(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記電線把持部及び上記可動電線把持部の上記菱形部は一対の屈曲部と一つの先端屈曲部を具備しており、上記一対の屈曲部は上記電線の方向に突出して形成されることにより、上記電線把持部の上記屈曲部と上記可動電線把持部の上記屈曲部により電線を包み込むように構成されたものである請求項4記載の電線止めクリップ。
上記電線把持部及び上記可動電線把持部の上記折り返し部分は、上記上線部の上記先端部と上記下線部の上記先端部の間隔を拡幅すると同時に、上記上線部の上記先端部及び上記下線部の上記先端部から電線方向に折り曲げられた折曲部が各々形成され、
かつ両上記折曲部の先端部間を上下方向に結ぶ連結部が形成され、上記連結部は上記電線の円周方向に沿う湾曲状に形成され、これにより上記折り返し部は全体に三角形状の三角部として形成されているものである請求項1記載の電線止めクリップ。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明に係る電線止めクリップについて詳細に説明する。
【0049】
本発明に係る電線止めクリップ1は、
図11に示すように、電柱(鉄塔、鉄柱、コンクリート柱、木柱等を含む)2の腕金3上に、上金具5及び下金具4が予め固定されている碍子6をボルトナット7にて固定し、上記上金具5の上に本発明に係る上記電線止めクリップ1が固定され、当該電線止めクリップ1にて架空電線E(高圧電線、低圧電線等を含む、以下単に「電線E」という)を保持するものである。
(第1の実施形態)
【0050】
図8に示すように、上記上金具5の上面に上向きコ字状の金属製の取付金具8の底板8aの下面を上記上金具5の上面に例えば溶接により固定し、上記取付金具8の上側から、上下開口の金属製長方形枠9を、上記取付金具8の前面側起立板8bと後面側起立板8cが上記金属製長方形枠9の前面板9aと後面板9bの内側に入るように被覆する(
図8矢印A参照)。
【0051】
上記取付金具8の上記前面側起立板8bと上記後面側起立板8cには水平方向同一水準位置にボルト孔10,10が貫通形成されている。一方、上記金属製長方形枠9の前面板9aと上記後面板9bにも水平方向同一水準位置にボルト孔11,11が貫通形成されており、上記取付金具8に上記金属製長方形枠9を被覆したとき、各ボルト孔11,11及び10,10の中心が同一中心軸P上に位置し得るように構成されている(
図1参照)。
【0052】
上記金属製長方形枠9は、前後方向に長い長方形状の上下開口枠から構成されており、当該金属製長方形枠9を基台として、前方側の上記前面板9aを包摂する隣接コーナ部を含む横断面コ字状の一端部が、上方に延長されることにより、横断面コ字状の電線受部12が形成されている(
図1、
図2、
図8参照)。
【0053】
尚、
図1、
図8(他の図においても同じ)において、上記金属製長方形枠9において、上記電線受部12が形成された側を「前方」、電線受部12が形成されていない側を「後方」、「前方」から「後方」を向いた場合の左右を「左方、右方」(外向き左右方向)、「前方」から「後方」を向いた場合の上下を「上下方向」と定義する。
【0054】
上記電線受部12は、
図1、
図2、
図8に示すように、下方に上記ボルト孔11が形成された上記前面板9a及び上記後面板9b、及び、左側面板9c、右側面板9dとから構成されている。
【0055】
上記電線受部12の両端縁には、互いに平行な左右側板12a,12bが後向きで形成されており、上記左右側板12a,12bの下端部は上記左右側面板9c,9dの上縁に一体化している(
図2参照)。
【0056】
上記左右側板12a,12bには、上記左右側面板9c,9dの上縁より上方位置に、内部に左右の電線把持部20,20の上線部20b、下線部20cが各々係合する電線受用の溝13,13が後向きに各々凹設されている(
図3、
図5、
図7、
図8参照)。この溝13,13は左右対称形状なので、
図2の溝13にてその形状を説明すると、当該溝13は、後方向の凹状の溝から構成されており、
図7に示すように、後述の左右電線把持部20,20(上下線部20b,20c)が係合する上下のコーナ部13a,13bを有しており、後向の開口側には上側に電線受用のテーパ部13c、上記開口側の下側に電線受用のテーパ部13dが各々形成されている。
【0057】
上記電線受部12の上記左右側板12a,12bの内側には、金属製の針電極15が固定されている。この針電極15は
図1、
図2に示すように、後向で、上方と下方に上針部15a〜15cと下針部15a’〜15c’が設けられていると共に、
図1に示すように、上記上下針部が、平面視においては、左右方向に間隔を以って3個並設されており(上下針部15a,15a’、上下針部15b,15b’、上下針部15c,15c’)、これらの針電極15は、電線を把持したとき、電線Eの被覆を破って内部の金属製の導体に接触させ、電線Eの導体Ecと金属製の電線受部12とを導通させるためのものである(
図3参照)。
【0058】
この針電極15は上記電線受部12の内側の面にその前面15’(
図2参照)を接触することにより、電線受部12に導通状態で接続固定されている。尚、18は貫通孔18aを介して針電極15を前面板9aに固定するための金具である(
図2、
図5参照)。
【0059】
また上記電線受部12の前面板9aには、左側に、上下に貫通孔19,19’、右側に上下に貫通孔19,19’(計4個)が各々貫通形成されている(
図5、
図8参照)。そして、上記上側の左右の貫通孔19,19は上記左右の上記溝13,13の上側の上記コーナ部13a,13aと略同一の高さに設けられ、上記下側の左右の貫通孔19’,19’は上記左右の上記溝13,13の下側の上記コーナ部13b,13bと略同一の高さに設けられている。そして、上記左側の貫通孔19,19’に左の電線把持部20の端部20b’,20c’を、上記電線受部12の内側(後方側)から挿通して、左方向に広げられた上記電線把持部20の上下線部20b,20cが、左側の上記溝13内の上側のコーナ部13aと下側のコーナ部13bに位置するように構成されている(
図5、
図7(a)(b)参照)。さらに、上記右側の貫通孔19,19’に右の電線把持部20の端部20b’,20c’を、上記電線受部12の内側(後方側)から挿通して、右方向に広げられた上記電線把持部20の上下線部20b,20cが、右側の上記溝13の上側のコーナ部13aと下側のコーナ部13bに位置するように構成されている(
図7(a)(b)、
図5参照)。
【0060】
次に、電線把持部20について説明する。この電線把持部20は、上記電線受部12の左側に1個、電線受部12の右側に1個、後述の可動電線受部24の左側に1個、右側に1個、計4個を使用しているが、全て同一形状であるので、以下、1個の電線把持部20について説明する。
【0061】
この電線把持部20は金属製(例えばステンレス(SUS304WPB等))の例えば直径約2mm〜3mmの弾性線材であり、弾性的に曲げることのできる金属線材から構成されており、基本形は
図5、
図9に示すように、1本の線材を、例えば半径10mmにて一端部はU字形状に折り曲げられてU字状部20aが形成され、上記U字状部20aから、互いに平行な2本の上線部20bと下線部20cが構成され、他端部は一対の端部20b’,20c’が形成されている。
【0062】
そして、
図1、
図9、
図23(a)に示すように、上記他端部側の端部20b’,20c’に比較的近い上線部20bと下線部20cの同一点a,aを、同じ方向(一方向、
図1においては前方側)に略直角に各々折り曲げて溝係合部21,21を形成すると共に、さらに上記各溝係合部21,21よりも上記端部20b’,20c’に近い上線部20b,下線部20cの同一点b,bを、他方向(
図1においては右又は左方向)に略直角に各々折り曲げて挿通部22,22を形成することで、1つの電線把持部20が形成されている。即ち、一端はU字状部20aが形成され、他端は2本の線材からなる平面視略L字状の基端部(溝係合部21,21及び挿通部22,22)が形成されている。このように電線把持部20は予め
図1、
図9に示す形状に加工されている。尚、上記U字状部20aから上記一点a,aまでの上下線部20b,20cを接触部23という。
【0063】
そしてこの電線把持部20は、
図1、
図2、
図5に示すように、上記端部20b’,20c’を含む上記挿通部22,22を上記電線受部12の左側の上下の貫通孔19,19’に内側から各々挿通し、U字状部20a側が上記電線受部12の左方向に位置するように回動させて、上記溝係合部21,21を上記溝13内の上下のコーナ部13a,13bに係合することで基端部(挿通部22,22及び溝係合部21,21)を以って固定し(
図1、
図7(a)(b)参照)、上記U字状部20aが電線受部12の外向きの左側に上下方向に(横向き)U字状になるように(水平に位置するように)、上記接触部23を上記電線受部12の左側に水平に位置させる(
図1、
図5参照)。
【0064】
この時点で、上記接触部23は、
図1、
図9に示すように、上記中心軸Pに直交する左右水平線L1に対して後方傾斜角θとして約10度だけ後方に傾斜した状態となっているが、電線を把持した状態においては、
図4に示すように、上記接触部23は上記電線Eと密着し、該電線Eと平行になるように構成されている。即ち、電線Eを把持した状態では、後述の可動電線把持部24の電線把持部20の前方側への移動によって電線Eによって前方側に押され、上記接触部23の後方向きの附勢力に抗して前方に押圧され、
図4に示すように上記電線把持部20を以って、電線Eに平行な状態で電線Eの側面(前方側側面Ea)を保持し得るように構成されている。即ち、左の上記電線把持部20は後方向の附勢力を上記電線Eに与えるべく、上記基端部(一点a)から上記各U字状部20aが上記可動電線受部24方向に傾斜している。
【0065】
また
図1の状態(電線Eを把持する前)において、左の上記電線把持部20は、上記電線受部12の上記貫通孔19,19’に上記各挿通部22,22を挿通され、上記各上線部20bと上記各下線部20cを、左の上記溝13に係合した状態で、上記電線受部12にずれることなく強固に固定された状態となっている(
図5参照)。
【0066】
また、上記電線把持部20の上記U字状部20aは、上記上下線部20b,20cの長手方向の延長線L2上より若干前方側(電線から離れる方向)に湾曲形成された反部Hが形成されており(
図1矢印R参照)、これにより、上記接触部23にて電線Eの側面を把持したとき、上記U字状部20aの反部Hの円弧部20a’(
図9(a)参照)が電線Eの側面の周方向の円弧に沿って密着するように構成されている(
図2、
図9、
図10参照)。これにより、接触部23(上下線部20b,20c)を電線Eの側面に密着させることができる(
図23(a)参照)。
【0067】
上記電線受部12の右側の電線把持部20も、上記電線把持部20と同じ形状のものであり、上記左側の上記電線把持部20を左右反転してU字状部20aが上記電線受部12の右側に位置するように取り付けたものである。
【0068】
即ち、右側の電線把持部20は、
図1、
図2、
図5に示すように、上記端部20b’,20c’を含む上記挿通部22,22を上記電線受部12の右側の貫通孔19,19’に内側から挿通し、U字状部20a側が右方向に位置するように回動させて、上記溝係合部21,21を上記溝13の上下のコーナ部13a,13bに係合することで基端部(挿通部22,22及び溝係合部21,21)を以って固定し(
図3、
図4参照)、上記U字状部20aが電線受部12の外向きの右側に上下方向に(横向き)U字状になるように(水平に位置するように)、上記接触部23を上記電線受部12の右側に水平に位置させる(
図1、
図5参照)。
【0069】
この時点で、上記接触部23は、
図1に示すように、上記中心軸Pに直交する左右水平線L1に対して後方傾斜角θとして約10度だけ後方に傾斜した状態となっているが、電線Eを把持した状態においては、
図4に示すように、上記接触部23は上記電線Eに密着し、該電線Eと略平行になるように構成されている。即ち、電線Eを把持した状態では、後述の可動電線把持部24の前方側への移動によって電線Eによって前方側に押され、上記接触部23の後方向きの附勢力に抗して前方に押圧され、
図4に示すように、電線Eに平行な状態で電線Eの側面(前方側側面Ea)を保持し得るように構成されている。即ち、右の上記電線把持部20は後方向の附勢力を上記電線Eに与えるべく、上記基端部(一点a)から上記各U字状部20aが上記可動電線受部24方向に傾斜している。
【0070】
また
図1の状態(電線Eを把持する前)において、右の上記電線把持部20は、上記電線受部12の上記貫通孔19,19’に上記各挿通部22,22を挿通され、上記各上線部20bと上記各下線部20cを、右の上記溝13に係合した状態で、上記電線受部12にずれることなく強固に固定された状態となっている。
【0071】
また、上記電線把持部20の上記U字状部20aは、上記上下線部20b,20cの長手方向の延長線L2上より若干前方側(電線から離れる方向)に湾曲形成された反部Hが形成されており(
図1矢印R参照)、これにより、上記接触部23にて電線の側面を把持したとき、上記U字状部20aの反部Hの円弧が電線の側面の円弧に沿って密着するように構成されている(
図2、
図9、
図10参照)。これにより、接触部23(上下線部20b,20c)を電線Eの側面に密着させることができる(
図23(a)参照)
【0072】
上記金属製長方形枠9の前面板9a、後面板9bに形成された上記ボルト孔11,11、及び、上記取付金具8の前面側起立板8bと後面側起立板8cに形成されたボルト孔10,10に1本の金属製のボルトBを挿通し、螺子の切っていない後端部B’にナットNを挿通して抜止ピン28(
図2、
図6参照)で抜け止めすることで、ボルトBを回転可能な状態として上記取付金具8に上記金属製長方形枠9を固定する(
図2参照)。
【0073】
上記金属製長方形枠9内におけるボルトBの雄螺子部B”には、可動電線受部24の下端の金属製の雌螺子部25を螺合して、上記ボルトBを正逆回転させることにより、上記可動電線受部(金属製)24を上記電線受部12に近接、離間し得るように構成する(
図1、
図2参照)。
【0074】
上記可動電線受部24は、上記ボルトBへの螺合状態において、上記雌螺子部25に固定された直立基板24aと、該直立基板24aの左右両縁には前向きに左右側板24b,24cが平行に形成されている(
図1参照)。この可動電線受部24は、上記電線受部12と対称形状であり、平面視前向き「コ」字状に形成されている。但し左右側板24b,24cの左右方向幅は金属製長方形枠9の内部に位置しているから電線受部12側より若干狭い。尚、可動電線受部24側の電線把持部20,20を「可動電線把持部20,20」という。
