(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光源の前方に配置され、後端部及び前端部を含み、内部に入射した前記光源からの光を車両の前後方向に延びる前後基準軸に沿って前記前端部から前方に出射するレンズ体において、
前記光源からの光のうち前記光源の光軸に対して所定角度範囲の光が集光する方向に屈折して内部に入射させる入射部と、
前記入射部から入射した前記光源からの光を内面反射する第1反射面と、
前記第1反射面で内面反射された光の少なくとも一部を内面反射する第2反射面と、
前記前端部に位置し前記第1反射面で内面反射された光および前記第2反射面で内面反射された光をそれぞれ前方に出射する出射面と、を備え、
前記光源の光軸は、前記入射部から入射した前記光源からの光の前記第1反射面に対する入射角が臨界角以上となるように、鉛直方向に対して傾斜しており、
前記第1反射面は、長軸に対し回転対称な楕円球形状を含み、楕円球形状の焦点となり前方に位置する第1焦点および後方に位置する第2焦点を前記長軸上に構成し、
前記第2焦点は、前記入射部から入射した前記光源からの光である屈折光を逆方向に延長した場合の交点である仮想光源位置の近傍に位置し、
前記第2反射面は、後方に向かって前記前後基準軸と平行に延びた平面で構成され、前記平面の前方には前端縁を有し、
前記第1焦点は、前記第2反射面の前記前端縁の近傍に位置しており、
前記出射面は、
前記車両の左右方向に垂直な面に沿う断面に、前記前後基準軸と平行な光軸を有し前記第1焦点の近傍に位置する点を基準点とする凸形状を有し、
前記車両の上下方向に垂直な面に沿う断面に、左右方向に互いに隣り合う第1左右方向出射領域と第2左右方向出射領域と、
前記車両の左右方向に垂直な面に沿う断面に、第1上下方向出射領域と第2上下方向出射領域と、を有し、
前記第2上下方向出射領域は、前記第1上下方向出射領域の上側に位置しており、
前記第1左右方向出射領域は、前記第1焦点を通過して入射した光を前記前後基準軸に近づける方向に屈折させ、
前記第2左右方向出射領域は、前記第1焦点を通過して入射した光を前記前後基準軸から遠ざける方向に屈折させ、
光源中心点から出射した光は、前記第2反射面で内面反射されることなく、前記第1焦点に集光して、前記出射面の前記第1上下方向出射領域に達し前方側に向けて出射され、
光源後端点側から出射した光は、前記第2反射面で内面反射されることなく、前記第1焦点より上側を通過して、前記出射面の前記第1上下方向出射領域に達し前方の下側に向けて出射され、
光源前端点側から出射した光は、前記第2反射面で内面反射され、前記第1焦点の上側を通過し、前記出射面の前記第2上下方向出射領域に達し前方の上側に向けて出射され、
上端縁に前記第2反射面の前記前端縁によって規定されるカットオフラインを含む配光パターンを形成する、レンズ体。
前記出射面は、前記第1焦点の近傍を通過した光が、水平方向から見て、前記前後基準軸と略平行となる方向に出射するように、その面形状が構成されている請求項1に記載のレンズ体。
前記第2上下方向出射領域は、前記第1上下方向出射領域の面形状に対して、鉛直方向に立ち上がった形状を有し、前記第2上下方向出射領域に達した光の一部を、前記前後基準軸より上側に傾いた方向に出射する、請求項1又は2に記載のレンズ体。
前記第1反射面の前記第1焦点と前記第2焦点の間の距離及び離心率は、前記第1反射面で内面反射されて前記出射面の焦点近傍に集光する前記光源からの光が前記出射面によって捕捉されるように設定されている、請求項1〜4の何れか一項に記載のレンズ体。
前記第2反射面は、前記第1反射面で内面反射された光のうち前記第2反射面で内面反射された光が前記出射面によって捕捉されるように前記前後基準軸に対する角度が設定される、請求項1〜6の何れか1項に記載のレンズ体。
前記第2反射面は、前記第1反射面で内面反射されるとともに前記第2反射面で内面反射されることなく前記出射面に達する光を遮らないように前記前後基準軸に対する角度が設定される、請求項7に記載のレンズ体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両用灯具では、レンズ体の表面に金属蒸着による金属反射膜(反射面)を形成し、この金属反射膜で反射した光を前方に向けて照射している。このため、反射面で光の損失が生じて光の利用効率の低下を招くという問題があった。また、上述の車両用灯具では、光が中央の領域に集中して照射されるために、中央に対して左右方向の照度が不足しやすいという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、光源からの光を高効率で利用するとともに、光を左右方向に効果的に分散する車両用灯具および当該車両用灯具に採用可能なレンズ体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、光源の前方に配置され、後端部及び前端部を含み、内部に入射した前記光源からの光を車両の前後方向に延びる前後基準軸に沿って前記前端部から前方に出射するレンズ体において、前記光源からの光のうち前記光源の光軸に対して所定角度範囲の光が集光する方向に屈折して内部に入射させる入射部と、前記入射部から入射した前記光源からの光を内面反射する第1反射面と、前記第1反射面で内面反射された光の少なくとも一部を内面反射する第2反射面と、前記前端部に位置し前記第1反射面で内面反射された光および前記第2反射面で内面反射された光をそれぞれ前方に出射する出射面と、を備え、前記光源の光軸は、前記入射部から入射した前記光源からの光の前記第1反射面に対する入射角が臨界角以上となるように、鉛直方向に対して傾斜しており、前記第1反射面は、長軸に対し回転対称な楕円球形状を含み、楕円球形状の焦点となり前方に位置する第1焦点および後方に位置する第2焦点を前記長軸上に構成し、前記第2焦点は、前記入射部から入射した前記光源からの光である屈折光を逆方向に延長した場合の交点である仮想光源位置の近傍に位置し、前記第2反射面は