(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液体クロマトグラフィーにおいて、試料注入装置から分離カラム充填層の手前までの試料バンド移動流路の一部又は全部において、試料バンドを100μL/min以下の第一流速で移動させ、その後第一流速より速い第二流速で前記試料バンドを移動させ、前記第一流速から前記第二流速への変更を、流路の切り替えによって行うことを特徴とする試料導入方法。
液体クロマトグラフィーにおいて、試料注入装置から分離カラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動の一部又は全部の間、試料バンドを100μL/min以下の第一流速で移動させ、その後第一流速より速い第二流速で前記試料バンドを移動させることを特徴とする請求項1に記載の試料導入方法。
液体クロマトグラフィーにおいて、試料注入装置から分離カラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐ時までの試料バンドの移動の一部又は全部の間、試料バンドを100μL/min以下の第一流速で移動させ、その後第一流速より速い第二流速で前記試料バンドを移動させることを特徴とする請求項1に記載の試料導入方法。
前記分離カラム充填層に導入された試料バンドを、分離カラム内が前記第二流速で平衡化してから前記分離カラムから溶出することを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項に記載の試料導入方法。
前記第一流速から前記第二流速への変更の際、前記第一流速から、前記第二流速とは異なる速さ、且つ第一流速よりも速い第三流速に変更し、その後第二流速に変更することを特徴とする請求項1から12のうちいずれか1項に記載の試料導入方法。
請求項1から13のうちいずれか1項に記載の前記試料導入方法の効果を予測する方法であって、前記第二流速で試料注入から前記分離カラムを用いた分離溶出までを行う方法で得られる第1クロマトグラムと、前記分離カラムの代わりにゼロデッドボリュームユニオンを接続し、前記第一流速で試料注入から溶出までを行う従来の方法で得られる第2クロマトグラムと、前記分離カラムの代わりにゼロデッドボリュームユニオンを接続し、前記第二流速で試料注入から溶出までを行う従来の方法で得られる第3クロマトグラムを材料として、前記第1クロマトグラムで得られるピークの分散値から前記第3クロマトグラムで得られるピークの分散値を差し引いて、前記第2クロマトグラムで得られるピークの分散値を加えることにより、前記第1クロマトグラムを得るのに用いた前記分離カラムを用いて、前記第2クロマトグラムを得るのに用いた前記第一流速と前記第3クロマトグラムを得るのに用いた前記第二流速を使用して前記請求項1から13のうちいずれか1項に記載の試料導入方法を実施した場合の、前記第1クロマトグラムを得た方法からのカラム性能改善の程度を予測する方法。
液体クロマトグラフィー装置における試料導入装置であって、試料注入装置から分離カラム充填層の手前までの試料バンド移動流路の一部又は全部において、試料バンドを100μL/min以下の第一流速で移動させ、その後第一流速より速い第二流速で前記試料バンドを移動させるための導入制御装置と、前記第一流速から前記第二流速への変更を行うための流路切り替え装置とを備えることを特徴とする試料導入装置。
液体クロマトグラフィー装置における試料導入装置であって、試料注入装置から分離カラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動の一部又は全部の間、試料バンドを100μL/min以下の第一流速で移動させ、その後第一流速より速い第二流速で試料バンドを移動させるための導入制御装置を備えることを特徴とする請求項16に記載の試料導入装置。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明の液体クロマトグラフィーにおける試料導入方法は、試料注入装置から分離カラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動の一部又は全部の間、試料バンドを100μL/min以下の第一流速で移動させ、続いて第一流速より速い第二流速で試料バンドを移動させる試料導入方法である。
【0072】
「試料注入装置から」とは、移動相を送液する送液ポンプから連通する流路のうち、試料注入装置内に設置された移動相及び試料バンドが流れる流路に入ってからの意味である。従って、「試料注入装置から分離カラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動」は移動相を流路に供給する送液ポンプにより、試料バンドの進行方向の前又は/及び後に位置する移動相と共に行われる移動である。
【0073】
試料バンドが第一流速で移動させられるのは、移動相及び試料バンドを同時に移動させる送液ポンプで移動相と共に試料バンドの移動が行われる流路であって、試料注入装置から分離カラム充填層の手前までの試料バンド移動流路の一部又は全部である。試料バンド移動流路にはサンプルループ内の流路、試料注入用流路切り替えバルブの内の流路、試料注入用流路切り替えバルブ出口から分離カラム充填層前までの流路が含まれる。
【0074】
そして、分離カラム(以下単に「カラム」ともいう。)の充填層に試料を導入する際に、試料注入装置から分離カラム充填層(以下単に「カラム充填層」ともいう。)前までの試料バンド移動流路内において、言い換えれば、試料バンドが分離カラム充填層に入る前まで、又は、試料注入装置から分離カラム充填層前までの試料バンド移動流路内及び分離カラム充填層の入口側の端部分において、言い換えれば、試料バンドが分離カラム充填層入口側境界を跨ぐまで或いは試料バンド全体が分離カラム充填層に入り終わる時まで、分析条件で定められた流速よりも低い流速で試料バンドを移動させ、その後分析条件で定められた流速に変えることで、試料注入装置から分離カラム充填層前までの試料バンド移動流路内での試料バンドの分散の増加を抑えながら試料バンドを分離カラムの充填層に導入すると共に、試料の分離カラム充填層内での分離にはカラムの性能を発揮出来る、分析条件で定められた流速を用いる方法である。
【0075】
この方法を実施するための本発明の液体クロマトグラフ1は、高性能液体クロマトグラフ及び超高性能液体クロマトグラフを含み、
図1に示すように、移動相容器90内の移動相91を流路に供給する送液ポンプ5、試料注入用流路切り替えバルブ3及びサンプルループ300を備え、所定量の試料を適時に流路に供給する試料注入装置4、試料導入装置10、試料を成分毎に分離する分離カラム2、分離カラム2で分離された試料成分を検出する、検出器セル991を備えた検出器99、これらを接続する配管6及び導入制御装置18を備えて構成されている。特に、試料注入装置4、詳しくは試料注入用流路切り替えバルブ3出口と分離カラム2はカラム前配管63で接続されている。試料導入装置10は、分離カラム2に試料を導入するための装置であり、試料注入用流路切り替えバルブ3及びサンプルループ300を備えた試料注入装置4、送液ポンプ5及び導入制御装置18、移動相容器90を備えて構成することが出来る。
【0076】
試料注入装置は、サンプルループを接続して固定した試料注入用流路切り替えバルブを含む構成の固定ループ注入方式のオートサンプラーを用いるが、サンプルループを接続して固定した試料注入用流路切り替えバルブを含む構成のマニュアルインジェクター、サンプル容器から試料を吸引するためのニードルを含む流路がサンプルループとしても使用され、試料注入用流路切り替えバルブを含む構成のダイレクト注入方式もしくはダイレクトインジェクション方式のオートサンプラー、試料送液用ポンプからの流路が試料注入用流路切り替えバルブや逆止弁を介して、移動相送液用ポンプとカラムをつないだ流路に接続されたオートサンプラー等、移動相送液用ポンプとカラムをつないだ流路に、試料注入用流路切り替えバルブや逆止弁を介して試料バンドを注入出来る試料注入装置を用いることが出来る。
【0077】
分離カラム2内には充填剤が充填されて分離カラム充填層20が構成されている。試料注入装置4から分離カラム充填層20の手前までの流路である試料バンド移動流路7は、送液ポンプ5と分離カラム2を連通する流路のうち移動相91及び試料バンドが流れる流路であり、
図1及び
図3に示すように、試料注入用流路切り替えバルブ3、サンプルループ300、試料注入用流路切り替えバルブ3の下流側に配置されるカラム前配管63、カラム前配管63と分離カラム2を連結するエンドユニオン206を備えて構成されている。分離カラム充填層20と試料バンド移動流路7との境目には分離カラム充填層入口側の境界200が存在し、
図3においては、分離カラム2内の分離カラム充填層20の上流側にはフリット205が設置され、分離カラム充填層20とフリット205の接触面が境界200を構成している。移動相及び試料は、カラム前配管63から、エンドユニオン206内流路203及びコーン(分散スペース)204、フリット205を通じて、分離カラム充填層20に供給される。従って、フリット205までは試料バンド移動流路7を構成している。尚、分離カラム2はフリット及び/又はコーン(分散スペース)を設置しない構成としてもよい。
【0078】
導入制御装置18は、送液ポンプ5の動作を制御して、流路に供給される移動相91の流量をコントロールして流速を制御する流速プログラムを備えた装置であり、コンピュータで構成されている。導入制御装置18は、移動相91を配管6及び分離カラム2を含む流路に流す際の分析条件で定められた流速である第二流速と分析条件で定められた流速よりも低い流速である第一流速の2種類の流速が設定されている。第二流速は試料成分の分離及び検出を行うための流速である。又、導入制御装置18は、試料注入装置4の試料注入動作、具体的には、サンプルバイアルから試料を吸引して試料注入用流路切り替えバルブ3内とサンプルループ300内に運び、試料注入用流路切り替えバルブ3のポジションを切り替えて試料をカラム前配管63に注入する動作等試料を試料バンド移動流路に注入し分離カラムに導入するための制御も行う。
【0079】
図2と
図4に示すように、導入制御装置18の制御により、試料注入装置4から試料が試料バンド移動流路7に注入されると同時、或いは注入される前から、分析条件で定められた流速よりも低い流速である第一流速で移動相が送液ポンプ5下流の流路に供給されて、注入された試料バンド100が第一流速で試料バンド移動流路7内を分離カラム2方向へ移動する(
図4(A))。その後試料バンド100が分離カラム2の充填層20内に入り始める前(
図4(B))に、あるいは試料バンドが分離カラム2の充填層20の入口側境界を跨いでいる時(
図4(C))に、あるいは試料バンド100全体が分離カラム2の充填層20に入り終わった時(
図4(D))に、導入制御装置18の制御により、送液ポンプ5の流速を分析条件で定められた流速に変え、分析条件で定められた流速である第二流速で移動相が送液ポンプ5下流の流路に供給されて、試料バンドが第二流速で、試料バンド移動流路7及び分離カラム2の充填層20内又は分離カラム2の充填層20内、更には分離カラム2より下流の配管66及び検出器99を移動する。
【0080】
図4(A)及び
図4(B)は、試料バンドが分散しながら移動し、分離カラム2の充填層20に導入されるイメージ図である。ここでは、試料バンドに複数の溶質が含まれる場合は、その中に分離カラム充填層を素通りする溶質と、分離カラム充填層に保持される溶質を含むものとして説明する。試料バンドに分離カラム充填層を素通りする溶質が無い場合にも、試料を溶解させている試料溶媒はバンドとなり分離カラム充填層を素通りする。試料バンドが充填層20に入っていない時は試料バンド100中には複数の溶質が含まれ、一体になって移動している(
図4(A)、
図4(B))。
【0081】
試料バンドが分離カラム充填層入口側境界200を跨いだ時には、試料バンドの内、分離カラム充填層に導入された部分では、分離カラム充填層に保持される溶質は、分離カラム充填層を素通りする溶質より低い速度で充填層内を進んでいるが、試料バンドに含まれる複数の溶質全ては分離カラム充填層入口側境界200を跨いでいる(
図4(C))。
【0082】
試料バンド全体が分離カラム充填層20に入り終わった時には、分離カラム充填層に保持される溶質は、分離カラム充填層を素通りする溶質より低い速度で分離カラム充填層内を進んでいるが、試料バンドに含まれる複数の溶質全てが分離カラム充填層20に入り終わっている(
図4(D))。
【0083】
又、試料バンドに溶質が一種類だけ含まれる場合も、試料バンドが分離カラム充填層入口側境界200を跨いだ時には、試料バンドの内、分離カラム充填層に導入された部分では、一種類の溶質が分離カラム充填層を素通りしていたとしても、或いは一種類の溶質が分離カラム充填層に保持される溶質であって、試料溶媒より低い速度で分離カラム充填層内を進んでいたとしても、試料バンドに含まれる一種類の溶質は分離カラム充填層入口側境界200を跨いでいる(
図4(C))。試料バンド全体が分離カラム充填層20に入り終わった時には、一種類の溶質が分離カラム充填層を素通りしていたとしても、或いは一種類の溶質が分離カラム充填層に保持される溶質であって、試料溶媒より低い速度で分離カラム充填層内を進んでいたとしても、試料バンドに含まれる一種類の溶質全てが分離カラム充填層20に入り終わっている(
図4(D))。
【0084】
図5A及び
図5Bは、後述する実施例16、
図25(C)で得られたクロマトグラムにおいて、各流路や分離カラムの充填層中でウラシルを含む試料バンドがどのように広がりながら移動しているかを、
図47(B)も参考に描いたイメージ図である。又、
図6A及び
図6Bは、
図25(A)(比較例)で得られたクロマトグラムにおいて、各流路や充填層中でウラシル含む試料バンドがどのように広がりながら移動しているかを、
図47(C)も参考に描いたイメージ図である。
【0085】
図5A、
図5B、
図6A及び
図6Bでは、試料バンドがサンプルループ内にある時((1))から分離カラムの充填層前の試料バンド移動流路内を移動していて充填層に達していない時までは、試料バンド内に10種類の溶質が含まれ、混合された状態である。試料バンドが分離カラム充填層入口側境界200を跨いだ時((2))には、ウラシル以外の溶質は親水性が低く、分離カラムの充填層20にある充填剤、即ち、固定相と親和性があるので、分離カラムの充填層を素通りせず固定相に分配されながら移動するので、ウラシルに比べて移動速度が遅くなる(それぞれの溶質はウラシルの1/(1+k)倍の速度で進む。kは保持係数である)。つまり(2)の時に、ウラシルは図に示すピークの形をしているとすると、ウラシル以外の溶質も、それぞれ半分が、(2)のピークの移動する方向から半分の中に含まれ、分離カラムの充填層内に入っている。即ち、、ウラシルのピーク全体が分離カラムの充填層内に入った時には、ウラシル以外の溶質も分離カラムの充填層内に入っている。(3)の時には、ウラシル以外の溶質は分離カラム内の充填層をウラシルよりも遅れて移動している。
【0086】
図5A、
図5B、
図6A及び
図6Bでは、実施例16で使用した、試料注入用流路切り替えバルブ出口(ポートa)からカラム入口までの配管(内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管)の容量約1.99μLに、カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)入口側のエンドユニオン内流路、コーン及びフリット空隙の合計の容量約1.10μLを加算した約3.09μLを、試料注入用流路切り替えバルブのポートaと分離カラム充填層入口側の境界200の間の容量として記載している。
【0087】
また、
図5A、
図5B、
図6A及び
図6Bでは、実施例16で使用した、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量約1.08μLに、検出器セルの容量6nLを加算し、更にカラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)出口側のエンドユニオン内流路、コーン及びフリット空隙の合計の容量約1.10μLを加算した約2.19μLを、分離カラム充填層出口側の境界と検出器セル991出口の間の容量として記載している。
【0088】
また、
図5A及び
図5Bでは、(2)のウラシルのピークのイメージの全値幅を、
図47(B)のウラシルのピークの分散σ
2=0.22μL
2からσ=0.469μLを算出し、更に全値幅の99.9%として6σ=6×0.469μL=2.81μLとした。また、(3)のウラシルのピークのイメージの全値幅を、
図25(C)のウラシルのピークの半値幅0.0210min=2.35σとしてσ=0.0089minを算出し、更に全値幅の99.9%として6σ=6×0.0089min=0.0536minを算出し、
図25(C)の第二流速0.1mL/minを乗じて0.00536mL=5.36μLとした。
【0089】
図5Aと
図5Bは、
図25(C)のように、第一流速0.01mL/minで試料0.5μLが送液ポンプとカラムの間の流路に注入され、試料バンドが分離カラム充填層入口側境界を跨いだ時に送液ポンプの流速が第二流速0.1mL/minに変更され、試料バンド中のウラシルが分離カラム充填層を素通りして検出器セル991の出口に達したイメージを示している。(1)は試料注入前でサンプルループ内に試料バンドが入っている時のイメージである。(2)は試料注入から第一流速0.01mL/minで3.5μL送液し、試料バンドが分離カラム充填層入口側境界200を跨いでいる時のウラシルのピークのイメージで、
図47(B)の、カラムの代わりにZDUを使用して流速0.01mL/minで採取したピーク(ピークトップの溶出容量は3.22μL)を参照している。参照した理由は、実施例27の
図47(B)では、流速0.01mL/minでウラシルを0.5μL注入していて、試料注入用流路切り替えバルブ出口にカラム入口までの配管として内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)を接続し、カラムに代えてZDU(U−435、内径0.25mm、内部容量0.02μL、IDEX社)を用い、ZDU出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μL、検出器セルの容量は6nLとしていて、試料注入用流路切り替えバルブ出口から検出器セル出口までの容量は1.99+0.02+1.08+0.006=3.10μLで、この容量が
図5Aの、試料注入用流路切り替えバルブのポートaと分離カラム充填層入口側の境界200の間の容量3.09μLと同程度だからである。(3)は(2)の状態から送液ポンプの流速を第二流速0.1mL/minに変更し、試料中の10種の溶質が分離カラム充填層で分離され、最も早く溶出したウラシルのピークのイメージで、
図25(C)のウラシルのピークを参照している。
【0090】
また、
図6A及び
図6Bでは、(2)のウラシルのピークのイメージの全値幅を、
図47(C)のウラシルのピークの分散σ
2=0.92μL
2からσ=0.959μLを算出し、更に全値幅の99.9%として6σ=6×0.959μL=5.75μLとした。(3)のウラシルのピークのイメージの全値幅を、
図25(A)のウラシルのピークの半値幅0.0291min=2.35σとしてσ=0.0124minを算出し、更に全値幅の99.9%として6σ=6×0.0124min=0.0743minを算出し、
図25(A)の流速0.1mL/minを乗じて0.00743mL=7.43μLとした。
【0091】
図6Aと
図6Bは、
図25(A)(比較例)のように、流速0.1mL/minで試料0.5μLが送液ポンプとカラムの間の流路に注入され、試料バンドが分離カラム充填層入口側境界200を跨ぎ、更に試料バンド中のウラシルが分離カラム充填層20を素通りして検出器セル991の出口に達したイメージを示している。(1)は試料注入前でサンプルループ内に試料バンドがある時のイメージである。(2)は試料注入から送液ポンプの流速0.1mL/minで3.5μL送液し、試料バンドが分離カラム充填層入口側境界200を跨いでいる時のウラシルのピークのイメージで、
図47(C)の、カラムの代わりにZDUを使用して流速0.1mL/minで採取したピーク(ピークトップの溶出容量は3.80μL)を参照している。参照した理由は、実施例27の
図47(C)では、流速0.1mL/minでウラシルを0.5μL注入していて、試料注入用流路切り替えバルブ出口にカラム入口までの配管として内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)を接続し、カラムに代えてZDU(U−435、内径0.25mm、内部容量0.02μL、IDEX社)を用い、ZDU出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μL、検出器セルの容量は6nLとしていて、試料注入用流路切り替えバルブ出口から検出器セル出口までの容量は1.99+0.02+1.08+0.006=3.10μLで、この容量が
図6Aの、試料注入用流路切り替えバルブのポートaと分離カラム充填層入口側の境界200の間の容量3.09μLと同程度だからである。(3)は(2)の状態から引き続き送液ポンプの流速を0.1mL/minとし、試料中の10種の溶質が分離カラム充填層で分離され、最も早く溶出したウラシルのピークのイメージで、
図25(A)のウラシルのピークを参照している。
【0092】
図7には、本発明で使用したUHPLC装置の試料注入方法を示している。本発明で使用した、試料注入装置の試料注入用流路切り替えバルブは、各流路に接続された複数のポート(互いに独立した貫通口)が形成されたステーターに対して、流路溝が設けられたローターシールを押しつけ、それを回転摺動させることによりステーターの各ポートを接続するポジションを切り替える回転式のバルブで、液体クロマトグラフで用いられる一般的な流路切り替えバルブである。試料注入用流路切り替えバルブ3が
図7(A)のポジションの時、試料5μLが試料注入口41から入れられ、試料注入口41がつながった試料注入用流路切り替えバルブ3のステーターのポートeと試料注入用流路切り替えバルブのローターシールに設けられた流路溝(ローターシールの溝)の1つは試料で満たされる。又、ドレイン42がつながった試料注入用流路切り替えバルブ3のステーターのポートdも試料で満たされる。次に
図7(B)のポジションに試料注入用流路切り替えバルブ3が切り替わり(試料注入用流路切り替えバルブ3のローターシールが時計周りに回転し)、試料で満たされたローターシールの溝はポートeとポートfの間に移動する。この状態で試料がサンプルループ300に向かって必要量(例えば0.5μL)入れられ、ポートfも試料で満たされる。次に
図7(C)のポジションに試料注入用流路切り替えバルブ3が切り替わり(試料注入用流路切り替えバルブ3のローターシールが反時計周りに回転し)、試料で満たされたローターシールの溝はポートdとポートeの間に移動し、一方で送液ポンプからカラムに向かって流れている移動相により、ポートfとサンプルループ300内にあった0.5μLの試料は
図7(D)のように、移動相で満たされていたローターシールの溝の1つと、ポートaを通ってカラムに向かって流れていく。ローターシールの溝の1つの容量とポートaの容量を合計すると約0.09μ
Lであることを、ローターシールとステーターの各部の寸法から確認している。
【0093】
第一流速で試料バンドを分離カラム充填層に向かってどこまで移動させるかについては、本発明の効果を最も発揮させるためには、試料バンドが分離カラム充填層入口側の境界を跨ぐまで、好ましくは試料バンドのピークトップが分離カラム充填層入口側の境界に達するまで、移動させることが望ましい。後述する実施例16を例にすると、試料の注入容量が0.5μLであり、試料注入用流路切り替えバルブ(C72VH−1696Dバルブ、Valco社)のステーター中の流路(ポート)1つの容量とローターシールに設けられた流路溝1つの容量の合計は約0.09μLであった。試料注入用流路切り替えバルブ出口とカラム入口を接続している配管については、内径0.13mm、長さ15cmなので、容量は約1.99μLである。カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)の場合は、
図3に示すカラム入口側エンドユニオン内流路203の容量、コーン(分散スペース)204の容量、フリット205の空隙の容量の合計が約1.10μLであった。したがって、
図5に示すように、試料注入前の試料バンドの中央から分離カラム充填層入口側境界までの容量は、0.25+0.09+1.99+1.10=3.43μLである。また、
図47(B)のように、カラムの代わりにゼロデッドボリュームユニオン(ZDU)を使用して、第一流速において従来の試料注入法でのクロマトグラムを採取しておくと、ピークを形成しながら移動する試料バンドのピークトップが、サンプルループ内から分離カラム充填層入口側境界まで移動するのに要した送液容量を見積もることが出来る。試料注入容量が0.5μLの場合、
図47(B)で得られた保持時間に流速を掛けた値(この場合0.322min×10μL/min=3.22μL)からZDUの容量0.02μLと、ZDU出口から検出器セル入口までの容量1.08μLと、検出器セルの容量6nLを差し引いた容量を算出すると、2.114μLになる。また、この値にカラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)の入口側エンドユニオン内流路の容量、コーン(分散スペース)の容量、フリット空隙の容量の合計(約1.10μL)を加えると、3.214μLであり、この値を、試料バンドのピークトップが、サンプルループ内から分離カラム充填層入口側境界まで移動するのに要した送液容量として見積もることが出来る。
【0094】
よって後述する実施例16で使用した装置とカラム、注入容量で本発明を実施する際、第一流速から第二流速への変更を行う流速プログラムを導入制御用のコンピュータで作成する時は、試料注入用流路切り替えバルブとカラム入口を接続している配管の容量1.99μL、もしくは、試料バンドのピークトップが、サンプルループ内からカラム入口まで移動するのに要した送液容量2.114μL、あるいは、これらの容量にカラム入口から充填層入口側境界までの容量1.10μLを加えた、3.09μLや3.214μLを第一流速で送液する容量として設定しておくと、高いカラム性能が得られやすい。
【0095】
後述する実施例16では、第一流速を10μL/minとし、1μL、2μL、3μL、3.5μL、4μL、5μL、6μL、8μL送液してから第二流速に変更しているが、第一流速で3〜5μL送液した時に、特に高いカラム性能が発揮されている。
【0096】
また、
図47(B)で得られたピークの全値幅は約2.81μLであることから、第一流速で送液した容量が3.214μLあるいは、直管に比べて複雑な構造であるフリット空隙を試料バンドが通過するのに容量が増えたとして、3.5μL程度になったとしても、これらの値から前後1.41μLの間(1.804〜4.91μL)では、試料バンドがカラム入口側充填層の境界を跨いでいる。そして、第一流速で送液した容量が5μL、6μL、8μLの時は試料バンド全体が充填層に入っている。即ち、第一流速で試料バンドを、試料バンド全体が分離カラム充填層に入り終わるまで移動させてから第二流速に変更しても、高いカラム性能が得られることが示されている。また、第一流速で送液した容量が5μLから8μLに増えるにつれ、試料中の溶質がカラム性能を発揮出来ない遅い流速で分離される時間が長くなり、発揮されるカラム性能が徐々に低くなることから、第一流速で試料バンド全体が分離カラム充填層に入り終わった後は、出来るだけ速やかに送液ポンプの流速を、第一流速よりも速い、カラム性能を発揮出来る流速に変更することが望ましい。
【0097】
実施例16で第一流速で送液する容量のうち、最も少ない容量は1μLであった。試料バンドがサンプルループ内から分離カラム充填層入口側境界まで移動する容量に対する比率は、1/3.43=約0.29、又は1/3.214=約0.31である。これらの比率以上になるように第一流速で送液する容量を設定しておくと、本発明の試料導入方法の効果が得られやすい。
【0098】
後述する実施例13を例にすると、試料の注入容量が2μLであり、試料注入用流路切り替えバルブ(C72VH−1696Dバルブ、Valco社)のステーター中の流路(ポート)1つの容量とローターシールに設けられた流路溝1つの容量の合計は約0.09μLであった。試料注入用流路切り替えバルブ出口とカラム入口を接続している配管については、内径0.13mm、長さ15cmなので、容量は約1.99μLである。カラムKinetex C18(充填剤径2.6μm、内径2.1 mm、長さ5cm、Phenomenex社)の場合は、
図3に示すエンドユニオン内流路203の容量、コーン(分散スペース)204の容量、フリット205の空隙の容量の合計が約1.10μLであった。よって、試料注入前の試料バンドの中央から分離カラム充填層入口側境界までの容量は、1.0+0.09+1.99+1.10=4.18μLである。また、試料注入容量が2μLの場合、
図50(A)で得られた保持時間に流速を掛けた値(この場合0.383min×10μL/min=3.83μL)からZDUの容量0.02μLと、ZDU出口から検出器セル入口までの容量1.08μLと、検出器セルの容量6nLを差し引いた容量を算出すると、2.724μLになる。また、この値にカラムKinetex C18(充填剤径2.6μm、内径2.1 mm、長さ5cm、Phenomenex社)のエンドユニオン内流路の容量、コーン(分散スペース)の容量、フリット空隙の容量の合計(約1.10μL)を加えると、3.824μLであり、この値を、試料バンドのピークトップが、サンプルループ内から分離カラム充填層入口側境界まで移動するのに要した送液容量として見積もることが出来る。
【0099】
よって実施例13で使用した装置とカラム、注入容量で本発明を実施する際、第一流速から第二流速への変更を行う流速プログラムを導入制御用のコンピュータで作成する時は、試料注入用流路切り替えバルブ出口とカラム入口を接続している配管の容量1.99μL、もしくは、試料バンドのピークトップが、サンプルループ内からカラム入口まで移動するのに要した送液容量2.724μL、或いは、これらの容量にカラム入口から充填層入口側境界までの容量1.10μLを足して、3.09μLや3.824μLを第一流速で送液する容量として設定しておくと、高い性能が得られやすい。
【0100】
実施例13では、第一流速を10μL/minとし、1μL、2μL、3μL、3.5μL送液してから第二流速に変更しているが、第一流速で3.5μL送液した時に、最も高いカラム性能が発揮されている。
【0101】
実施例13で第一流速で送液する容量のうち、最も少ない容量は1μLであった。試料バンドがサンプルループ内から分離カラム充填層入口側境界まで移動する容量に対する比率は、1/4.18=約0.24、又は1/3.824=約0.26である。これらの比率以上になるように第一流速で送液する容量を設定しておくと、本発明の試料導入方法の効果が得られやすい。
【0102】
後述する実施例8を例にすると、試料の注入容量が0.5μLであり、試料注入用流路切り替えバルブ(C72VH−1696Dバルブ、Valco社)のステーター中の流路(ポート)1つの容量とローターシールに設けられた流路溝1つの容量の合計は約0.09μLであった。試料注入用流路切り替えバルブ出口とカラム入口を接続している配管については、内径0.254mm、長さ15.2cmなので、容量は約7.7μLである。カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)の場合は、
図3に示すエンドユニオン内流路203の容量、コーン(分散スペース)204の容量、フリット205の空隙の容量の合計が約1.10μLであった。よって、試料バンドの中央から分離カラム充填層入口側境界までの容量は、0.25+0.09+7.7+1.10=9.14μLである。また、試料注入容量が0.5μLの場合、
図48(B)で得られた保持時間に流速を掛けた値(この場合0.945min×10μL/min=9.45μL)からZDUの容量0.02μLと、ZDU出口から検出器セル入口までの容量1.08μLと、検出器セルの容量6nLを差し引いた容量を算出すると、8.344μLになる。また、この値にカラムInertSustain C18のエンドユニオン内流路の容量、コーン(分散スペース)の容量、フリット空隙の容量の合計(約1.10μL)を加えると、9.444μLであり、この値を、試料バンドのピークトップが、サンプルループ内から分離カラム充填層入口側境界まで移動するのに要した送液容量として見積もることが出来る。
【0103】
よって実施例8で使用した装置とカラム、注入容量で本発明を実施する際、第一流速から第二流速への変更を行う流速プログラムを導入制御用のコンピュータで作成する時は、試料注入用流路切り替えバルブ出口とカラム入口を接続している配管の容量7.7μL、もしくは、試料バンドのピークトップが、サンプルループ内からカラム入口まで移動するのに要した送液容量8.344μL、あるいは、これらの容量にカラム入口から充填層入口側境界までの容量1.10μLを足して、8.80μLや9.444μLを第一流速で送液する容量として設定しておくと、高い性能が得られやすい。
【0104】
実施例8では、第一流速を10μL/minとし、5μL、8μL、10μL、12μL、15μL送液してから第二流速に切り替えているが、第一流速で10μL送液した時に、最も高いカラム性能が発揮されている。また、第一流速で8〜15μL送液した時に比較的高いカラム性能が発揮されている。
【0105】
また、
図48(B)で得られたピークの全値幅は約5.37μLであることから、第一流速で送液した容量が9.444μLあるいは、フリット空隙を試料バンドが通過するのに容量が増えたとして、10μL程度になったとしても、これらの値から前後2.69μLの間(6.754〜12.69μL)では、試料バンドがカラム入口側充填層の境界を跨いでいる。そして、第一流速で送液した容量が15μLの時は試料バンド全体が充填層に入っている。即ち、第一流速で試料バンドを、試料バンド全体が充填層に入り終わる時まで移動させてから第二流速に切り替えても、高いカラム性能が得られることが示されている。
【0106】
実施例8で第一流速で送液する容量のうち、最も少ない容量は5μLであった。試料バンドがサンプルループ内から分離カラム充填層入口側境界まで移動する容量に対する比率は、5/9.14=約0.55、又は5/9.444=約0.53である。これらの比率以上になるように第一流速で送液する容量を設定しておくと、本発明の試料導入方法の効果が得られやすい。
【0107】
後述する実施例5を例にすると、試料の注入容量が2μLであり、試料注入用流路切り替えバルブ(C72VH−1696Dバルブ、Valco社)のステーター中の流路(ポート)1つの容量とローターシールに設けられた流路溝1つの容量の合計は約0.09μLであった。試料注入用流路切り替えバルブ出口とカラム入口を接続している配管については、内径0.254mm、長さ15.2cmなので、容量は約7.7μLである。カラムKinetex C18(充填剤径2.6μm、内径2.1 mm、長さ5cm、Phenomenex社)の場合は、
図3に示すエンドユニオン内流路203の容量、コーン(分散スペース)204の容量、フリット205の空隙の容量の合計が約1.10μLであった。よって、試料注入前の試料バンドの中央から分離カラム充填層入口側境界までの容量は、1.0+0.09+7.7+1.10=9.89μLである。また、試料注入容量が2μLの場合、
図50(B)で得られた保持時間に流速を掛けた値(この場合0.988min×10μL/min=9.88μL)からZDUの容量0.02μLと、ZDU出口から検出器セル入口までの容量1.08μLと、検出器セルの容量6nLを差し引いた容量を算出すると、8.774μLになる。また、この値にカラムKinetex C18のエンドユニオン内流路の容量、コーン(分散スペース)の容量、フリット空隙の容量の合計(約1.10μL)を加えると、9.874μLであり、この値を、試料バンドのピークトップが、サンプルループ内から分離カラム充填層入口側境界まで移動するのに要した送液容量として見積もることが出来る。
【0108】
よって実施例5で使用した装置とカラム、注入容量で本発明を実施する際、第一流速から第二流速への変更を行う流速プログラムを導入制御用のコンピュータで作成する時は、試料注入用流路切り替えバルブ出口とカラム入口を接続している配管の容量7.7μL、もしくは、試料バンドのピークトップが、サンプルループ内からカラム入口まで移動するのに要した送液容量8.774μL、あるいは、これらの容量にカラム入口から充填層入口側境界までの容量1.10μLを足して、8.80μLや9.874μLを第一流速で送液する容量として設定しておくと、高い性能が得られやすい。
【0109】
実施例5では、第一流速を10μL/minとし、5μL、8μL、10μL、12μL送液してから第二流速に切り替えているが、第一流速で10μL送液した時に、最も高いカラム性能が発揮されている。
【0110】
実施例5で第一流速で送液する容量のうち、最も少ない容量は5μLであった。試料バンドがサンプルループ内から分離カラム充填層入口側境界まで試料バンドが移動する容量に対する比率は、5/9.89=約0.51、又は5/9.874=約0.51である。これらの比率以上になるように第一流速で送液する容量を設定しておくと、本発明の試料導入方法の効果が得られやすい。
【0111】
又、本発明の試料導入方法によるクロマトグラムを連続して採取する時には、試料の分離溶出を行った後、第二流速から第一流速に変更して第一流速でカラムが平衡化された状態で次の試料導入に備えることが望ましい。第一流速でカラムを平衡化する時間の目安は、第二流速と第一流速の差や、カラム充填剤種、移動相の種類、カラム長さ等によっても変化する場合があるが、圧力トレースによって確認出来る。実施例で確認した長さ5cmのカラムの場合、試料の分離溶出を行った後に第一流速で1分程度送液すると、カラムが平衡化されている。本発明の試料導入方法を使用して連続でクロマトグラムを採取する場合の再現性は良好である。
【0112】
試料に含まれる溶質、各溶質の濃度及び試料溶媒と試料注入容量、サンプルループ、試料注入用流路切り替えバルブが同一で、試料注入用流路切り替えバルブ出口からカラム入口までの配管の長さが一定であれば、どのような内径の配管でも、流速0.1μL/min以上では流速が大きくなるほど注入された試料のカラム外における溶質バンドの分散(σ
extra2)が大きくなる。又、その勾配は配管の内径が大きい方が急になる。又、試料に含まれる溶質、各溶質の濃度及び試料溶媒と試料注入容量、サンプルループ、試料注入用流路切り替えバルブが同一で、試料注入用流路切り替えバルブ出口からカラム入口までの配管の内径、流速が一定であれば、配管が長くなるほど注入された試料のカラム外における溶質バンドの分散(σ
extra2)が大きくなる。
【0113】
試料が送液ポンプと分離カラム充填層をつなぐ配管に注入されて分離カラム充填層まで至るまでの配管である、サンプルループ内と試料注入用流路切り替えバルブの中の流路内、試料注入用流路切り替えバルブ出口から分離カラム入口までの配管、分離カラム入口側エンドユニオン内の流路とコーン(分散スペース)の長さと内径は特に限定されず、又、これらの組み合わせも特に限定されない。又、分離カラム充填層入口側手前のフリットのサイズや孔径も特に限定されないし、充填層をフリット無しでカラム管に固定化出来る場合はフリットが無くても構わない。試料が送液ポンプと分離カラムをつなぐ配管に注入されて分離カラム充填層まで至るまでの配管がどのような内径と長さであっても、流速0.1μL/min以上では流速が大きくなるほど注入された試料のカラム外における溶質バンドの分散(σ
