特許第6963561号(P6963561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6963561金属ストリップの連続溶融浸漬コーティングのための装置および関連方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963561
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】金属ストリップの連続溶融浸漬コーティングのための装置および関連方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/00 20060101AFI20211028BHJP
   C23C 2/40 20060101ALI20211028BHJP
   C23C 2/06 20060101ALI20211028BHJP
   C23C 2/12 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   C23C2/00
   C23C2/40
   C23C2/06
   C23C2/12
【請求項の数】33
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-555863(P2018-555863)
(86)(22)【出願日】2017年4月26日
(65)【公表番号】特表2019-515129(P2019-515129A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】IB2017052405
(87)【国際公開番号】WO2017187359
(87)【国際公開日】20171102
【審査請求日】2020年3月26日
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2016/052360
(32)【優先日】2016年4月26日
(33)【優先権主張国】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブ,ジョゼ
(72)【発明者】
【氏名】ドシェル,ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】サン−レーモン,ユベール
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 韓国登録特許第10−1533212(KR,B1)
【文献】 特表2004−513237(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0044972(KR,A)
【文献】 特表2004−513238(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/173663(WO,A1)
【文献】 実開平07−028958(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0224045(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101993997(CN,A)
【文献】 特開2012−021206(JP,A)
【文献】 特表2019−515130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00−2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ストリップ(1)の連続溶融浸漬コーティングのための装置(10;100)であって、
液体金属浴(12)を包含するように意図された容器(11)と、
容器(11)内に配置されて液体金属浴(12)に浸漬されるように意図された底部ローラ(15)と、
液体金属浴(12)の表面を用いて変位ケーシング(13)内で液体金属シール(14)を決定するために、変位ケーシングの下端部が前記液体金属浴(12)内に浸漬されるように意図された、金属ストリップ(1)のための前記変位ケーシング(13)と、
を含み、
変位ケーシング(13)は、上部分(45)および下部分(57)を含み、前記下部分(57)は、少なくとも2つの液体金属注入区画(25,29)を画定する注入箱(49)を支承し、各注入区画(25,29)は内壁(20,26)によって内向きに画定され、内壁(20,26)は上部リム(21,27)を含み、各内壁(20,26)の上部リム(21,27)は、前記注入区画(25;29)の各々の中への液体シール表面(14)からの流れを生じるために前記液体シール表面(14)の下に配置されるように意図されており、
注入箱(49)が設けられた変位ケーシング(13)は、第1回転軸(A1)の周りで金属ストリップ(1)に対して回転可能であり、
注入箱(49)は、第2回転軸(A2)の周りで変位ケーシング(13)の上部分(45)に対して回転可能であり、第2回転軸(A2)は、第1回転軸(A1)平行であり、
変位ケーシング(13)の上部分(45)に対する注入箱(49)の回転を可能にする関節は、ピボットリンクである、装置(10;100)。
【請求項2】
第2回転軸(A2)と内壁(20,26)の上部リム(21,27)の各々との間の距離(d1,d2)は、2500mm以下である、請求項1記載の装置(10;100)。
【請求項3】
注入区画(25,29)から液体金属を抽出するように構成された少なくとも1つのポンプ(30)と、各注入区画(25,29)を前記ポンプ(30)および排出チューブ(32)に接続し、注入区画(25,29)から液体金属浴(12)内に液体金属を排出するように意図された、少なくとも1つの吸引チューブ(31,33)とを含み、ポンプ(30)ならびに吸引(31,33)チューブおよび排出(32)チューブは、注入箱(49)に対して固定して実装されている、請求項1からのいずれか一項に記載の装置(10;100)。
【請求項4】
金属ストリップ(1)に対して第1回転軸(A1)の周りで変位ケーシング(13)を回転させるように構成された第1アクチュエータ(41)と、第2回転軸(A2)の周りで変位ケーシング(13)の上部分(45)に対して注入箱(49)を回転させるように構成された第2アクチュエータ(79)とを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の装置(10;100)。
【請求項5】
水平に対する注入箱(49)の傾斜角を測定するように構成された傾斜センサ(72)をさらに含む、請求項に記載の装置(10;100)。
【請求項6】
傾斜センサ(72)によって測定された傾斜角に基づく第2アクチュエータ(79)のための制御手段をさらに含む、請求項に記載の装置(10;100)。
【請求項7】
金属ストリップ(1)に対する注入区画(25,29)の内壁(20,26)の位置を視認するための工具(42)をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の装置(10;100)。
【請求項8】
注入区画(25,29)内の液体金属のレベルを視認するための視認手段をさらに含み、視認手段は、変位ケーシング(13)の外側に配置され、少なくとも1つの接続パイプ(36,37)によって注入区画(25,29)の各々の基部に接続されたリザーバ(35)を含み、前記リザーバ(35)は、注入箱(49)に対して固定して実装されている、請求項1からのいずれか一項に記載の装置(10;100)。
【請求項9】
注入箱(25,29)の内壁(20,26)の上部リム(21,27)の水平度を調整するための手段をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項10】
注入箱(49)は、変位ケーシング(13)の下部分(57)に対して固定しており、変位ケーシング(13)の下部分(57)は、第2回転軸(A2)の周りで回転可能に変位ケーシング(13)の上部分(45)に実装されている、請求項1からのいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項11】
注入箱(49)の外壁は、変位ケーシング(13)の下部分(57)の側壁(58,59)によって形成されている、請求項10に記載の装置(100)。
【請求項12】
第2回転軸(A2)は、液体金属浴(12)の外側に位置するように構成されている、請求項10または11に記載の装置(100)。
【請求項13】
変位ケーシングの上部分(45)に対する注入箱(49)の回転を可能にする関節は、ピボットリンクであり、前記ピボットリンクは、変位ケーシング(13)の上部分(45)に固定された上部関節アーム(108)と、変位ケーシング(13)の下部分(57)に固定された下部関節アーム(109)とを含み、前記上部および下部関節アーム(108,109)は、シャフトセグメント(110)を介して回転可能に接続されている、請求項10から12のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項14】
