(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
更なる比較器であって、前記更なる比較器は前記MCUから第1の更なる目標値を受信するように結合され、前記第1の更なる目標値は前記パワー半導体デバイスの前記出力信号における電力変動が沈静化した後の前記パワー半導体デバイスの前記出力信号の更なる期待値を表し、前記電力変動は前記駆動信号が変更されることから生じるものであり、また前記更なる比較器は、前記パワー半導体デバイスの前記出力信号が前記更なる期待値未満である場合には第1の値を有し、前記パワー半導体の前記出力信号が前記更なる期待値以上である場合には第2の値を有する更なるブール信号を供給するように結合される、更なる比較器、を更に備え、
前記ブール信号が前記第1の値と前記第2の値との間の前記第1の遷移を示すまで前記MCUに前記第1の駆動信号を保持させる前記プログラム命令は、更に、前記ブール信号及び前記更なるブール信号の両方が、前記第1の値と前記第2の値との間のそれぞれの第1の遷移を示すまで、前記MCUに前記第1の駆動信号を保持させ、
前記ブール信号の前記第1の値と前記第2の値との間の前記第1の遷移に応答して、前記MCUに、前記第1の駆動信号とは異なる第2の駆動信号と前記比較器への第2の目標値とを供給させる前記プログラム命令は、更に、前記MCUに、第2の更なる目標信号を前記更なる比較器に供給させ、
前記ブール信号が前記第1の値と前記第2の値との間の前記第2の遷移を示すまで前記MCUに前記第2の駆動信号を保持させる前記プログラム命令は、更に、前記ブール信号及び前記更なるブール信号の両方が、前記第1の値と前記第2の値との間のそれぞれの第2の遷移を示すまで、前記MCUに前記第2の駆動信号を保持させる、請求項1に記載のゲート駆動制御装置。
前記MCUは第1、第2、及び第3の駆動出力端子を含み、前記第1の駆動出力端子は前記第1の駆動信号を供給し、前記第2の駆動出力端子は前記第2の駆動信号を供給し、前記第3の駆動出力端子は前記第3の駆動信号を供給し、
前記ゲート駆動制御装置はマルチプレクサを更に備え、前記マルチプレクサは、制御端子と、前記MCUの前記第1、前記第2、及び前記第3の駆動出力端子にそれぞれ結合された第1、第2、及び第3の信号入力端子と、前記マルチプレクサの前記制御端子に印加された選択制御信号に応答して、前記パワー半導体デバイスに前記第1、前記第2、及び前記第3の駆動信号のうちの選択された信号を供給するように結合された出力端子と、を有し、
前記プログラム命令は、
前記MCUが前記DSAT信号を受信するのに応答するときに、前記MCUが前記マルチプレクサを制御して前記第1の駆動信号を選択するようにし、
前記ブール信号が前記第1の値と前記第2の値との間の前記第1の遷移を示すときに、前記MCUが前記マルチプレクサを制御して前記第2の駆動信号を選択するようにし、
前記ブール信号が前記第1の値と前記第2の値との間の前記第2の遷移を示すときに、前記MCUが前記マルチプレクサを制御して前記第3の駆動信号を選択するようにする、請求項1に記載のゲート駆動制御装置。
前記MCUによってカウントダウン値に設定されるように構成されたタイマーであって、前記カウントダウン値がゼロまでカウントダウンされたときに信号を前記MCUに供給するタイマー、を更に備え、
前記MCUに前記第1の駆動信号及び前記第1の目標値を生成させる前記プログラム命令は、更に、前記MCUが第1のカウントダウン値を前記タイマーに供給するようにし、
前記ブール信号が前記第1の値と前記第2の値との間の前記第1の遷移を示すまで前記MCUに前記第1の駆動信号を保持させる前記プログラム命令は、更に、前記タイマー値が前記第1のカウントダウン値をゼロまでカウントするのと、又は、前記ブール信号が前記第1の値と前記第2の値との間の前記第1の遷移を示すのとの、早い方が発生するまで、前記MCUに前記第1の駆動信号を保持させ、
前記MCUに前記第2の駆動信号及び前記第2の目標値を供給させる前記プログラム命令は、更に、前記MCUが第2のカウントダウン値を前記タイマーに供給するようにし、
前記ブール信号が前記第1の値と前記第2の値との間の前記第2の遷移を示すまで前記MCUに前記第2の駆動信号を保持させる前記プログラム命令は、更に、前記タイマー値が前記第2のカウントダウン値をゼロまでカウントするのと、又は、前記ブール信号が前記第1の値と前記第2の値との間の前記第2の遷移を示すのとの、早い方が発生するまで、前記MCUに前記第2の駆動信号を保持させる、請求項1に記載のゲート駆動制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
SiCデバイスのスイッチング速度がより速くなると、制御上の問題を引き起こすことがある。システムの漂遊インダクタンスと結合した高速のターンオン及びターンオフ時間は、デバイスがオフにされるときには比較的に高電圧のスイッチングスパイクを、またデバイスがオンにされるときには出力電圧信号のリンギングをもたらすことがある。スパイク及びリンギングは、システム中のインダクタンスLと直接的に関係する(V=L*dI/dt)。例えば、わずか50nHのインダクタンスで200アンペアを50nsで切り換えるパワー半導体デバイスは、200Vのスパイクを生成することがある。この大きなスパイクにより、SiCデバイスの有用性が制限されることがある。
【0009】
図1A及び
図1Bは、ブリッジ回路の負荷の両端のターンオン・リンギング及びターンオフスパイクを示す。
図1Aに示す回路100は、ブリッジ回路として配置される4つのパワーFET102、104、106、及び108を含んで、抵抗器110として図示される負荷に電力を供給する。FET102及び104は電圧ゲート制御1によって制御され、一方、FET106及び108は電圧ゲート制御2によって制御される。