extra2)が大きくなると予測できる(このことは非特許文献10、11、12、13等から予測できる)ことから、カラム性能を発揮出来る一定の流速で試料注入から分析までを行う従来の方法に比べて、カラム性能を発揮出来る一定の流速よりも低い流速で、試料注入によって送液ポンプと分離カラム充填層の間の配管に組み込まれる、サンプルループ内と試料注入用流路切り替えバルブの中の流路内及び、試料注入用流路切り替えバルブ出口から分離カラム充填層前までの配管中を、試料バンドを移動させて試料バンドの分散を抑え、分離カラム充填層に試料が入る前にカラム性能を発揮出来る一定の流速に上げて試料をカラムに導入して分析を行うことで、高いカラム性能が得られる。
【0114】
又、カラム性能を発揮出来る一定の流速よりも低い流速で、試料注入によって送液ポンプと分離カラム充填層の間の配管に組み込まれる、サンプルループ内と試料注入用流路切り替えバルブの中の流路内及び、試料注入用流路切り替えバルブ出口から分離カラム充填層前までの配管中を試料バンドを移動させ、或いは更に試料バンドが分離カラム充填層入口側境界を跨ぐまで、或いは更に試料バンド全体が分離カラム充填層に入り終わるまで試料バンドを移動させて試料バンドの分散を抑え、続いてカラム性能を発揮出来る一定の流速に上げて試料を分離カラム充填層で分離することで、どのような長さと内径の充填層を持つ分離カラムであっても、高いカラム性能が得られる。
【0115】
又、分離カラムのコーン(分散スペース)は試料バンドが分離カラム充填層に導入される際、充填層の中心に集中せず均一に導入されるよう分散させるために設置され、この時の移動相の流速が速い程大きな容量を必要とするものなので、カラム性能を発揮出来る一定の流速よりも低い流速(第一流速)で試料バンドを充填層に導入する時、第一流速が分離カラムのコーン(分散スペース)が必要無い程に低ければ、コーン(分散スペース)を設置しない分離カラムを使用することが出来る。
【0116】
一方で、例えば後述する実施例3(
図12)と実施例7(
図16)を比較すると、実施例3では試料注入用流路切り替えバルブ出口からカラム入口までの配管は内径0.254mm、長さ15.2cmとし、カラムは内径3.0mm、長さ5cmとしている。
図12(A)のピークNo.3の分散を半値幅(0.0257min)から計算(ピーク半値幅=2.35σ、更にσの単位をμLとするため、流速0.6mL/minを乗じ、更に2乗してσ
2を算出)すると43.06μL
2であり、
図12(C)のピークNo.3の分散は35.08μL
2なので、ピークNo.3については本発明の方法により比較例に比べて分散が7.98μL
2減少している。実施例7では試料注入用流路切り替えバルブ出口からカラム入口までの配管は内径0.254mm、長さ15.2cmとし、カラムは内径1.0mm、長さ5cmとしている。
図16(A)のピークNo.3の分散は6.69μL
2であり、
図16(C)のピークNo.3の分散は2.13μL
2なので、ピークNo.3については本発明の方法により比較例に比べて分散が4.56μL
2減少している。減少している分散は実施例3の方が大きいが、本発明の方法の効果は、実施例7の方が顕著に現れている。
【0117】
この理由は、実施例3では、一定の流速で試料注入から分析までを行う従来の方法にて得られるクロマトグラム(比較例)での各ピークの分散値が、本発明の方法により達成出来る分散値の減少幅に比べて大きいためである。
【0118】
次に、第一流速について述べる。第一流速は可能な限り低い方が良いが、実際は使用するHPLC装置やUHPLC装置等の送液ポンプが安定して送液できる流速域にも関係する。
図47(B)のように、カラムの代わりにゼロデッドボリュームユニオンを接続し、試料を従来の方法で注入したデータを複数回採取し、再現性を確認して送液ポンプの安定性を確認することが良い。
【0119】
第一流速は1μL/min〜100μL/minである。第一流速は可能な限り遅い方が良いが、1μL/minより遅い流速は現在の送液ポンプでは再現性が悪い場合があり、実際の使用には適さないためである。尚、今後の送液ポンプの性能の向上により、1μL/minより遅い流速でも再現性が良くなっている場合には、第一流速を1μL/minより遅くしてもよい。又、第一流速が100μL/minより速いと試料バンドの分散が大きくなるからである。
【0120】
第一流速は、好ましくは、5μL/min〜100μL/minである。5μL/minより遅いと、現在の送液ポンプでは再現性が悪い場合があり、5μL/min以上であれば送液ポンプの再現性もよく、実際の使用に適しているからである。
【0121】
第二流速は移動相を分離カラムに流す際の分析条件で定められたカラム性能を発揮出来る流速であり、サンプルループと試料注入用流路切り替えバルブ、試料注入用流路切り替えバルブ出口から分離カラム充填層前までの配管の内径と長さ、容量及び分離カラムの長さと内径等の条件によっても異なるが、0.02mL/min〜1mL/minとすることが出来る。尚、同じ分析において第一流速の流速の範囲が第二流速より遅い流速の範囲内であれば、第二流速は100μL/min以下でもよい。
【0122】
第二流速と第一流速の比、第二流速(mL/min)/第一流速(mL/min)は1.25〜120とすることが好ましい。第二流速と第一流速の比、第二流速(mL/min)/第一流速(mL/min)は大きい方が本発明の実施による効果が得られやすい。第二流速(mL/min)/第一流速(mL/min)が1.25より小さいと、本発明の効果が得られにくいからである。又、第二流速(mL/min)/第一流速(mL/min)が120より大きいと、2種類の流速の差が大きくなり過ぎ、送液ポンプが安定して送液出来る流速域から第一流速が外れてしまい、現在の送液ポンプでは再現性が悪くなる場合があるからである。より好ましくは、第一流速を5〜80μL/minとし、前記第二流速を100〜600μL/minとして、第二流速(mL/min)/第一流速(mL/min)を100/80〜600/5とすることが好ましい。
【0123】
又、第一流速を例えば0mL/minから0.02mL/minに直線勾配で変化させてから第二流速(0.1mL/min)に切り替えても、本発明の効果が得られる。同じ分析において第一流速の流速の範囲が第二流速より遅い流速の範囲内であれば、第一流速は分析中に増速又は減速の変化をさせても良い。
【0124】
又、第一流速から第二流速への切り替えの勾配が緩やかな場合でも、本発明の効果が得られる。同じ分析において第二流速の流速の範囲が第一流速より速い流速の範囲内であれば、第二流速も分析中に増速又は減速の変化をさせても良い。
【0125】
第一流速から第二流速への変更の勾配について更に述べる。第一流速から第二流速への変更は、第一流速から第二流速へ直接変更することが出来るが、先ず第一流速から、第一流速より速く第二流速より遅い第三流速に変更し、その後第二流速に変更することとしてもよい。例えば第一流速がカラムでの分離に最適な流速より遅く、第二流速がカラムでの分離に最適な流速より速い場合で、第二流速での圧力平衡達成に時間的余裕がある場合においては、第三流速を第二流速より遅い流速、例えば、そのカラムでの分離に最適な流速とすることとしてもよい。この構成によれば、分離性能の向上が得られる。
【0126】
又、第一流速から第二流速への変更は、出来るだけ急勾配で行うことが好ましい。例えば第一流速から第二流速へ変更する時、先ず第一流速から、第二流速より速い第三流速に変更し、その後第二流速に変更することとしてもよい。このようにすることで、第一流速から第二流速への変更の勾配を急にすることが出来、第二流速での圧力の安定化が速く達成されるからである。ただし、ピーク面積に基づく定量を目的としない場合には、目的とする分離を達成するために必要十分な圧力勾配を設定することができる。
【0127】
本発明者は、本発明の試料導入方法における第一流速から第二流速への変更の勾配については、後述する実施例9で汎用のUHPLC装置を使用し、送液ポンプ1台で得られたクロマトグラムから3.4MPa/0.02min=170MPa/minを確認した。
【0128】
次に、本発明の試料導入方法の効果を得られやすいカラムの内径、ピークの溶出容量について述べる。前述したように、一定の流速で試料注入から分析までを行う従来の方法で得られるクロマトグラムでの各ピークの分散値(単位:μL
2)が、本発明の試料導入方法により達成出来る分散値の減少幅に比べて大きいと、本発明の試料導入方法の顕著な効果は得られにくい。ピークの溶出容量が大きいと、溶質が移動相中で拡散する度合いも大きくなり、ピークの分散値が大きくなるからである。一定の流速で試料注入から分析までを行う従来の方法で得られるクロマトグラムのピークの分散値は、カラムの内径が大きいほど(カラムの内径が大きければ、カラム性能を発揮しやすい流速も通常大きくなり、クロマトグラムでの各ピークの溶出容量も大きくなる)、又、ピークの保持時間が長いほど大きくなる(溶出容量も大きくなる)。カラムの内径が4.6mmでも本発明が効果を奏し、溶出容量が5.168mLのピークでも本発明が効果を奏する。
【0129】
更に、汎用のHPLC装置やUHPLC装置等に組み込んで使用する本発明の試料導入装置及び試料導入方法について説明する。試料導入装置10は、
図1に示すように、分離カラム2に試料を導入するための装置であり、試料注入用流路切り替えバルブ3、試料注入装置4及び1台又は2台の送液ポンプ5を備えて構成することが出来る。
【0130】
又、2台の送液ポンプと試料注入装置を備えた汎用のHPLC装置やUHPLC装置等に、更に流路切り替え装置としてのミクロ6方流路切り替えバルブを組み込んで、第一流速から第二流速への変更を流路の切り替えによって行う本発明の試料導入方法及び試料導入装置を実現することが出来る。試料導入装置11は、
図41及び
図42に示すように、分離カラム2に試料を導入するための装置であり、第一流速で試料注入装置から流路に注入された試料バンドを、第一流速のままで分散を抑えつつ移動あるいは分離カラム充填層に導入させるための送液ポンプ51と、第二流速で試料バンドを分離カラム充填層に導入し分離する、あるいは分離するための送液ポンプ52を備えており、2台の送液ポンプがミクロ6方流路切り替えバルブの別々のポートに至る流路に接続されている。又、2台の送液ポンプと試料注入装置、ミクロ6方流路切り替えバルブは図示しない導入制御装置によって制御されている。試料導入装置11は、図示しない導入制御装置、2台の送液ポンプ51、52と図示しない2つの移動相容器、試料注入装置4、ミクロ6方流路切り替えバルブ8を備えて構成することが出来る。このような構成とすることで、第一流速においての試料注入装置4からの試料注入後、流速を第一流速から第二流速へ変更する時に、ミクロ6方流路切り替えバルブ8の切り替えにより、分離カラム2に至る流路につなげる送液ポンプを、第一流速で送液していた送液ポンプ51から、第二流速で分離カラムあるいは分離カラムと同等の抵抗にあらかじめ送液することで背圧がかけられて安定化していた送液ポンプ52に変更することにより、送液ポンプ52において、第二流速での圧力が一定となるまでに送液される移動相が送液ポンプのヘッド内等で圧縮される時間を、もしくは更に分離カラムが第二流速での圧力で平衡化される時間を短縮出来、第一流速から第二流速への変更を速やかに行うことが可能となる。
【0131】
図41に示す試料導入装置11の構成では、2台の送液ポンプ51、52と、図示しない導入制御装置(送液ポンプ、試料注入装置、ミクロ6方流路切り替えバルブを制御する装置)、ループ301を備えたミクロ6方流路切り替えバルブ8を用いた。送液ポンプ51と配管61で接続した、試料注入用流路切り替えバルブ及びサンプルループを備えた試料注入装置4から分離カラム2までの間に、内径0.13mm、長さ15cm(容量約1.99μL)の配管62、ループ301を備えた、試料注入用流路切り替えバルブとは別個のミクロ6方流路切り替えバルブ8、更に内径0.13mm、長さ15cm(容量約1.99μL)のカラム前配管63を接続し、続いて分離カラム2(内径1.0mm、長さ5cm)、検出器セル991を備えた検出器を接続した。試料注入後(
図41(A))、送液ポンプ51の流速0.005mL/min(5μL/min)で6.5μL送液して試料バンドを第一流速でループ301の中に移動させ(
図41(B))、ミクロ6方流路切り替えバルブ8のポジションを切り替えて(
図41(C))、ループ301の中の試料バンドを送液ポンプ52からの送液(流速0.05mL/min)によって第二流速で分離カラム2へ移動させ、導入している(
図41(D))。送液ポンプ52は
ミクロ6方流路切り替えバルブ8のポジションが変わる前(
図41(A)と
図41(B))から流速0.05mL/minで送液していて、分離カラム2により8.2MPaの背圧がかかっていた。このような構成の試料導入装置によれば、流速0.05mL/minで試料注入から分析までを行う従来の方法に比べて高いカラム性能を得ることが出来る。
【0132】
図42に示す試料導入装置11の構成では、2台の送液ポンプ51、52と、図示しない導入制御装置(送液ポンプ、試料注入装置、ミクロ6方流路切り替えバルブを制御する装置)、抵抗管39と抵抗用のカラム38を備えたミクロ6方流路切り替えバルブ8を用いた。送液ポンプ51とミクロ6方流路切り替えバルブ8を介して配管接続した、試料注入用流路切り替えバルブ及びサンプルループを備えた試料注入装置4から分離カラム2までの間に、内径0.13mm、長さ15cm(容量約1.99μL)のカラム前配管63、続いて分離カラム2(内径1.0mm、長さ5cm)、検出器セル991を備えた検出器を接続した。試料注入後(
図42(A))、送液ポンプ51の流速0.005mL/min(5μL/min)で、試料バンドを第一流速で3.5μL送液して試料バンドを分離カラム2の充填層入口側境界を跨ぐまで移動させ(
図42(B))、ミクロ6方流路切り替えバルブ8のポジションを切り替えて(
図42(C))、送液ポンプ52からの送液(流速0.1mL/min)によって試料バンドを第二流速で分離カラム2へ導入し、分離カラム2の充填層で試料バンドを分離している(
図42(D))。抵抗管39と抵抗用カラム38は、分離カラム2、分離カラム2下流の配管及び検出器セル991と同等の抵抗値を持つものを使っているため、送液ポンプ52は試料注入時から、すなわちミクロ6方流路切り替えバルブ8のポジションが変わる前(
図42(A)と
図42(B))から0.1mL/minで送液していて、抵抗管39と抵抗用カラム38により16.9MPaの背圧がかかっていた。このような構成の試料導入装置によれば、流速0.1mL/minで試料注入から分析までを行う従来の方法に比べて高いカラム性能を得ることが出来る。
【0133】
試料導入装置は、送液ポンプを1台又は2台備えた構成とし、第一流速から第二流速への変更を、
図1に示すように送液ポンプ1台又は2台を直接、分離カラム2に至る流路に接続して行ってもよく、
図41及び
図42に示すように送液ポンプ2台をミクロ6方流路切り替えバルブ8等の切り替えバルブを介して分離カラム2に至る流路に接続して行ってもよい。送液ポンプを直接、分離カラム2に至る流路に接続して流速の変更を行う際、第二流速での圧力が一定となるまでに送液される移動相が送液ポンプのヘッド内等で圧縮される時間と、分離カラムが第二流速での圧力で平衡化される時間が必要であるので、送液ポンプ2台を切り替えバルブを介して分離カラム2に至る流路に接続して、分離カラム或いは抵抗用カラムや抵抗管を用いて1台の送液ポンプの第二流速での圧力が一定となるまでに送液される移動相が送液ポンプのヘッド内等で圧縮される時間を、もしくは更に分離カラムが第二流速での圧力で平衡化される時間を短縮して流速の変更を行う方が、第一流速から第二流速への変更の勾配を急にすることが出来る。
【0134】
更に、2台の送液ポンプと試料注入装置を備えた汎用のHPLC装置やUHPLC装置等に、更に流路切り替え装置としてのミクロ6方流路切り替えバルブを組み込んで、第一流速から第二流速への変更を流路の切り替えによって行い、更に分離カラム入口手前に、流路を切り替えることにより試料バンドを進行方向(軸方向)に交差する方向で分割する、試料バンド分割装置77を組み込んで使用する本発明の試料導入方法及び試料導入装置について説明する。試料導入装置12は、
図43に示すように、分離カラム2に試料を導入するための装置であり、第一流速で試料注入装置から流路に注入された試料バンドを、第一流速のままで分散を抑えつつ分離カラム手前の試料バンド分割装置77の前まで移動させるための送液ポンプ51と、第二流速で試料バンドを
図44(A)に示す試料バンド分割装置77を通過させて分離カラム充填層への導入と分離を行う送液ポンプ52、或いは第二流速で試料バンドを
図44(A)に示す試料バンド分割装置77の流路切替点70を跨ぐまで移動させ、更にミクロ6方流路切り替えバルブ8の切り替え操作を加えることで試料バンドの分割と試料バンド前部分の分離カラム充填層への導入と分離を行うための送液ポンプ52を備えており、2台の送液ポンプがミクロ6方流路切り替えバルブの別々のポートに至る流路に接続されている。
【0135】
又、2台の送液ポンプと試料注入装置、ミクロ6方流路切り替えバルブは図示しない導入制御装置によって制御されている。試料導入装置12は、図示しない導入制御装置、2台の送液ポンプ51、52と図示しない2つの移動相容器、試料注入装置4、ミクロ6方流路切り替えバルブ8、試料バンド分割装置77を備えて構成することが出来る。このような構成とすることで、第一流速においての試料注入装置4からの試料注入後、流速を第一流速から第二流速へ変更する時に、ミクロ6方流路切り替えバルブ8の切り替えにより、分離カラム2に至る流路につなげる送液ポンプを、第一流速で送液していた送液ポンプ51から、第二流速に近い流速で分離カラムにあらかじめ送液することで背圧がかけられて安定化していた送液ポンプ52に変更することにより、送液ポンプ52において、第二流速での圧力が一定となるまでに送液される移動相が送液ポンプのヘッド内等で圧縮される時間と、分離カラムが第二流速での圧力で平衡化される時間を短縮出来、第一流速から第二流速への速やかな変更が可能となり、或いは更に試料バンドを分離カラム充填層手前で試料バンドの進行方向に交差する方向で分割し、分離カラム充填層への導入と分離を行うことが可能となる。
【0136】
図43に示す試料導入装置12の構成では、2台の送液ポンプ51、52と、図示しない導入制御装置(送液ポンプ、試料注入装置、ミクロ6方流路切り替えバルブを制御する装置)、ミクロ6方流路切り替えバルブ8を用いた。送液ポンプ51とミクロ6方流路切り替えバルブ8を介して配管接続した試料注入装置4から分離カラム2までの間に、内径0.13mm、長さ15cm(容量約1.99μL)のカラム前配管63、続いて分離カラム2入口手前に
図44(A)に示す、流路を切り替えることにより試料バンドを分割する、試料バンド分割装置77を取り付け、その先に分離カラム2(内径1.0mm、長さ5cm)、検出器セル991を備えた検出器を接続した。試料注入後(
図43(A))、送液ポンプ51の流速0.005mL/min(5μL/min)で試料バンド100を第一流速で2μL送液して試料バンド100を分離カラム2入口手前に取り付けた、試料バンド分割装置77の手前まで移動させ(
図43(B))、ミクロ6方流路切り替えバルブ8のポジションを切り替えて(
図43(C))、送液ポンプ51は停止し、送液ポンプ52からの送液(0.1mL/min)によって試料バンド100を第二流速で分離カラム2へ導入している(
図43(D))。送液ポンプ52は試料注入時から、即ちミクロ6方流路切り替えバルブ8のポジションが変わる前から0.095mL/minで送液していて、20.8MPa程の背圧がかかっていた。このような構成の試料導入装置によれば、流速0.1mL/minで試料注入から分析までを行う従来の方法に比べて高いカラム性能を得ることが出来る。又、
図43に示す構成では、
図44(A)に示す試料バンド分割装置77を使用して、第1送液ポートと第2送液ポートを切り替えることにより試料バンドを分割することが可能だが、ここでは
図43に示す構成で、試料バンドの分割は行わない場合について述べている。試料バンドの分割を行う場合については後述する。
【0137】
図43に示す試料導入装置12の構成では、2台の送液ポンプ51、52と、図示しない導入制御装置(送液ポンプ、試料注入装置、ミクロ6方流路切り替えバルブを制御する装置)、ミクロ6方流路切り替えバルブ8を用いた。送液ポンプ51とミクロ6方流路切り替えバルブ8を介して配管接続した試料注入装置4から分離カラム2までの間に、内径0.13mm、長さ15cm(容量約1.99μL)のカラム前配管63、続いて分離カラム2入口手前に
図44(A)に示す、流路を切り替えることにより試料バンドを分割する、試料バンド分割装置77を取り付け、その先に分離カラム2(内径2.1mm、長さ5cm)、検出器セル991を備えた検出器を接続した。試料注入後(
図43(A))、送液ポンプ51の流速0.005mL/min(5μL/min)で1μL送液して試料バンドを分離カラム2入口手前に取り付けた、流路を切り替えることにより試料バンドを分割する、試料バンド分割装置77の手前まで移動させ(
図43(B))、ミクロ6方流路切り替えバルブ8のポジションを切り替えて(
図43(C))、送液ポンプ51は停止し、送液ポンプ52からの送液(0.2mL/min)によって試料バンドを試料バンド分割装置77の流路切替点70を跨ぐまで移動させ(
図43(D))、ミクロ6方流路切り替えバルブ8のポジションを
図43(B)のように切り替えて、第2送液ポート65からの送液(0.2mL/min)によって試料バンドを進行方向に交差する方向で分割し、試料バンド前部分を分離カラム充填層へ導入し分離することが出来る。更に、試料バンド前部分の分離終了後、ミクロ6方流路切り替えバルブ8のポジションを
図43(D)のように切り替えて第1送液ポート64内に留置されていた試料バンド後部分を分離カラム充填層へ導入し分離することが出来る。送液ポンプ52は試料注入時、ミクロ6方切り替えバルブ8のポジションが変わる前から0.195mL/minで送液していて、8.2MPa程の背圧がかかっていた。このような構成の試料導入装置によれば、流速0.2mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて高いカラム性能を得ることが出来る。
【0138】
T字コネクター(3方ジョイント)と二重管を用いて、二重管の内管を第1送液ポート、外管を第2送液ポートとする試料バンド分割装置の構造は、入口側に一般的なカラムエンドジョイント(1つの接続管ポートを持つカラムエンドジョイント)を持つ分離カラムについて、カラム入口のフィルター(フリット)直前で試料バンドを分割することを可能とする。
図44(B)に示すように、T字コネクターの内径が第2送液ポートの外径よりも大きければ、第2送液ポートがT字コネクターの内側に入っていても構わない。第2送液ポートに送液するための枝管がT字コネクターの内側に入っていても構わない。また、カラム入口側のエンドユニオン内流路の内径が第1送液ポートの外径よりも大きければ、第1送液ポートと第2送液ポートの出口を同一平面上にすることが出来るし、第1送液ポートがエンドユニオン内流路内に入っていても構わない。第1送液ポートの出口にある流路切替点70がフリット205に近い方が、試料バンドが分割されてから分離カラム充填層に導入されるまでに拡散する配管の容量が少なくなるため、より高いカラム性能を発揮出来る。各管の間及びT字コネクターやカラムエンドジョイントとの接続は適切なフェラルとオシネ或いはナットを用いて行う。試料バンド分割装置を構成する部品については、試料バンドのカラム前での拡散を大きくしないように、適切な内径や容量のものを用いる。例えば、T字コネクターは、一般的な外径1/16インチ(外径1.6mm)チューブが接続出来るものである。第1送液ポートは、内径0.05〜0.25mm、外径0.1〜0.4mmのステンレススチール管(長さ10〜25cm)であり、第2送液ポートは、内径0.4〜1.0mm、外径1.6mmのステンレススチール管である。第2送液ポートに送液するための枝管は内径0.1〜0.5mm、外径1.6mmのステンレススチール管である。
【0139】
図44A及び図44Bに示すように、第1送液ポートと第2送液ポートの出口は同一平面上の構造である。又、二重管の内管が分離カラムのフリットや充填層を傷つけない限り、第1送液ポートは第2送液ポートより長くても、又少し短くても良い。又、フリットを突き抜けて、分離カラム充填層に直接的に試料を導入出来る構成としても良い。
【0140】
更に、1台の送液ポンプと試料注入装置を備えた汎用のHPLC装置やUHPLC装置等に更にミクロ6方流路切り替えバルブを組み込み、更に送液ポンプ出口を分岐して一方は試料注入装置を介してミクロ6方流路切り替えバルブにつなぎ、もう一方はミクロ6方流路切り替えバルブの別のポートにつなぐことにより試料バンドを分割出来るようにした、試料バンド分割装置を組み込んで使用する本発明の試料導入装置及び試料導入方法について説明する。試料導入装置13は、
図45に示すように、分離カラム2に試料を導入するための装置であり、第一流速で試料注入装置から流路に注入された試料バンドを、第一流速のままで分散を抑えつつ分離カラムと試料注入装置の間のミクロ6方流路切り替えバルブ内に移動させて一時的に留置し、送液ポンプの流速を第二流速に変更して送液ポンプと分離カラムを安定化させた後に、ミクロ6方流路切り替えバルブ内に留置されていた試料バンドを第二流速で分離カラム2の充填層に導入し分離することが出来る。又、試料導入装置13は、
図46に示すように、分離カラム2に試料を導入するための装置であり、第一流速で試料注入装置から流路に注入された試料バンドを、第一流速のままで分散を抑えつつミクロ6方流路切り替えバルブのポートaを跨ぐまで移動させてから(
図46(B))、ミクロ6方流路切り替えバルブのポジションを切り替えて試料バンドを分割し、試料バンドの後部分をミクロ6方流路切り替えバルブ内に一時的に留置し、試料バンドの前部分を分離カラム2の充填層に導入して分離し(
図46(C))、その後留置されていた試料バンドの後部分を、ミクロ6方流路切り替えバルブのポジションを切り替えることで分離カラム2の充填層に導入して分離することが出来る(
図46(D))。試料導入装置13は、図示しない導入制御装置(送液ポンプ、試料注入装置、ミクロ6方流路切り替えバルブを制御する装置)、1台の送液ポンプ55と図示しない移動相容器、試料注入装置4、ミクロ6方流路切り替えバルブ8を備えて構成することが出来る。
【0141】
このような構成とすることで、試料注入後、流速を第一流速から第二流速へ変更する時に、ミクロ6方流路切り替えバルブ8の切り替えと送液ポンプ55の流速の変更を行うことにより、第二流速で送液ポンプのヘッド内等と分離カラムが平衡化された後に試料バンドの分離カラムへの導入と分離を行うことが可能となる。又、このような構成とすることで、試料注入後、流速を第一流速から第二流速へ変更する時に、ミクロ6方流路切り替えバルブ8の切り替えと送液ポンプ55の流速の変更を行うことにより、送液ポンプ1台で、分離カラム充填層の前の流路で試料バンドの分散を抑えることと、試料バンドの進行方向に交差する方向で試料バンドを分割し、分離カラム充填層に導入し、分離を行うことが可能となる。
【0142】
図45に示す試料導入装置13の構成では、送液ポンプ55を1台と、図示しない導入制御装置(送液ポンプ、試料注入装置、ミクロ6方流路切り替えバルブを制御する装置)、ミクロ6方流路切り替えバルブ8を用いた。送液ポンプ55からの流路を2方に分岐し、1方は試料注入装置4を介してミクロ6方流路切り替えバルブ8のポートbに接続し、もう1方はミクロ6方流路切り替えバルブ8のポートfに接続している。ミクロ6方流路切り替えバルブ8のポートaに内径0.13mm、長さ15cm(容量約1.99μL)のカラム前配管63、続いて分離カラム2、検出器セル991を備えた検出器を接続した。試料注入後(
図45(A))、送液ポンプ55の流速0.005mL/min(5μL/min)で試料バンド100を第一流速で2μL送液して試料バンド100をミクロ6方流路切り替えバルブ8内の流路まで移動させ(
図45(B))、ミクロ6方流路切り替えバルブ8のポジションを切り替えて、試料バンド100をミクロ6方流路切り替えバルブ8内に一時的に留置する(
図45(C))。この間に送液ポンプ55の流速を0.1mL/minに上げ、その後ミクロ6方流路切り替えバルブ8のポジションを切り替えて、試料バンド100を第二流速で分離カラム2へ導入している(
図45(D))。このような構成の試料導入装置によれば、流速0.1mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて高いカラム性能を得ることが出来る。
【0143】
又、
図46(
図45と流路は同じ)に示す試料導入装置13の構成では、試料注入後(
図46(A))、送液ポンプ55の流速0.005mL/min(5μL/min)で、試料バンド100を第一流速で2.6μL送液して、試料バンド100をミクロ6方流路切り替えバルブ8内の流路を跨いで試料バンド100の前部分がミクロ6方流路切り替えバルブ8の外に出るまで移動させ(
図46(B))、ミクロ6方流路切り替えバルブ8のポジションを切り替えて、試料バンド100の後部分をミクロ6方流路切り替えバルブ8内に一時的に留置する。上記ポジションの切り替えと同時に送液ポンプ55の流速を0.1mL/minに上げ、試料バンド100を第二流速で分離カラム2へ導入し分離溶出している(
図46(C))。試料バンド100の前部分の分離溶出後、ミクロ6方流路切り替えバルブ8のポジションを切り替えて、試料バンド100の後部分を分離カラム2へ導入している(
図46(D))。このような構成の試料導入装置によれば、流速0.1mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて高いカラム性能を得ることが出来る。
【0144】
図43、
図46のような構成の試料導入装置を用いる試料導入方法によれば、試料バンドは進行方向(軸方向)に交差する方向で分割されているため、試料バンドの分散が分離カラム充填層に導入される前に減少している。
【0145】
又、
図46に示す構成では、送液ポンプ55と試料注入装置の間の配管を分岐してミクロ6方流路切り替えバルブのポートfにつなぐのではなく、送液ポンプ55と試料注入装置の間の配管は分岐せず、別途送液ポンプを用意して、この送液ポンプからの流路をミクロ6方流路切り替えバルブのポートfにつなぐ構成でも、本発明の、試料バンドの分割を伴う試料導入方法を実施出来る。
【0146】
又、
図1の試料注入装置と分離カラムの間の流路に
図44A又は図44Bに示す試料分割装置を設置し、第2送液ポート送液用に別途送液ポンプからの流路をつなぐ構成でも、本発明の、試料バンドの分割を伴う試料導入方法を実施出来る。
【0147】
このように、本発明は、従来液体クロマトグラフィーで行われて来た、試料注入から分離溶出までをカラム性能を発揮出来る一定の流速で行う方法に対し、試料注入装置から分離カラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時まで試料を移動させる間の少なくとも一部の間は上記一定の流速(第二流速)よりも低い流速(第一流速)とし、その後第二流速に変更するという簡単な操作により、従来の方法より高いカラム性能を発揮することが出来る発明である。第一流速から第二流速への変更は、送液ポンプ1台で行うことが出来るし、送液ポンプ1台と流路切り替えバルブを使用して行うことも、送液ポンプ2台と流路切り替えバルブを使用して行うことも出来る。又、本発明の効果を、従来の方法で得られたクロマトグラムデータを材料として予測することが出来る。
【0148】
本発明の試料導入方法の効果を予測するには、後述する実施例27(
図47)で行った予測計算のように、第二流速(0.1mL/min)で試料注入から分離カラムを用いた分離溶出までを行う従来の方法で得られる第1クロマトグラム(
図25(A)(比較例))と、分離カラムの代わりにゼロデッドボリュームユニオンを接続し、第一流速(0.01mL/min)で試料注入から溶出までを行う従来の方法で得られる第2クロマトグラム(
図47(B))と、分離カラムの代わりにゼロデッドボリュームユニオンを接続し、第二流速(0.1mL/min)で試料注入から溶出までを行う従来の方法で得られる第3クロマトグラム(
図47(C))を材料として、第1クロマトグラムで得られるピークの分散値から第3クロマトグラムで得られるピークの分散値を差し引いて、第2クロマトグラムで得られるピークの分散値を加えることで、第1クロマトグラムを得るのに用いた分離カラムを用いて、第2クロマトグラムを得るのに用いた第一流速と第3クロマトグラムを得るのに用いた第二流速を使用して本発明の試料導入方法を実施した場合に、第1クロマトグラムの
図25(A)(比較例)からのカラム性能改善の程度を見積もることが出来る。
【0149】
ここで、分離カラムの代わりに接続するゼロデッドボリュームユニオン(ZDU)は、流速100μL/min以下において、ゼロデッドボリュームユニオン内の流路径が小さ過ぎると流路抵抗が過大になり望ましくないが、試料バンドの分散をより効果的に抑えるために、内部容量は少なく、流路径は小さい方が望ましい。ゼロデッドボリュームユニオンの好ましい内部容量は0.1μL以下であり、好ましい流路径は0.254mm以下である。
【0150】
より簡便に本発明の試料導入方法の効果を予測する方法としては、例えば
図47(B)、
図47(C)のように、使用するHPLC装置やUHPLC装置等でカラムの代わりにゼロデッドボリュームユニオンを接続し、試料を従来の方法で注入してクロマトグラムデータを採取し、両者の分散値の差(例えば0.7μL
2)を確認しておき、
図25(A)(比較例)のように
図47(C)と同じ流速で試料注入から分析までを行ったクロマトグラムで得られたピークのうちいくつかを選んで半値幅から分散値を計算し(例えば
図25(A)(比較例)でのピークNo.1では1.533μL
2)、続いて1.533μL
2−0.7μL
2=0.833μL
2から半値幅を計算すれば(この場合(√0.833)×2.35/100=0.0214min)、
図47(B)で用いた流速を第一流速、
図47(C)で用いた流速を第二流速として本発明の試料導入方法を実施した時に、
図25(C)に近い水準のクロマトグラムが得られるかの目安になる。
図25(C)ではピークNo.1の半値幅は0.0210minが得られており、予測の半値幅0.0214minに近い値になっている。
【実施例】
【0151】
以下、本発明の装置と操作法を具体化する方法を、実施例として比較例と共に説明する。表1は各実施例、比較例における試料注入装置からカラム前までに接続した配管のサイズ、カラムサイズ、第一流速での送液容量(試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速で試料バンドを移動させた容量)、第一流速、第二流速(カラム内で分離を行い、分析を行った流速)、図番号、使用装置、試料バンドの分割の有無、検出器セル容量(実施例1〜26と30では容量6nLのセルを使用、実施例29では容量1μLのセルを使用)を示したものである。尚、以下の例において、従来の試料注入方法(試料注入用流路切り替えバルブの操作によって、試料ループ内の試料バンドを移動相の流路へ組み込むこと)を「従来の試料注入方法」又は「従来の試料注入法」と表現する。
【0152】
【表1】
【実施例1】
【0153】
汎用のUHPLC装置のカラム外での溶質バンドの分散がどれくらいの値なのかを確認するため、カラムに代えてゼロデッドボリュームユニオンを用いた状態で、移動相の流速と試料中の溶質の分散の関係を確認した。
【0154】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.254mm、長さ15.2cmのPEEK管(容量約7.7μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムに代えてゼロデッドボリュームユニオン(U−435、内径0.25mm、内部容量0.02μL、IDEX社、以下ZDUと表記)を用いた。移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.005、0.01、0.02、0.05、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.6、0.8mL/minの11種の流速で送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、、ZDU出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料I:ウラシル(U、0.2mg/mL)のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。試料注入容量は0.2μLとした。
【0155】
各流速(0.005、0.01、0.02、0.05、0.1、0.3mL/min)での溶質バンドの溶出容量(μL)とピーク幅及び形状を
図8(A)〜
図8(F)に示す。又、移動相の流速(11種)と溶質バンドの分散の関係のプロットを
図10(A)に示す。
図10(A)において、溶質バンドの分散は、モーメント法により計算した。
【0156】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムに代えてZDU(U−435、内径0.25mm、内部容量0.02μL、IDEX社)を用いた。移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.005、0.01、0.02、0.05、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4mL/minの9種の流速で送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、ZDU出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料I:ウラシル(U、0.2mg/mL)のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。試料注入容量は0.2μLとした。
【0157】
各流速(0.005、0.01、0.02、0.05、0.1、0.3mL/min)での溶質バンドの溶出容量(μL)とピーク幅及び形状を
図9(A)〜
図9(F)に示す。又、移動相の流速(9種)と溶質バンドの分散の関係のプロットを
図10(B)と
図10(C)に示す。
図10(C)は
図10(B)を縦軸方向に拡大した図である。溶質バンドの分散は、モーメント法により計算した。
【0158】
図8、
図9及び
図10に示すように、UHPLC装置の試料注入用流路切り替えバルブからZDUまでの配管に内径0.254mm、長さ15.2cmのPEEK管を用いた場合では、流速0.005〜0.8mL/minの間で、内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管を用いた場合では、流速0.005〜0.4mL/minの間で、流速が小さい方が試料ピークの対称性が良く、試料バンドの分散を小さく保つことが出来ることを確認した。又、試料の濃度と注入容量、試料注入装置からZDUまでの配管の長さ、流速が一定であれば、配管の内径が小さいほど注入された試料バンドの分散の増加を抑えることが出来ることを確認した。
【0159】
実施例1の結果と、非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13、非特許文献14に記載されている内容から、試料中の各溶質の濃度及び試料溶媒と試料注入容量、試料注入装置からカラムまでの配管の長さが一定であれば、どのような内径の配管でも、流速0.1μL/min以上では流速が大きくなるほど注入された試料のカラム外における溶質バンドの分散(σ
extra2)が大きくなること、又、その勾配は配管の内径が大きい方が急になることが予測できる。
【0160】
図8(A)から
図8(E)までに示されるデータは、図示しないがもう1回ずつ採取した。それぞれのピークの溶出容量(保持時間×流速)の2回分の平均値(9.69、9.77、9.85、10.20、10.25)を更に平均すると、((9.69+9.77+9.85+10.20+10.25)/5)は9.952μLであった。また、
