特許第6963492号(P6963492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6963492湿分分離設備、発電プラント、及び蒸気タービンの運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963492
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】湿分分離設備、発電プラント、及び蒸気タービンの運転方法
(51)【国際特許分類】
   F01K 7/22 20060101AFI20211028BHJP
   F22B 37/26 20060101ALI20211028BHJP
   G21D 1/02 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   F01K7/22 D
   F22B37/26 A
   G21D1/02 T
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-245154(P2017-245154)
(22)【出願日】2017年12月21日
(65)【公開番号】特開2019-112966(P2019-112966A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2020年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 一作
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 良太
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−245684(JP,A)
【文献】 特開平10−206590(JP,A)
【文献】 実開昭60−084772(JP,U)
【文献】 特開昭61−138885(JP,A)
【文献】 特開2006−242083(JP,A)
【文献】 特開2010−181048(JP,A)
【文献】 特開2013−011422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 7/22
F01K 25/10
F03G 4/00
F22B 37/26
G21D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンの作動流体としての蒸気から湿分を分離する湿分分離器と、
前記湿分を分離された蒸気の一部を前記湿分分離器から抽出する蒸気抽出管と、
前記蒸気抽出管を通じて前記湿分分離器から抽出された蒸気と加熱媒体との間で熱交換を行わせて前記蒸気を加熱する第一の熱交換器と、
前記加熱媒体を加熱する加熱器と、
前記第一の熱交換器により加熱された前記蒸気を作動流体として前記蒸気タービンに導入する蒸気導入管とを備え、
前記蒸気タービンは、前記湿分分離器において湿分を分離された蒸気、及び前記第一の熱交換器によって加熱された蒸気により作動される湿分分離設備であって、
前記湿分分離器は、筒状の容器と、前記容器に導入された前記作動流体としての蒸気から湿分を分離するセパレータと、前記セパレータにより湿分を分離された蒸気を加熱する第二の熱交換器と、前記セパレータと前記第二の熱交換器との間に設けられ、前記セパレータにより湿分を分離された蒸気の一部を取得する蒸気取出管とをさらに備え、
前記蒸気取出管は前記蒸気抽出管に連通している湿分分離設備
【請求項2】
前記加熱器は、前記加熱媒体を、系統外の熱源を用いて加熱する、請求項1に記載の湿分分離設備。
【請求項3】
前記第二の熱交換器は、前記セパレータにより湿分を分離された前記蒸気を、系統内の熱源を用いて加熱する、請求項1又は2に記載の湿分分離設備。
【請求項4】
蒸気発生器と、
前記蒸気発生器において生成された蒸気により作動する高圧蒸気タービンと、
前記高圧蒸気タービンから排出された蒸気から湿分を分離する湿分分離器と、
前記湿分分離器において湿分を分離された蒸気により作動する低圧蒸気タービンと、 前記湿分を分離された蒸気の一部を前記湿分分離器から抽出する蒸気抽出管と、
