特許第6963448号(P6963448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963448
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20211028BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20211028BHJP
   H03H 9/64 20060101ALI20211028BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20211028BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   H01L23/12 501B
   H03H9/25 A
   H03H9/64 Z
   H03H9/17 F
   H05K1/18 L
   H05K1/18 K
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-176140(P2017-176140)
(22)【出願日】2017年9月13日
(65)【公開番号】特開2019-54067(P2019-54067A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】山内 基
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 祐喜
【審査官】 平林 雅行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−098300(JP,A)
【文献】 特表2008−508739(JP,A)
【文献】 特開2002−237549(JP,A)
【文献】 特開2015−002381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/447−21/449
H01L 21/54
H01L 21/60−21/607
H01L 23/00−23/04
H01L 23/06−23/26
H03H 3/007−3/10
H03H 9/00−9/76
H05K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
平面形状が矩形状であり、1つのデバイスチップの矩形を構成する4つの角のうちの1つである角部が他の3つのデバイスチップ各々の前記角部と互いに隣接するよう前記基板上に配置された4つのデバイスチップと、
前記4つのデバイスチップの各々の前記基板側の面に設けられ、前記角部に最も近い第1パッドと、
前記4つのデバイスチップの各々において、前記第1パッドと前記基板とを接合する1または複数の第1バンプと、
前記4つのデバイスチップの各々の前記基板側の面に設けられ、前記第1パッド以外のパッドの一つである第2パッドと、
前記4つのデバイスチップの各々において、前記第2パッドと前記基板とを接合し、前記第2パッドとの接合面積の和が前記第1パッドと前記1または複数の第1バンプとの接合面積の和より小さい第2バンプと、
を備える電子部品。
【請求項2】
前記4つのデバイスチップのうちの1つのデバイスチップにおいて、前記第2パッドと前記第2バンプとの接合面積は、前記第1パッドと前記1または複数の第1バンプとの接合面積の和の2/3以下である請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記4つのデバイスチップの各々において、前記第1パッドは、前記第1バンプが1つのみ接合する請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記4つのデバイスチップの各々において、前記第1パッドは、複数の第1バンプが接合する請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項5】
前記4つのデバイスチップの各々において、前記第1パッドと前記複数の第1バンプの一つとの接合面積は前記第2パッドと前記第2バンプとの接合面積と等しい請求項4に記載の電子部品。
【請求項6】
前記4つのデバイスチップのうち隣接する2つのデバイスチップのそれぞれに設けられた互いに隣接する2辺は平行である請求項1から5のいずれか一項記載の電子部品。
【請求項7】
前記4つのデバイスチップは、各々前記基板に空隙を介し対向する弾性波素子を有する請求項1から6のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項8】
前記4つのデバイスチップは、各々前記基板に空隙を介し対向し、入力端子と出力端子との間に接続された弾性波フィルタを有する請求項1から6のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項9】
前記第1パッドは、前記入力端子または前記出力端子に接続される請求項8記載の電子部品。
