特許第6963488号(P6963488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963488
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】温度計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/00 20060101AFI20211028BHJP
   G01K 7/01 20060101ALI20211028BHJP
   G01K 7/25 20060101ALI20211028BHJP
   G01J 5/10 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   G01K7/00 321G
   G01K7/01 C
   G01K7/25 A
   G01J5/10 B
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-239870(P2017-239870)
(22)【出願日】2017年12月14日
(65)【公開番号】特開2019-105603(P2019-105603A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2020年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】390009667
【氏名又は名称】セイコーNPC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】河西 宏之
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健
(72)【発明者】
【氏名】藤原 和也
【審査官】 岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−188724(JP,A)
【文献】 特開2015−190834(JP,A)
【文献】 特開平04−112590(JP,A)
【文献】 特開2011−135395(JP,A)
【文献】 特開2014−139588(JP,A)
【文献】 特開平08−159874(JP,A)
【文献】 特開平11−014591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 5/00− 5/62
G01K 1/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部によって検出された前記温度を示す温度信号と、第1基準電圧との差に基づいて、前記温度信号を増幅する第1増幅器と、
前記第1増幅器によって増幅された第1増幅信号と、第2基準電圧との差に基づいて、前記第1増幅信号を増幅する第2増幅器と、
前記第2増幅器によって増幅された信号のA/D変換を行うA/D変換回路と、
を備え、
前記第1基準電圧は、所定の電圧に固定され、前記A/D変換回路がA/D変換が可能な入力電圧範囲の下限に対応する電圧であって、
前記第2基準電圧は、所定の電圧に固定され、前記A/D変換回路がA/D変換が可能な入力電圧範囲の上限に対応する電圧である、
温度計測装置。
【請求項2】
前記第1基準電圧とは、接地電位と同電位の電圧である、
請求項1に記載の温度計測装置。
【請求項3】
前記第2基準電圧とは、前記A/D変換回路に印加される基準電圧と同電位の電圧である、
請求項1又は請求項2に記載の温度計測装置。
【請求項4】
前記第2基準電圧とは、前記A/D変換回路の動作基準電圧を供給する基準電圧供給部から供給される電圧である、
請求項1又は請求項2に記載の温度計測装置。
【請求項5】
前記温度検出部とは、ダイオードであって、
前記温度信号には、ある基準温度における前記ダイオードの順方向電圧がオフセットとして含まれる、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の温度計測装置。
【請求項6】
前記温度検出部とは、サーミスタであって、
前記温度信号には、ある基準温度における前記サーミスタの両端に生じる電圧がオフセットとして含まれる、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の温度計測装置。
