特許第6963562号(P6963562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963562
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】高流動性ポリエーテルイミド組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20211028BHJP
   C08L 71/08 20060101ALI20211028BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20211028BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   C08L79/08 B
   C08L71/08
   C08K3/013
   C08K7/14
【請求項の数】15
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-555949(P2018-555949)
(86)(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公表番号】特表2019-515083(P2019-515083A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】EP2017060213
(87)【国際公開番号】WO2017186921
(87)【国際公開日】20171102
【審査請求日】2020年3月27日
(31)【優先権主張番号】62/329,482
(32)【優先日】2016年4月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】16187796.4
(32)【優先日】2016年9月8日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】62/456,964
(32)【優先日】2017年2月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】エル−ヒブリ, モハマド ジャマール
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特表昭61−500023(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02899231(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02899230(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02899232(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02899233(EP,A1)
【文献】 特表2016−526598(JP,A)
【文献】 特開2001−152014(JP,A)
【文献】 特表2016−534172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)次式:
(式中、
各Bは互いに同じであるか異なり、−O−及び−O−Ar−O−からなる群から独立して選択され、
Arは、次式の部位からなる群から選択され:
式中:
各Rは、互いに同じであるか異なり、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
j、k、l、m、及びnのそれぞれは、互いに同じであるか異なり、0、1、2、3、及び4から独立して選択され;
Wは、
1〜6個の炭素原子を有するアルキレン、
1〜6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキレン、
4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキレン、
1〜6個の炭素原子を有するアルキリデン、
4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキリデン、
−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、及び−SO−からなる群から選択される;
各Aは、互いに同じであるか異なり、−CtH2t−(tは1〜6の範囲の整数である)及び次式の部位からなる群から選択され:
式中:
各R’は、互いに同じであるか異なり、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
o、p、q、v、及びxは、互いに同じであるか異なり、0、1、2、3、及び4から独立して選択され;
Yは、
1〜6個の炭素原子を有するアルキレン、
1〜6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキレン、
4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキレン、
〜6個の炭素原子を有するアルキリデン、
〜8個の炭素原子を有するシクロアルキリデン、
−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、及び−SO−からなる群から選択される)の単位及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも50mol%の繰り返し単位(RPEI)を含むポリエーテルイミド(PEI)、
(ii)PEEK−PEDEKコポリマーであって、
− 次式:
の繰り返し単位(RPEEK)と、
− 次式:
(式中、
各R”は、互いに同じであるか異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から選択され;
各hは、互いに同じであるか異なり、0〜4の範囲の整数であり、
