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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6963269
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】放熱基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   H01L23/36 C
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2021-531260(P2021-531260)
(86)(22)【出願日】2020年12月28日
(86)【国際出願番号】JP2020049094
【審査請求日】2021年5月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514015019
【氏名又は名称】エレファンテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】312003595
【氏名又は名称】タカハタプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162341
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬崎 幸典
(72)【発明者】
【氏名】杉本 雅明
(72)【発明者】
【氏名】横山 英明
(72)【発明者】
【氏名】老田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 清
【審査官】 井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−097329(JP,A)
【文献】 特開2011−124251(JP,A)
【文献】 特開2005−135969(JP,A)
【文献】 特開平11−284094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂からなり導電性パターンが配置された基材と、
前記基材を貫通して配置された発熱体と、
前記基材の前記導電性パターンが配置された面に配置され、前記発熱体から伝達される熱を外部に放出する放熱体と、
前記基材の一面を覆い前記放熱体を前記発熱体に密着して接触するように前記基材と一体的に固定する樹脂体と、
前記発熱体と前記導電性パターンを電気的に接合する接合体と、を備えた、
ことを特徴とする放熱基板。
【請求項2】
樹脂からなり導電性パターンが配置された基材と、
前記基材を貫通して配置された発熱体と、
前記発熱体から伝達される熱を外部に放出する放熱体と、
前記基材の一面を覆い前記放熱体を前記発熱体に密着して接触するように前記基材と一体的に固定する樹脂体と、
前記発熱体と前記導電性パターンを電気的に接合する接合体と、を備え、
前記放熱体は、前記樹脂体の側面に配置されている、
ことを特徴とする放熱基板。
【請求項3】
樹脂からなる変形可能なフィルムであり、立体的な形状に賦形され、導電性パターンが配置された基材と、
前記基材を貫通して配置された発熱体と、
前記発熱体から伝達される熱を外部に放出する放熱体と、
前記基材の一面を覆い前記放熱体を前記発熱体に密着して接触するように前記基材と一体的に固定する樹脂体と、
前記発熱体と前記導電性パターンを電気的に接合する接合体と、を備えた、
ことを特徴とする放熱基板。
【請求項4】
樹脂からなり導電性パターンが配置された基材と、
前記基材を貫通して配置された発熱体と、
熱伝導率が1W/m・K以上の熱伝導性樹脂からなり、前記発熱体から伝達される熱を外部に放出する放熱体と、
前記基材の一面を覆い前記放熱体を前記発熱体に密着して接触するように前記基材と一体的に固定する樹脂体と、
前記発熱体と前記導電性パターンを電気的に接合する接合体と、を備えた、
ことを特徴とする放熱基板。
【請求項5】
前記樹脂体は、光透過性を有する、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の放熱基板
【請求項6】
前記基材の一面と前記放熱体との間に熱伝導性接着層が配置されている、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の放熱基板。
【請求項7】
前記基材の一面と前記樹脂体との間にバインダー層が設けられている、
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の放熱基板。
【請求項8】
前記発熱体と前記放熱体との間に熱伝導性接着層が設けられている、
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の放熱基板。
【請求項9】
前記発熱体は、発光素子、半導体デバイス、コンデンサ、抵抗チップのいずれかを含む、
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の放熱基板。
【請求項10】
樹脂からなり導電性パターンが配置された基材と、
前記基材を貫通して配置された発熱体と、
前記基材の前記導電性パターンが配置された面に配置され、前記発熱体から伝達される熱を外部に放出する放熱体と、
前記基材の一面を覆い前記放熱体を前記発熱体に密着して接触するように前記基材と一体的に固定する樹脂体と、
前記発熱体と前記導電性パターンを電気的に接合する接合体と、を備える放熱基板の製造方法であって、
前記基材を準備する工程と、
前記基材に貫通孔を形成する工程と、
前記基材上に前記導電性パターンを配置する工程と、
前記貫通孔が形成され前記導電性パターンが配置された前記基材と前記発熱体と前記放熱体を金型に載置して前記樹脂体を射出成形する工程と、
前記導電性パターンと前記発熱体とを電気的に接合する工程と、を含む、
