(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0023】
なお、以下の実施例において、同一の構造部を持ち、同一の符号を付した部分は、原則として同一の動作を行うため、重複する説明を省略した。
【0024】
(1)エージェントシステムの構成
図1において、1は全体としてアグリゲーション制御システムとしてのエージェントシステムを示す。このエージェントシステム1は、アグリゲータシステム11、電力事業者システム14、需要家システム16、充放電施設管理者システム17及び電力取引市場システム18を備えて構成され、インターネット等のネットワーク13を介してそれぞれ接続されている。
【0025】
電力事業者システム14は、電力を発電し、系統2を介して需要家システム16や充放電施設管理者システム17等に送電するシステムであり、電力事業者サーバ15が設置されている。なお電力事業者システム14は、アグリゲータシステム11からアンシラリーサービスの提供を受ける。
【0026】
また電力取引市場システム18は、電力取引市場への参加資格を有するアグリゲータによって管理されるアグリゲータシステム11に価格情報や売買注文情報を送信して、アグリゲータシステム11との間で電力の売買を行うシステムであり、電力取引市場サーバ19が設置されている。
【0027】
図2に示すように、アグリゲータシステム11に設置されたエージェントサーバ12は、サーバ装置であって、上位通信インタフェース60、下位通信インタフェース61、CPU62、メモリ63及び記憶装置64を備えて構成される。
【0028】
上位通信インタフェース60は、電力事業者サーバ15との通信の際や電力取引市場サーバ19との通信の際にプロトコル制御を行うインタフェースである。
【0029】
また下位通信インタフェース61は、需要家システム16や充放電施設管理者システム17との通信の際にプロトコル制御を行うインタフェースであり、例えばNIC(Network Interface Card)等から構成される。
【0030】
CPU62は、エージェントサーバ12全体の動作制御を司るプロセッサである。またメモリ63は、例えば半導体メモリから構成され、各種プログラムを一時的に保持するために利用されるほか、CPU62のワークメモリとしても利用される。後述するエージェントプログラム70もこのメモリ63に格納されて保持される。
【0031】
記憶装置64は、例えばハードディスク装置やSSD(Solid State Drive)等の大容量の不揮発性記憶装置から構成され、各種プログラムやデータを長期間保持するために利用される。また記憶装置64には、後述する需要家管理テーブル71、EV管理テーブル72、EV接続情報テーブル73、充放電施設管理テーブル74が格納される。
【0032】
需要家システム16は、需要家が管理するシステムであって、需要家施設3、需要家通信端末30、移動型蓄電池装置としての電気自動車(EV:Electric Vehicle)9及び太陽光発電設備10を備えて構成される。なお、
図3に示すように、需要家システム16は、更に、蓄電池8、風力発電設備35、燃料電池36及びガスジェネレータ37を備えてもよい。需要家は、普段は主に電気自動車9を需要家施設3において充放電するが、必要に応じて充放電施設管理者システム17等において充放電する。
【0033】
需要家は、アグリゲータとデマンドレスポンス(以下、これを適宜、DR(Demand Response)と呼ぶ)契約を締結している。需要家施設3に設置された複合型電力変換装置7は、需要家がDR契約を締結したアグリゲータの管理するエージェントサーバ12とネットワーク13を介して接続されており、お互いに情報を送受信することができる。例えば、複合型電力変換装置7は、電気自動車9が接続された際及び電気自動車9の接続が解除された際に、後述するEV接続情報をエージェントサーバ12に送信する。
【0034】
需要家施設3は、需要家の自宅や需要家が所属する事務所等の設備であり、交流メータ4、分電盤5、負荷6及び複合型電力変換装置7(H−PCS:Hybrid - Power Conditioning System)を備えて構成される。電力事業者システム14から需要家システム16に送電される電力は、交流メータ4及び分電盤5を経由してその需要家施設3の照明機器及びエアコンディショナといった電化製品等の負荷6に供給される。また分電盤5には複合型電力変換装置7が接続されており、需要家は、電気自動車9の充電を行うことができる。
【0035】
交流メータ4は、例えばスマートメータやアナログ式電力量計等の電力量計であり、需要家が使用する電力量を測定する。また分電盤5は、例えばHEMSに対応した分電盤や従来のアナログ分電盤等であり、電源コードが短絡した際に電流を遮断する。
【0036】
複合型電力変換装置7は、系統2から入力する電気を交流から直流に変換して、接続する電気自動車9に充電する機能や太陽光発電設備(PV:Photovoltaics)10から発電された電気を電気自動車9に充電する機能を有する電力変換装置である。また複合型電力変換装置7は、電気自動車9から放電された電気や太陽光発電設備10から発電された電気を、直流から交流に変換して分電盤5側に出力する機能を有する。さらに複合型電力変換装置7は、エージェントサーバ12から送信されるDR要請に応えて、又は、需要家施設3内の電力の余剰状態等に応じて、電気自動車9の充放電を制御する機能を有する。
【0037】
図3に示すように複合型電力変換装置7は、制御装置21、DC(Direct Current)バス22を介して接続された複数の充放電装置(蓄電池充放電装置23及びEV充放電装置24)、複数の電力変換装置(太陽光電力変換装置25、風力発電電力変換装置26、燃料電池発電電力変換装置27及びガス発電電力変換装置28)及び双方向AC/DC(Alternating Current/Direct Current)コンバータ29を備えて構成される。
【0038】
複合型電力変換装置7においては、太陽光、風力、燃料の化学エネルギー、ガス等を元に、太陽光発電設備10、風力発電設備35、燃料電池36、ガスジェネレータ37等を動力源として、対応する電力変換装置が電力を発生させる。また発生した電力は、蓄電池8及び電気自動車9によって対応する充放電装置を介して充放電されることで利用される。
