(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963152
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】ロボットの手首構造およびロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 17/02 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
B25J17/02 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-32047(P2020-32047)
(22)【出願日】2020年2月27日
(65)【公開番号】特開2020-138319(P2020-138319A)
(43)【公開日】2020年9月3日
【審査請求日】2020年2月27日
(31)【優先権主張番号】201910156933.2
(32)【優先日】2019年3月1日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519197930
【氏名又は名称】達闥科技(北京)有限公司
【氏名又は名称原語表記】CLOUDMINDS (BEIJING) TECHNOLOGIES CO., LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】521102638
【氏名又は名称】達闥机器人有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】崔昊天
(72)【発明者】
【氏名】▲イェン▼巡戈
(72)【発明者】
【氏名】羅程
(72)【発明者】
【氏名】黄暁慶
【審査官】
尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−131388(JP,A)
【文献】
特表2002−540951(JP,A)
【文献】
特開2001−280445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)と、第1のモータ(2)と、第2のモータ(3)と、第1の伝達機構と、第2の伝達機構と、第1の駆動傘歯車(6)と、第2の駆動傘歯車(7)と、従動傘歯車(8)と、ホルダ(9)と、出力リンク(10)とを備え、第1のモータ(2)および第2のモータ(3)がハウジング(1)上に取り付けられ、第1の駆動傘歯車(6)、第2の駆動傘歯車(7)および従動傘歯車(8)がそれぞれホルダ(9)上に回転可能に取り付けられ、第1の駆動傘歯車(6)の軸線が第2の駆動傘歯車(7)の軸線と同一直線上にあり、かつ従動傘歯車(8)の軸線と直交しており、第1の駆動傘歯車(6)と第2の駆動傘歯車(7)とが共に従動傘歯車(8)に噛合し、第1のモータ(2)が第1の伝達機構を介して第1の駆動傘歯車(6)に連結され、第2のモータ(3)が第2の伝達機構を介して第2の駆動傘歯車(7)に連結され、出力リンク(10)が従動傘歯車(8)に固着され、
前記出力リンク(10)は、U字状のフォーク構造を有し、前記出力リンク(10)は、第1中間部(1003)と、前記第1中間部(1003)の両端から平行に延びて対向して設けられた第1のフォーク枝(1001)および第2のフォーク枝(1002)とを備え、ホルダ(9)は、第1のフォーク枝(1001)と第2のフォーク枝(1002)との間に設けられ、第1のフォーク枝(1001)は、従動傘歯車(8)に固着され、第2のフォーク枝(1002)は、ホルダ(9)に回転可能に接続されることを特徴とするロボットの手首構造(100)。
【請求項2】
前記ロボットの手首構造(100)は、ホルダ(9)上に回転可能に取り付けられた回転軸(11)をさらに備え、回転軸(11)の軸線は、従動傘歯車(8)の軸線と同一直線上にあり、第2のフォーク枝(1002)は、回転軸(11)に固着されることを特徴とする請求項1に記載のロボットの手首構造(100)。
【請求項3】
ホルダ(9)は、六面体状に形成され、ホルダ(9)の左側面に内方に凹む第1の装着室(91)が形成され、右側面に内方に凹む第2の装着室(92)が形成され、前側面に内方に凹む第3の装着室(93)が形成され、後側面に内方に凹む第4の装着室が形成されており、ただし、第1の装着室(91)内に第1の駆動傘歯車(6)が設けられ、第2の装着室(92)内に第2の駆動傘歯車(7)が設けられ、第3の装着室(93)内に従動傘歯車(8)が設けられ、前記第4の装着室内に回転軸(11)が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のロボットの手首構造(100)。
