(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のものでは、下部ばねケースの底部に、その直径上を一方の外周端から他方の外周端まで延びるように固定用ホルダーが配設されており、これがベースフレームの上部をその幅方向に跨がることで、アイソレータがベースフレームに保持されている。このアイソレータを組み立てる際は、固定用ホルダーをリングゴムのリング部分の横から挿入し、固定用ホルダーの中央部分とリングゴムの下端部とを係合させる。そして、このリングゴムをコイルばねの下側からコイルばねの内部に挿入し、リングゴムの上端部がコイルばねの上端部に達したときに、リングゴムの上端部を上部ばねケースに設けられた爪部に挟み込むことで掛着されて、上部ばねケースと下部ばねケースとを連結するようになっている。
【0006】
このように、リングゴムをコイルばねの内部に挿入する際、リングゴムをコイルばねの下から徐々に挿入しなければならないため、組立作業性が悪い。
【0007】
また、リングゴムを上部ばねケースの爪部に挟み込むことでリングゴムを介して上下のばねケースを連結しているため、この点でも、組立作業性が悪い。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コイルばねを上下一対のケース部材の間に収容したアイソレータにおいて、その組立作業性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、第1の発明では、上方に向かって開口する下側ケース部材と、上記下側ケース部材の上方に離間して配置され、下方に向かって開口する上側ケース部材と、上記両ケース部材の間に収容されたコイルばねと、上記コイルばねの上下両端部に接触するようにそれぞれ配設され、弾性体からなる上下一対の環状のサージング防止部材と
、環状の弾性体からなる、上記サージング防止部材とは別体のスリップ防止部材とを備え、上記下側ケース部材の底部には、上方に向かって延びる環状の下側延出部が形成され、上記上側ケース部材の天井部には、下方に向かって延びる環状の上側延出部が形成され、上側のサージング防止部材及び上記コイルばねの上端部は、上記上側延出部に嵌合され、下側のサージング防止部材及び上記コイルばねの下端部は、上記下側延出部に嵌合され
、上記下側ケース部材の底部及び上記上側ケース部材の天井部には、それぞれ凹部が周方向に形成され、上記スリップ防止部材は、上記下側ケース部材の凹部及び上記上側ケース部材の凹部にそれぞれ埋設されていることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、上側のサージング防止部材及びコイルばねの上端部が、上側ケース部材の上側延出部に嵌合され、下側のサージング防止部材及びコイルばねの下端部が、下側ケース部材の下側延出部に嵌合されているので、嵌合という比較的簡単な作業でアイソレータを組み立てることができ、アイソレータの組立作業性を向上させることができる。
【0011】
ところで、サージング防止部材とスリップ防止部材とが一体となっている場合、下側ケース部材の底部及び上側ケース部材の天井部に設けられた貫通孔にスリップ防止部材を挿入することが考えられるが、その場合、サージング防止部材を延出部に嵌合する際、スリップ防止部材の挿入位置を確認しながらその嵌合作業を行う必要がある。
【0012】
ここで、上記第1の発明の構成によれば、下側ケース部材の底部及び上側ケース部材の天井部には、弾性体からなる、サージング防止部材とは別体のスリップ防止部材がそれぞれ埋設されているので、サージング防止部材を延出部に嵌合する際、スリップ防止部材の埋設位置を確認することなく、その嵌合作業を独立して行うことができ、アイソレータの組立作業をより向上させることができる。
【0013】
第2の発明では、第1の発明において、上記下側ケース部材は、上記底部及び上記下側延出部に加えて、該底部の外周縁部から上方に向かって延びる環状の下側周壁部を有し、上記下側延出部は、上記下側周壁部の径方向内側に配置され、上記上側ケース部材は、上記天井部及び上記上側延出部に加えて、該天井部の外周縁部から下方に向かって延びる環状の上側周壁部を有し、上記上側延出部は、上記上側周壁部の径方向内側に配置され、上記上側のサージング防止部材及び上記コイルばねの上端部は、この順に上記上側延出部に外嵌合され、上記下側のサージング防止部材及び上記コイルばねの下端部は、この順に上記下側延出部に外嵌合されていることを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、上側のサージング防止部材及びコイルばねの上端部が、この順に上側ケース部材の上側延出部に外嵌合され、下側のサージング防止部材及びコイルばねの下端部が、この順に下側ケース部材の下側延出部に外嵌合されているので、外嵌合という比較的簡単な作業でアイソレータを組み立てることができ、アイソレータの組立作業性を向上させることができる。
