(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の強誘電体メモリにおいて、前記強誘電体キャパシタに保存される保存データ値を決定する読み出し回路を更に含み、前記読み出し回路は、前記強誘電体キャパシタに保存された第2の電荷を測定し、前記強誘電体キャパシタのQmaxを測定し、かつ前記第2の電荷および前記測定されたQmaxから前記保存データ値を決定することを特徴とする強誘電体メモリ。
請求項3に記載の強誘電体メモリにおいて、前記強誘電体キャパシタの前記1つに保存された第3のデータ値を決定する読み出し回路を更に含み、前記読み出し回路は、前記強誘電体キャパシタの前記1つに保存された第4の電荷を測定し、前記強誘電体キャパシタの前記1つのQmaxを測定し、かつ前記第4の電荷と前記測定されたQmaxとの比から前記第3のデータ値を決定することを特徴とする強誘電体メモリ。
請求項5に記載の強誘電体メモリにおいて、前記強誘電体キャパシタは、寄生線形キャパシタを含み、前記書き込み回路は、前記強誘電体キャパシタが、1つの方向に完全に分極された状態から反対方向に完全に分極された状態に切り替えられる際に前記強誘電体キャパシタから流れる第5の電荷を測定し、前記第5の電荷は、前記寄生線形キャパシタに保存された寄生電荷に対して補正されることを特徴とする強誘電体メモリ。
請求項7に記載の強誘電体メモリにおいて、前記強誘電体キャパシタは、寄生線形キャパシタを含み、前記読み出し回路は、前記強誘電体キャパシタが、1つの方向に完全に分極された状態から反対方向に完全に分極された状態に切り替えられる際に前記強誘電体キャパシタから流れる第5の電荷を測定し、前記第5の電荷は、前記寄生線形キャパシタに保存された寄生電荷に対して補正されることを特徴とする強誘電体メモリ。
請求項2に記載の強誘電体メモリにおいて、前記強誘電体キャパシタは、強誘電性誘電材料を挟む第1および第2のプレートによって特徴付けられ、前記強誘電体メモリは、前記書き込み回路が前記第1の電荷を前記強誘電体キャパシタに保存させていないか、または前記読み出し回路が前記第2の電荷を測定していない場合、前記第1および第2のプレートを電気的に接続する短絡回路を含み、前記短絡回路は、前記読み出し回路が前記第2の電荷を測定しているか、または前記書き込み回路が前記第1の電荷を前記強誘電体キャパシタに保存させている場合に動作しないことを特徴とする強誘電体メモリ。
請求項2に記載の強誘電体メモリにおいて、前記強誘電体メモリが動作するように設計される最大温度変化速度によって特徴付けられ、前記強誘電体キャパシタは、前記強誘電体キャパシタの温度変化を前記最大速度に制限する熱パッケージを含むことを特徴とする強誘電体メモリ。
請求項3に記載の強誘電体メモリにおいて、前記強誘電体キャパシタの各々は、第1および第2の導電プレートによって特徴付けられ、および前記強誘電体メモリセルの各々は、前記第1および第2の導電プレートを接続する放電路を含み、前記放電路は、前記強誘電体メモリセルが選択されない場合、妨害電圧よりも大きい電圧が前記第1および第2の導電プレート間に生じることを防止するインピーダンスを有し、前記放電路は、前記強誘電体メモリセルが選択される場合、選択インピーダンスよりも大きいインピーダンスを有し、前記妨害電圧は、前記強誘電体キャパシタに保存された電荷を変更するであろう電圧を、前記強誘電体キャパシタに保存されたデータ値を変更するであろう量よりも大きく下回り、および前記選択インピーダンスは、前記強誘電体キャパシタからデータ値を読み込むかまたは前記強誘電体キャパシタにデータ値を書き込む際にエラーを生じさせるであろうインピーダンスよりも大きいことを特徴とする強誘電体メモリ。
請求項13に記載の方法において、前記強誘電体キャパシタは、第1および第2の導電プレートによって特徴付けられ、前記方法は、前記第1および第2の導電プレートを接続する放電路を提供するステップを更に含み、前記放電路は、前記強誘電体メモリセルが読み出し動作または書き込み動作を受けていない場合、妨害電圧よりも大きい電圧が前記第1および第2の導電プレート間に生じることを防止するインピーダンスを有し、前記妨害電圧は、前記強誘電体キャパシタに保存された電荷を変更するであろう電圧を、前記強誘電体キャパシタに保存されたデータ値を変更するであろう量よりも大きく下回り、および前記放電路は、前記強誘電体キャパシタが前記読み出し動作または前記書き込み動作を受けている場合、前記読み出し動作また前記書き込み動作にエラーを生じさせるであろうインピーダンスよりも大きいインピーダンスを有することを特徴とする方法。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、強誘電体メモリおよび強誘電体メモリを動作させる方法を含む。本発明による強誘電体メモリは、強誘電体メモリセルおよび書き込み回路を含む。強誘電体メモリセルは、強誘電体キャパシタを含み、強誘電体キャパシタは、それに保存され得る最大残留電荷Q
maxによって特徴付けられる。書き込み回路は、強誘電体キャパシタに保存するための3つ以上の状態を有する書き込みデータ値を受信する。書き込み回路は、強誘電体キャパシタのQ
maxを測定し、測定されたQ
maxの分数である第1の電荷を決定し、かつ第1の電荷を強誘電体キャパシタに保存させる。第1の電荷は、書き込みデータ値およびQ
maxによって決定される。
【0007】
本発明の一態様において、強誘電体メモリは、強誘電体キャパシタに保存される保存データ値を決定する読み出し回路も含む。読み出し回路は、強誘電体キャパシタに保存された第2の電荷を測定し、強誘電体キャパシタのQ
maxを測定し、かつ第2の電荷および測定されたQ
maxから保存データ値を決定する。
【0008】
本発明の別の態様において、強誘電体メモリは、複数の強誘電体メモリセルおよび1つのメモリセル選択回路を含む。各強誘電体メモリセルは、強誘電体キャパシタであって、強誘電体キャパシタに保存され得る最大残留電荷Q
maxによって特徴付けられる強誘電体キャパシタを含む。Q
maxは、温度の関数であり、強誘電体キャパシタ毎に異なり得る。メモリセル選択回路は、強誘電体キャパシタの1つを選択する。書き込み回路は、強誘電体キャパシタの選択された1つに保存するための3つ以上の状態を有する第3のデータ値を受信する。書き込み回路は、強誘電体キャパシタの選択された1つのQ
maxを測定し、測定されたQ
maxの分数である第3の電荷を決定し、かつ第3の電荷を強誘電体キャパシタの1つに保存させる。第3の電荷は、第3のデータ値によって決定される。
【0009】
本発明の別の態様において、強誘電体メモリは、強誘電体キャパシタの選択された1つに保存された第3のデータ値を決定する読み出し回路も含む。読み出し回路は、強誘電体キャパシタのその1つに保存された第4の電荷を測定し、強誘電体キャパシタのその1つのQ
maxを測定し、かつ第4の電荷と測定されたQ
maxとの比から第3のデータ値を決定する。
【0010】
本発明の更なる態様において、書き込み回路は、第1の電荷が強誘電体キャパシタに保存されるごとにQ
