(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明をその例示的な実施形態を通して説明する。
【0011】
図1には、本発明の第1実施形態のインプリント装置1の構成が示されている。この実施形態では、インプリント装置1は、原版17としてのマスターモールドを使って部材18としてのブランクモールドの上にパターンを形成するインプリント装置として構成されている。しかしながら、インプリント装置1は、原版17としてのモールド(例えば、レプリカモールド)を使って部材18としての基板の上にパターンを形成するインプリント装置として構成されてもよい。インプリント装置1は、部材18の上のインプリント材に原版17を接触させ該インプリント材を硬化させることによって部材18の上に該インプリント材の硬化物からなるパターンを形成する。
【0012】
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物でありうる。これらのうち、光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材は、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に配置されうる。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。部材18としてのブランクモールドおよび原版17としてのマスターモールドは、例えば、石英で構成されうる。
【0013】
本明細書および添付図面では、部材18の表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系において方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転をそれぞれθX、θY、θZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御または駆動を意味する。また、θX軸、θY軸、θZ軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な軸の周りの回転、Y軸に平行な軸の周りの回転、Z軸に平行な軸の周りの回転に関する制御または駆動を意味する。また、位置は、X軸、Y軸、Z軸の座標に基づいて特定されうる情報であり、姿勢は、θX軸、θY軸、θZ軸の値で特定されうる情報である。位置決めは、位置および/または姿勢を制御することを意味する。位置合わせは、部材18および原版17の少なくとも一方の位置および/または姿勢の制御を含みうる。
【0014】
インプリント装置1は、原版17を位置決めする原版位置決め機構6、および、部材18を位置決めする部材位置決め機構11を備えている。原版位置決め機構6は、原版17を保持する原版チャック7と、原版チャック7を駆動することによって原版17を駆動する原版駆動機構8とを含みうる。部材位置決め機構11は、部材18を保持する部材チャック12と、部材チャック12を駆動することによって部材18を駆動する部材駆動機構13とを含みうる。
【0015】
原版位置決め機構6および部材位置決め機構11は、原版17と部材18との相対位置が調整されるように原版17および部材18の少なくとも一方を駆動する駆動機構を構成する。該駆動機構による相対位置の調整は、部材18の上のインプリント材に対する原版17の接触、および、インプリント材の硬化物からの原版17の分離のための駆動を含む。原版位置決め機構6は、原版17を複数の軸(例えば、Z軸、θX軸、θY軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。部材位置決め機構11は、部材18を複数の軸(例えば、X軸、Y軸、θZ軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。
【0016】
インプリント装置1は、原版17のパターン領域(パターンを有する領域)の形状を補正する形状補正機構9を備えうる。形状補正機構9は、原版17の側面に対して力を加えることによって原版17のパターン領域の形状を補正しうる。インプリント装置1は、部材18の上のインプリント材と原版17とが接触した状態でインプリント材を硬化させる硬化部2を備えうる。硬化部2は、例えば、硬化用のエネルギーとしての光3を発生させる光源4と、光源4からの光3を調整する光学系5とを含みうる。
【0017】
インプリント装置1は、その他、ディスペンサ14、アライメント計測器16、変形機構50、ベース定盤19、ブリッジ定盤20、支柱21および制御部10を備えうる。ディスペンサ14は、部材位置決め機構11によって部材18が駆動された状態で部材18の上にインプリント材15を吐出することによって部材18のパターン形成領域にインプリント材15を配置する。アライメント計測器16は、部材18および原版17に設けられたアライメントマークの位置を計測することによって、部材18のパターン形成領域と原版17のパターン領域との相対位置および相対回転を計測する。
【0018】
変形機構50は、原版17に設けられたキャビティと原版チャック7とによって形成される圧力制御空間22の圧力を制御することによって原版17を部材18に向かって凸形状になるように変形させ、または、その変形量を制御する。ベース定盤19は、部材位置決め機構11を支持する。ブリッジ定盤20は、原版位置決め機構6、硬化部2およびディスペンサ14を支持する。支柱21は、ブリッジ定盤20を支持する。