【0015】
第3の発明では、第2の発明において、上記各延出部の外周面、又は上記各サージング防止部材の内周面及び外周面の少なくとも一方には、周方向に延びる突起部が形成されていることを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、各延出部の外周面、又は各サージング防止部材の内周面及び外周面の少なくとも一方には、周方向に延びる突起部が形成されているので、アイソレータに、上側及び下側ケース部材の対向方向の外側にかかる荷重が作用した場合、コイルばねの、両ケース部材の対向方向外側への移動を突起部により規制することができる。よって、アイソレータを運搬する場合やアイソレータを組み付ける前にコイルばねが各ケース部材から外れてアイソレータが分解してしまうことを抑制することができる。
【0017】
第4の発明では、上方に向かって開口する下側ケース部材と、上記下側ケース部材の上方に離間して配置され、下方に向かって開口する上側ケース部材と、上記両ケース部材の間に収容されたコイルばねと、上記コイルばねの上下両端部に接触するようにそれぞれ配設され、弾性体からなる上下一対の環状のサージング防止部材とを備え、上記下側ケース部材は、底部と、該底部の外周縁部から上方に向かって延びる環状の下側周壁部と、該下側周壁部の径方向内側に配置され且つ上記底部から上方に向かって延びる環状の下側延出部とを有し、上記上側ケース部材は、天井部と、該天井部の外周縁部から下方に向かって延びる環状の上側周壁部と、該上側周壁部の径方向内側に配置され且つ上記底部から下方に向かって延びる環状の上側延出部とを有し、上側のサージング防止部材及び上記コイルばねの上端部は、この順に上記上側延出部に外嵌合され、下側のサージング防止部材及び上記コイルばねの下端部は、この順に上記下側延出部に外嵌合され、上記各延出部の外周面、又は上記各サージング防止部材の内周面及び外周面の少なくとも一方には、周方向に延びる突起部が形成されていることを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、上側のサージング防止部材及びコイルばねの上端部が、上側ケース部材の上側延出部に嵌合され、下側のサージング防止部材及びコイルばねの下端部が、下側ケース部材の下側延出部に嵌合されているので、嵌合という比較的簡単な作業でアイソレータを組み立てることができ、アイソレータの組立作業性を向上させることができる。
【0019】
上記の構成によれば、上側のサージング防止部材及びコイルばねの上端部が、この順に上側ケース部材の上側延出部に外嵌合され、下側のサージング防止部材及びコイルばねの下端部が、この順に下側ケース部材の下側延出部に外嵌合されているので、外嵌合という比較的簡単な作業でアイソレータを組み立てることができ、アイソレータの組立作業性を向上させることができる。
【0020】
上記の構成によれば、各延出部の外周面、又は各サージング防止部材の内周面及び外周面の少なくとも一方には、周方向に延びる突起部が形成されているので、アイソレータに、上側及び下側ケース部材の対向方向の外側にかかる荷重が作用した場合、コイルばねの、両ケース部材の対向方向外側への移動を突起部により規制することができる。よって、アイソレータを運搬する場合やアイソレータを組み付ける前にコイルばねが各ケース部材から外れてアイソレータが分解してしまうことを抑制することができる。
【0021】
第
5の発明では、第
4の発
明において、上記下側ケース部材の底部及び上記上側ケース部材の天井部には、弾性体からなる、上記サージング防止部材とは別体のスリップ防止部材がそれぞれ埋設されていることを特徴とする。
【0022】
ところで、サージング防止部材とスリップ防止部材とが一体となっている場合、下側ケース部材の底部及び上側ケース部材の天井部に設けられた貫通孔にスリップ防止部材を挿入することが考えられるが、その場合、サージング防止部材を延出部に嵌合する際、スリップ防止部材の挿入位置を確認しながらその嵌合作業を行う必要がある。
【0023】
ここで、上記第
5の発明の構成によれば、下側ケース部材の底部及び上側ケース部材の天井部には、弾性体からなる、サージング防止部材とは別体のスリップ防止部材がそれぞれ埋設されているので、サージング防止部材を延出部に嵌合する際、スリップ防止部材の埋設位置を確認することなく、その嵌合作業を独立して行うことができ、アイソレータの組立作業をより向上させることができる。