各iは、互いに同じであるか異なり、0〜4の範囲の整数である)の繰り返し単位(RPEDEK)とを含み、繰り返し単位(RPEEK)と(RPEDEK)の合計濃度が前記PEEK−PEDEKコポリマー中の繰り返し単位の総モル数に対して少なくとも50mol%である、PEEK−PEDEKコポリマー、
(iii)次式:
(式中、
、R、R、R、及びRのそれぞれは、互いに同じであるか異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
a、b、c、d、及びeのそれぞれは、互いに同じであるか異なり、0、1、2、3、及び4から独立して選択される)の単位からなる群から選択される、50mol%超の繰り返し単位(RPAEK)を含む任意選択的なポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)
を含有するポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリエーテルイミド(PEI)が、次式:
(式(D−1)及び(D−2)中、矢印「→」は異性を意味し、そのため任意の繰り返し単位の中で、同じ芳香環から矢印が指し示している基は、示された通りのまま存在し、あるいは前記芳香環上で互いが入れ替えられる)の単位及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも50mol%の繰り返し単位(RPEI)を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリエーテルイミド(PEI)が、次式;
(式(E−1)及び(E−2)中、矢印「→」は異性を意味し、そのため任意の繰り返し単位の中で、同じ芳香環から矢印が指し示している基は、示された通りのまま存在し、あるいは前記芳香環上で互いが入れ替えられる)の単位及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも50mol%の繰り返し単位(RPEI)を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記PEEK−PEDEKコポリマーが:
− 式(F−2):
の繰り返し単位(RPEEK)及び
− 式(G−2):
の繰り返し単位(RPEDEK
を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記ポリマー組成物が、前記PEEK−PEDEKコポリマーと前記ポリエーテルイミド(PEI)の合計重量を基準として、1〜60重量%の範囲の量で前記PEEK−PEDEKコポリマーを含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記ポリマー組成物が、前記PEEK−PEDEKコポリマーと前記ポリエーテルイミド(PEI)の合計重量を基準として、9〜40重量%の範囲の量で前記ポリエーテルイミド(PEI)を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
繰り返し単位のモル比(RPEEK)/(RPEDEK)が、90/10〜65/35の範囲である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記ポリマー組成物のメルトフローレートが、前記PEI単独のメルトフローレートよりも少なくとも25%大きく、前記メルトフローレートはASTM D1238に従って2.16kgの荷重で400℃で測定される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記ポリマー組成物が、ASTM D3763に従って測定される6〜72ft−lbの範囲のDynatup耐衝撃性を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記ポリマー組成物が、1.0%以上の日焼け止めに対する環境応力亀裂抵抗臨界歪みを有し、
前記環境応力亀裂抵抗は、前記ポリマー組成物から成形したASTM D−246Cの5インチ×0.5インチ×0.125インチの曲げ試験片に日焼け止めクリームをコーティングし、65℃及び90%の相対湿度で24時間コーティングされた曲げ試験片に対して2%の相対歪みを印加した後の前記曲げ試験片の臨界歪みとして測定され、
前記日焼け止めは、少なくとも1.8重量%のアボベンゾン、少なくとも7重量%のホモサレート、及び少なくとも5重量%オクトクリレンを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
補強フィラーを更に含有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記補強フィラーが、繊維状フィラーであり、前記ポリマー組成物が、前記ポリマー組成物の総重量を基準として、5重量%〜50重量%の範囲の量で前記繊維状フィラーを含有する、請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記ポリエーテルイミド(PEI)及び前記PEEK−PEDEKコポリマーを溶融混合することを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリマー組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリマー組成物を含む、成形物品。
【請求項15】
