(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記の一般式(2)で表されるアミノ酸塩化合物が、エチレンイミン−2−カルボン酸ナトリウム塩、アゼチジン−2−カルボン酸ナトリウム塩、アゼチジン−3−カルボン酸ナトリウム塩、ピロリジン−2−カルボン酸ナトリウム塩、ピロリジン−3−カルボン酸ナトリウム塩、ピペリジン−2−カルボン酸ナトリウム塩、ピペリジン−3−カルボン酸ナトリウム塩、ピペリジン−4−カルボン酸ナトリウム塩、およびこれらのカルボン酸のカリウム塩からなる群から選ばれたものである、請求項1に記載の酸性ガス吸収剤。
上記の一般式(3)または(3’)で表される環状アミン化合物が、2−アゼチジルメタノール、2−(2−アミノエチル)アゼチジン、2−ピロリジルメタノール、2−(2−アミノエチル)ピロリジン、4−ヒドロキシピペリジン、2−ピペリジンメタノール、3−ピペリジンエタノール、2−(2−アミノエチル)ピロリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−(ヒドロキシメチル)ピペラジンからなる群から選ばれたものである、請求項4に記載の酸性ガス吸収剤。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
以下の実施態様では、主として、酸性ガスが二酸化炭素である場合を例に説明するが、本発明の実施形態に係る酸性ガス吸収剤は、硫化水素等、その他の酸性ガスに関しても同様の効果を得ることができる。実施態様による酸性ガス吸収剤は、二酸化炭素、硫化水素等の酸化性ガスの吸収に特に適している。
【0019】
〔第一の酸性ガス吸収剤〕
本発明の実施形態による第一の酸性ガス吸収剤は、下記の一般式(1)で表される特定のアミン化合物と、下記の一般式(2)で表される特定のアミノ酸塩化合物とを含んでなることを特徴とするものである。
【0020】
<アミン化合物>
本発明の実施形態の第一の酸性ガス吸収剤は、必須成分として、下記の一般式(1)で表されるアミン化合物を含んでなるものである。
【化5】
【0021】
〔ここで、R
1は、置換または非置換の炭素数1〜4のアルキル基を表す。R
2は、ヒドロキシル基がこのR
2の末端の炭素原子に隣接する炭素原子に結合している、炭素数3〜5のヒドロキシアルキル基を表す。R
3は、ヒドロキシル基が結合した炭素数2〜3の直鎖状または分岐状のヒドロキシアルキル基を表す。nは、1あるいは2である。〕
上記一般式(1)中、R
1のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を用いることができる。特に好ましくはメチル基またはエチル基である。
【0022】
R
2は、ヒドロキシル基がこのR
2の末端の炭素原子に隣接する炭素原子に結合している、炭素数3〜5のヒドロキシアルキル基である。すなわち、R
2は、炭素数がmのアルキル基の(m−1)位の炭素原子にヒドロキシ基が結合した、炭素数3〜5のヒドロキシアルキル基である。R
2としては、好ましくは、例えば、2−プロパノールに対応する2‐ヒドロキシプロピル、2−ブタノールに対応する2−ヒドロキシブチル、2−ペンタノールに対応する2−ヒドロキシペンチルなどが挙げられる。
【0023】
R
3は、ヒドロキシル基が結合した炭素数2〜3の直鎖状または分岐状のヒドロキシアルキル基(ただし、R
2に該当するものを除く)である。R
3としては、好ましくは、例えば、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基などが挙げられる。
【0024】
一般式(1)のアミン化合物としては、好ましくは、例えば、
1−[(2−ヒドロキシエチル)メチルアミノ]−2−プロパノール、
1−[(2−ヒドロキシエチル)エチルアミノ]−2−プロパノール、
1−[(2−ヒドロキシエチル)プロピルアミノ]−2−プロパノール、
1−[(2−ヒドロキシエチル)ブチルアミノ]−2−プロパノール、
1−[(3−ヒドロキシプロピル)メチルアミノ]−2−プロパノール、
1−[(3−ヒドロキシプロピル)エチルアミノ]−2−プロパノール、
1−[(3−ヒドロキシプロピル)プロピルアミノ]−2−プロパノール、
1−[(3−ヒドロキシプロピル)ブチルアミノ]−2−プロパノール、
4−[(2−ヒドロキシエチル)メチルアミノ]−2−ブタノール、
4−[(2−ヒドロキシエチル)エチルアミノ]−2−ブタノール、
4−[(2−ヒドロキシエチル)プロピルアミノ]−2−ブタノール、
4−[(2−ヒドロキシエチル)ブチルアミノ]−2−ブタノール、
4−[(3−ヒドロキシプロピル)メチルアミノ]−2−ブタノール、
4−[(3−ヒドロキシプロピル)エチルアミノ]−2−ブタノール、
4−[(3−ヒドロキシプロピル)プロピルアミノ]−2−ブタノール、
4−[(3−ヒドロキシプロピル)ブチルアミノ]−2−ブタノールなどが挙げられる。
【0025】
これらの化合物の一種を単独で、あるいは二種以上を併用することができる。
酸性ガス吸収剤に含まれる一般式(1)で表される特定のアミン化合物の含有量は、10〜60質量%であることが好ましい。
【0026】
一般に、アミン成分の濃度が高い方が単位容量当たりの二酸化炭素の吸収量、脱離量が多く、また二酸化炭素の吸収速度、脱離速度が速いため、エネルギー消費の面やプラント設備の大きさ、処理効率の面においては好ましい。
【0027】
しかし、アミン成分の濃度が高すぎると、吸収液の粘度の上昇などが起こることがある。一般式(1)のアミン化合物の含有量が60質量%以下の場合、そのような傾向は見られない。また、一般式(1)のアミン化合物の含有量を10質量%以上とすることで、十分な二酸化炭素の吸収量、吸収速度を得ることができ、優れた処理効率を得ることができる。
【0028】
