(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属又は金属酸化物が、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金及び亜鉛からなる群から選択される1以上の金属又は金属の酸化物である請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
前記金属又は金属酸化物がインジウム又は酸化インジウムであり、前記第1の樹脂層の、前記第2の樹脂層と接する面と反対の面から測定した光沢度が、250%以上である請求項10に記載の成形体。
前記金属又は金属酸化物がアルミニウム又は酸化アルミニウムであり、前記第1の樹脂層の、前記第2の樹脂層と接する面と反対の面から測定した光沢度が380%以上である請求項10に記載の成形体。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の積層体は、熱可塑性樹脂を含む第1の樹脂層、第2の樹脂層、及び金属又は金属酸化物を含む金属層を、この順に含み、第2の樹脂層の厚みが35nm以上70nm以下であり、第2の樹脂層の樹脂と第1の樹脂層の樹脂が同一でない。
【0010】
本発明の積層体は、第2の樹脂層を含むことで、金属層と第1の樹脂層を密着させることができる。
また、第2の樹脂層の厚みが70nm以下の場合、第1の樹脂層が動きやすい(経時や熱により体積が変動しやすい)樹脂であっても、熱成形時や長期保存時の歪みが減少し、金属層が追従できる範囲内となるため、微細なクラックが生じず、輝度に優れた金属調の成形体を得ることができる。
一方、35nm以上の場合、金属層と良好に密着させることができる。
【0011】
第2の樹脂層の厚みは、40nm以上65nm以下が好ましく、45nm以上60nm以下がより好ましい。
【0012】
第2の樹脂層の厚みは、例えば、反射X線小角散乱法により測定できる。この方法により、本発明の積層体の金属又は金属酸化物を含む金属層の厚みも測定できる。
【0013】
第2の樹脂層の樹脂と第1の樹脂層の樹脂は同一ではない。第2の樹脂層は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン及びポリエステルからなる群から選択される1以上の樹脂を含むことが好ましい。中でも、第1の樹脂層や後述の印刷層への密着性及び成形性に鑑みて、ウレタン樹脂が好ましい。
これにより、第2の樹脂層は、易接着層として機能することができる。
【0014】
第2の樹脂層は、1層以上であることが好ましく、複数の層から構成されてもよい。1〜2層であることが好ましい。
【0015】
ウレタン樹脂は、ジイソシアネート、高分子量ポリオール及び鎖延長剤の反応物が好ましい。高分子量ポリオールとして、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
これにより、積層体が複雑な非平面状に成形される場合でも、第1の樹脂層に追従して良好に形成できる。また、金属層のひび割れや剥離を防ぐことができる。
【0016】
ウレタン樹脂としては、ハイドランWLS−202(DIC株式会社製)等が挙げられる。
【0017】
アクリル樹脂としては、アクリット8UA−366(大成ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
ポリオレフィンとしては、アローベースDA−1010(ユニチカ株式会社製)等が挙げられる。
【0018】
第2の樹脂層の引張破断伸度は、150%以上900%以下が好ましく、より好ましくは200%以上850%以下、特に好ましくは300%750%以下である。
【0019】
第2の樹脂層の引張破断伸度が150%未満である場合、熱成形時に第1の樹脂層の伸びに第2の樹脂層が追従することができず、クラックが入り、金属層にひび割れが生じたり、剥離したりするおそれがある。一方、引張破断伸度が900%を超える場合、耐水性が悪化するおそれがある。
【0020】
引張破断伸度は、例えばJIS K7311に準拠した方法で、厚み150μmの試料にて測定することができる。
