特許第6963207号(P6963207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963207
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】車両用防眩装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 3/04 20060101AFI20211025BHJP
   B60J 3/02 20060101ALI20211025BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20211025BHJP
   B60R 11/04 20060101ALI20211025BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B60J3/04
   B60J3/02 B
   B60R11/02 Z
   B60R11/04
   G02F1/13 505
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-105003(P2017-105003)
(22)【出願日】2017年5月26日
(65)【公開番号】特開2018-199421(P2018-199421A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2020年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 裕治
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−153135(JP,A)
【文献】 特開2010−184643(JP,A)
【文献】 特開2017−043157(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/142938(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0168185(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 3/04
B60J 3/02
B60R 11/02
B60R 11/04
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を遮る遮光部を電気的制御により形成可能な遮光装置と、
車外の光源を検出する光源検出手段と、
搭乗者の目の位置を検出する位置検出手段と、
光源の位置と目の位置とを結ぶ直線が前記遮光装置を通る位置を演算し、当該位置に前記遮光部を形成する遮光制御手段と
前記遮光部で遮る光源の光の強さを判定するための閾値を設定するための感度調整スイッチと、を備え、
前記遮光制御手段は、前記感度調整スイッチにより設定された閾値を超えた輝度を有する光源に対して前記遮光部を形成する
ことを特徴とする車両用防眩装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用防眩装置において、
前記光源検出手段は、撮像装置で車外を撮像した画像データに基づいて光源を検出する
ことを特徴とする車両用防眩装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用防眩装置において、
前記遮光制御手段は、光源の輝度が高いほど前記遮光部の透明度を低くする
ことを特徴とする車両用防眩装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の車両用防眩装置において、
前記遮光制御手段は、一定間隔で継続的に前記遮光部を形成する
ことを特徴とする車両用防眩装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の車両用防眩装置において、
前記遮光部の位置又は透明度を調整する操作スイッチを備える
ことを特徴とする車両用防眩装置。
【請求項6】
請求項1から請求項の何れか一項に記載の車両用防眩装置において、
前記遮光装置は、車室の天井に設けられて水平方向に延設された軸に回動可能に支持され、車室の天井に沿うように配置された収納状態、又は鉛直な方向に配置された使用状態に変位可能であり、
前記遮光制御手段は、光源の位置と目の位置とを結ぶ直線が前記遮光装置を通る位置を演算し、当該位置に前記遮光部を形成する際には、前記遮光装置を使用状態にする
ことを特徴とする車両用防眩装置。
