(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルカリ性化合物を含み、前記アルカリ性化合物、二酸化炭素および水が反応して二酸化炭素を吸収する吸収液であって、前記アルカリ性化合物を主成分とするアルカリ溶液からなる上層と、前記反応により生成される生成物を主成分とする溶液を含む下層であって、上層よりも水との親和性が高い下層とに分離する性質を有する吸収液に、二酸化炭素を吸収させる吸収塔と、
二酸化炭素を吸収した吸収液を前記吸収塔から送出する送出路と、
内部の圧力が5×105Pa以上の高圧域に設定された、内部で前記送出路から供給された吸収液が降下して、底部に貯留される再生塔と、
前記再生塔から供給された吸収液が溜められる液溜め部を有し、前記液溜め部に溜められた吸収液を加熱して、吸収液中から水蒸気を発生させる加熱器と、
前記再生塔の底部に貯留された吸収液を前記加熱器に供給する第1供給路と、
前記加熱器で発生した水蒸気を前記再生塔に供給して、前記再生塔内で降下する吸収液と接触させる第2供給路と、
前記液溜め部に溜められた吸収液が攪拌されるように、前記液溜め部から抜き出すとともに、抜き出した吸収液を前記液溜め部に戻す加熱器用循環路と、前記加熱器用循環路に設けられた加熱器用ポンプとを有する加熱器用循環装置と、
前記加熱器内で攪拌された吸収液を前記吸収塔に還流する還流路と、
を備え、
前記第1供給路には、供給ポンプが設けられており、前記液溜め部は、前記第1供給路を介して前記供給ポンプにより供給された吸収液が溜められ、
前記加熱器は、前記液溜め部から溢れた吸収液を受ける液受け部を有する、二酸化炭素分離回収システム。
アルカリ性化合物を含み、前記アルカリ性化合物、二酸化炭素および水が反応して二酸化炭素を吸収する吸収液であって、前記アルカリ性化合物を主成分とするアルカリ溶液からなる上層と、前記反応により生成される生成物を主成分とする溶液を含む下層であって、上層よりも水との親和性が高い下層とに分離する性質を有する吸収液に、二酸化炭素を吸収させる吸収塔と、
二酸化炭素を吸収した吸収液を前記吸収塔から送出する送出路と、
内部の圧力が5×105Pa以上の高圧域に設定された、内部で前記送出路から供給された吸収液が降下して、底部に貯留される再生塔と、
前記再生塔から供給された吸収液が溜められる液溜め部を有し、前記液溜め部に溜められた吸収液を加熱して、吸収液中から水蒸気を発生させる加熱器と、
前記再生塔の底部に貯留された吸収液を前記加熱器に供給する第1供給路と、
前記加熱器で発生した水蒸気を前記再生塔に供給して、前記再生塔内で降下する吸収液と接触させる第2供給路と、
前記液溜め部に溜められた吸収液が攪拌されるように、前記液溜め部から抜き出すとともに、抜き出した吸収液を前記液溜め部に戻す加熱器用循環路と、前記加熱器用循環路に設けられた加熱器用ポンプとを有する加熱器用循環装置と、
前記加熱器内で攪拌された吸収液を前記吸収塔に還流する還流路と、
を備え、
前記液溜め部は、前記第1供給路を介してサイフォン効果により吸収液が供給され、その吸収液が溜められる、二酸化炭素分離回収システム。
【背景技術】
【0002】
石炭ガス化ガス、天然ガス田からは、二酸化炭素等の不純物を含む天然ガス、石炭、重油などが採掘されるが、これらを燃料とする火力発電所、製鉄所のボイラ、セメント工場のキルン等から排出されるガスなどから、温室効果ガスである二酸化炭素を分離および回収する二酸化炭素分離回収システムが利用されている。
【0003】
二酸化炭素分離回収システムとしては、アルカリ性化合物を含む吸収液に二酸化炭素を接触させ、該アルカリ性化合物と二酸化炭素を反応させることにより吸収液中に二酸化炭素を吸収させる化学吸収法を用いたものが知られている。また、二酸化炭素分離回収システムに用いられる吸収液としては、二酸化炭素を吸収することにより二酸化炭素がリッチな液(以下、「リッチ溶液」ともいう。)と二酸化炭素がリーンな液(以下、「リーン溶液」ともいう。)に分離するものが知られている。
【0004】
特許文献1には、リッチ溶液とリーン溶液に分離する吸収液を用いた二酸化炭素分離回収システムが開示されている。このシステムでは、吸収塔に導入された吸収液が、充填層を構成する充填材の表面を下方に向けて流れることで、吸収塔内を上昇する排ガスと向流接触する。充填層にて二酸化炭素を含むガス中の二酸化炭素を吸収した吸収液は、吸収塔の底に一時的に貯留された後に吸収塔から送出される。吸収塔から送出された吸収液は、熱交換器で加熱された後に、分離器に送られる。分離器では、吸収液がリッチ溶液とリーン溶液に分離される。リッチ溶液はリーン溶液よりも比重が大きいため、リッチ溶液は分離器の下部に移動し、リーン溶液は分離器の上部に移動する。こうして、分離器内の吸収液は、二酸化炭素がリーンな上層と二酸化炭素がリッチな下層の二層に分離した状態となり、上層のリーン溶液が吸収塔に送られ、下層のリッチ溶液が再生塔に送られる。
