(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被験者に照射した電波の反射波をドップラーレーダーで得、得られた受信信号から、心拍成分が含まれる周波数帯域と呼吸成分が含まれる周波数帯域とを抽出する第1のフィルタ処理と、
前記第1のフィルタ処理で抽出された心拍成分及び呼吸成分から、呼吸成分が含まれる周波数帯域を抽出し、心拍成分が含まれる周波数帯域を除去する第2のフィルタ処理と、
前記第1のフィルタ処理で抽出された心拍成分及び呼吸成分から、前記第2のフィルタ処理で抽出された周波数成分を減算して、心拍成分を抽出する減算処理と、
前記第2のフィルタ処理で抽出された信号をデジタル変換すると共に、前記減算処理で抽出された信号をデジタル変換するデジタル変換処理と、
前記デジタル変換処理により変換された信号を解析して、前記被験者の心拍及び呼吸の計測結果を得るデータ処理と、を含み、
前記データ処理では、前記被験者の呼吸に対応して変動する谷の箇所を検出して1呼吸期間を検出し、さらに1呼吸期間の吸気期間と呼気期間を検出すると共に、
前記吸気期間に検出された1心拍の平均期間と、前記呼気期間に検出された1心拍の平均期間とを比較して、前記吸気期間に検出された1心拍の平均期間が、前記呼気期間に検出された1心拍の平均期間よりも短いとき、該当する1呼吸期間に検出された心拍が、適正な計測結果と判断する
心拍・呼吸計測方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する。)を、
図1〜
図10を参照して説明する。
[1.心拍・呼吸計測システムの全体構成]
図1は、本例の心拍・呼吸計測システムの全体構成を示すブロック図である。
本例のシステムは、心拍・呼吸計測装置100と、表示装置200と、記録装置300で構成される。心拍・呼吸計測装置100には、ドップラーレーダー10が接続され、ドップラーレーダー10で得た受信信号から、心拍・呼吸計測装置100によって被験者の心拍数及び呼吸数が計測される。
【0013】
ドップラーレーダー10は、被験者に対して所定の周波数帯の送信信号Txを送信し、被験者で反射した信号を受信信号Rxとして取得する。受信信号Rxは、心拍・呼吸計測装置100に供給される。この場合、受信信号Rxは、実数成分(I信号)と虚数成分(Q信号)とを含む。ドップラーレーダー10の構成例については後述する(
図2)。
【0014】
心拍・呼吸計測装置100は、ドップラーレーダー10から得られたI信号とQ信号とを、それぞれ別にアナログ信号処理して、呼吸成分が含まれた呼吸信号V
RRI,V
RRQと、心拍成分が含まれた心拍信号V
HRI,V
HRQとを得る。なお、正常な成人の1分間の呼吸数の基準値は12〜16回前後であり、1分間の心拍数の基準値は50〜90回である。本明細書で述べる呼吸成分や心拍成分としては、これらの基準となる範囲からある程度の幅を持たせた周波数範囲として、異常がある場合の呼吸数や心拍数を検出するようにしている。
I信号の処理系とQ信号の処理系は同一の構成であり、
図1において、I信号を処理する処理部については、符号の末尾に「I」を付加し、Q信号を処理する処理部については、符号の末尾に「Q」を付加して示す。ここではI信号を処理する構成を説明するが、Q信号も同様に処理される。
【0015】
ドップラーレーダー10から供給されたI信号は、増幅器101Iにより増幅された後、第1フィルタ102Iに供給される。第1フィルタ102Iは、I信号から呼吸成分と心拍成分が含まれる周波数帯域を抽出する第2フィルタ処理を行うバンドパスフィルタである。この第1フィルタ102Iにおいて、呼吸成分と心拍成分が含まれる周波数帯域よりも低域の帯域と高域の帯域が除去される。第1フィルタ102Iの具体例としては、例えば0.159Hzから3.18Hzまでの帯域を抽出するバンドパスフィルタとする。
