特許第6963300号(P6963300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6963300ビーコンによる端末の測位システム及び測位方法、並びにプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963300
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】ビーコンによる端末の測位システム及び測位方法、並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/14 20060101AFI20211025BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20211025BHJP
   G01C 21/28 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   G01S5/14
   G01C21/26 P
   G01C21/28
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-228045(P2017-228045)
(22)【出願日】2017年11月28日
(65)【公開番号】特開2019-100708(P2019-100708A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】517035474
【氏名又は名称】株式会社ビークルー
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】金谷英幸
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−138262(JP,A)
【文献】 特開2006−105662(JP,A)
【文献】 特開2016−045127(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0256356(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00− 5/14
G01C 21/26−21/36
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内における測位対象端末の位置を推定する端末測位システムであって、
前記施設における所定の複数箇所に配置され、互いに異なるビーコン識別情報を表わしたビーコン電波を発信する複数のビーコンと、
前記測位対象端末に設けられ、前記ビーコン電波を受信する受信部と、
前記各ビーコンの設置位置とビーコン識別情報とを紐付けた記憶情報を記憶した記憶部と、
前記ビーコン電波の受信情報及び前記記憶情報に基づいて、前記測位対象端末の位置を推定演算する演算処理部と、を備え、前記演算処理部が、
同一の時刻に受信したビーコン電波ごとに仮想バネを想定する処理と、
各仮想バネの自然長を、対応するビーコン電波の受信強度に応じて設定する処理部分と、
前記記憶情報に基づいて、各仮想バネの始端を、対応するビーコンの設置位置に仮想的に置く処理と、
複数の仮想バネの終端どうしを仮想的に1の接合点でつなぎ合わせる処理と、
前記接合点を仮想的に所定の初期位置に置いて解放する処理と、
解放後の前記接合点の動きを解析する処理と、
前記接合点の動きが収束した位置を、前記時刻における前記測位対象端末の位置と推定する処理とを実行することを特徴とする端末測位システム。
【請求項2】
施設内における測位対象端末の位置を推定する端末測位方法であって、
前記施設における所定の複数箇所に配置された複数のビーコンから互いに異なるビーコン識別情報を表わしたビーコン電波を発信する工程と、
前記測位対象端末が前記ビーコン電波を受信する工程と、
前記各ビーコンの設置位置とビーコン識別情報とを紐付けた記憶情報と、前記ビーコン電波の受信情報に基づいて、前記測位対象端末の位置を推定演算する工程とを備え、前記推定演算工程が、
同一の時刻に受信したビーコン電波ごとに仮想バネを想定する工程と、
各仮想バネの自然長を、対応するビーコン電波の受信強度に応じて設定する工程と、
前記記憶情報に基づいて、各仮想バネの始端を、対応するビーコンの設置位置に仮想的に置く工程と、
複数の仮想バネの終端どうしを仮想的に1の接合点でつなぎ合わせる工程と、
前記接合点を仮想的に所定の初期位置に置いて解放する工程と、
解放後の前記接合点の動きを解析する工程と、
前記接合点の動きが収束した位置を、前記時刻における前記測位対象端末の位置と推定する工程と
を実行することを特徴とする端末測位方法。
【請求項3】
前記収束した位置における各仮想バネの残留バネ力に基づいて、前記測位対象端末の推定位置の誤差範囲を求めることを特徴とする請求項2に記載の端末測位方法。