図9(A)から
図9(E)までに示されるデータは、図示しないがもう1回ずつ採取した。それぞれのピークの溶出容量(保持時間×流速)の2回分の平均値(3.07、3.31、3.35、3.35、3.50)を更に平均すると、((3.07+3.31+3.35+3.35+3.50)/5)は3.316μLであった。
【0161】
これらからZDUの容量(0.02μL)とZDU出口から検出器セル入り口までの接続管の容量(1.08μL)と検出器セルの容量(6nL)を差し引くと、それぞれ9.952−1.106=8.846μL、3.316−1.106=2.21μLであった。一方で、実施例4から実施例26までと実施例29で使用したカラムKinetex C18(充填剤径2.6μm、内径2.1 mm、長さ5cm、Phenomenex社)とInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)の、
図3に示すカラム入口側のエンドユニオン内流路の容量、コーン(分散スペース)の容量、フリット空隙の容量を合計すると、どちらのカラムについても約1.10μLであることが確認出来ていたため、実施例4以降で、試料バンドの分散を小さく保つことが出来る流速(第一流速)を様々な値に設定し、また、第一流速で試料バンドを移動させる容量を検討する際には、試料注入用流路切り替えバルブ出口からカラム前までの配管に内径0.254mm、長さ15.2cmのPEEK管を用いた場合には8.846+1.1=9.946≒10μL、試料注入用流路切り替えバルブからカラム前までの配管に内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管を用いた場合には2.21+1.1=3.31≒3.5μLを、検討する容量に加えることとした。
【実施例2】
【0162】
試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を伴う試料導入方法によるカラム性能向上の確認のため、従来の試料注入法(
図11(A))(比較例)と本発明の試料導入方法(
図11(B))におけるカラム性能の比較を行った。
【0163】
尚、
図11〜
図40、
図49及び
図51において、横軸は溶出時間(min)を、右側の縦軸は圧力を、左側の縦軸はUV検出器の信号強度を示している。圧力は送液ポンプ出口で測定されていて、各図のクロマトグラムの下に測定された圧力のトレース(以下、圧力トレースと表記)を示している。クロマトグラムはUV検出器で測定されている。クロマトグラムと圧力トレースの横軸はいずれも、試料注入装置の試料注入用流路切り替えバルブが切り替わり、流路に試料が注入された時間を0minとしている。
【0164】
又、
図11〜
図40、
図49、
図51において、各図のクロマトグラムの左上には、試料注入用流路切り替えバルブ出口からカラム入口までの配管サイズ(Tube:長さと内径を表記)、カラムサイズ(Column:長さと内径を表記)、流速(F.R.:流速と、流速を変化させた時間を表記)を記載している。各図のクロマトグラムの右上の表には、各ピークの番号と保持時間(R.T.の列に表記、単位はmin)、半値幅(H.W.の列に表記、単位はmin)を記載している。
【0165】
又、試料中の10種の化合物は
図11〜
図40、
図49、
図51において同じであり、使用したカラム間ではこれらの溶出順序も同じであったので、クロマトグラムのピーク番号は
図11(A)でのみ各ピークの上に付していて、他のクロマトグラムのピーク番号は、ピークの溶出順序に従った番号をクロマトグラムの右上の表に記載している。
【0166】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.254mm、長さ60.5cmのPEEK管(容量約30.7μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムInertsil ODS−4(充填剤径3μm、内径4.6mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)を用いて、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を1.0mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0167】
図11(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを5μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速1.0mL/minで送液した。
【0168】
図11(B)は、試料IIを5μL注入する前に流速を0.05mL/minとしておき、注入の0.60分後(注入から30μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):30μLと記載)から流速を1.0mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の7.00分後から流速を0.05mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0169】
図11(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPh(ピーク番号1〜10)についてそれぞれ、半値幅0.0301、0.0307、0.0357、0.0424、0.0505、0.0540、0.0636、0.0819、0.1122及び0.1587minが得られている。
【0170】
これに対して
図11(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0242、0.0267、0.0331、0.0394、0.0484、0.0523、0.0614、0.0814、0.1101及び0.1504minが得られていて、
図11(A)の比較例に比べてそれぞれ、19.6、13.0、7.3、7.1、4.2、3.1、3.5、0.6、1.9、5.2%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0171】
又、
図11(A)(比較例)にてOcPh(ピーク番号10)の溶出容量は5.168mLであり、
図11(B)にて半値幅の減少が確認された、最も溶出容量の大きい溶質のピークであった。又、試料注入後、流速0.05mL/minで30μL送液してから流速を1mL/minに上げて分析する流速プログラムにより、流速1mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて高いカラム性能が得られることを確認した。
【0172】
又、
図11(B)において、0.05mL/minから1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.90−0.60=0.30minであり、0.05mL/minで安定していた圧力(0.9MPa)と1mL/minで安定した圧力(22.5MPa)の差は21.6MPaであることから、0.05mL/minから1mL/minへの変化の勾配は、21.6/0.30=72.0MPa/minであった。
【実施例3】
【0173】
試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を伴う試料導入方法によるカラム性能向上の確認のため、従来の試料注入法(
図12(A))(比較例)と本発明の試料導入方法(
図12(B))におけるカラム性能の比較を行った。
【0174】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.254mm、長さ15.2cmのPEEK管(容量約7.7μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムInertSustain C18(充填剤径3μm、内径3.0mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)を用いて、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.6mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0175】
図12(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを3μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.6mL/minで送液した。
【0176】
図12(B)は、試料IIを3μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.50分後(注入から5μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):5μLと記載)から流速を0.6mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。
【0177】
図12(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPh(ピーク番号1〜10)についてそれぞれ、半値幅0.0228、0.0236、0.0257、0.0297、0.0355、0.0390、0.0448、0.0603、0.0816及び0.1152minが得られている。
【0178】
これに対して
図12(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0227、0.0213、0.0232、0.0285、0.0339、0.0373、0.0428、0.0584、0.0801及び0.1146minが得られていて、
図12(A)の比較例に比べてそれぞれ、0.4、9.7、10.1、4.0、4.5、4.4、4.5、3.2、1.8、0.5%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0179】
又、
図12(A)(比較例)にてOcPh(ピーク番号10)の溶出容量は2.347mLであり、
図12(B)にて半値幅の減少が確認された、最も溶出容量の大きい溶質のピークであった。又、試料注入後、流速0.01mL/minで5μL送液してから流速を0.6mL/minに上げて分析する流速プログラムにより、流速0.6mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて高いカラム性能が得られることを確認した。
【0180】
又、
図12(B)において、0.01mL/minから0.6mL/minへの流速の変化に要する時間は0.75−0.50=0.25minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(0.2MPa)と0.6mL/minで安定した圧力(10.0MPa)の差は9.8MPaであることから、0.01mL/minから0.6mL/minへの変化の勾配は、9.8/0.25=39.2MPa/minであった。
【実施例4】
【0181】
試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を伴う試料導入方法によるカラム性能向上の確認のため、従来の試料注入法(
図13(A))(比較例)と本発明の試料導入方法(
図13(B))におけるカラム性能の比較を行った。又、本発明の試料導入方法における流速の変化の勾配がピーク幅に与える効果を確認した(
図13(C))。
【0182】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.254mm、長さ15.2cmのPEEK管(容量約7.7μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムKinetex C18(充填剤径2.6μm、内径2.1 mm、長さ5cm、Phenomenex社)を用いて、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.3mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0183】
図13(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを2μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.3mL/minで送液した。
【0184】
図13(B)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.50分後(注入から5μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):5μLと記載)から流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の3.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0185】
図13(C)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.50分後(注入から5μL送液後)から0.10分間は流速を0.4mL/minとし、注入の0.60分後から流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の3.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0186】
図13(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0310、0.0321、0.0301、0.0286、0.0324、0.0309、0.0336、0.0387及び0.0477minが得られている。BuPhについては、BePhと重なっているため、データ解析用のソフトウェア(EZChrom Elite、Agilent Technologies社)の自動計算で半値幅を認識しなかった。
【0187】
これに対して
図13(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0262、0.0230、0.0187、0.0201、0.0209、0.0226、0.0259、0.0313及び0.0424minが得られている。BePhについては、データ解析用のソフトウェアの自動計算で半値幅を認識しなかった。
図13(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、15.5、28.3、37.9、29.7、26.9、22.9、19.1及び11.1%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0188】
又、
図13(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0271、0.0231、0.0207、0.0205、0.0214、0.0231、0.0265、0.0322及び0.0419minが得られている。BePhについては、データ解析用のソフトウェアの自動計算で半値幅を認識しなかった。
図13(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、12.6、28.0、31.2、28.3、25.2、21.1、16.8及び12.2%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0189】
図13(B)の方が
図13(C)に比べて、わずかに高いカラム性能が発揮されている。この理由は、
図13(B)では0.01mL/minから0.3mL/minへの流速の変化の勾配が
図13(C)に比べてわずかに緩やかであったので、カラム充填層前の配管中(少なくとも約7.7μLの容量がある)で試料がその分散の増加を抑えることが出来る流速で送液された送液容量が
図13(C)に比べて実質多かったためと思われる。
【0190】
又、試料注入後0.01mL/minで5μL送液してから流速を0.3mL/minに上げて分析する流速プログラムにより、流速0.3mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて高いカラム性能が得られることを確認した。
【0191】
又、
図13(B)において、0.01mL/minから0.3mL/minへの流速の変化に要する時間は0.81−0.50=0.31minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(0.3MPa)と0.3mL/minで安定した圧力(10.1MPa)の差は9.8MPaであることから、0.01mL/minから0.3mL/minへの変化の勾配は、9.8/0.31=31.6MPa/minであった。
【0192】
又、
図13(C)において、0.01mL/minから0.3mL/minへの流速の変化に要する時間は0.62−0.50=0.12minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(0.3MPa)と0.3mL/minで安定した圧力(10.1MPa)の差は9.8MPaであることから、0.01mL/minから0.3mL/minへの変化の勾配は、9.8/0.12=81.7MPa/minであった。
【実施例5】
【0193】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行う時間(第一流速による送液容量)が、ピーク幅に与える効果を確認した(
図13(C)、
図14(A)、
図14(B)及び
図14(C))。又、従来の試料注入法(
図13(A))(比較例)との比較を行った。
【0194】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.254mm、長さ15.2cmのPEEK管(容量約7.7μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムKinetex C18(充填剤径2.6μm、内径2.1 mm、長さ5cm、Phenomenex社)を用いて、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.3mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0195】
図13(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを2μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.3mL/minで送液した。
【0196】
図13(C)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.50分後(注入から5μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):5μLと記載)から0.10分間は流速を0.4mL/minとし、注入の0.60分後から流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の3.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0197】
図14(A)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.80分後(注入から8μL送液後)から0.10分間は流速を0.4mL/minとし、注入の0.90分後から流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の3.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0198】
図14(B)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の1.00分後(注入から10μL送液後)から0.10分間は流速を0.4mL/minとし、注入の1.10分後から流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の3.50分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0199】
図14(C)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の1.20分後(注入から12μL送液後)から0.10分間は流速を0.4mL/minとし、注入の1.30分後から流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の3.50分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0200】
図13(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0310、0.0321、0.0301、0.0286、0.0324、0.0309、0.0336、0.0387及び0.0477minが得られている。BuPhについては、BePhと重なっているため、データ解析用のソフトウェア(EZChrom Elite、Agilent Technologies社)の自動計算で半値幅を認識しなかった。
【0201】
これに対して
図13(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0271、0.0231、0.0207、0.0205、0.0214、0.0231、0.0265、0.0322及び0.0419minが得られている。BePhについては、データ解析用のソフトウェアの自動計算で半値幅を認識しなかった。
図13(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、12.6、28.0、31.2、28.3、25.2、21.1、16.8及び12.2%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0202】
図14(A)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0239、0.0175、0.0157、0.0170、0.0175、0.0187、0.0231、0.0297及び0.0418minが得られている。BePhについては、データ解析用のソフトウェアの自動計算で半値幅を認識しなかった。
図13(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、22.9、45.5、47.8、40.6、39.5、31.3、23.3及び12.4%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0203】
図14(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0202、0.0155、0.0127、0.0137、0.0157、0.0182、0.0222、0.0284及び0.0419minが得られている。BePhについては、データ解析用のソフトウェアの自動計算で半値幅を認識しなかった。
図13(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、34.8、51.7、57.8、52.1、41.1、33.9、26.6及び12.2%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0204】
図14(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0167、0.0133、0.0133、0.0141、0.0160、0.0184、0.0238、0.0311及び0.0424minが得られている。BePhについては、データ解析用のソフトウェアの自動計算で半値幅を認識しなかった。
図13(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、46.1、58.6、55.8、50.7、40.5、29.2、19.6及び11.1%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0205】
試料注入から流速0.01mL/minで5、8、10及び12μL送液し、0.1分間は流速を0.4mL/minとし、その後流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラム(
図13(C)、
図14(A)、
図14(B)及び
図14(C))の中では、概ね
図14(B)のクロマトグラムのピークの半値幅が最も小さくなった。
【0206】
試料注入後0.01mL/minで10μL送液してから流速を0.3mL/minに上げる流速プログラムによる分析が、流速0.3mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて最も高いカラム性能が得られることを確認した。試料注入用流路切り替えバルブからカラム入口までの配管の容量は約7.7μLであるが、実際は試料注入用流路切り替えバルブとサンプルループ内の容量と、
図3に示す、カラム入口側内部の、カラム充填層入口側の境界までの容量も存在するため、実際に試料注入装置からカラム充填層入口側の境界を試料バンドが跨ぐまで試料バンドを移動させるのに約10μLの送液が必要であることと、試料注入装置からカラムまで試料バンドを運ぶのに12μL送液してしまうと、0.01mL/minというカラム性能が出難い流速でカラム充填層に試料が入り、分離が行われてしまうために、最も高いカラム性能は得られないことを確認した。
【0207】
又、
図14(A)において、0.01mL/minから0.3mL/minへの流速の変化に要する時間は0.94−0.80=0.14minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(0.3MPa)と0.3mL/minで安定した圧力(10.1MPa)の差は9.8MPaであることから、0.01mL/minから0.3mL/minへの変化の勾配は、9.8/0.14=70.0MPa/minであった。
【0208】
又、
図14(B)において、0.01mL/minから0.3mL/minへの流速の変化に要する時間は1.15−1.00=0.15minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(0.3MPa)と0.3mL/minで安定した圧力(10.1MPa)の差は9.8MPaであることから、0.01mL/minから0.3mL/minへの変化の勾配は、9.8/0.15=65.3MPa/minであった。
【0209】
又、
図14(C)において、0.01mL/minから0.3mL/minへの流速の変化に要する時間は1.37−1.20=0.17minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(0.3MPa)と0.3mL/minで安定した圧力(10.1MPa)の差は9.8MPaであることから、0.01mL/minから0.3mL/minへの変化の勾配は、9.8/0.17=57.6MPa/minであった。
【実施例6】
【0210】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行うにあたり、第一流速がピーク形状に与える効果を確認した(
図14(B)、
図15(A)、
図15(B)及び
図15(C))。又、従来の試料注入法(
図13(A))(比較例)との比較を行った。
【0211】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.254mm、長さ15.2cmのPEEK管(容量約7.7μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムKinetex C18(充填剤径2.6μm、内径2.1 mm、長さ5cm、Phenomenex社)を用いて、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.3mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0212】
図13(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを2μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.3mL/minで送液した。
【0213】
図14(B)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の1.00分後(注入から10μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):10μLと記載)から0.10分間は流速を0.4mL/minとし、注入の1.10分後から流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の3.50分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0214】
図15(A)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.02mL/minとしておき、注入の0.50分後(注入から10μL送液後)から0.09分間は流速を0.4mL/minとし、注入の0.59分後から流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の3.00分後から流速を0.02mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0215】
図15(B)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.05mL/minとしておき、注入の0.20分後(注入から10μL送液後)から0.08分間は流速を0.4mL/minとし、注入の0.28分後から流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の3.00分後から流速を0.05mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0216】
図15(C)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.1mL/minとしておき、注入の0.10分後(注入から10μL送液後)から0.08分間は流速を0.4mL/minとし、注入の0.18分後から流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の2.50分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0217】
図13(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0310、0.0321、0.0301、0.0286、0.0324、0.0309、0.0336、0.0387及び0.0477minが得られている。BuPhについては、BePhと重なっているため、データ解析用のソフトウェア(EZChrom Elite、Agilent Technologies社)の自動計算で半値幅を認識しなかった。
【0218】
これに対して
図14(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0202、0.0155、0.0127、0.0137、0.0157、0.0182、0.0222、0.0284及び0.0419minが得られている。BePhについては、データ解析用のソフトウェアの自動計算で半値幅を認識しなかった。
図13(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、34.8、51.7、57.8、52.1、41.1、33.9、26.6及び12.2%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0219】
図15(A)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0198、0.0157、0.0149、0.0160、0.0164、0.0191、0.0234、0.0299及び0.0404minが得られている。BePhについては、データ解析用のソフトウェアの自動計算で半値幅を認識しなかった。
図13(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、36.1、51.1、50.5、44.1、38.2、30.4、22.7及び15.3%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0220】
図15(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0223、0.0204、0.0170、0.0198、0.0204、0.0218、0.0264、0.0317及び0.0426minが得られている。BePhについては、データ解析用のソフトウェアの自動計算で半値幅を認識しなかった。
図13(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、28.1、36.4、43.5、30.8、29.5、21.4、18.1及び10.7%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0221】
図15(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0277、0.0236、0.0210、0.0224、0.0232、0.0251、0.0270、0.0346及び0.0427minが得られている。BePhについては、データ解析用のソフトウェアの自動計算で半値幅を認識しなかった。
図13(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、10.6、26.5、30.2、21.7、18.8、19.6、10.6及び10.5%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0222】
試料注入から流速0.01、0.02、0.05及び0.1mL/minで10μL送液し、その後、流速が0.3mL/minで安定する圧力に到達するまでの約0.1分間は流速を0.4mL/minとし、その後流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラム(
図14(B)、
図15(A)、
図15(B)及び
図15(C))の中では、
図14(B)のクロマトグラムのピークの半値幅が最も小さく、試料注入から10μL分、カラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで送液される流速が小さいほど、クロマトグラムのピークの半値幅が小さくなる結果が得られた。
【0223】
又、
図15(A)において、0.02mL/minから0.3mL/minへの流速の変化に要する時間は0.62−0.50=0.12minであり、0.02mL/minで安定していた圧力(0.7MPa)と0.3mL/minで安定した圧力(10.1MPa)の差は9.4MPaであることから、0.01mL/minから0.3mL/minへの変化の勾配は、9.4/0.12=78.3MPa/minであった。
【0224】
又、
図15(B)において、0.05mL/minから0.3mL/minへの流速の変化に要する時間は0.36−0.20=0.16minであり、0.05mL/minで安定していた圧力(1.7MPa)と0.3mL/minで安定した圧力(10.1MPa)の差は8.4MPaであることから、0.01mL/minから0.3mL/minへの変化の勾配は、8.4/0.16=52.5MPa/minであった。
【0225】
又、
図15(C)において、0.1mL/minから0.3mL/minへの流速の変化に要する時間は0.23−0.10=0.13minであり、0.1mL/minで安定していた圧力(3.3MPa)と0.3mL/minで安定した圧力(10.1MPa)の差は6.8MPaであることから、0.01mL/minから0.3mL/minへの変化の勾配は、6.8/0.13=52.3MPa/minであった。
【実施例7】
【0226】
試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を伴う試料導入方法によるカラム性能向上の確認のため、従来の試料注入法(
図16(A))(比較例)と本発明の試料導入方法(
図16(B))におけるカラム性能の比較を行った。又、本発明の試料導入方法における流速の変化の勾配がピーク幅に与える効果を確認した(
図16(C))。
【0227】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.254mm、長さ15.2cmのPEEK管(容量約7.7μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)を用いて、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.1mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0228】
図16(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを0.5μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.1mL/minで送液した。
【0229】
図16(B)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.50分後(注入から5μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):5μLと記載)から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.50分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0230】
図16(C)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.50分後(注入から5μL送液後)から0.13分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.63分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.50分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0231】
図16(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0727、0.0770、0.0608、0.0623、0.1248、0.0670、0.0708、0.0781及び0.0908minが得られている。BuPhについては、BePhと重なっているため、データ解析用のソフトウェア(EZChrom Elite、Agilent Technologies社)の自動計算で半値幅を認識しなかった。又、BePhについては、BuPhと重なっているため、0.1248という明らかに大きい半値幅が計算されていた。
【0232】
これに対して