【請求項4】
各駆動傘歯車(6、7)は、ホルダ(9)の中心に近い内端部(671)と、ホルダ(9)の中心から遠い外端部(672)と、内端部(671)と外端部(672)との間に位置する歯車部(673)とを備え、内端部(671)の直径は、外端部(672)の直径よりも小さく、内端部(671)は、第1の軸受(12)を介してホルダ(9)上に取り付けられ、外端部(672)は、第2の軸受(13)を介してハウジング(1)上に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のロボットの手首構造(100)。
【請求項5】
従動傘歯車(8)は、ホルダ(9)の中心に近い内端と、ホルダ(9)の中心から遠い外端(81)と、前記内端と前記外端(81)との間に位置する第2中間部(82)とを備え、前記第2中間部(82)に歯が形成されており、前記内端の直径は、前記外端(81)の直径よりも小さく、前記内端は、第3の軸受(14)を介してホルダ(9)上に取り付けられ、前記外端(81)は、第4の軸受(15)を介してホルダ(9)上に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のロボットの手首構造(100)。
【請求項6】
前記第1の伝達機構と前記第2の伝達機構とは同一構造であり、各伝達機構は、歯車伝達機構と、ベルト伝達機構とを備え、各モータ(2、3)は、順次前記歯車伝達機構および前記ベルト伝達機構を介して対応する駆動傘歯車(6、7)を回転させることを特徴とする請求項1に記載のロボットの手首構造(100)。
【請求項7】
前記歯車伝達機構は、駆動歯車(17)と、二連歯車(18)と、伝達歯車(19)と、第1の遊星歯車列と、第2の遊星歯車列とを備え、前記第1の遊星歯車列は、第1の太陽歯車(20)と、第1の遊星歯車(21)と、第1のキャリア(22)と、第1のリング歯車(26)とを備え、前記第2の遊星歯車列は、第2の太陽歯車(23)と、第2の遊星歯車(24)と、第2のキャリア(25)と、第2のリング歯車(26)とを備え、前記ベルト伝達機構は、入力プーリ(27)と、出力プーリ(28)と、入力プーリ(27)および出力プーリ(28)に巻き掛けられた伝達ベルト(29)とを備え、駆動歯車(17)がモータ(2、3)の出力軸に連結され、二連歯車(18)がハウジング(1)内に回転可能に取り付けられ、駆動歯車(17)が二連歯車(18)の小歯車部に噛合し、二連歯車(18)の大歯車部が伝達歯車(19)に噛合し、伝達歯車(19)が第1の太陽歯車(20)に連結され、前記第1のリング歯車(26)および前記第2のリング歯車(26)がハウジング(1)内に固定され、第1のキャリア(22)と第2の太陽歯車(23)とが固着または一体成型され、第2のキャリア(25)が入力プーリ(27)に連結され、出力プーリ(28)が前記駆動傘歯車に連結されることを特徴とする請求項6に記載のロボットの手首構造(100)。
【請求項8】
ハウジング(1)は、フォーク構造を有し、本体と、前記本体の両側から平行に延びて対向して設けられた第1の支持板(105)および第2の支持板(106)とを備え、前記本体は、相互に接続された第1の半体(101)および第2の半体(102)を備え、第1の半体(101)および第2の半体(102)は、第1のモータ(2)、第2のモータ(3)、前記第1の伝達機構および前記第2の伝達機構を収容する空洞を共同して画定し、第1の支持板(105)が第1の半体(101)に連結され、第2の支持板(106)が第2の半体(102)に連結され、第1の駆動傘歯車(6)が第1の支持板(105)上に回転可能に取り付けられ、第2の駆動傘歯車(7)が第2の支持板(106)上に回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のロボットの手首構造(100)。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のロボットの手首構造(100)を備えることを特徴とするロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットの分野に関し、特に、ロボットの手首構造およびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットは、通常、複数のロボットアームを備えており、ロボットアームの揺動により様々な作業機能が実現される。