【文献】
MOSSNER E,INCREASING THE EFFICACY OF CD20 ANTIBODY THERAPY THROUGH THE ENGINEERING OF A NEW TYPE II 以下備考,BLOOD,2010年06月03日,VOL:115, NR:22,,PAGE(S):4393 - 4402,http://dx.doi.org/10.1182/blood-2009-06-225979,ANTI-CD20 ANTIBODY WITH ENHANCED DIRECT AND IMMUNE EFFECTOR CELL-MEDIATED B-CELL CYTOTOXICITY
【文献】
Molecular Cancer Therapeutics, 2013, Vol.12 No.10, p.2031-2042
【文献】
WEIDENBUSCH M,BEYOND THE LUNAR TRIAL. EFFICACY OF RITUXIMAB IN REFRACTORY LUPUS NEPHRITIS,NEPHROLOGY DIALYSIS TRANSPLANTATION,英国,2012年07月03日,VOL:28, NR:1,,PAGE(S):106 - 111,http://dx.doi.org/10.1093/ndt/gfs285
【文献】
BRAD H ROVIN,EFFICACY AND SAFETY OF RITUXIMAB IN PATIENTS WITH ACTIVE PROLIFERATIVE LUPUS NEPHRITIS: THE 以下備考,ARTHRITIS & RHEUMATISM,2012年04月27日,VOL:64, NR:4,,PAGE(S):1215 - 1226,http://dx.doi.org/10.1002/art.34359,LUPUS NEPHRITIS ASSESSMENT WITH RITUXIMAB STUDY
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配列番号1のHVR−H1配列、配列番号2のHVR−H2配列、及び配列番号3のHVR−H3配列を含む重鎖と、配列番号4のHVR−L1配列、配列番号5のHVR−L2配列、及び配列番号6のHVR−L3配列を含む軽鎖とを含むII型抗CD20抗体を含む、ループスを有する個体におけるループス腎炎を治療するか、またはその進行を遅延させるための医薬であって、
少なくとも第1の抗体曝露量の前記II型抗CD20抗体及び第2の抗体曝露量の前記II型抗CD20抗体が、投与され、前記第2の抗体曝露量が、前記第1の抗体曝露量の約18週間〜約26週間後まで提供されず;
前記第1の抗体曝露量が、1または2回分の用量の前記II型抗CD20抗体を含み、前記第1の抗体曝露量が、約1800mg〜約2200mgの前記II型抗CD20抗体の総曝露量を含み;かつ
前記第2の抗体曝露量が、1または2回分の用量の前記II型抗CD20抗体を含み、前記第2の抗体曝露量が、約1800mg〜約2200mgの前記II型抗CD20抗体の総曝露量を含み、
ミコフェノール酸、またはその塩を含む有効量の免疫抑制剤との組み合わせで投与される、
医薬。
前記第1の抗体曝露量が、約900mg〜約1100mgの第1の用量の前記II型抗CD20抗体と、約900mg〜約1100mgの第2の用量の前記II型抗CD20抗体と、を含む、請求項1または2に記載の医薬。
前記第1の抗体曝露量が、第1の用量の前記II型抗CD20抗体と第2の用量の前記II型抗CD20抗体とを含み、前記第1の抗体曝露量の前記第2の用量が、前記第1の抗体曝露量の前記第1の用量の約1.5週間〜約2.5週間後まで提供されない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬。
前記第2の抗体曝露量が、約900mg〜約1100mgの第1の用量の前記II型抗CD20抗体と、約900mg〜約1100mgの第2の用量の前記II型抗CD20抗体と、を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の医薬。
前記第2の抗体曝露量が、第1の用量の前記II型抗CD20抗体と第2の用量の前記II型抗CD20抗体とを含み、前記第2の抗体曝露量の前記第2の用量が、前記第2の抗体曝露量の前記第1の用量の約1.5週間〜約2.5週間後まで提供されない、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬。
有効量のII型抗CD20抗体を含む、ループスを有する個体におけるループス腎炎を治療するか、またはその進行を遅延させるための医薬であって、前記II型抗CD20抗体が、配列番号1のHVR−H1配列、配列番号2のHVR−H2配列、及び配列番号3のHVR−H3配列を含む重鎖と、配列番号4のHVR−L1配列、配列番号5のHVR−L2配列、及び配列番号6のHVR−L3配列を含む軽鎖とを含み、前記個体が、クラスIIIまたはクラスIVのループス腎炎を有し、
ミコフェノール酸、またはその塩を含む有効量の免疫抑制剤との組み合わせで投与される、医薬。
有効量の抗CD20抗体を含む、個体におけるリウマチ性関節炎(RA)または全身性エリテマトーデス(SLE)を治療するか、またはその進行を遅延させるための医薬であって、前記抗体が、配列番号1のHVR−H1配列、配列番号2のHVR−H2配列、及び配列番号3のHVR−H3配列を含む重鎖可変領域と、配列番号4のHVR−L1配列、配列番号5のHVR−L2配列、及び配列番号6のHVR−L3配列を含む軽鎖可変領域とを含み、
ミコフェノール酸、またはその塩を含む有効量の免疫抑制剤との組み合わせで投与される、医薬。
【発明を実施するための形態】
【0021】
一態様において、少なくとも第1の抗体曝露量のII型抗CD20抗体及び第2の抗体曝露量のII型抗CD20抗体を個体に投与することを含む、個体におけるループス腎炎を治療するか、またはその進行を遅延させるための方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、個体は、ループスを有する。いくつかの実施形態において、第2の抗体曝露量は、第1の抗体曝露量の約18週間〜約26週間後まで提供されない。いくつかの実施形態において、第1の抗体曝露量は、1または2回分の用量のII型抗CD20抗体を含み、第1の抗体曝露量が、約1800mg〜約2200mgのII型抗CD20抗体の総曝露量を含有する。いくつかの実施形態において、第2の抗体曝露量は、1または2回分の用量のII型抗CD20抗体を含み、第2の抗体曝露量が、約1800mg〜約2200mgのII型抗CD20抗体の総曝露量を含有する。いくつかの実施形態において、本抗体は、配列番号1のHVR−H1配列、配列番号2のHVR−H2配列、及び配列番号3のHVR−H3配列を含む重鎖と、配列番号4のHVR−L1配列、配列番号5のHVR−L2配列、及び配列番号6のHVR−L3配列を含む軽鎖とを含む。
【0022】
別の態様において、有効量のII型抗CD20抗体を個体に投与することを含む、ループスを有する個体におけるループス腎炎を治療するか、またはその進行を遅延させるための方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、本抗体は、配列番号1のHVR−H1配列、配列番号2のHVR−H2配列、及び配列番号3のHVR−H3配列を含有する重鎖と、配列番号4のHVR−L1配列、配列番号5のHVR−L2配列、及び配列番号6のHVR−L3配列を含有する軽鎖とを含む。いくつかの実施形態において、個体は、クラスIIIまたはクラスIVのループス腎炎を有する。
【0023】
別の態様において、有効量の抗CD20抗体を個体に投与することを含む、個体におけるリウマチ性関節炎(RA)または全身性エリテマトーデス(SLE)を治療するか、またはその進行を遅延させるための方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、本抗体は、配列番号1のHVR−H1配列、配列番号2のHVR−H2配列、及び配列番号3のHVR−H3配列を含む重鎖可変領域と、配列番号4のHVR−L1配列、配列番号5のHVR−L2配列、及び配列番号6のHVR−L3配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0024】
I.一般的技法
本明細書で記載または参照される技法及び手順は、当業者には概して十分に理解されており、従来の方法論、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3d edition(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.eds.,(2003))、シリーズのMethods in Enzymology(Academic Press,Inc.):PCR 2:A Practical Approach(M.J.MacPherson,B.D.Hames and G.R.Taylor eds.(1995)),Harlow and Lane,eds.(1988)Antibodies,A Laboratory Manual,and Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.(1987))、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984)、Methods in Molecular Biology,Humana Press、Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press、Animal Cell Culture(R.I.Freshney),ed.,1987)、Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press、Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993−8)J.Wiley and Sons、Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.)、Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987)、PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis et al.,eds.,1994)、Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991)、Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999)、Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997)、Antibodies(P.Finch,1997)、Antibodies:A Practical Approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988−1989)、Monoclonal Antibodies:A Practical Approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000)、Using Antibodies:A Laboratory Manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999)、The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.,Harwood Academic Publishers,1995)、及びCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVita et al.,eds.,J.B.Lippincott Company,1993)に記載される幅広く利用される方法論などを使用して、当業者により一般的に用いられる。
【0025】
II.定義
「ループス腎炎(LN)」」という用語は、腎臓(複数可)におけるループス(例えば、全身性エリテマトーデス、薬物誘導ループス、新生児ループス、または円板状ループス)の徴候を指す。
【0026】
「抗体」という用語には、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する全長抗体を含む)、ポリエピトープ(polyepitopic)特異性を有する抗体組成物、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ、及び一本鎖分子、ならびに抗体断片(例えば、Fab、F(ab´)
2、及びFv)が含まれる。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書において「抗体」と互換的に使用される。
【0027】
基本的な4本の鎖の抗体ユニットは、2本の同一な軽鎖(L)と2本の同一な重鎖(H)とからなるヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は、5つの基本的なヘテロ四量体ユニットと併せて、J鎖と呼ばれる追加のポリペプチドからなり、10個の抗原結合部位を含有している一方で、IgA抗体は、2〜5個の基本的な4本鎖ユニットから構成されており、このユニットは、重合してJ鎖と組み合わさった多価集合体を形成することができる。IgGの場合、4本鎖ユニットは、概して約150,000ダルトンである。各L鎖は、1つのジスルフィド共有結合によりH鎖に連結されている一方で、2本のH鎖は、H鎖アイソタイプに応じて1つ以上のジスルフィド結合により互いに連結されている。H鎖及びL鎖は各々、規則的に離間した鎖間ジスルフィド架橋も有する。各H鎖は、N末端に可変ドメイン(V
H)を有し、続いてα鎖及びγ鎖の各々に関しては3つの定常ドメイン(C
H)、ならびにμ及びεアイソタイプに関しては4つのC
Hドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(V
L)を有し、続いて他方の端部に定常ドメインを有する。V
Lは、V
Hと整列しており、C
Lは、重鎖の第1の定常ドメイン(C
H1)と整列している。特定のアミノ酸残基が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。V
HとV
Lとを一緒に対合することにより、単一の抗原結合部位が形成される。異なるクラスの抗体の構造及び特性に関しては、例えば、Basic and Clinical Immunology,8th Edition,Daniel P.Sties,Abba I.Terr and Tristram G.Parsolw(eds),Appleton&Lange,Norwalk,CT,1994,page71 and Chapter6を参照されたい。任意の脊椎動物種由来のL鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる2つの明確に異なる型のうちの1つに割り当てられ得る。それらの重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てられ得る。5つのクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと表記される重鎖を有する。γ及びαクラスは、CH配列及び機能の比較的わずかな差異に基づいてサブクラスにさらに分割され、例えば、ヒトは、次のサブクラス:IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2を発現する。
【0028】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、「VH」及び「VL」と称され得る。これらのドメインは概して、抗体の最も可変性の高い部分であり(同じクラスの他の抗体と比べて)、抗原結合部位を含有する。
【0029】
「可変」という用語は、抗体間で、可変ドメインのある特定のセグメントが、配列において大きく異なるという事実を指す。Vドメインは、抗原結合を媒介し、特定の抗体の、その特定の抗原に対する特異性を定義する。しかし、可変性は、可変ドメイン全体に均等に分布しているわけではない。むしろ、それは、軽鎖及び重鎖の両方の可変ドメインにおいて、超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、ベータシート構造を接続し、かついくつかの場合において、ベータシート構造の一部を形成するループを形成する3つのHVRにより接続されたベータシート構成を大きく採用する4つのFR領域を含む。各鎖内のHVRは、FR領域により近接して共に保持されており、他方の鎖のHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,MD(1991)を参照されたい)。定常ドメインは、抗原への抗体の結合に直接関与しないが、抗体依存性細胞毒性における抗体の関与など、様々なエフェクター機能を示す。
【0030】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に同種の抗体集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団に含まれる個々の抗体は、微量で存在し得る想定される自然発生する突然変異及び/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除き、同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位を対象としている。異なる決定基(エピトープ)を対象とする異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対象としている。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養により合成され、他の免疫グロブリンが混入されていないという点で、有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体の集団から得られるという抗体の特徴を示し、いずれかの特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されないものとする。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ方法(例えば、Kohler and Milstein.,Nature,256:495−97(1975)、Hongo et al.,Hybridoma,14(3):253−260(1995),Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2
nded.1988)、Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681(Elsevier,N.Y.,1981))、組み換えDNA方法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1992)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299−310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004)、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA101(34):12467−12472(2004)、及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1−2):119−132(2004)を参照されたい、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部または全てを有するヒト抗体またはヒト様抗体を動物において産生するための技術(例えば、WO1998/24893、WO1996/34096、WO1996/33735、WO1991/10741、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:2551(1993)、Jakobovits et al.,Nature 362:255−258(1993)、Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993)、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、及び同第5,661,016号、Marks et al.,Bio/Technology 10:779−783(1992)、Lonberg et al.,Nature 368:856−859(1994)、Morrison,Nature 368:812−813(1994)、Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845−851(1996)、Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996)、ならびにLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65−93(1995)を参照されたい、を含む、多様な技法により作製され得る。
【0031】
「ネイキッド抗体」という用語は、細胞傷害性部分または放射性標識にコンジュゲートされていない抗体を指す。
【0032】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、または「全抗体」という用語は、抗体断片とは対照的に、その実質的にインタクトな形態にある抗体を指して互換的に使用される。具体的には、全抗体には、Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を有するものが含まれる。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列の定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異形であり得る。一部の場合において、インタクトな抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有し得る。
【0033】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部分、好ましくはインタクトな抗体の抗原結合領域及び/または可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab´、F(ab´)
2、及びFv断片;ダイアボディ;線状抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057−1062[1995]を参照されたい);一本鎖抗体分子、ならび抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。抗体のパパイン消化は、「Fab」断片、及び残りの「Fc」断片(容易に結晶化する能力を反映する名称)と呼ばれる、2つの同一の抗原結合断片を産生した。Fab断片は、L鎖全体と共にH鎖の可変領域ドメイン(V
H)、ならびに1つの重鎖の第1の定常ドメイン(C
H1)からなる。各Fab断片は、抗原結合に関しては一価であり、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、単一の大型F(ab’)
2断片をもたらし、これは、異なる抗原結合活性を有する2つのジスルフィド連結したFab断片にほぼ対応し、依然として抗原を架橋することができる。Fab’断片は、C
H1ドメインのカルボキシ末端に、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む、いくつかの追加の残基を有することにより、Fab断片とは異なる。Fab´−SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab´の本明細書における名称である。F(ab´)
2抗体断片は、本来、間にヒンジシステインを有するFab´断片の対として産生された。抗体断片の他の化学的カップリングも知られている。
【0034】
Fc断片は、ジスルフィドにより共に保持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域における配列により決定され、この領域はまた、ある特定の細胞型に見られるFc受容体(FcR)により認識される。
【0035】
「Fv」は、完全な抗原認識部位及び抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。この断片は、1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインが、非共有結合で緊密に結合した二量体からなる。これらの2つのドメインの折り畳みにより、抗原結合のためのアミノ酸残基を提供し、抗原結合特異性を抗体に与える、6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖からそれぞれ3つのループ)が生じる。しかし、全結合部位よりも低い親和性であるが、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的なHVRを3つしか含まないFvの半分)でさえも、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0036】
「sFv」または「scFv」とも略される「一本鎖Fv」は、接続されて単一のポリペプチド鎖となったV
H及びV
L抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、sFvが抗原結合に所望の構造を形成することを可能にするV
H及びV
Lドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含む。sFvの概説に関しては、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照されたい。
【0037】
本発明の抗体の「機能性断片」は、インタクトな抗体の一部分を含み、これには、概して、インタクトな抗体の抗原結合もしくは可変領域、または修飾されたFcR結合能力を保持するかもしくは有する抗体のFc領域が含まれる。抗体断片の例には、線状抗体、一本鎖抗体分子、及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。
【0038】
「ダイアボディ」という用語は、鎖内ではなく鎖間のVドメイン対合を達成し、それにより二価断片、すなわち、2つの抗原結合部位を有する断片が得られるように、V
HとV
Lドメインとの間に短いリンカー(約5〜10個の残基)を用いてsFv断片(前の段落を参照されたい)を構築することにより調製された小さな抗体断片を指す。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のV
H及びV
Lドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する2つの「クロスオーバー」sFv断片のヘテロ二量体である。ダイアボディは、例えば、EP404,097、WO93/11161、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444−6448(1993)でより詳細に記載される。
【0039】
本明細書におけるモノクローナル抗体には、それらが所望の生物活性を示す限り、重鎖及び/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における、対応する配列と同一または相同しており、鎖(複数可)の残部が、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、ならびにかかる抗体の断片における、対応する配列と同一または相同している、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)が具体的に含まれる(米国特許第4,816,567号、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984))。本明細書における目的のキメラ抗体には、PRIMATIZED(登録商標)抗体が含まれ、ここで、抗体の抗原結合領域は、例えば、目的の抗原でマカクザルを免疫付与することにより産生された抗体に由来する。本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」は、「キメラ抗体」のサブセットとして使用される。
【0040】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態において、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR(以下に定義される)からの残基が、所望される特異性、親和性、及び/または能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(供与体抗体)のHVRからの残基により置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの事例において、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク(「FR」)残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも供与体抗体にも見られない残基を含み得る。これらの修飾は、結合親和性など、抗体の性能をさらに改良するために行われ得る。概して、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むことになり、ここで、超可変ループの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリン配列のものに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のものに対応するものであるが、FR領域には、結合親和性、異性体化、免疫原性などの抗体の性能を改善する1つ以上の個々のFR残基置換が含まれ得る。FRにおけるこれらのアミノ酸置換の数は典型的には、H鎖では6個以下であり、L鎖では3個以下である。ヒト化抗体は任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部分も含むであろう。さらなる詳細に関しては、例えば、Jones et al.,Nature 321:522−525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988)、及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照されたい。例えば、Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma&Immunol.1:105−115(1998)、Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035−1038(1995)、Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428−433(1994)、ならびに米国特許 第6,982,321号及び同第7,087,409号も参照されたい。
