特許第6963531号(P6963531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963531
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】鉄道車両用制振装置
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/24 20060101AFI20211028BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20211028BHJP
   F16F 9/46 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   B61F5/24 F
   F16F9/32 S
   F16F9/46
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-82487(P2018-82487)
(22)【出願日】2018年4月23日
(65)【公開番号】特開2019-188960(P2019-188960A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2020年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴之
【審査官】 立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−267217(JP,A)
【文献】 特開平09−109647(JP,A)
【文献】 特開平11−041777(JP,A)
【文献】 特開2015−155223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 5/24
F16F 9/32
F16F 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両における車体に連結される筒部材と、
一端が前記鉄道車両における台車に連結されるとともに他端が前記筒部材内に移動可能に挿入されるロッドと、
前記ロッドに取り付けられて前記台車の加速度を検知する台車側加速度センサとを備え、
前記台車側加速度センサの信号線が前記筒部材に保持されており、
前記信号線における前記筒部材から前記台車側加速度センサまでの部分が、前記ロッドのフルストロークを許容する長さに設定されている
ことを特徴とする鉄道車両用制振装置。
【請求項2】
前記筒部材に取り付けられて前記車体の加速度を検知する車体側加速度センサを備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用制振装置。
【請求項3】
筒型であって蛇腹部を有して一端が前記ロッドの一端に連結されるとともに他端が前記筒部材のロッド側端に連結されて前記ロッドを覆うダストブーツを備え、
前記信号線の前記部分が前記ダストブーツに取り付けられる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の鉄道車両用制振装置。
【請求項4】
前記信号線の前記部分は、前記ダストブーツの外周に螺旋状に取り付けられている
ことを特徴とする請求項3に記載の鉄道車両用制振装置。
【請求項5】
前記信号線の前記部分は、前記ダストブーツの外周であって前記蛇腹部における山部に取り付けられている
ことを特徴とする請求項3に記載の鉄道車両用制振装置。
【請求項6】
前記信号線の前記部分は、前記ダストブーツの外周であって前記蛇腹部における谷部に取り付けられている
ことを特徴とする請求項3に記載の鉄道車両用制振装置。
【請求項7】
伸縮可能であって前記ロッドの一端と前記筒部材との間に介装されたコイルを備え、