ロボットの手首は、ロボットアームの揺動を実現するための重要な構成要素であり、従来のロボットの手首は、主として、手首関節ベースと、手首ハウジングとを備え、手首ハウジングは、通常、フォーク構造に形成され、手首関節ベースは、手首ハウジングのフォーク端部に回転可能に取り付けられ、手首ハウジング内には、手首関節ベースを手首ハウジングに対して側方に揺動運動させるための複数の駆動機構および減速機構が取り付けられている。従来のロボットの手首の運動自由度は、1つの側方揺動方向に限られており、柔軟性が乏しく、かつ作業範囲が狭い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示の目的は、運動パターンが多様化し、柔軟性が高く、作業範囲が広いロボットの手首構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成すべく、本開示は、ハウジングと、第1のモータと、第2のモータと、第1の伝達機構と、第2の伝達機構と、第1の駆動傘歯車と、第2の駆動傘歯車と、従動傘歯車と、ホルダと、出力リンクとを備えるロボットの手首構造を提供し、前記第1のモータおよび前記第2のモータが前記ハウジング上に取り付けられ、前記第1の駆動傘歯車、前記第2の駆動傘歯車および前記従動傘歯車がそれぞれ前記ホルダ上に回転可能に取り付けられ、前記第1の駆動傘歯車の軸線が前記第2の駆動傘歯車の軸線と同一直線上にあり、かつ前記従動傘歯車の軸線と直交しており、前記第1の駆動傘歯車と前記第2の駆動傘歯車とが共に前記従動傘歯車に噛合し、前記第1のモータが前記第1の伝達機構を介して前記第1の駆動傘歯車に連結され、前記第2のモータが前記第2の伝達機構を介して前記第2の駆動傘歯車に連結され、前記出力リンクが前記従動傘歯車に固着される。
【0005】
好ましくは、前記出力リンクは、U字状のフォーク構造を有し、前記出力リンクは、第1中間部(1003)と、前記第1中間部(1003)の両端から平行に延びて対向して設けられた第1のフォーク枝および第2のフォーク枝とを備え、前記ホルダは、前記第1のフォーク枝と前記第2のフォーク枝との間に設けられ、前記第1のフォーク枝は、前記従動傘歯車に固着され、前記第2のフォーク枝は、前記ホルダに回転可能に接続される。
【0006】
好ましくは、前記ロボットの手首構造は、前記ホルダ上に回転可能に取り付けられた回転軸をさらに備え、前記回転軸の軸線は、前記従動傘歯車の軸線と同一直線上にあり、前記第2のフォーク枝は、前記回転軸に固着される。
【0007】
好ましくは、前記ホルダは、六面体状に形成され、前記ホルダの左側面に内方に凹む第1の装着室が形成され、右側面に内方に凹む第2の装着室が形成され、前側面に内方に凹む第3の装着室が形成され、後側面に内方に凹む第4の装着室が形成され、ここで、前記第1の装着室内に前記第1の駆動傘歯車が設けられ、前記第2の装着室内に前記第2の駆動傘歯車が設けられ、前記第3の装着室内に前記従動傘歯車が設けられ、前記第4の装着室内に前記回転軸が設けられている。
【0008】
好ましくは、各駆動傘歯車は、前記ホルダの中心に近い内端部と、前記ホルダの中心から遠い外端部と、前記内端部と前記外端部との間に位置する歯車部とを備え、前記内端部の直径は、前記外端部の直径よりも小さく、前記内端部は、第1の軸受を介して前記ホルダ上に取り付けられ、前記外端部は、第2の軸受を介して前記ハウジング上に取り付けられている。
【0009】
好ましくは、前記従動傘歯車は、前記ホルダの中心に近い内端と、前記ホルダの中心から遠い外端と、前記内端と前記外端との間に位置する第2中間部とを備え、前記第2中間部に歯が形成されており、前記内端の直径は、前記外端の直径よりも小さく、前記内端は、第3の軸受を介して前記ホルダ上に取り付けられ、前記外端は、第4の軸受を介して前記ホルダ上に取り付けられている。
【0010】
好ましくは、前記第1の伝達機構と前記第2の伝達機構とは同一構造であり、各伝達機構は、歯車伝達機構と、ベルト伝達機構とを備え、各モータは、順次前記歯車伝達機構および前記ベルト伝達機構を介して対応する前記駆動傘歯車を回転させる。
【0011】