【請求項7】
温度の計測対象が放射する赤外線を受光する又は前記計測対象に対して赤外線を発光する受発光部と、
前記受発光部によって受光又は発光された前記赤外線の強度に基づいて、前記計測対象との赤外線エネルギー差を取得する赤外線エネルギー差取得部と、
前記A/D変換回路によって出力された値に基づいて、自装置の周囲環境の温度を取得する周囲環境温度取得部と、
前記赤外線エネルギー差取得部によって取得された前記赤外線エネルギー差と、前記周囲環境温度取得部によって取得された前記周囲環境の温度とに基づいて、前記計測対象の温度を取得する対象温度取得部と、
前記対象温度取得部によって取得された前記計測対象の温度を示す情報を出力する出力部と、
を備える請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の温度計測装置。
【請求項8】
前記受発光部とは、サーモパイルセンサである、
請求項7に記載の温度計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイオードやサーミスタ等を温度センサとして用い、周囲環境の温度変化に伴い温度センサが出力する電気信号の変化を利用し、周囲環境の温度を計測する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−158966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、温度センサの特性によっては、周囲の温度変化に応じた電気信号の取り得る電圧範囲が、当該電気信号をA/D変換するA/D変換回路の変換対象の入力電圧範囲と合致しない場合があった。この場合、A/D変換回路において変換されたデジタル値が示す温度の分解能が、このA/D変換回路が本来有する分解能よりも低くなってしまうという問題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、周囲環境の温度変化に応じた電気信号を高い分解能によってA/D変換することができる温度計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の1態様に係る、温度計測装置は、温度を検出する温度検出部と、前記温度検出部によって検出された前記温度を示す温度信号と、第1基準電圧との差に基づいて、前記温度信号を増幅する第1増幅器と、前記第1増幅器によって増幅された第1増幅信号と、第2基準電圧との差に基づいて、前記第1増幅信号を増幅する第2増幅器と、前記第2増幅器によって増幅された信号のA/D変換を行うA/D変換回路と、を備え、前記第1基準電圧は、所定の電圧に固定され、前記A/D変換回路がA/D変換が可能な入力電圧範囲の下限に対応する電圧であって、前記第2基準電圧は、所定の電圧に固定され、前記A/D変換回路がA/D変換が可能な入力電圧範囲の上限に対応する電圧である。
【0006】
前記第1基準電圧とは、接地電位と同電位の電圧であってもよい。
【0007】
前記第2基準電圧とは、前記A/D変換回路に印加される基準電圧と同電位の電圧であってもよい。
【0008】
前記第2基準電圧とは、前記A/D変換回路の動作基準電圧を供給する基準電圧供給部から供給される電圧であってもよい。
【0009】
前記温度検出部とは、ダイオードであって、前記温度信号には、ある基準温度における前記ダイオードの順方向電圧がオフセットとして含まれてもよい。
【0010】
前記温度検出部とは、サーミスタであって、前記温度信号には、ある基準温度における前記サーミスタの両端に生じる電圧がオフセットとして含まれてもよい。
【0011】
温度の計測対象が放射する赤外線を受光する又は前記計測対象に対して赤外線を発光する受発光部と、前記受発光部によって受光又は発光された前記赤外線の強度に基づいて、前記計測対象との赤外線エネルギー差を取得する赤外線エネルギー差取得部と、前記A/D変換回路によって出力された値に基づいて、自装置の周囲環境の温度を取得する周囲環境温度取得部と、前記赤外線エネルギー差取得部によって取得された前記赤外線エネルギー差と、前記周囲環境温度取得部によって取得された前記周囲環境の温度とに基づいて、前記計測対象の温度を取得する対象温度取得部と、前記対象温度取得部によって取得された前記計測対象の温度を示す情報を出力する出力部と、を備えてもよい。
