特許第6963468号(P6963468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963468
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】熱酸発生剤及び硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20211028BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20211028BHJP
   C07F 5/06 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   C09K3/00 K
   C08G59/68
   C07F5/06 D
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-213464(P2017-213464)
(22)【出願日】2017年11月6日
(65)【公開番号】特開2019-85358(P2019-85358A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106139
【氏名又は名称】サンアプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118061
【弁理士】
【氏名又は名称】林 博史
(72)【発明者】
【氏名】白石 篤志
【審査官】 堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/035552(WO,A1)
【文献】 特表2018−532866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 5/06
C08G 59/68
C09K 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるフッ素化アルコキシアルミン酸スルホニウム塩を含有する熱酸発生剤。
【化1】
〔式(1)中、がアルキル基で、Rがアルキル基又はアラルキル基であり、Rが水素、ヒドロキシ基、アセトキシ基、メトキシカルボニルオキシ基又はベンジルオキシカルボニルオキシ基を表し、mは、Rの個数を表し、0又は1である。Rfは水素の70%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。Rfはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。〕
【請求項2】
請求項に記載の熱酸発生剤とカチオン重合性化合物とを含んでなる硬化性組成物。
【請求項3】
請求項に記載の硬化性組成物を硬化させて得られることを特徴とする硬化体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1に熱酸発生剤に、より詳しくは、熱を作用させてカチオン重合性化合物を硬化する際に好適な特定のスルホニウム塩を含有する熱酸発生剤に関する。本発明は、第2に、当該熱酸発生剤を含有する硬化性組成物及びこれを硬化させて得られる硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱あるいは光、電子線又はX線等の活性エネルギー線を作用させてエポキシ化合物などのカチオン重合性化合物を硬化させるカチオン重合開始剤として、スルホニウム塩が知られている(特許文献1、2、3、4)。
【0003】
ところで、これらの明細書に記載されているカチオン重合開始剤は、アニオンとして、BF、PF、AsF、SbFを含有するが、カチオン重合開始性能はアニオンの種類で異なり、BF<PF<AsF<SbFの順に良くなる。しかし、重合開始能の良いAsF,SbFを含有するカチオン重合開始剤はAs、Sbの毒性の問題から使用用途が限定され、SbF塩が光造形などの限定された用途で使用されているのみである。そのため、一般的には重合開始能が劣るPF塩が利用されているが、PF塩は、例えば、SbF塩と同程度の硬化速度を得るには、後者の10倍近い量を添加する必要があり、未反応の開始剤、開始剤を溶解するために必要に応じて使用される溶剤又は開始剤の分解物の残存量が多くなるため、硬化物の物性が損なわれること、また開始剤の分解によって副生するHF量が多くなることから、基材や設備などが腐食されやすいことなどの問題がある。このため毒性金属を含まず、SbF塩に匹敵するカチオン重合開始能を有するカチオン重合開始剤が強く求められていた。
【0004】
この課題に応える熱酸発生剤として本出願とカチオン部が同一あるいは類似しているもので対アニオンがSbF以外の熱酸発生剤(特許文献5、6、7、8)が開示されているが、SbFに比べ、硬化性が悪く実用的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−196812号公報
【特許文献2】特開平3−17101号公報
【特許文献3】特開平3−205405号公報
【特許文献4】特開平3−237107号公報
【特許文献5】特開2006−282633号公報
【特許文献6】特開2006−96742号公報
【特許文献7】特開2008−303167号公報
【特許文献8】特開2010−132614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の背景において、本発明の第1の目的はSb等の毒性の高い元素安全で硬化性に優れ、かつエポキシ化合物等のカチオン重合性化合物への相溶性が高い、スルホニウム塩を含んでなる新たな熱酸発生剤を提供することである。本発明の第2の目的は、上記熱酸発生剤を利用した硬化性組成物及び硬化体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的に好適な熱酸発生剤を見出した。すなわち、本発明は下記式(1)で示されるフッ素化アルコキシアルミン酸スルホニウム塩を含有する熱酸発生剤である。
【0008】
【化1】
【0009】
〔式(1)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基又はアラルキル基を表し、Rは水素、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アラルキルオキシカルボニルオキシ基、アリールチオカルボニル基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子を表し、mは、Rの個数を表し、0〜5の整数である。Rfは水素の70%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。Rfはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。〕
【0010】
また本発明は、上記熱酸発生剤とカチオン重合性化合物とを含んでなる硬化性組成物である。
【0011】
