特許第6963491号(P6963491)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963491
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】コイル状線材の処理装置
(51)【国際特許分類】
   C23G 3/00 20060101AFI20211028BHJP
   B21C 47/26 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   C23G3/00 Z
   B21C47/26 A
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-241359(P2017-241359)
(22)【出願日】2017年12月18日
(65)【公開番号】特開2019-108574(P2019-108574A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2020年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142883
【氏名又は名称】株式会社五十鈴製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100131406
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 正寿
(72)【発明者】
【氏名】酒井 教行
(72)【発明者】
【氏名】松永 高明
【審査官】 ▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−062184(JP,A)
【文献】 特開昭55−131186(JP,A)
【文献】 特開昭60−164035(JP,A)
【文献】 特開昭54−114438(JP,A)
【文献】 特公昭49−048386(JP,B1)
【文献】 特開昭59−023886(JP,A)
【文献】 特開2012−255181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23G 3/00
B21C 47/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル状線材を吊り下げる吊下げ部が長尺状の支持梁の長手方向に沿うよう該支持梁に設けられたフックに、前記コイル状線材を吊り下げた状態で、該コイル状線材を処理液に浸漬することによって該コイル状線材に処理を施すコイル状線材の処理装置であって、
床面から鉛直方向に延在するよう構成された一対の第1支柱および一対の第2支柱と、
前記一対の第1支柱および前記一対の第2支柱に設置された一対の第1緩衝部材および一対の第2緩衝部材と、
前記一対の第1緩衝部材を介して前記一対の第1支柱に支持された長尺状の第1横梁と、
前記一対の第2緩衝部材を介して前記一対の第2支柱に支持された長尺状の第2横梁と、
前記支持梁を前記第1および第2横梁に直交した状態で該第1および第2横梁上に載置して固定可能なように、前記第1および第2横梁の上面であって該第1および第2横梁の長手方向の中央部に設けられた第1および第2支持梁載置固定部と、
前記第1および第2横梁の少なくとも一方に対して、該第1および第2横梁の長手方向に沿う方向に交差する方向に周期的に力を作用させて前記第1および第2横梁に振動を付与するよう構成された振動付与機構と、
を備え
前記振動は、前記第1および第2横梁を介して前記フックを、前記鉛直方向に振動させる成分と、前記第1および第2横梁の延在方向に沿う方向に振動させる成分と、を有しており、
前記振動付与機構は、振動モータと、該振動モータを前記第1および第2横梁の少なくとも一方に取り付け可能なブラケットと、を有しており、
前記ブラケットは、前記第1および第2横梁の長手方向の中央部に関して該第1および第2横梁の長手方向のいずれか一方の端部寄りの位置に前記振動モータを取り付けるよう構成されている
コイル状線材の処理装置。
【請求項2】
前記支持梁の長手方向の両端部には、前記第1および第2支柱の延在方向と前記第1および第2横梁の長手方向との両方向に対して垂直な方向に沿う方向の一方側から見た場合、下方に向かうにしたがい互いに近づく方向に傾斜された一対の傾斜側面を有する第1および第2係合部が設けられており、
前記第1および第2支持梁載置固定部は、前記第1および第2係合部が係合可能な第1および第2凹部を有しており、
該第1および第2凹部は、前記一対の傾斜側面と面接触可能な一対の傾斜当接面を有しており、
前記一対の傾斜側面および前記一対の傾斜当接面は、前記鉛直方向に直交する直線に対する該一対の傾斜側面および該一対の傾斜当接面の傾斜角度が、前記第1および第2横梁に作用する前記力の作用角度よりも小さくなるよう設定されている
請求項1に記載のコイル状線材の処理装置。
【請求項3】
コイル状線材を吊り下げる吊下げ部が長尺状の支持梁の長手方向に沿うよう該支持梁に設けられたフックに、前記コイル状線材を吊り下げた状態で、該コイル状線材を処理液に浸漬することによって該コイル状線材に処理を施すコイル状線材の処理装置であって、
床面から鉛直方向に延在するよう構成された一対の第1支柱および一対の第2支柱と、
前記一対の第1支柱および前記一対の第2支柱に設置された一対の第1緩衝部材および一対の第2緩衝部材と、
前記一対の第1緩衝部材を介して前記一対の第1支柱に支持された長尺状の第1横梁と、
前記一対の第2緩衝部材を介して前記一対の第2支柱に支持された長尺状の第2横梁と、
前記支持梁を前記第1および第2横梁に直交した状態で該第1および第2横梁上に載置して固定可能なように、前記第1および第2横梁の上面であって該第1および第2横梁の長手方向の中央部に設けられた第1および第2支持梁載置固定部と、
前記第1および第2横梁の少なくとも一方に対して、該第1および第2横梁の長手方向に沿う方向に交差する方向に周期的に力を作用させて前記第1および第2横梁に振動を付与するよう構成された振動付与機構と、
を備え、
前記振動は、前記第1および第2横梁を介して前記フックを、前記鉛直方向に振動させる成分と、前記第1および第2横梁の延在方向に沿う方向に振動させる成分と、を有しており、
前記支持梁の長手方向の両端部には、前記第1および第2支柱の延在方向と前記第1および第2横梁の長手方向との両方向に対して垂直な方向に沿う方向の一方側から見た場合、下方に向かうにしたがい互いに近づく方向に傾斜された一対の傾斜側面を有する第1および第2係合部が設けられており、
