特許第6963421号(P6963421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963421
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】無線通信装置及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/15 20060101AFI20211028BHJP
   H04B 7/005 20060101ALI20211028BHJP
   H04L 7/00 20060101ALI20211028BHJP
   H04J 3/08 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   H04B7/15
   H04B7/005
   H04L7/00 990
   H04J3/08 A
【請求項の数】12
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2017-115443(P2017-115443)
(22)【出願日】2017年6月12日
(65)【公開番号】特開2019-4231(P2019-4231A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2019年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】旦代 智哉
(72)【発明者】
【氏名】依田 大輝
(72)【発明者】
【氏名】内田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】秋田 耕司
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−318627(JP,A)
【文献】 特開2001−203612(JP,A)
【文献】 特開2007−82080(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0080406(US,A1)
【文献】 特開平9−64798(JP,A)
【文献】 特開2002−118509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/15
H04B 7/005
H04L 7/00
H04J 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の期間の少なくとも一部において第1周波数で信号を受信し、前記第1の期間の後の第2の期間の少なくとも一部において第2周波数で信号を受信し、前記第1の期間と前記第2の期間との間で、受信する周波数が前記第1周波数から前記第2周波数に切り替えられる第1受信部と、
前記第1の期間の少なくとも一部において前記第2周波数で信号を送信し、前記第2の期間の少なくとも一部において前記第1周波数で信号を送信し、前記第1の期間と前記第2の期間との間で、送信する周波数が前記第2周波数から前記第1周波数に切り替えられる第1送信部と、
前記第1の期間の少なくとも一部において第3周波数で信号を受信し、前記第2の期間の少なくとも一部において第4周波数で信号を受信し、前記第1の期間と前記第2の期間との間で、受信する周波数が前記第3周波数から前記第4周波数に切り替えられる第2受信部と、
前記第1の期間の少なくとも一部において前記第4周波数で信号を送信し、前記第2の期間の少なくとも一部において前記第3周波数で信号を送信し、前記第1の期間と前記第2の期間との間で、送信する周波数が前記第4周波数から前記第3周波数に切り替えられる第2送信部と、
前記第1の期間の少なくとも一部において、前記第1受信部により前記第1周波数で受信された第1信号のチャネル状態情報に基づき、前記第1信号を補正するチャネル補正部と、
前記第1信号を前記チャネル補正部で補正した後の信号である第2信号を、前記第1の期間の少なくとも一部において、前記第2受信部により前記第3周波数で受信された第3信号のチャネル状態情報に基づきプレコーディングするプレコーディング部と、を備え、
前記第2送信部は、前記第2の期間の少なくとも一部において前記第3周波数で、前記プレコーディングされた第2信号を送信する
無線通信装置。
【請求項2】
前記第3周波数は、前記第1周波数と同じ周波数であり、前記第4周波数は、前記第2周波数と同じ周波数である
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記第1信号は、第1パイロット信号と、プレコーディングされた第2パイロット信号と、プレコーディングされたペイロード信号とを含み、
前記チャネル補正部は、前記プレコーディングされた第2パイロット信号のチャネル状態情報に基づき、前記プレコーディングされたペイロード信号を補正し、
前記プレコーディング部は、第3パイロット信号と、補正後のペイロード信号である第2ペイロード信号とを、前記第3信号のチャネル状態情報に基づきプレコーディングし、
前記第2送信部は、プレコーディングされた第3パイロット信号と、プレコーディングされた第2ペイロード信号と、第4パイロット信号とを含む信号を、前記第2の期間の少なくとも一部において前記第3周波数で送信する
請求項1または2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記第4パイロット信号は、前記プレコーディングされた第3パイロット信号および前記プレコーディングされた第2ペイロード信号よりも後に配置されている
請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記第1信号は、第1パイロット信号を含み、
前記第1パイロット信号に基づきチャネル推定を行うことにより、前記第1信号の前記チャネル状態情報を取得するチャネル推定部
を備えた請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記受信する周波数が前記第1周波数から前記第2周波数に切り替えられるタイミング、前記受信する周波数が前記第3周波数から前記第4周波数に切り替えられるタイミング、前記送信する周波数が前記第2周波数から前記第1周波数に切り替えられるタイミング、及び前記送信する周波数が前記第4周波数から前記第3周波数に切り替えられるタイミングは第1のタイミングであり、
前記第1信号に基づき、前記第1のタイミングを決定する制御部を備えた
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記受信する周波数が前記第1周波数から前記第2周波数に切り替えられるタイミング、前記受信する周波数が前記第3周波数から前記第4周波数に切り替えられるタイミング、前記送信する周波数が前記第2周波数から前記第1周波数に切り替えられるタイミング、及び前記送信する周波数が前記第4周波数から前記第3周波数に切り替えられるタイミングは第1のタイミングであり、
前記第2受信部で受信される信号に基づき、前記第1のタイミングを決定する制御部を備えた
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項8】
第5信号を受ける入力端子と、
前記第2信号に前記第5信号を多重する多重部を備え、
前記プレコーディング部は、前記第5信号が多重化された前記第2信号をプレコーディングする
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記第2信号から第6信号を分離する分離部と、
前記第6信号を出力する出力端子と、を備え、
前記プレコーディング部は、前記第6信号が分離された前記第2信号をプレコーディングする
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記第1受信部および前記第1送信部に結合された少なくとも1つのアンテナ
をさらに備えた請求項1ないし9のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項11】
前記第2受信部および前記第2送信部に結合された少なくとも1つのアンテナ
をさらに備えた請求項1ないし10のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項12】
無線通信装置で実行する無線通信方法であって、
第1の期間の少なくとも一部において第1周波数で信号を受信し、前記第1の期間の後の第2の期間の少なくとも一部において第2周波数で信号を受信し、前記第1の期間と前記第2の期間との間で、受信する周波数が前記第1周波数から前記第2周波数に切り替えられ、
前記第1の期間の少なくとも一部において前記第2周波数で信号を送信し、前記第2の期間の少なくとも一部において前記第1周波数で信号を送信し、前記第1の期間と前記第2の期間との間で、送信する周波数が前記第2周波数から前記第1周波数に切り替えられ、
前記第1の期間の少なくとも一部において第3周波数で信号を受信し、前記第2の期間の少なくとも一部において第4周波数で信号を受信し、前記第1の期間と前記第2の期間との間で、受信する周波数が前記第3周波数から前記第4周波数に切り替えられ、
前記第1の期間の少なくとも一部において前記第4周波数で信号を送信し、前記第2の期間の少なくとも一部において前記第3周波数で信号を送信し、前記第1の期間と前記第2の期間との間で、送信する周波数が前記第4周波数から前記第3周波数に切り替えられ、
前記第1の期間の少なくとも一部において、前記第1周波数で受信された第1信号のチャネル状態情報に基づき、前記第1信号を補正し、
前記第1信号を補正した後の信号である第2信号を、前記第1の期間の少なくとも一部において、前記第3周波数で受信された第3信号のチャネル状態情報に基づきプレコーディングし、
前記第2の期間の少なくとも一部において前記第3周波数で、前記プレコーディングされた第2信号を送信する
無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線通信装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線中継装置(以下、中継装置と呼ぶ)は、送信電力の制限、電波の減衰又は干渉などの理由により、電波の到達距離が限られているときに、電波の中継を行う無線通信装置である。中継装置は、電波を一旦受信し、信号増幅などを行った後に電波を再送信する。
【0003】
中継装置で送信処理と受信処理が同時に行われる場合、送信信号と受信信号の搬送周波数が同一であると、中継装置から送信された信号が自装置で受信され、回路が発振する回り込み干渉の発生が問題となる。更に、それぞれの中継装置どうしの通信路、中継装置と携帯局間の通信路、中継装置と基地局間の通信路で同じ搬送周波数が用いられている場合、異なる通信路間で互いに干渉波が生じ、通信品質の劣化が無視できなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−205564号公報
【特許文献2】特開2010−68151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、送信と受信とを同時に高い伝送特性で実行する無線通信装置及び無線通信方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態としての無線通信装置は、第1受信部と、第1送信部と、制御部と、プレコーディング部とを備える。前記制御部は、第1のタイミングで、前記第1受信部の受信周波数を第1周波数から第2周波数に、前記第1送信部の送信周波数を前記第2周波数から前記第1周波数に切り換える。前記プレコーディング部は、前記第1のタイミングより前に前記第1受信部で受信された第1信号のチャネル状態情報に基づき、第2信号をプレコーディングする。前記第1送信部は、前記第1のタイミング後に、前記プレコーディングされた第2信号を送信する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る無線通信装置としての無線中継装置のブロック図。
図2】第1の実施形態に係る無線中継ネットワークの例を示した図。
図3】第1の実施形態に係る無線中継装置の搬送周波数の切り替え処理を時系列に表した図。
図4】第1の実施形態に係る無線中継装置の物理的配置と搬送周波数との関係を時系列で表した図。
図5】第1の実施形態の第1の変形例に係る無線中継装置の搬送周波数の切り替え処理を時系列に表した図。
図6】第1の実施形態の第1の変形例について複数の無線中継装置の物理的配置と利用周波数との関係を時系列で表した図。
図7】無線中継装置を用いた無線中継ネットワークにおいて搬送周波数切り替えのタイミングを同期する範囲を表した図。
図8】第2の実施形態に係る無線通信装置としての無線中継装置の機能ブロック図。
図9】第2の実施形態に係る無線中継装置が送信するフレームのフォーマットを表した図。
図10A】第2の実施形態に係る無線中継装置がフレームに対して行う処理を表した図。
図10B】第2の実施形態に係る無線中継装置がフレームに対して行う処理を表した図。
図11A】第2の実施形態の第1の変形例に係る無線中継装置がフレームに対して行う処理を表した図。
図11B】第2の実施形態の第1の変形例に係る無線中継装置がフレームに対して行う処理を表した図。
図12】第3の実施形態に係る無線通信装置としての無線中継装置の機能ブロック図。
図13】第3の実施形態に係る無線中継装置が送信するフレームのフォーマットを表した図。
図14A】第3の実施形態に係る無線中継装置がフレームに対して行う処理を表した図。
図14B】第3の実施形態に係る無線中継装置がフレームに対して行う処理を表した図。
図15A】第3の実施形態の第1の変形例に係る無線中継装置がフレームに対して行う処理を表した図。
図15B】第3の実施形態の第1の変形例に係る無線中継装置がフレームに対して行う処理を表した図。
図16】第4の実施形態に係る無線通信装置としての無線中継装置の機能ブロック図。
図17】第4の実施形態に係る無線中継装置が送信するフレームのフォーマットを表した図。
