特許第6963494号(P6963494)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963494
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】中空構造素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B81B 3/00 20060101AFI20211028BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20211028BHJP
   G01L 1/18 20060101ALI20211028BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20211028BHJP
   G01N 5/02 20060101ALN20211028BHJP
【FI】
   B81B3/00
   B81C1/00
   G01L1/18 A
   H01L29/84 B
   !G01N5/02 Z
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-246442(P2017-246442)
(22)【出願日】2017年12月22日
(65)【公開番号】特開2019-111607(P2019-111607A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2020年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】村上 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】望月 秀則
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3489309(JP,B2)
【文献】 特開2002−350260(JP,A)
【文献】 特許第6862964(JP,B2)
【文献】 特許第5743026(JP,B2)
【文献】 特許第6237978(JP,B2)
【文献】 特許第5891465(JP,B2)
【文献】 特許第5649138(JP,B2)
【文献】 特許第5454628(JP,B2)
【文献】 特許第6642044(JP,B2)
【文献】 米国特許第8291745(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81B 3/00
B81C 1/00
G01N 5/02
G01L 1/18
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加された表面応力によって撓むメンブレンと、
前記メンブレンの厚さ方向から見て当該メンブレンと離間し、且つ前記メンブレンを包囲する枠部材と、
前記厚さ方向から見て前記メンブレンを挟む位置に配置されて当該メンブレンと前記枠部材とを連結する少なくとも一対の連結部と、
前記枠部材に連結され、且つ前記厚さ方向から見て、前記メンブレンと、前記枠部材と、前記連結部と、に包囲された周辺膜部と、
前記枠部材に接続され、且つ前記厚さ方向から見て、前記メンブレン、前記連結部及び前記周辺膜部と重なる支持基材と、を備え、
前記メンブレン、前記連結部及び前記周辺膜部と、前記支持基材と、の間に空隙部が設けられ、
前記周辺膜部及び前記支持基材のうち少なくとも一方に、前記空隙部まで貫通する貫通部が形成され、
前記厚さ方向から見て、前記メンブレン及び前記連結部と、前記周辺膜部と、の間にスリットが形成され、
前記スリットの幅は、前記貫通部の中心を挟んで対向する内壁面の最小距離よりも狭い中空構造素子。
【請求項2】
前記周辺膜部にのみ、前記貫通部が形成されている請求項1に記載した中空構造素子。
【請求項3】
前記最小距離は、1μm以上10μm以下の範囲内である請求項1または請求項2に記載した中空構造素子。
【請求項4】
前記スリットの幅は、0.5μm以上5μm以下の範囲内である請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した中空構造素子。
【請求項5】
前記連結部のうち少なくとも一つに備えられ、当該連結部に起きた撓みに応じて抵抗値が変化する可撓性抵抗をさらに備える請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した中空構造素子。
【請求項6】
支持基材の一方の面に凹部を形成し、さらに、前記支持基材へ前記凹部を覆うように膜基材を貼り合わせることで、前記支持基材と前記膜基材との間に空隙部が設けられた積層体を形成する積層体形成工程と、
前記膜基材の前記支持基材と対向する面と反対側の面に、印加された表面応力によって撓むメンブレンを形成するメンブレン形成領域と、前記支持基材と前記膜基材とを積層した方向である積層方向から見て前記メンブレンと離間するとともにメンブレンを包囲する枠部材を形成する枠部材形成領域と、前記積層方向から見て前記メンブレンを挟む位置に配置されてメンブレンと前記枠部材とを連結する少なくとも一対の連結部を形成する連結部形成領域と、前記積層方向から見て前記メンブレン形成領域と前記枠部材形成領域と前記連結部形成領域とに包囲された領域である周辺膜部形成領域と、を設定する領域設定工程と、
前記周辺膜部形成領域の前記空隙部と対向する面と反対側の面に空隙部まで貫通する貫通部をエッチングによって形成するとともに、前記メンブレン形成領域及び前記連結部形成領域と、前記周辺膜部形成領域と、の間に前記空隙部まで貫通するスリットを前記貫通部よりも小さいエッチングレートのエッチングによって形成するエッチング工程と、を備え、
前記エッチング工程では、前記スリットを形成することで、前記メンブレンを前記メンブレン形成領域に形成し、前記枠部材を前記枠部材形成領域に形成し、前記連結部を前記連結部形成領域に形成し、前記枠部材に連結され、且つ前記積層方向から見て、前記メンブレンと、前記枠部材と、前記連結部と、に包囲された周辺膜部を前記周辺膜部形成領域に形成する中空構造素子の製造方法。
【請求項7】
支持基材の一方の面に犠牲層を積層し、さらに、前記犠牲層に膜基材を積層して積層体を形成する積層体形成工程と、
前記膜基材の前記支持基材と対向する面と反対側の面に、印加された表面応力によって撓むメンブレンを形成するメンブレン形成領域と、前記支持基材と前記膜基材とを積層した方向である積層方向から見て前記メンブレンと離間するとともにメンブレンを包囲する枠部材を形成する枠部材形成領域と、前記積層方向から見て前記メンブレンを挟む位置に配置されてメンブレンと前記枠部材とを連結する少なくとも一対の連結部を形成する連結部形成領域と、前記積層方向から見て前記メンブレン形成領域と前記枠部材形成領域と前記連結部形成領域とに包囲された領域である周辺膜部形成領域と、を設定する領域設定工程と、
前記メンブレン形成領域、前記連結部形成領域及び前記周辺膜部形成領域のうち少なくとも一つの領域に、前記犠牲層まで貫通するホールを形成するホール形成工程と、
前記ホールを介したエッチングにより、前記メンブレン形成領域、前記連結部形成領域及び前記周辺膜部形成領域と、前記支持基材と、の間に配置された前記犠牲層を除去して、前記支持基材と前記膜基材との間に空隙部を設ける空隙部形成工程と、
前記膜基材の前記支持基材と対向する面と反対側の面に酸化膜を形成して前記ホールを封止するホール封止工程と、
前記周辺膜部形成領域の前記空隙部と対向する面と反対側の面に空隙部まで貫通する貫通部をエッチングによって形成するとともに、前記メンブレン形成領域及び前記連結部形成領域と、前記周辺膜部形成領域と、の間に前記空隙部まで貫通するスリットを前記貫通部よりも小さいエッチングレートのエッチングによって形成するエッチング工程と、を備え、
