(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガスタービンの燃料を加熱する燃料加熱装置を備え、前記燃料加熱装置によって加熱された前記燃料を、種火となる火炎を供給するパイロット系統の第1ノズル及び他の燃料系統の第2ノズルに供給する燃料供給流路と、
前記パイロット系統に接続し、前記燃料供給流路を介さずに前記第1ノズルに前記燃料を供給するバイパス流路と、
前記バイパス流路を流れる前記燃料の流量を調節するバイパス燃料流量調節弁と、
を備え、
前記バイパス燃料流量調節弁と前記第1ノズルが接続されたマニホールドとの間の配管距離を第1距離、前記燃料供給流路に設けられ前記第1ノズルへ供給される燃料の流量を調節する第1燃料流量調節弁と前記マニホールドとの間の配管距離を第2距離とすると、
前記バイパス燃料流量調節弁が、前記第1距離が前記第2距離以下となる位置に設けられる、
燃料供給システム。
前記制御装置は、前記負荷低下の時の前記第1ノズルの燃空比および前記第2ノズルの燃空比と、失火が生じる前記第1ノズルの燃空比および前記第2ノズルの燃空比の関係を示す情報とに基づいて、前記バイパス燃料流量調節弁の開度を調整する係数を学習する、
請求項7から請求項8の何れか1項に記載の燃料供給システム。
ガスタービンの燃料を加熱する燃料加熱装置を備え、前記燃料加熱装置によって加熱された燃料を、種火となる火炎を供給するパイロット系統の第1ノズル及び他の燃料系統の第2ノズルに供給する燃料供給流路と、前記パイロット系統に接続し、前記燃料供給流路を介さずに前記第1ノズルに前記燃料を供給するバイパス流路と、前記バイパス流路を流れる前記燃料の流量を調節するバイパス燃料流量調節弁と、を備え、前記バイパス燃料流量調節弁と前記第1ノズルが接続されたマニホールドとの間の配管距離を第1距離、前記燃料供給流路に設けられ前記第1ノズルへ供給される燃料の流量を調節する第1燃料流量調節弁と前記マニホールドとの間の配管距離を第2距離とすると、前記バイパス燃料流量調節弁が、前記第1距離が前記第2距離以下となる位置に設けられる燃料供給システムにおいて、
前記ガスタービンの負荷低下の時に、前記バイパス燃料流量調節弁を閉から開へ制御する、制御方法。
ガスタービンの燃料を加熱する燃料加熱装置を備え、前記燃料加熱装置によって加熱された燃料を、種火となる火炎を供給するパイロット系統の第1ノズル及び他の燃料系統の第2ノズルに供給する燃料供給流路と、前記パイロット系統に接続し、前記燃料供給流路を介さずに前記第1ノズルに前記燃料を供給するバイパス流路と、前記バイパス流路を流れる前記燃料の流量を調節するバイパス燃料流量調節弁と、を備え、前記バイパス燃料流量調節弁と前記第1ノズルが接続されたマニホールドとの間の配管距離を第1距離、前記燃料供給流路に設けられ前記第1ノズルへ供給される燃料の流量を調節する第1燃料流量調節弁と前記マニホールドとの間の配管距離を第2距離とすると、前記バイパス燃料流量調節弁が、前記第1距離が前記第2距離以下となる位置に設けられる燃料供給システムの制御装置のコンピュータを、
前記ガスタービンの負荷低下の時に、前記バイパス燃料流量調節弁を閉から開へ制御する手段、として機能させるためのプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態による負荷遮断時の制御方法について
図1〜
図10を参照して説明する。
図1は、本発明に係る第一実施形態におけるコンバインドサイクル発電プラントの系統図である。
本実施形態のガスタービンコンバインドサイクル発電プラント1(以下、発電プラント1と記載する)は、
図1に示すように、ガスタービン10と、蒸気タービン20と、ガスタービン10および蒸気タービン20のロータ16に接続して設けられた発電機40と、発電プラント1を制御する制御装置100と、を備えている。
【0029】
ガスタービン10は、空気入口系統18から流入する空気量を調整するIGV(inlet guide vane)15と、空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機11と、圧縮空気が流入する車室12と、圧縮空気に燃料ガスを混合して燃焼させ高温の燃焼ガスを生成する燃焼器13と、燃焼ガスによりロータ16を回転駆動するタービン14と、燃料タンクP3および複数の燃料系統F1〜F5と、燃料系統F1〜F5に燃料を供給する燃料ラインL1と、燃料系統F1に燃料を供給する燃料ラインL0等を備える。燃料ラインL1には、遮断弁V6、フィルターFL1、ドレン受入口P1、遮断弁出口P2、燃料加熱装置(FGH:Fuel Gas Heater)23、圧力供給系統17が供給する燃料供給圧を制御する圧力調節弁V7及び圧力調節弁V8、安全弁V9及び安全弁V10が設けられている。
【0030】
複数の燃料系統F1〜F5はそれぞれ、予混パイロット系統F1、拡散パイロット系統F2、メインA系統F3、メインB系統F4、トップハット系統F5であってよい。予混パイロット系統F1には、燃料タンクP3からの燃料供給量を調整する燃料流量調節弁V1、予混パイロット用マニホールドPP、予混パイロット用マニホールドPPに接続された燃料ノズルN1が含まれる。拡散パイロット系統F2には、燃料タンクP3からの燃料供給量を調整する燃料流量調節弁V2、拡散パイロット用マニホールドDP、拡散パイロット用マニホールドDPに接続された燃料ノズルN2が含まれる。メインA系統F3には、燃料タンクP3からの燃料供給量を調整する燃料流量調節弁V3、メインA用マニホールドMA、メインA用マニホールドMAに接続された燃料ノズルN3が含まれる。メインB系統F4には、燃料タンクP3からの燃料供給量を調整する燃料流量調節弁V4、メインB用マニホールドMB、メインB用マニホールドMBに接続された燃料ノズルN4が含まれる。トップハット系統F5には、燃料タンクP3からの燃料供給量を調整する燃料流量調節弁V5、トップハット用マニホールドTHA、トップハット用マニホールドTHAに接続された燃料ノズルN5が含まれている。