【0016】
第1フィルタ102Iの出力信号V
Iは、第2フィルタ103Iに供給される。第2フィルタ103Iは、出力信号V
Iから呼吸成分が含まれる帯域を抽出する第2フィルタ処理を行うバンドパスフィルタである。この第2フィルタ103Iにより、呼吸成分が含まれる周波数帯域よりも低域の帯域と高域の帯域が除去される。第2フィルタ103Iの具体例としては、例えば0.159Hzから0.221Hzまでの帯域を抽出するバンドパスフィルタとする。
この第2フィルタ103Iにより、呼吸成分を含む信号である呼吸信号V
RRIが得られる。第2フィルタ103Iが出力する呼吸信号V
RRIは、アナログ/デジタル変換器111Iに供給され、デジタル変換処理が行われる。そして、デジタル変換されたデータがデータ処理部113に供給される。
【0017】
また、第1フィルタ102Iの出力信号V
Iは、減算器105Iに供給される。そして、この減算器105Iで、出力信号V
Iから呼吸信号V
RRIが減算される減算処理が行われ、心拍成分が含まれる信号である心拍信号V
HRIが得られる。この場合、第2フィルタ103Iが出力する呼吸信号V
RRIは、位相補正器104Iにより第2フィルタ103Iによる位相変化が補正された上で、減算器105Iに供給される。
減算器105Iで得られた心拍信号V
HRIは、アナログ/デジタル変換器112Iでデジタルデータに変換され、データ処理部113に供給される。説明は省略するが、Q信号についてもI信号と同様な処理が行われる。
【0018】
このようにして得られた呼吸信号V
RRI,V
RRQ及び心拍信号V
HRI,V
HRQは、それぞれ別のアナログ/デジタル変換器111I,111Q,112I,112Qによりデジタルデータに変換され、データ処理部113に供給される。なお、
図1では4つのアナログ/デジタル変換器111I,111Q,112I,112Qをそれぞれ別の変換器として構成したが、例えば1つのアナログ/デジタル変換器を使って、4つの信号V
RRI,V
RRQ,V
HRI,V
HRQをデジタルデータに変換するようにしてもよい。
【0019】
データ処理部113は、デジタルデータに変換された呼吸信号V
RRI,V
RRQ及び心拍信号V
HRI,V
HRQの解析処理を行い、呼吸数及び心拍数を計測する。データ処理部113で行われる解析処理の詳細については後述する。
データ処理部113における解析結果として得られた呼吸数及び心拍数は、心拍・呼吸計測装置100に接続された表示装置200に表示される。また、心拍・呼吸計測装置100には記録装置300が接続され、この記録装置300に解析結果としての呼吸数及び心拍数が記録される。
なお、
図1では表示装置200や記録装置300は、心拍・呼吸計測装置100に直接接続するようにしたが、例えば心拍・呼吸計測装置100が無線伝送部を備えて、その無線伝送部から無線伝送された呼吸数や心拍数の情報を、外部の装置が表示又は記録するようにしてもよい。
【0020】
[2.ドップラーレーダーの構成]
図2は、ドップラーレーダー10の構成例を示す。
ドップラーレーダー10は、発振器11を備える。発振器11は、例えば24GHzの信号を発振する。この発振器11が出力する発振信号は、分波器12を介して送信アンテナ13に供給され、被験者に対して送信信号Txが送信される。そして、被験者の体表面で反射した反射波としての受信信号Rxが受信アンテナ14によって受信される。
【0021】
受信アンテナ14で得た受信信号Rxは、第1ミキサ15に直接供給されると共に、π/2移相器17によりπ/2(90°)シフトした信号が第2ミキサ18に供給される。そして、発振器11からの発振信号が、分波器12及び16を介して第1ミキサ15及び第2ミキサ18に供給され、それぞれのミキサ15,18でドップラー出力が得られる。第1ミキサ15で得られるドップラー出力が、I信号になり、第2ミキサ18で得られるドップラー出力が、Q信号になる。