前記エッチング工程では、前記スリットを形成することで、前記メンブレンを前記メンブレン形成領域に形成し、前記枠部材を前記枠部材形成領域に形成し、前記連結部を前記連結部形成領域に形成し、前記枠部材に連結され、且つ前記積層方向から見て、前記メンブレンと、前記枠部材と、前記連結部と、に包囲された周辺膜部を前記周辺膜部形成領域に形成する中空構造素子の製造方法。
【請求項8】
前記エッチング工程では、前記貫通部の中心を挟んで対向する内壁面の最小距離よりも前記スリットの幅が狭くなるようにエッチングを行うことで、前記スリットを形成するエッチングのエッチングレートを、前記貫通部を形成するエッチングのエッチングレートよりも小さくする請求項6または請求項7に記載した中空構造素子の製造方法。
【請求項9】
前記領域設定工程では、さらに、前記枠部材形成領域に対して、第一のイオンを注入する領域である可撓性抵抗形成領域を設定し、前記連結部形成領域に対して、前記可撓性抵抗形成領域よりも外側の領域であり、且つ第二のイオンを注入する領域である低抵抗形成領域と、を設定し、
前記可撓性抵抗形成領域に前記第一のイオンを注入する第一イオン注入工程と、
前記低抵抗形成領域に前記第二のイオンを注入する第二イオン注入工程と、
前記第一のイオン及び前記第二のイオンを注入した前記積層体を熱処理することで、前記第一のイオンを注入した前記可撓性抵抗形成領域に可撓性抵抗領域を形成するとともに、前記第二のイオンを注入した前記低抵抗形成領域に低抵抗領域を形成する熱処理工程と、
前記連結部に起きた撓みに応じて抵抗値が変化する可撓性抵抗と電気的に接続された配線層を形成する配線層形成工程と、を備える請求項6から請求項8のうちいずれか1項に記載した中空構造素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、可動部を持つMEMS構造を有する半導体装置であり、基材に形成された空隙部を圧力開放することで可動部を形成した中空構造素子と、中空構造素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種センサとして実用化が進んでいる構造であるMEMS構造のデバイスでは、エッチング加工時に、膜基材の膜厚が薄くなり、破断するおそれがある。なお、膜基材とは、空隙部を形成するキャビティの上方へ配置する層を形成する基材であり、キャビティの上方へ配置する層は、可動部が形成される層である。
これに対し、例えば、特許文献1には、予め、膜基材へ切り欠きを設けておくことで、膜基材の破断を抑制する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−123547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術のように、膜基材へ切り欠きを設けておく技術は、一度のエッチングで膜基材をパターニングして可動部を形成する方法に適用すると、膜基材の破断を抑制することが困難であるという問題点が発生する。
本発明は、従来では未解決の問題に着目してなされたものであり、圧力開放を伴う加工の際に発生する膜基材の破断を抑制することが可能な、中空構造素子と、中空構造素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る中空構造素子は、メンブレンと、枠部材と、少なくとも一対の連結部と、周辺膜部と、支持基材と、を備え、メンブレン、連結部及び周辺膜部と、支持基材と、の間には、空隙部が設けられている。メンブレンは、印加された表面応力によって撓む。枠部材は、メンブレンの厚さ方向から見てメンブレンと離間し、メンブレンを包囲する。連結部は、メンブレンの厚さ方向から見てメンブレンを挟む位置に配置されており、メンブレンと枠部材とを連結する。周辺膜部は、枠部材に連結されており、メンブレンの厚さ方向から見て、メンブレンと、枠部材と、連結部に包囲されている。枠部材に接続されており、メンブレンの厚さ方向から見て、メンブレン、連結部及び周辺膜部と重なる。そして、周辺膜部及び支持基材のうち少なくとも一方には、空隙部まで貫通する貫通部が形成されている。また、メンブレンの厚さ方向から見て、メンブレン及び連結部と、周辺膜部と、の間には、スリットが形成されている。さらに、スリットの幅は、貫通部の中心を挟んで対向する内壁面の最小距離よりも狭い。
【0006】
また、本発明の他の態様に係る中空構造素子の製造方法は、積層体形成工程と、領域設定工程と、エッチング工程と、を備える。積層体形成工程は、支持基材の一方の面に凹部を形成し、さらに、支持基材へ凹部を覆うように膜基材を貼り合わせることで、支持基材と膜基材との間に空隙部が設けられた積層体を形成する工程である。領域設定工程は、膜基材の支持基材と対向する面と反対側の面に、メンブレン形成領域と、枠部材形成領域と、連結部形成領域と、周辺膜部形成領域を設定する工程である。メンブレン形成領域は、印加された表面応力によって撓むメンブレンを形成する領域である。枠部材形成領域は、支持基材と膜基材とを積層した方向である積層方向から見てメンブレンと離間するとともにメンブレンを包囲する枠部材を形成する領域である。連結部形成領域は、積層方向から見てメンブレンを挟む位置に配置されてメンブレンと枠部材とを連結する少なくとも一対の連結部を形成する領域である。周辺膜部形成領域は、積層方向から見てメンブレン形成領域と枠部材形成領域と連結部形成領域とに包囲された領域である。エッチング工程は、周辺膜部形成領域の空隙部と対向する面と反対側の面に、空隙部まで貫通する貫通部をエッチングによって形成する工程である。これに加え、エッチング工程は、メンブレン形成領域及び連結部形成領域と、周辺膜部形成領域と、の間に、空隙部まで貫通するスリットを貫通部よりも小さいエッチングレートのエッチングによって形成する工程である。そして、エッチング工程では、メンブレンをメンブレン形成領域に形成し、枠部材を枠部材形成領域に形成し、連結部を連結部形成領域に形成する。これに加え、エッチング工程では、枠部材に連結され、且つ積層方向から見て、メンブレンと、枠部材と、連結部と、に包囲された周辺膜部を周辺膜部形成領域に形成する。
【0007】
また、本発明の他の態様に係る中空構造素子の製造方法は、積層体形成工程と、領域設定工程と、ホール形成工程と、空隙部形成工程と、ホール封止工程と、エッチング工程と、を備える。積層体形成工程は、支持基材の一方の面に犠牲層を積層し、さらに、犠牲層に膜基材を積層して積層体を形成する工程である。領域設定工程は、膜基材の支持基材と対向する面と反対側の面に、メンブレン形成領域と、枠部材形成領域と、連結部形成領域と、周辺膜部形成領域を設定する工程である。メンブレン形成領域は、印加された表面応力によって撓むメンブレンを形成する領域である。枠部材形成領域は、支持基材と膜基材とを積層した方向である積層方向から見てメンブレンと離間するとともにメンブレンを包囲する枠部材を形成する領域である。連結部形成領域は、積層方向から見てメンブレンを挟む位置に配置されてメンブレンと枠部材とを連結する少なくとも一対の連結部を形成する領域である。周辺膜部形成領域は、積層方向から見てメンブレン形成領域と枠部材形成領域と連結部形成領域とに包囲された領域である。ホール形成工程は、メンブレン形成領域、連結部形成領域及び周辺膜部形成領域のうち少なくとも一つの領域に、犠牲層まで貫通するホールを形成する工程である。空隙部形成工程は、ホールを介したエッチングにより、メンブレン形成領域、連結部形成領域及び周辺膜部形成領域と、支持基材と、の間に配置された犠牲層を除去して、支持基材と膜基材との間に空隙部を設ける工程である。ホール封止工程は、膜基材の支持基材と対向する面と反対側の面に酸化膜を形成してホールを封止する工程である。エッチング工程は、周辺膜部形成領域の空隙部と対向する面と反対側の面に、空隙部まで貫通する貫通部をエッチングによって形成する工程である。これに加え、エッチング工程は、メンブレン形成領域及び連結部形成領域と、周辺膜部形成領域と、の間に、空隙部まで貫通するスリットを貫通部よりも小さいエッチングレートのエッチングによって形成する工程である。そして、エッチング工程では、メンブレンをメンブレン形成領域に形成し、枠部材を枠部材形成領域に形成し、連結部を連結部形成領域に形成する。これに加え、エッチング工程では、枠部材に連結され、且つ積層方向から見て、メンブレンと、枠部材と、連結部と、に包囲された周辺膜部を周辺膜部形成領域に形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、メンブレンを撓ませるために形成するスリットの幅よりも、貫通部の中心を挟んで対向する内壁面の最小距離が大きくなる。