前記蒸気抽出管を通じて前記湿分分離器から抽出された蒸気と加熱媒体との間で熱交換を行わせて前記蒸気を加熱する第一の熱交換器と、
前記加熱媒体を加熱する加熱器と、
前記熱交換器により加熱された前記蒸気を作動流体として前記低圧蒸気タービンに導入する蒸気導入管と、
前記高圧蒸気タービン及び前記低圧蒸気タービンにより駆動される発電機と、
前記低圧蒸気タービンから排出される蒸気を凝縮させる復水器とを備える発電プラントであって、
前記湿分分離器は、筒状の容器と、前記容器に導入された前記作動流体としての蒸気から湿分を分離するセパレータと、前記セパレータにより湿分を分離された蒸気を加熱する第二の熱交換器と、前記セパレータと前記第二の熱交換器との間に設けられ、前記セパレータにより湿分を分離された蒸気の一部を取得する蒸気取出管とを備え、
前記蒸気取出管は前記蒸気抽出管に連通している発電プラント
【請求項5】
前記加熱器は、前記加熱媒体を、系統外の熱源を用いて加熱する、請求項4に記載の発電プラント。
【請求項6】
前記第二の熱交換器は、前記セパレータにより湿分を分離された前記蒸気を、系統内の熱源を用いて加熱する、請求項4又は5に記載の発電プラント。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか一項に記載の湿分分離設備を使用して行う蒸気タービンの運転方法であって、
前記湿分分離設備に含まれる湿分分離器の内部で蒸気から湿分を分離する工程と、
前記湿分を分離された蒸気の一部を前記湿分分離器から抽出する工程と、
前記湿分分離器から抽出された蒸気と加熱媒体との間で熱交換を行わせて前記蒸気を加熱する工程と、
前記湿分分離器において湿分を分離された蒸気、及び前記加熱媒体と熱交換することによって加熱された蒸気を、作動流体として蒸気タービンに導入する工程とを含む蒸気タービンの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンの作動流体としての蒸気から湿分を分離する湿分分離設備、当該設備を含む発電プラント、及び蒸気タービンの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンを含む発電プラントでは、蒸気発生器において発生させた蒸気(主蒸気)により高圧タービンを駆動し、主蒸気が飽和状態に近い場合、高圧タービンから排出された蒸気(サイクル蒸気)により低圧タービンを駆動する。ところで、高圧タービンから排出された蒸気は高圧タービンに対して仕事をすることで熱保有量が下がり、これによって蒸気の一部が凝縮して湿分を生じる(湿り蒸気)。そのため、高圧タービンから排出された蒸気をそのまま低圧タービンに導入すると、低圧タービンのタービン翼が湿り蒸気に浸食されてしまうだけでなく、タービンの熱効率を低下させてしまう。そこで、湿り蒸気を扱う発電プラントでは、高圧タービンと低圧タービンとの間に湿分分離加熱器が設けられている。この湿分分離加熱器は、高圧タービンから排出された蒸気から湿分を分離すると共に、湿分を分離された蒸気を加熱して過熱蒸気を生成する。
【0003】
発電プラントの湿分分離加熱器は、例えば特許文献1に示すように、横置きされた筒状の容器と、容器内に導入した被加熱蒸気(高圧タービンから排出された蒸気)を、主蒸気などのより高温の蒸気で加熱する加熱器とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4848333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された湿分分離加熱器では、高圧タービンから抽出された蒸気と主蒸気とを熱源として、低圧タービンに導入すべき蒸気を加熱するので、低圧タービンに導入すべき蒸気の温度を高圧タービンに導入される蒸気の温度よりも高くすることは難しい。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、作動流体として蒸気タービンに導入される作動流体の保有熱量を増加させることで蒸気タービンの熱効率を向上させることに寄与し、その結果として発電プラントの発電効率を高めることを可能にする湿分分離設備、発電プラント、及び蒸気タービンの運転方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る湿分分離設備は、