【0031】
予混パイロット系統F1は、予混合燃焼を行って燃焼器13の低NOx化を向上する。拡散パイロット系統F2は、拡散燃焼を行って火炎の安定化を図る。メインA系統F3、メインB系統F4は、ガスタービン10の負荷の大きさに応じた予混ガスを供給する主力の燃料系統である。トップハット系統F5は、燃焼効率の向上や火炎の安定化を図るため、燃焼器13の上流(車室12側)から燃料ガスを噴射する。制御装置100は、ガスタービン10の負荷や運転状態に応じて、これら複数の燃料系統F1〜F5から供給する燃料供給量を制御する。
【0032】
燃料ラインL0には、フィルターFL0、ドレン排出口P0、予混パイロット用マニホールドPPへ供給する燃料供給量を調節する燃料流量調節弁V0が設けられている。燃料ラインL0は、本実施形態のガスタービン10に係る特徴的な構成であるが、燃料加熱装置23や各バルブ等をバイパスする為、燃料ラインL1と比較すると、燃料ラインL0を通過する燃料には圧力損失が少ない。また、燃料ラインL0を通過する燃料は、燃料加熱装置23によって加熱されることが無いため、燃料ラインL1を介して供給される燃料に比べ低温で密度が高い。つまり、予混パイロット用マニホールドPPへは、燃料ラインL0を通過し燃料流量調節弁V0で流量が調節される燃料と、燃料ラインL1を通過し燃料流量調節弁V1で流量が調節される燃料の2つの系統からの燃料が供給されるが、燃料ラインL0側から供給される燃料は、燃料ラインL1側から供給される燃料に比べ低温、高密度、高圧である。燃料ラインL0側から供給される燃料が相対的に高密度、高圧であることにより、燃料ラインL0側からは、燃料ラインL1側に比べより多くの燃料を供給することができる。
ドレン排出口P0とドレン受入口P1を接続するラインL3は、燃料ラインL0に燃料が溜まるのを防ぐためにドレンを燃料ラインL1へ排出するためのものである。ラインL3を通過して燃料ラインL1へ供給される燃料の流量は微量に制限されている。
なお、燃料流量調節弁V0は、ドレン排出口P0と予混パイロット用マニホールドPPとの間に位置に設けられ、できるだけ予混パイロット用マニホールドPPに近い位置に設けられることが好ましく、燃料流量調節弁V0は、例えば、ドレン排出口P0よりも予混パイロット用マニホールドPPに近い位置に設けられてもよい。また、燃料流量調節弁V0と予混パイロット用マニホールドPPとの間の配管距離を第1距離、燃料流量調節弁V1と予混パイロット用マニホールドPPとの間の配管距離を第2距離、とすると、燃料流量調節弁V0は、第1距離と第2距離が同程度となる位置、あるいは、第1距離が前記第2距離より短くなる位置に設けられていてもよい。燃料流量調節弁V0が予混パイロット用マニホールドPPに近い位置に設けられることが好ましい理由は、燃料流量調節弁V0を開としてから速やかに燃料を供給するためである。
【0033】
タービン14の排気口は蒸気タービン20の排熱回収ボイラー21と接続されている。
蒸気タービン20は、タービン14から排出される排熱を利用して排熱回収ボイラー21で蒸気を生成し、この蒸気でタービン22を回転駆動させる。
【0034】
排熱回収ボイラー21と上述の燃料加熱装置23とは加熱水供給ラインL2を介して接続されている。燃料加熱装置23は、燃焼器13における熱効率の向上のため、100度以下の燃料の温度を数100度に上昇させる。燃料加熱装置23へは、排熱回収ボイラー21から加熱水が加熱水供給ラインL2を通過して供給される。燃料加熱装置23では、この加熱水と、燃料ラインL1を流れる燃料とが熱交換を行う。このとき、加熱水から燃料へと熱が移動し、燃料の温度が上昇する。燃料加熱装置23の下流側(燃料が流れる方向の下流側)には、図示しない温度センサが設けられ、制御装置100は、温度センサが計測する燃料の温度が、所望の温度となるように制御する。なお、温度センサは、ドレン受入口P1の下流側に設けられ、ラインL3から流入する燃料を含んで温度制御される。
【0035】
具体的には、燃料加熱装置23の内部には、加熱水と燃料が熱交換を行うための熱交換器(図示せず)と、この熱交換器をバイパスする燃料のバイパス流路が設けられている。制御装置100は、燃料の流路を、バイパス流路と熱交換器側との間で切り替えることにより、燃料の温度が所定の範囲内となるよう制御する。なお、本実施形態に特有の燃料ラインL0は、燃料加熱装置23が備える熱交換器のバイパス流路とは異なり、燃料ラインL1全体(燃料加熱装置23および各種バルブ類)をバイパスし、
予混パイロット用マニホールドPPへ接続される流路である。燃料ラインL0を流れる燃料は、燃料加熱装置23による温度制御の影響下には無く、加熱され高温となることがない。従って、燃料ラインL0を流れる燃料の密度は、燃料ラインL1を流れる燃料ガスの密度よりも大きい。
【0036】
次に
図1を参照しつつ、
図2〜
図4を用いて一般的な負荷遮断時における燃料供給制御の一例を説明する。なお、一般的なガスタービンは、燃料ラインL0を備えていない。
図2は、負荷遮断時の一般的な燃料供給の制御方法を説明する第1の図である。