ことを特徴とする放熱基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル配線基板に発光ダイオードのダイスを実装する発光ダイオード照明モジュ
ールにおいて、フレキシブル配線基板を貫通して設けられ、発光ダイオードのダイスを搭載するヒートスプレッダを備え、ダイスとフレキシブル配線基板が接続される接続部の範囲まで、ヒートスプレッダが延長されている発光ダイオード照明モジュールが知られている(特許文献1)。
【0003】
第一の面と第二の面を備えるベース基材と、第一の面上に形成された導電路と、第一の面から第二の面までを貫通する貫通孔と、貫通孔に挿入され、少なくとも一部が第一の面から突出している放熱部材と、放熱部材の側面を覆うとともに、貫通孔の内周面と、この内周面に囲まれた放熱部材の外周面との間に隙間なく介在する熱伝導性樹脂組成物と、第一の面から突出している放熱部材を覆う金属層と、を有し、金属層の外側表面と導電路の外側表面とがほぼ同一平面上にある放熱基板も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−136224号公報
【特許文献2】国際公開WO2018/123480
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、コストを削減しつつ、安定した密着性を有するとともに全体を薄型化することができる立体的な放熱基板、及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の放熱基板は、
樹脂からなり導電性パターンが配置された基材と、
前記基材を貫通して配置された発熱体と、
前記基材の前記導電性パターンが配置された面に配置され、前記発熱体から伝達される熱を外部に放出する放熱体と、
前記基材の一面を覆い前記放熱体を前記発熱体に密着して接触するように前記基材と一体的に固定する樹脂体と、
前記発熱体と前記導電性パターンを電気的に接合する接合体と、を備えた、、
ことを特徴とする。
【0009】
前記課題を解決するために、請求項に記載の放熱基板
樹脂からなり導電性パターンが配置された基材と、
前記基材を貫通して配置された発熱体と
前記発熱体から伝達される熱を外部に放出する放熱体と、
前記基材の一面を覆い前記放熱体を前記発熱体に密着して接触するように前記基材と一体的に固定する樹脂体と、
前記発熱体と前記導電性パターンを電気的に接合する接合体と、を備え、
前記放熱体は、前記樹脂体の側面に配置されている、
ことを特徴とする。
【0011】
前記課題を解決するために、請求項に記載の放熱基板
樹脂からなる変形可能なフィルムであり、立体的な形状に賦形され、導電性パターンが配置された基材と、
前記基材を貫通して配置された発熱体と、
前記発熱体から伝達される熱を外部に放出する放熱体と、
前記基材の一面を覆い前記放熱体を前記発熱体に密着して接触するように前記基材と一体的に固定する樹脂体と、
前記発熱体と前記導電性パターンを電気的に接合する接合体と、を備えた、
ことを特徴とする。
【0012】
請求項に記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1項に記載の放熱基板において、
前記樹脂体は、光透過性を有する、
ことを特徴とする。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1項に記載の放熱基板において、
前記基材の一面と前記放熱体との間に熱伝導性接着層が配置されている、
ことを特徴とする。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1項に記載の放熱基板において、
前記基材の一面と前記樹脂体との間にバインダー層が設けられている、
ことを特徴とする。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1項に記載の放熱基板において、
前記発熱体と前記放熱体との間に熱伝導性接着層が設けられている、
ことを特徴とする。
【0016】
前記課題を解決するために、請求項に記載の放熱基板
樹脂からなり導電性パターンが配置された基材と、
前記基材を貫通して配置された発熱体と
熱伝導率が1W/m・K以上の熱伝導性樹脂からなり、前記発熱体から伝達される熱を外部に放出する放熱体と、
前記基材の一面を覆い前記放熱体を前記発熱体に密着して接触するように前記基材と一体的に固定する樹脂体と、
前記発熱体と前記導電性パターンを電気的に接合する接合体と、を備えた、
ことを特徴とする。
【0017】
前記課題を解決するために、請求項10に記載の放熱基板の製造方法は、
樹脂からなり導電性パターンが配置された基材と、
前記基材を貫通して配置された発熱体と、
前記基材の前記導電性パターンが配置された面に配置され、前記発熱体から伝達される熱を外部に放出する放熱体と、
前記基材の一面を覆い前記放熱体を前記発熱体に密着して接触するように前記基材と一体的に固定する樹脂体と、
前記発熱体と前記導電性パターンを電気的に接合する接合体と、を備える放熱基板の製造方法であって、
前記基材を準備する工程と、
前記基材に貫通孔を形成する工程と、
前記基材上に前記導電性パターンを配置する工程と、
前記貫通孔が形成され前記導電性パターンが配置された前記基材と前記発熱体と前記放熱体を金型に載置して前記樹脂体を射出成形する工程と、
前記導電性パターンと前記発熱体とを電気的に接合する工程と、を含む、
ことを特徴とする。
【0019】
請求項に記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1項に記載の放熱基板において、
前記発熱体は、発光素子、半導体デバイス、コンデンサ、抵抗チップのいずれかを含む、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、部品点数及び組立工数を低減してコストを削減しつつ、密着性を向上させるとともに導電パターンと同じ側に発熱体及び放熱体を位置精度よく実装して全体を薄型化することができる。