【請求項7】
請求項に記載の車両用防眩装置において、
前記遮光装置が鉛直な方向に配置された状態を基準とし、前記軸を中心に回動した前記遮光装置の角度を検出可能なポジションセンサーを備え、
前記遮光制御手段は、前記ポジションセンサーから取得した角度が所定角度以内であるとき前記遮光部を形成する
ことを特徴とする車両用防眩装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車外の光源を防眩する車両用の車両用防眩装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に車両には、搭乗者の前方に太陽光等を遮るサンバイザーが配置されている。サンバイザーとしては、液晶パネルを用いた車両用防眩装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような車両用防眩装置では、防眩の必要がないときは液晶パネルを透明としておき、防眩を必要とするときは電気的な制御により不透明な遮光部を形成することで、防眩機能を実現している。
【0003】
また、上記車両用防眩装置では、液晶パネルのうち太陽光が目の位置に差し込む部分だけを遮光部で遮り、その他の部分を透明にする。このように部分的に遮光部を設けることで、車外の視認性を確保しつつ、防眩を実現している。
【0004】
しかしながら、遮光部の位置を決定するためには、搭乗者の目の位置に基づくだけでは不十分である。すなわち、太陽光の光源の位置を考慮しなければ、遮光部の適切な位置を決定できない。従来技術では、現在時刻に基づいて太陽の位置を判断しているが、太陽の位置そのものを特定しないため、正確性に欠けるという問題がある。また、太陽光以外の光源、例えば対向車のヘッドライトの位置を現在時刻に基づいて決定できないことは自明であり、太陽光以外の光源を遮光できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−331835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、車外の視認性を確保し、車両外部から搭乗者へ差し込む光をより確実に遮光することができる車両用防眩装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、光を遮る遮光部を電気的制御により形成可能な遮光装置と、車外の光源を検出する光源検出手段と、搭乗者の目の位置を検出する位置検出手段と、光源の位置と目の位置とを結ぶ直線が前記遮光装置を通る位置を演算し、当該位置に前記遮光部を形成する遮光制御手段と、前記遮光部で遮る光源の光の強さを判定するための閾値を設定するための感度調整スイッチと、を備え、前記遮光制御手段は、前記感度調整スイッチにより設定された閾値を超えた輝度を有する光源に対して前記遮光部を形成することを特徴とする車両用防眩装置にある。
【0008】
第1の態様では、遮光部を形成する位置を決定する際には、運転者の目の位置のみならず、光源の位置を特定している。このように、光源の位置を特定して遮光部を形成しているので、運転者の目に光源の光が遮られる位置に遮光部をより正確に形成できる。
また、運転者が感度調整スイッチを調整することで、光源を検出する感度を調整することができ、運転者が所望する輝度の光源をより確実に遮光部で遮光することができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の車両用防眩装置において、前記光源検出手段は、撮像装置で車外を撮像した画像データに基づいて光源を検出することを特徴とする車両用防眩装置にある。
【0010】
第2の態様では、撮像装置で撮像した画像データに基づいて光源の位置を検出する。画像データは、輝度に基づいた画像処理が可能であるので、光源をより確実に検出することができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載の車両用防眩装置において、前記遮光制御手段は、光源の輝度が高いほど前記遮光部の透明度を低くすることを特徴とする車両用防眩装置にある。
【0012】
第3の態様では、光源の輝度が低い場合は、遮光部を高い透明度にするので、遮光装置全体の視認性を高めることができる。また、光源の輝度が高い場合は、遮光部を低い透明度にするので、高い輝度の光源をより確実に遮光し、防眩性を高めることができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、第1から第3の何れか一つの態様に記載の車両用防眩装置において、前記遮光制御手段は、一定間隔で継続的に前記遮光部を形成することを特徴とする車両用防眩装置にある。