図2は、負荷遮断後の時間の経過に伴う、全燃料流量指令値(CSO:control signal output)の推移の一例を示したグラフである。図示するように時刻T0に負荷遮断が発生すると、制御装置100は、ガスタービン10の回転数の上昇を抑えるためにCSOの値を瞬時に低下させる。その後は、制御装置100は、回転数が所定の目標値(例えば、定格運転時と同程度の回転数)となるようにCSOを調整する。
【0037】
図3は、負荷遮断時の一般的な燃料供給の制御方法を説明する第2の図である。
図3に
図2で示したCSOの内訳の一例を示す。グラフMAは、メインA系統F3に供給される燃料の割合を示す。グラフMBは、メインB系統F4に供給される燃料の割合を示す。グラフPPは、予混パイロット系統F1に供給される燃料の割合を示す。グラフTHAは、トップハット系統F5に供給される燃料の割合を示す。拡散パイロット系統F2は、起動時等に用いられ運転中は燃料が供給されない。図示するように制御装置100は、時刻T0に負荷遮断が生じると、メインB系統F4の燃料流量調節弁V4と、トップハット系統F5の燃料流量調節弁V5とを全閉とする。また、メインA系統F3の燃料流量調節弁V3の開度を絞り(グラフMA)、予混パイロット系統F1の燃料流量調節弁V1を全開とする(グラフPP)。これにより燃焼器13への燃料供給量を低下させて回転数を抑制しつつ、予混パイロット系統F1の燃料を増加させ、燃焼器13の種火を維持する。
【0038】
ここで、メインA系統F3の燃空比と予混パイロット系統F1の燃空比と失火の関係について説明する。
図4は、負荷遮断時の一般的な燃料供給の制御方法を説明する第3の図である。
図4のグラフC1およびグラフC2は、負荷遮断後に予混パイロット系統F1の燃料ノズルN1が噴出した燃料ガスの燃空比(予混パイロット燃空比)と、メインA系統F3の燃料ノズルN3が噴出した燃料ガスの燃空比(メインA燃空比)との関係を示している。
グラフCriは、予混パイロット系統F1における火炎が失火するかどうかの閾値となる値(燃空比クライテリア)を示している。予混パイロット燃空比が少なくともある1点で燃空比クライテリア以上となると燃料ノズルN1での失火を防ぐことができる。
上記のとおり、負荷遮断が生じると、メインB系統F4および拡散パイロット系統F2およびトップハット系統F5から供給する燃料を0とし、メインA系統F3から供給する燃料を減らし、予混パイロット系統F1から供給する燃料を増加させることで、ガスタービン10の出力を抑えつつ、燃焼器13の保炎を図る制御が行われる。
【0039】
グラフC1は、負荷遮断後に予混パイロット燃空比が上昇し、燃空比クライテリアに達する様子を示している。負荷遮断後に燃料供給が継続される2つの系統間でグラフC1が示すような燃空比が実現できれば、失火を防ぐことができる。一方、予混パイロット系統F1の燃料ノズルN1から供給する燃料が不足し、負荷遮断後の2つの燃料系統間の燃空比の関係がグラフC2のような関係となると、グラフC2の予混パイロット燃空比の値が、燃空比クライテリア(グラフCri)以下となるため、燃料ノズルN1において失火が生じる可能性が高くなる。失火が生じると負荷遮断後の運転が実現できない。運転中の失火の有無は、例えば、火炎検知器や排ガス温度、ブレードパス温度などから判定することができるが、事前の検討においては、
図4で例示する燃空比クライテリアを達成するような予混パイロット燃空比とメインA燃空比との関係から、燃料流量調節弁V1および燃料流量調節弁V3の弁開度が算出される。制御装置100は、このようにして算出された弁開度に基づいて燃料流量調節弁V1および燃料流量調節弁V3を制御する。
【0040】
ところが、例えば、圧力供給系統17の燃料供給圧が十分ではない設備などの場合、上記のような方法で算出された弁開度に従って負荷遮断後の燃料流量調節弁V1および燃料流量調節弁V3の開度を制御したとしても、燃料ノズルN1から供給する燃料が不足し、予混パイロット燃空比が燃空比クライテリアに到達しない可能性がある。
【0041】
これに対し、本実施形態では、負荷遮断後に十分な量の燃料を予混パイロット系統F1に供給するための燃料ラインL0を、燃料ラインL1とは独立して設ける構成とする。制御装置100は、通常の負荷運転時(例えば、負荷が40%〜100%)には燃料流量調節弁V0を閉とし、燃料ラインL0を介しての燃料供給を行わない。一方、負荷遮断が発生すると、燃料ラインL1の燃料流量調節弁V1を全開する制御に加え、燃料ラインL0の燃料流量調節弁V0を開く。
すると、燃料ラインL1に比べ圧力損失が少ない燃料ラインL0を介して、高密度な燃料が相対的に高い供給圧を保ったまま予混パイロット系統F1に供給される。これにより、圧力供給系統17の燃料供給圧力が低い設備であっても、予混パイロット系統F1へ供給すべき燃料供給量を確保することができ、失火を回避することができる。
また、制御装置100は、予混パイロット燃空比とメインA燃空比との関係が、
図4のグラフC1のような関係となるような燃料流量を実現すべく、負荷遮断後も燃料流量調節弁V0の開度を調整する。
【0042】
なお、
図4では、予混パイロット燃空比に関する指標とメインA燃空比に関する指標との関係を表すグラフとして例示したが、
図4のグラフは、予混パイロット系統F1の火炎温度の計算値とメインA系統F3の火炎温度の計算値との関係として同様に表すことができる。
【0043】
次に制御装置100による負荷遮断時の制御について説明する。
図5は、本発明に係る第一実施形態における制御装置の一例を示すブロック図である。
