(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のフィードフォワード制御では、前記第1のタンク内圧検出部で検出したタンク内圧が高いほど、前記第1のフィードフォワード制御を行う制御器のゲインを小さくし、
前記第2のフィードフォワード制御では、前記第2のタンク内圧検出部で検出したタンク内圧が高いほど、前記第2のフィードフォワード制御を行う制御器のゲインを小さくする請求項1から3の何れか1項に記載の水電解装置。
前記第3のフィードフォワード制御は、前記第1の出口圧力検出部で検出した出口圧力が高いほど前記酸素圧力制御弁の開度が大きくなるように、前記酸素圧力制御弁の開度を制御し、
前記第4のフィードフォワード制御は、前記第2の出口圧力検出部で検出した出口圧力が高いほど前記水素圧力制御弁の開度が大きくなるように、前記水素圧力制御弁の開度を制御する請求項5に記載の水電解装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態に係る水電解装置について、図面を参照しつつ説明する。
本実施形態の水電解装置は、風力や太陽光、地熱等、不規則に変動する自然エネルギーによって発電された電力などを基に、電解膜を用いて、水を電気分解させる装置である。
なお、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための方法や装置を例示するものである。それゆえ、本発明の技術的思想における、構成要素の構造、配置等を、下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内で、種々の変更を加えることができる。
【0009】
(構成)
図1に示すように、本発明の実施形態に係る水電解装置1は、電解槽2と、酸素気液分離タンク3と、水素気液分離タンク4と、コンピュータ5とを備えている。
電解槽2は、陽極が取り付けられた陽極室6と、陰極が取り付けられた陰極室7と、陽極室6と陰極室7とを区画する電解膜8とを備える。そして、不規則な自然エネルギーによって発電する発電装置(例えば、風力発電装置、太陽発電装置、地熱発電装置)から供給される電力9により、電解膜8を用いて水10を電気分解し、陽極によって陽極室6内(即ち、電解膜8の一方の面8a側の区画。以下、「酸素発生部」とも呼ぶ)に酸素11を発生させる。発生された酸素11と水10とは、配管12を介して、酸素気液分離タンク3に送られる。一方、陰極によって陰極室7内(即ち、電解膜8の他方の面8b側の区画。以下、「水素発生部」とも呼ぶ)に水素13を発生させる。発生された水素13と水10とは、配管14を介して、水素気液分離タンク4に送られる。
【0010】
(電解膜)
電解膜8としては、イオンを導通しつつ、水素ガスと酸素ガスとを隔離するために、イオン透過性の電解膜8を使用できる。イオン透過性の電解膜8としては、例えば、ガス透過性が低く、イオン伝導率が高く、電子電導度が小さく、強度が強いものが好ましい。例えば、イオン交換能を有するイオン交換膜、電解液を浸透できる多孔膜を使用できる。
【0011】
(多孔膜)
多孔膜は、複数の微細な貫通孔を有し、電解膜8を電解液が透過できる構造を有する膜状部材である。電解液が多孔膜中に浸透することにより、イオン伝導を発現するため、孔径や気孔率、親水性といった多孔構造の調整が非常に重要となる。また、多孔膜は、電解液を透過させるだけでなく、発生ガスを通過させないこと、即ちガスの遮断性を有することも求められる。そのため、ガスの遮断性の観点からも、多孔構造の調整が重要となる。
【0012】
多孔膜としては、高分子多孔膜、無機多孔膜、織布、不織布等の膜状部材を使用できる。これらの膜状部材は、公知の技術で製造できる。例えば、高分子多孔膜の製造方法としては、相転換法(ミクロ相分離法)、抽出法、延伸法、湿式ゲル延伸法等が挙げられる。
また、多孔膜の材料としては、例えば、高分子材料と親水性無機粒子とを含むことが好ましい。親水性無機粒子を含むことにより、多孔膜に親水性を付与することができる。
【0013】
(高分子材料)
高分子材料としては、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリビニリデンフロライド、ポリカーボネート、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロスルホン酸、パーフルオロカルボン酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等が挙げられる。これらの中でも、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレンを用いることが好ましく、ポリスルホンを用いることがより好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。即ち、2種以上を混合したものを用いてもよい。
【0014】
多孔膜は、分離能、強度等、適切な膜物性を得るために、孔径を調整することが好ましい。また、アルカリ水電解に用いる場合、陽極2aから発生する酸素ガス及び陰極2cから発生する水素ガスの混合を防止し、かつ電解における電圧損失を低減する観点からも、孔径を調整することが好ましい。例えば、多孔膜の平均孔径が大きいほど、単位面積あたりの多孔膜透過量は大きくなり、特に、電解においては多孔膜のイオン透過性が良好となり、電圧損失を低減しやすくなる傾向にある。また、多孔膜の平均孔径が大きいほど、アルカリ水との接触表面積が小さくなるので、ポリマーの劣化が抑制される傾向にある。