【0021】
第2の樹脂層の軟化温度は、50℃以上180℃以下が好ましく、より好ましくは90℃以上170℃以下、特に好ましくは100℃以上165℃以下である。
【0022】
第2の樹脂層の軟化温度が50℃より低い場合、常温での第2の樹脂層の強度が不足し、金属層のひび割れが生じたり剥離したりするおそれがある。一方、180℃を超える場合、熱成形時に十分軟化できず、第2の樹脂層にクラックが入り、金属層にひび割れが生じたり剥離したりするおそれがある。
軟化温度は、例えば、高化式フローテスターによる流動開始温度を測定することで求めることができる。
【0023】
第2の樹脂層のガラス転移温度は−60℃以上100℃以下であることが好ましく、−55℃以上80℃以下がより好ましい。
ガラス転移温度が−60℃未満では、第2の樹脂層の歪みが金属層の追従性を超えるおそれがあり、長期使用時に微細なクラックによる不良が発生するおそれがある。一方、100℃を超えると軟化温度が高くなるため、熱成形時の伸びが不足するおそれがあり、延伸部の伸びムラが発生して、金属層に微細割れが発生するおそれがある。
【0024】
第2の樹脂層は、例えば、ウレタン樹脂を、第1の樹脂層に、グラビアコーター、キスコーター、又はバーコーター等で塗布し、80℃にて1分間乾燥することで、形成することができる。
【0025】
第1の樹脂層は、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリオレフィン系エラストマー等が挙げられる。これらは、1種単独でも、2種以上を組み合わせてもよい。特に、耐熱性、硬度の理由からポリプロピレンが好ましい。
【0026】
ポリプロピレンは、少なくともプロピレンを含む重合体である。具体的には、ホモポリプロピレン、プロピレンとオレフィンとの共重合体等が挙げられる。特に、耐熱性、硬度の理由からホモポリプロピレンが好ましい。
共重合体としては、ブロック共重合体でも、ランダム共重合体でもよく、これらの混合物でもよい。
オレフィンとしては、エチレン、ブチレン、シクロオレフィン等が挙げられる。
ポリプロピレンは、1種単独でも、2種以上を組み合わせてもよい。
【0027】
ポリプロピレンのアイソタクチックペンタッド分率が80%以上98%以下であることが好ましい。より好ましくは86%以上98%以下、さらに好ましくは91%以上98%以下である。
アイソタクチックペンタッド分率が80%未満の場合、成形シートの剛性が不足するおそれがある。一方、アイソタクチックペンタッド分率が98%を超える場合、透明性が低下するおそれがある。
上記範囲内であることで、透明性が得られ、良好に加飾しやすくなる。
【0028】
アイソタクチックペンタッド分率とは、樹脂組成の分子鎖中のペンタッド単位(プロピレンモノマーが5個連続してアイソタクチック結合したもの)でのアイソタクチック分率である。この分率の測定法は、例えばマクロモレキュールズ(Macromolecules)第8巻(1975年)687頁に記載されており、13C−NMRにより測定できる。
【0029】
ポリプロピレンは、メルトフローレート(Melt Flow Rate:以下、MFRと称す)が0.5g/10分以上5.0g/10分以下であることが好ましい。1.5g/10分以上4.5g/10分以下がより好ましく、さらに好ましくは2.0g/10分以上4.0g/10分以下である。
【0030】
MFRが0.5g/10分未満の場合、押出成形時のダイスリップ部でのせん断応力が強くなり、結晶化を促進して透明性が低下するおそれがある。一方、MFRが5.0g/10分を超える場合、熱成形時にドローダウンが大きくなって成形性が低下するおそれがある。
MFRの測定については、JIS−K7210に準拠し、例えば、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定できる。
【0031】
ポリプロピレンは、成形性の観点から、130℃での結晶化速度が2.5min
−1以下であると好ましく、2.0min
−1以下であるとより好ましい。結晶化速度が、2.5min