【0039】
制御装置21は、双方向AC/DCコンバータ29と、各充放電装置及び各電力変換装置の運転を制御するマイクロコンピュータ装置であり、CPU(Central Processing Unit)31、メモリ32、通信インタフェース33及び入出力インタフェース34を備えて構成される。
【0040】
CPU31は、制御装置21全体の動作制御を司るプロセッサである。メモリ32は、揮発性又は不揮発性の半導体メモリから構成され、各種プログラムや情報を記憶保持するために利用される。
【0041】
メモリ32に格納されたプログラムをCPU31が実行することにより、制御装置21全体としての各種処理が実行される。また通信インタフェース33は、エージェントサーバ12との通信時におけるプロトコル制御を行うインタフェースである。また入出力インタフェース34は、双方向AC/DCコンバータ29、各充放電装置及び各電力変換装置と通信及び入出力をする際に、プロトコル制御及び入出力制御を行うインタフェースである。
【0042】
各充放電装置は、制御装置21からの指令に応じて、充電機能を有する電力装置(蓄電池8及び電気自動車9)の充放電を例えばその容量の0〜100%の範囲で制御する機能を有する装置である。
【0043】
また各充放電装置には、対象とする電力装置の充放電電圧値及び充放電電流値を計測して制御装置21に通知したり、その電力装置の例えば充電量及びエラーの有無等の情報を制御装置21に通知したりする機能が搭載されている。
【0044】
同様に、各電力変換装置は、制御装置21からの指令に応じて、発電機能を有する電力装置(太陽光発電設備10、風力発電設備35、燃料電池36及びガスジェネレータ37)により発電された電力をその0〜100%の範囲でDCバス22に放電する機能を有する装置である。また各電力変換装置には、対象とする電力装置が発電又は充放電した電力の電圧値及び電流値を計測して制御装置21に通知する機能も搭載されている。
【0045】
双方向AC/DCコンバータ29は、系統2から与えられる電気を交流から直流に変換してDCバス22に出力したり、各充放電装置及び各電力変換装置からDCバス22に放電された電気を直流から交流に変換して系統2に出力したりする機能を有するコンバータである。
【0046】
双方向AC/DCコンバータ29には、DCバス22から系統2に出力又は系統2からDCバス22に入力する電力量を、DCバス22又は系統2を流れる電気の0〜100%の範囲で制御する機能や、DCバス22に入出力する電力の直流電圧値、直流電流値、及び交流電圧値、交流電流値、交流周波数を計測して制御装置21に通知する機能も搭載されている。
【0047】
需要家通信端末30は、電気自動車9のナビゲーションシステムとして用いられるスマートフォンやタブレット等であり、エージェントサーバ12とネットワーク13を介して接続され、後述するEV利用予定情報を送信することができる。なお、需要家通信端末30とエージェントサーバ12の間の通信には、需要家通信端末30の場所によらず通信できるようにするために、携帯通信網やLPWA(Low Power, Wide Area)等が用いられる。ただし、需要家が需要家施設3に滞在している時に例えば地図データ等のサイズの大きなデータを送受信する場合、需要家通信端末30は、有線やWiFi等を介して複合型電力変換装置7を経由してエージェントサーバ12と通信する。
【0048】
充放電施設管理者システム17は、充放電施設管理者が管理するシステムであって、充放電施設40、充放電制御装置50及び施設通信端末51を備えて構成される。
【0049】
充放電施設40は、需要家が電気自動車9を使って外出した際に立ち寄る、店舗や急速充電ステーション等であり、交流メータ41、分電盤42及び複数の充放電制御装置50を備えて構成される。なお交流メータ41及び分電盤42は、上述の交流メータ4及び分電盤5と同様であり説明を省略する。
【0050】
また充放電制御装置50は、系統2から入力される交流の電気を直流に変換して、当該充放電制御装置50に接続する電気自動車9に充電する機能と、電気自動車9から放電された直流の電気を交流に変換して、分電盤42に出力する機能を有する制御装置である。
【0051】
充放電施設40においては、電気が交流メータ41及び分電盤42を経由して充放電制御装置50に供給されており、需要家は、充放電施設40に立ち寄った際に、例えば充放電施設管理者に充電の対価としての料金を支払うで、電気自動車9を充放電できる。
【0052】
充放電施設管理者は、アグリゲータとEV充放電契約を締結している。充放電制御装置50は、充放電施設管理者システム17がエージェントサーバ12とネットワーク13を介して接続されており、お互いに情報を送受信することができる。
【0053】
例えば、充放電制御装置50は、電気自動車9が接続された際及び電気自動車9の接続が解除された際に、後述するEV接続情報をエージェントサーバ12に送信する。また、充放電制御装置50は、エージェントサーバ12から送信された充放電指令を受信することができる。充放電指令を受信した充放電制御装置50は、充放電施設管理者及びアグリゲータの契約に基づき、電気自動車9の充放電を実行する。
【0054】
施設通信端末51は、充放電施設管理者が保有するスマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ等であり、エージェントサーバ12とネットワーク13を介して接続されており、後述する充放電募集情報等を送信することができる。
【0055】
(2)本実施の形態による充放電調整支援機能
次に、本実施の形態のエージェントサーバ12に実装された充放電調整支援機能について説明する。本エージェントサーバ12には、所定の条件に合った電気自動車9を充電できる場所や放電できる場所の検出結果を需要家に提示する充放電支援機能が搭載されている。また本エージェントサーバ12には、所定の条件に合った電気自動車9の位置を充放電施設管理者に提示する充放電支援機能も搭載されている。
【0056】