、後方に向かって前記前後基準軸と平行に延びた平面で構成され、前記平面の前方には前端縁を有し、前記第1焦点は、前記第2反射面の前記前端縁の近傍に位置しており、前記出射面は、前記車両の左右方向に垂直な面に沿う断面に、前記前後基準軸と平行な光軸を有し前記第1焦点の近傍に位置する点を基準点とする凸形状を有し、前記車両の上下方向に垂直な面に沿う断面に、左右方向に互いに隣り合う第1左右方向出射領域と第2左右方向出射領域と、前記車両の左右方向に垂直な面に沿う断面に、第1上下方向出射領域と第2上下方向出射領域と、を有し、前記第2上下方向出射領域は、前記第1上下方向出射領域の上側に位置しており、前記第1左右方向出射領域は、前記第1焦点を通過して入射した光を前記前後基準軸に近づける方向に屈折させ、前記第2左右方向出射領域は、前記第1焦点を通過して入射した光を前記前後基準軸から遠ざける方向に屈折させ、光源中心点から出射した光は、前記第2反射面で内面反射されることなく、前記第1焦点に集光して、前記出射面の前記第1上下方向出射領域に達し前方側に向けて出射され、光源後端点側から出射した光は、前記第2反射面で内面反射されることなく、前記第1焦点より上側を通過して、前記出射面の前記第1上下方向出射領域に達し前方の下側に向けて出射され、光源前端点側から出射した光は、前記第2反射面で内面反射され、前記第1焦点の上側を通過し、前記出射面の前記第2上下方向出射領域に達し前方の
上側に向けて出射され
、上端縁に前記第2反射面の前記前端縁によって規定されるカットオフラインを含む配光パターンを形成する。
【0007】
上記の構成において、入射部において光源からの光のうち光源の光軸に対して所定角度範囲の光(例えば、±60°の範囲の相対強度が高い光)が集光する方向に屈折してレンズ体内部に入射する。これにより、当該所定角度範囲の光の第1反射面に対する入射角を臨界角以上とすることができる。さらに、上記の構成において、光源の光軸が、鉛直軸に対して傾斜することで、レンズ体内部に入射した光源からの光の第1反射面に対する入射角が臨界角以上となる。すなわち、上記の構成によれば、光源からの光が臨界角以上の入射角で第1反射面に入射するため、第1反射面に金属蒸着させる必要がなく、コスト削減を図ることができるとともに、蒸着面において生ずる反射損失を抑制して、光の利用効率を高めることができる。
【0008】
また、上記の構成において、出射面の前後方向および左右方向に沿う断面には、第1左右方向出射領域と第2左右方向出射領域とが設けられている。出射面に入射する光は、楕円球状の第1反射面において反射されているために、第1焦点の近傍を通過する。第1左右方向出射領域は、第1焦点を通過して入射した光を、前後に延びる前後基準軸に近づける方向に屈折させて出射する。一方で、第2左右方向出射領域は、第1焦点を通過して入射した光を、前後に延びる前後基準軸から遠ざける方向に屈折させて出射する。すなわち、上記の構成によれば、出射面に、それぞれ左右の異なる方向に出射する領域が設けられているために、左右方向に幅広く照射することが可能となる。
【0009】
また、上記の構成において、レンズ体は、第1反射面の焦点の1つである第1焦点の近傍から後方に向かって延びる第2反射面を有する。第2反射面は、第1反射面で内面反射された光のうち、第1焦点より下側を通過しようとする光を上側に向けて反射する。第1焦点より下側を通過しようとする光が、第2反射面で反射されることなくそのまま出射面に入射すると、出射面から上側を向かう光として出射される。第2反射面が設けられることで、このような光の光路を反転させて出射面の上側に入射させ出射面から下側を向かう光として出射させることができる。すなわち、上記の構成によれば、上端縁にカットオフラインを含む配光パターンを形成することができる。このような配光パターンは、例えばロービーム用配光パターン又はフォグランプ用配光パターンとして採用できる。
【0010】
また、上記のレンズ体において、前記出射面は、前記第1焦点の近傍を通過した光が、水平方向から見て前記前後基準軸と略平行となる方向に出射するように、その面形状が構成されていてもよい。
【0011】
上記の構成において、出射面の面形状は、基準点を通過した光を前後基準軸と略平行な方向に出射するように構成されている。レンズ体の形成する配光パターンは、前後基準軸の先に延びるカットオフラインを有する。上記の構成によれば、カットオフライン付近を相対的に明るくして最も照度の高い領域とすることができる。
【0012】
また、上記のレンズ体において
、前記第2上下方向出射領域は
、前記第1上下方向出射領域
の面形状に対して、鉛直方向に立ち上がった形状を有し、前記第2上下方向出射領域に達した光の一部を、前記前後基準軸
より上側に傾いた方向に出射してもよい。
【0013】
上記の構成によれば、前記出射面の前後方向および上下方向に沿う断面には、第1上下方向出射領域と第2上下方向出射領域とが設けられる。第2上下方向出射領域は、基準点の近傍を通過して入射した光を前後基準軸に対し上側に傾いた方向に出射するため、道路標識等を照射するための光(以下、オーバーヘッド光という)として利用できる。
【0014】
また、上記のレンズ体において、前記第2左右方向出射領域は、上下方向から見て中央部が窪んだ凹形状を有し、前記第1左右方向出射領域は、前記第2左右方向出射領域の左右方向両側にそれぞれ位置する凸形状であってもよい。
【0015】
上記の構成によれば、出射面には、上下方向から見て前後基準軸と重なる中央側が凹形状をなす第2左右方向出射領域が配置され、第2左右方向出射領域の左右両側に凸形状をなす第1左右方向出射領域が配置される。これにより、前後基準軸に対し左右両側に向かって光を幅広く照射することができる。
【0016】
また、上記のレンズ体において、前記第1反射面の前記第1焦点と前記第2焦点の間の距離及び離心率は、前記第1反射面で内面反射されて前記出射面の焦点近傍に集光する前記光源からの光が前記出射面によって捕捉されるように設定されていてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、出射面によってより多くの光を捕捉できるため、光利用効率が向上する。