【0012】
前記受発光部とは、サーモパイルセンサであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の各態様に係る温度計測装置は、周囲環境の温度変化の範囲内で、温度センサの電気信号を適切に変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の温度計測装置の一例を示す図である。
図2】本実施形態の周囲温度計測処理部の構成の一例を示す図である。
図3】本実施形態のダイオードの温度特性の一例を示す図である。
図4】本実施形態の温度信号の調整の一例を示す図である。
図5】本実施形態のA/D変換回路の基準電圧の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る温度計測装置について詳細に説明する。
【0016】
<1.温度計測装置の概要>
図1は、本実施形態の温度計測装置1の一例を示す図である。
温度計測装置1は、温度計測の対象物(図示する計測対象物P)の温度を計測する。具体的には、温度計測装置1は、温度計測装置1やセンサ等が計測対象物Pに接することなく、非接触で計測対象物Pの温度を計測する。図1に示される通り、周囲温度計測処理部10と、エネルギー差計測処理部20と、制御部30と、を備える。
【0017】
周囲温度計測処理部10は、温度計測装置1が設置される周囲環境の温度(以下、周囲環境温度)の計測を行う電気回路である。周囲温度計測処理部10は、温度検出回路11と、オフセットゲイン調整回路12と、A/D変換回路13とを備える。温度検出回路11は、例えば、温度を検出する温度検出部と、当該温度検出部を動作させるための周辺回路とを備える。温度検出回路11は、温度検出部が出力する電気信号であって、周囲環境温度を示す電気信号を出力する。以降の説明において、温度検出回路11が出力する電気信号を、単に温度信号とも記載する。
【0018】
オフセットゲイン調整回路12は、温度信号に重畳するオフセット電圧に基づいて、温度信号を調整する回路である。A/D変換回路13は、オフセットゲイン調整回路12が出力する温度信号をデジタル信号に変換する。A/D変換回路13は、変換したデジタル信号を、周囲環境温度を示す情報として制御部30に供給する。
【0019】
ここで、A/D変換回路13がアナログ信号をデジタル信号に変換することが可能なアナログ信号の電圧の範囲(以下、入力電圧範囲)と、温度信号が取り得る電圧範囲が異なる場合がある。例えば、A/D変換回路13の入力電圧範囲に対して、温度信号が取り得る電圧範囲が狭い場合がある。この場合、A/D変換回路13は、周囲環境温度の変化を高い分解能によってA/D変換することが困難である可能性がある。オフセットゲイン調整回路12は、温度信号が取り得る範囲が、A/D変換回路13の入力電圧範囲と合致するように温度信号を調整する。本実施形態では、入力電圧範囲は、接地電位から電圧VDである。電圧VDは、周囲温度計測処理部10を動作させる際に用いられる電圧である。具体的には、入力電圧範囲は、0〜4.1[V]である。
【0020】
エネルギー差計測処理部20は、サーモパイルセンサ21と、増幅回路22と、A/D変換回路23とを備え、計測対象物Pとサーモパイルセンサ21との赤外線エネルギーの差の計測を行う電気回路である。計測対象物Pがサーモパイルセンサ21の温度より高い場合、サーモパイルセンサ21は、計測対象物Pが放射する赤外線を受光する。この場合、サーモパイルセンサ21は、受光した赤外線の強度に応じた正の電圧を出力する。また、計測対象物Pがサーモパイルセンサ21の温度より低い場合、サーモパイルセンサ21は、計測対象物Pに赤外線を発光する。この場合、サーモパイルセンサ21は、発光した赤外線の強度に応じた負の電圧を出力する。つまり、サーモパイルセンサ21は、計測対象物Pと、サーモパイルセンサ21との赤外線エネルギー差を示す電気信号を生成する。増幅回路22は、サーモパイルセンサ21から出力された電気信号を所定の増幅率によって増幅する。A/D変換回路23は、増幅回路22によって増幅された電気信号をデジタル信号に変換する。A/D変換回路23は、変換したデジタル信号を、赤外線エネルギー差を示す情報として制御部30に供給する。
【0021】