前記第1および第2支持梁載置固定部は、前記第1および第2係合部が係合可能な第1および第2凹部を有しており、
該第1および第2凹部は、前記一対の傾斜側面と面接触可能な一対の傾斜当接面を有しており、
前記一対の傾斜側面および前記一対の傾斜当接面は、前記鉛直方向に直交する直線に対する該一対の傾斜側面および該一対の傾斜当接面の傾斜角度が、前記第1および第2横梁に作用する前記力の作用角度よりも小さくなるよう設定されている
コイル状線材の処理装置。
【請求項4】
前記振動付与機構は、振動モータと、該振動モータを前記第1および第2横梁の少なくとも一方に取り付け可能なブラケットと、を有しており、
前記ブラケットは、前記第1および第2横梁の長手方向の中央部に関して該第1および第2横梁の長手方向のいずれか一方の端部寄りの位置に前記振動モータを取り付けるよう構成されている
請求項に記載のコイル状線材の処理装置。
【請求項5】
前記ブラケットは、前記第1および第2横梁の長手方向の中央部に近接した位置に前記振動モータを取り付けるよう構成されている
請求項1、2または4に記載のコイル状線材の処理装置。
【請求項6】
前記振動モータは、回転軸と、該回転軸に一体回転可能に固定されたアンバランスウェイトと、を有しており、
前記ブラケットは、前記回転軸が前記一対の第1および第2支柱の延在方向と前記第1および第2横梁の長手方向との両方向に対して垂直な方向に延在すると共に、前記回転軸の回転に伴って発生する前記アンバランスウェイトの遠心力が前記第1および第2横梁の長手方向に沿う方向に交差する方向に発生するよう前記振動モータを前記第1および第2横梁の少なくとも一方に取り付ける構成とされている
請求項1、2、4または5に記載のコイル状線材の処理装置。
【請求項7】
前記振動モータは、第1振動モータと第2振動モータとから構成されており、
前記ブラケットは、第1振動モータを前記第1横梁に取り付けるための第1ブラケットと、前記第2振動モータを前記第2横梁に取り付けるための第2ブラケットと、から構成されており、
前記第1および第2ブラケットは、前記第1および第2支柱の延在方向と前記第1および第2横梁の長手方向との両方向に対して垂直な方向に沿う方向の一方側から見た場合、前記第1および第2横梁の長手方向の中央部に関して該第1および第2横梁の長手方向の同じ側の端部寄りの位置に前記第1および第2振動モータを取り付けるよう構成されている
請求項1、2、4、5または6項に記載のコイル状線材の処理装置。
【請求項8】
前記第1および第2横梁の長手方向の中央部の位置において、前記第1および第2横梁の少なくとも一方に対し該第1および第2横梁の延在方向に直交する方向の力を作用させて前記第1および第2横梁に前記鉛直方向の振動を付与するよう構成された第2振動付与機構をさらに備える
請求項1ないしのいずれか1項に記載のコイル状線材の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル状線材を吊り下げる吊下げ部が長尺状の支持梁の長手方向に沿うよう当該支持梁に設けられたフックに、コイル状線材を吊り下げた状態で、当該コイル状線材を処理液に浸漬することによって当該コイル状線材に処理を施すコイル状線材の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2001−9519号公報(特許文献1)には、コイル状線材を吊り下げ可能に構成されたフックを有する搬送部と、処理液としての酸液が貯留された処理槽と、当該処理槽に並設された作業槽と、回転可能な一対の回転軸を作業槽に対して進退可能に構成された回転装置と、を備えるコイル状線材の処理装置が記載されている。
【0003】
当該装置では、処理槽でコイル状線材の洗浄を行った後、フック掛けの状態のままコイル状線材を作業槽内まで搬送すると共に、フック掛けされたコイル状線材を、作業槽に向けて移動させた回転装置の一対の回転軸に掛け替えを行い、当該一対の回転軸を回転させることによってコイル状線材を円周方向に所定回転角度回転させた後、再度フック掛けの状態のままコイル状線材を処理槽に搬送して酸洗処理を行っている。即ち、当該装置では、フックとコイル状線材との接触面の位置ずらしを行いながらコイル状線材の洗浄を行うことによって、フックとコイル状線材との接触面における酸洗不良の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−9519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した公報に記載のコイル状線材の洗浄装置では、コイル状線材を所定角度回転させるのみの目的で、作業スペースとして専用の作業槽を別途確保する必要があるのみならず大掛かりな回転装置を設置する必要があり、合理的とは言えず、この点において、なお改良の余地がある。
【0006】
本考案は、上記に鑑みてなされたものであり、コイル状線材の処理装置において、コイル状線材を円周方向に回転させる合理的な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコイル状線材の処理装置は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明に係るコイル状線材の処理装置の好ましい形態によれば、コイル状線材を吊り下げる吊下げ部が長尺状の支持梁の長手方向に沿うよう当該支持梁に設けられたフックに、コイル状線材を吊り下げた状態で、当該コイル状線材を処理液に浸漬することによって当該コイル状線材に処理を施すコイル状線材の処理装置が構成される。当該コイル状線材の処理装置は、床面から鉛直方向に延在するように構成された一対の第1支柱および一対の第2支柱と、当該一対の第1支柱および一対の第2支柱に設置された一対の第1緩衝部材および一対の第2緩衝部材と、当該一対の第1緩衝部材を介して一対の第1支柱に支持された長尺状の第1横梁と、一対の第2緩衝部材を介して一対の第2支柱に支持された長尺状の第2横梁と、第1および第2支持梁載置固定部と、振動付与機構と、を備えている。第1および第2支持梁載置固定部は、支持梁を第1および第2横梁に直交した状態で当該第1および第2横梁上に載置して固定可能なように、第1および第2横梁の上面であって当該第1および第2横梁の長手方向の中央部に設けられている。振動付与機構は、第1および第2横梁の少なくとも一方に対して、当該第1および第2横梁の長手方向に沿う方向に交差する方向に周期的に力を作用させて第1および第2横梁に振動を付与するように構成されている。また、振動付与機構は、振動モータと、当該振動モータを第1および第2横梁の少なくとも一方に取り付け可能なブラケットと、を有している。ブラケットは、第1および第2横梁の長手方向の中央部に関して当該第1および第2横梁の長手方向のいずれか一方の端部寄りの位置に振動モータを取り付けるように構成されている。そして、振動は、第1および第2横梁を介してフックを、鉛直方向に振動させる成分と、第1および第2横梁の延在方向に沿う方向に振動させる成分と、を有している。