【0022】
発明者らが実験した結果では、呼吸による体動の変位は4〜12mmであり、心拍による体動の変位は0.2〜0.5mmであった。ドップラーレーダー10は、非接触でこれらの呼吸及び心拍による体動の変位を検出する装置である。すなわち、ドップラーレーダー10から被験者の体表面までの距離をd
0としたとき、呼吸や心拍による体動の変位での距離d
0が変動し、その距離d
0の変動を受信信号から検出する処理が行われる。
なお、ドップラーレーダー10として24GHz帯を使用するのは一例であり、その他の周波数帯の信号を送信するドップラーレーダーとしてもよい。例えば、10GHz帯を使用したドップラーレーダーとすることもできる。
【0023】
[3.心拍・呼吸計測装置のフィルタ構成及び特性]
図3は、心拍・呼吸計測装置のI信号を処理する第1フィルタ(バンドパスフィルタ)102I及び第2フィルタ(バンドパスフィルタ)103Iの構成を示す回路図である。Q信号を処理する第1フィルタ102Q及び第2フィルタ103Qについても、
図3に示す第1フィルタ102I及び第2フィルタ103Iと同じ構成である。
【0024】
バンドパスフィルタである第1フィルタ102Iの入力端子102aには、コンデンサC1と抵抗器R1の直列回路を介して、演算増幅器121の−側入力端が接続される。また、演算増幅器121の−側入力端は、抵抗器R2とコンデンサC3の並列回路を介して接地電位部に接続される。
また、演算増幅器121の+側入力端と出力端との間に、抵抗器R4が接続され、演算増幅器121の+側入力端と接地電位部との間に、抵抗器R3が接続されている。演算増幅器121の出力端に得られる信号は、端子102bから第1フィルタ102Iの出力信号として取り出されると共に、第2フィルタ103Iに供給される。
【0025】
バンドパスフィルタである第2フィルタ103Iは、第1フィルタ102Iと接続された入力部に、コンデンサC4と抵抗器R5の直列回路を介して演算増幅器122の−側入力端が接続される。また、演算増幅器122の−側入力端は、抵抗器R6とコンデンサC5の並列回路を介して接地電位部に接続される。
また、演算増幅器122の+側入力端と出力端との間に、抵抗器R8が接続され、演算増幅器122の+側入力端と接地電位部との間に、抵抗器R7が接続される。そして、演算増幅器122の出力端に得られる信号が、端子103aから第2フィルタ103Iの出力信号として取り出される。
【0026】
図4は、第1フィルタ102I及び第2フィルタ103Iの通過特性を示す図である。
図4において、横軸は周波数[Hz]、縦軸は減衰量[dB]を示す。
ここでは、バンドパスフィルタである第1フィルタ102Iは、通過帯域Faの下限周波数f
L1を0.159Hzとし、通過帯域の上限周波数f
H1を3.18Hzとしている。第1フィルタ102Iの下限周波数f
L1は、コンデンサC1と抵抗器R1との定数により決まり、上限周波数f
H1は、コンデンサC3と抵抗器R2との定数により決まる。
【0027】
また、バンドパスフィルタである第2フィルタ103Iは、通過帯域Fbの下限周波数f
L2を0.159Hzとし、通過帯域の上限周波数f
H2を0.221Hzとしている。第2フィルタ103Iの下限周波数f
L2は、コンデンサC4と抵抗器R5との定数により決まり、上限周波数f
H2は、コンデンサC5と抵抗器R6との定数により決まる。
図4に示す特性Fcは、2つのフィルタ102I及び103Iを通過した総合特性である。この2つのフィルタ102I及び103Iを通過した信号として、呼吸信号V
RRI,V
RRQを得る。なお、
図4に示す帯域Drは、呼吸成分が含まれる帯域であり、帯域Dhは、心拍成分が含まれる帯域である。
【0028】
[4.検出される信号の例]
図5は、第1フィルタ102Iの出力信号V
Iと、呼吸信号V
RRIの例を示す。