注入箱(49)は、変位ケーシング(13)の下部分(57)に回転可能に実装されている、請求項1からのいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項15】
注入箱(49)は、変位ケーシングの下端部において変位ケーシング(13)内に挿入される、請求項14に記載の装置(10)。
【請求項16】
変位ケーシング(13)の下部分および注入箱(49)のうちの一方は、回転可能な案内軸受(61)を含み、変位ケーシング(13)の下部分および注入箱(49)のうちの他方は、ジャーナル(67)を含み、各ジャーナル(67)は、第2回転軸(A2)の周りで注入箱(49)の回転案内を提供するようにそれぞれの案内軸受(61)内に受容される、請求項14または15に記載の装置(10)。
【請求項17】
第2回転軸(A2)は液体金属浴(12)内に浸漬されることを意図された、請求項14から16のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項18】
液体金属が注入箱(49)と変位ケーシング(13)との間に侵入するのを防止するために、注入箱(49)と変位ケーシング(13)の下部分(57)との間に配置された封止ガスケット(60)を含む、請求項17に記載の装置(10)。
【請求項19】
第2回転軸(A2)は、注入箱(49)が水平なときに、注入区画(25,29)の上部リム(21,27)の下に配置される、請求項14から18のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項20】
底部ローラ(15)の反対側に配置された金属ストリップ(1)の面の側に位置する後部注入区画(29)は、外壁(28)によって外向きに画定され、前記外壁(28)は、コーティング装置(10;100)の使用構成において、金属ストリップ(1)の通過平面に対してゼロより真に大きい、または15°以上の角度(α)を形成するように構成されている、請求項1から19のいずれか一項に記載の装置(10;100)。
【請求項21】
後部注入区画(29)の外壁(28)は、コーティング装置(10;100)の使用構成において鉛直であるように構成されている、請求項20に記載の装置(10;100)。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載のコーティング装置(10;100)を使用する、金属ストリップ(1)の連続溶融浸漬コーティングの方法であって、
注入区画(25,29)の上部リム(21,27)に対して金属ストリップ(1)を位置決めするように、第1回転軸(A1)の周りで変位ケーシング(13)および注入箱(49)を回転させることを含む、金属ストリップ(1)に対して注入箱(49)を位置決めするステップと、次いで
注入箱(49)を水平にするように、変位ケーシング(13)の上部分(45)に対して第2回転軸(A2)の周りで注入箱(49)を回転させることを含む、再平衡化ステップと、を含む方法。
【請求項23】
注入区画(25,29)の内壁(20,26)の上部リム(21,27)の水平度を調整するステップをさらに含む、請求項22に記載のコーティング方法。
【請求項24】
コーティング方法の間に、亜鉛およびアルミニウムを含むコーティングが、金属ストリップ(1)上に堆積される、請求項22または23に記載のコーティング方法。
【請求項25】
コーティング方法の間に、アルミニウムを含む亜鉛ベースのコーティングが、金属ストリップ(1)上に堆積される、請求項22または23に記載のコーティング方法。
【請求項26】
コーティング方法の間に、0.1から0.3%の間のアルミニウムを含むコーティングが、金属ストリップ(1)上に堆積される、請求項25に記載のコーティング方法。
【請求項27】
コーティング方法の間に、5%のアルミニウムを含み、残りは亜鉛であるコーティングが、金属ストリップ(1)上に堆積される、請求項25に記載のコーティング方法。
【請求項28】
コーティング方法の間に、マグネシウムおよび場合によりアルミニウムを含む亜鉛ベースのコーティングが、金属ストリップ(1)上に堆積される、請求項22または23に記載のコーティング方法。
【請求項29】
コーティング方法の間に、ケイ素および鉄を含むアルミニウムベースのコーティングが、金属ストリップ(1)上に堆積される、請求項22または23に記載のコーティング方法。
【請求項30】
コーティング方法の間に、アルミニウム−亜鉛コーティングが、金属ストリップ(1)上に堆積される、請求項24に記載のコーティング方法。
【請求項31】
コーティング方法の間に、55wt%のアルミニウム、43.5wt%の亜鉛、および1.5wt%のケイ素を含むコーティングが、金属ストリップ(1)上に堆積される、請求項24または30に記載のコーティング方法。
【請求項32】
コーティング方法の間に、0.1から20wt%のアルミニウムおよび0.1から10wt%のマグネシウムを含むコーティングが、金属ストリップ(1)上に堆積される、請求項28に記載のコーティング方法。
【請求項33】
コーティング方法の間に、以下の組成:
8%≦Si≦11%
2%≦Fe≦4%
を有し、残りはアルミニウムおよびいずれかの不純物であるコーティングが、金属ストリップ(1)上に堆積される、請求項29に記載のコーティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ストリップの連続溶融浸漬コーティングのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第02/38823号は、保護雰囲気中の金属ストリップのための変位ケーシングを含み、液体金属浴の表面を用いてこのケーシング内で液体金属シールを決定するためにその下端部が前記浴内に浸漬されている、コーティング装置を記載している。ケーシングは、その下端部において、液体金属を注ぐための少なくとも2つの区画を画定し、この中で、ストリップのコーティングにおいて欠陥を生じる可能性のある不純物を液体シールから除くために、浴の液体金属が液体シールから注がれる。ケーシングは、ベローズによって互いに接続された、固定の上部分および可動の下部分を含む。ストリップに対する可動部分の位置および可動部分の水平度を調整するために、下部分は2つのジャッキを介して上部分に対して可動である。可動部分の運動の性質、回転および/または並進、ならびにその振幅は、2つのジャッキのロッドの相対移動を調整することによって制御される。
【0003】
このような装置は、完全に満足のいくものではない。実際には、調整機構は使用するのに複雑であり、上部分に対する下部分の非常に正確な位置決めを可能にするものではない。さらに、ベローズを介した上部分への下部分の接続は、上部分の熱変形挙動を変化させる。
【0004】
韓国特許第10−1533212号明細書は、液体金属浴の表面を用いて変位ケーシング内で液体金属シールを決定するためにその下端部が前記浴内に浸漬されている、金属ストリップのための変位ケーシングを含むコーティング装置を記載している。ケーシングは、その下端部に、液体金属を注ぐための2つの区画を画定する注入箱を含み、この中で浴の液体金属が液体シールから注がれる。ケーシングは、ケーシングの上端部付近に形成された関節シャフトA1を介して回転軸の周りで金属ストリップに対して回転可能である。ケーシングはまた、関節シャフトA11を含む伝達装置10を介して装置のシャーシに接続される。関節シャフトA1およびA11は、それぞれの伝達装置10を介して水平並進的に可動である。
【0005】
韓国特許第10−1533212号明細書によれば、関節シャフトA1およびA11の前方向への水平並進は、ケーシングの単一運動において、注入箱の上面が溶融金属浴の表面と平行な構成で、注入箱の中心にストリップを位置決めできるようにする。
【0006】
このような装置は、完全に満足のいくものではない。実際には、ケーシングの上端部付近の単一の回転軸A1の位置のため、注入箱の位置を調整するためには相対的にかなりの運動が必要であるが、ケーシングの周りの領域の密集度を考慮するとこれは望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第02/38823号
【特許文献2】韓国特許第10−1533212号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の1つの目的は、必要とされる運動の振幅を制限しながら、ストリップに対するケーシングの位置決め、および流量の平衡化をより柔軟かつ正確に実行できるようにする、コーティング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、コーティング装置に関し、コーティング装置は、
液体金属浴を包含するように意図された容器と、
容器内に配置されて液体金属浴に浸漬されるように意図された底部ローラと、