更に本発明は、上記硬化性組成物を硬化させて得られることを特徴とする硬化体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱酸発生剤に含有されるフッ素化アルコキシアルミン酸スルホニウム塩は、Sb等の毒性の高い元素を含まないため、安全で硬化性に優れ、かつエポキシ化合物等のカチオン重合性化合物への相溶性が高い。
本発明の熱酸発生剤は、熱潜在性に優れており、貯蔵安定性を損なわずに、所定の温度において短時間で、カチオン重合性化合物を硬化させることができる。
本発明の硬化性組成物は、上記の熱酸発生剤を含有するため、貯蔵安定性に優れ、反応性が高いことから作業性に優れる。
本発明の硬化体は、Sb等の毒性の高い元素を含まないため安全性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
式(1)において、R〜Rのうち、アルキル基としては、炭素数1〜18の直鎖アルキル基(メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−オクチル、n−デシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル及びn−オクタデシル等)、炭素数1〜18の分枝鎖アルキル基(イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、イソヘキシル及びイソオクタデシル)、及び炭素数3〜18のシクロアルキル基(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及び4−デシルシクロヘキシル等)等が挙げられる。
【0015】
式(1)において、R及びRのうち、アラルキル基としては炭素数6〜10のアリール基で置換されている低級アルキル基(ベンジル、2−メチルベンジル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル等)等が挙げられる。
【0016】
式(1)において、Rにおける、アルコキシ基としては、炭素数1〜18の直鎖又は分枝鎖アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ヘキシルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ及びオクタデシルオキシ等)等が挙げられる。
【0017】
式(1)において、Rにおける、アリールオキシ基としては、炭素数6〜10のアリールオキシ基(フェノキシ及びナフチルオキシ等)等が挙げられる。
【0018】
式(1)において、Rにおける、アルキルカルボニル基としては、炭素数2〜18の直鎖又は分枝鎖アルキルカルボニル基(アセチル、プロピオニル、ブタノイル、2−メチルプロピオニル、ヘプタノイル、2−メチルブタノイル、3−メチルブタノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル及びオクタデカノイル等)等が挙げられる。
【0019】
式(1)において、Rにおける、アリールカルボニル基としては、炭素数7〜11のアリールカルボニル基(ベンゾイル及びナフトイル等)等が挙げられる。
【0020】
式(1)において、Rにおける、アラルキルカルボニル基としては、炭素数6〜10のアリール基で置換されている低級アルキルカルボニル基(ベンジルカルボニル、2−メチルベンジルカルボニル、1−ナフチルメチルカルボニル、2−ナフチルメチルカルボニル等)等が挙げられる。
【0021】
式(1)において、Rにおける、アルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜18の炭素数2〜19の直鎖又は分枝鎖アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、オクチロキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル及びオクタデシロキシカルボニル等)等が挙げられる。
【0022】
式(1)において、Rにおける、アリールオキシカルボニル基としては、炭素数7〜11のアリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル及びナフトキシカルボニル等)等が挙げられる。
【0023】
式(1)において、Rにおける、アラルキルオキシカルボニル基としては、炭素数6〜10のアリール基で置換されている低級アルコキシカルボニル基(ベンジルオキシカルボニル、2−メチルベンジルオキシカルボニル、1−ナフチルメチルオキシカルボニル、2−ナフチルメチルオキシカルボニル等)等が挙げられる。
【0024】
式(1)において、Rにおける、アルキルカルボニルオキシ基としては、炭素数2〜19の直鎖又は分枝鎖アルキルカルボニルオキシ基(アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、tert−ブチルカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシ、テトラデシルカルボニルオキシ及びオクタデシルカルボニルオキシ等)等が挙げられる。
【0025】
式(1)において、Rにおける、アリールカルボニルオキシ基としては、炭素数7〜11のアリールカルボニルオキシ基(ベンゾイルオキシ及びナフトイルオキシ等)等が挙げられる。
【0026】
式(1)において、Rにおける、アラルキルカルボニルオキシ基としては、炭素数6〜10のアリール基で置換されている低級アルキルカルボニル基(ベンジルカルボニルオキシ、2−メチルベンジルカルボニルオキシ、1−ナフチルメチルカルボニルオキシ、2−ナフチルメチルカルボニルオキシ等)等が挙げられる。
【0027】
式(1)において、Rにおける、アルコキシカルボニルオキシ基としては、炭素数2〜18の炭素数2〜19の直鎖又は分枝鎖アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、プロポキシカルボニルオキシ、イソプロポキシカルボニルオキシ、ブトキシカルボニルオキシ、イソブトキシカルボニルオキシ、sec−ブトキシカルボニルオキシ、tert−ブトキシカルボニルオキシ、オクチロキシカルボニルオキシ、テトラデシルオキシカルボニルオキシ及びオクタデシロキシカルボニルオキシ等)等が挙げられる。
【0028】
式(1)において、Rにおける、アリールオキシカルボニルオキシ基としては、炭素数7〜11のアリールオキシカルボニルオキシ基(フェノキシカルボニルオキシ及びナフトキシカルボニルオキシ等)等が挙げられる。
【0029】
式(1)において、Rにおける、アラルキルオキシカルボニルオキシ基としては、炭素数6〜10のアリール基で置換されている低級アルコキシカルボニルオキシ基(ベンジルオキシカルボニルオキシ、2−メチルベンジルオキシカルボニルオキシ、1−ナフチルメチルオキシカルボニルオキシ、2−ナフチルメチルオキシカルボニルオキシ等)等が挙げられる。
【0030】
式(1)において、Rにおける、アリールチオカルボニル基としては、炭素数7〜11のアリールチオカルボニル基(フェニルチオカルボニル及びナフトキシチオカルボニル等)等が挙げられる。
【0031】