【0023】
請求項に記載の発明によれば、部品点数及び組立工数を低減してコストを削減しつつ、部品の位置精度及び密着性を向上させるとともに放熱体を樹脂層の側面に配置して全体を薄型化することができる。
【0025】
請求項に記載の発明によれば、部品点数及び組立工数を低減してコストを削減しつつ、部品の位置精度及び密着性を向上させるとともに複数の発熱体と放熱体を備えた立体的な放熱基板を構成ことができる。
【0026】
請求項に記載の発明によれば、樹脂体に他の部品を一体化して部品点数を削減することができる。
【0027】
請求項に記載の発明によれば、基材に放熱体を安定して固定するとともに放熱体から基材への熱伝導を高めることができる。
【0028】
請求項に記載の発明によれば、基材と樹脂体の接着強度を高めることができる。
【0029】
請求項に記載の発明によれば、発熱体から放熱体への熱伝導を高めることができる。
【0030】
請求項に記載の発明によれば、部品の位置精度及び密着性を向上させるとともに放熱体を低コスト化することができる。
【0031】
請求項10に記載の発明によれば、部品点数及び組立工数を低減してコストを削減しつつ、密着性を向上させるとともに全体を薄型化することができる。
【0033】
請求項に記載の発明によれば、実装される様々な発熱体及び導電性パターンからの熱を放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1Aは第1実施形態に係る放熱基板を発熱体側に視点を置いて示す斜視図、図1Bは第1実施形態に係る放熱基板の一例を示す断面模式図である。
図2図2Aは発熱体の一例を示す平面模式図、図2Bは断面模式図である。
図3図3Aは変形例1に係る放熱基板を発熱体側に視点を置いて示す斜視図、図3Bは変形例1に係る放熱基板の一例を示す断面模式図である。
図4図4Aは変形例2に係る放熱基板を発熱体側に視点を置いて示す斜視図、図4Bは変形例2に係る放熱基板の一例を示す断面模式図である。
図5図5Aは変形例3に係る放熱基板を発熱体側に視点を置いて示す斜視図、図5Bは変形例3に係る放熱基板の一例を示す断面模式図である。
図6】変形例4に係る放熱基板の一例を示す断面模式図である。
図7】放熱基板の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図である。
図8】導電性パターンが配置された基材、発熱体及び放熱体を樹脂体を充填する金型にセットした状態を示す断面模式図である。
図9】基材の準備工程から発熱体と導電性パターンを電気的に接合するまでの各工程を示す図である。
図10】導電性パターンが配置された基材、複数の発熱体及び放熱体を樹脂体を充填する金型にセットして基材の連結部を3次元形状に賦形した状態を示す断面模式図である。
図11図11Aは第2実施形態に係る放熱基板を発熱体側に視点を置いて示す斜視図、図11Bは第2実施形態に係る放熱基板の一例を示す断面模式図である。
図12】第2実施形態に係る放熱基板の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図である。
図13】貫通孔が形成され導電性パターンが配置された基材、発熱体及び放熱体を樹脂体を充填する金型にセットした状態を示す断面模式図である。
図14】基材の準備工程から発熱体と導電性パターンを電気的に接合するまでの各工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に図面を参照しながら、本発明の実施形態の具体例を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
尚、以下の図面を使用した説明において、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【0036】
「第1実施形態」
(1)放熱基板の全体構成
図1Aは本実施形態に係る放熱基板1を発熱体側に視点を置いて示す斜視図、図1Bは本実施形態に係る放熱基板1の一例を示す断面模式図、図2Aは発熱体4の一例を示す平面模式図、図2Bは断面模式図である。
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る放熱基板1の構成について説明する。
【0037】
放熱基板1は、図1に示すように、樹脂からなり導電性パターン3が配置された基材2と、基材2を貫通して配置された発熱体4と、発熱体4から伝達される熱を外部に放出する放熱体5と、基材2の一面を覆い放熱体5を発熱体4に密着して接触するように基材2と一体的に固定する樹脂体6と、発熱体4と導電性パターン3を電気的に接合する接合体7と、を備えて構成されている。
【0038】
(基材)
本実施形態において使用する導電性パターン3が形成される基材2は、絶縁性を有し、後述する樹脂体6との接着性を有する基材が好ましく、樹脂からなる基材(以下樹脂基材という)を使用することができる。なお、樹脂基材には、下記の変形可能なフィルム基材も含まれる。
【0039】
樹脂基材の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ナイロン6−10、ナイロン46などのポリアミド(PA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
特にポリエステルがより好ましく、さらにその中でもポリエチレンテレフタレート(PET)が経済性、電気絶縁性、耐薬品性等のバランスが良く最も好ましい。
【0040】
基材2は、変形可能なフィルム基材であってもよく、フィルム基材上に導電性パターン3を配置して変形可能なフィルム基板としてもよい。
ここで、「変形可能なフィルム基材」は、導電性パターン3を配置後に変形できる、すなわち、熱成形、真空成形または圧空成形等によって実質的に平坦な2次元形状から実質的に3次元形状に形成されることができる基材を意味する。
