(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記共重合体は、アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、及び前記一般式(1)で表される化合物の合計中、アクリル酸又はその塩及びメタクリル酸又はその塩の合計の割合が50mol%以上95mol%以下である、請求項1に記載の遠心成形又は振動成形用水硬性組成物用分散剤組成物。
前記共重合体の含有量と強度向上剤の含有量の質量比が、強度向上剤の含有量/共重合体の含有量で、0.01以上1以下である、請求項4〜8の何れか1項記載の遠心成形又は振動成形用水硬性組成物用分散剤組成物。
前記共重合体の含有量と遅延剤の含有量の質量比が、遅延剤の含有量/共重合体の含有量で、0.01以上1以下である、請求項4〜9の何れか1項記載の遠心成形又は振動成形用水硬性組成物用分散剤組成物。
更に前記共重合体以外の共重合体からなるポリカルボン酸系分散剤を含有する、請求項1〜10の何れか1項記載の遠心成形又は振動成形用水硬性組成物用分散剤組成物。
強度向上剤と遅延剤の合計含有量と、前記共重合体と前記ポリカルボン酸系分散剤の合計含有量との質量比が、(強度向上剤と遅延剤の合計含有量)/(前記共重合体と前記ポリカルボン酸系分散剤の合計含有量)で、0.02以上2以下である、請求項4〜10の何れか1項を引用する請求項11記載の遠心成形又は振動成形用水硬性組成物用分散剤組成物。
請求項1〜13の何れか1項記載の遠心成形又は振動成形用水硬性組成物用分散剤組成物と、水と、水硬性粉体とを含有し、水/水硬性粉体比が10質量%以上25質量%以下である、遠心成形又は振動成形用水硬性組成物。
請求項1〜13の何れか1項記載の遠心成形又は振動成形用水硬性組成物用分散剤組成物と、水と、水硬性粉体とを混合して水硬性組成物を製造し、該水硬性組成物を型枠内に充填した後、遠心力をかけて型締めする、水硬性組成物の硬化体の製造方法。
請求項1〜13の何れか1項記載の遠心成形又は振動成形用水硬性組成物用分散剤組成物と、水と、水硬性粉体とを混合して水硬性組成物を製造し、該水硬性組成物を型枠内に充填した後、振動をかけて型締めする、水硬性組成物の硬化体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者らは、(A)成分を含有する分散剤組成物を使用したコンクリートは、遠心成形法による遠心締固め性などの加振成形性が向上することを見出した。このような効果が発現する理由は必ずしも定かではないが、以下のように推測される。アクリル酸又はその塩の構造単位は、その高い分子運動性から(A)成分の共重合体に柔軟性をもたらし、当該構造単位を含むポリカルボン酸系分散剤の排除体積は、当該構造を含まないものに比べ大きくなる。このことにより、水硬性粒子表面の絶対被覆面積が低減され、水和反応が促される(凝結遅延が回避される)ことにより、水和生成物により密な組織が形成されることで水硬性組成物のチキソトロピー性が向上し、優れた振動応答性がもたらされるものと考えられる。また、遠心成形時には金属性の型枠の回転により振動が生じるため、遠心成形時、加振時には流動化し骨材の充填が進み、優れた遠心締固め性がもたらされるものと考えられる。
【0025】
<水硬性組成物用分散剤組成物>
(A)成分は、構成単量体として、アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、及び下記一般式(1)で表される化合物を含む所定の重量平均分子量を有する共重合体であり、(A)成分は、アクリル酸又はその塩とメタクリル酸又はその塩の合計中、アクリル酸又はその塩の割合が20mol%以上70mol%以下である。
【0026】
(A)成分は、振動応答性、遠心締固め性の観点から、アクリル酸又はその塩とメタクリル酸又はその塩の合計中、アクリル酸又はその塩の割合が20mol%以上、好ましくは30mol%以上、より好ましくは40mol%以上、そして、70mol%以下、好ましくは65mol%以下、より好ましくは60mol%以下である。
【0027】
(A)成分は、振動応答性、遠心締固め性の観点から、アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、及び前記一般式(1)で表される化合物の合計中、アクリル酸又はその塩及びメタクリル酸又はその塩の合計の割合が、好ましくは50mol%以上、より好ましくは60mol%以上、更に好ましくは65mol%以上、そして、好ましくは95mol%以下、より好ましくは85mol%以下、更に好ましくは77mol%以下、である。
【0028】
(A)成分は、構成単量体の全量中、アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、及び前記一般式(1)で表される化合物の合計の割合が、好ましくは50mol%以上、より好ましくは70mol%以上、そして、好ましくは100mol%以下であり、100mol%であってよい。
【0029】
アクリル酸の塩及びメタクリル酸の塩としては、それぞれ、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩(1/2原子)、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、又はアルケニルアンモニウム塩が挙げられ、好ましくはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩(1/2原子)、アルキルアンモニウム塩、又はアルケニルアンモニウム塩であり、より好ましくはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩(1/2原子)、又はアルキルアンモニウム塩である。
【0030】
一般式(1)中、R
1は、好ましくはメチル基である。
一般式(1)中、R
2は、好ましくは水素原子である。
一般式(1)中、R
3は、好ましくはメチル基又は水素原子である。
一般式(1)中、nは、平均付加モル数であり、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは30以上、より更に好ましくは40以上、そして、好ましくは90以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは70以下、より更に好ましくは60以下、より更に好ましくは55以下の数である。
【0031】
