特許第6963571号(P6963571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6963571厚さの一部がくり抜かれたパネルの形態の補強材を備えた付加製造プレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963571
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】厚さの一部がくり抜かれたパネルの形態の補強材を備えた付加製造プレート
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/245 20170101AFI20211028BHJP
   B22F 12/30 20210101ALI20211028BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20211028BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20211028BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20211028BHJP
【FI】
   B29C64/245
   B22F12/30
   B29C64/153
   B33Y30/00
   B33Y10/00
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-564370(P2018-564370)
(86)(22)【出願日】2017年5月18日
(65)【公表番号】特表2019-522578(P2019-522578A)
(43)【公表日】2019年8月15日
(86)【国際出願番号】EP2017062010
(87)【国際公開番号】WO2017211566
(87)【国際公開日】20171214
【審査請求日】2020年3月11日
(31)【優先権主張番号】1655293
(32)【優先日】2016年6月9日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】エッフェルネッリ アルビン
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−083774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/105
B22F 3/16
B22F 12/30
B29C 64/00−64/40
B33Y 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造プロセスによって少なくとも1つの要素(26)を製造するための支持体として機能することが意図された付加製造プレート(10)であって、
前記プレート(10)は、製造支持体としての機能を果たすモノリシック本体(32)を備え、前記本体(32)は、パネルの形をとり、前記パネルの長さ(L32)及び幅(W32)が、前記パネルの厚さ(E32)よりも大きく、前記本体(32)は、要素(26)がその上に直接製造される上面(28)を備え、前記付加製造プレートは、本体(32)から独立しかつ前記本体の下面(34)に固定された補強材(12)を備え、前記補強材(12)は、パネル(36)の形をとり、長さ(L36)及び幅(W36)が、厚さ(E36)よりも大きく、前記補強材(12)を形成する前記パネル(36)は、前記厚さ(E36)内でくり抜かれており、前記補強材(12)を形成するパネル(36)は、全厚さ(E36)を貫通してくり抜かれておらず、
前記パネル(36)に形成された空洞(40)は、前記パネル(36)の前記下面(37)上のみに開口し、前記パネルの前記上面(42)には開口しない、
ことを特徴とする付加製造プレート(10)。
【請求項2】
前記補強材(12)を形成する前記パネル(36)は、前記幅(W36)及び前記長さ(L36)内にリブ補強構造を呈するように厚さ(E36)内でくり抜かれている、
請求項に記載の付加製造プレート(10)。
【請求項3】
前記補強材(12)を形成する前記パネル(36)のリブ(38)は、前記補強材(12)を形成する前記パネル(36)の前記幅(W36)及び前記長さ(L36)の中心に位置する中心島部(C)の周りに複数の分岐を形成する、
請求項に記載の付加製造プレート(10)。
【請求項4】
前記パネル(36)は、前記本体(32)の前記幅(W32)未満の幅(W36)、及び前記本体(32)の前記長さ(L32)未満の長さ(L36)を有する、
請求項1ないしのいずれか1項に記載の付加製造プレート(10)。
【請求項5】
