【文献】
Trends. Pharmacol. Sci.,2009年,vol.30, no.5,pp.240-248
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または前記軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、請求項1または2に記載の組成物であって、
ここで、必要に応じて、前記抗体が、配列番号2〜10から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16〜22から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1または2に記載の組成物。
前記抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号67〜70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または前記軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、請求項1または2に記載の組成物。
前記抗体が、配列番号11〜14から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号23〜24から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項4に記載の組成物。
前記抗体が、配列番号2〜14から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16〜24から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1または2に記載の組成物。
ヒトシグレック−8に対する前記抗体の結合親和性またはアビディティーが、前記ヒトシグレック−8に対する抗体2E2または2C4の結合親和性またはアビディティーよりも高い、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
前記抗体が、熱シフトアッセイにおいて少なくとも70℃のTmを有し、必要に応じて、前記抗体が、熱シフトアッセイにおいて少なくとも70℃から少なくとも72℃のTmを有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
前記疾患が、喘息、アレルギー性鼻炎、鼻ポリポーシス、アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹、肥満細胞症、好酸球性白血病および好酸球増加症候群からなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
前記疾患が、乏顆粒球型喘息、急性または慢性気道過敏症、好酸球性食道炎、チャーグ・ストラウス症候群、サイトカインに関連する炎症、シグレック−8を発現する細胞に関連する炎症、シグレック−8を発現する細胞に関連する悪性病変、物理的蕁麻疹、寒冷蕁麻疹、圧迫性蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、食物アレルギーおよびアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)からなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
前記対象が、吸入コルチコステロイド、短時間作用型β2アゴニスト、長時間作用型β2アゴニストまたはこれらの組合せによって適切に制御されていない喘息を患う、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
抗シグレック−8抗体(ヒト化抗シグレック−8抗体を含む)、これを含む組成物およびこれを使用する方法が本明細書において提供される。
【0009】
一態様において、ヒトシグレック−8に特異的に結合するヒト化抗体であって、ヒトシグレック−8に対するヒト化抗体の結合親和性および/または結合アビディティーが、ヒトシグレック−8に対する抗体2E2および/または抗体2C4の結合親和性および/または結合アビディティーよりも高いヒト化抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8は、二量体である。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8は、免疫グロブリンのFc領域に融合された細胞外ドメインヒトシグレック−8を含む。一部の実施形態において、Fc領域は、ヒトIgG1 Fc領域である。一部の実施形態において、Fc領域は、ヒトIgG4 Fc領域である。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8は、配列番号74のアミノ酸配列を含む。
【0010】
一部の実施形態において、ヒト化抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または前記軽鎖可変領域は、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。一部の実施形態において、抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、ヒトIgG Fc領域を含む重鎖Fc領域を含むことができる。さらなる実施形態において、ヒトIgG Fc領域は、ヒトIgG1またはIgG4を含む。一部の実施形態において、ヒトIgG1は、配列番号78のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ヒトIgG4は、配列番号79のアミノ酸配列を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、配列番号75のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76もしくは77から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができる。一部の実施形態において、ヒトIgG4は、アミノ酸置換S228Pを含み、アミノ酸残基は、Kabatにおける通りのEUインデックスに従ってナンバリングされる。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができる。一部の実施形態において、抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を改善するように操作された。一部の実施形態において、抗体は、2つの重鎖を含み、前記抗体の前記2つの重鎖のうち少なくとも1つまたは両方の重鎖は、フコシル化されていない。
【0011】
別の態様において、ヒトシグレック−8に特異的に結合するヒト化抗体であって、熱シフトアッセイにおいて少なくとも約70℃から少なくとも約72℃のTmを有する抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、抗体は、熱シフトアッセイにおいて約70℃、約71℃または約72℃のTmを有する。一部の実施形態において、抗体は、キメラ2C4抗体と比較した場合に同じまたはより高いTmを有する。一部の実施形態において、抗体は、配列番号84のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号85のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する抗体と比較した場合に同じまたはより高いTmを有する。
【0012】
一部の実施形態において、抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域は、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。一部の実施形態において、抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、ヒトIgG Fc領域を含む重鎖Fc領域を含むことができる。さらなる実施形態において、ヒトIgG Fc領域は、ヒトIgG1またはIgG4を含む。一部の実施形態において、ヒトIgG1は、配列番号78のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ヒトIgG4は、配列番号79のアミノ酸配列を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、配列番号75のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76もしくは77から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができる。一部の実施形態において、ヒトIgG4は、アミノ酸置換S228Pを含み、アミノ酸残基は、Kabatにおける通りのEUインデックスに従ってナンバリングされる。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができる。一部の実施形態において、抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を改善するように操作された。一部の実施形態において、前記抗体の前記重鎖の少なくとも1または2つは、フコシル化されていない。
【0013】
さらに別の態様において、ヒトシグレック−8に特異的に結合するヒト化抗体であって、前記抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63および67〜70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66または71のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含むヒト化抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、抗体は、配列番号11〜14から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号23〜24から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、重鎖可変領域は、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域は、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。一部の実施形態において、抗体は、配列番号6から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、ヒトIgG Fc領域を含む重鎖Fc領域を含むことができる。さらなる実施形態において、ヒトIgG Fc領域は、ヒトIgG1またはIgG4を含む。一部の実施形態において、ヒトIgG1は、配列番号78のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ヒトIgG4は、配列番号79のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ヒトIgG4は、アミノ酸置換S228Pを含み、前記アミノ酸残基は、Kabatにおける通りのEUインデックスに従ってナンバリングされる。一部の実施形態において、抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を改善するように操作された。一部の実施形態において、前記抗体の前記重鎖の少なくとも1または2つは、フコシル化されていない。