【0014】
第4の態様では、光源の移動に遮光部の位置を追随させることができる。そのような移動する光源として、対向車のヘッドライトが挙げられるが、このヘッドライトの移動に対して追随するように遮光部を形成することができる。
【0015】
本発明の第5の態様は、第1から第4の何れか一つの態様に記載の車両用防眩装置において、前記遮光部の位置又は透明度を調整する操作スイッチを備えることを特徴とする車両用防眩装置にある。
【0016】
第5の態様では、運転者が遮光部の位置や濃度を調整して、より確実に光源の光を遮ることができる。
【0019】
本発明の第の態様は、第1から第の何れか一つの態様に記載の車両用防眩装置において、前記遮光装置は、車室の天井に設けられて水平方向に延設された軸に回動可能に支持され、車室の天井に沿うように配置された収納状態、又は鉛直な方向に配置された使用状態に変位可能であり、前記遮光制御手段は、光源の位置と目の位置とを結ぶ直線が前記遮光装置を通る位置を演算し、当該位置に前記遮光部を形成する際には、前記遮光装置を使用状態にすることを特徴とする車両用防眩装置にある。
【0020】
の態様では、遮光装置を運転者の前に自動的に位置させて遮光することができる。
【0021】
本発明の第の態様は、第の態様に記載の車両用防眩装置において、前記遮光装置が鉛直な方向に配置された状態を基準とし、前記軸を中心に回動した前記遮光装置の角度を検出可能なポジションセンサーを備え、前記遮光制御手段は、前記ポジションセンサーから取得した角度が所定角度以内であるとき前記遮光部を形成することを特徴とする車両用防眩装置にある。
【0022】
の態様では、運転者の手動操作により遮光装置が所定角度に傾斜したときであって
も、遮光部を形成して光源を遮光することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、車外の視認性を確保し、車両外部から搭乗者へ差し込む光をより確実に遮光することができる車両用防眩装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】車両用防眩装置の概略構成図である。
図2】液晶サンバイザーの正面図である。
図3】液晶サンバイザーの側面図である。
図4】車両用防眩装置のブロック図である。
図5】光源、目の位置及び遮光部の位置を示す概略図である。
図6】光源、目の位置及び遮光部の位置を示す概略図である。
図7】車両用防眩装置の動作を示すフローである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、実施形態の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0026】
〈実施形態1〉
図1は車両用防眩装置の概略構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る車両用防眩装置10は車両1に搭載され、第1カメラ11、第2カメラ12、液晶サンバイザー20、及び制御装置40を備えている。
【0027】
第1カメラ11は、車両1の前方を撮像するように配置されている。また、第2カメラ12は、車室内の搭乗者(運転者)の頭部及びその周辺を撮像するように配置されている。第1カメラ11及び第2カメラ12により撮像された画像データは、制御装置40に送信されるようになっている。また、第1カメラ11及び第2カメラ12は、請求項に記載の撮像装置の一例であり、ステレオカメラとして構成されている。
【0028】
図2は液晶サンバイザーの正面図であり、図3は液晶サンバイザーの側面図である。液晶サンバイザー20は、光を遮る遮光部22を電気的制御により形成可能な遮光装置の一例である。液晶サンバイザー20は、公知の透明な液晶パネルからなるパネル部21を備え、また、本実施形態では、上部に車両の幅方向に延びる軸部30を有している。
【0029】
車室の天井2には、フロントガラス3よりも後方であり、運転者の頭部よりも前方となる位置に、下方に延びた支持部材31が設けられている。軸部30は、回転可能となるように支持部材31に取り付けられている。このような構成により、液晶サンバイザー20は軸部30を中心に回動可能となっている。
【0030】
