特許第6963237号(P6963237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963237
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】排便容器
(51)【国際特許分類】
   A47K 11/04 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   A47K11/04
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-169367(P2017-169367)
(22)【出願日】2017年9月4日
(65)【公開番号】特開2019-42210(P2019-42210A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】597047163
【氏名又は名称】日本モウルド工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000148025
【氏名又は名称】サクラ精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087778
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 明夫
(72)【発明者】
【氏名】高梨 英治
(72)【発明者】
【氏名】嶋 雅範
(72)【発明者】
【氏名】谷山 絵梨子
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−334070(JP,A)
【文献】 特開2001−224529(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3042486(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水性を備えた容器部と、該容器部の開口の縁から外方へ張り出すように設けられた張出部とを有し、
前記容器部は、その開口及び底部を垂直に二分割する仮想平面について面対称形状を成し、その側壁部は前記仮想平面と交叉する2箇所の各仮想交叉部に於いて少なくとも開口寄りの上部が容器外方へ鋭角的に突出する鋭角突出部を有し、
前記張出部は、前記仮想平面と交叉する2箇所の各仮想交叉部に於いて切離されることにより分断される2部分から成り、該2部分の各々は、前記容器部の開口の縁に沿って設けられた内溝部と、該内溝部の外側に該内溝部に沿って設けられた長手状凸部と、該長手状凸部の外側に該長手状凸部に沿って設けられた外溝部とを有し、
前記鋭角突出部の突出先端部分を折り曲げ用の補助線として前記側壁部を内方へ倒しつつ、前記張出部の2部分を相互に近づけて前記容器部の開口を覆うとともに、該2部分の外溝部付近を当接させて両外溝部の外側壁を重ね合わせ得る、
ことを特徴とするパルプモールド製の排便容器。
【請求項2】
請求項1に於いて、
前記外溝部は長手方向の両端に於いてそれぞれ前記内溝部に連通されており、
前記張出部が切離される2箇所の各切離部は、前記容器部の開口の縁から水平に延設された水平延設部内に位置し、
前記内溝部に前記外溝部が連通される長手方向両端の各溝端連通部は、前記水平延設部によって前記切離部から隔てられている、
ことを特徴とするパルプモールド製の排便容器。
【請求項3】
請求項2に於いて、
少なくとも一方の前記溝端連通部と該溝端連通部を前記切離部から隔てる前記水平延設部との間には、当該溝端連通部から窪む溝端凹部が介在されている、
ことを特徴とするパルプモールド製の排便容器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに於いて、
前記容器部は、前記底部と前記側壁部が連なる部位で且つ前記鋭角突出部の下方の部位に、前記底部及び前記側壁部から内方へ突出する凸部を有する、
ことを特徴とするパルプモールド製の排便容器。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに於いて、
