(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963576
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】鋳鉄部材、鋳鉄部材を含む複合部材及び鋳鉄部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 37/00 20060101AFI20211028BHJP
B22C 9/22 20060101ALI20211028BHJP
B22D 25/02 20060101ALI20211028BHJP
B22D 27/04 20060101ALI20211028BHJP
B22D 27/20 20060101ALI20211028BHJP
F16J 9/26 20060101ALI20211028BHJP
F16J 10/02 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
C22C37/00 Z
B22C9/22 A
B22D25/02 C
B22D27/04 G
B22D27/20 C
F16J9/26 C
F16J10/02 Z
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-16638(P2019-16638)
(22)【出願日】2019年2月1日
(65)【公開番号】特開2020-125505(P2020-125505A)
(43)【公開日】2020年8月20日
【審査請求日】2019年4月9日
【審判番号】不服2020-4600(P2020-4600/J1)
【審判請求日】2020年4月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000215785
【氏名又は名称】TPR株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591206120
【氏名又は名称】TPR工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽
(72)【発明者】
【氏名】畠山 公一
(72)【発明者】
【氏名】大泉 貴志
(72)【発明者】
【氏名】伴 弥生
【合議体】
【審判長】
粟野 正明
【審判官】
井上 猛
【審判官】
村川 雄一
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 37/00
C21D 5/00
F16J 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素を2.9質量%〜3.7質量%、ケイ素を1.8質量%〜2.8質量%、マンガンを0.5質量%〜1.0質量%、リンを0.05質量%〜0.4質量%、硫黄を0.12質量%以下、及び、銅を0.5質量%〜3.0質量%含有し、残部を鉄及び不可避不純物からなる鋳鉄部材であって、
表面において、A型黒鉛を含み、且つ全黒鉛に占めるA型黒鉛の面積比率が15%以上65%以下である鋳鉄部材。
【請求項2】
さらに、ホウ素を0.03質量%〜0.08質量%、クロムを0.10質量%のいずれか1種又は2種を含有する、請求項1に記載の鋳鉄部材。
【請求項3】
表面において、フェライト相とセメンタイト相が交互に析出したパーライト相を構成し、該パーライト相のラメラ間隔が、0.5μm以上2.5μm以下である、請求項1又は2に記載の鋳鉄部材。
【請求項4】
前記鋳鉄部材は、炭素当量C.E値が2.6以上3.8以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋳鉄部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋳鉄部材、及び外周面が該鋳鉄部材の内壁を摺動するピストンリングを備えたピストン、を含む複合部材であって、
前記ピストンリングの外周面が、PVD及びDLCからなる群から選択される被膜によって覆われる、複合部材。
【請求項6】
鋳鉄材料を鋳型に流し込む流込工程、鋳型に流し込んだ鋳鉄材料を冷却し、鋳鉄部材を得る冷却工程、を含む、鋳鉄部材の製造方法であって、
鋳鉄部材は炭素を2.9質量%〜3.7質量%、ケイ素を1.8質量%〜2.8質量%
、マンガンを0.5質量%〜1.0質量%、リンを0.05質量%〜0.4質量%、硫黄を0.12質量%以下、及び、銅を0.5質量%〜3.0質量%含有し、残部を鉄及び不可避不純物からなる鋳鉄部材であり、
表面において、A型黒鉛を含み、全黒鉛に占めるA型黒鉛の面積比率が15%以上65%以下となる領域を含むように、前記流込工程における流し込む鋳鉄材料の温度、鋳型の温度及び/又は前記冷却工程における冷却速度を調整する、鋳鉄部材の製造方法。
【請求項7】