実際上、本実施の形態の場合、需要家が電気自動車9で外出した際に、エージェントサーバ12は、需要家通信端末30の画面に、現在需要家がいる地点の付近の、電気自動車9を充放電可能な充放電施設40を表示する。
【0057】
図4に需要家通信端末30に表示される充放電推奨画面を示す。画面上の自動車状態表示部81は、電気自動車9の状態を表示するエリアで、充電率、充電可能量(充電率が充電率上限値に達するまでに充電できる電力量)、放電可能量(充電率が充電率下限値に達するまでに放電できる電力量)を表示する。
【0058】
画面左のナビゲーションマップ表示部82と画面右上の充電募集施設表示部83と画面右下の放電募集施設表示部84とは、エージェントサーバ12から送信された充放電推奨情報に基づく充放電制御装置50の情報を表示する。ナビゲーションマップ表示部82は、電気自動車9の周辺の充放電施設40の位置をグラフィカルに表示する。充電募集施設表示部83は充電募集を行っている施設の一覧を、放電募集施設表示部84は放電募集を行っている施設の一覧を、現在地からの距離や充放電の単価とともに表示する。
【0059】
図4に示す画面を需要家に表示することにより、需要家は、需要家施設3以外の場所での自分にとって有利な条件で充放電を行うことができる施設を知ることができる。
【0060】
また、充放電の募集をする際にエージェントサーバ12は、施設通信端末51の画面に、充放電施設40の付近の電気自動車9を表示する。充放電施設管理者は、充放電施設40での充電単価及び放電単価を決定するためにこの画面を参照する。
【0061】
図5に、施設通信端末51に表示されるEV一覧画面を示す。画面左のEVマップ表示部101は、電気自動車9の位置をグラフィカルに表示する。画面右上の充電可能EV一覧表示部102は、充電に関する電気自動車9の情報(充電可能量、充電単価上限値)を、画面右下の放電可能EV一覧表示部103は、放電に関する電気自動車9の情報(放電可能量、放電単価下限値)を表示する。
【0062】
図5に示す画面を充放電施設管理者に表示することにより、充放電施設管理者は、需要家が付近にいるかいないかを確認することができ、適切なタイミングで店舗等への集客をすることができたり、災害時の緊急的な電力供給の情報を共有することができたりする。
【0063】
以上のような充放電調整支援機能を実現するために、エージェントプログラム70は、充放電条件作成モジュール91、充放電推奨情報作成モジュール92、充放電実行判断モジュール93、EV状態管理モジュール94及びDR要請管理モジュール95を備える。
【0064】
充放電条件作成モジュール91は、需要家施設3以外で電気自動車9の充電又は放電を行うための前提条件を作成する機能を有するプログラムである。
【0065】
充放電推奨情報作成モジュール92は、電気自動車9が充電又は放電を行うことが推奨される需要家施設3以外の施設の情報を作成する機能を有するプログラムである。
【0066】
充放電実行判断モジュール93は、電気自動車9が接続している充放電施設40において、充電を実行するか、放電を実行するか、充放電を実行しないかを判断する機能を有するプログラムである。
【0067】
EV状態管理モジュール94は、EV利用予定情報を受信してEV管理テーブル72に保存し、EV接続情報を受信してEV接続情報テーブル73に保存し、充放電実行等のEV状態を需要家通信端末30に送信する機能である機能を有するプログラムである。
【0068】
DR要請管理モジュール95は、電力事業者サーバ15からアンシラリーサービス要請の事前通知を受信して需要家管理テーブル71に保存し、電力事業者サーバ15からアンシラリーサービスの正式な要請を受信して、需要家システム16へのDR要請情報を作成し、複合型電力変換装置7にDR要請情報を送信する機能を有するプログラムである。
【0069】
需要家管理テーブル71は、
図6に示すように、需要家システム16に関する情報を格納し、需要家情報(需要家コード、EVコード及び氏名)、需要家施設情報(施設コード、施設名、IPアドレス、氏名、住所及び電話番号)、太陽光発電情報(最大出力、設置方位、設置角度及び天気予報)、系統電力情報(滞在中消費電力量、外出中消費電力量、系統受電時単価、売電可否及び系統売電時単価)及びDR要請情報(DR要請種類、DR要請対象時間帯及びDR要請単価)で構成される。
【0070】
このうち、需要家情報、需要家施設情報、太陽光発電情報及び系統電力情報は、需要家とアグリゲータとの間のデマンドレスポンス契約締結時にアグリゲータシステム11が需要家システム16から取得する情報である。
【0071】
ただし、太陽光発電情報の1つである天気予報は、気象情報サイト等から、例えば毎日1回等の周期で取得する。天気予報欄には、「晴れ」、「曇り」又は「雨」といった情報が格納される。
【0072】
売電可否欄には、「可」又は「不可」といった情報が格納され、売電可否欄に「不可」が格納された場合には、系統売電時単価欄には、「−」が格納される。
【0073】
またDR要請情報は、電力事業者サーバ15からのアンシラリーサービス要請の事前通知によりエージェントサーバ12が取得する情報である。DR要請情報の1つであるDR要請種類は、系統2から複合型電力変換装置7への入力の電力の流れを増やす方向の場合は「入力」、複合型電力変換装置7から系統2への出力の電力の流れを増やす方向の場合は「出力」、DR要請がない場合は「無し」である。
【0074】
DR要請対象時間帯は、需要家へのDR要請の対象の時間帯である。DR要請単価は、DR要請に応じた需要家に対する電気料金の単価である。
【0075】
EV管理テーブル72は、
図7に示すように、EVに関する情報を格納し、EV情報(EVコード、内蔵蓄電池容量、内蔵蓄電池充電率下限値、内蔵蓄電池充電率上限値、走行電費、利用予定日時、利用予定距離)、充電条件(充電可否、充電率上限値、充電単価上限値)、放電条件(放電可否、充電率下限値、放電単価下限値)で構成される。
【0076】
このうち、EV情報は、需要家とアグリゲータとの間のデマンドレスポンス契約締結時に、アグリゲータシステム11が需要家システム16から取得する情報である。ただし、利用予定日時と利用予定距離は、需要家通信端末30からの送信によりエージェントサーバ12が取得する情報である。