【0014】
さらに別の態様において、ヒトシグレック−8に特異的に結合するヒト化抗体であって、配列番号2〜14から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16〜24から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を改善するように操作された。一部の実施形態において、前記抗体の前記重鎖の少なくとも1または2つは、フコシル化されていない。
【0015】
さらに別の態様において、ヒトシグレック−8に特異的に結合するヒト化抗体であって、配列番号2〜10から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16〜22から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を改善するように操作された。一部の実施形態において、抗体の重鎖の少なくとも1または2つは、フコシル化されていない。
【0016】
別の態様において、ヒトシグレック−8に特異的に結合するヒト化抗体であって、前記抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、(a)重鎖可変領域が、(1)配列番号26〜29から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR1、(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(3)配列番号31〜36から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR2、(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(5)配列番号38〜43から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR3、(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3および(7)配列番号45〜46から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR4を含み、かつ/または(b)軽鎖可変領域が、(1)配列番号48〜49から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR1、(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(3)配列番号51〜53から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR2、(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−H2、(5)配列番号55〜58から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR3、(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−H3および(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むHC−FR4を含むヒト化抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を改善するように操作された。一部の実施形態において、前記抗体の前記重鎖の少なくとも1または2つは、フコシル化されていない。
【0017】
さらに別の態様において、ヒトシグレック−8に結合し、ADCC活性によりシグレック−8を発現する肥満細胞を死滅させる、単離された抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、抗体は、in vitroでシグレック−8を発現する肥満細胞を死滅させる(例えば、実施例2に記載されている細胞培養アッセイにおいて測定される)。一部の実施形態において、抗体は、治療有効量が投与されると、対象においてシグレック−8を発現する肥満細胞を枯渇させる。さらなる実施形態において、抗体は、処置前のベースラインレベルと比較した場合に、対象から得られる試料におけるシグレック−8を発現する肥満細胞の少なくとも約20%(例えば、少なくとも)を枯渇させる。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、試料は、組織試料または生体液試料となり得る。一部の実施形態において、組織試料は、皮膚、肺、骨髄および鼻ポリープからなる群から選択される1種または複数である。一部の実施形態において、生体液試料は、血液、気管支肺胞洗浄液および鼻洗浄液からなる群から選択される1種または複数である。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を改善するように操作することができる。一部の実施形態において、抗体の重鎖の少なくとも1または2つは、フコシル化されていない。さらなる実施形態において、抗体は、アルファ1,6−フコシル基転移酵素(Fut8)ノックアウトを有する細胞株において産生することができる。一部のさらなる実施形態において、抗体は、β1,4−N−アセチルグルコサミン転移酵素(acetylglycosminyltransferase)III(GnT−III)を過剰発現する細胞株において産生することができる。さらなる実施形態において、細胞株は、ゴルジμ−マンノシダーゼII(ManII)をさらに過剰発現する。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、ADCC活性を改善するFc領域における少なくとも1個のアミノ酸置換を含むことができる。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体またはヒト抗体となり得る。一部の実施形態において、抗体は、ヒトIgG1抗体である。一部の実施形態において、抗体は、マウス抗体である。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、(i)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域、および/または(i)配列番号97のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号103のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域を含むことができる。さらなる実施形態において、抗体は、配列番号106のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号109のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、(i)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域を含む重鎖可変領域、および/または(i)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号101のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域を含むことができる。さらなる実施形態において、抗体は、配列番号107のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号110のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域を含む重鎖可変領域を含む重鎖可変領域、および/または(i)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域を含むことができる。さらなる実施形態において、抗体は、配列番号108のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号111のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むことができ、重鎖可変領域は、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域は、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むことができ、重鎖可変領域は、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号67〜70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域は、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、対象は、ヒトとなり得る。
【0018】
さらに別の態様において、ヒトシグレック−8および非ヒト霊長類シグレック−8に結合する抗体が本明細書において提供される。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、(i)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域を含む重鎖可変領域、および/または(i)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号101のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域を含むことができる。さらなる実施形態において、抗体は、配列番号107のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号110のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域を含む重鎖可変領域を含む重鎖可変領域、および/または(i)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域を含むことができる。さらなる実施形態において、抗体は、配列番号108のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号111のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、ヒトシグレック−8のドメイン1(例えば、配列番号112のアミノ酸配列を含むドメイン1)におけるエピトープに結合することができる。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、ヒトシグレック−8のドメイン3(例えば、配列番号114のアミノ酸配列を含むドメイン3)におけるエピトープに結合することができる。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、ヒトシグレック−8のドメイン2(例えば、配列番号113のアミノ酸配列を含むドメイン2)におけるエピトープに結合することができる。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体またはヒト抗体となり得る。一部の実施形態において、抗体は、マウス抗体である。一部の実施形態において、抗体は、IgG1またはIgG4抗体(例えば、ヒトIgG1またはIgG4)である。