液体金属浴の表面を用いて変位ケーシング内で液体金属シールを決定するために、その下端部が前記浴内に浸漬されている、金属ストリップのための変位ケーシングと、を含み、
ケーシングは上部分および下部分を含み、前記下部分は少なくとも2つの液体金属注入区画を画定する注入箱を支承し、各注入区画は内壁によって内向きに画定され、内壁は上部リムを含み、各内壁の上部リムは、前記注入区画の各々の中の液体シール表面からの流れを生じるために前記表面の下に配置されるように意図されており、
注入箱が設けられたケーシングは、第1回転軸の周りで金属ストリップに対して回転可能であり、
注入箱は、第2回転軸の周りでケーシングの上部分に対して回転可能である。
【0010】
コーティング装置の特定の特徴によれば、
ケーシングの上部分に対する注入箱の回転を可能にする関節は、ピボットリンクであり、
第2回転軸A2と内壁の上部リムの各々との間の距離は、2500mm以下であり、
第2回転軸は、第1回転軸と実質的に平行であり、
装置は、注入区画から液体金属を抽出するように構成されたポンプと、前記ポンプの各注入区画と排出チューブとを接続し、注入区画から液体金属浴内に液体金属を排出するように意図された、少なくとも1つの吸引チューブとをさらに含み、ポンプならびに吸引チューブおよび排出チューブは、注入箱に対して固定式に実装されており、
装置は、ストリップに対して第1回転軸の周りでケーシングを回転させるように構成された第1アクチュエータと、第2回転軸の周りでケーシングの上部分に対して注入箱を回転させるように構成された第2アクチュエータとをさらに含み、
装置は、水平に対する注入箱の傾斜角を測定するように構成された、傾斜センサをさらに含む。
【0011】
装置は、傾斜センサによって測定された傾斜角に基づく第2アクチュエータのための制御手段をさらに含み、
装置は、ストリップに対する注入区画の内壁の位置を視認するための工具をさらに含み、
装置は、注入区画内の液体金属のレベルを視認するための手段をさらに含み、視認手段は、ケーシングの外側に配置され、少なくとも1つの接続パイプによって注入区画の各々の基部に接続されたリザーバを含み、前記リザーバは注入箱に対して固定式に実装されており、
装置は、注入箱の内壁の上部リムの水平度を調整するための手段をさらに含み、
注入箱は、ケーシングの下部分に対して固定しており、ケーシングの下部分は、第2回転軸の周りで回転可能にケーシングの上部分に実装されており、
注入箱の外壁は、ケーシングの下部分の側壁によって形成されており、
第2回転軸は、液体金属浴の外側に位置するように構成されており、
ケーシングの上部分に対する注入箱の回転を可能にする関節は、ピボットリンクであり、前記ピボットリンクは、ケーシングの上部分に固定された上部関節アームと、ケーシングの下部分に固定された下部関節アームとを含み、前記上部および下部関節アームは、シャフトセグメントを介して回転可能に接続されており、
注入箱は、ケーシングの下部分に回転可能に取り付けられており、
注入箱は、ケーシングの下端部においてケーシング内に挿入され、
ケーシングの下部分および注入箱のうちの一方は、回転可能な案内軸受を含み、ケーシングの下部分および注入箱のうちの他方は、ジャーナルを含み、各ジャーナルは、第2回転軸の周りで注入箱の回転案内を提供するようにそれぞれの案内軸受内に受容され、
第2回転軸は、液体金属浴内に浸漬され、
装置は、液体金属が注入箱とケーシングとの間に侵入するのを防止するために、注入箱とケーシングの下部分との間に配置された封止ガスケットをさらに含み、
第2回転軸は、注入箱が水平なときに、注入区画の上部リムの下に配置され、
底部ローラの反対側に載置された金属ストリップの面の側に位置する後部注入区画は、外壁によって外向きに画定され、前記外壁は、コーティング装置の使用構成において、ストリップの通過平面に対してゼロより真に大きい角度を形成し、
後部注入区画の外壁は、コーティング装置の使用構成において鉛直である。
【0012】
本発明はまた、上記で挙げられたようなコーティング装置を使用する、金属ストリップの連続溶融浸漬コーティングの方法であって、
注入区画の上部リムに対して鋼ストリップを位置決めするように、第1回転軸の周りでケーシングおよび注入箱を回転させることを含む、金属ストリップに対して注入箱を位置決めするステップと、次いで
注入箱を水平にするように、ケーシングの上部分に対して第2回転軸の周りで注入箱を回転させることを含む、再平衡化ステップと、
を含む方法にも関する。
【0013】
方法の特定の特徴によれば、
方法は、注入区画の内壁の上部リムの水平度を調整するステップをさらに含み、
コーティング方法の間、たとえば55wt%のアルミニウム、43.5wt%の亜鉛、および1.5wt%のケイ素を含む、亜鉛およびアルミニウム、特にアルミニウム−亜鉛コーティングを含むコーティングが、金属ストリップ上に堆積され、
コーティング方法の間、アルミニウムを含む亜鉛ベースのコーティングが、金属ストリップ上に堆積され、
コーティング方法の間、0.1から0.3%の間のアルミニウムを含むコーティングが金属ストリップ上に堆積され、
コーティング方法の間、5%のアルミニウムを含み、残りは亜鉛であるコーティングが金属ストリップ上に堆積され、
コーティング方法の間、マグネシウムおよび場合によりアルミニウムを含み、好ましくは0.1から20wt%のアルミニウムおよび0.1から10wt%のマグネシウムを含む亜鉛ベースのコーティングが、金属ストリップ上に堆積され、
コーティング方法の間、ケイ素および鉄を含むアルミニウムベースのコーティング、特に以下の成分:
8%≦Si≦11%
2%≦Fe≦4%
を有し、残りはアルミニウムおよび可能性のある不純物であるコーティングが、金属ストリップ上に堆積される。
【0014】
本発明は、例示によってのみ提供され、以下の添付図面を参照する、以下の説明を読めば、より良く理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態によるコーティング装置の全体概略図である。
図2図1の平面II−IIに沿った上面図である。
図3】特定の態様をより詳細に示す、図1のコーティング装置の概略図である。
図4図3の詳細の拡大図である。
図5】第2の実施形態によるコーティング装置の一部の概略図である。
図6図5のコーティング装置の一部のIIIに沿った概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、金属ストリップ1の連続亜鉛めっきのための装置について説明する。しかしながら、本発明は、表面汚染が出現し、きれいな液体シールが保持されなければならない、連続溶融浸漬コーティングのいずれの方法にも適用される。
【0017】
具体的には、亜鉛およびアルミニウムを含むコーティング、特にArcelorMittalによって販売されているAluzinc(登録商標)など、たとえば55wt%のアルミニウム、43.5wt%の亜鉛、および1.5wt%のケイ素を含む、アルミニウム−亜鉛コーティングと称される、亜鉛を含むアルミニウムベースのコーティング、またはアルミニウムを含む亜鉛ベースのコーティング、特にGIコーティングと称される0.1から0.3%のアルミニウムを含む亜鉛ベースのコーティング、または5%のアルミニウムを含み残りは亜鉛および可能性のある不純物であるコーティングを堆積するために、これは有利に実施され得る。
【0018】
装置はまた、亜鉛−マグネシウムまたはZn−Mgコーティングと称される、マグネシウムを含む亜鉛ベースのコーティングを堆積するためにも使用されてよい。有利には、このようなコーティングは、アルミニウムをさらに含み、亜鉛−アルミニウム−マグネシウムまたはZn−Al−Mgコーティングと称される。有利には、亜鉛めっき装置1は、0.1から20wt%のアルミニウムおよび0.1から10wt%のマグネシウムを含むZn−Al−Mgコーティングを堆積するために提供される。
【0019】
装置1はまた、ケイ素を含むアルミニウムベースのコーティングを堆積するため、具体的には以下の組成:
8%≦Si≦11%
2%≦Fe≦4%
を有し、残りはアルミニウムおよび可能性のある不純物であるコーティングを堆積するために、使用されてもよい。
【0020】
金属ストリップ1は、具体的には鋼で作られたストリップである。しかしながら、これは他の金属材料から作られることも可能である。
【0021】
まず、冷間圧延列を離れると、金属ストリップ1は、冷間圧延に関する著しい加工硬化の後に再結晶化するために、および亜鉛めっき作業に必要な化学反応を促進するためにその化学的表面状態を準備するために、図示されない焼き鈍し炉に侵入する。この炉内で、金属ストリップ1は、たとえば650から900℃の間の温度にされる。
【0022】
焼き鈍し炉を離れると、金属ストリップ1は、図1に示され全体的な参照符号10で指定される、亜鉛めっき装置に侵入する。
【0023】
この装置10は、液体金属浴12を包含する容器11を備える。
【0024】