図1Bは、ゲート制御1(112)、ゲート制御2(114)、負荷の両端の電圧(116)、及び負荷を流れる電流(118)を示すグラフである。時刻T1で、ゲート制御2はハイに遷移し、FET106及び108をオンにする。これにより、電流が端子1から端子2へ負荷を通って流れるようになる。図示するように、急速なスイッチングは、負荷の両端の電圧のリンギング120を引き起こす。このリンギングは、回路内の寄生インダクタンスによって引き起こされる。時刻T2で、ゲート制御2はローに遷移し、ゲート制御1はハイに遷移する。これは、FET106及び108をオフに切り換え、FET102及び104をオンに切り換え、電流が、逆の方向に、端子2から端子1に、負荷を通って流れるようになる。このスイッチングはまた、負荷の両端の電圧に時刻2にリンギング120を生成する。時刻T3で、ゲート制御1はローに遷移し、FET102及び104をオフにし、負荷110への電流をスイッチオフする。電流のスイッチオフにより、負荷110の両端の電圧にスパイク122が引き起こされる。
【0010】
既存のシステムは、抵抗器を使用してゲート充電電流を低減しており、従って、SiCデバイスのスイッチング時間を遅くしてスパイク及びリンギングを低減している。あいにく、スイッチング期間全体に渡りスイッチ時間を遅くすることにより、システムの効率が劇的に低下する。スイッチング速度を制御し最適化して効率を維持しながらターンオフ電圧スパイク及びターンオン・リンギングを低減するための解決策が必要とされている。
【0011】
例示的な制御回路は、SiCパワーFETを使用するものとして示されているが、これらの制御回路は、他のタイプのパワーFET又はIGBTパワー半導体と共に使用されてもよいことが、企図されている。その結果、本明細書で使用されるように、用語Vceは、パワー半導体デバイスに渡る電圧を指し、これは、IGBTのコレクター−エミッター間の電圧、又は、パワーFETのソース−ドレイン間の電圧を指す。同様に、用語Icは、IGBTのコレクター電流又はパワーFETのソース電流であり得る、デバイスの導電チャネルを流れる電流を指す。この電流は、IGBTのコレクター若しくはエミッターか、又はパワーFETのソース若しくはドレインにおいて測定することができる。
【0012】
高電圧ターンオフスパイクを管理する1つの方法は、デバイスを2段階でオフにすることである。本明細書では、これを2段階ターンオフ(2LTOff)と呼ぶ。2LTOffを実装するシステムは、まずパワー半導体デバイスのゲートを中間電圧レベルに駆動し、所定の間隔の後で又は所定のVce若しくはIc値が測定されたときに、ゲートを最終的なオフ電圧状態に駆動する。この機能の目的は、FETの動的オン抵抗を増加させてデバイスを流れる電流を減少させ、従って、dI/dt及びスパイクの大きさを低減することである。2LTOffの使用により、ユーザは、効率と電圧ターンオフスパイクとを最適にトレードオフするためにスイッチング特性を改善できるようになる。
【0013】
図2は、2LTOff動作中に発生する例示的な波形を示す。時刻T1の前に、ゲート電圧204はハイであり、デバイスはオンになっている。デバイスを流れる電流Ic206はハイであり、デバイスに渡る電圧Vce202はローである。時刻T1で、ゲート電圧204は中間値2LTOに降下し、これはデバイスの動的オン抵抗を増加させる。2LTO電圧レベルは、T3で終了する2LTO時間の間、ゲート上で保持される。時刻T3で、ゲート電圧は、そのロー値に遷移204する。時刻T2の直後に、FETはオフになり、Vce信号202に電圧スパイクをもたらす。T2で、2LTO時間の終了の前に、Vceは上昇を始める(Vce屈曲部)。以下に説明するように、Vceのこの上昇を比較器によって検出して、2LTO時間の終了の前にMCUがターンオフゲート電圧を印加するようにすることができる。
【0014】
2段階ターンオフ又はターンオンの代替として、多段階ターンオン及び/若しくはターンオフ(MLTO)が、更に優れたスパイク及びリング抑制を提供することがある。多段階法では、ゲート電圧は3ステップ以上で変更される。これは、
図3に示される。この例では、ゲート電圧304は、Vce302及びIc306のグラフによって示されるようにデバイスを制御する。図示するように、時刻T0の前、ゲート電圧304はローであり、デバイスはオフにされている(Vce302はハイであり、Ic306はローである)。時刻T0で、ゲート電圧はハイに遷移し、デバイスをオンにする。時刻T1で、ゲート電圧は第1の中間レベルに降下し、Vce信号302上に電圧スパイク302Aをもたらす。この第1の中間レベルはT1からT2までの第1の時間間隔の間保持され、T2で、ゲート電圧は第2の中間レベルに低減される。これにより、時刻T2の後で第2の電圧スパイク302Bが生じる。時刻T2とT3との間の第2の保持時間の後で、ゲート電圧はローに遷移し、デバイスはオフになる。なお、時刻T3の後では電圧スパイクはない。更に、電圧スパイク302A及び302Bは、ゲート電圧がハイからローへ一度のステップで遷移した場合よりも、はるかに小さい。
【0015】
パワー半導体(FET、他のワイドバンドギャップデバイス、又はIGBT)デバイスが電流を伝導しており、かつデバイスに渡る電圧VDSが所定のレベルを超えて増加するとき、デバイス内で非飽和(DSAT)状態が発生し、その結果、デバイス内で消費される電力が突発的な故障につながる。DSAT状態では、デバイスを通過する電流は、通常動作の時よりもはるかに大きくなることがある。デバイス内のこの過電流が素早くオフになると、システム内の任意のインダクタンスが、等式V=L*dI/dtに従って電圧スパイクを生成する。SiCパワーFETでは、ターンオフ時間は50ns未満である。この短いターンオフ時間は、非常に大きな電圧スパイクにつながることがある。例えば、3000AのDSAT状態中に15nHの漂遊インダクタンスを有する回路では、ターンオフ電圧スパイクは、15nH×3000A/50ns=900Vである。デバイスに渡るDC電圧(通常は、1200V定格のデバイスの場合で700V)に加わって、この電圧は、1600Vの過電圧スパイクをもたらし、1200Vの最大耐電圧を大幅に上回る。
【0016】