【0018】
また、上記のレンズ体において、前記長軸は、前記前後基準軸に対して傾斜し、前記第2焦点が前記第1焦点より下側に位置していてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、前記長軸が、第2焦点側を下側として傾斜することで、光源から光が第1反射面および第2反射面で内面反射された光が前記出射面によって捕捉されやすくなる。加えて、上記の構成によれば、光源から第1反射面に入射する光の入射角が臨界角以上となりやすく、第1反射面で全反射を実現しやすくなる。上記構成によれば、これらの作用により、光の利用効率を高めることができる。
【0020】
本発明の別態様のレンズ体においては、前記第2反射面は、前記第1反射面で内面反射された光のうち前記第2反射面で内面反射された光が前記出射面によって捕捉されるように前記前後基準軸に対する角度が設定される。
【0021】
上記の構成によれば、出射面によってより多くの光を捕捉できるため、光利用効率が向上する。
【0022】
上記レンズ体において、前記第2反射面は、前記第1反射面で内面反射されるとともに前記第2反射面で内面反射されることなく前記出射面に達する光を遮らないように前記前後基準軸に対する角度が設定されていてもよい。
【0023】
上記の構成によれば、出射面によってより多くの光を捕捉できるため、光利用効率が向上する。
【0024】
上記レンズ体において、前記第2反射面の前記前端縁が、中央部から左右方向外側に向かうに従って前方に向かって延びていてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、配光パターンに明瞭のカットオフラインを形成することができる。
【0026】
上記レンズ体において、前記第2反射面は、主面部と、前記主面部に対して上下方向にずれた副面部と、を有し、前記主面部と前記副面部との境界部の少なくとも一部は、前記前端縁から後方に延びていてもよい。
【0027】
上記の構成によれば、配光パターンのカットオフラインに上下方向の段差を設けることができる。これにより、例えば車両前方の自車線側を遠方まで照射し、対向車の車線側を近傍のみ照らすといった、左右非対称の配光パターンを実現できる。
【0028】
本発明の車両用灯具は、上記レンズ体と、前記光源と、を備える。
【0029】
上記の構成によれば、上述したそれぞれの効果を奏する車両用灯具を提供できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の態様によれば、光源からの光を高効率で利用するとともに、光を左右方向に効果的に分散する車両用灯具に採用可能なレンズ体およびこれを備えた車両用灯具を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態であるレンズ体40およびレンズ体40を備えた車両用灯具10について、図面を参照しながら説明する。
【0033】
以下の説明において、前後方向とは、レンズ体40又は車両用灯具10が搭載される車両の前後方向を意味し、車両用灯具10は、前方に向かって光を照射するものとする。さらに前後方向は、特に断りのない場合は、水平面内の一方向であるものとする。さらに、左右方向とは、特に断りのない場合は、水平面内の一方向であり、前後方向と直交する方向である。
本明細書において、前後方向に延びる(又は前後に延びる)、とは、厳密に前後方向に延びる場合に加えて、前後方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。同様に、本明細書において、左右方向に延びる(又は左右に延びる)、とは、厳密に左右方向に延びる場合に加えて、左右方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0034】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は上下方向(鉛直方向)であり、+Z方向が上方向である。また、X軸方向は前後方向であり、+X方向が前方向(前方)である。さらに、Y軸方向は、左右方向である。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0035】
また、以下の説明において、2つの点が「近傍に位置する」とは、2つの点が単に近い位置にある場合を指すのみならず、2つの点が互いに一致する場合を含む。
【0036】
図1は、車両用灯具10の断面図である。また、
図2は、車両用灯具10の部分断面図である。
図1に示すように、車両用灯具10は、レンズ体40と、発光装置20と、発光装置20を冷却するヒートシンク30と、を備えている。車両用灯具10は、発光装置20から照射された光を、レンズ体40を介して前方に出射する。
【0037】
図2に示すように、発光装置20は、光軸AX
20に沿って、光を照射する。発光装置20は、半導体レーザー素子22と、集光レンズ24と、波長変換部材(光源)26と、これらを保持する保持部材28と、を有する。半導体レーザー素子22、集光レンズ24および波長変換部材26は、光軸AX
20に沿ってこの順に配置されている。
【0038】
半導体レーザー素子22は、青色域(例えば、発光波長が450nm)のレーザー光を放出するレーザーダイオード等の半導体レーザー光源である。半導体レーザー素子22は、例えば、CANタイプのパッケージに実装、封止されている。半導体レーザー素子22は、ホルダ等の保持部材28に保持されている。なお、他の実施形態として、半導体レーザー素子22に代えて、LED素子等の半導体発光素子を用いてもよい。
【0039】
集光レンズ24は、半導体レーザー素子22からのレーザー光を集光する。集光レンズ24は、半導体レーザー素子22と波長変換部材26との間に位置する。
【0040】
