には、第1モータ)は、ステータ71と、ロータ73とを有する。この場合、ステータ71に電流が供給されると、電磁気的作用によって、ロータ73が第1軸AX1まわりを回転する。図5に記載の例では、ステータ71は支持部材4に固定され、ロータ73は回転シャフト2に固定されている。
【0083】
図5に記載の例では、ロータ73は、回転シャフト2の中間部24に配置されている。図5に記載の例では、ロータ73は、第1アンギュラ玉軸受3よりも後方に配置され、第2アンギュラ玉軸受6よりも前方に配置されている。
【0084】
図5に記載の例では、回転シャフト2を押圧する第1移動部材510は、ステータ71よりも後方に配置されている。代替的に、回転シャフト2を押圧する第1移動部材510は、ステータ71よりも前方に配置されていてもよい。この場合、第1移動部材510は、第2アンギュラ玉軸受6を介さずに、直接的に回転シャフト2を押圧する。
【0085】
(回転シャフト2の回転をロックするロック機構C)
図6に記載の例では、回転シャフトロック装置10Aは、回転シャフト2の回転をロックするロック機構Cを備える。図6に記載の例では、ロック機構Cは、回転シャフト2の第1接触面C1と、支持部材4の第2接触面C2とを有する。第1接触面C1は、第1軸AX1に対して傾斜する第1傾斜面M1を有し、第2接触面C2は、第1軸AX1に対して傾斜する第2傾斜面M2を有する。
【0086】
図9に記載の例では、第1傾斜面M1と第2傾斜面M2とが互いに接触した状態が、ロック状態に対応する。また、図6に記載の例では、第1傾斜面M1と第2傾斜面M2とが互いに離間した状態が、ロック解除状態に対応する。
【0087】
図5に記載の例において、駆動装置5が、回転シャフト2を第1方向DR1に移動させると、複数のボール35に作用する予圧が減少するように内リング31が外リング33に対して相対移動し、かつ、第1傾斜面M1が第2傾斜面M2を押圧する。こうして、回転シャフト2がロックされる。
【0088】
また、図8に記載の例において、駆動装置5が、回転シャフト2を第2方向DR2に移動させると、複数のボール35に作用する予圧が増加するように内リング31が外リング33に対して相対移動し、かつ、第1傾斜面M1が第2傾斜面M2から離間する。こうして、回転シャフト2のロックが解除される。
【0089】
図6に記載の例では、第1傾斜面M1および第2傾斜面M2は、第1アンギュラ玉軸受3よりも前方側(換言すれば、第1方向DR1側)に配置されている。
【0090】
図6に記載の例では、第1傾斜面M1は、回転シャフト2の外周面に形成された環状の傾斜面である。図6に記載の例では、第1傾斜面M1の外径は、前方に向かうにつれて(換言すれば、回転シャフト2の先端2aに向かうにつれて)、小さくなる。
【0091】
図6に記載の例では、第2傾斜面M2は、支持部材4の内周面に形成された環状の傾斜面である。第2傾斜面M2は、支持部材4の第1端壁45に設けられている。図6に記載の例では、第2傾斜面M2の内径は、前方に向かうにつれて(換言すれば、回転シャフト2の先端2aに向かうにつれて)、小さくなる。
【0092】
(回転シャフト2)
図5に記載の例では、回転シャフト2は、回転シャフト本体20と、工具Tが取り付けられる取付部22と、取付部22に連結された棒状部材28とを有する。図5に記載の例では、加工ヘッド1Aの取付部駆動装置8が棒状部材28を第1方向DR1に押圧すると、棒状部材28および取付部22は、回転シャフト本体20に対して第1方向DR1に相対移動する。この状態で、取付部22に取り付けられた工具Tを他の工具に交換することができる。工具が交換された後、回転シャフト2に配置された付勢部材29(例えば、皿ばね)が棒状部材28を第2方向DR2に押圧する。こうして、棒状部材28および取付部22は、回転シャフト本体20に対して第2方向DR2に相対移動する。
【0093】
図6に記載の例では、回転シャフト2の先端部21は、支持部材4の第1端壁45に形成された凸部45bに対向する凹部21bを有する。当該凹部21bと凸部45bとによって液体の侵入を防止するラビリンス構造が構成される。凹部21bと凸部45bとの間の隙間は、回転シャフト2が支持部材4に対して第1方向DR1に相対移動するときに増加する(図9を参照。)。
【0094】
(ハウジングH)
図5に記載の例では、ハウジングHは、少なくとも回転シャフト2の中間部24を覆う側壁47を有する。また、図5に記載の例では、ハウジングHは、第1端壁45を有する。図6に記載の例では、第1端壁45に第1孔部45hが形成されている。回転シャフト2は、当該第1孔部45hを通過するように配置される。図6に記載の例では、当該第1孔部45hの内面が、上述の第2接触面C2(より具体的には、第2傾斜面M2)として機能する。
【0095】
(第2の実施形態)
図10乃至図16を参照して、第2の実施形態における加工ヘッド1B、および、回転シャフトロック装置10Bについて説明する。図10は、第2の実施形態における加工ヘッド1Bを模式的に示す概略断面図である。図11は、図10において一点鎖線の円A4で示される部分の拡大図である。図12は、第1カップリング23と第2カップリング42との間の嵌合が解除されている状態を示す模式図である。図13は、第1カップリング23の一例を模式的に示す概略斜視図である。図14は、第2の実施形態における加工ヘッド1Bを模式的に示す概略断面図である。図15は、図14において一点鎖線の円A5で示される部分の拡大図である。図16は、第1カップリング23と第2カップリング42とが嵌合している状態を示す模式図である。
【0096】
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。他方、第2の実施形態では、第1の実施形態で説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。したがって、第2の実施形態において、明示的に説明をしなかったとしても、第1の実施形態において説明済みの事項を第2の実施形態に適用できることは言うまでもない。
【0097】
第2の実施形態では、回転シャフト2の回転をロックするロック機構Cの構造が、第1の実施形態におけるロック機構Cの構造とは異なる。その他の点では、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様である。第2の実施形態では、ロック機構Cを中心に説明し、ロック機構C以外の構成についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0098】
図10に例示されるように、第2の実施形態における回転シャフトロック装置10Bは、(1)工具Tが取り付けられる取付部22と、第1接触面C1とを有し、第1軸AX1まわりを回転可能な回転シャフト2と、(2)回転シャフト2に支持される内リング31と、外リング33と、内リング31と外リング33との間に配置される複数のボール35とを有する第1アンギュラ玉軸受3と、(3)第1接触面C1との接触により回転シャフト2の回転をロックする第2接触面C2を有し、第1アンギュラ玉軸受3を介して回転シャフト2を回転可能に支持する支持部材4と、(4)第1接触面C1が第2接触面C2に接触し、かつ、複数のボール35に作用する予圧が減少されるように、回転シャフト2および内リング31を支持部材4および外リングに対して第1軸AX1に平行な第1方向DR1に相対移動させる駆動装置5と、を具備する。
【0099】