maxを決定する。また、読み出し回路は、強誘電体キャパシタに保存される第2の電荷が測定されるごとにQ
maxを決定する。
【0011】
本発明の別の態様において、強誘電体キャパシタは、寄生線形キャパシタを含み、書き込み回路は、強誘電体キャパシタが、1つの方向に完全に分極された状態から反対方向に完全に分極された状態に切り替えられる際に強誘電体キャパシタから流れる第5の電荷を測定する。第5の電荷は、寄生線形キャパシタに保存された寄生電荷に対して補正される。読み出し回路は、強誘電体キャパシタが、1つの方向に完全に分極された状態から反対方向に完全に分極された状態に切り替えられる際に強誘電体キャパシタから流れる第5の電荷を測定し、かつ寄生線形キャパシタに保存された寄生電荷に対して第5の電荷を補正する。
【0012】
本発明の別の態様において、強誘電体キャパシタは、強誘電性誘電材料を挟む第1および第2のプレートによって特徴付けられ、強誘電体メモリは、書き込み回路が第1の電荷を強誘電体キャパシタに保存させていないか、または読み出し回路が第2の電荷を測定していない場合、第1および第2のプレートを電気的に接続する短絡回路を含む。短絡回路は、読み出し回路が第2の電荷を測定しているか、または書き込み回路が第1の電荷を強誘電体キャパシタに保存させている場合に動作しない。
【0013】
本発明の更なる態様において、強誘電体メモリは、強誘電体メモリが動作するように設計される最大温度変化速度によって特徴付けられ、強誘電体キャパシタは、強誘電体キャパシタの温度の変化速度を最大速度に制限する熱パッケージを含む。
【0014】
本発明の別の態様において、メモリセル選択回路は、書き込み線と、読み出し線と、複数の強誘電体メモリセル選択バスとを含む。強誘電体メモリセルの各々に対応する選択バスの1つである。強誘電体メモリセルの各々は、強誘電体メモリセルに対応する強誘電体メモリセル選択バスにおける信号に応答して、強誘電体メモリセルを読み出し線および書き込み線にそれぞれ接続するための第1および第2のゲートを含む。
【0015】
本発明の別の態様において、強誘電体キャパシタの各々は、第1および第2の導電プレートによって特徴付けられ、および強誘電体メモリセルの各々は、第1および第2の導電プレートを接続する放電路を含む。放電路は、強誘電体メモリセルが選択されない場合、妨害電圧よりも大きい電圧が第1および第2の導電プレート間に生じることを防止するインピーダンスを有し、放電路は、強誘電体メモリセルが選択される場合、選択インピーダンスよりも大きいインピーダンスを有する。妨害電圧は、強誘電体キャパシタに保存された電荷を変更するであろう電圧を、強誘電体キャパシタに保存されたデータ値を変更するであろう量よりも大きく下回り、および選択インピーダンスは、強誘電体キャパシタからデータ値を読み込むかまたは強誘電体キャパシタにデータを書き込む際にエラーを生じさせるであろうインピーダンスよりも大きい。
【0016】
本発明は、強誘電体キャパシタであって、強誘電体キャパシタに保存され得る最大残留電荷Q
maxによって特徴付けられる強誘電体キャパシタを有する強誘電体メモリセルを動作させる方法も含む。本方法は、強誘電体キャパシタに保存される書き込みデータ値を受信する書き込み動作を含み、書き込みデータ値は、3つ以上の状態を有する。本方法は、強誘電体キャパシタのQ
maxを測定するステップと、測定されたQ
maxの分数である第1の電荷を決定するステップと、第1の電荷を強誘電体キャパシタに保存させるステップとを含む。電荷は、書き込みデータ値およびQ
maxによって決定される。
【0017】
本発明の一態様において、Q
maxは、各書き込み動作が実行される前に測定される。
【0018】
本発明の別の態様において、本方法は、読み出し動作を含む。読み出し動作は、強誘電体キャパシタに保存された第2の電荷を決定するステップと、強誘電体キャパシタのQ
maxを決定するステップと、決定されたQ
maxおよび第2の電荷をデータ値に変換するステップとを含み、データ値は、3つ以上の可能な状態を有する。
【0019】
別の態様において、強誘電体キャパシタは、寄生線形キャパシタを含み、Q
maxを決定するステップは、強誘電体キャパシタが、1つの方向に完全に分極された状態から反対方向に完全に分極された状態に切り替えられる際に強誘電体キャパシタから流れる第3の電荷を測定するステップを含む。第3の電荷は、寄生線形キャパシタに保存された寄生電荷に対して補正される。
【0020】
別の態様において、Q
maxは、各読み出し動作が実行されるときに決定される。
【0021】
別の態様において、強誘電体キャパシタは、第1および第2の導電プレートによって特徴付けられ、本方法は、第1および第2の導電プレートを接続する放電路を提供するステップを更に含み、放電路は、強誘電体メモリセルが読み出し動作または書き込み動作を受けていない場合、妨害電圧よりも高い電圧が第1および第2の導電プレート間に生じることを防止するインピーダンスを有する。妨害電圧は、強誘電体キャパシタに保存された電荷を変更するであろう電圧を、強誘電体キャパシタに保存されたデータ値を変更するであろう量よりも大きく下回り、および放電路は、強誘電体キャパシタが読み出し動作または書き込み動作を受けている場合、読み出し動作また書き込み動作にエラーを生じさせるであろうインピーダンスよりも大きいインピーダンスを有する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本出願で述べる回路は、2種類のキャパシタを含む。第1の種類は、強誘電体キャパシタ、すなわちそのキャパシタに誘電体としての強誘電体材料を有するキャパシタである。第2の種類は、非強誘電性材料をその誘電層として有する従来のキャパシタである。形容詞「強誘電体」を伴わない用語「キャパシタ」は、後述の文脈で別途指示しない限り従来のキャパシタに用いられる。
【0024】
本発明の利点がどのように得られるかは、強誘電体キャパシタ毎に3つ以上の状態の保存を試みる従来技術の強誘電体キャパシタメモリが遭遇する問題を参考にして容易に理解され得る。強誘電体メモリは、各状態に対応する強誘電体キャパシタの両端に書き込み電圧を印加することにより、データ値が強誘電体の分極の特定状態にマッピングされるモデルに基づいている。誘電体の分極状態は、誘電体を既知の方向に完全に分極させる読み出し電圧を強誘電体キャパシタの両端に印加して、読み出し電圧を印加した結果として強誘電体キャパシタの1枚のプレートから流れる電荷を観察することによって検出される。
【0025】
このようなスキームは、強誘電体キャパシタの両端に印加された電圧の関数としての強誘電体の分極状態がヒステリシスを示すという事実から複雑化する。すなわち、電圧が除去された際に強誘電体キャパシタに留まる残留分極は、強誘電体キャパシタが完全に分極された最後の時点から強誘電体キャパシタの両端に印加された電圧の履歴の関数である。従って、2つの特定の書き込み電圧を除いて、これらの書き込み電圧間の電圧を単に印加するのみでは、電圧が除去された際の分極状態の再現に至らない。強誘電体キャパシタの以前の短期履歴から独立した分極の既知の状態に至る2つの書き込み電圧は、誘電体を上下の何れかの方向に完全に分極させる書き込み電圧である。この完全な分極をもたらす電圧を飽和電圧と称してV