一般式(1)のアミン化合物の含有量が10〜60質量%の範囲にある酸性ガス吸収剤は、二酸化炭素回収用として用いた場合、二酸化炭素吸収量および二酸化炭素吸収速度が高いだけでなく、二酸化炭素脱離量および二酸化炭素脱離速度も高いため、二酸化炭素の回収を効率的に行える点で有利である。一般式(1)のアミン化合物の含有量は、より好ましくは20〜50質量%である。
【0029】
<アミノ酸塩化合物>
従来より、アミノ酸塩を吸収液として使用することが知られている。しかし、酸性ガスの吸収量や放散性の更なる向上が求められている。
【0030】
本発明者らは、特定の環状構造のアミノ酸塩がアミノ化合物を主剤とする吸収液の反応促進剤として作用し、酸性ガスの吸収量や放散性を向上させることを見いだした。
【0031】
本発明の実施形態の酸性ガス吸収剤で用いられるアミノ酸塩化合物は、下記の一般式(2)で表されるものである。
【化6】
【0032】
〔ここで、Mは、アルカリ金属を表す。R
4およびR
5は、各々独立に、炭素数0〜4のアルキレン基を表し、そのいずれかの炭素原子には、それぞれ、カルボン酸塩基または炭素数1〜4のアルキル基が結合していてもよい。ただし、R
4とR
5のアルキレン基の炭素数の合計は1以上4以下である。〕
Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の任意のアルカリ金属でありえるが、本発明の実施形態では、ナトリウムおよびカリウムが、アミノ酸塩の分子量が大きくなりすぎない点で特に好ましい。
【0033】
R
4およびR
5は、各々独立に、炭素数0〜4のアルキレン基を表す。ここで、炭素数0のアルキレン鎖とは、具体的には、R
4(あるいはR
5)が存在せず、CHの炭素原子とNHの窒素原子とが他の原子等が介在することなく結合していることを意味している。例えば、R
4がこのように炭素数0のアルキレン鎖である場合、CHの炭素原子とNHの窒素原子とが他の原子等が介在することなく結合するとともに、R
5としてメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基のいずれかを介してCHの炭素原子とNHの窒素原子とが結合して、環が形成されているものとなる。
【0034】
これらのアルキレン基R
4あるいはR
5(即ち、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基)は、その水素原子の一部が炭素数1〜3のアルキル基で置換されていてもよい。
【0035】
R
4とR
5のアルキレン鎖の炭素数の合計は1以上4以下が好ましい。特に、炭素数の合計が3以下のものである場合、反応促進効果の点で好ましい。そして、溶解性の観点からは、R
4とR
5の炭素数の合計が1〜3であるものが好ましく、とりわけ炭素数が3のものが好ましい。
【0036】
本発明の実施形態において、好ましいアミノ酸塩の具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。例えば、エチレンイミン−2−カルボン酸ナトリウム塩、アゼチジン−2−カルボン酸ナトリウム塩、アゼチジン−3−カルボン酸ナトリウム塩、ピロリジン−2−カルボン酸ナトリウム塩、ピロリジン−3−カルボン酸ナトリウム塩、4-ヒドロキシピロリジン-2-カルボン酸ナトリウム、ピペリジン−2−カルボン酸ナトリウム塩、ピペリジン−3−カルボン酸ナトリウム塩、ピペリジン−4−カルボン酸ナトリウム塩、およびこれらのカルボン酸のカリウム塩などを挙げることができる。これらの化合物の一種を単独で用いることができ、あるいは二種以上を併用することができる。
【0037】
これらの中でも、特にピロリジン誘導体、ピペリジン誘導体は、酸性ガス吸収剤の二酸化炭素吸収量および吸収速度向上の観点から望ましい。
【0038】
本発明の実施形態の酸性ガス吸収剤は、上記の一般式(2)で表されるアミノ酸塩の少なくとも1種を含んでなる。
【0039】
一般式(2)で示される特定のアミノ酸塩は、ピペラジンのような環状のジアミンに比べて蒸気圧が無視できるほど小さいので、酸性ガス吸収方法ならびに酸性ガス吸収装置の酸性ガス吸収剤として利用した際に、吸収剤の反応装置外への放散を抑制することができる。
【0040】
そして、上記の一般式(2)で示されるアミノ酸塩は、通常の鎖状のアミノ酸塩と構造が異なって、酸性ガス(例えば、二酸化炭素(CO
2)、硫化水素(H
2S)、硫化カルボニル(COS))に対して高い反応性を有しており、かつ水に対する溶解性に優れていることから、酸性ガス吸収時に析出しにくい。
【0041】
したがって、本発明の実施形態による酸性ガス吸収剤は、高い酸性ガス吸収量を有すると共に、酸性ガス吸収時の析出が抑制されている。同時に、吸収剤成分であるアミンの放散性が抑制されているので、大気中に放出されるアミンの量を著しく低減することができる。特に、一般式(2)の環状のαアミノ酸塩(即ち、R
4とR
5のアルキレン鎖の炭素数の合計が1の場合)は、特に溶解性が優れるために、酸性ガス吸収時に析出しにくい。
【0042】
酸性ガス吸収剤に含まれる、一般式(2)で表されるアミノ酸塩化合物の量は、好ましくは1〜20質量%、特に好ましくは5〜15質量%、である(酸性ガス吸収剤の全量を100質量%とする)。酸性ガス吸収剤に含まれる一般式(2)のアミノ酸塩の含有量が1質量%未満であると、酸性ガスの吸収速度を向上させる効果を十分に得られないおそれがある。上記の特定のアミン酸の含有量が20質量%を超えると、吸収剤の粘度が過度に高くなり、かえって反応性が低下するおそれがある。
【0043】
このように、一般式(2)のアミノ酸塩化合物と、一般式(1)のアミン化合物と含む本発明の実施形態の酸性ガス吸収剤は、単位モル当たり酸性ガス(特に、二酸化炭素)の吸収量や、酸性ガス吸収剤の単位体積当たりの酸性ガス吸収量および酸性ガス吸収速度がより一層向上したものである。かつ、酸性ガスを分離するエネルギー(酸性ガスの脱離エネルギー)が低下されているので、酸性ガス吸収剤を再生させる際のエネルギーを低減することができる。