【請求項4】
前記所定の初期位置が、複数の前記仮想バネの始端を環状に結んだ図形の重心、内心、外心、垂心、又は前記測位対象端末について直前に行った測位位置であることを特徴とする請求項2又は3に記載の端末測位方法。
【請求項5】
前記推定する工程では、前記測位対象端末の平面方向及び高さ方向の位置を推定することを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の端末測位方法。
【請求項6】
前記推定する工程では、前記接合点の変位がある範囲内まで収束されたとき、前記接合点が前記範囲内の変位から静止する位置を推定することを特徴とする請求項2〜5の何れか1項に記載の端末測位方法。
【請求項7】
施設における所定の複数箇所に配置された複数のビーコンから互いに異なるビーコン識別情報を表わしたビーコン電波を発信し、測位対象端末が前記ビーコン電波を受信し、前記測位対象端末と通信可能なサーバ又は前記測位対象端末が、前記各ビーコンの設置位置とビーコン識別情報とを紐付けた記憶情報と前記ビーコン電波の受信情報とに基づいて、前記測位対象端末の位置を推定演算するシステムにおける、前記サーバ又は前記測位対象端末用のプログラムであって、
同一の時刻に受信したビーコン電波ごとに仮想バネを想定する処理と、
各仮想バネの自然長を、対応するビーコン電波の受信強度に応じて設定する処理と、
前記記憶情報に基づいて、各仮想バネの始端を、対応するビーコンの設置位置に仮想的に置く処理と、
複数の仮想バネの終端どうしを仮想的に1の接合点でつなぎ合わせる処理と、
前記接合点を仮想的に所定の初期位置に置いて解放する処理と、
解放後の前記接合点の動きを解析する処理と、
前記接合点の動きが収束した位置を、前記時刻における前記測位対象端末の位置と推定する処理と
を、前記サーバ又は前記測位対象端末に実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーコンによってスマートフォンなどの端末の位置を推定する測位システム及び測位方法、並びにプログラムに関し、特に大型商業施設などでのサービスに適した測位システム及び測位方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
大型商業施設や小売店舗において来店客の行動傾向を把握することは、レイアウトを最適化したり営業活動を進めたりするうえで重要である。かかるシステムにおいては、各時間における来店客の位置を測定する必要がある。また、来店客に現在位置を知らせるサービスのニーズもある。
【0003】
測位システムとしては、GPS(全地球測位システム)が知られているが、商業施設の内部ではGPS電波が届かないことが多い。
特許文献1〜3のシステムでは、施設内の複数箇所にそれぞれビーコンを設置しておき、測位対象者の携帯端末が、近くのビーコンからビーコン電波を受信することで、測位対象者の位置を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−200609号公報
【特許文献2】特開2016−086667号公報
【特許文献3】特開2016−212746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前掲特許文献1〜3のシステムでは、受信した1つのビーコンのまわりのどこかに測位対象者がいるものと推定して処理しており、高精度の測位を目指すものではない。
かかる事情に鑑み、本発明は、ビーコンによる測位システムにおいて測位精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、発明者は鋭意研究開発を行なった。測位精度を高めるには、互いに別の場所(座標点)に在る複数のビーコンからの受信電波から位置を推定する必要がある。受信電波強度は、そのビーコンと測位対象との離間距離の2乗に反比例するから、複数の受信電波に基づいて、ビーコンごとの離間距離の比が求まる。既知の複数の座標点と離間距離の比から測位対象の位置を求める手法として、アポロニウスの定理を使うことが考えられる。しかし、アポロニウスの定理による測位は、場合分け等を要し、計算が煩雑である。
【0007】
そこで、発明者は、各ビーコンと測位対象とを繋ぐ仮想的なバネを想定し、フックの法則にしたがう物理モデルによって測位対象の位置を解析すること着想した。
本発明は、かかる着想に基づいてなされたものであり、本発明システムは、施設内における測位対象端末の位置を推定する端末測位システムであって、
前記施設における所定の複数箇所に配置され、互いに異なるビーコン識別情報を表わしたビーコン電波を発信する複数のビーコンと、
前記測位対象端末に設けられ、前記ビーコン電波を受信する受信部と、
前記各ビーコンの設置位置とビーコン識別情報とを紐付けた記憶情報を記憶した記憶部と、