前記成形物品が、航空機内装用の部材、食器もしくは食品加工部材、織布もしくは不織布用の繊維、熱成形用積層シート、又は付加製造された物品である、請求項14に記載の成形物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年4月29日に出願された米国仮特許出願第62/329,482号、2016年9月8日に出願された欧州特許出願第16187796.4号、及び2017年2月9日に出願された米国仮特許出願第62/456,964号に基づく優先権を主張し、これらの出願それぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポリエーテルイミド(PEI)と、PEEK−PEDEKコポリマーと、PEEK−PEDEKコポリマー以外の任意選択的なポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)とを含有する高流動性ポリマー組成物、該ポリマー組成物の製造方法、及び該ポリマー組成物を含む成形物品に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリエーテルイミド(PEI)は、その熱、溶剤、及び炎に対する耐性に関して知られている高性能のポリマーである。PEIは、多くのエンジニアリング用途のための優れた機械的靭性及び耐薬品性を有している。しかしながら、その比較的高い溶融粘度のため、これらの利点を常に生かせるわけではない。これは、携帯電子機器又はワイヤコーティングなどの非常に薄い部材又は層が必要とされる用途に特に当てはまる。もう1つの例は熱溶解付加積層製造である。低溶融粘度材料を用いるとポリマーの堆積に必要とされる粘度が低い温度で達成できることから、この製造では、極めて高い溶融温度を使用する必要なしにポリマーの堆積を可能にするために低い溶融粘度が必要とされる。高い温度は、経時的にポリマーを劣化させて炭化した材料を生じさせる場合があり、これは付加製造装置の堆積ノズルを詰まらせる、あるいは製造される部材の中に組み込まれる場合がある。
【0004】
そのため、PEIの望ましい特性を損なわない高流動性PEI組成物が必要とされている。
【0005】
好ましい実施形態の詳細な説明
本明細書では、ポリエーテルイミド(PEI)と、PEEK−PEDEKコポリマー(後述する通り)と、PEEK−PEDEKコポリマー以外の任意選択的なポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)とを含有する高流動ポリマー組成物、該ポリマー組成物の製造方法、及び該ポリマー組成物を含む成形物品について述べる。
【0006】
出願人らは、驚くべきことには、PEEK−PEDEKコポリマーをPEIとブレンドすると、改善された流動性、耐衝撃性を示し、いくつかの事例では改善された耐薬品性も示すポリマー組成物が製造されることを発見した。
【0007】
従来、PEIの流動性の増加は、その分子量を小さくすることによって行われており、これは衝撃性能及び耐薬品性の大幅な低下ももたらす。出願人らは、驚くべきことには、PEEK−PEDEKコポリマーをPEIに添加すると、PEI単独と比べてその流動性が増加しながらも前述の従来の欠点も克服するポリマー組成物が得られることを発見した。PEIの分子量を小さくする従来の方法とは異なり、本手法は、本明細書に記載のポリマー組成物のDynatup耐衝撃性を損なわず、むしろ改善する。更に、出願人らは、驚くべきことには、少なくともいくつかの事例では、更に比較的少量のPEEK−PEDEKコポリマーをPEIに添加すると、PEI又はPEEK−PEDEKコポリマー単独よりも大きな耐薬品性を示すポリマー組成物が得られることを発見した。
【0008】
ポリマー組成物の流動性は、メルトフローレート(MFR)を測定することによって決定することができる。いくつかの実施形態においては、ポリマー組成物は、ASTM D1238に従って2.16kgの荷重で400℃で測定される、約40〜約60g/10分、好ましくは約42〜約59g/10分の範囲のMFRを有する。いくつかの態様においては、ポリマー組成物のメルトフローレートは、PEI単独(すなわち、ポリマー組成物中に他の成分が存在しないPEI)のメルトフローレートよりも少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%大きく、このメルトフローレートはASTM D1238に従って5.0kgの荷重で365℃で測定される。別の実施形態においては、ポリマー組成物のメルトフローレートは、PEI単独のメルトフローレートよりも150%も大きい場合がある。
【0009】
ポリマー組成物の靭性は、Izod及びDynatup耐衝撃性を測定することによって決定することができる。ポリマー組成物は、ASTM D3763に従って測定される約62〜約72ft−lbの範囲のDynatup耐衝撃性を有し得る。更に、ポリマー組成物は、ASTM D3763に従って測定される約0.75〜約0.85インチの範囲の最大荷重でのDynatupたわみを有し得る。いくつかの実施形態においては、ポリマー組成物は、0.80〜2.25ft−lb/インチ、好ましくは0.85〜2.0ft−lb/インチの範囲の、ASTM D256により決定されるノッチ付きIzod耐衝撃性を有し得る。
【0010】
極性有機薬品に対するプラスチックの耐薬品性は、一般に最も強い消費者向け薬品のうちの1つである日焼け止めローションに対するその耐性によって測定することができる。特に、日焼け止めローションは、一般に、プラスチックに対して非常に腐食性であり得る様々な紫外線吸収性薬品を含有する。代表的な日焼け止めとしては、少なくとも1.8重量%のアボベンゾン(1−(4−メトキシフェニル)−3−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3−プロパンジオン)、少なくとも7重量%のホモサレート(3,3,5−トリメチルシクロヘキシルサリチレート)、及び少なくとも5重量%のオクトクリレン(2−エチルヘキシル2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート)を挙げることができる。前述の日焼け止め剤の例は、Edgewell(St.Louis,MO)から商品名Banana Boat(登録商標)Sport Performance(登録商標)(SPF 30)として商業的に入手可能である。
【0011】