cと表記する。V
cよりも高い電圧を用いる場合、更なる残留分極は生じない。V
cよりも低い電圧を用いる場合、分極状態は、その書き込み電圧を印加する前の強誘電体キャパシタの履歴に依存するであろう。
【0026】
中間電圧の使用に付随する問題の結果として、強誘電体キャパシタに基づく従来技術の強誘電体メモリは、データの保存のための書き込み電圧として用いられる、V
cおよび−V
cに対応する2つの状態に限られる。これらの電圧の一方を読み出し電圧として用いることができる。
【0027】
分極の中間状態を設定するために中間体書き込み電圧を用いるスキームが提案されている。強誘電体キャパシタのメモリに付随する問題を回避するため、強誘電体キャパシタを完全分極状態の1つに設定することによって最初に中間状態を設定し、次いで、逆分極状態にある強誘電体キャパシタを分極させる傾向がある中間書き込み電圧を印加する。ここで、
図1を参照すると、印加された電圧と、強誘電体キャパシタに保存される電荷との関係が示されている。キャパシタ電極に保存された電荷は、誘電体の残留分極によって電荷が電極へ引き付けられるため、誘電体の分極の直接的な測定値であることに留意されたい。強誘電体キャパシタが最初に形成されたとき、強誘電体材料は、分極されていない。正電圧V
cがキャパシタの両端に印加される場合を考える。強誘電体キャパシタの電荷は、最大値V
cに達するまで曲線501に沿って増大する。ここで、強誘電体キャパシタの両端の電圧が除去されると、強誘電体キャパシタに保存される電荷は、ヒステリシスループ500の一部である曲線502に沿ってQ
maxまで減少する。ここで、Q
maxは、電圧が印加されない場合に強誘電体キャパシタによって保存される最大残留電荷である。
【0028】
ここで、
図2を参照すると、直近の中間分極値を決定するために中間電圧の使用を試みることに付随する問題が示されている。強誘電体キャパシタは、上述のようにV
cの印加によって置かれた位置から開始されると仮定する。部分的な分極を決定するため、強誘電体キャパシタは、最初に曲線507に沿って−V
cまで循環され、次いで電圧を−V
cからV
1まで上昇させる。電圧の関数としての電荷を504に示す。強誘電体キャパシタがV
1と決定されると、電圧は、強誘電体キャパシタの残留電荷Q
1を残して除去される。V
1より僅かに高い電圧V
2を用いる場合、分極は、経路505に沿って進み、最終的な残留電荷は、Q
2となるであろう。従って、プログラミング電圧の僅かな変化でも残留電荷が大幅に変化する。この問題は、ヒステリシス曲線の急な傾斜に起因し、プログラミング電圧におけるエラーを拡大させる。
【0029】
これらのスキームは、別々の強誘電体キャパシタに保存される特定の状態に対応するプログラミング電圧が、これらの別々の強誘電体キャパシタに応じて異なる方法でプログラムできないため、特定の強誘電体キャパシタを特徴付けるヒステリシスループが一定のままであり、かつメモリ内の全ての強誘電体キャパシタのヒステリシスループが同一であると仮定する。中間電圧によって保存される残留電荷の程度が、特定の強誘電体キャパシタを特徴付けるヒステリシスループの形状に感応する関数であることは、
図2から明らかである。ヒステリシスループの形状または位置の僅かな変化は、プログラミング電圧が除去された後に残る残留電荷の大幅な変化につながる。
【0030】
上述の米国特許において、強誘電体キャパシタ毎のヒステリシスループの変化に付随する問題は、電圧ではなく、電荷を用いて強誘電体キャパシタをプログラミングすることによって解決される。すなわち、強誘電体キャパシタに保存するデータ値は、電荷に変換され、その電荷は、強誘電体キャパシタに保存され得る最大電荷を除き、その強誘電体キャパシタの特定のヒステリシスループに依らずに強誘電体キャパシタに強制注入される。ヒステリシスループに差があれば、強誘電体キャパシタ毎に部分的分極が異なる。読み出し時に強誘電体キャパシタがリセットされた場合、強誘電体キャパシタに保存される電荷の全ては、強誘電体キャパシタの分極レベルに依らずに強制排除される。従って、データ値を回復することができる。すなわち、特定のデータ値に対応する電荷は、メモリ内の各種の強誘電体キャパシタのヒステリシスループの変化から独立して同一に維持される。
【0031】
上で記述したプログラミング戦略は、電荷の強制注入によって強誘電体キャパシタがプログラミングされた時点と、強誘電体キャパシタを完全帯電状態にリセットすることによって強誘電体キャパシタから読み出した時点との間で強誘電体キャパシタの温度に有意差がないと仮定する。電荷が強誘電体キャパシタに強制注入された後、電荷は、内部残留分極によって生じた電場によって所定の位置に保たれ、強誘電体キャパシタのプレート間に外部電圧差がない。しかし、強誘電体キャパシタの温度が変化した場合、残留分極も強誘電体材料内の電気双極子の物理的寸法の拡張または収縮に起因して変化する。
【0032】
強誘電体キャパシタは、その容積内に単位セルの集団を含む。キュリー温度未満では、全ての強誘電性単位セルが非対称である。各単位セルの非対称性は、単位セルから生じる正味分極を引き起こす。任意の完璧なキャパシタにおいて単位セルの100%が同様に分極され、垂直に整列して、外部電気力の印加によってその方向を反転させることができる。現実世界では、単位セルの一部は、上の記述に適合するが、残りは、欠陥または格子応力によって所定の位置に固定される。方向を切り替えることができる単位セルのみが、キャパシタの外部から測定される残留分極に寄与する。要約すれば、切替動作中、キャパシタの外部から測定される残留分極は、キャパシタの容積内の切替可能単位セルが寄与する分極の和である。
【0033】
強誘電体キャパシタが示す電気分極は、表面効果である。完全飽和状態において、全ての切替可能な単位セルの構造的に強制された電気分極は、一方または他方の電極を指向する。部分的に分極された状態は、キャパシタを、表面単位セルの一部が1つの方向を指向し、残りの単位セルが他の方向を指向する状態にすることによって実現できる。キャパシタが部分的に切り替わった状態にある状態から始めて、飽和電圧をキャパシタの1つの方向に印加することで、印加された領域を指向する単位セルのみを印加領域から反対方向に切り替えさせる。他の単位セルは、切り替わらないため、全残留分極のその部分によって保持される電荷のみがキャパシタから流れる。
【0034】
本発明は、温度が変化した際、温度変化に反応して各単位セルの残留分極が変化するが、単位セルの総個数が不変であるという認識に基づいている。すなわち、単位セルは、向きを変えず、各単位セル変化によって生じた電場の大きさのみが変化する。本発明によるアナログ状態は、指定された方向に分極された単位セルの割合に応じて決定される。このアナログ状態は、強誘電体キャパシタが急激な温度変化から保護されることを条件として、強誘電体キャパシタがプログラミングされた時点と、読み出しに際して割合が決定された時点との間の温度変化から独立している。