【0041】
樹脂基材としては、融点Tmが存在する場合は150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましい。また、ガラス転移点Tgの範囲は20℃〜250℃が好ましく、50℃〜200℃がより好ましく、70℃〜150℃が最も好ましい。ガラス転移点Tgが低すぎる場合、導電性パターン3の形成時に基材2の歪みが大きくなる虞がある。
【0042】
基材2の厚み(mm)は特に制限されないが、取り扱い性及び薄型化のバランスの点から、樹脂基材では0.01〜3mmが好ましく、0.02〜1mmがより好ましく、0.03〜0.1mmが更に好ましい。
特にフィルム基材では、0.005〜0.25mmが好ましく、0.01〜0.2mmがより好ましく、0.05〜0.188mmが最も好ましい。基材2の厚みが薄すぎる場合、強度が不十分になるとともに、導電性パターン3のめっき工程時に基材2の歪みが大きくなる虞がある。
【0043】
基材2の表面には、金属ナノ粒子等の触媒インクを均一に塗布するために、表面処理を施すことが好ましい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、溶剤処理、プライマー処理を用いることができる。
【0044】
(導電性パターン)
基材2の表面に導電性パターン3を配置する場合、さきに、金属めっき成長のきっかけとなる金属ナノ粒子等の触媒からなる下地層(不図示)を所定のパターン状に形成する。
下地層は、基材2上に金属ナノ粒子等の触媒インクを塗布したあと、乾燥および焼成を行うことにより形成する。
【0045】
下地層の厚み(μm)は、0.1〜20μmが好ましく、0.2〜5μmがさらに好ましく、0.5〜2μmが最も好ましい。下地層が薄すぎると、下地層の強度が低下するおそれがある。また、下地層が厚すぎると、金属ナノ粒子は通常の金属よりも高価であるため、製造コストが増大する虞がある。
【0046】
触媒の材料としては、金、銀、銅、パラジウム、ニッケルなどが用いられ、導電性の観点から金、銀、銅が好ましく、金、銀に比べて安価な銅が最も好ましい。
【0047】
触媒の粒子径(nm)は1〜500nmが好ましく、10〜100nmがより好ましい。粒子径が小さすぎる場合、粒子の反応性が高くなりインクの保存性・安定性に悪影響を与える虞がある。粒子径が大きすぎる場合、薄膜の均一形成が困難になるとともに、インクの粒子の沈殿が起こりやすくなる虞がある。
【0048】
導電性パターン3は、下地層の上に電解めっきまたは無電解めっきにより形成される。めっき金属としては、銅、ニッケル、錫、銀、金などを用いることができるが、伸長性、導電性および価格の観点から銅を用いることが最も好ましい。
【0049】
めっき層の厚さ(μm)は、0.03〜100μmが好ましく、1〜35μmがより好ましく、3〜18μmが最も好ましい。めっき層が薄すぎると、機械的強度が不足するとともに、導電性が実用上十分に得られない虞がある。めっき層が厚すぎると、めっきに必要な時間が長くなり、製造コストが増大する虞がある。
【0050】
(発熱体)
放熱対象となる発熱体としては、特に限定されないが、放熱基板1に実装された、例えば、発光素子としてのLED、半導体デバイス、ディスプレイ、、電灯、自動車用パワーモジュール及び産業用パワーモジュール、コンデンサ、抵抗チップ等を挙げることができる。
【0051】
本実施形態においては、発熱体4の一例として、放熱基材付きパワーLED(以降単にLEDと記す)4Aを実装している。LED4Aは、図2に示すように、金属製の基板である金属ベース41と、中央に開口部を有するように金属ベース41の表面に形成された囲い42と、囲い42の開口部で露出した金属ベース41の表面上に実装された複数のLEDチップ43と、金属ベース41の表面上に形成され、一端側44aが導電性パターン3と電気的に接合され他端側44bがLEDチップ43とワイヤ45で電気的に接合される金属配線44と、囲い42が囲む開口部を覆う封止樹脂48とを備えている。
【0052】
(放熱体)
放熱体5は、基材2の導電性パターン3が配置された面とは反対側の一面2a側に配置されている。
放熱体5としては、例えば、アルミ又は銅のフィン、板等を利用したヒートシンク、ヒートパイプに接続されているアルミ又は銅のブロック、内部に冷却液体をポンプで循環させているアルミ又は銅のブロック、及びペルチェ素子ならびにこれを備えたアルミ又は銅のブロック等が挙げられる。
本実施形態においては、図1Bに示すように、放熱体5は、発熱体4としてのLED4Aの金属ベース41と接触してLED4Aで発生する熱を熱伝導によって受け取るベース体51と、ベース体51に短冊状に立設された放熱フィン42からなる、アルミニウム、銅等の金属製ヒートシンクである。
【0053】
また、放熱体5は、熱伝導率が1(W/m・K)以上の熱伝導性樹脂からなるヒートシンクであってもよい。熱伝導性樹脂としては、例えば、粒子状又はフィラー状の炭素系材料からなる高熱伝導性材料を所定の基材樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、液晶ポリマー(LCP)、熱可塑性エラストマー(TPE)等の樹脂に混合した熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの熱伝導性樹脂は、熱伝導率が概ね1W/m・Kないし10W/m・Kであり、アルミニウム、銅等の金属材料に比べて低いが、放熱体5を金属製に比べて低コスト化することができる。
【0054】