日焼け止めなどの薬品に対するポリマー組成物の耐薬品性は、環境応力亀裂抵抗(ESCR)試験を使用して測定することができる。ESCRは、試料を強い薬品に曝し、制御された環境の中でエージングした後に、ポリマー組成物の成形した試料中で亀裂又はひび割れを目視で観察するのに必要とされる最も小さい歪みを測定することによって評価される(「臨界歪み」)。一般に、臨界歪みが大きいほどポリマー組成物の耐薬品性が大きい。いくつかの実施形態においては、ポリマー組成物は、1.0%以上、好ましくは1.5%以上の日焼け止めに対するESCR臨界歪みを有する。臨界歪みの測定は、下の実施例において詳しく説明される。
【0012】
ポリマー組成物は、好ましくは、約160℃〜約210℃、好ましくは約165℃〜約200℃、最も好ましくは約169℃〜約200℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有し、ここでTgは、20.00℃/分の加熱速度を使用してASTM D3418に従って示差走査熱量分析(DSC)によって2回目の加熱スキャンで決定される中間点のTgである。
【0013】
いくつかの実施形態においては、ポリマー組成物は、約145℃〜約185℃、好ましくは約150℃〜約180℃の範囲の、ASTM D648により決定される熱たわみ温度を有する。
【0014】
上述の特性によって、高い流動性と共に靭性と耐薬品性の組み合わせを必要とする用途での使用に適した、流動性が向上したPEI配合物となる。そのような用途の例としては、薄肉物品(例えば2.0mm未満、好ましくは1.5mm未満の厚さと、50超、好ましくは100超、より好ましくは150超の、全体の厚さに対する平均流動長の比率とを有する部分を有する物品)、航空機内装用の部材、食器及び食品加工部材、織布及び不織布用の繊維、熱成形用積層シート、並びに付加製造(熱溶解積層法等)により製造された成形物品が挙げられる。
【0015】
ポリエーテルイミド(PEI)
本明細書で使用されるポリエーテルイミド(PEI)は、繰り返し単位(RPEI)の50%超が次式:
(式中、
各Bは互いに同じであるか異なり、−O−及び−O−Ar−O−からなる群から独立して選択され、Arは、次式:
の部位からなる群から選択され、各Rは、互いに同じであるか異なり、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;j、k、l、m、及びnのそれぞれは、互いに同じであるか異なり、0、1、2、3、及び4から独立して選択され、好ましくは0であり;Wは、1〜6個の炭素原子を有するアルキレン、特に−C(CH−及び−C2r−(rは1〜6の範囲の整数である)、1〜6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキレン、特に−C(CF及び−C2s−(sは1〜6の範囲の整数である)、4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキレン、1〜6個の炭素原子を有するアルキリデン、4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキリデン、−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、及び−SO−からなる群から選択される)の単位及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、任意のポリマーを意味する。
【0016】
好ましくは、Bは、上で示した式(B−6)の基である。より好ましくは、Bは、次式:
の基であり、各Aは、互いに同じであるか異なり、基−CtH2t−(tは1〜6の範囲の整数である)及び次式:
の部位から選択され、
各R’は、互いに同じであるか異なり、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;o、p、q、v、及びxは、互いに同じであるか異なり、0、1、2、3、及び4から独立して選択され、好ましくは0であり;Yは、1〜6個の炭素原子を有するアルキレン、特に−C(CH及び−C2u−(uは1〜6の範囲の整数である)、1〜6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキレン、特に−C(CF及び−C2w−(wは1〜6の範囲の整数である)、4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキレン、1〜6個の炭素原子を有するアルキリデン、4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキリデン、−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、及び−SO−からなる群から選択される。
【0017】
好ましくは、Aは、上で示した式(C)〜(C−2)の部位からなる群から選択される。より好ましくは、Aは、未置換のm−フェニレン、未置換のp−フェニレン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0018】
いくつかの実施形態においては、Aは、次式:
の基である。
【0019】
いくつかの実施形態においては、繰り返し単位(RPEI)は、次式:
(式(D−1)及び(D−2)中、矢印「→」は異性を意味し、そのため任意の繰り返し単位の中で、同じ芳香環から矢印が指し示している基は、示された通りのまま存在していてもよく、あるいはその芳香環上で互いが入れ替えられていてもよい)のもの及びそれらの組み合わせからなる群から選択される繰り返し単位である。
【0020】
いくつかの実施形態においては、繰り返し単位(RPEI)は、次式:
(式(E−1)及び(E−2)中、矢印「→」は異性を意味し、そのため任意の繰り返し単位の中で、同じ芳香環から矢印が指し示している基は、示された通りのまま存在していてもよく、あるいはその芳香環上で互いが入れ替えられていてもよい)のもの及びそれらの組み合わせからなる群から選択される繰り返し単位である。
【0021】