前記信号線の前記部分が前記コイルに巻き付けられて取り付けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の鉄道車両用制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道車両用制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両には、車体と前後の台車との間に介装された複動型の減衰力可変ダンパと、車体の左右方向の加速度を検知する車体側の加速度センサと、台車の左右方向の加速度を検知する台車側の加速度センサと、減衰力可変ダンパを制御するコントローラを備えて、車体の進行方向に対して左右方向の振動を抑制する鉄道車両用制振装置が設けられる場合がある。
【0003】
このような鉄道車両用制振装置では、これら加速度センサで検知した車体と台車の加速度から車体と台車の相対速度を得て、カルノップ則に基づいて減衰力可変ダンパが発生する減衰力を調整して、減衰力可変ダンパをセミアクティブ制御する(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−267217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の鉄道車両用制振装置では、台車に加速度センサを設置する必要があるが、コントローラが車体に設置されている。そのため、コントローラと台車の加速度センサを接続する信号線に車体に対する台車の上下左右変位にも対応できるように充分な長さの余長を設ける必要がある。
【0006】
このように信号線に余長を持たせると、信号線の取り回しが悪くなるために、鉄道車両用制振装置の鉄道車両への搭載性が悪化するとともにコストも増加してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、鉄道車両への搭載性の向上が可能でありコストも低減できる鉄道車両用制振装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の鉄道車両用制振装置は、鉄道車両における車体に連結される筒部材と、一端が鉄道車両における台車に連結されるとともに他端が筒部材内に移動可能に挿入されるロッドと、ロッドに取り付けられて台車の加速度を検知する台車側加速度センサとを備え、台車側加速度センサの信号線がシリンダに保持されており、信号線における筒部材から台車側加速度センサまでの部分が、ロッドのフルストロークを許容する長さに設定されている。このように構成された鉄道車両用制振装置では、台車側加速度センサの信号線が筒部材に保持されており、信号線の余長も短くなるとともに、車体と台車との間に介装しても信号線が車体や台車の他所と干渉する心配もない。
【0009】
また、鉄道車両用制振装置は、筒部材に取り付けられて車体の加速度を検知する車体側加速度センサを備えていてもよい。このように構成された鉄道車両用制振装置では、筒部材に車体側加速度センサを備えているので、鉄道車両用制振装置を車体と台車との間に介装すると、台車側加速度センサと車体側加速度センサの設置と配線も完了するので、車体と台車の他所に加速度センサを設置する手間がかからない。よって、鉄道車両用制振装置の鉄道車両への設置作業が非常に容易になり、台車側加速度センサと車体側加速度センサを含めた鉄道車両用制振装置の取り外しも容易となるのでメンテナンスも容易となる。
【0010】
さらに、鉄道車両用制振装置は、信号線における筒部材から台車側加速度センサまでの部分が蛇腹部を有するダストブーツに取り付けられていてもよく、この場合には、搭載スペースが狭い箇所に設置しても信号線の車体や台車の他所と干渉しないので、より効果的に鉄道車両用制振装置の搭載性を向上できる。
【0011】
また、鉄道車両用制振装置は、信号線における筒部材から台車側加速度センサまでの部分がダストブーツの外周に螺旋状に取り付けていてもよい。この場合には、シリンダに対するロッドの変位によってダストブーツの蛇腹部が伸縮しても、信号線がダストブーツの外径よりも大きくはみ出すように撓まないので、より一層効果的に鉄道車両用制振装置の搭載性を向上できる。さらに、信号線に過大な引張荷重や圧縮荷重が作用しないので信号線の断線も防止できる。なお、信号線は、ダストブーツの蛇腹部の山部や谷部に取り付けられてもよく、同様に鉄道車両用制振装置の搭載性を向上と信号線の断線を防止できる。
【0012】