【0005】
再生塔に送られたリッチ溶液は、再生塔内で降下しながら、リボイラ(加熱器)から供給される水蒸気により加熱されて二酸化炭素を放出する。放出された二酸化炭素は、再生塔の上部から排出され、貯留設備に移送および回収される。一方、二酸化炭素を放出したリッチ溶液は、リーン溶液となり、再生塔の底部に貯留された後、吸収塔へと還流される。再生塔の底部に貯留されたリーン溶液の一部は、リボイラに供給されて加熱され、その後再生塔に戻される。リボイラで加熱されたリーン溶液からは、残留する二酸化炭素が放出されるとともに水蒸気が発生し、発生した水蒸気は再生塔内で降下するリッチ溶液を加熱する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、吸収液の中には、二酸化炭素を吸収する反応に水を使用するものがある。本願発明者らは、鋭意研究の結果、吸収液の種類によっては、アルカリ性化合物を主成分とするアルカリ溶液からなる上層と、二酸化炭素を吸収する反応によって生成される生成物を主成分とする溶液を含む下層とに分離することを見出している。また、本願発明者らは、このような吸収液が再生塔や加熱器で静置されると、アルカリ性化合物を含有する上層と水を多量に含有する下層とに分離することも見出している。このように分離した吸収液を再生塔又は加熱器から吸収塔に戻してしまうと、還流させた吸収液に十分に二酸化炭素を吸収させることができないおそれがある。このため、二層分離する吸収液を用いる場合には、アルカリ性化合物と水のバランスがとれた吸収液を吸収塔に還流させるために、再生塔や加熱器内の吸収液を撹拌させる必要がある。
【0009】
再生塔内に貯留された吸収液を撹拌させる従来技術(例えば、非特許文献1参照)としては、再生塔の底部に設けた攪拌翼が知られている。しかしながら、再生塔内の圧力が5×10
5Pa以上の高圧域に設定された二酸化炭素分離回収システムでは、撹拌翼のような回転体のシールは信頼性を確保することが難しくなる。このため、高圧条件下で、撹拌翼を用いない簡易な方法で二層分離する吸収液を撹拌できるシステムが望まれる。
【0010】
本発明の目的は、二層分離する吸収液を5×10
5Pa以上の高圧条件下で容易に撹拌することができる二酸化炭素分離回収システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の問題を解決するために、本発明の一態様に係る二酸化炭素分離回収システムは、アルカリ性化合物を含み、前記アルカリ性化合物、二酸化炭素および水が反応して二酸化炭素を吸収する吸収液であって、前記アルカリ性化合物を主成分とするアルカリ溶液からなる上層と、前記反応により生成される生成物を主成分とする溶液を含む下層であって、上層よりも水との親和性が高い下層とに分離する性質を有する吸収液に、二酸化炭素を吸収させる吸収塔と、二酸化炭素を吸収した吸収液を前記吸収塔から送出する送出路と、内部の圧力が5×10
5Pa以上の高圧域に設定された、内部で前記送出路から供給された吸収液が降下して、底部に貯留される再生塔と、前記再生塔から供給された吸収液が溜められる液溜め部を有し、前記液溜め部に溜められた吸収液を加熱して、吸収液中から水蒸気を発生させる加熱器と、前記再生塔の底部に貯留された吸収液を前記加熱器に供給する第1供給路と、前記加熱器で発生した水蒸気を前記再生塔に供給して、前記再生塔内で降下する吸収液と接触させる第2供給路と、前記液溜め部に溜められた吸収液が攪拌されるように、前記液溜め部から抜き出すとともに、抜き出した吸収液を前記液溜め部に戻す加熱器用循環路と、前記加熱器用循環路に設けられた加熱器用ポンプとを有する加熱器用循環装置と、前記加熱器内で攪拌された吸収液を前記吸収塔に還流する還流路と、を備える。
【0012】
上記の構成によれば、加熱器用循環装置が、シールが比較的容易であるポンプを用いて、液溜め部内の吸収液を、循環路を通じて循環させ攪拌することができる。このため、加熱器内の二層分離する吸収液を5×10
5Pa以上の高圧条件下で容易に撹拌することができる。
【0013】