【0041】
「ヒト抗体」は、ヒトにより産生された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有する抗体、及び/または本明細書に開示されるようなヒト抗体を作製するための技法のうちの任意のものを使用して作製された抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む、当技術分野で既知の様々な技法を使用して産生され得る。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991)。Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)、Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86−95(1991)に記載される方法もヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368−74(2001)も参照されたい。ヒト抗体は、抗原攻撃に応答してかかる抗体を産生するように修飾されているが、その内因性遺伝子座が無効化されているトランスジェニック動物、例えば、免疫付与された異種マウスに抗原を投与することにより調製され得る(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関しては、米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照されたい)。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されるヒト抗体に関しては、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557−3562(2006)も参照されたい。
【0042】
本明細書で使用されるとき、「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、配列が超可変性であり、かつ/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、6つのHVRを含み、3つがVH(H1、H2、H3)にあり、3つがVL(L1、L2、L3)にある。天然抗体において、H3及びL3が最も高い多様性の6つのHVRを呈し、特にH3は抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられる。例えば、Xu et al.,Immunity 13:37−45(2000)、Johnson and Wu,in Methods in Molecular Biology 248:1−25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)を参照されたい。実際には、重鎖のみからなる自然発生するラクダ抗体は、軽鎖の不在下で機能的であり、安定している。例えば、Hamers−Casterman et al.,Nature 363:446−448(1993)、Sheriff et al.,Nature Struct.Biol.3:733−736(1996)を参照されたい。
【0043】
いくつかのHVR描写が本明細書で使用され、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づくものであり、最も一般的に使用されている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))。むしろ、Chothiaは、構造的ループの位置に言及する(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901−917(1987))。AbM HVRは、Kabat HVRとChothia構造的ループとの間の妥協案を示し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらHVRの各々の残基は、以下に記述される。
【0044】
HVRは、次のような「拡張型HVR」を含み得る:VL内の24〜36または24〜34(L1)、46〜56または50〜56(L2)、及び89〜97または89〜96(L3)、ならびにVH内の26〜35(H1)、50〜65もしくは49〜65(H2)、及び93〜102、94−102、または95〜102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabat et al.(上記参照)に従って番号付けされる。
【0045】
発現「Kabatにあるような可変ドメイン残基番号付け」または「Kabatにあるようなアミノ酸位置番号付け」という表現、及びそれらの変形形態は、Kabatら(上記参照)における抗体の編成において重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインのために使用されている番号付け方式を指す。この番号付けシステムを使用して、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはHVRの短縮、またはそれへの挿入に対応するより少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従って残基52a)を、及び重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに従って残基82a、82b、及び82cなど)を含み得る。残基のKabat番号付けは、抗体の配列と「標準の」Kabatにより番号付けされた配列との相同領域での整列により、所与の抗体に対して決定され得る。
【0046】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書に定義されるようなHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0047】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」または「アクセプターヒトフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。概して、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列の下位群由来である。概して、配列の下位群は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5
thEd.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)にあるような下位群である。例には、VLに関するものが含まれる、下位群は、Kabatら(上記参照)にあるような下位群カッパI、カッパII、カッパIII、またはカッパIVであり得る。加えて、VHに関しては、下位群は、Kabatら(上記参照)にあるような下位群I、下位群II、または下位群IIIであり得る。あるいは、ヒトコンセンサスフレームワークは、供与体フレームワーク配列を様々なヒトフレームワーク配列の集合と整列させることにより、特定の残基、例えば、ヒトフレームワーク残基が、供与体フレームワークに対するその相同性に基づいて選択される場合など、上記のものに由来し得る。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、それと同じアミノ酸配列を含んでもよく、またはそれは既存のアミノ酸配列変化を含有し得る。いくつかの実施形態において、既存のアミノ酸変化の数は、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、または2個以下である。
【0048】
「VH下位群IIIコンセンサスフレームワーク」は、Kabatら(上記参照)の可変重鎖下位群IIIにおけるアミノ酸配列から得られるコンセンサス配列を含む。一実施形態において、VH下位群IIIコンセンサスフレームワークアミノ酸配列は、次の配列の各々の少なくとも一部分または全てを含む:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(HC−FR1)(配列番号35)、WVRQAPGKGLEWV(HC−FR2)、(配列番号36)、RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(HC−FR3、配列番号37)、WGQGTLVTVSA(HC−FR4)、(配列番号38)。
【0049】
「VLカッパIコンセンサスフレームワーク」は、Kabatら(上記参照)の可変軽鎖カッパ下位群Iにおけるアミノ酸配列から得られるコンセンサス配列を含む。一実施形態において、VH下位群Iコンセンサスフレームワークアミノ酸配列は、次の配列の各々の少なくとも一部分または全てを含む:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(LC−FR1)(配列番号39)、WYQQKPGKAPKLLIY(LC−FR2)(配列番号40)、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(LC−FR3)(配列番号41)、FGQGTKVEIKR(LC−FR4)(配列番号42)。
【0050】
例えばFc領域の規定位置における「アミノ酸修飾」は、規定の残基の置換もしくは欠失、または規定の残基に隣接する少なくとも1つのアミノ酸残基の挿入を指す。規定の残基に「隣接する」挿入とは、その1〜2つの残基内への挿入を意味する。挿入は、規定の残基のN末端側またはC末端側であり得る。本明細書における好ましいアミノ酸修飾は、置換である。
【0051】
「親和性成熟」抗体は、その1つ以上のHVRに1つ以上の改変を有し、これは、それらの改変(複数可)を保有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性の改善をもたらす。一実施形態において、親和性成熟抗体は、標的抗原に対するナノモルまたはさらにはピコモルの親和性を有する。親和性成熟抗体は、当技術分野で既知の手順により産生される。例えば、Marks et al.,Bio/Technology 10:779−783(1992)は、VH及びVLドメインシャッフリングによる親和性成熟を記載する。HVR及び/またはフレームワーク残基のランダム突然変異生成は、例えば、Barbas et al.Proc Nat.Acad.Sci.USA91:3809−3813(1994)、Schier et al.Gene 169:147−155(1995)、Yelton et al.J.Immunol.155:1994−2004(1995)、Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310−9(1995)、及びHawkins et al,J.Mol.Biol.226:889−896(1992)により記載される。
【0052】
「specifically binds to(に特異的に結合する)」または「specific for(に対して特異的)」であるという用語は、本明細書で使用される場合、生体分子を含む分子の異種集団の存在下で標的の存在を決定するものである、標的と抗体との間の結合などの測定可能かつ再現可能な相互作用を指す。例えば、標的(エピトープであり得る)に特異的に結合する抗体は、他の標的に結合するよりも高い親和性、結合力で、より容易に、及び/またはより長い持続時間でこの標的に結合する抗体である。一実施形態において、抗体が無関係の標的に結合する程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定される、抗体の標的への結合の約10%未満である。ある特定の実施形態において、標的に特異的に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、または≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態において、抗体は、異なる種由来のタンパク質間で保存されるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態において、特異的結合は、排他的結合を含み得るが、それを必要としない。
【0053】
本明細書における「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用され、天然配列のFc領域及び変異形Fc領域が含まれる。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は異なり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、Cys226位のアミノ酸残基から、またはPro230から、そのカルボキシル末端まで伸びると定義される。Fc領域のC末端リジン(EU番号付け方式によると残基447)は、例えば、抗体の産生もしくは精製の間に、または抗体の重鎖をコードする核酸を組み換え操作することにより、除去され得る。したがって、インタクトな抗体の組成物は、全K447残基が除去された抗体集団、除去されたK447残基がない抗体集団、及びK447残基を有する抗体と有しない抗体との混合物を有する抗体集団を含み得る。本発明の抗体で使用するための好適な天然配列のFc領域には、ヒトIgG1、IgG2(IgG2A、IgG2B)、IgG3、及びIgG4が含まれる。
【0054】
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を表す。好ましいFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するものであり、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体が(これらの受容体の対立遺伝子変異形及び代替的にスプライス形態を含む)含まれ、FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害性受容体」)が含まれ、これらは、それらの細胞質側ドメインが主に異なる、同様のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)を含有する。(M.Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203−234(1997)。FcRは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457−92(1991)、Capel et al.,Immunomethods 4:25−34(1994)、及びde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330−41(1995)で概説される。今後特定されるFcRを含む他のFcRは、本明細書において「FcR」という用語に包含される。
【0055】
「Fc受容体」または「FcR」という用語にはまた、胎児への母体IgGの移入を担う、新生児型受容体であるFcRnも含まれる。Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)and Kim et al.,J.Immunol.24:249(1994)。FcRnへの結合の測定方法は知られている(例えば、Ghetie and Ward,Immunol.Today 18:(12):592−8(1997)、Ghetie et al.,Nature Biotechnology 15(7):637−40(1997)、Hinton et al.,J.Biol.Chem.279(8):6213−6(2004)、WO2004/92219(Hinton et al.を参照されたい)。ヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドのインビボでのFcRnへの結合及び血清半減期は、例えば、ヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウスもしくはトランスフェクトヒト細胞株において、または変異形Fc領域を有するポリペプチドが投与される霊長類においてアッセイすることができる。WO2004/42072(Presta)は、FcRへの結合を改善または減少させた抗体変異形を記載している。例えば、Shields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591−6604(2001)も参照されたい。
【0056】
「substantially reduced(実質的に低減した)」または「substantially different(実質的に異なる)」という表現は、本明細書で使用される場合、2つの数値(概して、一方はある分子に関連し、他方は参照/比較用分子に関連する)間の十分に高い度合いの差異を表し、これは、当業者が、2つの値間の差異を、該値(例えば、Kd値)により測定される生物学的特徴の文脈において統計的有意性があるものと見なすようなものである。かかる2つの値間の差異は、例えば、参照/比較用分子の値の関数として、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、及び/または約50%超である。
【0057】
「substantially similar(実質的に同様の)」または「substantially the same(実質的に同じ)」という用語は、本明細書で使用される場合、2つの数値(例えば、一方は本発明の抗体に関連し、他方は参照/比較用抗体に関連する)間の十分に高い度合いの類似性を表し、これは、当業者が、2つの値間の差異を、該値(例えば、Kd値)により測定される生物学的特徴の文脈において生物学的及び/または統計的有意性がほとんどまたは全くないものと見なすようなものである。かかる2つの値間の差異は、例えば、参照/比較用の値の関数として、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、及び/または約10%未満である。
【0058】
「Carriers(担体)」には、本明細書で使用される場合、用いられる投与量及び濃度でそれに曝露されている細胞または哺乳動物にとって無毒である、薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤が含まれる。多くの場合、生理的に許容される担体は、pH緩衝水溶液である。生理的に許容される担体の例には、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む、単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;ならびに/またはTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(商標)などの非イオン性界面活性剤が含まれる
【0059】
「添付文書」は、適応症、使用法、投与量、投与、禁忌症、パッケージングされた産物と組み合わせられる他の薬品に関する情報、及び/またはかかる薬の使用に関する警告などを含む、薬品の商用パッケージに通例含まれる指示に関する情報を含む、薬品の商用パッケージに通例含まれる使用説明書を指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、臨床的病理の経過中に治療される個体または細胞の自然経過を改変するように考案された臨床的介入を指す。治療の望ましい効果には、疾患進行速度の減速、疾患状態の回復または緩和、及び寛解または予後の改善が挙げられる。例えば、個体は、血清クレアチニンの上昇、タンパク尿、赤血球円柱、低減した腎機能、ネフローゼ症状群、顆粒円柱、顕微鏡的血尿、肉眼的血尿、高血圧、管形状異常、高カリウム血症、急速進行性糸球体腎炎(RPGN)、及び急性腎不全(ARF)が含まれるが、これらに限定されないループス腎炎に関連する1つ以上の症状が、軽減するか、または排除された場合、「治療」に成功する。
【0061】
本明細書で使用される場合、疾患(例えば、ループス腎炎)の「進行の遅延」は、疾患の発症を延期し、妨害し、減速し、遅らせ、安定させ、かつ/または延ばすことを意味する。この遅延は、治療されている病歴及び/または個体に応じて異なる期間であり得る。当業者に明らかであるように、十分または著しい遅延は、個体、例えば、疾患を発症する危険性がある個体が、疾患を発症しないという点で予防を事実上包含し得る。例えば、LN症状及び/または病理の発生前の個体におけるSLEの進行を、LNの発症を延ばすか、または予防するように遅延させることができる。
【0062】
「完全腎応答(CRR)」は、本明細書で使用される場合、血清クレアチニンの正常化、不活性尿沈渣、及び0.5未満の尿タンパク質対クレアチニン比を含む、治療に対する応答を指す。
【0063】
本明細書で使用される場合、「部分的腎応答(PRR)」は、CRR未満であるが、それでも血清クレアチニンの低減、低減した尿沈渣、及びタンパク尿の低減が含まれるが、これらに限定されない1つ以上の症状の軽減を含む、治療に対する応答を指す。
【0064】
「effective amount(有効量)」は、特定の障害の測定可能な改善または予防を実現するのに必要な少なくとも最低限の濃度である。本明細書における有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、及び体重、ならびに個体における所望の応答を誘発する抗体の能力などの要因に応じて異なり得る。有効量は、治療上有益な効果が治療の任意の毒性効果または有害効果を上回るものでもある。予防的使用の場合、有益なまたは所望の結果には、疾患の生化学的、組織学的、及び/または挙動的症状、その合併症、ならびに疾患の発症中に現れる中間病理学的表現型を含む、疾患のリスクの排除もしくは低減、疾患の重症度の軽減、または疾患の発生の遅延などの結果が含まれる。治療的使用の場合、有益なまたは所望の結果には、疾患に起因する1つ以上の症状の減少、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬剤の用量の減少、別の薬剤の効果の増強(例えば、標的による)、疾患の進行の遅延、及び/または生存期間の延長などの臨床結果が含まれる。ループス腎炎の場合、有効量の薬物は、障害に関連する症状のうちの1つ以上における効果、及び/またはある程度の軽減を有し得る。有効量は、1回以上の投与で投与され得る。本発明の目的に関して、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効量は、予防的または治療的治療を直接または間接的に達成するのに十分な量である。臨床分野において理解されるように、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効量は、別の薬物、化合物、または薬学的組成物と併せて達成されても、されなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つ以上の療法剤を投与するという点で考慮され得、単剤は、1つ以上の他の薬剤と併せて、望ましい結果が達成され得るか、または達成される場合、有効量で与えられると見なされ得る。
【0065】
「CD20」は、本明細書で使用される場合、ヒトB−リンパ球抗原CD20(CD20、B−リンパ球表面抗原B1、Leu−16、Bp35、BM5、及びLF5としても既知であり、配列は、SwissProtデータベースエントリーP11836により特徴付けられる)を指し、B前及び成熟Bリンパ球に位置するおよそ35kDの分子量を有する疎水性膜貫通タンパク質である。(Valentine,M.A.,et al.,J.Biol.Chem.264(19)(1989 11282−11287、Tedder,T.F.,et al,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85(1988)208−12、Stamenkovic,I.,et al.,J.Exp.Med.167(1988)1975−80、Einfeld,D.A.,et al.,EMBO J.7(1988)711−7、Tedder,T.F.,et al.,J.Immunol.142(1989)2560−8)。対応するヒト遺伝子は、MS4A1としても既知の膜貫通4−ドメイン、亜群A、メンバー1である。この遺伝子は、膜貫通4A遺伝子族のメンバーをコードする。この発生期タンパク質族のメンバーは、一般的な構造特徴及び同様のイントロン/エクソンスプライス境界により特徴付けられ、造血細胞及び非リンパ系組織の中で特有の発現パターンを表示する。この遺伝子は、B細胞が発達及び分化して、血漿細胞になる上で役割を果たすBリンパ球表面分子をコードする。この族のメンバーは、族メンバーの群の中で11q12に局所化する。この遺伝子の代替的なスプライシングは、同じタンパク質をコードする2つの転写変異形をもたらす。
【0066】
「CD20」及び「CD20抗原」という用語は、本明細書において互換的に使用され、これらには、細胞により自然に発現されるかまたはCD20遺伝子でトランスフェクトされた細胞上で発現されるヒトCD20の任意の変異形、アイソフォーム、及び種ホモログが含まれる。本発明の抗体のCD20抗原への結合は、CD20を不活性化することにより、CD20を発現する細胞(例えば腫瘍細胞)の死滅を媒介する。CD20を発現する細胞の死滅は、以下の機構:細胞死/アポトーシス誘導、ADCC及びCDCのうちの1つ以上により生じ得る。
【0067】
当技術分野において認識されるようなCD20の同義語には、Bリンパ球抗原CD20、Bリンパ球表面抗原B1、Leu−16、Bp35、BM5、及びLF5が含まれる。
【0068】
本発明による「抗CD20抗体」という用語は、CD20抗原と特異的に結合する抗体である。2つの型の抗CD20抗体(I型及びII型抗CD20抗体)は、抗CD20抗体のCD20抗原に対する結合特性及び生物活性に応じて、Cragg,M.S.,et al.,Blood 103(2004)2738−2743、及びCragg,M.S.,et al.,Blood 101(2003)1045−1052に従って区別され得、以下の表1を参照されたい。
【0069】
II型抗CD20抗体の例には、例えば、ヒト化B−Ly1抗体IgG1(WO2005/044859に開示されるようなキメラヒト化IgG1抗体)、11B8IgG1(WO2004/035607に開示されるような)、及びAT80IgG1が含まれる。典型的には、IgG1アイソタイプのII型抗CD20抗体は、特徴的なCDC特性を示す。II型抗CD20抗体は、IgG1アイソタイプのI型抗体と比較して減少したCDC(IgG1アイソタイプの場合)を有する。
【0070】
I型抗CD20抗体の例には、例えば、リツキシマブ、HI47IgG3(ECACC、ハイブリドーマ)、2C6IgG1(WO2005/103081に開示されるような)、2F2IgG1(開示されるような、かつWO2004/035607及びWO2005/103081)、及び2H7IgG1(WO2004/056312に開示されるような)が含まれる。
【0071】
本発明によるアフコシル化抗CD20抗体は好ましくは、WO2005/044859及びWO2007/031875に記載されるようなII型抗CD20抗体、より好ましくはアフコシル化ヒト化B−Ly1抗体である。
【0072】
「リツキシマブ」抗体(参照抗体、I型抗CD20抗体の例)は、ヒトCD20抗原を対象としているモノクローナル抗体を含有する遺伝子操作されたキメラヒトガンマ1マウス定常ドメインである。しかし、この抗体は、糖操作もアフォクシル化もされておらず、したがって、少なくとも85%の量のフコースを有する。このキメラ抗体は、ヒトガンマ1定常ドメインを含有し、IDEC Pharmaceuticals Corporationに割り当てられた、1998年4月17日に発行されたUS5,736,137(Andersen,et.al.)の中の名称「C2B8」により特定される。リツキシマブは、再発性または屈折性である低悪性度または濾胞性である、CD20陽性、B細胞非ホジキンスリンパ腫を有する患者の治療に関して承認されている。インビトロ機構の作用研究は、リツキシマブが、ヒト補体依存性細胞傷害性(CDC)を呈することを示している(Reff,M.E.,et.al,Blood 83(2)(1994)435−445)。加えて、それは、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を測定するアッセイにおいて活性を示す。
【0073】
「GA101抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒトCD20に結合する以下の抗体のうちのいずれか1つを指す:(1)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR−H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR−H2、配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR−H3、配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR−L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体、(2)配列番号7のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号8のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む抗体、(3)配列番号9のアミノ酸配列及び配列番号10のアミノ酸配列を含む抗体、(4)オビヌツズマブとして既知の抗体、または(5)配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む抗体。一実施形態において、GA101抗体は、IgG1アイソタイプ抗体である。いくつかの実施形態において、抗CD20抗体は、ヒト化B−Ly1抗体である。