前記ビーコン電波の受信情報及び前記記憶情報に基づいて、前記測位対象端末の位置を推定演算する演算処理部と、を備え、前記演算処理部が、
同一の時刻に受信したビーコン電波ごとに仮想バネを想定する処理と、
各仮想バネの自然長を、対応するビーコン電波の受信強度に応じて設定する処理部分と、
前記記憶情報に基づいて、各仮想バネの始端を、対応するビーコンの設置位置に仮想的に置く処理と、
複数の仮想バネの終端どうしを仮想的に1の接合点でつなぎ合わせる処理と、
前記接合点を仮想的に所定の初期位置に置いて解放する処理と、
解放後の前記接合点の動きを解析する処理と、
前記接合点の動きが収束した位置を、前記時刻における前記測位対象端末の位置と推定する処理とを実行することを特徴とする。
【0008】
本発明方法は、施設内における測位対象端末の位置を推定する端末測位方法であって、
前記施設における所定の複数箇所に配置された複数のビーコンから互いに異なるビーコン識別情報を表わしたビーコン電波を発信する工程と、
前記測位対象端末が前記ビーコン電波を受信する工程と、
前記各ビーコンの設置位置とビーコン識別情報とを紐付けた記憶情報と、前記ビーコン電波の受信情報に基づいて、前記測位対象端末の位置を推定演算する工程とを備え、前記推定演算工程が、
同一の時刻に受信したビーコン電波ごとに仮想バネを想定する工程と、
各仮想バネの自然長を、対応するビーコン電波の受信強度に応じて設定する工程と、
前記記憶情報に基づいて、各仮想バネの始端を、対応するビーコンの設置位置に仮想的に置く工程と、
複数の仮想バネの終端どうしを仮想的に1の接合点でつなぎ合わせる工程と、
前記接合点を仮想的に所定の初期位置に置いて解放する工程と、
解放後の前記接合点の動きを解析する工程と、
前記接合点の動きが収束した位置を、前記時刻における前記測位対象端末の位置と推定する工程と
を実行することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るプログラムは、施設における所定の複数箇所に配置された複数のビーコンから互いに異なるビーコン識別情報を表わしたビーコン電波を発信し、測位対象端末が前記ビーコン電波を受信し、前記測位対象端末と通信可能なサーバ又は前記測位対象端末が、前記各ビーコンの設置位置とビーコン識別情報とを紐付けた記憶情報と前記ビーコン電波の受信情報とに基づいて、前記測位対象端末の位置を推定演算するシステムにおける、前記サーバ又は前記測位対象端末用のプログラムであって、
同一の時刻に受信したビーコン電波ごとに仮想バネを想定する処理と、
各仮想バネの自然長を、対応するビーコン電波の受信強度に応じて設定する処理と、
前記記憶情報に基づいて、各仮想バネの始端を、対応するビーコンの設置位置に仮想的に置く処理と、
複数の仮想バネの終端どうしを仮想的に1の接合点でつなぎ合わせる処理と、
前記接合点を仮想的に所定の初期位置に置いて解放する処理と、
解放後の前記接合点の動きを解析する処理と、
前記接合点の動きが収束した位置を、前記時刻における前記測位対象端末の位置と推定する処理と
を、前記サーバ又は前記測位対象端末に実行させることを特徴とする。
【0010】
前記初期位置は、受信したビーコン電波の発信元の複数のビーコンの位置を環状に結んだ図形の重心に置いてもよく、その他、内心、外心、垂心などに置いてもよい。
時間的に続けて測位する場合は、直前の測位結果を初期位置としてもよい。
前記同一の時刻には、多少の幅(例えば数秒間程度)を持たせてもよい。
【0011】
前記収束した位置における各仮想バネの残留バネ力に基づいて、前記測位対象端末の推定位置の誤差範囲を求めることが好ましい。
たとえば、各仮想バネの残留バネ力のベクトルの平均長さを誤差半径として設定してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スマートフォンなどの測位対象端末ひいては測位対象者の位置を、仮想バネモデルという単純な物理モデル用い、比較的簡易な演算処理によって精度良く推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る測位システムの概略構成を示す解説図である。
図2図2は、前記測位システムの記憶部のデータベース構造の一例を模式的に示す表である。
図3図3は、前記測位システムの演算処理部が想定する仮想バネモデルを示す概念図であり、実線は自然長の設定処理時を示し、二点鎖線は接合点を初期位置に置く処理時を示す。
図4図4は、前記仮想バネモデルを、接合点の動きが収束した状態で示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
<端末測位システム1>
図1に示すように、端末測位システム1は、たとえば大型商業施設、駅コンコースなどの施設2内における測位対象者3の位置推定を行なう。