上記の二酸化炭素分離回収システムは、前記再生塔の底部に貯留された吸収液が攪拌されるように、前記再生塔の底部から抜き出すとともに、抜き出した吸収液を前記再生塔の底部に戻す再生塔用循環路と、前記再生塔用循環路に設けられた再生塔用ポンプとを有する再生塔用循環装置を更に備えてもよい。再生塔の底部に貯留された上層及び下層の吸収液のどちらか一方を加熱器に供給するとすれば、再生塔から加熱器に供給されるアルカリ性化合物及び水のバランスが崩れ、再生塔内の二酸化炭素放出後のアルカリ性化合物と水のバランスが崩れる。しかし、上記の構成によれば、再生塔用循環装置が、シールが比較的容易であるポンプを用いて、再生塔内の吸収液を、循環路を通じて循環させ攪拌することができる。このため、再生塔内の二層分離する吸収液を高圧条件下で容易に撹拌することができる。
【0014】
また、本発明の別の態様に係る二酸化炭素分離回収システムは、アルカリ性化合物を含み、前記アルカリ性化合物、二酸化炭素および水が反応して二酸化炭素を吸収する吸収液であって、前記アルカリ性化合物を主成分とするアルカリ溶液からなる上層と、前記反応により生成される生成物を主成分とする溶液を含む下層であって、上層よりも水との親和性が高い下層とに分離する性質を有する吸収液に、二酸化炭素を吸収させる吸収塔と、二酸化炭素を吸収した吸収液を前記吸収塔から送出する送出路と、内部の圧力が5×10
5Pa以上の高圧域に設定された、内部で前記送出路から供給された吸収液が降下して、底部に貯留される再生塔と、前記再生塔から供給された吸収液を加熱して、吸収液中から水蒸気を発生させる加熱器と、前記再生塔の底部に貯留された吸収液を前記加熱器に供給する第1供給路と、前記加熱器で発生した水蒸気を前記再生塔に供給して、前記再生塔内で降下する吸収液と接触させる第2供給路と、前記再生塔の底部に貯留された吸収液が攪拌されるように、前記再生塔の底部から抜き出すとともに、抜き出した吸収液を前記再生塔の底部に戻す再生塔用循環路と、前記再生塔用循環路に設けられた再生塔用ポンプとを有する再生塔用循環装置と、前記加熱器内の吸収液を前記再生塔に還流する第1還流路と、前記再生塔の底部に貯留された吸収液を前記吸収塔に還流する第2還流路と、を備える。
【0015】
上記の構成によれば、再生塔用循環装置が、シールが比較的容易であるポンプを用いて、再生塔内の吸収液を、循環路を通じて循環させ攪拌することができる。このため、再生塔内の二層分離する吸収液を5×10
5Pa以上の高圧条件下で容易に撹拌することができる。
【0016】
上記の二酸化炭素分離回収システムにおいて、前記加熱器は、前記再生塔から供給された吸収液が溜められる液溜め部を有し、上記の二酸化炭素分離回収システムは、前記液溜め部に溜められた吸収液が攪拌されるように、前記液溜め部から抜き出すとともに、抜き出した吸収液を前記液溜め部に戻す加熱器用循環路と、前記加熱器用循環路に設けられた加熱器用ポンプとを有する加熱器用循環装置を更に備えてもよい。加熱器の液溜め部に貯留された上層及び下層の吸収液のどちらか一方を再生塔に供給するとすれば、加熱器から再生塔に供給されるアルカリ性化合物及び水のバランスが崩れ、加熱器内の二酸化炭素放出後のアルカリ性化合物と水のバランスが崩れる。しかし、上記の構成によれば、加熱器用循環装置が、シールが比較的容易であるポンプを用いて、加熱器内の吸収液を、循環路を通じて循環させ攪拌することができる。このため、加熱器内の二層分離する吸収液を高圧条件下で容易に撹拌することができる。
【0017】
上記の二酸化炭素分離回収システムにおいて、前記第1供給路には、供給ポンプが設けられており、前記加熱器は、前記第1供給路を介して供給された吸収液が溜められる液溜め部と、前記液溜め部から溢れた吸収液を受ける液受け部を有してもよい。
【0018】
上記の二酸化炭素分離回収システムにおいて、前記加熱器は、前記第1供給路を介してサイフォン効果により吸収液が供給され、その吸収液が溜められる液溜め部を有してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、二層分離する吸収液を5×10
5Pa以上の高圧条件下で容易に撹拌することができる二酸化炭素分離回収システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、全ての図面を通じて同一または相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る二酸化炭素分離回収システム1Aの概略図である。二酸化炭素分離回収システム1Aは、二酸化炭素を吸収する吸収液を用いて、被処理ガス中の二酸化炭素を分離および回収するものである。なお、図面では、被処理ガスに含まれる二酸化炭素(CO