図示するように制御装置100は、負荷遮断検知部101と、燃料制御部102と、予混バイパス弁制御部103と、タイマ104と、記憶部105とを備える。
負荷遮断検知部101は、負荷遮断を検知する。例えば、負荷遮断検知部101は、ガスタービン10の運転中に負荷を切り離す負荷遮断信号を取得する。
燃料制御部102は、燃料ラインL1を介して燃料ノズルN1〜N5から噴射する燃料の供給量を制御する。例えば、燃料制御部102は、負荷遮断検知部101が負荷遮断を検知すると、ガスタービン10の回転数が所定の閾値以下となるように、燃料ノズルN1〜N5から噴射する燃料の供給量が所定の供給量以下となるよう制御する。例えば、燃料制御部102は、負荷遮断が生じると、燃料流量調節弁V2,V4,V5を全閉とし、燃料流量調節弁V3の開度を通常の負荷運転時よりも絞り、燃料流量調節弁V1を所定の時間、全開とする制御を行う。
【0044】
予混バイパス弁制御部103は、燃料ラインL0の燃料流量調節弁V0を制御する。具体的には、予混バイパス弁制御部103は、通常の負荷運転時には燃料流量調節弁V0を全閉とする。また、予混バイパス弁制御部103は、負荷遮断検知部101が負荷遮断を検知すると、燃料流量調節弁V0を閉状態から開状態に制御し、燃焼器13における燃料ノズルN1からの予混燃料ガスの燃空比が、失火が発生を回避できる所定の燃空比(燃空比クライテリア)以上となるように燃料流量調節弁V0の開度を調節する。
タイマ104は、時間を計測する。
記憶部105は、負荷遮断後の燃料流量調節弁V0〜V5の開度の算出に必要な関数など、種々の情報を記憶する。
なお、制御装置100は、ガスタービン10および蒸気タービン20の制御に関するさまざまな機能を備えているが、本実施形態に関係のない機能についての説明は省略する。
【0045】
図6は、本発明に係る第一実施形態における予混パイロット系統へ供給する燃料の制御方法を説明する図である。
タイマ104は、負荷遮断後の経過時間を計測し、燃料制御部102、予混バイパス弁制御部103に出力する。また、燃料制御部102は、負荷遮断後の目標負荷等に基づいてCSOを算出する。
燃料制御部102は、例えば、負荷遮断後の経過時間に応じた燃料流量調節弁V1の弁開度を定めた関数Fx102を有しており、タイマ104から取得した負荷遮断後の経過時間と関数Fx102とに基づいて、燃料流量調節弁V1の開度を算出する。燃料制御部102は、算出した燃料流量調節弁V1の開度に対応する弁開度指令値を出力する。関数Fx102は、例えば、負荷遮断後0〜1秒の間の所定の値(例えば、0.5秒)は、燃料流量調節弁V1を全開とし、その後、全閉とすることを示す開度を出力する。負荷遮断後、所定の間だけ燃料流量調節弁V1を全開とするのは、燃焼器13の保炎のためには予混パイロット系統F1の燃料ノズルN1に十分な燃料を供給する必要があるところ、燃料流量調節弁V0を開いて必要な燃料流量が実現するまでの遅れを補償するためである。燃料制御部102は、負荷遮断時に燃料ノズルN1から供給される燃料供給量が確保できるよう燃料流量調節弁V1を全開とする。
【0046】
予混バイパス弁制御部103は、例えば、負荷遮断後の経過時間に応じた燃料供給量の必要量の変動を示す変化指標を算出する関数Fx103を有しており、タイマ104から取得した負荷遮断後の経過時間と関数Fx103とに基づいて、経過時間に応じた燃料流量の変化指標αを算出する。また、予混バイパス弁制御部103は、燃料制御部102が計算した負荷遮断後に必要な全燃料流量を示すCSOに予混パイロット比率を乗じた燃料流量指令値βを算出する。
【0047】
ここで、予混パイロット比率とは、負荷遮断後に全燃料流量のうちどれぐらいの割合を、予混パイロット系統F1に割り当てるかを示す値である。同様に、負荷遮断後に全燃料流量のうちどれぐらいの割合を、メインA系統F3に割り当てるかを示すメイン比率が定められている。これらの値は、
図4の燃空比クライテリアに基づいて定められている。
【0048】
予混バイパス弁制御部103は、燃料流量の経時的な変化を示す変化指標αと燃料流量指令値βとを乗じて、負荷遮断後の経過時間に応じた燃料流量調節弁V0を通じて供給される燃料供給量に対応する燃料流量指令値γを算出する。予混バイパス弁制御部103は、算出した燃料流量指令値γに対応する弁開度指令値を出力する。
【0049】
燃料制御部102は、負荷遮断後の経過時間と関数Fx103とCSOとメイン比率とに基づいて、負荷遮断後のメインA系統F3からの燃料供給量を算出する。
このようにして算出された予混パイロット系統F1からの燃料供給量およびメインA系統F3からの燃料供給量を実現したときの、予混パイロット燃空比とメインA燃空比は
図4の燃空比クライテリアを満足するように設計されている。
【0050】
図7は、本発明に係る第一実施形態における制御の一例を示すフローチャートである。
図7のフローチャートを用いて本実施形態における負荷遮断時の予混パイロット系統F1に対する燃料供給制御の流れについて説明する。
まず、通常の負荷運転時には、燃料制御部102は、燃料流量調節弁V0、燃料流量調節弁V2(拡散パイロット)を閉とし、燃料流量調節弁V1(予混パイロット),V3(メインA),V4(メインB),V5(トップハット)については、CSOと各燃料系統への燃料の配分比に基づいて所望の開度に制御している(例えば、