波長変換部材26は、例えば、発光サイズが0.4×0.8mmの矩形板状の蛍光体によって構成されている。波長変換部材26は、半導体レーザー素子22から、例えば5〜10mm程度、離間した位置に配置されている。波長変換部材26は、集光レンズ24によって集光されたレーザー光を受けて当該レーザー光の少なくとも一部を異なる波長の光に変換する。より具体的には、波長変換部材26は、青色域のレーザー光を黄色光に変換する。波長変換部材26により変換された黄色の光は、波長変換部材26を透過した青色域のレーザー光と混色して、白色光(疑似白色光)として放出される。したがって、波長変換部材26は、白色光を放出する光源として機能する。以下、波長変換部材26のことを光源26とも称する。
【0041】
光源26から照射された光は、後段に説明する入射面42に入射してレンズ体40の内部を進行し、後段において説明する第1反射面44(
図1参照)で内面反射される。
光源26の光軸AX
26は、発光装置20の光軸AX
20と一致する。
図1に示すように、光軸AX
26は、鉛直方向(Z軸方向)に延びる鉛直軸Vに対して角度θ1傾斜している。鉛直軸Vに対する光軸AX
26の角度θ1は、入射面42からレンズ体40内部に入射した光源からの光の第1反射面44に対する入射角が臨界角以上となるように、設定されている。
【0042】
図3Aはレンズ体40の上面図、
図3Bはレンズ体40の正面図、
図3Cはレンズ体40の斜視図、
図3Dはレンズ体40の側面図である。
図4は、YZ平面に沿うレンズ体40の断面図であり、光源26からの光がレンズ体40内部を進行する光路を模式的に示す。
【0043】
レンズ体40は、前後基準軸AX
40に沿って延びた形状を有する中実の多面レンズ体である。なお本実施形態において、前後基準軸AX
40は、車両の前後方向(X軸方向)に延び、後段で説明するレンズ体40の出射面48の中心を通過する基準となる軸である。レンズ体40は、光源26の前方に配置される。レンズ体40は、後方を向く後端部40AAと、前方を向く前端部40BBと、を含む。また、レンズ体40は、
図3A〜Dに示すように、前端部40BBと後端部40AAとの間で、左右方向に延びる固定部41を有する。レンズ体40は、固定部41において、車両に固定される。
【0044】
レンズ体40は、例えば、ポリカーボネイトやアクリル等の透明樹脂やガラスなど、空気よりも屈折率の高い材質のものを用いることができる。また、レンズ体40に透明樹脂を用いた場合は、金型を用いた射出成形によってレンズ体40を形成することが可能である。
【0045】
レンズ体40は、入射面(入射部)42と、第1反射面44と、第2反射面46と、出射面48と、を有する。入射面42及び第1反射面44は、レンズ体40の後端部40AAに位置する。また、出射面48は、レンズ体40の前端部40BBに位置する。第2反射面46は、後端部40AAと前端部40BBとの間に位置する。
【0046】
レンズ体40は、後端部40AAに位置する入射面42からレンズ体40内部に入射した光源26からの光Ray
26を前後基準軸AX
40に沿って前端部40BBに位置する出射面48から前方に出射する。これにより、レンズ体40は、後段において説明するように、上端縁にカットオフラインCLを含むロービーム用配光パターンP(
図11参照)を形成する。
【0047】
図5Aは、光源26およびレンズ体40の入射面42の近傍の部分拡大図である。
光源26は、所定の面積を持つ発光面を有する。このため、光源26から照射された光は、発光面内の各点から放射状に広がる。レンズ体40の内部を通過する光は、発光面内の各点から出射された光ごとに異なる光路をたどる。本明細書では、発光面の中心(すなわち光源26の中心)である光源中心点26aと、前方側の端点である光源前端点26bと、後方側の端点である光源後端点26cと、から照射される光の光路に着目して説明を行う。
【0048】
図5Bは、
図5Aの一部の拡大図であり光源中心点26aから出射した光の経路を示す図である。本明細書では、光源中心点26aから入射面42において屈折してレンズ体40内部に入射した光を逆方向に延長した場合の交点を仮想光源位置F
Vとして設定する。仮想光源位置F
vは、レンズ体40の内部に一体的に光源が配置されていると仮定した場合の光源の位置である。なお、本実施形態において、入射面42は平面であり、レンズ面ではないために、レンズ体40内部に入射した光を逆方向に延長しても一点には交差しない。より具体的には、光軸Lから離れるに従い光軸L上の後方で交差する。このため、最も光軸Lに近い光路が交差する交点を仮想光源位置F
vとする。
【0049】
図5Bに示すように、入射面42は、光源26からの光Ray
26aのうち所定角度範囲ψの光が集光する方向に屈折してレンズ体40内部に入射する面である。ここで所定角度範囲ψの光とは、光源26から照射される光のうち、光源26の光軸AX
26に対して例えば±60°の範囲の相対強度が高い光を意味する。本実施形態において、入射面42は、光源26の発光面(
図5B中、光源前端点26bと光源後端点26cとを結ぶ直線参照)に対して平行な平面形状(又は曲面形状)の面として構成されている。なお、入射面42の構成は、本実施形態の構成に限定されない。例えば、入射面42は、前後基準軸AX
40を含む鉛直面(及びこれに平行な平面)による断面形状が直線形状、かつ、前後基準軸AX
40に直交する平面による断面形状が光源26に向かって凹の円弧形状の面であってもよいし、それ以外の面であってもよい。前後基準軸AX
40に直交する平面による断面形状は、ロービーム用配光パターンPの左右方向の分布を考慮した形状とされている。
【0050】
図6〜
図8は、レンズ体40の断面模式図であって、
図6は、光源中心点26aから照射された光の光路を示し、
図7は、光源前端点26bから照射された光の光路を示し、
図8は、光源後端点26cから照射された光の光路を示す。なお、
図6〜
図8は、レンズ体40の各構成の模式的な図であって、実際の断面形状を表すものではない。特に出射面48においては、後段において説明する第2上下方向出射領域48bが省略されており、第1上下方向出射領域48aのみが表示されている。