【0075】
上記左右側板24b,24cには、上記電線受部12の上記溝13,13と同一高さに、各々溝26,26が凹設されている(
図1、
図2参照)。この溝26,26は左右対称形状なので、
図2の溝26にてその形状を説明すると、当該溝26は、前向きの凹状の溝から構成されており、
図7に示すように、後述の左右の可動電線把持部20が係合する上下のコーナ部26a,26bを有しており、前方向の開口側には上側に電線受用のテーパ部26c、上記開口側の下側に電線受用のテーパ部26dが各々形成されており、その形状は、上記電線受部12の上記溝13,13と略対称形状である(テーパ部26dとテーパ部13dの形状が異なる)。
【0076】
上記可動電線受部24の上記左右側板24b,24cに挟まれた内側には、上記針電極15に対向する金属製の針電極27が固定されている(
図1、
図2参照)。この針電極27は
図2に示すように、前方向で、上方と下方に上針部27a,27bと下針部27a’,27b’が設けられていると共に、
図1に示すように、上記上下針部が、平面視においては、左右方向に間隔を以って2個並設されており(上下針部27a,27a’、上下針部27b,27b’)、これらの針電極27は、電線Eを把持したとき、電線Eの被覆を破って内部の導体Ecに接触させ、電線Eの導体と金属製の可動電線受部24とを導通させるためのものである(
図3参照)。この針電極27の上記上下針部27a,27a’は、平面視において(
図1参照)、対向する上記針電極15の上下針部15a,15a’と上下針部15b,15b’との中間位置、上記上下針部27b,27b’は、対向する上記針電極15の上下針部15b,15b’と上下針部15c,15c’との中間位置に位置するように構成されている。
【0077】
この針電極27は上記可動電線受部24の直立基板24aの内側の面にその後面27’を接触することにより、導通状態で接続固定されている。尚、可動電線受部24においても、金具18が貫通孔18aを介して針電極27を直立基板24aに固定している(
図2、
図6参照)。針電極15は後方側に向かう末広がり状のテーパ部(
図2参照)、針電極27は前方側に向かう末広がり状のテーパ部を有しており(
図2参照)、最終的に電線Eを把持したときは(
図3参照)、針電極15,27の各先端が電線Eの導体Ecに導通し、両テーパ部は電線Eのセンタリングを行うように構成されている。
【0078】
また上記可動電線受部24には、左側に、上下に貫通孔30,30’、右側に上下に貫通孔30,30’(計4個)が各々貫通形成されている(
図6参照)。
【0079】
そして、上記上側の左右の貫通孔30,30は上記左右の上記溝26,26の上側の上記コーナ部26a,26aと略同一の高さに設けられ、上記下側の左右の貫通孔30’,30’は上記左右の上記溝26,26の下側の上記コーナ部26b,26bと略同一の高さに設けられている。そして、上記左側の貫通孔30,30’に左の可動電線把持部20の端部20b’,20c’を、上記可動電線受部24の内側(前側)から挿通して、左方向に広げられた上記可動電線把持部20の上下線部20b,20cが、左側の上記溝26内の上側のコーナ部26aと下側のコーナ部26bに位置するように構成されている(
図7(a)(b)、
図6参照)。さらに、上記右側の貫通孔30,30’に右の可動電線把持部20,20の端部20b’,20c’を、上記可動電線受部24の内側(前側)から挿通して、右方向に広げられた上記可動電線把持部20の上下線部20b,20cが、右側の上記溝26の上側のコーナ部26aと下側のコーナ部26bに位置するように構成されている(
図7(a)(b)、
図6参照)。
【0080】
上記可動電線受部24側の上記可動電線把持部20,20は、上記電線受部12側の電線把持部20,20に対して、各接触部23,23が上記電線把持部20,20の上記各接触部23,23に対向するように、上記電線受部12側の上記電線把持部20,20に対して、同一高さで、かつ平行となるように、上記可動電線受部24に固定されている(
図1参照)。また、上記電線受部12側の電線把持部20,20と上記可動電線受部24側の可動電線把持部20,20は対称形状となるように構成されている。
【0081】
但し、可動電線受部24の左右方向幅は、上記電線受部12の左右方向幅より狭く、可動電線把持部20,20の挿通部22,22側の取付位置(貫通孔30,30と貫通孔30’,30’)の幅は、上記貫通孔19,19と貫通孔19’,19’の幅よりも狭いので、左右の可動電線把持部20,20は上記電線受部12側の電線把持部20,20よりも左右方向に近接して固定されている(
図1、
図4〜
図6参照)。
【0082】
そして可動電線受部24の上記可動電線把持部20は、
図1、
図2、
図6に示すように、上記端部20b’,20c’を含む上記挿通部22,22を上記可動電線受部24の左側の貫通孔30,30’に挿通し、U字状部20a側が左方向に位置するように回動させて上記溝係合部21,21を上記溝26の上下のコーナ部26a,26bに係合することで基端部(挿通部22,22及び溝係合部21,21)を以って固定し(
図7(a)(b)、
図6参照)、上記U字状部20aが可動電線受部24の外向きの左側に上下方向に(横向き)U字状になるように(水平に位置するように)、上記接触部23を上記可動電線受部24の左側に水平に位置させる(
図1、
図6参照)。
【0083】
この時点で、上記接触部23は、
図1に示すように、上記中心軸Pに直交する左右水平線L1に対して前方傾斜角θとして約10度だけ前方に傾斜した状態となっているが(
図9参照)、電線Eを把持した状態においては、
図4に示すように、上記接触部23は上記電線Eと略平行になるように構成されている。即ち、電線Eを把持した状態では、上記可動電線把持部24の前方側への移動によって電線Eによって後方側に押され、上記接触部23の前向きの附勢力に抗して後方に押圧され、
図4に示すように、電線Eに平行な状態で電線Eの側面(後方側側面Eb)を保持し得るように構成されている。即ち、左の上記可動電線把持部20は前方向の附勢力を上記電線Eに与えるべく、上記各基端部(一点a)から上記U字状部20aが上記電線受部12方向に各々傾斜している。
【0084】
また、上記可動電線把持部20の上記U字状部20aは、上記上線部20b,20cの長手方向の延長線L2上より若干後方側(電線から離れる方向)に湾曲形成された反部Hが形成されており(
図1矢印R’参照)、これにより、上記接触部23にて電線Eの側面を把持したとき、上記U字状部20aの反部Hの円弧部20a’が電線Eの側面の円弧に沿って密着するように構成されている(
図2、
図9、
図10参照)。これにより、接触部23(上下線部20b,20c)を電線Eの側面に密着させることができる(
図23(a)参照)。
【0085】
上記可動電線受部24の右側の可動電線把持部20も、左側の上記可動電線把持部20と同じ形状のものであり、上記左側の上記可動電線把持部20を左右反転してU字状部20aが上記電線受部12の右側に位置するように取り付けたものである。
【0086】
即ち、
図1に示すように、右側の可動電線把持部20は、
図1、
図2、
図6に示すように、上記端部20b’,20c’を含む上記挿通部22,22を上記可動電線受部24の右側の貫通孔30,30’に内側から挿通し、U字状部20a側が右方向に位置するように回動させて上記溝係合部21,21を上記溝26の上下のコーナ部26a,26bに係合することで基端部(挿通部22,22及び溝係合部21,21)を以って固定し(
図7参照)、上記U字状部20aが可動電線受部24の外向き右側に上下方向に(横向き)U字状になるように(水平に位置するように)、上記接触部23を上記可動電線受部24の右側に水平に位置させる(
図1参照)。
【0087】
この時点で、上記接触部23は、
図1に示すように、上記中心軸Pに直交する左右水平線L1に対して前方傾斜角θとして約10度だけ前方に傾斜した状態となっているが、電線Eを把持した状態においては、
図4に示すように、上記接触部23は上記電線Eと略平行になるように構成されている。即ち、電線Eを把持した状態では、後述の可動電線把持部24の前方側への移動によって電線Eによって後方側に押され、上記接触部23の前方向きの附勢力に抗して後方に押圧され、
図4に示すように、電線Eに平行な状態で電線Eの側面(後方側側面Eb)を保持し得るように構成されている。即ち、右の上記可動電線把持部20は前方向の附勢力を上記電線Eに与えるべく、上記各基端部(一点a)から上記U字状部20aが上記電線受部12方向に各々傾斜している(
図1参照)。
【0088】
また、上記可動電線把持部20の上記U字状部20aは、上記上下線部20b,20cの長手方向の延長線L2上より若干後方側(電線から離れる方向)に湾曲形成された反部Hが形成されており(
図1矢印R’参照)、これにより、上記把持部23にて電線Eの側面を把持したとき、上記U字状部20aの反部Hの円弧が電線の側面の円弧に沿って密着するように構成されている(
図10参照)。これにより、接触部23(上下線部20b,20c)を電線Eの側面に密着させることができる(
図23(a)参照)。
【0089】
このように、左側の上記可動電線把持部20と右側の上記可動電線把持部20は、各一対の上下線部20b,20cを縦方向(上下方向)に位置させた状態で水平方向の同一水準に位置しており(
図6参照)、左側の上記可動電線把持部20と右側の上記可動電線把持部20は、各一対の上下線部20b,20cを縦方向(上下方向)に位置させた状態で水平方向に同一水準に位置しており、上記電線受部12の左右の上記電線把持部20,20と上記可動電線受部24の左右の上記可動電線把持部20,20は、同一水準位置に設けられている(
図2、
図5、
図6参照)。
【0090】
上記上金具5は(
図11参照)、端子5aから金属棒K(導線)を介して電力用バリスタ31に接続され、さらに電力用バリスタ31から金属棒K、ギャップGを介して端子4aにて下金具4に接続され、下金具4から電気ケーブルK’を介して腕金3及び電柱2を介して地面に接地されている。
【0091】
本発明は上述のように構成されているので、以下、その作用について説明する。尚、前にも書いたが、可動電線受部24側の電線把持部20,20を「可動電線把持部20,20」という。
【0092】
本発明に係る電線止めクリップ1は、
図11に示すように、碍子6上の上金具5上に固定され、電線受部12と可動電線受部24は
図1、
図2に示すように離間しており、電線受部12側の左右の電線把持部20,20と、可動電線受部24側の左右の可動電線把持部20,20間には電線Eは存在せず、上記電線受部12側の電線把持部20,20は何れも直線L1,L1に対して、一点a,aから約10度(θ)ずつ後方に傾斜しており、上記可動電線把持部24側の可動電線把持部20,20は何れも直線L1,L1に対して、一点a,aから約10度(θ)ずつ前方に傾斜しているものとする。
【0093】
次に、一定の径の電線Eを上記電線受部12と可動電線受部24間に上記電線止クリップ1の金属製長方形枠9の長手方向に直交する方向に配置し、該電線Eを、上記電線受部12側の上記電線把持部20,20と、上記可動電線把持部24側の上記可動電線把持部20,20に沿うように、上記各電線把持部20,20と上記各可動電線把持部20,20に平行に配置する。即ち、作業者は電線Eを電線把持部20,20と可動電線把持部20,20間に平行に配置する。
【0094】
具体的には、上記電線Eを、
図5に示すように、上記電線受部12側の左右の電線把持部20,20のU字状部20a,20aが電線Eの前方側側面Eaの軸方向の中心部に位置し、左右の上線部20b,20bと下線部20c,20cに沿って電線Eが位置するように、即ち、左右の上線部20b,20bと下線部20c,20cの中央部が電線Eの前方側側面Eaの長手方向の略中央位置に位置するように当該電線Eを配置する。
【0095】
このように配置すると、同時に、
図6に示すように、上記電線Eは、上記可動電線受部24側の左右の可動電線把持部20,20のU字状部20a,20aが電線Eの後方側側面Ebの軸方向の中心部に対応して位置し、左右の上線部20b,20bと下線部20c,20cに沿って電線Eが位置するように、即ち、左右の上線部20b,20bと下線部20c,20cの中央部が電線Eの後方側側面Ebの長手方向の略中央位置に対応して位置することになる。
【0096】
かかる状態において、作業者は、上記ボルトBの頭に、六角レンチを嵌合し、当該六角レンチを右方向に回転させ、上記ボルトBを右螺子方向に回転する。すると、上記ボルトBが右螺子方向に回転するため、上記雌螺子部25を介して可動電線受部24が、電線受部12の方向に徐々に近接していく。
【0097】
そして、上記電線受部12側の左右の電線把持部20,20の左右の接触部23,23(左右の各上線部20b,下線部20c)は、電線Eの電線受部12側の前方側側面Eaにて、上記接触部23,23の各後方側の附勢力に抗して前方側に押され、
図4に示すように、電線把持部20,20の左右の上記接触部23(左右の各上線部20b,下線部20c)は、上記電線Eの前方側側面Eaに平行な状態まで押され、当該平行状態で、後方側の附勢力を電線Eの前方側側面Eaに及ぼした状態で上記電線Eの前方側側面Eaに強く接触(密着)した状態となる。
【0098】
このとき上記電線把持部20,20の両端のU字状部20a,20aの反部Hの円弧部20a’,20a’は、
図10に示すように、上記電線Eの電線受部12側の側面(前方側側面Ea)の円弧に沿って接触した状態(電線を抱き込んだ状態)となり、これにより上記接触部23,23(上線部20b、下線部20c)が電線Eの側面に確実に接触し、ずれを生じないように構成されている。また、上記反部Hによって先端の上記U字状部20aにおける電線Eに対する曲げ応力の集中を緩和し、電線の破損を防止することができる(
図23(a)参照)。
【0099】
同時に、上記ボルトBの右回りの回転により、可動電線受部24側の左右の可動電線把持部20,20は(特に、両先端のU字状部20a,20aは)、上記電線Eの後方側側面Eb(可動電線受部24側の左右側面)に各々当接し、同様に上記電線Eの後方側側面Ebを前方に押圧していく。
【0100】
上記可動電線受部24側の上記左右のU字状部20a,20aにて上記電線Eを前方に押していくと、上記電線Eを前方側に押していくと共に、上記電線受部12の左右の電線把持部20,20の後方向きの附勢力に抗して電線Eを前方に押していく状況になり、この状況になると、上記可動電線把持部20,20においても、これらの可動電線把持部20,20の前方向きの附勢力に抗して上記電線Eを前方に押していくことになり、上記電線受部12側の左右の電線把持部20,20が上記電線Eに平行になった状態において、略同時期に、可動電線受部24側の左右の可動電線把持部20,20が、上記電線Eの後方側側面Eb(可動電線受部24側の側面)に平行な状態となり、