DSATを抑制するために、2つの解決策を使用することができる。1つは、ゲート抵抗を更に増加させて電圧スパイクの管理を試みることで、もう1つは、2LTOffを使用してデバイスをシャットダウンすることである。しかしながら、ゲート抵抗を増加させることは、通常動作中のデバイスの電力効率を更に低下させる。2LTOffが通常動作においてターンオフスパイクを制御するために既に使用されている場合、2LTOffは、DSAT状態でのスパイクを制御するのには効果的ではないことがある。1つの解決策は、ゲート抵抗を使用して通常動作中のターンオフ電圧スパイクを制御し、DSAT状態が検出された場合に2LTOffを使用してデバイスをオフにすることであり得る。以下に説明する例示的な装置及び方法により、2つのタイプのターンオフ機能が可能になり、パラメータの1つの組(中間電圧及び時間)が、通常動作中に使用されることがあり、(より高い電圧及び時間に対する)第2のパラメータの組が、DSAT状態が検出された場合に使用されることがある。
【0017】
第3の解決策は、通常動作及びDSAT状態の両方に対して、2つの組の多段階ターンオフ(MLTO)パラメータを使用することである。なお、2LTOffは、ターンオフ動作中に2つ以上の中間段階を使用する多段階ターンオフのサブセットである。以下で説明する装置は、2つの多段階ターンオフパラメータの組を用いる解決策を実現するために使用することができる。DSATの間、2段階よりも多くの段階を用いる多段階の解決策が、dI/dtの大きさ、従って、電圧スパイクの大きさを効果的に管理するために最適な解決策であることがある。DSAT状態が検出された後でスイッチングを実施する例示的なシステムを、
図9〜12を参照して以下で説明する。
【0018】
2段階ターンオン(2LTOn)は、2LTOffと類似しており、パワー半導体デバイスを高電圧リンギングを生成することなく素早くオンにすることを可能にする。FETゲート信号がまず中間レベルにオンにされ、この信号はある時間間隔の間このレベルに留まり、次いで、デバイスが完全にオンになる最終電圧レベルに変化する。
【0019】
以下に説明するシステム及び方法のうちの幾つかは、Vceのリアルタイム監視も追加して、2LTOff及び2LTOnの両方について、SiC又はIGBTデバイスのスイッチング特性に対するタイミングを管理する(本明細書で使用する場合、用語2LTOは、2LTOn又は2LTOffのいずれかを指すことができる)。2段階ターンオン(2LTOn)は、ターンオンの間に使用されることを除いては、2LTOffと似ている。他のシステム及び方法は、電流を監視し、又はVceのオーバーシュートを検出する。
【0020】
Vce監視
2LTO機能の主な目的は、dV/dt及びdI/dtを低減又は管理するために、FETがスイッチングサイクルの開始時に徐々にオン/オフ抵抗を変化させられるようにすることである。
図2に見られるように、Vceは、2LTO期間中、わずかに上昇し始める(FETの抵抗は増加する)。これは、
図2では「Vce屈曲部」として示される。この初期の緩やかな変化により、漂遊インダクタンスのアンペア数をなお一層徐々に変化させることが可能になり、その効果として、ターンオフスパイクが低減される。
【0021】
比較器406を使用してFETのVceを監視するための、2LTO機能を制御する1つの方法を
図4に示す。このシステムでは、マスター制御部(MCU)402は入力信号INを受信し、この入力信号INは、FETがオンにされるべきときはハイになり、FETがオフにされるべきときはローになる。信号INは、デジタル信号であっても、又はアナログ信号であってもよい。更に、MCUは、比較器406からブール信号を受信し、演算増幅器(オペアンプ)ドライバ404に印加される2LTOアナログ電圧レベルを生成し、演算増幅器ドライバ404は、次いで、SiC FET408にゲート電圧を供給する。MCU402は、基準アナログ電圧レベルVce Compareも生成し、これは、比較器406の一方の入力端子に印加される。比較器の他方の入力端子は、FET408のソース端子に結合されて、Vceレベルを監視する。
図4に示すように、FET408のソース端子は負荷410に接続され、負荷410は電圧源Vから動作電力を受け取る。VceレベルがVce Compare値と等しいか又は超過している場合、比較器406はローからハイに遷移するブール出力信号を生成する。このブール信号はMCU402に印加され、MCU402はゲート電圧を制御して2LTO動作を完了する。以下に説明するように、Vceを監視する代わりに、比較器406は、Ic又はIcに比例する電圧を監視するように構成することができる。適切な電圧レベルを保証するために、MCU402とFET408の両方とも、基準電位の共通ソース(例えば、グラウンド)に結合される。
【0022】
図4に示す回路は、Vce又はIcのいずれかを監視する単一の比較器を使用しているが、監視される電圧又は電流レベル毎に1つずつ、複数の比較器(図示せず)を使用してもよいことが企図されている。これは、MCUによって使用されるDACが、次の遷移のために比較器の基準電圧を遅れずに変更することができない場合に、望ましいことがある。上述したように、別個の比較器(図示せず)を使用してVceを監視してDSAT状態を検出することもできる。この比較器は、通常のオンレベルよりも大きな電圧レベルを検出する。MCUは、MCUがパワー半導体デバイスをオンにし、かつ、比較器の出力信号がDSAT電圧値以上の電圧値を示す場合に、DSAT状態を検出することができる。
【0023】
以下に説明する例では、MCUは、アナログ出力信号を受信しかつ提供することを可能にする、内部アナログ/デジタル変換器(ADC)及びデジタル/アナログ変換器(DAC)(図示せず)を含む、プログラム可能制御部であることがある。或いは、MCUは、特定用途向け集積回路(ASIC)、結合プログラム可能論理回路(CPLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、又は離散制御ロジックとして実装されることがあり、それぞれはADC及びDACを有するか又はADC及びDACに結合されて、アナログ信号を受信しかつ提供し、同時に、
図7、8、10、及び11を参照して以下で説明する動作を行う。別の代案として、MCU402及びドライバ404は、Charpentierら著の「POWER STACK CONTROL SYSTEMS」と題された米国特許第8,984,197号明細書に記載されるシステムのMCU、インターフェースボード、及びドライバボードなどの回路を含んでもよく、この米国特許は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