【0051】
図6に示すように、光源中心点26aから照射された光は、第1反射面44において内面反射されて第1焦点F144に集光された後に、出射面48の第1上下方向出射領域48aから前方に向かって前後基準軸AX40と平行に出射される。
図7に示すように、光源前端点26bから照射された光は、第1反射面44において内面反射されて第1焦点F144より下側に向かう。さらに、第2反射面46において上側に内面反射された後に、出射面48の第
1上下方向出射領域48
aから前方に下側に向けて出射される。
図8に示すように、光源後端点26cから照射された光は、第1反射面44において内面反射されて第1焦点F144より上側を通過して、出射面48の第1上下方向出射領域48aから前方の下側に向けて出射される。
以下、レンズ体40の各構成について、
図6〜
図8を基に説明する。
【0052】
<第1反射面>
第1反射面44は、入射面42からレンズ体40内部に入射した光源26からの光を内面反射(全反射)する面である。第1反射面44は、長軸AX
44に対し回転対称な楕円球形状を含む。第1反射面44は、楕円球形状の焦点となる第1焦点F1
44および第2焦点F2
44を長軸AX
44上に構成する。
【0053】
第2焦点F2
44は、仮想光源位置F
vの近傍に位置する。楕円の性質により、第1焦点F1
44および第2焦点F2
44のうち、一方から照射された光は、他方に集光する。したがって、
図6に示すように、光源中心点26aから照射された光は、入射面42を介してレンズ体40の内部に進行して、第1焦点F1
44に集光する。さらに、第1焦点F1
44は、後段に説明する出射面48の出射面焦点(基準点)F
48の近傍に位置する。すなわち、第1反射面44は、内面反射した光源中心点26aからの光を、出射面48の出射面焦点F
48近傍に集光するように、その面形状が構成されている。
【0054】
第1反射面44の第1焦点F1
44と第2焦点F2
44の間の距離及び離心率は、第1反射面44で内面反射されて出射面48の出射面焦点F
48近傍に集光する光源26からの光が出射面48によって捕捉されるように、定められている。これにより、出射面48によってより多くの光を捕捉できるため、光利用効率が向上する。
【0055】
長軸AX
44は、前後基準軸AX
40に対して角度θ2で、傾斜している。長軸AX
44は、第2焦点F2
44が第1焦点F1
44より下側となるように、前方に向かうに従って上側に傾く。長軸AX
44が、第2焦点F2
44側を下側として傾斜することで、第2反射面46で内面反射された光の前後基準軸AX
40に対する角度が浅くなる。これにより、光源前端点26bから照射され第1反射面44および第2反射面46で内面反射された光は、出射面48によって捕捉されやすくなる。したがって、長軸AX
44を前後基準軸AX
40に対して傾斜させない場合(つまり、角度θ2=0°の場合)と比べ、出射面48のサイズを小さくでき、かつ、出射面48により多くの光を捕捉させることができる。加えて、長軸AX
44が、第2焦点F2
44側を下側として傾斜することで、光源26から第1反射面44に入射する光の入射角が臨界角以上となりやすい。したがって、第1反射面44で光源26からの光が全反射しやすくなり、光の利用効率を高めることができる。
【0056】
<第2反射面>
第2反射面46は、第1反射面44で内面反射された光源26からの光の少なくとも一部を内面反射(全反射)する面である。第2反射面46は、第1焦点F1
44の近傍から後方に向かって延びる反射面として構成されている。すなわち、第2反射面46の延長面内には、第1焦点F1
44が略位置する。本実施形態において、第2反射面46は、前後基準軸AX40と平行に延びる平面形状を有する。
【0057】
第2反射面46は、第1反射面44で内面反射された光のうち、第1焦点F1
44より下側を通過しようとする光を上側に反射する。第1焦点F1
44より下側を通過しようとする光が、第2反射面46で反射されることなくそのまま出射面48に入射すると、出射面48から上側を向かう光として出射される。第2反射面46が設けられることで、このような光の光路を反転させて出射面48の上側に入射させて下側を向かう光として出射させることができる。すなわち、レンズ体40は、第2反射面46が設けられていることにより、出射面48から上側に向かおうとする光の光路を反転させて、上端縁にカットオフラインCLを含む配光パターンを形成することができる。第2反射面46の前端縁46aは、第1反射面44で内面反射された光源26からの光の一部を遮光してロービーム用配光パターンPのカットオフラインCLを形成するエッジ形状を含んでいる。第2反射面46の前端縁46aは、第1焦点F1
44の近傍に配置されている。
【0058】
第2反射面46は、前後基準軸AX
40に対して、平行であっても傾斜していてもよい。ここで、前後基準軸AX
40に対する第2反射面46の角度を、角度θ3(不図示)として説明する。なお、本実施形態では、角度θ3=0°である。
前後基準軸AX
40に対する第2反射面46の角度θ3は、第1反射面44で内面反射された光源26からの光のうち第2反射面46に入射する光が当該第2反射面46で内面反射され、かつ、その反射光が出射面48に高効率で取り込まれるように定められることが好ましい。これにより、出射面48によってより多くの光を捕捉できるため、光利用効率が向上する。すなわち、前後基準軸AX
40に対する第2反射面46の角度θ3は、第2反射面46で内面反射された光が出射面48によって十分捕捉され得る角度となるように設定されることが好ましい。
また、前後基準軸AX
40に対する第2反射面46の角度θ3は、第1反射面44で内面反射されるとともに第2反射面46で内面反射されることなく出射面48に達する光が遮られない角度となるように設定されることが好ましい。
本実施形態では、以上を考慮して角度θ3=0°を採用している。
【0059】
