(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963162
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】平板型燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/247 20160101AFI20211025BHJP
H01M 8/2483 20160101ALI20211025BHJP
H01M 8/2485 20160101ALI20211025BHJP
H01M 8/2465 20160101ALI20211025BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20211025BHJP
【FI】
H01M8/247
H01M8/2483
H01M8/2485
H01M8/2465
!H01M8/12 101
!H01M8/12 102A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-250370(P2017-250370)
(22)【出願日】2017年12月27日
(65)【公開番号】特開2019-117707(P2019-117707A)
(43)【公開日】2019年7月18日
【審査請求日】2020年12月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500460357
【氏名又は名称】マグネクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130476
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 昭穂
(72)【発明者】
【氏名】樫本 明宜
(72)【発明者】
【氏名】茂木 宏孝
(72)【発明者】
【氏名】安倍 正樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 友喜
【審査官】
浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−157243(JP,A)
【文献】
特開2007−042441(JP,A)
【文献】
特開2012−133892(JP,A)
【文献】
特開2011−060639(JP,A)
【文献】
米国特許第05484666(US,A)
【文献】
特開2005−216581(JP,A)
【文献】
特開2014−146537(JP,A)
【文献】
特開2001−023651(JP,A)
【文献】
特開2011−154821(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2010−0072802(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00〜8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
四辺形の燃料電池スタックのセル本体に対向する位置に円形開口部を設け、前記円形開口部により生じる前記燃料電池スタックの隅角部において、
前記燃料電池スタックの隣り合う2つの外辺と、前記円形開口部の外周とから形成されるガスマニホールド開口部にスタック固定ボルトを貫通させ、
前記スタック固定ボルトは、前記ガスマニホールド開口部内に突出したボルト受けプレートを貫通することを特徴とする平板型燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1に記載の平板型燃料電池スタックであって、前記ガスマニホールドは、それぞれ所定の幅の縁部を有して三角形又は多角形に形成されることを特徴とする平板型燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の平板型燃料電池スタックであって、前記スタック固定ボルトは、ガスマニホールド領域内であって前記ガスマニホールド開口部を貫通する位置に設けられることを特徴とする平板型燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の平板型燃料電池スタックであって、ガスシール材は、前記セル本体の各要素から内部側に余長を有して両側から挟み込み、単セルの両端部に配置されたセパレータ同士を締結する前記スタック固定ボルトを介した加圧により、前記ガスマニホールドの隙間からのガス漏れを封止することを特徴とする平板型燃料電池スタック。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の平板型燃料電池スタックであって、燃料ガス流路の方向と酸化ガス流路の方向とがクロスするように、前記ガスマニホールドのガス供給口とガス排出口とが対向する前記隅角部に配置されることを特徴とする平板型燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板型燃料電池スタックに係り、特に、平板型の固体酸化物型燃料電池において、燃料ガス及び酸化ガスの供給及び排出を行うガスマニホールドを備えた平板型燃料電池スタックに関する。