【0019】
制御部10は、原版位置決め機構6、部材位置決め機構11、硬化部2、ディスペンサ14、アライメント計測器16および変形機構50、ならびに、後述の搬送機構26、30、位置決め機構(プリアライナ)27、31等を制御する。制御部10は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、又は、プログラムが組み込まれた汎用コンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成されうる。
【0020】
図2には、原版17の搬送経路に関連する構成要素である原版ロードポート25、搬送機構26、計測器39、位置決め機構(プリアライナ)27および原版チャック7が模式的に示されている。原版ロードポート25に配置された原版17は、搬送機構26によってインプリント装置1のハウジング24内にロード(取り込み)される。搬送機構26によってインプリント装置1のハウジング24内にロードされた原版17は、計測器39による計測位置に搬送され、計測器39によって原版17の計測対象領域の高さが計測される。制御部10は、計測器39によって計測された結果に基づいて、原版17が正しい原版であり、かつ、正しい姿勢で原版ロードポート25からロードされたかどうかを判断する。原版17が正しい原版であり、かつ、正しい姿勢で原版ロードポート25からロードされたと制御部10によって判断された場合は、原版17は、搬送機構26によって位置決め機構27に搬送され、位置決め機構27によって位置決めされる。その後、原版17は、搬送機構26によって原版位置決め機構6の原版チャック7に搬送され、原版チャック7によって保持される。
【0021】
図3には、部材18の搬送経路に関連する構成要素である部材ロードポート29、搬送機構30、計測器40、位置決め機構(プリアライナ)31および部材チャック12が模式的に示されている。部材ロードポート29に配置された部材18は、搬送機構30によってインプリント装置1のハウジング24内にロードされる。搬送機構30によってインプリント装置1のハウジング24内にロードされた部材18は、計測器40による計測位置に搬送され、計測器40によって部材18の計測対象領域の高さが計測される。制御部10は、計測器40によって計測された結果に基づいて、部材18が正しい部材であり、かつ、正しい姿勢で部材ロードポート29からロードされたかどうかを判断する。部材18が正しい部材であり、かつ、正しい姿勢で部材ロードポート29からロードされたと制御部10によって判断された場合は、部材18は、搬送機構30によって位置決め機構31に搬送され、位置決め機構31によって位置決めされる。その後、部材18は、搬送機構30によって部材位置決め機構11の部材チャック12に搬送され、部材チャック12によって保持される。
【0022】
図4には、原版17(マスターモールド)の構造が例示されている。
図4(a)は、原版17の斜視図であり、
図4(b)は、原版17の断面図である。原版17は、パターン面35を有し、パターン面35のパターン領域にパターン34が形成されている。パターン34は、パターン面35に形成された凹部によって構成されうる。原版17は、パターン面35の反対側に、原版チャック7によって保持される保持面36を有する。また、原版17は、保持面36の側にキャビティ32を有する。キャビティ32は、原版チャック7とともに圧力制御空間22を形成する。計測器39によって高さが計測される領域である計測対象領域MTRAは、原版17におけるキャビティ32を有する領域とされうる。
【0023】
図5には、部材18(ブランクモールド)の構造が例示されている。
図5(a)は、部材18の斜視図であり、
図5(b)は、部材18の断面図である。部材18は、パターン形成面37を有し、パターン形成面37には、原版17を用いてインプリント材によって原版17のパターンが転写される。これによって、レプリカモールドが得られる。部材18は、パターン形成面37の反対側に、部材チャック12によって保持される保持面38を有する。また、部材18は、保持面38の側にキャビティ33を有する。キャビティ33は、部材18がレプリカモールドとして使用されるときに、原版チャックともに圧力制御空間を形成し、部材18を変形させるために使用されうる。計測器40によって高さが計測される領域である計測対象領域MTRBは、部材18におけるキャビティ33を有する領域とされうる。部材18は、パターン形成面37に密着層が塗布された状態でインプリント装置1にロードされうる。
【0024】
図6には、計測器39によって原版17の計測対象領域MTRAの高さを計測する様子が模式的に示されている。ここで、高さは、Z軸方向の位置である。原版17は、
図1に示されるように、パターン面35が下方(部材18に対面する方向)に向いた姿勢で使用される。したがって、原版17は、パターン面35が下方(部材18に対面する方向)に向いた姿勢で原版ロードポート25に提供され、インプリント装置1のハウジング24の中にロードされるべきである。しかしながら、人為的ミスなどによって、パターン面35が上方に向いた姿勢で原版17が原版ロードポート25に提供される可能性がある。また、人為的ミスなどによって、原版17の代わりに部材18が原版ロードポート25に提供される可能性もある。
