特許第6963487号(P6963487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963487
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】DC/DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20211028BHJP
【FI】
   H02M3/28 V
   H02M3/28 Q
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-239801(P2017-239801)
(22)【出願日】2017年12月14日
(65)【公開番号】特開2019-106839(P2019-106839A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2020年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】村上 幸三郎
【審査官】 東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−119598(JP,A)
【文献】 特開2015−154506(JP,A)
【文献】 特開2014−7942(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/075996(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00−3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアクトル、複数の半導体スイッチング素子、及び複数の前記半導体スイッチング素子それぞれに並列接続される複数のコンデンサを有するk(kはN以下の各自然数、Nは3以上の自然数)次側コンバータと、
1次巻線〜N次巻線を有するトランスと、
前記1次側コンバータ〜前記N次側コンバータのスイッチングを制御する制御部と、を備え、
前記k次側コンバータの前記リアクトルは前記k次巻線に接続され及び/又は前記k次巻線の漏れインダクタンスであり、
前記1次側コンバータ〜前記N次側コンバータはそれぞれフルブリッジ回路を有し、
前記制御部は、前記1次側コンバータ〜前記N次側コンバータそれぞれについて入力側コンバータ又は複数の出力側コンバータのいずれかとし、第1制御を行うときに、
前記入力側コンバータの第1アーム上側に位置する前記半導体スイッチング素子及び前記入力側コンバータの第2アーム下側に位置する前記半導体スイッチング素子をオン期間が一致するようにスイッチング制御し、
前記入力側コンバータの第1アーム下側に位置する前記半導体スイッチング素子及び前記入力側コンバータの第2アーム上側に位置する前記半導体スイッチング素子をオン期間が一致するようにスイッチング制御し、
前記出力側コンバータの第1及び第2アーム上側と第1及び第2アーム下側との一方に位置する2つの前記半導体スイッチング素子をスイッチング制御せず、
前記出力側コンバータの第1及び第2アーム上側と第1及び第2アーム下側との他方に位置する2つの前記半導体スイッチング素子を位相差が略180度でスイッチング制御し、
前記出力側コンバータの第1及び第2アーム上側と第1及び第2アーム下側との他方に位置する2つの前記半導体スイッチング素子の一方を、前記入力側コンバータの第1アーム上側に位置する前記半導体スイッチング素子及び前記入力側コンバータの第2アーム下側に位置する前記半導体スイッチング素子とオン期間が一致するようにスイッチング制御し、
実施する各スイッチング制御のオンデューティを変化させることによって前記出力側コンバータの出力電力を調整する、
DC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の出力側コンバータ全てが第1制御で出力電力を調節可能である場合は、第1制御で制御を行い、前記複数の出力側コンバータのいずれかが、第1制御で出力電力を調整できなくなった場合に、前記複数の出力側コンバータ全てに対して第2制御を行い
前記制御部は、第2制御を行うときに、
前記入力側コンバータの第1アーム上側に位置する前記半導体スイッチング素子及び前記入力側コンバータの第2アーム下側に位置する前記半導体スイッチング素子をオン期間が一致するようにスイッチング制御し、
前記入力側コンバータの第1アーム下側に位置する前記半導体スイッチング素子及び前記入力側コンバータの第2アーム上側に位置する前記半導体スイッチング素子をオン期間が一致するようにスイッチング制御し、前記出力側コンバータの第1及び第2アーム上側と第1及び第2アーム下側との一方に位置する2つの前記半導体スイッチング素子をスイッチング制御せず、前記出力側コンバータの第1及び第2アーム上側と第1及び第2アーム下側との他方に位置する2つの前記半導体スイッチング素子を位相差が略180度でスイッチング制御し、前記出力側コンバータの第1及び第2アーム上側と第1及び第2アーム下側との他方に位置する2つの前記半導体スイッチング素子の一方を、前記入力側コンバータの第1アーム上側に位置する前記半導体スイッチング素子及び前記入力側コンバータの第2アーム下側に位置する前記半導体スイッチング素子とオン期間の位相がずれるようにスイッチング制御し、
実施する各スイッチング制御の前記オン期間の位相のずれ量を変化させることによって前記出力側コンバータの出力電力を調整する、
請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数の出力側コンバータ全てが第1制御で出力電力を調節可能である場合は、第1制御で制御を行い、前記出力側コンバータのいずれかが、第1制御で出力電力を調整できなくなった場合に、前記複数の出力側コンバータ全てに対して第2制御を行うために、第1制御から第2制御に直接切り替え、