図16(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0413、0.0364、0.0325、0.0329、0.0348、0.0371、0.0380、0.0438、0.0543及び0.0719minが得られている。
図16(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、43.2、52.7、46.5、47.2、43.3、38.1、30.5及び20.8%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0233】
図16(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0403、0.0379、0.0343、0.0354、0.0377、0.0406、0.0405、0.0459、0.0559及び0.0732minが得られている。
図16(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、44.6、50.8、43.6、43.2、39.6、35.2、28.4及び19.4%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0234】
図16(B)では、UとOcPhの保持時間の差が2.522minで、
図16(A)の比較例の場合(2.465min)や
図16(C)の場合(2.481min)に比べて大きくなっており、クロマトグラム前半の、ピークNo.1とピークNo.2の分離も、
図16(C)に比べて良くなっている。この理由は、
図16(B)では、圧力が16.7MPaで安定する前に一部の溶質が溶出していることから、0.1mL/minより低い流速で試料バンドがカラム充填剤層に入り、その後流速が0.1mL/minに達したことが示されている。
【0235】
又、ウラシル(U)のピークNo.1を除いて、
図16(B)の方が
図16(C)に比べて9本のピークの半値幅が小さく、高いカラム性能が発揮されている。この理由は、
図16(B)では0.01mLから0.1mLへの流速の変化の勾配が
図16(C)に比べてわずかに緩やかであったので、カラム充填層前の配管中(少なくとも約7.7μLの容量がある)で試料がその分散の増加を抑えることが出来る流速で送液された送液容量が
図16(C)に比べて実質多かったためと思われる。又、この接続管を用いた条件下でこのカラムについての最適流速は0.05mL/minと0.1mL/minの間にあることが認められた。この範囲の流速での溶出により、
図16(B)において高いカラム性能が得られたものと解釈される。
図16(B)においてピークNo.1が溶出される時には、圧力が流速0.1mL/minでの平衡圧力(16.7MPa)より相当に低く、結果としてピークNo.1の半値幅が
図16(C)のピークNo.1の半値幅に比べて大きくなったものと解釈できる。
【0236】
試料注入後0.01mL/minで5μL送液してから流速を0.1mL/minに上げて分析する流速プログラムにより、流速0.1mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて高いカラム性能が得られることを確認した。
【0237】
又、
図16(B)において、0.01mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は1.41−0.50=0.91minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(1.6MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.8MPa)の差は15.2MPaであることから、0.01mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、15.2/0.91=16.7MPa/minであった。
【0238】
又、
図16(C)において、0.01mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.65−0.50=0.15minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(1.6MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は15.1MPaであることから、0.01mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、15.1/0.15=100.7MPa/minであった。
【実施例8】
【0239】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行う時間(第一流速による送液容量)がピーク形状に与える効果を確認した(
図16(C)、
図17(A)、
図17(B)、
図17(C)及び
図18(A))。又、従来の試料注入法(
図16(A))(比較例)との比較を行った。
【0240】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.254mm、長さ15.2cmのPEEK管(容量約7.7μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)を用いて、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.1mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0241】
図16(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを0.5μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.1mL/minで送液した。
【0242】
図16(C)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.50分後(注入から5μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):5μLと記載)から0.13分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.63分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.50分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0243】
図17(A)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.80分後(注入から8μL送液後)から0.13分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.93分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.50分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0244】
図17(B)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の1.00分後(注入から10μL送液後)から0.13分間は流速を0.2mL/minとし、注入の1.13分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.50分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0245】
図17(C)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の1.20分後(注入から12μL送液後)から0.13分間は流速を0.2mL/minとし、注入の1.33分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.50分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0246】
図18(A)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の1.50分後(注入から15μL送液後)から0.13分間は流速を0.2mL/minとし、注入の1.63分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.50分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0247】
図16(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0727、0.0770、0.0608、0.0623、0.1248、0.0670、0.0708、0.0781及び0.0908minが得られている。BuPhについては、BePhと重なっているため、データ解析用のソフトウェア(EZChrom Elite、Agilent Technologies社)の自動計算で半値幅を認識しなかった。又、BePhについては、BuPhと重なっているため、0.1248という明らかに大きい半値幅が計算されていた。
【0248】
これに対して
図16(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0403、0.0379、0.0343、0.0354、0.0377、0.0406、0.0405、0.0459、0.0559及び0.0732minが得られている。
図16(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、44.6、50.8、43.6、43.2、39.6、35.2、28.4及び19.4%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0249】
図17(A)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0300、0.0278、0.0262、0.0274、0.0299、0.0316、0.0334、0.0402、0.0512及び0.0699minが得られている。
図16(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、58.7、63.9、56.9、56.0、50.1、43.2、34.4及び23.0%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0250】
図17(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0288、0.0266、0.0252、0.0265、0.0288、0.0307、0.0327、0.0392、0.0508及び0.0684minが得られている。
図16(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、60.4、65.5、58.6、57.5、51.2、44.6、35.0及び24.7%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0251】
図17(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0291、0.0266、0.0253、0.0267、0.0291、0.0309、0.0328、0.0398、0.0511及び0.0693minが得られている。
図16(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、60.0、65.5、58.4、57.1、51.0、43.8、34.6及び23.7%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0252】
図18(A)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0290、0.0268、0.0258、0.0272、0.0297、0.0313、0.0336、0.0406、0.0523及び0.0712minが得られている。
図16(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、60.1、65.2、57.6、56.3、49.9、42.7、33.0及び21.6%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0253】
試料注入から流速0.01mL/minで5、8、10、12及び15μL送液し、0.13分間は流速を0.2mL/minとし、その後流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラム(
図16(C)、
図17(A)、
図17(B)、
図17(C)及び
図18(A))の中では、
図17(B)のクロマトグラムのピークの半値幅が最も小さくなった。
【0254】
試料注入後0.01mL/minで10μL送液してから流速を0.1mL/minに上げる流速プログラムによる分析が、流速0.1mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて最も高いカラム性能が得られることを確認した。試料注入用流路切り替えバルブからカラム入口までの配管の容量は約7.7μLであるが、実際は試料注入用流路切り替えバルブとサンプルループ内の容量と、
図3に示す、カラム入口側内部の、カラム充填層入口側の境界までの容量も存在するため、実際に試料注入装置からカラム充填層入口側の境界を試料バンドが跨ぐまで試料バンドを移動させるのに約10μLの送液が必要であることと、試料注入装置からカラムまで試料バンドを運ぶのに12μL、15μL送液してしまうと、0.01mL/minというカラム性能が出難い流速でカラム充填層に試料が入り、分離が行われてしまうために、最も高いカラム性能は得られないことを確認した。
【0255】
又、
図17(A)において、0.01mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.98−0.80=0.18minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(1.6MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は15.1MPaであることから、0.01mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、15.1/0.18=83.9MPa/minであった。
【0256】
又、
図17(B)において、0.01mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は1.18−1.00=0.18minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(1.6MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は15.1MPaであることから、0.01mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、15.1/0.18=83.9MPa/minであった。
【0257】
又、
図17(C)において、0.01mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は1.40−1.20=0.20minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(1.6MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は15.1MPaであることから、0.01mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、15.1/0.20=75.5MPa/minであった。
【0258】
又、
図18(A)において、0.01mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は1.68−1.50=0.18minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(1.6MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は15.1MPaであることから、0.01mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、15.1/0.18=83.9MPa/minであった。
【実施例9】
【0259】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行うにあたり、第一流速がピーク形状に与える効果を確認した(
図19(A)、
図19(B)、
図19(C)、
図20(A)及び
図20(B))。又、従来の試料注入法(
図16(A))(比較例)との比較を行った。
【0260】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.254mm、長さ15.2cmのPEEK管(容量約7.7μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)を用いて、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.1mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0261】
図16(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを0.5μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.1mL/minで送液した。
【0262】
図19(A)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.005mL/minとしておき、注入の2.00分後(注入から10μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):10μLと記載)から0.14分間は流速を0.2mL/minとし、注入の2.14分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の5.50分後から流速を0.005mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0263】
図19(B)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の1.00分後(注入から10μL送液後)から0.13分間は流速を0.2mL/minとし、注入の1.13分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.50分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0264】
図19(C)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.02mL/minとしておき、注入の0.50分後(注入から10μL送液後)から0.12分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.62分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.50分後から流速を0.02mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0265】
図20(A)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.05mL/minとしておき、注入の0.20分後(注入から10μL送液後)から0.08分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.28分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.00分後から流速を0.05mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0266】
図20(B)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.08mL/minとしておき、注入の0.13分後(注入から10.4μL送液後)から0.04分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.17分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.00分後から流速を0.08mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0267】
図16(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0727、0.0770、0.0608、0.0623、0.1248、0.0670、0.0708、0.0781及び0.0908minが得られている。BuPhについては、BePhと重なっているため、データ解析用のソフトウェア(EZChrom Elite、Agilent Technologies社)の自動計算で半値幅を認識しなかった。又、BePhについては、BuPhと重なっているため、0.1248という明らかに大きい半値幅が計算されていた。
【0268】
これに対して
図19(A)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0243、0.0225、0.0218、0.0234、0.0259、0.0274、0.0301、0.0374、0.0490及び0.0677minが得られている。
図16(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、66.6、70.8、64.1、62.4、55.1、47.2、37.3及び25.4%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0269】
図19(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0288、0.0266、0.0252、0.0265、0.0288、0.0307、0.0327、0.0392、0.0508及び0.0684minが得られている。
図16(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、60.4、65.5、58.6、57.5、51.2、44.6、35.0及び24.7%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0270】
図19(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0357、0.0331、0.0306、0.0320、0.0340、0.0364、0.0373、0.0434、0.0537及び0.0710minが得られている。
図16(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、50.9、57.0、49.7、48.6、44.3、38.7、31.2及び21.8%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0271】
図20(A)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0512、0.0491、0.0433、0.0446、0.0496、0.0546、0.0633及び0.0795minが得られている。BuPhとBePhについては、互いに重なり合っているため、データ解析用のソフトウェアの自動計算で半値幅を認識しなかった。
図16(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、29.6、36.2、28.8、28.4、26.0、22.9、19.0及び12.4%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0272】
図20(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0632、0.0646、0.0540、0.0554、0.0605、0.0647、0.0726及び0.0858minが得られている。BuPhとBePhについては、互いに重なり合っているため、データ解析用のソフトウェアの自動計算で半値幅を認識しなかった。
図16(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、13.1、16.1、11.2、11.1、9.7、8.6、7.0及び5.5%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる
【0273】
試料注入から流速0.005、0.01、0.02、0.05及び0.08mL/minで約10μL送液し、その後0.04〜0.14分間は流速を0.2mL/minとし、その後流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラム(
図19(A)、
図19(B)、
図19(C)、
図20(A)及び
図20(B))の中では、
図19(A)のクロマトグラムのピークの半値幅が最も小さく、試料注入から10μL送液して、カラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで試料バンドを移動させる第一流速が小さいほど、クロマトグラムのピークの半値幅が小さくなる傾向が見られた。
【0274】
いずれの場合も流速0.1mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて高いカラム性能が得られたが、中でも試料注入後0.005mL/minという最も小さい流速で10μL送液してから流速を0.1mL/minに上げる流速プログラムによる分析により、最も高いカラム性能が得られることを確認した。
【0275】
又、
図19(A)において、0.005mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は2.18−2.00=0.18minであり、0.005mL/minで安定していた圧力(0.8MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は15.9MPaであることから、0.005mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、15.9/0.18=88.3MPa/minであった。
【0276】
又、
図19(B)において、0.01mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は1.18−1.00=0.18minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(1.6MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は15.1MPaであることから、0.01mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、15.1/0.18=83.8MPa/minであった。
【0277】
又、
図19(C)において、0.02mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.66−0.50=0.16minであり、0.02mL/minで安定していた圧力(3.2MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.8MPa)の差は13.6MPaであることから、0.02mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、13.6/0.16=85.0MPa/minであった。
【0278】
又、
図20(A)において、0.05mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.30−0.20=0.10minであり、0.05mL/minで安定していた圧力(8.4MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は8.3MPaであることから、0.05mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、8.3/0.10=83.0MPa/minであった。
【0279】
又、
図20(B)において、0.08mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.15−0.13=0.02minであり、0.08mL/minで安定していた圧力(13.4MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.8MPa)の差は3.4MPaであることから、0.08mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、3.4/0.02=170.0MPa/minであった。
【実施例10】
【0280】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行うにあたり、第一流速がピーク形状に与える効果を確認した(
図20(C))。又、従来の試料注入法(
図16(A))(比較例)との比較を行った。
【0281】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.254mm、長さ15.2cmのPEEK管(容量約7.7μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)を用いて、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.1mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0282】
図16(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを0.5μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.1mL/minで送液した。
【0283】
図20(C)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0mL/minとしておき、注入と同時に直線的に流速を上げ始め、注入の1.00分後には流速を0.02mL/minとし(1.00分かけて、流速を0mL/minから0.02mL/minに直線勾配で上昇させる。クロマトグラムの左上に(1):10μLと記載)、注入から1.01分後から流速を0.2mL/minとして0.13分間送液し、注入から1.14分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.50分後から流速を0mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0284】
図16(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0727、0.0770、0.0608、0.0623、0.1248、0.0670、0.0708、0.0781及び0.0908minが得られている。BuPhについては、BePhと重なっているため、データ解析用のソフトウェア(EZChrom Elite、Agilent Technologies社)の自動計算で半値幅を認識しなかった。又、BePhについては、BuPhと重なっているため、0.1248という明らかに大きい半値幅が計算されていた。
【0285】
これに対して
図20(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0322、0.0304、0.0284、0.0298、0.0320、0.0343、0.0357、0.0422、0.0532及び0.0718minが得られている。
図16(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、55.7、60.5、53.3、52.2、46.7、40.4、31.9及び21.0%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0286】
試料注入後1分間で流速を0mL/minから0.02mL/minに直線勾配で上げてから流速を0.1mL/minに上げる流速プログラムによる分析を行うことで、流速0.1mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて高いカラム性能が得られることを確認した。
【0287】
又、
図20(C)において、0.02mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は1.17−1.00=0.17minであり、0.02mL/minでの圧力(3.5MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.8MPa)の差は13.3MPaであることから、0.02mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、13.3/0.17=78.2MPa/minであった。
【実施例11】
【0288】
試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を伴う試料導入方法によるカラム性能向上の確認のため、従来の試料注入法(
図21(A))(比較例)と本発明の試料導入方法(
図21(B))におけるカラム性能の比較を行った。又、本発明の試料導入方法における流速の変化の勾配がピーク幅に与える効果を確認した(
図21(C))。
【0289】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.254mm、長さ15.2cmのPEEK管(容量約7.7μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)を用いて、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.05mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0290】
図21(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを0.5μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.05mL/minで送液した。
【0291】
図21(B)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の1.00分後(注入から10μL送液後)から流速を0.05mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の7.50分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0292】
図21(C)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の1.00分後(注入から10μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):10μLと記載)から0.11分間は流速を0.1mL/minとし、注入の1.11分後から流速を0.05mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の7.50分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0293】
図21(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0995、0.0948、0.0847、0.0875、0.0981、0.1091、0.1297及び0.1663minが得られている。BuPhとBePhについては、互いに重なり合っているため、データ解析用のソフトウェア(EZChrom Elite、Agilent Technologies社)の自動計算で半値幅を認識しなかった。
【0294】
これに対して
図21(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0579、0.0514、0.0486、0.0515、0.0564、0.0595、0.0646、0.0801、0.1056及び0.1481minが得られている。
図21(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、41.8、45.8、42.6、41.1、34.1、26.6、18.6及び10.9%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0295】
図21(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0545、0.0498、0.0475、0.0508、0.0561、0.0591、0.0645、0.0801、0.1048及び0.1483minが得られている。
図21(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、45.2、47.5、43.9、41.9、34.3、26.6、19.2及び10.8%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0296】
図21(C)の方が
図21(B)に比べて、概ね高いカラム性能が発揮されている。この理由は、
図21(B)では0.01mL/minから0.05mL/minへの流速の変化の勾配が
図21(C)に比べて緩やかであったため、部分的であるが流速が0.05mL/minに変化する途中で試料中の溶質がカラム充填層で分離されたためと思われる。
【0297】
実施例5、実施例8の結果では、分散を小さく保つことが出来る流速で、試料注入装置から試料バンドが10μL移動した時が、最も高いカラム性能が発揮されていた。この結果は、試料注入用流路切り替えバルブからカラム入口側のフリット空隙まで(カラム充填層の手前まで)の実質的な容量が約10μLであることと合致している。
【0298】
非特許文献1では、Acquity UPLC(ウォーターズ社)に検出セル容量6nLのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を組み合わせ、更に試料注入用流路切り替えバルブ出口からカラム入口までの配管の容量を最小化したUHPLC装置と、カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)を使用して、温度条件は40℃とし、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を送液する流速を変えて、オクタノフェノン(OcPh)についてVan Deemterプロットを作成している。カラム長さは50000μmで、カラムの空隙率は約50%であり、OcPhについての最適線速度が4mm/secで、理論段高さは5.1μmであった。即ち、最適流速は約0.1mL/minであり、この時のOcPhの理論段数は9800であった(理論段高さは5.1μmであり、カラム長さは50000μmであった)。