好ましくは、前記歯車伝達機構は、駆動歯車と、二連歯車と、伝達歯車と、第1の遊星歯車列と、第2の遊星歯車列とを備え、前記第1の遊星歯車列は、第1の太陽歯車と、第1の遊星歯車と、第1のキャリアと、第1のリング歯車とを備え、前記第2の遊星歯車列は、第2の太陽歯車と、第2の遊星歯車と、第2のキャリアと、第2のリング歯車とを備え、前記ベルト伝達機構は、入力プーリと、出力プーリと、入力プーリおよび出力プーリに巻き掛けられた伝達ベルトとを備え、前記駆動歯車が前記モータの出力軸に連結され、前記二連歯車が前記ハウジング内に回転可能に取り付けられ、前記駆動歯車が前記二連歯車の小歯車部に噛合し、前記二連歯車の大歯車部が前記伝達歯車に噛合し、前記伝達歯車が前記第1の太陽歯車に連結され、前記第1のリング歯車および前記第2のリング歯車が前記ハウジング内に固定され、前記第1のキャリアと前記第2の太陽歯車とが固着または一体成型され、前記第2のキャリアが前記入力プーリに連結され、前記出力プーリが前記駆動傘歯車に連結される。
【0012】
好ましくは、前記ハウジングは、フォーク構造を有し、本体と、前記本体の両側から平行に延びて対向して設けられた第1の支持板および第2の支持板とを備え、前記本体は、相互に接続された第1の半体および第2の半体を備え、前記第1の半体および前記第2の半体は、前記第1のモータ、前記第2のモータ、前記第1の伝達機構および前記第2の伝達機構を収容する空洞を共同して画定し、前記第1の支持板が前記第1の半体に連結され、前記第2の支持板が前記第2の半体に連結され、前記第1の駆動傘歯車が前記第1の支持板上に回転可能に取り付けられ、前記第2の駆動傘歯車が前記第2の支持板上に回転可能に取り付けられている。
【0013】
本開示の別の態様は、上記に記載のロボットの手首構造を備えるロボットをさらに提供する。
【発明の効果】
【0014】
上記技術案により、本開示の実施例に係るロボットの手首構造は、柔軟性が高く、作業範囲が広い。本開示の実施例に係るロボットの手首構造は、第1の駆動傘歯車、第2の駆動傘歯車および従動傘歯車の差動嵌合によって、ロボットの手首構造の上下揺動、側方揺動およびそれらの結合などの様々な運動パターンを可能にし、ロボットの手首構造の柔軟性を増大させ、かつその作業範囲を拡大する。
【0015】
本開示の他の特徴および利点は、後段の発明を実施するための形態の欄で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面は、本開示のさらなる理解を提供するために使用され、本明細書の一部を構成し、以下の具体的な実施形態とともに本開示を説明するために使用されるが、本開示を限定するものではない。図面において、
【
図1】本開示の実施例のロボットの手首構造の斜視模式図であり、ロボットの手掌コンポーネントを備える。
【
図2】本開示の実施例のロボットの手首構造の分解模式図である。
【
図3】本開示の実施例のロボットの手首構造の伝達機構およびハウジングの分解模式図である。
【
図4】本開示の実施例のホルダおよびその内部コンポーネントの分解模式図である。
【
図5】
図1のA−A線に沿ったロボットの手首構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図面を参照して本開示の具体的な実施形態について詳細に説明する。本明細書に記載された具体的な実施形態は、本開示の説明および解釈のみに用いられ、本開示を限定するものではないと理解すべきである。
【0018】
逆に説明されない限り、「前」、「後」、「左」、「右」などの用語で指示される方位や位置関係は、図面に示された方位や位置関係に基づくものであり、本開示の説明を容易にするためのものにすぎず、言及された装置または要素が特定の方位を有し、特定の方位で構築および動作しなければならないことを示すかまたは示唆するものではなく、したがって、本開示を限定するものと解釈されるべきではない。
【0019】
図1〜
図5に示すように、本開示の実施例は、ハウジング1と、第1のモータ2と、第2のモータ3と、第1の伝達機構と、第2の伝達機構と、第1の駆動傘歯車6と、第2の駆動傘歯車7と、従動傘歯車8と、ホルダ9と、出力リンク10とを備えるロボットの手首構造100を提供する。第1のモータ2および第2のモータ3がハウジング1上に取り付けられ、第1の駆動傘歯車6、第2の駆動傘歯車7および従動傘歯車8がそれぞれホルダ9上に回転可能に取り付けられ、第1の駆動傘歯車6の軸線a1が第2の駆動傘歯車7の軸線a2と同一直線上にあり、かつ従動傘歯車8の軸線bと直交しており、第1の駆動傘歯車6と第2の駆動傘歯車7とが共に従動傘歯車8に噛合し、第1のモータ2が第1の伝達機構を介して第1の駆動傘歯車6に連結され、第2のモータ3が第2の伝達機構を介して第2の駆動傘歯車7に連結され、出力リンク10が従動傘歯車8に固着される。