さらに、鉄道車両用制振装置は、伸縮可能であってロッドの一端と筒部材との間に介装されたコイルを備え、信号線における筒部材から台車側加速度センサまでの部分がコイルに巻き付けられて取り付けられていてもよい。このように構成された鉄道車両用制振装置によれば、搭載スペースが狭い箇所に設置しても信号線の車体や台車の他所と干渉しないので、より効果的に鉄道車両用制振装置の搭載性を向上できる。さらに、コイルの伸縮に伴って信号線に過大な引張荷重や圧縮荷重が作用しないので信号線の断線も防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の鉄道車両用制振装置によれば、鉄道車両への搭載性の向上とコスト低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】鉄道車両用制振装置を搭載した鉄道車両の断面図である。
図2】第一の実施の形態における鉄道車両用制振装置の回路構成を示した図である。
図3】第一の実施の形態における鉄道車両用制振装置の側面図である。
図4】第二の実施の形態における鉄道車両用制振装置の側面図である。
図5】第二の実施の形態の第一変形例における鉄道車両用制振装置の側面図である。
図6】第二の実施の形態の第二変形例における鉄道車両用制振装置の側面図である。
図7】第二の実施の形態の第三変形例における鉄道車両用制振装置の側面図である。
図8】第二の実施の形態の第四変形例における鉄道車両用制振装置の側面図である。
図9】第二の実施の形態の第五変形例における鉄道車両用制振装置の側面図である。
図10】第三の実施の形態における鉄道車両用制振装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図示した実施の形態に基づいて、この発明を説明する。第一の実施形態の鉄道車両用制振装置D1は、鉄道車両の車体Bの制振装置として使用され、図1および図2に示すように、車体Bに連結される筒部材としての外筒2と一端が鉄道車両における台車Tに連結されるとともに他端が外筒2内に移動可能に挿入されるロッド4とを備えたシリンダ装置Cと、ロッド4に取り付けられて台車Tの加速度を検知する台車側加速度センサ30と、外筒2に取り付けられて車体Bの加速度を検知する車体側加速度センサ31と、台車側加速度センサ30に接続される信号線L1を備えている。
【0016】
シリンダ装置Cは、外筒2に対してロッド4が軸方向に相対移動して伸縮でき、外筒2が車体Bの下方に垂下されるピンPに連結されるとともにロッド4が台車Tに連結されて車体Bと台車Tとの間に介装されている。なお、外筒2は、ピンPに対して上下方向への回転が許容されるとともに、ピンPに対して若干の軸方向周りの捩りと若干の車両前後方向への抉りも許容されている。ロッド4も同様に台車Tに対して上下方向への回転が許容されるとともに、ピンPに対して若干の軸方向周りの捩りと若干の車両前後方向への抉りも許容されている。台車Tは、車輪Wを回転自在に保持しており、車体Bと台車Tとの間には、枕ばねと称される懸架ばねSが介装され、車体Bが弾性支持されることにより、台車Tに対する車体Bの横方向への移動が許容されている。
【0017】
そして、シリンダ装置Cは、車体Bから吊り下げられたコントローラ100によって制御されて力を発揮して、車体Bの車両進行方向に対して水平横方向の振動を抑制する。
【0018】
コントローラ100は、台車側加速度センサ30が検知する台車Tの車両進行方向に対して横方向の加速度と車体側加速度センサ31が検知する車体Bの車両進行方向に対して横方向の加速度に基づいて、シリンダ装置Cが発生すべき目標力を求め、シリンダ装置Cに目標力通りの力を発生させる指令を与える。このようにして、鉄道車両用制振装置D1は、コントローラ100から入力される指令に基づいてシリンダ装置Cが発揮する力で車体Bの前記横方向の振動を抑制する。
【0019】
つづいて、シリンダ装置Cの具体的な構成について説明する。なお、シリンダ装置Cは、台車Tに対して複数設けられていてもよい。シリンダ装置Cが複数設けられる場合、コントローラ100で全部のシリンダ装置Cを制御してもよいし、シリンダ装置C毎にコントローラ100を設けてもよい。
【0020】