炭素を2.9質量%〜3.7質量%、ケイ素を1.8質量%〜2.8質量%、マンガンを0.5質量%〜1.0質量%、リンを0.05質量%〜0.4質量%、硫黄を0.12質量%以下、及び銅を0.5質量%〜3.0質量%含有し、残部を鉄及び不可避不純物からなるシリンダライナであって、
表面において、A型黒鉛を含み、且つ全黒鉛に占めるA型黒鉛の面積比率が15%以上65%以下である、シリンダライナ。
【請求項8】
さらに、ホウ素を0.03質量%〜0.08質量%、クロムを0.10質量%のいずれか1種又は2種を含有する、請求項7に記載のシリンダライナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のシリンダライナとしての利用に適した、耐食性を向上させた鋳鉄部材、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境要求に応じて内燃機関からの排気中のNOxの濃度を低減させるため、EGRシステムが採用されている。EGRシステムのEGRガスは燃料中の硫黄成分を含むため、EGRガスの凝縮水には硫酸が含まれることとなり、鋳鉄製のシリンダライナの内壁に腐食などを引き起こす場合がある。
このようなEGRガスによる腐食に対応するため、パーライト相において、フェライト相とセメンタイト相の間隔を狭くする技術が開示されている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
一方でシリンダライナは内燃機関において高速摺動されることから、耐摩耗性とともに、ピストンリングとの摺動による焼き付きを生じさせない耐焼き付き性も要求される。このため、耐摩耗性及び耐焼き付き性を改善したシリンダライナに用いられる鋳鉄として、A型黒鉛を含む鋳鉄が開示されている(特許文献3及び4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5757755号公報
【特許文献2】特開2015−196897号公報
【特許文献3】特公昭58−036664号公報
【特許文献4】特開2008−106357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、EGRシステムで発生する硫酸などの酸による腐食に対する耐食性が改善された鋳鉄部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ね、鋳鉄部材に銅を一定量含有させ、その上で更にA型黒鉛比率を低減させることで耐食性が向上することを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明は、炭素を2.9質量%〜3.7質量%、ケイ素を1.8質量%〜2.8質量%、マンガンを0.5質量%〜1.0質量%、リンを0.05質量%〜0.4質量%、硫黄を0.12質量%以下、及び銅を0.5質量%〜3.0質量%、含有する鋳鉄部材であって、
前記鋳鉄部材はA型黒鉛を含み、且つ全黒鉛に占めるA型黒鉛の比率が65%以下である、鋳鉄部材を含む。
【0008】
鋳鉄部材は、フェライト相とセメンタイト相が交互に析出したパーライト相を構成し、該パーライト相のラメラ間隔が、0.5μm以上2.5μm以下であることが好ましく、炭素当量C.E値が2.6以上3.8以下であることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、別の形態として、上記記載の鋳鉄部材、及び外周面が該鋳鉄部材の内壁を摺動するピストンリングを備えたピストン、を含む複合部材であって、
前記ピストンリングの外周面が、PVD及びDLCからなる群から選択される被膜によって覆われる、複合部材を含む。
【0010】
また、本発明は、更に別の形態として、鋳鉄材料を鋳型に流し込む流込工程、鋳型に流し込んだ鋳鉄材料を冷却し、鋳鉄部材を得る冷却工程、を含む、鋳鉄部材の製造方法であって、
鋳鉄部材はA型黒鉛を含み、
全黒鉛に占めるA型黒鉛の比率が65%以下となるように、前記流込工程における流し込む鋳鉄材料の温度、鋳型の温度及び/又は前記冷却工程における冷却速度を調整する、鋳鉄部材の製造方法を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、酸による腐食の小さい、耐食性に優れた鋳鉄部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1〜4及び比較例1の腐食試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態は、炭素を2.9質量%〜3.7質量%、ケイ素を1.8質量%〜2.8質量%、マンガンを0.5質量%〜1.0質量%、リンを0.05質量%〜0.4質量%、硫黄を0.12質量%以下、及び銅を0.5質量%〜3.0質量%、含有する鋳鉄部材である。そして、鋳鉄部材はA型黒鉛を含み、且つ全黒鉛に占めるA型黒鉛の比率が65%以下である。本実施形態の鋳鉄部材は、上記以外の元素を含有してもよく、例えばホウ素、クロム、ニッケル、モリブデンなどを含んでいてもよい。ホウ素を含む場合、その含有量は0.03質量%〜0.08質量%であってよく、ホウ素を含有させることで耐摩耗性を向上させることができる。