前記補強材(12)を形成する前記パネル(36)は、円形断面(30)の吸着カップ(30)を受けるための環状支持面(44)を有する下面(42)を備えている、
請求項1ないしのいずれか1項に記載の付加製造プレート(10)。
【請求項6】
前記パネル(36)は、2つの対向するコーナー部(56)に2つのセンタリング手段(58)を組み込んでいる、
請求項1ないしのいずれか1項に記載の付加製造プレート(10)。
【請求項7】
請求項1ないしによる、補強材(12)を備えている付加製造プレート(10)を備える、付加製造機。
【請求項8】
請求項1からによる、補強材(12)を備えている付加製造プレート(10)を使用する付加製造プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザービーム及び/又は電子ビームを使用して粉体粒を焼結又は溶融させることによる、粉体ベースの付加製造の分野に関する。より詳細には、本発明は、製造される要素の幾何学的品質に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体粒の焼結又は溶融は、製造要素内に残留応力をもたらす製造プロセスであり、これらの残留応力は、要素がその上で製造される付加製造プレートの有意な変形をもたらす可能性が高い。有意な変形は、10分の数ミリから数ミリの変形と理解され、変形の大きさは、粉体の種類及び製造された要素の幾何学的形状に応じて変わる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
第1の問題点は、付加製造プレートが製造プロセスの間に著しく変形する場合、このプレートで支持される要素が、寸法の製造公差に関してもはや製造できない点である。
【0004】
他の問題点は、粉体床堆積による付加製造の範囲において、付加製造プレートの有意な変形は、粉体床堆積デバイスのローラ及び/又はスクレーパーが、製造されている要素を擦る可能性がある。このローラの擦れは製造中の要素に損傷を与える可能性があり、付加製造機の長時間の停止につながる。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記の問題点の少なくとも1つに対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このために、本発明の主題は、付加製造プロセスによって少なくとも1つの要素を製造するための支持体として機能することが意図された付加製造プレートであり、プレートは、製造支持体としての機能を果たすモノリシック本体を備え、本体は、パネルの形をとり、パネルの長さ及び幅は、パネルの厚さよりも大きく、本体は、要素がその上に直接製造される上面を備える。
【0007】
本発明によれば、付加製造プレートは、本体から独立しかつ本体の下面に固定された補強材を備え、補強材は、同様にパネルの形をとり、長さ及び幅が、厚さよりも大きく、補強材を形成するパネルは、厚さ内でくり抜かれている、
【0008】
さらに本発明によれば、補強材を形成するパネルは、全厚さを貫通してくり抜かれていない。好ましくは、パネルに形成された空洞は、パネルの下面上のみに開口し、パネルの上面上には開口しない。
【0009】
付加製造プレートの剛性を高くすることで、本発明による補強材は、製造プロセスの間の付加製造プレートの過度の変形に対処し、それによって製造要素の製造公差を守ること及び付加製造機の長時間にわたる停止を防止することができる。
【0010】
他の利点によれば、補強材は、付加製造プレートが過度に摩耗した場合に、新しいプレート及び補強材で形成された組立体が所望の公差に機械仕上げされる前に、このプレートから取り外して新しいプレートに再度取り付けることができる。
【0011】
好都合には、補強材は、製造プロセスに起因する製造要素の残留応力を取り除くための熱処理を行うためにプレート及び製造要素が加熱炉に配置される場合に、付加製造プレートの変形を制限することも可能にする。
【0012】
最後に、その厚さ内でくり抜くことで、補強材は、付加製造プレートに付与される剛性とそれによる付加重量との間の良好な妥協案をもたらす。
【0013】
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下の説明から明らかになるはずである。非限定的な例として与えられるこの説明は、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】付加製造機内に本発明による補強材を備えている付加製造プレートの使用を示す図である。
図2】本発明による補強材を備えている付加製造プレートの底面斜視図である。
図3】本発明による補強材を備えている付加製造プレートの断面図である。
図4】本発明による付加製造プレートの下の補強材の取り付けについての分解図である。