これにより、圧力開放を伴うエッチング加工時に、膜基材のうちスリットを形成する部分よりも先に、膜基材のうち貫通部を形成する部分が空隙部まで貫通するため、空隙部の内部と外部との圧力差が無くなる。このため、圧力開放を伴う加工の際に発生する膜基材の破断を抑制することが可能な、中空構造素子と、中空構造素子の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一実施形態に係る中空構造素子の構成を表す側面図である。
図2図1のII線矢視図である。
図3図2のIII‐III線断面図である。
図4図2のIV‐IV線断面図である。
図5図2のV‐V線断面図である。
図6図2中に円VIで囲んだ範囲を含む拡大図である。
図7】中空構造素子の斜視図である。
図8】積層体形成工程を示す図である。
図9】領域設定工程を示す図である。
図10】第一イオン注入工程及び第二イオン注入工程を示す図である。
図11】配線層形成工程を示す図である。
図12】配線層形成工程を示す図である。
図13】配線層形成工程を示す図である。
図14】配線層形成工程を示す図である。
図15】配線層形成工程を示す図である。
図16】エッチング工程を示す図である。
図17】第一実施形態の中空構造素子の動作・作用を示す図である。
図18】第一実施形態の変形例を示す図である。
図19】本発明の第二実施形態に係る中空構造素子の構成を表す側面図である。
図20】積層体形成工程、第一イオン注入工程及び第二イオン注入工程を示す図である。
図21】ホール形成工程を示す図である。
図22】空隙部形成工程を示す図である。
図23】ホール封止工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本発明の実施形態を以下において説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一、または類似の部分には、同一、または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、厚さの比率等は、現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
さらに、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質や、それらの形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」に、「右」が「左」になることは勿論である。
【0011】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1から図7を用いて、第一実施形態の構成を説明する。
図1から図7中に表す中空構造素子1は、例えば、気体や液体に対して味覚や嗅覚を検出する表面応力センサに用いられる素子である。また、中空構造素子1は、パッケージ基板2と、接続部4と、支持基材10と、膜基材20を備える。
(パッケージ基板)
パッケージ基板2は、例えば、金属、ポリマー、セラミック材等を用いて形成されており、例えば、ミリメートルオーダーの厚さで形成されている。
(接続部)
接続部4は、パッケージ基板2の一方の面(図1中では、上側の面)に配置されており、例えば、接着剤や半田等を用いて形成されている。
第一実施形態では、一例として、接続部4の形状を、円形に形成した場合について説明する。
【0012】
(支持基材)
支持基材10は、パッケージ基板2の一方の面に配置されており、接続部4を介して、パッケージ基板2に取り付けられている。
第一実施形態では、一例として、支持基材10の中心が、接続部4を配置する位置と重なる場合について説明する。
支持基材10の面積(図1中では、支持基材10を上下方向から見た支持基材10の面積)は、接続部4の面積よりも大きい。
支持基材10の厚さ(図1中では、支持基材10の上下方向への長さ)は、80[μm]以上に設定されている。なお、支持基材10の厚さは、80[μm]以上750[μm]以下の範囲内に設定してもよい。
支持基材10を形成する材料としては、例えば、ケイ素(Si:シリコン)、サファイア、ガリウムヒ素、ガラス、石英のうちいずれかを含む材料を用いることが可能である。
第一実施形態では、一例として、支持基材10を形成する材料として、ケイ素を用いた場合について説明する。
【0013】
これにより、第一実施形態では、支持基材10の線膨張係数を、5.0×10−6/℃以下としている。
以下に、支持基材10を形成する材料として用いることが可能な材料の、線膨張係数を記載する。
ケイ素の線膨張係数は、常温以上1000℃以下の環境下で、3.9×10−6/℃以下である。
サファイアの線膨張係数は、0℃以上1000℃以下の環境下で、9.0×10−6/℃以下である。
ガリウムヒ素(GaAs)の線膨張係数は、0K以上300K以下の環境下で、6.0×10−6/℃以下である。
ガラス(フロートガラス)の線膨張係数は、0℃以上300℃以下の環境下で、8.5×10−6/℃以下〜9.0×10−6/℃以下である。
石英の線膨張係数は、0℃以上300℃以下の環境下で、0.59×10−6/℃以下である。なお、石英の線膨張係数は、300℃の近辺にピークが有る。
【0014】
(膜基材)
膜基材20は、支持基材10の一方の面(図1中では、上側の面)に積層されており、メンブレン22と、枠部材24と、連結部26と、周辺膜部28が一体となって形成されている。
第一実施形態では、一例として、膜基材20を形成する材料に、ケイ素を用いた場合について説明する。
また、膜基材20を形成する材料は、支持基材10の線膨張係数と、膜基材20の線膨張係数との差が、1.2×10−5/℃以下となる材料を用いる。
第一実施形態では、膜基材20を形成する材料と、支持基材10を形成する材料とを、同一の材料とした場合について説明する。
【0015】
(メンブレン)
メンブレン22は、板状に形成されている。
第一実施形態では、一例として、メンブレン22を、円板状に形成した場合について説明する。
また、メンブレン22は、n型半導体層である。
メンブレン22の一方の面(図1中では、上側の面)には、受容体30が塗布されている。
受容体30(レセプター)は、例えば、ポリエチレンイミンを用いて形成されており、ガスの分子が吸着することで歪みが発生する。
受容体30にガスの分子が吸着して、受容体30に歪みが発生すると、メンブレン22に表面応力が印加され、メンブレン22が撓む。したがって、メンブレン22は、受容体30にガスの分子が吸着すると、印加された表面応力によって撓む。
なお、受容体30の構成は、ガスの分子が吸着することで歪みが発生する構成に限定するものではなく、例えば、磁気によって歪みが発生する構成としてもよい。すなわち、受容体30の構成は、中空構造素子1の検出対象に応じて、適宜変更してもよい。
【0016】
(枠部材)
枠部材24は、井桁状に形成されており、メンブレン22の厚さ方向から見て、隙間を空けてメンブレン22を包囲している。
メンブレン22の厚さ方向から見た視点とは、中空構造素子1を上方から見た視点(図1では、矢印IIの方向から見た視点)である。
メンブレン22の厚さ方向から見て、枠部材24の中心は、メンブレン22の中心と重なっている。