制御部30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサが記憶部(不図示)に記憶されるプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。制御部30は、周囲環境温度取得部31と、赤外線エネルギー差取得部32と、対象温度取得部33と、出力部34と、をその機能部として備える。これらの構成要素のうち一部または全部(内包する記憶部を除く)は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などのハードウェアによって実現されてもよく、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
【0022】
周囲環境温度取得部31は、周囲温度計測処理部10から供給される周囲環境温度を示す情報を取得する。赤外線エネルギー差取得部32は、エネルギー差計測処理部20から供給される赤外線エネルギー差を示す情報を取得する。対象温度取得部33は、周囲環境温度取得部31によって取得された周囲環境温度と、赤外線エネルギー差取得部32によって取得された赤外線エネルギー差とに基づいて、計測対象物Pの温度(以下、対象温度)を取得する。具体的には、対象温度取得部33は、取得された周囲環境温度と、赤外線エネルギー差と、エネルギーを温度に換算する換算式とに基づいて、対象温度を取得する。当該換算式は、式(1)によって示される。
【0023】
Vo=A×Tbb^4−B×Ta^4+C…(1)
対象温度:Tbb,周囲環境温度:Ta,サーモパイルの出力電圧:Vo
A,B,C:放射率等を含む定数
【0024】
対象温度取得部33は、取得した対象温度を示す情報を出力部34に供給する。出力部34は、対象温度取得部33から取得した対象温度を示す情報を出力する。出力部34は、例えば、液晶ディスプレイパネル、あるいは、有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイパネルを含む表示装置に対象温度を出力し、表示させる。また、出力部34は、例えば、対象温度を収集する収集装置とネットワークを介して接続されており、収集装置に対して対象温度を示す情報を出力する。
【0025】
<2.周囲温度計測処理部10の構成>
図2は、本実施形態の周囲温度計測処理部10の構成の一例を示す図である。図2に示される通り、温度検出回路11は、抵抗Ruと、ダイオード部Duと、を備える。抵抗Ruと、ダイオード部Duとは、電圧VDと接地電位との間に、抵抗Ruとダイオード部Duとの順に直列に接続される。ダイオード部Duは、少なくとも1つ以上(図示する例では、3つ)のダイオード(図示するダイオードD)を備える。ダイオードDは、例えば、サーマルダイオードである。ダイオードDは、温度検出部の一例である。抵抗Ruに電圧VDが印加されると、ダイオード部Duには、抵抗Ruの抵抗値と、ダイオードDの順方向電圧による電圧降下分に応じた大きさの所定の電流が流れる。
【0026】
図3は、本実施形態のダイオードDの温度特性の一例を示す図である。図3の縦軸は、ダイオードDに流れる順方向電流の大きさを示し、横軸は、ダイオードDの順方向電圧の大きさを示す。ダイオード部Duは、周囲環境温度に応じて、バンドギャップと順方向電流の特性が変化する。具体的には、ダイオード部Duは、周囲環境温度が低い場合、バンドギャップが大きくなり、かつ順方向電流の電流量が少なくなる。また、ダイオード部Duは、周囲環境温度が高い場合、バンドギャップが小さくなり、かつ順方向電流の電流量が多くなる。したがって、ダイオード部Duに所定の電流を流し、ダイオード部Duの両端に生じる電位差の変化を計測することにより、周囲環境温度の変化を電圧の変化として計測することができる。抵抗Ruと、ダイオード部Duとの接続点には、出力端子が接続される。温度検出回路11は、抵抗Ru及びダイオード部Duの接続点と、接地電位との間に生じる電圧(つまり、ダイオード部Duの両端に生じる電位差)を、温度信号として出力端子から出力する。
【0027】