【0074】
「ヒト化B−Ly1抗体」という用語は、WO2005/044859及びWO2007/031875に開示されるようなヒト化B−Ly1抗体を指し、それらは、IgG1からのヒト定常ドメインを用いたキメラ化、及び続いてヒト化(WO2005/044859及びWO2007/031875を参照されたい)により、マウスモノクローナル抗CD20抗体B−Ly1(マウス重鎖の可変領域(VH):配列番号11;マウス軽鎖の可変領域(VL):配列番号12−Poppema,S.and Visser,L.,Biotest Bulletin 3(1987)131−139を参照されたい)から得られた。これらの「ヒト化B−Ly1抗体」の詳細は、WO2005/044859及びWO2007/031875に開示される。
マウスモノクローナル抗CD20抗体B−Ly1重鎖(VH)(配列番号11)の可変領域
マウスモノクローナル抗CD20抗体B−Ly1軽鎖(VL)(配列番号12)の可変領域
【0075】
一実施形態において、「ヒト化B−Ly1抗体」は、配列番号7、8、及び13〜33の群から選択された重鎖の可変領域(VH)を有する(特に、WO2005/044859及びWO2007/031875のB−HH2〜B−HH9及びB−HL8〜B−HL17に対応する)。1つの具体的な実施形態において、かかる可変ドメインは、配列番号14、15、7、19、25、27、及び29からなる群から選択される(WO2005/044859及びWO2007/031875のB−HH2、BHH−3、B−HH6、B−HH8、B−HL8、B−HL11、及びB−HL13に対応する)。1つの具体的な実施形態において、「ヒト化B−Ly1抗体」は、配列番号8の軽鎖の可変領域(VL)を有する(WO2005/044859及びWO2007/031875のB−KV1に対応する)。1つの具体的な実施形態において、「ヒト化B−Ly1抗体」は、配列番号7の重鎖の可変領域(VH)(WO2005/044859及びWO2007/031875のB−HH6に対応する)、及び配列番号8の軽鎖の可変領域(VL)(WO2005/044859及びWO2007/031875のB−KV1に対応する)を有する。さらに、一実施形態において、ヒト化B−Ly1抗体は、IgG1抗体である。本発明によると、かかるアフォクシル化されたヒト化B−Ly1抗体は、WO2005/044859、WO2004/065540、WO2007/031875、Umana,P.et al.,Nature Biotechnol.17(1999)176−180、及びWO99/154342に記載される手順に従って、Fc領域において糖操作されている(GE)。一実施形態において、アフコシル化糖操作ヒト化B−Ly1は、B−HH6−B−KV1 GEである。一実施形態において、抗CD20抗体は、オビヌツズマブである(推奨されるINN、WHO医薬品情報、vol.26、No.4、2012、p.453)。本明細書で使用される場合、オビヌツズマブは、GA101またはRO5072759と同義である。これは、全ての前バージョン(例えば、Vol.25、No.1、2011、p.75−76)を置き換え、以前はアフツズマブ(推奨されるINN、WHO Drug Information,vol.23、No.2、2009、p.176;Vol.22、No.2、2008、p.124)として知られていた。いくつかの実施形態において、ヒト化B−Ly1抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖、またはそれらの抗原結合断片を含む抗体である。いくつかの実施形態において、ヒト化B−Ly1抗体は、配列番号9の3つの重鎖CDRを含む重鎖可変領域と、配列番号10の3つの軽鎖CDRを含む軽鎖可変領域とを含む。
重鎖(配列番号9)
軽鎖(配列番号10)
【0076】
いくつかの実施形態において、ヒト化B−Ly1抗体は、アフコシル化糖操作ヒト化B−Ly1である。かかる糖操作ヒト化B−Ly1抗体は、Fc領域内にグリコシル化の変化パターンを有し、好ましくは、低減したレベルのフコース残基を有する。好ましくは、フコースの量は、Asn297においてオリゴ糖の総量の60%以下である(一実施形態において、フコースの量は、40%〜60%であり、別の実施形態において、フコースの量は、50%以下、及びさらに別の実施形態において、フコースの量は、30%以下である)。さらに、Fc領域のオリゴ糖は好ましくは、二等分される。これらの糖操作ヒト化B−Ly1抗体は、増加したADCCを有する。
【0077】
「リツキシマブと比較した、抗CD20抗体のRaji細胞(ATCC番号 CCL−86)上のCD20に対する結合能力の比」は、実施例第2に記載されるようなRaji細胞(ATCC番号 CCL−86)を用いたFACSArray(Becton Dickinson)において、Cy5とコンジュゲートした該抗CD20抗体及びCy5とコンジュゲートしたリツキシマブを使用した直接免疫蛍光測定(平均蛍光強度(MFI)が測定される)により決定され、以下のように計算される:
Raji細胞(ATCC番号 CCL−86)上のCD20に対する結合能力の比=
【0078】
MFIは、平均蛍光強度である。「Cy5標識比」は、本明細書で使用される場合、1分子抗体当たりのCy5標識分子の数を意味する。
【0079】
典型的には、該II型抗CD20抗体は、リツキシマブと比較した該第2の抗CD20抗体のRaji細胞(ATCC番号 CCL−86)上のCD20に対する、0.3〜0.6、一実施形態において、0.35〜0.55、及びさらに別の実施形態において、0.4〜0.5の結合能力の比を有する。
【0080】
一実施形態において、該II型抗CD20抗体、例えば、GA101抗体は、増加した抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を有する。
【0081】
「増加した抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を有する抗体」は、当業者に既知の任意の好適な方法により決定されるような、増加したADCCを有する本明細書で定義される用語のような抗体を意味する。インビトロADCCアッセイで受け入れられるものは、以下の通りである:
1)アッセイは、抗体の抗原結合領域により認識される標的抗原を発現させることで既知である標的細胞を使用し、
2)アッセイは、無作為に選定された健康な供与体の血液から単離されたヒト末梢血液単核細胞(PBMC)を、エフェクター細胞として使用し、
3)アッセイは、以下のプロトコルに従って行われ:
i)PBMCを、標準密度遠心分離手順を使用して単離し、RPMI細胞培養培地中で5x10
6細胞/mlで懸濁し、
ii)標的細胞は、標準組織培養方法により成長し、90%超の生存性で急成長相から採取し、RPMI細胞培養培地中で洗浄し、
51Crの100マイクロ−キュリーで標識化し、細胞培養培地を用いて2回洗浄し、10
5細胞/mlの密度で、細胞培養培地中で再懸濁し、
iii)上記の100マイクロタイターの最終標的細胞懸濁液を96ウェルのマイクロタイタープレートの各ウェルに移し、
iv)抗体を細胞培養培地中で4000ng/mlから0.04ng/mlに段階的に希釈し、50マイクロタイターの得られた抗体溶液を96ウェルのマイクロタイタープレート内の標的細胞に付加し、上記の全ての濃度範囲を網羅する三連の様々な抗体濃度で試験し、
v)最大放出(MR)対照に関して、標識標的細胞を含有するプレート内の3つの追加のウェルは、抗体溶液(上記の要点iv)の代わりに、50マイクロタイターの非イオン性洗剤の2%(VN)水溶液(Nonidet,Sigma,St.Louis)を受け、
vi)自然放出(SR)対照に関して、標識標的細胞を含有するプレート内の3つの追加のウェルは、抗体溶液(上記の要点iv)の代わりに、50マイクロタイターのRPMI細胞培養培地を受け、
vii)次いで、96ウェルのマイクロタイタープレートを50xgで1分間遠心分離し、4℃で1時間インキュベートし、
viii)50マイクロタイターのPBMC懸濁液(上記の要点i)を各ウェルに付加し、25:1の標的細胞比のエフェクターをもたらし、プレートを5%のCO2雰囲気におけるインキュベーター内に、37℃で4時間配置し、
ix)各ウェルから細胞不含の上清を採取し、実験的に放出された放射能(ER)を、ガンマ計数器を使用して定量化し、
x)各抗体濃度に関して、式(ER−MR)/(MR−SR)x100に従って特異的な溶解パーセンテージを計算し、式中、ERは、その抗体濃度に対して定量化された平均放射能(上記の要点ixを参照されたい)であり、MRは、MR対照(上記の要点Vを参照されたい)に対して定量化された平均放射能(上記の要点ixを参照されたい)であり、SRは、SR対照(上記の要点viを参照されたい)に対して定量化された平均放射能(上記の要点ixを参照されたい)であり、
4)「増加したADCC」は、上記で試験された抗体濃度範囲内で観察された特異的溶解の最大パーセンテージの増加、及び/または上記で試験された抗体濃度範囲内で観察された特異的溶解の最大パーセンテージの半分を達成するのに必要とされる抗体の濃度の低減として定義される。一実施形態において、ADCCの増加は、上記のアッセイで測定され、同じ抗体により媒介され、当業者に既知である同じ標準産生、精製、配合、及び保管方法を使用して同じ型の宿主細胞により産生されるADCCに対するが、比較用抗体(増加したADCCの欠如)が、フコシルトランスフェラーゼ8(FUT8)遺伝子(例えば、FUT8ノックオウトのために操作されたものを含む)から、GnTIIIを過剰発現させるために操作された、かつ/または低減した発現を有するように操作された宿主細胞により産生されていないことを除く。
【0082】
該「増加したADCC」は、例えば、該抗体の突然変異及び/または糖操作により得ることができる。一実施形態において、本抗体は、例えば、WO2003/011878(Jean−Mairet et al.)、米国特許第6,602,684号(Umana et al.)、US2005/0123546(Umana et al.),Umana,P.,et al.,Nature Biotechnol.17(1999)176−180)のGlcNAcにより二等分される抗体のFc領域に結合する二分岐のオリゴ糖を有するように糖操作される。別の実施形態において、本抗体は、タンパク質のフコシル化が欠損している宿主細胞中の抗体を発現させることにより、Fc領域に結合する炭水化物上のフコースを欠くように糖操作される(例えば、Lec13 CHO細胞、または欠失したアルファ−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子(FUT8)もしくはノックダウンされたFUT遺伝子発現を有する細胞(例えば、Yamane−Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)、Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680−688(2006)、及びWO2003/085107を参照されたい)。さらに別の実施形態において、抗体配列は、ADCCを増強するようにそのFc領域内で操作されている(例えば、一実施形態において、かかる操作された抗体変異形は、Fc領域の298、333、及び/または334位(残基のEU番号付け)で1つ以上のアミノ酸置換を有するFc領域を含む)。
【0083】
「補体依存性細胞傷害性(CDC)」という用語は、補体の存在下で、本発明による抗体によるヒト腫瘍標的細胞の溶解を指す。CDCは、補体の存在下で、本発明による抗CD20抗体とのCD20発現細胞の調製物の処理により測定され得る。本抗体が、4時間後に腫瘍細胞の20%以上の溶解(細胞死)を100nMの濃度で誘導する場合にCDCが見られる。一実施形態において、アッセイは、
51CrまたはEu標識腫瘍細胞を用いて行われ、放出された
51CrまたはEuを測定する。対照には、補体を用いるが、抗体を用いない腫瘍標的細胞のインキュベーションが含まれる。
【0084】
「CD20抗原の発現」という用語は、細胞、例えば、T細胞またはB細胞中でCD20抗原の著しいレベルの発現を示すことを意図する。一実施形態において、本発明の方法に従って治療される患者は、B細胞上で著しいレベルのCD20を発現する。B細胞上のCD20発現は、当技術分野で既知の標準アッセイにより決定され得、例えば、CD20抗原発現は、免疫組織化学的(IHC)検出、FACSを使用して、または対応するmRNAのPCRに基づく検出により測定される。
【0085】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」、及び「the(その)」は、別途内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「分子」への言及は、2つ以上のかかる分子の組み合わせを任意に含むといった具合である。
【0086】
「about(約)」という用語は、本明細書で使用される場合、当業者に容易に知られているそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」の値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。
【0087】
本明細書に記載の本発明の態様及び実施形態が、態様及び実施形態「comprising(を含む)」 「consisting(からなる)」、及び「consisting essentially of(から本質的になる)」を含むことが理解される。
【0088】
III.方法
一態様において、有効量のII型抗CD20抗体を投与することにより、ループスを有する個体におけるループス腎炎を治療するか、またはその進行を遅延させるための方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、個体は、ループス腎炎を有するか、それを発症する危険性がある。いくつかの実施形態において、ループス腎炎は、クラスIIIまたはクラスIVのループス腎炎である。いくつかの実施形態において、本方法は、少なくとも第1の抗体曝露量のII型抗CD20抗体及び第2の抗体曝露量のII型抗CD20抗体を個体に投与することを含み、第2の抗体曝露量は、第1の抗体曝露量の約18週間〜約26週間後まで提供されず、ここで、第1の抗体曝露量は、1または2回分の用量のII型抗CD20抗体を含み、第1の抗体曝露量は、約1800mg〜約2200mgのII型抗CD20抗体の総曝露量を含み、第2の抗体曝露量は、1または2回分の用量のII型抗CD20抗体を含み、第2の抗体曝露量は、約1800mg〜約2200mgのII型抗CD20抗体の総曝露量を含む。後述されるように、いくつかの実施形態において、本抗体は、配列番号1のHVR−H1配列、配列番号2のHVR−H2配列、及び配列番号3のHVR−H3配列を含む重鎖と、配列番号4のHVR−L1配列、配列番号5のHVR−L2配列、及び配列番号6のHVR−L3配列を含む軽鎖とを含む。いくつかの実施形態において、本抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号8のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。いくつかの実施形態において、本抗体は、配列番号9のアミノ酸配列及び配列番号10のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、本抗体は、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む抗体を含む。
【0089】
抗CD20抗体
本開示のある特定の態様は、例えば、ループス腎炎を治療するか、またはその進行を阻止するための方法で使用するための抗CD20抗体に関する。いくつかの実施形態において、抗CD20抗体は、II型抗体である。いくつかの実施形態において、抗CD20抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態において、抗CD20抗体は、アフコシル化されている。いくつかの実施形態において、抗CD20抗体は、GA101抗体である。
【0090】
II型抗CD20抗体の例には、例えば、ヒト化B−Ly1抗体IgG1(WO2005/044859に開示されるようなキメラヒト化IgG1抗体)、11B8IgG1(WO2004/035607に開示されるような)、及びAT80IgG1が含まれる。典型的には、IgG1アイソタイプのII型抗CD20抗体は、特徴的なCDC特性を示す。II型抗CD20抗体は、IgG1アイソタイプのI型抗体と比較して減少したCDC(IgG1アイソタイプの場合)を有する。
【0091】
I型抗CD20抗体の例には、例えば、リツキシマブ、HI47IgG3(ECACC、ハイブリドーマ)、2C6IgG1(WO2005/103081に開示されるような)、2F2IgG1(開示されるような、かつWO2004/035607及びWO2005/103081)、及び2H7IgG1(WO2004/056312に開示されるような)が含まれる。
【0092】
いくつかの実施形態において、抗CD20抗体は、本明細書に記載されるGA101抗体である。いくつかの実施形態において、抗CD20は、ヒトCD20に結合する以下の抗体のうちのいずれか1つである:(1)GYAFSY(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR−H1、FPGDGDTD(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHVR−H2、NVFDGYWLVY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR−H3、RSSKSLLHSNGITYLY(配列番号4)のアミノ酸配列を含むHVR−L1、QMSNLVS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及びAQNLELPYT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体、(2)配列番号7のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号8のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む抗体、(3)配列番号9のアミノ酸配列及び配列番号10のアミノ酸配列を含む抗体、(4)オビヌツズマブとして既知の抗体、または(5)配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む抗体。一実施形態において、GA101抗体は、IgG1アイソタイプ抗体である。いくつかの実施形態において、抗CD20抗体は、本明細書に記載される抗体のいずれかのHVR−H1、HVR−H2、HVR−H3、HVR−L1、HVR−L2、及びHVR−L3、例えば、配列番号7からの3HVR及び配列番号8の3HVR、配列番号9からの3HVR及び配列番号10からの3HVR、または表2に提供されるアミノ酸配列の任意のHVRを含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、抗CD20抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0094】
いくつかの実施形態において、抗CD20抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、抗CD20抗体は、ヒト化B−Ly1抗体である。いくつかの実施形態において、ヒト化B−Ly1抗体は、配列番号9の3つの重鎖CDRを含む重鎖可変領域と、配列番号10の3つの軽鎖CDRを含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態において、ヒト化B−Ly1抗体は、配列番号9の配列を含む重鎖と、配列番号10の配列を含む軽鎖とを含む。
【0096】
いくつかの実施形態において、抗CD20抗体は、以下の表2に列挙されるポリペプチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、抗CD20抗体(例えば、II型抗CD20抗体)は、アフコシル化糖操作抗体である。かかる糖操作抗体は、Fc領域内にグリコシル化の変化パターンを有し、好ましくは、低減したレベルのフコース残基を有する。好ましくは、フコースの量は、Asn297においてオリゴ糖の総量の60%以下である(一実施形態において、フコースの量は、40%〜60%であり、別の実施形態において、フコースの量は、50%以下、及びさらに別の実施形態において、フコースの量は、30%以下である)。さらに、Fc領域のオリゴ糖は好ましくは、二等分される。これらの糖操作ヒト化抗CD20(例えば、B−Ly1)抗体は、増加したADCCを有する。
【0098】
オリゴ糖構成成分は、物理的安定性、プロテアーゼ攻撃に対する抵抗性、免疫系との相互作用、薬物動態、及び特異的な生物活性を含む、治療用糖タンパク質の有効性に関係する特性に著しく影響を与え得る。かかる特性は、オリゴ糖の存在または不在だけでなく、特異的構造にも依存し得る。オリゴ糖構造と糖タンパク質機能との間にあるいくつかの概括論が確立され得る。例えば、ある特定のオリゴ糖構造は、特異的炭水化物結合タンパク質との相互作用により、血液流からの糖タンパク質の急速なクリアランスを媒介する一方で、他のオリゴ糖構造は、抗体により結合され、所望されない免疫反応を引き起こし得る。(Jenkins,N.,et al.,Nature Biotechnol.14(1996)975−81)。
【0099】
哺乳動物細胞は、それらがタンパク質をヒトへの適用にとって最も高い適合形態でグリコシル化する能力に因り、治療用糖タンパク質の産生に好ましい宿主である。(Cumming,D.A.,et al.,Glycobiology 1(1991)115−30、Jenkins,N.,et al.,Nature Biotechnol.14(1996)975−81)。細菌は、タンパク質を滅多にグリコシル化せず、一般的な宿主の他の型、例えば、酵母、糸状真菌、昆虫、及び植物細胞などは、血液流からの急速なクリアランス、不要な免疫相互作用、及びいくつかの特定な事例において、低減した生物活性に関連するグリコシル化パターンをもたらす。哺乳動物細胞である、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が、過去20年で最も一般的に使用されている。好適なグリコシル化パターンを供することに加えて、これらの細胞は、遺伝子的に安定した高生産性クローン細胞株の一貫性のある生成を可能にする。それらは、血清不含培地を使用して単純な生物反応器で高密度に培養され得、安全で再現可能な生物プロセスの開発を許可する。他の一般的に使用される動物細胞には、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、NSOマウス骨髄腫細胞、及びSP2/0マウス骨髄腫細胞が含まれる。最近では、トランスジェニック動物からの産生が、試験されている。(Jenkins,N.,et al.,Nature Biotechnol.14(1996)975−981)。
【0100】
全ての抗体は、重鎖定常領域内の保存位置で炭水化物構造を含有し、各アイソタイプは、N連結炭水化物構造の異なるアレイを保有し、それらは、タンパク質構成、分泌、または機能性活性に可変的に影響を与える。(Wright,A.,and Morrison,S.L.,Trends Biotech.15(1997)26−32)。結合されたN連結炭水化物の構造は、プロセスの程度に応じて大きく異なり、これには、高マンノース、多分岐、ならびに二分岐の複合オリゴ糖が含まれ得る。(Wright,A.,and Morrison,S.L.,Trends Biotech.15(1997)26−32)。典型的には、モノクローナル抗体でさえ複数の糖形態として存在するように、特定のグリコシル化部位で結合するコアオリゴ糖構造の不均一プロセスが存在する。同様に、抗体グリコシル化における主な差異は、細胞株間で生じ、さらにわずかな差異が、異なる培養条件下で成長する所与の細胞株に関して見られることが示されている。(Lifely,M.R.,et al.,Glycobiology 5(8)(1995)813−22)。
【0101】
効能の大幅な増加を得ながら、単純な産生プロセスを維持し、著しい不要な副作用をできるだけ回避する1つの方法は、Umana,P.,et al.,Nature Biotechnol.17(1999)176−180及びUS6,602,684に記載されるように、モノクローナル抗体の天然の細胞媒介性エフェクター機能を、それらのオリゴ糖構成成分を操作することにより増強することである。癌免疫療法で最も一般的に使用される抗体であるIgG1型抗体は、各CH2ドメイン内のAsn297において、保存されたN連結グリコシル化部位を有する糖タンパク質である。Asn297に結合する2つの複合二分岐オリゴ糖は、CH2ドメイン間に埋まっており、それらは、ポリペプチド骨格との広範囲な接触を形成し、それらの存在は、抗体が抗体依存性細胞傷害性(ADCC)などのエフェクター機能を媒介するために必須である(Lifely,M.R.,et al.,Glycobiology 5(1995)813−822、Jefferis,R.,et al.,Immunol.Rev.163(1998)59−76、Wright,A.,and Morrison,S.L.,Trends Biotechnol.15(1997)26−32)。
【0102】
β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI11(´´GnTII17y)、つまり二等分されたオリゴ糖の形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼのチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の過剰発現が、操作されたCHO細胞により産生された抗神経芽細胞腫キメラモノクローナル抗体(chCE7)のインビトロADCC活性を著しく増加させることが前に示された。(Umana,P.,et al.,Nature Biotechnol.17(1999)176−180;及びWO99/154342を参照されたく、その全内容が参照することにより本明細書に組み込まれる)。抗体chCE7は、高腫瘍親和性及び特異性を有するが、GnTIII酵素を欠く標準工業用細胞株内で産生されたとき、臨床的に有用な効能をほとんど有さない、コンジュゲートされていないモノクローナル抗体の大きなクラスに属する(Umana,P.,et al.,Nature Biotechnol.17(1999)176−180)。その研究は、まず、ADCC活性の大幅な増加が、抗体産生細胞を操作して、GnTIIIを発現することにより得ることが可能かもしれないことを示し、これは、自然発生抗体中で見られるレベル以上で、二等分されたフコシル化されていないオリゴ糖を含む、定常領域(Fc)に関連した二等分されたオリゴ糖の割合の増加ももたらすことが可能かもしれない。
【0103】
いくつかの実施形態において、抗CD20抗体(例えば、II型抗CD20抗体)は、ヒトFc領域(例えば、ヒトIgG1Fc領域)を含む。いくつかの実施形態において、Fc領域は、修飾されているN連結オリゴ糖を含む。いくつかの実施形態において、Fc領域のN連結オリゴ糖は、非修飾のN連結オリゴ糖を有する抗体と比較して、低減したフコース残基を有する。いくつかの実施形態において、二等分されたオリゴ糖は、二等分された複合オリゴ糖である。いくつかの実施形態において、N連結オリゴ糖は、増加した二等分されたフコシル化されていないオリゴ糖を有するように修飾されている。いくつかの実施形態において、二等分されたフコシル化されていないオリゴ糖は、ハイブリッド型である。いくつかの実施形態において、二等分されたフコシル化されていないオリゴ糖は、複合型である。より詳細な説明に関しては、例えば、WO2003/011878(Jean−Mairet et al.)、米国特許第6,602,684号(Umana et al.)、US2005/0123546(Umana et al.)、及び米国特許第8,883,980号(Umana et al.)を参照されたい。
【0104】
いくつかの実施形態において、抗CD20抗体(例えば、II型抗CD20抗体)は、多重特異性抗体または二重特異性抗体である。
【0105】
抗体の調製
上記の実施形態のうちのいずれかによる抗体(例えば、本開示のII型抗CD20抗体)は、以下の項1〜7に記載されるような特徴のうちのいずれかを、単独または組み合わせて組み込み得る。
【0106】
1.抗体親和性
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10
−8M以下、例えば、10
−8M〜10
−13M、例えば、10
−9M〜10
−13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0107】
一実施形態において、Kdは、放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)により測定される。一実施形態において、RIAは、目的の抗体のFabバージョン及びその抗原を用いて行われる。例えば、抗原に対するFabの溶液結合親和性は、非標識抗原の一連の滴定の存在下で、最小濃度の(
125I)標識抗原と平衡化し、次いで抗Fab抗体でコーティングされたプレートと結合した抗原を捕捉することにより測定される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865−881(1999)を参照されたい)。アッセイのための条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)が、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングされ、続いて、室温(約23℃)で2〜5時間、PBS中2%(w/v)のウシ血清アルブミンで遮断される。非吸着性のプレート(Nunc #269620)内で、100pMまたは26pM[