【0020】
第1のモータ2および第2のモータ3が同方向に同じ速度で回転すると、第1の伝達機構および第2の伝達機構を介して第1の駆動傘歯車6および第2の駆動傘歯車7をホルダ9上で同方向に同じ速度で回転させることができ、第1の駆動傘歯車6と第2の駆動傘歯車7とが共に従動傘歯車8に噛合するため、噛合している歯によって従動傘歯車8を係止してその軸線b回りの回転を規制し、モータ2、3の駆動力によって、第1の駆動傘歯車6および第2の駆動傘歯車7が従動傘歯車8に対して従動傘歯車8の軸線に直交する力を加えることで、従動傘歯車8がホルダ9および出力リンク10を軸線a1回りに回転させ、これによりロボットの手首の軸線a1回りの側方揺動運動が実現される。
【0021】
第1のモータ2および第2のモータ3が異なる方向に同じ速度で回転すると、第1の伝達機構および第2の伝達機構を介して第1の駆動傘歯車6および第2の駆動傘歯車をホルダ9上で異なる方向に同じ速度で回転させることができ、これにより従動傘歯車8を軸線b回りに回転させ、このときホルダ9が静止しており、従動傘歯車8が出力リンク10を軸線b回りに回転させ、これによりロボットの手首の軸線b回りの上下揺動運動が実現される。
【0022】
第1のモータ2および第2のモータ3が同方向に異なる速度で回転するかまたは異なる方向に異なる速度で回転すると、第1の伝達機構および第2の伝達機構を介して第1の駆動傘歯車6および第2の駆動傘歯車7をホルダ9上で同方向に異なる速度で回転させるかまたは異なる方向に異なる速度で回転させることができ、これにより従動傘歯車8を差動回転させ、その結果、従動傘歯車8は、ホルダ9および出力リンク10を軸線a1回りに回転させるだけでなく、また出力リンク10を軸線b回りに回転させ、これによりロボットの手首の軸線a1回りの側方揺動および軸線b回りの上下揺動の結合運動が実現される。
【0023】
以上に記載の運動プロセスによれば、本開示の実施例に係るロボットの手首構造100は、第1の駆動傘歯車6、第2の駆動傘歯車7および従動傘歯車8の差動嵌合によって、ロボットの手首構造100の上下揺動、側方揺動およびそれらの結合などの様々な運動パターンを可能にし、ロボットの手首構造100の柔軟性を増大させ、かつその作業範囲を拡大する。
【0024】
さらに、
図1および
図4に示すように、本開示の実施例における出力リンク10は、U字状のフォーク構造を有し、出力リンク10は、第1中間部1003と、第1中間部1003の両端から平行に延びて対向して設けられた第1のフォーク枝1001および第2のフォーク枝1002とを備え、ホルダ9は、第1のフォーク枝1001と第2のフォーク枝1002との間に設けられる。第1のフォーク枝1001および第2のフォーク枝1002の端部に複数の取り付け孔、例えば三角形状に間隔をおいて配置された3つの取り付け孔が形成されているが、これに限定されず、従動傘歯車8に上記取り付け孔に整合する孔が形成されており、第1のフォーク枝1001は、従動傘歯車8に固着され、例えばボルト、リベット、ピンなどの締結具で締結されてもよく、第2のフォーク枝1002は、ホルダ9に回転可能に接続される。
【0025】
出力リンク10は、ロボットの実行端末を取り付けるために使用されてもよく、例えば、ロボットの手掌コンポーネント4を出力リンク10上に取り付け、出力リンク10を介してロボットの手掌コンポーネント4を軸線a1および/または軸線b回りに回転させることで、ロボットの手掌の上下揺動および側方揺動運動が実現され、柔軟性が高い。好ましくは、他の実施形態において、出力リンク10は次段のアームなどの他の構造に接続されてもよく、本開示はこれに限定されない。
【0026】
好適な実施形態として、
図4に示すように、ロボットの手首構造100は、回転軸11と、第5の軸受111とをさらに備えてもよく、回転軸11は、第5の軸受111を介してホルダ9に回転可能に取り付けられ、回転軸11の外端周縁には、第5の軸受111がホルダ9から抜けないように、第5の軸受111を位置決めするためのフランジ112がさらに形成されてもよい。該回転軸11の軸線は、従動傘歯車8の軸線bと同一直線上にあり、かつホルダ9の両側にそれぞれ対向して設けられ、回転軸11の外端面には、第2のフォーク枝1002がボルト、リベット、ピンなどの締結具で回転軸11に固着されるように、第2のフォーク枝1002上における取り付け孔に整合する孔がさらに形成されてもよい。