一方、多孔膜の平均孔径が小さいほど、多孔膜の分離精度が高くなり、電解においては多孔膜のガス遮断性が良好となる傾向にある。さらに、後述する粒径の小さな親水性無機粒子を多孔膜に担持した場合、欠落せず保持することができる。これにより、親水性無機粒子が持つ高い保持能力を付与でき、長期に亘ってその効果を維持することができる。
【0015】
かかる観点から、多孔膜の平均孔径は、0.1μm以上1.0μm以下の範囲であることが好ましい。多孔膜は、孔径がこの範囲であれば、優れたガス遮断性と高いイオン透過性とを両立することができる。また、多孔膜の孔径は、実際に使用する温度域において調整されることが好ましい。例えば、多孔膜を90℃の環境下でアルカリ水電解に用いる場合は、90℃で上記の孔径の範囲を満足させることが好ましい。また、多孔膜をアルカリ水電解に用いる場合、より優れたガス遮断性と高いイオン透過性とを発現できる範囲として、多孔膜の平均孔径は0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。
【0016】
本実施形態の多孔膜の平均孔径としては、完全性試験機(ザルトリウス・ステディム・ジャパン社製「Sartocheck Junior BP−Plus」)を使用して以下の方法で測定される平均透水孔径を用いる。平均透水孔径の測定では、まず、多孔膜から芯材も含めて所定の大きさのサンプルを切り出す。次に、サンプルを任意の耐圧容器にセットして、耐圧容器内を純水で満たす。次に、耐圧容器を所定温度に設定した恒温槽内で保持し、耐圧容器内部が所定温度になってから測定を開始する。測定が始まると、サンプルの上面側が窒素で加圧されていき、サンプルの下面側から上面側へ純水が透過してくるので、純水が透過してくる際のサンプルの上面側の圧力及びサンプルを透過する純水の透過流量の数値を記録する。平均透水孔径は、圧力が10kPaから30kPaの間の圧力と透水流量との勾配を使い、以下のハーゲンポアズイユの式から求めることができる。
平均透水孔径(m)={32ηLμ
0/(εP)}
0.5
μ
0(m/s)=流量(m
3/s)/流路面積(m
2)
ここで、ηは水の粘度(Pa・s)、Lは多孔膜の厚み(m)、μ
0は見かけの流速、εは空隙率、Pは圧力(Pa)である。
【0017】
多孔膜をアルカリ水電解に用いる場合、ガス遮断性、親水性の維持、気泡の付着によるイオン透過性低下の防止、さらには長時間安定した電解性能(低電圧損失等)が得られるといった観点から、多孔膜の気孔率を調整することが好ましい。特に、ガス遮断性や低電圧損失等を高いレベルで両立させるといった観点から、多孔膜の気孔率の下限は、30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、40%以上であることが更に好ましい。また、気孔率の上限は、70%以下であることが好ましく、65%以下であることがより好ましく、55%以下であることが更に好ましい。多孔膜の気孔率が上記上限値以下であれば、膜内をイオンが透過しやすく、膜の電圧損失を抑制できる。
【0018】
本実施形態の多孔膜の気孔率としては、アルキメデス法により求められる開気孔率を用いる。開気孔率は、以下の式から求めることができる。
開気孔率P(%)=ρ/(1+ρ)×100
ρ=(W3−W1)/(W3−W2)
ここで、W1は多孔膜の乾燥質量(g)、W2は多孔膜の水中質量(g)、W3は多孔膜の飽水質量(g)である。
気孔率の測定では、まず、純水で洗浄した多孔膜から3cm×3cmの大きさのサンプルを3枚切り出し、3枚のサンプルのW2及びW3を測定する。次に、3枚のサンプルを50℃に設定された乾燥機で12時間以上静置して乾燥させた後、3枚のサンプルのW1を測定する。開気孔率は、測定したW1、W2、W3の値を使い、上記の式から求めることができる。そして、3枚のサンプルそれぞれの開気孔率の算術平均値を気孔率とする。
【0019】
多孔膜の厚みは、特に限定されないが、100μm以上700μm以下であることが好ましく、100μm以上600μm以下であることがより好ましく、200μm以上600μm以下であることが更に好ましい。多孔膜の厚みが100μm以上であると、突刺し等で破れ難く、電極間がショートし難く、またガス遮断性が良好となる。また、600μm以下であると、電圧損失が増大し難く、また厚みのばらつきによる影響が少なくなる。
また、多孔膜の厚みが、250μm以上であれば、一層優れたガス遮断性が得られ、また、衝撃に対する多孔膜の強度を一層向上することができる。この観点より、多孔膜の厚みの下限は、300μm以上であることがより好ましく、350μm以上であることが更に好ましく、400μm以上であることがより一層好ましい。一方、多孔膜の厚みが、700μm以下であれば、運転時に孔内に含まれる電解液の抵抗によりイオンの透過性が阻害され難く、一層優れたイオン透過性を維持することができる。この観点より、多孔膜の厚みの上限は、600μm以下であることがより好ましく、550μm以下であることが更に好ましく、500μm以下であることがより一層好ましい。
【0020】
(親水性無機粒子)
多孔膜は、高いイオン透過性及び高いガス遮断性を発現するために、親水性無機粒子を含有していることが好ましい。多孔膜に親水性無機粒子を含有させる方法としては、例えば、親水性無機粒子を多孔膜の表面に付着させる方法、親水性無機粒子の一部を多孔膜の内部に埋没させる方法、親水性無機粒子を多孔膜の空隙部に内包させる方法を使用できる。また、多孔膜の空隙部に内包させる方法によれば、親水性無機粒子が多孔膜の空隙から脱離し難くなり、多孔膜の高いイオン透過性及び高いガス遮断性を長時間維持できる。
【0021】