図3のT0より前の時刻)。ここで、発電プラント1に負荷遮断が生じたとする。すると、負荷遮断検知部101が負荷遮断信号を取得し、負荷遮断を検知する(ステップS11)。負荷遮断検知部101は、燃料制御部102および予混バイパス弁制御部103に負荷遮断の発生を通知し、負荷遮断時の燃料供給制御を行うよう指示を行う。すると、燃料制御部102は、燃料流量調節弁V1の負荷遮断後の初期開度を算出する。また、予混バイパス弁制御部103は、燃料流量調節弁V0の負荷遮断後の初期開度を算出する(ステップS12)。例えば、燃料制御部102は、燃料流量調節弁V1の開度を100%と算出する。また、予混バイパス弁制御部103は、燃料流量調節弁V0の開度を、
図6で説明したようにCSOと、予混パイロット系統F1への配分比と、
関数Fx103と経過時間とに基づいて算出する。
【0051】
次に、燃料制御部102は、ステップS12で算出した弁開度指令値(初期開度)を燃料流量調節弁V1に出力する。予混バイパス弁制御部103は、算出した弁開度指令値(初期開度)を燃料流量調節弁V0に出力する(ステップS13)。これにより、燃料流量調節弁V0を通じて所望の流量の相対的に高密度な燃料が供給されるようになる。燃料流量調節弁V0が全閉から所定の開度に開き、燃料が供給されるまでに遅れが生じるが、燃料流量調節弁V1を全開とすることで、その間の予混パイロット系統F1への燃料供給を補う。これらの制御により、予混パイロット系統F1の失火を防ぐことができる。
【0052】
なお、予混パイロット系統F1以外の燃料系統について、燃料制御部102は、料流量調節弁V3を、CSOにメインA系統F3への配分比を乗じた値に基づく開度で開き、料流量調節弁V2,V4,V5の開度を0%に制御する。
【0053】
その後、燃料制御部102は、タイマ104が計測する時間に基づいて負荷遮断から所定の時間(例えば、0.5秒)が経過するのを待って(ステップS14)、燃料流量調節弁V1を全閉とする(ステップS15)。
一方、予混バイパス弁制御部103は、タイマ104が計測する負荷遮断後の経過時間に応じて、予混パイロット系統F1から噴射される燃料の燃空比が、失火が発生を回避できる燃空比クライテリア以上となるように燃料流量調節弁V0の開度を制御する(ステップS16)。燃料流量調節弁V0の開度の算出方法は、
図6で説明したとおりである。予混バイパス弁制御部103は、負荷遮断後、例えば所定の時間が経過するまで、ステップS16の制御を継続する。
【0054】
同様に燃料制御部102は、メインA系統F3から噴射される燃料の燃空比と予混パイロット系統F1から噴射される燃料の燃空比との関係が、失火の発生を回避できる関係となるように燃料流量調節弁V3の開度を調節する。燃料制御部102は、負荷遮断後、例えば所定の時間が経過するまで、燃料流量調節弁V3の開度制御を継続する。
【0055】
図8は、本発明に係る第一実施形態における燃料調節弁の開度制御の一例を示す第1の図である。
図8に上記のステップS12〜S13、ステップS16の処理による燃料流量調節弁V0の開度の推移を示す。時刻T0に負荷遮断が発生すると、燃料供給量の急速な低下による失火を防ぐため、燃料流量調節弁V0の開度が
図6で説明したように制御される。燃料流量調節弁V0からは密度の高い燃料が、圧力損失が少ない状態で供給される為、燃料流量調節弁V1を介して加熱後の燃料を供給するよりも多くの燃料を供給することができる。なお、負荷遮断後、なるべく早いタイミングで燃料ノズルN1に燃料が供給される必要があるため、
図1を用いて説明したように燃料流量調節弁V0は、予混パイロット用マニホールドPPに近い位置に設けられることが望ましい。
【0056】
図9は、本発明に係る第一実施形態における燃料調節弁の開度制御の一例を示す第2の図である。
図9に上記のステップS12〜S15の処理による燃料流量調節弁V1の開度の推移を示す。上記のとおり、燃料流量調節弁V0を介した燃料供給が安定するまでの間、燃料流量調節弁V1は全開とされ、予混パイロット系統F1から供給される燃料流量を補う。
【0057】
図10は、本発明に係る第一実施形態における制御の効果を説明する図である。
図10に本実施形態の制御の適用前後における予混パイロット系統F1から供給される燃料流量の変化を示す。
図10のグラフの縦軸は燃料流量、横軸は時間を示す。グラフPP1は、本実施形態の燃料ラインL0を介した予混パイロット系統F1への燃料供給を追加した場合の燃料流量を示す。グラフPP2は、燃料ラインL0を介した予混パイロット系統F1への燃料供給を行なわない従来の制御による燃料流量を示す。
図10が示すように、時刻T0に負荷遮断が発生した後、本実施形態に係るグラフPP1が示す燃料流量が、従来の制御によるグラフPP2が示す燃料流量を上回ることが分かる。
【0058】
本実施形態の燃料ラインL0によれば、(1)燃料加熱前の低い温度の燃料を、(2)圧力損失を少なくして予混パイロット系統F1へ供給することができる。つまり、燃料ラインL0により、(1)密度の高い燃料を(2)高い供給圧のまま投入することができる。そのため、燃料ラインL0を介すると、燃料ラインL1以上に燃料を供給することができる。従って、本実施形態の制御方法によれば、負荷遮断直後に燃料ラインL0からの予混パイロット系統F1への燃料供給を追加することで、負荷遮断後の燃料流量の減少を防止し、必要な燃料を確保することができる。また、種火となる予混パイロット系統F1の火炎を安定させ、失火を防ぐことができる。これにより、例えば、圧力供給系統17の燃料供給圧力が低い場合でも、負荷遮断時の失火を抑制し、負荷遮断後の運転を成功させることができる。
【0059】
<第二実施形態>
以下、本発明の第二実施形態による負荷遮断時の制御方法について
図11〜
図12を参照して説明する。
図11は、本発明に係る第二実施形態における制御装置の一例を示すブロック図である。