図18A】第4の実施形態に係る無線中継装置がフレームに対して行う処理を表した図。
図18B】第4の実施形態に係る無線中継装置がフレームに対して行う処理を表した図。
図19】第5の実施形態に係る無線中継装置が送信するフレームのフォーマットを表した図。
図20A】第5の実施形態に係る無線中継装置がフレームに対して行う処理を表した図。
図20B】第5の実施形態に係る無線中継装置がフレームに対して行う処理を表した図。
図21】第6の実施形態に係る無線通信装置としての無線中継装置の機能ブロック図。
図22】第6の実施形態に係る無線中継装置と基地局を接続した無線中継ネットワークの一例を表した図。
図23】第7の実施形態に係る無線通信装置としての無線中継装置の機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。また、図面において同一の構成要素は、同じ番号を付し、説明は、適宜省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は本実施形態に係る無線通信装置としての無線中継装置(以下、中継装置)の一例を示すブロック図である。中継装置1は、アンテナ10、アンテナ13、アンテナ14及びアンテナ17を有する。アンテナ10は第1の方向からの信号を受信できるように配置されている。アンテナ13は第2の方向へ信号を送信できるように配置されている。アンテナ14は第2の方向からの信号を受信できるように配置されている。アンテナ17は第1の方向へ信号を送信できるように配置されている。アンテナ10、アンテナ13、アンテナ14及びアンテナ17の大きさ及び形状は特に限定されない。例えばパラボナアンテナや、それぞれのアンテナが複数のアンテナ素子から構成されるアレイアンテナなどであってもよい。ここでいう第1の方向と第2の方向は中継装置1からみてそれぞれ異なる方向を意味する。第1の方向と第2の方向との間の角度は特に限定されない。中継装置1は更に、アンテナ10と電気的に接続された受信部11、アンテナ13と電気的に接続された送信部12、アンテナ14と電気的に接続された受信部15、アンテナ17と電気的に接続された送信部16を備えている。電気的な接続により、アンテナ10で受信する電波は受信部11へ電気的信号として渡される。電気的な接続により、アンテナ13は送信部12の出力する電気的信号を電波として送信することができる。同様に、アンテナ14で受信する電波は受信部15へ電気的信号として渡される。同様に、アンテナ17は送信部16の出力する電気的信号を電波として送信することができる。アンテナ10とアンテナ17は同じ1つのアンテナを共用してもよい。また、アンテナ13とアンテナ14は同じ1つのアンテナを共用してもよい。これらの少なくともいずれかの場合、共用するアンテナと受信部および送信部の間に図示はしないがデュプレクサが挿入される。
【0010】
中継装置1は更に構成要素として制御部18、局部発振器20、局部発振器21、中継処理部22及び中継処理部23を備える。制御部18は受信部11、送信部12、受信部15、送信部16、局部発振器20、局部発振器21、中継処理部22及び中継処理部23の制御と監視を行う。また、制御部18は同期部18A及び時刻管理部18Bを有する。送信部12、送信部16、受信部11、受信部15、制御部18、局部発振器20、局部発振器21、中継処理部22及び中継処理部23の全部又は一部は、CPU等のプロセッサにプログラムを実行させることによりソフトウェアで実現してもよいし、専用のハードウェア回路又はプログラム可能な回路によって実現してもよいし、これらの両方によって実現してもよい。
【0011】
制御部18の同期部18Aは中継装置1と互いに送受信を行う他の中継装置又は端末装置(端末装置も無線通信装置の一形態である)と、送信に用いる電波の周波数である送信周波数、受信に用いる電波の周波数である受信周波数、又は送信周波数と受信周波数の両方について、制御部18が周波数切り替えを行うタイミングを同期する機能を担う。以降では搬送周波数の切り替えと記載した場合、送信周波数のみの切り替え、受信周波数のみの切り替え、送信周波数と受信周波数両方の切り替えのすべての場合を包含するものとする。搬送周波数の切り替えタイミングの同期に用いる通信手段としては、受信部11、送信部12、受信部15及び送信部16が有するデータ送受信機能を用いても、他の構成要素が提供する無線通信機能を用いても、有線による電気通信回線を用いてもよい。
【0012】
時刻管理部18Bは制御部18の時刻管理機能を担う。時刻管理部18Bは、時刻管理のためリアルタイムクロックまたはタイマを備えてもよい。時刻管理機能には、現在時刻の管理、経過時刻の計測及び時刻調整の各処理を含むものとする。制御部18の周波数切り替えタイミングの計測は、一例として、時刻管理部18Bの提供する時刻に基づいて行われる。時刻管理部18Bの時刻の精度を担保するために、Network Time Protocol(NTP)を用いて外部のサーバと時刻同期を行っても、標準周波数局の送信する標準電波を受信し、その時刻と同期してもよい。制御部18は外部のサーバや端末と通信をするために、受信部11、送信部12、受信部15及び送信部16のデータ通信機能を用いても、管理用に別途設けられた電気通信回線を用いてもよい。管理用の電気通信回線は、有線、無線のいずれでもよく、用いられる通信プロトコルは特に限定されない。時刻管理部の実装形態は、ハードウェアによるものでも、ソフトウェアによるものでも、ハードウェアとソフトウェアの双方を組み合わせたもののいずれでもよい。
【0013】
中継装置1の搬送周波数の切り替えタイミングを他の中継装置又は端末装置と一致させる方法としては、前述の制御部18の同期部18A及び時刻管理部18Bを用いて、搬送周波数の切り替え対象である中継装置又は端末装置の時刻をすべて同期させた上で、時刻指定で周波数の切り替えを実行する方法がある。この方法を用いると指定された時刻又は周期で、周波数切り替えの対象である中継装置及び端末装置の送信周波数と受信周波数の切り替えが一斉に行われる。他に、後述するような受信フレームの同期捕捉を行うことにより、フレーム境界を検出し、フレーム境界の検出を契機に周波数切り替えを行う方法も存在する。以上の周波数切り替えを行うタイミングを同期させる方法は単なる例示であり、特にいずれかの方法に限定されない。更に、周波数切り替えの対象は、受信周波数と送信周波数の双方でも、受信周波数又は送信周波数いずれかのみであってもよい。
【0014】
受信部11はミキサ11Aと、フィルタ11Bと、増幅器11Cとを備える。受信部15についても同様にミキサ15Aと、フィルタ15Bと、増幅器15Cとを備える。フィルタ11B及びフィルタ15Bは、受信対象の周波数帯のみを通すバンドパスフィルタである。受信対象の周波数が変わる際に、通過させる周波数帯を変更可能なものであるとする。ノイズ除去の目的などのために、ローパスフィルタなど他のフィルタを受信部11及び受信部15へ更に追加してもよい。増幅器11C及び増幅器15Cは、電気信号を周波数変換又は中継処理部22又は中継処理部23での処理のために増幅する機能を有する。図1の受信部11及び受信部15ではそれぞれひとつの増幅器のみが図示されているが、必要に応じて増幅器を更に追加してもよい。ミキサ11A及びミキサ15Aの機能及び構成については後述する。
【0015】
送信部12はミキサ12Aと、フィルタ12Bと、増幅器12Cとを備える。送信部16についても同様にミキサ16Aと、フィルタ16Bと、増幅器16Cとを備える。フィルタ12B及びフィルタ16Bは、送信周波数帯の電気信号のみを通すバンドパスフィルタである。送信部12及び送信部16についても、ノイズ除去の目的などのために、ローパスフィルタなど他のフィルタを更に追加してもよい。増幅器12C及び増幅器16Cは、電気信号を送信電力まで増幅する機能を有する。増幅器は多段構成のものであってもよい。また、必要に応じ増幅器の数を増やした構成を用いてもよい。ミキサ12A及びミキサ16Aの機能及び構成については後述する。
【0016】
局部発振器20及び局部発振器21は、受信部11又は受信部15でそれぞれの受信周波数を、中間周波数に変換する際に用いる周波数変換用の信号を生成する。局部発振器20及び局部発振器21の生成する周波数変換用信号は、更に中間周波数の信号を送信部12又は送信部16で送信周波数の信号に変換する際にも用いられる。局部発振器20及び局部発振器21としては、位相同期回路(PLL)によるシンセサイザ、Direct Digital Synthesizer(DDS)など様々な実装が存在するが、用いる方式については特に限定しない。また、ダブルコンバージョン、トリプルコンバージョンのように複数回の周波数変換を用いてもよい。また、受信部11、受信部15で用いられる受信周波数と、送信部12、送信部16で用いられる送信周波数の組み合わせにより、局部発振器20及び局部発振器21を統合できる場合は、ひとつの局部発振器のみを用いる構成を用いてもよい。逆に局部発振器の数を更に増やした構成も排除されない。
【0017】
局部発振器20の生成する信号は、ミキサ11Aにおいて、受信部11の受信周波数の電気信号を中継処理部22で用いられる中間周波数に変換するために用いられる。更に局部発振器20の生成する信号は送信部16のミキサ16Aにおいて、中継処理部23から出力された中間周波数の電気信号を送信部12の送信周波数に変換するために用いられる。ミキサ11A及びミキサ16Aにおいては、混合された周波数の和又は差の周波数の信号を取り出すことによって周波数の変換を実現している。
【0018】
局部発振器21の生成する信号は、送信部12のミキサ12Aにおいて、中継処理部22から出力された中間周波数の電気信号を送信部12の送信周波数に変換するために用いられる。更に、局部発振器21の生成する信号は、ミキサ15Aにおいて、受信部15の受信周波数の電気信号を中継処理部23で用いられる中間周波数に変換するために用いられる。ミキサ12A及びミキサ15Aにおいても、混合された周波数の和又は差の周波数の信号を取り出すことによって周波数の変換を実現している。ミキサについては、ダイオード、トランジスタ、集積回路など、様々な部品を用いた回路構成が複数存在するが、特に実装方式は限定しない。
【0019】
制御部18は、アンテナ10及び受信部11の受信周波数fr1、アンテナ13及び送信部12の送信周波数ft1、アンテナ14及び受信部15の受信周波数fr2、アンテナ17及び送信部16の送信周波数ft2、中継処理部22の中間周波数fi1及び中継処理部23の中間周波数fi2を変更する指令を出すことができる。周波数の変更指令は、これらのすべての周波数に対して出すことも、これらの周波数の一部についてのみ出すこともできるものとする。具体的な周波数変更処理は、局部発振器20の発振周波数の変更、局部発振器21の発振周波数の変更をもって実行する。
【0020】
中継処理部22は、アンテナ10で受信され、受信部11で中間周波数に変換された電気信号に対し、補正処理(チャネル補正(等化)またはプレコーディングまたはこれらの両方)を行う。これにより当該信号のデータ伝送特性を改善させた状態で、中継用の信号を送信部12に送る。送信部12で周波数変換、増幅とアンテナ13での送信が行われる。同様に、中継処理部23はアンテナ14で受信され、受信部15で中間周波数に変換された電気信号に対し、補正処理(チャネル補正(等化)またはプレコーディングまたはこれらの両方)を行う。これにより当該信号のデータ伝送特性を改善させた状態で、中継用の信号を送信部16に送る。送信部16で周波数変換、増幅とアンテナ17での送信が行われる。中継処理部22及び中継処理部23の内部の構成要素とその中で行われる詳細な処理については後述する。
【0021】
図2では本実施形態の中継装置を用いた無線中継ネットワークの例を3つ示している。図2上段には、一例として中継装置1a、中継装置1及び中継装置1bを用いて、連続して3台の中継装置を並べた無線中継ネットワークを示している。中継装置1aは、中継装置1に向けて電波を送信するアンテナ13aと、中継装置1から電波を受信するアンテナ14aを備えるものとする。中継装置1bは、中継装置1に向けて電波を送信するアンテナ17bと、中継装置1から電波を受信するアンテナ10bを備えるものとする。連続する中継装置の数は3台に限らず、2台でも、4台以上であってもよい。このように通信に用いる電波の到達距離を考慮して決めた間隔ごとに中継装置を配置していくことにより、定期的な信号増幅及び伝送特性の改善を繰り返し、遠隔地どうしでのデータ通信を行うことができる。電波が到達するのであれば、中継装置を複数台連続配置せず、1台の中継装置のみで電波の中継を行うこともできる。
【0022】
図2中段には、一例として無線通信装置である端末装置3の送受信する電波を、中継装置1が中継装置1bへ中継する無線中継ネットワークを示している。端末装置3は、中継装置1に向けて電波を送信するアンテナ3aと、中継装置1から電波を受信するアンテナ3bを備えるものとする。端末装置3の送受信する電波は、計算機2が入力又は出力するデータを搬送する。計算機2の用途としては例えば、無線中継ネットワークの管理用・制御用サーバが挙げられる。この構成は単なる一例であり、端末装置3の接続先が1台の計算機ではなく、他の装置又は他の装置の組み合わせである無線中継ネットワークを構築してもよい。
【0023】
図2下段には、一例として無線通信装置である端末装置4の送信する電波及び無線通信装置である端末装置5が受信する電波を、中継装置1が中継装置1bへまたは中継装置1bから中継する無線中継ネットワークを示している。端末装置4は、中継装置1に向けて電波を送信するアンテナ4aを備えるものとする。端末装置5は、中継装置1から送信された電波を受信するアンテナ5aを備えるものとする。このように、中継装置1が対向する端末装置は1台に限らず、2台など複数台ある構成であってもよい。
【0024】
上記のような無線中継ネットワークを構築することにより、電波の限られた到達距離という問題を解決しつつ、大容量の情報伝送を実現することができる。ミリ波領域においては、周波数が高くなるほど水蒸気、気体分子による減衰の効果が強く出るため、電波の減衰という問題を解決する要請が強く中継装置を用いたシステムを構築する必要性が高い。また、送信電力の制限は、ミリ波領域以外においても存在するため、他の周波数帯を用いた無線通信においても、上記のような無線中継ネットワークを用いて、電波の到達距離より長い距離の情報伝送を実現することができる。