2)以外のガスの例として、窒素ガス(N
2)を例示的に示す。
【0023】
図1に示すように、二酸化炭素分離回収システム1Aは、吸収塔11と、送出路21と、再生塔31と、還流路41とを備えている。吸収塔11の底部11bには、吸収液が貯留されている。吸収液は吸収塔11の内部で、吸収塔11に導入された被処理ガスに含まれる二酸化炭素を吸収する。送出路21は、吸収塔11の底部11bに貯留された吸収液を吸収塔11から送出する。送出路21を介して再生塔31に送入された吸収液は、再生塔31にて二酸化炭素を放出した後、還流路41を介して吸収塔11に還流する。こうして、吸収液は、送出路21および還流路41を介して吸収塔11と再生塔31の間を循環している。
【0024】
二酸化炭素分離回収システム1Aは、吸収液中のアルカリ性化合物と二酸化炭素を反応させることにより吸収液中に二酸化炭素を吸収させる化学吸収法を採用している。アルカリ性化合物としては、例えば、アミン化合物である。アミン化合物としては、一級アルカノールアミンであるモノエタノールアミン(MEA)、ジグリコールアミン(DGA)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、二級アルカノールアミンである2−メチルアミノエタノール(MAE)、2−エチルアミノエタノール(EAE)、2−イソプロピルアミノエタノール(IPAE)、ジエタノールアミン(DEA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)、三級アルカノールアミンであるN−メチルジエタノールアミン(MDEA)、トリエタノールアミン(TEA)、三級アルキルアミンであるN,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH)、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノブタン(TMDAB)、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル(BDER)等が挙げられる。
【0025】
本実施形態では、吸収液の中でも、二酸化炭素を吸収する反応に水を使用するものが用いられている。更に、本実施形態では、二酸化炭素の吸収に水を使用する吸収液の中でも、二酸化炭素を吸収することにより、アルカリ性化合物を主成分とするアルカリ溶液からなる上層と、二酸化炭素を吸収する反応によって生成される生成物を主成分とする溶液を含む下層とに分離する性質を有したものが用いられている。このため、吸収塔11の底部11bでは、アルカリ性化合物を主成分とするアルカリ溶液からなる上層L
1と、二酸化炭素吸収反応による生成物を主成分とする溶液を含む下層L
2とに分離した状態で吸収液が貯留されている。二酸化炭素吸収反応による生成物を主成分とする溶液を含む下層L
2の吸収液は、アルカリ性化合物を主成分とするアルカリ溶液からなる上層L
1の吸収液よりも水との親和性が高い。このため、吸収塔11の底部11bに貯留された吸収液が含む水の大部分は、下層L
2の吸収液に存在している。本実施形態では、このような吸収液として、上述のビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル(BDER)を含む水溶液を用いているが、これに限定されず、上述の性質を有する吸収液であればよい。なお、本願明細書および特許請求の範囲において、上層L
1と下層L
2との境界は、界面であってもよいし、グラデーション層であってもよい。また、吸収塔11の底部11bに貯留された吸収液が静置されていない場合には、吸収塔11の底部11bに貯留された吸収液は、上層L
1と下層L
2とに分離していなくてもよい。
【0026】
吸収塔11では、吸収塔11内部に導入された被処理ガスに、還流路41を介して再生塔31から吸収塔11に還流した吸収液を接触させて、被処理ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させる。吸収塔11は、例えば略円柱状または略多角柱状であって、上下方向に延びる内部空間を有する。被処理ガスの圧力及び吸収塔11内の圧力は、2×10
5Pa以上であり、例えば2×10
5〜100×10