【0002】
平板型燃料電池スタック、特に平板型の固体酸化物型燃料電池(SOFC;Solid Oxide Fuel Cell)の単セルには、積層された板材を貫通するガスマニホールドが設けられる。供給用ガスマニホールドから発電用の酸素などの酸化ガス及び水素などの燃料ガスが供給され、排気用ガスマニホールドへと排気される。そして、燃料電池スタックは、供給された燃料ガスと酸化ガスとを化学反応させて電気を発生させる装置である。
【背景技術】
【0003】
特許文献1には、平板型燃料電池スタック及びモジュールが開示されている。ここでは、平板型燃料電池スタックの外枠を構成する各セパレータは、燃料電池スタックの四隅に円形のマニホールドを有し、その周辺部に切り欠き部を備えている。
【0004】
特許文献2には、燃料電池発電装置が開示されている。ここでは、燃料電池スタックのセパレータの四隅に張り出し部を形成し、この張り出し部に各ガスの給排用のマニホールドを設けている。
【0005】
特許文献3には、燃料電池スタックが開示されている。ここでは、ケーシングの四隅には、酸化剤ガス入口連通孔、燃料ガス出口連通孔、燃料ガス入口連通孔及び酸化剤ガス出口連通孔が設けられ、積層体には、外周部の四辺に凹部が形成されている。
【0006】
燃料電池スタックにおけるガスの流通方式として、クロスフロー方式及びカウンターフロー方式が提案されている。
図6に、燃料電池スタックのクロスフロー方式による実施例を示す。クロスフロー方式とは、燃料ガス流路の方向と酸化ガス流路の方向とを平面的に直交させる方式である。また、カウンターフロー方式とは、燃料ガス流路の方向と酸化ガス流路の方向とを平面的に対向させる方式である。本願では、2つの方式のうちクロスフロー方式を採用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−70770号公報
【特許文献2】実開平4−8260号公報
【特許文献3】特開2006−108009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
燃料電池スタックは、起動時間或いは停止時間を短くするために、燃料電池スタック自体の熱容量を可能な限り最小化することが望ましい。すなわち、燃料電池スタックの体積を小さくすることにより熱容量を減少させ、効率よく昇温及び降温させることができる。そのためには、平板状の燃料電池においては、燃料電池スタックの面積に対する単セルの発電部面積の割合を出来るだけ大きくすることが望ましい。
【0009】
図7に、従来の燃料電池スタックにおけるガスマニホールド及びスタック固定ボルトの形状及び配置を示す。このように、従来の燃料電池スタックのガスマニホールドは、方形の燃料電池スタックに対して四角形の単セルが四方に配置されていたため断面の効率が悪かった。すなわち、従来の一般的な燃料電池スタックにおいては、燃料電池スタックの断面の隅角部が特に活用されていなかった。逆に、スタック固定ボルトは燃料電池スタックの隅角部に配置されていたためガス漏れ封止の効果は限定されていた。
【0010】
燃料電池スタックの面積に対する単セルの発電部面積の割合を最大化する一つの方法として、特許文献1乃至3などのように燃料電池スタックの隅角部にガスマニホールド等を配置する構造が提案され、特許文献1に示す切り欠き部、特許文献2に示す張り出し部、及び特許文献3に示す外周部の四辺に設けられる凹部等により燃料電池スタックの断面の隅角部が活用され、燃料電池スタックの面積に対する単セルの発電部面積の割合を最大化することが提案されている。
【0011】
また、燃料電池スタックは、燃料ガスと酸化ガスとを化学反応させて電気を発生させる装置であるため、燃料ガス及び酸化ガスが化学反応する前にガス漏れを起こさない構造でなければならない。このガス漏れには、単セルのセル本体とセルホルダとの隙間から単セル内部へ漏れる内部ガス漏れ、及び、単セルのガスマニホールドから単セル外部へ漏れる外部ガス漏れがある。