【0025】
上記のような無線中継ネットワークを構成した場合に送信周波数と受信周波数が同一の周波数に設定されると、様々な問題が生ずる。電波の送信と受信が同時に行われる場合、中継装置から送信された信号が自装置で受信され、回路が発振してしまう回り込み干渉が発生する可能性がある。図2には、例として前記のような回り込み干渉が発生するおそれのあるアンテナの組み合わせ24を示している。更に、同じ搬送周波数が無線中継ネットワークにおける複数の通信路で用いられていると、アンテナ間だけでなく、通信路間での干渉波が発生し、通信品質が悪化する可能性も生ずる。図2には、例としてこのような干渉波が生ずるおそれのある通信路の組み合わせ25を示している。
【0026】
そこで、本発明の実施形態の中継装置においては送信周波数と受信周波数を時刻により相互に切り替える処理を行い、送信周波数におけるチャネル情報を直近の周波数切り替え時刻前において受信した信号から推定できるようにする。この推定されたチャネル情報を用いてプレコーディングを行うことで、中継する信号の通信品質を向上させる。送信周波数におけるチャネル情報を直近の周波数切り替え時刻前において受信した信号から取得するために、事前にサウンディングプロセスを行う必要はなく、中継装置の処理負担も軽減される。
【0027】
図3では中継装置の各部が、データ送受信に用いる周波数を切り替える処理を時系列に行う例を表している。横軸は時刻tを表しており、左から右に時刻が進んでいくものとする。図3においては時系列に時刻t1、t2、t3、t4、t5の順番で、それぞれのタイミングで搬送周波数の切り替え処理が行われている。第1の期間は時刻t1と時刻t2の間を表している。第2の期間は時刻t2と時刻t3の間を表している。第3の期間は時刻t3と時刻t4の間を表している。第4の期間は時刻t4と時刻t5の間を表している。以降では、周波数の切り替えが行われるタイミングにおける処理の詳細について説明する。
【0028】
時刻t1において、制御部18は受信部11の受信周波数を72GHzに設定する。これにより受信部11はアンテナ10より周波数72GHzで電波を受信できる。更に制御部18は送信部12の送信周波数を82GHzに設定する。これにより送信部12は受信部11で受信された信号を82GHzに周波数変換し、アンテナ13から送信できるようになる。同じ時刻t1において、制御部18は受信部15の受信周波数を75GHzに設定する。これにより受信部15はアンテナ14より周波数75GHzで電波を受信できる。更に制御部18は送信部16の送信周波数を85GHzに設定する。これにより送信部16は、受信部15で受信された信号を85GHzに周波数変換し、アンテナ17から送信できるようになる。
【0029】
時刻t1では、データ送信に用いられている周波数である82GHz及び85GHzはデータ受信に用いられている周波数である72GHz及び75GHzとは異なるため、同時刻にデータの送信と受信が行われても、同じ中継装置内における回り込み干渉の発生を抑制することができる。更に、送信用の周波数が82GHzと85GHzに、受信用の周波数が72GHzと75GHzにそれぞれ分けられているため、通信路間の干渉の発生についても抑制することができる。
【0030】
時刻t2において、制御部18は受信部11の受信周波数を85GHzに設定する。これにより、受信部11はアンテナ10より周波数85GHzで電波を受信できる。更に制御部18は送信部12の送信周波数を75GHzに設定する。これにより送信部12はアンテナ13より、受信部11で受信された信号を75GHzに周波数変換し、アンテナ13から送信できるようになる。同じ時刻t2において、制御部18は受信部15の受信周波数を82GHzに設定する。これにより受信部15はアンテナ14より周波数82GHzで電波を受信できる。更に制御部18は送信部16の送信周波数を72GHzに設定する。これにより送信部16は、受信部15で受信された信号を72GHzに周波数変換し、アンテナ17から送信できるようになる。
【0031】
時刻t2で送信部12に設定された送信周波数75GHzは、時刻t1で受信部15に設定されていた受信周波数75GHzと同じである。更に時刻t2で送信部16に設定された送信周波数72GHzは、時刻t1で受信部11に設定されていた受信周波数72GHzと同一である。搬送周波数切り替え前の受信周波数が搬送周波数切り替え後の送信周波数に等しいため、搬送周波数の切り替えタイミング前に取得された受信チャネル状態情報より、送信チャネル状態情報の推定を行うことが可能となる。
【0032】
受信チャネル状態情報は、他の装置から自装置への伝搬路(チャネル)の状態を表す情報であり、送信チャネル状態は、自装置から当該他の装置への伝搬路(チャネル)の状態を表す情報である。受信チャネル状態情報は、例えば他の装置の送信アンテナ数と、自装置の受信アンテナ数とを乗算した値の個数分の成分からなるチャネル行列によって表現されることができる。各要素は、該当する伝搬路の振幅変動量及び位相回転を情報として含む。伝搬路の対称性を仮定すれば、受信チャネル状態から、送信チャネル状態を算出することが可能である。例えば、他の装置の送信アンテナ数と、自装置の受信アンテナ数が同一であれば、受信チャネル状態情報は、送信チャネル状態情報と同一と見なすことができる。
【0033】
図4は複数の中継装置の物理的配置と搬送周波数との関係を時系列で表した図である。第1の期間から第2の期間、第3の期間、第4の期間の順番に時刻が進んでいくものとする。各期間の間には、搬送周波数の切り替え処理がなされているものとする。次に各期間における処理について説明する。説明においては、受信周波数の信号を送信周波数の信号に変換すると表現しているが、この変換の途中過程で行われる受信周波数から中間周波数への変換及び中間周波数から送信周波数への変換については記載を省略するものとする。
【0034】
第1の期間において中継装置1は、中継装置1aから送信された72GHzの信号301を受信する。中継装置1は信号301を送信周波数82GHzに変換し、82GHzの信号309として中継装置1bに向けて送信する。更に中継装置1は中継装置1bから送信された75GHzの信号310を受信する。中継装置1は信号310を送信周波数85GHzに変換し、85GHzの信号302として中継装置1aに向けて送信する。
【0035】
第2の期間において中継装置1は、中継装置1aから送信された85GHzの信号303を受信する。中継装置1は信号303を送信周波数75GHzに変換し、75GHzの信号311として中継装置1bに向けて送信する。この信号311の周波数75GHzは第1の期間において中継装置1bから受信していた信号310の周波数に等しい。更に中継装置1は中継装置1bから送信された82GHzの信号312を受信する。中継装置1は信号312を送信周波数72GHzに変換し、72GHzの信号304として中継装置1aに向けて送信する。この信号304の周波数72GHzは第1の期間において中継装置1aから受信していた信号301の周波数に等しい。
【0036】
第3の期間において中継装置1は、中継装置1aから送信された72GHzの信号305を受信する。中継装置1は信号305を送信周波数82GHzに変換し、82GHzの信号313として中継装置1bに向けて送信する。この信号313の周波数82GHzは第2の期間において中継装置1bから受信していた信号312の周波数に等しい。更に中継装置1は中継装置1bから送信された75GHzの信号314を受信する。中継装置1は信号314を送信周波数85GHzに変換し、85GHzの信号306として中継装置1aに向けて送信する。この信号306の周波数85GHzは第2の期間において中継装置1aから受信していた信号303の周波数に等しい。
【0037】
第4の期間において中継装置1は、中継装置1aから送信された85GHzの信号307を受信する。中継装置1は信号307を送信周波数75GHzに変換し、75GHzの信号315として中継装置1bに向けて送信する。この信号315の周波数75GHzは第3の期間において中継装置1bから受信していた信号314の周波数に等しい。更に中継装置1は中継装置1bから送信された82GHzの信号307を受信する。中継装置1は信号307を送信周波数72GHzに変換し、72GHzの信号308として中継装置1aに向けて送信する。この信号308の周波数72GHzは第3の期間において中継装置1aから受信していた信号305の周波数に等しい。
【0038】
中継装置1は、中継装置1aへ送信する際、周波数の切り替えがされる前に同じ中継装置1aより受信していた周波数と同じ周波数を用いる。周波数が等しいため、中継装置1は中継装置1aへ送信する際に用いるチャネル状態に関する情報を、周波数の切り替えがされる前に中継装置1aから受信していた信号より推定することができる。このため、中継装置1は、中継装置1aから受信していた信号より推定したチャネル状態を用い、中継装置1aへ送信する信号に対して補正処理(ここではプレコーディング)をすることができる。同様にして、中継装置1が中継装置1bへ送信する信号についても、周波数の切り替え前に受信した信号より推定したチャネル状態を用いて、補正処理(ここではプレコーディング)をすることができる。プレコーディングを行うことで、事前に伝搬路(チャネル)の歪みを補正することができるため、受信側ではチャネルの歪みがキャンセルまたは低減された状態で、信号を受信することが期待できる。
【0039】
図3及び図4で示した第1の実施形態に係る処理で用いられた送信周波数の値、受信周波数の値及びそれらの組み合わせは単なる一例に過ぎず、これらとは異なる搬送周波数の組み合わせを用いることは排除されない。搬送周波数の組み合わせを一般化すると、中継装置1は2つの搬送周波数パターンの切り替えを繰り返しているといえる。まず、第1の搬送周波数パターンでは受信部11の受信周波数には第1の周波数を、送信部12の送信周波数に第2の周波数を、受信部15の受信周波数に第3の周波数を、送信部16の送信周波数に第4の周波数を設定している。次の第2の搬送周波数パターンでは受信部11の受信周波数に第4の周波数を、送信部12の送信周波数に第3の周波数を、受信部15の受信周波数に第2の周波数を、送信部16の送信周波数に第1の周波数を設定している。第1の実施形態で例示された処理に当てはめてみると、中継装置1は第1の搬送周波数パターンと、第2の搬送周波数パターンを繰り返しているといえる。
【0040】
(第1の変形例)
図5に中継装置の各部が、データ送受信に用いる周波数を切り替える処理を時系列に行う他の例を示す。図3で示した処理では、中継装置の送受信処理において合計で4つの周波数が用いられていたが、図5に示す処理では、合計2つの周波数を用いる。
【0041】
時刻t1において、制御部18は受信部11の受信周波数を72GHzに設定する。これにより受信部11はアンテナ10より周波数72GHzで電波を受信できる。更に制御部18は送信部12の送信周波数を85GHzに設定する。これにより送信部12は受信部11で受信された信号を85GHzに周波数変換し、アンテナ13から送信できるようになる。同じ時刻t1において、制御部18は受信部15の受信周波数を72GHzに設定する。これにより受信部15はアンテナ14より周波数72GHzで電波を受信できる。更に制御部18は送信部16の送信周波数を85GHzに設定する。これにより送信部16は、受信部15で受信された信号を85GHzに周波数変換し、アンテナ17から送信できるようになる。
【0042】
時刻t1では、データ送信に用いられている周波数である85GHzはデータ受信に用いられている周波数である72GHzとは異なるため、同時刻にデータの送信と受信が行われても、同じ中継装置内における回り込み干渉の発生を抑制することができる。
【0043】
時刻t2において、制御部18は受信部11の受信周波数を85GHzに設定する。これにより、受信部11はアンテナ10より周波数85GHzで電波を受信できる。更に制御部18は送信部12の送信周波数を72GHzに設定する。これにより送信部12はアンテナ13より、受信部11で受信された信号を72GHzに周波数変換し、アンテナ13から送信できるようになる。同じ時刻t2において、制御部18は受信部15の受信周波数を85GHzに設定する。これにより受信部15はアンテナ14より周波数85GHzで電波を受信できる。更に制御部18は送信部16の送信周波数を72GHzに設定する。これにより送信部16は、受信部15で受信された信号を72GHzに周波数変換し、アンテナ17から送信できるようになる。
【0044】
時刻t2で送信部12及び送信部16に設定された送信周波数72GHzは、時刻t1で受信部11及び受信部15に設定されていた受信周波数72GHzと同一である。搬送周波数切り替え前の受信周波数が搬送周波数切り替え後の送信周波数に等しいため、搬送周波数の切り替えタイミング前に取得された受信チャネル状態に関する情報より、送信チャネル状態の推定を行うことが可能となる。
【0045】
図6は第1の実施形態の第1の変形例について複数の中継装置の物理的配置と搬送周波数との関係を時系列で表した図である。
【0046】
第1の期間において中継装置1は、中継装置1aから送信された72GHzの信号601を受信する。中継装置1は信号601を送信周波数85GHzに変換し、85GHzの信号609として中継装置1bに向けて送信する。更に中継装置1は中継装置1bから送信された72GHzの信号610を受信する。中継装置1は信号610を送信周波数85GHzに変換し、85GHzの信号602として中継装置1aに向けて送信する。
【0047】
第2の期間において中継装置1は、中継装置1aから送信された85GHzの信号603を受信する。中継装置1は信号603を送信周波数72GHzに変換し、72GHzの信号611として中継装置1bに向けて送信する。この信号611の周波数72GHzは第1の期間において中継装置1bから受信していた信号610の周波数に等しい。更に中継装置1は中継装置1bから送信された85GHzの信号612を受信する。中継装置1は信号612を送信周波数72GHzに変換し、72GHzの信号604として中継装置1aに向けて送信する。この信号604の周波数72GHzは第1の期間において中継装置1aから受信していた信号601の周波数に等しい。