(A)成分は、水硬性組成物に優れた加振成形性を付与できる観点から、重量平均分子量が、30,000以上、好ましくは32,000以上、より好ましくは35,000以上、そして、100,000以下、好ましくは60,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは45,000以下、より更に好ましくは40,000以下である。この重量平均分子量は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定されたものである。
*GPC条件
装置:GPC(HLC−8320GPC)東ソー株式会社製
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー株式会社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH
3CN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算(単分散のポリエチレングリコール:分子量87,500、250,000、145,000、46,000、24,000)
【0032】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、更に、強度向上剤及び/又は遅延剤を含むことができる。
【0033】
強度向上剤としては、ポリオール化合物、チオ硫酸アルカリ金属塩、チオ硫酸アルカリ土類金属塩、チオシアン酸アルカリ金属塩、チオシアン酸アルカリ土類金属塩、硫酸アルカリ金属塩、硫酸アルカリ土類金属塩が挙げられる。強度向上剤は、ポリオール化合物から選択される一種類以上が好ましい。ポリオール化合物は、グリセリン、グリセリンエステル誘導体、グリコール化合物、糖アルコールが挙げられる。ポリオール化合物はグリセリンが好ましい。
【0034】
遅延剤としては、オキシカルボン酸、多価カルボン酸、還元性多糖類、糖アルコールが挙げられる。遅延剤は、オキシカルボン酸から選択される一種類以上が好ましい。オキシカルボン酸は、グルコン酸及び/又はその塩、グリコール酸及び/又はその塩、タルトロン酸及び/又はその塩、グリセリン酸及び/又はその塩、酒石酸及び/又はその塩、クエン酸及び/又はその塩、サリチル酸及び/又はその塩、没食子酸及び/又はその塩が挙げられる。オキシカルボン酸は、グルコン酸及び/又はその塩が好ましい。
【0035】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、(A)成分を、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下含有する。本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、(A)成分の含有量が100質量%、すなわち(A)成分からなるものであってもよい。
【0036】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物が強度向上剤を含有する場合、その含有量は、組成物中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0037】
また、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物が強度向上剤を含有する場合、(A)成分の含有量と強度向上剤の含有量の質量比は、強度向上剤の含有量/(A)成分の含有量で、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.045以上、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.2以下、より更に好ましくは0.1以下、より更に好ましくは0.07以下である。
【0038】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物が遅延剤を含有する場合、その含有量は、組成物中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0039】
また、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物が遅延剤を含有する場合、(A)成分の含有量と遅延剤の含有量の質量比は、遅延剤の含有量/(A)成分の含有量で、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.2以下、より更に好ましくは0.1以下、より更に好ましくは0.07以下、より更に好ましくは0.05以下である。
【0040】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、更に(A)成分以外の共重合体からなるポリカルボン酸系分散剤(以下、その他のポリカルボン酸系分散剤という)を含有することができる。その他のポリカルボン酸系分散剤としては、メタクリル酸又はその塩と前記一般式(1)で表される化合物の共重合体であって、分散剤として公知の構造、組成を有する共重合体が挙げられる。
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物が、その他のポリカルボン酸系分散剤を含有する場合、その他のポリカルボン酸系分散剤/(A)成分の質量比は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは1以下、更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.3以下、より更に好ましくは0.2以下である。
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、強度向上剤と遅延剤の合計含有量と、(A)成分とその他のポリカルボン酸系分散剤の合計含有量との質量比が、(強度向上剤と遅延剤の合計含有量)/((A)成分とその他のポリカルボン酸系分散剤の合計含有量)で、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.05以上、そして、好ましくは2以下、より好ましくは1以下、更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.3以下、より更に好ましくは0.2以下、より更に好ましくは0.1以下、である。この質量比は、強度向上剤及び遅延剤の一方の含有量が0である場合を含む。