発熱体4と放熱体5との間には熱伝導性接着層8が設けられている。熱伝導性接着層8を介して発熱体4と放熱体5とが接触することで、発熱体4からの熱を放熱体5に効率よく伝導することができる。熱伝導性接着層8を形成する高熱伝導接着剤としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、または、各種エンジニアリングプラスチック等をベースとし銀粉、カーボン、銅、アルミニウム、鉄、セラミック等、熱伝導率の大きい材料の粉末や繊維を混入したものを使用できる。熱伝導性接着層8は、熱伝導率が高いほど好ましく、具体的には、1W/m・K以上であることが好ましい。これにより、発熱体4から放熱体5への熱伝導をより高めることが可能となる。
【0055】
(変形例1)
図3Aは変形例1に係る放熱基板1を発熱体側に視点を置いて示す斜視図、図3Bは変形例1に係る放熱基板1の一例を示す断面模式図である。
放熱体5Aは、図3に示すように、基材2の導電性パターン3が配置された一面2b側に配置されてもよい。放熱体5Aは、発熱体としてのLED4Aの金属ベース41と接触してLED4Aで発生する熱を熱伝導によって受け取るベース体51と、ベース体51から側方に延びて基材2の導電性パターン3が配置された一面2bから上方に突出するように短冊状に立設された放熱フィン52Aからなる、アルミニウム、銅等の金属製ヒートシンクである。
【0056】
放熱体5Aは、基材2の一面2aを覆う樹脂体6で発熱体4に密着して接触するように基材2と一体的に固定されている。このように、導電性パターン3と同じ側に発熱体4及び放熱体5Aを実装することでコストを抑制しつつ放熱基板1を薄型化することができる。
【0057】
(変形例2)
図4Aは変形例2に係る放熱基板1を発熱体側に視点を置いて示す斜視図、図4Bは変形例2に係る放熱基板1の一例を示す断面模式図である。
放熱体5Bは、図4に示すように、放熱フィン52Bが放熱基板1の側部1aから突出するように配置されてもよい。放熱体5Bは、発熱体としてのLED4Aの金属ベース41と接触してLED4Aで発生する熱を熱伝導によって受け取るベース体51と、ベース体51から側方に延びて樹脂体6の端面6aから突出するように短冊状に形成された放熱フィン52Bからなる、アルミニウム、銅等の金属製ヒートシンクである。
【0058】
放熱体5Bは、基材2の一面2aを覆う樹脂体6で熱伝導性接着層8を介して発熱体4に密着して接触するように基材2と一体的に固定されている。また、放熱体5Bの基材2の一面2aと接触する部分である放熱フィン52Bも熱伝導性接着層8を介して基材2と一体的に固定されている。このように、放熱体5Bを、放熱フィン52Bが放熱基板1の側部1aから突出するように実装することでコストを抑制しつつ放熱基板1の全体をより薄型化することができる。
【0059】
(樹脂体)
樹脂体6は、基材2の一面2aを覆い放熱体5を発熱体4に密着して接触するように基材2に一体的に固定している。具体的には、図1Bに示すように、放熱体5のベース体51の発熱体4の金属ベース41と接触する方向と交差する方向に突出して形成された鍔部51aと嵌り合う鉤部61を有し、全体が基材2の一面2aを覆うように形成されている。
【0060】
樹脂体6は、基材2に対して二次モールド成形可能な樹脂材料からなる熱可塑性樹脂で構成されている。具体的には、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアミド(PA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、変性ポリフェニレンオキサイト(m−PPO)、環状オレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)からなる群より選択される熱可塑性樹脂が挙げられる。樹脂体6は、機械的強度と耐熱性を有し、基材2に対する接着性の観点からPET、PCが好ましい。
【0061】
基材2と樹脂体6とを強固に接着するように、基材2の一面2aにはバインダー層ADを形成することが好ましい。バインダー層ADを形成する場合は、基材2及び樹脂体6の素材と相性のよい樹脂を含むバインダーインクが使用される。
例えば、基材2がPET樹脂フィルムで、二次成形される樹脂体6がPC、PET、PMMA、PA、ABS、PE、PP、m−PPE、m−PPO、COC、COPからなる群より選択される材料を含む場合、それぞれの樹脂材料と相溶性が高い樹脂として、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリウレタン系樹脂等からなる群より選択して使用することもできる。また、バインダー層ADの厚みは0.5〜50μmが好ましい。尚、バインダー層ADに代えて、コロナ処理、プラズマ処理、溶剤処理、プライマー処理を施してもよい。これにより、基材2と樹脂体6の接着強度を高めることができる。
【0062】
(変形例3)
図5Aは変形例3に係る放熱基板1を発熱体側に視点を置いて示す斜視図、図5Bは変形例3に係る放熱基板1の一例を示す断面模式図である。
樹脂体6は光透過性の熱可塑性樹脂材料からなる熱可塑性樹脂で構成してもよい。この場合、図5Aに示すように、発熱体としてのLED4Aは発光面が基材2に対して横向きになるように配置し、LED4Aに対して、LED4Aが発する光を受けて外部へ出射するレンズ体6Aを樹脂体6と一体に形成するようにしてもよい。これにより、放熱体5を発熱体としてのLED4Aに密着して接触するように、基材2と一体的に固定する樹脂体6にLED4Aの発する光を外部に導くレンズ体6を一体化することによりレンズ等の部品を削減することができる。なお、図5Bにおいて、放熱体5としては、放熱フィン52Bが放熱基板1の側部1aから突出するように配置されている例を示しているが、放熱体5としては、放熱基板1の使用態様に応じて、放熱フィンの配置を変更してもよい。
【0063】
(変形例4)
図6は変形例4に係る放熱基板1の一例を示す断面模式図である。
放熱基板1は、図6に示すように、発熱体としてのLED4AとLED4Aから伝達される熱を外部に放出する放熱体5が、立体的に賦形された基材2と樹脂体6からなる屈曲部1bで連結されている。