図4は、本実施形態の温度信号の調整のレンジ一例を示す図である。図4の縦軸は、電圧を示し、横軸は、温度を示す。図4には、温度信号の電圧と、温度変化との対応を示す波形(図示する波形W1)が示される。図4に示す通り、0〜80[℃]の間において、温度信号が取り得る電圧範囲(図示する電圧範囲RV1)は、1.39[V]〜1.95[V]である。ここで、温度信号には、ある基準温度におけるダイオードDの順方向電圧がオフセット電圧として重畳する。このオフセット電圧とは、例えば、周囲環境温度が0[℃]において、0.65[V]程度である。上述したように、ダイオード部Duには、3つのダイオードDが直列に接続される。このため、温度信号には、周囲環境温度が0[℃]時において、1.95[V]程度のオフセット電圧が重畳する。
【0028】
図2に戻り、オフセットゲイン調整回路12は、第1増幅器OP1と、第2増幅器OP2と、第1増幅器OP1の増幅率を決定する抵抗R1と、第1増幅器OP1の増幅率を決定する抵抗R2と、第2増幅器OP2の増幅率を決定する抵抗R3と、第2増幅器OP2の増幅率を決定する抵抗R4と、を備える。第1増幅器OP1及び第2増幅器OP2とは、例えば、オペアンプである。第1増幅器OP1の非反転入力端子と、温度検出回路11の出力端子とが接続される。抵抗R1の一端は、第1増幅器OP1の反転入力端子に接続され、他の一端は、接地される。抵抗R2の一端は、第1増幅器OP1の反転入力端子に接続され、他の一端は、第1増幅器OP1の出力端子に接続される。第2増幅器OP2の非反転入力端子と、第1増幅器OP1の出力端子とが接続される。抵抗R3の一端は、電圧VDに接続され、他の一端は、第2増幅器OP2の反転入力端子に接続される。抵抗R4の一端は、第2増幅器OP2の反転入力端子に接続され、他の一端は、第2増幅器OP2の出力端子に接続される。
【0029】
上述した構成により、第1増幅器OP1の反転入力端子は、抵抗R1を介して接地される。したがって、第1増幅器OP1の反転入力端子の電位は、入力電圧範囲の下限電位(つまり、接地電位)に基づく電位である。具体的には、第1増幅器OP1の反転入力端子の電位は、接地電位と、第1増幅器OP1の電位との和を抵抗R1と、抵抗R2とによって分圧された電位である。
第1増幅器OP1の増幅率は、増幅後の温度信号が入力電圧範囲の上限(この一例では、4.1[V])を超えない程度の増幅率となるように設定される。この一例では、第1増幅器OP1の増幅率は、抵抗R1及び抵抗R2によって2倍に設定される。これにより、第1増幅器OP1は、接地電位を基準として、温度信号と、接地電位との差分を2倍に増幅する。以降の説明において、第1増幅器OP1が温度信号を増幅した信号を第1増幅信号と記載する。ここで、接地電位とは、第1基準電位の一例である。
図4には、第1増幅信号の電圧と、温度変化との対応を示す波形(図示する波形W2)が示される。図4に示す通り、0〜80[℃]の間において、第1増幅信号が取り得る電圧範囲(図示する電圧範囲RV2)は、2.78[V]〜3.90[V]である。
なお、測定対象の温度範囲(この一例では、0〜80[℃])において、第1増幅信号が入力電圧範囲を越えなければ、第1増幅器OP1の増幅率は、2倍以外の値に設定されてもよい。
【0030】
上述した構成により、第2増幅器OP2の反転入力端子は、抵抗R3を介して電圧VDに接続される。したがって、第2増幅器OP2の反転入力端子の電位は、入力電圧範囲の上限電位(つまり、電圧VDの電位)に基づく電位である。具体的には、第2増幅器OP2の反転入力端子の電位は、電圧VDの電位と、第2増幅器OP2の電位との和を抵抗R3と、抵抗R4とによって分圧された電位である。
第2増幅器OP2の増幅率は、増幅後の温度信号が入力電圧範囲の下限(この一例では、0[V])を超えない程度の増幅率となるように設定される。この一例では、第2増幅器OP2の増幅率は、抵抗R3及び抵抗R4によって3倍に設定される。これにより、第2増幅器OP2は、電圧VDの電位を基準として、第1増幅信号との差分を3倍に増幅する。以降の説明において、第2増幅器OP2が第1増幅信号を増幅した信号を第2増幅信号と記載する。ここで、電圧VDの電位とは、第2基準電位の一例である。
図4には、第2増幅信号の電圧と、温度変化との対応を示す波形(図示する波形W3)が示される。図4に示す通り、0〜80[℃]の間において、第2増幅信号が取り得る電圧範囲(図示する電圧範囲RV3)は、0.14[V]〜3.50[V]である。オフセットゲイン調整回路12は、第2増幅信号をA/D変換回路13に出力する。A/D変換回路13は、オフセットゲイン調整回路12から入力される第2増幅信号を、デジタル信号に変換する。