蒸気タービンの作動流体としての蒸気から湿分を分離する湿分分離器と、
前記湿分を分離された蒸気の一部を前記湿分分離器から抽出する蒸気抽出管と、
前記蒸気抽出管を通じて前記湿分分離器から抽出された蒸気と加熱媒体との間で熱交換を行わせて前記蒸気を加熱する第一の熱交換器と、
前記加熱媒体を加熱する加熱器と、前記熱交換器により加熱された前記蒸気を作動流体として前記蒸気タービンに導入する蒸気導入管とを備え、
前記蒸気タービンは、前記湿分分離器において湿分を分離された蒸気、及び前記熱交換器によって加熱された蒸気により作動される湿分分離設備であって、
前記湿分分離器は、筒状の容器と、前記容器に導入された前記作動流体としての蒸気から湿分を分離するセパレータと、前記セパレータにより湿分を分離された蒸気を加熱する第二の熱交換器と、前記セパレータと前記第二の熱交換器との間に設けられ、前記セパレータにより湿分を分離された蒸気の一部を取得する蒸気取出管とをさらに備え、
前記蒸気取出管は前記蒸気抽出管に連通している
【0008】
本発明においては、湿分分離器において湿分を分離された蒸気の一部を湿分分離器から抽出し、その抽出された蒸気を加熱したうえで、蒸気タービンに導入する。蒸気タービンには、湿分分離器から抽出されて加熱器により加熱された蒸気が、湿分分離器において湿分を分離された蒸気と共に、蒸気タービンの作動流体として供給される。
【0009】
本発明においては、筒状容器に導入された作動流体としての蒸気からセパレータにより湿分が分離され、その湿分が分離された乾き蒸気が、第二の加熱器によって加熱されたうえで蒸気タービンに導入される。このとき、湿分が分離された乾き蒸気の一部が蒸気取出管を通じて蒸気抽出管に導入され、第一の加熱器によって加熱されたうえで蒸気タービンに導入される。
【0010】
また、本発明に係る湿分分離設備において、前記加熱器は、前記加熱媒体を、系統外の熱源を用いて加熱してもよい。本発明においては、加熱器に系統外の熱源を用いることで、系内で得られる熱源を利用する場合と比較して、作動流体の保有熱量を増加させることが可能であり、それによって蒸気タービンの熱効率の向上が図れる。
また、前記第二の熱交換器は、前記セパレータにより湿分を分離された前記蒸気を、系統内の熱源を用いて加熱してもよい。
【0011】
本発明に係る発電プラントのある態様は、
蒸気発生器と、
前記蒸気発生器において生成された蒸気により作動する高圧蒸気タービンと、
前記高圧蒸気タービンから排出された蒸気から湿分を分離する湿分分離器と、
前記湿分分離器において湿分を分離された蒸気により作動する低圧蒸気タービンと、 前記湿分を分離された蒸気の一部を前記湿分分離器から抽出する蒸気抽出管と、
前記蒸気抽出管を通じて前記湿分分離器から抽出された蒸気と加熱媒体との間で熱交換を行わせて前記蒸気を加熱する第一の熱交換器と、
前記加熱媒体を加熱する加熱器と、
前記熱交換器により加熱された前記蒸気を作動流体として前記低圧蒸気タービンに導入する蒸気導入管と、
前記高圧蒸気タービン及び前記低圧蒸気タービンにより駆動される発電機と、
前記低圧蒸気タービンから排出される蒸気を凝縮させる復水器とを備える発電プラントであって、
前記湿分分離器は、筒状の容器と、前記容器に導入された前記作動流体としての蒸気から湿分を分離するセパレータと、前記セパレータにより湿分を分離された蒸気を加熱する第二の熱交換器と、前記セパレータと前記第二の熱交換器との間に設けられ、前記セパレータにより湿分を分離された蒸気の一部を取得する蒸気取出管とを備え、
前記蒸気取出管は前記蒸気抽出管に連通している
【0012】
本発明に係る発電プラントのある態様において、前記加熱器は、前記加熱媒体を、系統外の熱源を用いて加熱してもよい。
また、前記第二の熱交換器は、前記セパレータにより湿分を分離された前記蒸気を、系統内の熱源を用いて加熱してもよい。