125I]−抗原を、目的のFabの段階希釈液と混合する(例えば、Presta et al.,Cancer Res.57:4593−4599(1997)における抗VEGF抗体、Fab−12の評価と一貫性がある)。次いで、目的のFabを一晩インキュベートするが、インキュベーションをより長い期間(例えば、約65時間)続けて、平衡に達することを確実にすることができる。その後、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために混合物を捕捉プレートに移す。次いで、溶液を除去し、プレートをPBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN−20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μL/ウェルのシンチラント(scintillant)(MICROSCINT−20(商標)Packard)を付加し、プレートをTOPCOUNT(商標)ガンマ計数器(Packard)上で10分間計数する。最大結合の20%以下をもたらす各Fabの濃度を競合結合アッセイで使用するために選定する。
【0108】
別の実施形態に従って、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定され得る。例えば、BIACORE(登録商標)−2000またはBIACORE(登録商標)−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用するアッセイは、約10の応答単位(RU)で固定化抗原CM5チップを用いて25℃で行われる。一実施形態において、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサチップ(CM5、BIACORE,Inc.)は、供給者の指示書に従って、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化される。抗原を10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/mL(約0.2μM)になるまで希釈した後に、5μL/分の流量で注入して、およそ10応答単位(RU)のカップリングしたタンパク質を達成する。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応基を遮断する。動態測定のために、Fabの2倍段階希釈液(0.78nM〜500nM)を、0.05%ポリソルベート20(TWEEN−20(商標))界面活性剤(PBST)を有するPBS中に25℃、およそ25μL/分の流量で注入する。会合速度(k
on)及び解離速度(k
off)を、単純な1対1のラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、会合センサグラムと解離センサグラムとを同時に当てはめることにより計算する。平衡解離定数(Kd)を、k
off/k
on比として計算する。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865−881(1999)を参照されたい。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによるオン速度が106M−1s−1を超える場合、オン速度は、撹拌されたキュベットを備えるストップトフロー装着スペクトロフォメーター(Aviv Instruments)または8000シリーズSLM−AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計において測定される、増加濃度の抗原の存在下で、25℃でのPBS(pH7.2)中の20nM抗−抗原抗体(Fab型)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の増加または減少を測定する、蛍光消光技法を使用することにより決定することができる。
【0109】
2.抗体断片
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、抗体断片である。抗体断片には、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)
2、Fv、及びscFv断片、ならびに後述される他の断片が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の抗体断片の概説に関しては、Hudson et al.Nat.Med.9:129−134(2003)を参照されたい。scFv断片の概説に関しては、例えば、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer−Verlag,New York),pp.269−315(1994)を参照されたく、WO93/16185、ならびに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、増加したインビボ半減期を有するFab及びF(ab´)
2断片の考察に関しては、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0110】
ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP404,097、WO1993/01161、Hudson et al.,Nat.Med.9:129−134(2003)、及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444−6448(1993)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディも、Hudson et al.,Nat.Med.9:129−134(2003)に記載される。
【0111】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部、または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部分を含む、抗体断片である。ある特定の実施形態において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA、例えば、米国特許第6,248,516 B1号を参照されたい)。
【0112】
抗体断片は、本明細書に記載されるようなインタクトな抗体のタンパク質消化ならびに組み換え宿主細胞(例えばE.coliまたはファージ)による産生を含むが、これらに限定されない様々な技法により作製され得る。
【0113】
3.キメラ及びヒト化抗体
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、キメラ抗体である。ある特定のキメラ抗体が、例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984))に記載される。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、または非ヒト霊長類、例えば、サルに由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。さらなる例において、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスから変化した「クラススイッチ型」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0114】
ある特定の実施形態において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトに対する免疫原性を低減する一方で、親非ヒト抗体の特異性及び親和性は保持するようにヒト化される。概して、ヒト化抗体は、1つ以上の可変ドメインを含み、そのHVR、例えば、CDR(またはそれらの部分)は、非ヒト抗体に由来し、そのFR(またはそれらの部分)は、ヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は任意に、ヒト定常領域の少なくとも一部分も含むであろう。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を復元または改善するように、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0115】
ヒト化抗体及びそれらの作製方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619−1633(2008)で概説され、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988)、Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA86:10029−10033(1989)、米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号、Kashmiri et al.,Methods36:25−34(2005)(特異性決定領域(SDR)グラフティングを記載する)、Padlan,Mol.Immunol.28:489−498(1991)(「リサーフェイシング(resurfacing)」を記載する)、Dall’Acqua et al.,Methods36:43−60(2005)(「FRシャッフリング」を記載する)、ならびにOsbourn et al.,Methods36:61−68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252−260(2000)(FRシャフリングへの「誘導選択(guided selection)」手法を記載する)にさらに記載される。
【0116】
ヒト化のために使用され得るヒトフレームワーク領域には、「ベストフィット」方法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照されたい)、軽鎖または重鎖可変領域の特定の下位群のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992)、及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)を参照されたい)、ヒト成熟(体細胞突然変異した)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619−1633(2008)を参照されたい)、及びFRライブラリを選別することに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678−10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611−22618(1996)を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。
【0117】
4.ヒト抗体
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で既知の様々な技法を使用して産生され得る。ヒト抗体は、概して、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368−74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450−459(2008)に記載される。
【0118】
ヒト抗体は、抗原攻撃に応答してヒト可変領域を有するインタクトなヒト抗体またはインタクトな抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することにより調製され得る。かかる動物は典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または染色体外に存在するか、もしくは動物の染色体に無作為に組み込まれるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部分を含有する。かかるトランスジェニックマウスにおいて、内因性免疫グロブリン遺伝子座は概して、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説に関しては、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117−1125(2005)を参照されたい。例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号、HUMAB(登録商標)技術を記載する米国特許第5,770,429号、K−M MOUSE(登録商標)技術を記載する米国特許第7,041,870号、ならびに VELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載する)米国特許出願公開第US2007/0061900号も参照されたい。かかる動物により生成されたインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによりさらに修飾され得る。
【0119】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法により作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が記載されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)、及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されたヒト抗体も、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557−3562(2006)に記載される。追加の方法には、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株由来のモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載する)、及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265−268(2006)(ヒト−ヒトハイブリドーマを記載する)に記載されるものが含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)も、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927−937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185−91(2005)に記載される。
【0120】
ヒト抗体も、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することにより生成され得る。次いで、かかる可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わされ得る。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技法が後述される。
【0121】
5.ライブラリ由来抗体
本発明の抗体は、所望の活性(複数可)を有する抗体に関してコンビナトリアルライブラリを選別することにより単離され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリを生成し、かつ所望の結合特徴を保有する抗体に関してかかるライブラリを選別するための多様な方法が当技術分野で知られている。かかる方法は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1−37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)で概説され、例えば、the McCafferty et al.,Nature 348:552−554、Clackson et al.,Nature 352:624−628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1992)、Marks and Bradbury,in Methods in Molecular Biology 248:161−175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299−310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004)、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA101(34):12467−12472(2004)、及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1−2):119−132(2004)にさらに記載される。
【0122】
ある特定のファージディスプレイ方法において、VH及びVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)により別個にクローン化され、ファージライブラリ内で無作為に組み換えられ、次いで、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433−455(1994)に記載されるように、抗原結合ファージに関して選別される。ファージは典型的には、抗体断片を一本鎖Fv(scFv)断片またはFab断片として表示する。免疫付与源由来のライブラリは、ハイブリドーマの構築を必要とすることなく、免疫原に高親和性抗体を提供する。あるいは、Griffiths et al.,EMBO J,12:725−734(1993)により記載されるように、ナイーブレパートリーは、クローン化され(例えば、ヒトから)、いかなる免疫付与も伴わずに、幅広い非自己抗原また自己抗原に対する抗体の単一の源を提供し得る。最後に、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381−388(1992)に記載されるように、ナイーブライブラリは、幹細胞から再配列されていないV遺伝子セグメントをクローン化し、無作為配列を含有するPCRプライマーを使用して、高度可変CDR3領域をコードし、かつインビトロで再配列を達成することによっても合成的に作製され得る。ヒト抗体ファージライブラリを記載する特許公開には、例えば、米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、及び同第2009/0002360号が含まれる。
【0123】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書においてヒト抗体またはヒト抗体断片と見なされる。
【0124】
6.多重特異性抗体
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある特定の実施形態において、結合特異性のうちの1つは、CD20に対し、他のものは、任意の他の抗原に対する。ある特定の実施形態において、二重特異性抗体は、CD20の2つの異なるエピトープに結合し得る。二重特異性抗体は、CD20を発現する細胞に細胞傷害剤を局在化させるために使用され得る。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片として調製され得る。
【0125】
多重特異性抗体を作製するための技法には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の組み換え同時発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983))、WO93/08829、及びTraunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)を参照されたい)、及び「ノブ・イン・ホール(knob−in−hole)」操作(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。多重特異性抗体は、抗体Fc−ヘテロ二量体分子を作製するための静電気ステアリング(electrostatic steering)効果の操作(WO2009/089004A1)、2つ以上の抗体または断片の架橋(例えば、米国特許第4,676,980号、及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照されたい)、二重特異性抗体を産生するためのロイシンジッパーの使用(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547−1553(1992)を参照されたい)、二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術の使用(例えば、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)を参照されたい)、及び一本鎖Fv(sFv)二量体の使用(例えば、Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照されたい)、ならびに、例えば、Tutt et al.J.Immunol.147:60(1991)に記載されるような三重特異性抗体の調製によっても作製され得る。
【0126】
「オクトパス(Octopus)抗体」を含む、3つ以上の機能性抗原結合部位を有する操作された抗体も、本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576A1を参照されたい)。
【0127】
本明細書における抗体または断片には、CD20、ならびに別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用(Dual Acting)FAb」または「DAF」も含まれる(例えば、US2008/0069820を参照されたい)。
【0128】
7.抗体変異形
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列変異形が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異形は、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適切な修飾を導入することにより、またはペプチド合成により調製され得る。かかる修飾には、例えば抗体のアミノ酸配列からの残基の欠失、及び/またはアミノ酸配列中への残基の挿入、及び/またはアミノ酸配列中の残基の置換が含まれる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせは、最終構築を達成するように行われ得るが、但し、最終構築物が、所望の特徴、例えば抗原結合性を保有することを条件とする。
【0129】
a)置換、挿入、及び欠失変異形
ある特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異形が提供される。置換型突然変異生成のための目的の部位には、HVR及びFRが含まれる。保存的置換は、表Aにおいて、「好ましい置換」の見出しの下に示される。より実質的な変化は、表Aにおいて、「例示的な置換」の見出しの下に提供され、アミノ酸側鎖クラスを参照してさらに後述される。アミノ酸置換は、目的の抗体中に導入され、生成物は、所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の減少、またはADCCもしくはCDCの改善について選別され得る。
【0130】
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従って群分けされ得る。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
(3)酸性:Asp、Glu、
(4)塩基性:His、Lys、Arg、
(5)鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro、
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe
【0131】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーと別のクラスのメンバーとの交換を伴うことになる。
【0132】
ある型の置換型変異形は、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することに関与する。概して、さらなる研究のために選択される得られた変異形(複数可)は、親抗体に対してある特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加、免疫原性の低減)の修正(例えば、改善)を有し、かつ/または実質的に保持された親抗体のある特定の生物学的特性を有するであろう。例示的な置換型変異形は、例えば、本明細書に記載されるもののような、ファージディスプレイに基づく親和性成熟技法を使用して好都合に生成された親和性成熟抗体である。簡潔には、1つ以上のHVR残基は、突然変異され、変異形抗体は、ファージ上に表示され、特定の生物活性(例えば、結合親和性)に関して選別される。
【0133】
改変(例えば、置換)がHVRで行われて、例えば、抗体親和性を改善し得る。かかる改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスの間、高頻度で突然変異を起こすコドンによりコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179−196(2008)を参照されたい)、及び/または抗原に接触する残基で行われ得、得られた変異形VHまたはVLは、結合親和性に関して試験される。二次ライブラリを構築し、そこから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1−37に記載されている(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001)。) 親和性成熟のいくつかの実施形態において、多様性は、多様な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチドを対象とする突然変異生成)のうちのいずれかにより、成熟のために選定された可変遺伝子中に導入される。次いで、二次ライブラリが作製される。次いで、ライブラリは、所望の親和性を有する任意の抗体変異形を特定するために選別される。多様性を導入するための別の方法は、複数のHVR残基(例えば、一度に4〜6個の残基)が無作為化される、HVRを対象とする手法に関与する。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異生成またはモデリングを使用して、特異的に特定され得る。特にCDR−H3及びCDR−L3が標的とされることが多い。
【0134】
ある特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、かかる改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減しない保存的改変(えば、本明細書で提供されるような保存的置換)は、HVRで行われ得る。かかる改変は、例えば、HVR内の抗原接触残基以外の箇所であってよい。上記で提供される変異形VH及びVL配列のある特定の実施形態において、各HVRはいずれも、改変されないか、または1つを超える、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換を含有しない。
【0135】
突然変異生成のために標的とされ得る、抗体の残基または領域を特定するのに有用な方法は、「アラニンスキャニング突然変異生成」と称され、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081−1085により記載される。この方法において、残基または標的残基群(例えば、arg、asp、his、lys、及びgluなどの荷電残基)が特定され、中性または負荷電アミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)により置き換えられて、抗体と抗原との相互作用が影響を受けたかを決定する。さらなる置換が最初の置換に対する機能感受性を示すアミノ酸位置に導入され得る。あるいは、または加えて、抗体と抗原との間の接触点を特定するための抗原−抗体複合体の結晶構造。かかる接触残基及び隣接残基が置換のための候補として標的とされ得るか、または排除され得る。変異形は、それらが所望の特性を含有するかどうかを決定するために選別され得る。
【0136】
アミノ酸配列挿入には、長さが1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドの範囲であるアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異形には、抗体の血清半減期を増加させる酵素(例えば、ADEPTのための)またはポリペプチドへの、抗体のN末端またはC末端への融合が含まれる。
【0137】
b)グリコシル化変異形
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少するように改変される。グリコシル化部位の、抗体への追加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作製または除去されるように、アミノ酸配列を改変することにより好都合に達成され得る。
【0138】
抗体がFc領域を含む場合、そこに結合する炭水化物が改変され得る。哺乳動物細胞により産生された天然抗体は典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN連結により概して結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26−32(1997)を参照されたい。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「幹」にあるGlcNAcに結合するフコースが含まれ得る。いくつかの実施形態では、ある特定の特性が改善された抗体変異形を作製するために、本発明の抗体におけるオリゴ糖の修飾が行われ得る。
【0139】