【0025】
そこで、計測器39によって原版17の計測対象領域MTRA(または、不明な物体における、計測対象領域MTRAに対応する領域)の高さが計測される。そして、その計測結果に基づいて、制御部10によって、原版17が正しい原版であり、かつ、正しい姿勢で原版ロードポート25からロードされたかどうかが判断される。
【0026】
図6(a)には、原版17が正しい原版であり、かつ、正しい姿勢で原版ロードポート25からロードされた場合における計測器39による計測の様子が模式的に示されている。この例では、計測器39は、計測器39の基準位置と原版17の計測対象領域MTRA(計測器39に最も近い面)との距離D1を計測対象領域MTRAの高さとして計測する。計測器39は、例えば、計測光を計測対象領域MTRAに斜入射させ、計測対象領域MTRAで反射された計測光が計測器39に入射する位置に基づいて計測対象領域MTRAの高さを計測しうる。なお、計測対象領域MTRAの2つの面のうちキャビティ32側の面でも計測光が反射されうるが、計測器39は、このような計測光を無視することができるように構成されうる。制御部10は、計測器39による計測結果(計測対象領域MTRAの高さ)が合格基準を満たす場合(合格範囲内である場合)には、原版17が正しい原版であり、かつ、正しい姿勢で原版ロードポート25からロードされたと判断することができる。
【0027】
図6(b)には、原版17が正しい原版であるが、誤った姿勢(上下逆さま)で原版ロードポート25からロードされた場合における計測器39による計測の様子が模式的に示されている。計測器39は、このような場合において、合格基準を満たさない計測結果を出力するように調整されている。なお、計測エラーについても、計測結果の一種として考えることにする。
図6(b)に示された例では、計測器39からの計測光が計測対象領域MTRAの2つの面のうちキャビティ32側の面で反射され、反射された計測光が計測器39に戻らず、計測エラーが発生する。制御部10は、計測器39による計測結果(計測対象領域MTRAの高さ)が合格基準を満たさない場合に、原版17が誤った状態でロードされたと判断することができる。
【0028】
制御部10は、計測器39による計測結果が合格基準を満たさない場合に、エラー処理を実行する。エラー処理は、例えば、ロードされた原版17を正しい原版として扱うことを停止する処理を含みうる。あるいは、エラー処理は、後述のように、ロードされた原版17の姿勢を反転させる処理を含みうる。
【0029】
図7には、計測器40によって部材18の計測対象領域MTRBの高さを計測する様子が模式的に示されている。ここで、高さは、Z軸方向の位置である。部材18は、
図1に示されるように、パターン形成面37が上方(原版17に対面する方向)に向いた姿勢で使用される。したがって、部材18は、パターン形成面37が上方(原版17に対面する方向)に向いた姿勢で部材ロードポート29に提供され、インプリント装置1のハウジング24の中にロードされるべきである。しかしながら、人為的ミスなどによって、パターン形成面37が下方に向いた姿勢で部材18が部材ロードポート29に提供される可能性がある。また、人為的ミスなどによって、部材18の代わりに原版17が部材ロードポート29に提供される可能性もある。
【0030】
そこで、計測器40によって部材18の計測対象領域MTRB(または、不明な物体における、計測対象領域MTRBに対応する領域)の高さが計測される。そして、その計測結果に基づいて、制御部10によって、部材18が正しい部材であり、かつ、正しい姿勢で部材ロードポート29からロードされたかどうかが判断される。
【0031】
図7(a)には、部材18が正しい部材であり、かつ、正しい姿勢で部材ロードポート29からロードされた場合における計測器40による計測の様子が模式的に示されている。この例では、計測器40は、計測器40の基準位置と部材18の計測対象領域MTRB(計測器40に最も近い面)との距離D2を計測対象領域MTRBの高さとして計測する。計測器40は、例えば、計測光を計測対象領域MTRBに斜入射させ、計測対象領域MTRBで反射された計測光が計測器40に入射する位置に基づいて計測対象領域MTRBの高さを計測しうる。なお、計測対象領域MTRBの2つの面のうちキャビティ33側の面でも計測光が反射されうるが、計測器40は、このような計測光を無視することができるように構成されうる。制御部10は、計測器40による計測結果(計測対象領域MTRBの高さ)が合格基準を満たす場合(合格範囲内である場合)には、部材18が正しい部材であり、かつ、正しい姿勢で部材ロードポート29からロードされたと判断することができる。
【0032】
図7(b)には、部材18が正しい部材であるが、誤った姿勢(上下逆さま)で部材ロードポート29からロードされた場合における計測器40による計測の様子が模式的に示されている。計測器40は、このような場合において、合格基準を満たさない計測結果を出力するように調整されている。なお、計測エラーについても、計測結果の一種として考えることにする。
図7(b)に示された例では、計測器40からの計測光が計測対象領域MTRBの2つの面のうちキャビティ33側の面で反射され、反射された計測光が計測器40に戻らず、計測エラーが発生する。制御部10は、計測器40による計測結果(計測対象領域MTRBの高さ)が合格基準を満たさない場合に、部材18が誤った状態でロードされたと判断することができる。