図4では、MCU402はVCE compare電圧を比較器406に供給する。このレベルは、特定の用途向けにターンオフスパイク又はターンオンdI/dtのサイズを管理するための最適なレベルを決定するためにシステムの特性評価を実施することによって、設定される。各設計のインダクタンスは異なることがあるので、この値は各回路設計毎に決定することが望ましい。例えば、MCUはVceターンオフレベルを10Vに設定することがある。10VのVceレベルが一旦達成されると、2LTOff時間は停止し、MCUはFETのゲートにロー(オフ)信号を印加し、FETがオフになるようにする。別の例として、2LTOnの場合、MCUはVce比較レベルをVCC−10Vに設定することがある。Vceがそのレベルを一旦下回ると、2LTOnは停止し、MCUはFETのゲートに印加された信号をオン(ハイ)レベルに遷移させる。パワーシステムに対する電圧レベルが800V以上ほどにも高いことがあることを考慮すると、分離された比較器又はレベルシフト回路(図示せず)を使用して、2LTOff及び2LTOn状態を別個に監視することが望ましいことがある。これにより、比較器が、MCUへの分離された比較器出力を用いて、例えばVCC−10Vの2LTOnを監視できるようになる。
【0025】
Ic監視
特定のIGBT及びSiCデバイスでは、製造業者は、主出力電流に比例する二次出力ピンを提供する。この出力ピンは、例えば、電流ミラー構成でパワーFETのソース電極及びゲート電極と並列に接続されたソース電極及びゲート電極を有するより小型のFET(図示せず)のドレイン電極であることがある。この出力ピンにより、システムが、より小型のFETのドレインとグラウンドとの間に結合された低オーム抵抗器(図示せず)に二次電流を分流して、FETを流れる全電流の関数である監視電圧を生成することが可能になる。システムによっては、主電流出力内の分流抵抗器を使用して、電流ミラー構造の代わりに使用される測定可能電圧を生成することが可能である。低オーム抵抗器又は分流抵抗器の両端の電圧出力は、比較器によって監視され、電圧がMCUによって印加されるレベル(例えば、2LTOff又は2LTOn)に達すると、MCUはFETを完全にオフ又はオンに駆動する。
【0026】
例示的なIce監視システムを、
図5に示す。このシステムは、
図4に示したMCU402と同じであってもよいMCU502を含む。例示的なシステムは、
図4に示したオペアンプ404及び比較器406と同じであってもよい、オペアンプドライバ回路540及び比較器506も含む。ドライバ540の出力信号は、SiC FET508のゲートに結合されている。この実施態様では、TLTOn及びTLTOff値及び時間は、
図4を参照して上述したのと同じ態様で、FET又はIGBT508の電流ミラー出力CMからの監視された電流信号と回路設計とに基づいて、MCUによって設定される。
図5は、FET508からVceを受け取り、かつ、MCU502から第2の基準値を受け取るように結合された比較器512(想像線で示す)も含む。比較器512が制御装置に追加されると、制御装置はIc、Vce、又はその両方に基づいて、TLTOn、TLTOff、又はその両方を行うことができる。
【0027】
リアルタイム2LTOff及び2LTOn調節
この機能は、Vce又はIceが、比較器を始動させるレベルに達するのに要する時間の量を利用する。この時間は、MCUの内部クロック(デジタルタイマーセット、ゼロまでカウントダウンする)を使用することにより、MCUによって監視される。タイマーの「設定」値は、IGBT又はSiC FETを含む回路上での二重パルス試験又は他の形式の動的試験によって得られた、IGBT又はSiC FETデバイスの特性評価に基づく。
【0028】
この調節を行う例示的なシステムを
図6に示す。このシステムは、
図6では、MCUは、TLTOn若しくはTLTOffの値又は時間を調節するべきかどうかを判定するために、Vce信号上のリンギング及びVce電圧スパイクを監視するという点を除いては、
図4に示したMCU402、オペアンプ404、及び比較器406と同じ態様で動作するMCU602、オペアンプ604、及び比較器606を含む。監視回路は、ツェナーダイオード610及び抵抗器612を含む。時間が長すぎるか又は短すぎる場合、MCUは、2LTOff又は2LTOnレベル及び/又は時間を調節して、FETが、異なる電圧レベルか又は異なる速度で状態を変更し、従って、オーバーシュート、dI/dt、及びスイッチング特性の効率を最適化するようにさせることができる。
【0029】
この機能は、ツェナーダイオード610を使用して、ツェナーダイオード610の降伏によって規定されるレベルをVceが超えたことを、まず決定する。ツェナーダイオードは、許容可能なオーバーシュート(スパイク又はリンギング)値だけVceより大きい降伏電圧を有するように選択される。ダイオードの降伏がおきると、抵抗器612の両端に電圧が発生する。この電圧は、オーバーシュートが高過ぎていることを意味し、MCUは2LTOffレベルを増加させるか、2LTOffレベルを減少させるか、又は保持時間を増加させる。この変更は、段階的に行われて、Vceのオーバーシュートをダイオードの降伏レベル未満のレベルに引き下げることができる。
【0030】
図4〜6に示す回路は、ユニティゲイン増幅器として構成されたオペアンプをゲート駆動回路として含んでいるが、この駆動回路は、削除されても、又は異なる技術を使用して実装されてもよいことが企図されている。例えば、駆動回路は、MCUによって提供される信号が、FET又はIGBTのゲートを迅速に切り替えるのに十分な電流を伝達するように、MCUの内部に実装されることがある。或いは、オペアンプは、プッシュプル増幅器などの別のバッファ増幅器によって置き換えることができる。
【0031】
上述した回路のいずれでも、特定のデバイスに対して使用されるべき最良の2LTOn及び2LTOff電位は、FET又はIGBTの年数又は温度に基づいて変化することがある。これらの変化を補償するために、MCUは、各パワー半導体デバイスがどの位長く使用されてきたかを測定する内部クロックを含むことがあり、また、温度センサ(例えば、サーミスタ又は熱電対(図示せず))と結合してデバイスの瞬時温度を決定することがある。これらの値を式に適用して、2LTOn及び/又は2LTOffゲート電圧値及び遅延時間を調節して、経年劣化及び/又は温度を補償することができる。使用される特定の式は、パワー半導体デバイスの構造及び構成に依存しており、経験的に決定することができる。