一実施形態において、Fc領域に(直接的または間接的に)結合されたフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体変異形が提供される。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、1%〜80%、1%〜65%、5%〜65%、または20%〜40%であり得る。フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載されるように、MALDI−TOF質量分析により測定される場合、Asn297に結合する全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計に対するAsn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することにより決定される。Asn297は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEu番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297は、抗体のわずかな配列変異に因り、297位の約±3のアミノ酸上流または下流、すなわち、294位〜300位にも位置し得る。かかるフコシル化変異形は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開第 US2003/0157108号(Presta,L.)、同第US2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異形に関する公報の例には、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239−1249(2004)、Yamane−Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が含まれる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例には、タンパク質のフコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533−545(1986)、米国特許出願第US2003/0157108 A1号、Presta,L、及びWO2004/056312 A1,Adams et al.,特に実施例11)、及びアルファ−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株が含まれる(例えば、Yamane−Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)、Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680−688(2006)、及びWO2003/085107を参照されたい)。
【0140】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcにより二等分される、二等分されたオリゴ糖を有する抗体変異形がさらに提供される。かかる抗体変異形は、低減したフコシル化及び/または改善したADCC機能を有し得る。かかる抗体変異形の例は、例えば、WO2003/011878(Jean−Mairet et al.)、米国特許第6,602,684号(Umana et al.)、及びUS2005/0123546(Umana et al.)に記載される。Fc領域に結合したオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異形も提供される。かかる抗体変異形は、改善したCDC機能を有し得る。かかる抗体変異形は、例えば、WO1997/30087(Patel et al.)、WO1998/58964(Raju,S.)、及びWO1999/22764(Raju,S.)に記載される。
【0141】
c)Fc領域変異形
ある特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾は、本明細書で提供される抗体のFc領域中に導入され得、それにより、Fc領域変異形が生成され得る。Fc領域変異形は、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4Fc領域)を含み得る。
【0142】
ある特定の実施形態において、本発明は、全てではないがいくつかのエフェクター機能を保有することにより、インビボでの抗体の半減期が重要であるが、ある特定のエフェクター機能(補体及びADCCなど)が不要または有害である用途に望ましい候補となる抗体変異形を企図する。インビトロ及び/またはインビボ細胞傷害性アッセイは、CDC及び/またはADCC活性の低減/減損を確認するために実行され得る。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイは、抗体がFcγR結合を欠く(故に、ADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持することを確実にするために実行され得る。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞は、Fc(RIIIのみを発現する一方で、単球は、Fc(RI、Fc(RII、及びFc(RIIIを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457−492(1991)の464頁の表3に要約される。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA83:7059−7063(1986)を参照されたい)、及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA82:1499−1502(1985)、米国特許第5,821,337号(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351−1361(1987)を参照されたい)に記載される。あるいは、非放射性アッセイ方法が用いられる(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA、及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい)。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、または加えて、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA95:652−656(1998)に開示されるものなどの動物モデルで評価され得る。C1q結合アッセイも、抗体がC1qに結合することができず、故にCDC活性を欠くことを確認するために行われ得る。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイが行われ得る(例えば、Gazzano−Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)、Cragg,M.S.et al.,Blood 101:1045−1052(2003)、及びCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103:2738−2743(2004)を参照されたい)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期の決定は、当技術分野で既知の方法を使用しても行われ得る(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759−1769(2006)を参照されたい)。
【0143】
低減したエフェクター機能を有する抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上の置換を有するものが含まれる(米国特許第6,737,056号)。かかるFc突然変異体には、アラニンへの残基265及び297の置換を有する所謂「DANA」Fc突然変異体を含む、アミノ酸265位、269位、270位、297位、及び327位のうちの2つ以上での置換を有するFc突然変異体が含まれる(米国特許第7,332,581号)。
【0144】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載されるFc変異形は、エフェクター機能(CDC及び/またはADCCなど)を減衰させるための1つ以上のアミノ酸修飾をさらに含む。例示的な実施形態において、エフェクター機能を減衰させるための修飾は、Fc領域のグリコシル化パターンを改変しない修飾である。ある特定の実施形態において、エフェクター機能を減衰させるための修飾は、ヒトエフェクター細胞への結合、1つ以上のFc受容体への結合、及び/またはFc受容体を発現する細胞への結合を低減または排除する。例示的な実施形態において、本明細書に記載されるFc変異形は、以下の修飾:ヒトIgG1のFc領域内のL234A、L235A、及びP329Gを含み、これは、減衰したエフェクター機能をもたらす。置換L234A、L235A、及びP329G(L234A/L235A/P329G三重変異形は、LALAPGと称される)は、Fc受容体及び補体への結合を低減すると従来より示されている(例えば、米国公開第2012/0251531号を参照されたい)。
【0145】
様々な実施形態において、低減したエフェクター機能を有するFc変異形は、野生型Fc領域(例えば、エフェクター機能を低減するための突然変異を有しないが、他の突然変異体を有し得るFc領域)により達成されたエフェクター機能と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%以上のエフェクター機能(例えば、CDC、ADCC、及び/またはFcRへの結合などの活性)を低減するFc変異形を指す。ある特定の実施形態において、低減したエフェクター機能を有するFc変異形は、野生型Fc領域と比較して、全ての検出可能なエフェクター機能を排除するFc変異形を指す。エフェクター機能を測定するためのアッセイは、当技術分野で既知であり、後述される。
【0146】
インビトロ及び/またはインビボ細胞傷害性アッセイは、CDC及び/またはADCC活性の低減/減損を確認するために実行され得る。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイは、抗体がFcγR結合を欠く(故に、ADCC活性を欠く可能性が高い)ことを確実にするために実行され得る。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞がFcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457−492(1991)に要約される。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA83:7059−7063(1986)を参照されたい)、及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA82:1499−1502(1985)、米国特許第5,821,337号(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351−1361(1987)を参照されたい)に記載される。あるいは、非放射性アッセイ方法が用いられる(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA、及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい)。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、または加えて、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA95:652−656(1998)に開示されるものなどの動物モデルで評価され得る。C1q結合アッセイも、抗体がC1qに結合することができず、故にCDC活性を欠くことを確認するために行われ得る。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイが行われ得る(例えば、Gazzano−Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)、Cragg,M.S.et al.,Blood 101:1045−1052(2003)、及びCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103:2738−2743(2004)を参照されたい)。
【0147】
FcRへの結合が改善または減少したある特定の抗体変異形が記載されている。(例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312、及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591−6604(2001)を参照されたい。)
【0148】
ある特定の実施形態において、抗体変異形は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/または334位(残基のEU番号付け)での置換を有するFc領域を含む。
【0149】
いくつかの実施形態において、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178−4184(2000)に記載されるような、改変された(すなわち、改善または減少した)C1q結合及び/または補体依存細胞傷害性(CDC)をもたらす改変がFc領域内で行われ得る。
【0150】
母体IgGsの胎児への移入を担う、増加した半減期及び新生児型Fc受容体(FcRn)への改善した結合を有する抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)、及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))が、US2005/0014934A1(Hinton et al.)に記載される。それらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する1つ以上の置換をそこに有するFc領域を含む。かかるFc変異形には、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つ以上での置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものが含まれる(米国特許第7,371,826号)。
【0151】
Fc領域変異形の他の例に関する、Duncan&Winter,Nature 322:738−40(1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、及びWO94/29351も参照されたい。
【0152】
d)システイン操作された抗体変異形
ある特定の実施形態において、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されている、システイン操作された抗体、例えば、「チオマブ(thioMAb)」を作製することが望ましい場合がある。特定の実施形態において、置換残基は、抗体の利用可能な部位で生じる。システインを有する残基で置換することにより、反応性チオール基がそれにより抗体の利用可能な部位に位置付けられ、抗体を薬物部分またはリンカー薬物部分などの他の部分にコンジュゲートして、本明細書にさらに記載されるような免疫コンジュゲートを作製するために使用され得る。ある特定の実施形態において、以下の残基のうちのいずれか1つ以上が、システインで置換され得る:軽鎖のV205(Kabat番号付け)、重鎖のA118(EU番号付け)、及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン操作された抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように生成され得る。
【0153】
e)抗体誘導体
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、当技術分野で既知であり、かつ容易に利用可能である追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾され得る。抗体の誘導体化に好適な部分には、水溶性ポリマーが含まれるが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマー)、及びデキストランまたはポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、その水中での安定性に因り製造に有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量のものであり得、分岐状または非分岐状であり得る。抗体に結合するポリマーの数は、異なり得、1つを超えるポリマーが結合している場合、それらは、同じか、または異なる分子であり得る。概して、誘導体化のために使用されるポリマーの数及び/または型は、改善された抗体の特定の特性または機能、抗体の誘導体が所定の条件下での療法において使用されるかどうかなどを含むが、これらに限定されない検討事項に基づいて決定され得る。
【0154】
別の実施形態において、放射線に曝露されることにより選択的に加熱され得る抗体及び非タンパク質性部分のコンジュゲートが提供される。一実施形態において、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA102:11600−11605(2005))。放射線は、任意の波長のものであり得、通常の細胞を傷つけないが、非タンパク質性部分を抗体−非タンパク質性部分に近位の細胞が死滅する温度に加熱する波長が含まれるが、これらに限定されない。
【0155】
A.組み換え方法及び組成物
抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載されるような組み換え方法及び組成物を使用して産生され得る。一実施形態において、本明細書に記載される抗CD20抗体をコードする単離核酸が提供される。かかる核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/またはVHを含むアミノ酸配列をコードし得る(例えば、抗体の軽及び/または重鎖)。さらなる実施形態において、かかる核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。さらなる実施形態において、かかる核酸を含む宿主細胞が提供される。1つのかかる実施形態において、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2ベクターを含む(例えば、それらで形質転換されている)。一実施形態において、宿主細胞は、真核生物の、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一実施形態において、抗CD20抗体を作製する方法が提供され、本方法は、上記で提供されるような抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意に、抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することとを含む。
【0156】
抗CD20抗体の組み換え産生に関して、例えば、上述されるような抗体をコードする核酸は、単離され、宿主細胞内でのさらなるクローニング及び/または発現のために1つ以上のベクター中に挿入される。かかる核酸は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、容易に単離及び配列決定され得る。
【0157】
抗体コードベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞には、本明細書に記載される原核生物または真核生物細胞が含まれる。例えば、抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされないとき、細菌内で産生され得る。細菌内の抗体断片及びポリペプチドの発現に関しては、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、及び同第5,840,523号を参照されたい。(E.coli内の抗体断片の発現を記載するCharlton,Methods in Molecular Biology,vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245−254も参照されたい。) 発現後、抗体は、可溶性画分中で細菌細胞ペーストから単離され得、さらに精製され得る。
【0158】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物は、グリコシル化経路が「ヒト化」されている真菌及び酵母菌株を含む、抗体コードベクターに好適なクローニングまたは発現宿主であり、それらは、部分的または完全にヒトグリコシル化されたパターンを有する抗体の産生をもたらす。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409−1414(2004)、及びLi et al.,Nat.Biotech.24:210〜215(2006)を参照されたい。
【0159】
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)由来でもある。無脊椎動物細胞の例には、植物及び昆虫細胞が含まれる。昆虫細胞と併せて、特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために使用され得る、多数のバキュロウイルス菌株が特定されている。
【0160】
植物細胞培養物も宿主として利用され得る。米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載する)を参照されたい。
【0161】
脊椎動物細胞も宿主として使用され得る。例えば、懸濁液中で成長するように適合される哺乳動物細胞株が有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS−7)、ヒト胚腎臓株(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載されるような293または293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243−251(1980)に記載されるようなTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76)、ヒト子宮頸癌腫細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍(MMT060562)、例えば、Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68(1982)に記載されるようなTRI細胞、MRC5細胞、及びFS4細胞により形質転換されるサル腎臓CV1株である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR
−CHO細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA77:4216(1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ならびにY0、NS0、及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。抗体産生に好適なある特定の哺乳動物宿主細胞株の概説に関しては、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255−268(2003)を参照されたい。
【0162】
B.アッセイ
本明細書で提供される抗CD20抗体は、当技術分野で既知の様々なアッセイによりそれらの物理的/化学的特性及び/または生物活性に関して、特定、選別、または特徴付けされ得る。
【0163】
1.結合アッセイ及び他のアッセイ
一態様において、本発明の抗体は、例えば、ELISA、ウェスタンブロットなどの既知の方法によりその抗原結合活性に関して試験される。CD20結合は、当技術分野で既知の方法を使用して決定され得、例示的な方法が本明細書に開示される。一実施形態において、結合は、ラジオイムノアッセイを使用して測定される。例示的なラジオイムノアッセイが以下に提供される。CD20抗体はヨウ素化され、固定濃度のヨウ素化抗体及び減少濃度の段階的に希釈された非標識CD20抗体を含有する競合反応混合物が調製される。CD20を発現する細胞(例えば、ヒトCD20で安定的にトランスフェクトされたBT474細胞)が、反応混合物に付加される。インキュベーションに続いて、細胞は洗浄されて、細胞に結合したCD20抗体から遊離ヨウ素化CD20抗体を分離する。例えば、結合したヨウ素化CD20抗体のレベルは、細胞に関連する放射能を計数することにより決定され、結合親和性は、標準方法を使用して決定される。別の実施形態において、CD20抗体が表面発現CD20に結合する能力(例えば、B細胞サブセット上で)が、フローサイトメトリーを使用して評価される。末梢白血球が得られ(例えば、ヒト、カニクイザル、ラット、またはマウスから)、細胞は、血清で遮断される。標識CD20抗体は、段階希釈液中に付加され、T細胞サブセット特定する(当技術分野で既知の方法を使用して)ためにT細胞も染色される。試料のインキュベーション及び洗浄に続いて、細胞は、フローサイトメーターを使用して分類され、データは、当技術分野で周知の方法を使用して分析される。別の実施形態において、CD20結合は、表面プラズモン共鳴を使用して分析され得る。例示的な表面プラズモン共鳴方法は、実施例において例証される。
【0164】
別の態様において、競合アッセイは、CD20への結合に関して本明細書に開示される抗CD20抗体のうちのいずれかと競合する抗体を特定するために使用され得る。ある特定の実施形態において、かかる競合抗体は、本明細書に開示される抗CD20抗体のうちのいずれかにより結合される同じエピトープ(例えば、線状または立体配座エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示的な方法は、Morris(1996)“Epitope Mapping Protocols,”in Methods in Molecular Biology vol.66(Humana Press,Totowa,NJ)で提供される。
【0165】
例示的な競合アッセイにおいて、固定化されたCD20は、CD20に結合する第1の標識抗体(例えば、リツキシマブ、GA101抗体など)及びCD20への結合に関して第1の抗体と競合する能力に関して試験されている第2の非標識抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清中に存在し得る。対照として、固定化されたCD20は、第1の標識抗体を含むが、第2の非標識抗体を含まない溶液中でインキュベートされる。第1の抗体のCD20への結合を許容する条件下でのインキュベーション後、過剰な非結合抗体が除去され、固定化されたCD20に関連する標識の量が測定される。固定化されたCD20に関連する標識の量は、対照試料に対して試験試料中で実質的に低減される場合、それは、第2の抗体がCD20への結合について第1の抗体と競合することを示す。Harlow and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)を参照されたい。
【0166】
2.活性アッセイ
本開示の抗CD20抗体(例えば、II型抗体)は、当技術分野で既知の1つ以上の活性アッセイにより特定及び/または特徴付けられ得る。例えば、補体依存性細胞傷害性(CDC)及び/または抗体依存性細胞傷害性(ADCC)は、本明細書に記載されるように使用され得る。
【0167】
本発明の免疫コンジュゲートを抗CD20抗体の代わりにまたはそれに加えて使用して、上記のアッセイのうちのいずれかが行われ得ることが理解される。
【0168】
上記のアッセイのいずれも、抗CD20抗体及び追加の療法剤を使用して行われ得ることが理解される。
【0169】
C.免疫コンジュゲート
本発明は、化学療法剤または化学療法薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、またはそれらの断片)、または放射性同位体などの1つ以上の細胞傷害性剤にコンジュゲートされた本明細書における抗CD20抗体を含む免疫コンジュゲートも提供する。
【0170】
一実施形態において、免疫コンジュゲートは、マイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、及び欧州特許第EP0 425 235 B1号を参照されたい);モノメチルオーリスタチン薬物部分DE及びDFなどのオーリスタチン(MMAE及びMMAF)(米国特許第5,635,483号及び同第5,780,588号、ならびに同第7,498,298号を参照されたい);ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号、及び同第5,877,296号、Hinman et al.,Cancer Res.53:3336−3342(1993)、ならびにLode et al.,Cancer Res.58:2925−2928(1998)を参照されたい);ダウノマイシンまたはドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz et al.,Current Med.Chem.13:477−523(2006)、Jeffrey et al.,Bioorganic&Med.Chem.Letters 16:358−362(2006)、Torgov et al.,Bioconj.Chem.16:717−721(2005)、Nagy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA97:829−834(2000)、Dubowchik et al.,Bioorg.&Med.Chem.Letters 12:1529−1532(2002)、King et al.,J.Med.Chem.45:4336−4343(2002)、及び米国特許第6,630,579号を参照されたい);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、及びオルタタキセルなどのタキサン;トリコテシン;ならびにCC1065を含むが、これらに限定されない抗体が1つ以上の薬物にコンジュゲートされる抗体−薬物コンジュゲート(ADC)である。
【0171】