図4に示すように、左右の可動電線把持部20,20の上記左右の接触部23,23(左右の上線部20b,下線部20c)は、上記電線Eの後方側側面Ebに平行な状態まで押され、当該平行状態で、前方側の附勢力を電線Eの後方側側面Ebに及ぼした状態で上記電線Eの側面に強く接触(密着)した状態となる。
【0101】
このとき左右の上記可動電線把持部20,20の両端のU字状部20a,20aの反部Hの円弧部20a’,20a’は、
図10に示すように、上記電線Eの可動電線受部24側の側面(後方側側面Eb)の円弧に沿って接触した状態(電線を抱き込んだ状態)となり、これにより電線Eの側面に接触部23,23(上線部20b、下線部20c)が確実に接触し、ずれを生じないように構成されている(
図23(a)参照)。また、同様に、上記反部Hによって先端の上記U字状部20aにおける電線Eに対する曲げ応力の集中を緩和し、電線の破損を防止することができる。
【0102】
上記作業者は、上記六角レンチを右方向に回転し、電線受部12の左右の電線把持部20,20、及び、可動電線受部24の左右の可動電線把持部20,20が
図4に示すように電線Eの前方側側面Ea、後方側側面Ebに各々平行に接し、上記電線受部12側の左右の電線把持部20,20と、上記可動電線受部24側の左右の可動電線把持部20,20が、電線Eの前方側と後方側の両側面Ea,Ebに所定長さに亘って平行となり、上記電線Eの前方側と後方側の両側面Ea,Ebが上記左右の電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20によって挟み込むように把持された時点で、上記六角レンチの回転を停止する。
【0103】
この状態において、左の上記電線Eは、電線受部12側の左の弾性線材からなる電線把持部20の後方向きの附勢力と、可動電線把持部24側の左の弾性線材からなる可動電線把持部20の前方向きの附勢力によって、上記各接触部23,23が電線Eに密着し、上記各接触部23,23の所定長さに亘って電線に接触し、電線Eは、電線把持部及び可動電線把持部20,20によって、軸方向に、該電線Eの前方側側面Ea及び後方側側面Ebから強く挟持された状態となる。
【0104】
同時に、右の電線Eも、上記電線受部12側の右の弾性線材からなる電線把持部20の後方向きの附勢力と、可動電線受部24側の右の弾性線材からなる可動電線把持部20の前方向きの附勢力によって、上記各接触部23,23が電線Eに密着し、上記各接触部23,23の所定長さに亘って電線に接触し、電線Eは、電線把持部及び可動電線把持部20,20によって、軸方向に、該電線Eの前方側側面Ea及び後方側側面Ebから強く挟持された状態となる。
【0105】
また、このとき、電線Eは、
図7(a)に示すように、その前方側側面Eaは、電線把持部20,20の上下線部20b,20cに当接して上記溝13,13内において確実に支持され、その後方側側面Ebは、可動電線把持部20,20の上下線部20b,20cに当接して上記溝26,26内において確実に支持され、ずれることはない(
図7(a)の電線Eの直径は10mm)。尚、電線Eの径が大の場合であっても、
図7(b)に示すように(電線Eの直径は19mm)、その前方側側面Eaは、上記電線把持部20,20の上下線部20b,20cと共に、左右の上記両溝13,13の左右のテーパ部13c,13dに当接して確実に支持され、その後方側側面Ebは、上記可動電線把持部20,20の上下線部20b,20cに当接すると共に、左右の上記溝部26,26の左右のテーパ部26c,26dにも当接することで確実に支持され、大きくずれることはない。さらに電線径が大の場合であっても、電線Eの外周は、上記左右の溝13,26の範囲内においては、左右のテーパ部13c,13d及び左右のテーパ部26c,26dに接触し、確実に支持され、ずれることはない。
【0106】
また、かかる挟持状態において、
図3、
図4に示すように、電線止クリップ1の電線受部12側の針電極15の上下針部15a〜15c,15a’〜15c’及び可動電線受部24側の針電極27の上下針部27a,27b、27a’,27b’は各々上記電線Eの被覆E’を破って内部の導体Ecに接触し、電線止クリップ1との導通状態を実現し得る。また上記針電極15,27の左右の電線Eの所定長に亘り電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20にて電線Eを弾性的に把持し得るので、針電極近傍での電線Eの応力集中を防止し得て、電線止クリップ1の放電機能が害されることがない。
【0107】
実際には、電線Eは、
図13(a)に示されるように、複数の電柱2,2・・・間の各腕金3,3・・・上の各電線止クリップ1に順次、同様に固定されていく。
図12に示すように、電線Eは、比較的硬質なものであり、当該電線止めクリップ1の両側における上記電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20によって挟持された部分S,Sは、上記電線把持部20,20に平行な状態を保持し、上記部分S,Sより先の部分が
図13(a)に示すように、緩やかに下に凸状になるように、各電柱2,2・・・間に掛け渡されていく。
【0108】
このとき風により、上記電線Eは
図13(b)に示すように、その中央部Mを最も大きな振幅を以って前後方向(矢印F,F’方向)に振動する。この場合、電線Eの電線止クリップ1の左右両側において、電線Eの前方側と後方側の円弧状の両側面Ea,Ebは、電線把持部20,20と、可動電線把持部20,20の接触部23,23によって、長手方向の所定範囲に亘って挟持されているので、上記電線Eが前後方向(
図4、矢印F,F’方向)に振動したとしても、弾性線材から構成されている上記電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20は、上記電線Eの前後方向の振動に合わせて、上記一点a,a近傍を支点として、上記U字状部20aを含む上記接触部23,23全体が、前後方向(
図4の矢印F,F’方向)に弾性変形して振動するため、電線Eの上記接触部23,23が接触している挟持部(電線Eの軸方向の所定長さ)における特定の部位に応力が集中することがなく、従って、振動による電線Eの劣化、或いは断線等の事故を極めて効果的に防止することができる。
【0109】
特に、電線Eは前方側側面Eaと後方側側面Ebとが電線把持部及び可動電線把持部20,20によって所定長さに亘って対向するバネ力によって強く挟持された状態となり、電線Eが振動しても、所定長さの電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20も電線と共に弾性的に振動するので(例えば
図4にて、電線が矢印F(F’)方向に振動したとき、電線把持部20(可動電線把持部20)は矢印F(F’)方向に変形し得るが、可動電線把持部20(電線把持部20)も前方(後方)に附勢されているので、F(F’)方向に電線Eの変形に追従し得して変形し得る)、電線Eの所定長さに亘って、挟持箇所の特定部位への応力集中を分散することができる。また、電線把持部20,20の基端部が電線を確実に支持することも加わり、電線の動きによる応力集中が、針電極近傍で起きることがなく、放電機能にも影響を与えない。
【0110】
また、電線把持部20と可動電線把持部20は、縦方向(上下方向)の上線部20bと下線部20cによって電線の円弧状の前方側側面Eaと後方側側面Ebとを、所定長さに亘り弾性的に挟持する構成であるから、電線の前後方向の振動に追従し易くなり、電線に対する曲げ応力の集中を効果的に分散し得る。
【0111】
しかも、電線の前方側側面Eaを2本の上線部20bと下線部20c(接触部23,23)によって上下間隔を開けた状態で保持し、電線の円弧状の後方側側面Ebを2本の上線部20bと下線部20cにて上下間隔を開けた状態で電線の円弧状の側面を保持するものであるから、電線の前後方向の動き(
図10矢印F,F’方向)だけでなく、例えば上下方向の動き(
図10矢印Q,Q’方向)にも追従することができ、電線の多方面の動きに追従し得て、電線に対する応力の集中を効果的に分散し得る。
【0112】
また、電線把持部20(可動電線把持部20も同じ)のU字状部20aは電線から離間する方向の反部Hが形成されているので、上記反部Hから上線部20b、下線部20cにて電線を抱き込むように密着し得るため、電線把持部20の先端部における電線の曲げ応力集中を効果的に分散し得る。
【0113】
以上のように、電線止クリップ1の左右両側において電線Eを確実に挟持することができ、これにより電線把持部20と可動電線把持部20が電線Eに密着して電線Eの振動に追従し得るため、電線Eへの曲げ応力を均等に分散することができる。
【0114】
電線Eの、電線把持部20(可動電線把持部20も同じ)の上線部20b、下線部20cとの接触部23は、電線Eの側部中央からやや上下に離れた外周の途中となる。風圧荷重等により電線Eが振動する際は、電線Eがその外周を、所定長さに亘り、上記上線部20b、下線部20cとの間にはさみ入れることで、素線間摩耗(電線内のアルミ素線同士が接触した状態で摺動し、素線に摩耗が生じる現象)を軽減し、電線把持部20のばね変形による弾性力(反発力)が曲げ応力を分散することができる。よって、曲げ応力の分散効果と素線間摩耗の軽減効果を高めることができる。
【0115】
また、U字状の折り返し部分の先端は、電線振幅方向に沿って反部Hを設けることにより、電線Eへの強い押圧から後退し、接触部23と同様に電線Eの外周に沿うことになる。そのため、電線把持部20の先端側に弾性力は偏りにくい。このことは、接触部23から反部Hの範囲に曲げ応力を分散させるように作用し、更に曲げ応力の分散により素線間摩耗の軽減効果を高めることができる。
【0116】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
尚、上記第1の実施形態と同一部分については同一符号を付し、それらの説明は便宜上省略する。
【0117】
図14(a)〜(c)に示すように、電線把持部20は、金属製の弾性線材から構成されている点、及び、端部20b’,20c’側の形状、即ち、溝係合部21,21、挿通部22,22(即ち基端部)の形状は第1の実施形態の電線把持部20と同じであるが、折り返し部の形状が、第1の実施形態ではU字状部20aであるのに対し、第2の実施形態では菱形部20gである点が異なる。尚、電線受部12側と可動電線受部24側に使用する4本の電線把持部20(可動電線把持部20)は全て同一形状なので1個の電線把持部20について説明する。
【0118】
より詳細に説明すると、上記菱形部20gは、
図14(c)の側面図をみると、上線部20b、下線部20cの他端から、上線部20bと下線部20c間の間隔を広げる方向に一旦、拡幅して菱形の一対の屈曲部20d,20dを形成した後、上線部20bと下線部20c間の仮想中心線L3上に先端屈曲部20eが形成され、上記屈曲部20d,20dと上記先端屈曲部20eにより菱形部20gが形成されている。
【0119】
そして、上記一対の屈曲部20d,20dは、
図14(b)の平面図をみると、上線部20b、下線部20cから拡幅しているのみならず、上記溝係合部21,21とは逆方向(電線E側)に「く」字状に屈曲している(
図23(b)参照)。これにより、上記菱形部20gの先端屈曲部20eは、
図18、
図23(b)に示すように、電線Eの前方側側面Eaの軸方向に沿う湾曲部20f(電線受部12側)と、電線Eの後方側側面Ebの軸方向に沿う湾曲部20f(可動電線受部24側)が形成されていると共に、
図23(a)に示すように、電線Eの円周方向に沿う湾曲部20hが形成されている。
【0120】
また、
図14(b)に示すように、上下線部20b,20cは、左右水平線L1,L1に対して後方傾斜角θ又は前方傾斜角θ(例えばθ=約10度)として後方又は前方に傾斜している点は第1の実施形態の電線把持部20と同じである(
図15参照)。
【0121】
そして、
図15、
図16、
図19に示すように、電線受部12に、電線把持部20,20の基端部(溝係合部21、挿通部22)が第1の実施形態と同様に固定され、上記上下線部20b,20c及び上記菱形部20g,20gが上記電線受部12の左右に水平になるように固定され、電線受部12に固定された状態で、左右の上下線部20b,20cは、左右水平線L1,L1に対して後方に傾斜角θ(例えばθ=約10度)に傾斜している。
【0122】
さらに、
図15、
図16、
図20に示すように、可動電線受部24に、可動電線把持部20,20の基端部(溝係合部21、挿通部22)が第1の実施形態と同様に固定され、上記上下線部20b,20c及び上記菱形部20g,20gが上記可動電線受部24の左右に水平になるように固定され、可動電線受部12に固定された状態で、左右の上下線部20b,20cは、左右水平線L1,L1に対して前方に傾斜角θ(例えばθ=約10度)に傾斜している。
【0123】
また、
図15に示すように、かかる状態において、菱形部20g,20gの上記屈曲部20d,20dは互いに対向する方向に位置するように、相互に略対称となるように取り付けられている。尚、可動電線受部24の可動電線把持部20,20の取付位置は、電線受部12の電線把持部20,20の取付位置より中央部方向に近接しているので、上記電線把持部20,20の屈曲部20d,20dの位置より、可動電線把持部20,20の屈曲部20d,20dの位置は中央部よりに位置している。
【0124】
第2の実施形態は上述のように構成されているので、以下、その作用について説明する。
第2の実施形態の電線止めクリップ1は、第1の実施形態と同様に、
図11に示すように、上金具5上に固定され、電線受部12と可動電線受部24は
図15、
図16に示すように離間しており、電線受部12側の左右の電線把持部20,20と、可動電線受部24側の左右の可動電線把持部20,20間には電線Eは存在せず、上記電線受部12側の電線把持部20,20は何れも直線L1,L1に対して、一点a,aから約10度ずつ後方に傾斜しており、上記可動電線把持部24側の可動電線把持部20,20は何れも直線L1に対して、一点a,aから約10度ずつ前方に傾斜しているものとする。
【0125】