シリンダ装置Cは、本実施の形態では図2に示すように、シリンダ8と、シリンダ8内に摺動自在に挿入されるピストン3と、シリンダ内に挿入されてピストン3とに連結されるロッド4と、シリンダ8の外周に設けられてシリンダ8との間に作動液体を貯留するタンク7を形成する筒部材としての外筒2と、シリンダ装置Cの伸縮の切換と推力を制御する液圧回路HCとを備えており、片ロッド型のシリンダ装置として構成されている。外筒2およびシリンダ8の図2中左端は、内周にロッド4が摺動自在に挿通されるヘッド部材13によって閉塞され、外筒2およびシリンダ8の図2中右端は、ボトム部材14によって閉塞されている。
【0021】
また、前記ロッド側室5とピストン側室6には、本例では、作動液体として作動油が充填されるとともに、タンク7には、作動油の他に気体が充填されている。なお、タンク7内は、特に、気体を圧縮して充填して加圧状態とする必要は無い。また、作動液体は、作動油以外にも他の液体を利用してもよい。
【0022】
液圧回路HCは、ピストン側室6からロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する整流通路9と、タンク7からピストン側室6へ向かう作動油の流れのみを許容する吸込通路10と、ロッド側室5とタンク7とを接続する排出通路11に設けた開弁圧を変更可能な可変リリーフ弁12とを備えている。
【0023】
可変リリーフ弁12は、本実施の形態では、比例電磁リリーフ弁とされており、供給される電流に応じて開弁圧を調節でき、前記電流が最大となると開弁圧を最小とし、電流の供給がないと開弁圧を最大とするようになっている。可変リリーフ弁12は、ロッド側室5とタンク7とを連通する排出通路11に設けられているので、開弁圧の調節でロッド側室5内の圧力を制御できる。そして、可変リリーフ弁12は、実際には、外筒2およびシリンダ8の一端を閉塞するヘッド部材13に取り付けられて外筒2に取り付けられる。
【0024】
また、このシリンダ装置Cの場合、ロッド4の断面積をピストン3の断面積の二分の一にして、ピストン3のロッド側室5側の受圧面積がピストン側室6側の受圧面積の二分の一になっている。
【0025】
このシリンダ装置Cは、伸長する場合、縮小されるロッド側室5から作動油が排出通路11に設けた可変リリーフ弁12を通じてタンク7へ排出される。また、拡大されるピストン側室6には、吸込通路10を介してタンク7から作動油が供給される。この場合、ロッド側室5の圧力は、可変リリーフ弁12の開弁圧に調節され、ピストン側室6の圧力はタンク圧となるので、シリンダ装置Cは、ピストン3のロッド側室5側の受圧面積に前記開弁圧を乗じた値の前記伸長を妨げる力を発揮する。
【0026】
また、シリンダ装置Cは、収縮する場合、縮小されるピストン側室6から拡大されるロッド側室5へ整流通路9を介して作動油が移動する。シリンダ装置Cの収縮時には、ロッド4がシリンダ8内に侵入するためシリンダ8からロッド4がシリンダ8内に侵入する体積分の作動油が可変リリーフ弁12を通じてタンク7へ排出される。この場合、シリンダ8内の圧力は、可変リリーフ弁12の開弁圧に調節され、シリンダ装置Cは、ピストン3のロッド側室5側の受圧面積とピストン側室6側の受圧面積の差に前記開弁圧を乗じた値の前記収縮を妨げる力を発揮する。
【0027】
前述のように、ロッド4の断面積をピストン3の断面積の二分の一にして、ピストン3のロッド側室5側の受圧面積がピストン側室6側の受圧面積の二分の一になっている。それゆえ、シリンダ装置Cは、伸長しても収縮しても可変リリーフ弁12の開弁圧を等しくすれば、伸長しても収縮しても発揮される力の大きさが等しくなる。そして、可変リリーフ弁12の開弁圧を最小とすると、シリンダ装置Cが発揮する力がごく小さくなる。
【0028】
つづいて、筒部材としての外筒2には、図3に示すように、車体側加速度センサ31が取り付けてある。車体側加速度センサ31とコントローラ100とは信号線L2によって接続されており、車体側加速度センサ31は、信号線L2を介してコントローラ100へ検知した車体Bの加速度信号を入力する。外筒2が車体Bに連結されているので、車体側加速度センサ31を外筒2に取り付けても、車体側加速度センサ31は、車体Bの横方向の加速度を検知できる。車体側加速度センサ31は、図2に示したボトム部材14を介して外筒2に取り付けられてもよい。
【0029】