別の実施形態において、免疫コンジュゲートは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(シュードモナスエルギノーサ由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンシンタンパク質、アメリカヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP−S)、ニガウリ阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセンを含むが、これらに限定されない酵素活性毒素またはそれらの断片にコンジュゲートされる本明細書に記載されるような抗体を含む。
【0172】
別の実施形態において、免疫コンジュゲートは、放射性原子にコンジュゲートされて、放射性コンジュゲートを形成する本明細書に記載されるような抗体を含む。多様な放射性同位体は、放射性コンジュゲートの産生のために利用可能である。例には、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212、及びLuの放射性同位体が含まれる。放射性コンジュゲートが検出のために使用されるとき、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えば、tc99mまたはI123、または再びヨード−123、ヨード−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガン、または鉄などの核磁気共鳴(NMR)画像法(磁気共鳴画像法、mriとしても既知の)のためのスピン標識を含み得る。
【0173】
抗体及び細胞傷害性のコンジュゲートは、N−サクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(SPDP)、サクシニミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸塩(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二機能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHClなど)、活性エステル(スベリン酸ジサクシニミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス−アジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンなど)、ジイソシアン酸塩(トルエン2,6−ジイソシアン酸塩など)、及びビス−活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなど)などの多様な二機能性タンパク質カップリング剤を使用して作製され得る。例えば、リシン免疫毒素 は、Vitetta et al.,Science 238:1098(1987)に記載されるように調製され得る。炭素−14−標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)は、放射性ヌクレオチドを抗体にコンジュゲートするための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞内において細胞傷害性薬物の放出を容易にする「切断可能リンカー」であり得る。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Res.52:127−131(1992)、米国特許第5,208,020号)が使用され得る。
【0174】
本明細書におけるイミュヌノコンジュゲートまたはADCは、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCC、及びスルホ−SMPB、ならびに市販されている(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから)SVSB(サクシニミジル−(4−ビニルスルホン)安息香酸塩)を含むが、これらに限定されない架橋試薬を用いて調製されるかかるコンジュゲートを明白に企図するが、これに限定されない。
【0175】
ループス腎炎を治療するか、またはその進行を遅延させるための方法
本開示のある特定の態様は、ループスを有する個体におけるループス腎炎(LN)を治療するか、またはその進行を遅延させるための方法に関する。いくつかの実施形態において、個体または患者は、ヒトである。
【0176】
LNは、腎臓(複数可)におけるループス(例えば、全身性エリテマトーデス、薬物誘導ループス、新生児ループス、または円板状ループス)の徴候として当技術分野で知られている。腎臓に徴候として現れるループスの最も一般的な型は、全身性エリテマトーデス(SLE)である。SLE患者の25〜50%が、疾患の経過の初期において尿及び/または腎機能における異常を有し、成人の最大60%及び子どもの80%が、LNを最終的に発症すると考えられる(より詳細に関しては、Cameron,J.S.(1999)J.Am.Soc.Nephrol.10:413−424を参照されたい)。LNは、SLEに関連する罹患率及び死亡率の少なくとも50%の原因であると考えられる。
【0177】
加えて、腎臓の徴候が、円板状(Roujeau,J.C.et al.(1984)Acta Derm.Venereol.64:160−163)及び薬物誘導ループス(Smith,P.R.et al.(1999)Rheumatology(Oxford)38:1017−1018)などのループスの他の型においても記述されている。いくつかの実施形態において、個体は、SLE、円板状ループス、または薬物誘導ループスを有する。
【0178】
SLEの診断は、現在の米国リウマチ学会(ACR)の基準に従い得る。活性疾患は、1つのイギリス諸島ループス活動性グループ(BILAG)の「A」基準もしくは2つのBILAGの「B」基準、SLE疾患活性指数(SLEDAI)、または以下の実施例に記述され、Furie et al.,Arthritis Rheum 61(9):1143−51(2009)に記載されるような全身性エリテマトーデス(SLE)応答者指数(SRI)により定義され得る。Tan et al.“The Revised Criteria for the Classification of SLE”Arth Rheum 25(1982)から適合されたSLEを診断するために使用されるいくつかの兆候、症状、または他の指標は、頬全体への発疹、円板状発疹、または赤く隆起した斑などの蝶形発疹;皮膚発疹の発症または増加をもたらす日光への反応などの光線過敏症;鼻または口内の潰瘍などの口腔潰瘍;2つ以上の末梢関節(関節周囲の骨が破壊されない関節炎)に関与する非びらん性関節炎などの通常無痛性である関節炎、漿膜炎、胸膜炎、または心膜炎;尿中の過剰なタンパク質(0.5gm/日超または試験棒において3+)及び/または細胞円柱(尿及び/または白血球及び/または腎尿細管細胞に由来する異常素子)などの腎障害;神経学的兆候、症状、または他の指標;発作(痙攣);及び/または薬物の不在下の精神病もしくはかかる効果を引き起こすことで既知の代謝障害、ならびに溶血性貧血または白血球減少症(1立方ミリメートルあたり4,000細胞未満の白血球数)またはリンパ球減少症(1立方ミリメートルあたり1,500リンパ球未満)または血小板減少症(1立方ミリメートルあたり100,000血小板未満)などの血液学的兆候、症状、または他の指標であり得る。白血球減少症及びリンパ球減少症は、2つ以上の機会において検出される必要がある。血小板減少症は、それを誘導することで既知の薬物の不在下で検出される必要がある。本発明は、ループスのこれらの兆候、症状、または他の指標に限定されない。
【0179】
自己抗体の存在は、ループスに関する指標として試験され得る。自己抗体には、抗dsDNA抗体、抗補体抗体、及び抗核抗体(例えば、ENAパネル)が含まれ得るが、これらに限定されない。ENAは、抽出可能核抗原、すなわち、McNeilage et al.,J.,Clin.Lab.Immunol.15:1−17(1984)、Whittingham,Ann.Acad.Med.17(2):195−200(1988)、Wallace and Hahn,DUBOIS’ LUPUS ERYTHEMATOSUS,7
THED.LIPPINCOTT(2007)、Tang et al.,Medicine 89(1):62−67(2010)に記載されるような例えば、RNP、Ro/SS−A、La/SS−B、Sm、SCL−70、Jo−1を含む核抗原の群を指す。ENAに対する抗体は、ループスと相関性がある。McNeilage et al.,1984、Whittingham 1988、Asherson et al.,Medicine 68(6):366−374(1989)、及びTang et al.,2010。例えば、C3レベル、C4レベル、及び/またはCH50アッセイにより測定される場合の低減した補体活性もループスに関連する。
【0180】
SLEの参照において上述されるように、LNは、ループス(例えば、全身性エリテマトーデス、薬物誘導ループス、新生児ループス、または円板状ループス)を有する患者において徐々に徴候として現れる場合が多いことが当技術分野で知られている。つまり、患者は、1つ以上のLN症状の臨床的または病理学的な徴候なしにループスと診断され得る。それにもかかわらず、患者は、ループス患者が最終的にはLNを高頻度に発症することに因り、LNを発症する危険性があると依然として見なされ得る。よって、いくつかの実施形態において、本開示の方法が、ループスを有する患者におけるLNの進行を遅延、またはLNを予防することにおいて、使用されることが見出され得る。いくつかの実施形態において、本開示の方法が、ループス(例えば、腎臓(複数可)において徴候を欠くループスの形態)を有する患者におけるLNの発生を遅らせるか、または予防することにおいて使用されることが見出され得る。
【0181】
LN病理は、以下の表に示されるように、国際腎臓学会/腎病理協会(ISN/RPS)2003のクラス分けシステムに従ってクラス分けされ得る(さらなる用語の説明及び定義に関しては、Markowitz GS,D’Agati VD(2007)Kidney Int 71:491−495 and Weening,JJ(2004)Kidney Int 65:521−530を参照されたい)。
【0182】
いくつかの実施形態において、患者は、クラスIIIまたはクラスIVのLNを有する。いくつかの実施形態において、患者は、クラスIIIのLNを有する。例えば、いくつかの実施形態において、患者は、クラスIII(A)またはクラスIII(A/C)のLNを有する。いくつかの実施形態において、患者は、クラスIVのLNを有する。例えば、いくつかの実施形態において、患者は、クラスIV−S(A)、IV−G(A)、IV−S(A/C)、またはIV−G(A/C)のLNを有する。上記の表3に示されるように、クラスVのLNは、クラスIIIまたはクラスIVのLNと同時にも生じ得る。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、クラスIIIまたはクラスIVのLN、及び随伴性のクラスVのLNを有する患者を治療するために使用される。
【0183】
上記で考察されるように、ループス(例えば、SLE)を有する患者は最終的に、LNを高頻度に発症する。いくつかの実施形態において、患者は、LNを発症する危険性がある。いくつかの実施形態において、患者は、クラスIIIまたはクラスIVのLNを発症する危険性がある。いくつかの実施形態において、患者は、クラスIIIまたはクラスIVのLNを、随伴性のクラスVのLNと共に発症する危険性がある。
【0184】
いくつかの実施形態において、患者は、クラスIII(C)のLN(例えば、上記の表3に記載されるような)を有さない。いくつかの実施形態において、患者は、クラスIV(C)のLN、例えば、クラスIV−S(C)またはIV−G(C)のLN(例えば、上記の表3に記載されるような)を有さない。
【0185】
当技術分野で既知の複数の研究所試験は、ループス腎炎の存在、進行、及び/またはその治療に対する応答を診断及び/または監視するために使用され得る。いくつかの実施形態において、血清クレアチニンが測定され得る。いくつかの実施形態において、血清クレアチニンの正常範囲は、約0.6〜約1.3mg/dLであり得るが、年齢、男女間、及び研究所によりいくつかの差異が見られる。いくつかの実施形態において、尿沈渣及び/または円柱の存在が、例えば、尿の顕微鏡検査により測定され得る。例えば、尿試料中の赤血球の数は、顕微鏡検査によるアッセイにかけられ得る。いくつかの実施形態において、尿沈渣の正常値は、強拡大視野(HPF)あたり約4個以下の赤血球(RBC)であり得る。尿円柱には、赤血球円柱、白血球円柱、腎尿細管上皮細胞円柱、蝋様円柱、硝子様円柱、顆粒円柱、及び脂肪円柱が含まれ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、尿タンパク質対クレアチニン比(UPCR)が測定され得る。尿中のタンパク質(タンパク尿)の存在も、尿アルブミン対クレアチニン比(UACR)及び浸漬棒尿分析が含まれるが、これらに限定されない試験によりアッセイにかけられ得る。腎機能を調査するのに有用であり得る他の試験及び/または測定項目には、腎パネル、クレアチニンクリアランス、ナトリウム、カリウム、塩化物、重炭酸塩、リン、カルシウム、アルブミン、血液尿素窒素(BUN)、クレアチニン、グルコース、推算糸球体濾過量(eGFR)、BUN/クレアチニン比、及びアニオンギャップが含まれるが、これらに限定されず、かつ適切である場合、血液及び/または尿中の上記のパラメータの測定が含まれ得る。より詳細な説明に関しては、例えば、American College of Rheumatology Guidelines for Screening,Case Definition,Treatment and Management of Lupus Nephritisを参照されたい(Hahn,B.et al.(2012)Arthritis Care Res.64:797−808)。
【0186】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、本開示の少なくとも第1の抗体曝露量のII型抗CD20抗体及び第2の抗体曝露量のII型抗CD20抗体を個体に投与することを含む。本明細書に記載されるII型抗CD20抗体のいずれか、例えば、オビヌツズマブなどのGA101抗体が使用され得る。いくつかの実施形態において、第2の抗体曝露量は、第1の抗体曝露量の約18週間〜約26週間後まで提供されない。いくつかの実施形態において、第2の抗体曝露量は、第1の抗体曝露量の約18週間後、第1の抗体曝露量の約19週間後、第1の抗体曝露量の約20週間後、第1の抗体曝露量の約21週間後、第1の抗体曝露量の約22週間後、第1の抗体曝露量の約23週間後、第1の抗体曝露量の約24週間後、第1の抗体曝露量の約25週間後、または第1の抗体曝露量の約26週間後まで提供されない。いくつかの実施形態において、第2の抗体曝露量は、第1の抗体曝露量の、以下の約26、25、24、23、22、21、20、または19週間後未満のうちのいずれかまで提供されない。いくつかの実施形態において、第2の抗体曝露量は、第1の抗体曝露量の、以下の約18、19、20、21、22、23、24、または25週間後超のうちのいずれかまで提供されない。つまり、第2の抗体曝露量は、上限26、25、24、23、22、21、20、または19週間及び独立して選択される下限18、19、20、21、22、23、24、または25週間を有する週の範囲のうちのいずれかまで提供されず、ここで、下限は、上限未満である。
【0187】
本明細書に記載される投薬レジメンは、用量間の時間を観察記録するための一貫性のあるシステムを使用し、それにより、第1の用量を1日目に患者に投与する。本明細書に記載されるように、本開示の抗体曝露量は、1または2回分の用量を含み得る。抗体曝露量が、1回分の用量を含有する事例において、第1の抗体曝露量後、ある期間を経過するまで提供されない第2の抗体曝露量に対する参考(本明細書に記載されるような)は、第1の抗体曝露量(例えば、1日目)の用量と第2の抗体曝露量の用量との間で経過した時間量を指す。第1の抗体曝露量が、2回分の用量を含む場合、第1の抗体曝露量の第1の用量が1日目に提供される。抗体曝露量が、2回分の用量を含有する事例において、第1の抗体曝露量後、ある期間を経過するまで提供されない第2の抗体曝露量に対する参考(本明細書に記載されるような)は、第1の抗体曝露量(例えば、1日目)の2回分の用量のうちの第1の用量と第2の抗体曝露量の2回分の用量の第1の用量との間で経過した時間量を指す。例えば、本開示の方法が、2回分の用量を有する第1の抗体曝露量及び2回分の用量を有する第2の抗体曝露量を含み、第2の抗体曝露量が、第1の抗体曝露量の約22週間後まで提供されない場合、第1の抗体曝露量の第1の用量と第2の抗体曝露量の第1の用量との間隔は、約22週間である。
【0188】
いくつかの実施形態において、本開示の第1の抗体曝露量は、1または2回分の用量の本開示のII型抗CD20抗体を含む。いくつかの実施形態において、第1の抗体曝露量は、約1800mg〜約2200mgのII型抗CD20抗体の総曝露量を含有する。いくつかの実施形態において、第1の抗体曝露量は、約1800mg、約1900mg、約2000mg、約2100mg、または約2200mgのII型抗CD20抗体の総曝露量を含有する。
【0189】
いくつかの実施形態において、第1の抗体曝露量は、2回分の用量を含む。いくつかの実施形態において、第1の抗体曝露量は、約900mg〜約1100mgの第1の用量のII型抗CD20抗体と、約900mg〜約1100mgの第2の用量のII型抗CD20抗体とを含む。いくつかの実施形態において、第1の抗体曝露量の第1の用量は、約1000mgのII型抗CD20抗体を含有する。いくつかの実施形態において、第1の抗体曝露量の第2の用量は、約1000mgのII型抗CD20抗体を含有する。いくつかの実施形態において、第1の抗体曝露量の第2の用量は、第1の抗体曝露量の第1の用量の約1.5週間〜約2.5週間後まで提供されない。いくつかの実施形態において、第1の抗体曝露量の第2の用量は、第1の抗体曝露量の第1の用量の約2週間後まで提供されない。
【0190】
いくつかの実施形態において、本開示の第2の抗体曝露量は、1または2回分の用量の本開示のII型抗CD20抗体を含む。いくつかの実施形態において、第2の抗体曝露量は、約1800mg〜約2200mgのII型抗CD20抗体の総曝露量を含有する。いくつかの実施形態において、第2の抗体曝露量は、約1800mg、約1900mg、約2000mg、約2100mg、または約2200mgのII型抗CD20抗体の総曝露量を含有する。
【0191】
いくつかの実施形態において、第2の抗体曝露量は、2回分の用量を含む。いくつかの実施形態において、第2の抗体曝露量は、約900mg〜約1100mgの第1の用量のII型抗CD20抗体と約900mg〜約1100mgの第2の用量のII型抗CD20抗体とを含む。いくつかの実施形態において、第2の抗体曝露量の第1の用量は、約1000mgのII型抗CD20抗体を含有する。いくつかの実施形態において、第2の抗体曝露量の第2の用量は、約1000mgのII型抗CD20抗体を含有する。いくつかの実施形態において、第2の抗体曝露量の第2の用量は、第2の抗体曝露量の第1の用量の約1.5週間〜約2.5週間後まで提供されない。いくつかの実施形態において、第2の抗体曝露量の第2の用量は、第2の抗体曝露量の第1の用量の約2週間後まで提供されない。
【0192】
いくつかの実施形態において、本開示のII型抗CD20抗体は、静脈内投与される(例えば、IV点滴による)。
【0193】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、有効量の免疫抑制剤(例えば、本明細書に記載されるようなII型抗CD20抗体と併せて)を投与することをさらに含む。細胞増殖阻害薬(例えば、抗生物質、アルキル化剤(例えば、シトホスファン(cytophosphane)としても既知のシクロホスファミド)などの細胞傷害性剤)、イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、タンパク質合成阻害剤などのアンチメタボライト、葉酸類似体、プリン類似体、ピリミジン類似体など)、免疫抑制抗体、グルココルチコイド、イムノフィリンを標的とする薬物(例えば、タクロリムス、シロリムス、ラパマイシン、及びそれらの類似体、シクロスポリンなど)、mTOR活性部位阻害剤、ミコフェノール酸及びその誘導体または塩、TNF結合タンパク質、インターフェロン、オピオド(opiod)、ならびに他の小分子体(例えば、フィンゴリモド)が含まれるが、これらに限定されない、複数のクラスの免疫抑制剤が当技術分野で知られている。いくつかの実施形態において、免疫抑制剤は、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸の誘導体、またはミコフェノール酸の塩を含む。いくつかの実施形態において、免疫抑制剤は、ミコフェノール酸モフェチルを含む。いくつかの実施形態において、免疫抑制剤は、CellCept(登録商標)(Roche)を含む。いくつかの実施形態において、免疫抑制剤は、Myfortic(登録商標)(Novartis)を含む。本開示の免疫抑制剤の有効量は、当技術分野で既知であり、標準アッセイにより容易に確認可能である。例えば、ミコフェノール酸モフェチルは、
図1に例示されるように2.0〜2.5g/日で投与され得る。いくつかの実施形態において、ミコフェノール酸モフェチルは、1000mg/日の分割用量(2回/日)で開始して、4週目までに最大2.0〜2.5g/日の分割用量(2回/日)で滴定して投与され得る。
【0194】
いくつかの実施形態において、免疫抑制剤は、例えば、ループスに対する治療として、本開示のII型抗CD20抗体の投与前、投与中、投与後に投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫抑制剤は、本開示のII型抗CD20抗体を用いた治療の期間を通して投与され得る。いくつかの実施形態において、ミコフェノール酸モフェチルは、II型抗CD20抗体を用いた治療の期間を通して上述されるように投与され得る。
【0195】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、有効量のグルココルチコイドまたはコルチコステロイド(例えば、本明細書に記載されるようなII型抗CD20抗体と併せて)を投与することをさらに含む。ベクロメタゾン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、コルチゾン、及びコルチゾールが含まれるが、これらに限定されない、多様な自然発生及び合成グルココルチコイド/コルチコステロイドが、当技術分野で知られている。いくつかの実施形態において、グルココルチコイド/コルチコステロイドは、メチルプレドニゾロンを含む。いくつかの実施形態において、グルココルチコイド/コルチコステロイドは、プレドニゾンを含む。本開示のグルココルチコイド/コルチコステロイドの有効量は、当技術分野で既知であり、標準アッセイにより容易に確認可能である。例えば、メチルプレドニゾロンは、IVにより1日1回750〜1000mgの用量で投与され得る。別の例として、プレドニゾンは、0.5mg/kg及び任意に7.5mg/日に漸減されて経口投与され得る。
【0196】
いくつかの実施形態において、グルココルチコイドは、例えば、LN臨床活動を治療するために、本開示のII型抗CD20抗体の投与前、投与中、投与後に投与され得る。いくつかの実施形態において、グルココルチコイドは、本開示のII型抗CD20抗体の投与前に、例えば、II型抗CD20抗体の30〜60分前に投与され得る。いくつかの実施形態において、80mgのメチルプレドニゾロンは、本開示のII型抗CD20抗体の投与の30〜60分前にIVにより投与され得る。いくつかの実施形態において、プレドニゾン(例えば、経口投与される)及び/またはメチルプレドニゾロン(例えば、IV投与される)は、治療、続いて、維持療法(例えば、ミコフェノール酸モフェチルまたはシクロホスファミド)により投与され得る。
【0197】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、有効量の抗ヒスタミン剤(例えば、本明細書に記載されるようなII型抗CD20抗体と併せて)を投与することをさらに含む。当技術分野で既知であり、かつ現在臨床使用されている抗ヒスタミン剤には、ヒスタミンH
1−受容体及びヒスタミンH
2−受容体アンタゴニスト、またはインバースアゴニストが含まれる。いくつかの実施形態において、抗ヒスタミン剤は、ジフェンヒドラミンを含む。本開示の抗ヒスタミン剤の有効量は、当技術分野で既知であり、標準アッセイにより容易に確認可能である。例えば、ジフェンヒドラミンは、50mgの経口用量で投与され得る。
【0198】
いくつかの実施形態において、抗ヒスタミン剤は、例えば、予防的治療として、本開示のII型抗CD20抗体の投与前、投与中、投与後に投与され得る。いくつかの実施形態において、抗ヒスタミン剤は、本開示のII型抗CD20抗体の投与前に、例えば、II型抗CD20抗体の30〜60分前に投与され得る。いくつかの実施形態において、50mgのジフェンヒドラミンは、本開示のII型抗CD20抗体の投与の30〜60分前に経口投与され得る。
【0199】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、有効量の非ステロイド性抗炎症薬またはNSAID(例えば、本明細書に記載されるようなII型抗CD20抗体と併せて)を投与することをさらに含む。当技術分野で既知のNSAIDには、酢酸誘導体、プロピオン酸誘導体、サリチル酸塩、エノール酸(enolic acid)誘導体、アントラニル酸誘導体、選択的COX−2阻害剤、スルホンアニリドなどが含まれる。いくつかの実施形態において、NSAIDは、アセトアミノフェンを含む。本開示のNSAIDの有効量は、当技術分野で既知であり、標準アッセイにより容易に確認可能である。例えば、アセトアミノフェンは、650〜1000mgの経口用量で投与され得る。
【0200】
いくつかの実施形態において、NSAIDは、例えば、予防的治療として、本開示のII型抗CD20抗体の投与前、投与中、投与後に投与され得る。いくつかの実施形態において、NSAIDは、本開示のII型抗CD20抗体の投与前に、例えば、II型抗CD20抗体の30〜60分前に投与され得る。いくつかの実施形態において、650〜1000mgのアセトアミノフェンは、本開示のII型抗CD20抗体の投与の30〜60分前に経口投与され得る。
【0201】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、有効量の抗マラリア剤(例えば、本明細書に記載されるようなII型抗CD20抗体と併せて)を投与することをさらに含む。使用され得る抗マラリア剤の例には、ヒドロキシクロロキン、クロロキン、及びキナクリンが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、抗マラリア剤は、例えば、ループスの1つ以上の症状のための治療として、本開示のII型抗CD20抗体の投与前、投与中、投与後に投与され得る。
【0202】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、有効量のインテグリンアンタゴニスト(例えば、本明細書に記載されるようなII型抗CD20抗体と併せて)を投与することをさらに含む。使用され得るインテグリンアンタゴニストの例には、Genentechから市販されているエファリズマブ(RAPTΓVA(登録商標))などのLFA−1抗体もしくはBiogenから入手可能なナタリズマブ(ANTEGREN(登録商標))などのアルファ4インテグリン抗体、またはジアザ環式フェニルアラニン誘導体、フェニルアラニン誘導体、フェニルプロピオン酸誘導体、エナミン誘導体、プロパン酸誘導体、アルカノン酸誘導体、置換フェニル誘導体、芳香族アミン誘導体、ADAMディスインテグリンドメインポリペプチド、アルファvベータ3インテグリンに対する抗体、アザ−架橋二環式アミノ酸誘導体、などが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、インテグリンアンタゴニストは、例えば、ループスの1つ以上の症状のための治療として、本開示のII型抗CD20抗体の投与前、投与中、投与後に投与され得る。
【0203】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、有効量のサイトカインアンタゴニスト(例えば、本明細書に記載されるようなII型抗CD20抗体と併せて)を投与することをさらに含む。使用され得るサイトカインアンタゴニストの例には、IL−1、IL−lα、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−11、IL−12、IL−15に対するアンタゴニスト(例えば、アンタゴニスト抗体);TNF−αまたはTNF−βなどの腫瘍壊死因子;ならびにLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、サイトカインアンタゴニストは、例えば、ループスの1つ以上の症状のための治療として、本開示のII型抗CD20抗体の投与前、投与中、投与後に投与され得る。
【0204】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、有効量のホルモン(例えば、本明細書に記載されるようなII型抗CD20抗体と併せて)投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、ホルモン(例えば、ホルモン補充療法のための)は、例えば、ループスを有する女性における医学的治療のために、本開示のII型抗CD20抗体の投与前、投与中、投与後に投与され得る。
【0205】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、標準ケア治療(例えば、本明細書に記載されるようなII型抗CD20抗体と併せて)を施すことをさらに含む。いくつかの実施形態において、標準ケア治療は、例えば、ループスの1つ以上の症状を治療するか、または予防するために、本開示のII型抗CD20抗体の投与前、投与中、投与後に施され得る。ある特定の実施形態において、標準ケア治療は、本開示の第2の抗体曝露後に施され得る。例えば、本開示のII型抗CD20抗体は、誘導療法として本明細書に記載されるように患者に投与され得、次いで、患者は、標準の維持療法としてのケアに従って治療され得る。ループスのための標準ケア治療は、当技術分野で周知されており、これには、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチル(例えば、本明細書に記載されるような、2.0〜2.5g/日などの用量で)、アザチオプリン、及びグルココルチコイドまたはコルチコステロイド(例えば、プレドニゾン漸減などのプレドニゾン)が含まれるが、これらに限定されない。