−1を超えると、附形時に加熱されて軟化した積層体が、最初に金型へ接触した部分が急速に硬化して伸びが悪くなり、無理矢理伸ばされる部分が白化して意匠性が低下するおそれがある。
【0032】
ポリプロピレンの結晶化速度は、例えば、示差走査熱量測定器(DSC)(製品名「Diamond DSC」、パーキンエルマー社製)を用いて測定できる。具体的には、ポリプロピレンを10℃/minにて50℃から230℃に昇温し、230℃にて5分間保持し、80℃/minで230℃から130℃に冷却し、その後130℃に保持して結晶化を行う。130℃になった時点から熱量変化について測定を開始し、得られるDSC曲線から、以下の手順(i)〜(iv)により結晶化速度を求めることができる。
(i)測定開始からピークトップまでの時間の10倍の時点から、20倍の時点までの熱量変化を直線で近似したものをベースラインとする。
(ii)ピークの変曲点における傾きを有する接線とベースラインとの交点を求め、結晶化開始時間及び終了時間を求める。
(iii)得られた結晶化開始時間から、ピークトップまでの時間を結晶化時間として測定する。
(iv)得られた結晶化時間の逆数から、結晶化速度を求める。
【0033】
ポリオレフィンは、ポリエチレンやオレフィン共重合体等が挙げられ、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
オレフィンとしては、上記と同様のものが挙げられる。
【0034】
変性ポリオレフィンは、オレフィン重合体の変性用化合物による変性物である。
オレフィン重合体としては、ホモポリプロピレン、ホモポリエチレン、プロピレンとオレフィンとの共重合体、エチレンとオレフィンとの共重合体、ポリシクロオレフィン等が挙げられる。オレフィンは上記と同様のものが挙げられる。
変性ポリオレフィンは、1種単独でも、2種以上を組み合わせてもよい。
【0035】
変性用化合物としては、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、アクリル酸、メタクリル酸、テトラヒドロフタル酸、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート及びメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0036】
第1の樹脂層には、必要に応じて、顔料、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、造核剤等の添加剤を配合してもよい。
【0037】
第1の樹脂層の結晶構造としては、スメチカ晶を含むことが好ましい。
スメチカ晶は、準安定状態の中間相であり、一つ一つのドメインサイズが小さいため、透明性に優れるため、好ましい。また、準安定状態であるため、結晶化が進んだα晶と比較して、低い熱量でシートが軟化するため、成形性に優れるため、好ましい。
他に、β晶、γ晶、非晶部等他の結晶形を含んでもよい。
第1の樹脂層の30%以上、50%以上、70%以上又は90%以上が、スメチカ晶でもよい。
【0038】
第1の樹脂層の厚さは、60〜250μmであることが好ましく、75〜220μmがより好ましい。
【0039】
第1の樹脂層の形成の方法は、押出法等が挙げられる。
【0040】
冷却は、80℃/秒以上で、第1の樹脂層の内部温度が結晶化温度以下となるまで行うことが好ましい。
これにより、第1の樹脂層の結晶構造を、上述のスメチカ晶とすることができる。
冷却は、90℃/秒以上がより好ましく、150℃/秒以上がさらに好ましい。
【0041】
第1の樹脂層を製造するための製造装置の一例を、
図1に示す。
図1に示す製造装置は、押出機のTダイ12、第1冷却ロール13、第2冷却ロール14、第3冷却ロール15、第4冷却ロール16、金属製エンドレスベルト17、剥離ロール21を備える。
このように構成された製造装置を用いた急冷によるシート(第1の樹脂層)11の製造方法を以下に説明する。
【0042】