【0041】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、その他の任意成分として、AE剤、起泡剤、増粘剤、発泡剤、防水剤、流動化剤、消泡剤等などを含有することができる。
【0042】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、水を含有することができる。本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、液体組成物であってもよい。
【0043】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物であってよい。
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、振動成形用水硬性組成物用分散剤組成物であってよい。
遠心成形用水硬性組成物用分散剤組成物は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物の好ましい態様の1つである。
【0044】
<水硬性組成物>
本発明は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物と、水と、水硬性粉体とを含有する遠心成形又は振動成形用水硬性組成物を提供する。本発明の水硬性組成物は、構成単量体として、アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、及び下記一般式(1)で表される化合物を含む共重合体〔(A)成分〕と、水と、水硬性粉体とを含有する遠心成形又は振動成形用水硬性組成物であって、前記共重合体は、アクリル酸又はその塩とメタクリル酸又はその塩の合計中、アクリル酸又はその塩の割合が20mol%以上70mol%以下である、遠心成形又は振動成形用水硬性組成物である。
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べた事項は、本発明の水硬性組成物に適宜適用することができる。
【0045】
本発明の水硬性組成物において、(A)成分の具体例及び好ましい態様は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物と同じである。
本発明の水硬性組成物は、分散性及び遠心締固め性の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、(A)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、そして、好ましくは9質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは1質量部以下含有する。
【0046】
水硬性粉体とは、水和反応により硬化する物性を有する粉体のことであり、セメント、石膏等が挙げられる。水硬性粉体は、好ましくはセメント、より好ましくは普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、耐硫酸塩セメント等のセメントである。また、セメント等に高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフュームなどのポゾラン作用及び/又は潜在水硬性を有する粉体や、石粉(炭酸カルシウム粉末)等が添加された高炉スラグセメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等でもよい。
【0047】
本発明の水硬性組成物は、水/水硬性粉体比が、好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。ここで、水/水硬性粉体比は、水硬性組成物中の水と水硬性粉体の質量百分率(質量%)であり、水の質量/水硬性粉体の質量×100により算出される。水/水硬性粉体比は、水の量と、水和反応により硬化する物性を有する粉体の量とに基づいて算出される。水和反応により硬化する物性を有する粉体が、ポゾラン作用を有する粉体、潜在水硬性を有する粉体、及び石粉(炭酸カルシウム粉末)から選ばれる粉体を含む場合、本発明では、それらの量も水硬性粉体の量に算入する。また、水和反応により硬化する物性を有する粉体が、高強度混和材を含有する場合、高強度混和材の量も水硬性粉体の量に算入する。これは、水硬性粉体の質量が関係する以下の質量部においても同様である。
【0048】
本発明の水硬性組成物は、骨材を含有することが好ましい。骨材としては、細骨材及び粗骨材から選ばれる骨材が挙げられる。細骨材として、JIS A0203−2014中の番号2311で規定されるものが挙げられる。細骨材としては、川砂、陸砂、山砂、海砂、石灰砂、珪砂及びこれらの砕砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、軽量細骨材(人工及び天然)及び再生細骨材等が挙げられる。また、粗骨材として、JIS A0203−2014中の番号2312で規定されるものが挙げられる。例えば粗骨材としては、川砂利、陸砂利、山砂利、海砂利、石灰砂利、これらの砕石、高炉スラグ粗骨材、フェロニッケルスラグ粗骨材、軽量粗骨材(人工及び天然)及び再生粗骨材等が挙げられる。細骨材、粗骨材は種類の違うものを混合して使用しても良く、単一の種類のものを使用しても良い。
水硬性組成物がコンクリートの場合、粗骨材の使用量は、水硬性組成物の強度の発現とセメント等の水硬性粉体の使用量を低減し、型枠等への充填性を向上する観点から、嵩容積は、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上であり、そして、好ましくは100%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下である。嵩容積は、コンクリート1m
3中の粗骨材の容積(空隙を含む)の割合である。また、水硬性組成物がコンクリートの場合、細骨材の使用量は、型枠等への充填性を向上する観点から、好ましくは500kg/m
3以上、より好ましくは600kg/m
3以上、更に好ましくは700kg/m
3以上であり、そして、好ましくは1,000kg/m
3以下、より好ましくは900kg/m
3以下である。
水硬性組成物がモルタルの場合、細骨材の使用量は、好ましくは800kg/m
3以上、より好ましくは900kg/m
3以上、更に好ましくは1,000kg/m