【0009】
本発明によれば、第1および第2横梁の少なくとも一方に対して、当該第1および第2横梁の長手方向に沿う方向に交差する方向に振動を付与することによって、当該第1および第2横梁上に載置された支持梁を介してコイル状線材を吊り下げたフックを同方向に振動させることができる。当該振動は、フックを鉛直方向に振動させる成分と水平方向(第1および第2横梁の長手方向に沿う方向)に振動させる成分とを有しているため、当該振動がフックに作用することによって、コイル状線材を円周方向に回転させることができる。このように、本発明によれば、コイル状線材を円周方向に回転させるための作業スペースや当該コイル状線材を回転させるための回転装置の移動スペースなどを確保する必要がなく、第1および第2横梁の少なくとも一方に振動を付与する振動付与機構を設けるという極めて簡易な構成でフックとコイル状線材との接触面における酸洗不良の発生を防止することができる。また、第1および第2横梁に対して振動モータからの振動に加えて、振動の入力方向に向かう方向の回転モーメントを作用させることができるため、コイル状線材の円周方向への回転をより促進し得る。
【0010】
本発明に係るコイル状線材の処理装置の更なる形態によれば、支持梁の長手方向の両端部には、第1および第2支柱の延在方向と第1および第2横梁の長手方向との両方向に対して垂直な方向に沿う方向の一方側から見た場合、下方に向かうにしたがい互いに近づく方向に傾斜された一対の傾斜側面を有する第1および第2係合部が設けられている。第1および第2支持梁載置固定部は、第1および第2係合部が係合可能な第1および第2凹部を有している。また、当該第1および第2凹部は、一対の傾斜側面と面接触可能な一対の傾斜当接面を有している。そして、一対の傾斜側面および一対の傾斜当接面は、鉛直方向に直交する直線に対する当該一対の傾斜側面および当該一対の傾斜当接面の傾斜角度が、第1および第2横梁に作用する力の作用角度よりも小さくなるように設定されている。
【0011】
ここで、本発明における「鉛直方向に直交する直線に対する当該一対の傾斜側面および当該一対の傾斜当接面の傾斜角度」とは、鉛直方向に直交する直線に対する一対の傾斜側面および一対の傾斜当接面の傾斜角度のうち小さい方の角度として規定される。また、本発明における「力の作用角度」とは、鉛直方向に直交する直線に対する力の交差角度がこれに該当し、鉛直方向に直交する直線と力の作用方向とが成す角度のうち小さい方の角度として規定される。
【0012】
本形態によれば、支持梁の第1および第2係合を第1および第2横梁の第1および第2凹部に係合させるのみで支持梁を第1および第2横梁に固定することができるため、支持梁を第1および第2横梁に固定するためだけの専用の装置を必要とせず、装置の簡素化を図ることができる。また、一対の傾斜側面および一対の傾斜当接面の鉛直方向に対する傾斜角度が、第1および第2横梁に作用する力の作用角度よりも小さくなるように設定されているため、第1および第2横梁に入力された振動によって支持梁の第1および第2係合部が第1および第2載置固定部の第1および第2凹部から抜け出ることを確実に防止できる。
【0013】
本発明に係るコイル状線材の処理装置の好ましい形態によれば、コイル状線材を吊り下げる吊下げ部が長尺状の支持梁の長手方向に沿うよう当該支持梁に設けられたフックに、コイル状線材を吊り下げた状態で、当該コイル状線材を処理液に浸漬することによって当該コイル状線材に処理を施すコイル状線材の処理装置が構成される。当該コイル状線材の処理装置は、床面から鉛直方向に延在するように構成された一対の第1支柱および一対の第2支柱と、当該一対の第1支柱および一対の第2支柱に設置された一対の第1緩衝部材および一対の第2緩衝部材と、当該一対の第1緩衝部材を介して一対の第1支柱に支持された長尺状の第1横梁と、一対の第2緩衝部材を介して一対の第2支柱に支持された長尺状の第2横梁と、第1および第2支持梁載置固定部と、振動付与機構と、を備えている。第1および第2支持梁載置固定部は、支持梁を第1および第2横梁に直交した状態で当該第1および第2横梁上に載置して固定可能なように、第1および第2横梁の上面であって当該第1および第2横梁の長手方向の中央部に設けられている。振動付与機構は、第1および第2横梁の少なくとも一方に対して、当該第1および第2横梁の長手方向に沿う方向に交差する方向に周期的に力を作用させて第1および第2横梁に振動を付与するように構成されている。当該振動は、第1および第2横梁を介してフックを、鉛直方向に振動させる成分と、第1および第2横梁の延在方向に沿う方向に振動させる成分と、を有している。また、支持梁の長手方向の両端部には、第1および第2支柱の延在方向と第1および第2横梁の長手方向との両方向に対して垂直な方向に沿う方向の一方側から見た場合、下方に向かうにしたがい互いに近づく方向に傾斜された一対の傾斜側面を有する第1および第2係合部が設けられている。第1および第2支持梁載置固定部は、第1および第2係合部が係合可能な第1および第2凹部を有している。さらに、当該第1および第2凹部は、一対の傾斜側面と面接触可能な一対の傾斜当接面を有している。そして、一対の傾斜側面および一対の傾斜当接面は、鉛直方向に直交する直線に対する当該一対の傾斜側面および当該一対の傾斜当接面の傾斜角度が、第1および第2横梁に作用する力の作用角度よりも小さくなるように設定されている。ここで、本発明における「鉛直方向に直交する直線に対する当該一対の傾斜側面および当該一対の傾斜当接面の傾斜角度」とは、鉛直方向に直交する直線に対する一対の傾斜側面および一対の傾斜当接面の傾斜角度のうち小さい方の角度として規定される。また、本発明における「力の作用角度」とは、鉛直方向に直交する直線に対する力の交差角度がこれに該当し、鉛直方向に直交する直線と力の作用方向とが成す角度のうち小さい方の角度として規定される。
【0014】