【0032】
図7及び8は、それぞれ
図4、5、及び6に示す回路内のMCU402、502、又は602の動作の例を示す流れ図である。
図7は、2LTOモード(2LTOff及び2LTOnの両方)でのシステムの動作を示し、一方
図8は、DSAT障害状態が検出された場合のシステムの動作を示す。DSAT状態は、
図5でIcを監視して、FET又はIGBTを流れる電流が過大になるか又は突然の増加を経験する場合を判定することによって、又は、デバイスが飽和している場合のオン状態Vce値よりも高いオン状態値についてVceを監視するか、若しくはオン状態Vce値が急激な増加を示す場合のVceを監視することによって、検出することができる。DSAT状態を処理するための他のシステム及び方法を、
図9〜12を参照して以下に説明する。
【0033】
ブロック702で、MCUは入力端子IN上で入力トリガーの立ち上がりエッジを検出する。この信号は、FETがオンにされるべきであることを示す。このトリガーを検出すると、ブロック702で、MCUは、2LTOnレベル及び2LTOnタイマー値を選択することにより、2LTOn動作を開始する。次いで、MCUは、ドライバ回路を介してFETのゲート電極に2LTOnレベルを印加する。MCUはまた、比較器に供給される基準値を中間Vce(又はIc)レベルに設定し、この中間Vce(又はIc)レベルは、FETがオンになり得ることを示す。ブロック706で、MCUは2LTOnタイマーを開始する。ブロック706で、タイマーが満了した(例えば、ゼロまでカウントダウンした)場合、又は、Vce(若しくはIc)値が基準レベルに達したことを比較器が示す場合、MCUはゲート電位を完全なオン(ハイ)レベルに設定する。
【0034】
ブロック710で、MCUは入力トリガーINの立ち下がりエッジを検出して、ターンオフ動作を開始する。また、ブロック710で、MCUは、2LTOff動作に適切な基準レベル及び遅延時間を選択する。ブロック712で、MCUは、2LTOffレベルがFETのゲート電極に印加されるようにし、比較器に印加される基準値を、FETがターンオフされ得ることを示すVce(又はIc)の中間値に設定する。ブロック714で、MCUは2LTOffタイマーを開始する。ブロック716で、タイマーが満了した場合、又は、Vce(若しくはIc)値が基準レベルに達したことを比較器が示す場合、MCUはゲート電位を完全なオフ(ロー)に設定する。
【0035】
図8は、DSAT障害状態が検出された場合の例示的な動作を示す。
図8に示すアルゴリズムは、
図7に示すアルゴリズムと共に用いて、DSAT状態が検出された場合により積極的なターンオフ動作を提供することができる。ブロック802で、DSAT状態が検出された場合、MCUは、この例では、多段階ターンオフ(MLTO)ゲート電圧値及び対応する遅延時間の組が選択されるようにするDSAT状態インジケータを設定する。ブロック804で、MCUは、ゲート電極に印加される信号を第1のターンオフゲート電圧レベルに設定し、ブロック806で、タイマーを開始して第1の遅延時間をカウントダウンする。ブロック808で、タイマーが満了すると、MCUはゲート電位を第2の(次の)オフ電圧レベルに設定する。矢印807によって示すように、ブロック806及び808は、1回又は複数回繰り返されて、複数の介在レベルに対処することができる。単一の中間レベルのみが存在する可能性がある(例えば、2LTOff)ので、矢印807は想像線で示されている。各レベルi毎に、i番目のタイマーがブロック806で開始され、このタイマーがカウントダウンすると、ブロック806はi+1番目の出力レベル及び遅延値を設定し、ブロック806に分岐する。i+1番目レベルがn番目のレベルと同じになる場合、制御はブロック810に移る。ブロック810で、MCUがn番目(最後)のオフ電圧レベルを一旦選択すると、タイマーは最後の遅延値で開始する。ブロック812で、タイマーが最後の遅延値をカウントダウンすると、MCUはFET又はIGBTのゲート電位を完全なオフ電圧レベルに設定する。
【0036】
DSAT状態が検出された場合(この例では、SiC FETの場合)、パワー半導体固定多段階ターンオフ及びVce(又はVds)フィードバック制御多段階ターンオフという、ターンオフ特性を管理するために利用することができる2つの方法がある。
【0037】
固定マルチレベルターンオフ
固定マルチレベルターンオフでは、FETへのゲート信号は、固定の電圧の組を介して進められる。各電圧は、所定の(かつ場合によっては異なる)時間間隔の間、保持される。一実施態様では、レベル及び時間ステップはプログラム可能であり、特性評価手順を通じて最適化されることができる。
図9は、ゲート信号902及びVds904に対する典型的な時間及び電圧のシーケンスを示す。
図9では、T0からT4までの値は、連続的な時間間隔を表す。
図9の左側の縦軸はゲート信号に対応し、右側の縦軸はVdsに対応する。時間間隔T1の間のDSAT状態の検出に応答して(例えば、Vdsは2μs以内に12Vまで増加する)。表1は、各イベントについての詳細を示す。
【0039】
図10は、
図9及び表1に示すMLTO動作に対するイベントのシーケンスを示す。ブロック1002で、DSAT状態が検出される。上述したように、DSATは、パワー半導体がオン状態の場合の許容値(例えば、12V)よりも大きなVds値として、MCUによって検出することができる。或いは、DSATは、Vds値における急激な変化としてMCUによって検出することができる。この方法の場合、MCUは、
図12を参照して以下に説明するアナログ/デジタル変換器(ADC)を含むか又はこれに結合されることがあり、このアナログ/デジタル変換器(ADC)はVds信号を定期的な間隔でサンプリングし、サンプリング間隔は10nsと500nsとの間であり得る。DSAT状態は、連続的なサンプルが、閾値よりも大きな変化率を規定する場合に、検出され得る。
