【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、発明者は鋭意研究開発を行なった。測位精度を高めるには、互いに別の場所(座標点)に在る複数のビーコンからの受信電波から位置を推定する必要がある。受信電波強度は、そのビーコンと測位対象との離間距離の2乗に反比例するから、複数の受信電波に基づいて、ビーコンごとの離間距離の比が求まる。既知の複数の座標点と離間距離の比から測位対象の位置を求める手法として、アポロニウスの定理を使うことが考えられる。しかし、アポロニウスの定理による測位は、場合分け等を要し、計算が煩雑である。
【0007】
そこで、発明者は、各ビーコンと測位対象とを繋ぐ仮想的なバネを想定し、フックの法則にしたがう物理モデルによって測位対象の位置を解析すること着想した。
本発明は、かかる着想に基づいてなされたものであり、本発明システムは、施設内における測位対象端末の位置を推定する端末測位システムであって、
前記施設における所定の複数箇所に配置され、互いに異なるビーコン識別情報を表わしたビーコン電波を発信する複数のビーコンと、
前記測位対象端末に設けられ、前記ビーコン電波を受信する受信部と、
前記各ビーコンの設置位置とビーコン識別情報とを紐付けた記憶情報を記憶した記憶部と、
前記ビーコン電波の受信情報及び前記記憶情報に基づいて、前記測位対象端末の位置を推定演算する演算処理部と、を備え、前記演算処理部が、
同一の時刻に受信したビーコン電波ごとに仮想バネを想定する処理と、
各仮想バネの自然長を、対応するビーコン電波の受信強度に応じて設定する処理部分と、
前記記憶情報に基づいて、各仮想バネの始端を、対応するビーコンの設置位置に仮想的に置く処理と、
複数の仮想バネの終端どうしを仮想的に1の接合点でつなぎ合わせる処理と、
前記接合点を仮想的に所定の初期位置に置いて解放する処理と、
解放後の前記接合点の動きを解析する処理と、
前記接合点の動きが収束した位置を、前記時刻における前記測位対象端末の位置と推定する処理とを実行することを特徴とする。
【0008】
本発明方法は、施設内における測位対象端末の位置を推定する端末測位方法であって、
前記施設における所定の複数箇所に配置された複数のビーコンから互いに異なるビーコン識別情報を表わしたビーコン電波を発信する工程と、
前記測位対象端末が前記ビーコン電波を受信する工程と、
前記各ビーコンの設置位置とビーコン識別情報とを紐付けた記憶情報と、前記ビーコン電波の受信情報に基づいて、前記測位対象端末の位置を推定演算する工程とを備え、前記推定演算工程が、
同一の時刻に受信したビーコン電波ごとに仮想バネを想定する工程と、
各仮想バネの自然長を、対応するビーコン電波の受信強度に応じて設定する工程と、
前記記憶情報に基づいて、各仮想バネの始端を、対応するビーコンの設置位置に仮想的に置く工程と、
複数の仮想バネの終端どうしを仮想的に1の接合点でつなぎ合わせる工程と、
前記接合点を仮想的に所定の初期位置に置いて解放する工程と、
解放後の前記接合点の動きを解析する工程と、
前記接合点の動きが収束した位置を、前記時刻における前記測位対象端末の位置と推定する工程と
を実行することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るプログラムは、施設における所定の複数箇所に配置された複数のビーコンから互いに異なるビーコン識別情報を表わしたビーコン電波を発信し、測位対象端末が前記ビーコン電波を受信し、前記測位対象端末と通信可能なサーバ又は前記測位対象端末が、前記各ビーコンの設置位置とビーコン識別情報とを紐付けた記憶情報と前記ビーコン電波の受信情報とに基づいて、前記測位対象端末の位置を推定演算するシステムにおける、前記サーバ又は前記測位対象端末用のプログラムであって、
同一の時刻に受信したビーコン電波ごとに仮想バネを想定する処理と、
各仮想バネの自然長を、対応するビーコン電波の受信強度に応じて設定する処理と、
前記記憶情報に基づいて、各仮想バネの始端を、対応するビーコンの設置位置に仮想的に置く処理と、
複数の仮想バネの終端どうしを仮想的に1の接合点でつなぎ合わせる処理と、
前記接合点を仮想的に所定の初期位置に置いて解放する処理と、
解放後の前記接合点の動きを解析する処理と、
前記接合点の動きが収束した位置を、前記時刻における前記測位対象端末の位置と推定する処理と
を、前記サーバ又は前記測位対象端末に実行させることを特徴とする。
【0010】
前記初期位置は、受信したビーコン電波の発信元の複数のビーコンの位置を環状に結んだ図形の重心に置いてもよく、その他、内心、外心、垂心などに置いてもよい。
時間的に続けて測位する場合は、直前の測位結果を初期位置としてもよい。
前記同一の時刻には、多少の幅(例えば数秒間程度)を持たせてもよい。
【0011】
前記収束した位置における各仮想バネの残留バネ力に基づいて、前記測位対象端末の推定位置の誤差範囲を求めることが好ましい。
たとえば、各仮想バネの残留バネ力のベクトルの平均長さを誤差半径として設定してもよい。