前記容器部の開口の縁は、前記2箇所の仮想交叉部を両端としたときの中央付近では面対称形状の対応部位が略平行を成す、
ことを特徴とするパルプモールド製の排便容器。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れかに於いて、
製造原料に撥水剤を含有する、
ことを特徴とするパルプモールド製の排便容器。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れかに於いて、
前記張出部は、ポータブルトイレの基部容器の開口の縁上に載置可能であり、且つ、便座の下面側の凹部内に略収容可能である、
ことを特徴とするパルプモールド製の排便容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器部と、該容器部の開口の縁から張り出すように設けられた張出部とを備えたパルプモールド製の排便容器に関する。
本発明の排便容器は、ポータブルトイレの縁上に張出部をセットし、排便後、ポータブルトイレから取り出して、容器の開口を張出部で覆った状態で所定の処理装置へ運び、該処理装置にて大小便とともに破砕して下水道へ流す用途に好適である。
【背景技術】
【0002】
歩行困難な病人等のために、ベッドの脇に置いて使用される種々のポータブルトイレが提供されている。それらのポータブルトイレでは、介護者等の負担を軽減するため、使用の都度トイレ全体を清掃するのではなく、ポータブルトイレにシート等をセットして使用した後、排便を当該シート等とともに取り出して焼却処理等している。
特開2009−072429号公報(特許文献1)には、かかる用途に用いる便収容袋が開示されており、また、特開2010−264109号公報(特許文献2)にも、同様の用途の排便シートが開示されている。
【0003】
介護者の負担軽減のために用いられる上記シート等であって、使用後にポータブルトイレから取り出して、排便とともに下水道へ流し得るものは提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−072429号公報
【特許文献2】特開2010−264109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
介護者の負担軽減のための上記シート等(排便容器)を、ポータブルトイレから取り出した後、収容した排便とともに下水道に流すことができれば、既設の水洗トイレ用の下水道設備をそのまま利用でき、病院や介護施設等の設備負担が軽減される。
しかし、特許文献1に開示の便収容袋や特許文献2に開示の排便シートは、このような処理を想定したものではなく、既設の下水道に流すことはできない。
このため、特許文献1や2の排便シート等では、焼却処理等のための比較的大がかりな設備を別途設けるか、又は、取り出した後の処理に多大な手間隙を要する。
【0006】
排便とともに容易に破砕して下水道に流し得る排便容器の材質としては、パルプモールドを挙げることができる。しかしながら、ポータブルトイレへのセットを容易且つ確実に行うことができ、且つ、排便とともに取り出して運ぶ作業が容易なパルプモールド製の排便容器は提供されていない。
本発明は、ポータブルトイレへのセット/取り出し作業を容易且つ確実に行うことができ、処理装置までの運搬作業が容易であり、収容した排便とともに破砕でき、破砕後、既設の水洗トイレ用の下水道に流すことができる排便容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の構成を、下記[1]〜[7]に記す。なお、この項([課題を解決するための手段])と次項([発明の効果])に於いて、符号は理解を容易にするために付したものであり、本発明を符号の構成に限定する趣旨ではない。
【0008】
[1]構成1
撥水性を備えた容器部1と、該容器部1の開口の縁10から外方へ張り出すように設けられた張出部2とを有し、
前記容器部1は、その開口及び底部12を垂直に二分割する仮想平面9について面対称形状を成し、その側壁部11は前記仮想平面9と交叉する2箇所の各仮想交叉部109に於いて少なくとも開口寄りの上部が容器外方へ鋭角的に突出する鋭角突出部19を有し、