【0044】
さらに、酸性ガス吸収剤は、必要に応じて、ピペラジンなどの環状アミン化合物を含むことができる。
【0045】
<他の成分(任意成分等)>
本発明の実施形態による酸性ガス吸収剤は、一般式(1)のアミンと一般式(2)で表されるアミノ酸塩化合物とを含むものであって、例えば水等の溶媒と、必要に応じて各種の補助材料等と混合したうえで、例えば酸性ガス吸収方法ないし酸性ガス吸収装置の酸性ガス吸収剤として好適なものである。ここで、補助材料の具体例には、例えば、酸化防止剤、pH調整剤、消泡剤、防食剤等が包含される。
【0046】
溶媒として水を用いる時、その含有量は、好ましくは20〜60質量%、特に好ましくは30〜60質量%、である(酸性ガス吸収剤の全量を100質量%とする)。水の含有量がこの範囲内である場合、吸収液の粘度の上昇を抑制し、また二酸化炭素を吸収する際における泡立ちを抑制する点で好ましい。
【0047】
酸化防止剤の好ましい具体例としては、例えばジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、エリソルビン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、二酸化硫黄、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール等を挙げることができる。酸化防止剤を用いる場合、その含有量は、好ましくは0.01〜1質量%、特に好ましくは0.1〜0.5質量%、である(酸性ガス吸収剤の全量を100質量%とする)。酸化防止剤は、酸性ガス吸収剤の劣化を防止し、その寿命を向上させることができる。
【0048】
消泡剤の好ましい具体例としては、例えばシリコーン系消泡剤、有機系消泡剤を挙げることができる。消泡剤を用いる場合、その含有量は、好ましくは0.00001〜0.001質量%、特に好ましくは0.0005〜0.001質量%、である(酸性ガス吸収剤の全量を100質量%とする)。消泡剤は、酸性ガス吸収剤の泡立ちを防止し、酸性ガスの吸収効率や離脱効率の低下を抑制し、酸性ガス吸収剤の流動性ないし循環効率の低下等を防止することができる。
【0049】
防食剤の好ましい具体例としては、例えばリン酸エステル類、トリルトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類を挙げることができる。防食剤を用いる場合、その含有量は、好ましくは0.00003〜0.0008質量%、特に好ましくは0.00005〜0.005質量%、である(酸性ガス吸収剤の全量を100質量%とする)。このような防食剤は、プラント設備の腐蝕を防止し、その寿命を向上させることができる。
【0050】
また、本発明の実施形態による酸性ガス吸収剤においては、必要に応じて、アミノアルコールを適宜混合して用いることができる。アミノアルコールの使用によって、酸性ガス吸収剤の例えば吸収量、放出量、吸収速度等の改良ないし向上を図ることが可能となる。
【0051】
好適なアミノアルコールとしては、例えば、モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−ジプロパノール、ジエタノールアミン、ビス(2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)アミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノ−1−メチルエタノール、2−メチルアミノエタノール、2−エチルアミノエタノール、2−プロピルアミノエタノール、n−ブチルアミノエタノール、2−(イソプロピルアミノ)エタノール、3−エチルアミノプロパノール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。これらの化合物の一種を単独で用いることができ、あるいは二種以上を併用することができる。
【0052】
これらの中でも、アルカノールアミン類としては、一般式(1)のアミン化合物と酸性ガスとの反応性をより向上させる観点から、2−(イソプロピルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0053】
これらのアミノアルコールを用いる場合、その使用量は、一般式(1)で表されるアミン化合物の100体積%に対して、1〜30体積%が好ましい。
【0054】
以上のとおり、本実施形態の酸性ガス吸収剤によれば、二酸化炭素等の酸性ガスの吸収量を高くすることができ、また反応促進剤の放散性を小さくすることができる。そして、酸性ガスの回収に必要とするエネルギーが少ない。さらに、極性基である水酸基を分子中に複数個有するアミン化合物を用いており、放散性が抑制されているので、反応装置外への放散が抑制されている。このことから、蒸気圧が低い反応促進剤を組み合わせて用いた際にも、長期間にわたって安定的に酸性ガスの処理を行うことができる。そして、酸性ガス(例えば、二酸化炭素(CO
2)、硫化水素(H
2S)、硫化カルボニル(COS)に対して高い反応性を有しており、かつ水に対する溶解性に優れていることから、酸性ガス吸収時に析出しにくい。
【0055】
〔第二の酸性ガス吸収剤〕
本発明の実施形態による第二の酸性ガス吸収剤は、一般式(1)で表される特定のアミン化合物と、一般式(3)または(3’)で表される環状アミン化合物とを含んでなることを特徴とするものである。
【0056】
<アミン化合物>
本発明の第二の酸性ガス吸収剤は、必須成分として、一般式(1)で表されるアミン化合物を含んでなるものである。なお、第二の酸性ガス吸収剤におけるアミン化合物は、本発明の第一の酸性ガス吸収剤の項において詳述したものを用いることができる。
【0057】
この本発明の実施形態による第二の酸性ガス吸収剤において、一般式(1)で表されるアミン化合物の量は、好ましくは10〜60質量%である(酸性ガス吸収剤の全量を100質量%とする)。