【0014】
本発明に係る蒸気タービンの運転方法は、前記湿分分離設備を使用して行う上記タービンの運転方法であって、
前記湿分分離設備に含まれる湿分分離器の内部で蒸気から湿分を分離する工程と、
前記湿分を分離された蒸気の一部を前記湿分分離器から抽出する工程と、
前記湿分分離器から抽出された蒸気と加熱媒体との間で熱交換を行わせて前記蒸気を加熱する工程と、
前記湿分分離器において湿分を分離された蒸気、及び前記加熱媒体と熱交換することによって加熱された蒸気を、作動流体として蒸気タービンに導入する工程とを含む。
【0015】
本発明においては、湿分分離器において湿分を分離された蒸気の一部を湿分分離器から抽出し、その抽出された蒸気を加熱したうえで、蒸気タービンに導入する。蒸気タービンには、湿分分離器から抽出され第一の加熱器により加熱された蒸気が、湿分分離器において湿分を分離された蒸気と共に、蒸気タービンの作動流体として供給される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、湿分分離器から蒸気の一部を抽出し、その抽出された蒸気を、別途設けた第一の加熱器を使って加熱したうえでその蒸気を蒸気タービンに導入することで、作動流体として蒸気タービンに導入される作動流体の保有熱量を増加させることが可能であり、蒸気タービンの熱効率が向上する。その結果、発電システムの発電効率が増す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を含む発電プラントの第一実施形態を示すブロック図である。
図2】発電プラントに含まれる湿分分離加熱器の長手方向に沿う側断面図である。
図3】湿分分離加熱器の幅方向に沿う側断面図である。
図4】湿分分離加熱器の一方の端部の側断面図である。
図5】本発明を含む発電プラントの第二実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一の実施形態)
本発明に係る湿分分離設備を含む発電プラントの第一実施形態を以下に説明する。
この発電プラントは、図1に示すように、蒸気発生器1と、高圧蒸気タービン2と、湿分分離加熱器(湿分分離器)3と、低圧蒸気タービン4と、蒸気抽出管5と、熱交換器(第一の熱交換器)6と、加熱器7と、蒸気導入管8と、発電機9と、復水器10と、脱気器11と、給水加熱器12と、ドレインタンク13A、13B、13Cとを備えている。
【0019】
蒸気発生器1は、石油や石炭などの化石燃料とするボイラや原子炉等の熱源により水を加熱し高温蒸気を生成する。蒸気発生器1において生成された高温蒸気は、蒸気配管L1を通じて蒸気発生器1から高圧蒸気タービン2に導入される。高圧蒸気タービン2は、蒸気発生器1において生成された高温蒸気により作動する。高圧蒸気タービン2に対して仕事をした蒸気は、蒸気配管L2を通じて高圧蒸気タービン2から湿分分離加熱器3に導入される。また、高圧蒸気タービン2に導入された高圧蒸気の一部が、給水加熱器12に蒸気配管L2aを通じて導入される。
【0020】
湿分分離加熱器3は、横置きの筒状容器31と、セパレータ32と、熱交換器(第二の熱交換器)33A、33Bと、蒸気取出管34とを備えている。セパレータ32は、高圧蒸気タービン2から容器31に導入された作動流体としての蒸気から湿分を分離する。熱交換器33Aには、高圧蒸気タービン2の中間部から抽出された蒸気が、蒸気配管L3を通じて導入され、熱交換器33Bには、蒸気発生器1において生成された高温蒸気が、蒸気配管L4を通じて導入される。熱交換器33A、33Bはいずれも熱交換器であって、熱交換器33Aは、高圧蒸気タービン2の中間部から抽出された蒸気と、セパレータ32により湿分を分離された蒸気との間で熱交換を行わせ、湿分を分離された作動流体としての蒸気を加熱する。熱交換器33Bは、蒸気発生器1において生成された過熱蒸気と、熱交換器33Aにより加熱された蒸気との間で熱交換を行わせ、熱交換器33Aにより加熱された作動流体としての蒸気をさらに加熱する。
【0021】