【0024】
第
6の発明では、第3
〜第5のいずれか1つの発明において、上記突起部は、上記コイルばねの端から一巻き目の部分よりも該コイルばねの上下方向中央寄りに配置されていることを特徴とする。
【0025】
上記の構成によれば、突起部がコイルばねの端から一巻き目の部分よりもコイルばねの上下方向中央寄りに配置されているので、コイルばねをサージング防止部材に外嵌合する際、少なくとも、コイルばねの端から一巻き目の部分がサージング防止部材における突起部に対応する部分を乗り越え、その乗り越えた際の感触が作業者に伝わる。よって、作業者はその感触でコイルばねがサージング防止部材に外嵌合されたことを認識することができ、アイソレータの組立作業性をより向上させることができる。
【0026】
第
7の発明では、第3
〜第6のいずれか1つの発明において、上記突起部は、周方向に断続的に複数配設されていることを特徴とする。
【0027】
上記の構成によれば、突起部が周方向に断続的に複数配設されているので、サージング防止部材を延出部に外嵌合する際、突起部が周方向全周に亘って連続的に設けられている場合に比べ、作業者が受ける抵抗を減少させることができる。よって、サージング防止部材を延出部に容易に外嵌合することができ、アイソレータの組立作業性をより向上させることができる。
【0028】
第
8の発明では、第3〜第
7のいずれか1つの発明において、上記突起部は、各延出部の外周面に形成され、上記各サージング防止部材の内周面及び外周面の少なくとも一方には、軸方向に延びる突起部が形成され、上記各延出部の突起部と、該各延出部に対応する上記各サージング防止部材の突起部とは、周方向において互いに異なる位置に配置されていることを特徴とする。
【0029】
上記の構成によれば、突起部が、各延出部の外周面に形成され、各サージング防止部材の内周面及び外周面の少なくとも一方には、軸方向に延びる突起部が形成され、各延出部の突起部と、各延出部に対応する各サージング防止部材の突起部とが、周方向において互いに異なる位置に配置されているので、サージング防止部材における延出部の突起部に対応する部分に加えて、サージング防止部材自体の突起部もコイルばねと接触し、サージング防止部材自体に突起部がない場合と比べ、サージング防止部材とコイルばねとの接触面積が増え、サージング防止機能を十分に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明によれば、アイソレータの組立作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0033】
<実施形態1>
図1及び
図2は、本発明の実施形態に係る防振台Aを示し、この防振台Aは、例えば空気調和装置において圧縮機を内蔵した室外ユニット(図示せず)を振動源として基礎側の設置面上に設置する場合に用いられる。防振台Aは、概略4本の長尺状金属製フレーム10,10,…を矩形の枠体に組み合わせてなり、図外の基礎ボルト等により設置面上に固定されるベース1と、このベース1と略同じ形状の矩形枠体からなり、ベース1上に所定の間隔を空けてかつ上方から見て重なるように配置される架台2と、この架台2をベース1の上方に離間させて弾性的に支持する複数(図示例では6つ)のアイソレータ5,5,…と、架台2の上方への所定以上の移動を規制する複数(図示例では4つ)のストッパ機構3,3,…とを備えてなり、上記架台2上に室外ユニットが載置されて取付固定されるようになっている。なお、上記ストッパ機構3,3,…は、ベース1(架台2)における各隅角部内に配置されている。
【0034】
また、上記アイソレータ5,5,…は、ベース1及び架台2の周方向、即ち該ベース1のフレーム10,10,…の長手方向に互いに所定の間隔を空けて配置されている。
図4に拡大して詳示するように、上記各アイソレータ5は、上記ベース1のフレーム10,10,…上に載置され(便宜上、フレーム10の上面とアイソレータ5の下面とを上下に離して示す)、上方に向かって開口する略カップ状の下側ケース部材6と、この下側ケース部材6の上方に離間して同心状に配置され、下方に向かって開口するとともに、その下端開口部を含む下側部分の内径が上記下側ケース部材6の上端開口部よりも大きな略カップ状の上側ケース部材7と、それら2つの両ケース部材6,7の間に同心状に配置されて収容され、室外ユニットの荷重を受けるコイルばね8と、このコイルばね8のループ8a,8a,…内に内側から接触するように嵌入された上下一対のゴム弾性体からなるサージング防止部材9,9とを備えている。
【0035】