【0058】
一般式(1)で表されるアミン化合物の濃度が高い方が単位容量当たりの酸性ガス吸収量、脱離量が多く、また二酸化炭素の吸収速度、脱離速度が速い。このため、二酸化炭素の回収を効率的に行える点で有利であって、エネルギー消費の面やプラント設備の大きさ、処理効率の面において好ましい。しかし、このアミン化合物の濃度が高すぎると、吸収液に含まれる水が、酸性ガス吸収に対する活性剤としての機能を十分に発揮できなくなる。また、このアミン化合物の濃度が高すぎると吸収液の粘度が上昇するなどが無視できなくなる。
【0059】
<環状アミン化合物>
本発明の実施形態の酸性ガス吸収剤は、下記の一般式(3)または(3’)で表される環状アミン化合物を含んでなるものである。
【化7】
【0060】
〔ここで、R
6およびR
7は、それぞれ、水素原子、水酸基、炭素数1〜8の、ヒドロキシアルキル基またはアミノアルキル基を表す。ただし、式(3)におけるR
6は、水素原子である。式(3’)における2つのR
6のうちの少なくとも1つは水素原子であり、さらに、R
6が2つとも水素原子の場合、R
7の少なくとも1つは、炭素数1〜8の、ヒドロキシアルキル基またはアミノアルキル基である。pは、3〜8の整数である。qは、2〜4の整数である。環状アミン化合物中のヘテロ環は、窒素原子および炭素原子に加えて環中に酸素原子を含むことができる。〕
R
7としては、特に、水素原子、メチル基、水酸基、ヒドロキシメチル基およびヒドロキシエチル基が好ましい。pは、3〜8が好ましく、qは、特に2〜4が好ましい。
【0061】
一般式(3)または(3’)で表される環状アミン化合物としては、好ましくは、例えば、2−アゼチジルメタノール、2−(2−アミノエチル)アゼチジン、2−ピロリジルメタノール、2−(2−アミノエチル)ピロリジン、2−ピペリジンメタノール、3−ピペリジンエタノール、2−(2−アミノエチル)ピロリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−(ヒドロキシメチル)ピペラジン、3−ヒドロキシピロリジン、3−ピロリジンメタノール、2−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、4−ピペリジンエタノール、2−(ヒドロキシメチル)ピペリジン、3−ヒドロキシピペリジン、4−ヒドロキシピペリジンおよび4−(ヒドロキシメチル)ピペリジンなどが挙げられる。
一般式(3)で表される環状アミン化合物と一般式(3’)で表される環状アミン化合物とを併用することができる。
【0062】
本実施形態では、好ましくは、例えばアミン化合物(1)と環状アミン化合物(3)、(3’)からなる吸収剤を例えば水溶液としたものを、酸性ガス吸収剤として用いることができる。このような酸性ガス吸収剤は、単位モル当たりの二酸化炭素吸収量や、酸性ガス吸収剤の単位体積当たりの二酸化炭素吸収量および二酸化炭素吸収速度の点で特に好ましいものである。二酸化炭素吸収後に酸性ガスを分離するエネルギー(酸性ガス脱離エネルギー)も低下し、酸性ガス吸収剤を再生させる際のエネルギーを低減させることができる。
【0063】
さらに、酸性ガス吸収剤は、必要に応じて、一般式(3)、(3’)以外の他の環状アミン化合物を含むことができる。環状アミン化合物としてはアゼチジン、1−メチルアゼチジン、1−エチルアゼチジン、2−メチルアゼチジン、2−アゼチジルメタノール、2−(2−アミノエチル)アゼチジン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、2−メチルピロリジン、2−ブチルピロリジン、ピペリジン、1−メチルピペリジン、2−エチルピペリジン、3−プロピルピペリジン、4−エチルピペリジン、ヘキサヒドロ−1H−アゼピン、ピペラジン、ピぺラジン誘導体等が挙げられる。
【0064】
これらの中でも、特にピぺラジン誘導体は、酸性ガス吸収剤の二酸化炭素吸収量および吸収速度向上の観点から望ましい。
【0065】
ピペラジン誘導体は第二級アミン化合物であり、一般に、第二級アミノ基の窒素原子が二酸化炭素と結合し、カルバメートイオンを形成することで、反応初期段階における吸収速度の向上に寄与する。さらに第二級アミノ基の窒素原子は、これに結合した二酸化炭素を重炭酸イオン(HCO
3−)に転換する役割を担っており、反応後半段階の速度向上に寄与する。
【0066】
ピぺラジン誘導体としては、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジンのうちの少なくとも1種類であることがより好ましい。また、ヘキサメチレンテトラミンも一般式(3)の環状アミン化合物と同様に用いることができる。
【0067】
酸性ガス吸収剤に含まれる、一般式(3)または(3’)で表される環状アミン化合物で表される環状アミン化合物の量は、好ましくは1〜50質量%、3〜50質量%、である(酸性ガス吸収剤の全量を100質量%とする)。酸性ガス吸収剤に含まれる一般式(3)または(3’)の環状アミン化合物の含有量が1質量%未満であると、酸性ガスの吸収速度を向上させる効果を十分に得られないおそれがある。上記の特定の環状アミンの含有量が50質量%を超えると、吸収剤の粘度が過度に高くなり、かえって反応性が低下するおそれがある。
【0068】
また、実施形態に係る酸性ガス吸収剤は、下記のアルカノールアミンを用いることもできる。
【0069】
アルカノールアミンとしては、例えばモノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−ジプロパノール、ジエタノールアミン、ビス(2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)アミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノ−1−メチルエタノール、2−メチルアミノエタノール、2−エチルアミノエタノール、2−プロピルアミノエタノール、n−ブチルアミノエタノール、2−(イソプロピルアミノ)エタノール、3−エチルアミノプロパノール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。
