特許第6963348号(P6963348)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963348
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】牛用飼料の製造方法と牛用飼料
(51)【国際特許分類】
   A23K 50/10 20160101AFI20211025BHJP
   A23K 10/37 20160101ALI20211025BHJP
【FI】
   A23K50/10
   A23K10/37
【請求項の数】4
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2019-187354(P2019-187354)
(22)【出願日】2019年10月11日
(65)【公開番号】特開2021-61766(P2021-61766A)
(43)【公開日】2021年4月22日
【審査請求日】2019年11月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391012095
【氏名又は名称】中部飼料株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503194576
【氏名又は名称】稲畑産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136113
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寿浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健史
(72)【発明者】
【氏名】谷田 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】林 紹偉
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭45−030180(JP,B1)
【文献】 特開昭61−058543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 50/10
A23K 10/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サトウキビを圧搾し、同じサトウキビから得られる圧搾滓と搾液とを再度混合したものを牛用飼料へ配合する、牛用飼料の製造方法。
【請求項2】
前記サトウキビを粉砕してから圧搾する、請求項1に記載の牛用飼料の製造方法。
【請求項3】
前記圧搾滓及び搾液の混合物を乾燥してから飼料に配合する、請求項1または請求項2に記載の牛用飼料の製造方法。
【請求項4】
同じサトウキビから得られた圧搾滓と搾液成分との混合物を含有し、
前記搾液成分が糖分等を精製することなく混合されている、牛用飼料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛用飼料の製造方法と牛用飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、サトウキビを圧搾して得られた糖分は、主として人の食用に供される一方、その圧搾滓(バガス)は牛用飼料に混合されて牛の食用に供されることが多い。しかし、バガスは嗜好性が芳しくないため、牛があまり好んで摂取しないという問題がある。これは、バガスにリグニンという高分子化合物が多く含まれ、セルロースなどの繊維化合物に複雑に絡み合った状態で存在しており、草自体が非常に硬いこと等が挙げられる。サトウキビを圧搾せずにそのまま飼料に混合しても、やはり嗜好性に課題がある。
【0003】
そこで従来では、牛用飼料の嗜好性を上げるために、バガスを発酵処理したり、飼料に嗜好性の良い添加物も混合したりしていた。例えば特許文献1では、サトウキビの搾り粕(バガス)などの食品残渣を含む原料を乳酸菌で発酵させた牛用飼料が開示されている。特許文献2では、サトウキビそのもの(乾燥草ないし先端部)と共に、比較的嗜好性の良いパイナップル粕を牛用飼料に混合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−228218号公報
【特許文献2】特開平1−252255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようにバガスを発酵処理しただけでは嗜好性に限界があると共に、発酵処理に時間がかかる。一方、特許文献2のように比較的嗜好性の良いパイナップル粕を混合すれば、飼料全体の嗜好性向上が期待できる。しかし、サトウキビそのものを飼料原料として使用するために、わざわざパイナップル粕も混合する必要があるのでは、飼料原料に制約がある。
【0006】