また、第2の実施形態における加工ヘッド1Bは、回転シャフト2を第1軸AX1まわりに回転させる第1回転駆動装置7と、回転シャフト2を囲むハウジングHと、上述の回転シャフトロック装置10Bとを備える。
【0100】
よって、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0101】
(回転シャフト2の回転をロックするロック機構C)
図11に記載の例では、回転シャフトロック装置10Bは、回転シャフト2の回転をロックするロック機構Cを備える。ロック機構Cは、第1カップリング23および第2カップリング42を有する。図11に記載の例では、回転シャフト2が、第1カップリング23を有し、支持部材4が、第2カップリング42を有する。
【0102】
図12に記載の例では、第1カップリング23(すなわち、回転シャフト2側のカップリング)に、第1接触面C1が設けられている。第1接触面C1は、第1傾斜面M1を有する。また、図12に記載の例では、第2カップリング42(すなわち、支持部材4側のカップリング)に、第2接触面C2が設けられている。第2接触面C2は、第2傾斜面M2を有する。
【0103】
図11に記載の例では、第1カップリング23と第2カップリング42との嵌合により、回転シャフト2の回転がロックされる。第1カップリング23と第2カップリング42とが互いに篏合した状態が、ロック状態に対応し、第1カップリング23と第2カップリング42との間の篏合が解除された状態が、ロック解除状態に対応する。駆動装置5は、回転シャフト2の状態を、ロック状態とロック解除状態との間で切り替えることができる。
【0104】
より具体的には、図10に記載の例において、駆動装置5が、回転シャフト2を第1方向DR1に移動させると、複数のボール35に作用する予圧が減少するように内リング31が外リング33に対して相対移動する。また、駆動装置5が、回転シャフト2を第1方向DR1に移動させると、第1カップリング23と第2カップリング42とが互いに篏合する(図15を参照。)。こうして、回転シャフト2がロックされる。なお、図16に記載の例では、回転シャフト2の回転がロックされた状態において、第1カップリング23の第1接触面C1(より具体的には、第1傾斜面M1)は、第2カップリング42の第2接触面C2(より具体的には、第2傾斜面M2)に接触する。
【0105】
図15に記載の例では、回転シャフト2の回転がロックされた状態において、複数のボール35に作用する予圧は減少されている(典型的には、外リング33および内リング31に対して複数のボール35の各々が任意の方向に相対移動することを許容する空間が形成され、内リング31から複数のボール35に作用する負荷が、外リング33へ伝達されなくなっている。)。よって、回転シャフト2の回転がロックされた状態で回転シャフト2に取り付けられた旋削工具T2を用いてワークを旋削するときに、ボール35とリング(31、33)との間の接触面に、フレッチングが生じにくい。
【0106】
図14に記載の例において、駆動装置5が、回転シャフト2を第2方向DR2に移動させると、複数のボール35に作用する予圧が増加するように内リング31が外リング33に対して相対移動する。また、駆動装置5が、回転シャフト2を第2方向DR2に移動させると、第1カップリング23と第2カップリング42との間の篏合が解除される(図11を参照。)。こうして、支持部材4に対する回転シャフト2のロックが解除される。なお、図12に記載の例では、回転シャフト2のロックが解除された状態において、第1カップリング23の第1接触面C1は、第2カップリング42の第2接触面C2から離間している。
【0107】
図11に記載の例では、回転シャフト2が第1軸AX1まわりを回転可能な状態において、複数のボール35に作用する予圧は増加されている。よって、回転シャフト2に取り付けられたミル工具T1を用いてワークを加工するときに、ミル工具T1および回転シャフト2に作用するアキシャル荷重が、第1アンギュラ玉軸受3によって好適に支持される。
【0108】
図11に記載の例では、回転シャフト2は、回転シャフト本体20と、第1カップリング23とを有し、第1カップリング23は、締結部材27を介して、回転シャフト本体20に固定されている。図11に記載の例では、第1カップリング23は、第1アンギュラ玉軸受3よりも前方側に配置されている。
【0109】
図11に記載の例では、第2カップリング42は、第1カップリング23よりも前方側に配置されている。図11に記載の例では、第2カップリング42は、支持部材4の第1ブロック46に固定された固定カップリングである。第2カップリング42は、支持部材4の第1端壁45に設けられている。代替的に、第2カップリング42は、支持部材4の他の部分に設けられていてもよい。
【0110】
図12に記載の例では、第1カップリング23は、第2カップリング42に向かって突出する第1歯部23aを有する。図12に記載の例では、第1歯部23aは、第2カップリング42の凹部42bに受容される先端面230aを有する。図13に記載の例では、第1カップリング23の第1歯部23aは、第1接触面C1(より具体的には、第1傾斜面M1)を有する。図13に記載の例では、第1カップリング23の第1歯部23aの先端面230aの両側に、それぞれ、第1傾斜面M1が配置されている。
【0111】
図13に例示されるように、第1カップリング23は、複数の第1歯部23aと、複数の第1歯部23aが配置される第1環状体23cとを有していてもよい。図13に記載の例では、第1歯部23aは、第1環状体23cから第1方向DR1に突出している。
【0112】
図12に記載の例では、第2カップリング42は、第1カップリング23に向かって突出する第2歯部42aを有する。図12に記載の例では、第2カップリング42は、隣接する2つの第2歯部42aの間に形成された凹部42bを有する。図12に記載の例では、第2カップリング42の第2歯部42aは、第2接触面C2(より具体的には、第2傾斜面M2)を有する。
【0113】
第2カップリング42は、複数の第2歯部42aと、複数の第2歯部42aが配置される第2環状体とを有していてもよい。
【0114】
第2の実施形態では、第1カップリング23と第2カップリング42との篏合により、回転シャフト2の回転がロックされる。この場合、回転シャフト2の回転がロックされた状態での回転シャフト2の剛性が向上する。また、第1カップリング23と第2カップリング42とが篏合される場合、第1軸AX1まわりの回転方向における回転シャフト2の位置決め精度が向上する。よって、より高精度に旋削加工を行うことが可能となる。
【0115】
(第3の実施形態)
図17乃至図22を参照して、第3の実施形態における加工ヘッド1C、および、回転シャフトロック装置10Cについて説明する。図17は、第3の実施形態における加工ヘッド1Cを模式的に示す概略断面図である。図18は、図17において一点鎖線の円A6で示される部分の拡大図である。図19は、第1カップリング23と第2カップリング42との間の嵌合が解除されている状態を示す模式図である。図20は、第3の実施形態における加工ヘッド1Cを模式的に示す概略断面図である。図21は、図20において一点鎖線の円A7で示される部分の拡大図である。図22は、第1カップリング23および第3カップリング44と、第2カップリング42とが嵌合している状態を示す模式図である。
【0116】
第3の実施形態では、第1の実施形態および第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。他方、第3の実施形態では、第1の実施形態または第2の実施形態で説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。したがって、第3の実施形態において、明示的に説明をしなかったとしても、第1の実施形態または第2の実施形態において説明済みの事項を第3の実施形態に適用できることは言うまでもない。