【0206】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、降圧剤(例えば、本明細書に記載されるようなII型抗CD20抗体と併せて)を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、降圧剤は、例えば、高血圧を治療するか、または予防するために、本開示のII型抗CD20抗体の投与前、投与中、投与後に投与され得る。いくつかの実施形態において、降圧剤には、ACE阻害剤及びアンジオテンシン受容体遮断薬が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、表5に列挙される降圧剤は、例えば、表5に記載される範囲内の用量で投与される。
【0207】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、個体において完全腎応答(CRR)をもたらす。いくつかの実施形態において、CRRは、以下の、血清クレアチニンの正常化、不活性尿沈渣、及び<0.5の尿タンパク質対クレアチニン比の全てを含む。≦いくつかの実施形態において、血清クレアチニンの正常化は、中央研究所値の正常範囲上限(ULN)以下の血清クレアチニン、ならびに/またはベースライン(例えば、1日目)の血清クレアチニンが中央研究所値の正常範囲内である場合、ベースラインの≦15%超及び中央研究所値の範囲のULN以下の血清クレアチニンにより特徴付けられる。いくつかの実施形態において、不活性尿沈渣は、<10のRBC/強拡大視野(HPF)及び/または赤血球円柱の不在により特徴付けられる。LNにおけるCRR及び部分的腎応答(PRR)のより詳細な考察に関しては、例えば、Chen,Y.E.et al.(2008)Clin.J.Am.Soc.Nephrol.3:46−53を参照されたい。
【0208】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、個体において完全腎応答(CRR)または部分的腎応答(PRR)をもたらす。いくつかの実施形態において、PRRは、以下の、血清クレアチニンの正常化、不活性尿沈渣、及び<0.5の尿タンパク質対クレアチニン比のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、PRRは、以下の、血清クレアチニンの低減、低減した尿沈渣、タンパク尿の低減が含まれるが、これらに限定されない1つ以上の症状の軽減、及び腎機能の任意の他の改善のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、CRRまたはPRRは、抗dsDNA抗体、抗核抗体/ENA、抗補体抗体、補体C3及び/またはC4の低減したレベル、ならびに低減した補体活性(例えば、CH50アッセイにより測定される場合)が含まれるが、これらに限定されないループス活性の1つ以上の生物マーカーの低減を含む。
【0209】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、個体において血流循環末梢B細胞の減損をもたらす。いくつかの実施形態において、本開示のII型抗CD20抗体の投与後(例えば、本明細書に記載される方法のうちのいずれかに従って)、血流循環末梢B細胞が、約10個の細胞/μL以下、約9個の細胞/μL以下、約8個の細胞/μL以下、約7個の細胞/μL以下、約6個の細胞/μL以下、約5個の細胞/μL以下、約4個の細胞/μL以下、約3個の細胞/μL以下、約2個の細胞/μL以下、または約1個の細胞/μL以下で末梢血液中に存在する。いくつかの実施形態において、個体における血流循環末梢B細胞は、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%減損する。いくつかの実施形態において、血流循環末梢B細胞の減損は、例えば、同じ個体における治療前の対応する測定と比較して、または対照個体(例えば、治療を受けていない個体)における対応する測定と比較して、第1の抗体曝露量(例えば、1または2回分の用量の本明細書に記載されるような抗CD20抗体を含む)後、第2の抗体曝露量(例えば、1または2回分の用量の本明細書に記載されるような抗CD20抗体を含む)後、治療の3ヶ月後(例えば、本明細書に記載されるような第1及び/または第2の抗体曝露量を受容後)、治療の6ヶ月後(例えば、本明細書に記載されるような第1及び/または第2の抗体曝露量を受容後)、治療の9ヶ月後(例えば、本明細書に記載されるような第1及び/または第2の抗体曝露量を受容後)、または治療の12ヶ月後(例えば、本明細書に記載されるような第1及び/または第2の抗体曝露量を受容後)に採取された血流循環末梢B細胞の測定を指す。
【0210】
個体における血流循環末梢B細胞の減損をアッセイするための方法、例えば、B細胞マーカーを認識する1つ以上の抗体を使用するフローサイトメトリーが、当技術分野で知られている。いくつかの実施形態において、高感受性フローサイトメトリー(HSFC)は、血流循環末梢B細胞の減損をアッセイするために使用され得る(例えば、Vital,E.M.et al.(2011)Arthritis Rheum.63:3038−3047を参照されたい)。いくつかの実施形態において、B細胞は、CD19+B細胞である。いくつかの実施形態において、B細胞は、ナイーブB細胞(例えば、CD19+CD27−B細胞)、記憶B細胞(例えば、CD19+CD27+B細胞)、または形質芽球(例えば、CD19+CD27+CD38++B細胞)である。
【0211】
IV.製品またはキット
本発明の別の態様において、上述される障害の治療、予防、及び/または診断に有用な材料を含む製品またはキットが提供される。製品またはキットは、容器と、容器上または容器に付随するラベルまたは添付文書と、を含む。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル瓶、シリンジ、IV溶液バッグなどが含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの多様な材料から形成され得る。容器は、それ自体により、または別の組成物と組み合わせて、病態の治療、予防、及び/または診断に有効である組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈注射溶液バッグまたは皮下注射針により貫通可能な栓を有するバイアル瓶であり得る)。本組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本明細書に記載される抗体(例えば、本開示のII型抗CD20抗体)である。ラベルまたは添付文書は、本組成物が、例えば、本明細書に記載される方法のうちのいずれかに従って、選定した病態を治療するために使用されることを示す。あるいは、または加えて、本製品または本キットは、注入用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液及びデキストロース溶液などの薬学的に許容される緩衝液を含む、第2の(または第3の)容器をさらに含み得る。それは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的観点及び使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0212】
いくつかの実施形態において、本開示のII型抗CD20抗体及び任意の薬学的に許容される担体を含む容器と、任意に、個体におけるループス腎炎を治療するか、またはその進行を遅延させることに関する使用説明を含む添付文書であって、例えば、本使用説明が、少なくとも第1の抗体曝露量のII型抗CD20抗体及び第2の抗体曝露量のII型抗CD20抗体が個体に投与され、第2の抗体曝露量が、第1の抗体曝露量の約18週間〜約26週間後まで提供されないことを示す、添付文書とを含むキットが本明細書で提供され、ここで、第1の抗体曝露量が、1または2回分の用量のII型抗CD20抗体を含み、第1の抗体曝露量が、約1800mg〜約2200mgのII型抗CD20抗体の総曝露量を含み、第2の抗体曝露量が、1または2回分の用量のII型抗CD20抗体を含み、第2の抗体曝露量が、約1800mg〜約2200mgのII型抗CD20抗体の総曝露量を含む。いくつかの実施形態において、本開示のII型抗CD20抗体及び任意の薬学的に許容される担体を含む容器と、任意に、個体におけるクラスIIIまたはクラスIVのループス腎炎を治療するか、またはその進行を遅延させることに関する使用説明を含む添付文書とを含むキットが本明細書で提供される。上記の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態において、II型抗CD20抗体は、配列番号1のHVR−H1配列、配列番号2のHVR−H2配列、及び配列番号3のHVR−H3配列を含む重鎖と、配列番号4のHVR−L1配列、配列番号5のHVR−L2配列、及び配列番号6のHVR−L3配列を含む軽鎖とを含む。上記の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態において、II型抗CD20抗体は、オビヌツズマブである。
【0213】
本製品はなおも、第2の薬品を含む第2または第3の容器をさらに含み得、ここで、抗CD20抗体(例えば、本開示のII型抗CD20抗体)は、第1の薬品であり、本物品は、第2の薬品を用いて対象を治療することに関する添付文書上の使用説明をさらに含む。例示的な第2の薬品には、化学療法剤、免疫抑制剤、抗マラリア剤、細胞傷害性剤、インテグリンアンタゴニスト、サイトカインアンタゴニスト、ホルモン、及び本明細書に記載されるようなII型抗CD20抗体と併せて使用され得る治療薬のうちのいずれかが含まれる。これらの実施形態における製品は、本組成物が特定の病態を治療するために使用され得ることを示す添付文書をさらに含み得る。
【0214】
上記の製品のうちのいずれかは、抗CD20抗体の代わりに、またはそれに加えて本発明の免疫コンジュゲートを含み得ることが理解される。
【0215】
本明細書は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分なものであると見なされる。本明細書に示されて説明される修正に加えて、本発明の様々な修正は、前述の記載から当業者に明らかになり、それらは添付の特許請求の範囲内のものである。本明細書で引用される全ての公報、特許、及び特許出願は、全ての目的のために参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0216】
本発明は、以下の実施例を参照することによってより十分に理解される。しかし、それらは、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例及び実施形態が例示のみを目的とするものであり、それらを考慮に入れた様々な修正または変更が当業者に提案されており、本明細書の趣旨及び範囲、ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれるべきであることが理解される。
【0217】
実施例1:クラスIII/IVのループス腎炎を有する患者におけるミコフェノール酸モフェチルと共に投与されるオビヌツズマブの薬理研究
研究デザイン
このフェーズIIの研究は、活性ISN/RPSクラスIII/IVのループス腎炎(LN)を有する患者におけるミコフェノール酸モフェチル(MMF)の追加療法として、オビヌツズマブ(すなわち、II型抗CD20抗体)の安全性及び有効性を評価するために考案されている。フェーズIIの研究は、増殖性LNを有するクラスIII及びIVの患者における、オビヌツズマブプラスMMFの有効性及び安全を、プラセボプラスMMFの有効性及び安全性と比較する、並行群で二重盲の無作為化されたプラセボを対照とした研究である(
図1)。
【0218】
研究は、前向きな多施設研究でもある。現在のACR基準(少なくとも4つの基準が存在し、そのうちの1つは陽性抗核抗体である必要がある)に従ったSLEの診断を含むいくつかの実施形態において、ISN/RPSクラスIIIまたはIVのLNと診断された患者は、世界中の施設に登録されている。研究は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤/アンジオテンシンII受容体遮断薬、MMF(2.0〜2.5g/日での投薬される)、及びプレドニゾン漸減を用いる標準ケア療法を含む。
【0219】
以下でより詳述されるように、患者は、18〜75歳であり、選別の6ヶ月前以内に行われた腎生検を根拠としてISN/RPS2003のクラスIIIまたはIVの増殖性LNを有し(Weening,JJ(2004)J.Am.Soc.Nephrol.15:241−250を参照されたい)、随伴性のクラスVの疾患(例えば、クラスIII/VまたはクラスIV/V)を有し得る。クラスIII(C)またはクラスIV(C)の疾患を有する患者は、これらの分類において応答のより低い可能性に因り、除外される。
【0220】
研究のための試験対象患者基準には、以下が含まれる。
(a)署名されたインフォームドコンセントフォーム
(b)18〜75歳、
(c)研究プロトコルに遵守する能力、
(d)現在のACR基準に従った全身性エリテマトーデス(SLE)の診断(少なくとも4つの基準が存在し、そのうちの1つは陽性抗核抗体である必要がある)、
(e)選別の6ヶ月前以内に行われた腎生検を根拠とするISN/RPS2003のクラスIIIまたはIVのLNの診断(患者は、クラスIIIまたはクラスIVの疾患に加えてクラスVの疾患も同時に示し得る)、
(f)≧10RBC/HPFまたは赤血球円柱の存在を根拠とする活性尿沈渣の表示、及び
(g)タンパク尿(24時間の尿収集に基づく、>1.0の尿タンパク質対クレアチニン比)。
【0221】
重要な除外基準には、以下が含まれる。
(a)現在活性中であり、SLEに起因する網膜炎、不完全に制御されている発作障害、急性錯乱状態、脊髄炎、卒中もしくは卒中症状群、小脳失調、または認知症、
(b)急速進行性糸球体腎炎の存在(腎生検で評価される糸球体の≧50%における半月体形成の存在、または選別の12週間以内の2倍の血清クレアチニンにより定義される)、
(c)推算GFR<30mL/分、または透析もしくは腎移植の必要性により定義される重度の腎機能障害、
(d)腎生検における、糸球体の50%超に及ぶ硬化症、
(e)無作為化の3ヶ月前以内のシクロホスファミドまたはカルシニューリン阻害剤を用いた治療、及び
(f)血小板減少症を有するか、あるいは血漿交換、または急性輸血もしくは血小板輸血などの治療を必要とする臨床的に著しい出血または臓器不全を発症する危険性がある、不安定な疾患。
【0222】
患者は、選別前または選別中に、最初の1000mgのメチルプレドニゾロン静注(IV)を受け、これらの患者に対する日常ケアの指針に従う重度の臨床活動のための無作為化の前に最大3000mgのメチルプレドニゾロンIVを受け得る。患者は、オビヌツズマブ/プラセボ点滴の日に80mgのメチルプレドニゾロン(または、メチルプレドニゾロンプラセボ)IVを受けて、点滴関連事象を低減する。経口プレドニゾン漸減は0.5mg/kgであり、12週間にわたって低減する。10mg/日を超えるプレドニゾン用量が、心血管事象の危険性の増加を含む著しい有害事象に関連することを認識した上で、この修正された漸減を開始する(Bichile,T.and Petri,M.(2014)Presse Med.43:e187−195)。リツキシマブを過去に経験しているということは、経口プレドニゾンの不在下またはプレドニゾン漸減で完全及び部分的腎応答が可能である見込みがあり得ることを呈し、したがって、より低用量のコルチコステロイドの使用を可能にする(Condon,M.B.et al.(2013)Ann.Rheum.Dis.72:1280−1286)。
【0223】
患者を主要エンドポイントの査定まで12ヶ月間観察し、6ヶ月において、CRRの初期の差異を査定するための中間分析を行う。全ての患者は、腎生検病理組織学の中央リーディングを有し、臨床的状態及び当地の慣行に基づいて利用可能である場合、腎生検を繰り返し受ける。全ての患者を高感受性フローサイトメトリー(HSFC)により査定して、オビヌツズマブが血流循環末梢B細胞を減損する能力を査定し、かつ中間PD分析を行って、患者が予想通り末梢CD19+B細胞を完全に減損していないかどうかを評価する。
【0224】
投薬及び非治験医薬品
研究のための投薬レジメンは、1、15、168、及び182日目に1000mgの用量でIV点滴により投与されるオビヌツズマブ(試験群);または1、15、168、及び182日目にIV点滴により投与されるオビヌツズマブプラセボ(例えば、1000mgの用量のオビヌツズマブに対応する生理食塩水IV)である。オビヌツズマブ/プラセボは、完全な蘇生設備が即座に利用可能であり、調査者または指定された者の緻密な管理下にある病院または診療環境において投与される。点滴の終わりに、必要な場合、IV線を少なくとも1時間所定の位置のままにして、IV薬物の投与を可能にする。この期間、有害事象が生じない場合、IV線を取り外してよい。
【0225】
選別後、MMFをまだ受けていない患者は、分割用量(2〜3回/日)で1500mg/日のMMFを受け、耐えられる場合、全ての患者の用量を4週目まで分割用量(2〜3回/日)で最大2.0〜2.5g/日の標的用量で滴定する。用量を低減する必要がある場合、250〜500mgの減少量で減少してよい。選別中または無作為化において、臨床的に示された場合、患者は、基礎LN臨床活動を治療するために、最大3日間1日1回750〜1000mgのメチルプレドニゾロンIVを受け得る。患者は、選別中または無作為化において0.5mg/kgの経口プレドニゾンを受け、プロトコルに応じてこのプレドニゾン用量の漸減を16日目に開始し、12週目までプレドニゾン投与量を7.5mg/日に低減する。これらの治療は、以下でさらに詳述される。
【0226】
併用療法及び臨床的慣行
ビタミンD(400IU/日)及びカルシウムサプリメント(1200mg/日のクエン酸カルシウムまたは1500mg/日の炭酸カルシウム)をまだ服用していない患者は、無作為化においてこれらのサプリメントを服用し始める。全ての患者は、慢性腎疾患のための全米腎臓基金により推奨されるような十分な血圧管理をするために滴定されるアンジオテンシン変換酵素阻害剤またはアンジオテンシン受容体遮断薬を服用する。非ジヒドロピリジンカルシウムアンタゴニスト、ジヒドロピリジンカルシウムアンタゴニスト、アルドステロンアンタゴニスト、及び直接レニンアンタゴニストを含むが、これらに限定されない、タンパク尿に影響を与える他の薬剤は、研究の間、開始されない。
【0227】
ミコフェノール酸モフェチル(MMF)
全ての患者は、選別中または遅くとも1日目にはMMFの使用を継続または開始する。最初の口からの投与量は、1500mg/日であり、2分割または3分割用量が与えられ、4週目まで分割用量で2.0〜2.5g/日へと上方滴定される。MMFは、500mg/週、耐えられる場合は、最大2.5g/日の投与量まで上方に増加してよい。有害効果に因り、低減は可能である。
【0228】
過去にMMFに曝露がない、新たにLNと診断された患者は、導入剤(MMFまたはシクロホスファミド)を開始し、次いで、適格性を再評価することが推奨される。最初にMMFまたはシクロホスファミドを用いて治療される患者の一部は、CRRを達成し、よって、付加される免疫抑制を最小限に必要とする(Dall’Era,M.et al.(2011)Arthritis Care Res.63:351−357)。
【0229】
研究に登録して1500mg/日を超えるMMFの投与量をすでに受けている患者に対して、耐えられる場合、MMFを4週目まで分割用量で2.5g/日の目標まで上方滴定する。患者の現在のMMFの用量を2分割または3分割用量で与え、耐えられる場合、500mg/週を増加する。
【0230】
コルチコステロイド投与
全ての患者は、彼らの最初のLN療法の一部としてIVと経口コルチコステロイドとの組み合わせを受ける。メチルプレドニゾロン(例えば、Solu−Medrol(登録商標))を2つの目的:クラスIIIまたはIVの活性LNを有する患者のための通常ケアの一部として、及びオビヌツズマブ/プラセボ点滴の日に点滴関連反応(IRR)を低減するために実行する。調査者の判断及び当地の慣行に基づいて、最大3回分の用量のIVメチルプレドニゾロン1000mgを与える。最大3回の1000mgの点滴を、選別前または選別の合間に開始してよい。
【0231】
1、15、168、及び186日目に、患者は、IRRを予防するために研究薬物点滴の30〜60分前に80mgのIVメチルプレドニゾロンまたはプラセボを受ける。加えて、選別前または選別の合間に経口プレドニゾンを開始してよく、漸減を2日目に始める。IVメチルプレドニゾロン/プラセボ点滴の日を除く、2日目〜16日目に0.50mg/kg/日の経口プレドニゾンを与え(最大、60mgの用量)、16日目まで継続する。16日目以降、プレドニゾンの漸減を始める。
【0232】
全ての患者は、16日目に始めた予定通りのコルチコステロイド漸減を受ける。患者は、12週目までに用量が7.5mg/日になるまで、12週にわたって彼らのプレドニゾン用量を少しずつ低減する。14週間の漸減後、患者は、7.5mg/日以下でプレドニゾンを継続する。活性尿沈渣、血清クレアチニンの上昇、または中度から重度のさらなる腎臓症状を根拠とするように、患者が彼らのプレドニゾン漸減の第1のステップに進めないほど疾患があまりにも臨床活動中である患者において、これらの患者は、彼らの最初のプレドニゾン用量を最大28日間追加して受け続けてよい。
【0233】
腎臓発赤の治療における一貫性を維持するために、調査者により臨床的に適切な判断が下された場合、かつ患者が腎臓発赤の基準に合致する場合、より高用量のコルチコステロイドを用いた再治療が許可される。患者は、2週間プレドニゾン(最大0.5mg/kg、60mg/日を超えない)を用いて治療され得る。次いで、最初のコルチコステロイドの増加後の6週間以内に10mg/日を達成するように、プレドニゾンを漸減する。患者は、臨床的に保証される場合、緊急疾病(精神的外傷、重度の喘息)に対してコルチコステロイド、または手術を受けることが可能であり、可能であれば、コルチコステロイドの使用を合計≦7日に限定する。次いで、調査者は、患者の投与量が10mg/日に漸減された後の副腎不全またはコルチコステロイド離脱の症状を治療するために、≦2.5mg/日のプレドニゾン用量を増加してよい。
【0234】
重度のさらなる腎SLE発赤を経験している患者は、調査者により臨床的に適切な判断が下された場合、追加の経口コルチコステロイドを用いた治療を受け得る。疾患の重症度及び臓器系の合併症に基づいて、これらの患者を最大2週間プレドニゾン(最大1.0mg/kg)を用いて再治療してよく、投与量は、7.5mg/日に漸減される。低度または中度のさらなる腎臓発赤を経験している患者は、彼らのプレドニゾン用量を、1日あたり最大20mgまで一時的に増加し、調査者により臨床的に適切な判断が下された場合、この用量を4週間にわたって漸減してよい。胃腸の合併症が経口コルチコステロイドを用いた治療を一時的に妨げる場合、等用量のIVコルチコステロイドが可能である。
【0235】
抗マラリア薬剤
研究登録において抗マラリア薬剤を服用する患者は、研究を通して一定の投与量を維持する。過去に抗マラリア薬剤を服用していない患者は研究に登録できるが、コルチコステロイドに対して未反応である疾患発赤を経験している場合、抗マラリア薬剤を開始すべきではない。表4は、研究の間使用されることが予測される抗マラリア薬剤及び用量範囲を列挙する。
【0236】
降圧療法
ACE阻害剤またはアンジオテンシン受容体遮断薬を現在服用していない全ての患者は、選別の1日目に開始するべきである。患者は、無作為化前の少なくとも10日間ACE阻害剤またはアンジオテンシン受容体遮断薬を服用する。この2つの薬剤を用いた併用療法は可能ではない。
【0237】
選別中、患者の血圧を十分に管理するようにあらゆる努力をする。ACE阻害剤またはアンジオテンシン受容体遮断薬の用量を現在の添付文書において推奨される最大用量まで上方滴定して、Eighth Report of the Joint National Committee on the Prevention,Detection,Evaluation,and Treatment of High Blood Pressure(James,P.A.et al.(2014)JAMA 311:507−520)により推奨されるように、十分な血圧管理を達成し得る。十分な血圧管理が達成されない場合、患者は、追加の降圧剤を開始してよいが、タンパク尿に影響を与える薬剤(例えば、非ジヒドロピリジンカルシウムチャネル遮断薬、アルドステロンアンタゴニスト、直接レニンアンタゴニスト)を開始してはならない。研究の間、レニンアンジオテンシン系を特異的に標的とする追加の薬剤を開始しない。特異的ACE阻害剤及びアンジオテンシン受容体遮断薬の提示された用量範囲は、表5に列挙される。患者がACE阻害剤及びアンジオテンシン受容体遮断薬に耐えられない場合、彼らには、直接レニン阻害剤またはアルドステロンアンタゴニストを使用してよいが、組み合わせて使用してはならない。
【0238】
研究目的及び評価項目
この概念実証研究の主な目的は、オビヌツズマブを投与した52週目における完全腎応答(CRR)を測定することである。オビヌツズマブプラスMMFが52週目にCRRを達成する能力をプラセボプラスMMFと比較し、腎機能、尿沈渣、及びタンパク尿における改善により評価する。2つめの目的には、この患者集団におけるオビヌツズマブの安全性、オビヌツズマブが52週目に全体の応答(CRR+PRR)を誘導する能力、オビヌツズマブが52週間の間における応答までの時間(CRR+PRR)を改善する能力、及びオビヌツズマブがLN疾患活性性の生物マーカーを改善する能力(例えば、低減した抗dsDNA抗体レベル、増加したC3及びC4レベル、Tew,G.W.et al.(2010)Lupus 19:146−157を参照されたい)を査定することが含まれる。
【0239】
主な有効性の評価項目は、52週目に査定されるCRRを達成する対象の割合である。この研究において、CRRは、以下の全ての到達により定義される:
(a)以下を根拠とする血清クレアチニンの正常化、
(i)ベースライン(1日目)が中央研究所値の正常範囲でない場合、中央研究所値の正常範囲上限(ULN)以下の血清クレアチニン
(ii)ベースライン(1日目)の血清クレアチニンが中央研究所値の正常範囲内である場合、ベースラインの15%以下及び中央研究所値の範囲のULN以下の血清クレアチニン
(b)不活性尿沈渣(<10のRBC/強拡大視野(HPF)及び/または赤血球円柱の不在を根拠とする)、及び
(c)<0.5の尿タンパク質対クレアチニン比。
【0240】
52週目前に救急薬剤に切り替える任意の患者は、未応答者と見なされる。治療群の中でCRRを達成する患者の割合を、層別因子として、人種(アフロカリビアン/アフリカ系米国人対他の人種)及び領域(米国対非米国)を用いたコクラン−マンテル−ヘンツェル(CMH)試験を使用して比較する。試験結果がα<0.1−レベル(片方)で、オビヌツズマブ群において有利である場合、オビヌツズマブ群に関連したより良好な腎応答に向かっている変化として結論付けられる。
【0241】
二次有効性の評価項目は、以下の通りである:
(a)52週目に全体の応答(CRR+PRR)を達成する患者の割合分析、
(b)52週間の間の全体の応答(CRR+PRR)までの時間、
(c)ベースラインからの低減または増加パーセント、ならびにLN疾患活性性の生物マーカーの平均及び中央値評価(例えば、抗dsDNA抗体レベルの低減、増加したC3及びC4レベル)、
(d)以下の全ての到達により定義される場合の、52週目にPRRを達成する患者の割合、
(i)ベースラインレベルの≦15%超の血清クレアチニン
(ii)ベースラインの≦50%超のRBC/HPF及び赤血球円柱の不在
(iii)尿タンパク質対クレアチニン比の50%の改善、及び以下の条件のうちの1つへの合致:
(A)ベースラインの尿タンパク質対クレアチニン比が≦3.0である場合、<1.0の尿タンパク質対クレアチン比、
(B)ベースラインのタンパク質対クレアチニン比が>3.0である場合、<3.0の尿タンパク質対クレアチニン比、
(e)24週目にCRRを達成する患者の割合、
(f)52週間の間のCRRまでの時間、
(g)主な有効性測定の定義を用い、かつ尿沈渣分析基準を除去した、52週目に修正されたCRR(mCRR1)を達成した患者の割合、
mCRR1は、以下を根拠とする血清クレアチニンの正常化の到達を指す:
(i)中央研究所値の範囲のULN以下の血清クレアチニン
(ii)ベースライン(1日目)の血清クレアチニンが中央研究所値の正常範囲内である場合、ベースラインの≦15%超及び中央研究所値の範囲のULN以下の血清クレアチニン
(iii)<0.5の尿タンパク質対クレアチニン比
(h)以下の到達により定義される場合の、52週目に第2のCRR(mCRR2)を達成する患者の割合、
(i)以下を根拠とする血清クレアチニンの正常化:
(A)血清クレアチニン≦中央研究所値の範囲のULN
(B)ベースライン(1日目)の血清クレアチニンが中央研究所値の正常範囲を超える場合、ベースラインの≦15%超の血清クレアチニン、またはベースライン(1日目)の血清クレアチニンが中央研究所値の正常範囲内である場合、S≦中央研究所値の範囲のULN、
(ii)不活性尿沈渣(<10のRBC/HPF及び赤血球円柱の不在を根拠とする)、
(iii)<0.5の尿タンパク質対クレアチニン比。
【0242】
薬力学的(PD)目的は、オビヌツズマブ対プラセボを用いた治療後の末梢血液中のCD19+B細胞の変化を比較することである。血流循環CD19+B細胞のレベルを、選別時、ならびに15、28、84、168、364、及び728日目に測定する。
【0243】
薬物動態(PK)目的は、LN集団におけるオビヌツズマブの薬物動態を特徴付けること、及びオビヌツズマブと、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)を含む併用薬剤との間の潜在的なPK相互作用を評価することである。非線状混合効果モデル(ソフトウェアNONMEMによる)を使用して、オビヌツズマブの用量−濃度−時間データを分析する。主な共変数(例えば、性別、人種/民族性、重量、ベースラインでの生化学的及び血液学的パラメータ、基礎疾患の程度)の影響を含む、PKプロファイルデータを使用して、PKモデルをメインパラメータ(例えば、クリアランス)においてさらに開発する。曝露量の個体測定項目の誘導、例えば観察された濃度−時間曲線(AUC)及び最大濃度(C