【0035】
分極の変化が生じる理由は、単位セルの寸法が温度に依存するためである。特定の分極方向における単位セルの割合は変化しない。例えば、単位セルの60%がアナログ状態で1つの方向にプログラミングされており、温度が変化した場合、単位セルの大きさ、従って全残留分極への個々の寄与が変化するため、キャパシタの全残留分極が変化する。しかし、上向きおよび下向き単位セルの比率60%は不変のままである。この仮定は、温度変化から生じる焦電効果および熱機械効果が単位セルに力を及ぼし、その相対的な向きを変えることができない限り真である。単位セル方向の比率が温度変化に対して不変のままであるため、その比率は、未知のアナログ状態にある強誘電体キャパシタが完全分極状態に切り替えられる際に放出される電荷を、強誘電体キャパシタが1つの完全分極状態から反対方向の完全分極状態に切り替えられる際に放出される電荷と比較することよって決定することができる。第2の測定値は、読み出し温度で保存され得る最大電荷の測定値を与える。第1の測定値は、読み出し温度でキャパシタに保存された電荷の測定値を与える。これらの電荷は、共に温度と同様に変化するため、比率は、所望の方向に分極された単位セルの割合を表す。
【0036】
ここで、
図3を参照すると、
図1に示すヒステリシスループを有する理想的な強誘電体キャパシタに対する実際の強誘電体キャパシタの概略図である。強誘電体キャパシタ20は、理想的な強誘電体キャパシタ21、非強誘電性キャパシタ22および漏出レジスタ23を含む。理想的な強誘電体キャパシタ21は、電子をプレート27に強制注入することによって部分的に分極されていると仮定する。温度が上昇すれば、残留分極が減少し、電子がプレート27から流れて線形キャパシタ22に一時的に保存される。これにより、漏出レジスタ23の両端の電圧が上昇して電子を強制的にプレート26へ移動させる。ここでの記述のため、線形キャパシタ22の両端で誘導される電圧が低過ぎるため、この電圧では、特定の方向に分極する単位セルの割合が変わらないと仮定する。線形キャパシタ22に保存された電子は、線形キャパシタ22の両端の電圧差によってプレート26まで移動される。この時点で、理想的な強誘電体キャパシタ21に保存された電荷は、プログラミング中に保存された電荷よりも少ない。従って、新たな温度で強誘電体キャパシタ20から読み出して、強誘電体キャパシタ20に保存されるデータの状態を電荷から推定すると、誤ったデータ値が読み出される恐れがある。エラーの大きさは、温度変化の大きさおよび強誘電体キャパシタの特性に依存する。
【0037】
新たな温度で強誘電体キャパシタから読み出すのではなく、温度をプログラミング時の温度に戻すと、強誘電体材料の分極が増大して、電子が再びプレート27に強制注入されることに留意されたい。ここで、強誘電体キャパシタから読み出せば、正しい電荷が観察されるであろう。従って、データ保存期間中も温度の変化速度が小さいことを条件として、装置から読み出される電荷は、装置に保存された電荷およびプログラミング温度と温度の読み取り値との温度差のみに依存する。中間プログラミング電圧の利用に基づくアナログ強誘電体メモリも温度問題に直面することに留意されたい。
【0038】
上述のシステムにおいて、保存するデータ値は、電荷を保存する特定の強誘電体キャパシタの特性から独立した電荷に変換される。本発明は、データ値を保存する特定の強誘電体キャパシタに保存され得る最大電荷の百分率にデータ値を変換することにより、上述の温度問題が解決され得るという見方に基づいている。
【0039】
任意の温度において、最大残留分極が存在し、従って強誘電体キャパシタに保存され得る最大電荷が存在する。この最大電荷をQ
maxと表記する。Q
maxを保存する際、切替可能な領域の全てが同一方向を指向する。この最大電荷は、たとえ強誘電体キャパシタが全て同じ温度であっても、多強誘電性キャパシタメモリ内の強誘電体キャパシタ毎に異なる。最大の電荷は、強誘電体キャパシタの寿命および特定の強誘電体キャパシタの履歴を通しても変化する。強誘電体キャパシタに保存される状態の個数をN
s(N
s>2)と表記する。表記の都合上、状態に0〜N
s−1の番号を付与する。本発明の一態様において、各状態は、保存されるQ
maxの異なる割合に対応する。すなわち、状態nは、強誘電体キャパシタに保存される電荷(n/N
s)Q
maxに対応する。本例では、保存された最大電荷の割合と状態番号との比例関係を用いるが、状態と保存されたQ
maxの割合との関係が単調であることを条件として他の関係を用い得る。N
sの最大値を決定する要因について以下でより詳細に述べる。
【0040】
特定の強誘電体キャパシタにデータ値を保存するには、その強誘電体キャパシタのQ
maxの現在値を知らなければならない。従って、各書き込み動作前にQ
maxを決定する必要がある。典型的に、データ値は、整数であるため、強誘電体キャパシタに強制注入する絶対電荷に達するよう、Q
maxによって設定される分数にデータ値を変換する必要がある。
【0041】
ここで、
図4を参照すると、データ値を特定の強誘電体キャパシタに保存する手順のフローチャートである。本処理は、450に示すように、データ値をQ
maxの分数に変換することから開始される。次に、451に示すように、データ値を保存する特定の強誘電体キャパシタのQ
maxを決定する。Q
maxは、強誘電体キャパシタを1つの方向に完全に分極された状態にリセットし、次いで強誘電体キャパシタが反対方向に完全に分極されるように分極が切り替えられる際に強誘電体キャパシタのプレート間を流れる電荷を測定することによって測定され得る。本ステップの終了時点で、強誘電体キャパシタが完全に分極されることに留意されたい。この分極状態を、以下の記述では下向き状態と称する。
【0042】
次に、452に示すように、ステップ450で決定された分数にQ
maxの測定値を乗算することにより、強誘電体キャパシタに強制注入する電荷を決定する。最後に、ステップ452で決定された電荷を453に示すように強誘電体キャパシタに強制注入する。電荷は、電荷が強誘電体キャパシタの分極を減らすように強誘電体キャパシタのプレートに強制注入される。すなわち、電荷は、強誘電体キャパシタの分極を部分的に上向きに移動させる。
【0043】
ここで、
図5を参照すると、メモリ内の特定の強誘電体キャパシタからデータ値を読み出すために用いる手順のフローチャートである。本手順は、454に示すように、注目する強誘電体キャパシタに現在保存されている電荷を測定することから開始される。以下により詳細に述べるように、電荷は、強誘電体キャパシタを完全分極下向き状態にリセットして、強誘電体キャパシタのプレート間を流れる電荷を測定することによって測定され得る。代替的に、保存される電荷は、強誘電体キャパシタを完全分極上向き状態にさせるために強誘電体キャパシタに印加する必要がある電荷を測定することによって測定され得る。
【0044】
次に、455に示すように強誘電体キャパシタのQ