本発明によれば、第1および第2横梁の少なくとも一方に対して、当該第1および第2横梁の長手方向に沿う方向に交差する方向に振動を付与することによって、当該第1および第2横梁上に載置された支持梁を介してコイル状線材を吊り下げたフックを同方向に振動させることができる。当該振動は、フックを鉛直方向に振動させる成分と水平方向(第1および第2横梁の長手方向に沿う方向)に振動させる成分とを有しているため、当該振動がフックに作用することによって、コイル状線材を円周方向に回転させることができる。このように、本発明によれば、コイル状線材を円周方向に回転させるための作業スペースや当該コイル状線材を回転させるための回転装置の移動スペースなどを確保する必要がなく、第1および第2横梁の少なくとも一方に振動を付与する振動付与機構を設けるという極めて簡易な構成でフックとコイル状線材との接触面における酸洗不良の発生を防止することができる。また、支持梁の第1および第2係合を第1および第2横梁の第1および第2凹部に係合させるのみで支持梁を第1および第2横梁に固定することができるため、支持梁を第1および第2横梁に固定するためだけの専用の装置を必要とせず、装置の簡素化を図ることができる。さらに、一対の傾斜側面および一対の傾斜当接面の鉛直方向に対する傾斜角度が、第1および第2横梁に作用する力の作用角度よりも小さくなるように設定されているため、第1および第2横梁に入力された振動によって支持梁の第1および第2係合部が第1および第2載置固定部の第1および第2凹部から抜け出ることを確実に防止できる。
【0015】
本発明に係るコイル状線材の処理装置の更なる形態によれば、振動付与機構は、振動モータと、当該振動モータを第1および第2横梁の少なくとも一方に取り付け可能なブラケットと、を有している。そして、ブラケットは、第1および第2横梁の長手方向の中央部に関して当該第1および第2横梁の長手方向のいずれか一方の端部寄りの位置に振動モータを取り付けるように構成されている。
【0016】
本形態によれば、第1および第2横梁に対して振動モータからの振動に加えて、振動の入力方向に向かう方向の回転モーメントを作用させることができるため、コイル状線材の円周方向への回転をより促進し得る。
【0017】
本発明に係るコイル状線材の処理装置の更なる形態によれば、ブラケットは、第1および第2横梁の長手方向の中央部に近接した位置に振動モータを取り付けるように構成されている。ここで、本発明における「中央部に近接した位置」とは、第1および第2横梁の長手方向の中央部と当該第1および第2横梁の長手方向の端部との中央位置よりも中央部寄りの位置として規定される。
【0018】
本形態によれば、振動モータからの振動を第1および第2横梁の長手方向の中央部に近接した位置に入力することができるため、入力される振動をより確実にフックに伝達することができる。これにより、コイル状線材をより確実に円周方向へ回転させることができる。
【0019】
本発明に係るコイル状線材の処理装置の更なる形態によれば、振動モータは、回転軸と、当該回転軸に一体回転可能に固定されたアンバランスウェイトと、を有している。そして、ブラケットは、回転軸が一対の第1および第2支柱の延在方向と第1および第2横梁の長手方向との両方向に対して垂直な方向に延在すると共に、回転軸の回転に伴って発生するアンバランスウェイトの遠心力が第1および第2横梁の長手方向に沿う方向に交差する方向に発生するように振動モータを第1および第2横梁の少なくとも一方に取り付ける構成とされている。
【0020】
本形態によれば、アンバランスウェイトのアンバランス方向を調整するのみで第1および第2横梁に対する振動の入力方向を変更することができるため、振動の入力方向を所望の方向に簡易に設定することができる。
【0021】
本発明に係るコイル状線材の処理装置の更なる形態によれば、振動モータは、第1振動モータと第2振動モータとから構成されている。また、ブラケットは、第1振動モータを第1横梁に取り付けるための第1ブラケットと、第2振動モータを第2横梁に取り付けるための第2ブラケットと、から構成されている。そして、第1および第2ブラケットは、第1および第2支柱の延在方向と第1および第2横梁の長手方向との両方向に対して垂直な方向に沿う方向の一方側から見た場合、第1および第2横梁の長手方向の中央部に関して当該第1および第2横梁の長手方向の同じ側の端部寄りの位置に第1および第2振動モータを取り付けるように構成されている。
【0022】
本形態によれば、第1および第2横梁のそれぞれに同態様の振動を付与することができるため、コイル状線材を円周方向へ回転させるための適正な振動をフックに安定して付与することができる。これにより、コイル状線材を安定かつより確実に円周方向へ回転させることができる。
【0023】
本発明に係るコイル状線材の処理装置の更なる形態によれば、第1および第2横梁の長手方向の中央部の位置において、第1および第2横梁の少なくとも一方に対し当該第1および第2横梁の延在方向に直交する方向の力を作用させて第1および第2横梁に鉛直方向の振動を付与するように構成された第2振動付与機構をさらに備えている。
【0024】
本形態によれば、第1および第2横梁に入力される鉛直方向の振動によって、支持梁およびフックを介してコイル状線材を鉛直方向に振動させる構成であるため、コイル間の接触面に処理液を侵入させることができ、コイル状線材の処理能力の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、コイル状線材の処理装置において、コイル状線材を円周方向に回転させる合理的な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態に係るコイル状線材の処理装置1を第1および第2横梁10,12の延在方向に沿う方向の一方側から見た側面図である。
図2】本発明の実施の形態に係るコイル状線材の処理装置1を上方から見た平面図である。
図3】本発明の実施の形態に係るコイル状線材の処理装置1を架台80の延在方向に沿う方向の一方側から見た正面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るコイル状線材の処理装置1に架台80を載置する際の様子を示す説明図である。
図5】架台80の被係合部84,84が第1および第2横梁10,12の架台載置部14,16の係合部14b,16bに係合される際の様子を示す説明図である。
図6】フック82に吊下げられた状態のコイル状線材92が酸液72内において振動される際の様子を示す説明図である。
図7】振動モータM1の外観を示す外観図である。
図8】ブラケットBRの外観を示す外観図である。
図9】第1振動機構VM1を第1および第2横梁10,12に傾斜させて取り付ける様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0028】