式(1)において、Rにおける、アリールチオ基としては、炭素数6〜20のアリールチオ基(フェニルチオ、2−メチルフェニルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メチルフェニルチオ、2−クロロフェニルチオ、3−クロロフェニルチオ、4−クロロフェニルチオ、2−ブロモフェニルチオ、3−ブロモフェニルチオ、4−ブロモフェニルチオ、2−フルオロフェニルチオ、3−フルオロフェニルチオ、4−フルオロフェニルチオ、2−ヒドロキシフェニルチオ、4−ヒドロキシフェニルチオ、2−メトキシフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ、1−ナフチルチオ、2−ナフチルチオ、4−[4−(フェニルチオ)ベンゾイル]フェニルチオ、4−[4−(フェニルチオ)フェノキシ]フェニルチオ、4−[4−(フェニルチオ)フェニル]フェニルチオ、4−(フェニルチオ)フェニルチオ、4−ベンゾイルフェニルチオ、4−ベンゾイル−2−クロロフェニルチオ、4−ベンゾイル−3−クロロフェニルチオ、4−ベンゾイル−3−メチルチオフェニルチオ、4−ベンゾイル−2−メチルチオフェニルチオ、4−(4−メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4−(2−メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4−(p−メチルベンゾイル)フェニルチオ、4−(p−エチルベンゾイル)フェニルチオ4−(p−イソプロピルベンゾイル)フェニルチオ及び4−(p−tert−ブチルベンゾイル)フェニルチオ等)等が挙げられる。
【0032】
式(1)において、Rにおける、アルキルチオ基としては、炭素数1〜18の直鎖又は分枝鎖アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec−ブチルチオ、tert−ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、tert−ペンチルチオ、オクチルチオ、デシルチオ、ドデシルチオ及びイソオクタデシルチオ等)等が挙げられる。
【0033】
式(1)において、Rにおける、アリール基としては、炭素数6〜10のアリール基(フェニル、トリル、ジメチルフェニル及びナフチル等)等が挙げられる。
【0034】
式(1)において、Rにおける、複素環式炭化水素基としては、炭素数4〜20の複素環式炭化水素基(チエニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、キサンテニル、チアントレニル、フェノキサジニル、フェノキサチイニル、クロマニル、イソクロマニル、ジベンゾチエニル、キサントニル、チオキサントニル及びジベンゾフラニル等)等が挙げられる。
【0035】
式(1)において、Rにおける、アリールオキシ基としては、炭素数6〜10のアリールオキシ基(フェノキシ及びナフチルオキシ等)等が挙げられる。
【0036】
式(1)において、Rにおける、アルキルスルフィニル基としては、炭素数1〜18の直鎖又は分枝鎖スルフィニル基(メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、イソプロピルスルフィニル、ブチルスルフィニル、イソブチルスルフィニル、sec−ブチルスルフィニル、tert−ブチルスルフィニル、ペンチルスルフィニル、イソペンチルスルフィニル、ネオペンチルスルフィニル、tert−ペンチルスルフィニル、オクチルスルフィニル及びイソオクタデシルスルフィニル等)等が挙げられる。
【0037】
式(1)において、Rにおける、アリールスルフィニル基としては、炭素数6〜10のアリールスルフィニル基(フェニルスルフィニル、トリルスルフィニル及びナフチルスルフィニル等)等が挙げられる。
【0038】
式(1)において、Rにおける、アルキルスルホニル基としては、炭素数1〜18の直鎖又は分枝鎖アルキルスルホニル基(メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec−ブチルスルホニル、tert−ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、tert−ペンチルスルホニル、オクチルスルホニル及びオクタデシルスルホニル等)等が挙げられる。
【0039】
式(1)において、Rにおける、アリールスルホニル基としては、炭素数6〜10のアリールスルホニル基(フェニルスルホニル、トリルスルホニル(トシル基)及びナフチルスルホニル等)等が挙げられる。
【0040】
式(1)において、Rにおける、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基としては、下記式で表されるヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基等が挙げられる。
HO(−AO)q−
〔AOはエチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基、qは1〜5の整数を表す。〕
【0041】
式(1)において、Rにおける、アミノ基としては、アミノ基(−NH)及び炭素数1〜15の置換アミノ基(メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジエチルアミノ、n−プロピルアミノ、メチル−n−プロピルアミノ、エチル−n−プロピルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、イソプロピルメチルアミノ、イソプロピルエチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、メチルフェニルアミノ、エチルフェニルアミノ、n−プロピルフェニルアミノ及びイソプロピルフェニルアミノ等)等が挙げられる。
【0042】
式(1)において、Rにおける、ハロゲン原子基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0043】
式(1)において、R、Rは、相互に独立であり、従って、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0044】
式(1)において、mは、Rの個数を表し、0〜5の整数であり、好ましくは0〜3、さらに好ましくは0〜2、特に好ましくは0又は1である。
【0045】
式(1)において、Rfは炭素数1〜18のアルキル基であって、炭素原子に結合した水素原子がフッ素原子で通常、70%以上置換されたものである。好ましくは80%以上、さらに好ましくは100%である。フッ素原子の置換率が70%未満では、本発明の硬化性組成物において重合開始能が低下する。
Rfの中でも、原料の入手しやすさから、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、さらに炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。具体例としては、CF、CFCF、(CFCF、(CFCH、CFCFCF、CFCFCFCF、(CFCFCF、CFCF(CF)CF、CFCF(CF)CH、(CFC、(CF(CH)Cが挙げられる。
Rfはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0046】
本発明の式(1)で示されるスルホニウム塩のうち、好ましい具体例としては、
フェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート、フェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ヘキサフルオロイソプロポキシ)アルミナート、フェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ヘキサフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート、4−メトキシカルボニルオキシフェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート、4−ベンジルオキシカルボニルオキシフェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート、フェニル−メチル−ベンジルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート、4−ヒドロキシフェニル−メチル−ベンジルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート、4−ヒドロキシフェニル−メチル−p−ニトロベンジルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート、4−メトキシカルボニルオキシフェニル−メチル−ベンジルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート、4−アセトキシフェニル−メチル−ベンジルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート、4−ベンジルオキシカルボニルオキシフェニル−メチル−ベンジルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート、フェニル−メチル−2−メチルベンジルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート、4−ヒドロキシフェニル−メチル−2−メチルベンジルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート、4−メトキシカルボニルオキシフェニル−メチル−2−メチルベンジルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート、4−アセトキシフェニル−メチル−2−メチルベンジルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート、4−ベンジルオキシカルボニルオキシフェニル−メチル−2−メチルベンジルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート、フェニル−メチル−1−ナフチルメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート、4−ヒドロキシフェニル−メチル−1−ナフチルメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート、4−メトキシカルボニルオキシフェニル−メチル−1−ナフチルメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート、4−アセトキシフェニル−メチル−1−ナフチルメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート及び4−ベンジルオキシカルボニルオキシフェニル−メチル−1−ナフチルメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナートが挙げられる。
【0047】
本発明の熱酸発生剤に含有されるスルホニウム塩の製造方法としては、以下の反応式に従って製造することができる。
【0048】
【化2】
【0049】
なお、反応式中のR〜R、Rfは、式(1)における定義に同じである。Xは、ハロゲンアニオンを表し、Mはアルカリ金属(リチウム、ナトリウム及びカリウム等)カチオンを表す。MXはアルカリ金属カチオンとハロゲンアニオンとの塩を表す。
【0050】
即ち、式(2)のスルホニウムハライド(合成方法は特開平3−48654参照)をジクロロメタン等の有機溶媒に溶解あるいは分散し、その溶液に式(3)のフッ素化アルコキシアルミン酸アニオンとアルカリ金属カチオンとの塩の水溶液を等モル量で混合し、得られた2層系混合物を20〜80℃の温度で1〜6時間撹拌し、式(2)のスルホニウムハライドと式(3)のフッ素化アルコキシアルミン酸アニオンとアルカリ金属カチオンとの塩を反応させ、有機溶媒層を分液した後、有機溶媒を留去することにより式(1)のスルホニウム塩が得られる。
【0051】
スルホニウム塩の化学構造は、一般的な分析手法(たとえば、H、11B、13C、19F、31P−NMRスペクトル、赤外吸収スペクトル及び/又は元素分析等)によって同定することができる。
【0052】
本発明の熱酸発生剤とは、加熱又は光照射によりその化学構造が分解し、酸を発生するものをいう。発生した酸は、エポキシドの硬化反応等の触媒として使用することができる。
【0053】
本発明の熱酸発生剤は、本発明のスルホニウム塩をそのまま使用してもよいし、これに他の熱酸発生剤を含有させて使用してもよい。
【0054】
他の熱酸発生剤を含有する場合、他の熱酸発生剤の含有量(モル%)は、本発明の熱酸発生剤に含有されるスルホニウム塩の総モル数に対して、1〜100が好ましく、さらに好ましくは5〜50である。
【0055】
他の熱酸発生剤としては、オニウム塩(スルホニウム、ヨードニウム、セレニウム、アンモニウム及びホスホニウム等)並びに遷移金属錯体イオンと、アニオンとの塩等の従来公知のものが含まれる。
【0056】
本発明の熱酸発生剤は、カチオン重合性化合物への溶解を容易にするため、あらかじめカチオン重合を阻害しない溶剤に溶かしておいてもよい。
【0057】
溶剤としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートなどのカーボネート類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、及びジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体;ジオキサンのような環式エーテル類;蟻酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートなどのエステル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類等が挙げられる。