さらに前記制御部は、前記複数の出力側コンバータのいずれかが、第1制御で出力電力を調整できないため、前記複数の出力側コンバータ全てに対して第2制御を行っている状態から、前記複数の出力側コンバータ全てが第1制御で出力電力を調節可能となった場合、前記複数の出力側コンバータ全てに対して第1制御を行うために、第2制御から第1制御に直接切り替える、
請求項2に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記m(mは1〜Nのいずれか)次側コンバータに接続されている負荷に定電圧制御で電力を供給する場合、前記m次側コンバータを前記出力側コンバータとし第1制御によって前記次側コンバータから出力される電圧が、前記負荷の電圧許容範囲の最大値以下である、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記m(mは1〜Nのいずれか)次側コンバータに接続されている負荷に定電流制御で電力を供給する場合、前記m次側コンバータを前記出力側コンバータとし第1制御によって前記次側コンバータから出力される電圧が、前記負荷に電流が流れ始める閾値電圧未満である、
請求項1〜4のいずれか一項に記載のDC/DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1や非特許文献1にDAB(Dual Active Bridge)方式のDC/DCコンバータが開示されている。
【0003】
非特許文献1で開示されているDAB方式のDC/DCコンバータは、1次側フルブリッジ回路と2次側フルブリッジ回路とが絶縁トランスで結合されたDC/DCコンバータである。1次側フルブリッジ回路及び2次側フルブリッジ回路それぞれは、一方の対角に位置するスイッチング素子と他方の対角に位置するスイッチング素子とがデッドタイムを除いて、固定周期で50%のデューティで相補的にオンする。そして、1次側フルブリッジ回路のスイッチングと2次側フルブリッジ回路のスイッチングとの位相差を操作量として、伝達される電力が調節される。
【0004】
非特許文献1で開示されているDAB方式のDC/DCコンバータで1次側フルブリッジ回路のスイッチングと2次側フルブリッジ回路のスイッチングとの位相差をゼロとした場合、絶縁トランスの1次側巻線を流れる電流(循環電流)Inp及び絶縁トランスの2次側巻線を流れる電流(循環電流)Insは、図21に示すようになる。図21から分かるように、非特許文献1で開示されているDAB方式のDC/DCコンバータでは、1次側から2次側へ電力を全く伝達しない状態で、振幅2A弱の循環電流Inp及び振幅2A弱の循環電流Insが流れている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】平地克也、"平地研究室技術メモNo.20140310 DAB方式DC/DCコンバータ、2014年3月10日、舞鶴高専、[平成29年11月30日検索]、インターネット<URL:http://hirachi.cocolog-nifty.com/kh/files/20140310-1.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、非特許文献1で開示されているDAB方式のDC/DCコンバータの絶縁トランスに3次側巻線を追加し、さらに3次側フルブリッジ回路を追加した構成のDC/DCコンバータ(以下、「3方向DC/DCコンバータ」と称す)について検討する。
【0007】
3方向DC/DCコンバータで、1次側から2次側へ電力が伝達されるように1次側フルブリッジ回路のスイッチングと2次側フルブリッジ回路のスイッチングとの位相差を大きくし、1次側から3次側へ電力が伝達されないように1次側フルブリッジ回路のスイッチングと3次側フルブリッジ回路のスイッチングとの位相差を制御した場合、絶縁トランスの1次側巻線を流れる電流Inp、絶縁トランスの2次側巻線を流れる電流Ins、絶縁トランスの3次側巻線を流れる電流(循環電流)Intは、図22に示すようになる。図22から分かるように、3方向DC/DCコンバータでは、1次側から3次側へ電力を全く伝達しない状態で、循環電流Intの振幅が振幅30A程度にも達してしまう。このように電力伝達に寄与しない循環電流が大きいと、電力損失が大きくなってしまう。
【0008】
非特許文献1で開示されているDAB方式のDC/DCコンバータでは、図23に示すように、1次側フルブリッジ回路のスイッチングと2次側フルブリッジ回路のスイッチングとの位相差の正負によって、入力側と出力側が一意に決まる。一方、3方向DC/DCコンバータでは、1次側フルブリッジ回路のスイッチングと2次側フルブリッジ回路のスイッチングと3次側フルブリッジ回路のスイッチングとの位相差が例えば図24に示す関係である場合、2次側フルブリッジ回路は、1次側フルブリッジ回路に対して出力側となり、3次側フルブリッジ回路に対して入力側となる。すなわち、2次側フルブリッジ回路は、入力側でもあり出力側でもある不定な状態となり、1次側フルブリッジ回路から電力を受け取り、3次側フルブリッジ回路に電力を伝達することになり、この動作が循環電流を増大させる。
【0009】