<出射面>
出射面48は前方に向かって凸のレンズ面である。出射面48は、第1反射面44で内面反射された光および第1反射面44と第2反射面46とでそれぞれ内面反射された光を前方に出射する。出射面48は、車両の左右方向に垂直な面に沿う断面に、前後基準軸AX
40と平行な光軸を有し第1焦点F1
44の近傍に位置する点を基準点F
48とする凸形状を有する。ここで、基準点F
48とは、出射面48から出射される光が所望の配光パターンを形成するときに、出射面48の手前で光が集中する集光領域の中心に位置する点を意味する。本明細書において、出射面48は、上下方向について、厳密に一様な曲率半径の断面を有していない。したがって、出射面48は、厳密な焦点を有さないが、光が集光する基準点F
48を焦点と見做すことができる。本明細書においては、出射面48の基準点を、出射面焦点F
48と呼ぶ。
【0060】
図4に示すように、出射面48は、車両の左右方向に垂直な面(XZ平面)に沿う断面に、第1上下方向出射領域48aと、第2上下方向出射領域48bと、を有する。第1上下方向出射領域48aは、出射面48の大部分を構成する凸形状(凸レンズ形状)を有する。また、第2上下方向出射領域48bは、第1上下方向出射領域48aの上端縁に沿って配置されている。
【0061】
第1上下方向出射領域48aは、第1焦点F1
44の近傍に位置する点を出射面焦点(基準点)F
48とするよう形成される。したがって、第1反射面44で内面反射されて第1焦点F1
44に集光した複数の光の光路は、第1上下方向出射領域48aに入射することで、少なくとも鉛直方向に関し、互いに略平行に出射される。
また、本実施形態において、第1上下方向出射領域48aは、前後基準軸AX
40と一致する光軸Lを有する。なお、第1上下方向出射領域48aの光軸Lは、前後基準軸AX
40と平行であれば必ずしも一致していなくてもよい。これにより、出射面焦点F
48を通過して、第1上下方向出射領域48aに入射した光は、少なくとも鉛直方向に関し、前後基準軸AX
40と平行に出射される。すなわち、第1上下方向出射領域48aは、第1焦点F1
44の近傍を通過した光が、少なくとも鉛直方向に関し、前後基準軸AX
40と略平行となる方向に出射するように、その面形状が構成されている。すなわち、第1上下方向出射領域48aから出射される光の仰角が、実質的に前後基準軸AX40の仰角と平行になるように、第1上下方向出射領域48aの面形状が形成されている。なお、第1上下方向出射領域48aから出射される光のXZ平面における出射方向は、前後基準軸AX40と異なる方向であっても良い。
【0062】
第2上下方向出射領域48bは、出射面48内で第1上下方向出射領域48aと上下方向に隣り合っている。第2上下方向出射領域48bは、第1上下方向出射領域48aの上側に位置し、第1上下方向出射領域48aの面形状に対して、鉛直方向に立ち上がった形状を有する。これにより、第2上下方向出射領域48bは、出射面焦点F
48の近傍を通過して入射した光を前後基準軸AX
40に対し上側に傾いた方向に出射する。なお、
図6〜
図8に示す光路からわかる様に、本実施形態において、出射面48内の前後基準軸AX
40より上側の領域に入射する光は、光源中心点26aより光源前端点26b側で、光源26から出射された光である。したがって、本実施形態において、第2上下方向出射領域48bに入射する光は、光源中心点26aより光源前端点26b側で、光源26から出射された光となる。
第2上下方向出射領域48bから出射された光は、前後基準軸AX
40より上側を出射するため、道路標識等を照射するための光(以下、オーバーヘッド光という)として利用できる。
【0063】
図9は、レンズ体40のXZ平面に沿う断面図であり、光源中心点26aから照射された光の光路を示す。
図9に示すように、上下方向に垂直な面(XZ平面)に沿う断面に、レンズ体4は、2つの第1左右方向出射領域48cと1つの第2左右方向出射領域48dとを有する。第1左右方向出射領域48cおよび第2左右方向出射領域48dは、左右方向に互いに隣り合う。より具体的には、第2左右方向出射領域48dは、上下方向から見て出射面48の中央に位置し、第1左右方向出射領域48cは、第2左右方向出射領域48dの左右方向両側に位置する。また、第1左右方向出射領域48cおよび第2左右方向出射領域48dにより構成される出射面48の上下方向に垂直な面(XZ平面)に沿う断面は、前後基準軸AX
40に対し左右対称な形状を有する。
【0064】
第1左右方向出射領域48cは、凸形状(凸レンズ形状)を構成する。第1左右方向出射領域48cは、第1焦点F1
44を通過して入射した光を前後基準軸AX
40に近づける方向に屈折させる。
第2左右方向出射領域48dは、上下方向から見て中央部が窪んだ凹形状(凹レンズ形状)を構成する。より具体的には、第2左右方向出射領域48dは、上下方向から見て前後基準軸AX
40と重なる位置が最も窪んだ凹形状を構成する。第2左右方向出射領域48dは、第1焦点F1
44を通過して入射した光を前後基準軸AX
40から遠ざける方向に屈折させる。
【0065】
出射面48に入射する光は、楕円球状の第1反射面44で内面反射されているため、第1焦点F1
44の近傍を通過する。第1左右方向出射領域48cおよび第2左右方向出射領域48dは、第1焦点F1
44を通過して入射した光を、それぞれ左右の異なる方向に出射するために、左右を幅広く照らすことができる。加えて、本実施形態の出射面48は、前後基準軸AX
40に対し、中央側に凹形状をなす第2左右方向出射領域48dが配置され、その外側に凸形状をなす第1左右方向出射領域48cが配置される。これにより、前後基準軸AX
40に対し左右両側を幅広く照射できる。さらに、出射面48は、第1左右方向出射領域48cおよび第2左右方向出射領域48dが、前後基準軸に対して左右対称に配置されことで、前後基準軸AX
40に対し左右対称な配光パターンを形成できる。
【0066】
本実施形態によれば、入射面42において光源26からの光のうち光源26の光軸AX