基材2が熱成形等で賦形可能な熱可塑性樹脂からなるフィルムである場合は、基材2を3次元形状に賦形した状態で樹脂体6で基材2の一面2aを覆うとともに、放熱体5をLED4Aに密着して接触するように基材2と一体的に固定することで、複数の発熱体4と放熱体5を備えた立体的な放熱基板1を構成することができる。
【0064】
(接合体)
接合体7は、導電性の線材7Aが挙げられる。導電性の線材7Aは、図2Bに示すように、発熱体としてのLEDチップ43の金属配線44の一端部44aと基材2上に配置された導電パターン3とをワイヤーボンディングにより電気的に接合する導線であり、具体的には、金、銅、銀、白金、アルミニウム又はこれらの合金の金属線を用いることができる。特に、熱抵抗などに優れる金線が好ましい。
【0065】
(2)放熱基板の製造方法
図7は放熱基板1の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図、図8は導電性パターン3が配置された基材2、発熱体4及び放熱体5を樹脂体6を充填する金型にセットした状態を示す断面模式図、図9は基材2の準備工程から発熱体4と導電性パターン3を電気的に接合するまでの各工程を示す図、図10は導電性パターン3が配置された基材2、複数の発熱体4及び放熱体5を樹脂体6を充填する金型にセットして基材2の連結部2aを3次元形状に賦形した状態を示す断面模式図である。
【0066】
放熱基板1は、図7に示すように、基材2の準備工程S11と、基材2上に導電性パターン3を形成する配線用めっき工程S12と、基材2、発熱体4及び放熱体5を二次モールド用金型に位置決めして、基材2の一面を覆い放熱体5を発熱体4に密着して接触するように基材2と一体的に固定する樹脂体6を二次モールドする樹脂充填工程S13と、導電性パターン3と発熱体4とを接合体7で電気的に接合する電気的接合工程S14と、を経て製造される。
【0067】
(基材の準備工程S11)
基材の準備工程S11においては、まず、所定の形状及び大きさに形成された実質的に平坦なフィルム状の基材2に放熱体5のベース体51が基材2の導電性パターン3が形成された側に露出するように所定の貫通孔2cを形成する(図9A 参照)。また、図3に示す変形例1に係る放熱基板1においては、放熱フィン52Aが貫通して露出するように所定の貫通孔(不図示)を形成する。
【0068】
そして、基材2上に導電性パターン3を配置するために、基材2上に金属めっき成長のきっかけとなる金属ナノ粒子等の触媒粒子からなる下地層を所定のパターン状に形成する。尚、基材2は、金属ナノ粒子等の触媒粒子からなる触媒インクを均一に塗布するために、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、溶剤処理、プライマー処理等の表面処理を施すことが好ましい。
【0069】
基材2上に金属ナノ粒子等の触媒粒子からなる触媒インクを塗布する方法としては、インクジェット印刷方式、シルクスクリーン印刷方式、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、フレキソ印刷方式、ローラーコーター方式、刷毛塗り方式、スプレー方式、ナイフジェットコーター方式、パッド印刷方式、グラビアオフセット印刷方式、ダイコーター方式、バーコーター方式、スピンコーター方式、コンマコーター方式、含浸コーター方式、ディスペンサー方式、メタルマスク方式が挙げられるが、本実施形態においてはインクジェット印刷方式を用いている。
【0070】
具体的には、1000cps以下、例えば、2cpsから30cpsの低粘度の触媒インクをインクジェット印刷方式で塗布した後、溶媒を揮発させ金属ナノ粒子のみを残す。その後、溶媒を除去し(乾燥)、金属ナノ粒子を焼結させる(焼成)。
焼成温度は、100°C〜300°Cが好ましく、150°C〜200°Cがより好ましい。焼成温度が低すぎると、金属ナノ粒子同士の焼結が不十分となるとともに、金属ナノ粒子以外の成分が残ることで、密着性が得られない虞がある。また、焼成温度が高すぎると、基材2の劣化や歪みが発生する虞がある。
【0071】
(配線用めっき工程S12)
基材2上に形成された下地層に対し、電解めっきまたは無電解めっきを行うことにより、下地層の表面および内部にめっき金属を析出させ導電性パターン3を配置する(図9B 参照)。めっき方法は公知のめっき液およびめっき処理と同様であり、具体的に無電解銅めっき、電解銅めっきが挙げられる。
【0072】
(樹脂充填工程S13)
樹脂充填工程S13では、まず、配線用めっき工程S12で基材2の導電性パターン3が配置された面とは反対側の一面2aに基材2と樹脂体6の樹脂素材の組み合わせに応じてバインダー層ADを形成するバインダーインクを塗布する(図9C 参照)。バインダーインクは、接着性樹脂を含み、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スプレーコート、筆塗り等で塗布され、基材2と二次モールドされる樹脂体6との接着性を向上させる。
【0073】
次に、図8に示すように、導電性パターン3が配置された基材2、発熱体4及び放熱体5を二次モールド成形用金型に位置決めしてセットした状態で固定側型KA、可動側型KBを閉じて樹脂をキャビティCAに充填する。発熱体4は金属ベース41の一面41aが放熱体5のベース体51上に熱伝導性接着層8を介して接着され、放熱体5が可動側型KBに固定される。これにより、発熱体4及び放熱体5を位置精度よく配置できる。そして、基材2の一面2bを覆い放熱体5を発熱体4に密着して接触するように基材2と一体的に固定する樹脂体6が形成される(図9D 参照)。
【0074】
変形例3に係る複数の発熱体4と放熱体5を備えた立体的な放熱基板1を製造する場合には、図10に示すように、導電性パターン3が配置された基材2、複数の発熱体としてのLED4A及び放熱体5を二次モールド成形用金型に位置決めした状態で、固定側型KA、可動側型KBを閉じて基材2の発熱体4及び放熱体5が配置された領域を繋ぐ連結部2aを三次元形状に賦形する。そして、樹脂をキャビティCAに充填することで厚さ方向に屈曲した基材2とキャビティCAに充填された樹脂で3次元形状の屈曲部1b(図6 参照)を形成する。