親水性無機粒子としては、例えば、ジルコニウム、ビスマス、セリウムの酸化物又は水酸化物;周期律表第IV族元素の酸化物;周期律表第IV族元素の窒化物、及び周期律表第IV族元素の炭化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機物が挙げられる。これらの中でも、化学的安定性の観点から、ジルコニウム、ビスマス、セリウムの酸化物、周期律表第IV族元素の酸化物を用いることが好ましく、ジルコニウム、ビスマス、セリウムの酸化物を用いることがより好ましく、酸化ジルコニウムを用いることが更に好ましい。また、親水性無機粒子の形態は、例えば、微粒子形状であることが好ましい。
【0022】
また、電解槽2には、水10の電気分解のために電解槽2に供給される電流I(t)を検出する電流検出部15と、電解槽2内の水10の温度T
O(t) 、T
H(t)を検出する温度検出部16とが設けられている。ここで、温度T
O(t) は、陽極室6内の陽極近傍における水10の温度である。即ち、酸素発生部の水10の温度である。また、温度T
H(t)は、陰極室7内の陰極近傍における水10の温度である。即ち、水素発生部の水10の温度である。電流I(t)及び温度T
O(t) 、T
H(t)の検出結果は、コンピュータ5に入力される。
【0023】
酸素気液分離タンク3は、電解槽2から送られてくる酸素11と水10とを貯蔵する。酸素気液分離タンク3内では、水10が下側に位置し、酸素11が上側に位置し、貯蔵された酸素11と水10とが分離される。酸素気液分離タンク3の下端側には、電解槽2の給水口側と連通する水用配管17が連通されている。そして、酸素気液分離タンク3内の水10は、水用配管17を介して電解槽2の陽極室6及び陰極室7に供給される。なお、電気分解等で減少した水10は、水供給ポンプ18を介して外部から供給される。
また、酸素気液分離タンク3には酸素気液分離タンク3内の水位L
O(t)を検出する第1の水位検出部19が設けられている。水位L
O(t)の検出結果はコンピュータ5に入力される。
【0024】
また、酸素気液分離タンク3の上端側には、酸素11を外部に取り出すための酸素用配管20が連通されている。酸素用配管20には、酸素用配管20の流量を調節可能な酸素圧力制御弁21が設けられている。酸素圧力制御弁21は、コンピュータ5からの信号に従い、酸素圧力制御弁21の開度u
O(t)を制御する。
さらに、酸素気液分離タンク3内には、酸素11による酸素気液分離タンク3のタンク内圧P
O1(t)を検出する第1のタンク内圧検出部22が配置されている。第1のタンク内圧検出部22の検出結果(タンク内圧P
O1(t))はコンピュータ5に入力される。
また、酸素用配管20における、酸素圧力制御弁21の出口側には、酸素圧力制御弁21の出口圧力P
O2(t)を検出する第1の出口圧力検出部23が配置されている。第1の出口圧力検出部23の検出結果(出口圧力P
O2(t))はコンピュータ5に入力される。
【0025】
水素気液分離タンク4は、電解槽2から送られてくる水素13と水10とを貯蔵する。水素気液分離タンク4内では、水10が下側に位置し、水素13が上側に位置し、貯蔵された水素13と水10とが分離される。また、水素気液分離タンク4の下端には、酸素気液分離タンク3と同様に、水用配管17が連通されている。そして、水素気液分離タンク4に貯蔵されている水10も水用配管17を介して陽極室6及び陰極室7に供給される。
また、水素気液分離タンク4には水素気液分離タンク4内の水位L
H(t)を検出する第2の水位検出部24が設けられている。水位L
H(t)の検出結果はコンピュータ5に入力される。
【0026】
なお、酸素気液分離タンク3内と水素気液分離タンク4内とは、水用配管17によって互いに連通されているため、両気液分離タンクの水面レベルは、ほぼ同じになっている。
また、水素気液分離タンク4の上端側には、水素13を外部に取り出すための水素用配管25が連通されている。水素用配管25には、水素用配管25の流量を調節可能な水素圧力制御弁26が設けられている。水素圧力制御弁26は、コンピュータ5からの信号に従い、水素圧力制御弁26の開度u
H(t)を制御する。
さらに、水素気液分離タンク4内には、水素13による水素気液分離タンク4のタンク内圧P
H1(t)を検出する第2のタンク内圧検出部27が配置されている。第2のタンク内圧検出部27の検出結果(タンク内圧P
H1(t))はコンピュータ5に入力される。
【0027】
また、水素用配管25における、水素圧力制御弁26の出口側には、水素圧力制御弁26の出口圧力P
H2(t)を検出する第2の出口圧力検出部28が配置されている。第2の出口圧力検出部28の検出結果(出口圧力P
H2(t))はコンピュータ5に入力される。
コンピュータ5は、記憶装置29及びプロセッサ30等のハードウェア資源を備える。
記憶装置29は、プロセッサ30で実行可能なコンピュータ5の制御プログラムを記憶している。また、記憶装置29は制御プログラムの実行に必要な各種データを記憶する。
【0028】
プロセッサ30は、記憶装置29から制御プログラムを読み出し、酸素圧力制御弁21の開度u
O(t)を制御する第1の開度調整部31及び水素圧力制御弁26の開度u
H(t)を制御する第2の開度調整部32等を実現する。第1の開度調整部31は、
図2に示すように、第1のフィードバック制御部33、第1のフィードフォワード制御部34、第3のフィードフォワード制御部35及び第1の合算部36を含んでいる。また、
図3に示すように第2の開度調整部32は、第2のフィードバック制御部37、第2のフィードフォワード制御部38、第4のフィードフォワード制御部39及び第2の合算部40を含んでいる。
【0029】
第1のフィードバック制御部33は、第1のタンク内圧検出部22で検出した酸素気液分離タンク3のタンク内圧P
