【実施例1】
【0013】
実施例1では、アモルファス鉄心の占積率向上とアモルファス鉄心の保護及び磁気特性の確保を可能とするハイブリッド鉄心変圧器について説明する。ここで、ハイブリッド鉄心変圧器として、油入単相器を例に取り説明する。
【0014】
図1は、実施例1のハイブリッド鉄心変圧器を示す斜視図であり、
図2は実施例1のハイブリッド鉄心変圧器を示す正面図である。
ハイブリッド鉄心変圧器100は単相器であるため、巻線を中心に配置し、巻線内周側に主脚、巻線外周側に側脚を配置し、主脚と側脚を上部継鉄、下部継鉄でつなぐことにより額縁状の鉄心を構成する。
【0015】
図1、
図2に示すように、ハイブリッド鉄心変圧器100は、電線を巻回して構成した筒状の巻線3と、巻線3の中空部に配置されたアモルファス鉄心と、アモルファス鉄心の外周部に配置された珪素鋼板鉄心2と、アモルファス鉄心と前記珪素鋼板鉄心2の間の鉄心脚部に配置され、アモルファス鉄心を保護するためのアモルファス鉄心保護ケース10と、ケイ素鋼板鉄心2を支持するための締金具4と、アモルファス鉄心を垂直方向に支持する支持梁11とを有する。
【0016】
ハイブリッド鉄心変圧器100の上部継鉄と下部継鉄において、アモルファス鉄心、アモルファス鉄心保護ケース9、珪素鋼板鉄心2及び締金具4が略同一高さに配置されている。支持梁11は締金具4の下端面で固定されている。そして、アモルファス鉄心の脚部の積層方向と珪素鋼板鉄心2の積層方向が直交して配置される。
【0017】
ケイ素鋼板鉄心2の最外周側には、締金具用当板5が配置され、締金具4は、締金具用当板5を介してケイ素鋼板鉄心2を支持する。そして、バインドテープ8により、締金具用当板5を介してケイ素鋼板鉄心2を固定する。
【0018】
ここで、アモルファス鉄心は、アモルファス内側鉄心16とアモルファス外側鉄心1で構成される。そして、アモルファス鉄心は、アモルファス磁性薄帯で形成され、珪素鋼板鉄心2は、珪素鋼板で形成されている。
【0019】
図3は、ハイブリッド鉄心変圧器100の構造を説明する主脚断面図(アモルファス鉄心は図示せず)を示す。
図4は、
図3の構造に、アモルファス内側鉄心16とアモルファス外側鉄心1を追加したハイブリッド鉄心変圧器100の構造を示す主脚断面図である。
ここで、占積率は巻線3の内接円の面積に占める鉄心の断面積の割合を示す。従来の珪素鋼板鉄心を用いた変圧器では、珪素鋼板を曲率をもって積層することにより略円形に近づけることができるため占積率は高くなる。
【0020】
一方、アモルファス磁性薄帯は材料幅の種類が少なく、一種類のアモルファス材で鉄心を構成すると四角形断面となり占積率は低くなる。そこで、実施例1では、
図4に示すように、アモルファス薄帯の幅を変更して階段状に配置することにより、曲率を持たせて積層する。このため、アモルファス鉄心のさらなる占積率の向上が期待できる。四角形断面と比較した場合、実施例1のアモルファス鉄心の占積率は約12%向上する効果がある。
【0021】
図3に示すように、アモルファス鉄心を組み立てる前に、珪素鋼板鉄心2を積鉄作業により事前に組み立てておく。曲率をもって積層された珪素鋼板鉄心2、中空の主脚用のアモルファス鉄心保護ケース9、曲率をもって積層された珪素鋼板鉄心2の順番で積鉄作業を行って積鉄心を製作する。そして、この積鉄心を、バインドテープ8を巻きつけて固定する。
【0022】
アモルファス鉄心保護ケース9が配置されているので、バインドテープ8のバインドの張力によってアモルファス鉄心に応力が付与されることはなく、磁気損失が増加することはない。
【0023】
図3に示すように、アモルファス鉄心保護ケース9の特徴として、アモルファス鉄心保護ケース9の側部にアモルファス薄帯の幅に合わせて段を配置し、アモルファス鉄心保護ケース9の内部が4つのブロックに分かれている。アモルファス鉄心保護ケース9内の1ブロックはアモルファス内側鉄心16とアモルファス外側鉄心1を囲むように構成する。アモルファス鉄心保護ケース9は、木材、樹脂などの非磁性の材料か、ステンレス、アルミニウムなど非磁性の金属材料で構成することができる。非磁性の金属材料で構成する場合は、磁脚を1周囲むこと(1ターン)がないように構造部の一部に樹脂などの絶縁物を介在させる構成が望ましい。
【0024】
アモルファス鉄心は、アモルファス鉄心保護ケース9によって囲まれていることから、製造中および完成後も外部に晒されることなく、アモルファス鉄心の破損を防止することができる。さらに、アモルファス鉄心保護ケース9の両側を珪素鋼板鉄心2で挟むことにより、脆弱なアモルファス鉄心に対して機械的強度と剛性を付与することもできる。