本実施形態において鋳鉄部材は、耐食性を向上させるため銅を一定量含有する。そして、鋳鉄部材は銅を含有した上で、A型黒鉛を含み、且つ全黒鉛に占めるA型黒鉛の比率を65%以下とすることで、酸への耐食性を向上させることができる。
【0014】
本実施形態の鋳鉄部材は、銅を一定量含有することで、酸への耐食性を向上させることができ、その含有量は通常0.5質量%以上であり、0.6質量%以上であってよく、0.8質量%以上であってよく、1.0質量%以上であってよい。また通常3.0質量%以下であり、2.5質量%以下であってよく、2.0質量%以下であってよい。
【0015】
鋳鉄部材がA型黒鉛を含む場合、鋳鉄部材において黒鉛が方向性を持たず、無秩序且つ均等に分布して存在する。本実施形態では、全黒鉛に占めるA型黒鉛の比率を65%以下とすることで、酸による腐食に対する耐食性を向上させることができる。全黒鉛に占めるA型黒鉛の比率は60%以下であってよく、55%以下であってよく、50%以下であってよく、45%以下であってよく、40%以下であってよい。下限は限定されず、0%より大きく、5%以上であってよく、10%以上であってよく、15%以上であってよく、20%以上であってよく、25%以上であってよく、30%以上であってよい。なお、A型黒鉛比率が高すぎる場合にはフェライトが析出するため耐食性が低下する。そのため、本実施形態では、フェライトが析出していないことが好ましい。
【0016】
なお、全黒鉛に占めるA型黒鉛の比率が少なすぎる場合には、耐摩耗性が不十分となる傾向にある。そのため、鋳鉄部材の、全黒鉛に占めるA型黒鉛の割合が低い場合には、鋳鉄部材の内壁と摺動し得るピストンリングの外周面を覆う被膜が、PVD及びDLCからなる群から選択されるような、耐摩耗性に優れ、且つ相手攻撃性の小さい被膜により覆われることが好ましい。
【0017】
鋳鉄部材は、A型黒鉛以外の黒鉛を含有してもよく、例えばB型黒鉛、D型黒鉛、E型黒鉛を一定量含有してもよいが、典型的にはE型黒鉛の割合が大きい。E型黒鉛は通常50%以下であり、40%以下であってよく、30%以下であってよい。その他の黒鉛は、それぞれ通常30%以下であり、20%以下であってよく、10%以下であってよい。
【0018】
鋳鉄部材は、炭素当量C.E値が通常3.8以下であり、3.6以下であってよく、3.5以下であってよく、また通常2.6以上であり、3.2以上であってよい。
炭素当量C.Eは(炭素量+ケイ素量/3.2)で表され、値が小さくなると、硬く脆い鋳鉄部材となる傾向にある。
【0019】
鋳鉄部材は、フェライトとセメンタイトとの層状組織であるパーライトを有し、該パーライトのラメラ間隔が通常0.5μm以上であり、0.7μm以上であってよく、また通常2.5μm以下であり、2.3μm以下であってよく、2.0μm以下であってよく、1.0μm以下であってよい。上記範囲とすることで、耐食性が向上する。
【0020】
全黒鉛に占めるA型黒鉛の比率は、目視検査により測定できる。具体的には、ASTMA247に基づいてA型黒鉛の比率(面積比率)を測定する。A型黒鉛の比率の測定は、判定訓練者により行われることが好ましく、鋳鉄部材中の複数箇所、例えば2か所以上、好ましくは4か所以上で測定し、その平均を算出することが好ましい。
また、パーライトのラメラ間隔は、金属顕微鏡で鋳鉄部材を複数箇所観察し、20μm範囲におけるラメラ平均間隔を計算することで、算出できる。ラメラ間隔についても、鋳鉄部材中の複数箇所、例えば2か所以上、好ましくは4か所以上で測定し、その平均を算出することが好ましい。
【0021】
本実施形態において、全黒鉛に占めるA型黒鉛の比率を上記範囲とすることは、鋳鉄材料(溶湯)を流し込む鋳型の温度を調整すること、流しこむ溶湯の温度を調整すること、鋳鉄部材の製造において鋳型に流し込んだ鋳鉄材料の冷却速度を調整すること、鋳型に塗布する鋳型剤層の厚みを調整すること、鋳鉄材料中に黒鉛化を阻害する元素や黒鉛化を促進させる元素を導入すること、などにより達成できる。
また、パーライトのラメラ間隔は、鋳鉄材料を流し込む鋳型の温度を調整すること、鋳鉄部材の製造において鋳型に流し込んだ鋳鉄材料の冷却速度を早くすること、鋳鉄材料中のCuの含有量を調整すること、などにより達成できる。
【0022】
以下、本実施形態に係る鋳鉄部材の製造方法について説明する。
本発明の別の実施形態は、鋳鉄材料を鋳型に流し込む流込工程、鋳型に流し込んだ鋳鉄材料を冷却し、鋳鉄部材を得る冷却工程、を含む、鋳鉄部材の製造方法であって、