本発明の第二実施形態に係る構成のうち、第一実施形態に係る発電プラント1の構成と同じものには同じ符号を付し、それぞれの説明を省略する。第二実施形態に係る制御装置100Aは、第一実施形態の構成に加えて補正係数算出部106を備えている。制御装置100Aは、予混バイパス弁制御部103に代えて予混バイパス弁制御部103Aを備える。
補正係数算出部106は、予混バイパス弁制御部103Aが算出する燃料流量調節弁V0の弁開度を大気温度、大気圧力、相対湿度などのガスタービンが吸入する空気の状態を示す環境条件に応じて補正するための補正係数を算出する。また、補正係数算出部106は、燃料流量調節弁V0の弁開度を燃料カロリ、燃料密度などの燃料の性質を示す燃料条件に応じて補正する。予混バイパス弁制御部103Aは、第一実施形態の方法で算出する燃料流量調節弁V0の弁開度に補正係数を乗じて、補正後の弁開度を算出する。なお、補正係数算出部106は、環境条件や燃料条件に応じた補正係数を定めたテーブル(例えば、後述するFx1061〜Fx1064)を有している。
【0060】
図12は、本発明に係る第一実施形態における予混パイロット系統へ供給する燃料の制御方法を説明する図である。
まず、環境条件のうち特に影響が大きい大気温度に関する補正係数の算出について説明を行う。大気温度によって圧縮機11に流入する空気の質量流量は変化する。例えば大気温度が上昇すると空気の密度が低下し、圧縮機11に流入する空気の質量流量が減少する。空気の質量流量が減少すると同じ体積の空気が流入したとしても、燃焼器13に供給される空気の量は低下し、燃空比、火炎温度に影響が生じる。一方、大気温度が低下すると、空気の密度が高くなり、圧縮機11が吸い込む空気の質量流量が増加する。空気の質量流量が増加すると燃空比(Fuel/Air)が低下し、火炎温度が下がる。そこで、本実施形態では、これを補償すべく大気温度に応じて燃料流量調節弁V0の弁開度を補正し、適切な燃空比が実現できるようにする。
【0061】
補正係数算出部106は、例えば、圧縮機11の入口側に設けられた温度センサ(図示せず)から空気入口系統18付近の大気温度を取得する。補正係数算出部106は、補正係数テーブルFx1061から、取得した大気温度に対応する弁開度の補正係数K
1を算出する。補正係数テーブルFx1061の横軸は大気温度、縦軸は弁開度の補正係数である。大気温度が高ければ圧縮機11へ流入する空気の密度が低下するため、それに応じて燃料流量も低下させる必要がある。従って、図示するように補正係数テーブルFx1061には、大気温度が高い程、補正係数K
1の値が小さい値となるよう設定されている。補正係数算出部106は、大気温度に対応する補正係数K
1を予混バイパス弁制御部103Aへ出力する。
【0062】
予混バイパス弁制御部103Aは、負荷遮断後の経過時間をタイマ104から取得して、関数Fx103を用いて負荷遮断後の経過時間に応じた燃料流量の経時的な変化指標αを算出する。予混バイパス弁制御部103Aは、変化指標αに補正係数K
1を乗じて変化指標α
1を算出する。
【0063】
同様にして補正係数算出部106は、大気圧力、燃料密度、燃料カロリに応じた補正係数を算出してもよい。例えば、大気圧力の場合、補正係数テーブルFx1062に示すように補正係数(縦軸)は、大気圧力(横軸)と正の相関を有するように設定される。補正係数算出部106は、補正係数テーブルFx1062から、大気圧力に対応する弁開度の補正係数K
2を算出する。補正係数算出部106は、補正係数K
2を予混バイパス弁制御部103Aへ出力する。予混バイパス弁制御部103Aは、変化指標α
1に補正係数K
2を乗じて変化指標α
2を算出する。
【0064】
燃料カロリについては、補正係数テーブルFx1063に示すように、補正係数(縦軸)は、燃料カロリ(横軸)と負の相関を有するように設定される。補正係数算出部106は、補正係数テーブルFx1063から、燃料カロリに対応する弁開度の補正係数K
3を算出する。予混バイパス弁制御部103Aは、変化指標α
2に補正係数K
3を乗じて変化指標α
3を算出する。
【0065】
燃料密度については、補正係数テーブルFx1064に示すように、補正係数(縦軸)は、燃料密度(横軸)と負の相関を有するように設定される。補正係数算出部106は、補正係数テーブルFx1064から、燃料密度に対応する弁開度の補正係数K
4を算出する。予混バイパス弁制御部103Aは、変化指標α
3に補正係数K
4を乗じて変化指標α
4を算出する。
【0066】
予混バイパス弁制御部103Aは、変化指標α
4と燃料流量指令値βとを乗じて、負荷遮断後の経過時間に応じた燃料流量指令値γ´を算出する。予混バイパス弁制御部103Aは、算出した燃料流量指令値γ´に対応する燃料流量調節弁V0に対する弁開度指令値を出力する。
【0067】
なお、
図12では上記の4つのパラメータに基づいて燃料流量調節弁V0に対する補正係数を算出する場合を例に説明を行ったがこれに限定されない。例えば、補正係数算出部106は、さらに大気湿度に応じた補正係数を算出してもよい。また、上記の全てのパラメータについて補正係数を算出する実施形態に限定されず、補正係数算出部106は、大気温度、大気圧力、大気湿度、燃料密度、燃料カロリ等のうち一つ又は複数の任意のパラメータについての補正係数を算出し、予混バイパス弁制御部103Aは、それらの補正係数を変化指標αに乗じて燃料流量調節弁V0の弁開度指令値を算出するように構成されていてもよい。また、燃料制御部102は、補正係数算出部106が算出した補正係数を乗じて、メインA系統F3の燃料流量調節弁V3の弁開度を算出してもよい。