【0027】
さらに、ホルダ9は、六面体状に形成されてもよく、ホルダ9の左側面に内方に凹む第1の装着室91(
図2)が形成され、右側面に内方に凹む第2の装着室92が形成され、前側面に内方に凹む第3の装着室93が形成され、後側面に内方に凹む第4の装着室(図示せず)が形成されており、ただし、第1の装着室91内に第1の駆動傘歯車6が設けられ、第2の装着室92内に第2の駆動傘歯車7が設けられ、第3の装着室93内に従動傘歯車8が設けられ、第4の装着室内に回転軸11が設けられている。
【0028】
具体的には、
図2、
図4、
図5に示すように、各駆動傘歯車6、7は、ホルダ9の中心に近い内端部671と、ホルダ9の中心から遠い外端部672と、内端部671と外端部672との間に位置する歯車部673とを備える。内端部671および外端部672は、円柱状に形成され、かつ内端部671の直径が外端部672の直径よりも小さく、歯車部673は、テーパ状に形成され、かつ歯車部673の直径が外端部672から内端部671に向かって徐々に縮径する。好ましくは、駆動傘歯車6、7の内端部671、外端部672および歯車部673は、第1の装着室91および第2の装着室92内に一体的に収容され、内端部671は、第1の軸受12を介して第1の装着室91および第2の装着室92におけるホルダ9の中心に近い位置に取り付けられ、外端部672は、第2の軸受13を介してハウジング1上に取り付けられ、ただし、ハウジング1に第2の軸受13を嵌設する環状構造107が形成され、該環状構造107は第1の装着室91および第2の装着室92内に突出でき、これにより全体構造をよりコンパクトにさせ、全体構造の占有空間を小さくする。
【0029】
同様に、従動傘歯車8は、ホルダ9の中心に近い内端と、ホルダ9の中心から遠い外端81と、内端と外端81との間に位置する第2中間部82とを備える。内端および外端81は円柱状構造に形成され、内端の直径が外端81の直径よりも小さく、第2中間部に歯が形成されており、第2中間部82は外端81から内端に向かって漸減するテーパ状に形成され、内端は第3の軸受14を介して第3の装着室93におけるホルダ9の中心に近い位置に取り付けられ、外端81は第4の軸受15を介してホルダ9上に取り付けられる。好ましくは、第4の軸受15は、軸受ホルダ16を介してホルダ9の内壁に固定されてもよく、軸受ホルダ16は第4の軸受15に対して位置決めおよび密封の役割を果たし、該軸受ホルダ16は係止または接着などの方式によりホルダ9の内壁に固定されてもよいが、これに限定されず、例えば、本開示の他の実施例では、軸受ホルダ16はさらにホルダ9と一体成型されてもよい。
【0030】
図2〜
図5に示すように、本開示の実施例では、第1の伝達機構と第2の伝達機構とは同一構造であり、かつモータ2、3による各駆動傘歯車6、7に対する同期駆動を実現するように、鏡像関係となるようにハウジング1内に配置されてもよく、各伝達機構は、歯車伝達機構と、ベルト伝達機構とを備え、各モータ2、3は、順次歯車伝達機構およびベルト伝達機構を介して対応する駆動傘歯車6、7を回転させる。
【0031】
具体的には、歯車伝達機構は、駆動歯車17と、二連歯車18と、伝達歯車19と、第1の遊星歯車列と、第2の遊星歯車列とを備える。ただし、二連歯車18は、小歯車部と、大歯車部とを備え、第1の遊星歯車列は、第1の太陽歯車20と、第1の遊星歯車21と、第1のキャリア22と、第1のリング歯車とを備え、第2の遊星歯車列は、第2の太陽歯車23と、第2の遊星歯車24と、第2のキャリア25と、第2のリング歯車とを備え、好ましくは、本開示の実施例では、第1の遊星歯車列および第2の遊星歯車列は1つのリング歯車26に一体成型されてもよい。
【0032】
ベルト伝達機構は、入力プーリ27と、出力プーリ28と、入力プーリ27および出力プーリ28に巻き掛けられた伝達ベルト29とを備える。
【0033】
以下に
図1〜
図5を参照しながら歯車伝達機構およびベルト伝達機構の具体的な接続形態を詳細に説明する。
【0034】