【0299】
一方で、
図16(A)と
図21(A)のOcPhの理論段数はそれぞれ、4455と5700であり、カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)を使用しているが、流速が0.1mL/minの時より、0.05mL/minの時の方が高いカラム性能が発揮されている。非特許文献1で使用したUHPLC装置より、実施例7と11で使用したUHPLC装置の方が試料注入用流路切り替えバルブ出口からカラム入口までの配管の容量が大きかったため、発揮されたカラム性能が低かっただけでなく、同じカラムを使用していても、最適流速が低流速側(0.05mL/minと0.1mL/minの間)に変わっていた。
【0300】
図21(C)の方が
図21(B)に比べて、概ね高いカラム性能が発揮された理由は、
図21(B)では0.05mL/minより低い流速(カラム性能がより低くなる流速)で、
図21(C)より長い時間、試料中の溶質がカラム充填層で分離されたためと解釈できる。
【0301】
試料注入後0.01mL/minで10μL送液してから流速を0.05mL/minに上げて分析する流速プログラムにより、流速0.05mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて高いカラム性能が得られることを確認した。
【0302】
又、
図21(B)において、0.01mL/minから0.05mL/minへの流速の変化に要する時間は1.85−1.00=0.85minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(1.6MPa)と0.05mL/minで安定した圧力(8.3MPa)の差は6.7MPaであることから、0.01mL/minから0.05mL/minへの変化の勾配は、6.7/0.85=7.9MPa/minであった。
【0303】
又、
図21(C)において、0.01mL/minから0.05mL/minへの流速の変化に要する時間は1.35−1.00=0.35minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(1.6MPa)と0.05mL/minで安定した圧力(8.3MPa)の差は6.7MPaであることから、0.01mL/minから0.05mL/minへの変化の勾配は、6.7/0.35=19.1MPa/minであった。
【実施例12】
【0304】
試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を伴う試料導入方法によるカラム性能向上の確認のため、従来の試料注入法(
図22(A))(比較例)と本発明の試料導入方法(
図22(B))におけるカラム性能の比較を行った。又、本発明の試料導入方法における流速の変化の勾配がピーク幅に与える効果を確認した(
図22(C))。
【0305】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムKinetex C18(充填剤径2.6μm、内径2.1 mm、長さ5cm、Phenomenex社)を用いて、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.3mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0306】
図22(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを2μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.3mL/minで送液した。
【0307】
図22(B)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.35分後(注入から3.5μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):3.5μLと記載)から流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の3.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0308】
図22(C)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.35分後(注入から3.5μL送液後)から0.05分間は流速を0.4mL/minとし、注入の0.40分後から流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の3.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0309】
図22(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0200、0.0164、0.0159、0.0163、0.0174、0.0183、0.0195、0.0236、0.0306及び0.0419minが得られている。
【0310】
これに対して
図22(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0194、0.0129、0.0127、0.0135、0.0150、0.0157、0.0176、0.0219、0.0293及び0.0412minが得られている。
図22(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、3.0、21.3、20.1、17.2、13.8、14.2、9.7、7.2、4.2及び1.7%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0311】
図22(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0191、0.0129、0.0128、0.0136、0.0150、0.0156、0.0176、0.0220、0.0293及び0.0410minが得られている。
図22(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、4.5、21.3、19.5、16.6、13.8、14.8、9.7、6.8、4.2及び2.2%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0312】
図22(C)では
図22(B)に比べて、ほぼ同等のカラム性能が発揮されている。この理由は、
図22(B)では0.01mL/minから0.3mL/minへの流速の変化の勾配が
図22(C)に比べてわずかに緩やかであったが、試料注入用流路切り替えバルブからカラム充填層前までの実質的な容量が約3.5μLであり、試料がその分散の増加を抑えることが出来る流速でカラム充填層前までに移動した容量と、カラム充填層での分離における流速が
図22(C)とほぼ同等であったためと思われる。
【0313】
図22(B)では
図22(C)に比べて、わずかに低い流速でカラムに試料が導入されたと思われるが、試料中の溶質がカラムから溶出する前に圧力が10.1MPaで安定していることから、ほぼ同等のカラム性能が発揮されたと思われる。
図22(B)でのUとOcPhの保持時間の差は1.610minで、
図22(C)でのUとOcPhの保持時間の差1.612minとほぼ同等である。
【0314】
図22(A)(比較例)、
図22(B)、
図22(C)について、それぞれ2回ずつ採取したクロマトグラムから、各ピークの保持時間(単位はmin)と半値幅(単位はmin)を表2に示す。いずれの条件下でも再現性は良好であった。
【0315】
【表2】
【0316】
又、試料注入後0.01mL/minで3.5μL送液してから流速を0.3mL/minに上げて分析する流速プログラムにより、流速0.3mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて高いカラム性能が得られることを確認した。
【0317】
又、
図22(B)において、0.01mL/minから0.3mL/minへの流速の変化に要する時間は0.62−0.35=0.27minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(0.3MPa)と0.3mL/minで安定した圧力(10.1MPa)の差は9.8MPaであることから、0.01mL/minから0.3mL/minへの変化の勾配は、9.8/0.27=36.3MPa/minであった。
【0318】
又、
図22(C)において、0.01mL/minから0.3mL/minへの流速の変化に要する時間は0.51−0.35=0.16minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(0.3MPa)と0.3mL/minで安定した圧力(10.1MPa)の差は9.8MPaであることから、0.01mL/minから0.3mL/minへの変化の勾配は、9.8/0.16=61.3MPa/minであった。
【実施例13】
【0319】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行う時間(第一流速による送液容量)がピーク形状に与える効果を確認した(
図23(A)、
図23(B)、
図23(C)及び
図22(C))。又、従来の試料注入法(
図22(A))(比較例)との比較を行った。
【0320】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムKinetex C18(充填剤径2.6μm、内径2.1 mm、長さ5cm、Phenomenex社)を用いて、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.3mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0321】
図22(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを2μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.3mL/minで送液した。
【0322】
図23(A)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.10分後(注入から1μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):1μLと記載)から0.05分間は流速を0.4mL/minとし、注入の0.15分後から流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の3.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0323】
図23(B)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.20分後(注入から2μL送液後)から0.05分間は流速を0.4mL/minとし、注入の0.25分後から流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の3.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0324】
図23(C)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.30分後(注入から3μL送液後)から0.05分間は流速を0.4mL/minとし、注入の0.35分後から流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の3.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0325】
図22(C)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.35分後(注入から3.5μL送液後)から0.05分間は流速を0.4mL/minとし、注入の0.40分後から流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の3.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0326】
図22(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0200、0.0164、0.0159、0.0163、0.0174、0.0183、0.0195、0.0236、0.0306及び0.0419minが得られている。
【0327】
これに対して
図23(A)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0195、0.0143、0.0139、0.0145、0.0158、0.0166、0.0184、0.0227、0.0298及び0.0415minが得られている。
図22(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、2.5、12.8、12.6、11.0、9.2、9.3、5.6、3.8、2.6及び1.0%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0328】
図23(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0200、0.0139、0.0135、0.0142、0.0155、0.0162、0.0180、0.0224、0.0296及び0.0412minが得られている。
図22(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、0.0、15.2、15.1、12.9、10.9、11.5、7.7、5.1、3.3及び1.7%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0329】
図23(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0198、0.0134、0.0132、0.0140、0.0154、0.0161、0.0178、0.0224、0.0298及び0.0418minが得られている。
図22(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、1.0、18.3、17.0、14.1、11.5、12.0、8.7、5.1、2.6及び0.2%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0330】
図22(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0191、0.0129、0.0128、0.0136、0.0150、0.0156、0.0176、0.0220、0.0293及び0.0410minが得られている。
図22(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、4.5、21.3、19.5、16.6、13.8、14.8、9.7、6.8、4.2及び2.2%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0331】
試料注入から流速0.01mL/minで1、2、3及び3.5μL送液し、その後0.05分間は流速を0.4mL/minとし、その後流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラム(
図23(A)、
図23(B)、
図23(C)及び
図22(C))の中では、
図22(C)のクロマトグラムのピークの半値幅が最も小さくなった。
【0332】
試料注入後0.01mL/minで3.5μL送液してから流速を0.3mL/minに上げての分析が、流速0.3mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて最も高いカラム性能が得られることを確認した。試料注入用流路切り替えバルブとカラム入口を接続した配管の容量は約1.99μLであるが、実際は試料注入用流路切り替えバルブとサンプルループ内の容量と、
図3に示す、カラム入口側内部の、充填層入口側の境界までの容量も存在するため、実際に試料注入装置からカラム充填層入口側の境界を試料バンドが跨ぐまで試料を運ぶのに3.5μLの送液が必要であることを確認した。
【0333】
又、
図23(A)において、0.01mL/minから0.3mL/minへの流速の変化に要する時間は0.26−0.10=0.16minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(0.3MPa)と0.3mL/minで安定した圧力(10.1MPa)の差は9.8MPaであることから、0.01mL/minから0.3mL/minへの変化の勾配は、9.8/0.16=61.3MPa/minであった。
【0334】
又、
図23(B)において、0.01mL/minから0.3mL/minへの流速の変化に要する時間は0.29−0.20=0.09minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(0.3MPa)と0.3mL/minで安定した圧力(10.1MPa)の差は9.8MPaであることから、0.01mL/minから0.3mL/minへの変化の勾配は、9.8/0.09=108.9MPa/minであった。
【0335】
又、
図23(C)において、0.01mL/minから0.3mL/minへの流速の変化に要する時間は0.45−0.30=0.15minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(0.3MPa)と0.3mL/minで安定した圧力(10.1MPa)の差は9.8MPaであることから、0.01mL/minから0.3mL/minへの変化の勾配は、9.8/0.15=65.3MPa/minであった。
【実施例14】
【0336】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行うにあたり、第一流速がピーク形状に与える効果を確認した(
図24(A)、
図24(B))。又、従来の試料注入法(
図22(A))(比較例)との比較を行った。
【0337】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムKinetex C18(充填剤径2.6μm、内径2.1mm、長さ5cm、Phenomenex社)を用いて、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.3mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0338】
図22(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを2μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.3mL/minで送液した。
【0339】
図24(A)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.005mL/minとしておき、注入の0.70分後(注入から3.5μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):3.5μLと記載)から0.05分間は流速を0.4mL/minとし、注入の0.75分後から流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の3.00分後から流速を0.005mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0340】
図24(B)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.35分後(注入から3.5μL送液後)から0.05分間は流速を0.4mL/minとし、注入の0.40分後から流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の3.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0341】
図22(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0200、0.0164、0.0159、0.0163、0.0174、0.0183、0.0195、0.0236、0.0306及び0.0419minが得られている。
【0342】
これに対して
図24(A)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0193、0.0128、0.0126、0.0133、0.0149、0.0157、0.0175、0.0219、0.0292及び0.0407minが得られている。
図22(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、3.5、22.0、20.8、18.4、14.4、14.2、10.3、7.2、4.6及び2.9%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0343】
図24(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0191、0.0129、0.0128、0.0136、0.0150、0.0156、0.0176、0.0220、0.0293及び0.0410minが得られている。
図22(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、4.5、21.3、19.5、16.6、13.8、14.8、9.7、6.8、4.3及び2.1%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0344】
試料注入から流速0.005及び0.01mL/minで3.5μL送液し、その後0.05分間は流速を0.4mL/minとし、その後流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラム(
図24(A)及び
図24(B))では、概ね
図24(A)のクロマトグラムのピークの半値幅の方が小さかった。
【0345】
試料注入後0.005mL/min、0.01mL/minで3.5μL送液してから流速を0.3mL/minに上げて分析した中では、いずれの場合も流速0.3mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて高いカラム性能が得られたが、中でも試料注入後0.005mL/minという最も小さい流速で3.5μL送液してから流速を0.3mL/minに上げる流速プログラムによる分析により、最も高いカラム性能が得られることを確認した。
【0346】
又、
図24(A)において、0.005mL/minから0.3mL/minへの流速の変化に要する時間は0.87−0.70=0.17minであり、0.005mL/minで安定していた圧力(0.1MPa)と0.3mL/minで安定した圧力(10.1MPa)の差は10.0MPaであることから、0.005mL/minから0.3mL/minへの変化の勾配は、10.0/0.17=58.8MPa/minであった。
【0347】
又、
図24(B)において、0.01mL/minから0.3mL/minへの流速の変化に要する時間は0.51−0.35=0.16minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(0.3MPa)と0.3mL/minで安定した圧力(10.1MPa)の差は9.8MPaであることから、0.01mL/minから0.3mL/minへの変化の勾配は、9.8/0.16=61.3MPa/minであった。
【実施例15】
【0348】
試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を伴う試料導入方法によるカラム性能向上の確認のため、従来の試料注入法(
図25(A))(比較例)と本発明の試料導入方法(
図25(B))におけるカラム性能の比較を行った。又、本発明の試料導入方法における流速の変化の勾配がピーク形状に与える効果を確認した(
図25(C))。
【0349】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)を用いて、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.1mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0350】
図25(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを0.5μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.1mL/minで送液した。
【0351】
図25(B)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.35分後(注入から3.5μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):3.5μLと記載)から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0352】
図25(C)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.35分後(注入から3.5μL送液後)から0.13分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.48分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0353】
図25(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0291、0.0266、0.0254、0.0265、0.0288、0.0304、0.0324、0.0394、0.0506及び0.0692minが得られている。
【0354】
これに対して
図25(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0238、0.0207、0.0199、0.0212、0.0237、0.0251、0.0281、0.0355、0.0472及び0.0665minが得られている。
図25(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、18.2、22.2、21.7、20.0、17.7、17.4、13.3、9.9、6.7及び3.9%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0355】
図25(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0210、0.0192、0.0192、0.0209、0.0238、0.0252、0.0281、0.0355、0.0479及び0.0671minが得られている。
図25(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、27.8、27.8、24.4、21.1、17.4、17.1、13.3、9.9、5.3及び3.0%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0356】
図25(B)では0.01mL/minから0.1mL/minへの流速の変化の勾配が
図25(C)に比べて緩やかであり、より低い流速でカラム充填層に試料が導入され、部分的に低い流速で分離が行われたことを示している。
図25(B)では
図25(C)に比べて、クロマトグラム後期のピーク(ピークNo.9、10)について、わずかに小さなピーク幅が得られる一方、初期のピーク(ピークNo.1、2、3、4)について、わずかに大きなピーク幅が得られた。
【0357】
非特許文献1では、Acquity UPLC(ウォーターズ社)に検出セル容量6nLのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を組み合わせ、更に試料注入用流路切り替えバルブ出口からカラム入口までの配管の容量を最小化したUHPLC装置と、カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)を使用して、温度条件は40℃、移動相をアセトニトリル/水=65/35とした時、オクタノフェノン(OcPh)について最適流速は約0.1mL/minであった。また、実施例7と11で使用したUHPLC装置では、カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)を使用して、流速が0.1mL/minの時よりも0.05mL/minの時の方がOcPhの理論段数が高かった。
【0358】
実施例15で使用したUHPLC装置では、図示していないが、カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)を使用して、温度条件は40℃とし、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を送液する流速を変えて、保持係数k=6.5の溶質について理論段数を確認したところ、流速0.075mL/minで最も高く、7600であった。
【0359】
図25(B)において
図25(C)に比べて、クロマトグラム後期の、0.1mL/minでカラムが平衡化した後に溶出するピーク(ピークNo.9及び10、保持係数kは
図25(A)において8.3及び12.4)について、わずかに小さなピーク幅が得られた理由としては、カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)が、実施例15で使用したUHPLC装置において、高いカラム性能を得られる最適な流速0.075mL/minに近い流速で部分的に分離が行われたことが考えられる。
【0360】
図25(B)において、ピークNo.1、2、3、4について、これら4本のピークの間隔(保持時間の差)が
図25(C)より大きいことから、これら4本のピークが
図25(B)において
図25(C)より高性能を与える条件下で分離される一方、0.1mL/minより低い流速で溶出されたことにより、ピーク幅が
図25(C)より大きくなったと考えられる。
【0361】
試料注入後0.01mL/minで3.5μL送液してから流速を0.1mL/minに上げて分析する流速プログラムにより、流速0.1mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて高いカラム性能が得られることを確認した。
【0362】
又、
図25(B)において、0.01mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は1.23−0.35=0.88minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(1.6MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は15.1MPaであることから、0.01mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、15.1/0.88=17.2MPa/minであった。
【0363】
又、
図25(C)において、0.01mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.52−0.35=0.17minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(1.6MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は15.1MPaであることから、0.01mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、15.1/0.17=88.8MPa/minであった。
【実施例16】
【0364】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行う時間(第一流速による送液容量)がピーク幅に与える効果を確認した(
図26(A)、
図26(B)、
図26(C)、
図25(C)、
図27(A)、
図27(B)、
図27(C)及び
図28(A))。又、従来の試料注入法(
図25(A))(比較例)との比較を行った。
【0365】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)を用いて、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.1mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0366】
図25(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを0.5μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.1mL/minで送液した。
【0367】
図26(A)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.10分後(注入から1μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):1μLと記載)から0.13分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.23分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0368】
図26(B)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.20分後(注入から2μL送液後)から0.13分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.33分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0369】
図26(C)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.30分後(注入から3μL送液後)から0.13分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.43分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0370】
図25(C)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.35分後(注入から3.5μL送液後)から0.13分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.48分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0371】
図27(A)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.40分後(注入から4μL送液後)から0.13分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.53分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0372】
図27(B)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.50分後(注入から5μL送液後)から0.13分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.63分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0373】
図27(C)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.60分後(注入から6μL送液後)から0.13分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.73分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0374】
図28(A)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.80分後(注入から8μL送液後)から0.13分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.93分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0375】
図25(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0291、0.0266、0.0254、0.0265、0.0288、0.0304、0.0324、0.0394、0.0506及び0.0692minが得られている。
【0376】
これに対して
図26(A)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0232、0.0213、0.0206、0.0222、0.0249、0.0264、0.0290、0.0362、0.0481及び0.0674minが得られている。
図25(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、20.3、19.9、18.9、16.2、13.5、13.2、10.5、8.1、4.9及び2.6%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0377】
図26(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0219、0.0204、0.0199、0.0214、0.0241、0.0256、0.0285、0.0357、0.0478及び0.0667minが得られている。
図25(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、24.7、23.3、21.7、19.2、16.3、15.8、12.0、9.4、5.5及び3.6%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0378】
図26(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0210、0.0195、0.0193、0.0209、0.0235、0.0252、0.0281、0.0356、0.0475及び0.0667minが得られている。
図25(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、27.8、26.7、24.0、21.1、18.4、17.1、13.3、9.6、6.1及び3.6%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0379】
図25(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0210、0.0192、0.0192、0.0209、0.0238、0.0252、0.0281、0.0355、0.0479及び0.0671minが得られている。