【0019】
別の態様において、配列番号116のアミノ酸を含む融合タンパク質に結合するが、配列番号115のアミノ酸を含む融合タンパク質には結合しない、抗ヒトシグレック8抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、配列番号117のアミノ酸を含む融合タンパク質に結合するが、配列番号115のアミノ酸を含む融合タンパク質には結合しない。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、配列番号117のアミノ酸を含む融合タンパク質に結合するが、配列番号116のアミノ酸を含む融合タンパク質には結合しない。本明細書における一部の実施形態において、抗体は、(i)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域、および/または(i)配列番号97のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号103のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域を含むことができる。さらなる実施形態において、抗体は、配列番号106のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号109のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。本明細書における一部の実施形態において、抗体は、(i)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域を含む重鎖可変領域、および/または(i)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号101のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域を含むことができる。さらなる実施形態において、抗体は、配列番号107のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号110のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。本明細書における一部の実施形態において、抗体は、(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域を含む重鎖可変領域を含む重鎖可変領域、および/または(i)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域を含むことができる。さらなる実施形態において、抗体は、配列番号108のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号111のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0020】
別の態様において、ヒトシグレック−8に結合するヒト化抗体であって、活性化されたヒト好酸球の枯渇におけるEC
50が、ヒトシグレック−8に対する抗体2E2または2C4のEC
50に満たないヒト化抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、ヒト化抗体のEC
50は、ヒトシグレック−8に対する抗体2E2または2C4のEC
50の約85%またはそれに満たない。一部の実施形態において、ヒト化抗体のEC
50は、ヒトシグレック−8に対する抗体2E2または2C4のEC
50の約85%、約80%、約70%、約65%、約60%、約55%、約50%、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%もしくは約5%またはそれに満たない。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、ヒト化抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むことができ、重鎖可変領域は、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域は、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、ヒト化抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含むことができる。一部の実施形態において、ヒト化抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号67〜70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域は、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、ヒト化抗体は、配列番号2〜14から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16〜24から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含むことができる。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、(i)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域、および/または(i)配列番号97のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号103のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域を含むことができる。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、(i)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域を含む重鎖可変領域、および/または(i)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号101のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域を含むことができる。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域を含む重鎖可変領域を含む重鎖可変領域、および/または(i)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域を含むことができる。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、ヒトIgG Fc領域を含む重鎖Fc領域を含むことができる。さらなる実施形態において、ヒトIgG Fc領域は、ヒトIgG1またはIgG4を含む。一部の実施形態において、ヒトIgG1は、配列番号78のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ヒトIgG4は、配列番号79のアミノ酸配列を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、配列番号75のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76もしくは77から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができる。一部の実施形態において、ヒトIgG4は、アミノ酸置換S228Pを含み、アミノ酸残基は、Kabatにおける通りのEUインデックスに従ってナンバリングされる。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができる。
【0021】
別の態様において、上述および本明細書に記載されているいずれかの抗体をコードする核酸が本明細書において提供される。さらに別の態様において、本明細書に記載されている核酸を含むベクターが本明細書において提供される。一実施形態において、ベクターは、発現ベクターである。さらに別の態様において、本明細書に記載されている核酸を含む宿主細胞が本明細書において提供される。一部の実施形態において、宿主細胞は、抗体を発現および産生する。
【0022】
別の態様において、抗体を産生する方法であって、本明細書に記載されている抗体をコードする1種または複数の核酸を含む宿主細胞を、抗体を産生する条件下で培養するステップを含む方法が本明細書において提供される。一部の実施形態において、本方法は、宿主細胞によって産生された抗体を回収するステップをさらに含む。本方法によって産生される抗シグレック−8抗体も本明細書において提供される。本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体の抗原結合性断片も本明細書において提供される。
【0023】
別の態様において、上述および本明細書に記載されている抗体またはその抗原結合性断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が本明細書において提供される。
【0024】
