(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963301
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】石詰籠の設置方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/08 20060101AFI20211025BHJP
E02B 3/12 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
E02B3/08 301
E02B3/12
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-228531(P2017-228531)
(22)【出願日】2017年11月29日
(65)【公開番号】特開2018-172959(P2018-172959A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】591083901
【氏名又は名称】共和ハーモテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森谷 完
【審査官】
東 芳隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−151434(JP,A)
【文献】
特開2000−136537(JP,A)
【文献】
特開2000−192437(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/095680(WO,A1)
【文献】
特開2015−025240(JP,A)
【文献】
特開平09−302648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/08−3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金網からなっており有底筒状の石詰籠を組み立てる組立工程と、
組み立てた前記石詰籠をケースに収納する収納工程と、
前記石詰籠に石を詰める石詰工程と、
石を詰めた前記石詰籠を前記ケースとともに吊り上げる吊上工程と、
吊り上げた前記石詰籠を設置場所に下ろすことによって、当該設置場所に設けられた枠の内側に前記石詰籠を設置する設置工程と
を含み、
前記石詰籠は円柱形状又は角柱形状の有底筒状であり、
前記枠は直方体の各面に穴が開けられた形状を備え、上面と下面の四隅同士が4本の柱で連結されており、
前記石詰籠が設置された際に前記枠の4本の前記柱が前記石詰籠に面しており、
前記ケースには、前記枠に当接することにより、それ以上前記枠内に前記ケースを進入させないストッパが設けられている、石詰籠の設置方法。
【請求項2】
前記枠と前記石詰籠との間の隙間は15cm以下に設定されている、請求項1に記載されている石詰籠の設置方法。
【請求項3】
前記設置工程において、前記ケースの少なくとも一部が前記枠内に入り、その後前記ケースが前記枠内から取り去られる、請求項1又は2に記載されている石詰籠の設置方法。
【請求項4】
金網からなっており有底筒状の石詰籠を組み立てる組立工程と、
組み立てた前記石詰籠をケースに収納する収納工程と、
前記石詰籠に石を詰める石詰工程と、
石を詰めた前記石詰籠を前記ケースとともに吊り上げる吊上工程と、
吊り上げた前記石詰籠を設置場所に下ろすことによって、当該設置場所に設けられた枠の内側に前記石詰籠を設置する設置工程と
を含み、
前記石詰籠は円柱形状又は角柱形状の有底筒状であり、
前記石詰籠が設置された際に、平行に設けられた2組の矢板が前記枠として前記石詰籠に面して設けられており、
前記ケースには、前記枠に当接することにより、それ以上前記枠内に前記ケースを進入させないストッパが設けられている、石詰籠の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石詰籠の設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川の護岸や根固の工法には、コンクリートブロックや石詰籠が用いられている。石詰籠は、コンクリートブロックによる擁壁などと異なり栗石の隙間があるので透水性、変形性、防侵食性に優れるとともに小魚やえびなどの小型水棲動物の住処や隠れ家になり、また藻や水草も生えやすく、工事の後の生態系の回復が早い。けれども、栗石間の隙間が小さいため、大型の魚の住処や隠れ家にはならないという問題点があった。