そこで本発明者らは、嗜好性の良い他の原料の併用を必須としなくても、飼料全体の嗜好性を低下させずにサトウキビを牛用飼料原料として使用できないか鋭意検討の結果、サトウキビを従来とは異なる状態で飼料に混合することで、飼料の嗜好性が向上することを知見し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は上記課題を解決するものであって、嗜好性の良い他の原料の併用を必須とせずとも嗜好性の良好な、サトウキビを含有する牛用飼料の製造方法と、牛用飼料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのための手段として、本発明の1つは牛用飼料の製造方法であって、サトウキビを飼料に混合するにあたって、そのまま(未圧搾の状態で)混合するのではなく、予め一旦圧搾して圧搾滓(バガス)と搾液とに分けてから、当該バガスと搾液とを再度混合したものを牛用飼料に配合するものである。
【0009】
このとき、サトウキビは粉砕してから圧搾することが好ましい。
【0010】
圧搾滓及び搾液の混合物は、乾燥してから飼料に配合することが好ましい。
【0011】
また、本発明によれば、サトウキビの圧搾滓と搾液成分とを含有する牛用飼料も提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サトウキビを従来とは異なる状態で混合することで、本来的に嗜好性の良い他の原料の併用を必須とせずとも、嗜好性の良好な牛用飼料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の飼料は、牛用である。牛としては肉牛(肥育牛)でもよいし、乳牛でもよい。月齢も、離乳するまでの哺育牛でなければ特に制限は無いが、月齢2〜10ヶ月程度の育成牛に給餌することが好ましい。この時期は牛の第1胃(ルーメン)が発達する時期であり、サトウキビが物理的刺激となって第1胃の発達促進が期待されるからである。
【0014】
サトウキビは、収穫されたものをそのまま使用するのではなく、一旦圧搾して圧搾滓(バガス)と搾液の状態に分けてから、当該バガスと搾液とを再度混合したものを飼料へ配合する。搾液は主として糖分を含有するが、糖分以外にも水溶性繊維、灰分、ビタミン、及びミネラル等を含んでいる。搾液は、糖分等を精製することなくバガスと混合すればよい。理由は不明であるが、このようにバガスと搾液の状態に一旦分けてから再度混合した状態で飼料へ配合することで、他の嗜好性の良い原料を使用せずとも、飼料全体の嗜好性が良好となる。
【0015】
また、サトウキビは圧搾する前に粗粉砕ないし粉砕しておくことが好ましい。圧搾効率が高まると共に、牛が食べ易くなって嗜好性がより向上するからである。
【0016】
バガスと搾液との混合物は、当該混合物を乾燥せずに飼料に配合してから飼料全体を乾燥することもできるが、予め混合物を乾燥してから飼料に配合することが好ましい。混合物を乾燥せずに配合して飼料全体を乾燥すると乾燥に時間と手間を要するが、混合物を乾燥してから配合すれば、乾燥を省力化できると共に、混合物の取り扱いも容易となって飼料への配合も容易となるからである。乾燥方法は従来から公知の方法を使用することができる。代表的には加熱乾燥(熱風乾燥)である。
【0017】
サトウキビ以外の飼料原料(サトウキビを混合するベース飼料)としては、従来から牛用飼料として使用されている公知の飼料原料を特に制限無く使用することができる。なお、飼料全体の嗜好性を向上させるための原料は基本的に不要であるが、使用することを否定するものでは無い。
【0018】
飼料全体に対するバガスと搾液との混合物の配合量(含有量)も、従来から公知の牛用飼料におけるサトウキビ含有量と同程度とすればよく、牛の用途、品種、環境、月齢等に応じて求められる栄養素や栄養価などに応じて適宜調整すればよい。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
サトウキビ(豪州産)を収穫後、5〜10mm程に粉砕してから圧搾した。続いて、得られたバガスと搾液とを再度混合し、150℃で1時間程熱風乾燥した混合物を作成した。
【0020】
(比較例1)
サトウキビ(豪州産)を収穫後、5〜10mm程に粉砕し、圧搾せずにそのまま熱風乾燥した。
【0021】
(比較例2)
(株)日の出興産より購入したパイナップル粕(フィリピン産)を使用した。
【0022】
上記実施例1及び比較例1,2の飼料原料を用いて嗜好性試験(カフェテラスラテン方格法)を行った。なお、各飼料原料は、他の飼料原料による影響を排除して実施例1及び比較例1,2の飼料原料の嗜好性を直接評価するために、本試験では敢えて他のベース飼料に配合することなく、実施例1及び比較例1,2の飼料原料のみを直接給餌した。
【0023】
供試動物は3〜6ヶ月齢の黒毛和種育成牛である。試験方法は、1区画5頭の牛を2区画使用し、給与5時間の区飼料摂取量を確認した。その結果を表1に示す。なお、場所的要因を無くすため、各試験区の場所を変更し計3日の区摂取平均値を使用した。
【0024】
【表1】
【0025】
表1の結果より、一般的に嗜好性が良いとされているパイナップル粕(比較例2)よりも、実施例1及び比較例1の方が嗜好性が良好であった。そのうえで、一旦圧搾してから再度混合した実施例1の方が、圧搾せずにそのまま給餌した比較例1よりも嗜好性が良好であった。これにより、サトウキビを一旦圧搾し、これにより得られるバガスと搾液とを再度混合して牛用飼料へ配合すれば、未圧搾のサトウキビを配合する場合よりも飼料全体の嗜好性が良く、且つ、嗜好性の良い他の原料を使用せずとも飼料全体の嗜好性が良好になることが確認された。