液体金属浴12の組成は、ストリップ1上に堆積させたいコーティングの組成に依存する。堆積されるコーティングに応じた適切な割合の亜鉛、マグネシウム、および/またはアルミニウムは別として、浴12は、Si、Sb、Pb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Ni、またはBiなど、0.3wt%までの任意の追加元素を含むこともできる。これらの様々な追加元素は、特にストリップ1上の金属コーティングの延性または接着性を改善することができるようにする。金属コーティングの特性に対するその影響を知る当業者は、求められる補足的な目的に基づいてこれらをどのように使用するかがわかるだろう。浴12は最後に、供給されたインゴットに由来する、もしくは浴12内のストリップ1の通過、金属コーティング中の不可避な不純物の源から生じる、残留元素を含有することがある。
【0025】
液体金属浴12の温度は、一般的に400から700℃の間である。
【0026】
焼き鈍し炉を離れると、金属ストリップ1は、交換器を用いて液体金属浴12の温度に近い温度まで冷却され、次に浴12内に浸漬される。
【0027】
図1に示されるように、コーティング装置10は、材料である金属に対する保護雰囲気の下で金属ストリップ1が内部を移動する、ケーシング13を備える。
【0028】
装置10の使用中、金属ストリップ1は、所定の通過平面に沿ってケーシング13の中を移動する。
【0029】
「浸漬トンネル」または「スナウト」とも称されるこのケーシング13は、図に示される例示的な実施形態では矩形断面を有する。
【0030】
ケーシング13は、前記浴12の表面を用いて前記ケーシング13内で液体シール14を決定するように、その下部分において浴12内に浸漬される。このように、ストリップ1は、液体金属浴12内に浸漬されるとき、ケーシング13内の液体シール14の表面を通過する。
【0031】
一般に底部ローラと称され、浴12内に配置されるローラ15によって、金属ストリップ1は偏向される。
【0032】
ケーシング13を通る金属ストリップ1の所定の通過平面は特に、底部ローラ15の幾何形状、およびケーシング13から上流側に位置する上部ローラ(図示せず)の幾何形状によって、ならびにこれら2つのローラの相対位置によって、決定される。
【0033】
底部ローラ15および上部ローラはこのようにして、所定の通過平面に沿って金属ストリップを変位させる手段を形成する。
【0034】
前記浴12の出口において、たとえば窒素または空気などの気体を噴霧するためのノズル16aで構成され、かつ液体金属コーティングの厚さを調整するためにストリップ1の各面に向けて配向されたワイピング手段16内を、コーティングされたストリップ1は通る。
【0035】
図1図3、および図5に示されるように、ケーシング13は、その下端部において、液体金属を注ぐための2つの区画25、29を区切る注入箱49を支承する。区画25、29は、ケーシング13の中に横方向に配置されている。
【0036】
より具体的には、注入箱49は、底部ローラ15の側に位置するストリップ1の面に面して配置された、液体金属を注ぐための前部区画25を含む。前記前部区画25は、液体シール14の表面に向けて配向された内壁20によって内向きに、および外壁22によって外向きに、画定されている。外壁22は、底部ローラ15の側に位置するストリップ1の面に面して延在している。これは注入箱49の外壁によって形成されている。
【0037】
内壁20の上部リム21は、液体シール14の表面の下に位置しており、区画25には、前記液体シール14の前記表面から前記区画25への液体金属の自然な流れを生じるために、液体シール14の表面より下のレベルに前記区画25内の液体金属のレベルを維持する手段が設けられている。
【0038】
同様に、注入箱49は、底部ローラ15の側に位置していないストリップ1の面に面して配置されている、液体金属を注ぐための後部区画29を含む。前記後部区画29は、液体シール14の表面に向けて配向された内壁26によって内向きに、および外壁28によって外向きに、画定されている。外壁26は、底部ローラ15の側に位置しないストリップ1の面に面して延在している。これは注入箱49の外壁によって形成されている。
【0039】
内壁26の上部リム27は、液体シール14の表面の下に位置しており、区画29には、前記液体シール14の前記表面から前記区画29への液体金属の自然な流れを生じるために、液体シール14の表面より下のレベルに前記区画29内の液体金属のレベルを維持する手段が設けられている。
【0040】
図2に見られるように、外壁22、28は、ストリップ1の縁に面して延在する側壁64によって、互いに接続されている。
【0041】
以下の説明を通して、これら2つの区画25、29は、1つの周辺区画を形成するために互いに連通している。当然ながら、側壁を用いてこれらを分離すること、ならびにコーティングされるストリップ1の縁に面する側部区画を追加することも、完全に可能である。
【0042】
有利には、金属酸化物粒子および金属間化合物が液体金属の流れに逆らって上昇するのを防止するために、区画25および29内への液体金属の落下高さ、すなわち区画25、29の上部リム21、27と液体金属レベルとの間の鉛直方向に沿った距離が決定される。この落下高さは、40mm以上、もしくは50mm以上、および好ましくは100mm以上であってもよい。
【0043】
図1に示されるように、注入区画25および29内の液体金属レベルを維持する手段は、吸引側においてそれぞれ吸引チューブ31および33によって前記区画25および29に接続された、少なくとも1つのポンプ30を含む。ポンプ30は、浴12の容積内にポンプ30によって引き出された液体金属を排出するように構成された、排出チューブ32が排出側に設けられている。
【0044】
さらに、装置10は、注入区画25、29内の液体金属レベルを検出する手段を備える。
【0045】
有利には、前記検出手段は、ケーシング13および区画25、29の外側に配置され、それぞれ接続パイプ36および37によって区画25および29の各々の基部に接続された、リザーバ35によって形成されている。別の実施形態では、単一の接続パイプを使用することが可能である。
【0046】
図1に示されるように、注入区画25および29上のポンプ30の接続点は、前記区画25および29上のリザーバ35の接続点より上に位置している。
【0047】
外部リザーバ35の追加により、注入区画25および29のレベルを容易に検出できるように、好ましい環境でケーシング13の外側でこのレベルを再現することを可能にする。この目的のために、リザーバ35は、たとえばインジケータ、レーダ、またはレーザビームを供給する接触器など、液体金属レベル検出器を備えてもよい。
【0048】
あるいは、注入区画25、29内の液体金属レベルを検出することを可能にするその他いずれかの手段が使用されてもよい。
【0049】
注入区画25および29内の液体金属レベルの連続検出は、上記の落下高さを有利に遵守しながら、このレベルを液体シール14の表面より下に維持するように調整することを可能にする。
【0050】
有利には、ポンプ30は所定の一定流量に調整され、液体金属レベルの調整は、検出された液体金属レベルが所定のレベル未満であるときに、容器11内に金属インゴットを導入することによって行われる。注入区画25、29内の液体金属レベルを検出する手段と組み合わせて、亜鉛めっき条件のより迅速な調整を可能にする、可変流量ポンプを使用することも可能である。
【0051】
図4に示されるように、ケーシング13は、上部分45、および少なくとも部分的に液体金属浴12内に浸漬された下部分57を含む。
【0052】
図示される例において、上部分45は、互いに実質的に平行であってストリップ1の通過平面と実質的に平行な、2つの側壁51、53を含む。
【0053】
注入箱49は、ケーシング13の下部分57によって担持される。より具体的には、図4に示されるように、注入箱49は、部分的にケーシング13の内部に延在しながら、下部分57の下端部に挿入される。これは、ケーシング13の下端部を越えて下方に突起する。
【0054】
有利には、装置10は、浴12からの液体金属がこれら2つの要素の間に侵入するのを防止するように、ケーシング13の下端部と注入箱49との間に配置された封止ガスケット60を含む。一例として、封止ガスケット60は、その端部の一方によって、具体的にはその下端部によって注入箱49に固定され、その端部の他方によって、具体的にはその上端部によってケーシング13に固定された、ベローズによって形成されている。このようなベローズは、たとえば鋼で作られている。このようなベローズは、これら2つの部品間の相対回転を可能にしながら、注入箱49とケーシング13との間の封止を作り出すことを可能にする。
【0055】
図3に示されるように、ケーシング13および注入箱49は、第1回転軸A1の周りで一緒に回転可能である。注入箱49およびケーシング13は、第1回転軸A1の周りで回転式に固定されている。第1回転軸A1は、実質的に水平である。
【0056】