【0040】
次に、ブロック1004で、MCUはゲート信号を第1の低減レベル(例えば、14V)に設定し、MCUに内在することがあるウォッチドッグタイマーに第1の時間間隔(T2)をロードする。表1の例に示すように、この時間値は500nsである。ブロック1006、1008、1010、1012、及び1014は、各間隔及びゲート電圧の各ステップ毎に実行されるループを形成する。この例では、T2は、ループを通る第1回目に対する現在の間隔である。
【0041】
ブロック1006で、MCUは、現在の間隔に対してタイマーを開始し、かつブロック1008に制御を移し、ブロック1008はタイマーを監視し、タイマーがゼロまでカウントダウンするとブロック1010に制御を移す。ブロック1010は、現在の間隔の終了時に印加されることになるゲート信号を選択する。ブロック1012で、MCUは、ブロック1010で選択されたゲート信号レベルがシーケンスの最後のレベルであるかどうかを判定する。そうではない場合、ブロック1014は、選択されたレベルに対応する間隔をタイマーにロードし、また、ブロック1006に制御を移して、現在の時間間隔となる新たな時間間隔の間ゲート信号を規定の電圧で保持する。ブロック1006〜1014によって規定されるループは、選択されたゲートレベル信号が最後のレベル(例えば、オフ状態)であるとブロック1010が判定するまで、繰り返される。これがおこると、ブロック1016はゲート信号をオフレベルに保持する。
【0042】
図10のブロック1006〜1014によって形成されるループは、ゲート電圧を、18Vのオン電圧から、14Vの第1のステップ(T2の期間中)、9Vの第2のステップ(T3の期間中)、4Vの第3のステップ(T4の期間中)、最後に−4Vのオフ電圧へと順次進む。この流れ図は、各間隔の終了時に単一のカウンターがロードされることを示しているが、別個のカウンター(図示せず)を事前にロードして各間隔毎に始動させてもよく、或いは、2個のカウンター(図示せず)をピンポン式に使用して、一方のカウンターが次の時間間隔をロードされる間に、他方のカウンターが現在の間隔をカウントダウンすることでもよいことが、企図されている。
【0043】
VCE/DSフィードバック制御多段階ターンオフ
図11は、MLTOシーケンスの次の電圧レベルにいつ進むかを決定するために、どのようにVce/Vdsを監視することができるかを示す流れ図である。
図12を参照して以下に説明する例示的なシステムは、2つの比較器を使用して、過電圧スパイクがいつ所定の電圧VCHK1を上回り、所定の別の電圧VCHK2を下回るかを判定する。この低下する電圧変化は、前のステップによって引き起こされた電圧スパイクが沈静化したこと、また、ターンオフ処理の次のステップを進められることを示す。固定の時間の組を待つのではなく、システムの状態に基づいて次の電圧レベルに切り換わることにより、MLTO処理を最適化し、可能な限り素早くパワーデバイスをシャットダウンして起こり得る損傷を低減することができる。
【0044】
ブロック1102に先立って、パワー半導体デバイスはオンにされる(例えば、ゲート電圧が18Vになる)。ブロック1102で、MCUはDSAT状態を検出する。MCUは、ブロック1002を参照して上記で説明したのと同じ態様で、DSAT状態を検出することができる。DSAT状態が検出されるとすぐに、MCUは、ゲート信号を第1のレベル(例えば、14V)に設定し、かつ場合によってはウォッチドッグタイマーに第1のカウントダウン値(例えば、T2)をロードすることにより、MLTO動作を開始する。ウォッチドッグタイマーが使用される場合、MCUはブロック1106でタイマーを開始する。
【0045】
タイマーが使用されない場合、又は、タイマーが使用される場合にはタイマーのカウントダウンと並行して、ブロック1112はVdsがVCHK1よりも大きいかどうかを判定する。上述したように、ゲート電圧が低下すると、パワー半導体デバイスのチャンネル抵抗が増加し、Vdsを増加させる。ゲート電圧が低下した直後に、Vdsは電圧スパイクを示すことがある。VCHK1は、ゲート電圧が変化する前のVds電圧よりも所定の量(例えば、1〜10パーセント)だけ大きなVds電圧である。VCHK2は、VCHK1よりも大きいが、VCHK1に予期される電圧スパイクを加えた電圧よりも小さい電圧値である。従って、VCHK2は、電圧スパイクが沈静化した後のVdsに対する上限目標レベルを表す。ブロック1114で、MCUは、VdsがVCHK2より小さいかどうかを判定する。比較は、ブロック1112では「より大きい」として、ブロック1114では「より小さい」として説明したが、これらの比較は、それぞれ「以上である」又は「以下である」であってもよいことが企図されている。
【0046】
ウォッチドッグタイマーが使用される場合、VdsはVCHK1以下であるとブロック1112が判定し、かつ、VdsはVCHK2以上であるとブロック1114が判定すると、制御はブロック1106に移されて、タイマーを減じ続ける。タイマーが使用されない場合、ブロック1112及び1114は、条件が満たされるまでVdsの値を継続的に試験する。この動作は、想像線1113及び1115によって示される。
【0047】
VdsがVCHK2未満であるとブロック1114が判定した後で、ブロック1110はゲート信号を次のレベルに設定する。ウォッチドッグタイマーが使用され、かつ、VdsはVCHK1より大きいとブロック1112が判定し、かつ/又はVdsはVCHK2未満であるとブロック1114が判定する前にタイマーが満了すると、タイマーの満了により制御がブロック1110に移される。
【0048】
ブロック1116で、MCUは、ブロック1110で設定されたレベルがオフ電圧であるかどうかを判定する。そうである場合、制御はブロック1120に移り、ブロック1120はパワー半導体デバイスに印加されるゲート信号をオフレベルに保持する。ブロック1110で印加されたレベルが最後のレベルではないとブロック1116が判定すると、ブロック1116は制御をブロック1118に移して、次のステップのためにVCHK1及びVCHK2に対する値をロードする。ウォッチドッグタイマーが使用されている場合、次の時間間隔(例えば、T3、T4、等)がブロック1118でタイマーにロードされる。
