(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電極が、Au、Ag、Pt、Ag/AgClのうち少なくともいずれか一つを含む金属電極であるか、ITO、IGO、Cr、Al、IZO、IGZO、ZnO、ZnO2およびTiO2のうち少なくともいずれか一つを含む無機電極であるか、PEDOT/PSS、カーボン、ポリアセチレン、ポリチオフェン(PT)、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリ硫黄窒化物のうち少なくともいずれか一つを含む有機電極である、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のフローセル。
前記導電性パターンは、金属めっき成長のきっかけとなる触媒からなる下地層上に形成されたCu、Ni、Ag、Auの中から選択される少なくとも1種の金属よりなる金属めっき層である、
ことを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1項に記載のフローセル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、導電性パターン及び電極が形成された基材上に流路を位置精度よく形成するとともに液漏れを抑制しつつ低コスト化することができるフローセルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項
1に記載のフローセルは、
合成樹脂材料からなり
実質的に平坦な2次元形状から実質的に3次元形状に変形可能な基材と、
前記基材の一面に配置された導電性パターンと、
前記導電性パターンの一端に連続して形成された複数の電極と、
前記導電性パターンと電気的に接合され前記基材の外部に設けられた外部素子とを電気的に接続するための外部接続端子と、
前記電極が形成され
熱成形を施して前記基材の厚さ方向に
前記3次元形状に賦形された前記基材の一部と前記電極と接触するように液が流通する流路となる凹部を形成し
前記基材と一体化するように成形され前記基材を覆う樹脂層と、
前記流路を液密に覆う蓋体と、を備えた、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項
2に記載の発明は、請求項1に記載のフローセルにおいて、
前記基材は、透光性を有する、
ことを特徴とする。
【0010】
請求項
3に記載の発明は、請求項1
又は2に記載のフローセルにおいて、
前記外部接続端子は、前記樹脂層と一体に形成され前記外部接続端子の表面である端子表面が露出するように前記外部接続端子を囲むハウジングで囲まれている、
ことを特徴とする。
【0011】
請求項
4に記載の発明は、請求項
1又は2に記載のフローセルにおいて、
前記外部接続端子は、外部に向かって突出するように前記導電性パターンの一部から延在する引き出し配線と接続して前記基材の一端に形成されている、
ことを特徴とする。
【0012】
請求項
5に記載の発明は、請求項1ないし
4のいずれか1項に記載のフローセルにおいて、
前記電極は、前記導電性パターンに接続された作用電極、対電極及び参照電極を含む、
ことを特徴とする。
【0013】
請求項
6に記載の発明は、請求項1ないし
5のいずれか1項に記載のフローセルにおいて、
前記電極が、Au、Ag、Pt、Ag/AgClのうち少なくともいずれか一つを含む金属電極であるか、ITO、IGO、Cr、Al、IZO、IGZO、ZnO、ZnO2およびTiO2のうち少なくともいずれか一つを含む無機電極であるか、PEDOT/PSS、カーボン、ポリアセチレン、ポリチオフェン(PT)、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリ硫黄窒化物のうち少なくともいずれか一つを含む有機電極である、
ことを特徴とする。
【0014】
請求項
7に記載の発明は、請求項1ないし
5のいずれか1項に記載のフローセルにおいて、
前記電極は、酵素及び/又は酵素含有物を電極成分として混在させた酵素修飾電極である、
ことを特徴とする。
【0015】
請求項
8に記載の発明は、請求項1ないし
7のいずれか1項に記載のフローセルにおいて、
前記導電性パターンは前記基材の一面とは反対側の他面にも配置されている、
ことを特徴とする。
【0016】
請求項
9に記載の発明は、請求項
8に記載のフローセルにおいて、
前記流路と重なるように前記導電性パターンの一端に連続してヒータが配置されている、
ことを特徴とする。
【0017】
請求項1
0に記載の発明は、請求項