【0117】
第3の実施形態では、回転シャフト2の回転をロックするロック機構Cの構造およびロック機構Cに付随する構成が、第1の実施形態および第2の実施形態におけるロック機構Cの構造およびロック機構Cに付随する構成とは異なる。その他の点では、第3の実施形態は、第1の実施形態または第2の実施形態と同様である。よって、第3の実施形態では、ロック機構Cおよびロック機構Cに付随する構成を中心に説明し、それ以外の構成についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0118】
図17に例示されるように、第3の実施形態における回転シャフトロック装置10Cは、(1)工具Tが取り付けられる取付部22と、第1接触面C1とを有し、第1軸AX1まわりを回転可能な回転シャフト2と、(2)回転シャフト2に支持される内リング31と、外リング33と、内リング31と外リング33との間に配置される複数のボール35とを有する第1アンギュラ玉軸受3と、(3)第1接触面C1との接触により回転シャフト2の回転をロックする第2接触面C2を有し、第1アンギュラ玉軸受3を介して回転シャフト2を回転可能に支持する支持部材4と、(4)第1接触面C1が第2接触面C2に接触し、かつ、複数のボール35に作用する予圧が減少されるように、回転シャフト2および内リング31を支持部材4および外リングに対して第1軸AX1に平行な第1方向DR1に相対移動させる駆動装置5と、を具備する。
【0119】
また、第3の実施形態における加工ヘッド1Cは、回転シャフト2を第1軸AX1まわりに回転させる第1回転駆動装置7と、回転シャフト2を囲むハウジングHと、上述の回転シャフトロック装置10Cとを備える。
【0120】
よって、第3の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0121】
(回転シャフト2の回転をロックするロック機構C)
図17に記載の例では、回転シャフトロック装置10Cは、回転シャフト2の回転をロックするロック機構Cを備える。ロック機構Cは、第1カップリング23、第2カップリング42、および、第3カップリング44を有する。図18に記載の例では、回転シャフト2が、第1カップリング23を有し、支持部材4が、第2カップリング42および第3カップリング44を有する。第2カップリング42は、第3カップリング44に対して相対移動可能である。図18に記載の例では、第2カップリング42は、油圧によって駆動されるピストンである。
【0122】
図19に記載の例では、第1カップリング23(すなわち、回転シャフト2側のカップリング)に、第1接触面C1が設けられている。第1接触面C1は、第1傾斜面M1を有する。図19に記載の例では、第2カップリング42(すなわち、支持部材4側の1つのカップリング)に、第2接触面C2が設けられ、第3カップリング44(すなわち、支持部材4側の他のカップリング)に、第3接触面C3が設けられている。第2接触面C2は、第2傾斜面M2を有し、第3接触面C3は、第3傾斜面M3を有する。
【0123】
第2カップリング42が、第1カップリング23および第3カップリング44の両方と嵌合することにより、回転シャフト2の回転がロックされる。第2カップリング42が、第1カップリング23および第3カップリング44の両方と篏合した状態(図21を参照。)が、ロック状態に対応し、第2カップリング42と第1カップリング23との間の篏合が解除された状態(図18を参照。)が、ロック解除状態に対応する。なお、ロック解除状態(図18を参照。)において、第2カップリング42と第3カップリング44との間の篏合は完全に解除されていてもよいし、第2カップリング42と第3カップリング44との間の篏合が完全には解除されていなくてもよい。
【0124】
駆動装置5は、回転シャフト2の状態を、ロック状態とロック解除状態との間で切り替える。図17に記載の例では、駆動装置5は、回転シャフト2を押圧する第1移動部材510を移動させる第1駆動装置51と、第2カップリング42を移動させる第2駆動装置52とを有する。図17に記載の例では、第1駆動装置51および第2駆動装置52の各々は、回転シャフト2の状態を、ロック解除状態からロック状態に切り替える駆動装置5の一部として機能する。
【0125】
第2駆動装置52は、第2カップリング42が第1カップリング23および第3カップリング44の両方に篏合するように、第2カップリング42を移動させる。
【0126】
図17に記載の例では、第2駆動装置52は、第2移動部材として機能する第2カップリング42に駆動力を付与する。図18に記載の例では、第2駆動装置52は、第2オイル室523と、第2オイル室523にオイルを供給する第2配管524とを有する。第2駆動装置52は、第2配管524内のオイルの流れの向きを制御する第2バルブV2(図17を参照。)を有していてもよい。
【0127】
図18に記載の例では、第2駆動装置52は、第2カップリング42を第1カップリング23から離れる方向に付勢する第2付勢部材525(例えば、ばね)を有する。また、第2駆動装置52は、第2付勢部材525による付勢力によって、第2カップリング42を第1カップリング23から離れる方向(より具体的には、第1方向DR1)に押圧する押圧部材526を有する。
【0128】
図18に記載の例において、第2配管524から第2オイル室523にオイルが供給されると、第2カップリング42は、第1カップリング23に向かって移動する。また、図21に記載の例において、第2オイル室523から第2配管524を介してオイルが排出されると、第2付勢部材525の付勢力によって、第2カップリング42は、第1カップリング23から離れる方向に移動する。
【0129】
図17に記載の例において、第2駆動装置52が、第2カップリング42を、第1カップリング23に向かう方向(図17に記載の例では、第2方向DR2)に移動させると、第2カップリング42が、第1カップリング23および第3カップリングと篏合する。
【0130】
また、図17に記載の例において、第1駆動装置51が、第1移動部材510を第1方向DR1に移動させると、回転シャフト2および回転シャフト2に支持された内リング31が第1方向DR1に移動する。その結果、複数のボール35に作用する予圧が減少する(典型的には、外リング33および内リング31に対して複数のボール35の各々が任意の方向に相対移動することが許容される。)。また、回転シャフト2に設けられた第1カップリング23の第1接触面C1が、第2カップリング42の第2接触面C2に接触し、第1カップリング23と第2カップリング42との間の嵌合が強化される。
【0131】
なお、図22に例示されるように、回転シャフト2の回転がロックされた状態において、第1カップリング23の第1傾斜面M1は、第2カップリング42の第2傾斜面M2に接触する。また、回転シャフト2の回転がロックされた状態において、第2カップリング42の第2傾斜面M2は、第3カップリング44の第3傾斜面M3に接触する。
【0132】
図20に記載の例において、第2駆動装置52(より具体的には、第2付勢部材525)が、第2カップリング42を、第1カップリング23から離れる方向(図20に記載の例では、第1方向DR1)に移動させると、第2カップリング42と第1カップリング23との間の篏合が解除される。
【0133】