5Paの範囲に設定されている。還流路41の下流端には、吸収塔11に還流した吸収液を放出して吸収塔11内で降下させる吸収液放出部41aが設けられており、吸収液放出部41aは、吸収塔11内に配置されている。吸収液放出部41aには、還流した吸収液を放出する複数の放出口が形成されており、該放出口から放出された吸収液は、吸収塔11内で降下する。吸収塔11内で降下する吸収液は、吸収塔11内で上昇する被処理ガスと向流接触する。
【0027】
被処理ガスは、導入路12を介して吸収塔11内部に導入される。被処理ガスは、例えば、石炭ガス化ガス、天然ガス田から採掘される二酸化炭素等の不純物を含む天然ガス、石炭、重油、天然ガスなどを燃料とする火力発電所、製鉄所のボイラ、セメント工場のキルン等から排出されるガスである。
【0028】
本実施形態では、導入路12の下流部が吸収塔11の内部に配置されており、導入路12のこの下流部には、吸収塔11の底部11bに貯留された吸収液中に被処理ガスを噴出するバブリング部12aが設けられている。具体的に、バブリング部12aは、導入路12の下流部を構成する配管と該配管に設けられた複数の噴出口を有する構成である。本実施形態では、バブリング部12aは、上層L
1の吸収液中に配置されている。ただし、バブリング部12aは、下層L
2の吸収液中に配置されてもよい。また、導入路12の下流部にバブリング部12aが設けられていなくてもよく、導入路12の下流部は、吸収塔11の底部11bに貯留された吸収液の液面より上方に位置していてもよい。
【0029】
吸収塔11内における、吸収液放出部41aより下方であって吸収塔11の底部11bに貯留された吸収液の液面より上方には、多数の充填材が充填された充填層13が設けられている。充填層13は、吸収塔11内で降下する吸収液と吸収塔11内で上昇する被処理ガスとの接触面積を拡大すると共に、吸収液が二酸化炭素を吸収するのに十分な接触時間を確保するためのものである。ただし、吸収塔11内には、充填層13が設けられていなくてもよい。あるいは、充填層13の代わりにまたは充填層13に加えて、流動接触用の複数のトレイを用いた棚段が吸収塔11内に設けられてもよい。
【0030】
被処理ガスは、導入路12を通って吸収塔11の内部に導かれ、バブリング部12aにより、被処理ガス中の大部分の二酸化炭素が吸収塔11の底部11bに貯留された吸収液に吸収される。吸収液に吸収されずに残った少量の二酸化炭素を含む被処理ガスは、吸収塔11の内部を上昇する。被処理ガスは、吸収塔11内を上昇する際に、充填層13などで吸収液放出部41aから放出された吸収液と接触し、更に二酸化炭素を吸収され、その後、吸収塔11の上部11aに接続されたガス排出路14を通じて吸収塔11から排出される。
【0031】
吸収塔11の底部11bに貯留された吸収液のうち下層L
2の吸収液は、送出路21に設けられたポンプ22により、送出路21を介して吸収塔11から再生塔31に送出される。本実施形態では、送出路21の上流端は、吸収塔11の底部11bに接続されている。送出路21は、吸収塔11の底部11bに貯留された吸収液を吸収塔11から直接再生塔31に送出してもよいし、その途中に別途設けられた装置を経由して再生塔31に送出してもよい。本実施形態では、送出路21には、後述する熱交換器43が設けられており、送出路21を流れる吸収液と還流路41を流れる吸収液とが熱交換される。
【0032】
再生塔31では、送出路21を介して送入された吸収液を加熱して二酸化炭素を放出させる。再生塔31は、例えば略円柱状または略多角柱状であって、上下方向に延びる内部空間を有する。本実施形態の再生塔31内の圧力は、高圧域に設定されている。本明細書及び特許請求の範囲において「高圧域」とは、再生塔31内の圧力が5×10
5Pa以上であることを示し、例えば本実施形態では、再生塔31内の圧力が5×10
5〜100×10
5Paの範囲に設定されている。送出路21の下流端には、再生塔31に送られた吸収液を放出して再生塔31内で降下させる吸収液放出部21aが設けられており、吸収液放出部21aは、再生塔31内に配置されている。吸収液放出部21aには、再生塔31の内部空間に吸収液を放出する複数の放出口が形成されており、該放出口から放出された吸収液は、再生塔31内で降下する。
【0033】
再生塔31内であって吸収液放出部21aより下方には、多数の充填材が充填された充填層32が設けられている。充填層32は、再生塔31内で降下する吸収液と後述する加熱器60から供給される加熱された水蒸気との接触面積を拡大すると共に、吸収液が二酸化炭素を放出するのに十分な接触(加熱)時間を確保するためのものである。ただし、再生塔31内には、充填層32が設けられていなくてもよい。あるいは、充填層32の代わりにまたは充填層32に加えて、流動接触用の複数のトレイを用いた棚段が再生塔31内に設けられてもよい。