8に記載のフローセルにおいて、
前記流路に近接して前記導電性パターンの一端に連続して形成された温度センサが配置されている、
ことを特徴とする。
【0018】
請求項1
1に記載の発明は、請求項1ないし1
0のいずれか1項に記載のフローセルにおいて、
前記電極と前記外部素子とが電気的に接続されている旨を、光、音、及び表示のうちの少なくとも1つを用いて報知する報知部をさらに備えた、
ことを特徴とする。
【0019】
請求項1
2に記載の発明は、請求項1ないし1
1のいずれか1項に記載のフローセルにおいて、
前記導電性パターン上に情報記録媒体をさらに備えた、
ことを特徴とする。
【0020】
請求項1
3に記載の発明は、請求項1ないし1
2のいずれか1項に記載のフローセルにおいて、
前記凹部の底面には前記電極のみが露出している、
ことを特徴とする。
【0021】
請求項1
4に記載の発明は、請求項1ないし1
3のいずれか1項に記載のフローセルにおいて、
前記導電性パターンを覆う絶縁層をさらに備えた、
ことを特徴とする。
【0022】
請求項1
5に記載の発明は、請求項1ないし1
4のいずれか1項に記載のフローセルにおいて、
前記導電性パターンは、金属めっき成長のきっかけとなる触媒からなる下地層上に形成されたCu、Ni、Ag、Auの中から選択される少なくとも1種の金属よりなる金属めっき層である、
ことを特徴とする。
【0023】
請求項1
6に記載の発明は、請求項1ないし1
5のいずれか1項に記載のフローセルにおいて、
前記樹脂層は、PEEK、PC、PET、PMMA、PA、ABS、PE、PP、m−PPE、m−PPO、COC、COPからなる群より選択される材料を含む、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項
1に記載の発明によれば、導電性パターン及び電極が形成された変形可能な基材上に流路を位置精度よく配置するとともに液漏れを抑制しつつ低コスト化することができる。
【0027】
請求項
2に記載の発明によれば、流路内を流通する液の濃度を測定することができる。
【0028】
請求項
3に記載の発明によれば、部品点数を削減することができる。
【0029】
請求項
4に記載の発明によれば、部品点数を削減することができる。
【0030】
請求項
5に記載の発明によれば、流路内の液の電気化学的データを測定するために使用することができる。
【0031】
請求項
6に記載の発明によれば、流路内の液に含まれる微量の化学的成分を電気化学的に分析するためのデータを取得することができる。
【0032】
請求項
7に記載の発明によれば、流路内の液の生体分子を識別するために使用することができる。
【0033】
請求項
8に記載の発明によれば、電力供給及びデータ取得の信頼性を向上させることができる。
【0034】
請求項
9に記載の発明によれば、流路内の液を保温又は加熱することができる。
【0035】
請求項1
0に記載の発明によれば、流路内の液の温度データを取得することができる。
【0036】
請求項1
1に記載の発明によれば、電気的に接続されていることを示すことができる。
【0037】
請求項1
2に記載の発明によれば、フローセルの品質管理情報を保持することができる。
【0038】
請求項1
3に記載の発明によれば、流路内の液の電気化学的特性に基材の影響を与えないようにすることができる。
【0039】
請求項1
4に記載の発明によれば、導電性パターンの損傷を抑制することができる。
【0040】
請求項1
5に記載の発明によれば、導電性パターンを変形された基材の3次元形状に沿って配置することができる。
【0041】
請求項1
6に記載の発明によれば、耐薬品性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
次に図面を参照しながら、本発明の実施形態の具体例を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
尚、以下の図面を使用した説明において、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【0044】
(1)フローセルの全体構成
図1Aはフローセル1の一例を示す平面模式図、
図1Bは断面模式図、
図2Aはフローセル1の他の例を示す平面模式図、
図2Bは断面模式図、
図3Aは報知部20を備えたフローセルの一例を示す断面模式図、
図3Bは他の報知部20を備えたフローセルの一例を示す断面模式図、
図4は変形例1に係るフローセル1Aを示す断面模式図である。