maxを測定する。これは、キャパシタを完全分極下向き状態から完全分極上向き状態にリセットし、次いで分極が完全分極下向き状態に反転した際にプレート間を流れる電荷を測定することによって実現され得る。最後に、データ値を、456に示すようにQ
maxの測定値に対する測定電荷の比率を計算して、その割合を対応するデータ値に変換することによって決定する。特定の強誘電体キャパシタからデータ値を読み出し、次いで新たなデータ値を直ちに強誘電体キャパシタに保存する「読み出し/書き込み」動作において、読み出し動作からの強誘電体キャパシタのQ
max値を後続の書き込み動作に使用できることに留意されたい。また、強誘電体キャパシタは、読み出し動作の終了時点で既に完全分極下向き状態にある。
【0045】
温度に伴う分極の百分率変化は、全ての状態で同じである。従って、電荷をQ
maxに正規化することで、強誘電体キャパシタがプログラミングされた場合に時間の関数としての温度変化速度が「小さい」ことを条件として、異なる温度で実行される読み出しおよび書き込み動作から生じる変動が除去される。強誘電体キャパシタのプレート間を流れる電流は、誘電温度の変化速度の関数である。外部漏出経路が何ら存在しない場合、その電流は、
図3に示す漏出レジスタ23を通過しなければならない。漏出レジスタ23を通してその電流を強制的に流すため、漏出レジスタ23の両端の電圧を維持しなければならない。強誘電体キャパシタから放出された電荷がこの電圧を与える。その電圧が強誘電体キャパシタの抗電圧の顕著な割合である場合、強誘電体キャパシタの分極が変化し、強誘電体キャパシタから読み出した際にエラーが生じる。例えば、隣接データ状態の分極の差の半分よりも多く分極を移動させる電圧は、重大な問題を引き起こす。以下により詳細に述べるように、このような電圧増強は、強誘電体キャパシタが電荷を保存中であり、エラーを引き起こし得る温度変化に曝される場合、強誘電体キャパシタのプレート間に電流路を提供することによって回避できる。
【0046】
上述の手順は、所定の電荷を強誘電体キャパシタに強制注入して既知の中間分極状態にプログラミングできることに依存する。上述の米国特許は、既知の電荷を強誘電体キャパシタに強制注入するための詳細を提供する。ここで、
図6を参照すると、本発明の一実施形態で用いる基本プログラミング原理が示されている。プログラムサイクルの最初に、強誘電体キャパシタ25は、矢印で示すように下向きにプログラミングされる。これは、電流制限電流源24を用いて誘電層を図に示す方向に完全に分極させる量だけ、プレート27に対するプレート26の電位を増大させることによって実現される。
【0047】
中間分極状態を設定するため、電流制限電流源24は、強誘電体キャパシタ25の両端に逆電位を印加するが、流れることができる電流が限られるため、分極を完全に反転させる時間は、非制限電流源を用いた場合に通常必要とされる時間よりも長くなる。本発明は、分極が完全に反転する前に処理が終了した場合、強誘電体キャパシタ25が中間分極状態に留まるという認識に基づいている。従って、電流制限電流源24が定電流源である場合、強誘電体キャパシタ25の分極状態は、プログラミング時間の関数である。例えば、電流制限電流源24がオンである時間を決定するタイマー28を用いて入力値を中間分極状態に変換することができる。
【0048】
ここで、
図7を参照すると、本発明の実施形態で利用できる別のプログラミング構成が示されている。本実施形態において、デジタル/アナログ変換器32を用いて、スイッチ36がデジタル/アナログ変換器32を強誘電体キャパシタ33に接続するために設定される際、入力値を強誘電体キャパシタ33に印加される電圧に変換する。これにより、強誘電体キャパシタ33に既知の電荷が残る。強誘電体キャパシタ33が帯電した後、スイッチ36を用いて、強誘電体キャパシタ33を既にリセットされている強誘電体キャパシタ31に接続する。強誘電体キャパシタ33からの電荷は、次いで、強誘電体キャパシタ31に流入する。切替前の強誘電体キャパシタ33の電圧をV
1と表記し、切替後の導線34の電圧をV
2と表記する。従って、強誘電体キャパシタ31へ転送された電荷は、C(V
1−V
2)であり、ここで、Cは、強誘電体キャパシタ33の静電容量である。V
1>>V
2である場合、転送された電荷は、線形デジタル/アナログ変換器の入力値に比例する。何れの場合も、入力状態を転送された電荷量にマッピングする較正曲線が得られる。代替的に、デジタル/アナログ変換器32は、非線形伝達関数を用いてV
2を補償することができる。
【0049】
図6に示す電流制限電流源24とタイマー28との組み合わせ、または
図7に示すデジタル/アナログ変換器32と、スイッチ36と、強誘電体キャパシタ33との組み合わせの各々は、既知の電荷をデータ値によって決定された強誘電体キャパシタへ転送する「電荷源」と見なすことができることに留意されたい。転送される電荷量は、電荷が最大電荷Q
max未満であることを条件として、注目する強誘電体キャパシタのヒステリシス曲線および飽和電圧から独立している。Q
max値が僅かに異なり、および/またはヒステリシス曲線が僅かに異なる2つの別々の強誘電体キャパシタを考える。電荷Qが各々のキャパシタに強制注入された場合、キャパシタは、たとえこれらの強誘電体キャパシタが同一電荷を保存しても、強誘電体キャパシタの特性の差からその各ヒステリシス曲線上での座標が僅かに異なる。従って、固定電荷を転送することと、保存するデータ値に対応する電圧で強誘電体キャパシタをプログラミングすることとは均等でない。
【0050】
ここで、
図8を参照すると、強誘電体キャパシタに保存された電荷を読み出す簡素化された回路が示されている。記述の都合上、強誘電体キャパシタ43は、実線矢印46で示すように上向き分極にリセットされたと仮定する。データは、従って、破線矢印の方向に分極を減少させた電荷を保存することによって強誘電体キャパシタ43に保存された。読み出し回路の目的は、保存された電荷の単調関数である読み出し電圧を印加することにより、強誘電体キャパシタ43が再び上向き状態にリセットされた際の電荷を測定することである。
【0051】
読み出し動作は、線形キャパシタ42が電位V+に帯電されるようにスイッチ41が開いており、スイッチ44が閉じた状態から開始される。線形キャパシタ42が帯電された後、スイッチ44が開き、スイッチ41が閉じる。最初に、強誘電体キャパシタ43は、強誘電体キャパシタの両端に電位V+を有する。V+が十分に高い場合、強誘電体キャパシタ43は、上向き状態にリセットされ、強誘電体キャパシタ43に保存された電荷Qが線形キャパシタ42の方へ移動することにより、線形キャパシタ42の電位をQ/Cに等しい量だけ下げる。ここで、Cは、線形キャパシタ42の静電容量である。従って、導線47の電圧は、強誘電体キャパシタ43に保存された電荷の関数である。この読み出しスキームが、強誘電体キャパシタ43に保存され得る電荷の全範囲にわたって動作するには、V+がQ
max/C+Vsより大きくなければならない。ここで、Vsは、強誘電体キャパシタ43を完全にリセットするのに必要な電位である。読み出し動作の終了時点で強誘電体キャパシタ43が上向き状態にリセットされることにも留意されたい。