次に、一定の径の電線Eを上記電線受部12と可動電線受部24間に上記電線止クリップ1の金属製長方形枠9の長手方向に直交する方向に配置し、該電線Eを、上記電線受部12側の上記電線把持部20,20と、上記可動電線受部24側の上記可動電線把持部20,20に沿うように、上記各電線把持部20,20と上記各可動電線把持部20,20に平行に配置する(
図18参照)。即ち、作業者は電線Eを電線把持部20,20と可動電線把持部20,20間に平行に配置する。
【0126】
具体的には、上記電線Eを、
図19に示すように、上記電線受部12側の左右の電線把持部20,20の菱形部20g,20gの先端屈曲部20e,20eが電線Eの前方側側面Eaの軸方向の中心線L4に位置し、左右の上線部20b,20bと下線部20c,20cに沿って電線Eが位置するように、即ち、左右の上線部20b,20bと下線部20c,20cの間隔の中央部が、電線Eの前方側側面Eaの長手方向の略中央位置に位置するように当該電線Eを配置する。
【0127】
このように配置すると、同時に、
図20に示すように、上記電線Eは、上記可動電線受部24側の左右の可動電線把持部20,20の菱形部20g,20gの各先端屈曲部20e,20eが電線Eの後方側側面Ebの軸方向の中心線L4に対応して位置し、左右の上線部20b,20bと下線部20c,20cに沿って電線Eが位置するように、即ち、左右の上線部20b,20bと下線部20c,20cの間隔の中央部が、電線Eの後方側側面Ebの長手方向の略中央位置に対応して位置することになる。
【0128】
かかる状態において、作業者は、上記ボルトBの頭に、六角レンチを嵌合し、当該六角レンチを右方向に回転させ、上記ボルトBを右螺子方向に回転する。すると、上記ボルトBが右螺子方向に回転するため、上記雌螺子部25を介して可動電線受部24が、電線受部12の方向に徐々に近接していく。
【0129】
そして、電線把持部20,20の先端の左右の上下湾曲部20f,20f及び湾曲部20hに電線Eの前方側側面Eaが接触し、上記前方側側面Ea,Eaにて電線把持部20,20の接触部23,23の各後方側の附勢力に抗して前方側に押され、
図18に示すように、電線把持部20,20の左右の上記接触部23(左右の各上線部20b,下線部20c)は、上記電線Eの前方側側面Eaに平行な状態まで押され、当該平行状態で、後方側の附勢力を電線Eの前方側側面Eaに及ぼした状態で上記電線Eの前方側側面Eaに強く接触(密着)した状態となる。
【0130】
このとき上記電線把持部20,20の両端の菱形部20g,20gの湾曲部20f,20fに案内されて、先端屈曲部20e,20eに電線Eの前方側側縁Eaが入り込み(
図21(a)、
図23(b)参照)、電線Eの周方向の円弧が湾曲部20hに沿って位置し(
図22参照)、これにより電線Eの上記中心線L4が上記電線把持部20,20の上線部20b、下線部20cの中間部に位置し、電線把持部20,20に対して電線Eがずれないように構成される(
図19参照)。
【0131】
同様に、可動電線把持部20,20の両端の菱形部20g,20gの湾曲部20f,20fに案内されて、先端屈曲部20e,20eに電線Eの後方側側縁Ebが入り込み(
図23(b)参照)、電線Eの周方向の円弧が湾曲部20hに沿って位置し(
図22参照)、これにより電線Eの上記中心線L4が上記可動電線把持部20,20の上線部20b、下線部20cの中間部に位置し、上記可動電線把持部20,20に対して電線Eがずれないように構成されている(
図20参照)。
【0132】
そして、上記ボルトBの右回りの回転により、可動電線受部24側の左右の可動電線把持部20,20は(特に、両先端の菱形部20g,20gは)、上記電線Eの後方側側面Eb(可動電線受部24側の左右側面)に各々当接し、同様に上記電線Eの後方側側面Ebを前方に押圧していく。このとき、上記電線把持部20,20の上記菱形部20g,20gの上記屈曲部20d,20dは、各々電線Eの前方側側面Ea側(後方側)に屈曲し、かつ、上記可動電線把持部20,20の上記菱形部20g,20gの上記屈曲部20d,20dは、各々電線Eの後方側側面Eb側(前方側)に屈曲しているので、左側において、上下の屈曲部20d,20dにより電線Eの前方側側面Eaと後方側側面Ebを包み込む状態となり、右側においても同様に、上下の屈曲部20d,20dにより電線Eの前方側側面Eaと後方側側面Ebを包み込む状態となり(
図18、
図22参照)、電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20により電線Eを挟持していく過程において、電線Eの電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20からの外れを防止して、安定して電線Eを挟持していくことができる。
【0133】
上記可動電線受部24側の上記左右の菱形部20g,20gにて上記電線Eを前方に押していくと、上記電線Eを前方側に押していくと共に、上記電線受部12の左右の電線把持部20,20の後方向きの附勢力に抗して電線Eを前方に押していく状況になり、この状況になると、上記可動電線把持部20,20においても、これらの可動電線把持部20,20の前方向きの附勢力に抗して上記電線Eを前方に押していくことになり、上記電線受部12側の左右の電線把持部20,20が上記電線Eに平行になった状態において、略同時期に、可動電線把持部24側の左右の可動電線把持部20,20が、上記電線Eの後方側側面Eb(可動電線把持部24側の側面)に平行な状態となり、
図18に示すように、左右の可動電線把持部20,20の上記左右の接触部23,23(左右の上線部20b,下線部20c)は、上記電線Eの後方側側面Ebに平行な状態まで押され、当該平行状態で、前方側の附勢力を電線Eの後方側側面Ebに及ぼした状態で上記電線Eの側面に強く接触(密着)した状態となる。
【0134】
このとき、電線把持部20の屈曲部20dと、可動電線把持部20の屈曲部20d同士は、
図18に示すように、左右方向に若干ずれた状態で接触部cにて接触又は近接するので、電線Eの直径が小の場合であっても支障なく電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20にて電線Eを把持し得る。また、先端屈曲部20e,20e(湾曲部20h)が電線の周方向の円弧部に接触することにより、先端の上記菱形部20gに接触する電線Eに対する曲げ応力の集中を緩和し、電線の破損を防止することができる。
【0135】
上記作業者は、上記六角レンチを右方向に回転し、電線受部12の左右の電線把持部20,20(接触部23)、及び、可動電線受部24の左右の可動電線把持部20,20(接触部23)が
図18に示すように電線Eの前方側側面Ea、後方側側面Ebに各々平行に接し、上記電線受部12側の左右の電線把持部20,20と、上記可動電線受部24側の左右の可動電線把持部20,20が、電線Eの前方側と後方側の両側面Ea,Ebに平行となり、上記電線Eの前方側と後方側の両側面Ea,Ebが上記左右の電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20によって挟み込むように把持された時点で、上記六角レンチの回転を停止する。
【0136】
この状態において、左の上記電線Eは、電線受部12側の左の弾性線材からなる電線把持部20の後方向きの附勢力と、可動電線把持部24側の左の弾性線材からなる可動電線把持部20の前方向きの附勢力によって、上記各接触部23,23が電線Eに密着し(
図23(b)参照)、上記各接触部23,23の所定長さに亘って、軸方向に、該電線Eの前方側側面Ea及び後方側側面Ebから強く挟持された状態となる。
【0137】
同時に、右の電線Eも、上記電線受部12側の右の弾性線材からなる電線把持部20の後方向きの附勢力と、可動電線受部24側の右の弾性線材からなる可動電線把持部20の前方向きの附勢力によって、上記各接触部23,23が電線Eに密着し、上記各接触部23,23の所定長さに亘って、軸方向に、該電線Eの前方側側面Ea及び後方側側面Ebから強く挟持された状態となる。
【0138】
尚、電線Eが電線受部12、可動電線受部24から外側に出た位置において、上下方向にずれた場合(右又は左の電線Eが水平で、左又は右の電線Eのみが上下にずれた場合を含む)、電線把持部20、可動電線把持部20は、屈曲部20d,20dが電線Eに沿って上下に移動するため、電線Eに沿って所定範囲の長さに亘り接触部23,23が弾性的に上下に移動し、従って電線把持部20、可動電線把持部20全体が電線Eに沿って上下に移動することで、上下に移動する電線Eに沿って電線把持部20、可動電線把持部20を位置させることができる。このように、折り返し部を菱型部20gとすることにより、電線Eが電線受部12、可動電線受部24から外側に出た位置において、上下方向にずれた場合、電線把持部20、可動電線把持部20を電線Eに沿わせることができ、電線Eの動きに追従して、電線Eに対する応力の集中を防止することができる。
【0139】
また、このとき、電線Eは、
図17、
図21(a)に示すように、その前方側側面Eaは、電線把持部20,20の上下線部20b,20cに当接して上記溝13,13内において確実に支持され、その後方側側面Ebは、可動電線把持部20,20の上下線部20b,20cに当接して上記溝26,26内において確実に支持され、ずれることはない。尚、
図21(a)において、可動電線受部24側の支持構成は、第1の実施形態の
図7(a)(b)と略同様なので、電線受部12側のみ示す(
図21(b)、(c)においても同様)。また、針電極15,27を確実に導体に接触させることができる(
図17、
図21(a)参照)。
【0140】
尚、電線Eの径が大の場合であっても、
図21(b)に示すように(電線Eの直径は15mm)、その前方側側面Eaは、上記電線把持部20,20の上下線部20b,20cと共に、左右の上記両溝13,13の左右のテーパ部13c,13dに当接して確実に支持され、その後方側側面Ebは、上記可動電線把持部20,20の上下線部20b,20cに当接すると共に、左右の上記溝部26,26の左右のテーパ部26c,26dにも当接することで確実に支持され(
図21(b)、
図7(b)参照)、大きくずれることはない。さらに電線径が大の場合であっても、電線Eの外周は、上記左右の溝13,26の範囲内においては、左右のテーパ部13c,13d及び左右のテーパ部26c,26dに接触し(
図7(b)参照)、確実に支持され、ずれることはない(
図21(c)、
図17参照)。しかも、電線Eが径大の場合は、電線を上記テーパ部13c,13d及び上記テーパ部26c,26dに接触させることにより(
図7(b)参照)、針電極15,27の電線Eへの入り込み量を制御でき、電線Eの径が変化しても、針電極15,27の電線Eへの入り込み量を一定とすることができる(
図21(a)〜(c)参照)。この点は、第1の実施形態でも同様である(第3〜第4の実施形態でも同様)。
【0141】
そして、上記電線Eの径に拘わらず、電線Eの前方側側面Eaと後方側側面Ebは、上記菱形部20g,20gの電線Eの側面に沿った湾曲部20f,20fに沿って支持されるので、菱形部20g,20gと電線Eの接触部に応力が集中することはない。
【0142】
また、かかる状態において、
図17に示すように、電線止クリップ1の電線受部12側の針電極15の上下針部15a〜15c,15a’〜15c’及び可動電線受部24側の針電極27の上下針部27a,27b、27a’,27b’は各々上記電線Eの被覆を破って内部の導体Ecに接触し、電線止クリップ1との導通状態を実現し得る。また上記針電極15,27の左右の電線Eの所定長に亘り電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20にて電線Eを把持し得るので(
図18参照)、針電極近傍での電線Eの応力集中を防止し得て、電線止クリップ1の放電機能が害されることがない。
【0143】
また、第1の実施形態と同様に、風により、上記電線Eは
図13(b)に示すように、その中央部Mを最も大きな振幅を以って前後方向(矢印F,F’方向)に振動する。このとき、電線Eの電線止クリップ1の左右両側において、電線Eの前方側と後方側の円弧状の両側面Ea,Ebは、電線把持部20,20と、可動電線把持部20,20の接触部23,23によって、長手方向の所定範囲に亘って挟持されているので(
図18参照)、上記電線Eが前後方向(矢印F,F’方向)に振動したとしても、弾性線材から構成されている上記電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20は、上記電線Eの前後方向の振動に合わせて、上記一点a,a近傍を支点として、上記菱形部20gを含む上記接触部23,23全体が、前後方向(
図18の矢印F,F’方向)に弾性変形して振動するため、電線Eの上記接触部23,23が接触している挟持部(電線Eの軸方向の所定長さ)における特定の部位に応力が集中することがなく、従って、振動による電線Eの劣化、或いは断線等の事故を極めて効果的に防止することができる(例えば
図18にて、電線が矢印F(F’)方向に振動したとき、電線把持部20(可動電線把持部20)は矢印F(F’)方向に変形し得るが、可動電線把持部20(電線把持部20)も前方(後方)に附勢されているので、F(F’)方向に電線Eの変形に追従し得して変形し得る)。
【0144】
特に、電線Eは前方側側面Eaと後方側側面Ebとが電線把持部及び可動電線把持部20,20によって所定長さに亘って対向するバネ力によって強く挟持された状態となり、電線Eが振動しても、所定長さの電線把持部も電線と共に弾性的に振動するので、電線Eの挟持箇所の特定部位への応力集中を分散することができる。また、電線把持部20,20の基端が電線Eを確実に支持することも加わり、電線Eの動きによる応力集中が、針電極近傍で起きることがなく、放電機能にも影響を与えない。
【0145】
また、電線把持部20と可動電線把持部20は、縦方向(上下方向)の上線部20aと下線部20bによって電線の円弧状の前方側側面Eaと後方側側面Ebとを挟持する構成であるから、電線の前後方向の振動に追従し易くなり、電線に対する曲げ応力の集中を効果的に分散し得る(
図22参照)。
【0146】
しかも、電線の前方側側面Eaを2本の上線部20bと下線部20cによって上下間隔を開けた状態で保持し、電線の円弧状の後方側側面Ebを2本の上線部20bと下線部20cにて上下間隔を開けた状態で電線の円弧状の側面を保持するものであるから、電線の前後方向の動き(
図10矢印F,F’方向)だけでなく、例えば上下方向の動き(
図10矢印Q,Q’方向)にも追従することができ、電線の多方面の動きに追従し得て、電線に対する応力の集中を効果的に分散し得る。
【0147】