信号線L2は、外筒2のピンPに対する上下方向の回転と捩りおよび抉りを許容する分の余長を持っているが、コントローラ100と外筒2が車体Bに取り付けられていて、両者の横方向への相対変位がないために信号線L2の余長は短くて済む。なお、図示はしないが、可変リリーフ弁12とコントローラ100とを接続する電源供給ケーブルと信号線も設けられるが、信号線L2と同様の理由でこれらの余長も短くて済む。
【0030】
そして、ロッド4には、台車側加速度センサ30が取り付けてある。台車側加速度センサ30とコントローラ100とは信号線L1によって接続されており、台車側加速度センサ30は、信号線L1を介してコントローラ100へ検知した台車Tの加速度信号を入力する。シリンダ装置Cのストロークは、殆ど車体Bと台車Tの横方向の変位と看做せる。そして、ロッド4が台車Tに連結されているので、台車側加速度センサ30をロッド4に取り付けても、台車側加速度センサ30は、台車Tの横方向の加速度を検知できる。
【0031】
信号線L1は、一端が台車側加速度センサ30に接続されるとともに途中が留め金20,21を介して筒部材としての外筒2に取り付けてあって外筒2に保持される。そして、信号線L1における外筒2保持されている部位の終端から台車側加速度センサ30までの部分としての余長部SLは、シリンダ装置Cには支持されておらず外筒2に対するロッド4のフルストロークを許容できる長さに設定されている。また、信号線L1の外筒2から延びてコントローラ100までの部分は、信号線L2と同様にしてコントローラ100に接続されるので、この部分における余長は短くて済む。なお、信号線L1の外筒2への取り付けは、留め金20,21に限らず結束バンド等の他の取り付け方法を利用してよい。信号線L1の保護のため、筒部材である外筒2を覆うカバーを設けて、信号線L1を筒部材である外筒2と図示しないカバーとの間に収容するようにしてもよい。また、シリンダ8の外周を覆う外筒2を設けない場合、シリンダ8を筒部材として信号線L1をシリンダ8に保持させればよい。
【0032】
このように、信号線L1における余長部SLの長さは、シリンダ装置Cの外筒2に対するロッド4のフルストロークを許容できる長さであればよい。そして、信号線L1が外筒2に保持されているので、鉄道車両用制振装置D1におけるシリンダ装置Cを車体Bと台車Tとの間に介装しても信号線L1が車体Bや台車Tの他所と干渉する心配もない。ここで、車体Bから台車Tまで信号線を設けなくてはならない従来の鉄道車両用制振装置では、信号線が車体Bから台車Tまで渡されているため車体Bと台車Tの横方向の変位に対して必要となる余長は、信号線L1における余長部SLの長さよりも長くなる。換言すれば、本発明の鉄道車両用制振装置D1では、信号線L1の余長を従来の鉄道車両用制振装置における信号線よりも極短くできるのである。
【0033】
コントローラ100は、本実施の形態では、カルノップのスカイフック理論に基づくセミアクティブ制御を実行する。コントローラ100は、まず、台車側加速度センサ30が検知した台車Tの横方向の加速度から台車Tの速度を求め、車体側加速度センサ31が検知した車体Bの横方向の加速度から車体Bの速度を求める。また、コントローラ100は、台車Tの速度と車体Bの速度とからシリンダ装置Cの伸縮速度を求める。
【0034】
このシリンダ装置Cの伸縮速度と車体Bの速度を乗じた値の正である場合には、シリンダ装置Cは車体Bの振動を抑制する方向の力を発揮できる状態である。よって、この場合、コントローラ100は、車体Bの速度にスカイフックゲインを乗じてシリンダ装置Cを制振するための目標力を求める。そして、コントローラ100は、求めた目標力を発揮させるべく、シリンダ装置Cに目標力通りの力を発揮させるように可変リリーフ弁12の開弁圧を調節する。
【0035】
他方、シリンダ装置Cの伸縮速度と車体Bの速度を乗じた値の負である場合には、シリンダ装置Cは車体Bの振動を抑制する方向の力を発揮できない状態である。よって、コントローラ100は、可変リリーフ弁12の開弁圧を最小としてシリンダ装置Cが発揮する力を最小にする。
【0036】
このようにして、コントローラ100に制御されると鉄道車両用制振装置D1は、スカイフックダンパとして機能して、車体Bの振動を抑制できる。