前記張出部2は、前記仮想平面9と交叉する2箇所の各仮想交叉部209に於いて切離されることにより分断される2部分2a,2bから成り、該2部分2a,2bの各々は、前記容器部1の開口の縁10に沿って設けられた内溝部21と、該内溝部21の外側に該内溝部21に沿って設けられた長手状凸部22と、該長手状凸部22の外側に該長手状凸部22に沿って設けられた外溝部23とを有し、
前記鋭角突出部19の突出先端部分190を折り曲げ用の補助線として前記側壁部11を内方へ倒しつつ、前記張出部2の2部分2a,2bを相互に近づけて前記容器部1の開口を覆うとともに、該2部分2a,2bの外溝部23付近を当接させて両外溝部23,23の外側壁233,233を重ね合わせ得る、
ことを特徴とするパルプモールド製の排便容器100。
パルプモールド製の排便容器100を製造するパルプモールド成形法とは、植物繊維を含む古紙等の材料を水に溶かした泥漿中に、所定の製品形状(本願では、容器部1や張出部2を備えた排便容器100の形状)を転写するための型面を有する金型(成形型)を浸漬し、型面に開口する多数の細孔を通して吸引し、その表面の金網上にパルプ繊維を付着させて堆積させた後、剥離し、乾燥させることにより成形品を得る手法である。パルプモールド成形法は公知であるため、これ以上の説明は割愛する。
容器部1への撥水性の付与は、上記泥漿中に撥水剤を添加して行ってもよく、また、パルプモールド成形後に撥水剤を塗布して行ってもよい。
【0009】
[2]構成2
構成1に於いて、
前記外溝部23は長手方向の両端に於いてそれぞれ前記内溝部21に連通されており、
前記張出部2が切離される2箇所の各切離部209Lは、前記容器部1の開口の縁10から水平に延設された水平延設部25内に位置し、
前記内溝部21に前記外溝部23が連通される長手方向両端の各溝端連通部24,24は、前記水平延設部25,25によって前記切離部209L,209Lから隔てられている、
ことを特徴とするパルプモールド製の排便容器100。
切離部209Lは、パルプモールド成形後に切り離すことによって構成してもよく、また、パルプモールド成形時に薄板材を介在させて成形してもよい。
[3]構成3
構成2に於いて、
少なくとも一方の前記溝端連通部24と該溝端連通部24を前記切離部209Lから隔てる前記水平延設部25との間には、当該溝端連通部24から窪む溝端凹部26が介在されている、
ことを特徴とするパルプモールド製の排便容器100。
【0010】
[4]構成4
構成1〜構成3の何れかに於いて、
前記容器部1は、前記底部12と前記側壁部11が連なる部位で且つ前記鋭角突出部19の下方の部位に、前記底部12及び前記側壁部11から内方へ突出する凸部15を有する、
ことを特徴とするパルプモールド製の排便容器100。
[5]構成5
構成1〜構成4の何れかに於いて、
前記容器部1の開口の縁10は、前記2箇所の仮想交叉部109,109を両端としたときの中央付近10cでは面対称形状の対応部位が略平行を成す、
ことを特徴とするパルプモールド製の排便容器100。
[6]構成6
構成1〜構成5の何れかに於いて、
製造原料に撥水剤を含有する、
ことを特徴とするパルプモールド製の排便容器100。
[7]構成7
構成1〜構成6の何れかに於いて、
前記張出部2は、ポータブルトイレ8の基部容器80の開口の縁上に載置可能であり、且つ、便座81の下面側の凹部810内に略収容可能である、
ことを特徴とするパルプモールド製の排便容器100。
【発明の効果】
【0011】
構成1は、撥水性を備えた容器部1と、該容器部1の開口の縁10から外方へ張り出すように設けられた張出部2とを有し、前記容器部1は、その開口及び底部12を垂直に二分割する仮想平面9について面対称形状を成し、その側壁部11は前記仮想平面9と交叉する2箇所の各仮想交叉部109に於いて少なくとも開口寄りの上部が容器外方へ鋭角的に突出する鋭角突出部19を有し、前記張出部2は、前記仮想平面9と交叉する2箇所の各仮想交叉部209に於いて切離されることにより分断される2部分2a,2bから成り、該2部分2a,2bの各々は、前記容器部1の開口の縁10に沿って設けられた内溝部21と、該内溝部21の外側に該内溝部21に沿って設けられた長手状凸部22と、該長手状凸部22の外側に該長手状凸部22に沿って設けられた外溝部23とを有し、前記鋭角突出部19の突出先端部分190を折り曲げ用の補助線として前記側壁部11を内方へ倒しつつ、前記張出部2の2部分2a,2bを相互に近づけて前記容器部1の開口を覆うとともに、該2部分2a,2bの外溝部23付近を当接させて両外溝部23,23の外側壁233,233を重ね合わせ得るパルプモールド製の排便容器100であるため、ポータブルトイレへのセット/取り出し作業を容易・確実に行うことができる。