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係るフローセル1の構成について説明する。
【0045】
フローセル1は、
図1A、
図1Bに示すように、基材2と、この基材2上に配置された導電性パターン3と、導電性パターン3の一端に連続して形成された電極4と、導電性パターン3と接合材6で電気的に接合された外部接続端子5と、電極4上に流路となる凹部7を形成し、基材2と一体化して基材2の一面2aを覆う樹脂層8と、凹部7を液密に覆う蓋体9と、を備えて構成されている。
【0046】
(基材)
本実施形態において使用する導電性パターン3が形成される基材2は、絶縁性基材が好ましく、樹脂からなる基材(以下樹脂基材という)、セラミック基材、及びガラス基材等を使用することができ、樹脂基材がより好ましい。なお、樹脂基材には、下記の変形可能なフィルム基材も含まれる。ガラス基材を使用する場合は、例えば、板厚1mm程度のBK7ガラスを使用し、このガラス基材上にスパッタリング法、もしくは蒸着法などにより、
導電性パターン3となる金属層を形成することができる。
【0047】
樹脂基材の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ナイロン6−10、ナイロン46などのポリアミド(PA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
特にポリエステルがより好ましく、さらにその中でもポリエチレンテレフタレート(PET)が経済性、電気絶縁性、耐薬品性等のバランスが良く最も好ましい。
【0048】
基材2は、
図2に示すように、変形可能なフィルム基材であってもよく、フィルム基材上に導電性パターン3を配置して変形可能なフィルム基板としてもよい。この場合は、
図2に示すように、導電性パターン3が配置された一面2aとは反対側の他面2bは、第2の樹脂層8Aで覆われていることが好ましい。
ここで、「変形可能なフィルム基材」は、導電性パターン3を配置後に変形できる、すなわち、熱成形、真空成形または圧空成形等によって実質的に平坦な2次元形状から実質的に3次元形状に形成されることができる基材を意味する。
【0049】
樹脂基材としては、融点Tmが存在する場合は150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましい。また、ガラス転移点Tgの範囲は20℃〜250℃が好ましく、50℃〜200℃がより好ましく、70℃〜150℃が最も好ましい。ガラス転移点Tgが低すぎる場合、導電性パターン3の形成時に基材2の歪みが大きくなる虞がある。
【0050】
基材2の厚み(mm)は特に制限されないが、取り扱い性及び薄型化のバランスの点から、樹脂基材では0.01〜3mmが好ましく、0.02〜1mmがより好ましく、0.03〜0.1mmが更に好ましい。また、ガラス基材では、0.01〜3mmが好ましく、0.3〜0.8mmがより好ましく、0.4〜0.7mmが更に好ましい。
特にフィルム基材では、0.005〜0.25mmが好ましく、0.01〜0.2mmがより好ましく、0.05〜0.188mmが最も好ましい。基材2の厚みが薄すぎる場合、強度が不十分になるとともに、導電性パターン3のめっき工程時に基材2の歪みが大きくなる虞がある。
【0051】
基材2の表面には、金属ナノ粒子等の触媒インクを均一に塗布するために、表面処理を施すことが好ましい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、溶剤処理、プライマー処理を用いることができる。
【0052】
基材2は、透光性の材料で形成してもよい。基材2を透光性とすることで、フローセル1の底面側(基材2側)に配置された光センサで流路内を流通する液の濃度を測定することができる。また、基材2は、蓋体9とともに透光性の材料で形成してもよい。基材2及び蓋体9を透光性とすることで、フローセル1の底面側(基材2側)から光を照射して流路内の液の色を確認することができる。
【0053】
(導電性パターン)
基材2の表面に導電性パターン3を配置する場合、さきに、金属めっき成長のきっかけとなる金属ナノ粒子等の触媒からなる下地層(不図示)を所定のパターン状に形成する。
下地層は、基材2上に金属ナノ粒子等の触媒インクを塗布したあと、乾燥および焼成を行うことにより形成する。
【0054】
下地層の厚み(μm)は、0.1〜20μmが好ましく、0.2〜5μmがさらに好ましく、0.5〜2μmが最も好ましい。下地層が薄すぎると、下地層の強度が低下するおそれがある。また、下地層が厚すぎると、金属ナノ粒子は通常の金属よりも高価であるため、製造コストが増大する虞がある。