このように取り付けられた液晶サンバイザー20は、自動制御の場合には、軸部30を回動させることで、収納状態と使用状態の2つの状態を取り得る。収納状態とは、車室の天井2に沿うように配置された状態をいい、具体的には天井2に略平行となった状態である。使用状態とは、フロントガラス3に沿うように配置された状態であり、具体的には鉛直又は傾斜した状態である。天井2に対して略垂直な使用状態とは、図2及び図3に示すように、液晶サンバイザー20が天井2に対して鉛直となった使用状態をいう。
【0031】
天井2に対して傾斜した使用状態とは、図3に示すように、液晶サンバイザー20が鉛直な状態から、軸部30を中心に傾斜した状態をいう。具体的には、鉛直に配置された状態を基準とし、軸部30を中心に回動した角度として、運転者側(時計回り)に最大で角度+α、フロントガラス側(反時計回り)に最大で角度−αの範囲で傾斜した状態である。角度+α及び角度−αは任意に定めることができる。なお、特に図示しないが、液晶サンバイザー20は、上述した角度を検出するポジションセンサーを備えている。
【0032】
また、軸部30には、不図示のモーターが設けられており、モーターの回転力で軸部30が回動するようになっている。制御装置40はこのモーターを制御可能であり、モーターの駆動を制御することで、液晶サンバイザー20を収納状態又は使用状態に切り替える。このような制御装置40により、液晶サンバイザー20を収納状態又は使用状態に切り替える際には、制御装置40は運転者に注意を促す警告音を発してもよい。また、このような自動制御に限らず、液晶サンバイザー20は、軸部30を回転軸として手動で任意の角度に回転させることも可能である。
【0033】
パネル部21は、電圧が印加されていないときは透明状態であり、電圧を印加することで不透明な遮光部22を形成することが可能となっている。パネル部21のうち、遮光部22が形成されていない透過部23は、略透明となっている。
【0034】
遮光部22は、パネル部21の全部又は一部であって不透明な領域である。液晶サンバイザー20は、パネル部21における遮光部22の位置、形状、範囲に関する情報を制御装置40から受信し、当該情報に基づいて遮光部22をパネル部21に形成する。図2では一例として、パネル部21の左下部分に長方形状の遮光部22が形成されている。このため、透過部23を通して車両1の前方の風景(図2では信号機15)が視認できる。一方、車両1の前方のうち遮光部22が重なる部分は、遮光部22によって光が透過しない、又は光が減衰されるため暗く視認される。
【0035】
また、液晶サンバイザー20は、パネル部21の右側に、位置調整スイッチ24、濃度調整スイッチ25、感度調整スイッチ27、及び動作モード切替スイッチ28を備えている。
【0036】
位置調整スイッチ24は、上下左右の方向に対応した4つのスイッチからなり、遮光部22の位置調整に用いられる。濃度調整スイッチ25は、左右に並設された二つのスイッチからなり、遮光部22の濃度(透明度)を調整するために用いられる。感度調整スイッチ27は、ロータリスイッチであり、遮光部22で遮る光の強さを判定するための閾値を調整するために用いられる。これらの具体的な調整については後述する。
【0037】
動作モード切替スイッチ28は、同時に一つだけがオンとなることが可能な3つのスイッチからなり、液晶サンバイザー20の動作モードを切り替えるために用いられる。動作モード切替スイッチ28の一番左のスイッチがオンにされたとき、液晶サンバイザー20は、パネル部21の全体を透明にする。また、一番右のスイッチがオンにされたとき、液晶サンバイザー20は、パネル部21の全体を不透明にする。中央のスイッチがオンにされたとき、液晶サンバイザー20は、制御装置40によって指示された位置、形状、範囲に遮光部22を形成するモードに切替える。制御装置40による遮光部22の形成については後述する。
【0038】
図4は車両用防眩装置のブロック図であり、図5及び図6は光源、目の位置及び遮光部の位置を示す概略図である。X方向は、車両の前後方向、Y方向は車幅方向を、Z方向は車両の高さ方向を表している。これらの原点を、液晶サンバイザー20のパネル部21の左下部分とする。
【0039】
車両用防眩装置の制御装置40は、中央処理装置と主記憶装置とを備えるマイクロコンピューターによって構成されており、車両のエンジンや各種装置の動作を制御する装置である。さらに、制御装置40は、光源検出部41、位置検出部42及び遮光制御部43を備えている。なお、これらの各手段は、制御装置40により実行されるコンピュータソフトウェアとして実装されているが、これに限定されず電子回路などハードウェアとして実装されていてもよい。また、第1カメラ11及び光源検出部41は請求項に記載の光源検出手段の一例であり、第2カメラ12及び位置検出部42は請求項に記載の位置検出手段の一例であり、遮光制御部43は請求項に記載の遮光制御手段の一例である。