また、菱型部20gの屈曲部20d,20dが電線Eの上部と下部に引っ掛かっているので、電線Eの上下方向の動きに対して電線把持部20、可動電線把持部20の全体が電線Eに沿って弾性的に移動し得るため、電線Eの上下方向の動きに追従し得て、電線に対する応力の集中を分散し得る。この機能は第1の実施形態(U字状部20a)より、菱形部gの方が電線Eへの引っ掛かりが強いので、第2の実施形態ではより強化されている。
【0148】
上述のように、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、電線止クリップ1の左右両側において電線Eを確実に挟持することができ、これにより電線把持部20と可動電線把持部20が電線Eに密着して電線Eの振動に追従し得るため、電線Eへの曲げ応力を均等に分散し、素線間摩耗の軽減効果を高めることができる。
【0149】
第2の実施形態においては、電線把持部は例えば直径約3mmの弾性線材(spring wire)であり、第1の実施形態と同様に、耐食性に優れたステンレス(例えばSUS304WPB等)を使用し、一端を菱形状に曲げ加工し、例えば平行な幅9mmの直線部(接触部23)を有し、他端はクランク状に曲げ加工した一対の端部20b’,20c’が形成されている(1本の線材を中央から折り返し上下対称に成形する)。
【0150】
特に第2の実施形態においては、電線中心よりも電線把持部20(可動電線把持部20)が外側に位置するように先端を菱形状に広げ、断面を円弧形にすることで、電線把持部20(可動電線把持部20)を中心に電線Eを案内し、かつ外れにくい構造とした(
図22参照)。
【0151】
(第3の実施形態)(
図24〜
図27参照)
次に、第3の実施形態について説明する。
尚、上記第1の実施形態と同一部分については同一符号を付し、それらの説明は省略する。
【0152】
図24(a)〜(c)に示すように、電線把持部20(可動電線把持部20も同じ)は、金属製の弾性線材から構成されている点、及び、端部20b’,20c’側の形状、即ち、溝係合部21,21、挿通部22,22の形状は第1の実施形態の電線把持部20と同じであるが、折り返し部の形状が、第2の実施形態では菱形部20g(
図14参照)であるのに対し、上記菱形部20gの上記先端屈曲部20eを形成しないで、折曲部20j,20jを設け、これら折曲部20j,20jの先端部を上下方向に、
図24(c)では直線的に結ぶ連結部20kを設け、全体に三角形状の三角部20iを設けた点が異なっている。尚、電線受部12側と可動電線受部24側に使用する4本の電線把持部20(可動電線把持部20)は全て同一形状なので1個の電線把持部20について説明する。
【0153】
より詳細に説明すると、上記三角部20iは、
図24(c)の側面図をみると、上線部20b、下線部20cの各先端部から、上線部20bと下線部20c間の間隔を広げる方向に一旦、拡幅して三角形の一対の折曲部20j,20jを形成した後、上記折曲部20j,20jの各先端部間を連結部20kにて連結した略三角形状となっている。
【0154】
そして、上記一対の折曲部20j,20jは、
図24(b)の平面図をみると、上線部20b、下線部20cの各先端部から拡幅しているのみならず、上記溝係合部21,21とは逆方向(電線Eの方向)に屈曲することにより、電線Eの軸方向の周面に沿う湾曲部20m,20mが形成され、さらに上記連結部20kは、
図24(a)に示すように、電線Eの円周方向の面に沿うように湾曲状に形成されている(この湾曲状の部分を湾曲部20nという)。これにより、上記三角部20iの湾曲部20m,20mは、
図26(a)に示すように、電線Eの前方側側面Eaの軸方向の周面に沿うと共に、電線Eの後方側側面Ebの軸方向の周面に沿い、湾曲部20nは、
図24(a)に示すように、電線Eの円周方向に沿うように形成されている。
【0155】
即ち、上記電線把持部20及び上記可動電線把持部20は1本が上下に往復する上線部2bと下線部2cと、上記上線部2bと下線部2cの先端部に上記折り返し部分が形成されており、上記折り返し部分は、上記上線部2bの先端部と上記下線部2cの先端部の間隔を拡幅すると同時に、上記上線部2bの先端部及び上記下線部2cの先端部から電線Eの方向に屈曲する折曲部20j,20jが各々形成され、かつ両上記折曲部20j,20jの先端部間を結ぶ連結部20kが形成され、上記連結部20kは上記電線Eの円周方向に沿う湾曲状に形成されており(湾曲部20n)、全体として上記折り返し部は三角部20iとして形成されているものである。
【0156】
また、
図24(b)に示すように、上下線部20b,20cは、左右水平線L1,L1に対して後方傾斜角θ又は前方傾斜角θ(例えばθ=約10度)として後方又は前方に傾斜している点は第1の実施形態の電線把持部20と同じである(
図25(a)参照)。
【0157】
そして、
図25、
図26に示すように、電線受部12に、電線把持部20,20の基端部(溝係合部21、挿通部22)が第1の実施形態と同様に固定され、
図27(a)に示すように、上記上下線部20b,20c及び上記三角部20i,20iが上記電線受部12の左右に水平になるように固定され、電線受部12に固定された状態で、左右の上下線部20b,20cは、左右水平線L1,L1に対して後方に傾斜角θ(例えばθ=約10度)に傾斜している(
図25(a)参照)。
【0158】
さらに、
図25、
図26に示すように、可動電線受部24に、可動電線把持部20,20の基端部(溝係合部21、挿通部22)が第1の実施形態と同様に固定され、
図27(b)に示すように、上記上下線部20b,20c及び上記三角部20i,20iが上記可動電線受部24の左右に水平になるように固定され、可動電線受部12に固定された状態で、左右の上下線部20b,20cは、左右水平線L1,L1に対して前方に傾斜角θ(例えばθ=約10度)に傾斜している(
図25(a)参照)。
【0159】
また、
図25に示すように、かかる状態において、三角部20i,20iの上記折曲部20j,20jは互いに対向する方向に位置するように、相互に略対称となるように取り付けられている。尚、可動電線受部24の可動電線把持部20,20の取付位置は、電線受部12の電線把持部20,20の取付位置より中央部方向に近接しているので、上記電線把持部20,20の屈曲部20j,20jの位置より、可動電線把持部20,20の屈曲部20j,20jの位置は中央部よりに位置している。
【0160】
また、第3の実施形態では、上記金属製長方形枠9にも変更が加えられている。
図25(a)(b)に示すように、上記金属製長方形枠9の電線受部12の上記左右側板12a,12bの上記溝13,13の下方近傍位置から、上記金属製長方形枠9の中央部より若干後方よりの範囲において、上記左側面板9cと上記右側面板9dから左右方向に水平載置板9e,9e’が設けられている。
【0161】
また、針電極15,27の形状は第1、第2の実施形態と同一であるが、電線Eのセンタリング機能があるので、ここで説明する(
図25(a)(b)等)。上記針電極15は、左右方向に上針部15a〜15c、下針部15a’〜15c’が形成されているが、これらの上針部15a〜15cと下針部15a’〜15c’間は、後方に行くにつれて(後方側に向かう)末広がり状のテーパ部15d,15d,15d(上側、テーパ部の後側の先端縁は金属製の刃となっている)とテーパ部15d’,15d’,15d’(下側、テーパ部の後側の先端縁は金属製の刃となっている)が形成されている。また、針電極27は、左右方向に上針部27a,27b、下針部27a’,27b’が形成されているが、これらの上針部27a,27bと下針部27a’,27b’間は、前方に行くにつれて(前方側に向かう)末広がり状のテーパ部27c,27c(上側、テーパ部の前側の先端縁は金属製の刃となっている)とテーパ部27c’,27c’(下側、テーパ部の前側の先端縁は金属製の刃となっている)が形成されている。これらの上針部15a〜15c、下針部15a’〜15c’、及び上針部27a,27b、下針部27a’,27b’の上下高さは、同一水準位置に位置している。
【0162】
上記水平載置板9e,9e’は水平方向の長方形状の板状体であり(
図25,
図26、
図27参照)、左右は同一の大きさに構成されている。この水平載置板9e,9e’は、電線Eを電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20にて挟持する場合、当該電線Eを上記水平載置板9e,9e’上に載置することにより、電線Eを電線把持具20,20及び可動電線把持具20,20によって挟持するまでの間、安定して載置保持することができるものである。具体的な作用については、以下の動作説明にて説明する。
【0163】
第3の実施形態は上述のように構成されているので、以下、その作用について説明する。
【0164】
第3の実施形態の電線止めクリップ1は、第1の実施形態と同様に、
図11に示すように、上金具5上に固定され、電線受部12と可動電線受部24は
図25(a)(b)に示すように離間しており、電線受部12側の電線把持部20,20と、可動電線受部24側の可動電線把持部20,20間には電線Eは存在せず、上記電線受部12側の電線把持部20,20は何れも直線L1,L1に対して、一点a,aから後方に傾斜しており、上記可動電線把持部24側の可動電線把持部20,20は何れも直線L1に対して、一点a,aから前方に傾斜しているものとする。
【0165】
次に、一定の径の電線Eを上記電線受部12と可動電線受部24間に上記電線止クリップ1の金属製長方形枠9の長手方向に直交する方向に配置する。このとき、上記水平載置板9e,9e’上に電線Eが載置される。この場合、
図27(a)(b)に電線Eを二点鎖線で示すように、電線Eは上記水平載置板9e,9e’上に載置され、上記電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20から少し下に位置することになる。
【0166】
その後、作業者は、上記ボルトBの頭に、六角レンチを嵌合し、当該六角レンチを右方向に回転させ、上記ボルトBを右螺子方向に回転する。すると、上記ボルトBが右螺子方向に回転するため、上記雌螺子部25を介して可動電線受部24が、電線受部12の方向に徐々に近接していく。このとき、水平載置板9e,9e’上に載置された電線E(
図25(b)参照)を、針電極15,27の下側のテーパ部15d’,27c’が掬い上げながら、電線Eを水平載置板9e,9e’から徐々に上昇させる。このとき、上記可動電線受部24の可動電線把持部20,20の上記三角部20i,20iは、前方に傾斜しているので、下側の折曲部20j,20jが上記水平載置板9e,9e’上の電線Eの後方側側面Ebの下半部に当接し、上記折曲部20j,20jは電線Eに沿うように移動する。
【0167】
また、上記操作者が上記ボルトBを回転すると、電線受部12側の電線把持部20,20の上記三角部20i,20iは、後方に傾斜しているので、下側の折曲部20j,20jが上記水平載置部9e,9e’上の電線Eの前方側側面Eaの下半部に当接し、上記屈曲部20j,20jは電線Eに沿うように移動する。
【0168】
その後、さらに操作者が上記ボルトBを右螺子方向に回転すると、電線Eは、前後から針電極15,27の下側のテーパ部15d’,27c’が電線Eを掬い上げながら、電線Eを徐々に水平載置板9e,9e’から徐々に上昇させ、最終的に、針電極15の上側のテーパ部15d(左右方向の3か所)と下側のテーパ部15d’(左右方向の3か所)、及び、針電極27の上側のテーパ部27c(左右方向の2か所)と下側のテーパ部27c’(左右方向の2か所)により、針電極15と針電極27の中心位置に上昇させられ、針電極15及び針電極27により電線Eのセンタリングが行われる(
図26(b)参照)。即ち、前後のテーパ部15d,15d’及び27c,27c’の中心部に電線Eが位置することになる。尚、この時点で、針電極15と27のテーパ部の先端縁は、電線Eの導体Ecに接触する。
【0169】
そして、最終的には
図26(a)(b)、
図27(a)(b)に示すように、上記電線受部12側の左右の電線把持部20,20の三角部20i,20iの連結部20kの中心が、電線Eの前方側側面Eaの軸方向の中心線L4に位置し、左右の上線部20b,20bと下線部20c,20cに沿って電線Eが位置するように、即ち、左右の上線部20b,20bと下線部20c,20cの間隔の中央部が、電線Eの前方側側面Eaの長手方向の略中央位置に位置するように当該電線Eが配置される。
【0170】
同時に、
図27(b)に示すように、上記電線Eは、上記可動電線受部24側の左右の可動電線把持部20,20の三角部20i,20iの連結部20kの中心が、電線Eの後方側側面Ebの軸方向の中心線L4に位置し、左右の上線部20b,20bと下線部20c,20cに沿って電線Eが位置するように、即ち、左右の上線部20b,20bと下線部20c,20cの間隔の中央部が、電線Eの後方側側面Ebの長手方向の略中央位置に対応して位置するように当該電線Eが配置される。
【0171】
そして、電線把持部20,20の先端の左右の上下の湾曲部20m,20mに電線Eの前方側側面Eaが接触し、上記前方側側面Ea,Eaにて電線把持部20,20の接触部23,23の各後方側の附勢力に抗して前方側に押され、
図26(a)に示すように、電線把持部20,20の左右の上記接触部23,23(左右の各上線部20b,下線部20c)は、上記電線Eの前方側側面Eaに平行な状態まで押され、当該平行状態で、後方側の附勢力を電線Eの前方側側面Eaに及ぼした状態で上記電線Eの前方側側面Eaに強く接触(密着)した状態となる。
【0172】
このとき上記電線把持部20,20の両端の三角部20i,20iの湾曲部20n,20nに案内されて、電線Eの前方側側面Eaが入り込み(
図26(a)、
図24(a)参照)、電線Eの周方向の円弧が湾曲部20nに沿って位置し、これにより電線Eの上記中心線L4が上記電線把持部20,20の上線部20b、下線部20cの中間部に位置し、電線把持部20,20に対して電線Eがずれないように構成される(
図26(a)、
図35(a)参照)。
【0173】
同様に、可動電線把持部20,20の両端の三角部20i,20iの湾曲部20n,20nに案内されて、電線Eの後方側側縁Ebが入り込み(
図26(a)、
図24(a)参照)、電線Eの周方向の円弧が湾曲部20nに沿って位置し、これにより電線Eの上記中心線L4が上記可動電線把持部20,20の上線部20b、下線部20cの中間部に位置し、上記可動電線把持部20,20に対して電線Eがずれないように構成されている(
図26(a)、
図35(a)参照)。
【0174】