3以上であり、そして、好ましくは2,000kg/m
3以下、より好ましくは1,800kg/m
3以下、更に好ましくは1,700kg/m
3以下である。
【0049】
本発明の水硬性組成物は、高強度混和材を含有することができる。高強度混和材としては、ブレーン値が2,500cm
2/g以上又はBET比表面積が10m
2/g以上の粉体、更に無機粉体(セメントを除く)が挙げられる。高強度混和材の構成成分として、無水石膏、シリカフューム、及びフライアッシュから選ばれる粉体が挙げられる。高強度混和材は、市販品として、デンカΣ1000(デンカ株式会社)、デンカΣ2000(デンカ株式会社)、太平洋ウルトラスーパーミックス(太平洋マテリアル株式会社)等が挙げられる。本発明の水硬性組成物が高強度混和材を含有する場合、高強度混和材の含有量は、水硬性粉体、更にセメント100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0050】
本発明の水硬性組成物は、遠心成形用水硬性組成物であってよい。
本発明の水硬性組成物は、振動成形用水硬性組成物であってよい。
遠心成形用水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物の好ましい態様の1つである。
【0051】
<水硬性組成物の製造方法>
本発明は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物と、水と、水硬性粉体とを混合する、水硬性組成物の製造方法を提供する。本発明の水硬性組成物の製造方法は、構成単量体として、アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、及び下記一般式(1)で表される化合物を含む共重合体〔(A)成分〕と、水と、水硬性粉体とを混合する、水硬性組成物の製造方法であって、前記共重合体は、アクリル酸又はその塩とメタクリル酸又はその塩の合計中、アクリル酸又はその塩の割合が20mol%以上70mol%以下である、水硬性組成物の製造方法である。
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物及び水硬性組成物で述べた事項は、本発明の水硬性組成物の製造方法に適宜適用することができる。
【0052】
本発明の水硬性組成物の製造方法において、(A)成分の具体例及び好ましい態様は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物と同じである。
また、本発明の水硬性組成物の製造方法に用いられる水硬性粉体の具体例及び好ましい態様は、本発明の水硬性組成物で述べたものと同じである。水硬性粉体は、好ましくは、水/水硬性粉体比が、本発明の水硬性組成物で述べた範囲となるように用いる。
また、本発明の水硬性組成物の製造方法では、骨材を混合することが好ましい。骨材の具体例及び好ましい態様は、本発明の水硬性組成物で述べたものと同じである。また、骨材の使用量も、本発明の水硬性組成物で述べたものと同じである。
【0053】
本発明の水硬性組成物の製造方法では、(A)成分とセメント等の水硬性粉体とを円滑に混合する観点から、(A)成分と水とを予め混合し、水硬性粉体と混合することが好ましい。
【0054】
水硬性粉体と、水と、(A)成分と、必要に応じて用いられる成分との混合は、モルタルミキサー、強制二軸ミキサー等のミキサーを用いて行うことができる。
また、好ましくは1分間以上、より好ましくは2分間以上、そして、好ましくは5分間以下、より好ましくは3分間以下混合する。水硬性組成物の調製にあたっては、水硬性組成物で説明した材料や薬剤及びそれらの量を用いることができる。
【0055】
得られた水硬性組成物は、更に、水硬性組成物を型枠に充填し養生し硬化させる。型枠として、建築物の型枠、コンクリート製品用の型枠等が挙げられる。型枠への充填方法として、ミキサーから直接投入する方法、水硬性組成物をポンプで圧送して型枠に導入する方法等が挙げられる。
【0056】
水硬性組成物の養生の際、硬化を促進するために加熱養生し、硬化を促進させても良い。ここで、加熱養生は、40℃以上90℃以下の温度で水硬性組成物を保持して硬化を促進することができる。
【0057】
<水硬性組成物の硬化体の製造方法>
本発明は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物と、水と、水硬性粉体とを混合して水硬性組成物を製造し、該水硬性組成物を型枠に充填して硬化させる、水硬性組成物の硬化体の製造方法を提供する。
本発明の水硬性組成物の硬化体の製造方法は、構成単量体として、アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、及び下記一般式(1)で表される化合物を含む共重合体〔(A)成分〕と、水と、水硬性粉体とを混合して水硬性組成物を製造し、該水硬性組成物を型枠に充填して硬化させる、水硬性組成物の硬化体の製造方法であって、前記共重合体は、アクリル酸又はその塩とメタクリル酸又はその塩の合計中、アクリル酸又はその塩の割合が20mol%以上70mol%以下である、水硬性組成物の硬化体の製造方法である。
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物、水硬性組成物及び水硬性組成物の製造方法で述べた事項は、本発明の水硬性組成物の製造方法に適宜適用することができる。
【0058】
本発明の水硬性組成物の硬化体の製造方法において、(A)成分の具体例及び好ましい態様は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物と同じである。
また、本発明の水硬性組成物の製造方法に用いられる水硬性粉体の具体例及び好ましい態様は、本発明の水硬性組成物で述べたものと同じである。水硬性粉体は、好ましくは、水/水硬性粉体比が、本発明の水硬性組成物で述べた範囲となるように用いる。
また、本発明の水硬性組成物の製造方法では、骨材を混合することが好ましい。骨材の具体例及び好ましい態様は、本発明の水硬性組成物で述べたものと同じである。また、骨材の使用量も、本発明の水硬性組成物で述べたものと同じである。
本発明の硬化体の製造方法で製造する水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物が好ましい。
【0059】