O1(t)に基づき、タンク内圧P
O1(t)と予め定めた目標圧力P
O*(t)との差が小さくなるように酸素圧力制御弁21の開度u
O(t)(以下、「u
OFB1(t)」とも呼ぶ)を制御する第1のフィードバック制御を行う。具体的には、下記(1)式に示すように、酸素気液分離タンク3のタンク内圧P
O1(t)を入力とし、酸素圧力制御弁21の開度u
OFB1(t)を出力とした場合の、第1のフィードバック制御部33の制御器の伝達関数C
O(s)に、検出したタンク内圧P
O1(t)を入力して、酸素圧力制御弁21の開度u
OFB1(t)の数値を算出する。
C
O(s)=V
O(L){K
Op+K
OI/s+K
OD・s} ‥‥‥(1)
【0030】
ここで、V
O(L)は、第1の水位検出部19で検出した酸素気液分離タンク3内の水位L
O(t)を基に算出される、酸素気液分離タンク3のタンク気相体積である。また、K
Opは比例ゲイン、K
OIは積分ゲイン、K
ODは微分ゲイン、sはラプラス演算子である。
このように、伝達関数C
O(s)を用いることにより、第1のフィードバック制御では、PID制御を行うとともに、第1の水位検出部19で検出した水位L
O(t)が高いほど、そのPID制御のPIDゲインV
O(L)・K
Op、V
O(L)・K
OI、V
O(L)・K
ODを小さくする。
算出した酸素圧力制御弁21の開度u
OFB1(t)の数値は第1の合算部36に出力される。
【0031】
第1のフィードフォワード制御部34は、電流検出部15で検出した電流I(t)に基づき、酸素圧力制御弁21の開度u
O(t)(以下、「u
OFF1(t)」とも呼ぶ)を制御する第1のフィードフォワード制御を行う。具体的には、下記(2)式に示すように、電解槽2に供給される電流I(t)を入力とし、酸素圧力制御弁21の開度u
OFF1(t)を出力とした場合の、第1のフィードフォワード制御部34の制御器の伝達関数F
OI(s)に、検出した電流I(t)を入力して、酸素圧力制御弁21の開度u
OFF1(t)の数値を算出する。
【0033】
ここで、T
O(t)は、温度検出部16で検出した電解槽2内の水10の温度である。さらに、P
O1(t)は、第1のタンク内圧検出部22で検出した酸素気液分離タンク3のタンク内圧である。また、その他のパラメータP
O1(上方に「−」有り)、P
O2(上方に「−」有り)、α
O、τ
O、T
Ovは、後述される伝達関数G
OV1、G
OIで用いられる固定値である。
【0034】
このように、伝達関数F
OI(s)を用いることにより、第1のフィードフォワード制御では、電流検出部15で検出した電流I(t)が大きいほど、酸素圧力制御弁21の開度u
OFF1(t)が大きくなるように、酸素圧力制御弁21の開度u
OFF1(t)を制御する。また、温度検出部16で検出した酸素発生部の水10の温度T
O(t)が高いほど、第1のフィードフォワード制御を行う制御器のゲインを大きくする。さらに、第1のタンク内圧検出部22で検出したタンク内圧P
O1(t)が高いほど、第1のフィードフォワード制御を行う制御器のゲインを小さくする。
算出した酸素圧力制御弁21の開度u
OFF1の数値は、第1の合算部36に出力される。
【0035】
第3のフィードフォワード制御部35は、第1の出口圧力検出部23で検出した出口圧力P
O2(t)に基づき、酸素圧力制御弁21の開度u
O(t)(以下、「u
OFF3(t)」とも呼ぶ)を制御する第3のフィードフォワード制御を行う。具体的には、下記(3)式に示すように、酸素圧力制御弁21の出口圧力P
O2(t)を入力とし、酸素圧力制御弁21の開度u
OFF3(t)を出力とした場合の、第3のフィードフォワード制御部35の制御器の伝達関数F
OP(s)に、検出した出口圧力P
O2(t)を入力して、酸素圧力制御弁21の開度u
OFF3(t)の数値を算出する。
【0037】
このように、伝達関数F
OP(s)を用いることにより、第3のフィードフォワード制御では、第1の出口圧力検出部23で検出した出口圧力P
O2(t)が高いほど、酸素圧力制御弁21の開度u
OFF3(t)が大きくなるように酸素圧力制御弁21の開度u
OFF3(t)を制御する。
算出した
酸素圧力制御弁21の開度u
OFF3(t)の数値は第1の合算部36に出力される。
第1の合算部36は、第1のフィードバック制御部33、第1のフィードフォワード制御部34及び第3のフィードフォワード制御部35から出力される
酸素圧力制御弁21の開度u
OFB1(t)、u
OFF1(t)、u
OFF3(t)の数値を合算する。合算結果u
O(t)を示す信号は、酸素圧力制御弁21に出力される。これにより、酸素圧力制御弁21が、出力される信号に従い、その合算結果が実現されるように酸素圧力制御弁21の開度u
O(t)が調節される。
【0038】
第2のフィードバック制御部37は、第2のタンク内圧検出部27で検出した水素気液分離タンク4のタンク内圧P
H1(t)に基づき、タンク内圧P
H1(t)と予め定められた目標圧力P
H*(t)との差が小さくなるように水素圧力制御弁26の開度u
H(t)(以下、「u
HFB2(t)」とも呼ぶ)を制御する第2のフィードバック制御を行う。目標圧力P
H*(t)は、目標圧力P
O*(t)と同一、または目標圧力P
O*(t)よりも僅かに大きい程度とする(P
H*(t)≧P
O*(t)、P
H*(t)−P
O*(t)≒0)。具体的には、下記(4)式に示すように、水素気液分離タンク4のタンク内圧P
H1(t)を入力とし、水素圧力制御弁26の開度u
HFB2(t)を出力とした場合の、第2のフィードバック制御部37の制御器の伝達関数C
H(s)に、検出したタンク内圧P
H1(t)を入力して水素圧力制御弁26の開度u