上記アイソレータ5の下側ケース部材6は、この実施形態では樹脂の成形品である。下側ケース部材6は、底部61と、この底部61の外周縁部から上方に向かって延びる環状の下側周壁部62とを有する有底円筒状のものであるとともに、その下部に保持部12が一体に形成されたものである。この保持部12がベース1のフレーム10,10,…の上部をその幅方向(
図4の左右方向)に跨いで保持するようになっている。上記下側ケース部材6の底部61の略中心部には、円形断面の貫通孔6aが形成され、その径方向外側に環状部6bが配設されている。環状部6bの径方向外側には、円弧状の凹部6c及び貫通孔6dが周方向に交互に3つずつ形成されている。凹部6cは、互いに周方向に等間隔を空けて配置され、周方向に隣り合う凹部6c,6cの間に貫通孔6dが配置されている。
【0036】
そして、下側ケース部材6の底部61には、ゴム弾性体からなる概略円環状のスリップ防止部材11が下方から重ね合わされていて、凹部6cに内嵌合状態で固定されている。スリップ防止部材11の下部は、下側ケース部材6の底部61下面より突出していて、この下側スリップ防止部材11の下面にベース1の上面を当接させて、アイソレータ5がベース1上を移動しないように保持している。
【0037】
下側ケース部材6の底部61には、環状部6bから上方に向かって延びる環状の下側延出部65が一体に形成されている。つまり、下側延出部65は、下側周壁部62の径方向内側に同心円状に配置されている。下側延出部65の外周面には、互いに周方向に等間隔を空けて延びる突条形状の3つの突起部66,66,66が配設されている。つまり、突起部66は周方向に断続的に配設されている。突起部66は、コイルばね8の下端から一巻き目のループ8aよりも上方(コイルばね8の上下方向中央寄り)に配設されている。突起部66は、周方向において貫通孔6dと略同じ位置に配設され、突起部66の径方向及び周方向の長さは、貫通孔6dの径方向及び周方向の長さよりも小さくなっている。このように、突起部66の大きさを貫通孔6dの大きさよりも小さくしたことで、突起部66を含む下側ケース部材6を成形する金型の突起部66に対応する部分を貫通孔6dから抜くことができる。
【0038】
上記アイソレータ5の上側ケース部材7も、この実施形態では、樹脂の成形品である。上側ケース部材7は、上記下側ケース部材6における下側周壁部62の2倍くらいの高さを有し、天井部71と、この天井部71の外周縁部から下方に向かって延びる環状の上側周壁部72とを有する有蓋円筒状のものである。上側周壁部72の上側略半分には、上端部から下方に向かって徐々に広がるテーパ面からなる環状のテーパ部7aが形成されるとともに、下側略半分には、テーパ部7aの下端部から下方に向かって真っ直ぐ延びる環状の延長部7bが一体に形成されている。延長部7bにおける外周面の下部には、延長部7bの周方向全周に亘って連続する突条形状の突起部7cが形成されている。
【0039】
また、上側ケース部材7の天井部71には、
図3に示すように、上下方向の軸線を囲む略中心部に円形断面の貫通孔7dが形成され、その径方向外側に環状部7eが配設されている。環状部7eの径方向外側には、円弧状の凹部7f及び貫通孔7gが周方向に交互に3つずつ形成されている。凹部7fは、互いに周方向に等間隔を空けて配置され、周方向に隣り合う凹部7f,7fの間に貫通孔7gが配置されている。
【0040】
そして、上側ケース部材7の天井部71には、
図4に示すように、ゴム弾性体からなる概略円環状のスリップ防止部材11が上方から重ね合わされていて、凹部7fに内嵌合状態で固定されている。スリップ防止部材11の上部は、上側ケース部材7の天井部71上面より突出していて、この上側スリップ防止部材11の上面に架台2の下面を当接させて、室外ユニットの荷重を各アイソレータ5で受けるようになっている。
【0041】
上側ケース部材7の天井部71には、環状部7eの外周縁部から下方に向かって延びる環状の上側延出部75が一体に形成されている。つまり、上側延出部75は、上側周壁部72の径方向内側に同心円状に配置されている。上側延出部75の外周面には、互いに周方向に等間隔を空けて延びる3つの突起部76,76,76が配設されている。つまり、突起部76は周方向に断続的に配設されている。突起部76は、コイルばね8の上端から一巻き目のループ8aよりも下方(コイルばね8の上下方向中央寄り)に配設されている。突起部76は、周方向において貫通孔7gと略同じ位置に配設され、突起部76の径方向及び周方向の長さは、貫通孔7gの径方向及び周方向の長さよりも小さくなっている。このように、突起部76の大きさを貫通孔7gの大きさよりも小さくしたことで、突起部76を含む上側ケース部材7を成形する金型の突起部76に対応する部分を貫通孔7gから抜くことができる。
【0042】