別の態様において、ヒトシグレック−8に特異的に結合する抗体またはその断片を含む組成物であって、抗体が、Fc領域と、Fc領域に連結されたN−グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、組成物におけるN−グリコシド結合型炭水化物鎖の50%未満が、フコース残基を含有する組成物が本明細書において提供される。一部の実施形態において、N−グリコシド結合型炭水化物鎖のうち実質的に全てが、フコース残基を含有しない。一部の実施形態において、抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体またはヒト抗体である。一部の実施形態において、抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域は、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。一部の実施形態において、抗体は、配列番号2〜10のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16〜22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号67〜70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域は、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。一部の実施形態において、抗体は、配列番号11〜14から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号23〜24から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、抗体は、配列番号2〜14から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16〜24から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含むことができる。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、ヒトシグレック−8に対する抗体の結合親和性および/または結合アビディティーは、ヒトシグレック−8に対する抗体2E2または2C4の結合親和性および/または結合アビディティーよりも高くなることができる。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、熱シフトアッセイにおいて少なくとも約70℃から少なくとも約72℃のTmを有することができる。一部の実施形態において、抗体は、約70℃、約71℃または約72℃のTmを有する。一部の実施形態において、抗体は、キメラ2C4抗体と比較してた場合に同じまたはより高いTmを有する。一部の実施形態において、抗体は、配列番号84のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号85のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する抗体と比較した場合に同じまたはより高いTmを有する。
【0025】
別の態様において、対象においてシグレック−8を発現する細胞によって媒介される疾患を処置または予防する方法であって、対象に、有効量の本明細書に記載されている抗体もしくはその抗原結合性断片または本明細書に記載されている組成物を投与するステップを含む方法が本明細書において提供される。一部の実施形態において、疾患は、好酸球媒介性疾患である。一部の実施形態において、疾患は、肥満細胞媒介性疾患である。一部の実施形態において、疾患は、喘息、アレルギー性鼻炎、鼻ポリポーシス、アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹、肥満細胞症、好酸球性白血病および好酸球増加症候群からなる群から選択される。一部の実施形態において、疾患は、乏顆粒球型喘息(pauci granulocytic asthma)、急性または慢性気道過敏症、好酸球性食道炎、チャーグ・ストラウス症候群、サイトカインに関連する炎症、シグレック−8を発現する細胞に関連する炎症、シグレック−8を発現する細胞に関連する悪性病変、物理的蕁麻疹、寒冷蕁麻疹、圧迫性蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、食物アレルギーおよびアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)からなる群から選択される。一部の実施形態において、抗体は、アレルギー反応の1種または複数の症状を阻害する。一部の実施形態において、アレルギー反応は、I型過敏症反応である。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、対象は、吸入コルチコステロイド、短時間作用型β2アゴニスト、長時間作用型β2アゴニストまたはこれらの組合せによって適切に制御されていない喘息を患っていてよい。
【0026】
別の態様において、対象においてシグレック−8を発現する肥満細胞を枯渇させる方法であって、対象に、ヒトシグレック−8に結合する有効量の抗体を投与するステップを含み、抗体が、ADCC活性によりシグレック−8を発現する肥満細胞を死滅させる方法が本明細書において提供される。一部の実施形態において、抗体は、in vitroでシグレック−8を発現する肥満細胞を死滅させる(例えば、実施例2に記載されている細胞培養アッセイにおいて測定される)。一部の実施形態において、抗体は、処置前のベースラインレベルと比較した場合に、対象から得られる試料におけるシグレック−8を発現する肥満細胞の少なくとも約20%を枯渇させる。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、試料は、組織試料または生体液試料となり得る。一部の実施形態において、組織試料は、皮膚、肺、骨髄および鼻ポリープからなる群から選択される1種または複数である。一部の実施形態において、生体液試料は、血液、気管支肺胞洗浄液および鼻洗浄液からなる群から選択される1種または複数である。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を改善するように操作することができる。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、2つの重鎖を含むことができ、抗体の2つの重鎖のうち少なくとも1つまたは両方の重鎖は、フコシル化されていない。さらなる実施形態において、抗体は、アルファ1,6−フコシル基転移酵素(Fut8)ノックアウトを有する細胞株において産生することができる。一部のさらなる実施形態において、抗体は、β1,4−N−アセチルグルコサミン転移酵素III(GnT−III)を過剰発現する細胞株において産生することができる。さらなる実施形態において、細胞株は、ゴルジμ−マンノシダーゼII(ManII)をさらに過剰発現する。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、ADCC活性を改善するFc領域における少なくとも1個のアミノ酸置換を含むことができる。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体またはヒト抗体となり得る。一部の実施形態において、抗体は、ヒトIgG1抗体である。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、(i)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域、および/または(i)配列番号97のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号103のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域を含むことができる。さらなる実施形態において、抗体は、配列番号106のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号109のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、(i)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域を含む重鎖可変領域、および/または(i)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号101のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域を含むことができる。さらなる実施形態において、抗体は、配列番号107のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号110のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域を含む重鎖可変領域を含む重鎖可変領域、および/または(i)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域を含むことができる。さらなる実施形態において、抗体は、配列番号108のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号111のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むことができ、重鎖可変領域は、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域は、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むことができ、重鎖可変領域は、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号67〜70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域は、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、対象は、シグレック−8を発現する細胞によって媒介される疾患を有する。一部の実施形態において、疾患は、喘息、アレルギー性鼻炎、鼻ポリポーシス、アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹、肥満細胞症、好酸球性白血病および好酸球増加症候群からなる群から選択される。一部の実施形態において、疾患は、乏顆粒球型喘息、急性または慢性気道過敏症、好酸球性食道炎、チャーグ・ストラウス症候群、サイトカインに関連する炎症、シグレック−8を発現する細胞に関連する炎症、シグレック−8を発現する細胞に関連する悪性病変、物理的蕁麻疹、寒冷蕁麻疹、圧迫性蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、食物アレルギーおよびアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)からなる群から選択される。一部の実施形態において、抗体は、アレルギー反応の1種または複数の症状を阻害する。一部の実施形態において、アレルギー反応は、I型過敏症反応である。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、対象は、吸入コルチコステロイド、短時間作用型β2アゴニスト、長時間作用型β2アゴニストまたはこれらの組合せによって適切に制御されていない喘息を患っていてよい。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、対象は、ヒトとなり得る。