端末測位システム1は、複数(図1では3つだけ図示)のビーコン10と、測位対象端末20と、サーバ30とによって構築されている。詳細な図示は省略するが、ビーコン10は、発信回路及び電池を内蔵した小型発信モジュールである。発信回路から例えばブルートゥース(Bluetooth (登録商標))規格に基づく2.4GHz帯のビーコン電波13が発信される。ビーコン電波13は、発信元ビーコン10の識別情報(ビーコンID)を表す。ビーコン識別情報は、ビーコン10毎に互いに異なる。ビーコン電波13には、更に発信強度情報が含まれていてもよい。
【0015】
施設2内の所定の複数箇所(好ましくは天井などの高所)に、複数のビーコン10が互いに分散して設置されている。好ましくは、施設2内の各所において3つ以上のビーコン電波13が有効に到達するように、複数のビーコン10の配置が設定されている。
「有効に到達」とは、測位対象端末20によって受信可能との意味である。
【0016】
測位対象端末20は、コンピューター機能及び通信機能を有するスマートフォンで構成され、測位対象者3が携帯している。
サーバ30は、システム1の管理者が管理するコンピューターである。
測位対象端末20とサーバ30とは、通信ネットワーク6を介して通信可能である。通信ネットワーク6は、基地局やインターネット回線を含む。
【0017】
図1及び図2に示すように、サーバ30の記憶部31には、施設2内のすべてのビーコン10に関して、設置位置情報とビーコン識別情報を紐付けたデータベース32(記憶情報)が格納されている。
また、サーバ30の記憶部31には、ビーコン電波13の受信情報及びデータベース32に基づいて、測位対象端末20の位置を推定演算する測位プログラム33が格納されている。サーバ30のCPU35は、プログラム33にしたがって演算処理を実行する演算処理部を構成している。
【0018】
<端末測位方法>
端末測位システム1によれば、次のようにして、測位対象端末20ひいては測位対象者3の測位を行なう。
施設2の各ビーコン10は、ビーコン電波13を所定の周期で発信している。
測位対象者3の測位対象端末20の受信部21が、近くの数個のビーコン10からそれぞれビーコン電波13すなわちビーコン識別情報を受信する(受信工程)。ビーコン電波13の受信強度は、発信元ビーコン10から測位対象端末20までの距離に依存する。すなわち、距離の2乗に反比例する。
測位対象端末20は、受信したすべてのビーコン識別情報を、受信強度及び受信時刻とともに、サーバ30へ送信する。発信強度情報が含まれている場合は、それも併せて送信する。送信は、逐次行ってもよく、ある時間置きに行ってもよく、データ量がある大きさに達する度に行ってもよい。
サーバ30は、測位対象端末20からのこれら情報を記憶部31にデータログ34として蓄積する。
【0019】
サーバ30は、管理者等からの要求に応じて、又は定期的もしくは自動的に測位プログラム33を実行する。
詳しくは、サーバ30は、受信時刻ごとに測位対象端末20が受信したすべてのビーコン識別情報と受信強度をデータログ34から読み込む。かつ、読み込んだビーコン識別情報に対応する設置位置情報をデータベース32から取得する。
続いて、図3に示すように、サーバ30は、仮想的に下記の仮想バネモデル40を作り、該仮想バネモデル40によって測位解析を行なう。
【0020】
<仮想バネモデル40>
図3に示すように、まず、同一の受信時刻に受信した数個(図3では3個)のビーコン電波13について、個々のビーコン電波13ごとに仮想バネ41,42,43を想定する。
これら仮想バネ41,42,43のばね定数は、互いに等しいものとする。
各仮想バネ41〜43の自然長を、その仮想バネに対応する受信強度に応じて設定する。受信強度が大きいほど自然長を短くし、受信強度が小さいほど自然長を長くする。好ましくは、自然長の2乗と受信強度が反比例の関係になるように設定する。
より好ましくは、発信強度情報をも読み込み、発信強度と受信強度との差が、自然長の2乗と反比例の関係になるように設定する。
【0021】
図3の実線に示すように、各仮想バネ41〜43の始端41a,42a,43aは、データベース32の設置位置情報に基づいて、対応するビーコン10の設置位置に仮想的に置く。
図3の二点鎖線にて示すように、これら仮想バネ41〜43の終端41b,42b,43bどうしを仮想的に1の接合点45でつなぎ合わせる。
接合点45を、仮想的に所定の初期位置に置く。これによって、特別な場合Aを除き、仮想バネ41〜43が伸びるか縮む。自然長よりも伸びた仮想バネには、その伸び量に比例した大きさの引っ張り力が働く。自然長よりも縮んだ仮想バネには、その縮み量に比例した大きさの圧縮力が働く。
【0022】
前記特別な場合Aとは、仮想バネの始端から初期位置までの距離が、その仮想バネの自然長と一致した場合である。