【0068】
次に第二実施形態における負荷遮断時の予混パイロット系統F1に対する燃料供給制御の流れについて、
図7を参照しつつ説明を行う。本実施形態では、ステップS12、ステップS16の処理で、
図12を用いて説明した大気温度等に応じた燃料流量調節弁V0の弁開度指令値の補正を行う。全体の処理の流れや他のステップにおける処理については第一実施形態と同様である。
【0069】
本実施形態によれば、大気温度、大気圧力、燃料カロリ等に応じた燃料流量調節弁V0の弁開度を算出することができる。これにより、負荷遮断時の様々な環境条件や燃料条件に適切に対応し、より確実に失火を防ぐことができる。
【0070】
<第三実施形態>
以下、本発明の第三実施形態によるガスタービン燃焼制御装置を
図13〜
図15を参照して説明する。第三実施形態は、第一実施形態〜第二実施形態の何れとも組み合わせることが可能であるが、第一実施形態と組み合わせた場合を例に説明を行う。
図13は、本発明に係る第三実施形態における制御装置の一例を示すブロック図である。本発明の第三実施形態に係る構成のうち、第一実施形態、第二実施形態に係る発電プラント1の構成と同じものには同じ符号を付し、それぞれの説明を省略する。第三実施形態に係る制御装置100Bは、第一実施形態の構成に加えて学習部107を備えている。制御装置100Bは、予混バイパス弁制御部103に代えて予混バイパス弁制御部103Bを備える。
【0071】
学習部107は、予混バイパス弁制御部103Bが算出する燃料流量調節弁V0の弁開度をガスタービン10の実際の動作に合わせて調整する機能を有している。例えば、学習部107は、負荷遮断が生じる度に実際の予混パイロット燃空比およびメインA燃空比の関係と、
図4で例示した燃空比クライテリアとの偏差に基づいて、調整係数k(t)を学習する(学習機能107b)。また、学習部107は、次に負荷遮断が発生したときに学習した調整係数k(t)を予混バイパス弁制御部103Bに出力する(調整機能107a)。
予混バイパス弁制御部103Bは、第一実施形態の方法で算出する弁開度に調整係数k(t)を乗じて、調整後の弁開度を算出する。
【0072】
図14は、本発明に係る第三実施形態における予混パイロット系統へ供給する燃料の制御方法を説明する図である。
(学習機能)
学習部107の学習機能107bについて説明する。学習部107は、負荷遮断が生じる度に、予混パイロット燃空比と、メインAの燃空比を算出する。例えば、学習部107は、燃料ノズルN1の上流側の圧力センサと下流側の圧力センサの計測値から燃料ノズルN1への燃料流量を算出する。また、例えば、学習部107は、IGV15の開度、大気温度、大気圧等に基づいて、燃料ノズルN1への空気流量を算出する。学習部107は、燃料ノズルN1への燃料流量を燃料ノズルN1への空気流量で除算して燃料ノズルN1に対応する燃空比(予混パイロット燃空比)を算出する。
【0073】
同様にして、学習部107は、例えば、燃料ノズルN3の上流側と下流側の圧力センサの計測値から燃料ノズルN3への燃料流量を算出し、IGV15の開度等に基づいて、燃料ノズルN3への空気流量を算出する。学習部107は、燃料ノズルN3への燃料流量を燃料ノズルN3への空気流量で除算して燃料ノズルN3に対応する燃空比(メインA燃空比)を算出する。学習部107は、実際のメインA燃空比と予混パイロット燃空比との関係を記憶部105に記録する(
図14のグラフC3)。
【0074】
そして、学習部107は、予め用意してある燃空比クライテリアCriとグラフC3を比較し、予混パイロット燃空比が燃空比クライテリアCriに到達しない場合、その偏差を算出する。学習部107は、負荷遮断後の経過時間ごとに偏差ΔCを算出し、経過時間と対応付けて偏差ΔCを記憶部105に記録する。
【0075】
学習部107は、例えば、以下の式(1)によって各時刻における調整係数を学習する。
k(t)new=k(t)now+K×(実際の予混パイロット燃空比(t)−
目標予混パイロット燃空比(t))・・・(1)
ここで、tは負荷遮断からの経過時間、k(t)newは学習後の経過時間tにおける新たな調整係数、k(t)nowは経過時間tにおける学習前の最新の調整係数、Kは学習の効き目を定める所定の定数、実際の予混パイロット燃空比(t)は時間tにおける上記の手順で算出した予混パイロット燃空比、目標予混パイロット燃空比(t)は、実際の予混パイロット燃空比(t)と実際のメインA燃空比(t)に対応する燃空比クライテリアCriの予混パイロット燃空比の値(実際のメインA燃空比(t)と同じX軸方向の値を持つ位置でのグラフCriのY軸の値)である。
このようにして、調整係数k(t)を学習することにより、燃空比クライテリアに到達する予混パイロット燃空比を保つための調整係数を得ることができる。負荷遮断が生じると、学習部107は、k(t)の値を更新する。
【0076】
(調整機能)
学習部107の調整機能107aについて説明する。学習部107は、次に負荷遮断が生じると、記憶部105を参照し、タイマ104が計測した経過時間に基づいて、学習の結果得られた最新の調整係数k(t)を読み出して取得する。学習部107は取得した調整係数k(t)を予混バイパス弁制御部103Bに出力する。
【0077】
予混バイパス弁制御部103Bは、負荷遮断後の経過時間を取得して、関数Fx103を用いて負荷遮断後の経過時間に応じた燃料流量の変化指標αを算出する。予混バイパス弁制御部103Bは、変化指標αに経過時間ごとの調整係数k(t)を乗じて変化指標α´´を算出する。予混バイパス弁制御部103Bは、変化指標α´´と燃料流量指令値βとを乗じて、負荷遮断後の経過時間に応じた燃料流量指令値γ´´を算出する。予混バイパス弁制御部103Bは、算出した燃料流量指令値γ´´に対応する燃料流量調節弁V0に対する弁開度指令値を出力する。