【請求項10】
前記4つのデバイスチップは、各々前記基板に空隙を介し対向し、共通端子と信号端子との間に接続された弾性波フィルタを有し、
前記第1パッドは前記共通端子に接続される請求項1から6のいずれか一項に記載の電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関し、例えば複数のデバイスチップを有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる大きさのバンプを用い基板上にデバイスチップを実装することにより、バンプとパッドとの接続性を向上させることが知られている(例えば特許文献1)。デバイスチップの四隅に大きい半田バンプを設けることにより、実装機の高い位置制御精度を不要とすることが知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−41760号公報
【特許文献2】特開平11−111771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2では、温度負荷による影響は考慮されていない。基板に複数のデバイスチップを実装した場合、温度負荷等によりバンプに大きな応力が加わる。これにより、基板とデバイスチップとの接合の信頼性が低下することがある。バンプ径を大きくすればバンプに加わる応力は小さくなる。しかしながら、バンプ径が大きくなると電子部品が大型化する。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、バンプに加わる応力を抑制しかつ小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板と、平面形状が矩形状であり、1つのデバイスチップの矩形を構成する4つの角のうちの1つである角部が他の3つのデバイスチップ各々の前記角部と互いに隣接するよう前記基板上に配置された4つのデバイスチップと、前記4つのデバイスチップの各々の前記基板側の面に設けられ、前記角部に最も近い第1パッドと、前記4つのデバイスチップの各々において、前記第1パッドと前記基板とを接合する1または複数の第1バンプと、前記4つのデバイスチップの各々の前記基板側の面に設けられ、前記第1パッド以外のパッドの一つである第2パッドと、前記4つのデバイスチップの各々において、前記第2パッドと前記基板とを接合し、前記第2パッドとの接合面積の和が前記第1パッドと前記1または複数の第1バンプとの接合面積の和より小さい第2バンプと、を備える電子部品である。
【0007】
上記構成において、前記4つのデバイスチップのうちの1つのデバイスチップにおいて、前記第2パッドと前記第2バンプとの接合面積は、前記第1パッドと前記1または複数の第1バンプとの接合面積の和の2/3以下である構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記4つのデバイスチップの各々において、前記第1パッドは、前記第1バンプが1つのみ接合する構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記4つのデバイスチップの各々において、前記第1パッドは、複数の第1バンプが接合する構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記4つのデバイスチップの各々において、前記第1パッドと前記複数の第1バンプの一つとの接合面積は前記第2パッドと前記第2バンプとの接合面積と等しい構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記4つのデバイスチップのうち隣接する2つのデバイスチップのそれぞれに設けられた互いに隣接する2辺は平行である構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記4つのデバイスチップは、各々前記基板に空隙を介し対向する弾性波素子を有する構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記4つのデバイスチップは、各々前記基板に空隙を介し対向し、入力端子と出力端子との間に接続された弾性波フィルタを有する構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記第1パッドは、前記入力端子または前記出力端子に接続されている構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記4つのデバイスチップは、各々前記基板に空隙を介し対向し、共通端子と信号端子との間に接続された弾性波フィルタを有し、前記第1パッドは前記共通端子に接続される構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、バンプに加わる応力を抑制しかつ小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施例1に係る電子部品の回路図である。