そして、上記ボルトBの右回りの回転により、可動電線受部24側の左右の可動電線把持部20,20は(特に、両先端の三角部20i,20iは)、上記電線Eの後方側側面Eb(可動電線受部24側の左右側面)に各々当接し、同様に上記電線Eの後方側側面Ebを前方に押圧していく。このとき、上記電線把持部20,20の上記三角部20i,20iは、各々電線Eの前方側側面Ea側(後方側)に屈曲し、かつ、上記可動電線把持部20,20の上記三角部20i,20iの上記折曲部20j,20jは、各々電線Eの後方側側面Eb側(前方側)の軸方向に沿って屈曲し、かつ、上記連結部20kは電線Eの周方向に沿って湾曲しているので、左側において、上下の折曲部20j,20j及び連結部20kにより電線Eの前方側側面Eaと後方側側面Ebを包み込む状態となり、右側においても同様に、上下の折曲部20j,20j及び連結部20kにより電線Eの前方側側面Eaと後方側側面Ebを包み込む状態となり(
図26(a)参照)、電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20により電線Eを挟持していく過程において、電線Eの電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20からの外れを防止して、安定して電線Eを挟持していくことができる。
【0175】
上記可動電線受部24側の上記左右の三角部20i,20iにて上記電線Eを前方に押していくと、上記電線Eを前方側に押していくと共に、上記電線受部12の左右の電線把持部20,20の後方向きの附勢力に抗して電線Eを前方に押していく状況になり、この状況になると、上記可動電線把持部20,20においても、これらの可動電線把持部20,20の前方向きの附勢力に抗して上記電線Eを前方に押していくことになり、上記電線受部12側の左右の電線把持部20,20が上記電線Eに平行になった状態において、略同時期に、可動電線受部24側の左右の可動電線把持部20,20が、上記電線Eの後方側側面Eb(可動電線受部24側の側面)に平行な状態となり、
図26(a)に示すように、左右の可動電線把持部20,20の上記左右の接触部23,23(左右の上線部20b,下線部20c)は、上記電線Eの後方側側面Ebに平行な状態まで押され、当該平行状態で、前方側の附勢力を電線Eの後方側側面Ebに及ぼした状態で上記電線Eの側面に強く接触(密着)した状態となる。
【0176】
このとき、電線Eは電線受部12、可動電線受部24の内側の針電極15,27によりセンタリングされているが(
図26(b)参照)、電線受部12、可動電線受部24より外側に出た左右方向の電線Eが例えば上下方向に移動したとしても(電線受部12、可動電線受部24の左又は右の一方の電線Eが水平であっても、電線受部12、可動電線受部24の右又は左の他方の電線Eが上下方向に移動したときを含む)、上記電線Eの前方側側面Ea及び後方側側面Ebには上下の折曲部20j,20jが前後方向から包み込むように位置しているので、電線把持部20及び可動電線把持部20は電線Eの上下方向の動きに追従して、接触部23,23を含めて弾性的に上下方向に動くことができ、電線Eから外れることはない。この機能は、第1の実施形態(U字状部20a)より、三角部20iの方が電線Eへの引っ掛かりが強いので、第1の実施形態より強化されている。
【0177】
また、電線把持部20の折曲部20jと、可動電線把持部20の折曲部20j同士は、
図26(a)に示すように、左右方向に若干ずれた状態で近接部c’にて近接又は接触するので、電線Eの直径が小の場合であっても支障なく電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20にて電線Eを把持し得る。また、湾曲部20nが電線Eの周方向の円弧部に接触することにより、先端の上記三角部20iに接触する電線Eに対する曲げ応力の集中を緩和し、電線の破損を防止することができる。
【0178】
上記作業者は、上記六角レンチを右方向に回転し、電線受部12の左右の電線把持部20,20(接触部23)、及び、可動電線受部24の左右の可動電線把持部20,20(接触部23)が
図26(a)に示すように電線Eの前方側側面Ea、後方側側面Ebに各々平行に接し、上記電線受部12側の左右の電線把持部20,20と、上記可動電線受部24側の左右の可動電線把持部20,20が、電線Eの前方側と後方側の両側面Ea,Ebに平行となり、上記電線Eの前方側と後方側の両側面Ea,Ebが上記左右の電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20によって挟み込むように把持された時点で、上記六角レンチの回転を停止する。
【0179】
この状態において、左の上記電線Eは、電線受部12側の左の弾性線材からなる電線把持部20の後方向きの附勢力と、可動電線受部24側の左の弾性線材からなる可動電線把持部20の前方向きの附勢力によって、上記各接触部23,23が電線Eに密着し(
図26(a)参照)、上記各接触部23,23の所定長さに亘って、軸方向に、該電線Eの前方側側面Ea及び後方側側面Ebから強く挟持された状態となる。
【0180】
同時に、右の電線Eも、上記電線受部12側の右の弾性線材からなる電線把持部20の後方向きの附勢力と、可動電線受部24側の右の弾性線材からなる可動電線把持部20の前方向きの附勢力によって、上記各接触部23,23が電線Eに密着し、上記各接触部23,23の所定長さに亘って、軸方向に、該電線Eの前方側側面Ea及び後方側側面Ebから強く挟持された状態となる。
【0181】
また、このとき、電線Eは、
図26(b)、
図21(a)に示すように、その前方側側面Eaは、電線把持部20,20の上下線部20b,20cに当接して上記溝13,13内において確実に支持され、その後方側側面Ebは、可動電線把持部20,20の上下線部20b,20cに当接して上記溝26,26内において確実に支持され、ずれることはない。また、針電極15,27を確実に導体に接触させることができる(
図26(b)、
図21(a)参照)。
【0182】
尚、電線Eの径が大の場合であっても、
図21(b)、
図21(c)に示すように、第2の実施形態と同様に、電線Eを確実に支持することができるし、針電極15,27の電線Eへの入り込み量を制御でき、電線の径が変化しても、針電極15,27の電線Eへの入り込み量を一定とすることができる(
図21(a)〜(c)参照)。この点は、第3の実施形態でも同様である。
【0183】
そして、上記電線Eの径に拘わらず、電線Eの前方側側面Eaと後方側側面Ebは、上記三角部20i,20iの電線Eの側面に沿った湾曲部20n,20nに沿って支持されるので、三角部20i,20iと電線Eの接触部に応力が集中することはない。
【0184】
また、かかる状態において、
図26(b)に示すように、電線止クリップ1の電線受部12側の針電極15の上下針部15a〜15c,15a’〜15c’及び可動電線受部24側の針電極27の上下針部27a,27b、27a’,27b’は各々上記電線Eの被覆を破って内部の導体Ecに接触し、電線止クリップ1との導通状態を実現し得る。また上記針電極15,27の左右の電線Eの所定長に亘り電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20にて電線Eを把持し得るので(
図26(a)参照)、針電極近傍での電線Eの応力集中を防止し得て、電線止クリップ1の放電機能が害されることがない。
【0185】
また、風により、上記電線Eは
図13(b)に示すように、その中央部Mを最も大きな振幅を以って前後方向(矢印F,F’方向)に振動する。このとき、電線Eの電線止クリップ1の左右両側において、電線Eの前方側と後方側の円弧状の両側面Ea,Ebは、電線把持部20,20と、可動電線把持部20,20の接触部23,23によって、長手方向の所定範囲に亘って挟持されているので(
図26(a)参照)、第1、2の実施形態と同様に、電線Eの上記接触部23,23が接触している挟持部(電線Eの軸方向の所定長さ)における特定の部位に応力が集中することがなく、従って、振動による電線Eの劣化、或いは断線等の事故を極めて効果的に防止することができる(例えば
図26(a)にて、電線が矢印F(F’)方向に振動したとき、電線把持部20(可動電線把持部20)は矢印F(F’)方向に変形し得るが、可動電線把持部20(電線把持部20)も前方(後方)に附勢されているので、F(F’)方向に電線Eの変形に追従し得して変形し得る。
【0186】
特に、電線Eは前方側側面Eaと後方側側面Ebとが電線把持部及び可動電線把持部20,20によって所定長さに亘って対向するバネ力によって強く挟持された状態となり、電線Eが振動しても、所定長さの電線把持部も電線と共に弾性的に振動するので、電線Eの挟持箇所の特定部位への応力集中を分散することができる。また、電線把持部20,20、可動電線把持部20,20の基端が電線を確実に支持することも加わり、電線の動きによる応力集中が、針電極近傍で起きることがなく、放電機能にも影響を与えない。
【0187】
また、電線把持部20と可動電線把持部20は、縦方向(上下方向)の上線部20aと下線部20bによって電線の円弧状の前方側側面Eaと後方側側面Ebとを挟持する構成であるから、電線の前後方向の振動に追従し易くなり、電線に対する曲げ応力の集中を効果的に分散し得る。
【0188】
しかも、電線の前方側側面Eaを2本の上線部20bと下線部20cによって上下方向に間隔を開けた状態で保持し、電線の円弧状の後方側側面Ebを2本の上線部20bと下線部20cにて上下方向に間隔を開けた状態で電線の円弧状の側面を保持するものであるから、電線の前後方向の動き(
図10矢印F,F’方向)だけでなく、例えば上下方向の動き(
図10矢印Q,Q’方向)にも追従することができ、電線の多方面の動きに追従し得て、電線に対する応力の集中を効果的に分散し得る。
【0189】
特に、第3の実施形態では、上記第2の実施形態と同様に、上記電線Eの前方側側面Ea及び後方側側面Ebには上下の折曲部20j,20jが前後方向から包み込むように位置しており、折曲部20j,20jが電線Eの前後に引っ掛かっているので、電線把持部20及び可動電線把持部20は電線Eの上下方向の動きに追従して、接触部23,23を含めて弾性的に上下方向に動くことができ、電線Eから外れることはない。
【0190】
上述のように、第3の実施形態においても、第1,2の実施形態と同様に、電線止クリップ1の左右両側において電線Eを確実に挟持することができ、これにより電線把持部20と可動電線把持部20が電線Eに密着して電線Eの振動に追従し得るため、電線Eへの曲げ応力を均等に分散し、素線間摩耗の軽減効果を高めることができる。
【0191】
第3の実施形態においては、電線把持部は例えば直径約3mmの弾性線材(spring wire)であり、第1の実施形態と同様に、耐食性に優れたステンレス(例えばSUS304WPB等)を使用し、一端を三角状に曲げ加工し、例えば平行な幅9mmの直線部(接触部23)を有し、他端はクランク状に曲げ加工した一対の端部20b’,20c’が形成されている(1本の線材を中央から折り返し上下対称に成形する)。
【0192】
(第4の実施形態)(
図28〜
図31参照)
次に、第4の実施形態について説明する。
尚、上記第1の実施形態と同一部分については同一符号を付し、それらの説明は省略する。
【0193】
図28(a)〜(c)に示すように、電線把持部20は、金属製の弾性線材から構成されている点、及び、端部20b’,20c’側の形状、即ち、溝係合部21,21、挿通部22,22の形状は第1の実施形態の電線把持部20と同じであるが、折り返し部の形状が、第3の実施形態では三角部20i(
図24参照)であるのに対し、上記三角部20iの上線部20b側の折曲部20jは第3の実施形態と同様に、上線部20bの他端から上線部20bと下線部20cの間隔を広げる方向に一旦拡幅するが、下線部20c側の折曲部20jを形成することなく、そのまま下線部20cを直線的に延長して直線部20qを形成し、該直線部20qが連結部20kに接続するように構成する。このように構成した折り返し部をR形部20pという。
【0194】
より詳細に説明すると、上の上記折曲部20jは、
図28(b)の平面図をみると、上線部20b(上線部20bと下線部20cとの距離)から拡幅しているのみならず、上記溝係合部21,21とは逆方向(電線Eの方向)に屈曲することにより、上線部20bには、電線Eの幅方向の周面に沿う湾曲部20mが形成され、さらに上記連結部20kは、
図28(a)に示すように、電線Eの円周方向の面に沿うように湾曲部20nが形成されている。これにより、上記R形部20pの上線部20b側の湾曲部20mは、
図30(a)に示すように、電線Eの前方側側面Eaの軸方向の周面に沿うと共に、電線Eの後方側側面Ebの軸方向に沿う周面に沿い、
図28(a)に示すように、電線Eの円周方向に沿う湾曲部20nが形成されている。尚、
図28(a)(c)に示すように、上記連結部20kの上記湾曲部20nの下側の湾曲部を下側湾曲部20rという(
図35(b)参照)。
【0195】
また、第4の実施形態の電線把持部20の形状は、左側の電線把持部20と右側の可動電線把持部20が同一形状、右側の電線把持部20と左側の可動電線把持部20が同一形状となり、左右の電線把持部20,20(可動電線把持部20,20も同じ)は、左右対称形状となる。
【0196】
また、
図28(b)に示すように、上下線部20b,20cは、左右水平線L1,L1に対して後方傾斜角θ又は前方傾斜角θ(例えばθ=約10度)として後方又は前方に傾斜している点は第1の実施形態の電線把持部20と同じである(
図29(a)参照)。
【0197】
そして、
図29、
図30に示すように、電線受部12に、電線把持部20,20の基端部(溝係合部21、挿通部22)が第1の実施形態と同様に固定され、
図29(a)(b)に示すように、上記上下線部20b,20c及び上記R部20p,20pが上記電線受部12の左右に水平になるように固定され、4本全体の折曲部20jが上側、直線部20qが下側になるように電線受部12に固定された状態で、左右の上下線部20b,20cは、左右水平線L1,L1に対して後方に傾斜角θ(例えばθ=約10度)に傾斜している(
図29(a)参照)。
【0198】
さらに、
図29(a)(b)に示すように、可動電線受部24に、可動電線把持部20,20の基端部(溝係合部21、挿通部22)が第1の実施形態と同様に固定され、
図29(a)(b)に示すように、上記上下線部20b,20c及び上記R形部20p,20pが上記可動電線受部24の左右に水平になるように固定され(折曲部20jが上側)、可動電線受部24に固定された状態で、左右の上下線部20b,20cは、左右水平線L1,L1に対して前方に傾斜角θ(例えばθ=約10度)に傾斜している。
【0199】
また、