また、枠部材24は、接着等、各種の接合技術を用いて、支持基材10のうち、パッケージ基板2と対向する面と反対側の面(図1中では、上側の面)に接続されている。
【0017】
第一実施形態では、一例として、枠部材24及び支持基材10の形状を、メンブレン22の厚さ方向から見て、支持基材10の外周面と枠部材24の外周面とが、面一である形状に形成した場合について説明する。
すなわち、枠部材24と支持基材10は、メンブレン22の厚さ方向から見て、同じ形状の四辺形である。これは、例えば、枠部材24と支持基材10とを接続した後に、枠部材24及び支持基材10に対してダイシング加工を行うことで実現する。すなわち、メンブレン22の厚さ方向から見て、枠部材24の中心は、支持基材10の中心と重なっている。
【0018】
したがって、支持基材10は、メンブレン22の厚さ方向から見て、メンブレン22及び枠部材24と重なっている。
さらに、接続部4は、メンブレン22の厚さ方向から見て、メンブレン22の少なくとも一部と重なる位置に配置されている。
また、メンブレン22の厚さ方向から見て、接続部4の面積は、メンブレン22の面積よりも小さい。
また、パッケージ基板2は、支持基材10のメンブレン22と対向する面と反対側の面(図1中では、下側の面)に接続されている。
【0019】
(連結部)
連結部26は、メンブレン22の厚さ方向から見て、帯状に形成されている。
また、連結部26は、メンブレン22の厚さ方向から見て、メンブレン22の中心を通過する仮想直線VL1及び仮想直線VL2と重なる位置に配置されており、メンブレン22と枠部材24とを連結している。
第一実施形態では、一例として、メンブレン22と枠部材24とが、二対である四つの連結部26a〜26dで連結されている場合について説明する。
四つの連結部26a〜26dは、仮想直線VL1と重なる位置に配置されている一対の連結部26a及び連結部26bと、仮想直線VL1と直交する仮想直線VL2と重なる位置に配置されている一対の連結部26c及び連結部26dを含む。
【0020】
すなわち、一対の連結部26a及び連結部26bと、一対の連結部26c及び連結部26dは、メンブレン22の厚さ方向から見て、メンブレン22を挟む位置に配置されており、メンブレン22と枠部材24とを連結する。
第一実施形態では、一例として、連結部26a及び連結部26bの幅が、連結部26c及び連結部26dの幅よりも狭い場合について説明する。
四つの連結部26a〜26dには、それぞれ、可撓性抵抗50a〜50dが備えられている。なお、可撓性抵抗50の説明は、後述する。
【0021】
(周辺膜部)
周辺膜部28は、枠部材24に連結されており、メンブレン22の厚さ方向から見て、メンブレン22と、枠部材24と、連結部26とに包囲されている。
第一実施形態では、一例として、膜基材20が、四つの周辺膜部28a〜28dを備える場合について説明する。
周辺膜部28aは、メンブレン22と、枠部材24と、連結部26a及び連結部26dとに包囲されている。周辺膜部28bは、メンブレン22と、枠部材24と、連結部26a及び連結部26cとに包囲されている。周辺膜部28cは、メンブレン22と、枠部材24と、連結部26b及び連結部26cとに包囲されている。周辺膜部28dは、メンブレン22と、枠部材24と、連結部26b及び連結部26dとに包囲されている。
メンブレン22、四つの連結部26a〜26d及び四つの周辺膜部28a〜28dと、支持基材10との間には、空隙部40が設けられている。
【0022】
なお、中空構造素子1を溶液中で使用する場合には、空隙部40が溶液で満たされてもよい。
空隙部40は、膜基材20の加工途中においてメンブレン22が支持基材10の側へ撓む際に、メンブレン22が支持基材10に張り付くことを防ぐ空間として機能する。
各周辺膜部28a〜28dには、空隙部40まで貫通する貫通部DPが形成されている。
第一実施形態では、一例として、一つの周辺膜部28に、三つの貫通部DPが形成されている場合について説明する。三つの貫通部DPは、それぞれの中心点が、直角三角形の点となる位置に配置されている。
【0023】
また、第一実施形態では、一例として、貫通部DPの開口形状を、円形に形成した場合について説明する。
また、メンブレン22の厚さ方向から見て、メンブレン22及び連結部26と、周辺膜部28との間には、スリットSLが形成されている。
スリットSLは、膜基材20の支持基材10と対向する面と反対側の面(図5中では、上側の面)と、空隙部40とを連通させている。
【0024】
第一実施形態では、膜基材20が、四つの周辺膜部28a〜28dを備えている。このため、第一実施形態では、膜基材20に、四つのスリットSLa〜SLdが形成されている場合について説明する。
スリットSLaは、メンブレン22、連結部26a及び連結部26dと、周辺膜部28aとの間に形成されている。スリットSLbは、メンブレン22、連結部26a及び連結部26cと、周辺膜部28bとの間に形成されている。スリットSLcは、メンブレン22、連結部26b及び連結部26cと、周辺膜部28cとの間に形成されている。スリットSLdは、メンブレン22、連結部26b及び連結部26dと、周辺膜部28dとの間に形成されている。
【0025】
図6中に示すように、メンブレン22の厚さ方向から見たスリットSLの幅WSは、貫通部DPの中心を挟んで対向する内壁面の最小距離DSminよりも狭い。なお、最小距離DSminは、貫通部DPの中心を挟んで対向する内壁面間の距離のうち、最小(最短)の距離である。
第一実施形態では、一例として、スリットSLの幅WSを、0.5[μm]以上5[μm]以下の範囲内に設定する。
同様に、第一実施形態では、一例として、最小距離DSminを、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内に設定する。
【0026】
(可撓性抵抗)
各可撓性抵抗50は、連結部26に起きた撓みに応じて、抵抗値が変化する。
第一実施形態では、一例として、可撓性抵抗50を、ピエゾ抵抗で形成した場合について説明する。
ピエゾ抵抗は、例えば、連結部26へのイオンの注入によって形成されており、メンブレン22が撓むことで連結部26に起きた撓みに応じて変化する抵抗値を有している。
また、可撓性抵抗50は、p型半導体層である。
四つの可撓性抵抗50a〜50dは、例えば、図7中に示すように、互いに隣接する可撓性抵抗50(連結部26aと連結部26c及び連結部26d、連結部26bと連結部26c及び連結部26d)が接続されている。これにより、四つの可撓性抵抗50a〜50dは、図7に示すフルホイートストンブリッジを形成している。
(ピエゾ抵抗)
以下、ピエゾ抵抗の詳細な構成について説明する。
ピエゾ抵抗の抵抗値(R)と、ピエゾ抵抗の抵抗値の相対抵抗変化(ΔR/R)は、以下の式(1)から(3)で与えられる。
【0027】
【数1】
【0028】
【数2】
【0029】
【数3】
【0030】
式(1)から式(3)において、「ρ」はピエゾ抵抗の抵抗率、「l」はピエゾ抵抗の長さ、「w」はピエゾ抵抗の幅、「t」はピエゾ抵抗の厚さである。さらに、式(1)から式(3)において、「σ」はピエゾ抵抗に誘起される応力、「ε」はピエゾ抵抗に誘起される歪、「π」はピエゾ抵抗定数である。
また、式(1)から式(3)において、「x」はカンチレバーの長手方向、「y」はカンチレバーの横方向、「z」はカンチレバーの法線方向に対応する。
歪と応力の関係は、一般化されたHookeの法則から導くことが可能である。
【0031】
【数4】
【0032】
【数5】
【0033】
【数6】
【0034】
式(4)から式(6)において、「E」はカンチレバーのYoung率であり、「ν」はカンチレバーのPoisson比である。したがって、平面応力である(すなわちσ=0)と仮定すれば、相対抵抗変化は、以下の式(7)で記述することが可能である。
【0035】
【数7】
【0036】