サージング防止部材9は、コイルばね8自体の共振(サージング)を防止するためのものである。
図4及び
図5に示すように、下側サージング防止部材9は環状であり、その内周面は、下側ケース部材6の下側延出部65の外周面に当接し、その下端面は、下側ケース部材6の底部61上面と当接している。下側サージング防止部材9は、下側延出部65と同心状に配設され、下側サージング防止部材9の上下方向長さは、下側延出部65の上下方向長さと同じである。
【0043】
図6に示すように、下側サージング防止部材9の外周面には、軸方向に延びる突条形状の突起部91が互いに周方向に等間隔を空けて3つ形成されている。
図5に示すように、下側サージング防止部材9の突起部91と下側延出部65の突起部66とは、周方向において互いに異なる位置に配置されている。具体的には、下側サージング防止部材9の突起部91は、周方向に隣り合う、下側延出部65の突起部66,66の間であって、これらの突起部66,66のうち一方側に寄って配置されている。下側サージング防止部材9を下側延出部65に外嵌合すると、下側サージング防止部材9における下側延出部65の突起部66に対応する部分が膨出する。この膨出部93により、下側サージング防止部材9がコイルばね8に十分に接触する。なお、
図4では、図をわかりやすくするため、膨出部93の図示を省略している。
【0044】
上側サージング防止部材9も下側サージング防止部材9と同様に環状であり、
図4に示すように、その内周面は、上側ケース部材7の上側延出部75の外周面に当接し、その上端面は、上側ケース部材7の天井部71下面と当接している。上側サージング防止部材9は、上側延出部75と同心状に配設され、上側サージング防止部材9の上下方向長さは、上側延出部75の上下方向長さと同じである。
【0045】
上側サージング防止部材9の外周面にも下側サージング防止部材9と同様に、軸方向に延びる突条形状の突起部91が互いに周方向に等間隔を空けて3つ形成されている。上側サージング防止部材9の突起部91と上側延出部75の突起部76とは、周方向において互いに異なる位置に配置されている。具体的には、上側サージング防止部材9の突起部91は、周方向に隣り合う、上側延出部75の突起部76,76の間であって、これらの突起部76,76のうち一方側に寄って配置されている。上側サージング防止部材9を上側延出部75に外嵌合すると、上側サージング防止部材9における上側延出部75の突起部76に対応する部分が膨出する。この膨出部93により、上側サージング防止部材9がコイルばね8に十分に接触する。なお、
図4では、図をわかりやすくするため、膨出部93図示を省略している。
【0046】
図4に示すように、コイルばね8は、両ケース部材6,7の間に収容され、その両端部のループ8a内に内側から上下一対のサージング防止部材9,9が接触するように配置されている。
【0047】
上記の如く構成されたアイソレータ5は、
図6に示すように、下側ケース部材6の下側延出部65に下側サージング防止部材9及びコイルばね8の下端部をこの順に外嵌合するとともに、上側ケース部材の上側延出部75に上側サージング防止部材9及びコイルばね8の上端部をこの順に外嵌合し、また、下側ケース部材6の底部61及び上側ケース部材7の天井部71にスリップ防止部材11をそれぞれ埋設することで組み立てられる。
【0048】
−効果−
以上より、本実施形態によれば、上側のサージング防止部材9及びコイルばね8の上端部が、この順に上側ケース部材7の上側延出部75に外嵌合され、下側のサージング防止部材9及びコイルばね8の下端部が、この順に下側ケース部材6の下側延出部65に外嵌合されているので、外嵌合という比較的簡単な作業でアイソレータ5を組み立てることができ、アイソレータ5の組立作業性を向上させることができる。
【0049】
また、各延出部65,75の外周面には、周方向に延びる突起部66,76が形成されているので、アイソレータ5に、両ケース部材6,7の対向方向の外側にかかる荷重が作用した場合、コイルばね8の、両ケース部材6,7の対向方向外側への移動を突起部66,76により規制することができる。よって、アイソレータ5を運搬する場合やアイソレータ5を防振台Aに組み付ける前にコイルばね8が各ケース部材6,7から外れてアイソレータ5が分解してしまうことを抑制することができる。
【0050】
また、突起部66,76がコイルばね8の端から一巻き目のループ8aよりもコイルばねの上下方向中央寄りに配置されているので、コイルばね8をサージング防止部材9に外嵌合する際、少なくとも、コイルばね8の端から一巻き目のループ8aがサージング防止部材9における突起部66,76に対応する部分を乗り越え、その乗り越えた際の感触が作業者に伝わる。よって、作業者はその感触でコイルばね8がサージング防止部材9に外嵌合されたことを認識することができ、アイソレータ5の組立作業性をより向上させることができる。