図5】本発明による補強材を備えている付加製造プレートで利用可能な位置決め手段の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、補強材を備えている付加製造プレートに関する。
図1に示すように、付加製造プレート10及びその補強材12は、付加製造プロセスを実施するために、付加製造機(図1には一部が示されている)に使用することが意図される。
【0016】
より詳細には、プレート10及びその補強材12は、粉体床堆積による付加製造プロセスを実施するために使用される。
このために、プレート10及びその補強材12は、ラムピストン又はウォームねじの端部などのアクチュエータ14に取り付けられ、これによって、付加製造機の製造チャンバ18と連通する製造スリーブ16の内部で、プレート10及びその補強材12を垂直に並進的に摺動させることができる。
【0017】
公知の方法で、付加製造機は、製造チャンバ18内に、プレート10上に順々に付加製造粉体の複数の層を堆積させるための堆積デバイス20と、レーザービーム、電子ビーム、又は何らかの他の適切なビームとすることができるビーム24を放出するための少なくとも1つのデバイス22とを備える。
【0018】
図1に例示するように、アクチュエータ14は、プレート10及びその補強材12を垂直に並進的に(TV)製造チャンバ18の作業面P18の所まで駆動することができ、その後、アクチュエータ14は、プレート10及びその補強材12を堆積デバイス20による新しい粉体層の全ての新しい堆積の後で1段ずつ降下させることができる。
【0019】
新しい粉体層の堆積ごとに、この新しい粉体層の粒は、要素26の形状で決まる輪郭が製造されるように焼結又は溶融される。本発明の場合、1又は複数の要素26は、付加製造プレートの上面28の上に直接製造される。上面28の上に直接製造することは、要素26が製造プロセスの終わりに付加製造プレート10に固定され、その後、例えばワイヤを利用して切断することでプレート10から切り離す必要があることを意味すると理解される。
【0020】
プレート10及びその補強材12をアクチュエータ14に固定するために、接続デバイス30を備える。本発明の場合、この接続デバイス30は、好ましくは円形断面の吸着カップの形をとり、このような接続デバイスは、プレートが変形した場合に障害を起こすリスクが低く、さらに機械的ロック手段よりも粉体と接触して故障又は早期摩耗するリスクが低い。
【0021】
図2に例示するように、プレート10は、製造支持体として機能するモノリシック本体32を備える。このモノリシック本体32はパネルの形をとり、このパネルの長さL32及び幅W32は、このパネルの厚さE32よりも大きい。目安として、長さL32及び幅W32は、このパネルの厚さE32よりも約10倍大きい。
図2に例示する実施形態において、本体32を形成するパネルの長さL32及び幅W32は等しく、約35センチである。
【0022】
上記のように、本体32は、要素26がその上で直接製造される上面28を備える。
本発明は、好ましくは金属合金製の要素26の付加製造の範囲にあるので、本体は同様に金属合金製であり、好ましくはマルエージング鋼を含む付加製造粉体用の25CD4鋼、又はチタンを含む付加製造粉体用のチタン合金、又はアルミニウムを含む付加製造粉体用のアルミニウム合金である。
【0023】
要素26を製造公差内で製造して、付加製造機の長期にわたる停止を回避するために、本発明のプレート10は補強材12を備えており、補強材12は本体32とは独立して、本体32の下面34に固定されている。
【0024】
さらに本発明によれば、この補強材12はパネル36の形をとり、長さL36及び幅W36は、その厚さE36よりも大きく、この補強材12を形成するパネル36は、その厚さE36内でくり抜かれている。目安として、長さL36及び幅W36は、このパネル36の厚さE36よりも約6から7倍だけ大きい。
【0025】
補強材12を備えたプレート10をコンベアベルト上で搬送するのを容易にするために、及びプレート10と製造スリーブ16との間にシールを装着するのを可能にするために、パネル36は、本体32の幅W32より小さい幅W36、及び本体32の長さL32よりも小さい長さL36を有する。
補強材12を形成するパネル36は、金属合金製であり、好ましくはS355鋼である。
【0026】
本発明によれば、製造コストを低減するために、プレート10の本体32及び補強材12のパネル36は、鋳物鋳造プロセス及びその後に続く機械加工によって大量生産される。