【0075】
(電気的接合工程S14)
電気的接合工程S14では、導電性パターン3とLEDチップ43の金属配線44の一端部44a(図2B 参照)を接合体7としての導電性の線材7Aで超音波利用のワイヤーボンディング方法で電気的及び機械的に接合する(図9E 参照)。導電性の線材としては、金ワイヤー、アルミワイヤーなどを使用することができるが、アルミニウムを主成分とするアルミワイヤーを用いることで、ワイヤーボンディング時の熱によって、基材2が溶融したり変形することを抑制することができる。
【0076】
このように、本実施形態に係る放熱基板1の製造方法によれば、部品点数及び組立工数を低減してコストを削減しつつ、密着性を向上させるとともに全体を薄型化することができる。
【0077】
「第2実施形態」
図11Aは本実施形態に係る放熱基板1Aを発熱体側に視点を置いて示す斜視図、図11Bは放熱基板1Aの一例を示す断面模式図である。
本実施形態に係る放熱基板1Aは、発熱体4を、基材2を貫通して配置された放熱体5の一面となるベース体51に密着して接触するように後実装して導電性パターン3と電気的に接合する点で、発熱体4が先に実装される第1実施形態に係る放熱基板1とは異なっている。従って、第1実施形態に係る放熱基板1と共通する構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0078】
(1)放熱基板の全体構成
放熱基板1Aは、図11Aに示すように、樹脂からなり導電性パターン3が配置された基材2と、基材2を貫通して配置された放熱体5と、基材2の一面を覆い放熱体5の一面が基材2から露出するように放熱体5を基材2と一体的に固定する樹脂体6と、放熱体5の一面と密着して接触し導電性パターン3と電気的に接合された発熱体4と、を備えて構成されている。
【0079】
(発熱体)
本実施形態においては、発熱体4の一例として、パワーLED4B(以降単にLEDと記す)を実装している。LED4Bは、図11Bに示すように、反射キャビティを有するケース体41Bと、LEDチップ43を支えるチップ取付け部42Bと、金属リードフレーム44Bと、チップ取付け部42Bの表面上に実装されたLEDチップ43と、チップ取付け部42Bと接触してLEDチップ43の熱を熱伝導によって受け取る伝熱部45Bと、金属リードフレーム44Bの一端に設けられた外部端子46と、LEDチップ43を覆うドーム状の封止体47とを備えて構成されている。
【0080】
(放熱体)
放熱体5は、発熱体としてのLED4Bの伝熱部45Bと接触してLED4Bで発生する熱を熱伝導によって受け取るベース体51と、ベース体51に短冊状に立設された放熱フィン42からなる、アルミニウム、銅等の金属製ヒートシンクである。
また、放熱体5は、熱伝導率が1(W/m・K)以上の熱伝導性樹脂からなるヒートシンクであってもよい。
【0081】
LED4Bの伝熱部45Bと放熱体5のベース体51との間には熱伝導性接着層8が設けられている。熱伝導性接着層8を介して発熱体4と放熱体5とが接触することで、発熱体4からの熱を放熱体5に効率よく伝導することができる。
また、基材2と放熱体5との間にも熱伝導性接着層8が設けられ、基材2の熱を放熱体5へ効率よく伝導するようになっている。特に、基材2上に配置された導電性パターン3の熱は放熱体5へ伝導され外部へ放熱される。
【0082】
(接合体)
後実装される発熱体4としてのLED4Bの外部端子46と導電性パターン3とを電気的に接合する接合体としては、はんだ7Bが挙げられる。はんだ7Bは、基材2の軟化点より低温の溶融温度を有する低温はんだが望ましく、例えば、錫(Sn)とビスマス(Bi)との合金(SnBi)、錫(Sn)とビスマス(Bi)とニッケル(Ni)と銅(Cu)との合金(SnBiNiCu)、錫(Sn)とビスマス(Bi)と銅(Cu)とアンチモン(Sb)との合金(SnBiCuSb)、錫(Sn)と銀(Ag)とビスマス(Bi)との合金(SnAgBi)、錫(Sn)とインジウム(In)との合金(SnIn)、錫(Sn)とインジウム(In)とビスマス(Bi)との合金(SnInBi)、又は、基材2の軟化点と比較して相対的に低い融点を持つその他の合金とビスマス(Bi)及び/又はインジウム(In)とのその他の組み合わせとすることができ、例えば基材2としてポリエチレンテレフタレート(PET)を使用する場合は、基材2の軟化点より低い120〜140℃の融点を有することが望ましい。
【0083】
基材2の軟化点よりも低い融点を持つはんだペーストを用いることにより、基材2は溶融又はその他の変形をしない一方で、はんだペーストは溶融して導電性パターン3と化学的かつ物理的に接合し得る状態になる。そして、はんだが固化して、はんだを介して導電性パターン3に外部端子46が電気的に接合される。
【0084】
また、外部端子46と導電性パターン3との接合には、レーザーはんだ付けや光焼成はんだ付けを用いてもよい。この場合は、こてはんだ付けに比べて、非接触で基材2に負荷を与えないことから、はんだ7Bとしては特に低温はんだに限らず、通常のはんだでもよい。
【0085】
(2)放熱基板の製造方法
図12は本実施形態に係る放熱基板1Aの製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図、図13は貫通孔2cが形成され導電性パターン3が配置された基材2、発熱体4及び放熱体5を樹脂体6を充填する金型にセットした状態を示す断面模式図、図14は基材2の準備工程から発熱体4と導電性パターン3を電気的に接合するまでの各工程を示す図である。
【0086】