また、図20に記載の例において、第1駆動装置51(より具体的には、第1付勢部材516)が、第1移動部材510を第2方向DR2に移動させると、回転シャフト2および回転シャフト2に支持された内リング31が第2方向DR2に移動する。その結果、複数のボール35に作用する予圧が増加する。
【0134】
なお、図19に例示されるように、第2カップリング42と第1カップリング23との間の篏合が解除された状態では、第1カップリング23の第1傾斜面M1は、第2カップリング42の第2傾斜面M2から離間している。
【0135】
図21に記載の例において、内リング31の移動ストロークL1(すなわち、ロック解除状態からロック状態に切り替えられるときの内リング31の移動ストロークL1)は、第2カップリング42の移動ストロークL2(すなわち、ロック解除状態からロック状態に切り替えられるときの第2カップリング42の移動ストロークL2)よりも小さい。
【0136】
移動ストロークL1が移動ストロークL2よりも小さい場合、第1カップリング23と第2カップリング42との間の状態を篏合解除状態から篏合状態に切り替えることが主として第2駆動装置52によって実行される。この場合、第1アンギュラ玉軸受3の構造(例えば、内リング31が、外リング33に対して、第1方向DR1に相対移動可能な量、換言すれば、第1アンギュラ玉軸受3のガタの大きさ)による制約を受けることなく、歯丈が大きく高剛性な歯部を有するカップリング(23、42)を採用することができる。
【0137】
後述の第4の実施形態においても、内リング31の移動ストロークL1(すなわち、ロック解除状態からロック状態に切り替えられるときの内リング31の移動ストロークL1)は、第2カップリング42の移動ストロークL2(すなわち、ロック解除状態からロック状態に切り替えられるときの第2カップリング42の移動ストロークL2)よりも小さいことが好ましい(図26を参照。)。
【0138】
(第4の実施形態)
図23乃至図28を参照して、第4の実施形態における加工ヘッド1D、および、回転シャフトロック装置10Dについて説明する。図23は、第4の実施形態における加工ヘッド1Dを模式的に示す概略断面図である。図24は、図23において一点鎖線の円A8で示される部分の拡大図である。図25は、第4の実施形態における加工ヘッド1Dを模式的に示す概略断面図である。図26は、図25において一点鎖線の円A9で示される部分の拡大図である。図27は、第1カップリング23および第3カップリング44の一例を示す模式図である。なお、図27において、破線は、第1カップリング23および第3カップリング44の輪郭を示す。また、図27において、破線で囲まれた領域における歯部(23a、44a)の記載は省略されている。図28は、第2カップリング42の一例を示す模式図である。なお、図28において、破線は、第2カップリング42の輪郭を示す。また、図28において、破線で囲まれた領域における歯部(42a)の記載は省略されている。
【0139】
第4の実施形態では、第1の実施形態、第2の実施形態および第3の実施形態と異なる点を中心に説明する。他方、第4の実施形態では、第1の実施形態、第2の実施形態または第3の実施形態で説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。したがって、第4の実施形態において、明示的に説明をしなかったとしても、第1の実施形態、第2の実施形態または第3の実施形態において説明済みの事項を第4の実施形態に適用できることは言うまでもない。
【0140】
第3の実施形態では、ロック解除状態からロック状態への切り替えは、第2カップリング42を後方(より具体的には、第2方向DR2)に移動させることを含む。代替的に、第4の実施形態では、ロック解除状態からロック状態への切り替えは、第2カップリング42を前方(より具体的には、第1方向DR1)に移動させることを含む。第4の実施形態では、ロック機構C、第1駆動装置51、第2駆動装置52、第1カップリング23、第2カップリング42、および、第3カップリング44に関し、第1の実施形態乃至第3の実施形態とは異なる点を中心に説明し、その他の構成についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0141】
図23に例示されるように、第4の実施形態における回転シャフトロック装置10Dは、(1)工具Tが取り付けられる取付部22と、第1接触面C1とを有し、第1軸AX1まわりを回転可能な回転シャフト2と、(2)回転シャフト2に支持される内リング31と、外リング33と、内リング31と外リング33との間に配置される複数のボール35とを有する第1アンギュラ玉軸受3と、(3)第1接触面C1との接触により回転シャフト2の回転をロックする第2接触面C2を有し、第1アンギュラ玉軸受3を介して回転シャフト2を回転可能に支持する支持部材4と、(4)第1接触面C1が第2接触面C2に接触し、かつ、複数のボール35に作用する予圧が減少されるように、回転シャフト2および内リング31を支持部材4および外リング33に対して第1軸AX1に平行な第1方向DR1に相対移動させる駆動装置5と、を具備する。
【0142】
また、第4の実施形態における加工ヘッド1Dは、回転シャフト2を第1軸AX1まわりに回転させる第1回転駆動装置7と、回転シャフト2を囲むハウジングHと、上述の回転シャフトロック装置10Dとを備える。
【0143】
よって、第4の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0144】
(回転シャフト2の回転をロックするロック機構C)
図23に記載の例では、回転シャフトロック装置10Dは、回転シャフト2の回転をロックするロック機構Cを備える。ロック機構Cは、第1カップリング23、第2カップリング42、および、第3カップリング44を有する。図24に記載の例では、回転シャフト2が、第1カップリング23を有し、支持部材4が、第2カップリング42および第3カップリング44を有する。第2カップリング42は、第3カップリング44に対して相対移動可能である。
【0145】
第2カップリング42と、第1カップリング23および第3カップリング44の両方とが篏合した状態(図26を参照。)がロック状態に対応し、第2カップリング42と第1カップリング23との間の篏合が解除された状態(図24を参照。)がロック解除状態に対応する。なお、ロック解除状態(図24を参照。)において、第2カップリング42と第3カップリング44との間の篏合は完全に解除されていてもよいし、第2カップリング42と第3カップリング44との間の篏合が完全には解除されていなくてもよい。
【0146】
図24に記載の例では、第2駆動装置52によって駆動される第2カップリング42が、第1カップリング23および第3カップリング44よりも後方側(より具体的には、第2方向DR2側)に配置されている。この場合、第2カップリング42を駆動する駆動系を、第3カップリング44よりも後方側に配置することができる。その結果、回転シャフト2の先端と第1アンギュラ玉軸受3との間の距離が低減され、回転シャフト2のラジアル剛性が向上する。この場合、回転シャフト2に取り付けられたミル工具T1を、第1軸AX1まわりに安定的に回転させることができる。
【0147】
(駆動装置5)
駆動装置5は、回転シャフト2の状態を、ロック状態とロック解除状態との間で切り替える。図23に記載の例では、駆動装置5は、回転シャフト2を押圧する第1移動部材510を移動させる第1駆動装置51と、第2カップリング42を移動させる第2駆動装置52とを有する。図23に記載の例では、第1駆動装置51および第2駆動装置52の各々は、回転シャフト2の状態を、ロック解除状態からロックされるロック状態に切り替える駆動装置5の一部として機能する。