また、上記2部分2a,2bの外溝部23,23の外側壁233,233を重ね合わせることで、該外溝部の内側壁231,231(=長手状凸部22の外側壁223,223)を把手として用いることができるため、収容した排便とともに処理装置まで運搬する作業を片手で容易に行うことができる。さらに、該処理装置にて収容した排便とともに破砕した後、既設の水洗トイレ用の下水道に流すことができる。
構成2は、構成1に於いて、前記外溝部23は長手方向の両端に於いてそれぞれ前記内溝部21に連通されており、前記張出部2が切離される2箇所の各切離部209Lは、前記容器部1の開口の縁10から水平に延設された水平延設部25内に位置し、前記内溝部21に前記外溝部23が連通される長手方向両端の各溝端連通部24,24は、前記水平延設部25,25によって前記切離部209L,209Lから隔てられているパルプモールド製の排便容器100であるため、前記突出先端部190を折り曲げ用の補助線として前記側壁部11を内方へ倒しつつ前記張出部2の2部分2a,2bで前記容器部1の開口を覆うことにより前記切離部209Lが開かれるときの当該切離部209L付近への応力の集中を緩和でき、強度を高めることができる。
構成3は、構成2に於いて、少なくとも一方の前記溝端連通部24と該溝端連通部24を前記切離部209Lから隔てる前記水平延設部25との間には、当該溝端連通部24から窪む溝端凹部26が介在されているパルプモールド製の排便容器100であるため、前記突出先端部190を折り曲げ用の補助線として前記側壁部11を内方へ倒しつつ前記張出部2の2部分2a,2bで前記容器部1の開口を覆うことにより前記切離部209Lが開かれるときの当該切離部209L付近への応力の集中を更に緩和でき、強度を更に高めることができる。
構成4は、構成1〜構成3の何れかに於いて、前記容器部1は、前記底部12と前記側壁部11が連なる部位で且つ前記鋭角突出部19の下方の部位に、前記底部12及び前記側壁部11から内方へ突出する凸部15を有するパルプモールド製の排便容器100であるため、前記突出先端部190を折り曲げ用の補助線として前記側壁部11を内方へ倒すときの底部12及び側壁部11への応力の集中を緩和でき、強度を高めることができる。
構成5は、構成1〜構成4の何れかに於いて、前記容器部1の開口の縁10は、前記2箇所の仮想交叉部109,109を両端としたときの中央付近10cでは面対称形状の対応部位が略平行を成すパルプモールド製の排便容器100であるため、前記突出先端部190を折り曲げ用の補助線として前記側壁部11を内方へ倒しつつ前記張出部2の2部分2a,2bで前記容器部1の開口を覆うときの応力の集中を緩和でき、強度を高めることができる。
構成6は、構成1〜構成5の何れかに於いて、製造原料に撥水剤を含有するパルプモールド製の排便容器100であるため、成形時に撥水性を付与でき、後工程で撥水材を塗布する必要がない。
構成7は、構成6に於いて、前記張出部2は、ポータブルトイレ8の基部容器80の開口の縁上に載置可能であり、且つ、便座81の下面側の凹部810内に略収容可能であることを特徴とするパルプモールド製容器100であるため、ポータブルトイレ8に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は実施の形態のパルプモールド製の排便容器の上面図、(b)は図1(a)内B−B線断面図。
図2】(a)は図1(a)内2A−2A線断面図、(b)は実施の形態のパルプモールド製排便容器の斜視図(図1(a)での左下方紙面上方から見た斜視図)。
図3】(a)は実施の形態のパルプモールド製排便容器の斜視図(図1(a)での右下方紙面上方から見た斜視図)、(b)は図1(a)での右上方紙面上方から見た斜視図。