本発明の硬化体の製造方法として、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物と、水と、水硬性粉体とを混合して水硬性組成物を製造し、該水硬性組成物を型枠内に充填した後、遠心力をかけて型締めする、水硬性組成物の硬化体の製造方法が挙げられる。この方法は、構成単量体として、アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、及び下記一般式(1)で表される化合物を含む共重合体〔(A)成分〕と、水と、水硬性粉体とを混合して水硬性組成物を製造し、該水硬性組成物を型枠内に充填した後、遠心力をかけて型締めする、水硬性組成物の硬化体の製造方法であって、前記共重合体は、アクリル酸又はその塩とメタクリル酸又はその塩の合計中、アクリル酸又はその塩の割合が20mol%以上70mol%以下である、水硬性組成物の硬化体の製造方法(以下、遠心法という)である。遠心法は、いわゆる遠心力締固め成形を行うものである。
【0060】
また、本発明の硬化体の製造方法として、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物と、水と、水硬性粉体とを混合して水硬性組成物を製造し、該水硬性組成物を型枠内に充填した後、振動をかけて型締めする、水硬性組成物の硬化体の製造方法が挙げられる。この方法は、構成単量体として、アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、及び下記一般式(1)で表される化合物を含む共重合体〔(A)成分〕と、水と、水硬性粉体とを混合して水硬性組成物を製造し、該水硬性組成物を型枠内に充填した後、振動をかけて型締めする、水硬性組成物の硬化体の製造方法であって、前記共重合体は、アクリル酸又はその塩とメタクリル酸又はその塩の合計中、アクリル酸又はその塩の割合が20mol%以上70mol%以下である、水硬性組成物の硬化体の製造方法(以下、振動法という)である。振動法は、いわゆる振動締固め成形を行うものである。
【0061】
本発明では、水と(A)成分とを含む混合物を、骨材及び水硬性粉体に添加して混合する方法が、水硬性組成物を製造する際でも、容易に均一に混合できる点で好ましい。
【0062】
水硬性組成物は、水硬性粉体と骨材とを混合し、水と(A)成分とを含む混合物を、前記のような混合量となるように添加し、混練して調製することができる。
【0063】
型枠は、水硬性組成物の硬化体の用途を考慮して、遠心法、振動法に適したものがそれぞれ適宜選定される。前記水硬性組成物の型枠への充填は、公知の方法により行うことができる。
得られた水硬性組成物を型枠に充填する方法は、例えば、混練後の水硬性組成物を混練手段から排出し、手作業にて型枠へ投入してならす方法が挙げられる。
【0064】
遠心法では、型枠に充填した遠心成形用水硬性組成物を、遠心力をかけて型締めする。このとき、少なくとも1回は遠心力を変えることが好ましい。本発明では、遠心成形用水硬性組成物を、段階的に変化する遠心力をかけて型締めすることができる。すなわち、本発明で、遠心成形用水硬性組成物を、少なくとも1回は遠心力を変えて型締めする、更に、段階的に変化する、更に段階的に大きくなる遠心力をかけて型締めすることができる。
【0065】
遠心法では、型枠に充填した水硬性組成物を、0.5G以上の遠心力で型締めすることが好ましい。遠心成形の遠心力は、好ましくは0.5G以上、そして、30G以下、より好ましくは25G以下である。エネルギーコスト低減面と成形性の面から、1分以上、遠心力を15G以上、そして、30G以下、更に25G以下の範囲(高遠心力ともいう)に保持することが好ましい。
【0066】
遠心力での締め固めは、例えば0.5G以上30G以下の遠心力で、好ましくは5分以上、より好ましくは7分以上、更に好ましくは9分以上、そして、好ましくは40分以下行なう。成形体を平滑に締め固める観点から、高遠心力、例えば20G以上の遠心力の保持による締め固めは、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上、更に好ましくは5分以上、そして、好ましくは15分以下行なう。すなわち、本発明では、0.5G以上30G以下の遠心力を、好ましくは5分以上、より好ましくは7分以上、更に好ましくは9分以上、そして、好ましくは40分以下かけて、水硬性組成物を型締めすることができる。また、本発明では、20G以上の遠心力の保持による締め固めを、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上、更に好ましくは5分以上、そして、好ましくは15分以下行なうことができる。
【0067】
遠心力での締め固めは、段階に分けて行うことができ、成形性の観点から、段階的に遠心力Gを大きくする方法が好ましい。以下に示すような段階条件で所望の遠心力となるまで行うことができる。例えば、五段階の場合、本発明では、(1)一段階目である初速が0.5G以上2G未満の遠心力で0分間超15分間以下、(2)二段階目である二速が2G以上5G未満の遠心力で0分間超15分間以下、(3)三段階目である三速が5G以上10G未満の遠心力で0分間超15分間以下、(4)四段階目である四速が10G以上20G未満の遠心力で0分間超15分間以下、(5)五段階目である五速が20G以上30G以下の遠心力で0分間超15分間以下、の条件により水硬性組成物の型締めを行うことが好ましい。
【0068】
遠心法では、水硬性組成物を、遠心力をかけて型締めした後、加熱養生を行うことが好ましい。
【0069】
加熱養生は、好ましくは75℃以上、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下で行う。加熱養生は、75℃以上で1時間以上保持する工程を含んでもよい。なお、加熱養生の温度は、水硬性組成物が充填された型枠の周囲雰囲気の温度である。
【0070】
遠心力をかけて型締めする場合、スランプロスの観点から、周囲温度(型枠の周囲温度)は、好ましくは35℃以下、更に好ましくは30℃以下、より好ましくは25℃以下、強度発現性の観点から、好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上である。
【0071】
本発明では、加熱養生を開始する前に、前記混合の際に最初に水と水硬性粉体とが接触した時点を始点として、1時間以上の低温養生を行うことが好ましい。
低温養生は、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、そして、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下で行う。