【0055】
触媒の材料としては、金、銀、銅、パラジウム、ニッケルなどが用いられ、導電性の観点から金、銀、銅が好ましく、金、銀に比べて安価な銅が最も好ましい。
【0056】
触媒の粒子径(nm)は1〜500nmが好ましく、10〜100nmがより好ましい。粒子径が小さすぎる場合、粒子の反応性が高くなりインクの保存性・安定性に悪影響を与える虞がある。粒子径が大きすぎる場合、薄膜の均一形成が困難になるとともに、インクの粒子の沈殿が起こりやすくなる虞がある。
【0057】
導電性パターン3は、下地層の上に電解めっきまたは無電解めっきにより形成される。めっき金属としては、銅、ニッケル、錫、銀、金などを用いることができるが、伸長性、導電性および価格の観点から銅を用いることが最も好ましい。
【0058】
めっき層の厚さ(μm)は、0.03〜100μmが好ましく、1〜35μmがより好ましく、3〜18μmが最も好ましい。めっき層が薄すぎると、機械的強度が不足するとともに、導電性が実用上十分に得られない虞がある。めっき層が厚すぎると、めっきに必要な時間が長くなり、製造コストが増大する虞がある。
【0059】
導電性パターン3は、
図1、2においては、電極4と外部接続端子5とを電気的に接続する例を示しているが、導電性パターン3には、電極4以外に複数の電子部品が取り付けられてもよい。電子部品としては、制御回路、歪み、抵抗、静電容量、TIRなどの接触感知、および光検出部品、圧電アクチュエータなどの触知部品、マイクおよびスピーカーなどの受音または発音、メモリチップ、プログラマブルロジックチップおよびCPUなどのデバイス操作部品、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ALSデバイス、PSデバイス、処理デバイス、MEMS等が挙げられる。
本実施形態においては、電子部品として、後述する報知部20を構成する発光素子21、スピーカ22(不図示)等や、情報記録媒体としてのICチップが挙げられる。
【0060】
図3には報知部20を備えたフローセル1を示している。
図3Aに示すように、報知部20は、LED等の発光素子21と、発光素子21が発する光を受けて外部へ出射する蓋体9に形成されたレンズ9aからなり、電極4が外部機器と電気的に接続されていることを示すようになっている。発光素子21は、基材2上に形成された導電性パターン3上に接合材6により電気的に接合され、導電性パターン3に電気的に接合された外部接続端子5を介して外部から給電されて発光する。
【0061】
報知部20は、
図3Bに示すように、蓋体9の外側となる一面に細孔9bを設け、発光素子21から発した光の一部を透過させることで、報知内容を表示してもよい。
また、報知部20は、スピーカ22(不図示)を導電性パターン3上に電気的に接合して配置することで、音による報知を行ってもよい。
【0062】
図4は変形例1に係るフローセル1Aを断面模式図で示している。
図4Aに示すように、導電性パターン3は、基材2の一面2aとは反対側の他面2bにも配置して、両面基板としてもよい。導電性パターン3を基材2の他面2bにも配置することで、他面2b側にも電子部品を取り付けることができる。また、
図4Bに示すように、流路と重なるように導電性パターン3の一端に連続してヒータ3bを形成してよい。これにより、流路内の液を保温又は加熱することができる。さらに、導電性パターン3の先端部には温度センサ3cを配置してもよい。
【0063】
(電極)
基材2上に樹脂層8で形成された凹部7には電極4が流路に対して露出するように配置されている。電極4は、作用電極4A、対電極4B、参照電極4Cからなり、それぞれ導電性パターン3の先端部に形成されている。導電性パターン3の他端部には外部接続端子5が電気的に接合され、電極4は導電性パターン3及び外部接続端子5を介して電気化学的測定用の外部装置(不図示)に接続される。
【0064】
電極4は、電気化学的測定に用いられ、化学的な安定性に優れた特性を有することが好ましい。このような電極としては、Au、Ag、Pt、Ag/AgClのうち少なくともいずれか一つを含む金属電極であるか、ITO、IGO、Cr、Al、IZO、IGZO、ZnO、ZnO2およびTiO2のうち少なくともいずれか一つを含む無機電極であるか、PEDOT/PSS、カーボン、ポリアセチレン、ポリチオフェン(PT)、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリ硫黄窒化物のうち少なくともいずれか一つを含む有機電極であることが好ましい。電極4をこのような金属電極、無機電極又は有機電極で形成することで、流路内の液に含まれる微量の化学的成分を電気化学的に分析するためのデータを取得することができる。