【0148】
(第1駆動装置51)
図23に記載の例では、第1駆動装置51は、第1オイル室513と、第1オイル室513にオイルを供給する第1配管514とを有する。第1駆動装置51は、第1配管514内のオイルの流れの向きを制御する第1バルブV1を有していてもよい。
【0149】
図23に記載の例では、第1駆動装置51は、第1移動部材510を駆動する。第1移動部材510は、回転シャフト2の後端部26に配置される第2アンギュラ玉軸受6を介して、回転シャフト2を押圧する。
【0150】
代替的に、第1移動部材510は、回転シャフト2を直接的に押圧するようにしてもよい。この場合、第1移動部材510は、ステータ71よりも前方に配置されてもよい。なお、図23に記載の例では、第1移動部材510は、ステータ71よりも後方に配置されている。
【0151】
図23に記載の例では、第1移動部材510は、第1ピストン511を有する。また、図23に記載の例では、第1駆動装置51は、第1ピストン511の周囲に配置され、第1ピストン511の移動をガイドする複数の転動体517を有する。
【0152】
図23に記載の例では、第1駆動装置51は、第1移動部材510に付勢力を付与する第1付勢部材516(例えば、ばね)を有する。第1付勢部材516は、第1移動部材510を第2方向DR2に付勢する。図23に記載の例では、第1付勢部材516は、第1移動部材510と支持部材4との間に配置されている。
【0153】
第1付勢部材516は、第1移動部材510、回転シャフト2、および、内リング31に、第2方向DR2(換言すれば、第1方向DR1とは反対方向)の付勢力を付与する。図23に記載の例では、回転シャフト2の回転が許容されるロック解除状態において、複数のボール35は、内リング31から、第1付勢部材516による付勢力の大きさに応じた予圧を受ける。
【0154】
(第2駆動装置52)
第2駆動装置52は、第2カップリング42が第1カップリング23および第3カップリング44の両方に篏合するように、第2カップリング42を移動させる。
【0155】
図23に記載の例では、第2駆動装置52は、第2移動部材として機能する第2カップリング42に駆動力を付与する。図23に記載の例では、第2駆動装置52は、第2オイル室523と、第2オイル室523にオイルを供給する第2配管524とを有する。第2駆動装置52は、第2配管524内のオイルの流れの向きを制御するバルブを有していてもよい。図23に記載の例では、第2配管524内のオイルの流れの向きを制御するバルブは、第1配管514内のオイルの流れの向きを制御する第1バルブV1と同一である。代替的に、第2配管524内のオイルの流れの向きを制御するバルブは、第1配管514内のオイルの流れの向きを制御する第1バルブV1とは別のバルブであってもよい。
【0156】
図23に記載の例では、第1オイル室513と第2オイル室523とが、第1配管514および第2配管524を介して接続されている。この場合、第2オイル室523内の油圧は、第1オイル室513内の油圧と略等しくなる。
【0157】
図23に例示されるように、第2駆動装置52は、第3オイル室527と、第3オイル室527にオイルを供給する第3配管528とを有していてもよい。また、第2駆動装置52は、第3配管528内のオイルの流れの向きを制御する第2バルブV2を有していてもよい。
【0158】
図23に記載の例では、第3配管528内のオイルの流れの向きを制御する第2バルブV2は、第2配管524内のオイルの流れの向きを制御する第1バルブV1とは別のバルブである。代替的に、第3配管528内のオイルの流れの向きの制御と、第2配管524内のオイルの流れの向きの制御とが、1つの切替バルブによって実行されてもよい。
【0159】
図23に記載の例において、第2配管524から第2オイル室523にオイルが供給されると、第2カップリング42は、第1カップリング23に向かって移動する。他方、第3配管528から第3オイル室527にオイルが供給されると、第2カップリング42は、第1カップリング23から離れる方向に移動する。
【0160】
(ロック解除状態からロック状態への切り替え)
図23に記載の例において、回転シャフト2の状態が、ロック解除状態からロック状態に切り替えられるとき、第2駆動装置52は、第2カップリング42を、第1カップリング23に向かう方向(図23に記載の例では、第1方向DR1)に移動させる。
【0161】
第2駆動装置52が、第2カップリング42を、第1カップリング23に向かう方向に移動させると、第2カップリング42は、第1カップリング23および第3カップリングの両方と篏合する。こうして、回転シャフト2の回転がロックされる。
【0162】
また、第2駆動装置52は、第2カップリング42と第1カップリング23とが嵌合した状態で、第2カップリング42、回転シャフト2、および、内リング31を、一体的に第1方向DR1に移動させる。より具体的には、第2駆動装置52が、第2カップリング42を第1方向DR1に移動させると、第2カップリング42は、第1カップリング23を介して回転シャフト2を第1方向DR1に押圧する。その結果、回転シャフト2および回転シャフト2に支持された内リング31は、外リング33に対して、第1方向DR1に相対移動する。内リング31が外リング33に対して第1方向DR1に相対移動することにより、複数のボール35に作用する予圧が低減される(典型的には、外リング33および内リング31に対して複数のボール35の各々が任意の方向に相対移動することを許容する空間が形成され、内リング31から複数のボール35に作用する負荷が、外リング33へ伝達されなくなる。)。
【0163】
図23に記載の例では、回転シャフト2の状態が、ロック解除状態からロック状態に切り替えられるとき、第2駆動装置52は、回転シャフト2に対し、第1方向DR1に第1押圧力を付与し、第1駆動装置51は、回転シャフト2に対し、第2方向DR2に第2押圧力を付与する。
【0164】
より具体的には、図23に記載の例において、第2駆動装置52は、第2オイル室523内の油圧を増加させる。第2オイル室523内の油圧が増加すると、第2カップリング42が第1方向DR1に移動し、第2カップリング42は、第1カップリング23および回転シャフト2を第1方向DR1に押圧する(第1押圧力)。また、図23に記載の例において、第1駆動装置51は、第1オイル室513内の油圧を増加させる。第1オイル室513内の油圧が増加すると、第1移動部材510は、回転シャフト2を第2方向DR2に押圧する(第2押圧力)。
【0165】
回転シャフト2が、第2カップリング42からの第1押圧力と、第1移動部材510からの第2押圧力とを受けることにより、回転シャフト2に設けられた第1カップリング23の第1接触面C1と、支持部材4に設けられた第2カップリング42の第2接触面C2とが強く接触する。その結果、回転シャフト2の回転のロックが強化される。また、各カップリング(23、42、44)の加工精度あるいは組付け精度に依らず、第2カップリング42の第2接触面C2が第1カップリング23の第1接触面C1および第3カップリング44の第3接触面C3の両方と確実に接触するため、第1軸AX1まわりの回転方向における回転シャフト2の位置決め精度が向上する。
【0166】