【0012】
このガス漏れを封止する手段として、セル本体とスペーサをガラスシールで固定する方法が採用されている。この手法では、ガラスシール部が衝撃により剥離したり、燃料電池に発生する熱膨張差によりセルが割れたりする虞があった。さらに、ガラスシール材の選定が難しく、このガラスシール材の生産設備の取り扱いが煩雑となり、生産性が悪いという課題があった。
【0013】
また、このガス漏れを封止する手段として、ガスマニホールドを構成する板材同士を溶接等により固定する手法が採用されている。この手法では、溶接による熱影響が局部的に発生するため、発生する熱膨張差により燃料電池スタックに積層された単セルに割れが発生するという虞があった。
【0014】
本願の目的は、係る課題を解決し、平板型燃料電池スタックにおいて、燃料電池スタック断面の隅角部を活用し、単セル本体の外周部から外部へのガス漏れを封止し、かつガスマニホールドから外部及び内部へのガス漏れを封止する平板型燃料電池スタックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明に係る平板型燃料電池スタックは、四辺形の燃料電池スタックのセル本体に対向する位置に円形開口部を設け、円形開口部により生じる前記燃料電池スタックの隅角部において、
燃料電池スタックの隣り合う2つの外辺と、円形開口部の外周とから形成されるガスマニホールド開口部にスタック固定ボルトを貫通させ、スタック固定ボルトは、ガスマニホールド開口部内に突出したボルト受けプレートを貫通することを特徴とする。
【0016】
上記構成により、平板型燃料電池スタックは、隅角部にガスマニホールドを配置することができる。これにより、隅角部を活用して燃料電池スタックの面積に対する単セルの発電部面積の割合を最大化することができる。また、この隅角部に燃料電池スタックを貫通するスタック固定ボルトを配置することができる。このスタック固定ボルトは燃料電池スタックを積層方向に加圧し、燃料ガス又は酸化ガスが流通するガスマニホールドの近傍において、積層される単セルの構成要素間の隙間から発生するガス漏れを封止することができる。
【0017】
また、燃料電池スタックは、ガスマニホールドが燃料電池スタックの隣り合う2つの外辺と、円形開口部の外周とから形成されるマニホールド領域内に設けられ、それぞれ所定の幅の縁部を有して三角形又は多角形に形成されることが好ましい。このように、方形の燃料電池スタックに円形の単セルを配置した場合に生じる隅角部の領域である「ガスマニホールド領域」にガスマニホールドを設置することで、無駄がなくコンパクトなガスマニホールドの配置が可能となる。なお、「燃料電池スタックの外辺、及び単セルの外周に囲まれるガスマニホールド領域」とは、燃料電池スタックの外辺、及び単セルの外周という3本の直線、又はそれらの延長線により形成される領域をいう。
【0018】
また、平板型燃料電池スタックは、スタック固定ボルトがガスマニホールド領域内であってガスマニホールド開口部を貫通
する位置に設けられることが好ましい。このように、スタック固定ボルトは燃料ガス又は酸化ガスが流通するガスマニホールド領域において燃料電池スタックを積層方向に加圧し、積層される単セルの構成要素間の隙間から発生するガス漏れを封止することができる。すなわち、ガスマニホールド開口部の内部に露出しない位置で平板型燃料電池スタックのずれを防ぎながら積層方向に加圧することができる。
【0019】
また、平板型燃料電池スタックは、スタック固定ボルトがガスマニホールド領域内であってガスマニホールド開口部を貫通する位置に設けられることが好ましい。このように、スタック固定ボルトは燃料ガス又は酸化ガスが流通するガスマニホールド領域であってガスマニホールド開口部内において、積層される単セルの構成要素間の隙間から発生するガス漏れを封止することができる。すなわち、ガス漏れが発生し易いガスマニホールド開口部の内周部にほぼ均等な位置で平板型燃料電池スタックを積層方向に加圧することができる。
【0020】
さらに、平板型燃料電池スタックは、スタック固定ボルトがガスマニホールド開口部内に突出したボルト受けプレートに設けられた円形開口部を貫通することが好ましい。これにより、ガス漏れが発生し易いガスマニホールド開口部の内周部にほぼ均等な位置で平板型燃料電池スタックのずれを防ぎながら積層方向に加圧することができる。
【0021】