【0003】
このような問題に対応するため、特許文献1には籠形の土留め枠本体と、土留め枠本体内に少なくとも一端部が開口して土留め枠本体の外部に臨む通路を形成するべく、土留め枠本体内に収容された通路形成用枠体と、通路形成用枠体の外側に位置して土留め枠本体内に充填された中詰石とを具備することを特徴とする護岸用土留め枠が開示されている。また、特許文献2にはフトン籠の内部に、該フトン籠を横或いは縦方向に貫通するように円筒或いは楕円筒状のカゴ体を組み込み、該カゴ体は、少なくともその下側面の一部を凹円弧面を有する石材品で支持されており、フトン籠内部の残余空所に石材端材等の詰石材を充填したことを特徴とする魚巣フトン籠が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−36263号公報
【特許文献2】特開2005−146661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された護岸用土留め枠、及び特許文献2に開示された魚巣フトン籠はいずれも金網からなる籠の内部にコンクリート製の通路を入れてその周囲に石を詰めるという複雑な構造であり、施工が難しくコストが大きくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単に且つ低コストで枠の内部に石詰籠を設置する設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の石詰籠の設置方法は、金網からなっており有底筒状の石詰籠を組み立てる組立工程と、組み立てた前記石詰籠をケースに収納する収納工程と、前記石詰籠に石を詰める石詰工程と、石を詰めた前記石詰籠を前記ケースとともに吊り上げる吊上工程と、吊り上げた前記石詰籠を設置場所に下ろすことによって設置する設置工程とを含み、前記石詰籠は円柱形状又は角柱形状の有底筒状であり、前記設置場所には、前記石詰籠が設置された際に少なくとも2方向に前記石詰籠に面した枠が少なくとも上下方向の一部に設けられている構成を有している。
【0008】
前記枠と前記石詰籠との間の隙間は15cm以下に設定されていてもよい。
【0009】
前記設置工程において、前記ケースの少なくとも一部が前記枠内に入り、その後前記ケースが前記枠内から取り去られてもよい。
【0010】
前記枠はコンクリートからなり、少なくとも上下方向の一部において前記石詰籠の全周を囲む形状を有していてもよい。
【0011】
前記ケースには、前記枠に当接することにより、それ以上前記枠内に前記ケースを進入させないストッパが設けられていてもよい。
【0012】
石詰工程では、石を詰めた後に蓋をすることが好ましい。また、吊上工程では、石詰籠がケースに収納されたままの状態で吊り上げられることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の石詰籠の設置方法は、ケースに収納された状態で石詰籠に石を詰め、その後石詰籠をケースとともに枠の中に入れるので、枠と石詰籠との隙間が小さくても石詰籠を容易に枠の内部に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】石詰籠に蓋をする工程を示す模式的な図面である。
【
図5】石詰籠とケースにワイヤを連結する工程を示す模式的な図面である。
【
図7】吊上工程の別の一部を示す模式的な図面である。
【
図9】設置工程の別の一部を示す模式的な図面である。
【
図10】設置工程の別の一部を示す模式的な図面である。
【
図11】設置工程の別の一部を示す模式的な図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
【0016】
(実施形態1)
実施形態1に係る石詰籠の設置方法を
図1から
図11に従って説明を行う。
【0017】
まず有底筒状の石詰籠を組み立てる(組立工程、
図1)。本実施形態の石詰籠は円柱形状であるが、側面を構成する2つの側面パネル11と底面パネル12とから構成されている。側面パネル11は断面が半円形の樋形状を有しており、底面パネル12は円形である。側面パネル11同士はコイル15により、側面パネル11と底面パネル12とはコイル16により連結されている。側面パネル11および底面パネル12は溶接金網からなっている。溶接金網は、表面に亜鉛アルミ合金めっきが施された鉄線から構成されており、複数の横線及び縦線を直角に交わるように配列させて、その交点を溶接して形成されている。