HFB2(t)の数値を算出する。
C
H(s)=V
H(L){K
Hp+K
HI/s+K
HD・s} ‥‥‥(4)
【0039】
ここで、V
H(L)は、第2の水位検出部24で検出した水素気液分離タンク4内の水位L
H(t)を基に算出される、水素気液分離タンク4のタンク気相体積である。また、K
Hpは比例ゲイン、K
HIは積分ゲイン、K
HDは微分ゲインである。
このように、伝達関数C
H(s)を用いることにより、第2のフィードバック制御では、PID制御を行うとともに、第2の水位検出部24で検出した水位L
H(t)が高いほど、PIDゲインV
H(L)・K
Hp、V
H(L)・K
HI、V
H(L)・K
HDを小さくする。
算出した水素圧力制御弁26の開度u
HFB2(t)の数値は第2の合算部40に出力される。
【0040】
第2のフィードフォワード制御部38は、電流検出部15で検出した電流I(t)に基づき、水素圧力制御弁26の開度u
H(t)(以下、「u
HFF2(t)」とも呼ぶ)を制御する第2のフィードフォワード制御を行う。具体的には、下記(5)式に示すように、電解槽2に供給される電流I(t)を入力とし、水素圧力制御弁26の開度u
HFF2(t)を出力とした場合の、第2のフィードフォワード制御部38の制御器の伝達関数F
HI(s)に、検出した電流I(t)を入力して、水素圧力制御弁26の開度u
HFF2(t)の数値を算出する。
【0042】
ここでP
H1(t)は、第2のタンク内圧検出部27で検出した水素気液分離タンク4のタンク内圧である。またその他のパラメータp
H1(上方に「−」有り)、p
H2(上方に「−」有り)、α
H、τ
H、T
Hvは後述される伝達関数G
HV1、G
HIで用いられる固定値である。
【0043】
このように、伝達関数F
HI(s)を用いることにより、第2のフィードフォワード制御では、電流検出部15で検出した電流I(t)が大きいほど、水素圧力制御弁26の開度u
HFF2(t)が大きくなるように、水素圧力制御弁26の開度u
HFF2(t)を制御する。また、温度検出部16で検出した水素発生部の水10の温度T
H(t)が高いほど、第2のフィードフォワード制御を行う制御器のゲインを大きくする。さらに、第2のタンク内圧検出部27で検出したタンク内圧P
H1(t)が高いほど、第2のフィードフォワード制御を行う制御器のゲインを小さくする。
算出した水素圧力制御弁26の開度u
HFF2(t)の数値は第2の合算部40に出力される。
【0044】
第4のフィードフォワード制御部39は、第2の出口圧力検出部28で検出した出口圧力P
H2(t)に基づき、水素圧力制御弁26の開度u
O(t)(以下、「u
HFF4(t)」とも呼ぶ。)を制御する第4のフィードフォワード制御を行う。具体的には、下記(6)式に示すように、水素圧力制御弁26の出口圧力P
H2(t)を入力とし、水素圧力制御弁26の開度u
HFF4(t)を出力とした場合の、第4のフィードフォワード制御部39の制御器の伝達関数F
HP(s)に、検出した出口圧力P
H2(t)を入力して、水素圧力制御弁26の開度u
HFF4(t)の数値を算出する。
【0046】
このように、伝達関数F
HP(s)を用いることにより、第4のフィードフォワード制御では、第2の出口圧力検出部28で検出した出口圧力P
H2(t)が高いほど、水素圧力制御弁26の開度u
HFF4(t)が大きくなるように水素圧力制御弁26の開度u
HFF4(t)を制御する。
算出した水素圧力制御弁26の開度u
HFF4(t)の数値は第2の合算部40に出力される。
第2の合算部40は、第2のフィードバック制御部37、第2のフィードフォワード制御部38及び第4のフィードフォワード制御部39から出力される水素圧力制御弁26の開度u
HFB2(t)、u
HFF2(t)、u
HFF4(t)の数値を合算する。合算結果u
H(t)を示す信号は、水素圧力制御弁26に出力される。これにより、水素圧力制御弁26が、出力される信号に従い、その合算結果が実現されるように水素圧力制御弁26の開度u
H(t)が調節される。
【0047】
(制御器の伝達関数の導出方法)
次に、第1の開度調整部31における、第1のフィードバック制御部33、第1のフィードフォワード制御部34及び第3のフィードフォワード制御部35の制御器の伝達関数C
O(s)、F
OI(s)、F
OP(s)の導出方法について、図面を参照しつつ説明する。
まず、
図4に示すように、酸素圧力制御弁21の開度u
O(t)、酸素圧力制御弁21の出口圧力P
O2(t)及び電解槽2に供給される電流I(t)を入力とし、酸素気液分離タンク3のタンク内圧P
O1(t)を出力とした場合の、水電解装置1を制御対象(以下、「第1の制御対象41」とも呼ぶ)としてモデル化した。この第1の制御対象41のモデルは、酸素気液分離タンク3からの酸素11の流出流量f
o(t)を表す流出流量モデル、酸素気液分離タンク3への酸素11の流入流量f
i(t)を表す流入流量モデル、及び酸素気液分離タンク3のタンク内圧P
O1(t)の圧力変動p(t)を表す圧力変動モデルを含むように構成とした。
【0048】
流出流量モデルは、単位換算係数αと、CV値Cv
max[-]と、酸素圧力制御弁21の弁特性モデルm(u
O)[-]と、酸素気液分離タンク3のタンク内圧P
O1(t)[kPaG]と、酸素圧力制御弁21の出口圧力P
O2(t)[kPaG]とに基づき、下記(7)式のように構成した。弁特性モデルm(u
O)は、酸素圧力制御弁21の特性(例えば、開度u
O(t)が酸素11の流量に対して線形に影響するか非線形に影響するか)を表す関数である。
【0050】
上記(7)式によれば、酸素圧力制御弁21の出口圧力P
O2(t)
<タンク内圧P