本発明の実施の形態に係るコイル状線材の処理装置1は、長尺状の架台80に設けられたフック82にコイル状線材92を吊り下げた状態で、当該コイル状線材92を酸液処理槽70内の酸液72に浸漬することによってコイル状線材92に酸洗処理を施す装置として構成されており、図1ないし図3に示すように、床面Fから鉛直方向に延在するように設置された一対の第1支柱2a,2bと、床面Fから鉛直方向に延在するように設置された一対の第2支柱4a,4bと、一対の第1支柱2a,2bの上端に設置されたエアバネ6a,6bと、一対の第2支柱4a,4bの上端に設置されたエアバネ8a,8bと、エアバネ6a,6b介して一対の第1支柱2a,2bに掛け渡し状に設置された第1横梁10と、エアバネ8a,8b介して一対の第2支柱4a,4bに掛け渡し状に設置された第2横梁12と、架台80を載置可能なように第1横梁10に設置された架台載置部14と、架台80を載置可能なように第2横梁12に設置された架台載置部16と、第1横梁10および第2横梁12に取り付けられた第1振動機構VM1および第2振動機構VM2(図3参照)と、を備えている。架台80は、本発明における「支持梁」に対応し、酸液72は、本発明における「処理液」に対応する実施構成の一例である。
【0029】
なお、本実施の形態では、説明の便宜上、コイル状線材の処理装置1の長手方向(図1の左右方向)における一対の第1支柱2a,2bが配置された側(図1の左側)を「前側」ないし「前方」として規定し、コイル状線材の処理装置1の長手方向(図1の左右方向)における一対の第2支柱4a,4bが配置された側(図1の右側)を「後側」ないし「後方」として規定する。また、コイル状線材の処理装置1の第1支柱2aおよび第2支柱4aが配置された側(図2の下側)を「左側」ないし「左方」として規定し、コイル状線材の処理装置1の第1支柱2bおよび第2支柱4bが配置された側(図2のうえ側)をを「右側」ないし「右方」として規定する。
【0030】
フック82は、図1に示すように、架台80の下面に固定される固定部82aと、当該固定部82aに直交状に一体に接続された吊下げ部82bと、を有する略L字状に構成されている。フック82は、吊下げ部82bの延在方向(図1の左右方向)が架台80の延在方向(図1の左右方向)と一致するように架台80の下面に固定されている。フック82は、図2に示すように、架台80を上方から見た場合、架台80に隠れて視認することができない程度の厚み(図2の上下方向の寸法)に構成されている。フック82の吊下げ部82bの延在方向(前側、図1の左側)の先端部は、上方(図1の上方)に向かって折り曲げられており、当該吊下げ部82bに吊下げられたコイル状線材92が吊下げ部82bの先端側から抜け落ちないように構成されている。
【0031】
一対の第1支柱2a,2bおよび一対の第2支柱4a,4bは、図1および図3に示すように、上側連結梁22a,24aおよび下側連結梁22b,24bによって連結されている。また、第1支柱2aおよび第2支柱4aは、図1ないし図3に示すように、連結プレート26aによって連結されていると共に、第1支柱2bおよび第2支柱4bは、図1ないし図3に示すように、連結プレート26bによって連結されている。下側連結梁22b,24bと連結プレート26a,26bとは、図1および図3に示すように、床面Fから同じ高さ位置に設けられている。なお、図2に示すように、一対の第1支柱2a,2bおよび一対の第2支柱4a,4bで囲まれた内側の領域に酸液処理槽70が設置される。
【0032】
第1横梁10および第2横梁12の長手方向の両端部は、図1ないし図3に示すように、連結プレート28a,28bによって連結されている。第1横梁10および第2横梁12は、図3に示すように、一対の第1支柱2a,2bおよび一対の第2支柱4a,4bに対して直交する、即ち、水平方向(図3の左右方向)に延在するようにエアバネ6a,6b,8a,8bを介して一対の第1支柱2a,2bおよび一対の第2支柱4a,4bに取り付けられている。エアバネ6a,6bは、本発明における「第1緩衝部材」に対応し、エアバネ8a,8bは、本発明における「第2緩衝部材」に対応する実施構成の一例である。
【0033】
架台載置部14,16は、図2および図3に示すように、第1および第2横梁10,12の上面(図3の上側の面)であって、第1および第2横梁10,12の長手方向(図3の左右方向)のほぼ中央部に取り付け固定されている。架台載置部14,16は、図5に示すように、第1および第2横梁10,12の上面(図5の上側の面)に締結されるフランジ部14a,16aと、架台80が係合される係合部14b,16bと、から構成されている。架台載置部14は、本発明における「第1支持梁載置部」に対応し、架台載置部16は、本発明における「第2支持梁載置部」に対応する実施構成の一例である。
【0034】
係合部14b,16bは、図5に示すように、上面が開口された凹溝15が形成されており、下面にフランジ部14a,16aが一体に接続されるように構成されている。係合部14b,16bは、凹溝15の延在方向が第1および第2横梁10,12の長手方向と、一対の第1および第2支柱2a,2b,4a,4bの延在方向と、の両方向に直交する方向を向くように第1および第2横梁10,12の上面に取り付けられる。係合部14bの凹溝15は、本発明における「第1凹部」に対応し、係合部16bの凹溝15は、本発明における「第2凹部」に対応する実施構成の一例である。
【0035】
なお、凹溝15は、延在方向(図2の左右方向)の両端が開口されている。また、凹溝15は、図5に示すように、延在方向に沿う両側面15a,15bが傾斜面として構成されている。より具体的には、凹溝15は、コイル状線材の処理装置1を一対の第1および第2支柱2a,2b,4a,4bの延在方向(鉛直方向、図5の上下方向)と、第1および第2横梁10,12の延在方向(図5の左右方向)と、の両方向に直交する方向(図5の紙面に垂直な方向)の一方側から見た場合に、両側面15a,15bが凹溝15の開口側からフランジ部14a,16a側に向かって(上方から下方に向かって、図5の上側から下側に向かって)互いに近づく方向に傾斜するように構成されている。なお、両側面15a,15bは、鉛直方向に直交する直線VLに対して傾斜角度θ1を有するように構成されている。両側面15a,15bは、本発明における「傾斜当接面」に対応する実施構成の一例である。
【0036】