【0051】
また、突起部66,76が周方向に断続的に3つ配設されているので、サージング防止部材9を延出部65,75に外嵌合する際、突起部66,76が周方向全周に亘って連続的に設けられている場合に比べ、作業者が受ける抵抗を減少させることができる。よって、サージング防止部材9を延出部65,75に容易に外嵌合することができ、アイソレータ5の組立作業性をより向上させることができる。
【0052】
また、突起部66,76が、各延出部65,75の外周面に形成され、各サージング防止部材9の外周面には、軸方向に延びる突起部91,91,91が形成され、各延出部65,75の突起部66,76と、各延出部65,75に対応する各サージング防止部材9の突起部91,91,91とが、周方向において互いに異なる位置に配置されているので、サージング防止部材9における延出部65,75の突起部66,76に対応する部分に加えて、サージング防止部材9自体の突起部91,91,91もコイルばね8と接触し、サージング防止部材9自体に突起部91,91,91がない場合と比べ、サージング防止部材9とコイルばね8との接触面積が増え、サージング防止機能を十分に発揮させることができる。
【0053】
ところで、サージング防止部材9とスリップ防止部材11とが一体となっている場合、下側ケース部材6の底部61及び上側ケース部材7の天井部71に配置された貫通孔6d,7gにスリップ防止部材11を挿入することが考えられるが、その場合、サージング防止部材9を延出部65,75に外嵌合する際、スリップ防止部材11の挿入位置を確認しながらその外嵌合作業を行う必要がある。
【0054】
ここで、上記実施形態の構成によれば、下側ケース部材6の底部61及び上側ケース部材7の天井部71には、弾性体からなる、サージング防止部材9とは別体のスリップ防止部材11がそれぞれ埋設されているので、サージング防止部材9を延出部65,75に外嵌合する際、スリップ防止部材11の埋設位置を確認することなく、その外嵌合作業を独立して行うことができ、アイソレータ5の組立作業をより向上させることができる。
【0055】
また、サージング防止部材9は、一体ではなく、上下に分離されているため、振動源からの振動を基礎側に伝え難くすることができる。
【0056】
また、上側ケース部材7に突起部7cが設けられ、下側ケース部材6における保持部12の一方の対辺が弓なり形状に形成されているため、防振台Aの輸送時に梱包材等と擦れて下側ケース部材6及び上側ケース部材7の外周面につく傷を最小限にすることができる。
【0057】
<実施形態2>
図7は、本発明の実施形態2を示したものである。なお、この実施形態では
図1〜
図6と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0058】
上記実施形態1では、サージング防止部材9とスリップ防止部材11とを別体としているのに対して、本実施形態では、これらの部材を一体に形成している。具体的には、下側サージング防止部材9の下端面に、互いに周方向に等間隔を空けて円弧状のスリップ防止部材11が3つ形成されている。各スリップ防止部材11の下端部には、径方向外側に向かって突出する突出部11aが形成されている。上側サージング防止部材9も同様に、その上端部にスリップ防止部材11が3つ形成されていて、各スリップ防止部材11の上端部には、突出部11aが形成されている。
【0059】
下側ケース部材6の底部61及び上側ケース部材7の天井部71には、スリップ防止部材11が挿入される貫通孔7h(上側ケース部材7の貫通孔7hのみ図示)が各スリップ防止部材11に対応するように形成され、この貫通孔7hと周方向に隣接してストッパ部7iが配置されている(上側ケース部材7のストッパ部7iのみ図示)。
【0060】
上側スリップ防止部材11を上側ケース部材7の貫通孔7hに挿入した後、上側サージング防止部材9を周方向に回転させると、ストッパ部7iと突出部11aとが係合する。これにより、サージング防止部材9及びスリップ防止部材11が上下方向に抜けることを防止している。下側スリップ防止部材11も同様の構成で上記抜けを防止している。
【0061】
また、上記実施形態1では、下側及び上側ケース部材6,7に配設された各延出部65,75に突起部66,76が形成されているのに対して、本実施形態では突起部66,76が形成されていない。さらに、上記実施形態1では、上下一対のサージング防止部材9の外周面に突起部91が形成されているのに対して、本実施形態では突起部91が形成されていない。