【0048】
第3の期間において中継装置1は、中継装置1aから送信された72GHzの信号605を受信する。中継装置1は信号605を送信周波数85GHzに変換し、85GHzの信号613として中継装置1bに向けて送信する。この信号613の周波数85GHzは第2の期間において中継装置1bから受信していた信号612の周波数に等しい。更に中継装置1は中継装置1bから送信された72GHzの信号614を受信する。中継装置1は信号614を送信周波数85GHzに変換し、85GHzの信号606として中継装置1aに向けて送信する。この信号606の周波数85GHzは第2の期間において中継装置1aから受信していた信号603の周波数に等しい。
【0049】
第4の期間において中継装置1は、中継装置1aから送信された85GHzの信号607を受信する。中継装置1は信号607を送信周波数72GHzに変換し、72GHzの信号615として中継装置1bに向けて送信する。この信号615の周波数72GHzは第3の期間において中継装置1bから受信していた信号614の周波数に等しい。更に中継装置1は中継装置1bから送信された85GHzの信号616を受信する。中継装置1は信号616を送信周波数72GHzに変換し、72GHzの信号608として中継装置1aに向けて送信する。この信号608の周波数72GHzは第3の期間において中継装置1aから受信していた信号605の周波数に等しい。
【0050】
第1の実施形態の第1の変形例に係る中継装置1についても、中継装置1aへ送信する際、搬送周波数の切り替えがされる前に同じ中継装置1aより受信していた周波数と同じ周波数を用いる。中継装置1は、中継装置1aから受信していた信号より推定したチャネル状態を用い、同じ周波数で中継装置1aへ送信する信号に対してプレコーディングをすることができる。同様にして、中継装置1が中継装置1bへ送信する信号についても、周波数の切り替え前に受信した信号より推定したチャネル状態を用いて、プレコーディングをすることができる。
【0051】
図5及び図6で示した、第1の実施形態の第1の変形例に係る処理で用いられた送信周波数の値、受信周波数の値及びそれらの組み合わせは単なる一例に過ぎず、これらとは異なる搬送周波数の組み合わせを用いることは排除されない。搬送周波数の組み合わせを一般化すると、ここでも中継装置1は2つの搬送周波数パターンの切り替えを繰り返しているといえる。まず、第1の搬送周波数パターンでは受信部11の受信周波数には第1の周波数を、送信部12の送信周波数に第2の周波数を、受信部15の受信周波数に第1の周波数を、送信部16の送信周波数に第2の周波数を設定している。次の第2の搬送周波数パターンでは受信部11の受信周波数に第2の周波数を、送信部12の送信周波数に第1の周波数を、受信部15の受信周波数に第2の周波数を、送信部16の送信周波数に第1の周波数を設定している。そして例示された処理に当てはめると、中継装置1は第1の搬送周波数パターンと、第2の搬送周波数パターンを繰り返しているといえる。
【0052】
図4及び図6で示した無線中継ネットワークにおいては複数の中継装置が連続して配置されていた。図4及び図6において中継装置1の搬送周波数パターンの切り替えだけでなく、中継装置1a及び中継装置1bも、搬送周波数パターンの切り替えが行われる。この際、隣接する中継装置間の周波数パターン切り替えの態様に規則性がある。すなわち、第1の期間において、中継装置1が第1の搬送周波数パターンに設定されているとすると、隣接する中継装置1a及び隣接する中継装置1bは第2の搬送周波数パターンに設定されている。第2の期間において、中継装置1が第2の搬送周波数パターンに設定されているとすると、隣接する中継装置1a及び隣接する中継装置1bは第1の搬送周波数パターンに設定されている。第3の期間において、中継装置1が第1の搬送周波数パターンに設定されているとすると、隣接する中継装置1a及び隣接する中継装置1bは第2の搬送周波数パターンに設定されている。第4の期間において、中継装置1が第2の搬送周波数パターンに設定されているとすると、隣接する中継装置1a及び隣接する中継装置1bは第1の搬送周波数パターンに設定されている。もし中継装置1bの左側にもう1つ中継装置が存在する場合、もう1つの中継装置の搬送周波数パターンは、それぞれの期間において、中継装置1と一致する。
【0053】
上記の周波数パターン切り替えの態様を一般化すると、複数の中継装置が連続して配置された場合、中継装置は第1のグループに属するものと、第2のグループに属するものに分けられる。ここで第1のグループ、第2のグループとは、同一の期間において同一の搬送周波数パターンが設定されている中継装置の集合を意味する。複数の中継装置が連続して配置されている場合、第1のグループに属する中継装置と第2のグループに属する中継装置は交互に設置されることになる。
【0054】
これまで図3及び図4に示した第1の実施形態に係る処理と、図5及び図6に示した第1の実施形態の第1の変形例に係る処理との2つの処理を例として説明した。これらの2つの処理で用いられていた搬送周波数パターンの間には、使われている周波数の数に違いがあった。搬送周波数の切り替えについては、時系列で複数回行われることを仮定したが、複数回にわたる搬送周波数の切り替えが行われるタイミングについては特に限定しなかった。周波数を切り替えるタイミングとして様々なものを想定すると、更に多くの変形例を実現することができる。搬送周波数の切り替えは一定の周期ごとに行われるものであっても、何らかの条件を満たしたときに実行されるイベント駆動型のものであってもよい。搬送周波数の切り替えが周期的である場合、その周期の長短は問わない。
【0055】
前述のように搬送周波数切り替えのタイミングの選択については特に限定されないものの、中継装置1へ電波を送受信する無線通信装置又は中継装置が搬送周波数を切り替えるタイミングは、中継装置1が搬送周波数を切り替えるタイミングと同期されている必要がある。この搬送周波数切り替えのタイミングの同期について、図7を用いて具体的に説明する。
【0056】
これまでの説明において無線中継ネットワークを構成する中継装置及び無線通信装置の送信部と受信部の搬送周波数切り替えタイミングは同一となると述べたが、受信部と送信部の周波数切り替えタイミングは厳密に一致している必要はない。例えば、指定された搬送周波数切り替えのタイミングになっても、いずれかの方向について、データの送信又は受信の処理がまだ完了していない場合、現在行われているデータの送信又は受信が完了した後に送信部又は受信部の周波数切り替えを行ってもよい。
【0057】
例えば、搬送周波数切り替えのタイミングになっても受信部11でのデータ受信が継続しており、受信されたデータを送信部12より送信し続けなくてはならない場合、受信部11及び送信部12の周波数切り替えのタイミングは送信部16及び受信部15より後になってもよい。
【0058】
また、受信部11、送信部12、受信部15、送信部16のすべてで一斉に周波数の切り替えを行う指令を出しても、制御部18のプログラム処理又は局部発振器20、21、ミキサ11A,12A,15A、16Aの回路実装上の要因などにより、受信部11、送信部12、受信部15、送信部16で実際の周波数の切り替えが行われるタイミングが前後してしまう場合もあるが、干渉の発生が抑制されるのでれば、そのような装置も本発明の実施形態の範囲に包含されるといえる。
【0059】
図7に示す最上段の無線中継ネットワークでは、端末装置6a及び端末装置6bとの間でなされる通信を中継する目的で1台の中継装置が用いられている。このような構成を用いる場合、端末装置6aの送信用アンテナと、端末装置6aの受信用アンテナと、端末装置6bの送信用アンテナと、端末装置6bの受信用アンテナと、1台の中継装置について、搬送周波数を切り替えるタイミングが同期されている必要がある。図7において斜線で塗りつぶされている構成要素が、この搬送周波数切り替えのタイミングが同期される範囲に該当する。端末装置6aおよび端末装置6bも、図1の構成のうち中継に関する機能を除いたものと同等の構成を有する。
【0060】
図7上から2段目の無線中継ネットワークでは端末装置6c及び端末装置6dとの間でなされる通信を中継する目的で2台の中継装置が用いられている。このような構成を用いる場合、端末装置6cの送信用アンテナと、端末装置6cの受信用アンテナと、端末装置6dの送信用アンテナと、端末装置6dの受信用アンテナと、2台の中継装置について、搬送周波数を切り替えるタイミングが同期されている必要がある。図7において斜線で塗りつぶされている構成要素が、この搬送周波数切り替えのタイミングが同期される範囲に該当する。端末装置6cおよび端末装置6dも、図1の構成のうち中継に関する機能を除いたものと同等の構成を有する。
【0061】
図7上から3段目の無線中継ネットワークでは端末装置6e及び端末装置6fとの間でなされる通信を中継する目的で3台の中継装置が用いられている。このような構成を用いる場合、端末装置6eの送信用アンテナと、端末装置6eの受信用アンテナと、端末装置6fの送信用アンテナと、端末装置6fの受信用アンテナと、3台の中継装置について、搬送周波数を切り替えるタイミングが同期されている必要がある。図7において斜線で塗りつぶされている構成要素が、この搬送周波数切り替えのタイミングが同期される範囲に該当する。端末装置6eおよび端末装置6fも、図1の構成のうち中継に関する機能を除いたものと同等の構成を有する。
【0062】
図7上から4段目の無線中継ネットワークでは端末装置6g及び端末装置6iとの間でなされる通信並びに端末装置6h及び端末装置6jとの間でなされる通信を中継する目的で3台の中継装置が用いられている。このような構成を用いる場合、端末装置6gの送信用アンテナと、端末装置6iの受信用アンテナと、端末装置6jの送信用アンテナと、端末装置6hの受信用アンテナと、3台の中継装置について、搬送周波数を切り替えるタイミングが同期されている必要がある。図7において斜線で塗りつぶされている構成要素が、この搬送周波数切り替えのタイミングが同期される範囲に該当する。端末装置6gおよび端末装置6hの組、および、端末装置6iおよび端末装置6jの組は、図1の構成のうち中継に関する機能を除いたものと同等の構成を有する。
【0063】
前述の関係を一般化すると、電波の中継処理を行う中継装置がn台連続して設置されているとした場合、周波数の切り替えタイミングが同期される範囲は、そのn台の中継装置に加え、そのn台の中継装置の連なりの両端の位置するアンテナと直接電波の送信又は受信を行う、端末装置又は中継装置のアンテナも含まれるといえる。周波数切り替えタイミングの同期処理は、n台ある中継装置の同期部の機能により自律的に行われるものであっても、管理用端末又は管理サーバなどから外部指令を受けて行われるものであっても、それらの組み合わせによるものであってもよく、実装方法は特に限定しない。
【0064】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係る無線通信装置として中継装置の機能ブロック図である。第2の実施形態に係る中継処理部22は、チャネル推定部70と、チャネル補正部71と、結合部72と、パイロット信号生成部73とを備えている。同様に、中継処理部23は、チャネル推定部74と、チャネル補正部75と、結合部76と、パイロット信号生成部77とを備えている。第2の実施形態に係る中継装置のアンテナ10、受信部11、送信部12、アンテナ13、アンテナ14、受信部15、送信部16、アンテナ17及び制御部18はそれぞれ第1の実施形態に係るアンテナ10、受信部11、送信部12、アンテナ13、アンテナ14、受信部15、送信部16、アンテナ17及び制御部18とそれぞれ同等の機能を有するものとする。図8に示されていないものの、第2の実施形態に係る中継装置についても、第1の実施形態に係る中継装置の局部発振器20及び局部発振器21と同等の機能を有する局部発振器を備えるものとする。
【0065】
図9は、第2の実施形態に係る中継装置が送信するフレームのフォーマットを表した図である。第2の実施形態に係るフレームは、複数のパイロットシンボルから構成されるパイロット信号を含むパイロット部と、データ本体を含むペイロード部とを含む。
【0066】
図10A及び図10Bは第2の実施形態に係る中継装置がフレームに対して行う処理を表した図である。時刻t1、時刻t2、時刻t3、時刻t4及び時刻t5にそれぞれ搬送周波数の切り替えが行われているものとする。第1の期間は時刻t1と時刻t2の間を表している。第2の期間は時刻t2と時刻t3の間を表している。第3の期間は時刻t3と時刻t4の間を表している。第4の期間は時刻t4と時刻t5の間を表している。図10A及び図10Bでは、それぞれの期間について、上から下に向かう方向に、中継装置1が受信したフレームについて行われる処理の概略が示されている。以下では、図10A及び図10Bに沿って、当該フレームについて行われる処理を説明する。
【0067】
まず、第1の期間についての処理を説明する。時刻t1において制御部18は受信部11の受信周波数を72GHzに設定する。中継装置1aから送信周波数72GHzで送信されたフレームは、アンテナ10より受信され、受信部11においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部70は受信されたフレームのパイロット部90に含まれるパイロット信号を参照し、中継装置1と中継装置1aの間のチャネル状態H1a(72)を推定する。チャネル補正部71は、チャネル状態の逆特性H1a−1(72)を用いてフレームのペイロード部91に対してチャネル補正を行う。結合部72は補正済みのペイロード部93とパイロット信号生成部73の生成した新たなパイロット部92を結合し、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t1において送信部12の送信周波数を82GHzに設定している。このため、送信部12はベースバンド信号を送信周波数82GHzに変換後、新たなフレームを含む信号をアンテナ13より中継装置1bに向けて送信する。