さらに、平板型燃料電池スタックは、ガスシール材がセル本体の各要素から内部側に余長を有して両側から挟み込み、単セルの両端部に配置されたセパレータ同士を締結するスタック固定ボルトを介した加圧により、ガスマニホールドの隙間からのガス漏れを封止することが好ましい。これにより、燃料ガス又は酸化ガスが流通するガスマニホールド開口部において、スタック固定ボルトにより燃料電池スタックを積層方向に加圧することで、積層される単セルの構成要素間の隙間から発生するガス漏れを封止することができる。
【0022】
さらに、平板型燃料電池スタックは、燃料ガス流路の方向と酸化ガス流路の方向とがクロスするように、ガスマニホールドのガス供給口とガス排出口とが対向する隅角部に配置されることが好ましい。これにより、発電時の燃料電池スタックの温度分布をより均一化し、平板型燃料電池スタックを効率よく昇温及び降温させることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明に係る平板型電池スタックによれば、平板型燃料電池において、平板型燃料電池スタック断面の隅角部を活用し、単セル本体の外周部から外部へのガス漏れを封止し、かつガスマニホールドから外部及び内部へのガス漏れを封止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】燃料電池スタックにおける酸化ガス及び燃料ガスの流路に関する一つの実施形態の概略構成を示す平面図である。
【
図2】
図1の燃料電池スタックにおいて隣接する燃料電池スタックの外辺、及び単セルの外周の囲まれたガスマニホールド領域を示す説明図である。
【
図3】
図1の燃料電池スタックの単セルの構成を示す斜視図である。
【
図4】スタック固定ボルトがガスマニホールド開口部内を貫通する実施例、及びスマニホールド開口部内を貫通しない実施例を示す説明図である。
【
図5】スタック固定ボルトがガスマニホールド開口部内に突出したボルト受けプレートに設けられた開口部を貫通する実施例を示す詳細図である。
【
図6】ガスマニホールドから燃料電池スタックの外部及び内部へのガス漏れ封止手段を示す詳細図である。
【
図7】従来の燃料電池スタックの単セル及びガスマニホールドの配置、及び燃料電池におけるクロスフロー方式による構成を示す平面図である。
【
図8】本願の燃料電池スタックと従来の燃料電池スタックとにおける、燃料電池スタックの面積に対する単セルの発電部面積の割合を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(燃料電池スタックのガス流路)
以下に、図面を用いて本発明に係る燃料電池スタック1につき、詳細に説明する。
図1に燃料電池スタック1における燃料ガス及び酸化ガスの流路に関する一つの実施形態の概略構成を平面図で示す。
図1(a)は、燃料極14におけるガスマニホールド2及び燃料ガス流路5の構成を示す。
図1(b)は、酸化極16におけるガスマニホールド2及び酸化ガス流路6の構成を示す。また、
図2に、
図1の燃料電池スタックにおいて隣接する燃料電池スタックの外辺、及び単セルの外周の囲まれたガスマニホールド領域を示す。
【0026】
ガスマニホールド2は、燃料ガス供給マニホールド9a、燃料ガス排出マニホールド9b、酸化ガス供給マニホールド9c、及び酸化ガス排出マニホールド9dから構成される。
図1(a)では、燃料ガスが燃料ガス供給マニホールド9aに接続する燃料ガス供給口4aから供給され、燃料ガス流路5を経由して燃料ガス排出マニホールド9bに接続する燃料ガス排出口4bから排出される。また、
図1(b)では、酸化ガスが酸化ガス供給マニホールド9cに接続する酸化ガス供給口4cから供給され、酸化ガス流路6を経由して酸化ガス排出マニホールド9dに接続する酸化ガス排出口4dから排出される。また、燃料ガス流路5と、燃料ガス供給マニホールド9a及び燃料ガス排出マニホールド9bとは、燃料極側連通部12aにより連通している。また、酸化ガス流路6と、酸化ガス供給マニホールド9c及び酸化ガス排出マニホールド9dとは、酸化極側連通部12bにより連通している。
【0027】
本実施形態の燃料電池スタック1は方形の断面を有し、その中央部に円形の単セル3が配置される。この円形の単セル3の部分は、
図1(a)に示す燃料極14の位置、及び
図1(b)に示す酸化極16の位置では、それぞれ燃料極側円形開口部11a及び酸化極側円形開口部11bとなる。そして、各ガスマニホールド9a〜9dは、燃料電池スタック1の隅角部に効率的に配置することで燃料電池スタック1の面積に対する単セル3の発電部面積の割合を最大化することができる。ここで、「燃料電池スタック1の面積」とは、燃料電池スタック1の方形の断面積をいい、「単セル3の発電部面積」とは、単セル3の円形の断面積をいう。
図1では、方形の燃料電池スタック1が正方形である場合を図示するが、正方形に限らず、例えば長方形、菱形などであっても良い。また、