【0033】
制御部10は、計測器40による計測結果が合格基準を満たさない場合に、エラー処理を実行する。エラー処理は、例えば、ロードされた部材18を正しい部材として扱うことを停止する処理を含みうる。あるいは、エラー処理は、後述のように、ロードされた部材18の姿勢を反転させる処理を含みうる。
【0034】
図8には、原版17が原版ロードポート25に配置されてからインプリント処理がなされるまでの原版17の搬送に関連する処理が示されている。この処理は、制御部10によって制御される。S901では、キャリアに収納された原版17が原版ロードポート25に作業者によって配置される。S902では、原版ロードポート25によりキャリアが開けられ、搬送機構26のハンドにより原版17が把持(保持)される。S903では、搬送機構26によって、原版17が計測器39に搬送される。ここで、搬送機構26は、計測器39によって原版17の計測対象領域MTRAの高さを計測可能な位置に原版17を搬送し位置決めする。
【0035】
S904では、搬送機構26のハンドによって原版17が把持されたままで、計測器39によって原版17の計測対象領域MTRAの高さが計測される。S905では、計測器39による計測結果が合格基準を満たすか否かが判断され、満たす場合にはS906に進み、満たさない場合にはS910に進む。S906では、搬送機構26によって原版17が位置決め機構27に搬送され、S907では、位置決め機構27によって原版17が位置決めされ、S908では、搬送機構26によって原版17が原版位置決め機構6の原版チャック7に搬送される。S909では、インプリント処理がなされる。インプリント処理は、部材18の上にインプリント材を配置し、そのインプリント材に原版17を接触させ、そのインプリント材を硬化させることによってインプリント材の硬化物からなるパターンを形成し、そのパターンから原版17を分離する処理である。S910では、エラー処理がなされる。エラー処理は、例えば、ロードされた原版17を正しい原版として扱うことを停止する処理を含みうる。より具体的には、エラー処理は、原版17の搬送を停止する処理、または、原版17をキャリアに戻す処理等を含みうる。
【0036】
図9には、部材18が部材ロードポート29に配置されてからインプリント処理がなされるまでの部材18の搬送に関連する処理が示されている。この処理は、制御部10によって制御される。S1001では、キャリアに収納された部材18が部材ロードポート29に作業者によって配置される。S1002では、部材ロードポート29によりキャリアが開けられ、搬送機構30のハンドにより部材18が把持(保持)される。S1003では、搬送機構30によって、部材18が計測器40に搬送される。ここで、搬送機構30は、計測器40によって部材18の計測対象領域MTRBの高さを計測可能な位置に部材18を搬送し位置決めする。
【0037】
S1004では、搬送機構30のハンドによって部材18が把持されたままで、計測器40によって部材18の計測対象領域MTRBの高さが計測される。S1005では、計測器40による計測結果が合格基準を満たすか否かが判断され、満たす場合にはS1006に進み、満たさない場合にはS1010に進む。S1006では、搬送機構30によって部材18が位置決め機構31に搬送され、S1007では、位置決め機構31によって部材18が位置決めされ、S1008では、搬送機構30によって部材18が部材位置決め機構11の部材チャック12に搬送される。S1009では、インプリント処理がなされる。S1010では、エラー処理がなされる。エラー処理は、例えば、ロードされた部材18を正しい部材として扱うことを停止する処理を含みうる。より具体的には、エラー処理は、部材18の搬送を停止する処理、または、部材18をキャリアに戻す処理等を含みうる。
【0038】
以上のように、本実施形態では、原版17または部材18として提供された物体の計測対象領域の高さが計測器39、40によって計測され、計測器39、40によって計測された結果に基づいて物体の搬送が制御部10によって制御される。これにより、部材18の上に原版17を使ってパターンを形成するインプリント装置1に原版17および/または部材18が誤った状態でロードされることによって引き起こされうるトラブルを低減することができる。
【0039】
以下、本発明の第2実施形態のインプリント装置1について説明する。第2実施形態として言及しない事項は、第1実施形態に従いうる。
図10には、第2実施形態のインプリント装置1において原版および部材の計測対象領域の高さを計測するための構成が模式的に示されている。第2実施形態のインプリント装置1は、
図1に示された構成を備える他、
図10に示されているように、原版17または部材18として提供された物体の計測対象領域の高さを計測する計測器42を備える。計測器42は、原版17として提供された第1物体の計測対象領域MTRAの高さおよび部材18として提供された第2物体の計測対象流域MTRBの高さを計測する。計測器42は、例えば、原版17として提供された第1物体の計測対象領域MTRAの高さおよび部材18として提供された第2物体の計測対象領域MTRBの高さを計測するための共通のセンサ43を含みうる。
【0040】