図4】(a)は実施の形態のパルプモールド製の排便容器を図1(a)での左下方紙面若干上方から見た斜視図、(b)は(a)に於いて張出部2a,2bを相互に近づけ始めた状態を示す斜視図。
図5】(a)は図4(b)の状態から更に張出部2a,2bを近づけて当接させた状態を示す斜視図、(b)は実施の形態のパルプモールド製の排便容器をポータブルトイレ8にセットした様子を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図1図3は実施の形態のパルプモールド製の排便容器100を示す図、図4図5(a)は該排便容器100を折り曲げる様子を示す斜視図、図5(b)は該排便容器100をポータブルトイレ8にセットした様子を示す斜視図である。
【0014】
図示の排便容器100はパルプモールド成形法により製造された製品であり、容器部1と、該容器部1の開口の縁10から容器外方へ張り出すように該容器部1と一体に設けられた張出部2とを有する。パルプモールド成形法とは、植物繊維を含む古紙等の材料を水に溶かした泥漿中に、所定の製品形状(容器部1や張出部2を備えた排便容器100の形状)を転写するための型面を有する金型(成形型)を浸漬し、型面に開口する多数の細孔を通して泥漿を吸引し、型面上に設けられている金網上にパルプ繊維を付着させて堆積させた後、金網上から剥離し、乾燥させることにより成形品を得る手法である。
【0015】
この排便容器100は、ポータブルトイレ8にセットして使用するものであり、大小便を収容するものであるので、原料の泥漿中に公知の撥水剤(例:パラフィン系エマルジョン,ロジン乳化液,ロジンサイズ,アルキルケテンダイマー,等)を、公知の手法により添加することで、所要の防水性能を確保している。なお、撥水剤を成形品に塗布することで、防水性能を確保してもよい。パルプモールド成形法や、原料の泥漿中に撥水剤を添加し/成形品に塗布する手法は公知であるため、これ以上の説明は割愛する。
【0016】
容器部1及び張出部2は、容器部1の開口及び底部12を垂直に二分割する仮想平面9について、面対称形状を成す。容器部1と仮想平面9との仮想交叉部を109で、張出部2と仮想平面9との仮想交叉部を209で、それぞれ図中に示す。
【0017】
容器部1の側壁部11は、仮想平面9と交叉する前後2箇所の各仮想交叉部109に於いて、容器外方へ鋭角的に突出する鋭角突出部19を有する。ここで、前/後とは、排便容器100をポータブルトイレ8にセットしたとき(図5(b)参照)の使用者を基準とし、以下、同様とする。左/右についても同様である。
【0018】
鋭角突出部19の突出先端部分190は線状を成し、後述するように、折り曲げ用の補助線として用いられる。この鋭角突出部19は、前方側では容器部1の開口寄りの上部にのみ形成されて開口の縁10に至っているが、下部には形成されていない。即ち、前方側では鋭角突出部19と底部12との間に前方凸部15が設けられており、側壁部11及び底部12から容器内方へ突出されている。これにより、側壁部11を折り曲げるときの底部12等への応力の集中が緩和される。一方、後方側では、鋭角突出部19は、その下端が底部12に至り、上端が開口の縁10に至るように形成されている。
【0019】
張出部2は、仮想平面9と交叉する前後2箇所の各仮想交叉部209に於いて切離されており、切離部209Lにて分断された2部分2a,2bから成る。以下、張出部2aを右張出部、張出部2bを左張出部とも言う。前後2箇所の切離部209Lは、パルプモールド成形後に成形品の仮想交叉部209を刃で切断することにより形成してもよく、パルプモールド成形時に当該部位に板材を介在させることにより形成してもよい。
【0020】
張出部2の2部分である右張出部2aと左張出部2bの各々は、容器部1の開口の縁10に沿って設けられた内溝部21と、該内溝部21の外側に該内溝部21に沿って設けられた長手状凸部22と、該長手状凸部22の外側に該長手状凸部22に沿って設けられた外溝部23とを有し、内溝部21と外溝部23とは、長手方向の両端に於いて相互に連通されている。言い換えれば、内溝部21と外溝部23とによって、長手状凸部22は、島状に囲まれている。内溝部21と外溝部23とが連通されている部位を、図中に、溝端連通部24として示す。
【0021】