蒸気取出管34は、セパレータ32と熱交換器33A、33Bとの間に設けられ、セパレータ32により湿分を分離された蒸気の一部を取得する。蒸気取出管34は、蒸気抽出管5に連通している。湿分分離加熱器3においてセパレータ32により湿分を分離された蒸気のうち、蒸気取出管34には流入しなかった残りの蒸気は、筒状容器31内で熱交換器33A、33Bにより加熱された後、蒸気配管L5を通じて低圧蒸気タービン4に導入される。熱交換器33Aにおいて蒸気と熱交換した蒸気(凝縮水を含む)は、ドレイン配管Ld1を通じてドレインタンク13Aに一時的に貯留され、熱交換器33Bにおいて蒸気と熱交換した蒸気(凝縮水を含む)は、ドレイン配管Ld2を通じてドレインタンク13Bに一時的に貯留される。また、湿分分離加熱器3から排出される湿分の凝縮水は、ドレイン配管Ld3を通じてドレインタンク13Cに一時的に貯留される。
なお、湿分分離加熱器3の構造の詳細な説明は後述する。
【0022】
低圧蒸気タービン4は、湿分分離加熱器3において湿分を分離されると共に加熱された蒸気により作動する。湿分分離加熱器3において湿分を分離された蒸気の一部は、蒸気取出管34に流入し、蒸気抽出管5を通じて熱交換器6に導入される。熱交換器6は、蒸気抽出管5を通じて湿分分離加熱器3から抽出された蒸気と加熱媒体との間で熱交換を行わせ、湿分分離加熱器3から抽出された蒸気を加熱する。熱交換器6は、閉じた系を構成する媒体配管L6を介して加熱器7と接続されている。加熱器7は、熱交換器6に供給される加熱媒体を加熱する。加熱された媒体は媒体配管L6を通じて熱交換器6と加熱器7との間を循環する。熱交換器6において加熱された蒸気は、蒸気導入管8を通じて低圧蒸気タービン4に導入され、蒸気配管L5を通じて導入される蒸気と共に低圧蒸気タービン4を作動させる。
【0023】
加熱器7には、例えばヘリオスタットを採用した太陽光の集光受熱器、化石燃料、バイオマス燃料を使用するボイラなど、本実施形態の発電プラントの系統から独立した外部の熱源を利用するものが採用される。
【0024】
高圧蒸気タービン2及び低圧蒸気タービン4は、主軸14を共有する一軸型の蒸気タービンを構成しており、主軸14に接続された発電機9は、高圧蒸気タービン2及び低圧蒸気タービン4により駆動される。低圧蒸気タービン4に対して仕事をした蒸気は、蒸気配管L7を通じて復水器10に導入される。復水器10は、低圧蒸気タービン4から排出される蒸気を凝縮させる。復水器10において凝縮した水は、復水ポンプ18によって搬送され水配管L8を通じて脱気器11に供給される。ドレインタンク13Cに一時貯留された凝縮水も、ドレイン配管L9を通じて脱気器11に供給される。脱気器11は、復水器10において凝縮された水から酸素を取り除く。脱気器11において酸素を除去された水は、給水ポンプ19によって搬送され水配管L10を通じて給水加熱器12に供給される。給水加熱器12には、ドレインタンク13Aに一時貯留された凝縮水を含む蒸気がドレイン配管L11aを通じて導入され、ドレインタンク13Bに一時貯留された凝縮水を含む蒸気がドレイン配管L11a、L11bを通じて導入される。給水加熱器12も熱交換器であって、ドレインタンク13A、13Bに一時貯留された凝縮水、及び高圧蒸気タービン2から蒸気配管L2aを通じて抽出された蒸気と、脱気器11において脱気された水との間で熱交換を行わせ、脱気された水を加熱する。給水加熱器12において加熱された水は、水配管L12を通じて蒸気発生器1に供給される。また、給水加熱器12において脱気水の加熱に供して凝縮した水は、水配管L13を通じて脱気器11に導入される。
【0025】
湿分分離加熱器3の構造を図2から図4に示す。
容器31には、蒸気入口15と、蒸気出口16と、ドレイン排出口17とが形成されている。容器31の内部には、蒸気受入室21と、蒸気室20A、20Bとが設けられている。蒸気室20A、20Bにはそれぞれ、供給マニホールド室22と、湿分分離室23と、加熱室24と、ドレイン回収室25と、回収マニホールド室26とが設けられている。
【0026】