【0058】
溶剤を使用する場合、溶剤の使用割合は、本発明の熱酸発生剤100重量部に対して、15〜1000重量部が好ましく、さらに好ましくは30〜500重量部である。使用する溶媒は、単独で使用してもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0059】
本発明の硬化性組成物は、上記の熱酸発生剤とカチオン重合性化合物とから構成される。
【0060】
カチオン重合性化合物としては、環状エーテル(エポキシド及びオキセタン等)、エチレン性不飽和化合物(ビニルエーテル及びスチレン等)、ビシクロオルトエステル、スピロオルトカーボネート及びスピロオルトエステル等が挙げられる(特開平11−060996号、特開平09−302269号、特開2003−026993号、特開2002−206017号、特開平11−349895号、特開平10−212343号、特開2000−119306号、特開平10−67812号、特開2000−186071号、特開平08−85775号、特開平08−134405号、特開2008−20838、特開2008−20839、特開2008−20841、特開2008−26660、特開2008−26644、特開2007−277327、フォトポリマー懇話会編「フォトポリマーハンドブック」(1989年、工業調査会)、総合技術センター編「UV・EB硬化技術」(1982年、総合技術センター)、ラドテック研究会編「UV・EB硬化材料」(1992年、シーエムシー)、技術情報協会編「UV硬化における硬化不良・阻害原因とその対策」(2003年、技術情報協会)、色材、68、(5)、286−293(1995)、ファインケミカル、29、(19)、5−14(2000)等)。
【0061】
エポキシドとしては、公知のもの等が使用でき、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシドが含まれる。
【0062】
芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香環を有する1価又は多価のフェノール(フェノール、ビスフェノールA、フェノールノボラック及びこれらのこれらのアルキレンオキシド付加体した化合物)のグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0063】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロヘキセンやシクロペンテン環を有する化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られる化合物(3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、等)が挙げられる。
【0064】
脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコール又はこのアルキレンオキシド付加体のポリグリシジルエーテル(1、4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等)、脂肪族多塩基酸のポリグリシジルエステル(ジグリシジルテトラヒドロフタレート等)、長鎖不飽和化合物のエポキシ化物(エポキシ化大豆油及びエポキシ化ポリブタジエン等)が挙げられる。
【0065】
オキセタンとしては、公知のもの等が使用でき、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1、4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、オキセタニルシルセスキオキセタン及びフェノールノボラックオキセタン等が挙げられる。
【0066】
エチレン性不飽和化合物としては、公知のカチオン重合性単量体等が使用でき、脂肪族モノビニルエーテル、芳香族モノビニルエーテル、多官能ビニルエーテル、スチレン及びカチオン重合性窒素含有モノマーが含まれる。
【0067】
脂肪族モノビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル及びシクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0068】
芳香族モノビニルエーテルとしては、2−フェノキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル及びp−メトキシフェニルビニルエーテル等が挙げられる。
【0069】
多官能ビニルエーテルとしては、ブタンジオール−1、4−ジビニルエーテル及びトリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0070】
スチレンとしては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン及びp−tert−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0071】
カチオン重合性窒素含有モノマーとしては、N−ビニルカルバゾール及びN−ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0072】
ビシクロオルトエステルとしては、1−フェニル−4−エチル−2、6、7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン及び1−エチル−4−ヒドロキシメチル−2、6、7−トリオキサビシクロ−[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0073】
スピロオルトカーボネートとしては、1,5,7,11−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン及び3、9−ジベンジル−1,5,7,11−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
【0074】
スピロオルトエステルとしては、1,4,6−トリオキサスピロ[4.4]ノナン、2−メチル−1,4,6−トリオキサスピロ[4.4]ノナン及び1,4,6−トリオキサスピロ[4.5]デカン等が挙げられる。
【0075】
これらのカチオン重合性化合物のうち、エポキシド、オキセタン及びビニルエーテルが好ましく、さらに好ましくはエポキシド及びオキセタン、特に好ましくは脂環式エポキシド及びオキセタンである。また、これらのカチオン重合性化合物は単独で使用してもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0076】
硬化性組成物中の本発明の熱酸発生剤の含有量は、カチオン重合性化合物100部に対し、0.05〜20重量部が好ましく、さらに好ましくは0.1〜10重量部である。この範囲であると、カチオン重合性化合物の重合がさらに十分となり、硬化体の物性がさらに良好となる。なお、この含有量は、カチオン重合性化合物の性質やエネルギー線の種類と照射量、温度、硬化時間、湿度、塗膜の厚み等のさまざまな要因を考慮することによって決定され、上記範囲に限定されない。