【0062】
その他の構成は、実施形態1と同じである。これにより、実施形態1と同様に、上下一対のサージング防止部材9及びコイルばね8が、この順に両ケース部材6,7の各延出部65,75に外嵌合されることで、外嵌合という比較的簡単な作業でアイソレータ5を組み立てることができ、アイソレータ5の組立作業性を向上させることができる。
【0063】
また、サージング防止部材9とスリップ防止部材11とを一体にすることで、構成部品数を減少させることができる。
【0064】
<実施形態3>
図8は、本発明の実施形態3を示したものである。なお、この実施形態では
図1〜
図6と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0065】
上記実施形態1では、下側サージング防止部材9及びコイルばね8の下端部は、この順に下側延出部65に外嵌合されているのに対して、本実施形態では、下側サージング防止部材9及びコイルばね8の下端部は、この順に下側周壁部62に内嵌合されている。なお、本実施形態では、下側周壁部62が本発明の下側延出部に対応する。
【0066】
具体的には、実施形態1で下側ケース部材6に形成されていた下側延出部65は、実施形態3では形成されていない。下側周壁部62の内周面には、互いに周方向に等間隔に空けて延びる突状形状の3つの突起部66,66,66が配設されている。つまり、突起部66は周方向に断続的に配設されている。突起部66は、コイルばね8の下端から一巻き目のループ8aよりも上方(コイルばね8の上下方向中央寄り)に配設されている。突起部66は、周方向において貫通孔6dと略同じ位置に配設され、突起部66の径方向及び周方向の長さは、貫通孔6dの径方向及び周方向の長さよりも小さくなっている。このように、突起部66の大きさを貫通孔6dの大きさよりも小さくしたことで、突起部66を含む下側ケース部材6を成形する金型の突起部66に対応する部分を貫通孔6dから抜くことができる。
【0067】
サージング防止部材9の内周面は、コイルばね8の外周面に当接している。この内周面には、軸方向に延びる突条形状の突起部91が互いに周方向に等間隔を空けて3つ形成されている。下側サージング防止部材9の突起部91と下側周壁部62の突起部66とは、周方向において互いに異なる位置に配置されている。具体的には、下側サージング防止部材9の突起部91は、周方向に隣り合う、下側周壁部62の突起部66,66の間であって、これらの突起部66,66のうち一方側に寄って配置されている。下側サージング防止部材9を下側周壁部62に内嵌合すると、下側サージング防止部材9における下側周壁部62の突起部66に対応する部分が膨出する。この膨出部93により、下側サージング防止部材9がコイルばね8に十分に接触する。なお、
図8では、図をわかりやすくするため、膨出部93の図示を省略している。
【0068】
コイルばね8は、
図8に示すように、両ケース部材6,7の間に収容され、その下端部のループ8aに外側から下側のサージング防止部材9が、その上端部のループ8a内に内側から上側のサージング防止部材9が接触するように配置されている。
【0069】
上記の如く構成されたアイソレータ5は、下側ケース部材6の下側周壁部62に下側サージング防止部材9及びコイルばね8の下端部をこの順に内嵌合するとともに、上側ケース部材7の上側延出部75に上側サージング防止部材9及びコイルばね8の上端部をこの順に外嵌合し、また、下側ケース部材6の底部61及び上側ケース部材7の天井部71にスリップ防止部材11をそれぞれ埋設することで組み立てられる。
【0070】
その他の構成は、実施形態1と同じである。これにより、実施形態1と同様に、上下一対のサージング防止部材9及びコイルばね8が、この順に下側ケース部材6の下側周壁部62に内嵌合され、上側ケース部材7の上側延出部75に外嵌合されることで、嵌合という比較的簡単な作業でアイソレータ5を組み立てることができ、アイソレータ5の組立作業性を向上させることができる。
【0071】
<実施形態4>
図9は、本発明の実施形態4を示したものである。なお、この実施形態では
図1〜
図6と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0072】
上記実施形態3では、上側サージング防止部材9及びコイルばね8の上端部は、この順に上側延出部75に外嵌合されているのに対して、本実施形態では、上側サージング防止部材9及びコイルばね8の上端部は、この順に上側周壁部72に内嵌合されている。なお、本実施形態では、上側周壁部72が本発明の下側延出部に対応する。
【0073】