図25(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、27.8、27.8、24.4、21.1、17.4、17.1、13.3、9.9、5.3及び3.0%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0380】
図27(A)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0210、0.0191、0.0193、0.0209、0.0238、0.0251、0.0280、0.0356、0.0479及び0.0671minが得られている。
図25(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、27.8、28.2、24.0、21.1、17.4、17.4、13.6、9.6、5.3及び3.0%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0381】
図27(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0209、0.0191、0.0193、0.0211、0.0238、0.0252、0.0281、0.0354、0.0479及び0.0670minが得られている。
図25(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、28.2、28.2、24.0、20.4、17.4、17.1、13.3、10.2、5.3及び3.2%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0382】
図27(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0207、0.0192、0.0194、0.0212、0.0239、0.0252、0.0285、0.0361、0.0481及び0.0676minが得られている。
図25(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、28.9、27.8、23.6、20.0、17.0、17.1、12.0、8.4、4.9及び2.3%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0383】
図28(A)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0208、0.0195、0.0197、0.0215、0.0244、0.0256、0.0290、0.0366、0.0490及び0.0689minが得られている。
図25(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、28.5、26.7、22.4、18.9、15.3、15.8、10.5、7.1、3.2及び0.4%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0384】
試料注入から流速0.01mL/minで1μL、2μL、3μL、3.5μL、4μL、5μL、6μL、8μL送液し、その後0.13分間は流速を0.2mL/minとし、その後流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラム(
図26(A)、
図26(B)、
図26(C)、
図25(C)、
図27(A)、
図27(B)、
図27(C)及び
図28(A))の中では、
図25(C)、
図27(A)及び
図27(B)は
図26(A)、
図26(B)、
図26(C)、
図27(C)及び
図28(A)に比べてクロマトグラムのピークの半値幅が小さい傾向を示した。
【0385】
試料注入後0.01mL/minで1μL、2μL、3μL、3.5μL、4μL、5μL、6μL、8μL送液してから流速を0.1mL/minに上げて分析した中では、試料注入後0.01mL/minで3.5〜5μL送液してから流速を0.1mL/minに上げる流速プログラムにより、流速0.1mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて概ね最も高いカラム性能が得られることを確認した。試料注入用流路切り替えバルブとカラム入口を接続した配管の容量は約1.99μLであるが、実際は試料注入用流路切り替えバルブとサンプルループ内の容量と、
図3に示す、カラム入口側内部の、カラム充填層入口側の境界までの容量も存在するため、実際に試料注入装置からカラム充填層入口側の境界を試料バンドが跨ぐまで試料を運ぶのに3.5〜5μLの送液が必要であることと、試料注入装置からカラムまで試料を運ぶのに6μL、8μL送液してしまうと、0.01mL/minというカラム性能が発揮出来ない流速で、試料がカラム充填層に入り、分離されてしまうために、最も高いカラム性能は得られないことを確認した。
【0386】
又、
図26(A)において、0.01mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.30−0.10=0.20minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(1.6MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は15.1MPaであることから、0.01mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、15.1/0.20=75.5MPa/minであった。
【0387】
又、
図26(B)において、0.01mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.40−0.20=0.20minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(1.6MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は15.1MPaであることから、0.01mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、15.1/0.20=75.5MPa/minであった。
【0388】
又、
図26(C)において、0.01mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.49−0.30=0.19minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(1.6MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は15.1MPaであることから、0.01mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、15.1/0.19=79.5MPa/minであった。
【0389】
又、
図27(A)において、0.01mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.58−0.40=0.18minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(1.6MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は15.1MPaであることから、0.01mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、15.1/0.18=83.9MPa/minであった。
【0390】
又、
図27(B)において、0.01mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.68−0.50=0.18minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(1.6MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は15.1MPaであることから、0.01mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、15.1/0.18=83.9MPa/minであった。
【0391】
又、
図27(C)において、0.01mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.79−0.60=0.19minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(1.6MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は15.1MPaであることから、0.01mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、15.1/0.19=79.5MPa/minであった。
【0392】
又、
図28(A)において、0.01mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.98−0.80=0.18minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(1.6MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は15.1MPaであることから、0.01mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、15.1/0.18=83.9MPa/minであった。
【実施例17】
【0393】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行うにあたり、第一流速がピーク形状に与える効果を確認した(
図29(A)、
図29(B)、
図29(C)、
図30(A)及び
図30(B))。又、従来の試料注入法(
図25(A))(比較例)との比較を行った。
【0394】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)を用いて、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.1mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0395】
図25(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを0.5μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.1mL/minで送液した。
【0396】
図29(A)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.005mL/minとしておき、注入の0.70分後(注入から3.5μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):3.5μLと記載)から0.14分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.84分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.00分後から流速を0.005mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0397】
図29(B)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.35分後(注入から3.5μL送液後)から0.13分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.48分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0398】
図29(C)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.02mL/minとしておき、注入の0.18分後(注入から3.6μL送液後)から0.12分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.30分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.00分後から流速を0.02mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0399】
図30(A)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.05mL/minとしておき、注入の0.07分後(注入から3.5μL送液後)から0.08分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.15分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.00分後から流速を0.05mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0400】
図30(B)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.08mL/minとしておき、注入の0.05分後(注入から4μL送液後)から0.04分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.09分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.00分後から流速を0.08mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0401】
図25(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0291、0.0266、0.0254、0.0265、0.0288、0.0304、0.0324、0.0394、0.0506及び0.0692minが得られている。
【0402】
これに対して
図29(A)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0202、0.0188、0.0190、0.0204、0.0233、0.0248、0.0277、0.0355、0.0476及び0.0671minが得られている。
図25(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、30.6、29.3、25.2、23.0、19.1、18.4、14.5、9.9、5.9及び3.0%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0403】
図29(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0211、0.0194、0.0194、0.0209、0.0236、0.0250、0.0280、0.0358、0.0478及び0.0675minが得られている。
図25(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、27.5、27.1、23.6、21.1、18.1、17.8、13.6、9.1、5.5及び2.5%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0404】
図29(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0224、0.0206、0.0201、0.0219、0.0245、0.0260、0.0287、0.0359、0.0480及び0.0674minが得られている。
図25(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、23.0、22.6、20.9、17.4、14.9、14.5、11.4、8.9、5.1及び2.6%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0405】
図30(A)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0254、0.0236、0.0226、0.0240、0.0262、0.0279、0.0302、0.0374、0.0489及び0.0684minが得られている。
図25(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、12.7、11.3、11.0、9.4、9.0、8.2、6.8、5.1、3.4及び1.2%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0406】
図30(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0276、0.0254、0.0245、0.0258、0.0280、0.0297、0.0319、0.0382、0.0496及び0.0685minが得られている。
図25(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、5.2、4.5、3.5、2.6、2.8、2.3、1.5、3.0、2.0及び1.0%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0407】
試料注入から流速0.005、0.01、0.02、0.05及び0.08mL/minで3.5〜4.0μL送液し、その後0.04〜0.14分間は流速を0.2mL/minとし、その後流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラム(
図29(A)、
図29(B)、
図29(C)、
図30(A)及び
図30(B))の中では、
図29(A)のクロマトグラムのピークの半値幅が最も小さくなった。
【0408】
試料注入後0.005mL/min、0.01mL/min、0.02mL/min、0.05mL/min、0.08mL/minで3.5〜4μL送液してから流速を0.1mL/minに上げて分析した中では、いずれの場合も流速0.1mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて高いカラム性能が得られたが、中でも試料注入後0.005mL/minという最も小さい流速で3.5μL送液してから流速を0.1mL/minに上げる流速プログラムにより、最も高いカラム性能が得られることを確認した。
【0409】
又、
図29(A)において、0.005mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.87−0.70=0.17minであり、0.005mL/minで安定していた圧力(0.8MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は15.9MPaであることから、0.005mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、15.9/0.17=93.5MPa/minであった。
【0410】
又、
図29(B)において、0.01mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.60−0.35=0.25minであり、0.01mL/minで安定していた圧力(1.6MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は15.1MPaであることから、0.01mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、15.1/0.25=60.4MPa/minであった。
【0411】
又、
図29(C)において、0.02mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.34−0.18=0.16minであり、0.02mL/minで安定していた圧力(3.2MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は13.5MPaであることから、0.02mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、13.5/0.16=84.4MPa/minであった。
【0412】
又、
図30(A)において、0.05mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.23−0.07=0.16minであり、0.05mL/minで安定していた圧力(8.3MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は8.4MPaであることから、0.05mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、8.4/0.16=52.5MPa/minであった。
【0413】
又、
図30(B)において、0.08mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.14−0.05=0.09minであり、0.08mL/minで安定していた圧力(13.4MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は3.3MPaであることから、0.08mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、3.3/0.09=36.7MPa/minであった。
【実施例18】
【0414】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行うにあたり、第一流速がピーク形状に与える効果を確認した(
図30(C))。又、従来の試料注入法(
図25(A))(比較例)との比較を行った。
【0415】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)を用いて、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.1mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0416】
図25(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを0.5μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.1mL/minで送液した。
【0417】
図30(C)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0mL/minとしておき、注入と同時に流速を直線的に上げ始め、注入の0.35分後には流速を0.02mL/minとし(0.35分かけて、流速を0mL/minから0.02mL/minに直線勾配で上昇させる。クロマトグラムの左上に(1):3.5μLと記載)、注入から0.37分後から流速を0.2mL/minとして0.13分間送液し、注入から0.50分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.00分後から流速を0mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0418】
図25(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0291、0.0266、0.0254、0.0265、0.0288、0.0304、0.0324、0.0394、0.0506及び0.0692minが得られている。
【0419】
これに対して
図30(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0220、0.0203、0.0200、0.0217、0.0243、0.0258、0.0290、0.0365、0.0488及び0.0682minが得られている。
図25(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、24.4、23.7、21.3、18.1、15.6、15.1、10.5、7.4、3.6及び1.4%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0420】
試料注入後0.35分間で流速を0mL/minから0.02mL/minに直線勾配で上げてから流速を0.1mL/minに上げて分析する流速プログラムにより、流速0.1mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて高いカラム性能が得られることを確認した。
【0421】
又、
図30(C)において、0.02mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.54−0.37=0.17minであり、0.02mL/minでの圧力(2.2MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は14.5MPaであることから、0.02mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、14.5/0.17=85.3MPa/minであった。
【実施例19】
【0422】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行い、その後分析に適した流速にて分析を行うにあたり、分析に適した流速がピーク幅に与える効果を確認した(
図32(A)、
図32(B)及び
図32(C))。又、従来の試料注入法(
図31(A)、
図31(B)及び
図31(C))(比較例)との比較を行った。また、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速と分析に適した流速の差がクロマトグラムにどのような影響を及ぼすかを確認した。
【0423】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムKinetex C18(充填剤径2.6μm、内径2.1 mm、長さ5cm、Phenomenex社)を用いて、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.2、0.4、0.6mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0424】
図31(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを2μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.2mL/minで送液した。
【0425】
図31(B)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを2μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.4mL/minで送液した。
【0426】
図31(C)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを2μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.6mL/minで送液した。
【0427】
図32(A)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.005mL/minとしておき、注入の0.70分後(注入から3.5μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):3.5μLと記載)から流速を0.2mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の5.00分後から流速を0.005mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0428】
図32(B)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.005mL/minとしておき、注入の0.70分後(注入から3.5μL送液後)から流速を0.4mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の3.00分後から流速を0.005mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0429】
図32(C)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.005mL/minとしておき、注入の0.70分後(注入から3.5μL送液後)から流速を0.6mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の2.00分後から流速を0.005mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0430】
図31(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0280、0.0220、0.0224、0.0233、0.0253、0.0265、0.0290、0.0356、0.0467及び0.0650minが得られている。
【0431】
図31(B)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0144、0.0121、0.0119、0.0123、0.0132、0.0148、0.0178、0.0231及び0.0318minが得られている。BePhについては、データ解析用のソフトウェア(EZChrom Elite、Agilent Technologies社)の自動計算で半値幅を認識しなかった。
【0432】
図31(C)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0101、0.0087、0.0085、0.0087、0.0095、0.0106、0.0126、0.0163及び0.0219minが得られている。BePhについては、データ解析用のソフトウェアの自動計算で半値幅を認識しなかった。
【0433】
これに対して
図32(A)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0264、0.0182、0.0185、0.0198、0.0222、0.0230、0.0264、0.0333、0.0449及び0.0636minが得られている。
図31(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、5.7、17.3、17.4、15.0、12.3、13.2、9.0、6.5、3.9及び2.2%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。また、
図32(A)では、ピークNo.1のUが溶出する前に圧力が6.8MPaで安定していた。
【0434】
図32(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0143、0.0100、0.0098、0.0103、0.0115、0.0134、0.0167、0.0224及び0.0310minが得られている。BePhについては、データ解析用のソフトウェアの自動計算で半値幅を認識しなかった。
図31(B)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、0.7、17.4、17.6、16.3、12.9、9.5、6.2、3.0及び2.5%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。また、
図32(B)では、ピークNo.1のUが溶出する前に圧力が13.5MPaで安定していた。
【0435】
図32(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0100、0.0073、0.0072、0.0073、0.0082、0.0097、0.0119、0.0158及び0.0213minが得られている。BePhについては、データ解析用のソフトウェアの自動計算で半値幅を認識しなかった。
図31(C)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、1.0、16.1、15.3、16.1、13.7、8.5、5.6、3.1及び2.7%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0436】
又、
図32(C)では、ピークNo.1のUが溶出した後に圧力が20MPaで安定していたように見えたため、
図31(C)と
図32(C)の各ピークの保持時間の差を比較したところ、
図31(C)ではピークNo.1と2の差が0.032min、ピークNo.2と3の差が0.043min、ピークNo.3と4の差が0.042min、ピークNo.4と5の差が0.054minであり、
図32(C)ではピークNo.1と2の差が0.031min、ピークNo.2と3の差が0.043min、ピークNo.3と4の差が0.042min、ピークNo.4と5の差が0.054minであった。もし圧力が20.4MPaで安定する前にUが溶出した場合にはピークNo.1と2の保持時間の差が、
図31(C)よりも
図32(C)において大きくなると思われる。このことから、ピークNo.1のUが溶出する前に圧力が20.4MPaで安定していたと思われる。
【0437】
試料注入から流速0.005mL/minで3.5μL送液し、その後流速を0.2、0.4、0.6mL/minとすることで分離を行ったクロマトグラム(
図32(A)、
図32(B)及び
図32(C))では、いずれも比較例(
図31(A)、
図31(B)及び
図31(C))に比べて、溶質ピークの半値幅が減少した。また、使用したカラムKinetex C18(充填剤径2.6μm、内径2.1 mm、長さ5cm、Phenomenex社)の場合には、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速(0.005mL/min)と分析に適した流速の差が0.195mL/min、0.395mL/min、0.595mL/minのいずれの場合でも、1回だけ流速を変化させる単純な流速プログラムに従う圧力の変化が迅速に起こり、比較例に比べて各ピークの保持時間の差(ピーク溶出時間の間隔)には概ね影響しないことを確認した。
【0438】
又、
図32(A)において、0.005mL/minから0.2mL/minへの流速の変化に要する時間は0.89−0.70=0.19minであり、0.005mL/minでの圧力(0.1MPa)と0.2mL/minで安定した圧力(6.8MPa)の差は6.7MPaであることから、0.005mL/minから0.2mL/minへの変化の勾配は、6.7/0.19=35.3MPa/minであった。
【0439】
又、
図32(B)において、0.005mL/minから0.4mL/minへの流速の変化に要する時間は0.88−0.70=0.18minであり、0.005mL/minでの圧力(0.1MPa)と0.4mL/minで安定した圧力(13.6MPa)の差は13.5MPaであることから、0.005mL/minから0.4mL/minへの変化の勾配は、13.5/0.18=75.0MPa/minであった。
【0440】
又、
図32(C)において、0.005mL/minから0.6mL/minへの流速の変化に要する時間は0.87−0.70=0.17minであり、0.005mL/minでの圧力(0.1MPa)と0.6mL/minで安定した圧力(20.4MPa)の差は20.3MPaであることから、0.005mL/minから0.6mL/minへの変化の勾配は、20.3/0.17=119.4MPa/minであった。
【実施例20】
【0441】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行い、その後分析に適した流速にて分析を行うにあたり、分析に適した流速がピーク幅に与える効果を確認した(
図34(A)、
図34(B)及び
図34(C))。又、従来の試料注入法(
図33(A)、
図33(B)及び
図33(C))(比較例)との比較を行った。また、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速と分析に適した流速の差がクロマトグラムにどのような影響を及ぼすかを確認した。
【0442】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、
図33(A)、
図33(C)、
図34(A)及び
図34(C)では試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)をカラム入口までの配管として接続し、
図33(B)及び
図34(B)では試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.254mm、長さ15.2cmのPEEK管(容量約7.7μL)をカラム入口までの配管として接続した。カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)を用いて、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.02、0.05、0.1mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0443】
図33(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを0.5μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.02mL/minで送液した。
【0444】
図33(B)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを0.5μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.05mL/minで送液した。
【0445】
図33(C)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを0.5μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.1mL/minで送液した。
【0446】
図34(A)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.005mL/minとしておき、注入の0.70分後(注入から3.5μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):3.5μLと記載)から流速を0.02mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の18.00分後から流速を0.005mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0447】
図34(B)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の1.00分後(注入から10μL送液後)から流速を0.05mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の7.50分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0448】