【0077】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて、公知の添加剤(顔料、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、消泡剤、流動調整剤、光安定剤、酸化防止剤、密着性付与剤、イオン補足剤、着色防止剤、溶剤、非反応性の樹脂及びラジカル重合性化合物等)を含有させることができる。
【0078】
顔料としては、公知の顔料等が使用でき、無機顔料(酸化チタン、酸化鉄及びカーボンブラック等)及び有機顔料(アゾ顔料、シアニン顔料、フタロシアニン顔料及びキナクリドン顔料等)等が挙げられる。
【0079】
顔料を含有する場合、顔料の含有量は、熱酸発生剤100部に対して、0.5〜400000重量部が好ましく、さらに好ましくは10〜150000重量部である。
【0080】
充填剤としては、公知の充填剤等が使用でき、溶融シリカ、結晶シリカ、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、ケイ酸カルシウム及びケイ酸リチウムアルミニウム等が挙げられる。
【0081】
充填剤を含有する場合、充填剤の含有量は、熱酸発生剤100部に対して、50〜600000重量部が好ましく、さらに好ましくは300〜200000重量部である。
【0082】
帯電防止剤としては、公知の帯電防止剤等が使用でき、非イオン型帯電防止剤、アニオン型帯電防止剤、カチオン型帯電防止剤、両性型帯電防止剤及び高分子型帯電防止剤が挙げられる。
【0083】
帯電防止剤を含有する場合、帯電防止剤の含有量は、熱酸発生剤100部に対して、0.1〜20000重量部が好ましく、さらに好ましくは0.6〜5000重量部である。
【0084】
難燃剤としては、公知の難燃剤等が使用でき、無機難燃剤{三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化錫、水酸化錫、酸化モリブデン、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、赤燐、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及びアルミン酸カルシウム等};臭素難燃剤{テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモベンゼン及びデカブロモビフェニルエーテル等};及びリン酸エステル難燃剤{トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート等}等が挙げられる。
【0085】
難燃剤を含有する場合、難燃剤の含有量は、熱酸発生剤100部に対して、0.5〜40000重量部が好ましく、さらに好ましくは5〜10000重量部である。
【0086】
消泡剤としては、公知の消泡剤等が使用でき、アルコール消泡剤、金属石鹸消泡剤、リン酸エステル消泡剤、脂肪酸エステル消泡剤、ポリエーテル消泡剤、シリコーン消泡剤及び鉱物油消泡剤等が挙げられる。
【0087】
流動調整剤としては、公知の流動性調整剤等が使用でき、水素添加ヒマシ油、酸化ポリエチレン、有機ベントナイト、コロイド状シリカ、アマイドワックス、金属石鹸及びアクリル酸エステルポリマー等が挙げられる。
光安定剤としては、公知の光安定剤等が使用でき、紫外線吸収型安定剤{ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、サリチレート、シアノアクリレート及びこれらの誘導体等};ラジカル補足型安定剤{ヒンダードアミン等};及び消光型安定剤{ニッケル錯体等}等が挙げられる。
酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤等が使用でき、フェノール系酸化防止剤(モノフェノール系、ビスフェノール系及び高分子フェノール系等)、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。
密着性付与剤としては、公知の密着性付与剤等が使用でき、カップリング剤、シランカップリング剤及びチタンカップリング剤等が挙げられる。
イオン補足剤としては、公知のイオン補足剤等が使用でき、有機アルミニウム(アルコキシアルミニウム及びフェノキシアルミニウム等)等が挙げられる。
着色防止剤としては、公知の着色防止剤が使用でき、一般的には酸化防止剤が有効であり、フェノール系酸化防止剤(モノフェノール系、ビスフェノール系及び高分子フェノール系等)、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0088】
消泡剤、流動調整剤、光安定剤、酸化防止剤、密着性付与剤、イオン補足剤又は、着色防止剤を含有する場合、各々の含有量は、熱酸発生剤100部に対して、0.1〜20000重量部が好ましく、さらに好ましくは0.5〜5000重量部である。
【0089】
溶剤としては、カチオン重合性化合物の溶解や硬化性組成物の粘度調整のために使用できれば制限はなく、上記熱酸発生剤の溶剤として挙げたものが使用できる。
【0090】
溶剤を含有する場合、溶剤の含有量は、熱酸発生剤100部に対して、50〜2000000重量部が好ましく、さらに好ましくは200〜500000重量部である。
【0091】
非反応性の樹脂としては、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリカーボナート、ポリスチレン、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリブテン、スチレンブタジエンブロックコポリマー水添物、(メタ)アクリル酸エステルの共重合体及びポリウレタン等が挙げられる。これらの樹脂の数平均分子量は、1000〜500000が好ましく、さらに好ましくは5000〜100000である(数平均分子量はGPC等の一般的な方法によって測定された値である。)。
【0092】
非反応性の樹脂を含有する場合、非反応性の樹脂の含有量は、熱酸発生剤100部に対して、5〜400000重量部が好ましく、さらに好ましくは50〜150000重量部である。
【0093】
非反応性の樹脂を含有させる場合、非反応性の樹脂をカチオン重合性化合物等と溶解しやすくするため、あらかじめ溶剤に溶かしておくことが望ましい。
【0094】
ラジカル重合性化合物としては、公知{フォトポリマー懇話会編「フォトポリマーハンドブック」(1989年、工業調査会)、総合技術センター編「UV・EB硬化技術」(1982年、総合技術センター)、ラドテック研究会編「UV・EB硬化材料」(1992年、シーエムシー)、技術情報協会編「UV硬化における硬化不良・阻害原因とその対策」(2003年、技術情報協会)}のラジカル重合性化合物等が使用でき、単官能モノマー、2官能モノマー、多官能モノマー、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートが含まれる。
【0095】