図5の横軸は時間(秒)、縦軸は電圧(V)を示す。
図5に示すように、第1フィルタ102Iの出力信号V
Iには、呼吸成分と心拍成分とが含まれている。そして、第2フィルタ103Iを通過した呼吸信号V
RRIには、心拍成分が除去され、呼吸に連動した振幅の変動が明確に現れるようになる。
【0029】
図6は、I信号から得た呼吸信号V
RRIと、Q信号から得た呼吸信号V
RRQと、被験者の人体に装着した計測器から得た呼吸信号V
xの例を示す。被験者の人体に装着した計測器は、ベルトを使って肌の上に直接取り付けて、呼吸を計測するタイプのものであり、本例の心拍・呼吸計測装置で得た呼吸信号V
RRI,V
RRQと比較のために従来の計測器で得た呼吸信号V
xを示す。
【0030】
図6に示すように、本例の心拍・呼吸計測装置で得た呼吸信号V
RRI,V
RRQは、いずれも従来の計測器で得た呼吸信号V
xと同様に被験者の呼吸状態を示した信号であり、本例の心拍・呼吸計測装置によって、呼吸数の計測が良好に行えることが分かる。
本例の心拍・呼吸計測装置のデータ処理部113は、呼吸信号V
RRIの電圧波形の谷(
図6で最もレベルが低い位置)となるタイミングt
a,t
b,t
c,t
d,・・・を検出し、その検出した谷で区切られる区間を1呼吸として判定する。具体的には、データ処理部113は、例えばタイミングt
aとタイミングt
bとの間を1呼吸、タイミングt
bとタイミングt
cとの間が次の1呼吸、というように1つ1つの呼吸期間を順に判定する。
【0031】
そして、データ処理部113は、電圧波形の谷に基づいて検出したそれぞれの呼吸期間の内で、前半の電圧が谷から高くなっている期間を吸気期間(肺に息を吸い込んでいる期間)とし、後半の電圧が谷に向かって低くなっている期間を呼気期間(肺から息を吐き出している期間)と判定する。なお、
図6の例では、2つの呼吸信号V
RRI,V
RRQの内で、I信号から得た呼吸信号V
RRIから呼吸期間を検出する例を示したが、Q信号から得た呼吸信号V
RRQから呼吸期間を検出するようにしてもよい。
【0032】
図7及び
図8は、第1フィルタ102Iの出力信号V
I(
図7)と、心拍信号V
HRI(
図8)の例を示す。これら
図7及び
図8において、横軸は時間(秒)、縦軸は電圧(V)を示す。
図7に示すように、第1フィルタ102Iの出力信号V
Iは、被験者の呼吸の周期に連動して電圧が上下するが、微少に電圧が上下する心拍成分についても含まれている。すなわち、1呼吸期間内に、心拍に連動して電圧が上下して、その上下する成分の最も高い位置であるピークt
1,t
2,t
3,・・・が現れている。
そして、
図8に示すように、減算器105Iで得られる心拍信号V
HRIは、呼吸に対応した周波数成分が除去されて、心拍のピークt
1,t
2,t
3,・・・が明確化した信号になっている。データ処理部113は、このピークt
1,t
2,t
3,・・・から心拍を判定する処理を行う。すなわち、データ処理部113は、心拍信号V
HRIから検出したピークt
1,t
2,t
3,・・・を、心拍のタイミングとする処理を行う。
【0033】
[5.呼吸及び心拍の判定処理]
図9は、データ処理部113が行う呼吸及び心拍の判定処理例を示すフローチャートである。ここでは、I信号から得た呼吸信号V
RRIと心拍信号V
HRIを使って、呼吸及び心拍を判定するものとする。
まず、データ処理部113は、呼吸信号V
RRIと心拍信号V
HRIを取得し、呼吸信号V
RRIのピーク検出(
図8に示すt
1,t
2,t
3,・・・の検出)に基づいて心拍を検出すると共に、呼吸信号V
RRIの谷から呼吸を検出する処理を行う(ステップS11)。
そして、データ処理部113は、1呼吸期間分の呼吸信号V
RRIが入力されたか否かを判断する(ステップS12)。すなわち、データ処理部113は、例えば
図6に示す例の場合には、2つの谷t