【0034】
再生塔31の外部には、吸収液を加熱して、吸収液中から水蒸気を発生させる加熱器60が設けられている。加熱器60と再生塔31は、第1供給路61により接続されている。第1供給路61に設けられたポンプ62により、再生塔31の底部31bに貯留された吸収液が第1供給路61を通って加熱器60に導かれる。ただし、ポンプ62は無くても良い。
【0035】
本実施形態では、加熱器60は、ケトル型の加熱器である。具体的に、加熱器60は、第1供給路61を介して供給された吸収液が溜められる液溜め部63を有する。液溜め部63に溜まった吸収液は、堰64に堰き止められている。液溜め部63に溜まった吸収液は、その中に配置されたチューブ65を通過する蒸気(STM)により加熱される。これにより、吸収液中に残存する二酸化炭素が放出されるとともに、吸収液中の水が蒸発し、水蒸気が発生する。液溜め部63で吸収液中から発生した水蒸気は、該吸収液から放出された二酸化炭素とともに、排気口66から排出され、第2供給路67により再生塔31に導かれる。
【0036】
また、加熱器60は、液溜め部63から溢れた吸収液を受ける液受け部68を有する。液受け部68は、堰64により液溜め部63と仕切られている。液溜め部63に溜まった吸収液は、第1供給路61により液溜め部63に吸収液が供給されることにより、液溜め部63から溢れて堰64を超える。堰64を超えた吸収液は、液受け部68で受けられ、液受け部68に設けられた液排出口69から排出される。液排出口69は、還流路41に接続されている。
【0037】
加熱器60には、液溜め部63に溜められた吸収液が攪拌されるように、液溜め部63から抜き出した吸収液を液溜め部63に戻す加熱器用循環装置70が設けられている。加熱器用循環装置70は、液溜め部63から吸収液を抜き出すとともに、抜き出した吸収液を液溜め部63に戻す循環路71と、循環路71に設けられたポンプ72とを有する。本実施形態では、循環路71の下流端が加熱器60内の液溜め部63上方に位置している。循環路71のこの下流端には、液溜め部63に溜まった吸収液の液面に向かって吸収液を噴出する複数のノズル73が設けられている。本実施形態では、加熱器用循環装置70が、ポンプ72により液溜め部63に溜まった吸収液の下側部分を循環路71に抜き出し、抜き出した吸収液を循環路71から液溜め部63に溜まった吸収液の上側部分に戻している。そして、戻された吸収液が沈降することによって、加熱器60内の液溜め部63に溜まった吸収液は攪拌される。
【0038】
また、再生塔31には、再生塔31の底部31bに貯留された吸収液が攪拌されるように、再生塔31の底部31bから抜き出した吸収液を再生塔31の底部31bに戻す再生塔用循環装置80が設けられている。本実施形態では、再生塔用循環装置80は、再生塔31から吸収液を抜き出すとともに、抜き出した吸収液を再生塔31に戻す循環路81と、循環路81に設けられたポンプ82とを有する。本実施形態では、循環路81の下流端が再生塔31の内部に配置されている。循環路81のこの下流端には、再生塔31の底部31bに貯留された吸収液の液面に向かって吸収液を噴出する複数のノズル83が設けられている。本実施形態では、再生塔用循環装置80が、ポンプ82により再生塔31の底部31bに貯留された吸収液の下側部分を循環路81に抜き出し、抜き出した吸収液を循環路81から再生塔31の底部31bに貯留された吸収液の上側部分に戻している。そして、戻された吸収液が沈降することによって、再生塔31の底部31bに貯留された吸収液は攪拌される。
【0039】
すなわち、再生塔用循環装置80により、再生塔31の底部31bで攪拌された吸収液が、第1供給路61を通じて加熱器60に供給される。そして、加熱器用循環装置70により、加熱器60内の液溜め部63で攪拌された吸収液が、還流路41に設けられたポンプ42により、還流路41を介して再生塔31から吸収塔11に供給される。
【0040】
還流路41は、加熱器60から排出された吸収液を直接吸収塔11に供給するように構成されていてもよいし、その途中に別途設けられた装置を経由して吸収塔11に送出してもよい。
【0041】