【0037】
以上、説明したように、本発明の鉄道車両用制振装置D1は、鉄道車両における車体Bに連結される外筒(筒部材)2と、一端が鉄道車両における台車Tに連結されるとともに他端が外筒(筒部材)2内に移動可能に挿入されるロッド4と、ロッド4に取り付けられて台車Tの加速度を検知する台車側加速度センサ30とを備え、台車側加速度センサ30の信号線L1が外筒(筒部材)2に保持されている。
【0038】
このように構成された鉄道車両用制振装置D1では、台車側加速度センサ30の信号線L1が外筒(筒部材)2に保持されており、信号線L1の余長も短くなるとともに、シリンダ装置Cを車体Bと台車Tとの間に介装しても信号線L1が車体Bや台車Tの他所と干渉する心配もない。よって、本発明の鉄道車両用制振装置D1によれば、鉄道車両への搭載性の向上が可能でありコストも低減できる。そして、鉄道車両用制振装置を車体Bと台車Tとの間に介装すると、台車側加速度センサ30の設置と配線も完了するので、台車Tの他所に加速度センサを設置する手間がかからない。
【0039】
また、本実施の形態の鉄道車両用制振装置D1では、外筒(筒部材)2に取り付けられて車体Bの加速度を検知する車体側加速度センサ31を備えている。このように構成された鉄道車両用制振装置D1では、外筒(筒部材)2に車体側加速度センサ31を備えているので、鉄道車両用制振装置D1を車体Bと台車Tとの間に介装すると、台車側加速度センサ30と車体側加速度センサ31の設置と配線も完了するので、車体Bと台車Tの他所に加速度センサを設置する手間がかからない。よって、鉄道車両用制振装置D1の鉄道車両への設置作業が非常に容易になり、加速度センサ30,31を含めた鉄道車両用制振装置D1の取り外しも容易となるのでメンテナンスも容易となる。
【0040】
なお、図4に示した第二の実施の形態の鉄道車両用制振装置D2のように、鉄道車両用制振装置D2が鉄道車両用制振装置D1の構成に加えてシリンダ装置Cにダストブーツ33が装着されている場合、信号線L1をダストブーツ33に取り付けてもよい。具体的には、ダストブーツ33は、筒型であって蛇腹部33aを有して一端がロッド4の一端に連結されるとともに他端が筒部材としての外筒2のロッド側端に連結されてロッド4を覆っている。ダストブーツ33は、蛇腹部33aの両端に設けた環状の取付部33b,33cが設けられている。取付部33bは、ロッド4の一端に設けられた環状のブラケット4aの外周に取り付けられ、取付部33cは外筒2のロッド側端の外周にバンド34によって緊迫されて装着されている。よって、ダストブーツ33は、ロッド4の外周を覆ってロッド4への水や埃等の付着を防止してロッド4の外周の摺動面を保護している。
【0041】
そして、信号線L1における外筒2に保持されている部位の終端から台車側加速度センサ30までの部分L1aは、ダストブーツ33に取り付けられている。信号線L1の前記部分L1aは、ダストブーツ33の外周に螺旋状に取り付けられている。より具体的には、図4に示すように、ダストブーツ33の信号線L1の前記部分L1aを収容するチューブ33dを設けて、チューブ33d内に信号線L1における部分L1aを収容して取り付けてもよい。このようにすると、信号線L1がチューブ33dによって保護される。
【0042】
また、図5に示した第二の実施の形態の第一変形例の鉄道車両用制振装置D3ように、ダストブーツ33の蛇腹部33aの外周に信号線L1の部分L1aを螺旋状に保持できるように多数の爪や保持環といった保持部33eを設けて保持部33eによって信号線L1を取り付けてもよい。なお、信号線L1は、ダストブーツ33の内周と外周のいずれに取り付けもよいが、ダストブーツ33の内周に収容されると信号線L1の保護も可能となる。よって、保持部についてもダストブーツ33の内周に設けてもよい。また、信号線L1は、ダストブーツ33の内周や外周だけではなく、ダストブーツ33の材料によってはダストブーツ33の肉厚内に埋設されていてもよい。
【0043】