26に対して所定角度範囲の光が集光する方向に屈折してレンズ体内部に入射する。これにより、所定角度範囲の光の第1反射面44に対する入射角を臨界角以上とすることができる。さらに、光源26の光軸AX
26が、鉛直軸Vに対して傾斜することで、レンズ体40の内部に入射した光源26からの光の第1反射面44に対する入射角が臨界角以上となる。すなわち、光源26からの光を臨界角以上の入射角で第1反射面44に入射させることができる。これにより、第1反射面44に金属蒸着させる必要がなく、コスト削減を図ることができるとともに、蒸着面において生ずる反射損失を抑制して、光の利用効率を高めることができる。
【0067】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
例えば、上述の実施形態では、ロービーム用配光パターンP(
図11参照)を形成するように構成されたレンズ体40に適用した例について説明した。しかしながら、例えば、フォグランプ用配光パターンを形成するように構成されたレンズ体や、ハイビーム用配光パターンを形成するように構成されたレンズ体やそれ以外のレンズ体に適用することもできる。
【0068】
また、上述の実施形態では、第1反射面44の長軸AX
44を前後基準軸AX
40に対して角度θ2傾斜させたが、これに限らず、第1反射面44の長軸AX
44(長軸)を長軸AX
44に対して傾斜させなくてもよい(つまり、角度θ2=0°でもよい)。このような場合であっても、出射面48のサイズを大きくすることで、第1反射面44で内面反射された光源26からの光を効率よく取り込むことができる。
【0069】
また、実施形態において、第2上下方向出射領域48bは、第1上下方向出射領域48aの上端縁に沿って配置されている場合について例示したが、本発明は、このような構成に限定されない。すなわち、第2上下方向出射領域48bは、出射面48内で第1上下方向出射領域48aの下側に配置されていてもよく、さらに第2上下方向出射領域48bは、2つの第1上下方向出射領域48aの間に上下から挟まれて配置されていてもよい。
同様に、第1左右方向出射領域48cおよび第2左右方向出射領域48dは、左右方向に互いに隣り合う構成であれば、その配置は限定されない。例えば、第1左右方向出射領域48cおよび第2左右方向出射領域48dが、上述の実施形態と比較して反転した位置関係を構成してもよい。
加えて、上下方向出射領域(第1上下方向出射領域48aと第2上下方向出射領域48b)と左右方向出射領域(第1左右方向出射領域48cと第2左右方向出射領域48d)はそれぞれ独立して規定される。したがって、例えば、第1左右方向出射領域48cは、第1上下方向出射領域48aと第2上下方向出射領域48bのそれぞれを含んでいてもよいし、第1上下方向出射領域48aのみを含んでいてもよい。
【0070】
<第2実施形態>
次に第2実施形態のレンズ体140について説明する。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
図12Aはレンズ体140の上面図、
図12Bはレンズ体140の正面図、
図12Cはレンズ体140の斜視図、
図12Dはレンズ体140の側面図、
図12Eはレンズ体140の下面図である。
【0071】
レンズ体140は、前後基準軸AX
140に沿って延びた形状を有する中実の多面レンズ体である。なお本実施形態において、前後基準軸AX
140は、車両の前後方向(Z軸方向)に延び、後段で説明するレンズ体140の出射面148の中心を通過する基準となる軸である。レンズ体140は、光源(図示略)の前方に配置される。レンズ体140は、後方を向く後端部140AAと、前方を向く前端部140BBと、を含む。また、レンズ体140は、
図12A〜Dに示すように、前端部140BBと後端部140AAとの間で、左右方向に延びる固定部141を有する。レンズ体140は、固定部141において、灯具内に固定される。
【0072】
レンズ体140は、入射面(入射部)142と、第1反射面144と、第2反射面146と、出射面148と、を有する。入射面142及び第1反射面144は、レンズ体140の後端部140AAに位置する。また、出射面148は、レンズ体140の前端部140BBに位置する。第2反射面146は、後端部140AAと前端部140BBとの間に位置する。
【0073】
本実施形態のレンズ体140は、第1実施形態と同様に、光源(図示略)の前方に配置される。入射面142(
図12D参照)は、光源からの光を内部に入射させる。第1反射面144は、入射面142から入射した光を内面反射する。また、第1反射面144は、楕円球形状を含む。楕円球形状の第1反射面144の一対の焦点のうち、前方に位置する第1焦点F1
144は、第2反射面146の前端縁146aに位置する。第2反射面146は、第1反射面144で内面反射された光の一部を内面反射する。出射面148は、第1反射面144で内面反射された光のうち、第2反射面146で反射されることなく出射面148に達した光と、第2反射面146で内面反射されて出射面148に達した光と、を前方に出射する。
【0074】
第2反射面146は、第1反射面144で内面反射された光源(図示略)からの光の少なくとも一部を内面反射(全反射)する面である。第2反射面146は、第1焦点F1
144の近傍から後方に向かって延びる反射面として構成されている。すなわち、第2反射面146の延長面内には、第1焦点F1
144が略位置する。
図12Eに示すように、本実施形態において、第2反射面146は、主面部151と副面部152とを有する。主面部151は、前後基準軸AX
140と平行に延びる平面形状を有する。副面部152は、主面部151の前端中央に位置する。副面部152は、主面部151に対して上方に突出して形成されている。すなわち、レンズ体140は、副面部152に対応する部分において窪んでいる。
【0075】
第2反射面146は、第1反射面144で内面反射された光のうち、第1焦点F1
144より下側を通過しようとする光を上側に反射する。第1焦点F1