【0077】
充電条件及び放電条件は、充放電条件作成処理の際に作成される情報である。EV情報に含まれる内蔵蓄電池充電率下限値と内蔵蓄電池充電率上限値は、電池の寿命等を考慮して設定される充電率の上限値及び下限値であり、充電条件の1つである充電率上限値と放電条件の1つである充電率下限値は、電気自動車9の利用に必要な電力量を考慮する等により設定される上限値及び下限値である。
【0078】
例えば充電率上限値は、内蔵蓄電池充電率上限値と同じ値を用いる。また充電率下限値は、内蔵蓄電池充電率下限値、利用予定距離及び走行電費から算出される。
【0079】
具体的には、内蔵蓄電池充電率下限値が20%で、利用予定距離が75km、走行電費が15km/kWh、内蔵蓄電池容量が25kWhとすると、この場合、内蔵蓄電池充電率下限値に電池容量を乗ずることで内蔵蓄電池下限容量が5kWhと算出できる。一方、走行時消費電力は利用予定距離を走行電費で除することで5kWhと算出される。内蔵蓄電池下限容量と走行時消費電力を加算することで、充電下限容量は10kWhと算出される。この充電下限容量を内蔵蓄電池容量で除することで、充電率下限値は40%と算出される。なお充電可否、充電単価上限値、放電可否、放電単価下限値については、後述のEV充放電条件作成処理により決定される。
【0080】
なお充電条件の充電可否欄は「可」又は「不可」を格納し、充電可否欄に「不可」が格納されている場合は、対応する充電率上限値欄及び充電単価上限値欄に「−」が格納される。同様に放電条件の放電可否欄は「可」又は「不可」を格納し、放電可否欄に「不可」が格納されている場合は、対応する充電率下限値欄及び放電単価下限値欄に「−」が格納される。
【0081】
EV接続情報テーブル73は、
図8に示すように、充放電施設40での電気自動車9の接続に関する情報を格納し、EV接続情報(施設コード、装置コード、接続状態)、EV状態情報(EVコード、充電残量、充電率、緯度、経度)で構成される。
【0082】
これらの情報は、需要家施設3の複合型電力変換装置7や充放電施設40の充放電制御装置50に電気自動車9が接続された際と、電気自動車9の複合型電力変換装置7や充放電制御装置50への接続が解除された際に送信される情報である。
【0083】
なお接続状態欄は、「接続有」又は「接続無」を格納し、接続状態欄に「接続無」が格納されている場合は、対応するEVコード欄、充電残量欄、充電率欄、緯度欄及び経度欄に「−」が格納される。
【0084】
なお上記のEV状態情報(EVコード、充電残量、充電率)は、複合型電力変換装置7又は充放電制御装置50からエージェントサーバ12に送信するのではなく、電気自動車9に搭載された需要家通信端末30から、携帯電話網、LPWA等を介して、エージェントサーバ12に送信しても良い。需要家通信端末30とエージェントサーバ12とが直接通信することにより、電気自動車9が走行中(複合型電力変換装置7又は充放電制御装置50に接続していない状態)でも、エージェントサーバ12はEV状態情報を収集することができる。この際、需要家通信端末30は、エージェントサーバ12に、自らの位置情報(緯度、経度等)を送信しても良い。
【0085】
充放電施設管理テーブル74は、
図9に示すように、充放電施設40に関する情報を格納し、充放電施設情報(施設コード、施設名、住所、電話番号、IPアドレス)、充電募集情報(充電募集有無、充電単価、単位時間充電量)、放電募集情報(放電募集有無、放電単価、単位時間放電量)で構成される。
【0086】
なお充電募集有無欄は、「有」又は「無」を格納し、充電募集有無欄に「無」が格納されている場合は、対応する充電単価欄及び単価時間充電量欄に「−」を格納する。また放電募集有無欄は、「有」又は「無」を格納し、放電募集有無欄に「無」が格納されている場合は、対応する放電単価欄及び単価時間放電量欄に「−」を格納する。
【0087】
充放電施設情報は、アグリゲータと充放電施設管理者との契約締結時に、アグリゲータシステム11が充放電施設管理者システム17から取得する情報である。充電募集情報及び放電募集情報は、施設通信端末51から送信される情報である。
【0088】
(3)エージェントシステムによる処理の流れ
図10及び
図11に示す推移表80,90を用いて、エージェントシステム1による処理を説明する。推移表80,90は電気自動車9の内蔵蓄電池の充電率の推移や、需要家施設3及び充放電施設40における電気自動車9への充放電量の推移を示す。
図10は、需要家施設3のみで電気自動車9の充放電を行う場合であり、
図11は、需要家施設3と充放電施設40の両方で電気自動車9の充放電を行う場合である。
【0089】
図10の項目欄(80A、80B)と
図11の項目欄(90A、90B)の項目は、それぞれ、上から順に、需要家施設3の負荷6の電力消費量、太陽光発電設備10の発電(可能)量、太陽光発電設備10の発電の抑制量、電気自動車9の走行時の電力消費量、電気自動車9の充放電施設40における充電量、電気自動車9の充放電施設40における放電量、電気自動車9の需要家施設3における充電量、電気自動車9の需要家施設3における放電量、電気自動車9の充電残量、電気自動車9の充電率、系統2から需要家施設3への入力の電力量、需要家施設3から系統2への出力の放電量を示す。
【0090】
各欄80C〜80Mに格納される数値は、電力量(単位はkWh)及び充電率(単位はパーセント)の数値であり、それぞれ、一日目(欄80K、欄90K)、二日目(欄80L、欄90L)、三日目(欄80M、欄90M)の列群で構成される。
【0091】
一日目の列群は、それぞれ、需要家(及び電気自動車9)の出発時(欄80C、欄90C)、外出中(欄80D、欄90D)、到着時(欄80E、欄90E)、滞在時(欄80F、欄90F)の列で構成される。なお出発とは需要家施設3からの出発することを、外出とは需要家施設3から外出していることを、到着とは需要家施設3へ到着することを、滞在とは需要家施設3に滞在していることを、それぞれ指している。
【0092】
同様に、二日目の列群は、それぞれ、需要家(及び電気自動車9)の出発時(欄80G、欄90G)、外出中(欄80H、欄90H)、到着時(欄80I、欄90I)、滞在時(欄80J、欄90J)の列で構成される。