a,t
bの検出により、1呼吸期間分の呼吸信号V
RRIが入力されたと判断する。ステップS12の判断で、1呼吸期間分の呼吸信号V
RRIが入力されていないと判断すると(ステップS12のNO)、データ処理部113は、ステップS11の検出処理に戻る。
【0034】
そして、ステップS12の判断で、1呼吸期間分の呼吸信号V
RRIが入力されたと判断すると(ステップS12のYES)、データ処理部113は、2つの谷(例えば
図6に示すt
a,t
b)の間で、呼吸信号V
RRIのレベルが高くなっている区間である吸気期間と、呼吸信号V
RRIのレベルが低くなっている区間である呼気期間とを判別する。そして、データ処理部113は、吸気期間内に検出した1心拍の平均の長さと、呼気期間に検出した1心拍の平均の長さの比率を判断する(ステップS13)。
すなわち、データ処理部113は、吸気期間内に検出した1心拍の平均の長さと、呼気期間に検出した1心拍の平均の長さを算出して、それぞれの平均の長さを比較し、吸気期間の1心拍の平均の長さと、呼気期間の1心拍の平均の長さとの比率を判断する。
【0035】
次に、データ処理部113は、吸気期間の1心拍の平均の長さの方が、呼気期間の1心拍の平均の長さよりも短いか否かを判定する(ステップS14)。この判定で、吸気期間の1心拍の平均の長さが、呼気期間の1心拍の平均の長さよりも短い場合(ステップS14のYES)、データ処理部113は、心拍の検出が適正であると判定して、1呼吸期間内の心拍の計測データを取り込む。そして、その心拍の計測データから、心拍数の計測データを得る処理を行う(ステップS15)。この吸気期間の1心拍の平均の長さが、呼気期間の1心拍の平均の長さよりも短い状態は、呼吸性不整脈と称される現象である。
心拍数の計測データは、例えば1分間の心拍数に換算して、表示装置200に表示されると共に、記録装置300に記録される。
【0036】
また、ステップS14での判定で、吸気期間の1心拍の平均の長さが、呼気期間の1心拍の平均の長さと等しいか、あるいは吸気期間の1心拍の平均の長さの方が、呼気期間の1心拍の平均の長さよりも長い場合(ステップS14のNO)、データ処理部113は、正しく心拍を検出していないと判定して、該当する1呼吸期間での計測データを計測値としないエラー処理を行う(ステップS16)。ステップS15及びS16の処理の後、ステップS11の処理に戻る。
【0037】
図10は、吸気期間と呼気期間の検出と、それぞれの期間で検出される心拍のタイミングの例を示す。
図10Aは、呼吸信号V
RRIの例を示し、
図10Bは、心拍成分が含まれる信号V
Iの例を示す。なお、心拍の検出はこの信号V
Iから心拍成分を取り出した心拍信号V
HRIにより行われる。
図10Bに示す例では、データ処理部113は、例えばタイミングt
1,t
2,t
3に検出した心拍が、吸気期間に検出した心拍であると判定する。また、タイミングt
4,t
5,t
6,t
7,t
8に検出した心拍が、呼気期間に検出した心拍であると判定する。そして、この判定に基づいて、データ処理部113は、ステップS14〜S16の処理を実行する。
【0038】
なお、
図9のフローチャートの説明では、データ処理部113は、I信号から得た呼吸信号V
RRI及び心拍信号V
HRIから呼吸数及び心拍数を得るようにしたが、Q信号から得た呼吸信号V
RRQ及び心拍信号V
HRQについても、同様の処理で呼吸数と心拍数を得るようにしてもよい。この場合には、例えばデータ処理部113は、I信号から得た計測値とQ信号から得た計測値とを比較して、適正と思われる計測値を、表示装置200及び記録装置300に出力する呼吸数及び心拍数とする。例えば、I信号を使った判断処理でステップS16でのエラー処理が行われた場合でも、Q信号を使った判断処理でステップS15の心拍数の計測データを得る処理ができた場合には、Q信号での計測結果を採用する。