【0052】
図8に示す回路は、
図9に示すように、V+電源が、本発明の別の実施形態による簡素化された読み出し回路であるV−電源で代替された場合に第2の読み出しスキームを実行するために用いることもできる。この読み出し回路は、
図8に関して上で述べたものと同様に動作する。最初に、線形キャパシタ42を帯電させるため、スイッチ44が閉じているのに対し、スイッチ41が開いている。次いで、スイッチ44が開き、続いてスイッチ41が閉じる。電位は、強誘電体キャパシタ43を完全に下向きに分極させるのに十分である。これを実現するのに必要な電荷が線形キャパシタ42から提供される。従って、スイッチ41が閉じる前後での導線47の電圧の差は、強誘電体キャパシタ43の分極を部分分極状態から完全下向き状態に遷移させるのに必要な電荷の測定値である。本スキームにおいて、強誘電体キャパシタ43は、再プログラミングする前に上向き分極にリセットされなければならない。
【0053】
上述の手順は、
図3に示す線形キャパシタ22の静電容量が無視できる程度と仮定する。理想的な強誘電体キャパシタと区別するために、以下の記述では線形キャパシタ22を線形キャパシタと称する。強誘電体キャパシタのプレートの両端に電圧が印加される場合、ある程度の電荷が線形キャパシタに保存される。この電荷は、電圧差によって線形キャパシタに保持される。電圧が除去された場合、電荷は、何れかの漏出経路を通って消失し、強誘電体キャパシタに保存された残留電荷のみが残る。文脈が別途指示しない限り、本明細書が、強誘電体キャパシタに保存される電荷に言及する場合、注目する電荷は、残留電荷である。
【0054】
ここで、
図12を参照すると、
図7に示すプログラム装置と共に寄生線形キャパシタが明示的に示されている。この場合、線形静電容量は、無視できる程度ではないと仮定しており、従って、強誘電体キャパシタ33から強誘電体キャパシタ31に転送された電荷の一部は、強誘電体内ではなく、理想的な強誘電体キャパシタ33に付随する線形キャパシタ22に存在する。強誘電体キャパシタ内の残留分極によって拘束される実際の電荷を決定するには、線形キャパシタ22に残った電荷量を決定しなければならない。スイッチ36が導線34に接続された後に強誘電体キャパシタ33に残留電圧が存在すれば、線形キャパシタ22に保存された電荷が存在する。電荷量は、導線34の電圧に線形キャパシタ22の静電容量を乗算した値である。しかし、この時点での線形キャパシタ22の静電容量は、未知である。線形キャパシタ22の静電容量C
Lを決定するため、強誘電体キャパシタ33を導線34から分離して接地点に短絡させる。次いで、強誘電体キャパシタ33を導線34に再接続する。線形キャパシタ22に保存された電荷の一部が強誘電体キャパシタ33へ転送されるため、ここで、強誘電体キャパシタ33が新たな電位V
3である。次いで、線形キャパシタ22の静電容量をC
L=C*V
3/(V
2−V
3)から決定することができる。ここで、Cは、強誘電体キャパシタ33の静電容量である。従って、強誘電体材料に保存された電荷は、C(V
1−V
2)−C
L*V
2である。次いで、この電荷を用いて、強誘電体キャパシタ内の電荷を所望のレベルにするのに必要な任意の追加電荷を決定することができる。
【0055】
強誘電体キャパシタに付随する寄生線形キャパシタも、強誘電体キャパシタから読み出される電荷にエラーを生じさせる恐れがある。ここで、
図13を参照すると、線形キャパシタ22として明示的に示す強誘電体キャパシタ43に付随する寄生線形キャパシタと共に
図8に示す読み出スキームが示されている。
図8に関して記述した読み出スキームにおいて、線形キャパシタ42は、V+に帯電され、次いでスイッチ41を閉じることによって強誘電体キャパシタ43に接続される。強誘電体キャパシタ43に保存された電荷は、次いで、線形キャパシタ42へ移動して導線47の電圧をV
2に下げる。しかし、スイッチ41が閉じられた場合、線形キャパシタ22がここで線形キャパシタ42と平行であるため、線形キャパシタ42の静電容量は、C
Lだけ増大する。従って、強誘電体キャパシタ43から移動する電荷は、(C
42+C
L)ΔVである。ここで、C
42は、線形キャパシタ42の静電容量であり、ΔVは、スイッチ41が閉じたときの導線47の電圧の変化である。従って、C
Lが静電容量の有意な割合であれば、再びC
Lの推定値が正しい電荷量に達する必要がある。
【0056】
C
Lの測定値は、書き込み動作に関して上で述べたものと同様の手順を用いて得られる。線形キャパシタ42が事前帯電された後、強誘電体キャパシタ43が導線47に接続されると、残留分極に付随する全電荷が強誘電体キャパシタ43から除去され、強誘電体キャパシタ43は、完全分極上向き状態にリセットされる。従って、スイッチ41が開くと、強誘電体キャパシタ43に残っている電荷があれば線形キャパシタ42に保存される。線形キャパシタ42が短絡してスイッチ41が再び閉じると、線形キャパシタ42に保存される電荷の一部が線形キャパシタ42へ流れ、導線47の電圧は、新たな何らかの電圧(V
3)へ上昇する。次いで、C
LをC
L=V
3C42/(V
2−V
3)から計算することができる。
【0057】
同様の手順を用いて、強誘電体キャパシタからの読み出しおよび書き込みを行うために定電流源を用いる実施形態における寄生線形静電容量を補正することができる。ここで、
図15を参照すると、強誘電体キャパシタからの読み出しおよび書き込みを行うために定電流源を用いる本発明の実施形態が示されている。
図15に示す実施形態において、強誘電体キャパシタ25に付随する寄生線形キャパシタを明示的に示す。データ値の読み出しおよび書き込みは、共に強誘電体キャパシタ25のQ
maxに関する知識を必要とする。Q
maxは、強誘電体キャパシタ25を完全分極状態にリセットし、次いで強誘電体キャパシタ25が逆向きの完全分極状態に切り替えられる際に強誘電体キャパシタ25から流れる電荷を測定することによって決定される。Q
maxを測定するため、読み出し/書き込み回路401は、最初に、強誘電体キャパシタ25の隣の矢印で示すように、強誘電体キャパシタの分極を完全分極下向き状態に設定する導線402に電位を印加する。線形キャパシタ22に保存された電荷に起因して強誘電体キャパシタ25の両端に電圧が存在すれば、スイッチ407を閉じて強誘電体キャパシタ25のプレート同士を短絡させることによって除去される。次いで、強誘電体キャパシタ25の分極を逆向きの完全分極状態に反転させるのに必要な電荷は、スイッチ403を閉じて、電流制限電流源24を用いて強誘電体キャパシタ25内の電荷を測定することによって決定される。この動作中、スイッチ404、407は、開いたままである。強誘電体キャパシタ25が完全に分極されると、強誘電体キャパシタ25に追加的に電荷を保存することができないため、強誘電体キャパシタ25が完全に分極されると、電荷の唯一の出口が線形キャパシタ22であることから、導線402の電圧は、急激に上昇し始める。この時点で、強誘電体キャパシタ25および線形キャパシタ22に伝送された電荷は、既知の電流および帯電時間から決定される。次に、線形キャパシタ22に保存された電荷は、スイッチ403を開き、導線402の電圧を読み取り、次いで既知の「共有」キャパシタ408を線形キャパシタ22と並列に配置するスイッチ404を閉じることによって決定される。導線402の電圧は、現時点でより大きいキャパシタ(すなわちキャパシタ22および408の静電容量の和)に保存される電荷に起因して低下する。電圧の変化から、線形キャパシタ22の静電容量C