O1(t)(酸素圧力制御弁21の入口圧力)、という関係が維持されなければ、酸素圧力制御弁21から酸素11が流出されない。また、酸素圧力制御弁21の出口圧力P
O2(t)とタンク内圧P
O1(t)との差が変化すると、酸素気液分離タンク3からの酸素11の流出流量の大きさが変化する。例えば、出口圧力P
O2(t)が大きくなれば、酸素11の流出流量が小さくなる。一方、タンク内圧P
O1(t)が大きくなれば、酸素11の流出流量が大きくなる。
【0051】
また、流入流量モデルは、換算係数τと、酸素発生部の水10の温度T
O(t)、酸素気液分離タンク3のタンク内圧P
O1(t)と、電解槽2で発生した酸素11が酸素気液分離タンク3のタンク内圧P
O1(t)に影響を及ぼすまでの時間特性を表す一次遅れ関数1/(T
Ovs+1)と、電解槽2に供給される電流I(t)とに基づき、下記(8)式のように構成した。一次遅れ関数1/(T
Ovs+1)の時定数T
Ovは、データフィッティングによって決定した。
【0053】
上記(8)式によれば、電解槽2に供給される電流I(t)が大きいほど、酸素11の発生量が増大し、酸素気液分離タンク3への酸素11の流入流量f
i(t)が増大する。また、酸素発生部の水10の温度T
O(t)が高いほど、酸素11の発生量が増大し、酸素気液分離タンク3への酸素11の流入流量f
i(t)が増大する。さらに、酸素気液分離タンク3の圧力P
O1(t)が低いほど、酸素11の発生量が増大し、酸素気液分離タンク3への酸素11の流入流量f
i(t)が増大する。
【0054】
また、圧力変動モデルは、定圧p(上方に「−」有り)と、比容積v(上方に「−」有り)と、酸素気液分離タンク3のタンク気相体積V
O(L)、積分1/s、流入流量モデルと、流出流量モデルとに基づき、下記(9)式のように構成した。
【0056】
上記(9)式によれば、酸素気液分離タンク3内への流入流量fi(t)が大きいほど、酸素気液分離タンク3の圧力変動p(t)が増大する。また、酸素気液分離タンク3からの流出流量f
o(t)が小さいほど、酸素気液分離タンク3の圧力変動p(t)が増大する。さらに、タンク気相体積V
O(L)が小さいほど、圧力変動p(t)(タンク内圧P
O1(t)の変動)が早くなる。また、タンク気相体積V
O(L)が大きいほど、圧力変動p(t)の変動が遅くなる。
【0057】
続いて、
図5に示すように、上記(7)〜(9)式で表した第1の制御対象41のモデルに対し、第1のフィードバック制御、第1のフィードフォワード制御及び第3のフィードフォワード制御の制御器(伝達関数C
O(s)、F
OI(s)、F
OP(s))を適用した場合の、酸素気液分離タンク3のタンク内圧P
O1(t)(以下「y(t)」とも呼ぶ)の式を導出した。
【0059】
ここで、G
OP(s)はp(t)をラプラス変換したもの、G
OI(s)はf
i(t)をラプラス変換したものである。また、G
OV1(s)は、f
o(t)をu
O(t)の影響を表す項とP
O2(t)の影響を表す項との足し算からなる近似式に変換した場合の、u
O(t)の影響を表す項をラプラス変換したものである。また、G
OV1(s)はP
O2(t)の影響を表す項をラプラス変換したものである。
上記(10)式によれば、酸素気液分離タンク3のタンク内圧y(t)に対する、I(t)の影響を低減するためには、下記(11)式を満たせばよい。したがって、第1のフィードフォワード制御部34の制御器の伝達関数F
OI(s)は下記(12)式のように設定する。
【0061】
ここで、各伝達関数G
OP(s)、G
OI(s)、G
OV1(s)、G
OV2(s)は、下記(13)(14)(15)(16)式で表される。
【0063】
そして、上記(13)〜(16)式によれば、第1のフィードフォワード制御部34の制御器の伝達関数F
OI(s)を表す上記(12)式は下記(17)式のように設定される。
【0065】
また、上記(10)式によれば、酸素気液分離タンク3のタンク内圧y(t)に対する、P
O2(t)の影響を低減するためには、下記(18)式を満たせばよい。したがって、第3のフィードフォワード制御部35の制御器の伝達関数F
OP(s)は下記(19)式のように設定する。
【0067】
そして、上記(13)〜(16)式によれば、第3のフィードフォワード制御部35の制御器の伝達関数F
OP(s)を表す上記(12)式は下記(20)式のように設定される。
【0069】
さらに、上記(12)式の伝達関数F
OI(s)と、上記(19)式の伝達関数F
OP(s)とを採用した場合、酸素気液分離タンク3のタンク内圧y(t)を表す上記(10)式は、下記(21)式のように設定される。
【0071】
上記(21)式において、G
Op(s)は1/V
O(L)を含むため、1/V
O(L)の変動による閉ループ伝達特性への影響を低減するためには、第1のフィードバック制御部33の制御器の伝達関数C
O(s)には、全体にV
O(L)を乗算すればよい。したがって、第1のフィードバック制御部33の制御器の伝達関数C
O(s)は、下記(22)式に示すように設定する。
【0073】
上記(13)式のG
Op(s)と、上記(22)式のC
O(s)とを採用した場合、酸素気液分離タンク3のタンク内圧y(t)を表す上記(21)式は、下記(23)式のようになる。
【0075】
以上の手順により、第1の開度調整部31の第1のフィードバック制御、第1のフィードフォワード制御及び第3のフィードフォワード制御の制御器の伝達関数C
O(s)、F
OI(s)、F
OP(s)が導出される。第2の開度調整部32の第2のフィードバック制御、第2のフィードフォワード制御及び第4のフィードフォワード制御の制御器も同様に導出できる。その際、数式は、上記(7)〜(23)式の変数(f