また、心拍信号V
HRI,V
HRQについては、心拍に基づいた電圧の変動が比較的小さいため、I信号から得た心拍信号V
HRIとQ信号から得た心拍信号V
HRQのいずれからもデータ処理部113で心拍を検出できない期間が一時的に生じる可能性もある。このような場合には、その検出できない期間の前後の検出状態から補間などを行って、適正な心拍数を得る処理を行う。この補間を行う際には、データ処理部113は、該当する一時的に心拍を検出できない期間が、吸気期間であるのか、呼気期間であるのかを判別して、それぞれの期間に適した補間処理を行うことで、より適切な心拍数の判定ができるようになる。
【0039】
以上説明したように、本例の心拍・呼吸計測システムによると、被験者(患者)の呼吸と心拍を非接触で良好に計測することができるようになる。すなわち、本例の場合には、少なくとも1呼吸期間の信号が取得できれば、1呼吸期間と1心拍の期間が分かり、呼吸数及び心拍数が得られる。これは、従来FFTの演算を行う場合に、少なくとも複数の呼吸期間の信号が必要であったものに比べて、非常に短時間で呼吸数及び心拍数が得られるようになり、ほぼリアルタイムで呼吸数や心拍数を計測できる効果を有する。
しかも、本例の場合には、心拍と呼吸を同時に計測できるため、呼吸性不整脈と称される現象、つまり息を吸い込むときに心拍が早くなり、息を吐き出すときに心拍が遅くなる現象を確かめて、その呼吸性不整脈の現象が現れているとき、呼吸数と心拍数が正しく計測できていると扱うようにしたことで、正確な計測データが得られる効果を有する。
【0040】
また、本例の心拍・呼吸計測システムは、FFTのような複雑な演算処理を必要としない簡単な構成であるため、心拍・呼吸計測システムの小型化や低価格化を図ることができる。さらに、複雑な演算処理を必要としない簡単な構成であるため、心拍・呼吸計測システムの低消費電力化が図れ、例えば電池で長時間連続駆動が可能な心拍・呼吸計測システムとすることができる。
【0041】
[6.他の実施の形態例(ローパスフィルタを使った例)]
図11は、心拍・呼吸計測システムの他の実施の形態例を示す。
この
図11に示す例は、心拍・呼吸計測装置100が備える第2フィルタ103I′,103Q′として、バンドパスフィルタの代わりに、ローパスフィルタを使用したものである。
すなわち、
図11に示すように、I信号の処理系として、第1フィルタ102Iの出力信号V
Iを、ローパスフィルタである第2フィルタ103I′に供給し、第2フィルタ103I′で心拍成分が含まれる高域を除去し、呼吸成分が含まれる低域を通過させ、呼吸信号V
RRIを得る。そして、第2フィルタ103I′で得た呼吸信号V
RRIをアナログ/デジタル変換器111Iに供給して、デジタルデータに変換し、変換されたデジタルデータをデータ処理部113に供給する。また、第2フィルタ103I′で得た呼吸信号V
RRIを、位相補正器104Iを介して減算器105Iに供給する。そして、出力信号V
Iから呼吸信号V
RRIを減算することにより、心拍信号V
HRIを得、心拍信号V
HRIをアナログ/デジタル変換器112Iに供給して、デジタルデータに変換し、変換されたデジタルデータをデータ処理部113に供給する。
【0042】
Q信号の処理系についても同様に、第1フィルタ102Qの出力信号V
Qを、ローパスフィルタである第2フィルタ103Q′に供給し、第2フィルタ103Q′で心拍成分が含まれる高域を除去し、呼吸成分が含まれる低域を通過させて、呼吸信号V
RRQを得ると共に、減算器105Qで心拍信号V
HRQを得る処理を行う。
なお、
図1の例の場合には、位相補正器104I,104Qが、第2フィルタ(バンドパスフィルタ)103I,103Qによる位相遅れを補正するのに対して、
図11の例の場合、位相補正器104I,104Qは、第2フィルタ(ローパスフィルタ)103I′,103Q′での位相遅れを補正する。