低温養生は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上、そして、好ましくは5時間以下、より好ましくは4時間以下行う。
【0072】
本発明では、加熱養生は、蒸気養生で行うことが好ましい。蒸気養生は、例えば、遠心成形水硬性組成物が充填された型枠の周囲に水蒸気を適用し、所定の温度で一定時間保持して行われる。
【0073】
加熱養生の後、水硬性組成物を冷却して、型枠から脱型することができる。また、脱型した水硬性組成物の硬化体を常温常圧で養生することができる。
例えば、加熱養生の後、例えば、直ちに周囲温度を室温、例えば20℃まで冷却しても良いし、例えば、1時間当たり5℃以上20℃以下の降温速度で、周囲温度を室温、例えば20℃まで冷却しても良い。冷却後、成形体を脱型する。降温速度は、硬化体のひび割れによる強度低下を抑える観点から、1時間当たり20℃以下が好ましい。また、得られた水硬性組成物の硬化体を常温常圧で養生することができる。具体的には、20℃、大気圧下で保存することができる。
【0074】
遠心法により得られる水硬性組成物の硬化体は、遠心成形コンクリート製品として使用でき、具体的には、パイル、ポール、ヒューム管等が挙げられる。遠心法により得られる水硬性組成物の硬化体は、締め固め性に優れることから、当該製品の内面及び端面凹凸が少なく、表面美観に優れるとともに、更に製品内面が平滑に仕上がることから、パイル打ち込み、中堀工法時の切削機の障害が改善される。
【0075】
振動法は、硬化体の製造に用いる水硬性組成物を型枠に充填すること、型枠内の水硬性組成物に振動をかけることを行う。以下、水硬性組成物に振動をかける操作を振動成形ともいう。
【0076】
振動成形は、例えば、20Hz以上350Hz以下の振動数で行うことができる。また、振動成形は、例えば、3秒以上180秒以下で行うことができる。一回の充填により型枠を十分に満たすことができない場合、追加の水硬性組成物を充填する際は、先の水硬性組成物に対する振動を止めていても、かけ続けていても、どちらでもよい。
【0077】
本発明の水硬性組成物の硬化体の製造方法の一例として、ポリカルボン酸系分散剤と水硬性粉体と水とを含有する水硬性組成物の硬化体の製造方法であって、水硬性組成物を型枠に充填後に振動をかける、水硬性組成物の硬化体の製造方法が挙げられる。
【0078】
また、本発明の水硬性組成物の硬化体の製造方法の他の例として、ポリカルボン酸系分散剤と水硬性粉体と水とを含有する水硬性組成物の硬化体の製造方法であって、硬化体の製造に用いる水硬性組成物を型枠に充填し、型枠内の水硬性組成物に振動をかける、水硬性組成物の硬化体の製造方法が挙げられる。
【0079】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物を用いることで、振動成形時の成形性を向上させることができる。本発明により、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物を用いて、水硬性組成物の加振成形工程における成形性を向上させる方法が提供される。
【0080】
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物を用いることで、遠心成形の際の、水硬性組成物の遠心力による締固め性を向上させることができる。本発明により、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物を用いて、水硬性組成物の遠心力による締固め性を向上させる方法が提供される。
【0081】
また、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物を用いることにより、水硬性組成物の硬化体の強度が向上する。本発明により、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物を用いて、水硬性組成物の硬化体の強度を向上させる方法が提供される。
【実施例】
【0082】
<(A)成分>
以下、アクリル酸又はその塩をAA、メタクリル酸又はその塩をMAA、一般式(1)で表される化合物を化合物(1)として共重合体の構成を示す。また、アクリル酸又はその塩とメタクリル酸又はその塩の合計中の、アクリル酸又はその塩の割合(mol%)をAA比として示す。
共重合体1:AA/MAA/化合物(1)=アクリル酸ナトリウム/メタクリル酸ナトリウム/メトキシポリエチレングリコール(45)モノメタクリレート(該単量体のカッコ内は平均付加モル数、以下同様)=29mol%/45mol%/26mol%、重量平均分子量=30,000、AA比が39mol%
共重合体2:AA/MAA/化合物(1)=アクリル酸ナトリウム/メタクリル酸ナトリウム/メトキシポリエチレングリコール(45)モノメタクリレート=31mol%/44mol%/25mol%、重量平均分子量=37,000、AA比が41mol%
共重合体3:AA/MAA/化合物(1)=アクリル酸ナトリウム/メタクリル酸ナトリウム/メトキシポリエチレングリコール(50)モノメタクリレート=35mol%/35mol%/30mol%、重量平均分子量=35,000、AA比が50mol%
共重合体4:AA/MAA/化合物(1)=アクリル酸ナトリウム/メタクリル酸ナトリウム/メトキシポリエチレングリコール(45)モノメタクリレート=51mol%/22mol%/27mol%、重量平均分子量=30,000、AA比が70mol%
【0083】
<その他のポリカルボン酸系分散剤>
共重合体5:MAA/化合物(1)=メタクリル酸ナトリウム/メトキシポリエチレングリコール(25)モノメタクリレート=75mol%/25mol%、重量平均分子量=50,000、AA比が0mol%
共重合体6:MAA/化合物(1)=メタクリル酸ナトリウム/メトキシポリエチレングリコール(45)モノメタクリレート=75mol%/25mol%、重量平均分子量=57,000、AA比が0mol%
共重合体7:AA/その他の単量体=アクリル酸ナトリウム/ポリエチレングリコール(45)モノイソプレニルエーテル=75mol%/25mol%、重量平均分子量=46,000、AA比が100mol%(構成単量体として化合物(1)を含まない)
共重合体8:AA/MAA/化合物(1)=アクリル酸ナトリウム/メタクリル酸ナトリウム/メトキシポリエチレングリコール(45)モノメタクリレート=50mol%/30mol%/20mol%、重量平均分子量=28,000、AA比が63mol%