【0065】
また、電極4は、酵素及び/又は酵素含有物を電極成分として混在させた酵素修飾電極であってもよい。酵素は、被測定物質の酸化還元反応を触媒し、その反応に基因する電子の授受を電極に伝える能力を有するものであればいずれでもよく、例えば、PQQ、FADSNAD、NADP等を補酵素とするデヒドロゲナーゼが好適に利用される。
酵素を電極威分として混在させた酵素修飾電極は、例えば、酵素と酵素以外の電極成分を流動パラフィンのようなビヒクルと共に均一に混練した組成物を作成し、この組成物を整形して電極とするか、又はこの組成物で電極基材の表面を被覆する方法で形成することができる。電極4を酵素修飾電極とすることで、流路内の液の生体分子を識別するためのデータを取得することができる。
【0066】
(外部接続端子)
導電性パターン3上には、
図1、
図2に示すように、フローセル1の外部に設けられた外部装置と電気的に接続するための外部接続端子5が電気的に接合されている。
外部接続端子5は、例えば、銅の合金などを用いて四角柱形状に形成されている。尚、外部接続端子5は、一例として、表面にニッケルメッキを施し、そのニッケルメッキの上に、金、錫などの金属やそれら金属を含む合金などのメッキが施されても良い。外部接続端子5のピッチは、接続先のコネクタの規格に応じている。外部接続端子5は、例えば、コネクタ端子となる端子部5aと、アンカー部5bとからなり、アンカー部5bが接合材6で金属配線パターン3に電気的に接合される。
【0067】
接合材6としては、はんだが挙げられる。はんだは、基材2の軟化点より低温の溶融温度を有する低温はんだが望ましく、例えば、錫(Sn)とビスマス(Bi)との合金(SnBi)、錫(Sn)とビスマス(Bi)とニッケル(Ni)と銅(Cu)との合金(SnBiNiCu)、錫(Sn)とビスマス(Bi)と銅(Cu)とアンチモン(Sb)との合金(SnBiCuSb)、錫(Sn)と銀(Ag)とビスマス(Bi)との合金(SnAgBi)、錫(Sn)とインジウム(In)との合金(SnIn)、錫(Sn)とインジウム(In)とビスマス(Bi)との合金(SnInBi)、又は、基材2の軟化点と比較して相対的に低い融点を持つその他の合金とビスマス(Bi)及び/又はインジウム(In)とのその他の組み合わせとすることができ、例えば基材2としてポリエチレンテレフタレート(PET)を使用する場合は、基材2の軟化点より低い120〜140℃の融点を有することが望ましい。
【0068】
基材2の軟化点よりも低い融点を持つはんだペーストを用いることにより、基材2は溶融又はその他の変形をしない一方で、はんだペーストは溶融して金属配線パターン3と化学的かつ物理的に接合し得る状態になる。そして、はんだが固化して、はんだを介して導電性パターン3に外部接続端子5が電気的に接合される。
【0069】
また、外部接続端子5と導電性パターン3との接合には、レーザーはんだ付けや光焼成はんだ付けを用いてもよい。この場合は、こてはんだ付けに比べて、非接触で基材2に負荷を与えないことから、はんだは特に低温はんだに限らず、通常のはんだでもよい。
【0070】
外部接続端子5は、端子部5aが露出するように後述する樹脂層8と一体に形成されたハウジング部82で囲まれ、外部接続端子5及びハウジング部82が、フローセル1とフローセル1の外部に設けられた外部装置とを電気的に接続するコネクタを構成している。
【0071】
図5Aは変形例の外部接続端子5Aを備えたフローセル1を示す平面模式図、
図5Bは断面模式図である。
変形例に係る外部接続端子5Aは、
図5に示すように、コネクタ接点が導電性パターン3の一部として変形可能な基材2上に形成され、外部接続端子5Aが形成された基材2は一端2cが樹脂層8の端部から外部に向かって突出するようになっている。
外部接続端子5Aが形成された基材2の裏面側には板材5Aaが配置され、フローセル1の外部に設けられた外部装置と電気的に接続するためのコネクタを形成している。これにより、コネクタ構造を簡素化して外部に設けられた外部装置と電気的に接続することができる。
【0072】
(樹脂層)
樹脂層8は、基材2の導電性パターン3が配置された一面2aを覆うように形成され、
図1、
図2示すように、電極4上に流路となる凹部7を形成し基材2を覆う本体部81と、基材2の一面2a側に突出した筒形状を有し、筒の内部に外部接続端子5の端子部5aが露出するように囲むハウジング部82と、を備えて構成されている。
【0073】