【0040】
光源検出部41は、車外の太陽などの光源50を検出する。具体的には、光源検出部41は、第1カメラ11から得た画像データの中から、所定の閾値以上の輝度を有する部分である高輝度部を検出する。当該閾値は、運転者が眩しいと感じられる輝度となるように設定する。さらに当該閾値は、上述した感度調整スイッチ27の位置によって値を調整することが可能となっている。
【0041】
そして、光源検出部41は、液晶サンバイザー20のパネル部21における原点を基準として、高輝度部、すなわち光源50の3次元座標を演算する。上述したように、第1カメラ11はステレオカメラとして構成されているので、得られた画像データを画像処理することで、光源50の3次元位置を得ることができる。
【0042】
位置検出部42は、運転者の目の位置を検出する。本発明でいう運転者の目の位置を検出するとは、運転者の両眼の位置を検出することをいう。具体的には、位置検出部42は、第2カメラ12から得た画像データの中から、両方の目の位置を検出する。このような両方の目の位置の検出は公知の画像認識処理により実現できる。
【0043】
そして、位置検出部42は、液晶サンバイザー20のパネル部21における原点を基準として、目の3次元座標を演算する。上述したように、第2カメラ12はステレオカメラとして構成されているので、得られた画像データを画像処理することで、目の3次元位置を得ることができる。上述した光源50や目の検出や位置の演算は公知の画像処理により実現できる。
【0044】
遮光制御部43は、光源50の位置と目の位置とを結ぶ直線L1及び直線L2が液晶サンバイザー20を通る位置に遮光部22を形成する。直線L1は、運転者の右目の位置と、光源50の位置とを結ぶ直線であり、直線L2は、運転者の左目の位置と、光源50の位置とを結ぶ直線である。なお、図3及び図5では、直線L2の図示を省略している。
【0045】
具体的には、遮光制御部43は、光源検出部41及び位置検出部42により得られた光源50の位置と目の位置とから直線L1及び直線L2を演算する。遮光制御部43は、液晶サンバイザー20のパネル部21は、XZ平面にあるとし、このXZ平面と直線L1との交点、及びXZ平面と直線L2との交点を演算する。
【0046】
遮光制御部43は、光源50の大きさや形状を画像データ中の高輝度部の大きさから演算する。そして、光源50の全体が内側に含まれ、かつ、XZ平面と直線L1との交点、及びXZ平面と直線L2との交点が含まれるように、遮光部22の位置、大きさ及び形状を決定する。また、画像データ中の高輝度部の輝度に応じて遮光部22の濃度(透明度)を決定する。
【0047】
遮光制御部43は、このようにして決定した位置、大きさ、及び濃度で遮光部22が形成されるように液晶サンバイザー20を制御する。これにより、液晶サンバイザー20には、運転者の目から光源50の光を低減する位置、大きさ、濃度の遮光部22が形成される。
【0048】
遮光制御部43は、上述した遮光部22を一回のみ形成してもよいし、一定間隔を空けて又は連続的に遮光部22を形成してもよい。一定間隔又は連続的に遮光部22を形成することで、遮光部22を、車両1や光源50の位置の変化に追随させることができる。また、光源50の数は一つに限定されず2つ以上であってもよい。この場合、各光源50に対応した複数の遮光部22を形成する。もちろん、複数の光源50につき一つの遮光部22を形成してもよい。さらに、両方の目に対応して一つの遮光部22を形成したが、左右それぞれの目に一つの遮光部22を形成してもよい。
【0049】
上述したように、液晶サンバイザー20が鉛直な使用状態について説明したが、図3に示すように傾いた液晶サンバイザー20aについて遮光部22aを形成してもよい。例えば、運転者が手動で液晶サンバイザー20aを傾斜させた場合に、次のような制御を行う。
【0050】
まず、制御装置40は、このポジションセンサーの出力から液晶サンバイザー20aの角度を得て、当該角度が+α以上−α以下であるという条件が成立するか判定する。制御装置40は、当該条件が成立する場合、遮光部22aを形成する。具体的には、遮光制御部43は、液晶サンバイザー20aが略鉛直な使用状態(液晶サンバイザー20)のときに形成する遮光部22を、ポジションセンサーから得た角度αに基づいて補正することで、遮光部22aを形成する。また、上記条件が成立しない場合は、遮光部22aを形成する機能を作動させない。このような制御により、運転者が手動で液晶サンバイザー20aを傾斜させた場合であっても、遮光部22aによって光源50の遮光を行うことができる。