【0027】
本明細書に記載されている様々な実施形態の特性のうち1種、一部または全てを組み合わせて、本発明の他の実施形態を形作ることができることを理解されたい。本発明の上述および他の態様は、当業者には明らかになるであろう。本発明の上述および他の実施形態を次の詳細な説明によりさらに記載する。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
ヒトシグレック−8に結合するヒト化抗体であって、前記ヒトシグレック−8に対する前記ヒト化抗体の結合親和性またはアビディティーが、前記ヒトシグレック−8に対する抗体2E2または2C4の結合親和性またはアビディティーよりも高い抗体。
(項目2)
ヒトシグレック−8に結合するヒト化抗体であって、熱シフトアッセイにおいて少なくとも約70℃のTmを有する抗体。
(項目3)
熱シフトアッセイにおいて少なくとも約70℃から少なくとも約72℃のTmを有する、項目2に記載の抗体。
(項目4)
前記抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または前記軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、項目1〜3のいずれか一項に記載の抗体。
(項目5)
配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項目1〜4のいずれか一項に記載の抗体。
(項目6)
ヒトIgG Fc領域を含む重鎖Fc領域を含む、項目1〜5のいずれか一項に記載の抗体。
(項目7)
前記ヒトIgG Fc領域が、ヒトIgG1またはヒトIgG4を含む、項目6に記載の抗体。
(項目8)
前記ヒトIgG4が、アミノ酸置換S228Pを含み、ここで、前記アミノ酸残基は、Kabatにおける通りのEUインデックスに従ってナンバリングされている、項目7に記載の抗体。
(項目9)
配列番号75のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76もしくは77から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、項目1〜7のいずれか一項に記載の抗体。
(項目10)
配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、項目1〜7のいずれか一項に記載の抗体。
(項目11)
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を改善するように操作されている、項目1〜9のいずれか一項に記載の抗体。
(項目12)
前記抗体の前記重鎖の少なくとも1または2つが、フコシル化されていない、項目1〜11のいずれか一項に記載の抗体。
(項目13)
ヒトシグレック−8に結合するヒト化抗体であって、
(a)重鎖可変領域および軽鎖可変領域であって、前記重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号67〜70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または前記軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、重鎖可変領域および軽鎖可変領域、あるいは
(b)重鎖可変領域および軽鎖可変領域であって、前記重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または前記軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、重鎖可変領域および軽鎖可変領域
を含む抗体。
(項目14)
配列番号11〜14から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号23〜24から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項目13に記載の抗体。
(項目15)
配列番号2〜14から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16〜24から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、ヒトシグレック−8に結合するヒト化抗体。
(項目16)
配列番号2〜10から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16〜22から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、ヒトシグレック−8に結合するヒト化抗体。
(項目17)
ヒトシグレック−8に結合するヒト化抗体であって、
(a)
(1)配列番号26〜29から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR1、
(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、
(3)配列番号31〜36から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR2、
(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2、
(5)配列番号38〜43から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR3、
(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3および
(7)配列番号45〜46から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR4
を含む重鎖可変領域、および/または
(b)
(1)配列番号48〜49から選択されるアミノ酸配列を含むLC−FR1、
(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、
(3)配列番号51〜53から選択されるアミノ酸配列を含むLC−FR2、
(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2、
(5)配列番号55〜58から選択されるアミノ酸配列を含むLC−FR3、
(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3および
(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC−FR4
を含む軽鎖可変領域
を含む抗体。
(項目18)
(a)
(1)配列番号26のアミノ酸配列を含むHC−FR1、
(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、
(3)配列番号34のアミノ酸配列を含むHC−FR2、
(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2、
(5)配列番号38のアミノ酸配列を含むHC−FR3、
(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3および
(7)配列番号45のアミノ酸配列を含むHC−FR4
を含む重鎖可変領域、および/または
(b)
(1)配列番号48のアミノ酸配列を含むLC−FR1、
(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、
(3)配列番号51のアミノ酸配列を含むLC−FR2、
(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2、
(5)配列番号55のアミノ酸配列を含むLC−FR3、
(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3および
(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC−FR4
を含む軽鎖可変領域
を含む、項目17に記載のヒト化抗体。
(項目19)
(a)
(1)配列番号26のアミノ酸配列を含むHC−FR1、
(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、
(3)配列番号34のアミノ酸配列を含むHC−FR2、
(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2、
(5)配列番号38のアミノ酸配列を含むHC−FR3、
(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3および
(7)配列番号45のアミノ酸配列を含むHC−FR4
を含む重鎖可変領域、および/または
(b)
(1)配列番号48のアミノ酸配列を含むLC−FR1、
(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、
(3)配列番号51のアミノ酸配列を含むLC−FR2、
(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2、
(5)配列番号58のアミノ酸配列を含むLC−FR3、
(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3および
(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC−FR4
を含む軽鎖可変領域
を含む、項目17に記載のヒト化抗体。
(項目20)
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を改善するように操作されている、項目13〜19のいずれか一項に記載の抗体。
(項目21)
前記抗体の前記重鎖の少なくとも1または2つが、フコシル化されていない、項目13〜20のいずれか一項に記載の抗体。
(項目22)
項目1〜21のいずれか一項に記載の抗体をコードする核酸。
(項目23)
項目22に記載の核酸を含むベクター。
(項目24)
発現ベクターである、項目23に記載のベクター。
(項目25)
項目22に記載の核酸を含む宿主細胞。
(項目26)
抗体を産生する方法であって、前記抗体を産生する条件下で、項目25に記載の宿主細胞を培養するステップを含む方法。
(項目27)
前記宿主細胞によって産生された前記抗体を回収するステップをさらに含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