回転シャフト2の状態が、ロック解除状態からロック状態に切り替えられるとき、第2駆動装置52が回転シャフト2に付与する第1方向DR1の第1押圧力は、第1駆動装置51が回転シャフト2に付与する第2方向DR2の第2押圧力よりも大きい。第1方向DR1の第1押圧力が第2方向DR2の第2押圧力よりも大きいことにより、回転シャフト2および内リング31は、支持部材4および外リング33に対して、第1方向DR1に相対移動する。
【0167】
図23に記載の例では、第1押圧力の大きさを第2押圧力よりも大きくするため、第2オイル室523に面する第2カップリング42の受圧面42sの面積は、第1オイル室513に面する第1移動部材510の受圧面511sの面積よりも大きい。代替的に、あるいは、付加的に、第1押圧力の大きさを第2押圧力よりも大きくするため、第2オイル室523内の油圧を、第1オイル室513内の油圧より大きくしてもよい。
【0168】
(ロック状態からロック解除状態への切り替え)
図25に記載の例において、回転シャフト2の状態が、ロック状態からロック解除状態に切り替えられるとき、第2駆動装置52は、第2カップリング42を、第1カップリング23から離れる方向(図25に記載の例では、第2方向DR2)に移動させる。その結果、第2カップリング42と第1カップリング23との間の篏合は解除される。
【0169】
より具体的には、図26に記載の例において、第2駆動装置52は、第2オイル室523内の油圧を減少させ、第3オイル室527内の油圧を増加させる。第3オイル室527内の油圧が増加すると、第2カップリング42が第2方向DR2に移動し、第2カップリング42と第1カップリング23との間の篏合が解除される。なお、図25に記載の例では、第1オイル室513と第2オイル室523とが、第1配管514および第2配管524を介して接続されている。このため、第2オイル室523内の油圧が減少すると、第1オイル室513内の油圧も減少する。
【0170】
第2カップリング42と第1カップリング23との間の篏合が解除されると、回転シャフト2が第2カップリング42から受けていた第1方向DR1の第1押圧力が消失する。その結果、回転シャフト2が第1駆動装置51(より具体的には、第1付勢部材516)から受ける第2方向DR2の第2押圧力によって、回転シャフト2および内リング31は、支持部材4および外リング33に対して、第2方向DR2に相対移動する。当該相対移動により、複数のボール35に作用する予圧が増加する。
【0171】
(第1カップリング23)
図26に記載の例では、回転シャフト2は、回転シャフト本体20と、第1カップリング23とを備え、第1カップリング23は、締結部材27を介して、回転シャフト本体20に固定されている。また、図26に記載の例では、第1カップリング23は、第1アンギュラ玉軸受3よりも前方側に配置されている。
【0172】
図27に記載の例では、第1カップリング23は、第1歯部23aを有する。第1歯部23aは、第2カップリング42に向かって突出する。
【0173】
第1カップリング23は、複数の第1歯部23aと、複数の第1歯部23aが配置される第1環状体23cとを有していてもよい。図27に記載の例では、第1歯部23aは、第2カップリング42の凹部42bに受容される先端面230aを有する。図27に記載の例では、第1歯部23aは、第1接触面C1(より具体的には、第1傾斜面M1)を有する。図27に記載の例では、第1歯部23aの先端面230aの両側に、それぞれ、第1傾斜面M1が配置されている。
【0174】
(第2カップリング42)
図25に記載の例では、支持部材4は、第1アンギュラ玉軸受3の外リング33を支持する第1ブロック46と、第1ブロック46に対して相対移動可能な第2カップリング42とを備える。第2カップリング42は、第1ブロック46に対して相対移動可能な移動カップリングである。第2カップリング42は、例えば、油圧によって駆動されるピストンである。
【0175】
図28に記載の例では、第2カップリング42は、第2歯部42aを有する。第2歯部42aは、第1カップリング23に向かって突出する。
【0176】
第2カップリング42は、複数の第2歯部42aと、複数の第2歯部42aが配置される第2環状体42cとを有していてもよい。図28に記載の例では、第2カップリング42は、隣接する2つの第2歯部42aの間に形成された凹部42bを有する。図28に記載の例では、第2歯部42aは、第2接触面C2(より具体的には、第2傾斜面M2)を有する。図28に記載の例では、第2歯部42aの先端面420aの両側に、それぞれ、第2傾斜面M2が配置されている。
【0177】
回転シャフト2の回転がロックされた状態では、第2カップリング42の第2接触面C2は、第1カップリング23の第1接触面C1および第3カップリング44の第3接触面C3と接触する。他方、回転シャフト2が第1軸AX1まわりを回転可能な状態では、第2カップリング42の第2接触面C2は、第1カップリング23の第1接触面C1および第3カップリング44の第3接触面C3から離間する。
【0178】
(第3カップリング44)
図25に記載の例では、支持部材4は、第3カップリング44を備える。第3カップリング44は、第1ブロック46に固定された固定カップリングである。
【0179】
図27に記載の例では、第3カップリング44は、第1カップリング23の外側に、第1カップリング23と同心的に配置されている。第3カップリング44は、第3歯部44aを有する。第3歯部44aは、第2カップリング42に向かって突出する。
【0180】
第3カップリング44は、複数の第3歯部44aと、複数の第3歯部44aが配置される第3環状体44cとを有していてもよい。図27に記載の例では、第3歯部44aは、第2カップリング42の凹部42bに受容される先端面440aを有する。図27に記載の例では、第3歯部44aは、第3接触面C3(より具体的には、第3傾斜面M3)を有する。図27に記載の例では、第3カップリング44の第3歯部44aの先端面440aの両側に、それぞれ、第3傾斜面M3が配置されている。
【0181】
(支持部材4)
図25に記載の例では、支持部材4は、第1端壁45と、第2カップリング42と、第3カップリング44と、第1アンギュラ玉軸受3の外リング33を支持する第1ブロック46と、回転シャフト2の少なくとも中間部24を覆う側壁47とを備える。
【0182】
(第5の実施形態)
図1乃至図29を参照して、第5の実施形態における複合加工機100について説明する。図29は、第5の実施形態における複合加工機100を模式的に示す概略斜視図である。
【0183】
第5の実施形態における複合加工機100は、加工ヘッド1と、ワーク保持装置120と、加工ヘッド駆動装置130と、制御装置140とを備える。複合加工機は、複数の異なる種類の加工を実行可能な工作機械を意味する。図29に記載の例において、複合加工機100は、少なくとも旋削加工とミル加工とを選択的に実行可能である。複合加工機100は、回転シャフト2に取り付けられた工具を他の工具に自動的に交換する工具自動交換装置190を有していてもよい。
【0184】
(加工ヘッド1)
加工ヘッド1は、回転シャフトロック装置10と、回転シャフト2を第1軸AX1まわりに回転させる第1回転駆動装置7と、回転シャフト2を囲むハウジングHとを有する。回転シャフトロック装置10は、第1の実施形態における回転シャフトロック装置10Aであってもよいし、第2の実施形態における回転シャフトロック装置10Bであってもよいし、第3の実施形態における回転シャフトロック装置10Cであってもよいし、第4の実施形態における回転シャフトロック装置10Dであってもよいし、その他の回転シャフトロック装置であってもよい。
【0185】