本発明は、上記の状況に鑑み、1次側コンバータ〜N(Nは3以上の自然数)次側コンバータを有する構成であって、循環電流によって生じる電力損失を低減することができるDC/DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係るDC/DCコンバータは、リアクトル、複数の半導体スイッチング素子、及び複数の前記半導体スイッチング素子それぞれに並列接続される複数のコンデンサを有するk(kはN以下の各自然数、Nは3以上の自然数)次側コンバータと、1次巻線〜N次巻線を有するトランスと、前記1次側コンバータ〜前記N次側コンバータのスイッチングを制御する制御部と、を備える。前記k次側コンバータの前記リアクトルは前記k次巻線に接続され及び/又は前記k次巻線の漏れインダクタンスである。前記1次側コンバータ〜前記N次側コンバータはそれぞれフルブリッジ回路を有する。前記制御部は、前記1次側コンバータ〜前記N次側コンバータそれぞれについて入力側コンバータ又は出力側コンバータのいずれかとし、第1制御を行うときに、前記入力側コンバータの第1アーム上側に位置する前記半導体スイッチング素子及び前記入力側コンバータの第2アーム下側に位置する前記半導体スイッチング素子をオン期間が一致するようにスイッチング制御し、前記入力側コンバータの第1アーム下側に位置する前記半導体スイッチング素子及び前記入力側コンバータの第2アーム上側に位置する前記半導体スイッチング素子をオン期間が一致するようにスイッチング制御し、前記出力側コンバータの第1及び第2アーム上側と第1及び第2アーム下側との一方に位置する2つの前記半導体スイッチング素子をスイッチング制御せず、前記出力側コンバータの第1及び第2アーム上側と第1及び第2アーム下側との他方に位置する2つの前記2次側半導体スイッチング素子を位相差が略180度でスイッチング制御し、第1及び第2アーム上側と第1及び第2アーム下側との他方に位置する2つの前記2次側半導体スイッチング素子の一方を、前記入力側コンバータの第1アーム上側に位置する前記半導体スイッチング素子及び前記入力側コンバータの第2アーム下側に位置する前記半導体スイッチング素子とオン期間が一致するようにスイッチング制御し、実施する各スイッチング制御のオンデューティを変化させることによって前記出力側コンバータの出力電力を調整する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係るDC/DCコンバータによると、1次側コンバータ〜N(Nは3以上の自然数)次側コンバータを有する構成であって、循環電流によって生じる電力損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るDC/DCコンバータの概略構成を示す図
図2】第1制御での各IGBTの状態及び1,2次側コンバータの各出力電圧波形を示すタイムチャート
図3】第1制御でのDC/DCコンバータの動作を説明するための図
図4】第1制御でのDC/DCコンバータの動作を説明するための図
図5】第1制御でのDC/DCコンバータの動作を説明するための図
図6】第1制御での各IGBTの状態及び1〜3次側コンバータの各出力電圧波形を示すタイムチャート
図7】第2制御での各IGBTの状態及び1,2次側コンバータの各出力電圧波形を示すタイムチャート
図8】第2制御でのDC/DCコンバータの動作を説明するための図
図9】第2制御でのDC/DCコンバータの動作を説明するための図
図10】第2制御でのDC/DCコンバータの動作を説明するための図
図11】第2制御での各IGBTの状態及び1〜3次側コンバータの各出力電圧波形を示すタイムチャート
図12】本発明の一実施形態に係るDC/DCコンバータでの巻線電流波形を示すタイムチャート
図13】定電流制御での2次側出力電力を示すタイムチャート
図14】定電流制御での3次側出力電力を示すタイムチャート
図15】定電流制御での2次側出力電力を示すタイムチャート
図16】定電流制御での3次側出力電力を示すタイムチャート
図17】定電圧制御での2次側出力電力を示すタイムチャート
図18】定電圧制御での3次側出力電力を示すタイムチャート
図19】定電圧制御での2次側出力電力を示すタイムチャート
図20】定電圧制御での3次側出力電力を示すタイムチャート
図21】非特許文献1で開示されているDAB方式のDC/DCコンバータの巻線電流波形を示すタイムチャート
図22】3方向DC/DCコンバータの巻線電流波形を示すタイムチャート
図23】非特許文献1で開示されているDAB方式のDC/DCコンバータでのスイッチング位相差を示す図
図24】3方向DC/DCコンバータでのスイッチング位相差の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0014】
<1.DC/DCコンバータの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るDC/DCコンバータの概略構成を示す図である。本発明の一実施形態に係るDC/DCコンバータは、トランス1と、1次側コンバータ100と、2次側コンバータ200と、3次側コンバータ300と、制御部14と、を備える。1次側コンバータ100はトランス1の1次巻線L1に接続され、2次側コンバータ200はトランス1の2次巻線L2に接続され、3次側コンバータ300はトランス1の3次巻線L3に接続される。以下、1次巻線L1と2次巻線L2と3次巻線L3との巻線比を1:1:1とした場合について説明するが、巻線比は1:1:1に限定されるものではなく任意の巻線比に設定可能である。
【0015】
1次側コンバータ100は、コンデンサ2及び4a〜4dと、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)5a〜5dと、リアクトル6と、を備える。IGBT5a〜5dにはそれぞれ逆方向にダイオードが並列接続されている。また、IGBT5a〜5dにはそれぞれコンデンサ4a〜4dが並列接続されている。IGBT5aとIGBT5bとが直列接続され、IGBT5aのコレクタがコンデンサ2の正極側に接続され、IGBT5bのエミッタがコンデンサ2の負極側に接続される。同様に、IGBT5cとIGBT5dとが直列接続され、IGBT5cのコレクタがコンデンサ2の正極側に接続され、IGBT5dのエミッタがコンデンサ2の負極側に接続される。IGBT5cとIGBT5dとの接続ノードがリアクトル6を介して1次巻線L1の一端に接続され、IGBT5aとIGBT5bとの接続ノードが1次巻線L1の他端に接続される。リアクトル6としては、例えばコイルを用いてもよく1次巻線L1の漏れインダクタンスを用いてもよくコイルと1次巻線L1の漏れインダクタンスの両方を用いてもよい。