図34(C)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.01mL/minとしておき、注入の0.35分後(注入から3.5μL送液後)から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.00分後から流速を0.01mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0449】
図33(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0907、0.0834、0.0939、0.1093、0.1279、0.1326、0.1628、0.2197、0.3085及び0.4538minが得られている。
【0450】
図33(B)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0995、0.0948、0.0847、0.0875、0.0981、0.1091、0.1297及び0.1663minが得られている。BuPh、BePhについては、データ解析用のソフトウェア(EZChrom Elite、Agilent Technologies社)の自動計算で半値幅を認識しなかった。
【0451】
図33(C)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0291、0.0266、0.0254、0.0265、0.0288、0.0304、0.0324、0.0394、0.0506及び0.0692minが得られている。
【0452】
これに対して
図34(A)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0778、0.0743、0.0897、0.1061、0.1271、0.1306、0.1591、0.2167、0.3082及び0.4495minが得られている。
図33(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、14.2、10.9、4.5、2.9、0.6、1.5、2.3、1.4、0.1及び0.9%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。また、
図34(A)では、ピークNo.1のUが溶出する前に圧力が3.4MPaで安定していた。
【0453】
図34(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0579、0.0514、0.0486、0.0515、0.0564、0.0595、0.0646、0.0801、0.1056及び0.1481minが得られている。
図33(B)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、41.8、45.8、42.6、41.1、34.1、26.6、18.6及び10.9%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0454】
また、
図34(B)では、ピークNo.1のUが溶出した後に圧力が8.3MPaで安定していたように見えたため、
図33(B)と
図34(B)の各ピークの保持時間の差を比較したところ、
図33(B)ではピークNo.1と2の差が0.179min、ピークNo.2と3の差が0.267min、ピークNo.3と4の差が0.263min、ピークNo.4と5の差が0.327minであり、
図34(B)ではピークNo.1と2の差が0.187min、ピークNo.2と3の差が0.270min、ピークNo.3と4の差が0.262min、ピークNo.4と5の差が0.325minであった。ピークNo.1と2の差、ピークNo.2と3の差がいずれも、
図33(B)よりも
図34(B)の方が大きいことから、
図34(B)ではピークNo.1のUとピークNo.2のAcAnが溶出した後で圧力が8.3MPaで安定したと思われる。
【0455】
図34(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0238、0.0207、0.0199、0.0212、0.0237、0.0251、0.0281、0.0355、0.0472及び0.0665minが得られている。
図33(C)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、18.2、22.2、21.7、20.0、17.7、17.4、13.3、9.9、6.7及び3.9%減少しており、溶質バンドの分散も減少していることがわかる。また、
図34(C)では、ピークNo.1のUとピークNo.2のAcAnとピークNo.3のAcPhが溶出した後で圧力が16.7MPaで安定したと思われる。
【0456】
試料注入から流速0.005もしくは0.01mL/minで3.5μLあるいは10.0μL送液し、その後流速を0.02、0.05、0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラム(
図34(A)、
図34(B)及び
図34(C))では、いずれも比較例(
図33(A)、
図33(B)及び
図33(C))に比べて、溶質ピークの半値幅が減少した。また、使用したカラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)の場合、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速(0.005mL/min)と分析に適した流速の差が0.015mL/minの場合では、1回だけ流速を変化させる単純な流速プログラムに従う圧力の変化が迅速に起こり、比較例に比べて各ピークの保持時間の差には影響しないことを確認した。また、使用したカラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)の場合、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速(0.01mL/min)と分析に適した流速の差が0.040mL/min、0.090mL/minの場合では、1回だけ流速を変化させる単純な流速プログラムに従う圧力の変化が迅速に起こらなかったことを確認した。
【0457】
試料バンドの分散を小さく保つことが出来る流速(第一流速)から分析に適した流速(第二流速)へ1回だけ変化させる単純な流速プログラムに従う圧力の変化が迅速に起こらない理由としては、2種の流速に伴う圧力の差や、充填剤種、送液ポンプからカラム充填層前までの流路の容量と流速との比の大きさ等が考えられるが、例えば実施例11で示した
図21(C)や実施例15で示した
図25(C)のように、流速の変化を2回行う(分析に適した流速に伴う圧力での安定化を早めるために、1回分析に適した流速(第二流速)よりも大きな流速(第三流速)に変化させ、その後分析に適した流速(第二流速)に変化させる)流速プログラムにより、圧力の変化を迅速に起こすことが出来る。
【0458】
試料注入後0.005mL/minで3.5μL送液してから流速を0.02mL/minに上げて分析する流速プログラムにより、流速0.02mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて高いカラム性能が得られることを確認した。又、試料注入後0.01mL/minで10μL送液してから流速を0.05mL/minに上げて分析する流速プログラムにより、流速0.05mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて高いカラム性能が得られることを確認した。又、試料注入後0.01mL/minで3.5μL送液してから流速を0.1mL/minに上げて分析する流速プログラムにより、流速0.1mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて高いカラム性能が得られることを確認した。
【0459】
実施例2から実施例20において検討した、試料注入用流路切り替えバルブ出口とカラム入口を接続した配管とカラム内径を変更した組み合わせでは、いずれもカラム性能を発揮しやすい一定の流速で、試料注入装置と分離カラムとの間の流路内への試料注入から分離カラムを経て分析までを行う従来の方法に比べて、試料注入用流路切り替えバルブからカラム充填剤層前まであるいはカラム充填層まで試料バンドを、分析に適した流速よりも試料バンドの分散の増加を抑えられる流速で移動させ、続いて流速を分析に適した値に変化させる流速プログラムにより、高いカラム性能が得られることを確認した。
【0460】
又、
図34(A)において、0.005mL/minから0.02mL/minへの流速の変化に要する時間は1.45−0.70=0.75minであり、0.005mL/minでの圧力(0.8MPa)と0.02mL/minで安定した圧力(3.3MPa)の差は2.5MPaであることから、0.005mL/minから0.02mL/minへの変化の勾配は、2.5/0.75=3.3MPa/minであった。
【0461】
又、
図34(B)において、0.01mL/minから0.05mL/minへの流速の変化に要する時間は1.85−1.00=0.85minであり、0.01mL/minでの圧力(1.6MPa)と0.05mL/minで安定した圧力(8.3MPa)の差は6.7MPaであることから、0.01mL/minから0.05mL/minへの変化の勾配は、6.7/0.85=7.9MPa/minであった。
【0462】
又、
図34(C)において、0.01mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は1.22−0.35=0.87minであり、0.01mL/minでの圧力(1.6MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(16.7MPa)の差は15.1MPaであることから、0.01mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、15.1/0.87=17.4MPa/minであった。
【実施例21】
【0463】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行い、その後分析に適した流速にて分析を行うにあたり、送液ポンプ2台と、試料注入装置、ループを備えたミクロ6方流路切り替えバルブとこれらを制御する導入制御装置を組み合わせた試料導入装置(
図41)を用いた。従来の試料注入法(
図35(A))(比較例)と本発明の試料導入方法(
図35(B))におけるカラム性能の比較を行った。
【0464】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用した。
図35(A)(比較例)の際は、
図41(A)で、試料注入装置4が備える試料注入用流路切り替えバルブとは別個の流路切り替えバルブ、具体的にはミクロ6方流路切り替えバルブ8(C72X−1696EHバルブ)のポートaに接続している内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)とカラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)と検出器出口までの接続管を、ポートdに付け変えて測定した。
図35(B)(本発明の実施例)の際は、
図41(A)に示すように、UHPLC装置LC800の送液ポンプ51と試料注入装置に含まれる試料注入用流路切り替えバルブを流路接続し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)を接続し、更に5μLループ(内径0.2mm、長さ15.9cm)を備えたミクロ6方流路切り替えバルブ8(C72X−1696EHバルブ、Valco社)のポートeを接続した。C72X−1696EHバルブのポートaに内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)を接続し、更にカラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)と検出器出口までの接続管を接続した。移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.05mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。UHPLC装置LC800の送液ポンプ52とC72X−1696EHバルブのポートbは外径1.6mm、内径0.1mmのステンレススチール管で接続した。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0465】
図35(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを0.5μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は送液ポンプ51から流速0.05mL/minで送液した。
【0466】
図35(B)では、試料IIを0.5μL注入する前に送液ポンプ51の流速を0.005mL/minとしておき、送液ポンプ52の流速は0.05mL/minとした。注入の1.30分後(注入から6.5μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):6.5μLと記載)にミクロ6方切り替えバルブを
図41(C)のポジションに切り替え、試料をカラムに流速0.05mL/minで導入した。注入の8.00分後からミクロ6方切り替えバルブを
図41(A)のポジションに切り替えることにより連続での測定に備えている。送液ポンプ52の出口で圧力を測定しているので、クロマトグラムの下に表示した圧力トレースは8.2MPaで一定となっている。
【0467】
図35(B)で注入の1.30分後にミクロ6方流路切り替えバルブを
図41(C)のポジションに切り替えた際、圧力トレースの低下が見られないことから、第一流速(送液ポンプ51の流速0.005mL/min)から第二流速(送液ポンプ52の流速0.05mL/min)への速やかな変更を伴う本発明の実施が行われている。
【0468】
図35(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.1050、0.0987、0.0881、0.0911、0.1000、0.1111、0.1290及び0.1645minが得られている。BuPh、BePhについては、データ解析用のソフトウェア(EZChrom Elite、Agilent Technologies社)の自動計算で半値幅を認識しなかった。
【0469】
これに対して
図35(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0884、0.0817、0.0743、0.0768、0.0866、0.0938、0.0865、0.0983、0.1185及び0.1541minが得られている。
図35(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、15.8、17.2、15.7、15.7、13.5、11.5、8.1及び6.3%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【実施例22】
【0470】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行い、その後分析に適した流速にて分析を行うにあたり、送液ポンプ2台と、試料注入装置、抵抗管と抵抗用カラムを備えたミクロ6方流路切り替えバルブとこれらを制御する導入制御装置を組み合わせた試料導入装置(
図42)を用いた。従来の試料注入法(
図36(A))(比較例)と本発明の試料導入方法(
図36(B))におけるカラム性能の比較を行った。
【0471】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用した。UHPLC装置LC800の送液ポンプ51とミクロ6方流路切り替えバルブ8(C72X−1696EHバルブ、Valco社)のポートaを流路接続し、C72X−1696EHバルブのポートbと試料注入装置に含まれる試料注入用流路切り替えバルブを流路接続した。試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)を接続し、更に分離カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)と分離カラム出口から検出器出口までの接続管(検出器セルを含む)を接続した。UHPLC装置LC800の送液ポンプ52とC72X−1696EHバルブのポートcを流路接続し、C72X−1696EHバルブのポートdには抵抗用カラムと、分離カラム出口から検出器出口までの接続管と同等の圧力がかけられる抵抗(カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)と、外径0.375mm、内径0.03mm、長さ12cmのフューズドシリカキャピラリー管)を接続した。C72X−1696EHバルブのポートeとfは互いに流路接続した。移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.1mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0472】
図36(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを0.5μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は
図42(A)の流路で送液ポンプ51から流速0.1mL/minで送液した。
【0473】
図36(B)では、試料IIを0.5μL注入する前に
図42(A)の流路で送液ポンプ51の流速を0.005mL/minとしておき、送液ポンプ52の流速は0.1mL/minとした。注入の0.70分後(注入から3.5μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):3.5μLと記載)にミクロ6方切り替えバルブを
図42(C)のポジションに切り替え、試料をカラムに流速0.1mL/minで導入し分離を始めた。注入の4.00分後からC72X−1696EHバルブのポジションを切り替えて
図42(A)の流路とし、カラムへ送液する流速を0.005mL/minとすることで連続での測定に備えている。送液ポンプ52の出口で圧力を測っているため、クロマトグラムの下に表示した圧力トレースは17.0MPaで一定となっている。
【0474】
図36(B)で注入の0.70分後にミクロ6方流路切り替えバルブを
図42(C)のポジションに切り替えた際、圧力トレースの低下が見られないことから、第一流速(送液ポンプ51の流速0.005mL/min)から第二流速(送液ポンプ52の流速0.1mL/min)への速やかな変更を伴う本発明の実施が行われている。
【0475】
図36(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0308、0.0280、0.0264、0.0276、0.0302、0.0318、0.0339、0.0404、0.0509及び0.0692minが得られている。
【0476】
これに対して
図36(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0188、0.0174、0.0179、0.0198、0.0229、0.0242、0.0275、0.0353、0.0476及び0.0669minが得られている。
図36(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、39.0、37.9、32.2、28.3、24.2、23.9、18.9、12.6、6.5及び3.3%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【実施例23】
【0477】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行い、その後分析に適した流速にて分析を行うにあたり、送液ポンプ2台と、試料注入装置、ミクロ6方流路切り替えバルブとこれらを制御する導入制御装置を組み合わせた試料導入装置(
図43)を用いた。本実施例では、
図43中の試料バンド分割装置(
図44(A)に構造を示す)は接続しているが試料バンドの分割には使用せず、試料バンド分割は行わなかった。従来の試料注入法(
図37(A))(比較例)と本発明の試料導入方法(
図37(B))におけるカラム性能の比較を行った。
【0478】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用した。UHPLC装置LC800の送液ポンプ51とミクロ6方流路切り替えバルブ8(C72X−1696EHバルブ、Valco社)のポートbを流路接続し、C72X−1696EHバルブのポートaと試料注入装置に含まれる試料注入用流路切り替えバルブを流路接続した。試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)を接続し、更に試料バンド分割装置を接続し、分離カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)とカラム出口から検出器出口までの接続管(検出器セルを含む)を接続した。流路を切り替えて試料バンドの分割を行うことが出来る試料バンド分割装置77は、
図44(A)に示す構造であり、T字コネクターU−428(内径0.5mm、IDEX社)を使用し、二重管は、第1送液ポート64送液用の内管に外径0.236mm、内径0.108mm、長さ10cmのステンレススチール管(容量約0.92μL)、及び、第2送液ポート65送液用の外管に外径1.6mm、内径0.5mm、長さ5cmのステンレススチール管で構成した。送液ポンプ52とC72X−1696EHバルブのポートfを流路接続し、C72X−1696EHバルブのポートcと試料バンド分割装置の第2送液ポートを流路接続した(外径1.6mm、内径0.1mmのステンレススチール管を使用)。C72X−1696EHバルブのポートdとeは互いに流路接続した。移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.1mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0479】
図37(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを0.7μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は
図43(A)の流路で送液ポンプ51から流速0.1mL/minで送液した。
【0480】
図37(B)では、試料IIを0.7μL注入する前に
図43(A)の流路で送液ポンプ51の流速を0.005mL/minとしておき、送液ポンプ52の流速は0.095mL/minとした。注入の0.40分後(注入から2.0μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):2μLと記載)にミクロ6方切り替えバルブを
図43(C)のポジションに切り替え、更に注入の0.50分後に送液ポンプ51の流速を0mL/minに、送液ポンプ52の流速を0.1mL/minに変更して試料をカラムに導入した。注入の5.00分後からC72X−1696EHバルブのポジションを切り替えて
図43(A)の流路とし、送液ポンプ51の流速を0.005mL/minに、送液ポンプ52の流速を0.095mL/minに変更することで連続での測定に備えている。カラムには常に0.1mL/minで送液され、送液ポンプ52の出口で圧力を測っているので、クロマトグラムの下に表示した圧力トレースは20.8MPaで一定となっている。
【0481】
図37(B)で注入の0.40分後にミクロ6方流路切り替えバルブを
図43(C)のポジションに切り替えた際、圧力トレースの低下が見られないことから、第一流速(送液ポンプ51の流速0.005mL/min)から第二流速(送液ポンプ52の流速0.1mL/min)への速やかな変更を伴う本発明の実施が行われている。
【0482】
図37(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0298、0.0259、0.0242、0.0254、0.0275、0.0291、0.0311、0.0379、0.0493及び0.0668minが得られている。
【0483】
これに対して
図37(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0244、0.0210、0.0202、0.0213、0.0236、0.0251、0.0275、0.0346、0.0456及び0.0638minが得られている。
図37(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、18.1、18.9、16.5、16.1、14.2、13.7、11.6、8.7、7.5及び4.5%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【実施例24】
【0484】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行い、その後分析に適した流速にて分析を行うにあたり、送液ポンプ1台と、試料注入装置、ミクロ6方流路切り替えバルブとこれらを制御する導入制御装置を組み合わせた試料導入装置(
図45)を用いた。本実施例では、
図46に示すように、試料バンドの分割も行った。従来の試料注入法(
図38(A))(比較例)と本発明の試料導入方法(
図38(B))、本発明の試料導入方法に試料分割を伴う試料導入方法を組み合わせた方法(
図38(C))におけるカラム性能の比較を行った。
【0485】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用した。UHPLC装置LC800の送液ポンプ55と試料注入装置に含まれる試料注入用流路切り替えバルブを流路接続(流路途中にT字コネクターを接続)し、更に試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)を接続し、ミクロ6方流路切り替えバルブ8(C72X−1696EHバルブ、Valco社)のポートbに接続した。C72X−1696EHバルブのポートaに内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、更にカラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)とカラム出口から検出器出口までの接続管(検出器セルを含む)を接続した。又、送液ポンプ55と試料注入用流路切り替えバルブをつないだ流路の間のT字コネクターとC72X−1696EHバルブのポートfを外径1.6mm、内径0.1mmのステンレススチール管を使用して接続した。C72X−1696EHバルブのポートcとeにはプラグを取り付けた。移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.1mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0486】
図38(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを0.4μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は
図45(A)の流路で送液ポンプ55から流速0.1mL/minで送液した。
【0487】
図38(B)では、試料IIを0.4μL注入する前に
図45(A)の流路で送液ポンプ55の流速を0.005mL/minとしておき、注入の0.40分後(注入から2μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):2μLと記載)にミクロ6方切り替えバルブを
図45(C)のポジションに切り替え、更に注入の0.45分後から0.21分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.66分後から流速を0.1mL/minとし、注入の1.00分後にミクロ6方切り替えバルブを
図45(D)のポジションに切り替え、ミクロ6方切り替えバルブ内に一時的に留め置かれた試料の一部分をカラムに導入し、分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.00分後から流速を0.005mL/minとすることで連続での測定に備えている。
【0488】
図38(B)で注入の1.00分後にミクロ6方流路切り替えバルブを
図45(D)のポジションに切り替えた際、圧力トレースの低下が見られないことから、第一流速(0.005mL/min)から第二流速(0.1mL/min)への変更による送液ポンプ55と分離カラム2の平衡化を行った後に、試料バンドの第二流速での分離カラム2への導入と分離が行われている。
【0489】
図38(C)では、試料IIを0.4μL注入する前に
図46(A)の流路で送液ポンプ55の流速を0.005mL/minとしておき、注入の0.52分後にミクロ6方切り替えバルブを
図46(C)のポジションに切り替え(注入から2.6μL送液後、クロマトグラムの
左下に(1):2.6μLと記載)、同時に流速を0.2mL/minとし、0.26分間は流速を0.2mL/minとし、注入の0.78分後から流速を0.1mL/minとすることで、分割された試料バンドの前部分の分離を行ったクロマトグラムである(
図38(C)の第1クロマトグラム)。更に注入の4.00分後にミクロ6方切り替えバルブを
図46(D)のポジションに切り替え、ミクロ6方切り替えバルブ内に一時的に留め置かれた試料の後部分をカラムに導入し、分離を行ったクロマトグラムである(
図38(C)の第2クロマトグラム)。注入の7.00分後から流速を0.005mL/minとすることで連続での測定に備えている。注入の0.52分後にミクロ6方切り替えバルブが
図46(C)のポジションに切り替わった時に試料の分割が行われている(クロマトグラムの
左下(2):試料分割ありと記載)。
【0490】
図38(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0298、0.0274、0.0257、0.0276、0.0304、0.0319、0.0335、0.0405、0.0502及び0.0666minが得られている。
【0491】
これに対して
図38(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0232、0.0229、0.0220、0.0236、0.0243、0.0275、0.0301、0.0380、0.0483及び0.0657minが得られている。
図38(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、22.1、16.4、14.4、14.5、20.1、13.8、10.1、6.2、3.8及び1.4%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0492】
図38(C)の第1クロマトグラムでは、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0154、0.0159、0.0153、0.0182、0.0218、0.0236、0.0256、0.0346、0.0475及び0.0642minが得られている。
図38(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、48.3、42.0、40.5、33.7、28.3、26.0、23.3、18.0、11.0及び4.2%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0493】
図38(C)の第2クロマトグラムでは、クロマトグラムの右上の表には記載していないが、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0205、0.0195、0.0214、0.0230、0.0250、0.0267、0.0295、0.0373、0.0473及び0.0636minが得られている。
図38(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、31.2、28.8、16.7、16.7、17.8、16.3、11.9、7.9、5.8及び4.5%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0494】
又、
図38(B)において、0.005mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.73−0.40=0.33minであり、0.005mL/minでの圧力(1.0MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(20.5MPa)の差は19.5MPaであることから、0.005mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、19.5/0.33=59.1MPa/minであった。
【0495】
又、
図38(C)において、0.005mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は0.83−0.52=0.31minであり、0.005mL/minでの圧力(1.0MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(20.5MPa)の差は19.5MPaであることから、0.005mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、19.5/0.31=62.9MPa/minであった。
【実施例25】
【0496】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行い、その後分析に適した流速にて分析を行うにあたり、送液ポンプ2台と、試料注入装置、ミクロ6方流路切り替えバルブとこれらを制御する導入制御装置を組み合わせた試料導入装置(
図43)を用いた。本実施例では、
図43中の試料バンド分割装置77(
図44(A)に構造を示す)を使用して、試料バンドの分割を行った。従来の試料注入法(
図39(A))(比較例)と本発明の試料導入方法に試料分割を伴う試料導入方法を組み合わせた方法(
図39(B))におけるカラム性能の比較を行った。
【0497】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用した。UHPLC装置LC800の送液ポンプ51とミクロ6方流路切り替えバルブ8(C72X−1696EHバルブ、Valco社)のポートbを流路接続し、C72X−1696EHバルブのポートaと試料注入装置に含まれる試料注入用流路切り替えバルブを流路接続した。試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)を接続し、更に
図44(A)に示す試料バンド分割装置77を接続し、カラムKinetex C18(充填剤径2.6μm、内径2.1 mm、長さ5cm、Phenomenex社)とカラム出口から検出器出口までの接続管(検出器セルを含む)を接続した。UHPLC装置LC800の送液ポンプ52とC72X−1696EHバルブのポートfを流路接続し、C72X−1696EHバルブのポートcと試料バンド分割装置の第2送液ポートを流路接続した(外径1.6mm、内径0.1mmのステンレススチール管を使用)。C72X−1696EHバルブのポートdとeは互いに流路接続した。移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.2mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0498】
図39(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを1.5μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は
図43(A)の流路で送液ポンプ51から流速0.2mL/minで送液した。
【0499】
図39(B)では、試料IIを1.5μL注入する前に
図43(A)の流路で送液ポンプ51の流速を0.005mL/minとしておき、送液ポンプ52の流速は0.195mL/minとした。注入の0.20分後(注入から1.0μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):1μLと記載)にミクロ6方切り替えバルブを
図43(C)のポジションに切り替え、送液ポンプ51の流速を0mL/minとし、送液ポンプ52の流速は0.2mL/minとした。更に注入の0.21分後にミクロ6方流路切り替えバルブ8のポジションを切り替えて
図43(A)の流路とし、試料バンドの分割と前部分のカラムへの導入を行った(第1クロマトグラム)。注入の4.00分後にミクロ6方流路切り替えバルブ8のポジションを切り替えて
図43(C)の流路とし、試料バンド分割装置の手前の流路に留められていた試料バンドの後部分のカラムへの導入を行った(第2クロマトグラム)。注入の8.00分後にミクロ6方流路切り替えバルブ8のポジションを切り替えて
図43(A)の流路とし、送液ポンプ51の流速を0.005mL/minに、送液ポンプ52の流速を0.195mL/minに変更することで連続での測定に備えている。カラムには常に0.2mL/minで送液され、送液ポンプ52の出口で圧力を測っているので、クロマトグラムの下に表示した圧力トレースは8.0MPaでほぼ一定となっている。
【0500】
図39(B)で注入の0.20分後にミクロ6方流路切り替えバルブを
図43(C)のポジションに切り替えた際、圧力トレースの低下が見られないことから、第一流速(送液ポンプ51の流速0.005mL/min)から第二流速(送液ポンプ52の流速0.2mL/min)への速やかな変更を伴う本発明の実施が行われている。
【0501】
図39(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0261、0.0161、0.0199、0.0198、0.0219、0.0239、0.0287、0.0383、0.0509及び0.0743minが得られている。
【0502】
これに対して
図39(B)第1クロマトグラムでは、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0180、0.0143、0.0155、0.0183、0.0202、0.0223、0.0266、0.0359、0.0490及び0.0721minが得られている。
図39(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、31.0、11.2、22.1、7.6、7.8、6.7、7.3、6.3、3.7及び3.0%減少しており、溶質バンドの分散も減少していることがわかる。
【実施例26】
【0503】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行い、その後分析に適した流速にて分析を行うにあたり、送液ポンプ1台と、試料注入装置、ミクロ6方流路切り替えバルブとこれらを制御する導入制御装置を組み合わせた試料導入装置(
図45)を用いた。本実施例では、
図46に示すような、試料バンドの分割は行わなかった。従来の試料注入法(