蒸気入口15は蒸気受入室21に連通し、高圧蒸気タービン2から排出された蒸気(S)は蒸気入口15を通じて容器31に流入する。蒸気出口16は回収マニホールド室26に連通し、蒸気室20A、20Bにおいて湿分を分離され加熱された蒸気(過熱蒸気HS)は蒸気出口16を通じて容器31から排出される。ドレイン排出口17はドレイン回収室25に連通し、蒸気から分離された湿分の凝縮水(D)はドレイン排出口17を通じて容器31から排出される。
【0027】
蒸気受入室21は、蒸気入口15を通じて容器31内に流入した蒸気を蒸気室20A、20Bに分配する。蒸気室20A、20Bは、蒸気受入室21から流入した蒸気から湿分を分離すると共に、湿分を分離された蒸気を加熱する。供給マニホールド室22は蒸気受入室21に隣接し、蒸気受入室21には蒸気入口15を通じて蒸気が流入する。湿分分離室23は、供給マニホールド室22の下方に配置されており、内部にはセパレータ32が設けられている。湿分分離室23は、供給マニホールド室22から流入した蒸気から、セパレータ32により湿分を分離する。
【0028】
供給マニホールド室22は、隔壁36によって湿分分離室23と仕切られており、隔壁36にはスリット35が形成されている。湿分分離室23はスリット35を通じて供給マニホールド室22と連通しており、蒸気受入室21から供給マニホールド室22に流入した蒸気は、スリット35を通じて湿分分離室23に流入し、セパレータ32により湿分を分離される。セパレータ32は、複数の波板を容器31の長手方向に等間隔に配置したものである。
【0029】
湿分分離室23は、隔壁38によってドレイン回収室25と仕切られており、隔壁38には開口39が形成されている。湿分分離室23は開口39を通じてドレイン回収室25と連通しており、湿分分離室23において蒸気から分離された湿分は凝縮してドレイン回収室25に流入し、ドレイン排出口17を通じて容器31から排出され、ドレインタンク13Bに流入する。
【0030】
加熱室24は、湿分分離室23の上方に配置されており、内部には熱交換器33A、33Bが設けられている。加熱室24は、容器31の幅方向の両側に配置された供給マニホールド室22、及び供給マニホールド室22の下方に配置された湿分分離室23と、2枚の縦仕切板40によって仕切られており、これら2枚の縦仕切板40間に熱交換器33A、33Bが配置されている。熱交換器33Aは熱交換器33Bよりも下側に配置されており、湿分分離室23において湿分を分離された蒸気は、加熱室24を下から上に向けて流通し、熱交換器33A、33Bを順に通過する過程で加熱される。
【0031】
ドレイン回収室25は、湿分分離室23及び加熱室24の下方に配置され、湿分分離室23と連通し、蒸気から分離された湿分の凝縮水を回収する。ドレイン回収室25にはドレイン配管Ld1が接続されており、ドレイン回収室25に回収された凝縮水は、ドレイン配管Ld1を通じてドレインタンク13Bに回収される。
回収マニホールド室26は、蒸気室20A、20Bの上方に配置され、加熱室24から流入した蒸気を、蒸気出口16を通じて送り出す。加熱室24を区画する2枚の縦仕切板40の上端に連続する傾斜板41によって供給マニホールド室22及び加熱室24と仕切られている。加熱室24において加熱された蒸気は回収マニホールド室26に流入し、蒸気出口16を通じて容器31から排出され、蒸気配管L5を通じて低圧蒸気タービン4に導入される。
【0032】
熱交換器33Aには、U字管で形成されている伝熱管42と、伝熱管42の端部が固定されているヘッダ43と、ヘッダ43の内部を蒸気受入室43aと蒸気回収室43bとに仕切る仕切板44とが設けられている。ヘッダ43には、高圧蒸気タービン2の中間部から抽出された蒸気を蒸気受入室43aを通じて伝熱管42に供給する蒸気配管L3と、伝熱管42を流通した蒸気及びその凝縮水を蒸気回収室43bを通じてヘッダ43から回収するドレイン配管Ld2とが接続されている。
【0033】
熱交換器33Bには、U字管で形成されている伝熱管45と、伝熱管45の端部が固定されているヘッダ46と、ヘッダ46の内部を蒸気受入室46aと蒸気回収室46bとに仕切る仕切板47とが設けられている。ヘッダ46には、蒸気発生器1において生成された過熱蒸気を、蒸気受入室46aを通じて伝熱管45に供給する蒸気配管L4と、伝熱管45を流通した蒸気及び凝縮水を蒸気回収室46bを通じてヘッダ46から回収するドレイン配管Ld2とが接続されている。