第1回転軸A1の周りのケーシング13および注入箱49の回転の結果、注入区画25、29の上部リム21、27と金属ストリップ1との間の距離に変化が生じ、こうして前記リム21、27に対するストリップ1の位置決めを可能にする。
【0057】
注入箱49は、第2回転軸A2の周りのケーシング13の上部分45に対して、さらに回転可能である。
【0058】
第2回転軸A2は実質的に水平である。
【0059】
より具体的には、図2に示されるように、第2回転軸A2は、ケーシング13の壁を通過するように配向されている。
【0060】
具体的には、第2回転軸A2と注入区画25、29の各リム21、27との間の距離d1、d2は、2500mm以下である。この距離は有利なことに、0mmから400mmの間に含まれる。
【0061】
この実施形態では、第2回転軸A2は上部リム21、27の下方に位置している。
【0062】
第1および第2回転軸A1、A2は、互いに平行である。
【0063】
第2回転軸A2の周りの注入箱49の回転は、ケーシング13および注入箱49で構成されるアセンブリによって第1回転軸A1の周りで行われる可能性のある回転運動とは無関係に、注入箱49の水平度を調整することを可能にする。
【0064】
第2回転軸A2の特定の位置により、具体的には数度程度の、特に小さい運動振幅を通じてこの調整を実行できるようにする。
【0065】
注入箱49は、上部リム21、27が±5mmの公差で定義された同じ水平面内に位置するときに、水平であると見なされる。言い換えると、10mmの最大高度差が、2つの上部リム21および27の間で許容される。
【0066】
場合により、ケーシング13はまた、たとえばベローズシステムを使用して、液体金属浴12内のその浸漬高さを調整するように、縦軸に沿って並進可能である。このような調整機構は公知であり、本特許出願では詳細に記載されない。
【0067】
装置10はまた、上部リム21、27の水平度を調整する機構も含む。より具体的には、上部リム21、27の水平度を調整する機構は、第2回転軸A2の水平度を調整するように構成されている。
【0068】
より具体的には、注入箱49は、第2回転軸A2の周りでケーシング13に対する注入箱49の回転を可能にするピボットリンクを介して、ケーシング13上に関節接合されている。このようなピボットリンクは、たとえば軸受内に受容されるシャフト、シャフトセグメント、またはジャーナルの形態のピボットを含み、ピボットは第2回転軸A2に沿って延在する。ピボットはケーシング13上に形成されている。
【0069】
図1から図4に示されるように、注入箱49は、ケーシング13とは別個の部品を形成する。これは、ケーシング13の下部分57に回転可能に実装されている。図2に見られるように、注入箱49は、回転可能な案内軸受61内に回転可能に実装されたジャーナル67を介して、ケーシング13の下部分57に回転式に実装されている。ジャーナル67は回転軸A2を画定する。
【0070】
図示される例において、ジャーナル67は注入箱49上に形成され、軸受61はケーシング13上に形成されている。より具体的には、回転可能な案内軸受61は、ケーシング13の2つの対向面63上に配置されながら、ケーシング13の下部分57上に形成されている。これらは軸A2と実質的に同軸である。各案内軸受61は、注入箱49上に形成されたそれぞれのジャーナル67を受容する。
【0071】
あるいは、ジャーナル67は、ケーシング13上に、より具体的にはその下部分57に形成されており、案内軸受61は、注入箱49上に形成されている。
【0072】
第1の実施形態による装置10において、第2回転軸A2は、液体金属浴12内に浸漬されている。より具体的には、第2回転軸A2は、注入区画25、29の上部リム21、27の下方に配置されながら、2つの注入区画25、29の間を通っている。第2回転軸A2のこのような位置決めは、第2回転軸の周りの上部リム21、27の比較的小さい回転半径をもたらし、注入箱49の水平度の正確な調整を容易にするので、有利である。
【0073】
図3に見られるように、装置10は、ストリップ1に対して第1回転軸A1の周りでケーシング13を回転させるように構成された、第1アクチュエータ41を含む。
【0074】
図示される例において、第1アクチュエータ41は、作動ジャッキの形態をとる。この作動ジャッキは、装置10の固定フレーム40とケーシング13、より具体的にはケーシング13の上部分45との間に配置される。図3および図4に示されるように、第1アクチュエータ41は、上部分45の下端部でケーシング13に作用する。
【0075】
たとえば、第1アクチュエータ41は、スクリュージャッキによって形成されている。しかしながら、これに代えて、第1アクチュエータ41は、いずれか他の適切なタイプであり、たとえば油圧または空気圧ジャッキを含む。
【0076】
図4に見られるように、装置10は有利には、注入区画25、29の上部リム21、27の各々と金属ストリップ1との間の相対距離を視認するための工具42をさらに含む。より具体的には、視認工具42は、上部リム21、27およびストリップ1の縁の同時視認を可能にするように、ケーシング13内に配置されたカメラを含む。この視認工具42は、図4に概略的にのみ示されている。
【0077】
一実施形態によれば、装置10は、視認工具42によって決定される上部リム21、27とストリップ1の相対位置から第1アクチュエータ41を制御するように構成された、制御手段(図示せず)を含む。
【0078】
装置10は、ケーシング13に対して第2回転軸A2の周りで注入箱49を回転させるように構成された、第2アクチュエータ71をさらに含む。
【0079】
図3および図4に示される実施形態において、第2アクチュエータ71は、作動ジャッキ、具体的にはスクリュージャッキの形態をとる。しかしながら、これに代えて、第2アクチュエータ71は、いずれか他の適切なタイプであり、たとえば油圧ジャッキを含む。
【0080】
有利には、装置10は、水平に対する注入箱49の傾斜角を測定するように構成された測定センサ72をさらに含む。この測定センサ72は、図4に概略的にのみ示されている。
【0081】
場合により、装置10はまた、測定センサ72によって測定された傾斜角に基づいて第2アクチュエータ71を制御するように構成された、第2アクチュエータ71のための制御手段(図示せず)も含む。より具体的には、これらの制御手段は、注入箱49が水平に配向されるまで、すなわち上部リム21、27が同じ水平面内に位置するまで、第2回転軸A2の周りのケーシング13に対する注入箱49の回転を制御するように構成されている。
【0082】
図3および図4に示されるように、装置10は、注入箱49のための支持シャーシ75、ならびにポンプ30およびポンプ30に関連するダクトを含む。
【0083】
支持シャーシ75は、第1回転軸A1の周りのケーシング13に対して回転式に固定されている。これは、第2回転軸A2の周りの注入箱49に対して回転式にさらに固定されている。
【0084】
ポンプ30は、前記支持シャーシ75上に固定して実装されている。先に説明されたように、ポンプ30は、吸引チューブ31および33を介して注入区画25、29に接続されている。これらの吸引チューブ31、33は、注入箱49およびポンプ30に固定して実装された、剛性ダクトである。排出チューブ32もまた、ポンプ30に固定して実装された剛性ダクトによって形成されている。吸引チューブ31、33および排出チューブ32は、注入箱49およびポンプ30に対して回転式に固定されている。
【0085】
装置10が、先に定義されたような注入区画25、29内の液体金属レベルを視認するためのリザーバ35を含むとき、これは支持シャーシに対して固定して有利に実装される。したがって、視認リザーバ35は、支持シャーシに対して回転式に固定されている。なお、図3および図4を簡略化するために、視認リザーバ35はこれらの図から省略されていることに留意されたい。
【0086】
図3および図4に示される例において、支持シャーシ75は、注入箱49を回転させるためのジャッキ71を介してケーシング13に接続されている。図4により具体的に示されるように、この特定の実施形態において、ジャッキ71の本体77は、回転軸A2と平行な回転軸A3の周りでケーシング13に対して枢動して実装され、ジャッキ71のロッド79は、回転軸A2と平行な回転軸A4の周りで支持シャーシ75に対して回転可能でありながら、支持シャーシ75に取り付けられている。このように、ジャッキ71の長さの変化により、支持シャーシ75および注入箱49を回転軸A2の周りで回転させる。
【0087】
ここで注入区画25および29の形状が、図4においてより詳細に説明される。
【0088】
図1から図4に示される装置10では、後部注入区画29の外壁28は、コーティング装置10の使用構成において、ストリップ1の通過平面に対して0°より真に大きい、たとえば15°以上、有利には25°以上、もしくは30°以上の、角度αを形成する。実際、角度が大きいほど効率も良くなることが観察されている。
【0089】