回転シャフトロック装置10は、(1)工具Tが取り付けられる取付部22と、第1接触面C1とを有し、第1軸AX1まわりを回転可能な回転シャフト2と、(2)回転シャフト2に支持される内リング31と、外リング33と、内リング31と外リング33との間に配置される複数のボール35とを有する第1アンギュラ玉軸受3と、(3)第1接触面C1との接触により回転シャフト2の回転をロックする第2接触面C2を有し、第1アンギュラ玉軸受3を介して回転シャフト2を回転可能に支持する支持部材4と、(4)回転シャフト2および内リング31を、支持部材4および外リング33に対して、第1軸AX1に平行な第1方向DR1に相対移動させる駆動装置5と、を備える。
【0186】
回転シャフトロック装置10については、第1の実施形態乃至第4の実施形態において説明済みであるため、回転シャフトロック装置10についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0187】
(ワーク保持装置120)
ワーク保持装置120は、ワークを保持する。ワーク保持装置120は、ワークを保持するワーク保持具121(例えば、チャック)と、ワーク保持具121を第2軸AX2まわりに回転可能に支持する第2支持部材123と、ワーク保持具121を第2軸AX2まわりに回転させる第2回転駆動装置125(例えば、第2モータ)とを備える。回転シャフトロック装置10の回転シャフト2に取り付けられた旋削工具T2がワークに接触した状態で、ワークおよびワーク保持具121が第2軸AX2まわりを回転することにより、ワークが旋削される。図29に記載の例では、ワーク保持装置120は、ベース150によって支持されている。
【0188】
(加工ヘッド駆動装置130)
加工ヘッド駆動装置130は、加工ヘッド1を、ワーク保持装置120に対して相対移動させる。加工ヘッド駆動装置130は、加工ヘッド1を3次元的に移動させることが可能な駆動装置であってもよい。より具体的には、加工ヘッド駆動装置130は、Z軸に沿って加工ヘッド1を移動可能であり、Z軸に垂直なX軸に沿って加工ヘッド1を移動可能であり、かつ、X軸およびZ軸の両方に垂直なY軸に沿って加工ヘッド1を移動可能であってもよい。図29に記載の例では、加工ヘッド駆動装置130は、ベース150によって支持されている。
【0189】
(制御装置140)
制御装置140は、駆動装置5、第1回転駆動装置7、第2回転駆動装置125、および、加工ヘッド駆動装置130の動作を制御する。
【0190】
制御装置140が加工ヘッド駆動装置130に第1制御信号を送信すると、加工ヘッド駆動装置130は、加工ヘッド1をワーク保持装置120に対して相対移動させる。こうして、回転シャフト2に取り付けられた工具Tを、ワークに向かって移動させること、あるいは、ワークから離れる方向に移動させることができる。
【0191】
制御装置140が第1回転駆動装置7に第2制御信号を送信すると、第1回転駆動装置7は、回転シャフト2を第1軸AX1まわりに回転させる。こうして、回転シャフト2に取り付けられたミル工具T1によって、ワークをミル加工することができる。
【0192】
制御装置140が第2回転駆動装置125に第3制御信号を送信すると、第2回転駆動装置125は、ワーク保持具121を第2軸AX2まわりに回転させる。こうして、回転シャフト2に取り付けられた旋削工具T2によって、ワーク保持具121に保持されたワークを旋削加工することができる。
【0193】
制御装置140が駆動装置5(例えば、第1駆動装置51、あるいは、第1駆動装置51および第2駆動装置52)に第4制御信号を送信すると、駆動装置5は、第1接触面C1が第2接触面C2に接触し、かつ、複数のボール35に作用する予圧が減少されるように、回転シャフト2および内リング31を、支持部材4および外リング33に対して、第1方向DR1に相対移動させる。
【0194】
図5あるいは図10に記載の例では、駆動装置5(より具体的には、第1駆動装置51)が第4制御信号を受信すると、駆動装置5は、第1移動部材510を第1方向DR1に移動させる。第1移動部材510が第1方向DR1に移動すると、第1移動部材510によって押圧される回転シャフト2は、支持部材4に対して、第1方向DR1に相対移動する。回転シャフト2が、支持部材4に対して、第1方向DR1に相対移動すると、回転シャフト2の第1接触面C1と支持部材4の第2接触面C2とが接触し、回転シャフト2の回転がロックされる。また、回転シャフト2が、支持部材4に対して、第1方向DR1に相対移動すると、回転シャフト2に支持された内リング31が、支持部材4に支持された外リング33に対して、第1方向DR1に相対移動する。その結果、複数のボール35が内リング31および外リング33から受ける予圧が減少する。典型的には、外リング33および内リング31に対して複数のボール35の各々が任意の方向(換言すれば、あらゆる方向)に相対移動することが許容され、内リング31から複数のボール35に作用する負荷が、外リング33へ伝達されなくなる。
【0195】
図17図18に記載の例では、駆動装置5(より具体的には、第1駆動装置51および第2駆動装置52)が第4制御信号を受信すると、第2駆動装置52は、第2カップリング42を第2方向DR2に移動させ、第1駆動装置51は、第1移動部材510を第1方向DR1に移動させる。第2カップリング42が第2方向DR2に移動すると、第2カップリング42は、回転シャフト2に設けられた第1カップリング23および支持部材4に設けられた第3カップリング44の両方に篏合する。こうして、回転シャフト2の回転がロックされる。また、第1移動部材510が第1方向DR1に移動すると、第1移動部材510によって押圧される回転シャフト2は、支持部材4に対して、第1方向DR1に相対移動する。回転シャフト2が、支持部材4に対して、第1方向DR1に相対移動すると、回転シャフト2に支持された内リング31が、支持部材4に支持された外リング33に対して、第1方向DR1に相対移動する。その結果、複数のボール35が内リング31および外リング33から受ける予圧が減少する。
【0196】
図23図24に記載の例では、駆動装置5(より具体的には、第1駆動装置51および第2駆動装置52)が第4制御信号を受信すると、第2駆動装置52は、第2カップリング42を第1方向DR1に移動させ、第1駆動装置51は、回転シャフト2に対し、第2方向DR2に第2押圧力を付与する。第2カップリング42が第1方向DR1に移動すると、第2カップリング42は、回転シャフト2に設けられた第1カップリング23および支持部材4に設けられた第3カップリング44の両方に篏合する。こうして、回転シャフト2の回転がロックされる。また、第2カップリング42が第1方向DR1に移動すると、第2カップリング42は、回転シャフト2に対し、第1方向DR1に、上述の第2押圧力よりも大きな第1押圧力を付与する。第2押圧力よりも大きな第1押圧力を受ける回転シャフト2は、支持部材4に対して、第1方向DR1に相対移動する。回転シャフト2が、支持部材4に対して、第1方向DR1に相対移動すると、回転シャフト2に支持された内リング31が、支持部材4に支持された外リング33に対して、第1方向DR1に相対移動する。その結果、複数のボール35が内リング31および外リング33から受ける予圧が減少する。典型的には、外リング33および内リング31に対して複数のボール35の各々が任意の方向(換言すれば、あらゆる方向)に相対移動することが許容され、内リング31から複数のボール35に作用する負荷が、外リング33へ伝達されなくなる。
【0197】