熱交換器33Aの蒸気回収室43b、及び熱交換器33Bの蒸気回収室46bに流入した蒸気及びその凝縮水は、ドレイン配管Ld2を通じてドレインタンク13Aに回収される。
【0034】
図3に示すように、蒸気取出管34は、容器31の底部から湿分分離室23と加熱室24との間に突き出すように設けられている。蒸気取出管34は容器31の外板及び隔壁38を貫通し、上端の開口を熱交換器33A、33Bに向けて取り付けられ、下端には蒸気抽出管5が接続されている。供給マニホールド室22から湿分分離室23に流入した蒸気は、湿分分離室23内において隔壁38に沿って流れの方向を変え、セパレータ32において湿分が分離されて乾き蒸気となる。次に、容器31の幅方向の中央に集まって流れ方向を上向きに転じ、加熱室24に流れ込む。このとき、蒸気取出管34の開口端は上向きなので、湿分の凝縮水が流れ込みにくい。加熱室24に流れ込んだ蒸気は、熱交換器33A、33Bを順に通過する過程で加熱される。
【0035】
上記のように構成された発電プラントにおいては、高圧蒸気タービン2から排出された蒸気を湿分分離加熱器3に導入し、湿分分離加熱器3において湿分を分離された蒸気の一部を湿分分離加熱器3から抽出し、その抽出された蒸気を熱交換器6により加熱する。熱交換器6の加熱媒体は加熱器7において加熱される。加熱器7の熱源は、例えばヘリオスタットを採用した太陽光の集光受熱器、化石燃料、バイオマス燃料を使用するボイラ等、本実施形態の発電プラントの系統から独立した外部の熱源が採用される。
【0036】
低圧蒸気タービン4には、湿分分離加熱器3において湿分を分離された残りの蒸気が、低圧蒸気タービン4の作動流体として導入されると共に、熱交換器6により加熱された蒸気が低圧蒸気タービン4の作動流体として供給される。熱交換器6の熱源には、蒸気発生器1由来の蒸気ではない外部熱源を採用することができる。これにより、上記発電プラントによれば、作動流体として低圧蒸気タービン4に導入される作動流体としての蒸気の保有熱量を、閉じた系内で得られる蒸気等の熱源を加熱器7の熱源として利用する場合と比較して増加させることが可能であり、蒸気タービンの熱効率を向上させることができる。
【0037】
(第二の実施形態)
本発明に係る湿分分離設備を含む発電プラントの第二実施形態を以下に説明する。
本実施形態の発電プラントは地熱を利用する発電プラントであって、図5に示すように、湿分分離器71と、蒸気タービン72と、蒸気抽出管73と、熱交換器74と、加熱器(第一の加熱器)75と、蒸気導入管76と、発電機77と、復水器78と、冷却塔79とを備えている。
【0038】
湿分分離器71には、地熱により生成される蒸気の生産井W1から噴出する蒸気が、蒸気配管L21を通じて導入される。湿分分離器71は、縦置きの筒状容器71aと、蒸気取出管71bとを備えている。湿分分離器71に導入された蒸気は、筒状容器71a内において湿分を分離される。縦置きの容器71aの底面には、蒸気取出管71bが立設されており、容器71aの頂部には、蒸気抽出管73が接続されている。蒸気抽出管73は、容器71a内で湿分を分離された蒸気の一部を取得する。容器71a内で湿分を分離された蒸気のうち、蒸気抽出管73に流入しなかった残りの蒸気は、蒸気取出管71bから蒸気配管L22を通じて蒸気タービン72に導入される。容器71aの底には、湿分の凝縮水が一時的に貯留される。
【0039】
蒸気タービン72は、湿分分離器71において湿分を分離された蒸気により作動する。湿分分離器71において湿分を分離された蒸気の一部は、蒸気抽出管73を通じて熱交換器74に導入される。熱交換器74は、蒸気抽出管73を通じて湿分分離器71から抽出された蒸気と加熱媒体との間で熱交換を行わせ、湿分分離器71から抽出された蒸気を加熱する。加熱媒体は、閉じた系を構成する媒体配管L23を介して加熱器75と接続されている。加熱器75は、熱交換器74に供給される加熱媒体を加熱する。加熱された媒体は媒体配管L23を通じて熱交換器74と加熱器75との間を循環する。熱交換器74において加熱された蒸気は、蒸気導入管76を通じて蒸気タービン72に導入され、蒸気配管L22を通じて導入される蒸気と共に蒸気タービン72を作動させる。