【0049】
ウォッチドッグタイマーを使用して、比較器シーケンスの動作不良を防止することができる。立ち上がりVdsがVCHK1に達しない場合、又は後に続く立ち下がりVdsがVCHK2に達しない場合、ウォッチドッグタイマーはタイムアウトし、ゲート信号を次の電圧レベルに順序に従って進める。この状態は、ブロック1112で、L*dI/dtが電圧VCHK1に達するほど十分に高い電圧スパイクをもたらさない場合、又は、ブロック1114で、VDSが電圧VCHK2に達するほど十分に低く降下しない場合に、発生することがある。
【0050】
図12は、
図10及び
図11で説明した処理を実施するために使用することができる例示的なMCUの、部分的に概略図の形態での、ブロック図である。制御ロジック1202は、内部タイマー1203と、レジスター(図示せず)と、メモリ(図示せず)と、
図10及び/又は
図11で説明した処理を実施する状態機械(図示せず)とを含む。上述したように、制御ロジックは、スタンドアローンの又は組み込みのマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、若しくはDSPとして、実装されることがある。或いは、制御ロジックはASIC、FPGA、又はCPLDとして実装されることがある。別の代替案では、制御ロジックは離散論理回路を使用して実装されることがある。一実施態様では、制御ロジックはMCU402などの回路を含むことがあり、ドライバ404は、上記で参照した米国特許第8,984,197号明細書に記載されるシステムのMCU、インターフェースボード及びドライバボードなどの回路を含むことがある。
【0051】
制御ロジックは、比較器1204及び1206によって供給されるブール出力信号を受信するように構成される。これらの比較器への一方の入力は、抵抗器R3及びR4を含む分圧器によって供給される、Vce又はVdsのいずれかに比例する電圧である。抵抗器R3及びR4は、結合された高インピーダンス(例えば、1メガオームよりも大きい)を有するように、かつ、Vce/Vds信号の予期される範囲を、比較器1204及び1206の入力信号範囲と適合した範囲にスケール変更するように、選択される。分圧器によって供給される信号は、ADC1205にも印加されて、上述したようにMCU1202によって監視されるデジタル化された値を生成して、DSAT状態の発生を判定することができる。
【0052】
Vce/Vds信号の予期される範囲は、パワー半導体デバイスの切り換え時に発生する可能性がある最悪の場合の電圧スパイクを含むことが望ましい。従って、R3及びR4の値は、デバイスがオフにされるときのVce/Vdsの期待値、比較器1204及び1206の入力範囲、パワー半導体デバイスを含む回路の寄生インダクタンス、及びVdsに対するdv/dtの期待値、に依存する。
【0053】
比較器1204及び1206への他方の入力は、それぞれのデジタル/アナログ変換器(DAC)1208及び1210によって供給される。DAC1208は、制御ロジック1202によって供給されるVCHK1用のデジタル値をアナログ値に変換し、このアナログ値をR4の両端のスケール変更されたVce/Vds信号と比較できるように比較器1204に印加する。同様に、DAC1210は、制御ロジック1202によって供給されるVCHK2用のデジタル値をアナログ値に変換し、このアナログ値をスケール変更されたVce/Vds信号と比較できるように比較器1206に印加する。DAC1208及び1210並びに比較器1204及び1206は、
図11のブロック1112及び1114を実施するために使用される。
【0054】
ブロック1112を実施するのに加えて、比較器1204を使用してDSAT状態を検出することができる。この実施態様では、DAC1208に供給される値は、半導体デバイスがオンにされたときにDSAT状態の発生を示す、Vce/Vdsの閾値であることがある。従って、半導体デバイスをオンにするためにトリガー信号を受信すると、制御ロジック1202はDSAT閾値をDAC1208に印加し、ON電圧(例えば、18V)が半導体デバイスのゲートに印加される間に比較器1204の出力信号を監視することがある。
【0055】
図12に示す例示的な回路は、5個のDAC1222、1224,1226、1228、及び1230も含む。これらのDACは、MLTO動作で使用されるそれぞれのゲート電圧に対応するデジタル値をMCU1202から受信する。DACはこれらのデジタル値をアナログ信号に変換し、このアナログ信号はアナログマルチプレクサ1232に印加される。マルチプレクサは、MCU1202によって供給されるMUX SELECT信号によって制御される。マルチプレクサ2132の出力信号は、2つの利得制御抵抗器R1及びR2によって決定される利得を有する高速演算増幅器1234に印加される。増幅器1234の出力信号は、パワー半導体デバイスのゲート電極に接続されているバッファ増幅器1236に印加される。演算増幅器1234及びバッファ回路1236は、
図4及び
図5を参照して上述した演算増幅器404及び504と同じ態様で動作する。
【0056】
図12に示す例示的な構成は5個のDACを使用しており、そのそれぞれは、制御ロジック1202の内部にあるそれぞれのプログラム可能レジスター(図示せず)に結合されている。これらのレジスターに記憶される値は、Vce/Vdsのスケール変更された値の範囲を決定するために、かつ、MLTOの様々な段階で使用されることになる特定のゲート電圧を決定するために、パワー半導体デバイスが特性評価されるときに、決定される。これらの値は、デバイスが最初にオンにされたときに設定することができ、また、例えば、デバイスの温度及び年数に基づいて、パワー半導体デバイスの動作中に変更されることができる。別個の値をアナログマルチプレクサ1232に印加することにより、システムがデバイスのゲート電圧を迅速に変更することが可能になる。MUX SELECT信号を供給する制御ロジック1202と印加されるゲート電圧との間の遅延は、高速演算増幅器1234及びバッファ1236における伝搬遅延のみである。
【0057】