張出部2を切離・分断する前後2箇所の各切離部209Lは、容器部1の開口の縁10から水平に延設された水平延設部25内に位置しており、溝端連通部24からは隔てられている。さらに、前方側では、溝端連通部24と水平延設部25の間に、溝端連通部24から窪むように形成された溝端凹部26が設けられている。言い換えれば、切離部209Lから或る幅をもって延設された水平延設部25の延設側先端から下垂するようにして溝端凹部26が形成されているとともに、該溝端凹部26は、溝端連通部24の先端側からも下垂ようにして形成されている。このように、切離部209Lと溝端連通部24との間に水平延設部25(及び前方側では溝端凹部26)が設けられているため、突出先端部190を折り曲げ用の補助線として側壁部11を内方へ倒しつつ張出部2の2部分2a,2bで容器部1の開口を覆うことによって切離部209Lが開かれるときの該切離部209L付近への応力の集中を緩和でき、強度を高めることができる。
【0022】
容器部1の開口の縁10の前後方向の中央付近(張出部2の前後2箇所の仮想交叉部109,109を両端としたときの中央付近)では、該開口の縁10は面対称形状の対応部位が略平行を成し、この略平行な部位では、開口の縁10は外側へ或る幅を持って延設されることなく直ちに下垂されており、この下垂された部位が、内溝部21の当該略平行な部位での内壁部とされている。
【0023】
両張出部2a,2bの下面側を手で持って閉じるように内側上方へ押すと、前後2つの鋭角突出部19の突出先端部分190が折り曲げ用の補助線(案内ライン)として機能するとともに、開口の縁10の中央付近(上述の略平行な部分)が同様に機能する。これにより、容器部1の側壁部11の仮想平面9を挟む左右面対称の対応部位が相互に近づくように容器部1の内方へ押し倒され始める。さらに両張出部2a,2bを押し続けて、両張出部2a,2bの先端(前後方向中央寄りの外溝部23の外壁部233の上端)を相互に当接させて、左右の外溝部23の外側壁233を重ね合わせると、両張出部2a,2bによって容器部1の開口の大部分が覆われる。即ち、容器部1に収容されている排便が、両張出部2a,2bによって隠される。
【0024】
両張出部2a,2bは、前述のように、内溝部21の外側に長手状凸部22を有し、さらに、その外側に外溝部23を有する。このため、両張出部2a,2bの先端側(外溝部23付近)を当接させて左右の外溝部23の外壁部233を重ね合わせた状態では、両張出部2a,2bが全体として略鉛直方向を向き、したがって、長手状凸部22の外壁部223(=外溝部23の内側壁231)が略水平方向を向いている。このため、この壁面を把手として用いることができる。
【0025】
また、長手状凸部22の外壁部223(=外溝部23の内側壁231)を把手として用いたとしても、内溝部21の外側に長手状凸部22が設けられ、且つ、該長手状凸部22の外側に外溝部23が設けられているため、把手としての十分な強度を確保することができる。したがって、忙しい介護者でも、排便が収容された排便容器100を、片手で持って運ぶことができる。
【0026】
かかる構成の排便容器100は、図5(b)に示すように、その張出部2a,2bをポータブルトイレ8の基部容器80の開口の縁上に載置した後、その上に、便座81を被せて使用される。このため、張出部2a,2bのサイズは、便座81の下面側の凹部810内に略収容可能なサイズとされている。
【符号の説明】
【0027】
100 排便容器(パルプモールド製の排便容器)
1 容器部
10 開口の縁
10c 開口の縁の中央付近
100 パルプモールド製容器
11 側壁部
12 底部
15 凸部(前方凸部)
19 鋭角突出部
190 突出先端部分
109 (容器部1の側壁部11の)仮想交叉部
2 張出部
2a 右張出部
2b 左張出部
21 内溝部(縁溝部)
22 長手状凸部
222 長手状凸部の上面
223 長手状凸部の外側壁
23 外溝部
231 外溝部の内側壁
233 外溝部の外側壁
24 溝端連通部
25 水平延設部
26 溝端凹部
209 (張出部2の)仮想交叉部
209L 切離部
8 ポータブルトイレ
80 基部容器
81 便座
810 (便座81の下面側の)凹部
9 仮想平面
図1
図2
図3
図4
図5