使用構成とは、金属ストリップ1が液体金属浴12内を通過することによってコーティングされるために装置10の中を移動するときの、コーティング装置10の構成を指す。具体的には、使用構成において、2つの注入区画25、29の2つの上部リム21、27は、同じ水平面内に位置する。
【0090】
本発明の発明者らは、外壁28のこのような構成が特に有利であることに着目した。具体的には、コーティング装置10の体積を制限しながら、注入区画29に面する金属ストリップ1の面の側で、非常に低い欠陥密度を有するコーティングを得られるようにする。
【0091】
実際に、発明者らは、後部注入区画29の外壁28が金属ストリップ1と平行に配向されているとき、液体金属シール14から注入区画29内に落ちてくる液体金属の一部が、注入区画29の外壁28上に落下し、次いで注入区画29に面するストリップ1の面に当たり、こうしてストリップ1のこの面に外観の欠陥を作ることに気がついた。この飛散現象は、前記液体金属の少なくとも一部が落ちてくる落下方向に対してほぼ垂直に外壁28が延在するという事実に起因する。
【0092】
反対に、上述のような外壁28の配向は、このような当たりを低減することを可能にし、したがってストリップ1の影響を受けた面のより良い外観品質をもたらす。実際、この場合、外壁28は、液体金属の落ち込みの全体的な流れ方向に対してより接線方向に延在している。
【0093】
図1から図4に示されるように、後部注入区画29の外壁28は、その上端部から後部注入区画29の底部に向かってストリップ1の通過平面から離れるように、配向されている。
【0094】
外壁28とストリップ1の通過平面との間の角度αは、0°より真に大きく、α未満、これより大きい、またはこれと等しくてもよく、ここでαは、ストリップ1の通過平面と鉛直との間の角度であり、角度αが大きくなると飛散の危険性が低下することがわかっている。
【0095】
一例として、外壁28は、ストリップ1の通過平面と、α−10°からα+50°、より具体的にはαからα+45°の角度αを形成する。
【0096】
他の全てが等しければ、外壁28がストリップ1と、鉛直に対するストリップ1の通過平面の角度αより真に大きい角度αを形成するときに、飛散の危険性は最小になる。
【0097】
好ましくは、ストリップ1は、25°から50°の間の鉛直に対する角度αを形成する。一例として、ストリップ1は、30°にほぼ等しい鉛直に対する角度αを形成する。
【0098】
有利には、注入区画29の内壁26は、その上部リム27から区画29の底部に向かって、2つのリム21、27の間の中間鉛直面Pから離れる方へ、角度づけられている。言い換えると、注入区画29の内壁26は、上部リム27を通ってその上部リム27から区画29の底部に向かって鉛直面から離れるように、角度づけられている。これは、鉛直に対して、特に図4に示されるように、ゼロより真に大きい角度ε1を形成する。
【0099】
実際、本発明の発明者らは、このような傾斜が、内壁26に全体的に沿って注入区画29内の液体金属の流れを案内し、こうしてストリップ1上の飛散の危険性を低減することを可能にすることに、着目した。
【0100】
15°以上の角度ε1の傾斜は、飛散の危険性を低減するのに特に有利である。一例として、角度ε1は20°以上、より具体的には25°以上である。
【0101】
反対に、内壁26が本特許出願の図に示される傾斜とは反対に傾斜している、すなわち区画29の底部に向かって前記中間鉛直面Pに接近しているとき、または内壁26が鉛直であるとき、区画29内に注がれている液体金属の一部は、注入区画29内に包含された液体金属浴の中に実質的に鉛直に直接落下する危険性があり、これは液体金属がストリップ1上に飛散する危険性を増加させる。
【0102】
前部注入区画25の外壁22は、ストリップ1の通過平面と実質的に平行に配向されている。底部ローラ15に面して配置されたストリップ1の面の側に位置する注入区画25の場合、この配向は、ストリップ1上の飛散を回避することを可能にし、外壁22は、区画25内に注がれている液体金属の落ち込みの全体的な流れ方向に対して実質的に接線方向に延在している。
【0103】
有利には、注入区画25の内壁20は、図4により具体的に示されるように、その上部リム21から区画25の底部に向かって、先に定義された中間鉛直面Pから離れる方へ、角度づけられている。言い換えると、注入区画25の内壁26は、上部リム21を通ってその上部リム21から区画25の底部に向かって鉛直面から離れるように、角度づけられている。これは、鉛直に対して、ゼロより真に大きい角度ε2を形成する。
【0104】
このような傾斜は、内壁20に全体的に沿って注入区画25内の液体金属の流れを案内し、こうしてストリップ1上の飛散の危険性を低減することを可能にする。15°以上の角度ε2の傾斜は、飛散の危険性を低減するのに特に有利である。
【0105】
好ましくは、角度ε2は、装置10の中を移動するときにストリップ1が内壁20を擦らないようにするために、ストリップ1の通過平面と鉛直との間に形成された角度αより真に大きい。たとえば、角度ε2は、角度αより少なくとも3°大きい。一例として、ストリップ1が鉛直に対して約30度の角度αを形成するとき、角度ε2は有利には約35°である。このような角度は、内壁20に沿った液体金属の良好な案内を提供することも可能にする。
【0106】
一実施形態によれば、角度ε1およびε2は同一である。これらはたとえば約35°に等しい。
【0107】
注入区画25、29の内壁20、26および外壁28は、全体的に実質的に平坦である。上述の傾斜値は、対象の壁の平均平面に対して定義される。
【0108】
角度α、ε1、およびε2は、コーティング装置の使用構成において定義される。
【0109】
図1図3、および図4に示されるように、内壁20および26は、好ましくは、壁20、26に沿った流れを促進し、ストリップ1への飛散を回避するために、これらの上部リム21、27において先細になっている。
【0110】
一例として、注入区画25および29の内壁20および26の上部リム21および27は、縦方向に、一連の円弧状の空洞および突起を備える。
【0111】
ケーシング13の下部分57が注入箱49に部分的に面して延在する、図1から図4に示される実施形態では、ケーシング13の下部分57の側壁58は、一例として、外壁28に面して位置するその部分の後部注入区画29の前記外壁28と平行である。したがって、この側壁58は、上部分45の側壁51との角度をなし、上部分45の側壁51は金属ストリップ1の通過平面と実質的に平行に延在する。このような構成により、ケーシング13の体積を制限することができる。
【0112】
有利には、注入区画25の外壁22と、前記外壁22に面して位置するケーシング13の内側部分57の側壁59とは、平行である。このような構成は、ケーシング13の体積を制限するのにも貢献する。より具体的には、図1から図4に示される例では、前部注入区画25の外壁22は、ストリップ1の通過平面と実質的に平行に延在する。下部分57の側壁59は、上部分45の側壁53の延長部に延在し、ストリップ1の通過平面と実質的に平行に延在する。
【0113】
注入区画25、29の外壁22、28は、下部分57の側壁58、59に対して横方向内向きに延在している。
【0114】
本発明による装置10は、その面の各々にかなり低い欠陥密度を有するコーティングされた金属ストリップ1を得ることを可能にし、こうして得られたこのコーティングの外観品質は、外観欠陥のない表面を有する部品を求める顧客によって必要とされる基準に適している。
【0115】
実際には、ストリップ1の両側の2つの注入区画25、29の存在、およびこれらの区画25、29内の適切な液体金属レベルを維持するためのシステムのおかげで、液体シール表面14は、連続的にストリップ1の両側から、そこに浮遊してコーティングに外観欠陥を生じる可能性がある酸化亜鉛およびマットが除去される。
【0116】
さらに、第1回転軸A1の周りのケーシング13および注入箱49の全体としての枢動性、ならびに第2回転軸A2の周りのケーシング13に対する注入箱49の枢動実装は、底部ローラ15の位置または特性とは無関係に、特にこのローラ15の特性または位置に変化がある場合に、ストリップ1の2つの面のコーティングの外観欠陥を最小限に抑えることを可能にする。
【0117】
実際、ケーシング13を通るストリップ1の通過平面は、液体金属浴12内の底部ローラ15の位置、ならびに底部ローラ15の直径によって、決定される。したがって、底部ローラ15の各変化は、ケーシング13内のストリップ1の通過線を変更し、したがってストリップ1に対する注入区画25、29を偏心させることができる。同様に、結果的にその直径を減少させる、装置1の動作中の底部ローラ15の摩耗は、ケーシング13内のストリップ1の通過線の変化、およびひいてはストリップ1に対する注入区画25、29の偏心によっても反映される。
【0118】
しかし、ストリップ1の通過線が2つの注入区画25、29の間に実質的にセンタリングされることが重要である。実際に、さもなければ、ストリップ1は、ケーシング13の中を移動するときにこれらの区画25、29の内壁20、26に接触する危険性がある。