なお、測定対象の温度範囲(この一例では、0〜80[℃])において、第2増幅信号が入力電圧範囲を越えなければ、第2増幅器OP2の増幅率は、3倍以外の値に設定されてもよい。
【0031】
上述したように、A/D変換回路13の入力電圧範囲は、0〜4.1[V]である。温度検出回路11が出力する温度信号が取り得る電圧範囲は、1.39[V]〜1.95[V]である。オフセットゲイン調整回路12が出力する第2増幅信号が取り得る電圧範囲は、0.14[V]〜3.50[V]である。
ここで、A/D変換回路13が0〜4.1[V]を0〜255の256段階によって示す場合、温度検出回路11が出力する温度信号が取り得る電圧範囲の1.39[V]〜1.95[V]は、86〜121の範囲によって示される。これに対し、オフセットゲイン調整回路12が出力する第2増幅信号が取り得る電圧範囲の0.14[V]〜3.50[V]は、9〜218の範囲である。したがって、オフセットゲイン調整回路12は、温度検出回路11が出力する温度信号を、A/D変換回路13の入力電圧範囲に合致する広い範囲に調整することができる。
【0032】
なお、上述では、第1増幅器OP1が接地電位を基準として、温度信号を増幅し、第2増幅器OP2が電圧VDを基準として第1増幅信号を増幅する場合について説明したが、これに限られない。例えば、第1増幅器OP1が電圧VDを基準として温度信号を増幅し、第2増幅器OP2が接地電位を基準として第1増幅信号を増幅する構成であってもよい。
【0033】
<3.実施形態のまとめ>
以上説明したように、本実施形態の温度計測装置1は、温度を検出する温度検出部(この一例では、ダイオードD)と、ダイオードDによって検出された周囲環境温度を示す温度信号と、第1基準電圧(この一例では、接地電位)との差に基づいて、温度信号を増幅する第1増幅器OP1と、第1増幅器OP1によって増幅された第1増幅信号と、第2基準電圧(この一例では、電圧VD)との差に基づいて、第1増幅信号を増幅する第2増幅器OP2と、第2増幅器OP2によって増幅された第2増幅信号のA/D変換を行うA/D変換回路13と、を備える。また、接地電位は、A/D変換回路13がA/D変換が可能な入力電圧範囲の下限に対応する電圧であって、電圧VDは、A/D変換回路13がA/D変換が可能な入力電圧範囲の上限に対応する電圧である。
【0034】
上述したように、温度信号には、ダイオードDのオン電圧がオフセット電圧として重畳される。このため、温度信号を入力電圧範囲に合致させるため、単に増幅した場合(例えば、第1増幅信号の場合)、オフセット電圧も増幅されてしまう。この場合、温度信号が取り得る電圧範囲は、入力電圧範囲のうち、上限値(この一例では、4.1[V])に近い値に偏ってしまう。したがって、温度信号を単に増幅した場合、入力電圧範囲のうち、オフセット電圧以下の範囲を用いることができない。これに対し、本実施形態の温度計測装置1は、温度信号を増幅して温度信号(第1増幅信号)が取り得る電圧の範囲を広げた後、電圧VDを基準に更に増幅する。これにより、本実施形態の温度計測装置1は、入力電圧範囲のうち、温度信号を単に増幅した場合と比較して、温度信号(第2増幅信号)が取り得る電圧の範囲を更に広げることができる。したがって、本実施形態の温度計測装置1によれば、周囲環境温度の変化を高い分解能によってA/D変換することができる。
【0035】
また、本実施形態の温度計測装置1において、接地電位とは、A/D変換回路13に印加される基準電圧と同電位の電圧である。また、電圧VDとは、A/D変換回路13に印加される基準電圧と同電位の電圧である、これにより、本実施形態の温度計測装置1は、A/D変換回路13の入力電圧範囲を設定するために別途基準電位を設けることなく、簡便な回路構成によって、周囲環境温度の変化を高い分解能によってA/D変換することができる。
【0036】
また、本実施形態の温度計測装置1は、温度の計測対象が放射する赤外線を受光する又は前記計測対象に対して赤外線を発光する受発光部(この一例では、サーモパイルセンサ21)と、サーモパイルセンサ21によって受光又は発光された赤外線の強度に基づいて、計測対象物Pとの赤外線エネルギー差を取得する赤外線エネルギー差取得部32と、A/D変換回路13によって出力された値に基づいて、温度計測装置1の周囲環境温度を取得する周囲環境温度取得部31と、赤外線エネルギー差取得部32が取得した赤外線エネルギー差と、周囲環境温度取得部31によって取得された周囲環境温度とに基づいて、計測対象物Pの温度を取得する赤外線エネルギー差取得部32と、赤外線エネルギー差取得部32によって取得された計測対象物Pの温度を示す情報を計測対象物Pの放射温度を示す情報として出力する出力部34と、を備える。