項目26または27に記載の方法によって産生された抗シグレック−8抗体。
(項目29)
項目1〜21および28のいずれか一項に記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
(項目30)
ヒトシグレック−8に特異的に結合する抗体を含む組成物であって、前記抗体が、Fc領域と、前記Fc領域に連結されたN−グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、ここで、前記N−グリコシド結合型炭水化物鎖の50%未満がフコース残基を含有する、組成物。
(項目31)
前記N−グリコシド結合型炭水化物鎖のうち実質的に全てが、フコース残基を含有しない、項目30に記載の組成物。
(項目32)
前記抗体が、ヒト化抗体、キメラ抗体またはヒト抗体である、項目30または31に記載の組成物。
(項目33)
前記抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または前記軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、項目30〜32のいずれか一項に記載の組成物。
(項目34)
前記抗体が、配列番号2〜10から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16〜22から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項目33に記載の組成物。
(項目35)
前記抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号67〜70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または前記軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、項目30〜32のいずれか一項に記載の組成物。
(項目36)
前記抗体が、配列番号11〜14から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号23〜24から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項目35に記載の組成物。
(項目37)
前記抗体が、配列番号2〜14から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16〜24から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項目30〜32のいずれか一項に記載の組成物。
(項目38)
薬学的に許容される担体をさらに含む、項目30〜37のいずれか一項に記載の組成物。
(項目39)
ヒトシグレック−8に対する前記抗体の結合親和性またはアビディティーが、前記ヒトシグレック−8に対する抗体2E2または2C4の結合親和性またはアビディティーよりも高い、項目30〜38のいずれか一項に記載の組成物。
(項目40)
前記抗体が、熱シフトアッセイにおいて少なくとも約70℃のTmを有する、項目30〜39のいずれか一項に記載の組成物。
(項目41)
前記抗体が、熱シフトアッセイにおいて少なくとも約70℃から少なくとも約72℃のTmを有する、項目40に記載の組成物。
(項目42)
ヒトシグレック−8に結合し、ADCC活性によりシグレック−8を発現する肥満細胞を死滅させる、単離された抗体。
(項目43)
治療有効量が投与される場合、対象においてシグレック−8を発現する肥満細胞を枯渇させる、項目42に記載の抗体。
(項目44)
処置前のベースラインレベルと比較した場合に、前記対象から得られる試料における前記シグレック−8を発現する肥満細胞の少なくとも約20%を枯渇させる、項目43に記載の抗体。
(項目45)
前記試料が、組織試料または生体液試料である、項目44に記載の抗体。
(項目46)
前記組織試料が、皮膚、肺、骨髄および鼻ポリープからなる群から選択される1種または複数である、項目45に記載の抗体。
(項目47)
前記生体液試料が、血液、気管支肺胞洗浄液および鼻洗浄液からなる群から選択される1種または複数である、項目45に記載の抗体。
(項目48)
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を改善するように操作されている、項目42〜47のいずれか一項に記載の抗体。
(項目49)
前記抗体の前記重鎖の少なくとも1または2つが、フコシル化されていない、項目42〜48のいずれか一項に記載の抗体。
(項目50)
アルファ1,6−フコシル基転移酵素(Fut8)ノックアウトを有する細胞株において産生される、項目49に記載の抗体。
(項目51)
β1,4−N−アセチルグルコサミン転移酵素III(GnT−III)を過剰発現する細胞株において産生される、項目49に記載の抗体。
(項目52)
前記細胞株が、ゴルジμ−マンノシダーゼII(ManII)をさらに過剰発現する、項目51に記載の抗体。
(項目53)
ADCC活性を改善するFc領域における少なくとも1個のアミノ酸置換を含む、項目48に記載の抗体。
(項目54)
ヒト化抗体、キメラ抗体またはヒト抗体である、項目42〜53のいずれか一項に記載の抗体。
(項目55)
ヒトIgG1抗体である、項目42〜54のいずれか一項に記載の抗体。
(項目56)
マウス抗体である、項目42〜53のいずれか一項に記載の抗体。
(項目57)
(a)(i)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域、および/または(i)配列番号97のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号103のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域、
(b)(i)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域、および/または(i)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号101のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域、
(c)(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域、および/または(i)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域
を含む、項目42〜56のいずれか一項に記載の抗体。
(項目58)
(a)配列番号106のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号109のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(b)配列番号107のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号110のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(c)配列番号108のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号111のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、項目57に記載の抗体。
(項目59)
前記抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または前記軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、項目42〜56のいずれか一項に記載の抗体。
(項目60)
前記抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号67〜70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または前記軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、項目42〜56のいずれか一項に記載の抗体。
(項目61)
ヒトシグレック−8および非ヒト霊長類シグレック−8に結合する抗体。
(項目62)
前記非ヒト霊長類が、ヒヒである、項目61に記載の抗体。
(項目63)
(a)(i)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域、および/または(i)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号101のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域、
(b)(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域、および/または(i)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域
を含む、項目61または62に記載の抗体。
(項目64)
前記抗体が、ヒトシグレック−8のドメイン1におけるエピトープに結合し、ここで、ドメイン1は、配列番号112のアミノ酸配列を含む、項目61〜63のいずれか一項に記載の抗体。
(項目65)
前記抗体が、ヒトシグレック−8のドメイン3におけるエピトープに結合し、ここで、ドメイン3は、配列番号114のアミノ酸配列を含む、項目61〜63のいずれか一項に記載の抗体。
(項目66)
ヒト化抗体、キメラ抗体またはヒト抗体である、項目61〜65のいずれか一項に記載の抗体。
(項目67)
マウス抗体である、項目61〜66のいずれか一項に記載の抗体。
(項目68)
IgG1抗体である、項目61〜67のいずれか一項に記載の抗体。
(項目69)
前記対象が、ヒトである、項目43〜60のいずれか一項に記載の抗体。
(項目70)
項目42〜69のいずれか一項に記載の抗体をコードする核酸。
(項目71)
項目70に記載の核酸を含むベクター。
(項目72)
発現ベクターである、項目71に記載のベクター。
(項目73)
項目70に記載の核酸を含む宿主細胞。
(項目74)
抗体を産生する方法であって、前記抗体を産生する条件下で、項目73に記載の宿主細胞を培養するステップを含む方法。
(項目75)
前記宿主細胞によって産生された前記抗体を回収するステップをさらに含む、項目74に記載の方法。
(項目76)
項目74または75に記載の方法によって産生された抗シグレック−8抗体。
(項目77)
対象においてシグレック−8を発現する細胞によって媒介される疾患を処置または予防する方法であって、項目1〜22、28、42〜69および76のいずれか一項に記載の抗体または項目30〜41のいずれか一項に記載の組成物の有効量を前記対象に投与するステップを含む方法。
(項目78)