以上、鉄道車両用制振装置D2,D3のように、蛇腹部33aを有するダストブーツ33に信号線L1を取り付ける場合、信号線L1における筒部材としての外筒2に保持されている部位の終端から台車側加速度センサ30までの部分L1aが大きく側方へ張り出すように撓むのを防止できる。よって、蛇腹部33aを有するダストブーツ33に信号線L1を取り付けた鉄道車両用制振装置D2,D3によれば、搭載スペースが狭い箇所に設置しても信号線L1が車体Bや台車Tの他所と干渉しないので、より効果的に鉄道車両用制振装置D2,D3の搭載性を向上できる。
【0044】
また、信号線L1の前記部分L1aがダストブーツ33の外周に螺旋状に取り付けられる場合には、外筒2に対するロッド4の変位によってダストブーツ33の蛇腹部33aが伸縮しても、信号線L1がダストブーツ33の外径よりも大きくはみ出すように撓まないので、より一層効果的に鉄道車両用制振装置D2,D3の搭載性を向上できる。さらに、信号線L1に過大な引張荷重や圧縮荷重が作用しないので信号線L1の断線も防止できる。
【0045】
なお、図6に示した第二の実施の形態の第二変形例の鉄道車両用制振装置D4のように、信号線L1の前記部分L1aをダストブーツ33の外周であって蛇腹部33aにおける山部Mの部分に取り付けられていてもよい。信号線L1の山部Mに取り付けられる部分は、山部Mの頂部に沿って周方向に取り付けられており、ダストブーツ33が伸縮しても当該部分には何ら引張や圧縮と言った荷重が作用しないようになっている。また、信号線L1の部分L1aにおけるダストブーツ33の蛇腹部33aの山部Mと山部Mとの間の部分は、蛇腹部33aの側面に軸方向に沿って蛇腹部33aに取り付けられている。信号線L1のダストブーツ33への取り付けに当たっては、鉄道車両用制振装置D2の説明で例示した取り付け方が可能である。このように信号線L1の部分L1aをダストブーツ33の外周であって蛇腹部33aにおける山部Mの部分に取り付けられていてもよい。
【0046】
このように、信号線L1の前記部分L1aをダストブーツ33の外周であって蛇腹部33aにおける山部Mの部分に取り付けられた鉄道車両用制振装置D4にあっても、外筒2に対するロッド4の変位によってダストブーツ33の蛇腹部33aが伸縮しても、信号線L1がダストブーツ33の外径よりも大きくはみ出すように撓まないので、より一層効果的に鉄道車両用制振装置D4の搭載性を向上できる。さらに、ダストブーツ33の伸縮に伴って信号線L1に過大な引張荷重や圧縮荷重が作用しないので信号線L1の断線も防止できる。
【0047】
また、図7に示した第二の実施の形態の第三変形例の鉄道車両用制振装置D5のように、信号線L1の前記部分L1aをダストブーツ33の外周であって蛇腹部33aにおける谷部Vの部分に取り付けられていてもよい。信号線L1の谷部Vに取り付けられる部分は、谷部Vの頂部に沿って周方向に取り付けられており、ダストブーツ33が伸縮しても当該部分には何ら引張や圧縮と言った荷重が作用しないようになっている。また、信号線L1の部分L1aにおけるダストブーツ33の蛇腹部33aの谷部Vと谷部Vとの間の部分は、蛇腹部33aの側面に軸方向に沿って蛇腹部33aに取り付けられている。信号線L1のダストブーツ33への取り付けに当たっては、鉄道車両用制振装置D2の説明で例示した取り付け方が可能である。このように信号線L1の部分L1aをダストブーツ33の外周であって蛇腹部33aにおける谷部Vの部分に取り付けられていてもよい。
【0048】
このように、信号線L1の前記部分L1aをダストブーツ33の外周であって蛇腹部33aにおける谷部Vの部分に取り付けられた鉄道車両用制振装置D5にあっても、外筒2に対するロッド4の変位によってダストブーツ33の蛇腹部33aが伸縮しても、信号線L1がダストブーツ33の外径よりも大きくはみ出すように撓まないので、より一層効果的に鉄道車両用制振装置D5の搭載性を向上できる。さらに、ダストブーツ33の伸縮に伴って信号線L1に過大な引張荷重や圧縮荷重が作用しないので信号線L1の断線も防止できる。
【0049】