O(t)を除く)の添字「o」を「H」に置換したものとなる。
【0076】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る水電解装置1では、酸素圧力制御弁21の開度u
O(t)の制御は、第1のタンク内圧検出部22で検出したタンク内圧P
O1(t)に基づき、タンク内圧P
O1(t)と予め定めた目標圧力P
O*(t)との差が小さくなるように酸素圧力制御弁21の開度u
O(t)を制御する第1のフィードバック制御と、電流検出部15で検出した電流I(t)に基づき酸素圧力制御弁21の開度u
O(t)を制御する第1のフィードフォワード制御とを含んでいる。また、水素圧力制御弁26の開度u
H(t)の制御は、第2のタンク内圧検出部27で検出したタンク内圧P
H1(t)に基づき、タンク内圧P
H1(t)と予め定めた目標圧力P
H*(t)との差が小さくなるように水素圧力制御弁26の開度u
H(t)を制御する第2のフィードバック制御と、電流検出部15で検出した電流I(t)に基づき水素圧力制御弁26の開度u
H(t)を制御する第2のフィードフォワード制御とを含んでいる。
【0077】
それゆえ、例えば、電解槽2に供給される電流I(t)が変化したときに、第1のフィードフォワード制御及び第2のフィードフォワード制御により、酸素気液分離タンク3のタンク内圧P
O1(t)と目標圧力P
O*(t)との差及び水素気液分離タンク4のタンク内圧P
H1(t)と目標圧力P
H*(t)との差を速やかに低減できる。そのため、電解膜8の一方の面8a側における酸素11の圧力と他方の面8b側における水素13の圧力との差圧をより適切に低減させた水電解装置1を提供できる。その結果、電解膜8の破損を適切に防止できる。
【0078】
また本発明の実施形態に係る水電解装置1では、第1のフィードフォワード制御は、電流検出部15で検出した電流I(t)が大きいほど酸素圧力制御弁21の開度u
O(t)が大きくなるように、酸素圧力制御弁21の開度u
O(t)を制御する。また、第2のフィードフォワード制御は、電流検出部15で検出した電流I(t)が大きいほど水素圧力制御弁26の開度u
H(t)が大きくなるように、水素圧力制御弁26の開度u
H(t)を制御する。それゆえ、電流I(t)が大きいほど、酸素11の発生量が増大し、酸素気液分離タンク3への酸素11の流入流量f
i(t)が増大するが、酸素圧力制御弁21の開度u
O(t)が大きくなるため、タンク内圧P
O1(t)の増大を抑制できる。また電流I(t)が大きいほど、水素13の発生量が増大し、水素気液分離タンク4への水素13の流入流量f
i(t)が増大するが、水素圧力制御弁26の開度u
H(t)が大きくなるため、タンク内圧P
H1(t)の増大を抑制できる。
【0079】
また、本発明の実施形態に係る水電解装置1では、第1のフィードフォワード制御は、温度検出部16で検出した酸素発生部の水10の温度T
O(t)が高いほど、第1のフィードフォワード制御を行う制御器のゲインを大きくする。また、第2のフィードフォワード制御は、温度検出部16で検出した水素発生部の水10の温度T
H(t)が高いほど、第2のフィードフォワード制御を行う制御器のゲインを大きくする。それゆえ、酸素発生部の水10の温度T
O(t)が高いほど、酸素11の発生量が増大し、酸素気液分離タンク3への酸素11の流入流量f
i(t)が増大するが、酸素圧力制御弁21の開度u
O(t)が大きくなるため、タンク内圧P
O1(t)の増大を抑制することができる。また、水酸素発生部の水10の温度T
H(t)が高いほど、水素13の発生量が増大し、水素気液分離タンク4への水素13の流入流量f
i(t)が増大するが、水素圧力制御弁26の開度u
H(t)が大きくなるため、タンク内圧P
H1(t)の増大を抑制することができる。
【0080】
また、本発明の実施形態に係る水電解装置1では、第1のフィードフォワード制御は、第1のタンク内圧検出部22で検出したタンク内圧P
O1(t)が高いほど、第
1のフィードフォワード制御を行う制御器のゲインを小さくする。また、第2のフィードフォワード制御は、第2のタンク内圧検出部27で検出したタンク内圧P
H1(t)が高いほど、第2のフィードフォワード制御を行う制御器のゲインを小さくする。それゆえ、タンク内圧P
O1(t)が高いほど、酸素11の発生量が増大し、酸素気液分離タンク3への酸素11の流入流量f
i(t)が増大するが、酸素圧力制御弁21の開度u
O(t)が大きくなるため、タンク内圧P
O1(t)の増大を抑制できる。また、タンク内圧P
H1(t)が高いほど、水素13の発生量が増大し、水素気液分離タンク4への水素13の流入流量f
i(t)が増大するが、水素圧力制御弁26の開度u
H(t)が大きくなるため、タンク内圧P
H1(t)の増大を抑制できる。
【0081】
さらに、本発明の実施形態に係る水電解装置1では、酸素圧力制御弁21の開度u
O(t)の制御は、第1の出口圧力検出部23で検出した出口圧力P
O2(t)に基づき、酸素圧力制御弁21の開度u
O(t)を制御する第3のフィードフォワード制御を含んでいる。また、水素圧力制御弁26の開度u
H(t)の制御は、第2の出口圧力検出部28で検出した出口圧力P
H2に基づき、水素圧力制御弁26の開度u
H(t)を制御する第4のフィードフォワード制御とを含んでいる。それゆえ、例えば、酸素圧力制御弁21の出口圧力P
O2(t)、水素圧力制御弁26の出口圧力P
H2(t)が変化したときに、第3のフィードフォワード制御及び第4のフィードフォワード制御により、酸素気液分離タンク3のタンク内圧P
O1(t)と目標圧力P
O*(t)との差及び水素気液分離タンク4のタンク内圧P