【0068】
同じ第1の期間において、受信部15が受信するフレームについての処理も説明する。時刻t1において制御部18は受信部15の受信周波数を75GHzに設定する。中継装置1bから送信周波数75GHzで送信されたフレームは、アンテナ14より受信され、受信部15においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部74は受信されたフレームのパイロット部94に含まれるパイロット信号を参照し、中継装置1と中継装置1bの間のチャネル状態H1b(75)を推定する。チャネル補正部75は、チャネル状態の逆特性H1b−1(75)を用いてフレームのペイロード部95に対してチャネル補正を行う。結合部76は補正済みのペイロード部97とパイロット信号生成部77の生成した新たなパイロット部96を結合し、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t1において送信部16の送信周波数を85GHzに設定している。このため、送信部16はベースバンド信号を送信周波数85GHzに変換後、新たなフレームを含む信号をアンテナ17より中継装置1aに向けて送信する。
【0069】
次に第2の期間における処理について説明する。時刻t2において制御部18は受信部11の受信周波数を85GHzに設定する。中継装置1aから送信周波数85GHzで送信されたフレームは、アンテナ10より受信され、受信部11においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部70は受信されたフレームのパイロット部98に含まれるパイロット信号を参照し、中継装置1と中継装置1aの間のチャネル状態H1a(85)を推定する。チャネル補正部71は、チャネル状態の逆特性H1a−1(85)を用いてフレームのペイロード部99に対してチャネル補正を行う。結合部72は補正済みのペイロード部101とパイロット信号生成部73の生成した新たなパイロット部100を結合し、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t2において送信部12の送信周波数を75GHzに設定している。このため、送信部12はベースバンド信号を送信周波数75GHzに変換後、新たなフレームを含む信号をアンテナ13より中継装置1bに向けて送信する。
【0070】
同じ第2の期間において、受信部15が受信するフレームについての処理も説明する。時刻t2において制御部18は受信部15の受信周波数を82GHzに設定する。中継装置1bから送信周波数82GHzで送信されたフレームは、アンテナ14より受信され、受信部15においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部74は受信されたフレームのパイロット部102に含まれるパイロット信号を参照し、中継装置1と中継装置1bの間のチャネル状態H1b(82)を推定する。チャネル補正部75は、チャネル状態の逆特性H1b−1(75)を用いてフレームのペイロード部103に対してチャネル補正を行う。結合部76は補正済みのペイロード部105とパイロット信号生成部77の生成した新たなパイロット部104を結合し、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t1において送信部16の送信周波数を72GHzに設定している。このため、送信部16はベースバンド信号を送信周波数72GHzに変換後、新たなフレームを含む信号をアンテナ17より中継装置1aに向けて送信する。第3の期間及び第4の期間において、中継装置1が受信するフレームについて行われる処理も、前述の第1の期間及び第2の期間における処理と同様となる。
【0071】
(第1の変形例)
図10A及び図10Bで示した処理では、中継装置の送受信処理において合計で4つの周波数が用いられていたが、第2の実施形態の第1の変形例として、送受信処理において合計2つの周波数を用いる場合の処理を図11A及び図11Bに示す。図11A及び図11Bにおいても時刻t1、時刻t2、時刻t3、時刻t4及び時刻t5にそれぞれ搬送周波数の切り替えが行われているものとする。
【0072】
まず、第1の期間についての処理を説明する。時刻t1において制御部18は受信部11の受信周波数を72GHzに設定する。中継装置1aから送信周波数72GHzで送信されたフレームは、アンテナ10より受信され、受信部11においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部70は受信されたフレームのパイロット部106に含まれるパイロット信号を参照し、中継装置1と中継装置1aの間のチャネル状態H1a(72)を推定する。チャネル補正部71は、チャネル状態の逆特性H1a−1(72)を用いてフレームのペイロード部107に対してチャネル補正を行う。結合部72は補正済みのペイロード部109とパイロット信号生成部73の生成した新たなパイロット部108を結合し、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t1において送信部12の送信周波数を85GHzに設定している。このため、送信部12はベースバンド信号を送信周波数85GHzに変換後、新たなフレームを搬送する信号をアンテナ13より中継装置1bに向けて送信する。
【0073】
同じ第1の期間において、受信部15が受信するフレームについての処理も説明する。時刻t1において制御部18は受信部15の受信周波数を72GHzに設定する。中継装置1bから送信周波数72GHzで送信されたフレームは、アンテナ14より受信され、受信部15においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部74は受信されたフレームのパイロット部110に含まれるパイロット信号を参照し、中継装置1と中継装置1bの間のチャネル状態H1b(72)を推定する。チャネル補正部75は、チャネル状態の逆特性H1b−1(72)を用いてフレームのペイロード部111に対してチャネル補正を行う。結合部76は補正済みのペイロード部113とパイロット信号生成部77の生成した新たなパイロット部112を結合し、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t1において送信部16の送信周波数を85GHzに設定している。このため、送信部16はベースバンド信号を送信周波数85GHzに変換後、新たなフレームを搬送する信号をアンテナ17より中継装置1aに向けて送信する。
【0074】
次に第2の期間における処理について説明する。時刻t2において制御部18は受信部11の受信周波数を85GHzに設定する。中継装置1aから送信周波数85GHzで送信されたフレームは、アンテナ10より受信され、受信部11においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部70は受信されたフレームのパイロット部114に含まれるパイロット信号を参照し、中継装置1と中継装置1aの間のチャネル状態H1a(85)を推定する。チャネル補正部71は、チャネル状態の逆特性H1a−1(85)を用いてフレームのペイロード部115に対してチャネル補正を行う。結合部72は補正済みのペイロード部117とパイロット信号生成部73の生成した新たなパイロット部116を結合し、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t2において送信部12の送信周波数を72GHzに設定している。このため、送信部12はベースバンド信号を送信周波数72GHzに変換後、新たなフレームを含む信号をアンテナ13より中継装置1bに向けて送信する。
【0075】
同じ第2の期間において、受信部15が受信するフレームについての処理も説明する。時刻t2において制御部18は受信部15の受信周波数を85GHzに設定する。中継装置1bから送信周波数85GHzで送信されたフレームは、アンテナ14より受信され、受信部15においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部74は受信されたフレームのパイロット部118に含まれるパイロット信号を参照し、中継装置1と中継装置1bの間のチャネル状態H1b(85)を推定する。チャネル補正部75は、チャネル状態の逆特性H1b−1(85)を用いてフレームのペイロード部119に対してチャネル補正を行う。結合部76は補正済みのペイロード部121とパイロット信号生成部77の生成した新たなパイロット部120を結合し、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t2において送信部16の送信周波数を72GHzに設定している。このため、送信部16はベースバンド信号を送信周波数72GHzに変換後、新たなフレームを含む信号をアンテナ17より中継装置1aに向けて送信する。第3の期間及び第4の期間において、中継装置1が受信するフレームについて行われる処理も、前述の第1の期間及び第2の期間における処理と同様となる。
【0076】
上記のように、受信時のチャネル状態の情報を元に逆特性を求め、ペイロード部について信号の歪みを補正(等化)することにより、伝送特性を向上(伝送信号の劣化を抑制)という効果を得ることができる。例えば、中継装置で中継される電波により搬送されるデータについて、SER(Symbol Error Rate)を低減し、より効率的なデータ転送が可能になる。
【0077】
(第3の実施形態)
図12は、第3の実施形態に係る無線通信装置としての中継装置の機能ブロック図である。第3の実施形態に係る中継処理部22は、チャネル推定部70と、結合部72と、パイロット信号生成部73と、記憶部122と、プレコーディング部(事前補正部)123とを備えている。同様に、中継処理部23は、チャネル推定部74と、結合部76と、パイロット信号生成部77と、記憶部124と、プレコーディング部(事前補正部)125とを備えている。第3の実施形態に係る中継装置のアンテナ10、受信部11、送信部12、アンテナ13、アンテナ14、受信部15、送信部16、アンテナ17及び制御部18はそれぞれ第1の実施形態に係るアンテナ10、受信部11、送信部12、アンテナ13、アンテナ14、受信部15、送信部16、アンテナ17及び制御部18とそれぞれ同等の機能を有するものとする。また第3の実施形態に係る中継装置についても、第1の実施形態に係る中継装置の局部発振器20及び局部発振器21と同等の機能を有する局部発振器を備えるものとする。
【0078】
記憶部122、124は、例えばNANDフラッシュメモリ、NORフラッシュメモリ、MRAM、ReRAM、ハードディスク、光ディスクなどの不揮発記憶デバイス又はDRAMなどの記憶デバイスのいずれか又はそれらの組み合わせから構成される。
【0079】
第3の実施形態は、搬送周波数の切り替えタイミング前に取得された受信チャネル状態に関する情報より、送信チャネル状態の推定をし、推定した送信チャネル状態を利用してプレコーディングを行う中継装置の一例である。
【0080】
図13は、第3の実施形態に係る中継装置が送信するフレームのフォーマットを表した図である。第3の実施形態に係るフレームは、データ本体を含むペイロード部とパイロットシンボルを含むパイロット部とを含む。
【0081】
図14A及び図14Bは第3の実施形態に係る中継装置がフレームに対して行う処理を表した図である。時刻t1、時刻t2、時刻t3、時刻t4及び時刻t5にそれぞれ搬送周波数の切り替えが行われているものとする。第1の期間は時刻t1と時刻t2の間を表している。第2の期間は時刻t2と時刻t3の間を表している。第3の期間は時刻t3と時刻t4の間を表している。第4の期間は時刻t4と時刻t5の間を表している。図14A及び図14Bでは、それぞれの期間について、上から下に向かう方向に、中継装置1が受信したフレームについて行われる処理の概略が示されている。以下では、図14A及び図14Bに沿って、当該フレームについて行われる処理を説明する。
【0082】
まず、第1の期間についての処理を説明する。時刻t1において制御部18は受信部11の受信周波数を72GHzに設定する。中継装置1aから送信周波数72GHzで送信されたフレームは、アンテナ10より受信され、受信部11においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部70は受信されたフレームのパイロット部130に含まれるパイロット信号を参照し、中継装置1と中継装置1aの間のチャネル状態H1a(72)を推定する。チャネル推定部70は更にチャネル状態の逆特性H1a−1(72)を求め、チャネル状態の逆特性H1a−1(72)を記憶部122に保存する。プレコーディング部123は、記憶部124に保存されている、時刻t1より前の期間における中継装置1bとの間のチャネル状態の逆特性H1b−1(82)を用いてフレームのペイロード部131に対してプレコーディング(事前補正)を行う。このプレコーディングは中継装置1bへの送信前に行われるものである。結合部72はプレコーディング部123がプレコーディングしたペイロード部132とパイロット信号生成部73の生成した新たなパイロット部133を結合し、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t1において送信部12の送信周波数を82GHzに設定している。このため、送信部12はベースバンド信号を送信周波数82GHzに変換後、新たなフレームを搬送する信号をアンテナ13より中継装置1bに向けて送信する。
【0083】