【0070】
これらの中でも、アルカノールアミン類としては、酸性ガスとの反応性をより向上させる観点から、2−(イソプロピルアミノ)エタノール、2−(エチルアミノ)エタノールおよび2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0071】
酸性ガス吸収剤には、上記のアミン化合物および反応促進剤の他に、プラント設備の腐食を防止するためのリン酸系等の防食剤や、泡立ち防止のためのシリコーン系等の消泡剤や、酸性ガス吸収剤の劣化防止のための酸化防止剤等を含有していてもよい。
【0072】
このように、一般式(1)のアミン化合物と、一般式(3)または(3’)の環状アミン化合物と含む本発明の実施形態の酸性ガス吸収剤は、単位モル当たり酸性ガス(特に、二酸化炭素)の吸収量や、酸性ガス吸収剤の単位体積当たりの酸性ガス吸収量および酸性ガス吸収速度がより一層向上したものである。かつ、酸性ガスを分離するエネルギー(酸性ガスの脱離エネルギー)が低下されているので、酸性ガス吸収剤を再生させる際のエネルギーを低減することができる。
【0073】
<他の成分(任意成分等)>
本発明の実施形態による酸性ガス吸収剤は、一般式(1)のアミン化合物と一般式(3)または(3’)で表される環状アミン化合物を含んでなるものであって、例えば水等の溶媒と、必要に応じて各種の補助材料等と混合したうえで、例えば酸性ガス吸収方法ないし酸性ガス吸収装置の酸性ガス吸収剤として好適なものである。ここで、補助材料の具体例には、例えば、酸化防止剤、pH調整剤、消泡剤、防食剤等が包含される。そのような各種の補助材料等としては、本発明の第二の酸性ガス吸収剤の項において詳述したものを用いることができる。
【0074】
溶媒として水を用いる時、その含有量は、好ましくは20〜60質量%、特に好ましくは30〜60質量%、である(酸性ガス吸収剤の全量を100質量%とする)。水の含有量がこの範囲内である場合、吸収液の粘度の上昇を抑制し、また二酸化炭素を吸収する際における泡立ちを抑制する点で好ましい。
【0075】
<酸性ガスの除去方法>
本発明の実施形態による酸性ガスの除去方法は、酸性ガスを含有するガスと、前記の第一または第二の酸性ガス吸収剤とを接触させ、前記の酸性ガスを含むガスから酸性ガスを除去するもの、である。
【0076】
本発明の実施形態による酸性ガスの除去方法は、上述の本発明の実施形態による酸性ガス吸収剤へ対して酸性ガスを吸収させる工程(吸収工程)、およびこの酸性ガスを吸収した上述の本発明の実施形態による酸性ガス吸収剤から酸性ガスを脱離させる工程を、基本的な構成とする。
【0077】
即ち、本発明の実施形態による酸性ガスの除去方法の基本的な構成は、酸性ガス吸収剤に、酸性ガスを含有するガス(例えば、排ガス等)を接触させて、酸性ガス吸収剤に、酸性ガスを吸収させる工程(酸性ガス吸収工程)と、上記の酸性ガス吸収工程で得られた、酸性ガスが吸収された酸性ガス吸収剤を加熱して、酸性ガスを脱離して、除去する工程(酸性ガス分離工程)とを含む。
【0078】
酸性ガスを含むガスを、上記の酸性ガス吸収剤を含む水溶液に接触させる方法は、特に限定されないが、例えば、酸性ガス吸収剤中に酸性ガスを含むガスをバブリングさせて、吸収剤に酸性ガスを吸収させる方法、酸性ガスを含むガス気流中に酸性ガス吸収剤を霧状に降らす方法(噴霧ないしスプレー方式)、あるいは磁製や金属網製の充填材の入った吸収器内で酸性ガスを含むガスと酸性ガス吸収剤とを向流接触させる方法などによって行うことができる。
【0079】
酸性ガスを含むガスを水溶液に吸収させる時の酸性ガス吸収剤の温度は、通常、室温から60℃以下が好ましい。より好ましくは50℃以下、特に好ましくは20〜45℃、である。低温度で行うほど、酸性ガスの吸収量は増加するが、処理温度の下限値は、プロセス上のガス温度や熱回収目標等によって決定することができる。酸性ガス吸収時の圧力は、通常、ほぼ大気圧である。吸収性能を高めるためより高い圧力まで加圧することもできるが、圧縮のために要するエネルギー消費を抑えるため大気圧下で行うのが好ましい。
【0080】
酸性ガスを吸収した酸性ガス吸収剤から酸性ガスを分離し、純粋なあるいは高濃度の二酸化炭素を回収する方法としては、蒸留と同じく酸性ガス吸収剤を加熱して釜で泡立てて脱離する方法、棚段塔、スプレー塔、磁製や金属網製の充填材の入った再生塔内で液界面を広げて加熱する方法などが挙げられる。これにより、カルバミン酸アニオンや重炭酸イオンから酸性ガスが遊離して放出される。
【0081】
酸性ガス分離時の酸性ガス吸収剤の温度は、通常70℃以上であり、好ましくは80℃以上、より好ましくは90〜120℃、である。温度が高いほど、酸性ガスの脱離量は増加するが、温度を上げると吸収液の加熱に要するエネルギーが増すため、その温度はプロセス上のガス温度や熱回収目標等によって決定することができる。酸性ガス脱離時の圧力は、通常、1〜3気圧程度とすることができる。脱離性能を高めるためより低い圧力まで減圧することもできるが、減圧のために要するエネルギー消費を抑えるためこの範囲で行うのが好ましい。
【0082】
酸性ガスを分離した後の酸性ガス吸収剤は、再び酸性ガス吸収工程に送られて循環使用(リサイクル)することができる。また、酸性ガス吸収の際に生じた熱は、一般的には水溶液のリサイクル過程において再生器に注入される水溶液の予熱のために熱交換器で熱交換されて冷却される。
【0083】
このようにして回収された酸性ガスの純度は、通常、95〜99体積%程度と極めて純度が高いものである。この純粋な酸性ガスあるいは高濃度の酸性ガスは、化学品、あるいは高分子物質の合成原料、食品冷凍用の冷剤等として用いることができる。その他、回収した酸性ガスを、現在技術開発されつつある地下等へ隔離貯蔵することも可能である。