初期位置は、例えば、仮想バネ41〜43の始端41a,42a,43aを環状に結んだ平面視図形(ここでは三角形)の重心とする。重心に代えて、前記平面視図形(三角形)の内心、外心、垂心などに置いてもよい。
時間的に続けて測位する場合は、直前の測位結果を初期位置としてもよい。
【0023】
続いて、終端41b,42b,43bどうしを接合点45において互いにつなぎ合わせた状態を維持したまま、接合点45を前記初期位置に保持する力を解除して、接合点45を解放したものとする。
解放によって、各仮想バネ41〜43が伸縮振動する。ひいては、接合点45が変動する。この解放後の接合点45の動きを解析する。
なお、好ましくは、接合点45は、人がスマートフォンを持ち歩いているときの該スマートフォンの一般的な高さ(例えば1.2メートル)に拘束され、高さ方向(z軸方向)へは変動しないものとする。これによって、演算を簡単化できる。かつ、実際の測位対象者3の動き、又は測位対象端末20のz軸方向の位置に即した演算を行なうことができる。
また、接合点45又は各仮想バネ41〜43には、ある大きさの摩擦抵抗が働いているものとしてもよい。
【0024】
図4に示すように、接合点45の動きが収束した位置を、前記受信時刻における測位対象端末20の位置と推定する。必ずしも、接合点45が完全に静止する位置まで解析する必要は無く、接合点45がある程度の範囲内で変位することが確認されたとき、その範囲内の動きから静止するであろう位置を推定してもよい。
【0025】
特別な場合Bを除き、収束位置における各仮想バネ41〜43には、引っ張り又は圧縮のバネ力が残留しており、その状態で、これら仮想バネ41〜43どうしが釣り合っている。これら仮想バネ41〜43の残留バネ力に基づいて、測位対象端末20の推定位置の誤差範囲を求める。たとえば、各仮想バネの残留バネ力のベクトルの平均長さを誤差半径として設定し、前記収束位置を中心にして前記誤差半径の円内に測位対象端末20が在るものと推定する。これによって、推定位置の確かさの度合を提示できる。
【0026】
例えば、測位対象端末20が測位対象者3の鞄などに入れられていたときは、外に出されていたときよりもビーコン電波13の受信強度が弱いと考えられる。その場合は、各仮想バネ41〜43の自然長が外に出されていたときよりも長く設定されるために、収束状態では各仮想バネ41〜43に圧縮方向の残留バネ力が生じる。これら残留バネ力から推定誤差範囲が算出される。言い換えると、端末測位システム1によれば、測位対象端末20が鞄などに入れられていたとしても、ビーコン電波13が受信可能である限り、その測位対象端末20の位置を推定でき、かつ受信強度の弱さを推定誤差として反映させることができる。
【0027】
前記特別な場合Bとは、各仮想バネ41〜43の始端41a,42a,43aから収束位置45までの距離が、その仮想バネ41〜43の自然長と一致していた場合である。このとき、推定誤差がゼロとなる。逆に言うと、各仮想バネ41〜43の自然長は、対応するビーコン10から測位対象端末20の真の位置までの距離に相当すると仮定したものである。この点で、仮想バネモデル40の合理性が裏付けられていると言える。
このようにして、端末測位システム1によれば、測位対象端末ひいては測位対象者の位置を、仮想バネモデルという単純な物理モデルを用い、簡易な演算処理によって精度良く推定することができる。
同時刻に受信したビーコン電波13の数、ひいては仮想バネの数が増えたとしても、演算処理はそれほど複雑にならない。
【0028】
本発明は、上記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変をなすことができる。
例えば、測位対象端末20が、データベース32及び測位プログラム33を有し、受信したビーコン電波13に基づいて当該測位対象端末20自身の位置を演算するようになっていてもよい。測位対象端末20が、前記データベース32及び測位プログラム33を、通信ネットワーク6を介してサーバ30などから取得可能であってもよい。
仮想バネのばね定数を、その仮想バネに対応する受信強度に応じて設定してもよい。
サーバ30が、クラウドコンピューターによって構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、例えば、大型商業施設や駅コンコースにおける人の流れの傾向を把握したり、位置情報を提供したりするシステムに適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 端末測位システム
2 施設
3 測位対象者
6 通信ネットワーク
10 ビーコン
13 ビーコン電波
20 測位対象端末
21 受信部
30 サーバ
31 記憶部
32 データベース(記憶情報)
33 プログラム
34 データログ
35 CPU(演算処理部)
40 仮想バネモデル
41〜43 仮想バネ
41a,42a,43a 始端
41b,42b,43b 終端
45 接合点
図1
図2
図3
図4