好都合には、付加製造プロセス及びその後の要素26を有するプレート10を付加製造チャンバ18から抜き出した後で、補強材をプレート10と一体のままとすることで、補強材は、製造プロセスに起因する要素26の残留応力を取り除くための熱処理を行うためにこのプレート10及び製造要素26を加熱炉の中に置く場合にもプレート10の剛性を高めることができる。
【0027】
他の利点によれば、補強材12は、プレート10が付加製造プロセスの間又は熱処理加熱炉の中で受ける可能性がある例えば約500℃の高温でのプレート10の剛性を高めることができる。
上述のように、補強材12を形成するパネル36は、プレート10に付与される付加重量を制限するために、その厚さE36内でくり抜かれている。
【0028】
補強材12とプレート10との間の完全な気密接続をもたらすことなく接続用吸着カップ30の適切な動作を保証するために、補強材12のパネル36は、全厚さE36を貫通してくり抜かれていない。図3に示すように、パネル36に形成された空洞40は、パネル36の下面37上にのみ開口しており、その上面42上では開口していない。
【0029】
パネル36と本体32との間に付加製造粉体粒を閉じ込めるのを防ぐために、空洞40はパネル36の下面37上に開口することが好ましい。
空洞40にもかかわらずプレート10に付与された剛性を最適にするために、補強材12を形成するパネル36は、その幅W36及び長さL36内でリブ補強構造を呈するようにその厚さE36内でくり抜かれている。
【0030】
好ましくは、パネル36のリブ38は、補強材12を形成するパネル36の幅W36及び長さL36の中心に位置する中心島部Cの周りに複数の分岐を形成する。従って、リブ38は、中心島部Cから延びることで、補強材12、結果的にはプレート10に適切な剛性を与える。
最適な構成において、リブ38は、中心島部Cの周りに8個の分岐を形成し、1つの分岐は、中心島部Cの周りで45°おきに延びる。
【0031】
プレート10及びその補強材12を円形断面の吸着カップ30を用いてアクチュエータ14に固定するために、パネル36は、円形断面の吸着カップ30を受けるための環状支持面44を有する下面42を備える。この環状支持面44は、リブ38を取り囲む。従って、リブ38で形成された各分岐は、中心島部Cとこの環状支持面44との間で延びる。
【0032】
図3から図5に示すように、パネル36は、本体32の下面34に当接する上面42を備える。
この当接を維持するために、パネル36を貫通するボア46及びねじ48が設けられている。より詳細には、パネル36の各端部50は、1列の4本のねじ48で保持される。
【0033】
補強材12をプレート10上に取り付けるのを容易にするために、パネル36の2つの対向するコーナー部56に突出する2本のセンタリングピン52が設けられており、センタリングピン52に向かい合うセンタリングボア54が本体32内に設けられている。
【0034】
補強材12を備えているプレート10を付加製造機の内部で、例えばアクチュエータ14に対して関連付けるのを保証するために、パネル36は、2つの対向するコーナー部56内に2つのセンタリング手段58を組み込んでいる。センタリング手段58は、この目的でパネル36内に設けられたハウジング59内に配置されて組み込まれる。
各センタリング手段58は、補強材12を備えているプレート10を付加製造機の内部で、例えばアクチュエータ14又はプレートの自動搬送用のデバイスに対して関連付けるのに役立つ、ハウジング60を備える。
【0035】
同時に、位置決め手段が、各センタリング手段58と補強材12との間に設けられる。好ましくは、これらの位置決め手段は、パネル36に固定された2本のピン62及び64を備え、センタリング手段58は、第1のピン62を受け入れるボア66及び第2のピン64を受け入れる楕円穴68を備え、不静定な位置決めを防ぐために、楕円穴68は、第2のピン64が中心島部Cに関する半径方向に並進移動するのを可能にする。
【0036】
好都合には、ピン62又は64のうちの一方は、補強材12をプレート10に対して位置決めするために使用することもできる。
もちろん、ピン62及び64と並行して、センタリング手段58とパネル36との間にねじ締結具70が設けられる。
【0037】
センタリング手段58は、耐摩耗性の及び/又は幾何学的精度が低下することなく高温に耐える熱機械的特性を有する材料で作られているのが好都合である。このことは、これらのセンタリング手段58を同じ補強材を備えた新しいプレート上で又は他の補強材を備えた新しいプレート上で再利用することを可能にする。それにもかかわらず、早期摩耗の場合、センタリング手段58は、補強材12及びプレート10とは独立に交換することができる。
また、本発明は、上述したような補強材12を備えている付加製造プレート10を含む付加製造機、及び補強材12を備えている付加製造プレート10の付加製造プロセスでの使用もカバーする。
図1
図2
図3
図4
図5