144より下側を通過しようとする光が、第2反射面146で反射されることなくそのまま出射面148に入射すると、出射面148から上側を向かう光として出射される。第2反射面146が設けられることで、このような光の光路を反転させて出射面148の上側に入射させて下側を向かう光として出射させることができる。すなわち、レンズ体140は、第2反射面146が設けられていることにより、出射面148から上側に向かおうとする光の光路を反転させて、上端縁にカットオフラインCLを含む配光パターンを形成することができる。第2反射面146の前端縁146aは、第1反射面144で内面反射された光源からの光の一部を遮光してロービーム用配光パターンPのカットオフラインCLを形成するエッジ形状を含んでいる。第2反射面146の前端縁146aは、第1焦点F1
144の近傍に配置されている。
【0076】
図12Dおよび
図12Eに示すように、第2反射面146の前端縁146aの前方には、前方に向かうに従って下方に傾く傾斜面147が設けられている。傾斜面147は、後方を向く面であるため光が入射し難い。なお、前端縁146aは、第2反射面146と傾斜面147との境界稜線となる。
【0077】
図13は、第2反射面146および傾斜面147の上面図である。
図14は、傾斜面147の正面図である。
図15は、第2反射面146および傾斜面147の斜視図である。なお、
図13〜
図15においては、第2反射面146および傾斜面147を強調する目的で、レンズ体140を構成する他の面の図示を省略する。
【0078】
本実施形態の第2反射面146の前端縁146aは、中央部から左右方向外側に向かうに従って前方に向かって延びている。したがって、前端縁146aは、上下方向からみてV字形状となっている。上述したように、前端縁146aは、カットオフラインCLを形成するエッジ形状を含んでいる。前端縁146aが、中央部から左右方向外側に向かうに従って前方に向かって延びることにより、第2反射面146の前端縁146aによって一部遮光されて出射面148から出射したパターンと、第2反射面146によって反射され出射面148から出射したパターンの境界を一致させることができる。これにより、より明瞭なカットオフラインCLを形成できる。
【0079】
本実施形態の第2反射面146は、主面部151と、主面部151に対して上方にずれた副面部152とを有する。主面部151は、平坦に形成されている。一方で、副面部152は、主面部151に対して上方に突出する。副面部152は、第2反射面146の前端縁146aの略中央から後方に向かって延びている。副面部152と主面部151との境界部153の少なくとも一部は、第2反射面146の前端縁146aから後方に延びる。したがって、前端縁146aは、境界部153において上下に段差を形成する。これに伴い、カットオフラインCLには、上下方向の段差が形成される。
【0080】
本実施形態の副面部152は、副面中央部152aと、副面中央部152aの左右両側にそれぞれ位置する副面左方部152bおよび副面右方部152cとを有する。副面中央部152a、副面左方部152bおよび副面右方部152cの後方には、境界部153を介して主面部151が位置する。また、副面中央部152a、副面左方部152bおよび副面右方部152cの前方には、前端縁146aを介して傾斜面147が位置する。副面中央部152aと副面右方部と152cとの境界は、左右方向略中央に位置する。
【0081】
なお、本実施形態において、主面部151に対して上方にずれた部分を副面部152とした。しかしながら、主面部151と副面部152とは、互いに上下方向にずれていれば、どちらが上方に位置していてもよい。
また、本実施形態では第2反射面146が、1つの副面部152を有する場合について説明した。しかしながら、第2反射面146が2以上の副面部152を有していてもよい。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0083】
<第1実施形態に対応する配光パターン>
上述した第1実施形態の車両用灯具10に対して、レンズ体40の前方においてレンズ体40に正対した仮想鉛直スクリーンに対し配光パターンのシミュレーションを行った。
図10の(a)〜(d)は、出射面48のそれぞれ異なる領域から照射された光の配光パターンである。
図10の(a)は、上側から見て、前後基準軸AX
40の左側に位置する第2左右方向出射領域48dから照射された光の配光パターンP48dLである。
図10の(b)は、上側から見て、前後基準軸AX
40の右側に位置する第2左右方向出射領域48dから照射された光の配光パターンP48dRである。
図10の(c)は、上側から見て、前後基準軸AX
40の左側に位置する第1左右方向出射領域48cから照射された光の配光パターンP48cLである。
図10の(d)は、上側から見て、前後基準軸AX
40の右側に位置する第1左右方向出射領域48cから照射された光の配光パターンP48cRである。
図10の(a)〜(d)に示すように、各領域から照射された光は、異なる方向に分布を持つことがわかる。
【0084】
図11は、レンズ体40の前方においてレンズ体40に正対した仮想鉛直スクリーンに対し照射された配光パターンPのシミュレーション結果である。配光パターンPは、
図10の(a)〜(d)の配光パターンP48dL、P48dR、P48cL、P48cRを重ね合わせた配光パターンである。
図11に示すように、配光パターンPは、幅広くかつバランスよく前方を照射できていることがわかる。また、配光パターンPは、上端縁にカットオフラインCLを形成できることが確認された。加えて、カットオフラインCLの上側にオーバーヘッド光OHが照射されていることが確認された。
【0085】
<第2実施形態に対応する配光パターン>
上述した第2実施形態のレンズ体140の配光パターンP2のシミュレーション結果を
図16に示す。
図16に示すように、配光パターンP2は、中央近傍に段差を有するカットオフラインCLを形成できることが確認された。