【0093】
図10及び
図11の一日目は、外出中に1kWhを消費し、滞在中に10kWhを消費しており、合計で11kWhを消費しているのに対し、滞在中に20kWhを発電している。このため、負荷6の電力消費量よりも太陽光発電設備10の発電量の方が多く、電力の余剰が発生している。
【0094】
図10及び
図11の二日目は、外出中に1kWhを消費し、滞在中に10kWhを消費しており、合計で11kWhを消費しているのに対し、滞在中に5kWhを発電している。このため、負荷6の電力消費量よりも太陽光発電設備10の発電量の方が少なく、電力の不足が発生している。
【0095】
ここで一日目は、需要家施設3からの電力の出力(逆潮流)が認められておらず、二日目は、アグリゲータシステム11から需要家システム16にデマンドレスポンスの要請があり、系統2からの入力(受電)を抑制すること(又は出力(逆潮流)すること)が求められているという仮定を置く。また、電気自動車9の内蔵蓄電池の充電率の上限値は80%、充電率の下限値は40%であるとする。
【0096】
まず、
図10の詳細を説明する。一日目の出発時(欄80C)の電気自動車9の充電残量は20kWh(充電率は80%)である。外出中(欄80D)に5kWhを消費し、到着時(欄80E)の充電残量は15kWh(充電率は60%)になる。
【0097】
外出中(80D)の負荷6の電力消費は1kWhであり、系統2から需要家システム16は1kWhを受電している。滞在中(欄80F)の負荷6の電力消費は10kWh、太陽光発電設備10の発電(可能)量は20kWhである。差し引き10kWhが余剰となる。
【0098】
余剰分のうち5kWhは電気自動車9に充電する。電気自動車9の内蔵蓄電池の充電率の上限は80%であるため、5kWhが充電量の限界である。余剰分の残りの5kWhの電力需給のつじつまを合わせるために、太陽光発電設備10の発電量を20kWhから15kWhに抑制する。
【0099】
二日目の出発時(欄80G)の電気自動車9の充電残量は20kWh(充電率は80%)である。外出中(欄80H)に5kWhを消費し、到着時(欄80I)の充電残量は15kWh(充電率は60%)になる。外出中(欄80H)の負荷6の電力消費は1kWhであり、系統2から1kWhを受電している。
【0100】
滞在中(欄80J)の負荷6の電力消費は10kWh、太陽光発電設備10の発電(可能)量は5kWhであり、差し引き5kWhが不足である。滞在中(欄80J)にアグリゲータシステム11から需要家システム16にデマンドレスポンスの要請があり、系統2からの入力(受電)を抑制することが求められている。電気自動車9の内蔵蓄電池の充電率の下限は40%であるため、5kWhを放電し、系統2からの入力(受電)を0kWhとする。
【0101】
次に、
図11の詳細を説明する。一日目の出発時(欄90C)の電気自動車9の充電残量は20kWh(充電率は80%)である。外出中(欄90D)に5kWhを消費し、さらに充放電施設40において5kWhの放電を行い、到着時(欄90E)の充電残量は10kWh(充電率は40%)になる。
【0102】
滞在中(欄90F)の負荷6の電力消費は10kWh、太陽光発電設備10の発電(可能)量は20kWhである。差し引き10kWhが余剰となる。余剰分の10kWhは電気自動車9に充電する。余剰分をすべて電気自動車9の充電に使うので、太陽光発電設備10の発電量の抑制は必要ない。二日目の出発時(欄90G)の電気自動車9の充電残量は20kWh(充電率は80%)である。
【0103】
外出中(欄90H)に5kWhを消費するが、充放電施設40において5kWhの充電を行い、到着時(欄90I)の充電残量は20kWh(充電率は80%)になる。滞在中(欄90J)の負荷6の電力消費は10kWh、太陽光発電設備10の発電(可能)量は5kWhであり、差し引き5kWhが不足である。
【0104】
滞在中(欄90J)にアグリゲータからデマンドレスポンスの要請があり、系統2からの入力(受電)を抑制することが求められている。そこで、電気自動車9から10kWhを放電し、系統2に5kWhを出力(逆潮流)する。
【0105】
一日目の外出時においては、
図10では、充放電施設40において充放電を行わなかったが、
図11では、充放電施設40において5kWhの放電を行っている。これにより、一日目の滞在中において、
図10では、電気自動車9に5kWhしか充電できず、太陽光発電設備10の発電量を10kWhから5kWhに抑制しているが、
図11では、電気自動車9に10kWhを充電するので、太陽光発電設備10の発電量を抑制する必要がない。
【0106】
また、二日目の外出中においては、
図10では、充放電施設40において充放電を行わなかったが、
図11では、充放電施設40において5kWhの充電を行っている。これにより、二日目の滞在中において、
図10では、デマンドレスポンスの要請に応じて電気自動車9から5kWhを放電しているのに対して、
図11では、デマンドレスポンスの要請に応じて電気自動車9から10kWhを放電している。
【0107】
このように、外出中に需要家施設3以外(上の例では充放電施設40)において充放電を行うことで、需要家の施設内である需要家施設3で自家消費できる電力量が拡大し、また、デマンドレスポンスの要請に応じて電気自動車9の充放電により調整できる電力量が拡大している。
【0108】
図12は、電力事業者サーバ15、エージェントサーバ12、複合型電力変換装置7、需要家通信端末30、充放電制御装置50及び施設通信端末51の間の処理の流れを示す。
【0109】
需要家通信端末30は、需要家によって登録された電気自動車9に関するEV利用予定情報(需要家コード、EVコード、利用予定日時、利用予定距離)をエージェントサーバ12のEV状態管理モジュール94に送信する(SP1)。
【0110】
エージェントサーバ12のEV状態管理モジュール94は、受信したEV利用予定情報をEV管理テーブル72に保存する。なお、上記のEV利用予定情報は、需要家が登録した情報を用いても良いが、エージェントサーバ12のEV状態管理モジュール94が予測処理を行うことで生成されてもよい。
【0111】