具体的には、実施形態3で上側ケース部材7に形成されていた上側延出部75は、実施形態4では形成されていない。上側周壁部72の内周面には、互いに周方向に等間隔に空けて延びる突状形状の3つの突起部76,76,76が配設されている。つまり、突起部76は周方向に断続的に配設されている。突起部76は、コイルばね8の上端から一巻き目のループ8aよりも下方(コイルばね8の上下方向中央寄り)に配設されている。突起部76は、周方向において貫通孔7gと略同じ位置に配設され、突起部76の径方向及び周方向の長さは、貫通孔7gの径方向及び周方向の長さよりも小さくなっている。このように、突起部76の大きさを貫通孔7gの大きさよりも小さくしたことで、突起部76を含む上側ケース部材7を成形する金型の突起部76に対応する部分を貫通孔7gから抜くことができる。
【0074】
また、実施形態3では、上側ケース部材7の上側周壁部72が、テーパ部7aと延長部7bとを一体に形成したものであるが、本実施形態では、下方に向かって真っ直ぐ延びる環状のものである。
【0075】
また、サージング防止部材9の内周面は、コイルばね8の外周面に当接している。この内周面には、軸方向に延びる突条形状の突起部91が互いに周方向に等間隔を空けて3つ形成されている。上側サージング防止部材9の突起部91と上側周壁部72の突起部76とは、周方向において互いに異なる位置に配置されている。具体的には、上側サージング防止部材9の突起部91は、周方向に隣り合う、上側周壁部72の突起部76,76の間であって、これらの突起部76,76のうち一方側に寄って配置されている。上側サージング防止部材9を上側周壁部72に内嵌合すると、上側サージング防止部材9における上側周壁部72の突起部76に対応する部分が膨出する。この膨出部93により、上側サージング防止部材9がコイルばね8に十分に接触する。なお、
図9では、図をわかりやすくするため、膨出部93の図示を省略している。
【0076】
コイルばね8は、
図9に示すように、両ケース部材6,7の間に収容され、その両端部のループ8aに外側から上下一対のサージング防止部材9,9が接触するように配置されている。
【0077】
上記の如く構成されたアイソレータ5は、下側ケース部材6の下側周壁部62に下側サージング防止部材9及びコイルばね8の下端部をこの順に内嵌合するとともに、上側ケース部材の上側周壁部72に上側サージング防止部材9及びコイルばね8の上端部をこの順に内嵌合し、また、下側ケース部材6の底部61及び上側ケース部材7の天井部71にスリップ防止部材11をそれぞれ埋設することで組み立てられる。
【0078】
その他の構成は、実施形態3と同じである。これにより、実施形態3と同様に、上下一対のサージング防止部材9及びコイルばね8が、この順に両ケース部材6,7の周壁部62,72に内嵌合されることで、内嵌合という比較的簡単な作業でアイソレータ5を組み立てることができ、アイソレータ5の組立作業性を向上させることができる。
【0079】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態では、突起部66,76を延出部65,75に周方向に断続的に複数配設されているが、周方向全周に亘って連続して形成してもよい。
【0080】
また、上記各実施形態では、突起部66,76を延出部65,75又は周壁部62,72に形成したが、サージング防止部材9の内周面及び外周面の少なくとも一方に形成してもよい。この構成によっても、コイルばね8が各ケース部材6,7から外れることを抑制することができる。
【0081】
また、上記各実施形態では、突起部91を突起部66,66;76,76のうち一方側に寄って配置したが、突起部66,66;76,76の間に位置する限り、どこに配置してもよく、例えば、突起部66,66;76,76の中間部に配置してもよい。
【0082】
また、上記各実施形態では、突起部91をサージング防止部材9の外周面又は内周面に形成したが、その両面に形成してもよい。この構成によっても、サージング防止機能を十分に発揮させることができる。
【0083】
また、上記各実施形態では、サージング防止部材9に突条形状の突起部91を形成したが、周方向において隣り合う突起部66,66;76,76の間に位置する限り、突起部91の周方向長さを実施形態1よりも大きくしてもよい。
【0084】
また、上記実施形態3では、下側サージング防止部材9及びコイルばね8の下端部を、この順に下側周壁部62に内嵌合し、上側サージング防止部材9及びコイルばね8の上端部を、この順に上側延出部75に外嵌合したが、下側サージング防止部材9及びコイルばね8の下端部を、この順に下側延出部65に外嵌合し、上側サージング防止部材9及びコイルばね8の上端部を、この順に上側周壁部72に内嵌合してもよい。