ここで、大きな信号を獲得し、シリコンが有する高いピエゾ係数を最大限利用するために、単結晶Si(100)を用いて形成されることで、p型半導体層を形成するピエゾ抵抗を検討する。ピエゾ抵抗係数は、以下の式(8)及び式(9)で示す関係によって決定される。
【0037】
【数8】
【0038】
【数9】
【0039】
式(8)及び式(9)において、「π11、π12及びπ44」は、結晶の基本ピエゾ抵抗係数である。x方向が[110]に整列したp型Si(100)であり、y方向が[1−10]に整列したp型Si(100)である場合は、「π11」が、10−11Pa−1を単位として+6.6である。これに加え、「π12」が、10−11Pa−1を単位として−1.1であり、「π44」が、10−11Pa−1を単位として+138.1である。
したがって、ピエゾ抵抗係数πは、71.8×10−11Pa−1と計算され、ピエゾ抵抗係数πは、−66.3×10−11Pa−1と計算される。また、「E」は1.70×1011Paであり、「ν」は0.28である。そして、π>>(1+2ν)/Eであり、π>>−1/Eであり、π≒−π≒π44/2であるので、式(7)は、以下の式(10)で示すように近似することが可能である。
【0040】
【数10】
【0041】
したがって、ピエゾ抵抗の信号(すなわち、ΔR/R)は、主に「σ」と「σ」との差によって決まる。
(中空構造素子の製造方法)
図1から図7を参照しつつ、図8から図16を用いて、中空構造素子1の製造方法を説明する。なお、図8図10から図15の断面図は、図7のX−X線断面図に対応する。また、図16の断面図は、図7のY−Y線断面図に対応する。
中空構造素子1の製造方法は、積層体形成工程と、領域設定工程と、第一イオン注入工程と、第二イオン注入工程と、熱処理工程と、配線層形成工程と、エッチング工程を備える。
【0042】
(積層体形成工程)
積層体形成工程では、まず、図8(a)に示すように、支持基材10の材料となる第一シリコン基板60の一方の面に、リソグラフィー及びエッチング技術を用いて凹部62(トレンチ)を形成する。凹部62の深さは、例えば、7[μm]に設定する。
次に、凹部62を形成した第一シリコン基板60に対し、膜基材20の材料となる第二シリコン基板64を、接着等、各種の接合技術を用いて貼り合わせることで、図8(b)に示すように、積層体66(Cavityウェーハ)を形成する。
なお、第一シリコン基板60に対して、第二シリコン基板64を貼り合わせる工程は、一般的に、減圧した環境下で行う。
【0043】
上記のように、積層体形成工程を行うことで、積層体66の所定の位置には、上下左右をシリコン(第一シリコン基板60、第二シリコン基板64)によって囲まれた空隙部40が形成される。
以上により、積層体形成工程では、支持基材10の一方の面に凹部62を形成し、さらに、支持基材10へ凹部62を覆うように膜基材20を貼り合わせることで、支持基材10と膜基材20との間に空隙部40が設けられた積層体66を形成する。
【0044】
(領域設定工程)
領域設定工程では、膜基材20の支持基材10と対向する面と反対側の面に対し、図9中に示すように、メンブレン形成領域122と、枠部材形成領域124と、連結部形成領域126と、周辺膜部形成領域128を設定する。
メンブレン形成領域122は、膜基材20のうち、メンブレン22を形成する領域である。枠部材形成領域124は、膜基材20のうち、枠部材24を形成する領域である。連結部形成領域126は、膜基材20のうち、連結部26を形成する領域である。周辺膜部形成領域128は、膜基材20のうち、積層方向から見てメンブレン形成領域122と枠部材形成領域124と連結部形成領域126とに包囲された領域であり、周辺膜部28を形成する領域である。なお、「積層方向」は、支持基材10と膜基材20とを積層した方向であり、メンブレン22の厚さ方向と同じ方向である。
【0045】
さらに、領域設定工程では、図9中に示すように、枠部材形成領域124に対して可撓性抵抗形成領域170を設定し、連結部形成領域126に対して低抵抗形成領域172を設定する。
可撓性抵抗形成領域170は、第一イオン注入工程において、第一のイオンを注入する領域である。低抵抗形成領域172は、可撓性抵抗形成領域170よりも外側の領域であり、第二イオン注入工程において、第二のイオンを注入する領域である。
【0046】
(第一イオン注入工程)
第一イオン注入工程では、まず、図10に示すように、第二シリコン基板64の上側の面を酸化させて第一のシリコン酸化膜68aを形成し、フォトレジストのパターン(図示せず)を用いて、可撓性抵抗形成領域170に対し、選択的に第一のイオンを注入する。
以上により、第一イオン注入工程では、膜基材20の支持基材10と対向する面と反対側の面のうち、可撓性抵抗形成領域170に、第一のイオンを注入する。
【0047】
(第二イオン注入工程)
第二イオン注入工程では、第一イオン注入工程で用いたフォトレジストを除去し、さらに、第一イオン注入工程で用いたものとは異なるフォトレジストのパターン(図示せず)を形成し、図10中に示すように、低抵抗形成領域172に第二のイオンを注入する。
以上により、第二イオン注入工程では、可撓性抵抗形成領域170よりも外側の低抵抗形成領域172に、第二のイオンを注入する。
【0048】
(熱処理工程)
熱処理工程では、第二イオン注入工程で用いたフォトレジストを除去し、さらに、第一のイオン及び第二のイオンの活性化を目的として、積層体66に熱処理(アニール処理)を施す。積層体66に熱処理を施した後は、第一のシリコン酸化膜68aを除去する。
以上により、熱処理工程では、第一のイオン及び第二のイオンを注入した積層体66を熱処理することで、可撓性抵抗形成領域170に可撓性抵抗領域70を形成するとともに、低抵抗形成領域172に低抵抗領域72を形成する。
【0049】
(配線層形成工程)
配線層形成工程では、図11(a)に示すように、第二シリコン基板64の上側の面に対し、シリコン窒化膜74と第二のシリコン酸化膜68bとを順に積層する。そして、通常のリソグラフィー及び酸化膜エッチングにより、図11(b)に示すように、第二のシリコン酸化膜68bへ、ホール76を形成する。
次に、図12(a)に示すように、第二のシリコン酸化膜68bの上へ、Ti及びTiNで形成した積層膜78をスパッタリングによって形成し、熱処理を施す。積層膜78は、Al等の金属膜がSiへ異常拡散することを防止する役割を持つ、いわゆるバリアメタルであり、熱処理を施すことによって、ホール76の底部に存在するSiとTiの界面がシリサイド化して、低抵抗な接続を形成することが可能となる。
さらに、図12(b)に示すように、積層膜78の上へ、スパッタリングによって、Al等の金属膜80を積層する。
【0050】
次に、フォトリソグラフィー及びエッチング技術を用いて金属膜80をパターニングすることにより、図13(a)に示すような配線層82を形成する。さらに、図13(b)に示すように、絶縁層として第三のシリコン酸化膜68cを積層する。
その後、図14(a)に示すように、可撓性抵抗領域70及び膜基材の中心を含む予め設定した領域(後にメンブレンとなる領域)であるメンブレン形成領域122以外を覆うようなフォトレジストのパターン(図示せず)を形成する。さらに、エッチング技術によって、可撓性抵抗領域70及びメンブレン形成領域122に形成されている第二のシリコン酸化膜68bを除去する。そして、メンブレン形成領域122以外を覆うようなフォトレジストのパターン(図示せず)を形成して、図14(b)に示すように、メンブレン形成領域122のシリコン窒化膜74を除去する。
次に、図15に示すように、可撓性抵抗50からの出力を得るためのPAD86を、通常のフォトリソグラフィー及びエッチング技術によって形成する。
以上により、配線層形成工程では、可撓性抵抗50と電気的に接続された配線層82を形成する。
【0051】
(エッチング工程)