樹脂層8は、基材2に対して二次モールド成形可能な樹脂材料からなる熱可塑性樹脂である。具体的には、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)C、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアミド(PA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、変性ポリフェニレンオキサイト(m−PPO)、環状オレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)からなる群より選択される熱可塑性樹脂が挙げられる。樹脂層8は、機械的強度と耐熱性を有し、基材2に対する接着性の観点からPET、PCが好ましく、樹脂層8は測定する液が流通する流路となる凹部7を形成することから、更に耐薬品性を備えたPEEKがより好ましい。
【0074】
基材2と本体部81とを液密に接着するように、基材2の一面2aには接着層ADを形成することが好ましい。接着層ADを形成する場合は、基材2及び樹脂層8の素材と相性のよい樹脂を含むバインダーインクが使用される。
例えば、基材2がPET樹脂フィルムで、二次成形される樹脂層8がPEEK、PC、PET、PMMA、PA、ABS、PE、PP、m−PPE、m−PPO、COC、COPからなる群より選択される材料を含む場合、それぞれの樹脂材料と相溶性が高い樹脂として、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリウレタン系樹脂等からなる群より選択して使用することもできる。また、接着層ADの厚みは0.5〜50μmが好ましい。尚、接着層ADに代えて、コロナ処理、プラズマ処理、溶剤処理、プライマー処理を施してもよい。
【0075】
図6は変形例2に係るフローセル1Bを示す断面模式図である。変形例1に係るフローセル1Bは、電極4が形成され厚さ方向に屈曲した基材2の一部と電極4と接触するように液が流通する流路となる凹部7Aを形成し基材2を覆う樹脂層8Aを備えている。
導電性パターン3の先端部に電極4が形成された基材2は、変形可能な合成樹脂材料からなるフィルム、より具体的には熱成形により3次元形状に賦形されることができるフィルムからなり、樹脂層8Aを二次成形する際に厚さ方向に屈曲して凹部7Aの一部を形成し、樹脂層8Aが残りの凹部7Aを形成している。
【0076】
図7は変形例3に係るフローセル1Cを示す断面模式図である。変形例3に係るフローセル1Cは、基材2の導電性パターン3が配置された一面2aを覆う樹脂層8が、流路上に電極4のみが露出するように凹部7Bを形成している。これにより、導電性パターン3を覆う絶縁層10であるソルダーレジストの流路内を流通する液への露出を抑制することができる。
【0077】
(蓋体)
蓋体9は、樹脂層8で形成された凹部7の開口部7aを覆って流路を液密に保つ。蓋体9は、凹部7の開口部7aを塞ぐ大きさで、凹部7を液密に保つための一定の厚みを有することが必要で、樹脂層8に密着するように取り付けられている。液密を保つために、レーザー溶着、超音波溶着等により接着され、
図1、2、5に示すように、必要に応じて樹脂層8との間には、ゴムパッキンP、接着剤等を挟み込んで締め付けネジSで固定してもよい。
【0078】
蓋体9には、流路に向かって貫通する導入部91及び排出部92が形成されている。導入部91は、接続する流路の幅よりも大きな穴径とされていることが好ましい。また、穴径は、測定対象とする液が供給可能な状態となっていればよい。排出部92は、接続する流路の幅よりも大きな穴径とされていることが好ましい。
【0079】
(絶縁層)
基材2の導電性パターン3が配置された一面2a、他面2bは絶縁層10で覆うことが好ましい。具体的には、一面2a、他面2bにはソルダーレジストが塗布されて導電性パターン3を保護している。特に、ソルダーレジストは、外部接続端子5をはんだ付けで実装する際に、電気的接続をとる接合部以外にはんだが付着して回路ショートを起こすのを防止している。また、導電性パターン3間の絶縁性を維持するとともに、ほこり、熱、湿気などの外部環境から導電性パターン3を保護している。
【0080】
(2)フローセルの製造方法
図8はフローセル1の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図、
図9は導電性パターン3と電極4が配置された基材2及び外部接続端子5を樹脂層8を充填する金型にセットした状態を示す断面模式図、
図10は導電性パターン3と電極4が配置された熱成形可能な基材2及び外部接続端子5を樹脂層8を充填する金型にセットして基材に凹部の一部を賦形した状態を示す断面模式図である。