Lは、上で述べたものと同様に決定することができる。その静電容量が与えられると、強誘電体キャパシタ25および線形キャパシタ22の組み合わせに挿入された既に測定済みの電荷からQ
maxの値を決定することができる。
【0058】
データは、強誘電体キャパシタ25を完全に上向きに分極させるために強誘電体キャパシタ25に追加すべき電荷を決定することによって強誘電体キャパシタ25から読み出すことができる。この電荷は、現在保存されている電荷とQ
maxとの差である。従って、Q
maxが与えられると、強誘電体キャパシタ25に保存される電荷を決定することができる。強誘電体キャパシタ25を完全に分極させる電荷を測定する手順は、電流制限電流源24を介して電荷を追加する前に強誘電体キャパシタ25の分極が変更されない点以外には、Q
maxを決定する上述の手順と基本的に同一である。
【0059】
上述の例において、C
Lは、メモリアレイ内の各強誘電性キャパシタについて各読み出しおよび書き込み動作で計算される。しかし、C
Lを補正する必要性は、強誘電体キャパシタに保存されるレベルの個数と、読み出しおよび書き込み動作中に寄生線形キャパシタに保存される電荷量とに依存する。また、各読み出しおよび書き込みでC
Lを計算する必要性は、メモリアレイ全体にわたるC
Lの変動性の程度および温度に依存する。C
Lは、強誘電体キャパシタにプログラミングされる電荷および強誘電体キャパシタから読み出される電荷にエラーを生じさせる。連続的な分極状態は、各状態について保存された電荷によって特徴付けられる。電荷エラーが連続的な状態間での電荷の差と比較して小さい場合、更なる補正は不要である。本発明の一態様において、エラーが、連続的なレベル間で保存された電荷の差の0.25倍未満である場合、エラーは、小さいと考えられる。
【0060】
最も簡単な場合、C
Lが全ての強誘電体キャパシタに対してゼロであると仮定する。これが特定のメモリ設計におけるエラーにつながる場合、次の補正レベルは、アレイが製造された時点でのアレイ内の各強誘電体キャパシタに対するC
Lを測定して、平均C
L値をアレイ較正の一部として保存することであろう。この場合、エラーは、アレイにわたるC
Lの変動性および温度によって決定される。結果的に生じたエラーが依然として大き過ぎる場合、各読み出しおよび書き込み動作でC
Lを測定する実施形態を用いることができる。
【0061】
ここで、
図10を参照すると、本発明によるアナログ強誘電体メモリの一実施形態が示されている。強誘電体メモリ50は、複数の行および列に編成された複数の強誘電体メモリセルを含む。典型的な強誘電体メモリセルに51とラベル付けする。各強誘電体メモリセルは、強誘電体キャパシタ52およびインターフェース回路53を含む。1行内の全ての強誘電体メモリセルは、読み出しおよび書き込み動作中に並列処理される。処理対象の行は、読み出しおよび書き込み中に行処理動作を順序付けるための導体も含む複数の行選択バス54を動作させる行選択回路56によって選択される。所与の列内の各強誘電体メモリセルは、58および59に示す2列のバスに接続される。列バス59を用いて、処理対象の強誘電体メモリセル内の強誘電体キャパシタに保存されるデータを読み出し、列バス58を用いて強誘電体キャパシタを新たなアナログ値でプログラミングする。各強誘電体キャパシタは、N状態(N>2)の1つにプログラミングすることができる。処理中の行内の強誘電体キャパシタの状態は、その強誘電体キャパシタに保存された電荷量を示す列バス58上の信号を生成することによって確認される。この状態は、回路62を用いて読み出される。処理中の行内の強誘電体キャパシタの状態は、書き込み回路61を介して、そのセルに接続された列バス59に信号を印加することによって設定される。信号は、強誘電体メモリセルに保存する値に関する所定の電荷量をその強誘電体メモリセル内の強誘電体キャパシタに保存させる。
【0062】
行から読み出されたデータは、行バッファ55に保存される。本発明の一態様において、データは、対応する強誘電体キャパシタに保存される電荷を表すアナログ信号からデジタル値に変換される。読み出し処理が破壊的であるため、データを一切変更しない場合でも書き込み動作によってこのデータを行に書き戻す必要がある。変更する場合、行内の強誘電体メモリセルがリセットされた後に変更が行バッファ55に入力される。行バッファ55内のデータは、次いで、対応する強誘電体キャパシタに保存される電荷に変換される。
【0063】
読み出しおよび書き込み動作は、アドレス(ADDR)、動作コード(OPCODE)およびアドレスで指定される強誘電体メモリセルに書き込むデータを受信するコントローラ57を用いる。指定されたアドレスからのデータは、データ導線に出力される。行選択回路56は、適当な信号をアドレスによって指定された行選択バスに印加する。
【0064】
強誘電体メモリ50は、メモリセルの各列について2列のバスを読み出し用に1つおよび書き込み用に1つ含む。本構成は、詳細な実施形態の以下の記述を簡潔にするものである。しかし、1列のバスのみを要する実施形態も考えられる。
【0065】
ここで、
図11を参照すると、書き込み動作中に強誘電体キャパシタに保存された電荷量を測定することによってデータを読み出す、上述の保存スキームを用いる本発明による強誘電体メモリの一実施形態が示されている。記述を簡潔にするために、強誘電体メモリ70内の1つの強誘電体メモリセルのみを示す。4本の行導線R1〜R4は、強誘電体メモリセル310が位置するメモリセルの行に対応する行バスの一部である。
【0066】
読み出しおよび書き込み動作は共に、読み出しまたは書き込み時点での強誘電体キャパシタ82のQ
maxに関する知識を必要とする。書き込み動作において、強誘電体キャパシタ82に保存されたデータは、既に読み出されるであろう。従って、強誘電体キャパシタ82のQ
maxは、強誘電体キャパシタ82を完下向き状態にプログラミングし、次いで強誘電体キャパシタ82を上向き状態に完全に分極させる電圧が強誘電体キャパシタ82に印加された際に放出される電荷を測定するように読み出し回路74に要求することによって測定することができる。この動作により、強誘電体キャパシタ82は、完全上向き状態に分極される。書き込み動作において、Q
maxの値は、書き込み回路75に伝送され、この回路は、次いで、受信したデータ値および強誘電体キャパシタ82に保存するデータ状態の最大個数から、強誘電体キャパシタ82をプログラミングするのに必要な電荷を計算する。ゲート84を導電状態に、かつゲート86を非導電状態にすることにより、強誘電体メモリセル310に値が書き込まれる。キャパシタ77は、次いで、書き込まれているデータに対応する値を有する電荷を、書き込み回路75によってゲート76が導電状態になった際に強誘電体キャパシタ82へ転送させる電位に帯電される。キャパシタ77の電圧は、V