【0040】
加熱器7には、第一実施形態と同様に、例えばヘリオスタットを採用した太陽光の集光受熱器、化石燃料、バイオマス燃料を使用するボイラなど、本実施形態の発電プラントの系統から独立した熱源を利用するものが採用される。
【0041】
蒸気タービン72の主軸に接続された発電機77は、蒸気タービン72により駆動される。蒸気タービン72に対して仕事をした蒸気は、蒸気配管L24を通じて復水器78に導入される。復水器78は、蒸気タービン72から排出された蒸気を凝縮させる。冷却塔79は、復水器78において凝縮された高温の水を冷却する。復水器78の内部には、冷却塔79において冷却された水と、蒸気タービン72から排出された蒸気との間で熱交換を行わせ、蒸気を凝縮させる熱交換器78aが設けられている。冷却塔79の内部には、復水器78において凝縮された高温の水を散布するヘッダ79aが設けられている。復水器78において凝縮した水は、水配管L25を通じて冷却塔79に供給される。冷却塔79に供給された高温の凝縮水は、ヘッダ79aから散布され、塔内を上昇する空気との間で熱交換して冷却される。冷却塔79において冷却された水は、水配管L26を通じて復水器78に供給されて熱交換器78aに導入され、蒸気タービン72から排出された蒸気と熱交換して蒸気を凝縮させる。
【0042】
湿分分離器71において容器71aの底に一時貯留された凝縮水は、水配管L27を通じて還元井W2に導入され、地下に還元される。また、冷却塔79において塔内の底にたまった冷却水も、水配管L28を通じて還元井W2に導入されて地下に還元される。
【0043】
上記のように構成された発電プラントにおいては、生産井W1から噴出する蒸気を湿分分離器71に導入し、湿分分離器71において湿分を分離された蒸気の一部を湿分分離器71から抽出し、その抽出された蒸気を熱交換器74により加熱する。熱交換器74の加熱媒体は加熱器75において加熱されるが、その熱源には、例えばヘリオスタットを採用した太陽光の集光受熱器、化石燃料、バイオマス燃料を使用するボイラなど、本実施形態の発電プラントの系統から独立した外部の熱源が採用される。
【0044】
蒸気タービン72には、湿分分離器71において湿分を分離された残りの蒸気が、蒸気タービン72の作動流体として導入されると共に、熱交換器74により加熱された蒸気が蒸気タービン72の作動流体として供給される。熱交換器74の熱源には、生産井W1から噴出する蒸気ではない外部熱源を採用することができる。これにより、上記発電プラントによれば、作動流体として蒸気タービン72に導入される作動流体としての蒸気の保有熱量を、増加させることが可能であり、蒸気タービンの熱効率が向上する。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された事項によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、蒸気タービンの作動流体としての蒸気から湿分を分離する湿分分離設備、当該設備を含む発電プラント、及び蒸気タービンの運転方法に関する。
本発明によれば、作動流体として蒸気タービンに導入される作動流体の保有熱量を増加させることで蒸気タービンの熱効率を向上させることに寄与し、その結果として発電プラントの発電効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 蒸気発生器、2 高圧蒸気タービン、3 湿分分離加熱器(湿分分離器)、4 低圧蒸気タービン、5 蒸気抽出管、6 熱交換器(第一の熱交換器)、7 加熱器、8 蒸気導入管、9 発電機、10 復水器、11 脱気器、12 給水加熱器、13A、13B ドレインタンク、32 セパレータ、33A、33B 熱交換器(第二の熱交換器)、34 蒸気取出管、71 湿分分離器、72 蒸気タービン、73 蒸気抽出管、74 熱交換器、75 加熱器、76 蒸気導入管、77 発電機、78 復水器、79 冷却塔、W1 生産井、W2 還元井
図1
図2
図3
図4
図5