予測処理としては、例えば、電気自動車9の過去のEV接続情報から、当該月と曜日に一致する利用日時と利用距離を抽出し、平均的な利用日時と利用距離を計算する手法や、頻度の高い利用日時と利用距離を採用するという手法が考えられる。
【0112】
電力事業者が管理する電力事業者サーバ15は、将来の系統2の発電量や需要量の予測等に応じて、アンシラリーサービス要請の事前通知を、エージェントサーバ12のDR要請管理モジュール95に送信する(SP2)。
【0113】
エージェントサーバ12のDR要請管理モジュール95は、受信した事前通知に基づいて、需要家システム16へのDR要請情報(DR要請種類、DR要請対象時間帯、及びDR要請単価)を作成し、需要家管理テーブル71に保存する。
【0114】
なお、電力事業者からのアンシラリーサービス要請が無い場合等、需要家システム16へのDR要請を行わない場合は、DR要請種類は「無し」である。なお、アンシラリーサービスのルールは電力事業者が決めるので、様々な形態があり得る。
【0115】
例えば、電力事業者システム14からアンシラリーサービスの事前通知を行わない場合は、エージェントサーバ12において、アンシラリーサービス要請の予測を行っても良い。予測方法としては、例えば、過去の天気や気温等とアンシラリーサービスの要請が行われた回数の関係から、将来の天気予報等に基づいて電力事業者システム14からアンシラリーサービス要請が出される確率を計算し、これが所定値以上ならアンシラリーサービスの要請が出される可能性が高いと判断する方法が考えられる。
【0116】
電気自動車9の接続が解除されると、複合型電力変換装置7は、EV接続情報(施設コード、装置コード、接続状態、EVコード、充電残量、充電率)をエージェントサーバ12のEV状態管理モジュール94に送信し、エージェントサーバ12のEV状態管理モジュール94は受信したEV接続情報をEV接続情報テーブル73に保存する(SP3)。
【0117】
次にエージェントサーバ12の充放電条件作成モジュール91は、需要家管理テーブル71及びEV管理テーブル72の情報を参照し、需要家施設3内の電力需給状況の予測に基づき、電気自動車9の充電条件(充電可否、充電率上限値、充電単価上限値)と放電条件(放電可否、充電率下限値、放電単価下限値)を作成して、EV管理テーブル72に保存する(SP4)。
【0118】
図13は、充放電条件作成モジュール91が行うEV充放電条件作成処理の処理手順を示す。充放電条件作成モジュール91はこの処理手順に従って充電条件及び放電条件を作成する。
【0119】
実際上、充放電条件作成モジュール91は、まずDR要請が有るか否かを、需要家管理テーブル71のDR要請種類によって判断する(SP21)。充放電条件作成モジュール91は、この判断でDR要請種類が「無し」の結果を得ると、需要家が予定している需要家施設3への滞在中に、発電電力が消費電力を上回り、電力余剰が発生するか否かを判断する(SP22)。
【0120】
具体的には充放電条件作成モジュール91は、需要家管理テーブル71の滞在中消費電力欄を参照して消費する予定の電力の値を取得する。また充放電条件作成モジュール91は、需要家管理テーブル71の最大出力欄、設置方位欄、設置角度欄及び天気予報欄から太陽光発電設備10の発電する予定の電力の値を算出する。
【0121】
充放電条件作成モジュール91は、ステップSP22の判断で肯定結果を得ると、需要家施設3から系統への出力(逆潮流)が許可されており売電が可能か否かを、需要家管理テーブル71の売電可否欄が「可」か「不可」かで、判断する(SP23)。充放電条件作成モジュール91は、この判断で否定結果を得ると、EV管理テーブル72の充電可否欄には「不可」を、放電可否欄には「可」を、放電単価下限値(MDP:Minimum Discharge Price)欄には需要家管理テーブル71の系統受電時単価欄と同じ値を格納し(SP25)、このEV充放電条件作成処理を終了する。
【0122】
これに対して、充放電条件作成モジュール91は、ステップSP23の判断で肯定結果を得ると、売電単価を受電単価が超えており需要家が電力事業者等から収入を得ることができるか否かを、需要家管理テーブル71の系統受電時単価欄の値が系統売電時単価欄の値より高いか否かで判断する(SP24)。充放電条件作成モジュール91は、この判断で肯定結果を得ると、EV管理テーブル72の充電可否欄には「可」を、放電可否欄には「可」を、受電単価上限値(MCP:Minimum Charge Price)欄には需要家管理テーブル71の系統売電時単価欄と同じ値を、放電単価下限値(MDP:Minimum Discharge Price)欄には需要家管理テーブル71の系統売電時単価欄と同じ値を格納し(SP26)、このEV充放電条件作成処理を終了する。
【0123】
これに対して、充放電条件作成モジュール91は、ステップSP23の判断で否定結果を得る、又はステップSP24の判断で否定結果を得ると、充放電条件作成モジュール91は、この判断で肯定結果を得ると、EV管理テーブル72の充電可否欄には「可」を、放電可否欄には「可」を、受電単価上限値(MCP:Minimum Charge Price)欄には需要家管理テーブル71の系統受電時単価欄と同じ値を、放電単価下限値(MDP:Minimum Discharge Price)欄には需要家管理テーブル71の系統受電時単価欄と同じ値を格納し(SP27)、このEV充放電条件作成処理を終了する。
【0124】
これに対して、充放電条件作成モジュール91は、ステップSP21の判断でDR要請種類が「入力」の結果を得ると、需要家が予定している需要家施設3への滞在中に、発電電力が消費電力を上回り、電力余剰が発生するか否かを判断する(SP28)。
【0125】
具体的には充放電条件作成モジュール91は、需要家管理テーブル71の滞在中消費電力欄を参照して消費する予定の電力の値を取得する。また充放電条件作成モジュール91は、需要家管理テーブル71の最大出力欄、設置方位欄、設置角度欄及び天気予報欄から太陽光発電設備10の発電する予定の電力の値を算出する。
【0126】