図2図2(a)および図2(b)は、実施例1に係る電子部品の断面図および平面図である。
図3図3は、実施例1におけるフィルタの回路図である。
図4図4は、実施例1におけるデバイスチップの平面図である。
図5図5(a)および図5(b)は、弾性波共振器の例を示す図である。
図6図6(a)および図6(b)は、実施例1における効果を説明する断面模式図である。
図7図7は、シミュレーション1におけるサンプルの断面図である。
図8図8(a)は、シミュレーション1における基板10の上面の平面図、図8(b)は、配線22cの平面図である。
図9図9(a)および図9(b)は、シミュレーション1におけるバンプの直径φ2に対する応力を示す図である。
図10図10は、シミュレーション2におけるサンプルの平面図である。
図11図11(a)から図11(d)は、シミュレーション2におけるバンプの直径φ2に対する応力を示す図(その1)である。
図12図12(a)から図12(d)は、シミュレーション2におけるバンプの直径φ2に対する応力を示す図(その2)である。
図13図13は、実施例1の変形例1に係る電子部品の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し実施例について説明する。
【実施例1】
【0019】
実施例1は、電子部品としてクワッドプレクサの例である。図1は、実施例1に係る電子部品の回路図である。図1に示すように、クワッドプレクサは、フィルタ51から54を有している。フィルタ51から54は、共通端子Antとそれぞれ信号端子T1からT4との間に接続されている。例えば、フィルタ51および54は、同じバンドB1のそれぞれ送信用フィルタおよび受信フィルタである。フィルタ52および53は、同じバンドB2のそれぞれ送信用フィルタおよび受信フィルタである。バンドB1およびバンドB2はLTE(Long Term Evolution)バンド(E−UTRA(Evolved Universal Terrestrial Radio Access) Operating Band)のバンドである。
【0020】
フィルタ51は、信号端子T1に入力した高周波信号のうちバンドB1の送信帯域の信号を共通端子Antに出力し、その他の信号を抑圧する。フィルタ54は、共通端子Antに入力した高周波信号のうちバンドB1の受信帯域の信号を信号端子T4に出力し、その他の信号を抑圧する。フィルタ52は、信号端子T2に入力した高周波信号の内バンドB2の送信帯域の信号を共通端子Antに出力し、その他の信号を抑圧する。フィルタ53は、共通端子Antに入力した高周波信号の内バンドB2の受信帯域の信号を信号端子T3に出力し、その他の信号を抑圧する。
【0021】
図2(a)および図2(b)は、実施例1に係る電子部品の断面図および平面図である。図2(b)は、基板20の上面図であり、デバイスチップ11aから11dを破線で図示している。図2(a)に示すように、基板20は、1または複数の絶縁層20aおよび20bを有する。絶縁層20aおよび20bは、例えばHTCC基板、LTCC(Low Temperature Co‐fired Ceramics)等のセラミック層または樹脂層である。
【0022】
基板20の上面にパッド24、24aおよび環状金属層28が設けられている。基板20の下面に端子26が設けられている。端子26は、例えば共通端子Ant、信号端子T1からT4およびフィルタ51から54のグランドに接続されるグランド端子である。内部配線22はビア配線22a、22bおよび配線22cを有している。ビア配線22aおよび22bはそれぞれ絶縁層20aおよび20bを貫通する。配線22cは絶縁層20aと20bとの間に設けられている。内部配線22は、パッド24および24aと端子26とを電気的に接続する。内部配線22、パッド24、24a、端子26および環状金属層28は例えば銅層、アルミニウム層、金層およびタングステン層等の金属層である。
【0023】
デバイスチップ11は、デバイスチップ11aから11dに対応し、基板10、機能素子12、パッド14および14aを備えている。機能素子12、パッド14および14aは基板10の下面に設けられている。機能素子12は、フィルタ51から54に対応し、空隙32を挟み基板20に対向する。基板10は、例えばタンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板である。パッド14および14aは例えば銅層、アルミニウム層または金層等の金属層である。デバイスチップ11はバンプ16および16aを介し基板20にフリップチップ実装(フェースダウン実装)されている。バンプ16および16aは、例えば金バンプ、半田バンプまたは銅バンプである。バンプ16および16aは、それぞれパッド24と14およびパッド24aと14aとを接合する。
【0024】
基板20上にデバイスチップ11を覆うように封止部30が設けられている。封止部30は、環状金属層28に接合している。封止部30は、例えば半田等の金属層または樹脂層である。封止部30およびデバイスチップ11上にリッドが設けられていてもよい。封止部30により機能素子12は空隙32に封止される。