なお、架台80の長手方向の両端部には、図2に示すように、架台載置部14,16の係合部14b,16bの凹溝15に係合される被係合部84,84が設けられている。当該被係合部84,84は、図5に示すように、凹溝15の両側面15a,15bに面接触し得る傾斜面84a,84bを有している。より具体的には、被係合部84,84は、図5に示すように、コイル状線材の処理装置1を一対の第1および第2支柱2a,2b,4a,4bの延在方向(鉛直方向、図5の上下方向)と、第1および第2横梁10,12の延在方向(図5の左右方向)と、の両方向に直交する方向(図5の紙面に垂直な方向)の一方側から見た場合に、上方から下方(図5の上側から下側)に向かって互いに近づく方向に傾斜する傾斜面84a,84bを有しており、鉛直方向に直交する直線VLに対して傾斜角度θ1を有するように構成されている(図5参照)。被係合部84,84は、本発明における「第1係合部」および「第2係合部」に対応し、傾斜面84a,84bは、本発明における「傾斜側面」に対応する実施構成の一例である。
【0037】
このように、被係合部84,84と係合部14b,16b(凹溝15)とを傾斜角度θ1をもって係合させる構成とすることによって、被係合部84,84を係合部14b,16b(凹溝15)に係合させ易くすることができると共に、架台80の架台載置部14,16に対する位置決めを容易に行うことができる。また、楔効果によって被係合部84,84と係合部14b,16b(凹溝15)とをより強固に係合させることができる。なお、架台載置部14,16の凹溝15の両側面15a,15bおよび架台80の被係合部84,84の傾斜面84a,84bにおける傾斜角度θ1は、後述するアンバランスウェイトBW,BWの遠心力の作用角度としての傾斜角度θ2よりも小さい値となるように設定されている。
【0038】
第1振動機構VM1は、図2および図3に示すように、振動モータM1と、当該振動モータM1を第1横梁10および第2横梁12に取り付けるブラケットBRと、から構成されている。第1振動機構VM1は、本発明における「振動付与機構」に対応する実施構成の一例である。第1横梁10に取り付けられる振動モータM1およびブラケットBRは、それぞれ本発明における「第1振動モータ」および「第1ブラケット」に対応し、第2横梁12に取り付けられる振動モータM1およびブラケットBRは、それぞれ本発明における「第2振動モータ」および「第2ブラケット」に対応する実施構成の一例である。
【0039】
振動モータM1は、図7に示すように、モータ本体m1と、当該モータ本体m1の回転軸RSの両端に取り付けられたアンバランスウェイトBW,BWと、を有している。モータ本体m1には、振動モータM1をブラケットBRの後述するプレート54に取り付けるための取付部FPが一体に設けられている。アンバランスウェイトBW,BWは、回転軸RSの回転に伴って発生する遠心力の方向が取付部FPの取付面を含む平面に対して直交する(プレート54に直交する)方向となるように調整されている。なお、振動モータM1は、回転軸RSの軸線方向がブラケットBRの後述する一対のL型アングル52,52間の隙間dの延在方向(図8の左の図における左右方向)と直交する方向に延在するようにモータ本体m1がブラケットBRに取り付けられる。
【0040】
ブラケットBRは、図8に示すように、一対のL型アングル52,52と、当該一対のL型アングル52,52を接続するプレート54と、から構成されている。一対のL型アングル52,52は、隙間dを隔てて互いに反対向き(互いに背中を向ける方向)となるようにボルトBLTによってプレート54に締結されている。隙間dは、第1および第2横梁10,12の幅寸法t(図2参照)とほぼ同じ寸法か若干大きい寸法となるように設定されている。また、一対のL型アングル52,52には、複数のボルト挿通孔52aが形成されている。こうして構成されたブラケットBRは、一対のL型アングル52,52間(隙間d内)に第1横梁10および第2横梁12を挟み込む態様で図示しないボルトによって当該第1横梁10および第2横梁12に締結される。なお、一対のL型アングル52,52には、リブ52bが立設されており、当該リブ52bによって剛性の向上が図られている。
【0041】
こうして構成された第1振動機構VM1は、図9に示すように、ブラケットBRのプレート54の延在方向ED1が第1横梁10および第2横梁12の延在方向(鉛直方向に直交する直線VLの延在方向と同じ水平方向、図9の左右方向)に対して傾斜した状態で当該第1横梁10および第2横梁12に取り付けられる。即ち、第1振動機構VM1は、回転軸RSの回転に伴って発生するアンバランスウェイトBW,BWの遠心力が、鉛直方向に直交する直線VLに対して傾斜角度θ2をもって第1横梁10および第2横梁12に作用する態様で第1横梁10および第2横梁12に取り付けられる。このとき、振動モータM1の回転軸RSの軸線方向は、一対の第1および第2支柱2a,2b,4a,4bの延在方向(鉛直方向)と、第1および第2横梁10,12の延在方向と、の両方向に直交する方向に延在している。傾斜角度θ2は、本発明における「作用角度」に対応する実施構成の一例である。
【0042】
第1振動機構VM1は、図3および図9に示すように、第1横梁10および第2横梁12のうち当該第1横梁10および第2横梁12の長手方向(図3および図9の左右方向)のほぼ中央部よりも第1横梁10および第2横梁12の長手方向(図3および図9の左右方向)の一方(左方、図3および図9の左側)の端部寄りの位置であって、第2振動機構VM2に隣接した位置に取り付けられる。
【0043】
第2振動機構VM2は、振動モータM1のブラケットBRへの取り付け方を変えた点を除いて、基本的には第1振動機構VM1と同様のハード構成をしている。したがって、第2振動機構VM2のうち第1振動機構VM1のハード構成と同一部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0044】
第2振動機構VM2の振動モータM1においても、図7に示すように、アンバランスウェイトBW,BWは、回転軸RSの回転に伴って発生する遠心力の方向が取付部FPの取付面を含む平面に対して直交する(プレート54に直交する)方向となるように調整されている。なお、第2振動機構VM2の振動モータM1は、回転軸RSの軸線方向がブラケットBRの後述する一対のL型アングル52,52間の隙間dの延在方向(図8の左の図における左右方向)と平行な方向に延在するようにモータ本体m1がブラケットBRに取り付けられている。
【0045】
こうして構成された第2振動機構VM2は、図9に示すように、ブラケットBRのプレート54の延在方向ED2が第1横梁10および第2横梁12の延在方向(鉛直方向に直交する直線VLの延在方向と同じ水平方向、図9の左右方向)と平行となるように当該第1横梁10および第2横梁12に取り付けられる。即ち、第2振動機構VM2は、回転軸RSの回転に伴って発生するアンバランスウェイトBW,BWの遠心力が、第1横梁10および第2横梁12に鉛直方向に作用する態様で第1横梁10および第2横梁12に取り付けられる。このとき、第2振動機構VM2の振動モータM1の回転軸RSの軸線方向は、第1および第2横梁10,12の延在方向と平行な方向に延在している。