図29に示すように、かかる状態において、R形部20p,20pの上線部20bの上記折曲部20j,20jは互いに対向する方向に位置するように、相互に略対称となるように取り付けられている。尚、可動電線受部24の可動電線把持部20,20の取付位置は、電線受部12の電線把持部20,20の取付位置より中央部方向に近接しているので、上記電線把持部20,20の屈曲部20j,20jの位置より、可動電線把持部20,20の屈曲部20j,20jの位置は中央部よりに位置している。
【0200】
また、第4の実施形態では、上記第3の実施形態と同様に、
図29〜
図31に示すように、上記金属製長方形枠9の電線受部12の上記左右側板12a,12bの上記溝13,13の下方近傍位置から、上記金属製長方形枠9の中央部より若干後方よりの範囲において、上記左側面板9cと上記右側面板9dから左右方向に水平載置板9e,9e’が設けられている。
【0201】
この水平載置板9e,9e’は、電線Eを電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20にて挟持する際、当該電線Eを上記水平載置板9e,9e’上に載置することにより、電線Eを電線把持具20,20及び可動電線把持具20,20によって挟持するまでの間、安定して載置保持することができるものである。具体的な作用については、以下の動作説明にて説明する。
【0202】
第4の実施形態は上述のように構成されているので、以下、その作用について説明する。
【0203】
第4の実施形態の電線止めクリップ1は、第1の実施形態と同様に、
図11に示すように、上金具5上に固定され、電線受部12と可動電線受部24は
図29(a)(b)に示すように離間しており、電線受部12側の電線把持部20,20と、可動電線受部24側の可動電線把持部20,20間には電線Eは存在せず、上記電線受部12側の電線把持部20,20は何れも直線L1,L1に対して、一点a,aから後方に傾斜しており、上記可動電線把持部24側の可動電線把持部20,20は何れも直線L1に対して、一点a,aから前方に傾斜しているものとする。
【0204】
また、上記電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20は、何れも折曲部20jが上側となるように(直線部20qは下側となるように)、上記電線受部12と上記可動電線受部24に取り付ける。
【0205】
次に、一定の径の電線Eを上記電線受部12と可動電線受部24間に上記電線止クリップ1の金属製長方形枠9の長手方向に直交する方向に配置する。このとき、上記水平載置板9e,9e’上に電線Eが載置される。この場合、
図29(b)、
図31(a)(b)に電線Eを二点鎖線で示すように、電線Eは上記水平載置板9e,9e’上に載置され、上記電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20の直線部20q,20qが丁度電線Eの上半部付近に位置することになる。
【0206】
その後、作業者は、上記ボルトBの頭に、六角レンチを嵌合し、当該六角レンチを右方向に回転させ、上記ボルトBを右螺子方向に回転する。すると、上記ボルトBが右螺子方向に回転するため、上記雌螺子部25を介して可動電線受部24が、電線受部12の方向に徐々に近接していく。このとき、水平載置板9e,9e’上に載置された電線E(
図29(b)参照)を、針電極15,27の下側のテーパ部15d’,27c’が掬い上げながら、電線Eを徐々に水平載置板9e,9e’から上昇させる。このとき、上記可動電線受部24の可動電線把持部20,20の上記R形部20p,20pの上側の折曲部20j,20jは、前方に傾斜しているので、下側の直線部20q,20qが上記水平載置板9e,9e’上の電線Eの後方側側面Ebの中間部から上半部付近に当接すると共に、下側湾曲部20r,20rが電線Eの中間部から上半部付近に係合し、上記R形部20p,20pは上記電線Eに沿うように移動する。この機能は、第1の実施形態(U字状部20a)より、R形部20pの方が電線Eへの引っ掛かりが強いので、第1の実施形態より強化されている。
【0207】
また、上記操作者が上記ボルトBを回転すると、電線受部12側の電線把持部20,20の上記R形部20p,20pは、後方に傾斜しているので、下側の直線部20q,20qが上記水平載置部9e,9e’上の電線Eの前方側側面Eaの中間部から上半部付近に当接すると共に、下側湾曲部20r,20rは電線Eの中間部から上半部付近に係合し、その結果、上記R形部20p,20pは上記電線Eに沿うように移動する。
【0208】
その後、さらに操作者が上記ボルトBを右螺子方向に回転すると、電線Eは、前後から針電極15,27の下側のテーパ部15d’,27c’が電線Eを掬い上げながら(
図29(b)参照)、電線Eを徐々に水平載置板9e,9e’から上昇させ、最終的に、針電極15の上側のテーパ部15d(左右方向の3か所)と下側のテーパ部15d’(左右方向の3か所)、及び、針電極27の上側のテーパ部27c(左右方向の2か所)と下側のテーパ部27c’(左右方向の2か所)により、針電極15と針電極27の中心位置に上昇させられ、針電極15及び針電極27により電線Eのセンタリングが行われる(
図30(b)参照)。
【0209】
そして、上記左右の電線把持部のR形部20p,20pの湾曲部20n,20n及び、上記左右の可動電線把持部のR形部20p,20pの湾曲部20n,20nによって、最終的には
図30(a)(b)、
図31(a)(b)に示すように、上記電線受部12側の左右の電線把持部20,20のR形部20p,20pの連結部20kの略中心が、電線Eの前方側側面Eaの軸方向の中心線L4に位置し、左右の上線部20b,20bと下線部20c,20cに沿って電線Eが位置するように、即ち、左右の上線部20b,20bと下線部20c,20cの間隔の中央部が、電線Eの前方側側面Eaの長手方向の略中央位置に位置するように当該電線Eが配置される。
【0210】
同時に、
図31(b)に示すように、上記電線Eは、上記可動電線受部24側の左右の可動電線把持部20,20のR形部20p,20pの連結部20kの略中心が、電線Eの後方側側面Ebの軸方向の中心線L4に位置し、左右の上線部20b,20bと下線部20c,20cに沿って電線Eが位置するように、即ち、左右の上線部20b,20bと下線部20c,20cの間隔の中央部が、電線Eの後方側側面Ebの長手方向の略中央位置に対応して位置するように当該電線Eが配置される。
【0211】
上記操作者が六角レンチを右方向に回動していくと、当該第4の実施形態においては、上記第3の実施形態と同様である。即ち、上記可動電線受部24側の上記左右のR形部20p,20pにて上記電線Eを前方に押していくと、上記電線Eを前方側に押していくと共に、上記電線受部12の左右の電線把持部20,20の後方向きの附勢力に抗して電線Eを前方に押していく状況になり、この状況になると、上記可動電線把持部20,20においても、これらの可動電線把持部20,20の前方向きの附勢力に抗して上記電線Eを前方に押していくことになり、上記電線受部12側の左右の電線把持部20,20が上記電線Eに平行になった状態において、略同時期に、可動電線把持部24側の左右の可動電線把持部20,20が、上記電線Eの後方側側面Eb(可動電線把持部24側の側面)に平行な状態となり、
図30(a)に示すように、左右の可動電線把持部20,20の上記左右の接触部23,23(左右の上線部20b,下線部20c)は、上記電線Eの後方側側面Ebに平行な状態まで押され、当該平行状態で、前方側の附勢力を電線Eの後方側側面Ebに及ぼした状態で上記電線Eの側面に強く接触(密着)した状態となる(
図30(b)参照)。
【0212】
上記操作者は六角レンチを最後まで回動すると、上記第3の実施形態と同様に、この状態において、上記電線Eは、電線受部12側の弾性線材からなる電線把持部20の後方向きの附勢力と、可動電線受部24側の弾性線材からなる可動電線把持部20の前方向きの附勢力によって、上記各接触部23,23が電線Eに密着し(
図30(a)参照)、上記各接触部23,23の所定長さに亘って、軸方向に、該電線Eの前方側側面Ea及び後方側側面Ebから強く挟持された状態となる。その他の作用は、第3の実施形態と同様である(
図35(b)参照)。
【0213】
上述のように、第4の実施形態においても、第1〜3の実施形態と同様に、電線止クリップ1の左右両側において電線Eを確実に挟持することができ、これにより電線把持部20と可動電線把持部20が電線Eに密着して電線Eの振動に追従し得るため、電線Eへの曲げ応力を均等に分散し、素線間摩耗の軽減効果を高めることができる。
【0214】
第4の実施形態においては、電線把持部は例えば直径約3mmの弾性線材(spring wire)であり、第1の実施形態と同様に、耐食性に優れたステンレス(例えばSUS304WPB等)を使用し、一端をR形状に曲げ加工し、例えば平行な幅9mmの直線部(接触部23)を有し、他端はクランク状に曲げ加工した一対の端部20b’,20c’が形成されている。
【0215】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について
図32により説明する。
この第5の実施形態の電線把持部20は、溝係合部21,21は形成されているが、溝係合部21,21の端部がU字状に連結部20sにて連結されている点、及び、先端には折り返し部が形成されておらず、上線部20bから電線Eの円周方向の円弧に沿って屈曲されると共に(円弧に沿う部分を湾曲部20nという)、上記上線部20bから直角方向に屈曲された長屈曲部20uと、上記下線部20cから上記長屈曲部20uとは逆方向の直角方向に屈曲された短屈曲部20vが設けられている。この先端部をQ形部20tという(
図36(a)参照)。
【0216】
尚、上記連結部20sを挿通嵌合するため、
図8における電線受部12の左右の貫通孔19,19’を縦に連結して縦長貫通孔19”,19”とし、
図6における上記可動電線受部24の左右の貫通孔30,30’を縦に連結して縦長貫通孔30”,30”とすることにより、上記連結部20s(左右2個ずつ)を挿通嵌合することができる。
【0217】
また、上線部20b,20bは上記溝係合部21,21に直交する左右水平線L1に対して傾斜角θ(例えばθ=約10度)傾斜しており、これにより電線受部12、可動電線受部24に装着したとき、第1〜第4の実施形態と同様に、前方又は後方に傾斜して装着される。
【0218】
上記第5の実施形態の電線把持部20を装着するには、2本の電線把持部20,20の上記連結部20s,20sを、上記電線受部12の上記縦長貫通孔19”,19”に各々挿通し、上線部20bと下線部20cが各々溝13,13内に位置するように左右に広げて、上記Q形部20t,20tを上記電線受部12の左右に位置するように、水平に取り付ける。このとき、上記長屈曲部20uは各々電線Eの下側になるような向きに取り付ける。
【0219】
上記第5の実施形態の可動電線把持部20として可動電線受部24に装着するには、2本の可動電線把持部20,20の上記連結部20s,20sを、上記電線受部12の上記縦長貫通孔30”,30”に各々挿通し、上線部20bと下線部20cが各々溝13,13内に位置するように左右に広げて、上記Q形部20t,20tを上記可動電線受部24の左右に位置するように、水平に取り付ける。このとき、上記長屈曲部20uは各々電線Eの上側から下側に位置するような向きに取り付ける(
図36(b)参照)。
【0220】
その後は、上記第1〜4の実施形態と同様に、電線Eを水平載置版9e,9e’に、金属製長方形枠9に直交するように載置し、六角レンチをボルトBに嵌合し、右方向に回すことで、上記電線把持部20,20と可動電線把持部20,20間に電線Eを挟持することができる。
【0221】
電線Eを挟持した場合は、長屈曲部20uが電線の円周方向の円弧に沿って密着し、かつ短屈曲部20vが電線把持部20,20及び可動電線把持部20,20の挟持力によって
図32(a)の矢印R方向に回動するため、より強固に電線Eを前後方向に挟持することができる(
図36(b)参照)。
【0222】
このように折り返し部が存在しなくても電線Eを強固に挟持することができるし、電線Eを水平載置板9e,9e’に載置した場合は、針電極15,27によって電線Eのセンタリングを行うことができる。また、上記長屈曲部20uによって電線Eの上下方向の動きに沿わせることができ、確実に電線Eを把持することができる。第5の実施形態におけるその他の作用は、上記第1〜第4の実施形態と同様である。第5の実施形態においても、電線把持部の材質は、第1〜第4の実施形態と同様である。
【0223】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について
図33、
図36(a)により説明する。
この第6の実施形態の電線把持部20は、溝係合部21,21の端部がU字状に連結部20sにて連結されている点は上記第5の実施形態と同様である。
【0224】
この第6の実施形態では、先端には折り返し部が形成されておらず、上線部20bから電線Eの円弧に沿う方向の斜め上側に、直角方向に傾斜した直線屈曲部33aと、下線部20cから電線Eの円周方向の円弧に沿う方向の斜め下側に、直角方向に傾斜した直線屈曲部33bが、上下方向に対称に形成されており、当該先端部をY形部33cという。
【0225】
尚、上記連結部20sを挿通嵌合するため、
図8における電線受部12の左右の貫通孔19,19’を縦に連結して縦長貫通孔19”,19”とし、上記可動電線受部24の左右の貫通孔30,30’を縦に連結して縦長貫通孔30”,30”とすることにより、上記連結部20s(左右2個)を挿通嵌合することができる点は、上記第5の実施形態と同様である。
【0226】
上記第6の実施形態の電線把持部20を装着するには、2本の電線把持部20,20の上記連結部20s,20sを、上記電線受部12の上記縦長貫通孔19”,19”に各々挿通し、上線部20bと下線部20cが各々溝13,13内に位置するように左右に広げて、上記Y形部33c,33cを上記電線受部12の左右に位置するように、水平に取り付ける。
【0227】
上記第6の実施形態の可動電線把持部20として可動電線受部24に装着するには、2本の電線把持部20,20の上記連結部20s,20sを、上記電線受部12の上記縦長貫通孔30”,30”に各々挿通し、上線部20bと下線部20cが各々溝26,26内に位置するように左右に広げて、上記Y形部33c,33cを上記可動電線受部24の左右に位置するように、水平に取り付ける。
【0228】
その後は、上記第1〜4の実施形態と同様に、電線Eを水平載置板9e,9e’に、金属製長方形枠9に直交するように載置し、六角レンチをボルトBに嵌合し、右方向に回すことで、上記電線把持部20,20と可動電線把持部20,20間に電線Eを挟持することができる。