放熱基板1は、図12に示すように、基材2の準備工程S21と、基材2上に導電性パターン3を形成する配線用めっき工程S22と、基材2及び放熱体5を二次モールド用金型に位置決めして、基材2の一面を覆い、放熱体5の一面が基材2から露出するように放熱体5を基材2と一体的に固定する樹脂体6を形成するように、樹脂を二次モールドする樹脂充填工程S23と、放熱体5と発熱体4を密着させて接着する発熱体接着工程S24と、導電性パターン3と発熱体4とを接合体7で電気的に接合する電気的接合工程S25と、を経て製造される。
【0087】
(基材の準備工程S21)
基材の準備工程S21においては、まず、所定の形状及び大きさに形成された実質的に平坦なフィルム状の基材2に放熱体5のベース体51の一部が基材2の導電性パターン3が形成された側に露出するように所定の貫通孔2cを形成する(図14A 参照)。
【0088】
そして、基材2上に導電性パターン3を配置するために、基材2上に金属めっき成長のきっかけとなる金属ナノ粒子等の触媒粒子からなる下地層を所定のパターン状に形成する。尚、基材2は、金属ナノ粒子等の触媒粒子からなる触媒インクを均一に塗布するために、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、溶剤処理、プライマー処理等の表面処理を施すことが好ましい。
【0089】
(配線用めっき工程S22)
基材2上に形成された下地層に対し、電解めっきまたは無電解めっきを行うことにより、下地層の表面および内部にめっき金属を析出させ導電性パターン3を配置する(図14B 参照)。めっき方法は公知のめっき液およびめっき処理と同様であり、具体的に無電解銅めっき、電解銅めっきが挙げられる。
【0090】
(樹脂充填工程S23)
樹脂充填工程S23では、まず、配線用めっき工程S22で基材2の導電性パターン3が配置された面とは反対側の一面2aに基材2と樹脂体6の樹脂素材の組み合わせに応じてバインダー層ADを形成するバインダーインクを塗布する(図14C 参照)。バインダーインクは、接着性樹脂を含み、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スプレーコート、筆塗り等で塗布され、基材2と二次モールドされる樹脂体6との接着性を向上させる。また、基材2の一面2aが放熱体5のベース体51と接する領域には、熱伝導性接着層8を塗布することにより、基材2から放熱体5への熱伝導をより高め、基材2上に配置された導電性パターン3等の熱を放熱体5を介して放熱することが可能となる。
【0091】
次に、図13に示すように、導電性パターン3が配置された基材2及び放熱体5を、二次モールド成形用金型に位置決めしてセットした状態で固定側型KA、可動側型KBを閉じて樹脂をキャビティCAに充填する。これにより、基材2の導電性パターン3が配置された面とは反対側の一面2aを覆い放熱体5のベース体51の一部が基材2から露出するように基材2と一体的に固定する樹脂体6が形成される(図14D 参照)。
【0092】
(発熱体接着工程S24)
発熱体4としてのLED4Bは伝熱部45Bが基材2から露出する放熱体5のベース体51上に熱伝導性接着層8を介して接着される(図14E 参照)。本実施形態においては、熱伝導性接着層8として、アクリル系粘着剤を含む熱伝導性両面テープを用いてもよい。熱伝導性両面テープを用いることで、LED4Bの放熱体5のベース体51上への接着が容易となる。
【0093】
(電気的接合工程S25)
電気的接合工程S25では、基材2上に形成された導電性パターン3上にLED4Bの外部端子46を接合体7としてのはんだ7Bで接合するために、まず、基材2の導電性パターン3が配置された一面2b側にソルダーレジストを例えばスクリーン印刷によって塗布する。
次に、導電性パターン3、LED4Bの外部端子46にはんだペーストを塗布する。はんだペーストの塗布は、ステンシル印刷装置、スクリーン印刷装置、ディスペンサー装置等の公知の装置を用いて行うことができる。本実施形態においては、ディスペンサー装置を用いてはんだペーストを塗布する。
【0094】
そして、はんだペーストを塗布後、はんだを溶融、固化させて、導電性パターン3上にはんだ7Bを介してLED4Bの外部端子46を電気的に接合する。
基材2が熱成形等で変形可能な熱可塑性樹脂からなるフィルムである場合は、その軟化点が低いが、例えば、はんだ7Bとして低温はんだを用いてこてはんだ付けすることで、基材2は電気的接合工程S25の熱によって溶融又はその他の変形をすることはない。
また、はんだ付けは、レーザーはんだ付けや光焼成はんだ付けを用いてもよい。この場合は、非接触で基材2に負荷を与えないことから、はんだ7Bとしては特に低温はんだに限らず、通常のはんだでもよい。
【0095】
このように、本実施形態に係る放熱基板1の製造方法によれば、部品点数及び組立工数を低減してコストを削減しつつ、部品の位置精度及び密着性を向上させるとともに全体を薄型化することができる。
【符号の説明】
【0096】
1、1A・・・放熱基板
2・・・基材
3・・・導電性パターン
4・・・発熱体
4A、4B・・・LED
41・・・金属ベース
45B・・・伝熱部
5、5A、5B・・・放熱体
51・・・ベース体
52、52B・・・放熱フィン
6・・・樹脂体
6A・・・レンズ体
7・・・接合体
7A・・・線材
7B・・・はんだ
8・・・熱伝導性接着層
AD・・・バインダー層
【要約】
コストを削減しつつ、安定した密着性を有するとともに全体を薄型化することができる立体的な放熱基板、及びその製造方法を提供する。
樹脂からなり導電性パターンが配置された基材と、基材を貫通して配置された発光素子、半導体デバイス、コンデンサ、抵抗チップのいずれかを含む発熱体と、発熱体から伝達される熱を外部に放出する放熱体と、基材の一面を覆い放熱体を発熱体に密着して接触するように基材と一体的に固定する樹脂体と、発熱体と導電性パターンを電気的に接合する接合体と、を備えた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14