max)下の領域は、使用される最終PKモデルに依存する。血清オビヌツズマブが、要約(平均、最小、最大、SD、及び幾何平均)及び報告される。
【0244】
研究の診査的目的には、予備用量レベルの診査的生物マーカー(B細胞サブセット、ならびに血清、血液、及び尿中のタンパク質及び/またはmRNAのレベルを含むが、これらに限定されない)及び結果との潜在的な関連の査定、オビヌツズマブ対プラセボを投薬された患者における、時間の経過による診査的生物マーカー(B細胞サブセット、ならびに血清、血液、及び尿中のタンパク質及び/またはmRNAのレベルを含むが、これらに限定されない)における変化の査定、さらなる腎臓発赤の発生の査定、療法が患者及び内科医により報告された結果に及ぼす影響の査定、ならびに腎生検病理組織学(例えば、選別及び/または後の生検時のCD19+B細胞の存在)の評価が含まれる。診査的評価項目には、以下が含まれる:
(a)選別時、ならびに15、28、84、168、364、及び728日目の血流循環B細胞サブセットのレベル、
(b)選別時、ならびに1、15、28、84、168、252、364、532、及び728日目の診査的生物マーカー(B細胞サブセット、ならびに血清、血液、及び尿中のタンパク質及び/またはmRNAのレベルを含むが、これらに限定されない)のレベル、
(c)全身性エリテマトーデス疾患活性指数(SLEDAI)−2K発赤を経験している患者の割合、
(d)52週間〜104週間にわたって腎臓発赤を経験している患者の割合、
(e)追加の時点(12週目及び36週目を含む)でCRR、mCRR1、mCRR2を達成している患者の割合、
(f)内科医の概括評価(選別において、ベースライン訪問において、及び研究実行の間の複数の時点において捉えられる視覚的アナログ尺度)、さらに
(g)腎生検査定。
【0245】
研究所、生物マーカー、及び他の生物学的試料
以下の研究所評価は、研究の間記録される:
(a)血液学:ヘモグロビン、ヘマトクリット、RBC、平均血球体積、平均血球ヘモグロビン、WBC(絶対及び微分)、及び定量的血小板の計数、
(b)血液化学:AST/SGOT、ALT/SGPT、アルカリホスファターゼ、アミラーゼ、リパーゼ、総タンパク質、アルブミン、コレステロール、総ビリルビン、尿素、尿酸、クレアチニン、ランダムグルコース、カリウム、ナトリウム、塩化物、カルシウム、リン、乳酸デヒドロゲナーゼ、CPK、及びトリグリセリド、
(c)尿分析:血液、硝酸塩、タンパク質、及びグルコースに対する浸漬棒、ならびに尿顕微鏡、
(d)無作為化において、ならびに3、6、9、及び12ヶ月目において行う24時間の尿収集(総タンパク質、総クレアチニン、及びクレアチニンクリアランスに関する分析)、
(e)フローサイトメトリー:B細胞(CD19、CD27、CD38、及びIgDを含む)、T細胞(CD3、CD4、CD8)、及びNK細胞(CD16、CD56)、
(f)自己抗体プロファイル:抗核抗体(ANA)、抗dsDNA、抗Sm、抗RNP、抗Ro、抗La、及び抗C1q、
(g)抗dsDNA抗体:SLEDAI−2K評価の一部として、全ての訪問時にELISAにより測定される、
(h)定量的免疫グロブリン:IgG、IgM、及びIgAアイソタイプを含む総Igレベル、
(i)補体:C3、C4、及びCH50、
(j)抗体価:一般的な抗原(風疹、破傷風、インフルエンザ、肺炎球菌)に対する抗体価、さらに
(k)妊娠試験:選別時及び各研究薬物点滴の前に行われる尿妊娠試験。点滴は、試験が陰性でないと投与されない。全ての他の時点において、尿妊娠試験は、月経歴及び妊娠の危険性に基づいて行われる。
【0246】
以下の試料を分析に送る:B細胞及びループス関連生物マーカーのための血液及び尿からの細胞(CD19+B細胞及びB細胞活性に関連するmRNAを含むが、これらに限定されない)、B細胞及びループス関連生物マーカーのための血清及び尿(B細胞活性化因子またはBAFFを含むが、これらに限定されない)、ならびに免疫病理組織学評価のための腎生検スライド。
【0247】
点滴
研究薬物またはプラセボの各々の点滴の前に、患者は、口からアセトアミノフェン(650〜1000mg)及びジフェンヒドラミン(50mg、または同様の薬剤の等用量)を用いた予防的治療を受け、これらは、点滴期間の開始の30〜60分前に与えられる。オビヌツズマブを受けている患者は、80mgのメチルプレドニゾロンIVを受け、プラセボを受けている患者は、プラセボ−メチルプレドニゾロンIVを受け、これらは、オビヌツズマブ/プラセボ点滴の開始の30〜60分前に与えられる。患者が、調査者により臨床的に有意であると見なされる低度の点滴関連反応(IRR)を経験する場合、点滴速度を、最初の点滴速度の半分に低減するべきである(非ホジキンスリンパ腫プロトコル点滴速度及び予定を遵守する)。反応が消散した後、点滴は、追加の30分間低減した速度を保つべきである。低減した速度に耐えられる場合、点滴速度を点滴予定の直近の次の速度に増加してよい。重度のIRRを経験する患者は、彼らの点滴を即座に中断するべきであり、積極的対症治療を受けるべきである。症状の全てがなくなるまで点滴を再開するべきではない。点滴の再開において、速度を、反応を誘発した速度の半分にするべきである。オビヌツズマブ点滴の投与に関する説明は、以下の表6で提供される。
【0248】
研究登録の一部として得られた全ての腎生検及び報告を顕微鏡写真にし、当地の腎臓病理組織学者により行われる病理組織学評価の見落としのためにオンライン中央リーディングポータルに送った。専門研究員は、これらの生検を評価し、最終的な判断を決定する。このプロセスを完了するためにあらゆる努力をしながら患者を選別するが、選別活動の完了は必須ではない。選別中または研究の間に得られた全ての新しい生検を、B細胞の存在に関して、尿細管間質を免疫組織化学的に染色することを可能にする手法で処理する。研究は、CRRを達成していない患者に関して、腎生検を繰り返して実施することを奨励するが必須ではなく、腎生検を繰り返し行う研究施設の強化を求める。
【0249】
実施例2:オビヌツズマブは、Fcガンマ受容体依存性及び独立性エフェクター機構による、リウマチ性関節炎及び全身性エリテマトーデス患者の試料中のB細胞傷害性の誘導においてリツキシマブより優れる。
標準用量のリツキシマブ(RTX)を用いて治療されたリウマチ性関節炎(RA)及び全身性エリテマトーデス(SLE)患者の一部は、より高用量を送達することにより増大され得る非効率なB細胞欠失及び乏しい臨床的応答を表示し、これは、標準用量のRTXが、これらの患者において準最適療法であることを示す。より良好な応答が他の抗CD20mAbを用いて達成され得るかどうかを調査するために、SLE及びRA試料中のB細胞傷害性を測定する、一連のインビトロアッセイにおいて、RTXを、次世代の糖操作II型抗CD20 mAbであるオビヌツズマブ(OBZ)と比較した。インビトロの全血液アッセイにおいて、B細胞傷害性を誘導することにおいて、OBZがRTXより少なくとも2倍効率的であることが見出された。この差異を詳細に分析することにより、RTXがOBZより多くの強力な補体依存性細胞傷害性(CDC)を誘発したことが見出された。対照的に、OBZは、NK細胞及び好中球の活性化を含む、Fcガンマ受容体(FcγR)媒介性エフェクター機構を引き起こすことにおいてより有効であった。OBZは、直接細胞死を誘導することにおいてもより効率的であった。これは、総じて全てのCD19+B細胞に関して及びナイーブ(IgD+CD27−)において、ならびに具体的にはスイッチ型(IgD−CD27+)記憶B細胞に関して正確であり、そのより高い頻度は、RTX後の乏しい臨床的応答に関連する。
【0250】
材料及び方法
患者
この研究の全ての参加者は、当地の研究倫理委員会により承認されるヘルシンキ宣言に従って同意書を提供した。RAを有する全ての患者は、米国リウマチ学会(ACR)/欧州リウマチ学会のクラス分け基準(Aletaha D.et al.2010 Ann Rheum Dis.2010;69(9):1580−8)を満たし、SLEを有する全ての患者は、ACRクラス分け基準(Petri M.et al.Arthritis Rheum.2012;64(8):2677−86)に合致した。
【0251】
抗体及び試薬
研究で使用した抗CD20 mAbには、RTX、OBZ、及び糖操作されていない野生型グリコシル化OBZ(OBZ
Gly)、いくつかの実験において、一切のFc関連エフェクター機能に係合しない突然変異したFc部分(P329G LALA)を有するOBZ(Herter S.et al.Cancer Research.2015;75(15 Supplement):2460)である、OBZ−PG LALAが含まれた。Roche Innovation Center Zurich,Switzerlandは、RTXを除く全ての抗CD20 mAbを生成し、これは、University College Hospital,U.K.AT10の薬剤部からの寄贈品であり、FcγRIIアンタゴニスト(Greenman J.et al.Mol Immunol.1991;28(11):1243−54)は、内部で産生した。
【0252】
フローサイトメトリー及びB細胞単離
蛍光色素でコンジュゲートされたmAbを、Becton Dickinson biosciencesまたはBiolegend,U.K.)から調達した:CD3(フィコエリトリン[PE]−Cy7)、CD15(フルオレセインイソチオシアン酸塩、FITC):CD16(アロフィコヤニン(Allophycoyanin)、APC)、CD19(Alexa Fluor 700)、CD45(PE)、CD56(PE)、CD107a(Brilliant Violet 421)、CD11b(PE)、CD62L(APC)、ヨウ化プロピジウム及びアネキシンV(FITC)。フローサイトメトリーを、Becton Dickinson LSR Fortessa細胞分析装置を使用して実行した。リンパ球を、前方及び側方散乱特徴に基づいて特定した。B細胞を、CD19+またはCD20+として、T細胞をCD3+として、及びNK細胞をCD3−56+として特定した。好中球を、前方及び側方散乱特徴、ならびにCD15の陽性に基づいて特定した。mAbでインキュベートした試料中のCD11b及びCD62Lの平均蛍光強度(MFI)を、抗体を用いることなくインキュベートした試料中のMFIと比較した。
【0253】
全ての実験において、Ficoll−Hypaqueの密度勾配により、末梢血液単核細胞(PBMC)を全血液試料から分離し、EasySep(商標)ヒトB細胞濃縮キット(Cambridge,U.K.)を使用して、B細胞をPBMCから単離した。
【0254】
全血液B細胞減損アッセイ
簡潔には、ヘパリンで抗凝固剤処置した300μlの採血したての全血液を、37℃及び5%のCO
2で24時間、1μg/mLでmAbを用いて、またはそれを用いることなくインキュベートした。次いで、前述されるように、試料を抗CD3、抗CD19、及び抗CD45で染色し、その後、赤血球を溶解し、フローサイトメーターで分析した(Reddy V.et al.Arthritis&rheumatology.2015;67(8):2046−55)。前述されるように、処理後に残っているB細胞のT細胞に対する割合からB細胞減損%を計算し、細胞傷害性指数(CTI)として定義した(Mossner E.et al.Blood.2010;115(22):4393−402、及びReddy V.et al.Arthritis&rheumatology.2015;67(8):2046−55)。
【0255】
表面蛍光消光アッセイ
前述されるように、表面蛍光消光アッセイを行って(Beers S.A.et al.Blood.2008;112(10):4170−7、及びReddy V.et al.Arthritis&rheumatology.2015;67(8):2046−55)、B細胞によるmAbの内部移行を評価した。単離B細胞を、6時間、Alexa−488でコンジュゲートした5μg/mLの濃度のmAbでインキュベートし、その後、フローサイトメトリーにより分析した。
【0256】
補体依存性細胞傷害性アッセイ
前述されるように、CDCアッセイを行った(Cragg M.S.et al.Blood.2004;103(7):2738−43)。単離B細胞を、37℃及び5%のCO
2で30分間、10μg/mLの濃度のmAbでインキュベートした。試料を、蛍光コンジュゲートした抗CD19抗体、アネキシンV(Av)、及びヨウ化プロピジウム(PI)で染色し、CD19+Av+PI+細胞の頻度を、フローサイトメトリーにより評価した。採取したての健常なヒト血清を、補体の源として使用した。補体に関する活性を定義するために、56℃で30分間、血清の一部を加熱不活性化(HIS)した。mAbが補体を活性化する能力及び標的細胞を溶解する能力を、健常血清またはHISでインキュベートした試料中のCD19+Av+PI+細胞の相対的頻度により評価した。
【0257】
直接細胞死
単離B細胞を、10%の加熱不活性化ウシ胎仔血清で補ったRPMI中で、37℃及び5%のCO
2で6時間、10μg/mLの濃度のmAbを用いて、またはそれを用いることなくインキュベートした。mAbを用いなかった試料中のCD19+Av+細胞の頻度と比較したmAbを用いた試料中のCD19+Av+細胞の頻度は、mAbが直接細胞死を誘導する能力を表した。
【0258】
NK細胞脱顆粒化アッセイ
CD107aまたはLAMP−1(リソソーム関連膜タンパク質1)の発現を測定することにより、全血液B細胞減損アッセイからの試料を使用してNK細胞の脱顆粒化を評価し、これは、NK細胞の活性化において上方制御され、NK細胞媒介ADCCと相関性がある(Alter G.et al.J Immunol Methods.2004;294(1−2):15−22、及びAktas E.et al.Cell Immunol.2009;254(2):149−54)。よって、mAbを用いた試料中のCD3−56+107a+NK細胞の頻度を、mAbを用いることなくインキュベートした試料中のCD3−56+107a+NK細胞の頻度と比較した。NK細胞の活性化は、メタロプロテイナーゼの増加した活性に関連し、これは、NK細胞活性化においてその発現を低減するCD16を切断する(Romee R.et al.Blood.2013;121(18):3599−608)。よって、CD16損失の程度も、NK細胞活性化の間接的測定として使用した(Grzywacz B.et al.Leukemia.2007;21(2):356−9;author reply9、及びBowles J.A.et al.Blood.2006;108(8):2648−54)。
【0259】
好中球活性化アッセイ
好中球活性化を、フローサイトメトリーによりCD15+好中球上のCD11bの増加またはCD62Lの減少を測定することにより、全血液アッセイにおいて評価した(Golay J.et al.Blood.2013;122(20):3482−91、及びWittmann S.et al.Cytometry A.2004;57(1):53−62)。mAbが好中球活性化を誘導する能力を、mAbを用いて、またはそれを用いることなくインキュベートした試料中のCD15+好中球上のCD11b及びCD62Lの平均蛍光強度(MFI)を比較することにより評価した。
【0260】
統計分析
Graph Pad Prism Softwareバージョン5.0を使用してデータを分析した。マンホイットニー試験またはウィルコクソン対応対符号順位を使用して、必要に応じて群間で比較した。相関性を分析するためにスピアマン相関係数を使用した。
【0261】
結果
II型mAbは、B細胞傷害性を誘導することにおいてI型より効率的である。
RA及びSLE試料中のB細胞傷害性におけるI及びII型mAbの効果を評価するために、前述されるように全血液B細胞減損アッセイを行った(Reddy V.et al.Arthritis&rheumatology.2015;67(8):2046−55)。OBZは、RA(n=31)及びSLE(n=34)を有する患者からB細胞を欠失することにおいてRTXより>2倍効率的であり、糖修飾されていないOBZ
Gly及びOBZの両方は、試験した全ての試料中でRTXより効率的であった(
図2A)。RA及びSLEの両方において、OBZの中央値CTIは、OBZ
Gly及びRTXのCTIを著しく超えており、OBZ
GlyのCTIは、RA及びSLEの両方においてRTXのCTIより著しく高かった。RAにおいて、RTX、OBZ
Gly、及びOBZの中央値(四分位数範囲)CTIはそれぞれ、29(13〜50)、60(47〜70)、及び67(60〜77)であり、SLEにおいてはそれぞれ、19(11〜39)、40(31〜53)、及び59(52〜70)であった。したがって、RA及びSLEの両方において、mAbで誘導されたB細胞減損の階層が存在した:RTX<OBZ
Gly<OBZ。B細胞減損において、特にRTXを用いた注目すべき試料間の可変性も記述された。OBZ
Gly(RTXと同様の糖修飾されていないFcを有する)の優れた効率性は、そのII型の本質が、全血液アッセイにおけるB細胞減損の効率性におけるmAbの2つの型間の差異の原因である一方で、OBZ
Glyと比較してOBZの増加した効率性が、Fc部分のアフコシル化に帰することを呈する。
【0262】
B細胞がOBZより急速にRTXを内部移行させる。
次に、B細胞減損におけるII型mAbの優れた効率性が、それらのII型本質と一貫性があるかどうかを調査し、それにより、RA及びSLEを有する患者からのB細胞がRTXをOBZよりもより大きな程度に内部移行させたかどうかを評価した。表面の接触可能なRTX対OBZの中央値(範囲)パーセンテージ、RA(n=5)においてそれぞれ、55(51〜57)対83(81〜84)、及びSLE(n=8)においてそれぞれ、60(49〜77)対76(70〜80)により、6時間のインキュベーション後にRTXがOBZより広範囲に内部移行したことが見出された(
図2B)。この内部移行におけるFcγRIIbの役割を評価するために、RTXの内部移行を部分的に、及びOBZに対してはよりわずかな程度で阻害し、OBZの糖修飾されていないII型抗体変異形を使用した以前の観察と同様にFcγRII−遮断mAb AT10の存在下で実験を行った(
図2B)(Reddy V.et al.Arthritis&rheumatology.2015;67(8):2046−55)。
【0263】
RTXは、補体依存性細胞傷害性を誘導することにおいてOBZより効率的である。
これらのmAbがCDCを誘発する能力も調査した。溶解したB細胞(CD19+Av+PI+)の頻度は、加熱不活性化血清(HIS)と比較して、健常血清(NHS)の存在下でRTXでインキュベートした試料中でより著しく大きく、中央値(範囲)差異が10.9%(8.1〜21)であった一方で、OBZでインキュベートした試料の差異は、4.8%(0.9〜6.5)であったことが見出された(
図2C)。NHS対HISでインキュベートした試料中の溶解した細胞の平均±SDの倍増率はそれぞれ、RTX及びOBZに対して1.9±0.5及び1.2±0.2であった(
図2D)。したがって、データは、RTXがCDCを引き起こすことにおいてOBZより優れていたことを呈する。
【0264】
OBZは、NK細胞を活性化することにおいてRTXより効率的である。
これらのCDCの結果は、mAbのI型及びIIの本質と一貫性があったが、全血液アッセイにおけるII型mAbの優れた効率性と合致しない。次に、mAbがFcγR媒介性エフェクター機構を誘発する能力を調査した;まず、全血液B細胞減損アッセイにおけるNK活性化を評価した。
図3Eに示されるようなゲート化は、CD16の発現に関連するNK脱顆粒化の評価(CD107aの増加)を可能にした。CD56+CD16−画分においてCD107a+NK(CD3−CD56+)細胞の最も高い割合が見られ(
図3A〜3G)、これは、NK細胞の脱顆粒化が、前に報告されるように、CD16を下方制御したことを呈した(Grzywacz B.et al.Leukemia.2007;21(2):356−9;author reply9)。
【0265】
これらのパラメータを確立することで、RTX及びOBZを比較する相当アッセイを行った。mAbの不在下の24時間のインキュベーション後、RA(n=18)及びSLE(n=23)を有する患者間のNK細胞、CD107a+NK細胞、CD16+NK細胞、またはB細胞の頻度において、著しい差異は存在しなかった(
図4A)。しかし、CD3−CD56+CD107a+活性化NK細胞の中央値(範囲)頻度は、OBZでインキュベートした試料中で、RTXと比較して著しくより高く、それぞれ5.1%(1.9〜22)対2.8%(0.3〜14)及び5.5%(0.6〜12)対4.3%(1.2〜8.9))であったが、RA及びSLEの両方において、CD16+NK細胞の著しくより低い中央値(範囲)頻度が存在し、それぞれ、69(36〜94)対89(83〜97)及び66(42〜91)対84(61〜95)であった(
図4B)。さらに、SLEにおいて、OBZでインキュベートした試料中のCD3−CD56+CD107a+NK細胞の頻度は、RTXでインキュベートしたCD3−CD56+CD107a+NK細胞の頻度と比較して、著しくより高く倍増した(
図4B)。さらに、CD107aの取得またはCD16の損失、またはCD3−CD56+CD107a+NK細胞の頻度の倍増率により評価したようなNK細胞活性化が、SLEと比較してRAにおいてより大きかったことが見出された(
図4B)。RTX及びOBZによるCD3−CD56+CD107a+NK細胞の頻度により評価したようなNK細胞活性化は、mAbを用いることなくインキュベートした試料中のCD3−CD56+CD107a+NK細胞の頻度と著しく相関性があり、RAにおいてそれぞれ、r
2=0.89、p<0.05;r
2=0.78、p<0.05(
図4C)、及びSLEにおいてそれぞれ、r
2=0.52、p<0.05;r
2=0.36、p<0.05(
図4D)を有した。しかし、SLEと比較してRAにおいてより強い相関性があった。まとめると、これらのデータは、SLEにおけるNK細胞の活性化における疾患関連欠陥は、全血液減損アッセイに記述される非効率なB細胞減損に寄与し得(
図2A)、NK細胞のベースライン活性化状態は、RA及びSLEの両方においてmAbによる活性化に対する応答に影響を及ぼし得ることを呈する(
図4B及び4C)。
【0266】
次にRTX及びOBZによるNK細胞の異なる活性化がI型及びII型の特徴に因るかどうか、ならびに/または野生型グリコシル化(OBZ
Gly)を有するかもしくはFcγR係合を完全に欠いており、結果的に、ADCC及びCDCを誘導することにおいて効率性が低下した/非効率であるOBZ(OBZ−PG LALA)を使用したFc操作の効果(Hessell A.J.et al.Nature.2007;449(7158):101−4)に因るかどうかを調査した。RA(n=6)及びSLE(n=12)の両方において、OBZ−PG LALAでインキュベートした試料と比較して、mAbを用いることなくインキュベートした試料中のCD3−CD56+CD107a+またはCD3−CD56+CD16+NK細胞の頻度において、著しい差異は見られず、これは、予測通り、FcγR係合が必須であることを示す。これらの試料中で、さらにOBZは、RA(n=18)及びSLE(n=23)の両方において、全血液アッセイのB細胞を減損することにおいて、OBZ
Gly及びRTXより効率的であったが(
図5A)、CD3−CD56+CD107a+NK細胞の頻度及び倍増率における増加階層が以下の通り記述された:mAbなし=OBZ−PG LALA<RTX<OBZ(
図5B及び5C)。OBZでインキュベートした試料中のCD3−CD56+CD16+NK細胞の頻度は、他の試料と比較すると著しくより低かった(
図5D)。RAにおけるCD3−CD56+CD16+NK細胞の頻度も、RTXと比較してOBZ
Glyでインキュベートした試料中でより低かったが、SLEにおいてはそうではなかった(
図5D)。
【0267】
したがって、mAbを用いることなくインキュベートした試料と比較すると、RTX、OBZ−PG LALA、OBZ
Gly、及びOBZでインキュベートした試料中の平均倍率の差異が、RAにおいてそれぞれ、1.2、1.5、1.9、及び3.1、かつSLEにおいてそれぞれ、1.5、0.8、1.4、及び1.8であるように、mAbがCD3−CD56+NK細胞上でCD107aの発現を上方制御する能力は、SLEと比較すると、RAでより大きかった(
図5C)。RA及びSLEにおいてmAbにより達成されたB細胞減損のパターン(
図5A)は、mAbによるNK細胞活性化のパターンと同様であり(
図5B及び5D)、そこには、個体試料中のmAbにより達成されたB細胞減損%とCD3−CD56+CD107a+NK細胞の頻度との間に直接的な相関性はなかった(データは非表示)。
【0268】
OBZは、好中球を活性化することにおいてRTXより効率的である。
NK細胞に加えて、好中球も、mAbエフェクター細胞として提示されている(Golay J.et al.Blood.2013;122(20):3482−91)。よって、次に、mAbが好中球活性化を誘導する能力を、前述されるように、CD11b及びCD62Lの発現を測定することにより評価し(Wittmann S.et al.Cytometry A.2004;57(1):53−62)、
図9に示した。CD11bは、βインテグリン(Mac−1)複合体の一部を形成し、この複合体の複数の遺伝的変異形は、ループス関連食細胞欠陥に関連している(Bologna L.et al.J Immunol.2011;186(6):3762−9)。好中球活性化において、CD11bの表面発現が上方制御される一方で、接着分子であるCD62Lの発現は、下方制御される(Golay J.et al.Blood.2013;122(20):3482−91、及びWittmann S.et al.Cytometry A.2004;57(1):53−62)。mAbを用いることなくインキュベートした試料と比較すると、mAbでインキュベートした試料中のCD11bのMFIが、RA(n=10)及びSLE(n=22)の両方においてより著しく高かったことが見出された(
図6A)。RA及びSLEの両方において、mAbの不在下でインキュベートした試料中のCD11bのMFIと、RTXでインキュベートした試料中のCD11bのMFIとの間の著しい相関性(それぞれ、r
2=0.81、0.82)が記述された一方で、OBZに関する著しい相関性は、SLEで記述された(r
2=0.81)が、RAでは記述されなかった(
図6B)。CD11bのMFIが、NK細胞活性化の事象のように、RTX<OBZ
Gly<OBZによりインキュベートされた試料中の順でより低くなるような階層が、mAbがCD11bを上方制御する能力においても記述された。さらに、CD62LのMFIは、RTX>OBZ
Gly>OBZによりインキュベートされた試料中の順でより大きかった(
図6C)。RA及びSLEの両方において、mAbの不在下でインキュベートした試料中のCD62LのMFIと、RTX(それぞれ、r
2=0.93、0.91)及びOBZ(それぞれ、r
2=0.64、0.71)でインキュベートした試料中のCD62LのMFIとの間の著しい相関性が記述された(
図6D)。したがって、好中球を活性化する能力におけるmAbの階層は、OBZ>OBZ
Gly>RTXであった。まとめると、これらのデータは、II型mAbが、RA及びSLE試料の両方に関して、全血液アッセイの好中球を活性化することにおいてRTXより優れていることを呈した。OBZ−PG LALAは、mAbの不在下でインキュベートした試料と比較すると、RA(n=7)及びSLE(n=12)の両方におけるマーカーに対して著しい変化を誘発しなかった。
【0269】
OBZは、直接細胞死を誘導することにおいてRTXより効率的である。
次に、
図10に示されるようにアネキシンVアッセイを使用して、直接細胞死(DCD)を評価した。OBZが直接細胞死を誘導する能力は、
図7Aの、CD19+細胞全体及びB細胞分集団、つまりIgD+CD27−ナイーブ細胞及びIgD−CD27+スイッチ型記憶細胞の両方に関して、RTXが直接細胞死を誘導する能力より大きかった(RA、n=5及びSLE、n=4)。mAbを用いることなくインキュベートした試料中でも、アネキシンV+細胞の割合は、最も高いものからDN細胞>IgD+CD27+非スイッチ型記憶細胞>IgD−CD27+スイッチ型記憶細胞>IgD+CD27−ナイーブ細胞の順であった。それにもかかわらず、OBZは、DCDを誘導することにおいてRTXより優れていた。
【0270】
B細胞分集団:CD20、FcγRIIbの発現及びmAbの内部移行
次に、CD20、FcγRIIbの発現におけるB細胞分集団及び/またはmAbを内部移行するその能力との間の差異が、mAb誘導DCDに対する異なる感受性に関して説明を提供したかどうかを調査した。B細胞分集団は、IgD−CD27+スイッチ型記憶細胞内部が、他のB細胞分集団未満でmAbを移行し、かつIgD+CD27+非スイッチ型記憶細胞が、他のB細胞分集団より大きな程度にmAbを内部移行したようなmAbを内部移行する異なる能力を表示した。AT10でFcγRIIbの効果をアンタゴナイズすることは、両方の事例において、内部移行を著しく低減させた。ナイーブ及びIgD−CD27+スイッチ型記憶細胞と比較すると、IgD+CD27+非スイッチ型記憶細胞は、著しくより大きいCD20及びFcγRIIbの発現を有し、mAbを内部移行する著しくより大きい能力を表示した一方で、ナイーブ及びIgD−CD27+スイッチ型記憶細胞は、著しくより低いCD20及びFcγRIIbの発現を有し、著しくより低いレベルの内部移行を表示した。DN細胞は、注目すべき可変レベルのCD20及びFcγRIIbの発現を有したが、IgD−CD27+スイッチ型記憶細胞より著しく大きな程度にRTXを内部移行した。RA及びSLE試料の両方からのB細胞は、低レベルのOBZの内部移行を一貫して表示した。これらのデータをまとめると、mAb誘導DCDに対するB細胞分集団の感受率と、mAbを内部移行するか、またはCD20もしくはFcγRIIbを発現する能力との間に明確な関係は存在しなかった。
【0271】
ここで、オビヌツズマブ、つまり糖修飾されたFcを有するII型抗CD20 mAbが、RTXと比較して、RA及びSLEの両方を有する患者の全血液試料からB細胞を欠失させることにおいて、少なくとも2倍大きい効能を実証したことが示された。OBZのこの増加した活性は、主にFcガンマ受容体(FcγR)媒介性エフェクター機構及びDCDにより影響を受けた。対照的に、RTXは、CDCに対してより効率的に補体を回復したが、急速に内部移行され、ADCC及びDCDを引き起こすことにおいて著しくより低度に効率的であった。後の分析で、CD20標的分子の発現が、IgD−CD27+スイッチ型記憶及びDN細胞においてより低度であったことが明らかになり、恐らく、これがRTXによる除去に対するそれらの相対的抵抗の原因であった。