【0119】
第1回転軸A1の周りのケーシング13および注入区画49の枢動は、底部ローラ15の特性または位置に変化がある場合に、ストリップ1に対して注入区画25、29を再センタリングすることを可能にする。
【0120】
しかしながら、本発明の発明者らは、回転軸A1の周りの回転によるこのようなセンタリングは、上部リム21、27の高度測定を変化させる欠点を有することに着目した。言い換えると、回転軸A1の周りのケーシング13の回転は、回転軸A1の周りの区画25、29の上部リム21、27の回転を引き起こし、これらのリム21、27のうちの1つは、その後、他方よりも高い高度になる。しかし、制御されない高度の差は、液体シール表面14から区画25、29内への注入流量の不均衡をもたらす危険性があるので、このような高度の差は制御されなければならない。一定のポンプ30の流量では、このような流量の不均衡は、区画25、29のうちの1つのオーバーフローをもたらす危険性があり、すると前記区画25、29内に蓄積されたマットおよび酸化物はストリップ1と接触し、こうしてコーティングの品質を低下させる危険性がある。
【0121】
上述のような装置10は、第2回転軸A2の周りのケーシング13に対する注入箱49の枢動の可能性のおかげでこの欠点を解決することができ、このような枢動は、注入箱49の水平度を再確立できるようにし、こうして区画25、29の各々への注入流量の再平衡化をもたらす。
【0122】
さらに、ケーシング13および注入箱49が2つの別個の部品として作られた場合、ケーシング13および注入箱は、ストリップ1をセンタリングするために第1回転軸A1の周りで回転式に固定されており、注入箱49は、ケーシング13に対して回転軸A2の位置を正確に画定する軸受によって、ケーシング13に対して回転軸A2の周りで回転式に実装されており、一方では金属ストリップ1に対する注入箱49のセンタリングを、他方では2つの注入区画25、29の間の流量の平衡化を、非常に正確に独立して実行することを可能にする。
【0123】
具体的には、第1の実施形態を考慮して示される機構ははるかに簡単であり、先の特許文献である国際公開第02/38823号および韓国特許第10−1533212号明細書に記載された構造よりもはるかに正確かつ柔軟に、ストリップ1に対してケーシング13を位置決めし、流量を平衡化することができる。
【0124】
本発明者らによって行われた実験は、第1および第2回転軸A1およびA2の周りの、具体的には数度の小さな角運動は、コーティング装置10の満足のいく調整を得るのに十分であることを示した。
【0125】
第1回転軸A1の周りで必要とされる小さな角運動は、全体としてケーシング13の実質的な角運動を許容しないが、コーティング装置10が一般にクラッタ環境に配置される限りにおいては有利である。
【0126】
さらに、注入箱49の回転に必要とされる小さな角運動は、注入箱49の移動角距離を許容するのに十分なほど変形可能な封止ガスケット60を、注入箱49とケーシング13との間に単純に設けることによって、注入箱49とケーシング13との間の良好な封止を維持しながら、再平衡化を許可することを可能にする。
【0127】
反対に、ケーシング13の上部分に対する注入箱49の別個の回転軸を含まない、国際公開第02/38823号および韓国特許第10−1533212号明細書に記載される装置では、所望の調整を得るために、はるかに大きい運動が必要となる。
【0128】
本発明によるケーシング13の上部分に対する注入箱49の別個の回転軸A2の実施は、国際公開第02/38823号および韓国特許第10−1533212号明細書に記載された装置に対して調整スパンをさらに増加させる。実際、従来の装置では、可能な調整角度は、ストリップの位置およびシステムの制約に基づいて、単一の回転軸の周りのケーシングの最大可能な回転角によって制限される。
【0129】
ここで、第1の実施形態による装置10を使用する金属ストリップ1の連続溶融浸漬コーティングの方法が説明される。
【0130】
この方法は、特に底部ローラ15を交換した後に、コーティング装置10を調整することを含む。
【0131】
金属ストリップ1に対する注入箱49の位置を調整するステップの間、より具体的には金属ストリップ1に対して前記箱49をセンタリングするステップの間、ケーシング13は、注入区画25、29の上部リム21、27に対して金属ストリップ1をセンタリングするように、第1回転軸A1の周りで回転させられる。
【0132】
有利には、このステップの間、視認工具42を使用して金属ストリップ1に対する上部リム21および27の相対位置が検出され、ケーシング13の運動は、こうして決定された位置に基づいて制御される。
【0133】
一実施形態によれば、ケーシング13の回転運動は、視認工具42を使用して決定された上部リム21および27ならびに金属ストリップ1のそれぞれの位置に基づいて、オペレータが第1アクチュエータ41に作用することによって、制御される。オペレータは、人または機械的動作であってもよい。
【0134】
あるいは、ストリップ1に対する注入箱49の位置決めは、視認工具42を使用して決定された相対位置に基づいて第1アクチュエータ41を制御するように構成された制御手段によって、自動的に行われる。
【0135】
調整ステップに続く、再平衡化ステップの間、注入箱49は、注入箱49を水平にするように、第2回転軸A2の周りでケーシング13の上部分45に対して回転させられる。
【0136】
より具体的には、このステップの間、注入箱49は、ケーシング13の下部分57に対して第2回転軸A2の周りで回転させられる。
【0137】
一実施形態によれば、このステップの間、制御手段は、傾斜センサ72によって得られた測定値に基づいて、注入箱49の回転を制御する。
【0138】
あるいは、この回転は、傾斜センサ72によって測定されるかまたはオペレータによって観察された傾斜に基づいて、オペレータが第2アクチュエータ71に作用することによって制御される。
【0139】
この第2ステップの終わりに、ストリップ1は、上部リム21、27に対して実質的にセンタリングされ、これらのリム21、27は同じ水平面内に配置される。
【0140】
場合により、第2ステップの終わりに位置決めが満足のいくものでない場合、ストリップ1に対する上部リム21、27の満足のいく位置決めを得るために、必要なだけ頻繁に、センタリングステップは繰り返され、場合により再平衡化ステップも繰り返される。
【0141】
位置決めが満足のいくものか否かを検証するために、一方ではそのスクロール中にストリップ1が上部リム21、27に接触するか否か、他方では2つの注入区画25、29の間で注入流量がうまく平衡化されているか否かを検証するために、コーティング装置10を稼働することが可能である。
【0142】
この段階でセンタリングまたは水平度の欠陥が観察された場合、装置10は停止され、センタリングおよび再平衡化ステップが再び実行される。
【0143】
一実施形態によれば、上記の第1センタリングステップの前に、上部リム21、27の水平度を調整する機構を使用して、前記上部リム21、27の水平度が調整される。より具体的には、このステップの間、その水平度を調整するように回転軸A2に作用する。
【0144】
一例として、このステップの間、液体金属浴12の表面が、この調整を実行するための水平度基準として選択される。
【0145】
上部リム21、27の水平度の調整は、特に注入箱49を交換した後に実行される。
【0146】
場合により、上記の第1センタリングステップの前に、ケーシング13は、液体金属浴12内の浸漬高さを調整するように、その軸に沿って並進させられる。このような調整は公知であり、本特許出願では詳細に記載されない。
【0147】
なお、本発明は、浸漬によるいずれの金属コーティングにも適用されることに留意されたい。
【0148】
ここで、図5および図6を参照して、第2の実施形態による装置100が説明される。第1の実施形態に対する違いのみが説明される。図5および図6において、同一または類似の要素は、第1の実施形態で使用されたのと同一の参照番号が付されている。
【0149】
第2の実施形態による装置100は、特に第2回転軸A2の位置によって、装置10と異なっている。
【0150】
先に説明されたように、第1の実施形態において、注入箱49は、第2回転軸A2の周りで回転式にケーシング13の下部分57に実装されていながら、ケーシング13の下部分57によって担持される。
【0151】
第2の実施形態による装置100において、および図5に示されるように、注入箱49は、ケーシング13の下部分57に対して固定している間、これによって担持される。ケーシング13の下部分57は、第2回転軸A2の周りでケーシング13の上部分45に回転式に実装されている。このため、注入箱49は、ケーシング13の上部分45に対して回転軸A2の周りで回転可能である。
【0152】