【0016】
2次側コンバータ200は、コンデンサ3及び9a〜9dと、IGBT8a〜8dと、リアクトル7と、を備える。IGBT8a〜8dにはそれぞれ逆方向にダイオードが並列接続されている。また、IGBT8a〜8dにはそれぞれコンデンサ9a〜9dが並列接続されている。IGBT8aとIGBT8bとが直列接続され、IGBT8aのコレクタがコンデンサ3の正極側に接続され、IGBT8bのエミッタがコンデンサ3の負極側に接続される。同様に、IGBT8cとIGBT8dとが直列接続され、IGBT8cのコレクタがコンデンサ3の正極側に接続され、IGBT8dのエミッタがコンデンサ3の負極側に接続される。IGBT8cとIGBT8dとの接続ノードがリアクトル7を介して2次巻線L2の一端に接続され、IGBT8aとIGBT8bとの接続ノードが2次巻線L2の他端に接続される。リアクトル7としては、例えばコイルを用いてもよく2次巻線L2の漏れインダクタンスを用いてもよくコイルと2次巻線L2の漏れインダクタンスの両方を用いてもよい。
【0017】
3次側コンバータ300は、コンデンサ13及び12a〜12dと、IGBT11a〜11dと、リアクトル10と、を備える。IGBT11a〜11dにはそれぞれ逆方向にダイオードが並列接続されている。また、IGBT11a〜11dにはそれぞれコンデンサ12a〜12dが並列接続されている。IGBT11aとIGBT11bとが直列接続され、IGBT11aのコレクタがコンデンサ13の正極側に接続され、IGBT11bのエミッタがコンデンサ13の負極側に接続される。同様に、IGBT11cとIGBT11dとが直列接続され、IGBT11cのコレクタがコンデンサ13の正極側に接続され、IGBT11dのエミッタがコンデンサ13の負極側に接続される。IGBT11cとIGBT11dとの接続ノードがリアクトル10を介して3次巻線L3の一端に接続され、IGBT11aとIGBT11bとの接続ノードが3次巻線L3の他端に接続される。リアクトル10としては、例えばコイルを用いてもよく3次巻線L3の漏れインダクタンスを用いてもよくコイルと3次巻線L3の漏れインダクタンスの両方を用いてもよい。
【0018】
制御部14は、IGBT5a〜5d、8a〜8d、及び11a〜11dそれぞれにゲート信号を供給してIGBT5a〜5d、8a〜8d、及び11a〜11dそれぞれの状態を制御する。
【0019】
制御部14は、1次側コンバータ100、2次側コンバータ200、及び3次側コンバータ300それぞれについて入力側コンバータ又は出力側コンバータのいずれかとし、出力側コンバータ全てが第1制御で出力電力を調節可能である場合は、第1制御で制御を行い、出力側コンバータのいずれかが、第1制御で出力電力を調整できなくなった場合に、その第1制御で出力電力を調整できなくなった出力側コンバータに対して第2制御を行う。
【0020】
なお、制御部14は、出力側コンバータ全てが第1制御で出力電力を調節可能である場合は、第1制御で制御を行い、出力側コンバータのいずれかが、第1制御で出力電力を調整できなくなった場合に、その第1制御で出力電力を調整できなくなった出力側コンバータに対して第2制御を行うために、第1制御から第2制御に直接切り替えることが望ましい。さらに制御部14は、出力側コンバータのいずれかが、第1制御で出力電力を調整できないため、その第1制御で出力電力を調整できなくなった出力側コンバータに対して第2制御を行っている状態から、出力側コンバータ全てが第1制御で出力電力を調節可能となった場合、第2制御で制御していた出力側コンバータに対して第1制御を行うために、第2制御から第1制御に直接切り替えることが望ましい。
【0021】
以下、第1制御及び第2制御について順に説明する。
【0022】
<2.第1制御>
第1制御での動作について、まず電力伝達の最小単位である1次側と2次側のみの回路構成すなわち図1に示す回路構成から3次側を取り除いた回路構成で説明し、その後1次側〜3次側の回路構成すなわち図1に示す回路構成に拡張して説明する。
【0023】
<2−1.1次側と2次側のみの回路構成での第1制御>
制御部14は、IGBT5a〜5d、8b、及び8dをスイッチング制御し、IGBT8a及び8cをオフ状態にし、IGBT5a〜5d、8b、及び8dのオンデューティを変化させることによって2次側コンバータ200から出力される出力電力を調整する。
【0024】
図2は、各IGBTの状態と、1次側コンバータ100の出力電圧Voutの波形と、2次側コンバータ200の出力電圧Vsの波形と、を示すタイムチャートである。IGBT5b、5c、及び8bが同期して周期Tでスイッチングし、IGBT5a、5d、及び8dがIGBT5b、5c、及び8bに対して半周期ずれた状態(位相が180度ずれた状態)でスイッチングする。
【0025】
時間tがt0<t<t1であるとき、図2に示すようにIGBT5b及び5cがオン状態であるため、1次側コンバータ100において図3に示すようにIGBT5c→リアクトル6→トランス1の1次巻線L1→IGBT5bの順に電流が流れる。これにより、トランス1の2次巻線L2に起電力が生じ、2次側コンバータ200において図3に示すようにIGBT8b→トランス1の2次巻線L2→リアクトル7→IGBT8cの順に電流が流れる。
【0026】
時間tがt1<t<t2であるとき、図2に示すように全てのIGBT5a〜5d及び8a〜8dがオフ状態となる。しかし、リアクトル6及び7には電流を維持する方向に起電力が生じ、電気的な振動を繰り返しながら(図4に示す状態と図5に示す状態とを交互に繰り返しながら)、1次側コンバータ100においてはリアクトル6に蓄えられた励磁エネルギが入力端に回生され、2次側コンバータ200においてはリアクトル7に蓄えられた励磁エネルギが出力端に供給される。1次側コンバータ100における回生動作はリアクトル6の励磁エネルギがゼロになるまで継続し、2次側コンバータ200における供給動作はリアクトル7の励磁エネルギがゼロになるまで継続する。