エッチング工程では、図16中に示すように、膜基材20のうち、周辺膜部形成領域128の空隙部40と対向する面と反対側の面から空隙部40まで貫通するようにエッチング(ドライエッチング)を施して、貫通部DPを形成する。
これに加え、エッチング工程では、図16中に示すように、膜基材20のうち、周辺膜部形成領域128の空隙部40と対向する面と反対側の面から空隙部40まで貫通するように、貫通部DPよりも小さいエッチングレートのエッチングを施す。これにより、スリットSLを形成する。また、スリットSLは、メンブレン形成領域122及び連結部形成領域126と、周辺膜部形成領域128との間に形成する。
なお、図16中では、説明のために、空隙部40と、第一シリコン基板60と、凹部62と、第二シリコン基板64と、貫通部DP及びスリットSL以外の図示を省略している。
【0052】
第一実施形態では、一例として、エッチング工程では、貫通部DPの中心を挟んで対向する内壁面の最小距離DSminよりも、スリットSLの幅WSが狭くなるようにエッチングを行う場合について説明する。これにより、第一実施形態では、スリットSLを形成するエッチングのエッチングレートを、貫通部DPを形成するエッチングのエッチングレートよりも小さくする。
貫通部DP及びスリットSLは、フォトリソグラフィー及びエッチング技術を用いて形成する。
スリットSL及び貫通部DPを形成するフォトマスクの構成を、最小距離DSminよりもスリットSLの幅WSが狭いパターンを設けた構成とする。
また、貫通部DPを形成するエッチングと、スリットSLを形成するエッチングは、同時に行う。
【0053】
第一実施形態では、一例として、エッチング工程では、貫通部DPの開口形状を、円形となるように形成する場合について説明する。
したがって、エッチング工程では、スリットSLを形成することで、メンブレン22をメンブレン形成領域122に形成し、枠部材24を枠部材形成領域124に形成する。これに加え、連結部26を連結部形成領域126に形成し、周辺膜部28を周辺膜部形成領域128に形成する。
【0054】
(動作・作用)
図1から図16を参照しつつ、図17を用いて、第一実施形態の動作と作用を説明する。
中空構造素子1を、例えば、嗅覚センサとして用いる際には、匂い成分を含んだガスの雰囲気中に受容体30を配置し、ガスが含む匂い成分を、受容体30に吸着させる。
受容体30にガスの分子が吸着して、受容体30に歪みが発生すると、メンブレン22に表面応力が印加され、メンブレン22が、例えば、厚さ方向に5[μm]以内の変位幅で撓む。
枠部材24は井桁状に形成されてメンブレン22を包囲しており、連結部26は、メンブレン22と枠部材24を両端部で連結している。このため、連結部26のうち、メンブレン22に連結している端部は自由端となっており、枠部材24に連結している端部は固定端となっている。
したがって、メンブレン22が撓むと、連結部26に、受容体30に発生した歪みに応じた撓みが起きる。そして、連結部26に起きた撓みに応じて、可撓性抵抗50が有する抵抗値が変化し、抵抗値の変化に応じた電圧の変化がPAD86から出力され、コンピュータ等におけるデータ検出に用いられる。
【0055】
中空構造素子1の製造時には、空隙部40が設けられた積層体66の第二シリコン基板64に対し、第二シリコン基板64の一部を切り取って開口させることで、空隙部40の内圧を開放させる(圧力開放を伴う)エッチング加工を行う。
ここで、膜基材20にスリットSLのみを形成する場合、例えば、図17(a)中に示すように、空隙部40の内圧が保持された状態で、第二シリコン基板64のスリットSLを形成する位置(スリット形成位置)にエッチング加工を行う。そして、第一シリコン基板60に対して第二シリコン基板64を貼り合わせる工程は、一般的に、減圧した環境下で行うため、空隙部40の内圧は、外圧よりも低い。
【0056】
したがって、エッチング加工が進行し、図17(b)中に示すように、スリット形成位置の膜厚が薄くなると、スリット形成位置に加わる外圧Poが、空隙部40の内圧Piよりも大きくなる(Po>Pi)。
このため、図17(b)中に示す状態から、エッチング加工が進行してスリット形成位置の膜厚が薄くなると、図17(c)中に示すように、外圧Poと内圧Piとの圧力差によって、減圧雰囲気にある空隙部40が一気に開放される。これにより、第二シリコン基板64が破断するため、スリットSLの形状が、予期しない異常な形状となり、メンブレン22や連結部26の撓みが阻害されて、可撓性抵抗50が有する抵抗値の変化が異常な値となるおそれがある。
【0057】
これに対し、第一実施形態では、メンブレン22及び連結部26を撓ませるために形成するスリットSLの幅WSを、貫通部DPの中心を挟んで対向する内壁面の最小距離DSminよりも狭くしている。
これにより、圧力開放を伴うエッチング加工時に、膜基材20のうちスリットSLを形成する部分よりも先に、膜基材20のうち貫通部DPを形成する部分が空隙部40まで貫通する。
このため、空隙部40の内部と外部との圧力差(外圧Poと内圧Piとの圧力差)が無くなり、圧力開放を伴う加工の際に発生する膜基材20の破断を、抑制することが可能となる。
すなわち、第一実施形態であれば、ドライエッチングのマイクロローディング効果により、幅WSよりも最小距離DSminが大きい貫通部DPは、スリットSLよりもエッチングが速く進行する。
【0058】
そして、スリットSLよりも速く貫通部DPが形成されて空隙部40が外気と連通すると、外圧Poと内圧Piは平衡状態になるため、膜基材20のうちスリットSLを形成する部分でエッチングが進行しても、圧力差による破断を避けることが可能となる。
このため、外圧Poと内圧Piとの圧力差によって生じる破断は、貫通部DPのみで発生し、スリットSLでは発生しない。これにより、第二シリコン基板64のうち、破断によって予期しない異常な形状となる位置は、貫通部DPのみとなる。これにより、スリットSLをエッチング加工する際の加工精度を向上させることが可能となる。
【0059】
また、貫通部DPは、メンブレン22及び連結部26の変形(撓み)には関係が無い部分に形成されている。
このため、膜基材20のうちスリットSLを形成する部分が破断して、貫通部DPの形状が予期しない異常な形状となった場合であっても、メンブレン22及び連結部26の撓みには影響が無い。
したがって、第一実施形態の構成であれば、スリットSLの形状が所望の形状で安定し、メンブレン22や連結部26の撓みが阻害されることを抑制することが可能となるため、中空構造素子1の測定精度が劣化することを抑制することが可能である。
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0060】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態の中空構造素子1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)周辺膜部28に、空隙部40まで貫通する貫通部DPが形成されており、メンブレン22の厚さ方向から見て、メンブレン22及び連結部26と、周辺膜部28との間に、スリットSLが形成されている。これに加え、スリットSLの幅WSは、貫通部DPの中心を挟んで対向する内壁面の最小距離DSminよりも狭い。
このため、メンブレン22を撓ませるために形成するスリットSLの幅WSよりも、貫通部DPの中心を挟んで対向する内壁面の最小距離DSminが大きくなる。
その結果、圧力開放を伴うエッチング加工時に、膜基材20のうちスリットSLを形成する部分よりも先に、膜基材20のうち貫通部DPを形成する部分が空隙部40まで貫通する。
これにより、空隙部40の内部と外部との圧力差が無くなるため、圧力開放を伴う加工の際に発生する膜基材20の破断を抑制することが可能な、中空構造素子1を提供することが可能となる。
【0061】
(2)周辺膜部28にのみ、貫通部DPが形成されている。