【0018】
次に、石詰籠をケースに収納する(収納工程、
図2)。組立工程において組み立てられた石詰籠本体部20(蓋が設置されていない状態のもの)を円筒形のケース30の中に収納する。ケース30は金属板などにより形成されている。ケース30を吊り上げるための吊り具掛け部32がケース30の上端部に、ストッパ34がケース30の外面の下部に取り付けられている。ケース30と石詰籠本体部20との間の隙間は1cm以上15cm以下が好ましい。1cm未満であると後述の設置工程においてケース30を石詰籠から抜き取ることができなくなるおそれがある。15cmよりも大きいと、ケース30を使用しなくても石詰籠のみを容易に枠の内部に設置することができるためケース30を使用する意味が失われてしまうおそれがあるとともに、枠内に設置された後で、石詰籠が傾いたり移動してしまうおそれがある。
【0019】
次に石詰籠に石を詰める(石詰工程、
図3)。石詰籠本体部20がケース30に収納された状態で、石40を石詰籠本体部20に詰めていって、詰め終わったら金網からなる蓋パネル13を被せる(
図4)。蓋パネル13は側面パネル11にコイル16によって連結して、石を詰めた石詰籠22が完成する。蓋パネル13を連結する作業をやりやすくするために、石詰籠22の上端部分はケース30から少し(10〜20cm)突出している、即ち上端部分はケース30に覆われていないようにしている。石40は例えば、割り栗石や砕石、コンクリート破砕物等を用いることができる。石40を詰めると石詰籠本体部20を石40が内部から押すことにより、通常は石詰籠本体部20は外側へ膨らむ(「はらむ」という)が、はらみが発生してもケース30に当たるとそれ以上は膨らむことができず、はらみの度合はケース30がない場合に比べて小さく抑制できる。そして石詰籠本体部20の金網の目を通り抜ける小さい石40が石詰籠本体部20に投入された場合、ケース30があるので、石詰籠本体部20から外部に落下することが防止される。
【0020】
それから石詰籠22およびケース30に吊り上げのためのワイヤを連結する(
図5)。石詰籠22に対しては、蓋パネル13の金網にワイヤ52の先端に取り付けられたフック51を掛けて連結を行う。石詰籠22の大きさや重量にもよるが、蓋パネル13の変形や金網の溶接が外れてしまうことを避けるために、4箇所以上にワイヤを連結することが好ましく、6箇所以上がより好ましい。また、ケース30に対しては、ケース30に設置されている吊り具掛け部32にワイヤ52の先端に取り付けられたフック51を掛けて連結を行う。この際、吊り具掛け具32の上端部分は石詰籠22の上端よりも上にあり且つ両者間に隙間があると、フック51を容易に掛けることができる。
【0021】
続いてクレーンなどを用いて、石を詰めた石詰籠22をケース30とともに吊り上げる(吊上工程、
図6)。このときには1つのクレーンで石詰籠22とケース30とをともに吊り上げた方が安全であり効率がよい。また、吊り上げて移動を行うと、ケース30がなければ石詰籠22の金網の目を通り抜ける小さい石40が側面から外部に落下して作業者に当たってしまうおそれがあるが、本実施形態ではそのようなおそれはない。
【0022】
次に吊り上げた石詰籠22とケース30とを移動させてコンクリートの枠の上方に吊り上げた状態にする(
図7)。ここでの枠60は中空の直方体形状であって、上面と下面は円形の穴62,64が空けられていて、上面と下面の四隅同士が4本の角柱で連結されている。従って4つの側面は外枠のみで中央に矩形の穴が空いた形状となっている。上面と下面の円形の穴62,64はケース30の外径よりも大きい径を有しており、具体的には穴62,64の径の方がケース30の外径よりも1cm以上15cm以下大きいことが好ましい。この両者の径の差が1cm未満であると枠60の中にケース30を挿入することが困難になるおそれがあり、15cmを超えるとケース30を用いなくても石詰籠22を枠60内に容易に設置することができるが、そうであると石詰籠22が枠60の中で移動してしまうおそれがある。
【0023】
それから吊り上げた石詰籠22とケース30とを枠60の内部へと下ろしていく(設置工程の前半、
図8)。ケース30の下部にはストッパ34が取り付けられており、ケース30を枠60の上面の穴62に入れていくと途中でストッパ34が枠60に当接して、ケース30はそれ以上は枠60内には入らなくなる。一方、石詰籠22はケース30とは独立に枠60内に入っていく。