本実施形態では、還流路41には、熱交換器43が設けられている。熱交換器43は、送出路21を流れる低温の吸収液(例えば40℃)と還流路41を流れる高温の吸収液(例えば120℃)が熱交換するように構成されている。送出路21を流れる吸収液の温度は、熱交換器43にて例えば100℃〜115℃まで上昇する。一方、還流路41を流れる吸収液の温度は、熱交換器43にて例えば45℃〜60℃まで下がる。
【0042】
また、還流路41における熱交換器43より下流側部分には、冷却器44が設けられている。例えば、冷却器44は、還流路41を流れる吸収液と冷水が熱交換するように構成されている。冷却器44は、還流路41を流れる吸収液を大気により冷却するように構成されてもよい。還流路41を流れる吸収液の温度は、冷却器44に冷却されることにより、二酸化炭素の吸収に適した温度、例えば30℃〜45℃まで下がる。
【0043】
第2供給路67により加熱器60から再生塔31に導かれた水蒸気は、例えば充填層32などで、降下する吸収液を加熱し、吸収液中の二酸化炭素を放出させる。放出された二酸化炭素は、加熱器60で発生した水蒸気とともに再生塔31内部を上昇し、再生塔31の上部31aに接続されたガス排出路51を通じて再生塔31から排出される。
【0044】
ガス排出路51には、上流側から順に、再生塔31から排出されたガスの内の水蒸気を凝縮する冷却器52と、冷却器52により凝縮された凝縮水と二酸化炭素とを分離する気液分離器53(例えばベッセル)が設けられている。二酸化炭素とともに冷却器52に供給された水蒸気は、冷却器52により凝縮される。冷却器52で生じた凝縮水と二酸化炭素の混合流体は、気液分離器53で二酸化炭素と凝縮水に分離される。気液分離器53で分離された二酸化炭素は、ガス排出路51における気液分離器53より下流側部分51bを通じて回収される。気液分離器53で分離された凝縮水は、ポンプ55により戻し路56を介して再生塔31内に戻される。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る二酸化炭素分離回収システム1Aでは、加熱器用循環装置70が、シールが比較的容易であるポンプ72を用いて、液溜め部63内の吸収液を、循環路71を通じて循環させ攪拌することができる。このため、加熱器60内の二層分離する吸収液を5×10
5Pa以上の高圧条件下で容易に撹拌することができる。
【0046】
また、本実施形態では、再生塔用循環装置80が、シールが比較的容易であるポンプ82を用いて、再生塔31内の吸収液を、循環路81を通じて循環させ攪拌することができる。このため、再生塔31内の二層分離する吸収液を高圧条件下で容易に撹拌することができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、
図2を参照して、第2実施形態に係る二酸化炭素分離回収システム1Bを説明する。本実施形態では、吸収液が再生塔31から吸収塔11に流れるまでの経路が、第1実施形態における経路と異なる。具体的には、本実施形態の二酸化炭素分離回収システム1Bは、第1実施形態で加熱器60から吸収塔11につながる還流路41の代わりに、加熱器60から再生塔31につながる第1還流路45と、再生塔31から吸収塔11につながる第2還流路46を備える。
【0048】
第1還流路45は、加熱器60内の吸収液を再生塔31に還流する。第1還流路45には、ポンプ47が設けられている。第1還流路45により還流される吸収液は、例えば、再生塔31内における、再生塔31の底部31bに貯留された吸収液の液面より上方、あるいは当該液面近傍の液中に戻される。第2還流路46は、再生塔31の底部31bに貯留された吸収液を吸収塔11に還流する。第2還流路46には、ポンプ42、熱交換器43及び冷却器44が、上流側から下流側に向かってこの順に設けられている。
【0049】
本実施形態に係る二酸化炭素分離回収システム1Bでは、再生塔用循環装置80が、シールが比較的容易であるポンプ82を用いて、再生塔31内の吸収液を、循環路81を通じて循環させ攪拌することができる。このため、再生塔31内の二層分離する吸収液を高圧条件下で容易に撹拌することができる。
【0050】
また、本実施形態では、加熱器用循環装置70が、シールが比較的容易であるポンプ71を用いて、加熱器60内の吸収液を、循環路71を通じて循環させ攪拌することができる。このため、加熱器60内の二層分離する吸収液を高圧条件下で容易に撹拌することができる。
【0051】
(第3実施形態)
次に、