その結果、貫通部DPは、貫通部DPを形成する際に発生する空隙部40の内部と外部との圧力差によって、外周部が破断した形状となるが、貫通部DPが周辺膜部28に設けられていることから、センサの動作には影響がない。また、一度のエッチング加工により、スリットSLと、圧力開放のための貫通部DPとを形成することが可能となる。
【0062】
(3)貫通部DPの中心を挟んで対向する内壁面の最小距離DSminが、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内である。
その結果、圧力開放を伴うエッチング加工時に、膜基材20のうち貫通部DPを形成する部分を、膜基材20のうちスリットSLを形成する部分よりも先に空隙部40まで貫通させることが容易となる。
(4)スリットSLの幅WSが、0.5[μm]以上5[μm]以下の範囲内である。
その結果、メンブレン22及び連結部26を変形させる際に、メンブレン22や連結部26が周辺膜部28と接触することを抑制することが可能となる。
【0063】
(5)連結部26のうち少なくとも一つに備えられ、連結部26に起きた撓みに応じて抵抗値が変化する可撓性抵抗50をさらに備える。
その結果、可撓性抵抗50に誘起されるX方向及びY方向への応力を用いて、可撓性抵抗50の抵抗値の相対抵抗変化を検出することが可能となり、受容体30に、対象とする分子が吸着したか否かを判定することが可能となる。
これにより、中空構造素子1を、気体や液体に対して味覚や嗅覚を検出する表面応力センサに用いることが可能となる。
また、第一実施形態の中空構造素子の製造方法であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
【0064】
(6)積層体形成工程と、領域設定工程と、エッチング工程を備える。そして、エッチング工程では、貫通部DPをエッチングによって形成するとともに、スリットSLを貫通部DPよりも小さいエッチングレートのエッチングによって形成する。これに加え、エッチング工程では、スリットSLを形成することで、メンブレン22、枠部材24、連結部26及び周辺膜部28を形成する。
このため、圧力開放を伴うエッチング加工時に、膜基材20のうちスリットSLを形成する部分よりも先に、膜基材20のうち貫通部DPを形成する部分が空隙部40まで貫通する。
その結果、空隙部40の内部と外部との圧力差が無くなるため、圧力開放を伴う加工の際に発生する膜基材20の破断を抑制することが可能な、中空構造素子1の製造方法を提供することが可能となる。
【0065】
(7)エッチング工程では、貫通部DPの中心を挟んで対向する内壁面の最小距離DSminよりもスリットSLの幅WSが狭くなるようにエッチングを行う。これにより、スリットSLを形成するエッチングのエッチングレートを、貫通部DPを形成するエッチングのエッチングレートよりも小さくする。
このため、メンブレン22を撓ませるために形成するスリットSLの幅WSよりも、貫通部DPの中心を挟んで対向する内壁面の最小距離DSminが大きくなる。
その結果、圧力開放を伴うエッチング加工時に、膜基材20のうちスリットSLを形成する部分よりも先に、膜基材20のうち貫通部DPを形成する部分が空隙部40まで貫通し、空隙部40の内部と外部との圧力差が無くなる。
【0066】
(8)領域設定工程では、さらに、枠部材形成領域124に対して、第一のイオンを注入する領域である可撓性抵抗形成領域170を設定する。これに加え、連結部形成領域126に対して、可撓性抵抗形成領域170よりも外側の領域であり、且つ第二のイオンを注入する領域である低抵抗形成領域172を設定する。さらに、第一イオン注入工程と、第二イオン注入工程と、熱処理工程と、配線層形成工程を備える。
その結果、気体や液体に対して味覚や嗅覚を検出する表面応力センサに用いることが可能な、中空構造素子1の製造方法を提供することが可能となる。
【0067】
(第一実施形態の変形例)
(1)第一実施形態では、周辺膜部28にのみ貫通部DPを形成したが、これに限定するものではない。すなわち、支持基材10の空隙部40と対向する部分(側面、下面)に、貫通部DPを形成してもよい。
この場合、貫通部DPは、スリットSLよりも先に、例えば、エッチングではなく、レーザー光線や工具を用いた切削加工により形成する。
(2)第一実施形態では、貫通部DPの開口形状を円形に形成したが、これに限定するものではない。すなわち、貫通部DPの開口形状を、三角形、四角形以上の多角形、曲線で囲まれた形状や、スリットSLよりも幅の広い線状の開口等、円形以外の形状に形成してもよい。
【0068】
(3)第一実施形態では、可撓性抵抗領域70と、低抵抗領域72と、配線層82を形成したが、これに限定するものではなく、図18中に示すように、可撓性抵抗領域と、低抵抗領域と、配線層を形成しない構成としてもよい。
(4)第一実施形態では、支持基材10の材料となる第一シリコン基板60の一方の面に凹部62を形成することで、メンブレン22と支持基材10との間に空隙部40を形成したが、これに限定するものではない。すなわち、膜基材20の材料となる第二シリコン基板64の支持基材10と対向する面に凹部を形成することで、メンブレン22と支持基材10との間に空隙部40を形成してもよい。
【0069】
(5)第一実施形態では、二対である四つの連結部26a〜26dに、それぞれ、可撓性抵抗50a〜50dが備えられている構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、一対である二つの連結部26に、それぞれ、可撓性抵抗50が備えられている構成としてもよい。
(6)第一実施形態では、四つの連結部26a〜26dの全てに可撓性抵抗50が備えられている構成としたが、これに限定するものではなく、少なくとも一つの連結部26に可撓性抵抗50が備えられている構成としてもよい。
【0070】
(7)第一実施形態では、接続部4の面積を、メンブレン22の厚さ方向から見て、メンブレン22の面積よりも小さい値としたが、これに限定するものではなく、接続部4の面積を、メンブレン22の面積以上としてもよい。
(8)第一実施形態では、接続部4の形状を円形としたが、これに限定するものではなく、接続部4の形状を、例えば、方形としてもよい。また、接続部4を、複数形成してもよい。
【0071】
(9)第一実施形態では、膜基材20を形成する材料と、支持基材10を形成する材料とを、同一の材料としたが、これに限定するものではなく、膜基材20を形成する材料と、支持基材10を形成する材料とを、異なる材料としてもよい。
この場合、膜基材20の線膨張係数と支持基材10の線膨張係数との差を、1.2×10−5/℃以下することで、パッケージ基板2の変形に応じた、膜基材20の変形量と支持基材10の変形量との差を減少させることが可能となる。これにより、メンブレン22の撓みを抑制することが可能となる。
【0072】
(10)第一実施形態では、支持基材10の線膨張係数を、5.0×10−6/℃以下としたが、これに限定するものではなく、支持基材10の線膨張係数を、1.0×10−5/℃以下としてもよい。
この場合であっても、支持基材10の剛性を向上させることが可能となり、温度変化等に起因するパッケージ基板2の変形に対する、膜基材20の変形量を減少させることが可能となる。
【0073】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1から図7を参照しつつ、図19を用いて、第二実施形態の構成を説明する。
第二実施形態の構成は、図19に示すように、枠部材24が、接続層90を介して、支持基材10のパッケージ基板2と対向する面と反対側の面(図19中では、上側の面)に接続されている点を除き、上述した第一実施形態と同様である。
接続層90は、二酸化ケイ素(SiO)等を用いて形成されている。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0074】
(中空構造素子の製造方法)