【0084】
上述した工程のうち、酸性ガス吸収剤から酸性ガスを分離して酸性ガス吸収剤を再生する工程が最も多量のエネルギーを消費する部分であり、この工程で、全体工程の約50〜80%程度のエネルギーが消費されることがある。従って、酸性ガス吸収剤の再生工程における消費エネルギーを低減することにより、酸性ガスの吸収分離工程のコストを低減でき、排気ガスからの酸性ガス除去を、経済的に有利に行うことができる。
【0085】
本実施形態によれば、上記の実施形態の酸性ガス吸収剤を用いることで、酸性ガス脱離(再生工程)のために必要なエネルギーを低減することができる。このため、二酸化炭素の吸収分離工程を、経済的に有利な条件で行うことができる。
【0086】
また、上述した実施形態に係るアミン化合物は、従来より酸性ガス吸収剤として用いられてきた2−アミノエタノール等のアルカノールアミン類と比較して、炭素鋼などの金属材料に対し、著しく高い腐食防止性を有している。したがって、このような酸性ガス吸収剤を用いた酸性ガス除去方法とすることで、例えばプラント建設において、高コストの高級耐食鋼を用いる必要がなくなり、コスト面で有利である。
【0087】
<酸性ガス除去装置>
本発明の実施形態による酸性ガス除去装置は、酸性ガスを含有するガスと、前記の第一または第二の酸性ガス吸収剤とを接触させ、この酸性ガス吸収剤に酸性ガスを吸収させることにより前記の酸性ガスを含有するガスから酸性ガスを除去する吸収器と、
この酸性ガスを吸収した酸性ガス吸収剤から酸性ガスを脱離させて、この酸性ガス吸収剤を再生する再生器とを有し、
前記の再生器で再生した前記の酸性ガス吸収剤を前記の吸収器にて再利用する酸性ガス除去装置であること、を特徴とする。
【0088】
図1は、実施形態の酸性ガス除去装置の概略図である。
この酸性ガス除去装置1は、酸性ガスを含むガス(例えば、排気ガス)と酸性ガス吸収剤とを接触させ、この酸性ガスを含むガスから酸性ガスを吸収させて除去する吸収器2と、酸性ガスを吸収した酸性ガス吸収剤から酸性ガスを分離し、酸性ガス吸収剤を再生する再生器3と、を備えている。以下、酸性ガスが二酸化炭素である場合を例に説明する。
【0089】
図1に示すように、火力発電所等から排出される燃焼排ガス等の、二酸化炭素を含む排気ガスが、ガス供給口4を通って吸収器2下部へ導かれる。この排気ガスは、吸収器2に押し込められ、吸収器2上部の酸性ガス吸収剤供給口5から供給された酸性ガス吸収剤と接触する。酸性ガス吸収剤としては、上述した実施形態に係る酸性ガス吸収剤を使用する。
【0090】
酸性ガス吸収剤のpH値は、少なくとも9以上に調整すればよいが、排気ガス中に含まれる有害ガスの種類、濃度、流量等によって、適宜最適条件を選択することがよい。
【0091】
また、この酸性ガス吸収剤には、上記のアミン系化合物、および水などの溶媒の他に、二酸化炭素の吸収性能を向上させる含窒素化合物、酸化防止剤、pH調整剤等、その他化合物を任意の割合で含有していてもよい。
【0092】
このように、排気ガスが酸性ガス吸収剤と接触することで、この排気ガス中の二酸化炭素が酸性ガス吸収剤に吸収され除去される。二酸化炭素が除去された後の排気ガスは、ガス排出口6から吸収器2外部に排出される。
【0093】
二酸化炭素を吸収した酸性ガス吸収剤は、熱交換器7、加熱器8に送液され、加熱された後、再生器3に送液される。再生器3内部に送液された酸性ガス吸収剤は、再生器3の上部から下部に移動し、この間に、酸性ガス吸収剤中の酸性ガスが脱離し、酸性ガス吸収剤が再生される。
【0094】
再生器3で再生した酸性ガス吸収剤は、ポンプ9によって熱交換器7、吸収液冷却器10に送液され、酸性ガス吸収剤供給口5から吸収器2に戻される。
【0095】
一方、酸性ガス吸収剤から分離された酸性ガスは、再生器3上部において、還流ドラム11から供給された還流水と接触し、再生器3外部に排出される。
【0096】
二酸化炭素が溶解した還流水は、還流冷却器12で冷却された後、還流ドラム11において、二酸化炭素を伴う水蒸気が凝縮した液体成分と分離される。この液体成分は、回収酸性ガスライン13により酸性ガス回収工程に導かれる。一方、酸性ガスが分離された還流水は、還流水ポンプ14で再生器3に送液される。
【0097】
本実施形態の酸性ガス除去装置1によれば、酸性ガスの吸収特性および脱離特性に優れた酸性ガス吸収剤を用いることで、効率の高い酸性ガスの吸収除去を行うことが可能となる。
【0098】
以上、本発明のいくつかの実施形態による第一の酸性ガス吸収剤、第二の酸性ガス吸収剤、酸性ガスの除去方法および酸性ガス除去装置を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更あるいは付加等を行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【実施例】
【0099】
以下、本発明の実施形態について実施例、比較例を参照して更に詳細な説明を行う。
<実施例1>
1−[(2−ヒドロキシエチル)メチルアミノ]−2−プロパノールを45質量%、ピロリジン−2−カルボン酸ナトリウム塩を5質量%となるように水に溶解させ、50mlの水溶液(以下、吸収液と示す。)とした。この吸収液を試験管に充填して40℃に加熱し、二酸化炭素(CO
2)10体積%、窒素(N
2)ガス90体積%含む混合ガスを流速400mL/minで通気して、試験管出口でのガス中の二酸化炭素(CO
2)濃度を赤外線式ガス濃度測定装置(株式会社島津製作所製、商品名「CGT−700」)を用いて測定し、吸収性能を評価した。
なお、吸収速度は、酸性ガスの最大吸収量の1/2における速度であって、
(最大吸収量の1/2) / (最大吸収量の1/2の前後10秒) から算出した。
【0100】