【0081】
フローセル1は、基材2上に、金属ナノ粒子等の触媒インクを塗布する下地層塗布工程S1と、めっき処理により下地層の上に導電性パターン3を形成する配線用めっき工程S2と、導電性パターン3の先端部に電極4を形成する電極形成工程S3と、基材2の少なくとも一面を覆うように樹脂を二次モールドする樹脂充填工程S4と、導電性パターン3と外部接続端子5とを接合材6で電気的に接合する電気的接合工程S5と、樹脂充填工程S4で形成された流路となる凹部7の開口部7aを蓋体9で液密に封止する封止工程S6を経て製造される。
【0082】
(下地層塗布工程)
所定の形状及び大きさに形成された実質的に平坦な基材2上に導電性パターン3を配置するために、基材2上に金属めっき成長のきっかけとなる金属ナノ粒子等の触媒粒子からなる下地層を所定のパターン状に形成する。尚、基材2は、金属ナノ粒子等の触媒粒子からなる触媒インクを均一に塗布するために、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、溶剤処理、プライマー処理等の表面処理を施すことが好ましい。
【0083】
基材2上に金属ナノ粒子等の触媒粒子からなる触媒インクを塗布する方法としては、インクジェット印刷方式、シルクスクリーン印刷方式、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、フレキソ印刷方式、ローラーコーター方式、刷毛塗り方式、スプレー方式、ナイフジェットコーター方式、パッド印刷方式、グラビアオフセット印刷方式、ダイコーター方式、バーコーター方式、スピンコーター方式、コンマコーター方式、含浸コーター方式、ディスペンサー方式、メタルマスク方式が挙げられるが、本実施形態においてはインクジェット印刷方式を用いている。
【0084】
具体的には、1000cps以下、例えば、2cpsから30cpsの低粘度の触媒インクをインクジェット印刷方式で塗布した後、溶媒を揮発させ金属ナノ粒子のみを残す。その後、溶媒を除去し(乾燥)、金属ナノ粒子を焼結させる(焼成)。
焼成温度は、100°C〜300°Cが好ましく、150°C〜200°Cがより好ましい。焼成温度が低すぎると、金属ナノ粒子同士の焼結が不十分となるとともに、金属ナノ粒子以外の成分が残ることで、密着性が得られない虞がある。また、焼成温度が高すぎると、基材2の劣化や歪みが発生する虞がある。
【0085】
触媒インク中の金属ナノ粒子の含有割合については、質量比で5%〜60%が好ましく、10%〜30%がさらに好ましい。含有割合が低すぎる場合、金属ナノ粒子による下地層3aを形成するのに必要なナノ粒子が足らずピンホールが発生する虞があり、含有割合が高過ぎるとインクの中で粒子同士が凝集しやすくなるなど安定性が損なわれる虞がある。
【0086】
(配線用めっき工程)
下地層塗布工程S1を経て基材2上に形成された下地層に対し、配線用めっき工程S2において電解めっきまたは無電解めっきを行うことにより、下地層の表面および内部にめっき金属を析出させる。めっき方法は公知のめっき液およびめっき処理と同様であり、具体的に無電解銅めっき、電解銅めっきが挙げられる。
【0087】
(電極形成工程)
配線用めっき工程S2で基材2上に配置されたそれぞれの導電性パターン3の先端部に作用電極4A、対電極4B、参照電極4Cを形成する。基材2上に電極4を配置するために、基材2上にコロナ処理、プラズマ処理、溶剤処理、プライマー処理等の表面処理を施すことが好ましい。
【0088】
電極形成工程S3で表面処理を施された基材2上に電極材料となるAu、Ag、Pt、Ag/AgCl、ITO、IGO、Cr、Al、IZO、IGZO、ZnO、ZnO2およびTiO2、PEDOT/PSS、カーボン、ポリアセチレン、ポリチオフェン(PT)、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリ硫黄窒化物のうち少なくともいずれか一つを含む電極材料インクを塗布する。電極材料インクを塗布する方法としては、シルクスクリーン印刷方式、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、フレキソ印刷方式、インクジェット印刷方式、ローラーコーター方式、刷毛塗り方式、スプレー方式、ナイフジェットコーター方式、パッド印刷方式、グラビアオフセット印刷方式、ダイコーター方式、バーコーター方式、スピンコーター方式、コンマコーター方式、含浸コーター方式、ディスペンサー方式、メタルマスク方式が挙げられるが、本実施形態においてはシルクスクリーン印刷方式を用いている。なお、電極材料がAu、Ag、Pt、Ag/AgCl等の金属電極材料である場合、電解めっきまたは無電解めっきによるめっき法を用いてもよい。