まず、押し出された溶融樹脂と直接接触し、これを冷却する金属製エンドレスベルト17及び第4冷却ロール16の表面温度が露点以上、50℃以下、好ましくは30℃以下に保たれるように、予め各冷却ロール13、14、15、16の温度制御を行う。
【0043】
ここで、第4冷却ロール16及び金属製エンドレスベルト17の表面温度が露点以下では、表面に結露が生じ均一な製膜が困難になる可能性がある。一方、表面温度が50℃より高いと、得られるシート11の透明性が低くなるとともに、α晶が多くなり、熱成形しにくいものとなる可能性がある。従って、表面温度は例えば20℃である。
【0044】
次に、押出機のTダイ12より押し出された溶融樹脂(造核剤を含まない)を第1冷却ロール13上で金属製エンドレスベルト17と、第4冷却ロール16との間に挟み込む。この状態で、溶融樹脂を第1、第4冷却ロール13、16で圧接するとともに、20℃で急冷する。
この際、第1冷却ロール13及び第4冷却ロール16間の押圧力で弾性材22が圧縮されて弾性変形する。
この弾性材22が弾性変形している部分、即ち、第1冷却ロール13の中心角度θ1に対応する円弧部分で、急冷されたシートは各冷却ロール13、16により面状圧接されている。この際の面圧は、通常0.1MPa以上20MPa以下である。
【0045】
上述のように圧接され、第4冷却ロール16及び金属製エンドレスベルト17間に挟まれたシートは、続いて、第4冷却ロール16の略下半周に対応する円弧部分で金属製エンドレスベルト17と第4冷却ロール16とに挟まれて面状圧接される。この際の面圧は、通常0.01MPa以上0.5MPa以下である。
【0046】
このように第4冷却ロール16で面状圧接及び冷却された後、金属製エンドレスベルト17に密着したシートは、金属製エンドレスベルト17の回動とともに第2冷却ロール14上に移動される。ここで、剥離ロール21によりガイドされて第2冷却ロール14側に押圧されたシートは、前述と同様、第2冷却ロール14の略上半周に対応する円弧部分で金属製エンドレスベルト17により面状圧接され、再び30℃以下の温度で冷却される。この際の面圧は、通常0.01MPa以上0.5MPa以下である。
【0047】
第2冷却ロール14上で冷却されたシートは、剥離ロール21により金属製エンドレスベルト17から剥離され、巻き取りロール(図示省略)により、所定の速度で巻き取られる。
【0048】
金属層において、金属又は金属酸化物の金属としては、積層体に金属調の意匠を付与できる金属であれば特に限定されないが、例えば、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金等が挙げられる。これらは、1種単独でも、2種以上を組み合わせてもよい。
【0049】
これらの中でも、伸展性の観点と、色調が優れるという観点から、好ましくはインジウム及びアルミニウムが挙げられる。これにより、積層体を三次元成形した際にクラックが発生しにくくなる。
【0050】
金属層の厚みは、5nm以上80nm以下が好ましく、15nm以上70nm以下が好ましい。5nm未満の場合、所望していた金属光沢が得られなくなるおそれがあり、一方、80nmを超えると、クラックが生じるおそれがある。
【0051】
金属層の形成方法は、特に制限されないが、質感が高く高級感のある金属調の意匠を積層体に付与する観点から、例えば、上述の金属を用いた、蒸着法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が好ましい。特に、真空蒸着法は、低コストで、被蒸着体へのダメージが少ないため、好ましい。蒸着の条件は、用いる金属の溶融温度又は蒸発温度に応じて適宜設定すればよい。また、上記の金属を含むペーストを塗工する方法、上記の金属を用いためっき法等を用いることができる。
【0052】
本発明の積層体は、上述の第1の樹脂層、第2の樹脂層及び金属層を、この順に積層したものである。
第1の樹脂層及び第2の樹脂層は、接していてもよい。また、第2の樹脂層及び金属層は接していてもよい。
本発明の積層体は、印刷層、第3の樹脂層、バッキングフィルム等を含んでもよい。
【0053】
印刷層は、金属層の、第2の樹脂層と接する面と反対の面、又は金属層と第2の樹脂層との間に、形成されることが好ましい。