【0027】
時間tがt=t2になるタイミングで、リアクトル6及び7の励磁エネルギがそれぞれゼロであり電気的な振動が収まっている場合、IGBT5a〜5dの各コレクタ−エミッタ間にはVp/2の電圧が印加され、IGBT8a〜8dの各コレクタ−エミッタ間にはVs/2の電圧が印加されている状態となる。この状態で、図2に示すようにIGBT5a、5d、及び8dがターンONすると、IGBT5a、5d、及び8dそれぞれに並列接続されているコンデンサ4a、4d、及び9dに蓄積された電荷が短絡消費される。
【0028】
時間tがt=t2になるタイミングで、リアクトル6及び7の励磁エネルギの少なくとも一方がゼロでない場合、IGBT5a〜5dの各コレクタ−エミッタ間には0以上Vp以下の電圧が印加され、IGBT8a〜8dの各コレクタ−エミッタ間には0以上Vs以下の電圧が印加されている状態となる。
【0029】
時間tがt2<t<t3であるときは、フルブリッジ回路の対称性により、オン状態となるIGBTの組合せが異なるだけで時間tがt0<t<t1であるときと同じ動作になるため、説明を省略する。
【0030】
<2−2.図1に示す回路構成での第1制御>
制御部14が、1次側コンバータ100を入力側コンバータとし、2次側コンバータ200及び3次側コンバータ300を出力側コンバータとし、2次側にのみ負荷を接続する場合を例に挙げて説明する。すなわち、2次側から負荷に電力を出力し、3次側からは電力を出力しない場合を例に挙げて説明する。
【0031】
制御部14は、IGBT5a〜5d、8b、8d、11b、及び11dをスイッチング制御し、IGBT8a、8c、11a、及び11cをオフ状態にし、IGBT5a〜5d、8b、8d、11b、及び11dのオンデューティを変化させることによって2次側コンバータ200から出力される出力電圧Vs及び3次側コンバータ300から出力される出力電力を調整する。
【0032】
図6は、各IGBTの状態と、1次側コンバータ100の出力電圧Voutの波形と、2次側コンバータ200の出力電圧Vsの波形と、3次側コンバータ300の出力電圧Vtの波形と、を示すタイムチャートである。IGBT5b、5c、8b、及び11bが同期して周期Tでスイッチングし、IGBT5a、5d、8d、及び11dがIGBT5b、5c、8b、及び11bに対して半周期ずれた状態(位相が180度ずれた状態)でスイッチングする。2次側コンバータ200から出力される出力電圧Vsと3次側コンバータ300から出力される出力電圧Vtとは同一の値となる。
【0033】
<3.第2制御>
第2制御での動作について、まず電力伝達の最小単位である1次側と2次側のみの回路構成すなわち図1に示す回路構成から3次側を取り除いた回路構成で説明し、その後1次側〜3次側の回路構成すなわち図1に示す回路構成に拡張して説明する。
【0034】
<3−1.1次側と2次側のみの回路構成での第2制御>
図7は、制御部14が第2制御を行ったときの、各IGBTの状態と、1次側コンバータ100の出力電圧Voutの波形と、2次側コンバータ200の出力電圧Vsの波形と、を示すタイムチャートである。IGBT5b及び5cとIGBT5a及び5dとがデッドタイムを除くと相補的にオン/オフする。IGBT5a〜5dのオンデューティはデッドタイムを除いて考えると50%である。IGBT8bがIGBT5b及び5cに対して位相がずれた状態でスイッチングし、IGBT8dがIGBT5a及び5dに対して位相がずれた状態でスイッチングする。IGBT8b及び8dのオンデューティもデッドタイムを除いて考えると50%である。第2制御では、上記の位相のずれ量を変化させることによって2次側コンバータ200から出力される出力電力が調整される。
【0035】
時間tがt0<t<t1であるとき、図7に示すようにIGBT5b及び5cがオン状態であるため、1次側コンバータ100において図8に示すようにIGBT5c→リアクトル6→トランス1の1次巻線L1→IGBT5bの順に電流が流れる。これにより、トランス1の2次巻線L2に起電力が生じ、且つ、図7に示すようにIGBT8dがオン状態であるため、2次側コンバータ200において図8に示すようにIGBT8b→トランス1の2次巻線L2→リアクトル7→IGBT8dの順に電流が流れる。
【0036】
時間tがt1<t<t3であるとき、時間tがt=t1になるタイミングでIGBT8dがターンOFFし、その後時間tがt=t2になるタイミングでIGBT8bがターンONするため、2次側コンバータ200において図9に示すようにIGBT8b→トランス1の2次巻線L2→リアクトル7→IGBT8cの順に電流が流れる。このとき、トランス1の2次巻線L2には、1次側コンバータ100に流れる電流によって誘起される起電力が現れており、さらにリアクトル7の転流時の起電力が積み上がっている。これにより、2次側コンバータ200の出力電圧Vsが昇圧される。
【0037】
時間tがt3<t<t4であるとき、図7に示すように全てのIGBT5a〜5d及び8a〜8dがオフ状態となってリアクトル6が転流するため、1次側コンバータ100において図10に示すようにIGBT5d→リアクトル6→トランス1の1次巻線L1→IGBT5aの順に電流が流れる。2次側コンバータ200においては引き続きリアクトル7の転流によって2次側コンバータ200の出力端に電流が流れ続ける。
【0038】
時間tがt4<tであるときは、フルブリッジ回路の対称性により、オン状態となるIGBTの組合せが異なるだけで時間tがt0<t<t4であるときと同じ動作になるため、説明を省略する。
【0039】
第1制御では、2次側コンバータ200の出力電力を増加させるためにオンデューティを大きくしていった場合、オンデューティがデッドタイムを除いて50%まで大きくなると、それ以上2次側コンバータ200の出力電力を増加させることができない。しかしながら、第1制御から第2制御に直接切り替わることで、シームレスに第1制御での2次側コンバータ200の最大出力電力より大きい2次側コンバータ200の出力電力を得ることができる。