40℃での吸収液の二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.34mol、120℃での二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.04molであり、回収量は0.30molであった。吸収速度は5.3×10
−3mol/mol/minであった。一方、放散性は、窒素ガスを吸収液に流通した際に窒素ガスに同伴されてくる吸収液を採取して濃度を測定した。その結果、放散性は4ppm程度であった。
【0101】
<実施例2>
ピロリジン−2−カルボン酸ナトリウム塩に代えてピペリジン−2−カルボン酸ナトリウム塩を用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量、アミン化合物の回収量、放散量を測定した。
【0102】
40℃での吸収液の二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.32mol、120℃での二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.04molであり、回収量は0.28molであった。吸収速度は5.2×10
−3mol/mol/minであった。一方、放散性は4ppm程度以下であった。
【0103】
<実施例3>
1−[(2−ヒドロキシエチル)メチルアミノ]−2−プロパノールを45質量%、ピロリジン−2−カルボン酸ナトリウム塩3質量%、ピペラジン1質量%を用いた以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量、アミン化合物の回収量、放散量を測定した。
【0104】
40℃での吸収液の二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.37mol、120℃での二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.06molであり、回収量は0.31molであった。吸収速度は5.4×10
−3mol/mol/minであった。一方、放散性は6ppm程度であった。
【0105】
<実施例4>
1−[(2−ヒドロキシエチル)メチルアミノ]−2−プロパノールに代えて2−[(3−ヒドロキシブチル)メチルアミノ]エタノールを用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量、アミン化合物の回収量、放散量を測定した。
40℃での吸収液の二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.33mol、120℃での二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.04molであり、回収量は0.29molであった。吸収速度は5.2×10
−3mol/mol/minであった。一方、放散性は5ppm程度であった。
【0106】
<実施例5>
1−[(2−ヒドロキシエチル)メチルアミノ]−2−プロパノールに代えてメチルアミノジイソプロパノールを用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量、アミン化合物の回収量、放散量を測定した。
40℃での吸収液の二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.33mol、120℃での二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.05molであり、回収量は0.28molであった。吸収速度は5.1×10
−3mol/mol/minであった。一方、放散性は5ppm程度であった。
【0107】
<実施例6>
1−[(2−ヒドロキシエチル)メチルアミノ]−2−プロパノールを30質量%、ピペラジンエタノールを20質量%を用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量、アミン化合物の回収量、放散量を測定した。
40℃での吸収液の二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.41mol、120℃での二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.05molであり、回収量は0.36molであった。吸収速度は9.9×10
−3mol/mol/minであった。一方、放散性は5ppm程度であった。
【0108】
<実施例7>
1−[(2−ヒドロキシエチル)メチルアミノ]−2−プロパノールを20質量%、ピペラジンエタノールを30質量%を用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量、アミン化合物の回収量、放散量を測定した。
40℃での吸収液の二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.51mol、120℃での二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.05molであり、回収量は0.46molであった。吸収速度は11.1×10
−3mol/mol/minであった。一方、放散性は6ppm程度であった。
【0109】
<実施例8>
1−[(3−ヒドロキシプロピル)メチルアミノ]−2−プロパノールを30質量%、ピペラジンエタノールを20質量%を用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量、アミン化合物の回収量、放散量を測定した。