鋳鉄部材はA型黒鉛を含み、全黒鉛に占めるA型黒鉛の比率が65%以下となるように、前記流込工程及び/又は前記冷却工程を調整する、鋳鉄部材の製造方法である。前記流込工程及び/又は前記冷却工程において、A型黒鉛の比率が65%以下とする具体的な方法は、上記記載のとおりである。
鋳鉄部材の製造は、典型的には遠心鋳造法が用いられるが、重力鋳造により製造してもよい。
【0023】
流込工程では、鋳鉄部材を形成するための鋳型を準備し、当該鋳型に溶解した鋳鉄材料(溶湯)を流し込む。この際、鋳型の温度は通常250℃以上300℃以下であり、260℃以上290℃以下であることが好ましい。流し込む溶湯は、上記鋳鉄材料の組成を充足するものを使用する。また、鋳型に流し込む溶湯の温度も特段限定されず、適宜設定できるが、溶湯の温度によって冷却工程の冷却速度を調整することができる。
鋳型の内部には、耐火基材、粘着剤、水、界面活性剤などを含む塗型剤を塗布する。塗
型剤層の厚みは特段限定されず、適宜設定できるが、塗型剤層の厚みによって冷却工程の冷却速度を調整することができる。
【0024】
冷却工程では、鋳型に流し込んだ鋳鉄材料を冷却し、鋳鉄部材を得る。この際、鋳鉄材料の冷却温速度は特段限定されず、空冷であってよく、空調を調整することで冷却速度を調整してもよい。また、塗型剤の種類、塗型剤層の厚みを調整することで、鋳鉄材料の冷却速度を調整してもよい。
得られた鋳鉄部材は、鋳型から取り出し、表面の塗型剤層をブラスト処理により鋳鉄部材から除去することで、鋳鉄部材が得られる。
【0025】
本実施形態の鋳鉄部材は、全黒鉛に占めるA型黒鉛の比率を65%以下とすることで、酸による腐食に対する耐食性を向上させる一方で、A型黒鉛の比率を比較的低くすることから、耐摩耗性が不十分となる場合がある。そのため、シリンダライナとしてピストンと共にエンジンに用いられる際には、鋳鉄部材の内壁と摺動し得るピストンリングの外周面を覆う被膜が、PVD及びDLCからなる群から選択されるような、耐摩耗性に優れ、且つ相手攻撃性の小さい被膜により覆われることが好ましい。
【0026】
すなわち、本発明の別の形態は、上記記載の鋳鉄部材、及び外周面が該鋳鉄部材の内壁を摺動するピストンリングを備えたピストン、を含む複合部材であって、前記ピストンリングの外周面が、PVD及びDLCからなる群から選択される被膜によって覆われる、複合部材である。
PVD及びDLCからなる群から選択される、ピストンリングを覆う被膜は、DLCであることがより好ましい。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
<実施例1:Cu 0.5質量%>
次の組成を有する鋳鉄部材を製造した。
炭素 :3.4質量%
ケイ素 :2.4質量%
マンガン:0.63質量%
リン :0.12質量%
硫黄 :0.035質量%
銅 :0.5質量%
ホウ素 :0.06質量%
クロム :0.10質量%
具体的には、上記組成を有する1400℃に加熱した鋳鉄材料を、280℃の鋳型に流し込み、その後空冷することで、鋳鉄部材を得た。得られた鋳鉄部材の物性を測定し、結果を表1に示す。なお、実施例で得られた鋳鉄部材は、直径φ8.5cm、高さ13.5cm、肉厚0.6cmの円筒形状であり、「外周からの距離」は、鋳鉄部材の外周面からの距離を意味する。
【0028】
【表1】
【0029】
<実施例2:Cu 1.0質量%>
Cuの含有量を1.0質量%とした以外は実施例1と同様の組成を有する鋳鉄部材を製造した。
得られた鋳鉄部材の物性を測定し、結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
<実施例3:Cu 1.5質量%>
Cuの含有量を1.5質量%とした以外は実施例1と同様の組成を有する鋳鉄部材を製造した。
得られた鋳鉄部材の物性を測定し、結果を表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
<実施例4:Cu 2.0質量%>
Cuの含有量を2.0質量%とした以外は実施例1と同様の組成を有する鋳鉄部材を製造した。
得られた鋳鉄部材の物性を測定し、結果を表4に示す。
【0034】
【表4】
【0035】
<比較例1:Cu 0.2質量%>
Cuの含有量を0.2質量%とし、ホウ素の含有量をゼロとした以外は実施例1と同様の組成を有する鋳鉄部材を製造した。
得られた鋳鉄部材の物性を測定し、結果を表5に示す。
【0036】
【表5】
【0037】
上記、得られた鋳鉄部材に対し、腐食試験を行った。腐食試験は、上記A型黒鉛比率及びパーライトラメラ間隔を測定した面を表面として有する10mm×10mmの試験片を準備し、試験片を2.5%硫酸に65℃で15時間晒し、硫酸に晒す前後における試験片の重量差を測定した。結果を
図1に示す。
図1より、Cuを特定量含有し、A型黒鉛比率を65%以下とすることで、酸に対する高い耐食性を示すことが理解できる。