【0040】
従って、第1制御において実施する各スイッチング制御のオンデューティが略50%に達すると、第1制御から第2制御に直接切り替えるようにすればよい。なお、第1制御はZVSの不成立に関わるスイッチング損失を低減する制御であるため、第1制御と第2制御とを比較して第2制御の方が軽負荷でも効率が良い領域であれば、第1制御において実施する各スイッチング制御のオンデューティが略50%に達するよりも前に、第1制御から第2制御に直接切り替えてもよい。
【0041】
<3−2.図1に示す回路構成での第2制御>
制御部14が、1次側コンバータ100を入力側コンバータとし、2次側コンバータ200及び3次側コンバータ300を出力側コンバータとし、2次側にのみ負荷を接続する場合を例に挙げて説明する。すなわち、2次側から負荷に電力を出力し、3次側からは電力を出力しない場合を例に挙げて説明する。
【0042】
図11は、制御部14が第2制御を行ったときの、各IGBTの状態と、1次側コンバータ100の出力電圧Voutの波形と、2次側コンバータ200の出力電圧Vsの波形と、3次側コンバータ300の出力電圧Vtの波形と、を示すタイムチャートである。
【0043】
IGBT5b及び5cとIGBT5a及び5dとがデッドタイムを除くと相補的にオン/オフする。IGBT5a〜5dのオンデューティはデッドタイムを除いて考えると50%である。
【0044】
IGBT8bがIGBT5b及び5cに対して位相がずれた状態でスイッチングし、IGBT8dがIGBT5a及び5dに対して位相がずれた状態でスイッチングする。IGBT8b及び8dのオンデューティもデッドタイムを除いて考えると50%である。第2制御では、上記の位相のずれ量を変化させることによって2次側コンバータ200から出力される出力電力が調整される。
【0045】
3次側においても2次側と同様の制御を行うことで、位相のずれ量を変化させることによって3次側コンバータ300から出力される出力電力を調整することができるが、本例では3次側からは電力を出力しないので、図11に示すように3次側では位相のずれ量をゼロにしている。
【0046】
<4.循環電流>
本発明の一実施形態に係るDC/DCコンバータは、第1制御を行っているときでも、第2制御を行っているときでも、入力側コンバータの動作と出力側コンバータの動作とが明確に異なっており、入力側でもあり出力側でもある不定な状態のコンバータが存在しない。
【0047】
その結果、1次側コンバータ100を入力側コンバータとし、2次側コンバータ200及び3次側コンバータ300を出力側コンバータとし、2次側にのみ負荷を接続する場合、絶縁トランスの1次側巻線を流れる電流Inp、絶縁トランスの2次側巻線を流れる電流Ins、絶縁トランスの3次側巻線を流れる電流(循環電流)Intは、図12に示すようになる。図12から分かるように、本発明の一実施形態に係るDC/DCコンバータでは、1次側から3次側へ電力を全く伝達しない状態で、循環電流Intの振幅を数Aに抑えることができ、電力損失を低減することができる。
【0048】
<5.定電流制御を行う際の電圧条件>
1次側コンバータを入力側コンバータとし、2次側コンバータ及び3次側コンバータを出力側コンバータとし、かつ2次側コンバータ及び3次側コンバータそれぞれが定電流制御で電力を供給する負荷(例えばバッテリやLED等)に接続される場合、トランス1の巻数比は次のように設定することが望ましい。すなわち、1次側と2次側の巻数比は、第1制御において、2次側コンバータの出力が2次側の負荷の電流が流れ始める閾値電圧未満になるようにし、1次側と3次側の巻数比は、第1制御において3次側コンバータの出力が3次側の負荷の電流が流れ始める閾値電圧未満になるように設定することが望ましい。
【0049】
このような構成によると、2次側コンバータ200に接続されている負荷に定電流制御で電力を供給する場合に、1次側コンバータ〜3次側コンバータそれぞれを独立して制御することができる。
【0050】
例えば、1次側フルブリッジ回路〜3次側フルブリッジ回路のスイッチングを停止した状態から起動して、最終的に2次側から電力を出力し、3次側から電力を出力しない制御シーケンスを実行した場合、1次側と2次側におけるデューティT1、1次側と2次側におけるスイッチング位相差T2、2次側出力電力T3は図13に示すようになり、1次側と3次側におけるデューティT4、1次側と3次側におけるスイッチング位相差T5、3次側出力電力T6は図14に示すようになる。
【0051】
図13及び図14から分かるように、第1制御では、2次側及び3次側ともに電力は出力されず、第2制御に移行してから、意図した通り2次側からのみ電力が出力される。
【0052】
一方、2次側コンバータを出力側コンバータとし第1制御によって2次側コンバータから出力される電圧が、負荷に電流が流れ始める閾値電圧未満になっていない場合に、例えば上記の制御シーケンスを実行すると、1次側と2次側におけるデューティT1、1次側と2次側におけるスイッチング位相差T2、2次側出力電力T3は図15に示すようになり、1次側と3次側におけるデューティT4、1次側と3次側におけるスイッチング位相差T5、3次側出力電力T6は図16に示すようになる。第1制御ですでに3次側から電力が出力されてしまい、意図通りの出力結果を得ることができない。
【0053】
<6.定電圧制御を行う際の電圧条件>
1次側コンバータを入力側コンバータとし、2次側コンバータ及び3次側コンバータを出力側コンバータとし、かつ2次側コンバータ及び3次側コンバータそれぞれが定電圧制御で電力を供給する負荷に接続される場合、トランス1の巻数比は次のように設定することが望ましい。すなわち、1次側と2次側の巻数比は、第1制御において2次側コンバータの出力が2次側の負荷の電圧許容範囲の最大値以下になるようにし、1次側と3次側の巻数比は、第1制御において3次側コンバータの出力が3次側の負荷の電圧許容範囲の最大値以下になるように設定することが望ましい。