【0025】
図2(b)に示すように、基板20上に4つのデバイスチップ11aから11dがフリップチップ実装されている。デバイスチップ11aから11dの平面形状は矩形(例えば長方形または正方形)である。デバイスチップ11aから11dの下面には機能素子12としてフィルタ51から54が設けられている。デバイスチップ11aから11dの4つの角部のうち1つの角部が互いに対向している。例えば、デバイスチップ11aの4つの辺のうち2つの辺はそれぞれ隣接するデバイスチップ11bおよび11cと対向している。対向している辺は略平行である。
【0026】
パッド24は、信号パッドPt2およびグランドパッドPg2を含む。パッド24aは、共通パッドPa2を含む。4つのデバイスチップ11aから11dにおいて、基板20の中心付近のパッド24aは共通パッドPa2であり、共通パッドPa2の対角のパッド24は信号パッドPt2である。他のパッド24はグランドパッドPg2である。共通パッドPa2は内部配線22を介し共通端子Antに電気的に接続されている。信号パッドPt2は内部配線22を介し信号端子T1からT4に電気的に接続されている。グランドパッドPg2は内部配線22を介しグランド端子に電気的に接続されている。
【0027】
デバイスチップ11aから11dの共通パッドPa2は基板20の中心付近にまとめて設けられている。これにより、各フィルタ51から54と共通端子Antとの電気長を同程度とできる。よって、各フィルタ51から54を整合しやすくなる。また、信号パッドPt2は、共通パッドPa2に対しデバイスチップ11aから11dの対角に設けられている。これにより、信号パッドPt2に入力する送信信号が共通パッドPa2に漏れることを抑制できる。また、共通パッドPa2から出力される送信信号が信号パッドPt2に漏れることを抑制できる。よって、送信端子から受信端子へのアイソレーションを向上できる。同じバンドの送信フィルタと受信フィルタとは対角状に設けることが好ましい。例えばデバイスチップ11aから11dにそれぞれフィルタ51から54を設ける。これにより、同じバンドの送信端子から受信端子へのアイソレーションを向上できる。
【0028】
デバイスチップ11aから11dおよびフィルタ51から54について、デバイスチップ11aのフィルタ51を例に説明する。図3は、実施例1におけるフィルタの回路図である。図3に示すように、共通端子Antと信号端子T1との間に、直列に直列共振器S1からS5が接続され、並列に並列共振器P1からP4が接続されている。直列共振器S1からS5は、それぞれS1aおよびS1b、S2aおよびS2b、S3aおよびS3b、S4aおよびS4b、並びにS5aおよびS5bに直列に分割されている。
【0029】
図4は、実施例1におけるデバイスチップの平面図である。図4では、基板10の下面を上から透視している。図4に示すように、基板10の下面には、弾性波共振器40、配線13、パッド14および14aが設けられている。弾性波共振器40は、IDT(Inter Digital Transducer)41および反射器42を有している。配線13は弾性波共振器40間、または弾性波共振器40とパッド14および14aとを電気的に接続する。パッド14および14aにはバンプ16および16aが接合されている。複数の弾性波共振器40は、直列共振器S1からS5および並列共振器P1からP4を含む。パッド14は、信号パッドPt1、グランドパッドPg1およびダミーパッドPd1を含む。パッド14aは共通パッドPa1を含む。ダミーパッドPd1はデバイスチップ11内では弾性波共振器40に接続されておらず、機械的な強度を確保するためのバンプが接合される。
【0030】
共通パッドPa1はバンプ16aを介し共通パッドPa2に電気的に接続される。信号パッドPt1はバンプ16を介し信号パッドPt2に電気的に接続される。グランドパッドPg1およびダミーパッドPd1は、バンプ16を介しグランドパッドPg2に接続される。
【0031】
図5(a)および図5(b)は、弾性波共振器の例を示す図である。図5(a)および図5(b)は、弾性波共振器がそれぞれ弾性表面波共振器および圧電薄膜共振器の例である。
【0032】
図5(a)に示すように、基板10上にIDT41と反射器42が形成されている。IDT41は、互いに対向する1対の櫛型電極41aを有する。櫛型電極41aは、複数の電極指41bと複数の電極指41bを接続するバスバー41cとを有する。反射器42は、IDT41の両側に設けられている。IDT41が基板10に弾性表面波を励振する。基板49は、例えばタンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板等の圧電基板である。IDT41および反射器42は例えばアルミニウム膜または銅膜により形成される。基板49は、サファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板、水晶基板またはシリコン基板等の支持基板に接合されていてもよい。IDT41および反射器42を覆う保護膜または温度補償膜が設けられていてもよい。この場合、保護膜または温度補償膜を含め弾性波共振器40として機能する。