【0084】
<実施例1及び比較例1>
(1)モルタル配合
下記にモルタル配合を示した。Pはセメント(略号C)と高強度混和材(略号A)の合計質量であり、W/P(=C+A)は、水/水硬性粉体の比(質量%)である。
【0085】
*モルタル配合
セメント(C):800g(太平洋セメント(株)製早強ポルトランドセメントと住友大阪セメント(株)製早強ポルトランドセメントの1:1混合物、比重3.16)
高強度混和材(A):64g(電気化学工業株式会社製、比重2.45)
水道水(W):171g(共重合体又は分散剤を含む)
W/P:20質量%
砂(S):1195g(京都府城陽産、比重2.50)
なお、全ての材料は20℃に調整し、水道水中の共重合体又は分散剤の量は、モルタル配合に対して微量であるため、水道水の量に算入してW/Pを計算した。
【0086】
(2)モルタル調製
表1の添加量となるように共重合体((A)成分又はその他のポリカルボン酸系分散剤)及び水を含有する組成物を調製した。なお、共重合体は、表1の添加量で用いた。前記モルタル配合材料の水(W)に前記組成物を添加し、他のモルタル配合材料と共に調製した。モルタルは、JIS R 5201に規定されるモルタルミキサーを使用して配合成分を混練(60rpm、540秒)して調製した。
【0087】
(3)モルタルの遠心締固め性の評価(I)
(2)の方法で調製したモルタルを400mLのアルミ容器に750gサンプリングし、JIS R 5201セメントの物理試験方法9.2.1 ビカー針装置、9.2.1 b)に記載の標準棒(有効長さが45mm以上、直径10.0±0.2mmの円筒形の非腐食金属性)を用い、JIS R 5201セメントの物理試験方法9.4.3「凝結の始発及び終結の測定」に倣い標準棒をモルタルに降下させたときの状況によりモルタル遠心締固め性を評価した。具体的には、モルタル調製直後から10秒以内に、標準棒をモルタルの表面近くから自重により徐々に降下させ、降下が止まった時点のモルタルへの標準棒の陥入長さを、モルタル調製直後の標準棒の陥入深さとした。また、最初の標準棒の降下から10秒間隔で標準棒をモルタルの表面近くからモルタルの表面に徐々に降下させ、降下が止まった時点で、標準棒の先端と底板との間隔を0.1mm単位で読み記録し、標準棒の先端と底板との間隔が3回連続して変わらなくなるまでの時間を測定した。結果を表1に示す。
【0088】
(4)モルタルの遠心締固め性の評価(II)
前記のモルタルの遠心締固め性の評価(I)の結果から、この評価系では、モルタル調製直後の貫入深さが大きいほどモルタルが流動化して骨材の充填性が向上すると考察し、モルタル調製直後の標準棒の陥入深さ(P;mm)で“充填性”を、モルタル調製直後から標準棒の先端と底板との間隔が3回連続して変わらなくなるまでに要する時間(t;sec)で“保形性”を評価することができる(保形性の発現に要する時間が短いほど棚落ち等の欠陥が生じにくい)と考え、下記計算式(I)のP/tを遠心締固め性の指標として評価した。P/tの値が大きいほど、遠心締固め性が良好であると判断できる。この評価では、P/tの値が0.015以上であることが好ましい。結果を表1に示す。
遠心締固め性=P/t …式(I)
P:モルタル調製直後の標準棒の陥入深さ(mm)
t:モルタル調製から標準棒の陥入深さが3回連続して変わらなくなるまでに要する時間(sec)
【0089】
【表1】
【0090】
表中、AA比は、AAとMAAの合計中の、AAの割合(mol%)である。
表中、Mwは重量平均分子量である。
表中、EOpは、エチレンオキシドの平均付加モル数であり、一般式(1)中のnに相当する。
表中、添加量は、水硬性粉体(セメントと高強度混和材)100質量部に対する有効分換算の質量部である(以下同様)。
表中、「標準棒の陥入深さ」は、モルタル調製直後の標準棒の陥入深さである。
表中、「陥入深さの不変時間」は、標準棒の先端と底板との間隔が3回連続して変わらなくなるまでの時間である。
表中、「分散剤A」は、以下の組成の分散剤である(以下同様)。
共重合体1/共重合体5/グリセリン/グルコン酸ナトリウム=80/14/4/2(質量比)
【0091】
表1中、構成単量体としてAAを含まない共重合体を用いた比較例1−1〜1−2及び化合物(1)を含まない比較例1−3に対して、構成単量体としてAAを所定量含む共重合体を用いた実施例1−1〜1−5は、優れた遠心締固め性を示した。これは、実施例の共重合体は柔軟な分子構造を有しており、セメント粒子の水和が促進され、水和生成物によるネットワーク構造により高い保形成を発現したためであると考察される。また、重量平均分子量が本発明の範囲外である共重合体を用いた比較例1−4も、実施例と比べて遠心締固め性が劣ることがわかる。
【0092】
<実施例2及び比較例2>
(1)モルタル配合
下記にモルタル配合を示した。Pはセメント(略号C)と高強度混和材(略号A)の合計質量であり、W/P(=C+A)は、水/水硬性粉体の比(質量%)である。
【0093】
*モルタル配合
セメント(C):800g(太平洋セメント(株)製早強ポルトランドセメントと住友大阪セメント(株)製早強ポルトランドセメントの1:1混合物、比重3.16)
高強度混和材(A):64g(電気化学工業株式会社製、比重2.45)
水道水(W):209g(共重合体を含む)
W/P:24質量%
砂(S):1195g(京都府城陽産、比重2.50)
なお、全ての材料は20℃に調整し、水道水中の共重合体の量は、モルタル配合に対して微量であるため、水道水の量に算入してW/Pを計算した。
【0094】
(2)モルタル調製
表2の添加量となるように共重合体((A)成分又はその他のポリカルボン酸系分散剤)及び水を含有する組成物を調製した。前記モルタル配合材料の水(W)に前記組成物を添加し、他のモルタル配合材料と共に調製した。モルタルは、JIS R 5201に規定されるモルタルミキサーを使用して配合成分を混練(60rpm、540秒)して調製した。なお、共重合体は、表2の添加量で用いた。
【0095】
(3)モルタルレオロジーの測定方法
(2)の方法で調製したモルタルを400mLのアルミ容器に750gサンプリングし、Anton Paar社製レオメータPhysica MCR301を用いて下記測定条件でレオロジー測定を実施した。
<チクソループ測定>
治具:Ball type、d=8(mm)
測定点数:20点
測定間隔:10(sec.)
せん断速度:0.004〜4(1/sec.)