図1から図19を参照しつつ、図20から図23を用いて、中空構造素子1の製造方法を説明する。なお、図20から図23の断面図は、図7のX−X線断面図に対応する。また、上述した第一実施形態と同様の構成については、説明を省略する場合がある。
中空構造素子1の製造方法は、積層体形成工程と、領域設定工程と、第一イオン注入工程と、第二イオン注入工程と、熱処理工程と、ホール形成工程と、空隙部形成工程と、ホール封止工程と、配線層形成工程と、エッチング工程を備える。
【0075】
(積層体形成工程)
積層体形成工程では、まず、図20に示すように、支持基材10の材料となる第一シリコン基板60の一方の面に、シリコン酸化膜を用いて形成した犠牲層92を積層する。さらに、犠牲層92へ、膜基材20の材料となる第二シリコン基板64を積層する。なお、犠牲層92としては、シリコン酸化膜の他に、シリコン窒化膜やアルミニウム、チタン、銅、タングステン等の金属膜を用いてもよい。
以上により、積層体形成工程では、支持基材10の一方の面に犠牲層92を積層し、さらに、犠牲層92に膜基材20を積層して積層体66を形成する。
(領域設定工程)
領域設定工程は、上述した第一実施形態と同様の手順で行うため、その説明を省略する。
【0076】
(第一イオン注入工程)
第一イオン注入工程では、まず、図20に示すように、第二シリコン基板64を酸化することで、第二シリコン基板64の上側の面を酸化させて第一のシリコン酸化膜68aを形成する。
次に、第一のシリコン酸化膜68aを形成した第二シリコン基板64に対して、フォトレジストのパターン(図示せず)を形成し、可撓性抵抗形成領域170に対して、選択的に第一のイオンを注入する。
以上により、第一イオン注入工程では、膜基材20の支持基材10と対向する面と反対側の面のうち、可撓性抵抗形成領域170に、第一のイオンを注入する。
【0077】
(第二イオン注入工程)
第二イオン注入工程では、第一イオン注入工程で用いたフォトレジストを除去し、さらに、第一イオン注入工程で用いたものとは異なるフォトレジストのパターン(図示せず)を形成し、低抵抗形成領域172に第二のイオンを注入する。
以上により、第二イオン注入工程では、可撓性抵抗形成領域170よりも外側の低抵抗形成領域172に、第二のイオンを注入する。
(熱処理工程)
熱処理工程は、上述した第一実施形態と同様の手順で行うため、その説明を省略する。
【0078】
(ホール形成工程)
ホール形成工程では、一般的なフォトリソグラフィーの技術により、第二シリコン基板64の上側の面に、ホールのパターン(図示せず)を形成する。
ホールのパターンを形成する位置は、メンブレン形成領域122、連結部形成領域126及び周辺膜部形成領域128のうち少なくとも一つの領域に設定する。
次に、ホールのパターンをマスクとしてドライエッチングを施し、図21に示すように、第二シリコン基板64へホール76を形成する。ホール76の直径は、例えば、0.28[μm]に設定して、犠牲層92に到達する深さに設定する。
以上により、ホール形成工程では、メンブレン形成領域122、連結部形成領域126及び周辺膜部形成領域128のうち少なくとも一つの領域に、犠牲層92まで貫通するホール76を形成する。
【0079】
(空隙部形成工程)
空隙部形成工程では、HFVaporを、ホール76を通して第一シリコン基板60の側に浸透させることで、犠牲層92のみを選択的にエッチングし、図22に示すように、第一シリコン基板60と第二シリコン基板64との間に、空隙部40を形成する。
ここで、HFのWetエッチングを使わない理由は、空隙部40を形成した後の乾燥時に、純水等の表面張力で空隙部40が潰れる不具合(スティクションとも呼称される)の発生を回避するためである。
以上により、空隙部形成工程では、ホール76を介したエッチングにより、メンブレン形成領域122、連結部形成領域126及び周辺膜部形成領域128と、支持基材10と、の間に配置された犠牲層92を除去する。これにより、支持基材10と膜基材20との間に空隙部40を設ける。
【0080】
(ホール封止工程)
ホール封止工程では、図23に示すように、酸化膜94によってホール76を封止する。
ホール76を封止する方法としては、例えば、熱酸化処理とCVD等を組み合わせることが有効であるが、ホール76の直径が小さい場合には、CVDのみを用いることも可能である。
以上により、ホール封止工程では、膜基材20の支持基材10と対向する面と反対側の面に、酸化膜94を形成してホール76を封止する。
【0081】
(配線層形成工程)
配線層形成工程は、上述した第一実施形態と同様の手順で行うため、その説明を省略する。
以上により、配線層形成工程では、可撓性抵抗50と電気的に接続された配線層82を形成する。
(エッチング工程)
エッチング工程は、上述した第一実施形態と同様の手順で行うため、その説明を省略する。
したがって、エッチング工程では、スリットSLを形成することで、メンブレン22をメンブレン形成領域122に形成し、枠部材24を枠部材形成領域124に形成する。これに加え、連結部26を連結部形成領域126に形成し、周辺膜部28を周辺膜部形成領域128に形成する。
【0082】
(動作・作用)
第二実施形態の動作と作用は、上述した第一実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
なお、上述した第二実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第二実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0083】
(第二実施形態の効果)
第二実施形態の中空構造素子の製造方法であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)積層体形成工程と、領域設定工程と、ホール形成工程と、空隙部形成工程と、ホール封止工程と、エッチング工程を備える。そして、エッチング工程では、貫通部DPをエッチングによって形成するとともに、スリットSLを貫通部DPよりも小さいエッチングレートのエッチングによって形成する。これに加え、エッチング工程では、スリットSLを形成することで、メンブレン22、枠部材24、連結部26及び周辺膜部28を形成する。
【0084】
このため、圧力開放を伴うエッチング加工時に、膜基材20のうちスリットSLを形成する部分よりも先に、膜基材20のうち貫通部DPを形成する部分が空隙部40まで貫通する。
その結果、空隙部40の内部と外部との圧力差が無くなるため、圧力開放を伴う加工の際に発生する膜基材20の破断を抑制することが可能な、中空構造素子1の製造方法を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0085】
1…中空構造素子、2…パッケージ基板、4…接続部、10…支持基材、20…膜基材、22…メンブレン、24…枠部材、26…連結部、28…周辺膜部、30…受容体、40…空隙部、50…可撓性抵抗、60…第一シリコン基板、62…凹部、64…第二シリコン基板、66…積層体、68…シリコン酸化膜、70…可撓性抵抗領域、72…低抵抗領域、74…シリコン窒化膜、76…ホール、78…積層膜、80…金属膜、82…配線層、86…PAD、90…接続層、92…犠牲層、94…酸化膜、122…メンブレン形成領域、124…枠部材形成領域、126…連結部形成領域、128…周辺膜部形成領域、170…可撓性抵抗形成領域、172…低抵抗形成領域、VL1…メンブレンの中心を通過する仮想直線、VL2…仮想直線VL1と直交する仮想直線、DP…貫通部、SL…スリット、WS…スリットSLの幅、DSmin…貫通部DPの中心を挟んで対向する内壁面の最小距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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