ラジカル重合性化合物を含有する場合、ラジカル重合性化合物の含有量は、熱酸発生剤100部に対して、5〜400000重量部が好ましく、さらに好ましくは50〜150000重量部である。
【0096】
ラジカル重合性化合物を含有する場合、これらをラジカル重合によって高分子量化するために、熱又は光によって重合を開始するラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0097】
ラジカル重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤等が使用でき、熱ラジカル重合開始剤(有機過酸化物、アゾ化合物等)及び光ラジカル重合開始剤(アセトフェノン系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ミヒラーケトン系開始剤、ベンゾイン系開始剤、チオキサントン系開始剤、アシルホスフィン系開始剤等)が含まれる。
【0098】
ラジカル重合開始剤を含有する場合、ラジカル重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性化合物100部に対して、0.01〜20重量部が好ましく、さらに好ましくは0.1〜10重量部である。
【0099】
本発明の硬化性組成物は、カチオン重合性化合物、熱酸発生剤及び必要により添加剤を、室温(20〜30℃程度)又は必要により加熱(40〜90℃程度)下で、均一に混合溶解するか、又はさらに、3本ロール等で混練して調製することができる。
【0100】
本発明の硬化性組成物は、加熱することにより硬化させて、硬化体を得ることができる。
【0101】
硬化させるための加熱方法としては、例えば、熱循環式加熱、赤外線加熱、高周波加熱等従来公知の方法を用いることができる。
【0102】
硬化に必要な加熱温度は、硬化が十分に進行し、基材を劣化させない範囲であれば特に限定されるものではないが、好ましくは50〜250℃、より好ましくは80〜200℃の範囲であり、加熱時間は加熱温度に依存するものの、生産性の面から数分から数時間が好ましい。
【0103】
本発明の硬化性組成物の具体的な用途としては、塗料、コーティング剤、インキ、インクジェットインキ、ポジ型レジスト、レジストフィルム、液状レジスト、ネガ型レジスト、MEMS用レジスト、ポジ型感光性材料、ネガ型感光性材料、各種接着剤、成形材料、注型材料、パテ、ガラス繊維含浸剤、目止め材、シーリング材、封止材、光半導体(LED)封止材、光導波路材料、ナノインプリント材料、光造形用、及びマイクロ光造形用材料等が挙げられる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されることは意図するものではない。なお、以下特記しない限り、部は重量部、%は重量%を意味する。
【0105】
〔実施例1〕
4−ヒドロキシフェニル−メチル−ベンジルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナートの合成
4−ヒドロキシフェニル−メチル−ベンジルスルホニウムクロライドを3.0g(0.01モル)をジクロロメタン50mlに分散させ、等モルのテトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミン酸リチウムを含む水溶液30gを室温下で混合し、そのまま3時間撹拌した。ジクロロメタン層を分液操作にて水で3回洗浄した後、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、4−ヒドロキシフェニル−メチル−ベンジルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナートを10.8g得た。(収率90%)
【0106】
〔実施例2〕
4−ヒドロキシフェニル−メチル−1−ナフチルメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナートの合成
4−ヒドロキシフェニル−メチル−1−ナフチルメチルスルホニウムクロライドを3.18g(0.01モル)をジクロロメタン15mlに分散させ、等モルのテトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミン酸リチウムを含む水溶液30gを室温下で混合し、そのまま3時間撹拌した。ジクロロメタン層を分液操作にて水で3回洗浄した後、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、4−ヒドロキシフェニル−メチル−1−ナフチルメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナートを11.2得た。(収率90%)
【0107】
〔実施例3〕
4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナートの合成
実施例1で合成した ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート6.8g(0.01モル)をアセトニトリル100mlに溶解させ、10℃以下でトリエチルアミン1.2g(0.012モル)を加え、30分後、塩化アセチル1.0g(0.012モル)を滴下する。3時間撹拌後、副生するトリエチルアミンの塩酸塩をろ過して除き、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナートを7.8g(収率63%)得た。
【0108】
〔実施例4〕
4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナートの合成
4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム クロライド 1.9g(0.01モル)をジクロロメタン15mlに分散させ、等モルのテトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミン酸リチウムを含む水溶液30gを室温下で混合し、そのまま3時間撹拌した。ジクロロメタン層を分液操作にて水で3回洗浄した後、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナートを10.2g得た。(収率91%)
【0109】
〔実施例5〕
4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナートの合成
実施例4で合成した 4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナートを6.0g(0.01モル)をアセトニトリル100mlに溶解させ、10℃以下でトリエチルアミン1.2g(0.012モル)を加え、30分後、塩化アセチル1.0g(0.012モル)を滴下する。3時間撹拌後、副生するトリエチルアミンの塩酸塩をろ過して除き、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナート7.7g(収率66%)を得た。
【0110】
〔実施例6〕