計測器42による計測位置は、搬送機構26が原版17の計測対象領域MTRAを該計測位置に配置可能で、搬送機構30が部材18の計測対象領域MTRBを該計測位置に配置可能なように設定される。制御部10は、計測器42によって計測された物体が原版17であることが予定されている物体であるのか、部材18であることが予定されている物体であるかを、パラメータ値の設定によって管理しうる。
【0041】
例えば、センサ43は、計測対象の物体(原版17または部材18)の計測対象領域における上面の高さを計測するように構成されうる。この場合、原版17が正しい姿勢で計測位置に搬送されてきた場合は、原版17のキャビティ32の側の面の高さがセンサ43によって計測される。よって、合格基準としては、原版17のキャビティ32の側の面の正常な高さ範囲が設定される。また、部材18が正しい姿勢で計測位置に搬送されてきた場合は、部材18のパターン形成面37の高さがセンサ43によって計測される。よって、合格基準としては、部材18のパターン形成面37の正常な高さ範囲が設定される。
【0042】
以上とは反対に、センサ43は、計測対象の物体(原版17または部材18)の計測対象領域における下面の高さを計測するように構成されうる。この場合、原版17が正しい姿勢で計測位置に搬送されてきた場合は、原版17のパターン面35の高さがセンサ43によって計測される。よって、合格基準としては、原版17のパターン面35の正常な高さ範囲が設定される。また、部材18が正しい姿勢で計測位置に搬送されてきた場合は、部材18のキャビティ33側の面の高さがセンサ43によって計測される。よって、合格基準としては、部材18のキャビティ33側の面の正常な高さ範囲が設定される。
【0043】
したがって、制御部10は、上記のパラメータ値と、センサ43による計測対象領域の高さの計測結果(計測エラーを含む)とに基づいて、計測対象の物体が合格基準を満たすかどうかを判断することができる。
【0044】
以下、第1実施形態および第2実施形態に提供されうるエラー処理として、上下逆さまで提供された原版17および/または部材18の上下を反転させる処理を行う例を説明する。
図11には、原版17および/または部材18の上下を反転させる反転機構44が例示されている。
図11には、一例として、上下逆さまの原版17の上下を反転させる例が示されている。反転機構44は、原版17または部材18としての物品を把持する把持機構46−a、46−bと、把持機構46−a、46−bを180度回動させる回動機構45とを含みうる。反転機構44は、更に、反転させた物品を一時的に保持する保持機構47−a、47−bを含んでもよい。
図11(a)には、反転させるべき原版17を把持機構46−a、46−bによって把持した状態が示されている。
図11(b)には、原版17を回動機構45によって反転させた状態が示されている。
図11(c)には、反転させた原版17が保持機構47−a、47−bによって一時的に保持された状態が示されている。反転された原版17は、搬送機構26によって位置決め機構27に搬送され、位置決めの後に原版チャック7に搬送される。
【0045】
同様に、上下逆さまの部材18も反転機構44によって上下を反転され、搬送機構30によって位置決め機構31に搬送され、位置決めの後に部材チャック12に搬送されうる。
【0046】
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0047】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0048】
ここまでは、インプリント装置1によって原版17としてのマスターモールドを使って部材18としてのブランクモールドの上にパターンを形成する方法を説明した。しかしながら、上記のように、インプリント装置1は、原版17としてのモールド(例えば、レプリカモールド)を使って部材18としての基板の上にパターンを形成するインプリント装置として構成されてもよい。原版17としてのモールド(例えば、レプリカモールド)を使って部材18としての基板の上にパターンを形成する工程を含み、該工程を経た基板から物品を製造する物品製造方法を説明する。
【0049】
図12(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0050】
図12(b)に示すように、インプリント用の型(原版)4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。
図12(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1と型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを透して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0051】
図12(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凹部が硬化物の凸部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0052】
図12(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。
図12(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。