印刷層は、一部に形成されてもよく、全面に形成されてもよい。印刷層の形状としては、特に制限されず、ベタ状、カーボン調、木目調等の様々な形状が挙げられる。
【0054】
印刷の方法としては、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、ロールコート法、スプレーコート法等の一般的な印刷方法が利用できる。特に、スクリーン印刷法はインキの厚みを厚くできるので、複雑な形状に成形した際にインキ割れが発生しにくいことから好ましい。
例えば、スクリーン印刷の場合、成形時の伸びに優れたインキが好ましく、十条ケミカル株式会社製のFM3107高濃度白やSIM3207高濃度白等が例示できるが、この限りではない。
【0055】
第3の樹脂層は、第1の樹脂層の、第2の樹脂層と接する面と反対の面に形成されることが好ましい。第3の樹脂層が存在することで、第1の樹脂層の金属層とは反対側に、印刷層やコーティング層を形成しやすくなる。
第3の樹脂層の樹脂としては、第2の樹脂層の樹脂と同様のものが挙げられる。第3の樹脂層の樹脂は、第2の樹脂層の樹脂と同一であることが好ましい。
【0056】
第3の樹脂層の厚みは、100nm以上3000nm以下が好ましい。第3の樹脂層の厚みが100nm未満では、スクリーン印刷時のインキの密着性が得られなくなるおそれがある。3000nmを超えるとべた付きが生じてブロッキングの原因となるおそれがある。
【0057】
第3の樹脂層の、第1の樹脂層と接する面と反対の面には、印刷層やハードコート、反射防止コート、遮熱コート等の各種コーティング層を積層できるが、この限りではない。
【0058】
本発明の成形体の製造方法では、上記積層体を、成形し、本発明の成形体を得ることができる。
【0059】
本発明の成形体は、金属又は金属酸化物がインジウム又は酸化インジウムの場合、光沢度が、250%以上であることが好ましい。より好ましくは300%以上、特に好ましくは330%以上である。
光沢度が250%以上であれば、金属光沢を発現し、優れた金属調の意匠を成形体へ附与できる。
【0060】
また、本発明の成形体は、金属又は金属酸化物がアルミニウム又は酸化アルミニウムの場合、光沢度が380%以上であることが好ましい。より好ましくは400%以上、特に好ましくは420%以上である。
光沢度が380%以上であれば、金属光沢を発現し、優れた金属調の意匠を成形体へ附与できる。
【0061】
光沢度の測定については、JIS Z 8741の60度鏡面光沢の測定方法に準拠して測定することができる。
具体的には、自動式測色色差計(AUD−CH−2型−45,60、スガ試験機株式会社製)を使用し、シートに光を入射角60度で照射し、同じく60度で反射光を受光したときの反射光束ψsを測定し、屈折率1.567のガラス表面からの反射光束ψ0sとの比により、下式(1)により、光沢度を求めることができる。
光沢度(Gs)=(ψs/ψ0s)*100 …(1)
【0062】
光沢度は、第1の樹脂層の、第2の樹脂層と接する面と反対の面から測定することが好ましい。
【0063】
成形する方法としては、インモールド成形、インサート成形、被覆成形等が挙げられる。
【0064】
インモールド成形は、金型内に積層体を設置して、金型内に供給される成形用樹脂の圧力で所望の形状に成形して成形体を得る方法である。
インモールド成形として、積層体を金型に装着し、成形用樹脂を供給して一体化して行うことが好ましい。
【0065】
インサート成形では、金型内に設置する附形体を予備附形しておき、その形状に成形用樹脂を充填することで、成形体を得る方法である。より複雑な形状を出すことができる。
インサート成形として、積層体を金型に合致するよう附形し、附形した積層体を金型に装着し、成形用樹脂を供給して一体化して行うことが好ましい。
金型に合致するようする附形(予備附形)は、真空成型、圧空成型、真空圧空成型、プレス成型、プラグアシスト成形等で行うことが好ましい。
【0066】