40℃での吸収液の二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.40mol、120℃での二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.05molであり、回収量は0.35molであった。吸収速度は9.0×10
−3mol/mol/minであった。一方、放散性は8ppm程度であった。
【0110】
<実施例9>
1−[(2−ヒドロキシエチル)メチルアミノ]−2−プロパノールを30質量%、4−(ヒドロキシメチル)ピペリジンを20質量%用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量、アミン化合物の回収量、放散量を測定した。
40℃での吸収液の二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.38mol、120℃での二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.05molであり、回収量は0.33molであった。吸収速度は8.5×10
−3mol/mol/minであった。一方、放散性は9ppm程度であった。
【0111】
<実施例10>
1−[(2−ヒドロキシエチル)メチルアミノ]−2−プロパノールを30質量%、ピペラジンエタノールを15質量%、ピペラジン2質量%用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量、アミン化合物の回収量、放散量を測定した。
40℃での吸収液の二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.40mol、120℃での二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.06molであり、回収量は0.34molであった。吸収速度は8.3×10
−3mol/mol/minであった。一方、放散性は7ppm程度であった。
【0112】
<実施例11>
メチルアミノジイソプロパノールを30質量%、ピペラジンエタノールを20質量%用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量、アミン化合物の回収量、放散量を測定した。
40℃での吸収液の二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.40mol、120℃での二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.05molであり、回収量は0.35molであった。吸収速度は9.2×10
−3mol/mol/minであった。一方、放散性は8ppm程度であった。
【0113】
<実施例12>
1−[(2−ヒドロキシエチル)メチルアミノ]−2−プロパノールを30質量%、4−ヒドロキシピペリジンを20質量%を用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸収液を調製し、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量、アミン化合物の回収量、放散量を測定した。
40℃での吸収液の二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.43mol、120℃での二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.08molであり、回収量は0.35molであった。吸収速度は10.6×10
−3mol/mol/minであった。一方、放散性は9ppm程度であった。
【0114】
<比較例1>
メチルイミノジエタノールを45質量%、ピロリジン−2−カルボン酸ナトリウム塩を5質量%となるように水に溶解させ、50mlの水溶液(以下、吸収液と示す。)とした。その後、実施例1と同様の装置を用い、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量、アミン化合物の回収量、放散量を測定した。
40℃での吸収液の二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.28mol、120℃での二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.06molであり、回収量は0.22molであった。吸収速度は4.9×10
−3mol/mol/minであった。一方、放散性は4ppm程度であった。
【0115】
<比較例2>
メチルイミノジエタノール30質量%、ピペラジンエタノールを20質量%となるように水に溶解させ、50mlの水溶液(以下、吸収液と示す。)とした。その後、実施例1と同様の装置を用い、実施例1と同様の装置を用い、同条件下で二酸化炭素吸収量、アミン化合物の回収量、放散量を測定した。
40℃での吸収液の二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.36mol、120℃での二酸化炭素吸収量は、吸収液中のアミン化合物1mol当り0.05molであり、回収量は0.31molであった。吸収速度は8.0×10
−3mol/mol/minであった。一方、放散性は5ppm程度であった。
【0116】
<結 果>
表1に、40℃での二酸化炭素吸収量、120℃における吸収量、及び放散性試験におけるアミン化合物の回収量の測定結果を示す。
表1から明らかなように、本発明の実施形態の実施例の吸収液では、比較例に比べて二酸化炭素吸収量が多く、回収量も多い。さらに、吸収速度が速い。放散性はほぼ同等であった。
【0117】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の酸性ガス吸収剤、酸性ガス除去方法および酸性ガス除去装置によれば、二酸化炭素等の酸性ガスの吸収量を高くすることができる。
【表1】
【表2】