好ましくは、PEIの繰り返し単位の少なくとも75mol%、85mol%、95mol%、より好ましくは少なくとも99mol%が、繰り返し単位(RPEI)である。
【0022】
いくつかの実施形態においては、繰り返し単位(RPEI)の少なくとも75mol%、85mol%、95mol%、より好ましくは少なくとも99mol%が、式(D)、その対応するアミド酸形態の式(D−1)及び(D−2)、並びにこれらの組み合わせの単位である。
【0023】
いくつかの実施形態においては、繰り返し単位(RPEI)の少なくとも75mol%、85mol%、95mol%、より好ましくは少なくとも99mol%が、式(E)、その対応するアミド酸形態の式(E−1)及び(E−2)、並びにこれらの組み合わせの単位である。
【0024】
PEIは、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される約10,000〜約150,000g/モルの範囲の重量平均分子量(Mw)を有し得る。
【0025】
ポリマー組成物は、PEEK−PEDEKコポリマーとポリエーテルイミド(PEI)の合計重量を基準として、約40〜約99重量%、好ましくは約50〜約75重量%の範囲の量でPEIを含有していてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態においては、PEIは:
1)少なくとも40mol%の、好ましくは少なくとも50%の、上で示した式(D)、(D−1)、(D−2)、(E)、(E−1)、(E−2)の単位及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第1の繰り返し単位(RPEI−1);並びに
2)最大60mol%、好ましくは最大50%の、上で示した式(A)、(A−1)、及び(A−2)の単位からなる群から選択される第2の繰り返し単位であって、式中のAが上で示した式(C)、(C−1)、(C−2)、及び(C−7)の部位からなる群から選択され、Bが−O−及び式−O−Ar−O−の部位からなる群から選択され、Arが上で示した式(B)及び(B−3)の部位からなる群から選択される、第2の繰り返し単位(RPEI−2);
を含有するコポリマーである。
【0027】
別の実施形態においては、PEIは:
1)少なくとも40mol%、好ましくは少なくとも50%の、上で示した式(D)、(D−1)、(D−2)、(E)、(E−1)、(E−2)の単位及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第1の繰り返し単位(RPEI−1);並びに
2)最大60mol%、好ましくは最大50%の、次式:
(式中、各Rは、互いに同じであるか異なり、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;各zは、互いに同じであるか異なり、0、1、2、3、及び4から独立して選択され、好ましくはゼロである)の第3の繰り返し単位(RPEI−3
を含有するコポリマーである。
【0028】
いくつかの実施形態においては、ポリマー組成物は、1種のみのPEIポリマーを含有する。別の実施形態においては、ポリマー組成物は、2種、3種、4種、又はそれ以上のPEIを含有し得る。
【0029】
例えば、ポリマー組成物は、次の2種のポリマー:
1)少なくとも50mol%、少なくとも75mol%、85mol%、95mol%、より好ましくは少なくとも99mol%の、上で示した式(D)、(D−1)、(D−2)、(E)、(E−1)、(E−2)の単位及びこれらの組み合わせからなる群から選択される繰り返し単位(RPEI)を含む第1のPEI;並びに
2)少なくとも50mol%、少なくとも75mol%、85mol%、95mol%、より好ましくは少なくとも99mol%の、上で示した式(A)、(A−1)、及び(A−2)の単位からなる群から選択される繰り返し単位であって、式中のAが上で示した式(C)、(C−1)、(C−2)、及び(C−7)の部位からなる群から選択され、Bが−O−及び式−O−Ar−O−の部位からなる群から選択され、Arが上で示した式(B)及び(B−3)の部位からなる群から選択される、繰り返し単位(RPEI)を含む第2のPEI;
のブレンド物を含有していてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態においては、第1のPEI対第2のPEIの重量比は40/60〜95/5の範囲である。
【0031】
PEEK−PEDEKコポリマー
本明細書で使用される「PEEK−PEDEKコポリマー」は、
− 式(F):
の繰り返し単位(RPEEK)と
− 式(G):
の繰り返し単位(RPEDEK)と、
を含むコポリマーを意味し、
式中、
各R”は、互いに同じであるか異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から選択され;
各hは、互いに同じであるか異なり、0〜4の範囲の整数であり、
各iは、互いに同じであるか異なり、0〜4の範囲の整数である。
【0032】
いくつかの実施形態においては、繰り返し単位(RPEEK)は、次式:
の単位から選択され、
繰り返し単位(RPEDEK)は、次式:
の単位から選択され、
式中のR”、h、及びiは上述した通りである。
【0033】
好ましくは、各hはゼロであり、好ましくは各iはゼロであり、最も好ましくは、h及びiのそれぞれがゼロであり、結果としてPEEK−PEDEKコポリマーは、
− 次式:
の繰り返し単位(RPEEK);及び
− 次式:
の繰り返し単位(RPEDEK);
を含む。
【0034】
繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEDEK)は、合計で、PEEK−PEDEKコポリマーの繰り返し単位の少なくとも50mol%、好ましくは少なくとも60mol%、70mol%、80mol%、90mol%、95mol%、最も好ましくは少なくとも99mol%を占める。
【0035】
繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEDEK)は、90/10〜65/40、好ましくは80/20〜70/30の範囲のモル比(RPEEK)/(RPEDEK)で、PEEK−PEDEKコポリマーの中に存在する。最も好ましくは、モル比(RPEEK)/(RPEDEK)は80/20である。
【0036】
ポリスチレン校正標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるPEEK−PEDEKコポリマーの重量平均分子量Mwは、好ましくは50,000〜110,000ダルトン、より好ましくは60,000〜100,000ダルトン、最も好ましくは70,000〜90,000ダルトンの範囲である。好ましくは、PEEK−PEDEKコポリマーは、0.5×3.175mmの炭化タングステンダイを使用する、400℃及び1000s−1でASTM D3835に従って測定される、少なくとも30Pa−s、好ましくは少なくとも50Pa−s、より好ましくは少なくとも80Pa−sの溶融粘度を示す。
【0037】
ポリマー組成物は、PEEK−PEDEKコポリマーを、PEEK−PEDEKコポリマー及びポリエーテルイミド(PEI)の合計重量を基準として、約1〜約60重量%、好ましくは約25〜約50重量%、より好ましくは約25〜約40重量%の範囲の量で含有する。
【0038】
任意選択的なポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)
ポリマー組成物は、任意選択的には、PEEK−PEDEKコポリマーとは異なるポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)を更に含んでいてもよい。
【0039】
本明細書で使用される「ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)」は、次式:
(式中、R、R、R、R、及びRのそれぞれは、互いに同じであるか異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;a、b、c、d、及びeのそれぞれは、互いに同じであるか異なり、0、1、2、3、及び4から独立して選択される。好ましくは、a、b、c、d、及びeのそれぞれは0である。)の単位からなる群から選択される50mol%超の繰り返し単位(RPAEK)を含む任意のポリマーを意味する。
【0040】
好ましくは、繰り返し単位(RPAES)中のフェニレン部位は、1,3−又は1,4−結合を有する。
【0041】
好ましくは、少なくとも60mol%、70mol%、80mol%、90mol%、95mol%、99mol%の繰り返し単位(RPAES)が、式(H)、(I)、(J)、(K)、及び(L)の繰り返し単位からなる群から選択される。
【0042】
いくつかの実施形態においては、PAEKはポリ(エーテルケトン)(PEK)である。本明細書で使用される「ポリ(エーテルケトン)(PEK)」は、繰り返し単位(RPAEK)の50mol%超が次式:
(式中、R2’及びa’は、各場合において、それぞれR及びaについて上述した基から独立して選択される)の繰り返し単位である任意のポリマーを意味する。好ましくは、式(H−1)中の各a’はゼロである。
【0043】
好ましくは、少なくとも60mol%、70mol%、80mol%、90mol%、95mol%、99mol%の繰り返し単位(RPAEK)が、式(H−1)の繰り返し単位である。
【0044】
いくつかの実施形態においては、PAEKはポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)である。本明細書で使用される「ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)」は、繰り返し単位(RPAEK)の50mol%超が次式:
(式中、R3’及びb’は、各場合において、それぞれR及びbについて上述した基から独立して選択される)の繰り返し単位である任意のポリマーを意味する。好ましくは式(I−1)中の各b’はゼロである。
【0045】
好ましくは、少なくとも60mol%、70mol%、80mol%、90mol%、95mol%、99mol%の繰り返し単位(RPAEK)が、式(I−1)の繰り返し単位である。
【0046】
いくつかの実施形態においては、PAEKはポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)である。本明細書で使用される「ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)」は、繰り返し単位(RPAEK)の50mol%超が次式(J−1)と(J−2):
(式中、4’及びc’は、各場合において、それぞれR及びcについて上述した基から独立して選択される)の繰り返し単位の組み合わせである任意のポリマーを意味する。好ましくは、式(J−1)及び(J−2)の中の各c’はゼロである。
【0047】
好ましくは、少なくとも60mol%、70mol%、80mol%、90mol%、95mol%、99mol%の繰り返し単位(RPAEK)が、繰り返し単位(J−1)と(J−2)の組み合わせである。
【0048】
いくつかの実施形態においては、単位(J−1):(J−2)のモル比は、50:50〜85:15、好ましくは55:45〜80:20、より好ましくは65:35〜75:25の範囲である。
【0049】
いくつかの実施形態においては、PAEKはポリ(エーテルエーテルケトンケトン)(PEEKK)である。本明細書で使用される「ポリ(エーテルエーテルケトンケトン)(PEEKK)」は、繰り返し単位(RPAEK)の50mol%超が次式:
(式中、R5’及びd’は、各場合において、それぞれR及びdについて上述した基から独立して選択される)の繰り返し単位である任意のポリマーを意味する。好ましくは、式(K−1)中の各d’はゼロである。