【0033】
図5(b)に示すように、基板10上に圧電膜46が設けられている。圧電膜46を挟むように下部電極44および上部電極48が設けられている。下部電極44と基板10との間に空隙45が形成されている。下部電極44および上部電極48は圧電膜46内に、厚み縦振動モードの弾性波を励振する。下部電極44および上部電極48は例えばルテニウム膜等の金属膜である。圧電膜46は例えば窒化アルミニウム膜である。基板10は例えばシリコン基板もしくは砒化ガリウム等の半導体基板、またはサファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板もしくはガラス基板等の絶縁基板である。図5(a)および図5(b)のように、弾性波共振器40は弾性波を励振する電極を含む。このため、弾性波の振動を制限しないように、弾性波共振器40は空隙32に覆われている。
【0034】
実施例1では、デバイスチップ11aから11dの各々の互いに対向する角部に設けられたバンプ16aの径は他のバンプ16の径より大きい。例えば、バンプ16および16aの直径はそれぞれ60μmおよび120μmである。
【0035】
図6(a)および図6(b)は、実施例1における効果を説明する断面模式図である。図6(a)に示すように、基板20上に基板10がバンプ16または16aを介し接合されている。基板20と10との線熱膨張係数の差に起因して基板20の中央付近ではバンプ16または16aに大きな力60が加わる。応力は力/断面積である。よって、熱応力の大きな基板20の中央付近のバンプ16をバンプ16aに大きくする。これにより、バンプ16aに加わる応力を小さくできる。
【0036】
図6(b)に示すように、熱源であるIDT41からの熱はバンプ16または16aを介し基板20に流れる。バンプ16の断面積に比べバンプ16aの断面積が大きくなると、IDT41から基板20への熱流を矢印62から62aに大きくできる。よって、基板10の温度の上昇を小さくできる。基板20の周辺部では封止部30を介し放熱できるが、基板20の中央付近では封止部30を介した放熱が難しい。実施例1では、基板20の中央付近での放熱性を高めることができる。
【0037】
一方、加わる応力の小さなバンプ16の断面積を小さくすることで電子部品の小型化が可能となる。
【0038】
[シミュレーション1]
実施例1におけるバンプ16aに加わる応力をシミュレーションした。比較例1として、バンプ16aの代わりに径の小さなバンプ16を用いたサンプルについてもシミュレーションした。
【0039】
図7は、シミュレーション1におけるサンプルの断面図、図8(a)は、基板10の上面の平面図、図8(b)は、配線22cの平面図である。図8(a)ではデバイスチップ11aから11dを破線で図示している。図7から図8(b)に示すように、基板20の長辺の延伸方向をX方向、短辺の延伸方向をY方向、基板20の上面の法線方向をZ方向とする。絶縁層20aと20bとの間の全面に配線22cが設けられている。パッド24は、デバイスチップ11aから11dと同じ平面形状である。
【0040】
実施例1のシミュレーション1の条件は以下である。
基板10:長さLx1=2.5mm、長さLy1=2.0mm
絶縁層20a:厚さt1が85μmのHTCC
絶縁層20b:厚さt3が10μmのHTCC
配線22c:厚さt2が10μmのタングステン
パッド24、環状金属層28:厚さt4が15μmのタングステン
バンプ16:高さHが12.5μmおよび直径φ1が60μmの金
バンプ16a:高さHが12.5μmおよび直径φ2が120μmの金
デバイスチップ11aから11d:厚さt5が0.15mm、長さLx2が1.01mmおよび長さLy2が0.77mmの42°回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板、Y方向が結晶方位のX軸方向
【0041】
シミュレーション1に用いた各材料のヤング率、ポアソン比および線熱膨張係数は以下である。金について、ヤング率は7.72×1010GPa、ポアソン比は0.42および線熱膨張係数は1.44×10−5/℃である。タンタル酸リチウムについて、ヤング率は2.54×1011GPa、ポアソン比は0.21および線熱膨張係数は0.95×10−5/℃(X方向)、1.61×10−5/℃(Y方向)および1.07×10−5/℃(Z方向)である。HTCCについて、ヤング率は3.1×1011GPa、ポアソン比は0.24および線熱膨張係数は0.71×10−5/℃である。タングステンについて、ヤング率は4.0×1011GPa、ポアソン比は0.28および線熱膨張係数は0.44×10−5/℃である。デバイスチップ11aから11dのパッド14および14aは薄いため無視した。
【0042】