同じ第1の期間において、受信部15が受信するフレームについての処理も説明する。時刻t1において制御部18は受信部15の受信周波数を75GHzに設定する。中継装置1bから送信周波数75GHzで送信されたフレームは、アンテナ14より受信され、受信部15においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部74は受信されたフレームのパイロット部134に含まれるパイロット信号を参照し、中継装置1と中継装置1bの間のチャネル状態H1b(75)を推定する。チャネル推定部74は更にチャネル状態の逆特性H1b−1(75)を求め、チャネル状態の逆特性H1b−1(75)を記憶部124に保存する。プレコーディング部125は記憶部122に保存されている、時刻t1より前の期間における中継装置1aとの間のチャネル状態の逆特性H1a−1(85)を用いてフレームのペイロード部135に対してプレコーディングを行う。このプレコーディングは中継装置1aへの送信前に行われるものである。結合部76はプレコーディング部125がプレコーディングしたペイロード部136とパイロット信号生成部77の生成した新たなパイロット部137を結合し、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t1において送信部16の送信周波数を85GHzに設定している。このため、送信部16はベースバンド信号を送信周波数85GHzに変換後、新たなフレームを搬送する信号をアンテナ17より中継装置1aに向けて送信する。
【0084】
次に第2の期間における処理について説明する。時刻t2において制御部18は受信部11の受信周波数を85GHzに設定する。中継装置1aから送信周波数85GHzで送信されたフレームは、アンテナ10より受信され、受信部11においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部70は受信されたフレームのパイロット部138に含まれるパイロット信号を参照し、中継装置1と中継装置1aの間のチャネル状態H1a(85)を推定する。チャネル推定部70は更にチャネル状態の逆特性H1a−1(85)を求め、チャネル状態の逆特性H1a−1(85)を記憶部122に保存する。プレコーディング部123は、記憶部124に保存されている、時刻t2より前の第1の期間における中継装置1bとの間のチャネル状態の逆特性H1b−1(75)を用いてフレームのペイロード部139に対してプレコーディングを行う。このプレコーディングは中継装置1bへの送信前に行われるものである。結合部72はプレコーディング部123がプレコーディングしたペイロード部140とパイロット信号生成部73の生成した新たなパイロット部141を結合し、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t2において送信部12の送信周波数を75GHzに設定している。このため、送信部12はベースバンド信号を送信周波数75GHzに変換後、新たなフレームを搬送する信号をアンテナ13より中継装置1bに向けて送信する。
【0085】
同じ第2の期間において、受信部15が受信するフレームについての処理も説明する。時刻t2において制御部18は受信部15の受信周波数を82GHzに設定する。中継装置1bから送信周波数82GHzで送信されたフレームは、アンテナ14より受信され、受信部15においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部74は受信されたフレームのパイロット部142に含まれるパイロット信号を参照し、中継装置1と中継装置1bの間のチャネル状態H1b(82)を推定する。チャネル推定部74は更にチャネル状態の逆特性H1b−1(82)を求め、チャネル状態の逆特性H1b−1(82)を記憶部124に保存する。プレコーディング部125は記憶部122に保存されている、時刻t2より前の第1の期間における中継装置1aとの間のチャネル状態の逆特性H1a−1(72)を用いてフレームのペイロード部143に対してプレコーディングを行う。このプレコーディングは中継装置1aへの送信前に行われるものである。結合部76はプレコーディング部125がプレコーディングしたペイロード部144とパイロット信号生成部77の生成した新たなパイロット部145を結合し、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t2において送信部16の送信周波数を72GHzに設定している。このため、送信部16はベースバンド信号を送信周波数72GHzに変換後、新たなフレームを搬送する信号をアンテナ17より中継装置1aに向けて送信する。第3の期間及び第4の期間以降において、中継装置1が受信するフレームについて行われる処理も、前述の第2の期間における処理と同様となる。
【0086】
(第1の変形例)
図14A及び図14Bで示した処理では、中継装置の送受信処理において合計で4つの周波数が用いられていたが、第3の実施形態の第1の変形例として、送受信処理において合計2つの周波数を用いる場合の処理を図15A及び図15Bに示す。
【0087】
まず、第1の期間についての処理を説明する。時刻t1において制御部18は受信部11の受信周波数を72GHzに設定する。中継装置1aから送信周波数72GHzで送信されたフレームは、アンテナ10より受信され、受信部11においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部70は受信されたフレームのパイロット部150に含まれるパイロット信号を参照し、中継装置1と中継装置1aの間のチャネル状態H1a(72)を推定する。チャネル推定部70は更にチャネル状態の逆特性H1a−1(72)を求め、チャネル状態の逆特性H1a−1(72)を記憶部122に保存する。プレコーディング部123は、記憶部124に保存されている、時刻t1より前の期間における中継装置1bとの間のチャネル状態の逆特性H1b−1(85)を用いてフレームのペイロード部151に対してプレコーディングを行う。このプレコーディングは中継装置1bへの送信前に行われるものである。結合部72はプレコーディング部123がプレコーディングしたペイロード部152とパイロット信号生成部73の生成した新たなパイロット部153を結合し、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t1において送信部12の送信周波数を85GHzに設定している。このため、送信部12はベースバンド信号を送信周波数85GHzに変換後、新たなフレームを搬送する信号をアンテナ13より中継装置1bに向けて送信する。
【0088】
同じ第1の期間において、受信部15が受信するフレームについての処理も説明する。時刻t1において制御部18は受信部15の受信周波数を72GHzに設定する。中継装置1bから送信周波数72GHzで送信されたフレームは、アンテナ14より受信され、受信部15においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部74は受信されたフレームのパイロット部154に含まれるパイロット信号を参照し、中継装置1と中継装置1bの間のチャネル状態H1b(72)を推定する。チャネル推定部74は更にチャネル状態の逆特性H1b−1(72)を求め、チャネル状態の逆特性H1b−1(72)を記憶部124に保存する。プレコーディング部125は記憶部122に保存されている、時刻t1より前の期間における中継装置1aとの間のチャネル状態の逆特性H1a−1(85)を用いてフレームのペイロード部155に対してプレコーディングを行う。このプレコーディングは中継装置1aへの送信前に行われるものである。結合部76はプレコーディング部125がプレコーディングしたペイロード部156とパイロット信号生成部77の生成した新たなパイロット部157を結合し、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t1において送信部16の送信周波数を85GHzに設定している。このため、送信部16はベースバンド信号を送信周波数85GHzに変換後、新たなフレームを搬送する信号をアンテナ17より中継装置1aに向けて送信する。
【0089】
次に第2の期間における処理について説明する。時刻t2において制御部18は受信部11の受信周波数を85GHzに設定する。中継装置1aから送信周波数85GHzで送信されたフレームは、アンテナ10より受信され、受信部11においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部70は受信されたフレームのパイロット部158に含まれるパイロット信号を参照し、中継装置1と中継装置1aの間のチャネル状態H1a(85)を推定する。チャネル推定部70は更にチャネル状態の逆特性H1a−1(85)を求め、チャネル状態の逆特性H1a−1(85)を記憶部122に保存する。プレコーディング部123は、記憶部124に保存されている、時刻t2より前の第1の期間における中継装置1bとの間のチャネル状態の逆特性H1b−1(72)を用いてフレームのペイロード部159に対してプレコーディングを行う。このプレコーディングは中継装置1bへの送信前に行われるものである。結合部72はプレコーディング部123がプレコーディングしたペイロード部160とパイロット信号生成部73の生成した新たなパイロット部161を結合し、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t2において送信部12の送信周波数を72GHzに設定している。このため、送信部12はベースバンド信号を送信周波数72GHzに変換後、新たなフレームを搬送する信号をアンテナ13より中継装置1bに向けて送信する。
【0090】
同じ第2の期間において、受信部15が受信するフレームについての処理も説明する。時刻t2において制御部18は受信部15の受信周波数を85GHzに設定する。中継装置1bから送信周波数85GHzで送信されたフレームは、アンテナ14より受信され、受信部15においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部74は受信されたフレームのパイロット部162に含まれるパイロット信号を参照し、中継装置1と中継装置1bの間のチャネル状態H1b(85)を推定する。チャネル推定部74は更にチャネル状態の逆特性H1b−1(85)を求め、チャネル状態の逆特性H1b−1(85)を記憶部124に保存する。プレコーディング部125は記憶部122に保存されている、時刻t2より前の第1の期間における中継装置1aとの間のチャネル状態の逆特性H1a−1(72)を用いてフレームのペイロード部163に対してプレコーディングを行う。このプレコーディングは中継装置1aへの送信前に行われるものである。結合部76はプレコーディング部125がプレコーディングしたペイロード部164とパイロット信号生成部77の生成した新たなパイロット部165を結合し、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t2において送信部16の送信周波数を72GHzに設定している。このため、送信部16はベースバンド信号を送信周波数72GHzに変換後、新たなフレームを搬送する信号をアンテナ17より中継装置1aに向けて送信する。第3の期間及び第4の期間以降において、中継装置1が受信するフレームについて行われる処理も、前述の第2の期間における処理と同様となる。
【0091】
上記のように、以前同じ無線通信装置から受信した際に得られたチャネル状態より求めたチャネル状態の逆特性を用い、今回受信したペイロード部について送信前のプレコーディングを行うことにより、高い伝送特性を得ることができる。例えば、伝送路容量が増大するという効果を得ることができる。これにより、中継装置で中継される電波により搬送されるデータについて、効率的なデータ転送を行うことができるようになる。
【0092】
(第4の実施形態)
図16は、第4の実施形態に係る無線通信装置としての中継装置の機能ブロック図である。第4の実施形態に係る中継処理部22は、チャネル推定部70と、チャネル補正部71と、記憶部122と、プレコーディング部123と、パイロット信号生成部170と、結合部171と、パイロット信号生成部172と、結合部173とを備えている。同様に、中継処理部23は、チャネル推定部74と、チャネル補正部75と、記憶部124と、プレコーディング部125と、パイロット信号生成部174と、結合部175と、パイロット信号生成部176と、結合部177とを備えている。第4の実施形態に係る中継装置のアンテナ10、受信部11、送信部12、アンテナ13、アンテナ14、受信部15、送信部16、アンテナ17及び制御部18はそれぞれ第1の実施形態に係るアンテナ10、受信部11、送信部12、アンテナ13、アンテナ14、受信部15、送信部16、アンテナ17及び制御部18とそれぞれ同様の構成及び機能を有するものとする。また第4の実施形態に係る中継装置についても、第1の実施形態に係る中継装置の局部発振器20及び局部発振器21と同等の機能を有する局部発振器を備えるものとする。
【0093】
図17は、第4の実施形態に係る中継装置が送信するフレームのフォーマットを表した図である。第4の実施形態に係るフレームは、2つのパイロット部と、データ本体を含むペイロード部とを含む。2つのパイロット部は、それぞれ第1のパイロット信号を含むパイロット部1と、第2のパイロット信号を含むパイロット部2である。パイロット部1とペイロード部とはプリコーディングされており、パイロット部2はプリコーディングされていない場合を想定する。なお、パイロット部2とペイロード部とはプリコーディングされており、パイロット部1はプリコーディングされていない構成としてもよい。
【0094】
図18A及び図18Bは第4の実施形態に係る中継装置がフレームに対して行う処理を表した図である。時刻t1、時刻t2、時刻t3、時刻t4及び時刻t5にそれぞれ搬送周波数の切り替えが行われているものとする。第1の期間は時刻t1と時刻t2の間を表している。第2の期間は時刻t2と時刻t3の間を表している。第3の期間は時刻t3と時刻t4の間を表している。第4の期間は時刻t4と時刻t5の間を表している。図18A及び図18Bでは、それぞれの期間について、上から下に向かう方向に、中継装置1が受信したフレームについて行われる処理の概略が示されている。以下では、図18A及び図18Bに沿って、当該フレームについて行われる処理を説明する。なお、図では、プリコーディングされているパイロット部1は、“Pilot1’”と記載され、プリコーディングされる前のパイロット部1は“Pilot1”と記載されている。