成形用樹脂は、成形可能な熱可塑性樹脂が好ましい。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、アセチレン−スチレン−ブタジエン共重合体、アクリル重合体等が例示できるが、この限りではない。ファイバーやタルク等の無機フィラーを添加してもよい。
供給は、射出で行うことが好ましく、圧力5MPa以上120MPa以下が好ましい。
金型温度は20℃以上90℃以下であることが好ましい。
【0067】
被覆成形として、チャンバーボックス内に芯材を配設し、芯材の上方に、積層体を配置し、チャンバーボックス内を減圧し、積層体を加熱軟化し、芯材の上面に、積層体を接触し、加熱軟化させた積層体を芯材に押圧して被覆させることが好ましい。
加熱軟化後、芯材の上面に、積層体を接触させることが好ましい。
押圧は、チャンバーボックス内において、積層体の、芯材と接する側を減圧したまま、積層体の、芯材の反対側を加圧することが好ましい。
【0068】
芯材は、凸状でも凹状であってもよく、例えば三次元曲面を有する樹脂、金属、セラミック等が挙げられる。樹脂は、上述の成形に用いる樹脂と同様のものが挙げられる。
【0069】
具体的には、互いに分離可能な、上下ふたつの成型室から構成されるチャンバーボックスを用いることが好ましい。
まず、下成型室内のテーブル上へ芯材を載せ、セットする。被成型物である本発明の積層体を下成型室上面にクランプで固定する。この際、上・下成型室内は大気圧である。
次に上成型室を降下させ、上・下成型室を接合させ、チャンバーボックス内を閉塞状態にする。上・下成型室内の両方を大気圧状態から、真空タンクによって真空吸引状態とする。
上・下成型室内を真空吸引状態にした後、ヒータを点けて加飾シートの加熱を行なう。次に上・下成型室内は真空状態のまま下成型室内のテーブルを上昇させる。
次に、上成型室内の真空を開放し大気圧を入れることによって、被成型物である本発明の積層体は芯材へ押し付けられてオーバーレイ(成型)される。尚、上成型室内に圧縮空気を供給することで、より大きな力で被成型物である本発明の積層体を芯材へ密着させることも可能である。
オーバーレイが完了した後、ヒータを消灯し、下成型室内の真空も開放して大気圧状態へ戻し、上成型室を上昇させ、加飾印刷された積層体が表皮材として被覆された製品を取り出す。
【0070】
本発明の積層体及び成形体、並びに本発明の方法で得られる成形体は、デスクトップパソコンやノート型パソコン等のコンピューター部品、携帯電話部品、電気又は電子機器、携帯情報端末、家電製品部品、便座、自動車部品、自動二輪車部品、産業資材及び建築材等に使用することができる。
【実施例】
【0071】
実施例1
(1)積層体の製造
図1に示す製造装置を用いた。押出機にポリプロピレン(プライムポリプロF−133A 株式会社プライムポリマー製(メルトフローインデックス3g/10分、ホモポリプロピレン))を投入し、以下の条件で押し出して、第1の樹脂層を得た。
押出機の直径:150mm
Tダイ12の幅:1400mm
厚み:200μm
シート11の引き取り速度:25m/分
第4冷却ロール16及び金属製エンドレスベルト17の表面温度:17℃
冷却速度:10,800℃/分
【0072】
尚、メルトフローインデックスの測定については、JIS−K7210に準拠して測定した。
【0073】
得られた第1の樹脂層にコロナ処理を施し、ウレタン樹脂(ハイドランWLS−202 DIC株式会社製)をバーコーターにて、乾燥後の厚みが49nmとなるように塗布し、80℃にて1分間乾燥して第2の樹脂層を形成した。
【0074】
得られた第2の樹脂層の、第1の樹脂層と反対の面に、アルミニウムを50nm蒸着し、金属薄膜(金属又は金属酸化物を含む金属層)を形成し、積層体を得た。
【0075】
(2)積層体の評価
得られた積層体の第2の樹脂層の厚みを、反射X線小角散乱法にて測定した。
SmartLab(株式会社リガク製)にて、Cu−Kα線、波長1.5406Å、出力200kV、45mAのX線を使用し、2θ=0.2°から1.5°の範囲のX線の反射強度を測定した。得られた2θとX線の反射強度の曲線から、第2の樹脂層の厚みを算出した。
【0076】