充放電条件作成モジュール91は、ステップSP28の判断で肯定結果を得ると、需要家施設3から系統への出力(逆潮流)が許可されており売電が可能か否かを、需要家管理テーブル71の売電可否欄が「可」か「不可」かで、判断する(SP29)。充放電条件作成モジュール91は、この判断で否定結果を得ると、EV管理テーブル72の充電可否欄には「不可」を、放電可否欄には「可」を、放電単価下限値(MDP:Minimum Discharge Price)欄には0を格納し(SP31)、このEV充放電条件作成処理を終了する。
【0127】
これに対して、充放電条件作成モジュール91は、ステップSP29の判断で肯定結果を得ると、売電単価をDR要請単価が超えており需要家が電力事業者等から収入を得ることができるか否かを、需要家管理テーブル71のDR要請単価欄の値が系統売電自単価欄の値より高いか否かで判断する(SP30)。充放電条件作成モジュール91は、この判断で肯定結果を得ると、EV管理テーブル72の充電可否欄には「可」を、放電可否欄には「可」を、受電単価上限値(MCP:Minimum Charge Price)欄には需要家管理テーブル71の系統売電時単価欄と同じ値を、放電単価下限値(MDP:Minimum Discharge Price)欄には需要家管理テーブル71の系統売電時単価欄と同じ値を格納し(SP32)、このEV充放電条件作成処理を終了する。
【0128】
これに対して、充放電条件作成モジュール91は、ステップSP29の判断で否定結果を得る、又はステップSP30の判断で否定結果を得ると、充放電条件作成モジュール91は、この判断で肯定結果を得ると、EV管理テーブル72の充電可否欄には「可」を、放電可否欄には「可」を、受電単価上限値(MCP:Minimum Charge Price)欄には需要家管理テーブル71のDR要請単価欄と同じ値を、放電単価下限値(MDP:Minimum Discharge Price)欄には需要家管理テーブル71のDR要請単価欄と同じ値を格納し(SP33)、このEV充放電条件作成処理を終了する。
【0129】
これに対して、充放電条件作成モジュール91は、ステップSP21の判断でDR要請種類が「出力」の結果を得ると、EV管理テーブル72の充電可否欄には「可」を、放電可否欄には「可」を、受電単価上限値(MCP:Minimum Charge Price)欄には需要家管理テーブル71のDR要請単価欄と同じ値を、放電単価下限値(MDP:Minimum Discharge Price)欄には需要家管理テーブル71のDR要請単価欄と同じ値を格納し(SP34)、このEV充放電条件作成処理を終了する。
【0130】
なお充電条件と放電条件は、需要家が電気自動車9に乗って外出し、店舗や急速充電ステーション等の充放電施設40の充放電制御装置50に接続した時に、充電又は放電を実行するか否かを決める際に用いられる。
【0131】
施設通信端末51は、充放電施設管理者が入力した充電募集情報(充電募集有無、充電単価、単位時間充電量)や放電募集情報(放電募集有無、放電単価、単位時間放電量)をエージェントサーバ12の充放電推奨情報作成モジュール92に送信し、エージェントサーバ12の充放電推奨情報作成モジュール92は受信した充放電募集情報を充放電施設管理テーブル74に保存する(SP5)。
【0132】
エージェントサーバ12の充放電推奨情報作成モジュール92は、施設通信端末51から集めた充電募集情報や放電募集情報から、電気自動車9向けの充放電推奨情報を作成して需要家通信端末30に送信する(SP6)。
【0133】
充放電推奨情報は、充放電施設管理テーブル74に保存されている充電募集情報と放電募集情報のうち、充電単価が充電単価上限値よりも小さい充電募集と、放電単価が放電単価下限値よりも大きい充電募集を抽出したものである。なお、さらに需要家通信端末30から緯度や経度等の地理的な位置情報を収集し、地理的に近い位置にある充放電制御装置50のみを対象としても良い。
【0134】
需要家通信端末30は、エージェントサーバ12の充放電推奨情報作成モジュール92から送信された充放電推奨情報に基づき、電気自動車9の充放電を行うことが望ましい充放電施設40の情報として、充放電推奨画面(
図4)を表示する(SP7)。
【0135】
充放電制御装置50は、電気自動車9が接続されると、EV接続情報(装置コード、接続状態、EVコード、充電残量、充電率)をエージェントサーバ12の充放電実行判断モジュール93に送信し、エージェントサーバ12の充放電実行判断モジュール93は受信したEV接続情報をEV接続情報テーブル73に保存する(SP8)。
【0136】
EV接続情報を受信すると、エージェントサーバ12の充放電実行判断モジュール93は、充放電施設40の充放電制御装置50において充放電を実行するか否かを判断する(SP9)。
【0137】
図14は、充放電実行判断モジュール93が行うEV充放電実行判断処理の処理手順を示す。充放電実行判断モジュール93は、この処理手順に従って電気自動車9に充電をするか又は電気自動車9に放電させるかを判断する。
【0138】
具体的には充放電実行判断モジュール93は、電気自動車9が複合型電力変換装置7や充放電制御装置50に接続されているか否かを、EV接続情報テーブル73の接続状態欄が「接続有」か「接続無」か、で判断する(SP41)。充放電実行判断モジュール93は、この判断で否定結果を得ると、このEV充放電実行判断処理を終了する。
【0139】
これに対して、充放電実行判断モジュール93は、ステップSP41の判断で肯定結果を得ると、EV接続情報テーブル73の充電率欄の値が、EV管理テーブル72の充電率下限値欄の値よりも大きく、かつ、充放電施設管理テーブル74の放電単価欄の値が、EV管理テーブル72の放電単価下限値欄の値よりも大きいか否かを判断する(SP42)。充放電実行判断モジュール93は、この判断で肯定結果を得ると、充放電施設40の充放電制御装置50に、EV管理テーブル72の充電率下限値欄の値まで放電して良い旨の放電指令を送信し(SP43)、このEV充放電実行判断処理を終了する。
【0140】
これに対して、充放電実行判断モジュール93は、ステップSP42の判断で否定結果を得ると、EV接続情報テーブル73の充電率欄の値が、EV管理テーブル72の充電率上限値欄の値よりも小さく、かつ、充放電施設管理テーブル74の充電単価欄の値が、EV管理テーブル72の充電単価上限値欄の値よりも小さいか否かを判断する(SP44)。充放電実行判断モジュール93は、この判断で否定結果を得ると、このEV充放電実行判断処理を終了する。