【0054】
このような構成によると、2次側コンバータ200に接続されている負荷に定電圧制御で電力を供給する場合に、1次側コンバータ100〜3次側コンバータ300それぞれを独立して制御することができる。
【0055】
例えば、1次側フルブリッジ回路〜3次側フルブリッジ回路のスイッチングを停止した状態から起動して、最終的に2次側から電力を出力し、3次側から電力を出力しない制御シーケンスを実行した場合、1次側と2次側におけるデューティT1、1次側と2次側におけるスイッチング位相差T2、2次側出力電力T3、2次側出力電圧Vsは図17に示すようになり、1次側と3次側におけるデューティT4、1次側と3次側におけるスイッチング位相差T5、3次側出力電力T6、2次側出力電圧Vtは図18に示すようになる。なお、図17において、横軸に平行な2本の点線に挟まれる領域は2次側出力電圧の許容範囲であり、図18において、横軸に平行な2本の点線に挟まれる領域は3次側出力電圧の許容範囲である。
【0056】
図17及び図18から分かるように、2次側及び3次側ともに出力電圧が許容範囲の最大値を超過しない。
【0057】
一方、一例として、1次側と2次側の巻数比は、第1制御において2次側コンバータの出力が2次側の負荷の電圧許容範囲の最大値以下になるようにし、1次側と3次側の巻数比は、第1制御において3次側コンバータの出力が3次側の負荷の電圧許容範囲の最大値以上になるように設定する。その設定で上記の制御シーケンスを実行すると、1次側と2次側におけるデューティT1、1次側と2次側におけるスイッチング位相差T2、2次側出力電力T3、2次側出力電圧Vsは図19に示すようになり、1次側と3次側におけるデューティT4、1次側と3次側におけるスイッチング位相差T5、3次側出力電力T6、3次側出力電圧Vtは図20に示すようになる。なお、図19において、横軸に平行な2本の点線に挟まれる領域は2次側出力電圧の許容範囲であり、図20において、横軸に平行な2本の点線に挟まれる領域は3次側出力電圧の許容範囲である。
【0058】
図19及び図20から分かるように、第1制御ですでに3次側出力電圧Vtが許容範囲の最大値を超過してしまう。
【0059】
なお、図17図20において、第1制御のデューティが小さい領域で出力電圧が許容範囲の最小値を下回ってしまうのは、本発明の一実施形態に係るDC/DCコンバータの特性上やむを得ない。定常状態では出力電圧が許容範囲の最小値を下回らないようにし、本発明の一実施形態に係るDC/DCコンバータの起動時及び停止時には出力電圧が許容範囲の最小値より小さい領域を利用して出力電圧及び出力電力がゼロの状態を作り出すようにすればよい。
【0060】
<7.まとめ>
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0061】
例えば第1制御及び第2制御においてIGBT8a、8c、11a、及び11cをオフ状態に固定したが、IGBT8a、8c、11a、及び11cの代わりにIGBT8b、8d、11b、及び11dをオフ状態に固定してもよい。
【0062】
例えばIGBTの代わりにMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)等の他のトランジスタを用いてもよい。
【0063】
例えば第1制御においてIGBT5a及び5dがIGBT5b及び5cに対して半周期ずれた状態(位相が180度ずれた状態)でスイッチングしたが、IGBT5a及び5dが同時オンせず、IGBT5b及び5cが同時オンしない限り、どのような位相のずれ量であってもよい。また、位相のずれ量は固定でなく制御部14によって動的に制御されてもよい。
【0064】
上述した実施形態では、第1制御及び第2制御の両方を行うことができるDC/DCコンバータについて説明したが、第1制御を行うことができるが第2制御は行うことができないDC/DCコンバータであってもよい。
【0065】
上述した実施形態では、1次側コンバータ〜3次側コンバータを備えるDC/DCコンバータについて説明したが、1次側コンバータ〜3次側コンバータを備えるDC/DCコンバータを含む1次側コンバータ〜N(Nは3以上の自然数)次側コンバータを備えるDC/DCコンバータに拡張することができる。そして、上述した実施形態では、1次側コンバータを入力側コンバータとし、2次側コンバータ及び3次側コンバータを出力側コンバータとしたが、1次側コンバータ〜N次側コンバータそれぞれを入力側コンバータ又は出力側コンバータのいずれかに設定することができる。
【0066】
上述した実施形態では、第1制御及び第2制御の両方を行うことができるDC/DCコンバータについて説明したが、第1制御を行うことができるが第2制御は行うことができないDC/DCコンバータであってもよい。
【0067】
以上説明したDC/DCコンバータは、 リアクトル(6,7,10)、複数の半導体スイッチング素子(5a〜5d,8a〜8d,11a〜11d)、及び複数の前記半導体スイッチング素子それぞれに並列接続される複数のコンデンサ(4a〜4d,9a〜9d,12a〜12d)を有するk(kはN以下の各自然数、Nは3以上の自然数)次側コンバータ(100,200,300)と、1次巻線〜N次巻線(L1,L2,L3)を有するトランス1と、前記1次側コンバータ〜前記N次側コンバータのスイッチングを制御する制御部(14)と、を備え、前記k次側コンバータの前記リアクトルは前記k次巻線に接続され及び/又は前記k次巻線の漏れインダクタンスであり、前記1次側コンバータ〜前記N次側コンバータはそれぞれフルブリッジ回路を有し、前記制御部は、前記1次側コンバータ〜前記N次側コンバータそれぞれについて入力側コンバータ又は出力側コンバータのいずれかとし、第1制御を行うときに、前記入力側コンバータの第1アーム上側に位置する前記半導体スイッチング素子及び前記入力側コンバータの第2アーム下側に位置する前記半導体スイッチング素