図40(A))(比較例)と本発明の試料導入方法(
図40(B))におけるカラム性能の比較を行った。
【0504】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用した。UHPLC装置LC800の送液ポンプ55と試料注入装置に含まれる試料注入用流路切り替えバルブを流路接続(流路途中にT字コネクターを接続)し、更に試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)を接続し、ミクロ6方流路切り替えバルブ8(C72X−1696EHバルブ、Valco社)のポートbに接続した。C72X−1696EHバルブのポートaに内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、更にカラムKinetex C18(充填剤径2.6μm、内径2.1 mm、長さ5cm、Phenomenex社)とカラム出口から検出器出口までの接続管(検出器セルを含む)を接続した。また、送液ポンプ55と試料注入用流路切り替えバルブをつないだ流路の間のT字コネクターとC72X−1696EHバルブのポートfを外径1.6mm、内径0.1mmのステンレススチール管を使用して接続した。C72X−1696EHバルブのポートcとeにはプラグを取り付けた。移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.4mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0505】
図40(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを1μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は
図45(A)の流路で送液ポンプ55から流速0.4mL/minで送液した。
【0506】
図40(B)では、試料IIを1μL注入する前に
図45(A)の流路で送液ポンプ55の流速を0.005mL/minとしておき、試料を注入後ミクロ6方流路切り替えバルブ8内の流路まで移動させ(
図45(B))、注入の0.40分後(注入から2μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):2μLと記載)にミクロ6方切り替えバルブ8を
図45(C)のポジションに切り替え、試料をミクロ6方流路切り替えバルブ8内に一時的に留置する。更に注入の0.45分後から流速を0.4mL/minとし、注入の1.00分後にミクロ6方切り替えバルブを
図45(D)のポジションに切り替え、試料をカラムへ導入することで分離を行ったクロマトグラムである。注入の4.00分後から流速を0.005mL/minとすることで連続での測定に備えている。
【0507】
図40(B)で注入の1.00分後にミクロ6方流路切り替えバルブを
図45(D)のポジションに切り替えた際、圧力トレースの低下が見られないことから、第一流速(0.005mL/min)から第二流速(0.4mL/min)への変更による送液ポンプ55と分離カラム2の平衡化を行った後に、試料バンドの第二流速での分離カラム2への導入と分離が行われている。
【0508】
図40(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0118、0.0109、0.0109、0.0120、0.0127、0.0137、0.0143、0.0177、0.0227及び0.0310minが得られている。
【0509】
これに対して
図40(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0105、0.0091、0.0089、0.0099、0.0121、0.0115、0.0136、0.0170、0.0217及び0.0303minが得られている。
図40(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、11.8、17.3、18.3、17.5、4.7、16.1、16.1、12.4、11.5及び2.3%減少しており、溶質バンドの分散も減少していることがわかる。又、流速0.4mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて高いカラム性能が得られることを確認した。
【0510】
又、
図40(B)において、0.005mL/minから0.4mL/minへの流速の変化に要する時間は0.83−0.45=0.38minであり、0.005mL/minでの圧力(0.1MPa)と0.4mL/minで安定した圧力(13.1MPa)の差は13.0MPaであることから、0.005mL/minから0.4mL/minへの変化の勾配は、13.0/0.38=34.2MPa/minであった。
【実施例27】
【0511】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行い、その後分析に適した流速にて分析を行うにあたり、本発明の試料導入方法を実施する前に、本発明の試料導入方法の効果を予測する方法を行った。従来の試料注入法で測定したクロマトグラム(
図25(A))(比較例)と、カラムの代わりにゼロデッドボリュームユニオン(ZDU)をつないで従来の試料注入法で測定したクロマトグラム(
図47(B)及び
図47(C))から予測計算を行い、本発明の試料導入方法によって得られるカラム性能を予測し、本発明の試料導入方法(
図25(C))におけるカラム性能との比較を行った。
【0512】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口にカラム入口までの配管として内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)を接続し、カラムに代えてZDU(U−435、内径0.25mm、内部容量0.02μL、IDEX社)を用いた。移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.01、0.1mL/minの2種の流速で送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。ZDU出口から検出器出口までの接続管については、ZDU出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、ZDU出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料I:ウラシル(U、0.1mg/mL)のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0513】
図47(B)は、従来の試料注入法を用いて、試料Iを0.5μL注入し、溶出を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.01mL/minで送液した。
【0514】
図47(C)は、従来の試料注入法を用いて、試料Iを0.5μL注入し、溶出を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.1mL/minで送液した。
【0515】
図47(B)では、ピークの溶出容量は10×0.322=3.22μLで、溶質バンドの分散σ(extra−1)
2はモーメント法(二次中心モーメント)により計算し、0.22μL
2であった。
【0516】
図47(C)では、ピークの溶出容量は100×0.038=3.8μLで、溶質バンドの分散σ(extra−2)
2はモーメント法(二次中心モーメント)により計算し、0.92μL
2であった。
【0517】
図25(A)(比較例)から、保持時間が最も大きいピーク(ピークNo.10)の保持係数kを以下のように計算した。保持係数kに対するカラム外体積の影響を除くため、
図47(B)と
図47(C)から計算されたピークの溶出容量の平均(3.51μL)から、ZDUの容量(0.02μL)を差し引いた容量(3.49μL)を差し引いて算出した。k=
{(100×2.774−3.49)−(100×0.239−3.49)}/(100×0.239−3.49)=12.42である。
【0518】
図25(A)(比較例)から、保持時間が最も大きいピークの分散σ(N)
2を以下のように計算した。σ(N)
2=(100×0.0692/2.35)
2=8.67μL
2である。
【0519】
図25(A)(比較例)から、保持時間が最も大きいピークの理論段数N(N)を、式4に従い以下のように計算した。N(N)=(2.774−0.0349)
2/(0.0692/2.35)
2=8652である。
【0520】
(式4) N =(t
R−t
(extra))
2/σ
total-t2 =(V
R−V
(extra))
2/σ
total-v2
【0521】
式6に従い、カラム内移動相体積Vmは、親水性が非常に高く、カラムに保持されないウラシル(U)の溶出体積から、カラム外体積3.49μLを差し引いて求められる。Vm=100×0.239−3.49=20.41μLである。
【0522】
(式6) Vm =F.R.×t
R(U)−V
(extra)
【0523】
式7に従い、k=12.42でカラムが与える真の分散値σ(col)
2を以下のように計算した。σ(col)
2=8.67−0.92=7.75μL
2である。
【0524】
(式7) σ
(col)2 =σ
(N)2−σ
(extra-2)2
【0525】
式4に従い、k=12.42でカラムが与える真の理論段数N(col)を以下のように計算した。N(col)=((2.774−0.0349)×100)
2/7.75=9679である。
【0526】
カラムの真の理論段数がk値によらず一定であると仮定して、各保持係数(k=1〜12)での真の分散値を式8に従い計算した。例えばσ(col)
2(k=12)=(20.41×(1+12))^2/9679=7.27μL
2である。
【0527】
(式8) σ
(col)2 = (Vm(1+k))
2/N
(col)
【0528】
式9に従い、k=1〜12で、
図25(A)と同条件で得られる分散値σ(total)
2を計算した。例えばσ(total)
2(k=12)=7.27+0.92=8.19μL
2である。
【0529】
(式9) σ
(total)2 =σ
(col)2 +σ
(extra-2)2
【0530】
式10に従い、k=1〜12で、
図25(A)と同条件で得られる理論段数N(total)を計算した。例えばN(total)(k=12)=(20.41×(1+12))
2/8.19=8592である。
【0531】
(式10) N
(total) = (Vm(1+k))
2/σ
(total)2
【0532】
式11に従い、k=1〜12で、本発明の試料導入方法で得られる分散値σ(SQ)
2を計算した。例えばσ(SQ)
2(k=12)=7.27+0.22=7.49μL
2である。なお、この計算のために必要な各溶質バンドの保持時間としては、比較例である流速一定での従来の試料注入法にて得られるクロマトグラムの各溶質バンドの保持時間を使用している。
【0533】
(式11) σ
(SQ)2 =σ
(col)2 +σ
(extra-1)2
【0534】
式12に従い、k=1〜12で、本発明の試料導入方法で得られる理論段数N(SQ)を計算した。例えばN(SQ)(k=12)=(20.41×(1+12))
2/7.49=9395である。なお、この計算のために必要な各溶質バンドの保持時間としては、比較例である流速一定での従来の試料注入法にて得られるクロマトグラムの各溶質バンドの保持時間を使用している。
【0535】
(式12) N
(SQ) = (Vm(1+k))
2/σ
(SQ)2
【0536】
図47(A)に、
図25(A)(比較例)のクロマトグラムから式4により計算した各ピークの理論段数と、保持係数kとの関係をプロットした(図中で、比較例の実測と表記)。又、
図25(C)のクロマトグラムの各ピークの半値幅から分散を計算し、その保持時間として
図25(A)の各ピークの保持時間を使用した上で各ピークの理論段数と、保持係数kとの関係をプロットした(図中で、本発明の実測と表記)。又上記の式10にて計算した各溶質バンドの理論段数と、保持係数k(1〜12)との関係をプロットした(図中で、比較例の予測と表記)。又、上記の式12にて計算した各溶質バンドの理論段数と、保持係数k(1〜12)との関係をプロットした(図中で、本発明の予測と表記)。
【0537】
本発明の予測に基づくプロットは、本発明の試料導入方法における流速の変化が、瞬時に流線の乱れ無く起こり、且つ流速の変化に応答する圧力の変化が、瞬時に圧力ショック無く起こる場合の理論的な数値を示すものと考えられる。
【0538】
図47(A)に示したように、本発明の試料導入方法により実際に得られた理論段数(
図25(C)の各ピークの保持時間として、比較例である
図25(A)の各ピークの保持時間を使用して、
図25(A)(比較例)からN(N)を計算した方法(式4)と同じ方法で計算した)は、k=1〜12の範囲で、保持係数kに依存した予測計算値より約3〜35%低いが、従来の試料注入法でカラムの代わりにゼロデッドボリュームユニオン(ZDU)をつないで測定したデータから、本発明の試料導入方法で得られるカラム性能の予測がある程度可能であることを示していた。本発明の試料導入方法で得られるカラム性能の目安を確認出来れば、カラムを付けた状態で本発明の試料導入方法に必要なパラメータ(試料バンドの分散を抑えることが出来る流速をどの程度に設定するかや、試料バンドの分散を抑えることが出来る流速でカラム充填層前までどれくらいの送液容量とするか)を変化させて検討する前に、本発明の試料導入方法の効果を容易に予測できる。又、
図47(B)のようなデータから、試料バンドの分散を抑えることが出来る流速でカラム充填層前までどれくらいの送液容量とするかの設定が容易となる。試料注入用流路切り替えバルブ出口からカラム前までにつなぐ配管の容量はその寸法から計算することが出来るが、試料注入用流路切り替えバルブ内部を含む容量の算出は困難であり、カラムの代わりにZDUをつないで測定することで得られるデータが有効である。
【0539】
図47(B)ではピークの溶出容量は3.22μLなので、この値からZDUの容量(0.02μL)と、ZDU出口から検出器セルまでの容量(1.08μL+0.006μL)を差し引くと2.114μLとなり、試料注入装置からカラム入口前までの容量は2.114μLと見積もることが出来る。試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速(0.01mL/min)で2.114μLと同等の容量を送液し、その後流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより、
図25(A)の比較例に比べて、
図26(B)に似たクロマトグラムを容易に取得出来ると思われる。カラム入口から充填層に至るまでの構造(一般的には
図3に示すように、入口側エンドユニオン内流路、コーン(分散スペース)、フリットがあり、続いて充填層がある)とこれらの内部の容量はそれぞれのカラムによって異なるものと思われ、又、一般的には開示されていないから、これらの内部の容量も見積もって、試料バンドの分散を小さく保つことが出来る流速でどれくらいの送液容量とするかを決めることは困難であるが(
図25(A)の比較例に比べて、
図25(C)に似たクロマトグラムをすぐ取得することは困難であるが)、本発明の試料導入方法による効果を
図26(B)に似たクロマトグラムから容易に確認出来るものと思われる。
【実施例28】
【0540】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行い、その後分析に適した流速にて分析を行うにあたり、本発明の試料導入方法を実施する前に、本発明の試料導入方法の効果を予測する方法を行った。従来の試料注入法で測定したクロマトグラム(
図21(A))(比較例)と、カラムの代わりにゼロデッドボリュームユニオン(ZDU)をつないで従来の試料注入法で測定したクロマトグラム(
図48(B)及び
図48(C))から予測計算を行い、本発明の試料導入方法によって得られるカラム性能を予測し、本発明の試料導入方法(
図21(C))におけるカラム性能との比較を行った。
【0541】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.254mm、長さ15.2cmのPEEK管(容量約7.7μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムに代えてZDU(U−435、内径0.25mm、内部容量0.02μL、IDEX社)を用いた。移動相(アセトニトリル/水=65/35)を
0.01、0.05mL/minの2種の流速で送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。ZDU出口から検出器出口までの接続管については、ZDU出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、ZDU出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料I:ウラシル(U、0.1mg/mL)のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0542】
図48(B)は、従来の試料注入法を用いて、試料Iを0.5μL注入し、溶出を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.01mL/minで送液した。
【0543】
図48(C)は、従来の試料注入法を用いて、試料Iを0.5μL注入し、溶出を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.05mL/minで送液した。
【0544】
図48(B)では、ピークの溶出容量は10×0.945=9.45μLで、溶質バンドの分散σ(extra−1)
2はモーメント法(二次中心モーメント)により計算し、0.80μL
2であった。
【0545】
図48(C)では、ピークの溶出容量は50×0.182=9.1μLで、溶質バンドの分散σ(extra−2)
2はモーメント法(二次中心モーメント)により計算し、3.64μL
2であった。
【0546】
図21(A)(比較例)から、保持時間が最も大きいピーク(ピークNo.10)の保持係数kを以下のように計算した。保持係数kに対するカラム外体積の影響を除くため、
図48(B)と
図48(C)から計算されたピークの溶出容量の平均(9.275μL)から、ZDUの容量(0.02μL)を差し引いた容量(9.255μL)を差し引いて算出した。k=
{(50×5.528−9.255)−(50×0.591−9.255)}/(50×0.591−9.255)=12.16である。
【0547】
図21(A)(比較例)から、保持時間が最も大きいピークの分散σ(N)
2を以下のように計算した。σ(N)
2=(50×0.1663/2.35)
2=12.52μL
2である。
【0548】
図21(A)(比較例)から、保持時間が最も大きいピークの理論段数N(N)を、式4に従い以下のように計算した。N(N)=(5.528−0.1851)
2/(0.1663/2.35)
2=5700である。
【0549】
(式4) N =(t
R−t
(extra))
2/σ
total-t2 =(V
R −V
(extra))
2/σ
total-v2
【0550】
式6に従い、カラム内移動相体積Vmは、親水性が非常に高く、カラムに保持されないウラシル(U)の溶出体積から、カラム外体積9.255μLを差し引いて求められる。Vm=50×0.591−9.255=20.30μLである。
【0551】
(式6) Vm =F.R.×t
R(U)−V
(extra)
【0552】
式7に従い、k=12.16でカラムが与える真の分散値σ(col)
2を以下のように計算した。σ(col)
2=12.52−3.64=8.88μL
2である。
【0553】
(式7) σ
(col)2 =σ
(N)2−σ
(extra-2)2
【0554】
式4に従い、k=12.16でカラムが与える真の理論段数N(col)を以下のように計算した。N(col)=((5.528−0.1851)×50)
2/8.88=8037である。
【0555】
カラムの真の理論段数がk値によらず一定であると仮定して、各保持係数(k=1〜12)での真の分散値を式8に従い計算した。例えばσ(col)^2(k=12)=(20.30×(1+12))
2/8037=8.66μL
2である。
【0556】
(式8) σ
(col)2 = (Vm(1+k))
2/N
(col)
【0557】
式9に従い、k=1〜12で、
図21(A)と同条件で得られる分散値σ(total)
2を計算した。例えばσ(total)
2(k=12)=8.66+3.64=12.30μL
2である。
【0558】
(式9) σ
(total)2 =σ
(col)2 +σ
(extra-2)2
【0559】
式10に従い、k=1〜12で、
図21(A)と同条件で得られる理論段数N(total)を計算した。例えばN(total)(k=12)=(20.30×(1+12))
2/12.30=5658である。
【0560】
(式10) N
(total) = (Vm(1+k))
2/σ
(total)2
【0561】
式11に従い、k=1〜12で、本発明の試料導入方法で得られる分散値σ(SQ)
2を計算した。例えばσ(SQ)
2(k=12)=8.66+0.80=9.46μL
2である。なお、この計算のために必要な各溶質バンドの保持時間としては、比較例である流速一定での従来の試料注入法にて得られるクロマトグラムの各溶質バンドの保持時間を使用している。
【0562】
(式11) σ
(SQ)2 =σ
(col)2 +σ
(extra-1)2
【0563】
式12に従い、k=1〜12で、本発明の試料導入方法で得られる理論段数N(SQ)を計算した。例えばN(SQ)(k=12)=(20.30×(1+12))
2/9.46=7357である。なお、この計算のために必要な各溶質バンドの保持時間としては、比較例である流速一定での従来の試料注入法にて得られるクロマトグラムの各溶質バンドの保持時間を使用している。
【0564】
(式12) N
(SQ) = (Vm(1+k))
2/σ
(SQ)2
【0565】
図48(A)に、
図21(A)(比較例)のクロマトグラムから式4により計算した各ピークの理論段数と、保持係数kとの関係をプロットした(図中で、比較例の実測と表記)。又、
図21(C)のクロマトグラムの各ピークの半値幅から分散を計算し、その保持時間として
図21(A)の各ピークの保持時間を使用した上で各ピークの理論段数と、保持係数kとの関係をプロットした(図中で、本発明の実測と表記)。又、上記の式10にて計算した各溶質バンドの理論段数と、保持係数k(1〜12)との関係をプロットした(図中で、比較例の予測と表記)。又、上記の式12にて計算した各溶質バンドの理論段数と、保持係数k(1〜12)との関係をプロットした(図中で、本発明の予測と表記)。
【0566】
本発明の予測に基づくプロットは、本発明の試料導入方法における流速の変化が、瞬時に流線の乱れ無く起こり、且つ流速の変化に応答する圧力の変化が、瞬時に圧力ショック無く起こる場合の理論的な数値を示すものである。
【0567】
図48(A)に示したように、本発明の試料導入方法により実際に得られた理論段数(
図21(C)の各ピークの保持時間に、比較例である
図21(A)の各ピークの保持時間を使用して、
図21(A)(比較例)からN(N)を計算した方法(式4)と同じ方法で計算した)は、保持係数kに依存した予測計算値とほぼ同等であり、従来の試料注入法で測定したクロマトグラムと、従来の試料注入法でカラムの代わりにゼロデッドボリュームユニオン(ZDU)をつないで測定したデータから、本発明の試料導入方法で得られるカラム性能の予測が可能であった。
【0568】
図47(A)及び
図48(A)に示すように、カラムに代えてZDUを用いて第一流速と第二流速で測定されたカラム外バンド分散値の差に基づいて計算された予測値と比較して、相当する条件下での本発明の実施において得られたカラム理論段数が、k=1〜12の範囲において、約3〜35%小さい場合、あるいは、ほぼ同等の場合が見られた。
【実施例29】
【0569】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行うにあたり、第一流速がピーク幅に与える効果を確認した(
図49(B)及び
図49(C))。又、従来の試料注入法(
図49(A))(比較例)との比較を行った。
【0570】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムKinetex C18(充填剤径2.6μm、内径2.1 mm、長さ5cm、Phenomenex社)を用いて、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.3mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量1μL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器セル入り口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径1.6mm、内径0.127mm、長さ15.2cmのPEEK管(容量約1.93μL)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約2.81μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0571】
図49(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを2μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.3mL/minで送液した。
【0572】
図49(B)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.02mL/minとしておき、注入の0.18分後(注入から3.6μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):3.6μLと記載)から0.07分間は流速を0.4mL/minとし、注入の0.25分後から流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の3.50分後から流速を0.02mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0573】
図49(C)は、試料IIを2μL注入する前に流速を0.05mL/minとしておき、注入の0.07分後(注入から3.5μL送液後)から0.07分間は流速を0.4mL/minとし、注入の0.14分後から流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の3.00分後から流速を0.05mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0574】
図49(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0221、0.0184、0.0177、0.0180、0.0192、0.0201、0.0211、0.0247、0.0310及び0.0414minが得られている。
【0575】
これに対して
図49(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0199、0.0153、0.0149、0.0157、0.0171、0.0178、0.0192、0.0231、0.0296及び0.0406minが得られている。
図49(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、10.0、16.8、15.8、12.8、10.9、11.4、9.0、6.5、4.5及び1.9%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0576】
図49(C)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0202、0.0161、0.0155、0.0163、0.0174、0.0183、0.0195、0.0234、0.0300及び0.0407minが得られている。
図49(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、8.6、12.5、12.4、9.4、9.4、9.0、7.6、5.3、3.2及び1.7%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0577】
試料注入から流速0.02mL及び0.05mL/minで3.6μL及び3.5μL送液し、その後0.07分間は流速を0.4mL/minとし、その後流速を0.3mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラム(
図49(B)及び
図49(C))の中では、
図49(B)のクロマトグラムのピークの半値幅が最も小さくなった。
【0578】
又、
図49(B)において、0.05mL/minから0.3mL/minへの流速の変化に要する時間は0.27−0.18=0.09minであり、0.05mL/minでの圧力(0.5MPa)と0.3mL/minで安定した圧力(7.5MPa)の差は7.0MPaであることから、0.05mL/minから0.3mL/minへの変化の勾配は、7.0/0.09=77.8MPa/minであった。
【0579】
又、
図49(C)において、0.02mL/minから0.3mL/minへの流速の変化に要する時間は0.18−0.07=0.11minであり、0.02mL/minでの圧力(1.2MPa)と0.3mL/minで安定した圧力(7.5MPa)の差は6.3MPaであることから、0.02mL/minから0.3mL/minへの変化の勾配は、6.3/0.11=57.3MPa/minであった。
【0580】
又、実施例2〜20までは、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとし、検出器セル容量を6nLとした汎用UHPLCを使用して、本発明の試料導入方法の効果を確認したが、本実施例では、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約2.81μLとし、検出器セル容量を1μLとした汎用UHPLCを使用して、本発明の試料導入方法の効果を確認した。
【実施例30】
【0581】
本発明の試料導入方法における、試料バンドの分散の増加を抑えることが出来る流速でのカラム充填層前まで、あるいはカラム充填層入口側境界を試料バンドが跨ぐまで、あるいはカラム充填層に試料バンド全体が入り終わる時までの試料バンドの移動を行うにあたり、第一流速がピーク幅に与える効果を確認した(
図51(B))。また、従来の試料注入法(
図51(A))(比較例)との比較を行った。
【0582】
試料注入装置としてオートサンプラーに5μLサンプルループ(内径0.265mm、長さ9.0cm)を接続した試料注入用流路切り替えバルブを備えたUHPLC装置LC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、試料注入用流路切り替えバルブ出口に内径0.13mm、長さ15cmのステンレススチール管(容量約1.99μL)をカラム入口までの配管として接続し、カラムInertSustain C18(充填剤径2μm、内径1.0 mm、長さ5cm、ジーエルサイエンス社)を用いて、移動相(アセトニトリル/水=65/35)を0.1mL/minで送液した。温度条件は40℃とした。検出には、検出器セル容量6nL、検出波長240nmのUV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出器のレスポンスは0.01秒、データ取り込み間隔は5mSecとした。カラム出口から検出器出口までの接続管については、カラム出口に外径0.8mm、内径0.13mm、長さ6.5cmのステンレススチール管(容量約0.86μL)を接続し、続いてZDUを介して、外径0.375mm、内径0.05mm、長さ20cmのフューズドシリカキャピラリー管(容量約0.39μL、中央部に検出セル(窓)を持つ)を接続して使用した。即ち、カラム出口から検出器セル入り口までの接続管の容量は約1.08μLとした。試料には、試料II:ウラシル(U、0.1mg/mL)、 アセトアニリド(AcAn、0.05mg/mL)、アセトフェノン(AcPh、0.05mg/mL)、プロピオフェノン(PrPh、0.05mg/mL)、ブチロフェノン(BuPh、0.05mg/mL)、ベンゾフェノン(BePh、0.05mg/mL)、バレロフェノン(VaPh、0.05mg/mL)、ヘキサノフェノン(HxPh、0.05mg/mL)、ヘプタノフェノン(HpPh、0.05mg/mL)、オクタノフェノン(OcPh、0.05mg/mL)混合物のアセトニトリル/水=65/35溶液を使用した。
【0583】
図51(A)(比較例)は、従来の試料注入法を用いて、試料IIを0.5μL注入し、分離を行ったクロマトグラムである。移動相(アセトニトリル/水=65/35)は流速0.1mL/minで送液した。
【0584】
図51(B)は、試料IIを0.5μL注入する前に流速を0.001mL/minとしておき、注入の3.50分後(注入から3.5μL送液後、クロマトグラムの左上に(1):3.5μLと記載)から0.23分間は流速を0.2mL/minとし、注入の3.73分後から流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより分離を行ったクロマトグラムである。注入の7.00分後から流速を0.001mL/minとする流速プログラムにより連続での測定に備えている。
【0585】
図51(A)(比較例)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0291、0.0266、0.0254、0.0270、0.0294、0.0313、0.0333、0.0409、0.0532及び0.0727minが得られている。
【0586】
これに対して
図51(B)では、U、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、半値幅0.0184、0.0170、0.0183、0.0208、0.0239、0.0256、0.0292、0.0377、0.0510及び0.0708minが得られている。
図51(A)の比較例に比べてU、AcAn、AcPh、PrPh、BuPh、BePh、VaPh、HxPh、HpPh及びOcPhについてそれぞれ、36.8、36.1、28.0、23.0、18.7、18.2、12.3、7.8、4.1及び2.6%減少しており、溶質バンドの分散が減少していることがわかる。
【0587】
試料注入後、流速0.001mL/minで3.5μL送液し、その後0.23分間は流速を0.2mL/minとし、その後流速を0.1mL/minとする流速プログラムにより、流速0.1mL/minで試料注入から分析まで行う従来の方法に比べて高いカラム性能が得られることを確認した。
【0588】
又、
図51(B)において、0.001mL/minから0.1mL/minへの流速の変化に要する時間は3.77−3.50=0.27minであり、0.001mL/minでの圧力(0.1MPa)と0.1mL/minで安定した圧力(17.1MPa)の差は17.0MPaであることから、0.001mL/minから0.1mL/minへの変化の勾配は、17.0/0.27=63.0MPa/minであった。
【0589】
本発明の試料導入方法により、様々な内径の液体クロマトグラフィー用カラムにおいて、カラム外での溶質の分散を減ずることが出来、内径1.0mm、2.1mm、3.0mm、4.6mmのカラムにおいて、カラム理論段数を増大させる効果が認められた。本発明により、UHPLCで必要とされる、細く短い、小さなカラムについて、特にクロマトグラム初期に溶出するピークについて、カラム性能を向上させることが可能となった。実施例で用いた送液ポンプや流路切り替えバルブ等の動作は、1/100分単位で制御されているが、制御可能な時間間隔を例えば1/1000分〜1/10000分単位に短く出来れば、又、より設定流速への応答性の早い送液ポンプを使用出来れば、カラム性能を向上させるためにより好適な制御が出来ることは自明である。
【0590】
又、実施例で用いた送液ポンプの制御方法は、導入制御装置(制御用のコンピュータを含む)から、目的とする流速をタイムテーブルに表記した流速プログラムを送液ポンプに転送して制御する方法で行ったが、目的とする圧力をタイムテーブルに表記した圧力プログラムを導入制御装置から送液ポンプに転送して制御する方法でも、本発明を実施出来る。
【0591】
又、実施例で用いたカラムは、
図3に示すように、カラム入口側のフリットで充填剤が漏れないように充填層を押さえている形態であるが、モノリスカラムのように充填剤が一体型になっており、フリットが無くとも充填剤がカラム管に固定化されているカラムでも、本発明を実施出来ることは自明である。
【0592】
又、本発明の試料導入方法は、実施例で用いた試料注入装置である、固定ループ注入方式のオートサンプラー(サンプルループを接続して固定した試料注入用流路切り替えバルブを含む)だけでなく、マニュアルインジェクター(サンプルループを接続して固定した試料注入用流路切り替えバルブを含む)は元より、試料注入用流路切り替えバルブのローターシールの溝の1つをサンプルループとして使用する内部ループ式インジェクター、ダイレクト注入方式もしくはダイレクトインジェクション方式のオートサンプラー(サンプル容器から試料を吸引するためのニードルを含む流路がサンプルループとしても使用され、試料注入用流路切り替えバルブを含む)や、試料送液用ポンプからの流路が試料注入用流路切り替えバルブや逆止弁を介して、移動相送液用ポンプとカラムをつないだ流路に接続されたオートサンプラー等、移動相送液用ポンプとカラムをつないだ流路に、試料注入用流路切り替えバルブや逆止弁を介して試料バンドを注入出来る試料注入装置を備えた液体クロマトグラフィーにて使用出来る。
【0593】
実施例で用いた試料注入装置の制御方法は、導入制御装置(制御用のコンピュータを含む)から、目的とする注入容量を表記したプログラムを試料注入装置に転送して制御する方法で行ったが、上記の様々な試料注入装置についても同様の制御が可能である。ただ、マニュアルインジェクターについては手動で動かすため、導入制御装置からの制御は必要無い。マニュアルインジェクターを使用する場合は、マニュアルインジェクターの試料注入用流路切り替えバルブのポジションが切り替わり、試料が流路に注入された時、インジェクションマーカーとしての信号がデータ処理装置と送液ポンプ(既に導入制御装置から流速プログラムや圧力プログラムを転送されている)に送られて、データ取り込みと送液ポンプの流速プログラムの実行が行われる。
【0594】
又、
図1、
図2及び
図41〜
図46には、本発明の実施に最低限必要な送液ポンプ及び移動相容器を示しているが、1台の送液ポンプと1つの移動相容器が接続された1つの流路に、複数台の送液ポンプと複数の移動相容器や、1つの流路に1台の送液ポンプと複数の移動相容器が接続された構成でもよい。尚、1種類の移動相を送液する送液ポンプ複数台を1つの流路につないで使用する高圧グラジエント方式の送液ポンプや、複数の移動相を送液する送液ポンプ1台を1つの流路につないで使用する低圧グラジエント方式の送液ポンプも本発明の実施に使用出来る。
【0595】
本発明の試料導入方法の原理(流速の制御により、式1におけるσ
extra2を減らすこと)は、種々の液体クロマトグラフィーだけでなく、超臨界流体クロマトグラフィーのような、他のクロマトグラフィーにも応用できる可能性がある。