【0043】
図12は、第1フィルタ102I及び第2フィルタ103I′の通過特性を示す図である。
図12において、横軸は周波数[Hz]、縦軸は減衰量[dB]を示す。
ここでは、第1フィルタ102Iは、通過帯域Faの下限周波数f
L1を0.159Hzとし、通過帯域の上限周波数f
H1を3.18Hzとする。この第1フィルタ102Iの特性は、
図4に示す特性と同じである。
また、第2フィルタ103I′は、通過帯域Fb′の上限周波数(カットオフ周波数)f
H2を0.221Hzとし、それより下の周波数を通過させる。
図12に示す特性Fc′は、第1フィルタ102I及び第2フィルタ103I′を通過した総合特性である。この第1フィルタ102I及び第2フィルタ103I′を通過した信号として、呼吸信号V
RRI,V
RRQを得る。
【0044】
図12に示す特性から分かるように、バンドパスフィルタとローパスフィルタとの組み合わせによって、呼吸信号V
RRI,V
RRQを及び心拍信号V
HRI,V
HRQを得ることもできる。ローパスフィルタである第2フィルタ103I′,103Q′は、呼吸成分が含まれる帯域Drよりも低域の成分についても通過させる特性であるが、この帯域Drよりも低域の成分については、第1フィルタ102I,102Qで既に除去されているため、
図1の例とほぼ同等の性能が得られる。
【0045】
[7.変形例]
なお、上述した実施の形態では、ドップラーレーダー10として、24GHzの周波数信号を送信するものとした。この送信周波数は一例であり、例えば10GHzなどのその他の周波数信号を送信するドップラーレーダーを使用してもよい。
【0046】
また、
図4や
図12に示す第1フィルタ(バンドパスフィルタ)や第2フィルタ(バンドパスフィルタ又はローパスフィルタ)の通過帯域についても一例であり、通過帯域の上限周波数や下限周波数として、その他の周波数としてもよい。但し、呼吸成分が含まれる周波数帯域や心拍成分が含まれる周波数帯域そのものは決まった帯域であり、上限周波数や下限周波数を変化させるとしても、上述した実施の形態例で説明した周波数の近傍の値とするのが好ましい。
また、
図3に示した各フィルタの具体的な回路についても好適な一例を示したものであり、その他の回路構成のフィルタとしてもよい。
【0047】
また、上述した実施の形態例では、ドップラーレーダー10で得られたI信号(実数成分)とQ信号(虚数成分)の双方をフィルタ処理して、I信号の呼吸成分及び心拍成分と、Q信号の呼吸成分及び心拍成分の双方を得るようにした。計測精度を向上させる点からは、このように双方の信号から呼吸成分及び心拍成分を得るのが好ましいが、いずれか一方(例えばI信号)の呼吸成分及び心拍成分のみを得るようにして、より回路構成を簡易化するようにしてもよい。
【0048】
また、上述した実施の形態例では、心拍・呼吸計測装置100が、ドップラーレーダー10から得た信号のフィルタ処理と、そのフィルタ処理した信号(心拍成分の信号及び呼吸成分の信号)をデジタル変換したデータから心拍及び呼吸を解析する処理を行うデータ処理とを行う構成とした。これに対して、例えば、データ処理部113での心拍及び呼吸の解析処理を行うソフトウェア(プログラム)が実装されたコンピュータ装置を用意して、そのコンピュータ装置のデータ入力部に、フィルタ処理などを行うアナログ回路系を備えた装置又は回路基板を接続して、上述した実施の形態例の心拍・呼吸計測システムと同様の計測処理が行えるようにしてもよい。この場合、表示装置200や記録装置300に相当する機能を、コンピュータ装置に内蔵させるようにしてもよい。
また、上述した実施の形態では、心拍や呼吸の解析結果として、1分間の心拍数や呼吸数を得るようにしたが、1分間の心拍数や呼吸数を得るのは一例であり、その他の形態で心拍や呼吸の解析結果を得て、それらの解析結果の表示や記録を行うようにしてもよい。