前記疾患が、好酸球媒介性疾患である、項目77に記載の方法。
(項目79)
前記疾患が、肥満細胞媒介性疾患である、項目77に記載の方法。
(項目80)
前記抗体が、アレルギー反応の1種または複数の症状を阻害する、項目77に記載の方法。
(項目81)
前記アレルギー反応が、I型過敏症反応である、項目80に記載の方法。
(項目82)
前記疾患が、喘息、アレルギー性鼻炎、鼻ポリポーシス、アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹、肥満細胞症、好酸球性白血病および好酸球増加症候群からなる群から選択される、項目77に記載の方法。
(項目83)
前記疾患が、乏顆粒球型喘息、急性または慢性気道過敏症、好酸球性食道炎、チャーグ・ストラウス症候群、サイトカインに関連する炎症、シグレック−8を発現する細胞に関連する炎症、シグレック−8を発現する細胞に関連する悪性病変、物理的蕁麻疹、寒冷蕁麻疹、圧迫性蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、食物アレルギーおよびアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)からなる群から選択される、項目77に記載の方法。
(項目84)
前記対象が、吸入コルチコステロイド、短時間作用型β2アゴニスト、長時間作用型β2アゴニストまたはこれらの組合せによって適切に制御されていない喘息を患う、項目74〜83のいずれか一項に記載の方法。
(項目85)
対象においてシグレック−8を発現する肥満細胞を枯渇させる方法であって、前記対象に、ヒトシグレック−8に結合する有効量の抗体を投与するステップを含み、前記抗体が、ADCC活性によりシグレック−8を発現する肥満細胞を死滅させる方法。
(項目86)
前記抗体が、処置前のベースラインレベルと比較した場合に、前記対象から得られる試料における前記シグレック−8を発現する肥満細胞の少なくとも約20%を枯渇させる、項目85に記載の方法。
(項目87)
前記試料が、組織試料または生体液試料である、項目86に記載の方法。
(項目88)
前記組織試料が、皮膚、肺、骨髄および鼻ポリープからなる群から選択される1種または複数である、項目87に記載の方法。
(項目89)
前記生体液試料が、血液、気管支肺胞洗浄液および鼻洗浄液からなる群から選択される1種または複数である、項目87に記載の方法。
(項目90)
前記抗体が、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を改善するように操作されている、項目85〜89のいずれか一項に記載の方法。
(項目91)
前記抗体の前記重鎖の少なくとも1または2つが、フコシル化されていない、項目85〜90のいずれか一項に記載の方法。
(項目92)
前記抗体が、アルファ1,6−フコシル基転移酵素(Fut8)ノックアウトを有する細胞株において産生される、項目91に記載の方法。
(項目93)
前記抗体が、β1,4−N−アセチルグルコサミン転移酵素III(GnT−III)を過剰発現する細胞株において産生される、項目91に記載の方法。
(項目94)
前記細胞株が、ゴルジμ−マンノシダーゼII(ManII)をさらに過剰発現する、項目93に記載の方法。
(項目95)
前記抗体が、ADCC活性を改善するFc領域における少なくとも1個のアミノ酸置換を含む、項目90に記載の方法。
(項目96)
前記抗体が、ヒト化抗体、キメラ抗体またはヒト抗体である、項目85〜95のいずれか一項に記載の方法。
(項目97)
前記抗体が、ヒトIgG1抗体である、項目85〜96のいずれか一項に記載の方法。
(項目98)
前記抗体が、
(a)(i)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域、かつ/または(i)配列番号97のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号103のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域、
(b)(i)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域、および/または(i)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR−L2を含む軽鎖可変領域、
(c)(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域、および/または(i)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域
を含む、項目85〜97のいずれか一項に記載の方法。
(項目99)
前記抗体が、
(a)配列番号106のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号109のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(b)配列番号107のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号110のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(c)配列番号108のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号111のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、項目98に記載の方法。
(項目100)
前記抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または前記軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、項目85〜97のいずれか一項に記載の方法。
(項目101)
前記抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号67〜70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または前記軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、項目85〜97のいずれか一項に記載の方法。
(項目102)
前記対象が、シグレック−8を発現する細胞によって媒介される疾患を有する、項目85〜101のいずれか一項に記載の方法。
(項目103)
前記抗体が、アレルギー反応の1種または複数の症状を阻害する、項目85〜102のいずれか一項に記載の方法。
(項目104)
前記アレルギー反応が、I型過敏症反応である、項目103に記載の方法。
(項目105)
前記疾患が、喘息、アレルギー性鼻炎、鼻ポリポーシス、アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹、肥満細胞症、好酸球性白血病および好酸球増加症候群からなる群から選択される、項目102に記載の方法。
(項目106)
前記疾患が、乏顆粒球型喘息、急性または慢性気道過敏症、好酸球性食道炎、チャーグ・ストラウス症候群、サイトカインに関連する炎症、シグレック−8を発現する細胞に関連する炎症、シグレック−8を発現する細胞に関連する悪性病変、物理的蕁麻疹、寒冷蕁麻疹、圧迫性蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、食物アレルギーおよびアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)からなる群から選択される、項目102に記載の方法。
(項目107)
前記対象が、吸入コルチコステロイド、短時間作用型β2アゴニスト、長時間作用型β2アゴニストまたはこれらの組合せによって適切に制御されていない喘息を患う、項目85〜106のいずれか一項に記載の方法。
(項目108)
項目42〜69および76のいずれか一項に記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
(項目109)
項目1〜22、28、42〜69および76のいずれか一項に記載の抗体または項目30〜41のいずれか一項に記載の組成物を含むキット。
【発明を実施するための形態】
【0038】
I.定義
本発明に関して詳細に記載する前に、本発明が、当然ながら変動し得る特定の組成物または生命システムに限定されないことを理解されたい。本明細書で使用されている用語法が、特定の実施形態を記載することのみを目的としており、限定を目的としないことも理解されたい。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されている通り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、内容がそれ以外を明らかに指示しない限り、複数の指示対象を含む。よって、例えば、「分子(a molecule)」と言及される場合、2個またはそれを超える斯かる分子の組合せその他を任意選択で含む。
【0039】
用語「約」は、本明細書において、本技術分野における当業者であれば容易に分かるそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書において「約」の値またはパラメータが言及される場合、該値またはパラメータそれ自体に指示される実施形態を含む(および記載する)。
【0040】
本明細書に記載されている本発明の態様および実施形態が、態様および実施形態を「含む」、「からなる」および「から本質的になる」ことを含むことが理解される。
【0041】
用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する全長抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を有する抗体組成物、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ)および単鎖分子ならびに抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)
2およびFv)を含む。用語「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書において「抗体」と互換的に使用される。
【0042】
基本的4鎖抗体単位は、2つの同一軽(L)鎖および2つの同一重(H)鎖で構成されたヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は、J鎖と呼ばれる追加的なポリペプチドと共に5個の基本的ヘテロ四量体単位からなり、10個の抗原結合部位を含有するが、IgA抗体は、J鎖と組み合わせた、重合して多価集合体を形成することができる2〜5個の基本的4鎖単位を含む。IgGの場合、4鎖単位は一般に、約150,000ダルトンである。各L鎖は、1個の共有結合性ジスルフィド結合によってH鎖に連結される一方、2つのH鎖は、H鎖アイソタイプに応じて1個または複数のジスルフィド結合によって互いに連結される。各HおよびL鎖は、規則的に間隔をあけた鎖内ジスルフィド架橋も有する。各H鎖は、N末端において、可変ドメイン(V