【0024】
比較のため、ケース30無しで石詰籠22を枠60の内部に下ろしていくことを考えてみると、ケース30がないため石詰籠22ははらみにより径が大きくなってしまっている。そのため、穴62,64に対して垂直に入っていかずに傾いて入っていくと、途中で穴62,64に引っかかってそれ以上入らなくなる。また、垂直に入っていっても途中で穴62,64に引っかかってそれ以上入らなくなる場合もある。一方、本実施形態ではケース30が穴62に入っていき、ケース30のためにはらみ量も少ないので、途中で穴62に引っかかることなくスムーズに穴62の中に入っていく。さらに、最初に穴62に垂直に入るように調整して下ろしていくと、ストッパ34によってケース30が垂直な状態で固定され、石詰籠22が枠60内に垂直な状態で入っていくことを補助するので、石詰籠22を短時間で容易に枠60内に設置することができる。
【0025】
図9は石詰籠22の全体が枠60内に設置された状態を示している(設置工程の一部)。ケース30は、ストッパ34が枠60に当接して大部分が枠60の上方に存在している状態となっている。ケース30がこのような状態を保ち、石詰籠22のみが
図8に示す状態から枠60の内部に下ろされていって
図9に示す設置状態となる。
【0026】
次にクレーン等から石詰籠22に連結したワイヤ52を外して、ケース30のみをクレーンで吊り上げて枠60から取り去る(
図10、設置工程の一部)。石詰籠22を吊り上げたワイヤ52およびフック51は石詰籠22の蓋の上に載った状態となっている。
【0027】
それから石詰籠22の上に載っているワイヤおよびフック51を取り去って、石詰籠22が枠60の中に設置された状態が完成する(
図11、設置工程の一部)。
【0028】
本実施形態では枠60内に設置した石詰籠22が、枠60の中で移動したり傾いたりしないように枠60と石詰籠22との隙間は15cm以下に設定されている。本実施形態のように円柱形の石詰籠22と円形の穴62,64を有する枠60の場合、この隙間は石詰籠22の外径と穴62,64の内径との差である。また、石を詰める前の石詰籠本体部22の外径と穴62,64の内径との差が15cm以下であることが好ましく、1cm以上5cm以下であることがさらに好ましい。
【0029】
本実施形態では、ケース30にまず石詰籠本体部20を収納し、その後に石詰籠本体部20に石を詰めて蓋をして石詰籠22とし、ケース30と石詰籠22とを一緒に枠60の内部に下ろして設置するので、ケース30により石詰籠22のはらみが抑えられて、枠60の中に小さな隙間のみで石詰籠22を設置することができる。つまりケース30(少なくとも一部)も一緒に枠60の中に入れることにより、石詰籠22の設置位置をほぼ設定通りに精度高く定め、また途中で石詰籠22が傾いてしまうことなく設置することができる。
【0030】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。
【0031】
コンクリート製の枠ではなく、例えば平行に設けられた2組の矢板の間に石詰籠を設置する工法であっても構わない。また、枠の原材料はコンクリートに限定されないし、枠の形状・穴の形状も実施形態1の形状に限定されない。同様に石詰籠の形状も円柱形に限られず、四角柱や六角柱等の角柱形でもよい。
【0032】
ケースにストッパを取り付けなくても構わない。その場合は、石詰籠とともにケースも枠の下部まで下ろして、その後ケースのみを吊り上げて石詰籠のみを枠内に設置する。なお、その場合、吊り具掛け部が枠に当たって枠を傷つけないように、ケースの高さを枠の内側高さよりも大きくすることが好ましく、そのようなケースを用いる場合は石詰工程において石詰籠本体部の下に台などを置いて石詰籠本体部の上端部がケース上端よりも上に位置するようにすると、蓋を設置する作業が容易になって好ましい。
【0033】
ケースは、石詰籠のはらみをある程度抑える強度を有している部材であれば、どのような部材を材料としてもよい。
【0034】
石詰籠を構成する金網は溶接金網が好ましいが、菱形金網やエキスパンドメタルでもよい。
【0035】
金網同士を連結する部材はコイルに限定されず、例えばクリップと呼ばれる部材を使用してもよい。
【符号の説明】
【0036】
20 石詰籠本体部
22 石詰籠
30 ケース
34 ストッパ
40 石
60 枠