【0229】
電線Eを挟持した場合は、上下の直線屈曲部33a,33bが電線の円周方向の円弧に沿って密着するため、強固に電線Eを前後方向に挟持することができる(
図36(a)参照)。
【0230】
このように折り返し部が存在しなくても電線Eを強固に挟持することができるし、電線Eを水平載置板9e,9e’に載置した場合は、針電極15,27によって電線Eのセンタリングを行うことができる。また、上記直線屈曲部33a,33bによって電線Eの上下方向の動きに沿わせることができ、確実に電線Eを把持することができる。第6の実施形態におけるその他の作用は、上記第1〜第4の実施形態と同様である。第6の実施形態においても、電線把持部の材質は、第1〜第4の実施形態と同様である。
【0231】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について、
図34に基づいて説明する。
この第7の実施形態の電線把持部20は、電線受部12における上の貫通孔19,19に挿通される上の1本の電線把持部20と、電線受部12における下の貫通孔19’,19’に挿通される下の1本の電線把持部20により構成される。また、上下の電線把持部20,20の先端部における上下の電線把持部20,20を連結する連結具34,34を有している。
【0232】
より具体的に説明すると、上の電線把持具20は、左右の水平直線状の上線部20b,20bと、基端部側の上記貫通孔19,19に電線受部12の内側から挿通される挿通部22,22と、電線受部12の外側において、上記貫通孔19,19から突出する部分を連結する連結部33dと、上記左右の先端部において、一旦上下の電線把持部20,20の間隔が狭くなる方向に屈曲し、上記連結具34によって連結される被連結部33e,33eを構成した後、電線Eの円周方向に沿って斜め上方に屈曲する直線屈曲部33f,33fとから構成されている。
【0233】
下の電線把持具20は、左右の水平直線状の下線部20c,20cと、基端部側の上記貫通孔19’,19’に電線受部12の内側から挿通される挿通部22,22と、電線受部12の外側において、上記貫通孔19’,19’から突出する部分を連結する連結部33dと、上記左右の先端部において、一旦上下の電線把持部20,20の間隔が狭くなる方向に屈曲し、上記連結具34によって連結される被連結部33e,33eを構成した後、電線Eの円周方向に沿って斜め下方に屈曲する直線屈曲部33g,33gとから構成されている。
【0234】
これらの上の電線把持部20,20を電線受部12に装着するには、左右の直線屈曲部33f,33fを貫通孔19,19から挿通し、挿通部22,22が
図34の位置まで挿入し、左右の直線屈曲部33f,33fを左右方向に開いて、上線部20b,20bを左右に水平に位置させる。下の電線把持部20,20を電線受部12に装着するには、左右の直線屈曲部33g,33gを貫通孔19’,19’から挿通し、挿通部22,22が
図34の位置まで挿入し、左右の直線屈曲部33g,33gを左右方向に開いて、下線部20c,20cを左右に水平に位置させる。
【0235】
上記可動電線受部24においても、図示していないが、左右の直線屈曲部33f,33fを貫通孔30,30から挿通し、挿通部22,22が溝26,26の位置まで挿通し、左右の直線屈曲部33f,33fを左右方向に開いて、上線部20b,20bを左右に水平に位置させると共に、下の電線把持部20,20を可動電線受部24に装着するには、左右の直線屈曲部33g,33gを貫通孔30’,30’から挿通し、挿通部22,22が溝26,26の位置まで挿通し、左右の直線屈曲部33g,33gを左右方向に開いて、下線部20c,20cを左右に水平に位置させる。
【0236】
そして、電線受部12側の上下の電線把持部20,20の上記被連結部33e,33eを連結具34,34にて連結し、可動電線受部24側の可動電線把持部20,20の上記被連結具33e,33eを連結具34,34にて連結すれば良い。
【0237】
その後は、上記第1〜4の実施形態と同様に、電線Eを水平載置版9e,9e’に、金属製長方形枠9に直交するように載置し、六角レンチをボルトBに嵌合し、右方向に回すことで、上記電線把持部20,20と可動電線把持部20,20間に電線Eを挟持することができる。
【0238】
電線Eを挟持した場合は、上下の直線屈曲部33f,33gが電線の円周方向の円弧に沿って密着するため、強固に電線Eを前後方向に挟持することができる。
【0239】
このように折り返し部が存在しなくても電線Eを強固に挟持することができるし、電線Eを水平載置板9e,9e’に載置した場合は、針電極15,27によって電線Eのセンタリングを行うことができる。また、上記直線屈曲部33f,33gによって電線Eの上下方向の動きに沿わせることができ、確実に電線Eを把持することができる。第7の実施形態におけるその他の作用は、上記第1〜第4の実施形態と同様である。また、第7の実施形態における電線把持部20の材質は、第1〜第4の実施形態と同様である。
【実施例】
【0240】
(実験例)
碍子6,6上に弾性線材による電線把持部及び可動電線把持部20を使用した本発明に係る電線止クリップ1,1(第1の実施形態のもの)を各々固定し、上記電線止クリップ1,1間に電線E(約1.4m、直径約10mm)を上述の方法にて把持し、電線Eの中央を油圧シリンダのロッドの先端に接続し、該油圧シリンダにて両振幅(片振幅は中心からθ=約4度)の往復動作(約15往復/分)を繰り返し行った。
【0241】
比較例として、同様の条件で、上記碍子6,6上に弾性線材による電線把持部及び可動電線把持部20を使用していない電線止クリップを固定し、電線Eの中央を油圧シリンダのロッドの先端に接続し、同様の条件で実験を行った。
【0242】
実験の結果、電線把持部及び可動電線把持部20を使用していない電線止クリップの場合、約20000回で振幅の変位の拡大を生じ、断線したのに対し、本発明に係る電線止クリップの場合は、約200000回で振幅の変位の拡大を生じた。
【0243】
振幅の変位の拡大に至るまでの往復動作の回数は、本発明の電線止クリップ1は、従来の電線止クリップに比べて約10倍となり、電線Eの把持部への応力の集中を分散することができ、電線の破断、破損を防止できることを確認することができた。
【0244】
本発明は、以上のように、電線把持部20のクランク状に曲げた部位(基端部)を電線受部12の貫通孔19,19’、可動電線受部24の貫通孔30,30’に挿入し支点とし、電線把持部(可動電線把持部)20は約10度の角度を付けた平行直線部(接触部23)及び第1の実施形態においてはU字状部20a、第2の実施形態においては菱形部20g、第3の実施形態においては三角部20iで構成する。ボルトBを締め付け、電線把持部(可動電線把持部)20を電線Eに平行に沿わせると、電線把持部(可動電線把持部)20にばねの反発力が生じる。また、電線Eの振動によっても電線把持部(可動電線把持部)20の反発力は生じる。これら電線把持部20のばねの反発力により、風で電線Eが振動したときの電線Eの曲率半径を大きくし、曲げ応力を分散することで局部的に生じる電線Eへの疲労蓄積を軽減する構造とした。
【0245】
また、電線振動により電線に局所的な側圧が加わると、電線E内のより線間の摩耗が進行し、より線の焼き付き・固着が発生するのでより線の自由度が損なわれ、より線(電線)の疲労破壊の加速要因となる。
【0246】
そこで最も側圧を受けやすい電線導通部(例えば鋼心1本、アルミ素線6本で構成)の中心を避けてばね鋼線(弾性線材)を平行及びU字状又は菱形又は三角形状に成形した上下2本の弾性素材(電線把持部、可動電線把持部20)を電線Eの被覆部に線接触させ、延長することで側圧を軽減する構造とした。
【0247】
以上の構成によって電線振動による疲労強度を、従来に比べて約10倍に延長することができた。
【0248】
また、電線把持部20は、貫通孔19,19、30,30’に挿入した後、針電極15,27をリベットかしめ(金具18)で取り付けることで外れない構造とした。さらに、電線サイズ毎に電線把持部20及び金具斜面(テーパ部13c,13d、26c,26d)と電線Eの被覆との接触状態、その際の針電極15,27と電線導通部(導体Ec)の接触状態(切りこみ状態)については、
図21に示すように、電線Eの直径10mm(
図21(a)参照)と直径15mm(
図21(b)参照)は電線把持部20の上下線部20b,20cに接触させ、径大の電線Eの直径19mm(
図21(c)参照)は上記金具斜面(テーパ部13c,13d、26c,26d)に電線被覆を接触させることで、数種類の電線サイズに対応して、針電極15,27が電線Eに切り込み過ぎないように制御機能を付加した。
【0249】
また、本発明は以上のように、従来装置の押え円弧板をなくし、代わりに弾性線材(ばね鋼材)により成形した電線把持部(可動電線把持部)20を配置した(
図1、
図17等参照)。
【0250】
電線把持部(可動電線把持部)20によって、所定長に亘り電線Eを把持することで、従来装置に比べ曲げ応力及び素線間摩耗の集中部を分散させ、疲労破壊の影響を軽減する構造とした。
【0251】
また、電線止クリップ1の両側の電線Eの、前面側側面Eaと後面側側面Ebとを弾性線材からなる電線把持部20及び可動電線把持部20にて所定長に亘り挟持することにより、電線Eが前後方向等に振動しても上記電線把持部20と可動電線把持部20は、電線Eの振動に合わせて弾性変形するため、電線Eの挟持部の特定部位に応力が集中することがなく、電線Eの破断、破損を効果的に抑止することができる。
【0252】
また、電線Eは、複数のアルミ素線または、複数のアルミ素線と鋼心からなり、アルミ素線はより線となっている。電線サイズが大きくなるにつれ、アルミ素線の数は増す。もしくはアルミ素線や鋼心の太さが増す。そのため、電線の可撓性は、電線サイズが小さいほど高い。従って、本発明によれば、小サイズの電線であるほど応力集中の分散効果が高まり、電線寿命を延ばす効果は顕著となる。
【0253】
また、折り返し部分をU字状部20aとすることにより、電線把持部(可動電線把持部)20の簡単な形状にて、電線Eの挟持部の特定部位への応力集中を防止すると共に、素線間摩耗を防止し、電線の破断、破損を抑止することができる。
【0254】
また、U字状部20aに反部Hを設けることにより、電線把持部(可動電線把持部)20の上下に往復する部分(接触部23、上下線部20b,20c)が電線Eの側面に、所定範囲に亘って密着し、これにより電線を確実に挟持することができる。
【0255】
また、折り返し部を菱形部20gとすることにより、菱形部20gの先端屈曲部20eに電線Eの軸方向の中心線L4を合わせることができ、より確実に電線Eを挟持することができる。
【0256】
また、三角部20iの湾曲状の連結部20kを電線Eの円周方向に沿わせることができ、三角部20iにて電線Eの前方側側面Eaと後方側側面Ebを包み込むことができるため、電線Eを確実に挟持することができるし、弾性線材からなる電線把持部20及び可動電線把持部20にて所定長に亘り電線Eを挟持することができるので、電線Eの挟持部の特定部位に応力が集中することがなく、電線の破断、破損を抑止することができる。
【0257】
また、電線Eの軸方向の中心を先端屈曲部20eに合わせると共に、一対の湾曲部20f,20fにより電線Eを包み込むことができるので、電線Eを挟持していく過程において、電線Eが電線把持部20から外れることを防止して、確実に電線Eを挟持することができる。
【0258】
また、電線止クリップ1の左右両側の電線Eにおいて、電線Eの左右の前方側側面Eaと左右の各後方側側面Ebを、各々左右一対の上下線部20b,20cにて挟持することができ、電線止めクリップ1の左右両側の電線Eを安定して挟持することができると共に、挟持部における電線Eの特定部位に応力が集中するのを抑止することができる。
【0259】
また、電線把持部20及び可動電線把持部20にて電線Eを把持することにより、同時に、針電極15,27を電線Eの導体に導通させることができ、落雷時等の接地ルートを容易に構成することができる。また上記針電極の左右の電線の所定長に亘り電線把持部20及び可動電線把持部20にて電線Eを把持し得るので、針電極15,27近傍での電線の応力集中を防止し得て、電線止クリップの放電機能が害されることがない。
【0260】
また、左右の電線把持部20と左右の可動電線把持部20により電線Eを挟持した状態において、電線Eの前方側側面Eaと後方側側面Ebには、左右の電線把持部20の弾性線材による後方向きの附勢力と、左右の可動戦線把持部20の弾性線材による前方向きの附勢力が常時作用していることになり、電線止めクリップ1の左右両側において、電線Eを確実に保持することができ、電線止クリップの左右両側において両電線把持部(両可動電線把持部)20,20が電線に密着し、電線に対する曲げ応力を分散することができる。また、上記附勢力を常時作用させることにより、小さな振幅の振動であっても上記曲げ応力を確実に抑制することができる。
【0261】
また、水平載置部9e,9e’に電線Eを載置した場合は、可動電線把持部20,20を電線把持部20,20に近接させる際、電線Eを第1及び第2針電極15,27で掬い上げ、センタリングすることができる。また、電線受部12及び可動電線受部24より電線Eが左右方向に出た位置において、当該電線Eが上下方向等に移動した際、電線把持部20及び可動電線把持部20がその弾性により電線Eに沿って上下方向に移動することができ、電線受部12及び可動電線受部24から左右方向に出た位置の電線Eが上下方向に移動した場合においても、電線把持部20及び可動電線把持部20が電線Eの動きに沿って移動可能であるため、より効果的に電線Eを把持することができるし、応力の集中を効果的に防止することができる。
【0262】
また、本発明の電線止クリップ1を複数の電柱に設けて、当該電線止クリップ1にて電線を保持することで、風の振動等によっても電線の破損又は破断を極力抑止することができる。
【0263】
また、高圧架空電線を落雷等の雷サージ等がら保護することができる。
【0264】
水平載置板9e,9e’は、第1、第2の実施形態のU字状部20a、菱形部20fの金属製長方形枠9に設けても良い。この場合、第1、第2の実施形態において、作業者が電線Eを電線把持部20,20と可動電線把持部20,20間に位置するように配置しても良いし、電線Eを水平載置板9e,9e’上に載置して、針電極15,27にて電線Eを掬い上げセンタリングを行うように構成しても良い。また、第3〜第7の実施形態において、電線Eを水平載置板9e,9e’上に載置せず、作業者が電線Eを電線把持部20,20と可動電線把持部20,20間に位置するように配置しても良い。