H1(t)と目標圧力P
H*(t)との差を速やかに低減できる。そのため、電解膜8の一方の面8a側における酸素11の圧力と他方の面8b側における水素13の圧力との差圧をより適切に低減できる。
【0082】
また、本発明の実施形態に係る水電解装置1では、第3のフィードフォワード制御は、第1の出口圧力検出部23で検出した出口圧力P
O2(t)が高いほど酸素圧力制御弁21の開度u
O(t)が大きくなるように、酸素圧力制御弁21の開度u
O(t)を制御する。また、第4のフィードフォワード制御は、第2の出口圧力検出部28で検出した出口圧力P
H2が高いほど水素圧力制御弁26の開度u
H(t)が大きくなるように、水素圧力制御弁26の開度u
H(t)を制御する。それゆえ、出口圧力P
O2(t)が高いほど、酸素気液分離タンク3からの酸素11の流出流量f
o(t)が低減するが、酸素圧力制御弁21の開度u
O(t)が大きくなるため、タンク内圧P
O1(t)の増大を抑制できる。また、出口圧力P
H2(t)が高いほど、水素気液分離タンク4からの水素13の流出流量f
o(t)が低減するが、水素圧力制御弁26の開度u
H(t)が大きくなるため、タンク内圧P
H1(t)の増大を抑制することができる。
【0083】
さらに、本発明の実施形態に係る水電解装置1では、第1のフィードバック制御では、第1の水位検出部19で検出した水位L
O(t)が高いほど、PIDゲインV
O(L)・K
Op、V
O(L)・K
OI、V
O(L)・K
ODを小さくする。また、第2のフィードバック制御では、第2の水位検出部24で検出した水位L
H(t)が高いほど、PIDゲインV
H(L)・K
Hp、V
H(L)・K
HI、V
H(L)・K
HDを小さくする。それゆえ、水位L
O(t)が高く、酸素気液分離タンク3のタンク気相体積V
O(L)が小さいほど、酸素気液分離タンク3のタンク内圧P
O1(t)の変動が早くなるため、酸素圧力制御弁21の感度が上がる。そこで、PIDゲインV
O(L)・K
Op、V
O(L)・K
OI、V
O(L)・K
ODを小さくし感度を下げることで、レベルに依存せず一定の制御仕様とすることができる。また、水位L
H(t)が高く
、タンク気相体積V
H(L)が小さいほど、水素気液分離タンク4のタンク内圧P
H1(t)の変動が早くなるため、水素圧力制御弁26の感度が上がる。そこで、PIDゲインV
H(L)・K
Hp、V
H(L)・K
HI、V
H(L)・K
HDを小さくし感度を下げることで、レベルに依存せず一定の制御仕様とすることができる。
【0084】
(変形例)
(1)本発明の実施形態に係る水電解装置1では、
図2に示すように、第1のフィードフォワード制御部34の制御器の伝達関数F
OI(s)のパラメータT
O(t)、P
O1(t)を温度検出部16や第1のタンク内圧検出部22から取得する構成を示した。また
図3に示すように、第2のフィードフォワード制御部38の制御器の伝達関数F
HI(s)のパラメータT
H(t)、P
H1(t)を温度検出部16や第2のタンク内圧検出部27から取得する構成を示した。
しかし、本発明は、このような構成に限られるものではなく、他の構成を採用することもできる。例えば、
図6(a)(b)に示すように、伝達関数F
OI(s)、F
HI(s)のパラメータT
O(t) 、T
H(t)、P
O1(t)、P
H1(t)を外部から取得せず、固定値を用いる構成としてもよい。
【0085】
(2)また、例えば、
図7(a)(b)に示すように、第3のフィードフォワード制御部35と第4のフィードフォワード制御部39とを省略する構成としてもよい。これらの省略に加え、例えば、
図8(a)(b)に示すように伝達関数F
OI(s)、F
HI(s)のパラメータT
O(t) 、T
H(t)、P
O1(t)、P
H1(t)を外部から取得せず、固定値を用いる構成としてもよい。
また、第3のフィードフォワード制御部35と第4のフィードフォワード制御部39との省略に加え、例えば、
図9(a)(b)に示すように、第1のフィードバック制御部33の制御器の伝達関数C
O(s)のパラメータV
O(L)、及び第2のフィードバック制御部37の制御器の伝達関数C
H(s)のパラメータV
H(L)を外部から取得せず、固定値を用いる構成としてもよい。さらに、パラメータV
O(L)、V
H(L)として固定値を用いる構成に加え、例えば、
図10(a)(b)に示すように伝達関数F
OI(s)、F
HI(s)のパラメータT
O(t) 、T
H(t)、P
O1(t)、P
H1(t)についても外部から取得せず、固定値を用いる構成としてもよい。
【0086】
(3)また、本発明の実施形態に係る水電解装置1では、
図2に示すように、第1のフィードバック制御部33の制御器の伝達関数C
O(s)のパラメータV
O(L)を第1の水位検出部19から取得し、さらに
図3に示すように、第2のフィードバック制御部37の制御器の伝達関数C
H(s)のパラメータV
H(L)を第2の水位検出部24から取得する構成を示した。
しかし、本発明は、このような構成に限られるものではなく、他の構成を採用することもできる。例えば、
図11(a)(b)に示すように、伝達関数C
O(s)、C
H(s)のパラメータV
O(L)、V
H(L)を外部から取得せず、予め定めた固定値を用いてもよい。これらの固定値に加え、例えば、
図12(a)(b)に示すように伝達関数F
OI(s)、F
HI(s)のパラメータT
O(t) 、T
H(t)、P
O1(t)、P
H1(t)も外部から取得せず、固定値を用いる構成としてもよい。
【0087】
さらに、2次圧変動に対しては、上記(7)式の関係から、2次圧変化に対する流出流量の特性変化を直接指令値補正に使用することもできる。