【0051】
遮光制御部43は、上述のようにして自動的に遮光部22を形成するが、各種の操作スイッチの操作に応じて遮光部22を調整してもよい。例えば、遮光制御部43は、位置調整スイッチ24のうち上向きのスイッチが操作されたことを検出したとき、パネル部21に形成した遮光部22の位置を上方向に所定量移動させる。その他の下向き、左向き、右向きのスイッチについても同様である。
【0052】
また、遮光制御部43は、濃度調整スイッチ25のうち左側に配置されたスイッチが操作されたことを検出したとき、パネル部21に形成した遮光部22の濃度を所定量下げる。同様に、右側に配置されたスイッチが操作されたことを検出したとき、パネル部21に形成した遮光部22の濃度を所定量上げる。遮光制御部43は、濃度調整スイッチ25により設定された濃度を、濃度表示部26により表示させる。濃度表示部26は、遮光部22に適用されている濃度を段階的に示したものである。図2に示す例では、上下方向に段階的に長くなった5つの棒状のLEDなどの表示装置から濃度表示部26が形成されている。遮光制御部43は、遮光部22に適用された濃度に応じて、各表示装置を光らせることで当該濃度を液晶サンバイザー20の濃度表示部26に表示させている。
【0053】
また、遮光制御部43は、感度調整スイッチ27が操作されたことを検出したとき、感度調整スイッチ27の位置に応じて、光源検出部41で用いる閾値を変更する。閾値を変更することで、光源検出部41により検出される高輝度部の輝度の程度が調整される。つまり、高輝度部を検出する感度が調整される。
【0054】
また、遮光制御部43は、遮光部22を形成する際に、液晶サンバイザー20が収納状態であるならば、使用状態にする制御を行う。具体的には、遮光制御部43は、モーターを駆動することで、液晶サンバイザー20を使用状態にする。なお、光源50と目の位置から遮光部22を形成する必要がないと判断される場合、遮光制御部43は、モーターを駆動して液晶サンバイザー20を収納状態としてもよい。
【0055】
上述した構成の車両用防眩装置10の動作について説明する。図7は、車両用防眩装置の動作を示すフローである。
まず、車両用防眩装置10は、光源の検出を行う(ステップS1)。具体的には光源検出部41により光源の位置を検出する。次に、車両用防眩装置10は、運転者の目の位置の検出を行う(ステップS2)。具体的には位置検出部42により目の位置を検出する。次に、車両用防眩装置10は、遮光が必要かを判定する(ステップS3)。例えば、光源と目の位置を結ぶ直線L1及び直線L2がパネル部21を通る場合は遮光が必要と判定し、そうでない場合は遮光が不要と判定する。遮光が不要であると判定した場合は(ステップS3:No)、処理を終了する。
【0056】
車両用防眩装置10は、遮光が必要と判定したとき(ステップS3:Yes)、液晶サンバイザーが収納状態であるかを判定する(ステップS4)。液晶サンバイザーが収納状態である場合は(ステップS4:Yes)、液晶サンバイザー20を使用状態にする(ステップS5)。
【0057】
特に図示しないが、モーターにより軸部30を回動させることで、液晶サンバイザー20を収納状態から使用状態にする際には、車両用防眩装置10は、音を発してもよい。音を発することで、運転者に対して、液晶サンバイザー20が回動する旨を知らせることができ、運転者の頭部が液晶サンバイザー20に干渉しないようにすることができる。なお、このような音は、液晶サンバイザー20を使用状態から収納状態にする際に発してもよい。
【0058】
車両用防眩装置10は、液晶サンバイザー20が使用状態になった後、又は既に液晶サンバイザー20が使用状態である場合(ステップS4:No)、遮光制御を行う(ステップS6)。遮光制御は、上述したように、遮光制御部43により、光源と目の位置に基づいて遮光部22を形成することである。なお、車両用防眩装置10は、特に図示しないが、各種の操作スイッチが操作されたことを検出したとき、遮光部22の位置等を調整する。
【0059】
以上に説明した本実施形態の車両用防眩装置10では、透明なパネル部21のうちの一部に、光源50を運転者の目から遮るための遮光部22を形成する。このように光源50を遮る部分だけ遮光部22を形成するので、車外の視認性を確保しつつ、運転者へ差し込む光源からの光を遮光することができる。そして、この遮光部22を形成する位置を決定する際には、運転者の目の位置のみならず、光源50の位置を特定している。このように、光源50の位置を特定して遮光部22を形成しているので、運転者の目に光源50の光が遮られる位置に遮光部22をより正確に形成できる。