図1では、単セル3の発電面積が円形である場合を図示するが、円形に限らず、例えば多角形、楕円形などであっても良い。
【0028】
(ガスマニホールド領域)
図2(a)に、燃料電池スタック1の燃料極14における燃料ガス流路5及び燃料極側ガスマニホールド領域20aをハッチングにより示す。また、
図2(b)に、燃料電池スタック1の酸化極16における酸化ガス流路6及び酸化極側ガスマニホールド領域20bをハッチングにより示す。このガスマニホールド領域20は、燃料電池スタック1の4箇所の隅角部に発生するが、ここでは、向かって右上の領域についてのみ代表してハッチングにより示す。ガスマニホールド領域20とは、燃料電池スタック1の外辺21a,21b、及び単セルの外周22という3本の直線、又はそれらの延長線により形成される領域をいう。つまり、平板状の燃料電池スタックにおいて、方形の燃料電池スタック1の中央部に円形の単セル3を配置すると、隣接する燃料電池スタック1の外辺21a,21b、及び単セルの外周22により四隅にガスマニホールド領域20が形成される。なお、
図4では、単セルの外周22の線は、燃料ガス供給マニホールド9a、及び燃料ガス排出マニホールド9bでは燃料極側連通部12aを含むが、酸化ガス供給マニホールド9c、及び酸化ガス排出マニホールド9dでは、燃料極側連通部12aを含まない。なお、酸化極16における酸化ガス流路6及びガスマニホールド領域20についても同様である。すなわち、単セルの外周22の線は、酸化ガス供給マニホールド9c、及び酸化ガス排出マニホールド9dでは酸化極側連通部12bを含むが、燃料ガス供給マニホールド9a、及び燃料ガス排出マニホールド9bでは、酸化極側連通部12bを含まない。
【0029】
図2に示すように、ガスマニホールド領域20には、ガスマニホールド開口部9である燃料ガス供給マニホールド9a、燃料ガス排出マニホールド9b、酸化ガス供給マニホールド9c、及び酸化ガス排出マニホールド9dが設けられる。このガスマニホールド開口部9は、燃料電池スタックの外辺21a,21bから所定の外辺縁部幅(t
1)を持つ外辺縁部7と、単セルの外周から所定の外周縁部幅(t
2)を持つ外周縁部8とを有して形成される。また、ガスマニホールド開口部9は、部分的に単セルの外周22とガスマニホールド開口部9とが、燃料極側連通部12a又は酸化極側連通部12bを介して形成される。
【0030】
(クロスフロー方式)
図1及び
図2に示すように、燃料ガス流路5の方向と酸化ガス流路6の方向とがクロスするように、ガスマニホールド開口部9の位置を配置する。すなわち、燃料ガス供給口4a及び燃料ガス排出口4bと、酸化ガス供給口4c及び酸化ガス排出口4dとをそれぞれ対向する隅角部に配置する。この平板型燃料電池スタックにおけるガスマニホールド2の配置を「クロスフロー方式」と称する。
【0031】
(単セルにおける燃料電池の発電)
図3に、燃料電池スタック1の単セル3の構成に関する実施形態を示す。すなわち、燃料極14における燃料ガス流路5、及び酸化極16における酸化ガス流路6と、ガスマニホールド2を示す。燃料電池スタック1は、燃料極14、電解質17(
図6(a)参照)、及び酸化極16を基本単位とするセル本体15に燃料極側セパレータ13a、及び酸化極側セパレータ13bが取り付けられて単セル3が構成される。ここで、セル本体15は、セルホルダ18により保持される。そして、この単セル3が複数個積層されて燃料電池スタック1が形成される。さらに、ガスマニホールド2は、燃料ガス供給マニホールド9a、燃料ガス排出マニホールド9b、酸化ガス供給マニホールド9c、及び酸化ガス排出マニホールド9dからなり、それぞれ単セル3を縦方向に貫通する。また、燃料極側セパレータ13a、及び、酸化極側セパレータ13bは、一方の面に流通する燃料ガス、他方の面に流通する酸化ガスを挟んでこれらを分離する役目を担っている。なお、
図3の燃料側セパレータ13a及び酸化側セパレータ13bの裏面の流路については記載を省略する。
【0032】
図3に示すように、燃料ガスが流通する燃料ガス流路5は、燃料極側円形開口部11aとなっており、その一方の面は燃料極側セパレータ13aにより封止され、他方の面は、電解質17が備えられたセル本体15に面している。また、酸化ガスが流通する酸化ガス流路6は、酸化極側円形開口部11bとなっており、一方の面は酸化極側セパレータ13bにより封止され、他方の面は、電解質17が備えられたセル本体15に面している。そして、燃料極14の燃料ガス流路5を通過する燃料ガスと、酸化極16の酸化ガス流路6を通過する酸化ガスとは、電解質17が備えられたセル本体15にて化学反応を起こして発電する。