【0025】
このように、アモルファス鉄心は、アモルファス内側鉄心16とアモルファス外側鉄心1で構成される。そして、アモルファス鉄心保護ケース9の側部に段部を設けて、アモルファス内側鉄心16の幅とアモルファス外側鉄心1の幅が、アモルファス鉄心と珪素鋼板鉄心2で構成される鉄心の脚部の断面が略円形になるようにそれぞれ定められている。
【0026】
図5はアモルファス内側鉄心16の支持状態を説明する斜視図であり、
図6はその正面図である。
ハイブリッド鉄心変圧器100は、アモルファス薄帯の幅を変更して2段に分ける。このため、アモルファス内側鉄心16はアモルファス外側鉄心1と比較して小さい。アモルファス内側鉄心16は鉄心重量も小さくなることから、アモルファス鉄心用受け(絶縁板)14を介在させて、巻線3の上端面で支持することができる。このため、アモルファス内側鉄心16の鉄心長は最短となることから、本構造はハイブリッド鉄心変圧器の小型化と軽量化に貢献する。
【0027】
図7はアモルファス外側鉄心1の支持状態を説明する斜視図であり、
図8はその正面図である。
アモルファス外側鉄心1は鉄心重量が大きくなることから、締金具4とスタッド15で構成した支持枠に支持梁11を渡し、締金具4の下端面で絶縁物を介して固定する。これにより、アモルファス外側鉄心1は支持梁11の上端面で支持することができる。このため、アモルファス外側鉄心1の鉄心長も最短となることから、本構造はハイブリッド鉄心変圧器の小型化と軽量化に貢献する。
【0028】
図9は組立前のアモルファス外側鉄心20の構成を示す斜視図であり、
図10はその正面図である。
アモルファス外側鉄心20は巻鉄心であり、長さを少しずつ変えたアモルファス薄帯を何千枚も積層して形成する。
【0029】
アモルファス外側鉄心20は支持板12によって搬送することが可能である。巻線3に、アモルファス外側鉄心20の開放したラップ部を挿入し、挿入後、ラップ部を閉じて組み立てる。また、アモルファス外側鉄心20の支持板12は、部品としてそのまま組み込むこともできる。
【0030】
図11は組立後(ラップ後)のアモルファス外側鉄心30の構成を示す斜視図であり、
図12はその正面図である。
図11、
図12に示すように、組立後のアモルファス外側鉄心30はレーストラック状の巻鉄心となる。
【0031】
図13はアモルファス外側鉄心用支持板12の構成を示す斜視図であり、
図14はその正面図である。
アモルファス外側鉄心用支持板12には、アモルファス外側鉄心1の内周側コーナー(R部)支持部21が設置されている。アモルファス外側鉄心1の重量はすべてアモルファス外側鉄心用支持板12で支えることになるため、アモルファス外側鉄心用支持板12に半径Rの曲率を持たせる。これにより、アモルファス外側鉄心1の重量がアモルファス外側鉄心1の内周側角部に集中することを防止することができる。
【0032】
また、アモルファス外側鉄心用支持板12の両側部には、アモルファス外側鉄心1の2側面の位置を規制する2枚の仕切り板(吊り耳)22が、アモルファス外側鉄心用支持板12から延長して設置されている。さらに、2枚の仕切り板(吊り耳)22には、貫通穴23が2箇所に設置されている。この貫通穴23に2本のシャフトを通して固定し、このシャフトにワイヤーロープをかけて、アモルファス外側鉄心1を吊ることができる。
【0033】
次に、
図13、
図14を参照して、アモルファス鉄心用支持板12の効果について説明する。
アモルファス外側鉄心用支持板12に、2枚の仕切り板(吊り耳)22がない場合、ワイヤーロープはアモルファス外側鉄心用支持板12の底をくぐらせる必要がある。このため、鉄心搬送後、ワイヤーロープを取り外す場合、アモルファス鉄心間のギャップは少なくともワイヤーロープの直径以上、確保する必要がある。このため、ハイブリッド鉄心変圧器の小型化の制約となっていた。
【0034】
アモルファス外側鉄心用支持板12に、2枚の仕切り板(吊り耳)22がある場合、アモルファス鉄心の位置ずれを防止することができる。また、ワイヤーロープの取り外しも容易になり、アモルファス鉄心間のギャップ(ワイヤーロープの直径以上)の制約も緩和され、ハイブリッド鉄心変圧器100の小型化に貢献する。
【0035】
図15は、アモルファス鉄心保護ケース9、10と、アモルファス外側鉄心1とアモルファス内側鉄心16のみを配置した状態を示す正面図である。
アモルファス鉄心保護ケース9、10に特徴があり、アモルファス鉄心保護ケース9、10鉄心(主脚、側脚)の側方板(主脚は紙面手前と奥の2枚、側脚は紙面手前と奥の側方の3枚)を、アモルファス外側鉄心1の端部まで延長させた(点線部に示す6箇所)。