得られた積層体について、金属層の、第2の樹脂層と接する面と反対の面側に、カッターナイフを用いて、1mm間隔で11本切れ込みを入れた。さらに、その切れ込みと直行するように、1mm間隔で11本切れ込みを入れ、10×10のマスを作った。
市販のセロハンテープ(ニチバン製CT−24(幅24mm))を、上記切れ込みの上に貼り、指の腹でよく密着させたのち、セロハンテープを剥離した。
残ったマスの数を百分率で表し、密着性を評価した。結果を表1に示す。
【0077】
(3)成形体の製造
得られた積層体について、真空圧空成形機FM−3M/H(株式会社ミノス製)を用いて、真空圧空成形により熱成形し、成形体を得た。
【0078】
(4)成形体の評価
得られた成形体の外観を評価した。
クラックについて、金属光沢を発現する場合を◎、金属光沢は残っているが低下している場合を○、金属光沢が失われている場合を×とし、目視にて評価した。結果を表1に示す。
レインボーについて、レインボーが発生していない場合を○、発生している場合を×とし、目視にて評価した。結果を表1に示す。
【0079】
また、得られた成形体について、JIS Z 8741の60度鏡面光沢の測定方法に準拠し、自動式測色色差計(AUD−CH−2型−45,60、スガ試験機株式会社製)を使用し、第1の樹脂層の、第2の樹脂層と接する面と反対の面から、光を入射角60度で照射し、同じく60度で反射光を受光したときの反射光束ψsを測定し、屈折率1.567のガラス表面からの反射光束ψ0sとの比により、下式(1)により、光沢度を求めた。結果を表1に示す。
光沢度(Gs)=(ψs/ψ0s)*100 …(1)
【0080】
(5)第2の樹脂層の樹脂の評価
第2の樹脂層の引張破断伸度については、ガラス基板上に、上記ウレタン樹脂をバーコーターにて塗布し、80℃にて1分間乾燥し、その後分離して厚み150μmの試料を作成し、JIS K7311に準拠した方法で測定した。第2の樹脂層のウレタン樹脂の引張破断伸度は600%であった。
第2の樹脂層の軟化温度を、上記と同様に作成した試料を用いて、高化式フローテスターによる流動開始温度を測定し求めた。第2の樹脂層のウレタン樹脂の軟化温度は160℃であった。
第2の樹脂層について、上記と同様に作成した試料を用いて、示差走査熱量計DSC−7(パーキンエルマージャパン株式会社製)により、以下の条件で示差走査熱分析曲線を測定し、ガラス転移点を求めた。第2の樹脂層のウレタン樹脂のガラス転移点は−50℃であった。
測定開始温度:−90℃
測定終了温度:220℃
昇温温度:10℃/分
【0081】
実施例2
第2の樹脂層の厚みを55nmとした以外は、実施例1と同様に積層体及び成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0082】
実施例3
アルミニウムに代えて、インジウムを30nm蒸着した以外は、実施例1と同様に積層体及び成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0083】
実施例4
第2の樹脂層の厚みを55nmとした以外は、実施例3と同様に積層体及び成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0084】
比較例1
第2の樹脂層の厚みを28nmとした以外は、実施例1と同様に積層体及び成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0085】
比較例2
第2の樹脂層の厚みを76nmとした以外は、実施例1と同様に積層体及び成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0086】
比較例3
第2の樹脂層の厚みを230nmとした以外は、実施例1と同様に積層体及び成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0087】
比較例4
第2の樹脂層の厚みを230nmとした以外は、実施例3と同様に積層体及び成形体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】