【0033】
図1(a)に示す燃料極14において、燃料ガス供給口4aと燃料ガス流路5とは燃料極側連通部12aにより燃料極側円形開口部11aに連通し、燃料ガス流路5と燃料ガス排出口4bとは燃料極側連通部12aにより酸化極側円形開口部11bに連通する。このように、燃料ガスが燃料ガス供給口4aから燃料ガス排出口4bへと流通するように構成される。一方、酸化ガス供給口4c及び酸化ガス排出口4dと、酸化ガス流路6とを結ぶ酸化極側連通部12bは設けられないため、燃料極14では酸化ガスは流通しない。
【0034】
また、
図1(b)に示す酸化極16において、酸化ガス供給口4cと酸化ガス流路6とは酸化極側連通部12bにより連通し、酸化ガス排出口4dと酸化ガス流路6とは酸化極側連通部12bにより連通する。このように、酸化ガスが酸化ガス供給口4cから酸化ガス排出口4dへと流通するように構成される。一方、燃料ガス供給口4a、及び燃料ガス排出口4bと、燃料ガス流路5とを結ぶ燃料極側連通部12aは設けられないため、酸化極16では燃料ガスは流通しない。この構成により、燃料ガス及び酸化ガスは、それぞれ独自のルートを流通し、セル本体15の電解質に達する以前に反応するのを防いでいる。
【0035】
(スタック固定ボルト)
図4に、燃料電池スタック1の断面におけるスタック固定ボルト19の配置を示す。スタック固定ボルト19は、燃料電池スタック1の断面の隅角部であるガスマニホールド領域20に設けられる。すなわち、燃料電池スタック1には、ガスマニホールド開口部9として、燃料ガス供給マニホールド9a、燃料ガス排出マニホールド9b、酸化ガス供給マニホールド9c、酸化ガス排出マニホールド9dが設けられる。そして、これらのガスマニホールド領域20において、燃料電池スタック1を積層方向に貫通し、燃料電池スタック1を積層方向に加圧するスタック固定ボルト19がそれぞれ配置される。スタック固定ボルト19は、単セル3の燃料極側セパレータ13aと酸化極側セパレータ13bとを連結して単セル3全体を積層方向に締め付ける。
【0036】
図4(a)では、スタック固定ボルト19がガスマニホールド領域20内であってガスマニホールド開口部9を貫通しない位置に設けられる実施例を示す。すなわち、スタック固定ボルト19は、ガスマニホールド開口部9の外部に配置される。これにより、スタック固定ボルト19が燃料ガス又は酸化ガスが流通するガスマニホールド領域20において燃料電池スタック1を積層方向に加圧し、積層される単セル3の構成要素間の隙間から発生するガス漏れを封止することができる。すなわち、ガスマニホールド開口部9の内部に露出しない位置で燃料電池スタック1のずれを防ぎながら積層方向に加圧することができる。
図4(a)では、ガスマニホールド開口部9は、多角形である場合について図示するが、この形状に限らず、三角形、楕円形、円形など他の形状であっても良い。
【0037】
また、
図4(b)では、スタック固定ボルト19がガスマニホールド領域20内であってガスマニホールド開口部9を貫通する位置に設けられる実施例を示す。このように、スタック固定ボルト19が燃料ガス又は酸化ガスが流通するガスマニホールド領域20であってガスマニホールド開口部9内において、積層される単セル3の構成要素間の隙間から発生するガス漏れを封止することができる。すなわち、ガス漏れが発生し易いガスマニホールド開口部9の内周部にほぼ均等な位置で燃料電池スタック1を積層方向に加圧することができる。
図4(b)では、ガスマニホールド開口部9は、多角形である場合について図示するが、この形状に限らず、三角形、楕円形、円形など他の形状であっても良い。
【0038】
さらに、
図5には、
図4(a)及び
図4(b)の中間的な実施例を示す。すなわち、スタック固定ボルト19がガスマニホールド開口部9内に突出したボルト受けプレート24に設けられたボルト受けプレート開口部23を貫通する場合である。これにより、ガス漏れが発生し易いガスマニホールド開口部9の内周から均等な位置で燃料電池スタック1のずれを防ぎながら積層方向に加圧することができる。
【0039】
(ガス漏れ封止手段)
図6に、ガスマニホールド2から燃料電池スタック1の外部及び内部へのガス漏れ封止手段を示す。
図6(a)は、燃料電池スタック1の燃料ガス供給マニホールド9aにおけるスタック固定ボルト19周辺のガス漏れ封止手段を示すが、他のガスマニホールド9b,9c,9dにおいても同様である。
図6(b)は、
図6(a)のA−A断面図を示す。