4−ヒドロキシフェニル−4−ニトロベンジルメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナートの合成
4−ヒドロキシフェニル−4−ニトロベンジルメチルスルホニウム クロライド 3.1g(0.01モル)をジクロロメタン50mlに分散させ、等モルのテトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミン酸リチウムを含む水溶液30gを室温下で混合し、そのまま3時間撹拌した。ジクロロメタン層を分液操作にて水で3回洗浄した後、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ノナフルオロtert−ブチロキシ)アルミナートを10.9g得た。(収率88%)
【0111】
〔比較例1〕
4−ヒドロキシフェニル−メチル−ベンジルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネートの合成
4−ヒドロキシフェニル−メチル−ベンジルスルホニウムクロライドを3.0g(0.01モル)をジクロロメタン50mlに分散させ、等モルのヘキサフルオロアンチモン酸カリウムを含む水溶液30gを室温下で混合し、そのまま3時間撹拌した。ジクロロメタン層を分液操作にて水で3回洗浄した後、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、4−ヒドロキシフェニル−メチル−ベンジルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネートを4.0g得た。(収率86%)
【0112】
〔比較例2〕
4−ヒドロキシフェニル−メチル−ベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの合成
4−ヒドロキシフェニル−メチル−ベンジルスルホニウムクロライドを3.0g(0.01モル)をジクロロメタン50mlに分散させ、等モルのテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸リチウムを含む水溶液30gを室温下で混合し、そのまま3時間撹拌した。ジクロロメタン層を分液操作にて水で3回洗浄した後、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、4−ヒドロキシフェニル−メチル−ベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを7.5g得た。(収率82%)
【0113】
〔比較例3〕
4−ヒドロキシフェニル−メチル−ベンジルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェートの合成
4−ヒドロキシフェニル−メチル−ベンジルスルホニウムクロライドを3.0g(0.01モル)をジクロロメタン50mlに分散させ、等モルのヘキサフルオロリン酸カリウムを含む水溶液30gを室温下で混合し、そのまま3時間撹拌した。ジクロロメタン層を分液操作にて水で3回洗浄した後、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、4−ヒドロキシフェニル−メチル−ベンジルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェートを3.3g得た。(収率88%)
【0114】
〔比較例4〕
4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネートの合成
4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム クロライド 1.9g(0.01モル)をジクロロメタン50mlに分散させ、等モルのヘキサフルオロアンチモン酸カリウムを含む水溶液30gを室温下で混合し、そのまま3時間撹拌した。ジクロロメタン層を分液操作にて水で3回洗浄した後、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネートを3.6g得た。(収率91%)
【0115】
〔比較例5〕
4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの合成
4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム クロライド 1.9g(0.01モル)をジクロロメタン50mlに分散させ、等モルのテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸リチウムを含む水溶液30gを室温下で混合し、そのまま3時間撹拌した。ジクロロメタン層を分液操作にて水で3回洗浄した後、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを7.1g得た。(収率85%)
【0116】
〔比較例6〕
4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェートの合成
4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム クロライド 1.9g(0.01モル)をジクロロメタン50mlに分散させ、等モルのヘキサフルオロリン酸カリウムを含む水溶液30gを室温下で混合し、そのまま3時間撹拌した。ジクロロメタン層を分液操作にて水で3回洗浄した後、ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェートを2.79g得た。(収率93%)
【0117】
〔実施例7〜12及び比較例7〜12〕
本発明及び比較例のスルホニウム塩(熱酸発生剤)各1重量部とカチオン重合性化合物であるエポキシド(jER828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)三菱化学製)100重量部とを均一混合して、硬化性組成物を調製し、JISK5909の手法に準じてゲルタイムを測定した。
【0118】
【表1】
【0119】
表1の結果からわかるように、本発明の熱酸発生剤(フッ素化アルコキシアルミン酸スルホニウム塩)は比較用のスルホニウム塩に比べて、カチオン重合化合物の硬化性能が優れており、かつSbなどの毒性元素を有していないため安全性が高い。従って、熱酸発生剤として有用であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の熱酸発生剤は、塗料、コーティング剤、インキ、インクジェットインキ、ポジ型レジスト(回路基板、CSP、MEMS素子等の電子部品製造の接続端子や配線パターン形成等)、レジストフィルム、液状レジスト、ネガ型レジスト(半導体素子等の表面保護膜、層間絶縁膜、平坦化膜等の永久膜材料等)、MEMS用レジスト、感光性材料、各種接着剤、成形材料、注型材料、パテ、ガラス繊維含浸剤、目止め材、シーリング材、封止材、光半導体(LED)封止材、ナノインプリント材料、光造形用、マイクロ光造形用材料等に使用される熱酸発生剤として好適に用いられる。