【0095】
まず、第1の期間についての処理を説明する。時刻t1において制御部18は受信部11の受信周波数を72GHzに設定する。中継装置1aから送信周波数72GHzで送信されたフレームは、アンテナ10より受信され、受信部11においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部70は受信されたフレームのパイロット部1(190)に含まれる第1のパイロット信号を参照し、チャネル状態H´1a(72)を求める。この第1のパイロット信号はプリコーディングされているため、プリコーディング時に使用したチャネル状態情報からのチャネル変動の影響がH´1a(72)に含まれる。チャネル推定部70は更にパイロット部2(191)に含まれる第2のパイロット信号を参照し、中継装置1と中継装置1aの間のチャネル状態H1a(72)を推定する。この第2のパイロット信号は、プリコーディングされていないため、チャネル状態H1a(72)は、今回フレームを受信した際のチャネル状態を表す。また、チャネル推定部70はチャネル状態の逆特性H1a−1(72)を求め、チャネル状態の逆特性H1a−1(72)を記憶部124に保存する。チャネル補正部71は前記H´1a(72)の逆特性であるH´1a−1(72)を求め、H´1a−1(72)を用いてペイロード部192に対して補正を行う。結合部171は、パイロット信号生成部170の生成した新たなパイロット部1と、チャネル補正のされたペイロード部とを結合する。プレコーディング部123は、記憶部122に保存されている、時刻t1より前の期間における中継装置1bとの間のチャネル状態の逆特性H1b−1(82)を用いて、チャネル補正のされたペイロード部と、新たなパイロット部1とに対してプレコーディングを行う。このプレコーディングは中継装置1bへの送信前に行われるものである。結合部173はパイロット信号生成部172が生成したパイロット部2を、プレコーディングされたパイロット部1及びプレコーディングされたペイロード部間に挿入することにより、新たなフレームを構成する。なお、この挿入されたパイロット部2はプリコーディングされていない。制御部18は時刻t1において送信部12の送信周波数を82GHzに設定している。このため、送信部12はベースバンド信号を送信周波数82GHzに変換後、新たなフレームを搬送する信号をアンテナ13より中継装置1bに向けて送信する。
【0096】
同じ第1の期間において、受信部15が受信するフレームについての処理も説明する。時刻t1において制御部18は受信部15の受信周波数を75GHzに設定する。中継装置1bから送信周波数75GHzで送信されたフレームは、アンテナ14より受信され、受信部15においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部74は受信されたフレームのパイロット部1(193)に含まれる第1のパイロット信号を参照し、チャネル状態H´1b(75) を求める。チャネル推定部74は更にパイロット部2(194)に含まれる第2のパイロット信号を参照し、チャネル状態H1b(75)を推定する。また、チャネル推定部74はチャネル状態の逆特性H1b−1(75)を求め、チャネル状態の逆特性H1b−1(75)を記憶部122に保存する。チャネル補正部71は前記H´1b(75)の逆特性であるH´1b−1(75)を求め、H´1b−1(75)を用いてペイロード部195に対して補正を行う。結合部175は、パイロット信号生成部174の生成した新たなパイロット部1と、チャネル補正のされたペイロード部とを結合する。プレコーディング部125は、記憶部124に保存されている、時刻t1より前の期間における中継装置1aとの間のチャネル状態の逆特性H1a−1(85)を用いて、チャネル補正のされたペイロード部と新たなパイロット部1に対してプレコーディングを行う。このプレコーディングは中継装置1bへの送信前に行われるものである。結合部177はパイロット信号生成部176が生成したパイロット部2を、プレコーディングされたパイロット部1及びプレコーディングされたペイロード部間に挿入することにより、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t1において送信部16の送信周波数を85GHzに設定している。このため、送信部16はベースバンド信号を送信周波数85GHzに変換後、新たなフレームを搬送する信号をアンテナ17より中継装置1aに向けて送信する。
【0097】
次に第2の期間における処理について説明する。時刻t2において制御部18は受信部11の受信周波数を85GHzに設定する。中継装置1aから送信周波数85GHzで送信されたフレームは、アンテナ10より受信され、受信部11においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部70は受信されたフレームのパイロット部1(196)に含まれる第1のパイロット信号を参照し、チャネル状態H´1a(85)を求める。チャネル推定部70は更にパイロット部2(197)に含まれる第2のパイロット信号を参照し、中継装置1と中継装置1aの間のチャネル状態H1a(85)を推定する。また、チャネル推定部70はチャネル状態の逆特性H1a−1(85)を求め、チャネル状態の逆特性H1a−1(85)を記憶部124に保存する。チャネル補正部71は前記H´1a(85)の逆特性であるH´1a−1(85)を求め、H´1a−1(85)を用いてペイロード部198に対して補正を行う。結合部171は、パイロット信号生成部170の生成した新たなパイロット部1と、チャネル補正のされたペイロード部とを結合する。プレコーディング部123は、記憶部122に保存されている、時刻t2より前の第1の期間における中継装置1bとの間のチャネル状態の逆特性H1b−1(75)を用いて、チャネル補正のされたペイロード部と新たなパイロット部1に対してプレコーディングを行う。このプレコーディングは中継装置1bへの送信前に行われるものである。結合部173はパイロット信号生成部172が生成したパイロット部2を、プレコーディングされたパイロット部1及びプレコーディングされたペイロード部間に挿入することにより、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t2において送信部12の送信周波数を75GHzに設定している。このため、送信部12はベースバンド信号を送信周波数75GHzに変換後、新たなフレームを搬送する信号をアンテナ13より中継装置1bに向けて送信する。
【0098】
同じ第2の期間において、受信部15が受信するフレームについての処理も説明する。時刻t2において制御部18は受信部15の受信周波数を82GHzに設定する。中継装置1bから送信周波数82GHzで送信されたフレームは、アンテナ14より受信され、受信部15においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部74は受信されたフレームのパイロット部1(199)に含まれる第1のパイロット信号を参照し、チャネル状態H´1b(82) を求める。チャネル推定部74は更にパイロット部2(200)に含まれる第2のパイロット信号を参照し、中継装置1と中継装置1bの間のチャネル状態H1b(82)を推定する。また、チャネル推定部74はチャネル状態の逆特性H1b−1(82)を求め、チャネル状態の逆特性H1b−1(82)を記憶部122に保存する。チャネル補正部71は前記H´1b(82)の逆特性であるH´1b−1(82)を求め、H´1b−1(82)を用いてペイロード部201に対して補正を行う。結合部175は、パイロット信号生成部174の生成した新たなパイロット部1と、チャネル補正のされたペイロード部とを結合する。プレコーディング部125は、記憶部124に保存されている、時刻t2より前の第1の期間における中継装置1aとの間のチャネル状態の逆特性H1a−1(72)を用いて、チャネル補正のされたペイロード部と新たなパイロット部1に対してプレコーディングを行う。このプレコーディングは中継装置1bへの送信前に行われるものである。結合部177はパイロット信号生成部176が生成したパイロット部2を、プレコーディングされたパイロット部1及びプレコーディングされたペイロード部間に挿入することにより、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t2において送信部16の送信周波数を72GHzに設定している。このため、送信部16はベースバンド信号を送信周波数72GHzに変換後、新たなフレームを搬送する信号をアンテナ17より中継装置1aに向けて送信する。
【0099】
上記のように、プレコーディングされているパイロット信号によりチャネル状態を算出し、算出したチャネル状態を元に逆特性を求める。そして、当該逆特性の情報を利用して、同じくプレコーディングされているペイロード部について信号の歪みを補正する。更に以前同じ無線通信装置から受信をした際に得られたチャネル状態より求めたチャネル状態の逆特性を用いてパイロット信号および補正されたペイロード部のプレコーディングを行う。これにより、中継の伝送特性をより一層高めることができる。例えば、搬送されるデータについて、SER(Symbol Error Rate)を低減すると同時に、伝送路容量が増大するという効果を得ることができる。これにより、中継装置で中継される電波により搬送されるデータについて、効率的なデータ転送を行うことができるようになる。
【0100】
(第5の実施形態)
第5の実施形態に係る無線通信装置としての中継装置の機能ブロック図は、第4の実施形態と同じ図16である。
【0101】
図19は、第5の実施形態に係る中継装置が送信するフレームのフォーマットを表した図である。第5の実施形態に係るフレームは、第1のパイロット信号を含むパイロット部1と、データを含むペイロード部と、第3のパイロット信号を含むパイロット部3とを含む。パイロット部3をフレームの最後尾に配置することにより、より最新の伝搬路の状況を反映させることができるため、フレームの先頭に配置する場合に比べプレコーディングをしたときにチャネル状態の推定精度を上げることができる。
【0102】
図20A及び図20Bは第5の実施形態に係る中継装置がフレームに対して行う処理を表した図である。時刻t1、時刻t2、時刻t3、時刻t4及び時刻t5にそれぞれ搬送周波数の切り替えが行われているものとする。第1の期間は時刻t1と時刻t2の間を表している。第2の期間は時刻t2と時刻t3の間を表している。第3の期間は時刻t3と時刻t4の間を表している。第4の期間は時刻t4と時刻t5の間を表している。図20A及び図20Bでは、それぞれの期間について、上から下に向かう方向に、中継装置1が受信したフレームについて行われる処理の概略が示されている。以下では、図20A及び図20Bに沿って、当該フレームについて行われる処理を説明する。なお、図では、プリコーディングされているパイロット部1は、“Pilot1’”と記載され、プリコーディングされる前のパイロット部1は“Pilot1”と記載されている。
【0103】
まず、第1の期間についての処理を説明する。時刻t1において制御部18は受信部11の受信周波数を72GHzに設定する。中継装置1aから送信周波数72GHzで送信されたフレームは、アンテナ10より受信され、受信部11においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部70は受信されたフレームのパイロット部1(210)に含まれる第1のパイロット信号を参照し、チャネル状態H´1a(72)を求める。チャネル推定部70は更にパイロット部3(211)に含まれる第3のパイロット信号を参照し、中継装置1と中継装置1aの間のチャネル状態H1a(72)を推定する。また、チャネル推定部70はチャネル状態の逆特性H1a−1(72)を求め、チャネル状態の逆特性H1a−1(72)を記憶部124に保存する。チャネル補正部71は前記H´1a(72)の逆特性であるH´1a−1(72)を求め、H´1a−1(72)を用いてペイロード部212に対して補正を行う。結合部171は、パイロット信号生成部170の生成した新たなパイロット部1と、チャネル補正のされたペイロード部とを結合する。プレコーディング部123は、記憶部122に保存されている、時刻t1より前の期間における中継装置1bとの間のチャネル状態の逆特性H1b−1(82)を用いて、チャネル補正のされたペイロード部と新たなパイロット部1に対してプレコーディングを行う。このプレコーディングは中継装置1bへの送信前に行われるものである。結合部173はパイロット信号生成部172が生成したパイロット部3を、プレコーディングされたパイロット部1及びプレコーディングされたペイロード部の後に結合することにより、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t1において送信部12の送信周波数を82GHzに設定している。このため、送信部12はベースバンド信号を送信周波数82GHzに変換後、新たなフレームを搬送する信号をアンテナ13より中継装置1bに向けて送信する。
【0104】