図6では、スタック固定ボルト19がガスマニホールド領域20内であってガスマニホールド開口部9を貫通する位置に設けられる場合についてのガス漏れ封止手段を示すが、スタック固定ボルト19がガスマニホールド領域20内であってガスマニホールド開口部9を貫通しない位置に設けられる場合についても同様である。
【0040】
図6(a)に示すように、燃料極側ガスシール材25a及び酸化極側ガスシール材25bは、ガスマニホールド開口部9の内部において余長(p)だけ内部側に突出している。また、
図6(b)に示すように、セル本体15を構成する燃料極14、酸化極16及び電解質17に対し、燃料極側ガスシール材25a及び酸化極側ガスシール材25bが余長(p)を有して上下方向から挟み込んでいる。この状態でガスマニホールド開口部9を貫通するスタック固定ボルト19により加圧されると、セル本体15を構成する燃料極14、酸化極16及び電解質17の間の隙間がつぶれ、ガスマニホールド2からのガス漏れが封止される。
【0041】
燃料極側ガスシール材25a及び酸化極側ガスシール材25bは、例えば、マイカ絶縁シートなどのガス漏れ封止材料を使用しても良い。すなわち、マイカ絶縁シートなどのガス漏れ封止材料を半硬化の状態で積層し、単セル3の積層方向へ加圧して圧縮変形させてガスマニホールド2の隙間に馴染ませ、圧縮変形後に硬化させてガス漏れを封止させても良い。
【0042】
(セル発電部分の面積比)
図8に、本願の燃料電池スタック1と従来の燃料電池スタック10とにおける、セル発電部分の面積比(Acell/Astack)を示す。
図8(a)に本願の燃料電池スタック1のセル発電部面積を示し、
図8(b)に従来の燃料電池スタック10のセル発電部面積を示す。燃料電池スタック1のセル発電部分の面積の割合は、燃料電池スタック1の面積をAstackとし、単セル3の面積をAcellとするとAcell/Astackで表される。
【0043】
図8(a)に示す本願のガスマニホールド2では、例えば、燃料電池スタック1の一辺の長さを(L)としたときに、単セル3の直径を(0.73L)とすると、セル発電部分の面積比(Acell/Astack)は、π×(0.73/2)
2×L
2/L
2=0.42となる。ここで、燃料電池スタック1の一辺の長さを(L)としたときの単セル3の直径(0.73L)の値は本願の燃料電池スタック1の標準的なサイズである。
【0044】
図8(b)に示す従来の燃料電池スタック10では、例えば、燃料電池スタック1の一辺の長さを(L)としたときに、単セル3の一片の長さを(0.6L)とすると、Acell/Astackは、0.6
2×L
2/L
2=0.36となる。ここで、燃料電池スタック1の一辺の長さを(L)としたときに単セル3の一片の長さ(0.6L)は、本願の燃料電池スタック1の標準的なサイズである。
【0045】
これらの結果を比較すると、従来の燃料電池スタック10では、Acell/Astackが0.36であるのに対し、本願の燃料電池スタック1では、Acell/Astackは0.42となり、セル発電部面積の割合が16%の増加となった。他社における従来の燃料電池スタック10における発電効率を計算すると、24%〜36%という結果になり、本願の燃料電池スタック1の構成が最もセル発電部面積の割合が高いという結果となる。
【0046】
以上の実施形態で説明された燃料電池スタック1に関する構成、形状、大きさ、及び配置関係については、本発明が理解、実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 (平板型)燃料電池スタック、2 ガスマニホールド、3 単セル、4a 燃料ガス供給口、4b 燃料ガス排出口、4c 酸化ガス供給口、4d 酸化ガス排出口、5 燃料ガス流路、6 酸化ガス流路、7 外辺縁部、8 外周縁部、9 ガスマニホールド開口部、9a 燃料ガス供給マニホールド、9b 燃料ガス排出マニホールド、9c 酸化ガス供給マニホールド、9d 酸化ガス排出マニホールド、10 従来の燃料電池スタック、11a (燃料極側)円形開口部、11b (酸化極側)円形開口部、12a 燃料極側連通部、12b 酸化極側連通部、13a 燃料極側セパレータ、13b 酸化極側セパレータ、14 燃料極、15 セル本体、16 酸化極、17 電解質、18 セルホルダ、19 スタック固定ボルト、20 ガスマニホールド領域,20a 燃料極側ガスマニホールド領域,20b 酸化極側ガスマニホールド領域、21a,21b 燃料電池スタックの外辺、22 単セルの外周、23 ボルト受けプレート開口部、24 ボルト受けプレート、25a 燃料極側ガスシール材,25b 酸化極側ガスシール材、p 余長、t
1 外辺縁部幅、t
2 外周縁部幅。