2を、書き込まれるデータ値に依存する量だけ下回る。強誘電体キャパシタ82がゲート84を介して書き込み導線73に接続された場合、上部プレートの電位は、V
2に保たれた底部プレートよりも低く、従って、書き込み動作は、リセット動作によって生じる分極の一部を反転させる。
【0067】
読み出し動作において、Q
maxの決定は、強誘電体キャパシタ82に現在保存されている電荷が決定された後に行わなければならない。データは、ゲート88によって読み出し線72に接続された読み出し回路74による3段階処理で強誘電体メモリセル310から読み出される。最初に、キャパシタ83は、ゲート86によって強誘電体キャパシタ82から絶縁されている間にV
1に帯電される。ゲート85を用いてキャパシタ83をV
1に接続する。ここで、V
1は、V
2よりも、最大設計電荷をキャパシタ83へ転送させても依然としてキャパシタ83の上部プレートをV
2よりも高い電圧に維持できる量だけ大きい。キャパシタ83の最終的な電圧は、ソースフォロア87によって増幅されて、読み出し回路74内のキャパシタに電圧を保存する読み出し回路74によって読み出される。次に、ゲート84がオフになってゲート86が導電状態になり、強誘電体キャパシタ82の両端でキャパシタ83に電圧を印加する。これにより、強誘電体キャパシタ82がリセットされ、強誘電体キャパシタ82に保存される電荷を放出させることにより、ソースフォロア87のゲートでの電圧が下がる。この電圧は、次いで、読み出し回路74によって読み出され、以前に保存された電圧から差し引かれて、強誘電体キャパシタ82から放出された電荷を示す電圧差に到達する。最後に、Q
maxが決定される。強誘電体キャパシタ82は、再び完全分極下向き状態にプログラミングされ、読み出し処理が繰り返されてQ
maxを決定する。次いで、最初の2段階で測定されたQに対するQ
maxの比率がデジタル化されて出力データが得られる。
【0068】
上述のように、強誘電体メモリの動作中および強誘電体メモリに通電されていない期間に急速な温度変動が予想される場合、強誘電体キャパシタに現れる焦電効果により、これらの温度変動中に強誘電体キャパシタのプレート間で生じ得る電圧を制限することが有利である。本発明の一態様において、強誘電体メモリセル310に電圧が印加されない場合に強誘電体キャパシタ82の両端の電圧を制限するため、任意選択的な短絡回路89が強誘電体キャパシタ82のプレート間に接続される。
【0069】
上述の例示的な短絡回路において、短絡回路89内の各トランジスタは、通常、導電状態にあるが、トランジスタのゲートの両端に正電圧が印加されるとオフになる。強誘電体メモリセル310が選択された場合、通電状態での動作中、導線89aの電圧は、V
2を中心として上下に変動し得る。電圧がV
2を超えた場合、1つのトランジスタがオフになる。V
2よりも下がった場合、他のトランジスタがオフになる。従って、強誘電体キャパシタ82のプレート同士は、読み出しおよび書き込み動作中に短絡しない。電力が遮断された場合、V
2電力線およびR1は、0ボルトになり、従って3つのトランジスタが全て導電状態になり、保存データ値を変えるのに十分な電圧が温度変化によって強誘電体キャパシタ82の両端に誘導されることを防止するためにプレート同士が短絡する。
【0070】
典型的に、本発明によるメモリの読み出しおよび書き込み時間は、温度変化が発生する時間よりもはるかに短い。この場合、短絡回路89は、適当なサイズのレジスタで代替することができる。レジスタは、読み出しおよび書き込み時間と比較して大きいRC時定数を有すること必要となるであろう。ここで、静電容量は、強誘電体キャパシタ82の寄生静電容量である。レジスタは、強誘電体キャパシタ82から流れる電荷が、強誘電体キャパシタ82に保存されるデータ値を変更するのに十分な電圧をレジスタの両端に生じさせることなく、強誘電体キャパシタ82の反対側のプレートへ移動できる程度に十分に小さいことが必要となるであろう。
【0071】
上述のように、温度が変動する間に乱されるデータに関する問題は、強誘電体キャパシタの温度変化の速度に依存する。温度変化の速度を制限できる場合、データ変更に付随する問題を大幅に軽減することができる。典型的に、最も懸念される温度変化は、気温の変動である。強誘電体キャパシタの温度変化の速度は、メモリ回路の熱質量に依存する。熱質量が十分に大きいかまたは熱抵抗体層がメモリ回路を環境から分離する場合、非通電回路の温度が変動し得る速度を、任意の所与のメモリ設計によるデータを乱す速度未満に保つことができる。ここで、
図14を参照すると、メモリの温度が変化し得る速度を低下させるようにパッケージされた本発明の一実施形態によるメモリの断面図である。メモリ回路301が層302および303間に挟まれている。一実施形態において、層303、302は、メモリ回路301から外部環境へ熱を流出させながら、メモリ回路301の温度変化の速度を低下させるのに十分な熱質量を有する熱導体である。本実施形態により、層302、303がヒートシンクとして作用するため、温度変化の速度を制限しながら、通電状態での動作中にメモリ回路301で生じた熱を逃がすことができる。ここで、メモリ回路301または層302、303は、メモリ回路301内での短絡を防止する絶縁層を含むと仮定する。
【0072】
別の実施形態において、層302、303は、メモリ回路301に通電されていない期間中、温度変化の速度を制限するのに十分な熱抵抗を提供する熱絶縁体である。
【0073】
読み出しおよび書き込み機能を別々の要素に分割するメモリシステムも考えられることに留意されたい。システムは、3つの要素、すなわち書き込み装置、強誘電体キャパシタを含むメモリモジュールおよび読み出し装置を含み得る。着脱可能なメモリモジュールは、プログラミングのために書き込み装置にプラグインするように適合される。従って、着脱可能なモジュールは、取り外されて、読み出しのため読み出し装置に移設される。この種のシステムは、多数の書き込みステーションがある期間にわたりデータを蓄積する状況に適合される。書き込みモジュールは、次いで、データを読み出してそのデータを処理する処理システムの一部である共通の読み出しステーションへ送られる。
【0074】
上述の実施形態は、強誘電体キャパシタの誘電体の分極方向を記述するための用語「上向き」および「下向き」を用いる。しかし、これらは、地球とは無関係の単に便利なラベルに過ぎないことを理解されたい。
【0075】
本発明の上述の実施形態は、本発明の各種の態様を示すために提供されている。しかし、異なる特定の実施形態で示す本発明の異なる態様を組み合わせて、本発明の他の実施形態を提供できることを理解されたい。また、上の記述および添付図面から、本発明に対する各種の変更形態が明らかになるであろう。従って、本発明は、以下の請求項によってのみ限定される。