【0036】
図16は
図15に珪素鋼板鉄心2を追加したものである。
アモルファス鉄心保護ケース9、10の延長部(点線部の6箇所)を利用して、珪素鋼板鉄心2を配置することにより上部継鉄と下部継鉄を構成することができる。珪素鋼板鉄心2を配置した状態では、アモルファス外側鉄心1の継鉄(ヨーク部)は正面からは見え難くなり、珪素鋼板鉄心2と略同一位置であるといえる。
【0037】
図17は
図16に締金具用当板5を追加したものである。締金具用当板5を配置した状態では、アモルファス外側鉄心1と、珪素鋼板鉄心2の継鉄(ヨーク部)は正面からは見え難くなり、締金具用当板5と略同一位置であるといえる。
【0038】
図18は
図17にバインド用当板6、7を追加し、主脚と側脚をバインドテープ8を巻きつけて固定したものである。
【0039】
図19は
図18に巻線3と、アモルファス鉄心用受け(絶縁板)14を追加したものである。
ハイブリッド鉄心変圧器100の上部継鉄と下部継鉄において、アモルファス鉄心、アモルファス鉄心保護ケース9、10、珪素鋼板鉄心2及び締金具用当板5が略同一高さに配置されている。
【0040】
図20はハイブリッド鉄心の支持状態を示し、支持板12の中心部におけるハイブリッド鉄心変圧器100の断面概略図である。
図示していないが、アモルファス鉄心保護ケース9を中心に配置し、アモルファス鉄心保護ケース9の左右に、珪素鋼板鉄心2と締金具用当板5を当てがい、それらを締金具4によって挟み込む。これにより、ハイブリッド鉄心変圧器100の機械的強度及び剛性を確保する。
【0041】
さらに、締金具4の下端面にアモルファス外側鉄心用支持梁11をネジ等で固定することにより、アモルファス外側鉄心1を、絶縁板14を介してアモルファス外側鉄心用支持梁11の上端面で支持する。また、アモルファス内側鉄心16は、絶縁板14を介して巻線3の上端面で支持する。
【0042】
このように、アモルファス内側鉄心16は、巻線3の上端面でアモルファス内側鉄心用支持板13を介して支持される。一方、アモルファス外側鉄心1は、アモルファス外側鉄心用支持梁11の上端面でアモルファス外側鉄心用支持板12を介して支持される。そして、アモルファス外側鉄心1及びアモルファス内側鉄心16で構成されるアモルファス鉄心の脚部の積層方向と珪素鋼板鉄心2の積層方向が直交して配置される。
【0043】
上述のように、実施例1では、アモルファス外側鉄心1とアモルファス内側鉄心16には締め込む方向の応力は付与されないため、アモルファス鉄心の磁気損失が増加することを防止できる。
【実施例3】
【0050】
実施例3では、主脚用アモルファス鉄心保護ケースの別の例を説明する。
【0051】
図22は、アモルファス鉄心保護ケース31を、高強度の絶縁紙(プレスボード)で構成した場合の例である。
図23はその組立前の状態を示す。
【0052】
アモルファス鉄心保護ケース31の側部は段が付いているため、その階段部(角部)と巻線の内周が干渉しないことが重要である。そこで、階段部(角部)はR形状としている。このR形状を高強度の絶縁紙で実現するためには、一枚の厚い絶縁紙を曲げて成形することは困難である。
【0053】
このため、1mm以下の比較的薄い絶縁紙を折り紙にように予め曲げておき、それを接着積層することで、曲げ板積層材32を製作することができる。また、
図22に示すように、アモルファス鉄心保護ケース31の内部の積層板材33、34の一部に切り欠きを設け、その切り欠き部にL型アングル35を埋め込み、L型アングル35を用いて、積層板材33、34を十字形状に固定する。
【0054】
図24は、アモルファス鉄心保護ケースを、2分割の曲げ板積層材42、43で構成した場合の例である。
図25はその組立前の状態を示す。
2分割の曲げ板積層材42、43は分割部において接着することから、十分な接着面積を確保するため、一部をオーバーラップ(図示せず)又はステップラップさせて積層する。
【0055】
図26は、アモルファス鉄心保護ケース51を、曲げ板積層材52と積層板材53で構成した場合の例である。
図27はその組立前の状態を示す。
曲げ板積層材52と積層板材53は分割部において接着することから、十分な接着面積を確保するため、一部をオーバーラップ(図示せず)又はステップラップさせて積層する。
【0056】
上記実施例によれば、アモルファス鉄心と珪素鋼板鉄心で構成されたハイブリッド鉄心変圧器において、アモルファス鉄心の占積率向上、アモルファス鉄心の保護及び磁気特性の確保が可能である。