【0046】
なお、第2振動機構VM2は、図3および図9に示すように、第1横梁10および第2横梁12のうち当該第1横梁10および第2横梁12の長手方向(図3および図9の左右方向)のほぼ中央部の位置に取り付けられる。
【0047】
次に、こうして構成されたコイル状線材の処理装置1の動作、特に、コイル状線材92の酸洗処理の際の動作について説明する。コイル状線材92を酸洗処理するに際し、まず、フック82にコイル状線材92を吊り下げた状態の架台80が、図4に示すように、走行ホイストやクレーンなど(図示せず)によって、本発明の実施の形態に係るコイル状線材の処理装置1の上方まで搬送される。より具体的には、フック82に吊下げられたコイル状線材92がコイル状線材の処理装置1に設置された酸液処理槽70の真上に来るまで搬送される。
【0048】
続いて、図示しない走行ホイストやクレーンなどによって、フック82にコイル状線材92を吊り下げた状態のまま架台80を下降させ、架台80を架台載置部14,16に載置させる。このとき、図6に示すように、架台80の被係合部84,84が架台載置部14,16の係合部14b,16bの凹溝15に係合されると共に、コイル状線材92の全体が酸液処理槽70内の酸液72に浸漬される。ここで、被係合部84,84は、凹溝15に向かって先細りとなる傾斜面84a,84b(傾斜角度θ1)を有するように構成されていると共に、凹溝15も当該傾斜面84a,84aに対応する傾斜角度θ1(開口側が広く、底面側に向かうに伴い幅狭となる傾斜角)を有する両側面15a,15bを備える構成とされているため、被係合部84,84を凹溝15に円滑に係合させることができると共に、楔効果によって架台80を架台載置部14,16に強固に位置決め固定することができる。なお、架台80が架台載置部14,16に載置された後は、図示しない走行ホイストやクレーンなどは架台80から取り外される。
【0049】
コイル状線材92の全体を酸液処理槽70内の酸液72に浸漬させた状態で架台80の架台載置部14,16への載置が完了すると、第2振動機構VM2の運転を開始する。具体的には、第2振動機構VM2の振動モータM1を駆動させる。当該第2振動機構VM2の振動モータM1が駆動されて回転軸RSが回転されると、当該回転軸RSの回転に伴ってアンバランスウェイトBW,BWによる遠心力が発生し、当該遠心力が第1横梁10および第2横梁12に鉛直方向に作用する。
【0050】
これにより、第1横梁10および第2横梁12に鉛直方向の振動が生じる。当該第1横梁10および第2横梁12の鉛直方向の振動は、架台80を介してフック82に伝達され、当該フック82を第1横梁10および第2横梁12と同方向(鉛直方向)に振動させる。当該フック82の振動によって、コイル状線材92が酸液72内で上下方向に振動される(図6の白抜き矢印参照)。この結果、コイル状線材92の各線材間の接触面に酸液72を浸入させることができるため、コイル状線材92の処理能力を向上することができる。
【0051】
こうして第2振動機構VM2の運転によるコイル状線材92の上下方向の振動を伴う酸洗処理を所定時間行った後、第2振動機構VM2の運転を停止すると共に第1振動機構VM1の運転を開始する。具体的には、第1振動機構VM1の振動モータM1を駆動させる。当該第1振動機構VM1の振動モータM1が駆動されて回転軸RSが回転されると、当該回転軸RSの回転に伴ってアンバランスウェイトBW,BWによる遠心力が発生し、当該遠心力が第1横梁10および第2横梁12の延在方向(鉛直方向に直交する直線VLの延在方向と同じ水平方向、図9の左右方向)に対して傾斜に対して傾斜角度θ2をもって当該第1横梁10および第2横梁12に作用する。
【0052】
これにより、第1横梁10および第2横梁12に当該第1横梁10および第2横梁12の延在方向(鉛直方向に直交する直線VLの延在方向と同じ水平方向、図9の左右方向)に対して傾斜した方向の振動が生じる。当該第1横梁10および第2横梁12の傾斜方向の振動は、架台80を介してフック82に伝達され、当該フック82を第1横梁10および第2横梁12と同方向に振動させる。当該振動は、フック82を鉛直方向に振動させる成分と水平方向(第1および第2横梁10,12の延在方向に沿う方向)に振動させる成分とを有しているため、当該振動がフック82に作用することによって、コイル状線材92が酸液72内で円周方向に回転される(図6の黒塗り矢印参照)。この結果、コイル状線材92とフック82との当接面を変更させることができるため(入れ替えることができるため)、当該接触面における酸洗不良の発生を良好に防止することができる。
【0053】
なお、第1および第2振動機構VM1,VM2によるコイル状線材92の振動は、1回のみならず、複数回繰り返し行う構成としても良い。
【0054】
本発明の実施の形態に係るコイル状線材の処理装置1によれば、第1振動機構VM1が第1横梁10および第2横梁12のうち当該第1横梁10および第2横梁12の長手方向(図3および図9の左右方向)のほぼ中央部よりも第1横梁10および第2横梁12の長手方向(図3および図9の左右方向)の一方(左方、図3および図9の左側)の端部寄りの位置であって、第2振動機構VM2に隣接した位置、即ち、第1横梁10および第2横梁12の長手方向の中央部寄りの位置に取り付けられる構成であるため、第1横梁10および第2横梁12に振動による回転モーメントを作用させることができ、コイル状線材92の円周方向への回転をより促進し得ると共に、入力される振動をより確実にフック82に伝達することができ、コイル状線材92をより確実に円周方向へ回転させることができる。
【0055】
また、本発明の実施の形態に係るコイル状線材の処理装置1によれば、第1横梁10および第2横梁12のそれぞれに第1および第2振動機構VM1,VM2を同態様で設置する構成であるため、第1横梁10および第2横梁12のそれぞれに同態様の振動を付与することができる。これにより、コイル状線材92を円周方向へ回転させるための適正な振動をフック82に安定して付与することができる。この結果、コイル状線材92を安定かつより確実に円周方向へ回転させることができる。
【0056】
さらに、本発明の実施の形態に係るコイル状線材の処理装置1によれば、傾斜角度θ1を、傾斜角度θ2よりも小さくなるように設定されているため、第1横梁10および第2横梁12に入力された振動によって架台80の被係合部84,84が架台載置部14,16の凹溝15から抜け出ることを良好に抑制できる。これにより、架台80を第1横梁10および第2横梁12に載置するに際し、架台80を第1横梁10および第2横梁12に固定するための専用部品を設ける必要がなくなるため、部品点数の増加を抑制することができると共に装置の簡素化を図ることができる。