バンプ16aとパッド24との界面におけるZ方向の応力の最大値およびバンプ16aとデバイスチップ11aから11dとの界面におけるZ方向の応力の最大値を算出した。温度は150℃と−65℃について算出した。比較例1として、バンプ16aの代わりに直径が60μmのバンプ16を用いた場合の応力を算出した。
【0043】
図9(a)および図9(b)は、シミュレーション1におけるバンプの直径φ2に対する応力を示す図である。図9(a)は、バンプ16aとデバイスチップ11aから11dとの界面(デバイスチップ側と表記)の応力を示し、図9(b)は、バンプ16aとパッド24aとの界面(基板側と表記)の応力を示す。4つのデバイスチップ11aから11dの大きさLx2×Ly2は同じであるため、バンプ16aに加わる応力はデバイスチップ11aから11dによらず同じである。
【0044】
図9(a)および図9(b)に示すように、バンプ16aの直径φ2が120μmの実施例1は、直径φ2が60μmの比較例1に比べ応力が小さくなっている。
【0045】
[シミレユーション2]
シミュレーション2として、デバイスチップ11aから11dの平面形状が互いに異なる場合についてバンプ16aに加わる応力を算出した。
【0046】
図10は、シミュレーション2におけるサンプルの平面図である。デバイスチップ11aから11dの平面形状が互いに異なる。パッド24は、デバイスチップ11aから11dと同じ平面形状である。デバイスチップ11aから11dの寸法を以下とした。
デバイスチップ11a:Lx2a=1.07mm、Ly2a=0.77mm
デバイスチップ11b:Lx2b=0.94mm、Ly2b=0.70mm
デバイスチップ11c:Lx2c=0.84mm、Ly2c=0.77mm
デバイスチップ11d:Lx2d=1.01mm、Ly2d=0.60mm
その他のシミュレーション条件はシミュレーション1と同じである。
【0047】
図11(a)から図12(d)は、シミュレーション2におけるバンプの直径φ2に対する応力を示す図である。図11(a)および図11(b)は、デバイスチップ11aのバンプ16aにおける応力を示す図である。図11(c)および図11(d)は、デバイスチップ11bのバンプ16aにおける応力を示す図である。図12(a)および図12(b)は、デバイスチップ11cのバンプ16aにおける応力を示す図である。図12(c)および図12(d)は、デバイスチップ11dのバンプ16aにおける応力を示す図である。図11(a)、図11(c)、図12(a)および図12(c)は、バンプ16aとデバイスチップ11aから11dとの界面(デバイスチップ側と表記)の応力を示す。図11(b)、図11(d)、図12(b)および図12(d)は、バンプ16aとパッド24aとの界面(基板側と表記)の応力を示す。
【0048】
図11(a)から図12(d)に示すように、いずれのデバイスチップ11aから11dにおいてもバンプ16aの直径φ2が120μmの実施例1は、直径φ2が60μmの比較例1に比べ応力が小さくなっている。このように、デバイスチップ11aから11dの大きさによらず、実施例1は比較例1よりバンプ16aに加わる応力が小さい。
【0049】
シミュレーション1および2のように、実施例1では、バンプ16aに加わる応力を小さくできる。
【0050】
[実施例1の変形例1]
図13は、実施例1の変形例1に係る電子部品の平面図であり、基板20の上面図であり、デバイスチップを破線で図示している。図13に示すように、パッド24aに他のバンプ16と同じ径のバンプ16bが複数設けられている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0051】
実施例1の変形例1のように、パッド24aに複数のバンプ16bを設けてよい。すなわち、1つのパッド24aに設けられるバンプ16aまたは16bの合計の面積が他のバンプ16の1つの面積より大きければよい。
【0052】
実施例1およびその変形例によれば、4つのデバイスチップ11aから11dは、各々の4つの角部のうち1つの角部が互いに隣接する。すなわち、4つのデバイスチップ11aから11dは、1つのデバイスチップの矩形を構成する4つの角のうちの1つである角部が他の3つのデバイスチップ各々の矩形を構成する4つの角のうちの1つである角部と互いに隣接するよう基板10上に配置されている。パッド14a(第1パッド)は、デバイスチップ11aから11dの各々の基板10側の面に設けられたパッド14および14aのうち隣接する角部に最も近いパッドである。1または複数のバンプ16aまたは16b(第1バンプ)は、パッド14aと基板20とを接合する。パッド14(第2パッド)は、パッド14および14aのうちパッド14a以外のパッドの一つのである。バンプ16(第2バンプ)は、パッド14と基板20とを接合する。
【0053】
このような構造において、バンプ16の1つの平面視の面積が1つのパッド14aに接合する1または複数のバンプ16aまたは16bの平面視の面積の和より小さくする。例えば、パッド14とバンプ16との接合面積の和をパッド14aと1または複数のバンプ16aまたは16bとの接合面積の和より小さくする。