同じ第1の期間において、受信部15が受信するフレームについての処理も説明する。時刻t1において制御部18は受信部15の受信周波数を75GHzに設定する。中継装置1bから送信周波数75GHzで送信されたフレームは、アンテナ14より受信され、受信部15においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部74は受信されたフレームのパイロット部1(213)に含まれる第1のパイロット信号を参照し、チャネル状態H´1b(75) を求める。チャネル推定部74は更にパイロット部3(214)に含まれる第3のパイロット信号を参照し、チャネル状態H1b(75)を推定する。また、チャネル推定部74はチャネル状態の逆特性H1b−1(75)を求め、チャネル状態の逆特性H1b−1(75)を記憶部122に保存する。チャネル補正部71は前記H´1b(75)の逆特性であるH´1b−1(75)を求め、H´1b−1(75)を用いてペイロード部215に対して補正を行う。結合部175は、パイロット信号生成部174の生成した新たなパイロット部1と、チャネル補正のされたペイロード部とを結合する。プレコーディング部125は、記憶部124に保存されている、時刻t1より前の期間における中継装置1aとの間のチャネル状態の逆特性H1a−1(85)を用いて、チャネル補正のされたペイロード部と新たなパイロット部1に対してプレコーディングを行う。このプレコーディングは中継装置1bへの送信前に行われるものである。結合部177はパイロット信号生成部176が生成したパイロット部3を、プレコーディングされたパイロット部1及びプレコーディングされたペイロード部の後に結合することにより、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t1において送信部16の送信周波数を85GHzに設定している。このため、送信部16はベースバンド信号を送信周波数85GHzに変換後、新たなフレームを搬送する信号をアンテナ17より中継装置1aに向けて送信する。
【0105】
次に第2の期間における処理について説明する。時刻t2において制御部18は受信部11の受信周波数を85GHzに設定する。中継装置1aから送信周波数85GHzで送信されたフレームは、アンテナ10より受信され、受信部11においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部70は受信されたフレームのパイロット部1(216)に含まれる第1のパイロット信号を参照し、チャネル状態H´1a(85)を求める。チャネル推定部70は更にパイロット部3(217)に含まれる第3のパイロット信号を参照し、チャネル状態H1a(85)を推定する。また、チャネル推定部70はチャネル状態の逆特性H1a−1(85)を求め、チャネル状態の逆特性H1a−1(85)を記憶部124に保存する。チャネル補正部71は前記H´1a(85)の逆特性であるH´1a−1(85)を求め、H´1a−1(85)を用いてペイロード部215に対して補正を行う。結合部171は、パイロット信号生成部170の生成した新たなパイロット部1と、チャネル補正のされたペイロード部とを結合する。プレコーディング部123は、記憶部122に保存されている、時刻t2より前の第1の期間における中継装置1bとの間のチャネル状態の逆特性H1b−1(75)を用いて、チャネル補正のされたペイロード部と新たなパイロット部1に対してプレコーディングを行う。このプレコーディングは中継装置1bへの送信前に行われるものである。結合部173はパイロット信号生成部172が生成したパイロット部3を、プレコーディングされたパイロット部1及び事前補正されたペイロード部に結合することにより、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t2において送信部12の送信周波数を75GHzに設定している。このため、送信部12はベースバンド信号を送信周波数75GHzに変換後、新たなフレームを搬送する信号をアンテナ13より中継装置1bに向けて送信する。
【0106】
同じ第2の期間において、受信部15が受信するフレームについての処理も説明する。時刻t2において制御部18は受信部15の受信周波数を82GHzに設定する。中継装置1bから送信周波数82GHzで送信されたフレームは、アンテナ14より受信され、受信部15においてベースバンド信号の用いる中間周波数へ変換される。チャネル推定部74は受信されたフレームのパイロット部1(219)に含まれる第1のパイロット信号を参照し、チャネル状態H´1b(82)を求める。チャネル推定部74は更にパイロット部3(220)に含まれる第3のパイロット信号を参照し、中継装置1と中継装置1bの間のチャネル状態H1b(82)を推定する。また、チャネル推定部74はチャネル状態の逆特性H1b−1(82)を求め、チャネル状態の逆特性H1b−1(82)を記憶部122に保存する。チャネル補正部71は前記H´1b(82)の逆特性であるH´1b−1(82)を求め、H´1b−1(82)を用いてペイロード部221に対して補正を行う。結合部175は、パイロット信号生成部174の生成した新たなパイロット部1と、チャネル補正のされたペイロード部とを結合する。プレコーディング部125は、記憶部124に保存されている、時刻t2より前の第1の期間における中継装置1aとの間のチャネル状態の逆特性H1a−1(72)を用いて、チャネル補正のされたペイロード部と新たなパイロット部1に対してプレコーディングを行う。このプレコーディングは中継装置1bへの送信前に行われるものである。結合部177はパイロット信号生成部176が生成したパイロット部3を、プレコーディングされたパイロット部1及びプレコーディングされたペイロード部に結合することにより、新たなフレームを構成する。制御部18は時刻t2において送信部16の送信周波数を72GHzに設定している。このため、送信部16はベースバンド信号を送信周波数72GHzに変換後、新たなフレームを搬送する信号をアンテナ17より中継装置1aに向けて送信する。
【0107】
上記のように、パイロット部(パイロット部3)をフレームの末尾に配置したことにより、より近い時点での伝搬路の状況を考慮したプレコーディングが可能となる。よって、第4の実施形態の効果をより高めることができる。
【0108】
(第6の実施形態)
図21は、第6の実施形態に係る無線通信装置としての中継装置の機能ブロック図である。第6の実施形態に係る中継処理部22は、チャネル推定部70と、チャネル補正部71と、記憶部122と、プレコーディング部123と、パイロット信号生成部170と、結合部171と、パイロット信号生成部172と、結合部173と、多重部270を備えている。同様に、中継処理部23は、チャネル推定部74と、チャネル補正部75と、記憶部124と、プレコーディング部125と、パイロット信号生成部174と、結合部175と、パイロット信号生成部176と、結合部177と、分離部272とを備えている。第6の実施形態に係る中継装置は更に入力端子を有する変調部271と、出力端子を有する復調部273とを備えている。変調部271は多重部270に、復調部273は分離部272にそれぞれ電気的に接続されている。第6の実施形態に係る中継装置のアンテナ10、受信部11、送信部12、アンテナ13、アンテナ13、受信部15、送信部16、アンテナ17及び制御部18はそれぞれ第1の実施形態に係るアンテナ10、受信部11、送信部12、アンテナ13、アンテナ14、受信部15、送信部16、アンテナ17及び制御部18とそれぞれ同等の機能を有するものとする。また第6の実施形態に係る中継装置についても、第1の実施形態に係る中継装置の局部発振器20及び局部発振器21と同等の機能を有する局部発振器を備えるものとする。変調部271および復調部273の少なくとも一方は、CPU等のプロセッサにプログラムを実行させることによりソフトウェアで実現してもよいし、専用のハードウェア回路又はプログラム可能な回路によって実現してもよいし、これらの両方によって実現してもよい。
【0109】
図22は、本実施形態に係る無線中継ネットワークの一例を示している。無線中継ネットワークは、中継装置1と基地局280とを備える。中継装置1と基地局280は、支持部材285によってセル283内の領域の上方で支持されている。基地局280は、セル283内に位置する端末局284とデータの送受信を行うことができる。中継装置1の入力端子は基地局280の上りリンク処理部281に接続されている。中継装置1の出力端子は基地局280の下りリンク処理部282に接続されている。基地局280の上りリンク処理部281から出力された上りリンク信号は中継装置1の入力端子から中継装置1に入力される。上りリンク信号は図21の変調部271で変調後、多重部270で中継信号に多重される。上りリンク処理部281および下りリンク処理部282の少なくとも一方は、CPU等のプロセッサにプログラムを実行させることによりソフトウェアで実現してもよいし、専用のハードウェア回路又はプログラム可能な回路によって実現してもよいし、これらの両方によって実現してもよい。
【0110】
一方、下りリンクについては、図21の分離部272において下りリンク信号に該当する範囲が分離または複製され、復調部273に渡される。復調部273は信号を復調し、復調された下りリンク信号は出力端子から出力される。下りリンク信号は基地局280の下りリンク処理部282に入力される。下りリンク処理部282は下りリンク処理を実行し、端末局284に向けて下り信号を送信する。このように中継装置と基地局を接続することにより、複数の基地局の上りリンク信号及び下りリンク信号の双方を多重した上で、基地局280に係るセル283の範囲外となる離れた場所へデータを中継することができる。
【0111】
(第7の実施形態)
図23は、第7の実施形態に係る無線通信装置としての中継装置の機能ブロック図である。第7の実施形態に係る中継処理部22の構成は第6の実施形態と同様である。中継処理部23は、同期捕捉部290が存在する点を除けば、第6の実施形態の中継処理部23と同様の構成である。第7の実施形態に係る中継装置のアンテナ10、受信部11、送信部12、アンテナ13、アンテナ14、受信部15、送信部16、アンテナ17、制御部18、変調部271及び復調部273はそれぞれ第1の実施形態に係るアンテナ10、受信部11、送信部12、アンテナ13、アンテナ14、受信部15、送信部16、アンテナ17及び制御部18とそれぞれ同等の機能を有するものとする。また第7の実施形態に係る中継装置についても、第1の実施形態に係る中継装置の局部発振器20及び局部発振器21と同等の機能を有する局部発振器を備えるものとする。
【0112】
第7の実施形態における同期捕捉部290により、中継装置1の搬送周波数切り替えタイミングを他の中継装置又は無線通信装置と同期させることができる。同期捕捉部290の動作の具体的な処理を以下に記述する。同期捕捉部290は、フレーム先頭に配置されたパイロット部を参照し、シリアルサーチ、マッチト・フィルタなどの処理を用いて同期捕捉を行い、フレーム境界を検出する。同期捕捉部290が検出したフレーム境界は制御部18へ通知される。制御部18はフレーム境界検出通知を受けたら、局部発振器20、局部発振器21、受信部11、送信部12、受信部15及び送信部16の各部への設定変更を行い、送信周波数及び受信周波数の切り替え処理を実行する。搬送周波数切り替えの対象は送信周波数又は受信周波数のいずれか1つでも、送信周波数及び受信周波数の両方でもよいものとする。第7の実施形態の構成及び方法は一例であり、他の構成及び方法を用いることができる。例えば、特定のフレームを複数回連続して受信したら、送信周波数及び受信周波数の切り替え処理を実行する方法を用いてもよい。
【0113】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、各実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1、1a、1b 無線中継装置(無線通信装置)
2 計算機
3、4、5、6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j 端末装置(無線通信装置)
3a、3b、4a、5a、10、10b、13、13a、14、14a、17、17b アンテナ
11、15 受信部
11A、12A、15A、16A ミキサ
11B、12B、15B、16B フィルタ
11C、12C、15C、16C 増幅器
12、16 送信部
18 制御部
18A 同期部
18B 時刻管理部
20、21 局部発振器
22、23 中継処理部
24 アンテナの組み合わせ
25 通信路の組み合わせ
70、74 チャネル推定部
71、75 チャネル補正部
72、76、171、173、175、177 結合部
73、77、170、172、174,176 パイロット信号生成部
90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、130、133,134,137,138,141,142,145、150、153、154、157、158、161、162,165 パイロット部
91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、131、132、135、136、139、140、143、144、151、152、155、156、159、160、163、164、192、195、198、201、212、215、218、221 ペイロード部
122、124 記憶部
123、125 プレコーディング部
190、193、196、199、210、213、216、219 パイロット部1
191、194、197、200 パイロット部2
211、214、217、220 パイロット部3
270 多重部
271 変調部
272 分離部
273 復調部
280 基地局
281 上りリンク処理部
282 下りリンク処理部
283 セル
284 端末局
285 支持部材
290 同期捕捉部
301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、601、602、603、604、605、606、607、608、609、610、611、612、613、614、615、616 信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
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図14A
図14B
図15A
図15B
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図18A
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図20A
図20B
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図23