【0050】
好ましくは、少なくとも60mol%、70mol%、80mol%、90mol%、95mol%、99mol%の繰り返し単位(RPAEK)が、式(K−1)の繰り返し単位である。
【0051】
いくつかの実施形態においては、PAEKはポリ(エーテルケトンエーテルケトンケトン)(PEKEKK)である。本明細書で使用される「ポリ(エーテルケトンエーテルケトンケトン)(PEKEKK)」は、繰り返し単位(RPAEK)の50mol%超が次式:
(式中、R6’及びe’は、各場合において、それぞれR及びeについて上述した基から独立して選択される)の繰り返し単位である任意のポリマーを意味する。好ましくは、式(L−1)中の各e’はゼロである。
【0052】
好ましくは、少なくとも60mol%、70mol%、80mol%、90mol%、95mol%、99mol%の繰り返し単位(RPAEK)が、式(L−1)の繰り返し単位である。
【0053】
PAEKは、好ましくはPEK、PEEK、PEKK、PEKEKK、又はPEDEKKであり、最も好ましくはPEEKである。
【0054】
ポリマー組成物中の任意選択的なPAEKの量は、ポリマー組成物の総重量を基準として0〜約25重量%、好ましくは5〜20重量%の範囲である。
【0055】
任意選択的な補強フィラー
ポリマー組成物は、任意選択的に繊維状又は粒子状のフィラーなどの補強フィラーも含有していてもよい。繊維状補強フィラーは、平均長さが幅と厚さの両方よりもかなり大きい、長さ、幅、及び厚さを有する材料である。好ましくは、そのような材料は、少なくとも5の、長さと最小の幅及び厚さとの間の平均比と定義される、アスペクト比を有する。好ましくは、補強繊維のアスペクト比は、少なくとも10、より好ましくは少なくとも20、更により好ましくは少なくとも50である。粒子状フィラーは、最大5、好ましくは最大2のアスペクト比を有する。
【0056】
好ましくは、補強フィラーは、タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの無機フィラー;ガラス繊維;炭素繊維、炭化ホウ素繊維;珪灰石;炭化ケイ素繊維;ホウ素繊維、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)等から選択される。最も好ましくは、補強フィラーは、ガラス繊維、好ましくはチョップドグラスファイバーである。
【0057】
補強フィラーの量は、ポリマー組成物の総重量を基準として、粒子状フィラーの場合には、1重量%〜40重量%、好ましくは5重量%〜35重量%、最も好ましくは10重量%〜30重量%であり、繊維状フィラーの場合には、5重量%〜50重量%、好ましくは10重量%〜40重量%、最も好ましくは15重量%〜30重量%の範囲であってもよい。いくつかの実施形態においては、ポリマー組成物は繊維状のフィラーを含まない。あるいは、ポリマー組成物は、粒子状フィラーを含まなくてもよい。好ましくは、ポリマー組成物は、補強フィラーを含まない。
【0058】
任意選択的な添加剤
PEI、PEEK−PEDEKコポリマー、任意選択的なPAEK、及び任意選択的な補強フィラーに加えて、ポリマー組成物は、二酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、紫外光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤(有機リン酸塩及び亜ホスホン酸塩等)、酸捕捉剤、加工助剤、造核剤、潤滑剤、難燃剤、発煙抑制剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、及び導電性添加剤(カーボンブラック等)などの任意選択的な添加剤を更に含有していてもよい。
【0059】
1種以上の任意選択的な添加剤が存在する場合、これらの合計濃度は、好ましくはポリマー組成物の総重量を基準として、10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは2重量%未満である。
【0060】
ポリマー組成物の製造方法
典型的な実施形態は、PEI、PEEK−PEDEKコポリマー、任意選択的なPAEK、任意選択的な補強フィラー、及び任意選択的な添加剤を溶融混合することによる本明細書に記載のポリマー組成物の製造方法を含む。
【0061】
ポリマー組成物は、熱可塑性成形組成物の調製に好適な任意の公知の溶融混合方法によって調製することができる。そのような方法は、ポリマーをその融点より上まで加熱してポリマーの溶融混合物を形成することによって行われてもよい。いくつかの態様においては、ポリマー組成物を形成するための成分が、溶融混合装置へ同時に又は別々に供給され、装置の中で溶融混合される。適切な溶融混合装置は、例えば、ニーダー、バンバリー(Banbury)ミキサー、単軸押出機、及び二軸押出機である。
【0062】
ポリマー組成物を含む成形物品
典型的な実施形態は、上述のポリマー組成物を含む成形物品も含む。
【0063】
成形物品は、射出成形、押出成形、回転成形、又はブロー成形などの、任意の適切な溶融加工方法を使用してポリマー組成物から製造することができる。
【0064】
上述したように、ポリマー組成物は、幅広い用途で有用な物品の製造に非常に適している場合がある。例えば、ポリマー組成物の高流動性であり、靭性を有しており、耐薬品性である特性は、薄肉物品、航空機内装用の部材、食器及び食品加工部材、織布及び不織布用の繊維、熱成形用積層シート、並びに付加製造(熱溶解積層法等)により製造された成形物品における使用に特に好適である。
【0065】
参照により本明細書に組み込まれる特許、特許出願、及び刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
例示的な実施形態を以降の非限定的な実施例で説明する。
【実施例】
【0066】