駆動歯車17は、モータ2、3の出力軸に接続され、二連歯車18は、ハウジング1内に回転可能に取り付けられ、該ロボットの手首構造100は、第1の芯出し軸30と、第2の芯出し軸31とをさらに備え、第1の芯出し軸30および第2の芯出し軸31の中間位置に径方向に沿って延在する仕切板がそれぞれ形成されており、第1の芯出し軸30の両端がハウジング1の内壁上にそれぞれ固定され、第1の芯出し軸30の仕切板の両側に二連歯車18がそれぞれ取り付けられ、駆動歯車17は二連歯車18の小歯車部に噛合し、二連歯車18の大歯車部は伝達歯車19に噛合する。
【0035】
伝達歯車19は、第1の太陽歯車20に連結され、好適な実施形態として、伝達歯車19は、外リング歯車構造に形成されてもよく、第1の遊星歯車列は、遊星回転盤32と、伝達軸33とをさらに備え、伝達歯車19は、伝達軸33上に嵌設されて伝達軸33を回転させる。好ましくは、遊星回転盤32、伝達軸33および第1の太陽歯車20は、部品数を減らすように一体成型されてもよく、第1の遊星歯車21は、第1のキャリア22および第1のリング歯車を介して第1の太陽歯車20の周囲に保持され、第1のキャリア22は、第2の太陽歯車23に固着されるかまたは一体成型され、第2の遊星歯車24は、第2のキャリア25および第2のリング歯車を介して第2の太陽歯車23の周囲に保持され、第1のリング歯車および第2のリング歯車は、ハウジング1内に固定され、第2のキャリア25の他側は、ボルトなどの締結具で入力プーリ27に連結され、入力プーリ27は、伝達ベルト29を介して出力プーリ28に連結され、出力プーリ28は、ボルトなどの締結具で駆動傘歯車6、7に連結される。このようにして、モータ2、3は、歯車伝達機構およびベルト伝達機構を介して駆動傘歯車6、7を回転させることができる。
【0036】
本開示の実施例では、第2のキャリア25と入力プーリ27との間に押輪34がさらに設けられてもよく、押輪34はボルトなどの締結具で第2のキャリア25上に固定され、押輪34および第2のキャリア25は共にハウジング1上に取り付けられ、押輪34は第2のキャリア25の回転を支持するために用いられる。
【0037】
好適な実施形態として、ロボットの手首構造100のハウジング1は、フォーク構造を有し、本体と、接続部材5とを備え、本体は、相互に接続された第1の半体101および第2の半体102を備え、第1の半体101および第2の半体102は、第1のモータ2、第2のモータ3、第1の伝達機構および第2の伝達機構を収容する空洞を共同して画定し、接続部材5上に締結具を取り付けるための貫通孔が形成されており、第1の半体101および第2の半体102上に接続部材5とマッチングするための溝104がそれぞれ形成されており、これによりハウジング1が占有する外部空間を減らし、接続部材5は溝104中に置かれて第1の半体101および第2の半体102を締結具で接続する。
【0038】
ハウジング1は、本体の両側から平行に延びて対向して設けられた第1の支持板105と、第2の支持板106とをさらに備え、第1の支持板105は第1の半体101に連結され、第2の支持板106は第2の半体102に連結され、例えばボルトなどの締結具による接続または溶接などによって連結されてもよく、本開示はこれに限定されない。第1の駆動傘歯車6は第1の支持板105上に回転可能に取り付けられ、第2の駆動傘歯車7は第2の支持板106上に回転可能に取り付けられる。ホルダ9は第1の支持板105と第2の支持板106との間に取り付けられ、第1の駆動傘歯車6および第2の駆動傘歯車7はホルダ9を軸線a1回りに回転させることができる。第1の支持板105および第2の支持板106に駆動傘歯車6、7の外端部672を取り付けるための環状構造107が形成されており、第1の支持板105および第2の支持板106にベルト伝達機構を避けるための貫通孔がさらに形成されており、入力プーリ27は第2のキャリア25上に固定され、かつ第1の半体101および第2の半体102の外側に突出し、ロボットの手首構造100をよりコンパクトにさせるために、上記第1の支持板105および第2の支持板106上における貫通孔は入力プーリ27、出力プーリ28および伝達ベルト29を収容でき、これによりベルト伝達機構を保護する。
【0039】
好ましくは、ハウジング1上にボス103がさらに形成されてもよく、ボス103は、ロボットの手首構造100の上段のアーム構造または他の接続構造に連結されるために使用される。ハウジング1の外側には、ロボットの手首構造100の入力および出力信号を制御するための複数の集積回路基板35がさらに固定されている。以上説明したロボットの手首構造100はコンパクトで、集積度が高く、占有空間が小さく、ロボットが人の手首を模倣する運動を比較的容易に実現することができる。