【0060】
また、従来技術のように現在時刻に基づいて光源である太陽の位置を推定するものではない。本実施形態の車両用防眩装置10は、光源50の位置を特定するので、太陽のみならず、対向車のヘッドライトについてもこれを検出し、適切な位置に遮光部22を形成することができる。
【0061】
本実施形態の車両用防眩装置10では、第1カメラ11で撮像した画像データに基づいて光源50の位置を検出する。画像データは、輝度に基づいた画像処理が可能であるので、光源50をより確実に検出することができる。
【0062】
本実施形態の車両用防眩装置10では、光源50の輝度が高いほど遮光部22の透明度を低くする。これにより、光源50の輝度が低い場合は、遮光部22を高い透明度にするので、パネル部21全体の視認性を高めることができる。また、光源50の輝度が高い場合は、遮光部22を低い透明度にするので、高い輝度の光源50をより確実に遮光し、防眩性を高めることができる。
【0063】
本実施形態の車両用防眩装置10では、一定間隔で継続的に、位置、大きさ、透明度を計算して遮光部22を形成する。これにより、光源の移動に遮光部22の位置を追随させることができる。そのような移動する光源として、対向車のヘッドライトが挙げられるが、このヘッドライトの移動に対して追随するように遮光部22を形成することができる。
【0064】
本実施形態の車両用防眩装置10では、遮光部22の位置や濃度(透明度)を調整する位置調整スイッチや濃度調整スイッチを備える。これにより、運転者が遮光部22の位置や濃度を調整して、より確実に光源の光を遮ることができる。
【0065】
本実施形態の車両用防眩装置10では、感度調整スイッチ27を備える。感度調整スイッチ27により設定される閾値を用いて、光源検出部41は高輝度部を検出する。そして、遮光制御部43は、感度調整スイッチ27により設定された閾値を超えた輝度を有する光源に対して遮光部22を形成する。これにより、運転者が感度調整スイッチ27を調整することで、光源を検出する感度を調整することができ、運転者が所望する輝度の光源をより確実に遮光部22で遮光することができる。
【0066】
本実施形態の車両用防眩装置10では、パネル部21は、電圧が印加されていないときは透明である。これにより、故障等で電圧が印加できない場合であっても、パネル部21は透明であるので、視界が妨げられることがない。
【0067】
本実施形態の車両用防眩装置10では、液晶サンバイザー20は、軸部30に回動可能に支持され、収納状態又は使用状態に変位可能である。そして、収納状態から使用状態へ自動的に変位させた後に、遮光部22を形成する。これにより、液晶サンバイザー20を運転者の前に自動的に位置させて遮光することができる。
【0068】
本実施形態の車両用防眩装置10では、運転者の手動操作により液晶サンバイザー20が所定角度に傾斜したときであっても、遮光部22を形成して光源50を遮光することができる。
【0069】
〈他の実施形態〉
以上、本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0070】
例えば、光源検出手段は、第1カメラ11と光源検出部41とで構成し、画像処理に基づいて光源の位置を検出したが、このような構成に限定されない。また、目の位置検出手段は、第2カメラ12と位置検出部42とで構成し、画像処理に基づいて目の位置を検出したが、このような構成に限定されない。
【0071】
実施形態1では、液晶サンバイザー20は、各種の操作スイッチを備えていたが、これらを備えていなくてもよい。すなわち、運転者の手動による調整を行わず、車両用防眩装置10が自動的に遮光部22を形成するのみの構成であってもよい。また、液晶サンバイザー20は、使用状態と収納状態とを切り換えることが可能な構成であったが、このような態様に限定されない。例えば、液晶サンバイザー20の代わりに、電気的制御で遮光部を形成可能なフロントガラスを遮光装置として用いてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10…車両用防眩装置、11…第1カメラ(光源検出手段)、12…第2カメラ(位置検出手段)、40…制御装置、41…光源検出部(光源検出手段)、42…位置検出部(位置検出手段)、43…遮光制御部(遮光制御手段)、50…光源
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