【0089】
(樹脂充填工程)
樹脂充填工程S4では、まず、配線用めっき工程S2及び電極形成工程S3で基材2の導電性パターン3及び電極4が配置された一面2aに基材2と樹脂層8の樹脂素材の組み合わせに応じて接着層ADを形成するバインダーインクを塗布する。バインダーインクは、接着性樹脂を含み、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スプレーコート、筆塗り等で塗布され、基材2と二次モールドされる樹脂層8との接着性を向上させる。
【0090】
次に、
図9に示すように、外部接続端子5を、二次モールド成形用金型に位置決めしてセットした状態で固定側型KA、可動側型KBを閉じて樹脂をキャビティCAに充填する。外部接続端子5は端子部5aが固定孔KAaに固定される。これにより、外部接続端子5を位置精度よく配置できる。そして、電極4上に流路となる凹部7を形成し基材2の一面2aを覆う本体部81と、基材2の一面2a側に突出した筒形状を有し、筒の内部に外部接続端子5の端子部5aが露出するように囲むハウジング部82とが一体となった樹脂層8が形成される。
尚、基材2が、
図2に示すように、フィルム基材である場合、樹脂層8を二次モールドする前に、導電性パターン3が配置された一面2aとは反対側の他面2bを覆う第2の樹脂層8Aをインサート成形しておくことが望ましい。
【0091】
また、基材2が熱成形等で賦形可能な熱可塑性樹脂からなるフィルムである場合は、
図10に示すように、基材2と外部接続端子5を二次モールド成形用金型にセットした状態で、固定側型KA、可動側型KBを閉じて基材2の電極4が配置された領域を三次元形状に賦形して凹部7の一部を形成する。そして、樹脂をキャビティCAに充填することで厚さ方向に屈曲した基材2とキャビティCAに充填された樹脂で凹部7Aを形成する。
【0092】
このように、導電性パターン3と電極4が配置された基材2及び外部接続端子5とともに金型に位置決めして載置した状態で樹脂層8を二次モールドすることで、導電性パターン3が形成された基材2上に電極4及び外部接続端子5を位置精度よく配置することができる。
【0093】
(電気的接合工程)
電気的接合工程S5では、基材2上に形成された導電性パターン3上に外部接続端子5及び必要に応じて発光素子21等の電子部品を接合材6としてのはんだで接合するために、まず、基材2の導電性パターン3が配置された一面2a側にソルダーレジストを例えばスクリーン印刷によって塗布する。
次に、導電性パターン3、外部接続端子5のアンカー部5b、発光素子21のリード部にはんだペーストを塗布する。はんだペーストの塗布は、ステンシル印刷装置、スクリーン印刷装置、ディスペンサー装置等の公知の装置を用いて行うことができる。本実施形態においては、ディスペンサー装置を用いてはんだペーストを塗布する。
【0094】
そして、はんだペーストを塗布後、はんだを溶融、固化させて、導電性パターン3上にはんだを介して外部接続端子5のアンカー部5b及び発光素子21を電気的に接合する。
基材2が熱成形等で変形可能な熱可塑性樹脂からなるフィルムである場合は、その軟化点が低いが、例えば、はんだに低温はんだを用いてこてはんだ付けすることで、基材2は電気的接合工程S5の熱によって溶融又はその他の変形をすることはない。
また、はんだ付けは、レーザーはんだ付けや光焼成はんだ付けを用いてもよい。この場合は、非接触で基材2に負荷を与えないことから、はんだは特に低温はんだに限らず、通常のはんだでもよい。
【0095】
(封止工程)
封止工程S6では、予め容易された蓋体9を凹部7の開口部7aを塞ぐように樹脂層8に載置して、レーザー溶着、超音波溶着等により樹脂層8と接着する。また、必要に応じて蓋体9と樹脂層8との間に、ゴムパッキンP、接着剤等を挟み込んで、締め付けネジSで固定してもよい(
図1、
図2、
図5 参照)。
【0096】
このように、本実施形態に係るフローセル1によれば、導電性パターン3及び電極4が形成された基材2上に流路としての凹部7を位置精度よく形成するとともに液漏れを抑制しつつ低コスト化することができる。
基材と、基材の一面に配置された導電性パターンと、導電性パターンの一端に連続して形成された複数の電極と、導電性パターンと電気的に接合され基材の外部に設けられた外部素子とを電気的に接続するための外部接続端子と、電極上に流路となる凹部を形成し基材と一体化して基材の一面を覆う樹脂層と、凹部を液密に覆う蓋体と、を備えた。