【0078】
予混バイパス弁制御部103Bは、さらに第二実施形態の補正係数算出部106が算出した大気温度、大気圧力、大気湿度、燃料密度、燃料カロリ等に応じた補正係数を乗じて、燃料流量調節弁V0に対する弁開度指令値を環境条件や燃料条件にあわせて補正することができる。
【0079】
次に第三実施形態における負荷遮断時の予混パイロット系統F1に対する燃料供給制御の流れについて、
図7を参照しつつ説明を行う。本実施形態では、ステップS12、ステップS16の処理で、
図14を用いて説明した調整係数による燃料流量調節弁V0の弁開度指令値の補正を行う。全体の処理の流れや他のステップにおける処理については第一実施形態と同様である。次に学習機能107bの処理の流れについて説明する。
【0080】
図15は、本発明に係る第三実施形態における弁開度調整係数の学習処理の一例を示すフローチャートである。
まず、発電プラント1に負荷遮断が生じたとする。すると、負荷遮断検知部101が負荷遮断を検知する(ステップS21)。すると、予混バイパス弁制御部103Bが
図6で説明した料流量調節弁V0の制御を開始する。すると、学習部107が、予混パイロット燃空比、メインA燃空比を所定の時間ごとに算出し、記憶部105に記録する(ステップS22)。ステップS22の処理は、ステップS12、ステップS16の処理と並行して行われる。これ以降の処理は、ステップS12、ステップS16の処理と並行して、あるいは、負荷遮断時の運転後に行われる。
【0081】
次に学習部107は、記憶部105に記録された燃空比クライテリアが示す予混パイロット比の目標値と、ステップS22で記録した負荷遮断後の経過時間ごとの予混パイロット比との偏差ΔCを算出する(ステップS23)。次に学習部107は、上記の式(1)によって、調整係数k(t)を更新する(ステップS24)。
なお、式(1)について、実際の予混パイロット燃空比と目標予混パイロット燃空比の偏差ΔCは、実際の予混パイロット火炎温度の計算値と目標予混パイロット火炎温度の計算値との偏差でもよい。あるいは、実際の予混パイロット燃空比および実際の車室12の温度に基づく値(例えば、予混パイロット燃空比と車室12の温度を入力値とする関数の出力値)とその目標値との偏差でもよい。
【0082】
本実施形態によれば、負荷遮断を実施するたびに、より最適な燃料流量調節弁V0の弁開度を実現するための調整係数を学習することができ、失火の可能性を低減することができる。また、例えば、発電プラント1の経年変化や、運転環境および負荷条件などのプラントの特性を反映した調整係数を学習することにより、失火を回避しつつ、負荷遮断後の運転をより適切に制御することができる。
【0083】
上記の第一実施形態〜第三実施形態では、燃料ラインL0および燃料ラインL1を通じた予混パイロット系統F1への燃料の供給を負荷遮断時に行う場合を挙げたが、各実施形態の適用先は負荷遮断に限定されない。例えば、急速に負荷を低下させる運用で、燃料の供給量を低下させる制御と組合せて用いることができる。急速に負荷を低下させるとは、例えば、ガスタービン10の負荷低下速度が100%毎分より高速の場合である。
【0084】
図16は、本発明の各実施形態における制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える例えばPC(Personal Computer)やサーバ端末装置である。上述の制御装置100、100A、100Bは、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶部105に対応する記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0085】
なお、少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置903は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、入出力インタフェース904を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等が挙げられる。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0086】
上記の負荷遮断検知部101と、燃料制御部102と、予混バイパス弁制御部103,103A,103Bと、タイマ104と、記憶部105と、補正係数算出部106と、学習部107の全て又は一部は、マイコン、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0087】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0088】
第1ノズルは燃料ノズルN1の一例、第2ノズルは燃料ノズルN3の一例、燃料ラインL1は燃料供給流路の一例、燃料ラインL0はバイパス流路の一例、燃料流量調節弁V0はバイパス燃料流量調節弁の一例、燃料流量調節弁V1は第1燃料流量調節弁の一例、燃空比クライテリアは失火が生じる前記第1ノズルの燃空比および前記第2ノズルの燃空比の関係を示す情報の一例である。ラインL3は、ドレンの排出流路の一例である。燃料供給システムは、制御装置100、燃料ラインL0、燃料ラインL1、燃料系統F1〜F5を含んで構成される。