より具体的には、この実施形態では、注入区画25、29の外壁22、28によって形成された注入箱49の外壁は、ケーシング13の下部分57の側壁58、59によって形成されている。このため、注入箱49は、この実施形態では、ケーシング13の下部分57に組み込まれている。
【0153】
図5および図6に示されるように、ケーシング13の下部分57は、ピボットリンクを介してケーシング13の上部分45に関節接合され、第2回転軸A2の周りでケーシング13の上部分45に対する注入箱49の回転を可能にする。
【0154】
図5に示されるように、回転軸A2はケーシング13の壁を通っている。
【0155】
この装置100では、第2回転軸A2は、液体金属浴12の外側に位置している。具体的には、第2回転軸A2は注入区画25、29の上方に位置している。
【0156】
具体的には、第2回転軸A2と注入区画25、29の各リム21、27との間の距離d1、d2は、2500mm以下である。この距離は有利なことに、800mmから1400mmの間である。
【0157】
より具体的には、装置100は、回転軸A2を画定する2つのシャフトセグメント110を含む。
【0158】
図5および図6に示される例において、第2回転軸A2の周りの回転を可能にする関節は、ケーシング13によって画定されたストリップ1の通路チャネルの外側に形成されている。具体的には、これはケーシング13上に形成されている。
【0159】
この例では、ケーシング13の上部分45には、2つの上部関節アーム108が設けられている。これらの上部関節アーム108の各々は、その下端部において、シャフトセグメント110を受容し、前記シャフトセグメント110は、ケーシングの下部分57に固定された下部関節アーム109を回転可能に受容する。
【0160】
関節アーム108、109は、より具体的には、シャフトセグメント110を介して回転可能に接続された関節ヨークの形態をとる。
【0161】
あるいは、回転軸A2の周りで注入箱49とケーシング13の上部分45との間にピボットリンクを作り出すその他いずれかの関節機構が考えられる。
【0162】
第2アクチュエータ71は、ケーシング13の上部分45に対して第2回転軸A2の周りで注入箱49を回転させるように、ケーシング13の下部分57と上部分45との間に配置された、作動ジャッキの形態をとる。第2アクチュエータ71は、具体的にはスクリュージャッキである。しかしながら、これに代えて、第2アクチュエータ71はいずれか他の適切なタイプであり、たとえば油圧または空気圧ジャッキを含む。
【0163】
第1の実施形態と同様に、装置100は、水平に対する注入箱49の傾斜角を測定するように構成された測定センサと、測定センサ72によって測定された傾斜角に基づいて第2アクチュエータ71を制御するように構成された、第2アクチュエータ71を制御する手段と、をさらに含む。
【0164】
図示される例では、装置100は、ケーシング13の上部分45の下端部と下部分57の上端部との間に配置された、封止手段106をさらに含む。封止手段106は、空気が環境からケーシング13に侵入するのを防止するように構成されている。これらはたとえば、ケーシング13の上部分45の下端部と下部分57の上端部との間に延在するベローズを含む。
【0165】
このベローズはまた、ケーシング13の上部分45に対する下部分57の相対運動を許容する補償の役割も果たす。
【0166】
装置100は、区画25、29の内壁20、26の上部リム21、27の水平度を調整するための機構120をさらに含む。
【0167】
このような機構120の一例が、図6により具体的に示されている。この例では、機構120は、上部リム21、27の端部の各々の側に、前記端部の高さを調整するように構成された少なくとも1つの調整ネジ122を含む。より具体的には、各調整ネジ122は、ケーシング13の下部分57の対応する部品に作用するように構成されている。
【0168】
図6に示される例では、調整ネジ122は、ケーシング13の上部分45上の下部分57の関節機構の下部関節アーム109に設けられている。これらは、ネジの締め付けまたは緩めが、下部関節アーム109に対する下部分57の対応する部分の垂直運動をもたらし、こうして上部リム21、27の対応する端部の高さの調整を間接的にもたらすように、配置されている。この例では、下部関節アーム109は、下部関節アーム109の楕円形のオリフィスを通る固定ネジ111を介して下部分57に固定され、こうして下部関節アーム109に対して下部分57の位置を調整できるようにする。
【0169】
この実施形態では、下部分57は、上部セグメント、および上部セグメントに締結された下部セグメントを含む。上部セグメントは、液体金属浴12内に浸漬されるよう意図されるものではない。下部セグメントは、液体金属浴12内に少なくとも部分的に浸漬されるよう意図されている。下部セグメントは、具体的には溶接によって上部セグメントに取り付けられている。注入区画25、29の外壁22、28は、前記下部分57の下部セグメントの側壁によって形成されている。
【0170】
図5に示されるように、ポンプ30は液体金属浴12内に部分的に浸漬されている。これは、ケーシング13の下部分57に締結されたシャーシ75を介して注入箱49に対して回転式に固定されている。吸引チューブ31、32は、ポンプ30と注入箱49との間にしっかりと締結されている。このため、ポンプ30および吸引チューブ31、32は、装置100のフレーム40に対して第1回転軸A1の周りで、およびケーシング13の上部分45に対して第2回転軸A2の周りで、注入箱49とともに回転可能である。
【0171】
図5に示される実施形態では、区画25、29の内壁20、26および外壁22、28の配向は、第1の実施形態を考慮して記載されたものと類似であり、同じ利点を生じる。
【0172】
第2の実施形態による装置100は、第1の実施形態による装置10によって提供される利点のほとんどを有する。
【0173】
さらに、この実施形態では、注入箱49と液体金属浴内への主要な降下45との間に封止を提供する必要性を回避するので、液体金属浴12の外側の第2回転軸A2の位置は有利である。
【0174】
逆に、この実施形態では、第2回転軸A2の位置を考慮して、第2回転軸A2と注入区画25、29のリム21、27との間の距離は、第1の実施形態でのこの距離よりも大きく、機器100の全体的な体積を増加させる危険性がある。
【0175】
第2の実施形態による装置100を調整する方法は、第1の実施形態による装置10を調整する方法と類似である。しかしながら、流量を再平衡化するステップの間、より具体的には、その注入箱49が設けられたケーシング13の下部分57は、ケーシング13の上部分45に対して第2回転軸A2の周りで回転させられることに留意されたい。
【0176】
有利には、装置100を調整する方法は、調整機構120を介して上部リム21、27の水平度を調整するステップを、さらに含む。具体的には、このステップは、リム21、27の水平度を再確立するように、リム21、27の観察された水平度の不具合に基づく調整ネジ122の締め付けまたは緩めを含む。
【0177】
この調整は、具体的には、水平度基準として液体金属浴12の表面を使用することによって行われる。
【0178】
これは、人または機械的動作であってもよいオペレータによって行われる。
【0179】
上部リム21、27の水平度の調整は、特にその注入箱49に設けられたケーシング13の下部分57を交換した後に実行される。
【0180】
水平度を調整するステップの終わりには、上部リム21、27の各々は水平に延在する。
【0181】
なお、図1から図6を考慮して上記で説明された本発明は、2つの態様、すなわち、一方では、第1回転軸A1の周りのケーシング13および注入箱49の枢動性、ならびに第2回転軸A2の周りのケーシング13の上部分45に対する注入箱49の回転可能な実装、さらにその結果としての装置10、100の調整に関する特性を有し、他方では、注入区画25、29の特定の形状を有することに、留意されたい。
【0182】
先に説明されたように、第1の態様に関する特性は、ケーシング13内でストリップ1をセンタリングし、2つの区画内の注入流量を簡単、柔軟、かつ正確に平衡化することを可能にし、これにより、その面の各々のコーティングの優れた外観品質をもたらす。
【0183】
さらに、第2の態様に関連する特性、具体的には区画29の外壁28の配向は、ストリップ1上の液体金属の飛散の危険性を低減することを可能にし、これにより、やはりストリップの2つの面、具体的には底部ローラ15の反対側に配向されたストリップの面のコーティングの外観品質を改善するのに貢献する。
【0184】
図1から図6を考慮して組み合わせて説明されたが、第1の態様は、第2の態様と独立して実施されてもよく、第1の態様は、単独で考えてもコーティングの品質の著しい改善に既に貢献している。
【0185】
一緒に実施されると、本発明の2つの態様は、これらの態様のうちの1つのみが実施されたときよりも、その面の各々におけるストリップのコーティングのさらに良好な外観品質をもたらす。
図1
図2
図3
図4
図5
図6