また、図8に示した第二の実施の形態の第四変形例の鉄道車両用制振装置D6或いは図9に示した第二の実施の形態の第五変形例の鉄道車両用制振装置D7のように、ダストブーツ35が螺旋状の蛇腹部35aを備えている場合、信号線L1の前記部分L1aをダストブーツ35の山部M或いは谷部Vに沿ってダストブーツ35に取り付けてもよい。このようにしてダストブーツ35に信号線L1を取り付ける場合、信号線L1における外筒2に保持されている部位の終端から台車側加速度センサ30までの部分L1aが大きく側方へ張り出すように撓むのを防止できる。よって、鉄道車両用制振装置D6,D7によれば、搭載スペースが狭い箇所に設置しても信号線L1が車体Bや台車Tの他所と干渉しないので、より効果的に鉄道車両用制振装置D6,D7の搭載性を向上できる。また、信号線L1の前記部分L1aがダストブーツ35の外周に螺旋状に取り付けられる場合には、外筒2に対するロッド4の変位によってダストブーツ35の蛇腹部35aが伸縮しても、信号線L1がダストブーツ35の外径よりも大きくはみ出すように撓まないので、より一層効果的に鉄道車両用制振装置D6,D7の搭載性を向上できる。さらに、信号線L1に過大な引張荷重や圧縮荷重が作用しないので信号線L1の断線も防止できる。
【0050】
さらに、図10に示した第三の実施の形態の鉄道車両用制振装置D8のように、鉄道車両用制振装置D8が鉄道車両用制振装置D1の構成に加えてシリンダ装置Cのロッド4の一端と筒部材としての外筒2との間に伸縮可能なコイル40が装着されている場合、信号線L1をコイル40に取り付けてもよい。
【0051】
具体的には、コイル40は、ごく弱いコイルスプリングとされており、ロッド4の一端に設けたばね受け41と外筒2の端部との間に介装されている。そして、信号線L1における外筒2に保持されている部位の終端から台車側加速度センサ30までの部分L1aは、コイル40の線材に対して巻き付けられて取り付けられている。
【0052】
コイル40は、外筒2に対してロッド4が変位すると伸縮するが、信号線L1の前記部分L1aには、殆ど引張荷重や圧縮荷重が作用しない。また、コイル40が伸縮しても信号線L1の部分L1aは、コイル40の径方向へ撓んで張り出す心配もない。
【0053】
以上、鉄道車両用制振装置D8は、伸縮可能であってロッド4の一端と筒部材としての外筒2との間に介装されたコイル40を備え、信号線L1における外筒2から台車側加速度センサ30までの部分L1aがコイル40に巻き付けられて取り付けられている。このように構成された鉄道車両用制振装置D8によれば、搭載スペースが狭い箇所に設置しても信号線L1の車体Bや台車Tの他所と干渉しないので、より効果的に鉄道車両用制振装置D8の搭載性を向上できる。さらに、コイル40の伸縮に伴って信号線L1に過大な引張荷重や圧縮荷重が作用しないので信号線L1の断線も防止できる。なお、コイル40は、ロッド4に設けたばね受け41と外筒2の端部との間に介装されているが、外筒2の外周にもばね受けを設け、このばね受けとロッド4のばね受け41との間に介装されてもよい。また、コイル40とともにロッド4を覆うダストブーツを設けてもよい。
【0054】
なお、シリンダ装置Cの構成は、一例であって、シリンダ装置Cは、伸長時のみ力を発揮するモードと収縮時のみ力を発揮するモードと伸縮両方で力を発揮するモードを選択可能なダンパであってもよいし、アクチュエータとして機能できるものでもよい。
【0055】
また、コントローラ100は、前述したところでは、カルノップのスカイフック理論に基づくセミアクティブ制御を実行しているが、台車Tの横方向の加速度と車体Bの横方向の加速度を利用する他の制御を実行してもよい。さらに、コントローラ100は、台車Tの横方向の加速度を必要としない制御を実行してもよく、台車Tの横方向の加速度を鉄道車両用制振装置D1,D2,D3,D4,D5,D6,D7,D8や台車Tの異常検知や、データ取得のために利用するような態様も可能である。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
2・・・外筒(筒部材)、4・・・ロッド、30・・・台車側加速度センサ、31・・・車体側加速度センサ、33,35・・・ダストブーツ、33a,35a・・・蛇腹部、40・・・コイル、B・・・車体、D1,D2,D3,D4,D5,D6,D7,D8・・・鉄道車両用制振装置、L1・・・信号線、SL,L1a・・・信号線のシリンダから台車側加速度センサまでの部分、M・・・蛇腹部の山部、T・・・台車、V・・・蛇腹部の谷部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10