【0096】
(4)モルタルレオロジーの評価方法
(3)の方法で測定したモルタルレオロジーの測定結果をもとに、前記コンクリートの遠心締固め性に関する考察から、モルタルのチキソトロピー性が向上するほど遠心締固め性が向上すると考察し、下記式(II)に基づいてチキソトロピー性の指標となるヒステリシス(ΔH;Pa/s)を算出した。ヒステリシスの値が大きいほど、チキソトロピー性に優れると判断できる。この評価では、ヒステリシスの値が4000以上であることが好ましい。結果を表2に示す。
ヒステリシス(ΔH;Pa/s)=∫{f(x)−g(x)}dx …式(II)
f(x):昇せん断条件での近似式
g(x):降せん断条件での近似式
【0097】
【表2】
【0098】
表2中、構成単量体としてAAを含まない共重合体を用いた比較例2−1〜2−2及び化合物(1)を含まない比較例2−3に対して、構成単量体としてAAを所定量含む共重合体を用いた実施例2−1〜2−4は、大きなヒステリシス、チキソトロピー性を示した。これは、実施例の共重合体が昇せん断条件下では柔軟な分子構造を有することによりセメント粒子の水和が促進された結果、形成された水和生成物によるネットワーク構造が高いせん断応力を示し、降せん断条件下ではせん断によってネットワーク構造が破壊され、せん断応力が低下したためであると考察される。また、重量平均分子量が本発明の範囲外である共重合体を用いた比較例2−4も、実施例と比べてヒステリシス、チキソトロピー性が小さいことがわかる。
【0099】
<実施例3及び比較例3>
(1)コンクリート配合
下記にコンクリート配合を示した。Pはセメント(略号C)と高強度混和材(略号A)の合計質量であり、W/P(=C+A)は、水/水硬性粉体の比(質量%)である。
【0100】
*コンクリート配合1
セメント(C):12.6kg(太平洋セメント(株)製早強ポルトランドセメント、比重3.16)
高強度混和材(A):1.0kg(電気化学工業株式会社製、比重2.45)
水道水(W):2.7kg(共重合体を含む)
W/P:20質量%
砂(S):18.9kg(滋賀県甲賀産、比重2.58)
砂利(G):28.4kg(兵庫県家島産、比重2.63)
なお、全ての材料は20℃に調整し、水道水中の共重合体の量は、モルタル配合に対して微量であるため、水道水の量に算入してW/Pを計算した。
【0101】
*コンクリート配合2
セメント(C):11.1kg(太平洋セメント(株)製普通ポルトランドセメント、比重3.16)
高強度混和材(A):0.3kg(電気化学工業株式会社製、比重2.45)
水道水(W):2.9kg(共重合体を含む)
W/P:25質量%
砂(1)(S(1)):9.4kg(岐阜県揖斐川産、比重2.55)
砂(2)(S(2)):10.3kg(滋賀県甲賀産、比重2.58)
砂利(G):28.4kg(兵庫県家島産、比重2.63)
なお、全ての材料は20℃に調整し、水道水中の共重合体の量は、モルタル配合に対して微量であるため、水道水の量に算入してW/Pを計算した。
【0102】
(2)コンクリート調製
表3の添加量となるように共重合体及び水を含有する組成物を調製した。なお、共重合体は、表3の添加量で用いた。前記コンクリート配合材料の水(W)に前記組成物を添加し、撹拌して調製した。コンクリートは、強制2軸型ミキサー(KYC社製)に、砂利、約半量の砂、早強セメントと高強度混和材の混合物、残部の砂の順に投入し、空練りを30秒間行い、次いで、すばやく前記調製した水を添加し、240秒間練り混ぜてコンクリートを得た。
【0103】
(3)遠心締固め性の評価
混練から10分後のコンクリートを遠心成形型枠(内径20cm、外径25cm、高さ40cm)に入れて、初速が1Gで2分間、二速が3Gで2分間、三速が7Gで2分間、四速が15Gで3分間、五速が25Gで3分間の条件で遠心締め固めを行った。遠心締固めを終えた筒状の成形体に対し、指を貫入する簡易試験を実施し、下記評価基準に基づいて1〜5の5段階で遠心締固め性の評価を実施した。結果を表3に示す。
【0104】
<遠心締固め性評価基準>
1:共重合体又は分散剤の添加量を調整してもスラッジやジャンカといった明らかな成形不良が発生する。
2:明らかな成形不良の発生はないが、端面の充填性が悪い又は成形体が柔らかいため、成形体内側表面に触れただけでスラッジが付着する。
3:成形不良の発生がなく、端面の充填性も良好だが、成形体内側表面に人差し指をあてて押し込もうとすると容易に貫入する。
4:成形不良の発生がなく、端面の充填性も良好で、成形体内側表面に人差し指をあてて押し込もうとしても容易には貫入が起らない。
5:成形不良の発生がなく、端面の充填性も良好で、成形体内側表面に人差し指をあてて押し込もうとしても貫入が起らない。
なお、これらの評価において成形体内側表面を人差し指で押し込む力と同様の力で人差し指で天秤の皿を押したところ、指の接触面は直径約1cmの円であり、天秤の目盛りは500gであった。
【0105】
【表3】
【0106】
表3中、構成単量体としてAAを含まない共重合体を用いた比較例3−1及び化合物(1)を含まない比較例3−2に対して、構成単量体としてAAを所定量含む共重合体を用いた実施例3−1a〜3−1e及び実施例3−2は良好な遠心締固め性を示した。これは、実施例の共重合体は、成形終了時点では、柔軟な分子構造によりセメント粒子の水和が促進された結果、形成された水和生成物によるネットワーク構造が高い降伏値を示し、遠心成形中は金属型枠の回転に伴うガタつきによりコンクリートが流動化し、骨材間隙へのモルタル分の充填性が向上したためであると考察される。