【0037】
ここで、サーモパイルセンサ21は、計測対象物Pとの赤外線エネルギー差を計測するセンサである。したがって、計測対象物Pの対象温度を把握したい場合、赤外線エネルギー差と、周囲環境温度と、エネルギーを温度に換算する換算式とに基づいて、求める必要がある。本実施形態の温度計測装置1によれば、周囲環境温度と、赤外線エネルギー差とに基づいて、計測対象物Pの対象温度を取得することができる。
【0038】
<4.温度検出部がサーミスタである場合>
なお、上述では、温度検出部がダイオードDである場合について説明したが、これ限られない。温度検出部は、例えば、ダイオードDに代えて、サーミスタであってもよい。サーミスタは、周囲環境温度に応じて、その抵抗値が変化する素子である。したがって、サーミスタに所定の電流を流し、サーミスタの両端に生じる電位差の変化を計測することにより、周囲環境温度の変化を電圧の変化として計測することができる。また、温度信号には、所定の周囲環境温度(例えば、0[℃])におけるサーミスタの抵抗値に応じて、オフセット電圧が生じる。本実施形態の周囲温度計測処理部10によれば、サーミスタのオフセット電圧に応じて第1増幅信号及び第2増幅信号の増幅率を設定し、温度信号(第2増幅信号)が取り得る電圧の範囲を、高電圧の範囲から定電圧の範囲まで更に広げることができる。したがって、本実施形態の温度計測装置1によれば、周囲環境温度の変化を高い分解能によってA/D変換することができる。
【0039】
<5.A/D変換回路13に動作基準電圧を供給する場合>
また、上述では、A/D変換回路13の入力電圧範囲が、接地電位から電圧VDである。場合について説明したが、これに限られない。A/D変換回路13の入力電圧範囲の基準となる電圧は、別途設けられる電圧源から供給される構成であってもよい。
図5は、本実施形態のA/D変換回路13の基準電圧の一例を示す図である。
図5に示される通り、この一例において、周囲温度計測処理部10は、基準電圧を生成する電圧源(図示する電圧源PW)を備える。電圧源PWとは、例えば、低損失(Low Drop-Out)型リニアレギュレータである。電圧源PWとは、基準電圧供給部の一例である。電圧源PWは、A/D変換回路13の動作基準電圧を供給する。
【0040】
電圧源PWの出力端子は、電圧VDに代えて、抵抗R3の一端に接続される。また、電圧源PWの出力端子は、A/D変換回路13の入力電圧範囲が入力される端子(図示するAD_REFH(エーディーリファレンス))に接続される。ここで、電圧VDは、周囲温度計測処理部10を駆動する電圧であるため、A/D変換回路13以外の他の回路の動作によっては、電圧が安定しない場合がある。周囲温度計測処理部10が電圧源PWを備えることにより、A/D変換回路13は、安定した動作基準電圧によって、適切に入力電圧範囲を保ち、第2増幅信号(温度信号)をデジタル信号に変換することができる。また、第2増幅器OP2は、電圧源PWが生成する動作基準電圧に基づいて、第1増幅信号を第2増幅信号に増幅する。したがって、本実施形態の温度計測装置1は、A/D変換回路13の入力電圧範囲の上限値を電圧源PWが生成する動作基準電圧に合致させることにより、より安定に動作する回路において、周囲環境温度の変化を計測することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。上述した各実施形態に記載の構成を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…温度計測装置、10…周囲温度計測処理部、11…温度検出回路、12…オフセットゲイン調整回路、13、23…A/D変換回路、20…エネルギー差計測処理部、21…サーモパイルセンサ、22…増幅回路、30…制御部、31…周囲環境温度取得部、32…赤外線エネルギー差取得部、33…対象温度取得部、34…出力部、D…ダイオード、Du…ダイオード部、OP1…第1増幅器、OP2…第2増幅器、P…計測対象物、PW…電圧源、R1、R2、R3、R4、Ru…抵抗
図1
図2
図3
図4
図5