図3を参照して、第3実施形態に係る二酸化炭素分離回収システム1Cを説明する。本実施形態では、第1実施形態とは異なり、ポンプ62により吸収液が供給されるケトル型の加熱器60の代わりに、サイフォン効果を利用して吸収液が供給される加熱器160が用いられている。また、本実施形態では、第1実施形態とは異なり、第1供給路61にポンプ62が設けられていない。
【0052】
具体的に、本実施形態の加熱器160は、例えば上下方向に延びる容器であり、第1供給路61を介して供給された吸収液が溜められる液溜め部163を有する。液溜め部163は、加熱媒体により加熱可能に構成されている。加熱器160の液溜め部163には、第1供給路61の下流端および還流路41の上流端が接続されている。本実施形態では、再生塔31の底部31bに貯留された吸収液の液面と加熱器160内の液溜め部163に貯留された吸収液の液面が、重力により同じ高さとなっている。
【0053】
すなわち、液溜め部163には、第1供給路61を介してサイフォン効果により吸収液が供給される。より詳しくは、ポンプ42により還流路41を介して再生塔31から吸収塔11に供給されると、液溜め部163に溜められた吸収液の液面が下がる。その結果、再生塔31の底部31bに貯留された吸収液の液面と液溜め部163に溜められた吸収液の液面の差によって、第1供給路61の上端と下端の圧力差が生じる。この圧力差を動力として、再生塔31の底部31bに貯留された吸収液は、第1供給路61を介して液溜め部163に供給される。
【0054】
液溜め部163に溜められた吸収液は、加熱媒体により加熱されて、残存する二酸化炭素を放出するとともに、水蒸気を発生させる。液溜め部163で吸収液中から発生した水蒸気は、該吸収液から放出された二酸化炭素とともに、加熱器160の上部に設けられた排気口166から排出される。排気口166から排出された二酸化炭素および水蒸気は、第2供給路67により再生塔31に導かれる。
【0055】
加熱器160には、液溜め部163の吸収液を攪拌させる加熱器用循環装置170が設けられている。本実施形態では、加熱器用循環装置170は、液溜め部163から吸収液を抜き出すとともに、抜き出した吸収液を液溜め部163に戻す循環路171と、循環路171に設けられたポンプ172とを有する。加熱器用循環装置170が、ポンプ172により液溜め部163に溜まった吸収液の下側部分を循環路171に抜き出し、抜き出した吸収液を循環路171から液溜め部163に溜まった吸収液の上側部分に戻している。そして、戻された吸収液が沈降することによって、液溜め部163内の吸収液は攪拌される。
【0056】
本実施形態でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0058】
例えば、上記の二酸化炭素分離回収システム1A,1Cでは、再生塔31には必ずしも再生塔用循環装置80が設けられていなくてもよい。この場合に、再生塔31の底部31bに貯留された吸収液が上層L
1と下層L
2に分離するときは、第1供給路61は下層L
2の吸収液を加熱器60,160に供給するように設けられる。また、上記の二酸化炭素分離回収システム1Bでは、加熱器60には必ずしも加熱器用循環装置70が設けられていなくてもよい。
【0059】
また、二酸化炭素分離回収システム1Cの加熱器160は必ずしも再生塔31の外部に設けられていなくてもよく、再生塔31の内部に設けられてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、循環路71の下流端に、液溜め部63に溜まった吸収液の液面に向かって吸収液を噴出する複数のノズル73が設けられていたが、循環路71の下流端に複数のノズル73が設けられていなくてもよい。また、循環路81の下流端にも、再生塔31の底部31bに貯留された吸収液の液面に向かって吸収液を噴出する複数のノズル83が設けられていなくてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、複数のノズル73の先端が、加熱器60内の液溜め部63上方に位置しているが、複数のノズル73の先端は、加熱器60内の液溜め部63に溜められた吸収液の液面より下方に位置していてもよい。但し、複数のノズル73の先端が液中に位置する場合、ノズル73の先端より上側に位置する吸収液の攪拌効率が低下するため、複数のノズル73の先端は、加熱器60内の液溜め部63に溜められた吸収液の液面より上方に位置させた方が好ましい。また、上記実施形態では、複数のノズル83の先端も再生塔31の底部31bに貯留された吸収液中に位置してもよいが、同様の理由で、再生塔31の底部31bに貯留された吸収液の液面より上方に位置させた方が好ましい。