図12は、DAC1208、1210、1222、1224、1226、1228、及び1230をMCU制御ロジック1202の外部にあるものとして示しているが、これらのDACのうちの1つ又は複数がMCU制御ロジック1202の内部にあり、その結果、MCUはアナログマルチプレクサ1232に直接的に駆動信号を供給してもよいことが、企図されている。
【0058】
上記で概略を述べた例示的な装置及び方法の方法態様は、例えば、ユーザコンピュータシステム、サーバコンピュータ、又は他のプログラム可能デバイスによって実行可能なソフトウェア、ファームウェア、又はマイクロコードの形式で、プログラミングで具現化することができる。技術のプログラム態様は、典型的には、ある種の機械可読媒体で運ばれるか又は具現化されている実行可能コード及び/又は関連データの形態での、「製品」又は「製造物品」とみなすことができる。「記憶装置」タイプの媒体には、ソフトウェアプログラミングのためにいつでも非一時的な記憶装置を提供することができる様々な半導体メモリ、テープドライブ、ディスクドライブなどの、コンピュータ、プロセッサ等又はそれらの関連モジュールの有形のメモリのいずれか又は全部が含まれる。ソフトウェアの全部又は一部は、時には、インターネット又は様々な他の電気通信ネットワークを介して通信することができる。そのような通信は、例えば、1つのコンピュータ又はプロセッサから別のコンピュータ又はプロセッサにソフトウェアをロードさせることができる。従って、ソフトウェア要素を運ぶことができる別のタイプの媒体には、ローカルデバイス間の物理的なインターフェース間で、有線の光学式の地上通信線ネットワークを介して、かつ様々なエアリンクを介して使用されるような、光学的な、電気的な、かつ電磁的な波が含まれる。有線の又は無線のリンク、光リンクなどの、そのような波を伝達する物理的要素も、ソフトウェアを運ぶ媒体とみなすことができる。本明細書で使用する場合、「非一時的」、「有形」、又は「記憶装置」媒体のうちの1つ又は複数に限定されない限り、コンピュータ又は機械「可読媒体」などの用語は、実行するためにプロセッサに命令を提供することに関係する任意の媒体を指す。
【0059】
従って、機械可読媒体は、有形の記憶媒体、搬送波媒体、又は物理的伝送媒体を含むがこれらには限定されない多数の形態を取ることができる。非一時的記憶媒体には、例えば、任意のコンピュータ等内の記憶装置のいずれかなどの、光ディスク又は磁気ディスクが含まれる。また、非一時的記憶媒体には、例えば、コンピュータプラットフォームのメインメモリなどのダイナミックメモリなどの記憶媒体も含まれる。有形の伝送媒体には、同軸ケーブルと、コンピュータシステム内部のバスを構成するワイヤを含む銅線及び光ファイバーとが含まれる。搬送波伝送媒体は、無線周波数(RF)及び光ベースのデータ通信中に生成されるような、電気信号若しくは電磁信号、又は音響波若しくは光波の形態を取ることができる。従って、コンピュータ可読媒体の一般的な形態には、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD−ROM、DVD若しくはDVD−ROM、任意の他の光媒体、パンチカード紙テープ、穴のパターンを有する任意の他の物理的記憶媒体、RAM、PROM及びEPROM、FLASH−EPROM、任意の他のメモリチップ若しくはカートリッジ、データ若しくは命令を伝送する搬送波、そのような搬送波を伝送するケーブル若しくはリンク、又は、コンピュータがプログラミングコード及び/若しくはデータを読み出すことができる任意の他の媒体、を含む。コンピュータ可読媒体のこれらの形態の多くは、1つ又は複数の命令の1つ又は複数のシーケンスを実行のためにプロセッサに伝送することに関与することがある。
【0060】
プログラム命令は、任意の所望の言語で符号化されたソフトウェア又はファームウェアの実装を含むことができる。プログラミング命令は、コンピュータシステム又はデバイスのプロセッサにアクセス可能な機械可読媒体中に組み込まれると、コンピュータシステム又はデバイスを、プログラム内で指定された動作を実行するようにカスタマイズされた特殊用途機械にする。
【0061】
なお、本明細書で使用する用語及び表現は、違うように特定の意味が本明細書に記載されている場合を除いては、対応するそれぞれの調査及び研究の分野に関するそのような用語及び表現と一致する、通常の意味を有する。第1及び第2などの関係を示す用語は、単にある要素又は動作を別の要素又は動作から区別するために使用されることがあり、そのような要素又は動作間の何らかの実際のそのような関係又は順序を必ずしも必要としない又は示唆しない。用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、又はそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含を含むように意図されており、その結果、要素の列挙を含む工程、方法、物品、又は装置は、それらの要素を含むだけでなく、明示的に列挙されていないか又はそのような工程、方法、物品、若しくは装置に固有の、他の要素を含むことができる。「a」又は「an」が前に置かれる要素は、更なる制約が無ければ、その要素を含む工程、方法、物品、又は装置に追加の同一の又は類似の要素が存在することを排除するものではない。
【0062】
本明細書で使用される用語「結合された」は、あるシステム要素によって生成された信号を別の「結合された」要素に伝える任意の論理的、物理的、又は電気的な接続、リンク等を指す。特に断りの無い限り、結合された要素又はデバイスは、必ずしも互いに直接的に接続されている必要はなく、信号を修正、操作、又は伝送することができる中間構成要素、要素、又は通信媒体によって分離されていてもよい。様々な結合のそれぞれは、別々の通信チャンネルとみなすことができる。
【0063】
最良の形態及び/又は他の例と考えられるものについて前記で説明してきたが、その中では様々な修正を行うことができること、本明細書に開示する発明対象は様々な形態及び例で実施できること、及び、それらは多数の用途に応用することができ、その一部のみを本明細書で説明したこと、を理解されたい。本発明の概念の真の範囲内に該当する任意の及び全ての修正例及び変形例を、以降の特許請求の範囲によって特許請求することが意図されている。