【0141】
これに対して、充放電実行判断モジュール93は、ステップSP44の判断で肯定結果を得ると、充放電施設40の充放電制御装置50に、EV管理テーブル72の充電率上限値欄の値まで充電して良い旨の充電指令を送信し(SP45)、このEV充放電実行判断処理を終了する。
【0142】
エージェントサーバ12の充放電実行判断モジュール93は、EV充放電実行判断処理の判断に基づき、充放電を行う場合は、充放電制御装置50に充放電指令を送信する(SP10)。充放電制御装置50は、エージェントサーバ12の充放電実行判断モジュール93から受信した充放電指令に応じて、接続されている電気自動車9の充放電を実行する(SP11)。
【0143】
充放電実行判断モジュール93が充放電制御装置50に充放電指令を送信した場合、エージェントサーバ12のEV状態管理モジュール94は、需要家通信端末30にEV状態を送信する(SP12)。需要家通信端末30は、エージェントサーバ12のEV状態管理モジュール94から送信されたEV状態を、画面等に表示する(SP13)。
【0144】
電気自動車9の接続が解除されると、充放電制御装置50は、EV接続情報(装置コード、接続状態、EVコード、充電残量、充電率)をエージェントサーバ12のEV状態管理モジュール94に送信し、エージェントサーバ12のEV状態管理モジュール94は受信したEV接続情報をEV接続情報テーブル73に保存する(SP14)。
【0145】
電気自動車9が接続されると、複合型電力変換装置7は、EV接続情報(装置コード、接続状態、EVコード、充電残量、充電率)をエージェントサーバ12のEV状態管理モジュール94に送信し、エージェントサーバ12のEV状態管理モジュール94は受信したEV接続情報をEV接続情報テーブル73に保存する(SP15)。
【0146】
電力事業者サーバ15は、アンシラリーサービスの正式の要請を、エージェントサーバ12に送信する(SP16)。エージェントサーバ12のDR要請管理モジュール95は、電力事業者サーバ15から受信したアンシラリーサービス要請に応じて、複合型電力変換装置7にDR要請情報を送信する(SP17)。
【0147】
複合型電力変換装置7は、エージェントサーバ12のDR要請管理モジュール95から受信したDR要請情報に応じて、複合型電力変換装置7に接続されている電気自動車9の充放電を制御する(SP18)。なおエージェントサーバ12のDR要請管理モジュール95からのDR要請情報を受信していない場合、複合型電力変換装置7は、需要家施設3内の電力の余剰状態等に応じて、電気自動車9の充放電の制御を行う。
【0148】
(4)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態のエージェントシステム1では、需要家が発電及び消費する電力量の予測に基づいて、充放電施設40において電気自動車9の充放電を行う。
【0149】
従って本エージェントシステム1によれば、需要家がEVの充放電により調整できる電力量を拡大することができ、かつ、需要家の施設内で需要家が自家消費できる電力量を拡大することができる。
【0150】
また本エージェントシステム1によれば、店舗等への集客や災害時の緊急的な電力供給等の目的のある施設へのEVの誘導が促進され、需要家は有利な条件でEVの充放電を行うことができる。このため、昨今の再エネの導入メリットが縮小しつつある状況においても、需要家は再エネを導入するメリットを維持することができる。
【0151】
(5)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、エージェントサーバ12が充放電条件作成や充放電実行判断を行う場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、充放電条件作成や充放電実行判断を、複合型電力変換装置7が行ってもよく、具体的な構成は限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適時変更が可能である。
【0152】
また上述の実施の形態においては、電力事業者からのアンシラリーサービス要請に応じてアグリゲータがDR要請を行う場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば電力取引市場の価格に応じてアグリゲータがDR要請を行っても良い。
【0153】
具体的には、電力取引市場サーバ19から送信される価格が所定値以上である場合、エージェントサーバ12は、需要家システム16に対して系統2からの入力(受電量)を抑制、又は、系統2への出力(逆潮流)を促進するDR要請情報を送信する。
【0154】
逆に、電力取引市場サーバ19から送信される価格が所定値以下である場合、エージェントサーバ12は、需要家システム16に対して系統2からの入力(受電量)を促進するDR要請情報を送信する。また、電力取引市場システム18が予想する価格に基づいて、DR要請情報(DR要請種類、DR要請対象時間帯、及びDR要請単価)を決定し、需要家管理テーブル71に保存する。
【0155】
さらに上述の実施の形態においては、エージェントサーバ12から複合型電力変換装置7にDR要請情報を送信する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばエージェントサーバ12から需要家通信端末30にDR要請情報を送信しても良い。
【0156】
このことで需要家通信端末30は、受信したDR要請情報を画面に表示することで、需要家にDR要請が行われたことを認識させ、DR要請に対応するためにEVを複合型電力変換装置7に接続するという行動を需要家に促すことができる。
【0157】
さらに上述の実施の形態においては、EV一覧画面を施設通信端末51に表示する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばエージェントサーバ12に接続されたモニタ等に表示して、アグリゲータがDR要請を行う際に電気自動車9の状況を確認するためにEV一覧画面を参照しても良い。