PEEK−PEDEKコポリマーをPEIポリマー組成物に添加することの影響を評価した。下の表1は、3つの実施例(実施例1、2、及び3)についての組成及び試験結果を示している。比較のため、標準的な流動性のPEI(比較例1)、PEEK−PEDEKコポリマー(比較例2)、及び高流動性のPEI(比較例3)も評価した。
【0067】
原料
Ultem(登録商標)PEI グレード1000天然樹脂は、SABIC Innovative Plasticsから入手可能である。これは、多目的の押出及び射出成形用途のための、標準的な粘度グレードのPEIである。これは、6.6kgの荷重を使用して337℃でASTM D1238に従ってメルトインデックス装置を使用して測定される9g/10分の公称メルトフローレートを有する。
【0068】
Ultem(登録商標) PEI グレード1010天然樹脂も、SABIC Innovative Plasticsから入手可能である。これは、高流動性が必要とされる射出成型用の低粘度グレードのPEIである。これは、6.6kgの荷重を使用して337℃でASTM D1238に従ってメルトインデックス装置を使用して測定される17.8g/10分の公称メルトフローレートを有する。
【0069】
実施例で使用したコポリマーは、化学量論量のヒドロキノンが部分的にビフェノール(4,4’−ジヒドロキシフェニル)で置換されたポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)コポリマーであった。そのようなコポリマーは「PEEK−PEDEKコポリマー」としても知られており、「PEDEK」は、ビフェノールと4,4’−ジフルオロベンゾフェノンとの重縮合由来のポリマー繰り返し単位を表す。
【0070】
実施例で使用されているPEEK−PEDEKコポリマーは、80/20のPEEK−PEDEKコポリマー(80mol%PEEK、20mol%PEDEK)であった。
【0071】
配合物の調製
実施例及び比較例の組成は下の表1に示されている。全てのポリマーブレンド物は、最初に樹脂のペレットをタンブルブレンドすることでそれぞれの量で約20分間ブレンドし、その後溶融混錬することによって調製した。実施例の組成物は混和性(すなわち、単一のガラス転移温度Tgを示した)かつ透明であった。
【0072】
配合物の試験
機械的特性は、1)タイプIの引張試験片、2)5インチ×0.5インチ×0.125インチの曲げ試験片、及び3)計装化衝撃(Dynatup)試験のための4インチ×4インチ×0.125インチの試験板からなる、射出成形された厚さ0.125インチ(3.2mm)のASTM試験片を使用して全ての配合物について試験した。以下のASTM試験方法を、全ての組成物の評価に用いた。
D638:引張特性
D790:曲げ特性
D256:Izod耐衝撃性(ノッチ付き)
D4812:Izod耐衝撃性(ノッチなし)
D3763:Dynatup衝撃という名称でも知られる耐計装化衝撃性
D648:熱たわみ温度
D3418:示差走査熱量分析によるガラス転移(20℃/分の加熱速度)
【0073】
溶融レオロジー及び溶融加工性は、2.16kgの荷重でASTM D1238に従う400℃でのメルトフローレート測定によって評価した。
【0074】
日焼け止めクリームに対する耐薬品性は、Bergenパラボラ可変歪み固定治具(これは応力が加えられたアセンブリを形成するために、プラスチック材料に印加される歪みを約ゼロから約2.0%まで変更した)に取り付けられたASTM D−246C(5インチ×0.5インチ×0.125インチ)曲げ試験片にBanana Boat(登録商標)SPF30ブロード・スペクトラム日焼け止めクリームを塗布することによって試験した。本明細書で使用されるx%印加歪みは、ポリマー組成物の成形試料をx%伸ばすために必要とされる歪みである。例えば、成形試料の長さが1インチであった場合、2%印加歪みは、印加歪みの方向に1.02インチまで成形試料を伸ばすために必要とされる歪みを意味する。応力がかけられたアセンブリを、約24時間約65℃の温度及び約90%の相対湿度で湿度が制御された環境チャンバーの中でエージングした。その後、アセンブリをチャンバーから取り出し、歪み治具上に取り付けられたASTM曲げ試験片を、亀裂又はひび割れの全ての兆候について検査した。破損臨界歪みを、亀裂又はひび割れがその上に観察されたパラボラ固定具上の最低歪みレベルとして記録した。
【0075】
PEIの機械的特性、耐薬品性、及び流動特性に対するPEEK−PEDEKコポリマーの添加の影響は下の表1に示されている。
【0076】
【0077】
上で示した通り、少量のPEEK−PEDEKコポリマーの添加であっても、溶融流動性が大幅に改善された。PEEK−PEDEKで修飾されたPEI組成物の溶融流動性は、未修飾の標準の流動性のPEI(比較例1)と比較して大幅に向上した流動性を示し、また改善の大きさは、より低い分子量のPEIグレードであるUltem(登録商標)1010天然樹脂(比較例3)によって達成されるメルトフローレートと同じ程度であった。
【0078】
更に、流動性の向上は、ポリマーの機械的靭性と溶融流動特性との間の周知のトレードオフにおける通常の場合のような靭性の低下を犠牲にしての達成ではなかった。ポリマー組成物(実施例1〜3)のDynatup耐衝撃性は、驚くべきことには、標準的な流動性のPEI単独(比較例1)とPEEK−PEDEKコポリマー単独(比較例2)の両方よりも著しく大きいことが分かった。加えて、ポリマー組成物(実施例1〜3)の最大荷重でのDynatupたわみは、予想外なことには、PEEK−PEDEKコポリマー単独(比較例2)の最大荷重での、更にはPEEK−PEDEKコポリマー(実施例1)のわずか25%の荷重でのDynatupたわみと同等であることが分かった。これらの知見は、低い分子量のPEI(比較例3)についての両方のDynatup衝撃パラメーターの劇的な低下と対照的である。
【0079】
最後に、実施例1及び2の日焼け止めに対する環境応力亀裂抵抗(ESCR)臨界歪みは、驚くべきことには、標準的な流動性のPEI単独(比較例1)とPEEK−PEDEKコポリマー単独(比較例2)の両方よりも著しく大きいことが分かった。