子をオン期間が一致するようにスイッチング制御し、前記入力側コンバータの第1アーム下側に位置する前記半導体スイッチング素子及び前記入力側コンバータの第2アーム上側に位置する前記半導体スイッチング素子をオン期間が一致するようにスイッチング制御し、前記出力側コンバータの第1及び第2アーム上側と第1及び第2アーム下側との一方に位置する2つの前記半導体スイッチング素子をスイッチング制御せず、前記出力側コンバータの第1及び第2アーム上側と第1及び第2アーム下側との他方に位置する2つの前記2次側半導体スイッチング素子を位相差が略180度でスイッチング制御し、第1及び第2アーム上側と第1及び第2アーム下側との他方に位置する2つの前記2次側半導体スイッチング素子の一方を、前記入力側コンバータの第1アーム上側に位置する前記半導体スイッチング素子及び前記入力側コンバータの第2アーム下側に位置する前記半導体スイッチング素子とオン期間が一致するようにスイッチング制御し、実施する各スイッチング制御のオンデューティを変化させることによって前記出力側コンバータの出力電力を調整する構成(第1の構成)とする。
【0068】
このような構成によると、1次側コンバータ〜N次側コンバータを有する構成であって、循環電流によって生じる電力損失を低減することができる。
【0069】
上記第1の構成のDC/DCコンバータにおいて、前記制御部は、前記複数の出力側コンバータ全てが第1制御で出力電力を調節可能である場合は、第1制御で制御を行い、前記出力側コンバータのいずれかが、第1制御で出力電力を調整できなくなった場合に、その第1制御で出力電力を調整できなくなった出力側コンバータに対して第2制御を行い、前記制御部は、第2制御を行うときに、前記入力側コンバータの第1アーム上側に位置する前記半導体スイッチング素子及び前記入力側コンバータの第2アーム下側に位置する前記半導体スイッチング素子をオン期間が一致するようにスイッチング制御し、前記入力側コンバータの第1アーム下側に位置する前記半導体スイッチング素子及び前記入力側コンバータの第2アーム上側に位置する前記半導体スイッチング素子をオン期間が一致するようにスイッチング制御し、前記出力側コンバータの第1及び第2アーム上側と第1及び第2アーム下側との一方に位置する2つの前記半導体スイッチング素子をスイッチング制御せず、前記出力側コンバータの第1及び第2アーム上側と第1及び第2アーム下側との他方に位置する2つの前記2次側半導体スイッチング素子を位相差が略180度でスイッチング制御し、第1及び第2アーム上側と第1及び第2アーム下側との他方に位置する2つの前記2次側半導体スイッチング素子の一方を、前記入力側コンバータの第1アーム上側に位置する前記半導体スイッチング素子及び前記入力側コンバータの第2アーム下側に位置する前記半導体スイッチング素子とオン期間の位相がずれるようにスイッチング制御し、実施する各スイッチング制御のオンデューティを変化させることによって前記出力側コンバータの出力電力を調整する構成(第2の構成)としてもよい。
【0070】
このような構成によると、第1制御での出力側コンバータの最大出力電力より大きい出力側コンバータの出力電力を得ることができる。
【0071】
上記第2の構成のDC/DCコンバータにおいて、前記制御部は、前記複数の出力側コンバータ全てが第1制御で出力電力を調節可能である場合は、第1制御で制御を行い、前記出力側コンバータのいずれかが、第1制御で出力電力を調整できなくなった場合に、その第1制御で出力電力を調整できなくなった出力側コンバータに対して第2制御を行うために、第1制御から第2制御に直接切り替え、さらに前記制御部は、前記複数の出力側コンバータのいずれかが、第1制御で出力電力を調整できないため、その第1制御で出力電力を調整できなくなった出力側コンバータに対して第2制御を行っている状態から、前記複数の出力側コンバータ全てが第1制御で出力電力を調節可能となった場合、第2制御で制御していた出力側コンバータに対して第1制御を行うために、第2制御から第1制御に直接切り替える構成(第3の構成)としてもよい。
【0072】
このような構成によると、ZVSの不成立に関わるスイッチング損失を小さくしたままで、電力伝送の方向をシームレスに切り替えることができる。
【0073】
上記第1〜第3いずれかの構成のDC/DCコンバータにおいて、前記m(mは1〜Nのいずれか)次側コンバータに接続されている負荷に定電圧制御で電力を供給する場合、前記m次側コンバータを前記出力側コンバータとし第1制御によって前記m次側コンバータから出力される電圧が、前記負荷の電圧許容範囲の最大値以下である構成(第4の構成)としてもよい。
【0074】
このような構成によると、m次側コンバータに接続されている負荷に定電圧制御で電力を供給する場合に、1次側コンバータ〜N次側コンバータそれぞれを独立して制御することができる。
【0075】
上記第1〜第4いずれかの構成のDC/DCコンバータにおいて、前記m(mは1〜Nのいずれか)次側コンバータに接続されている負荷に定電流制御で電力を供給する場合、前記m次側コンバータを前記出力側コンバータとし第1制御によって前記m次側コンバータから出力される電圧が、前記負荷に電流が流れ始める閾値電圧未満である構成(第5の構成)としてもよい。
【0076】
このような構成によると、m次側コンバータに接続されている負荷に定電流制御で電力を供給する場合に、1次側コンバータ〜N次側コンバータそれぞれを独立して制御することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 トランス
2、3、13,4a〜4d、9a〜9d、12a〜12d コンデンサ
5a〜5d、8a〜8d、11a〜11d IGBT
6、7、10 リアクトル
14 制御部
100 1次側コンバータ
200 2次側コンバータ
300 3次側コンバータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24