【0054】
これにより、温度の負荷により加わる応力が大きくなる基板20の中央付近のバンプ16aまたは16bに加わる応力を小さくできる。また、加わる応力の小さいバンプ16を小さくすることで電子部品の小型化が可能となる。例えばパッド14を14aより小さくできる。また、放熱性を高めることができる。
【0055】
バンプ16および16aの平面視の面積がZ方向で異なる場合、平面視の面積は例えば最大の面積、最小の面積または平均の面積とすることができる。複数のバンプ16の平面視の面積は互いに製造誤差程度に略同じでもよいし異なっていてもよい。デバイスチップ11aから11dにおける1または複数のバンプ16aまたは16bの平面視の面積(例えば接合面積)の和は、互いに製造誤差程度に略同じでもよいし異なっていてもよい。
【0056】
4つのデバイスチップ11aから11dのうちの1つのデバイスチップにおいて、パッド14とバンプ16との接合面積は、パッド14aと1または複数のバンプ16aまたは16bとの接合面積の和の2/3以下であることが好ましく、1/2以下であることがより好ましく、1/3以下であることがさらに好ましい。
【0057】
実施例1のように、パッド14aに各々1つのみのバンプ16aが接合する。これにより、バンプ16aに加わる応力を小さくできる。例えば、バンプ16および16aをメッキ法で形成する場合、バンプ16と16aとの平面視の面積を容易に異ならせることができる。
【0058】
実施例1の変形例1のように、パッド14aに各々複数のバンプ16bが接合する。これにより、バンプ16aに加わる応力を小さくできる。
【0059】
複数のバンプ16bの一つとパッド14aとの接合面積はバンプ16とパッド14との接合面積と製造誤差程度に略等しい。例えばバンプ16および16bをスタッドバンプで形成する場合、平面視の面積を異ならせることは難しい。よって、パッド14aにバンプ16と同じ面積のバンプ16bを設けることにより、製造工程を削減できる。
【0060】
4つのデバイスチップ11aから11dのうち隣接する2つのデバイスチップ(例えばデバイスチップ11aおよび11b)のそれぞれに設けられた互いに隣接する2辺は略平行である。これにより、デバイスチップ11aから11dの実装面積を削減できる。
【0061】
デバイスチップ11aから11dは、各々基板20に空隙32を介し対向する機能素子12として弾性波素子を有している。機能素子12は入力端子(例えば共通端子または受信端子)と出力端子(例えば送信端子または共通端子)との間に接続された弾性波フィルタでもよい。
【0062】
入力端子または出力端子に接続されるバンプが劣化すると高周波特性が劣化する。よって、パッド14aは、入力端子または出力端子に接続されていることが好ましい。
【0063】
フィルタ51から54は、共通端子Antと信号端子T1からT4との間に接続されている。このとき、パッド14aは共通端子Antに接続されていることが好ましい。これにより、高周波特性が劣化を抑制できる。
【0064】
図2(b)のように、平面視においてデバイスチップ11aと11dは対角状に設けられている。平面視においてデバイスチップ11bと11cは対角状に設けられている。フィルタ51および54は、バンドB1(第1バンド)のそれぞれ受信フィルタおよび送信フィルタである。フィルタ52およびフィルタ53は、バンドB1と異なるバンドB2(第2バンド)のそれぞれ受信フィルタおよび送信フィルタである。これにより、同じバンドの受信フィルタの受信端子と送信フィルタの送信端子を離すことができる。よって、送信と受信との間のアイソレーションを大きくできる。特に、バンドB1および/またはB2がFDD(Frequency Division Duplex)方式の場合、バンド内で受信帯域と送信帯域とが重なっておらず、送信と受信とのアイソレーションが問題となる。よって、フィルタ51および54をバンドB1の受信フィルタおよび送信フィルタとし、フィルタ52および53をバンドB2の受信フィルタおよび送信フィルタとすることが好ましい。
【0065】
機能素子12として弾性波素子を例に説明したが、機能素子12は、インダクタおよびキャパシタ等の受動素子、パワーアンプまたはスイッチ等の能動素子またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子でもよい。
【0066】
4つのフィルタを用いる例としてクワッドプレクサを例に説明したが、他のマルチプレクサ等でもよい。基板20に5以上のデバイスチップが実装されていてもよい。
【0067】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0068】
10、20 基板
12 機能素子
16、16a、16b バンプ
14、14a、24、24a パッド
51−54 フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13