【0057】
本実施の形態では、第1振動機構VM1を第1横梁10および第2横梁12に対して傾斜させて取り付ける構成としたが、第1横梁10および第2横梁12に当該第1横梁10および第2横梁12の延在方向(鉛直方向に直交する直線VLの延在方向と同じ水平方向、図9の左右方向)に対して傾斜した方向の振動を作用させることができれば、第1振動機構VM1を第1横梁10および第2横梁12に対して傾斜させずに、第2振動機構VM2と同様、ブラケットBRのプレート54の延在方向ED2が第1横梁10および第2横梁12の延在方向(鉛直方向に直交する直線VLの延在方向と同じ水平方向、図9の左右方向)と平行となるように取り付ける構成としても良い。なお、この場合、第1振動機構VM1のアンバランスウェイトBW,BWは、回転軸RSの回転に伴って発生する遠心力の方向が取付部FPの取付面を含む平面に対して交差する(プレート54に交差する)方向となるように調整しておく必要がある。
【0058】
本実施の形態では、第1振動機構VM1は、第1横梁10および第2横梁12のうち当該第1横梁10および第2横梁12の長手方向のほぼ中央部よりも第1横梁10および第2横梁12の長手方向の一方(左側)の端部寄りの位置に取り付ける構成としたが、これに限らない。例えば、第1振動機構VM1は、第1横梁10および第2横梁12のうち当該第1横梁10および第2横梁12の長手方向のほぼ中央部よりも第1横梁10および第2横梁12の長手方向の他方(右側)の端部寄りの位置に取り付ける構成としても良い。
【0059】
本実施の形態では、第1振動機構VM1は、第2振動機構VM2に隣接した位置に取り付ける構成としたが、これに限らない。第1振動機構VM1は、第2振動機構VM2から離れた位置、例えば、第1横梁10および第2横梁12の左側の端部に隣接した位置に取り付ける構成としても良い。
【0060】
本実施の形態では、第1振動機構VM1は、第1横梁10および第2横梁12に同じ態様、即ち、コイル状線材の処理装置1を後側(一対の第2支柱4a,4b側)から見た場合、第1横梁10および第2横梁12の長手方向の中央部よりも左側の端部寄りの位置に同じ傾斜角度θ2をもって取り付ける構成としたがこれに限らない。例えば、第1横梁10においては、コイル状線材の処理装置1を後側(一対の第2支柱4a,4b側)から見た場合、第1横梁10の長手方向の中央部よりも左側の端部寄りの位置に第1振動機構VM1を取り付け、第2横梁12においては、コイル状線材の処理装置1を後側(一対の第2支柱4a,4b側)から見た場合、第2横梁12の長手方向の中央部よりも右側の端部寄りの位置に第1振動機構VM1を取り付ける構成や、第1横梁10と第2横梁12とでは、異なる傾斜角度で第1振動機構VM1が取り付けられる構成としても良い。
【0061】
本実施の形態では、第1振動機構VM1を第1横梁10および第2横梁12にそれぞれ1つずつ設ける構成としたが、これに限らない。例えば、第1振動機構VM1を第1横梁10および第2横梁12のいずれか一方にのみ設ける構成や、第1振動機構VM1を第1横梁10および第2横梁12に3つ以上設ける構成としても良い。第1振動機構VM1を第1横梁10および第2横梁12に3つ以上設ける構成の場合には、第1振動機構VM1を第1横梁10および第2横梁12にそれぞれ同じ数ずつ第1振動機構VM1を設ける構成や、第1振動機構VM1を第1横梁10および第2横梁12に異なる数の第1振動機構VM1を設ける構成が考えらえる。
【0062】
本実施の形態では、第1および第2横梁10,12の上面に設けた架台載置部14,16の係合部14b,16bに傾斜面(傾斜角度θ1で形成された両側面15a,15b)を有する凹溝15を設けると共に、架台80の長手方向の両端部に傾斜面84a,84b(傾斜角度θ1)を有する被係合部84,84を設け、当該被係合部84,84を係合部14b,16bの凹溝15に係合させることによって、架台80を第1および第2横梁10,12に固定する構成としたが、これに限らない。マグネットによる磁力やアクチュエータ(例えば、シリンダー)による抜け防止構造などを用いて架台80を第1および第2横梁10,12に固定する構成としても良い。
【0063】
本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものである。したがって、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0064】
1 コイル状線材の処理装置1(コイル状線材の処理装置)
2a 第1支柱(第1支柱)
2b 第1支柱(第1支柱)
4a 第2支柱(第2支柱)
4b 第2支柱(第2支柱)
6a エアバネ(第1緩衝部材)
6b エアバネ(第1緩衝部材)
8a エアバネ(第2緩衝部材)
8b エアバネ(第2緩衝部材)
10 第1横梁(第1横梁)
12 第2横梁(第2横梁)
14 架台載置部(第1支持梁載置部)
14a フランジ部
14b 係合部
15 凹溝(第1凹部、第2凹部)
15a 側面(傾斜当接面)
15b 側面(傾斜当接面)
16 架台載置部(第2支持梁載置部)
16a フランジ部
16b 係合部
22a 上側連結梁
22b 下側連結梁
24a 上側連結梁
24b 下側連結梁
26a 連結プレート
26b 連結プレート
28a 連結プレート
28b 連結プレート
52 L型アングル
52a ボルト挿通孔
52b リブ
54 プレート
70 酸液処理槽
72 酸液(処理液)
80 架台(支持梁)
82 フック(フック)
82a 固定部
82b 吊下げ部
84 被係合部(第1係合部、第2係合部)
84a 傾斜面(傾斜側面)
84b 傾斜面(傾斜側面)
92 コイル状線材(コイル状線材)
VM1 第1振動機構(振動付与機構)
VM2 第2振動機構(第2振動付与機構)
M1 振動モータ(振動モータ、第1振動モータ、第2振動モータ)
BR ブラケット(ブラケット、第1ブラケット、第2ブラケット)
m1 モータ本体
RS 回転軸(回転軸)
BW アンバランスウェイト(アンバランスウェイト)
FP 取付部
θ1 傾斜角度
θ2 傾斜角度(作用角度)
d 隙間
t 幅寸法
ED1 第1振動機構VM1のブラケットBRのプレート54の延在方向
ED2 第2振動機構VM2のブラケットBRのプレート54の延在方向
VL 鉛直方向に直交する直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9