こうして、回転シャフトの回転がロックされた状態において、第1アンギュラ玉軸受3の複数のボール35に作用する負荷が低減される。
【0198】
制御装置140が駆動装置5(例えば、第1駆動装置51、あるいは、第1駆動装置51および第2駆動装置52)に第5制御信号を送信すると、駆動装置5は、第1接触面C1が第2接触面C2から離間し、かつ、複数のボール35に作用する予圧が増加されるように、回転シャフト2および内リング31を、支持部材4および外リング33に対して、第2方向DR2に相対移動させる。
【0199】
図8あるいは図14に記載の例では、駆動装置5(より具体的には、第1駆動装置51)が第5制御信号を受信すると、駆動装置5は、第1移動部材510を第2方向DR2に移動させる。例えば、第1移動部材510が第1付勢部材516から第2方向DR2に付勢力を受けることにより、第1移動部材510が第2方向DR2に移動する。第1移動部材510が第2方向DR2に移動すると、第1移動部材510によって押圧される回転シャフト2は、支持部材4に対して、第2方向DR2に相対移動する。回転シャフト2が、支持部材4に対して、第2方向DR2に相対移動すると、回転シャフト2の第1接触面C1が支持部材4の第2接触面C2から離間し、回転シャフト2のロックが解除される。また、回転シャフト2が、支持部材4に対して、第2方向DR2に相対移動すると、回転シャフト2に支持された内リング31が、外リング33に対して、第2方向DR2に相対移動する。その結果、複数のボール35が内リング31および外リング33から受ける予圧が増加する。
【0200】
図20図21に記載の例では、駆動装置5(より具体的には、第1駆動装置51および第2駆動装置52)が第5制御信号を受信すると、第2駆動装置52は、第2カップリング42を第1方向DR1に移動させ、第1駆動装置51は、第1移動部材510を第2方向DR2に移動させる。第2カップリング42が第1方向DR1に移動すると、第2カップリング42と回転シャフト2に設けられた第1カップリング23との間の篏合が解除される。こうして、回転シャフト2のロックが解除される。また、第1移動部材510が第2方向DR2に移動すると、第1移動部材510によって押圧される回転シャフト2は、支持部材4に対して、第2方向DR2に相対移動する。回転シャフト2が、支持部材4に対して、第2方向DR2に相対移動すると、回転シャフト2に支持された内リング31が、外リング33に対して、第2方向DR2に相対移動する。その結果、複数のボール35が内リング31および外リング33から受ける予圧が増加する。
【0201】
図25図26に記載の例では、駆動装置5(より具体的には、第1駆動装置51および第2駆動装置52)が第5制御信号を受信すると、第2駆動装置52は、第2カップリング42を第2方向DR2に移動させ、第1駆動装置51(より具体的には、第1付勢部材516)は、第1移動部材510を第2方向DR2に移動させる。
【0202】
第2カップリング42が第2方向DR2に移動すると、第2カップリング42と回転シャフト2に設けられた第1カップリング23との間の篏合が解除される。こうして、回転シャフト2のロックが解除される。また、第1移動部材510が第2方向DR2に移動すると、第1移動部材510によって押圧される回転シャフト2は、支持部材4に対して、第2方向DR2に相対移動する。回転シャフト2が、支持部材4に対して、第2方向DR2に相対移動すると、回転シャフト2に支持された内リング31が、外リング33に対して、第2方向DR2に相対移動する。その結果、複数のボール35が内リング31および外リング33から受ける予圧が増加する。
【0203】
本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態または各変形例は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施形態または各変形例で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、他の実施形態または他の変形例にも適用可能である。さらに、各実施形態または各変形例における任意付加的な構成は、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0204】
1、1A、1B、1C、1D…加工ヘッド、2…回転シャフト、2a…先端、3…第1アンギュラ玉軸受、4…支持部材、5…駆動装置、6…第2アンギュラ玉軸受、7…第1回転駆動装置、8…取付部駆動装置、10、10A、10B、10C、10D…回転シャフトロック装置、20…回転シャフト本体、21…先端部、21b…凹部、22…取付部、23…第1カップリング、23a…第1歯部、23c…第1環状体、24…中間部、26…後端部、27…締結部材、28…棒状部材、29…付勢部材、30…アンギュラ玉軸受構造体、30a…第1のアンギュラ玉軸受構造体、30b…第2のアンギュラ玉軸受構造体、31、31a、31b…内リング、31c…第1曲面、31n…外面、31f…前端面、33、33a、33b…外リング、33c…第2曲面、33f…前端面、33h…オイル供給孔、33n…内面、35、35a、35b…ボール、35−1…第1ボール、37…保持部材、37h…貫通孔、42…第2カップリング、42a…第2歯部、42b…凹部、42c…第2環状体、42s…受圧面、44…第3カップリング、44a…第3歯部、44c…第3環状体、45…第1端壁、45b…凸部、45h…第1孔部、46…第1ブロック、47…側壁、51…第1駆動装置、52…第2駆動装置、60…アンギュラ玉軸受構造体、61…第2内リング、63…第2外リング、65…ボール、71…ステータ、73…ロータ、100…複合加工機、120…ワーク保持装置、121…ワーク保持具、123…第2支持部材、125…第2回転駆動装置、130…加工ヘッド駆動装置、140…制御装置、150…ベース、190…工具自動交換装置、230a…先端面、310s…第1肩部、310t…カウンタボア、330s…第2肩部、330t…カウンタボア、361…第1スペーサー部材、362…第2スペーサー部材、420a…先端面、440a…先端面、510…第1移動部材、510a…第1押圧部、510b…第2押圧部、511…第1ピストン、511s…受圧面、513…第1オイル室、514…第1配管、516…第1付勢部材、517…転動体、523…第2オイル室、524…第2配管、525…第2付勢部材、526…押圧部材、527…第3オイル室、528…第3配管、610s…第3肩部、630s…第4肩部、C…ロック機構、C1…第1接触面、C2…第2接触面、C3…第3接触面、G…空間、H…ハウジング、M1…第1傾斜面、M2…第2傾斜面、M3…第3傾斜面、SP…空間、T…工具、T1…ミル工具、T2…旋削工具、V1…第1バルブ、V2…第2バルブ
【要約】
回転シャフトロック装置は、工具が取り付けられる取付部と、第1接触面とを有し、第1軸まわりを回転可能な回転シャフトと、回転シャフトに支持される内リングと、外リングと、内リングと外リングとの間に配置される複数のボールとを有する第1アンギュラ玉軸受と、第1接触面との接触により回転シャフトの回転をロックする第2接触面を有し、第1アンギュラ玉軸受を介して回転シャフトを回転可能に支持する支持部材と、第1接触面が第2接触面に接触し、かつ、複数のボールに作用する予圧が減少されるように、回転シャフトおよび内リングを支持部材および外リングに対して第1軸に平行な第1方向に相対移動させる駆動装置と、を具備する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29