【0040】
本開示の実施例におけるロボットの手首構造100の動作原理は以下のとおりである。
モータ2、3が始動すると、モータ2、3の出力軸は駆動歯車17を回転させ、駆動歯車17は二連歯車18の小歯車部を回転させ、次に、二連歯車18の大歯車部は伝達歯車19を回転させ、伝達歯車19は第1の太陽歯車20を回転させ、第1の太陽歯車20は第1の遊星歯車21を回転させ、第1の遊星歯車21は第1のキャリア22を回転させ、第1のキャリア22上における第2の太陽歯車23もこれに伴って回転し、第2の太陽歯車23は第2の遊星歯車24を回転させ、第2の遊星歯車24は入力プーリ27を回転させ、入力プーリ27は伝達ベルト29を介して出力プーリ28を回転させ、出力プーリ28は駆動傘歯車6、7を回転させ、駆動傘歯車6、7は従動傘歯車8を回転させ、従動傘歯車8は出力リンク10を回転させる。
【0041】
第1のモータ2および第2のモータ3が同じ方向に同じ速度で回転すると、従動傘歯車8は、ホルダ9および出力リンク10を軸線a1回りに回転させ、これによりロボットの手首の軸線a1回りの側方揺動運動が実現される。
【0042】
第1のモータ2および第2のモータ3が異なる方向に同じ速度で回転すると、従動傘歯車8は出力リンク10を軸線b回りに回転させ、これによりロボットの手首の軸線b回りの上下揺動運動が実現される。
【0043】
第1のモータ2および第2のモータ3が同方向に異なる速度で回転するかまたは異なる方向に異なる速度で回転すると、従動傘歯車8はホルダ9および出力リンク10を軸線a1回りに回転させるだけでなく、また出力リンク10を軸線b回りに回転させ、これによりロボットの手首の軸線a1回りの側方揺動および軸線b回りの上下揺動の結合運動が実現される。
【0044】
本開示の別の態様は、上記のロボットの手首構造100を備えるロボットをさらに提供する。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示は上記実施形態の具体的な詳細に限定されるものではなく、本開示の技術的思想の範囲内において、本開示の技術案について様々な変更が可能であり、これらの変更は本開示の技術的範囲に属するものである。
【0046】
なお、上述した具体的な実施形態に説明された各具体的な技術的特徴は、矛盾がない限り、任意に組み合わせることが可能である。説明の重複を避けるために、本開示は、様々な可能な組み合わせについて、別途に説明しない。
【0047】
また、本開示の様々な実施形態を任意に組み合わせることも可能であり、それらは本開示の思想に反しない限り、本開示の開示内容と同様に解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0048】
100...ロボットの手首構造、1...ハウジング、101...第1の半体、102...第2の半体、103...ボス、104...溝、105...第1の支持板、106...第2の支持板、107...環状構造、2...第1のモータ、3...第2のモータ、4...ロボットの手掌コンポーネント、5...接続部材、6...第1の駆動傘歯車、7...第2の駆動傘歯車、671...内端部、672...外端部、673...歯車部、92...第2の装着室、93...第3の装着室、9...ホルダ、91...第1の装着室、8...従動傘歯車、81...外端、82...第2中間部、10...出力リンク、1001...第1のフォーク枝、1002...第2のフォーク枝、1003...第1中間部、11...回転軸、111...第5の軸受、112...フランジ、12...第1の軸受、13...第2の軸受、14...第3の軸受、15...第4の軸受、16...軸受ホルダ、17...駆動歯車、18...二連歯車、19...伝達歯車、20...第1の太陽歯車、27...入力プーリ、21...第1の遊星歯車、22...第1のキャリア、28...出力プーリ、23...第2の太陽歯車、24...第2の遊星歯車、29...伝達ベルト、25...第2のキャリア、26...リング歯車(第1のリング歯車および第2のリング歯車)、32...遊星回転盤、30...第1の芯出し軸、31...第2の芯出し軸、33...伝達軸、34...押輪、35...集積回路基板、a1...第1の駆動傘歯車の軸線、a2...第2の駆動傘歯車の軸線、b...従動傘歯車の軸線