H)に続いて、αおよびγ鎖のそれぞれに対し3個の定常ドメイン(C
H)、μおよびεアイソタイプに対し4個のC
Hドメインを有する。各L鎖は、N末端において可変ドメイン(V
L)、続いてその他端に定常ドメインを有する。V
Lは、V
Hと整列され、C
Lは、重鎖の第1の定常ドメイン(C
H1)と整列される。特定のアミノ酸残基は、軽鎖および重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられる。V
HおよびV
Lの対形成は共に、単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造および特性に関して、例えば、Basic and Clinical Immunology、第8版、Daniel P. Sties、Abba I. TerrおよびTristram G. Parsolw(編)、Appleton & Lange、Norwalk、CT、1994年、71頁、第6章を参照されたい。
【0043】
いずれかの脊椎動物種由来のL鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパおよびラムダと呼ばれる明らかに異なる2型の一方に割り当てることができる。その重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てることができる。それぞれα、δ、ε、γおよびμと命名された重鎖を有する5クラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在する。γおよびαクラスは、CH配列における相対的に軽微な差および機能に基づいてサブクラスへとさらに分割され、例えば、ヒトは、次のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2。IgG1抗体は、アロタイプと名付けられた複数の多型バリアントで存在することができ(JefferisおよびLefranc 2009年、mAbs、1巻、4号、1〜7頁において概説)、そのうちいずれかが、本発明における使用に適する。ヒト集団における共通アロタイプバリアントは、文字a、f、n、zによって命名されている。
【0044】
「単離された」抗体は、その産生環境(例えば、天然または組換えによる)の構成成分から同定、分離および/または回収された抗体である。一部の実施形態において、単離されたポリペプチドは、その産生環境由来のあらゆる他の構成成分との関連を含まない。組換えトランスフェクト細胞に起因するもの等、その産生環境の夾雑構成成分は、抗体の研究、診断または治療的使用に典型的に干渉する材料であり、酵素、ホルモンおよび他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含むことができる。一部の実施形態において、ポリペプチドは、(1)例えば、ローリー方法によって決定される抗体の95重量%超まで、一部の実施形態において、99重量%超まで;(1)スピニングカップシークエネーターの使用により、N末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クーマシーブルーもしくは銀染色を使用した非還元もしくは還元条件下のSDS−PAGEによって均一になるまで精製される。単離された抗体は、抗体の天然環境の少なくとも1種の構成成分が存在しないため、組換え細胞内のin situの抗体を含む。しかし通常、単離されたポリペプチドまたは抗体は、少なくとも1回の精製ステップにより調製される。
【0045】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書において、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、微量で存在し得る可能な天然起源の変異および/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて同一である。一部の実施形態において、モノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖にC末端切断を有する。例えば、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基が、重鎖および/または軽鎖のC末端において切断される。一部の実施形態において、C末端切断は、重鎖からC末端リシンを除去する。一部の実施形態において、モノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖にN末端切断を有する。例えば、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基が、重鎖および/または軽鎖のN末端において切断される。一部の実施形態において、トランケート型のモノクローナル抗体は、組換え技法によって作成することができる。一部の実施形態において、モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に向けられている。一部の実施形態において、モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、複数の抗原部位に向けられている(二重特異性抗体または多特異性抗体等)。修飾語句「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から得られるという抗体の性状を示し、いずれか特定の方法による抗体の産生を要求するものと解釈するべきではない。例えば、本発明に従って使用するべきモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ方法、組換えDNA方法、ファージディスプレイ技術、およびヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座または遺伝子の一部または全体を有する動物においてヒトまたはヒト様抗体を産生するための技術を含む種々の技法によって作成することができる。
【0046】
用語「裸の抗体」は、細胞傷害性部分または放射性標識にコンジュゲートされていない抗体を指す。
【0047】
用語「全長抗体」、「インタクト抗体」または「全抗体」は、抗体断片とは対照的に、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すように互換的に使用される。特に、全抗体は、Fc領域を含む重および軽鎖を有する抗体を含む。定常ドメインは、ネイティブ配列定常ドメイン(例えば、ヒトネイティブ配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列バリアントとなり得る。場合によっては、インタクト抗体は、1種または複数のエフェクター機能を有することができる。
【0048】
「抗体断片」は、インタクト抗体の一部、インタクト抗体の抗原結合および/または可変領域を含む。抗体断片の例として、Fab、Fab’、F(ab’)
2およびFv断片;ダイアボディ;線状抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapataら、Protein Eng.8巻(10号):1057〜1062頁[1995年]を参照);抗体断片から形成された単鎖抗体分子および多特異性抗体が挙げられる。
【0049】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2個の同一抗原結合性断片と、容易に結晶化する能力を反映する命名であるところの、残余の「Fc」断片を産生する。Fab断片は、一方の重鎖のH鎖可変領域ドメイン(V
H)および第1の定常ドメイン(C
H1)と共にL鎖全体からなる。各Fab断片は、抗原結合に関して一価である、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、単一の大型のF(ab’)
2断片を生じ、これは、異なる抗原結合活性を有し、依然として抗原を架橋することができる2個のジスルフィド結合したFab断片に大まかに相当する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1個または複数のシステインを含む数個の追加的な残基をC
H1ドメインのカルボキシ末端に有するという点において、Fab断片とは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有するFab’の本明細書における命名である。F(ab’)
2抗体断片は本来、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片のペアとして産生された。抗体断片の他の化学的カップリングも公知である。
【0050】
Fc断片は、ジスルフィドによって一体に保持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、ある特定の種類の細胞上に存在するFc受容体(FcR)によって認識される領域でもあるFc領域における配列によって決定される。
【0051】
「Fv」は、完全抗原認識および結合部位を含有する最小抗体断片である。この断片は、緊密な非共有結合性会合した1個の重および1個の軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。これら2個のドメインのフォールディングから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原結合特異性を付与する6個の高頻度可変性ループ(それぞれHおよびL鎖由来の3個のループ)を発する。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3個のHVRのみを含むFvの半分)であっても、結合部位全体よりも低い親和性ではあるが、抗原を認識および結合する能力を有する。
【0052】
「sFv」または「scFv」としても省略される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖へと接続されたVHおよびVL抗体ドメインを含む抗体断片である。一部の実施形態において、sFvポリペプチドは、V
HおよびV
Lドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これは、sFvが、抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にする。sFvの概説に関しては、Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻、RosenburgおよびMoore編、Springer−Verlag、New York、269〜315頁(1994年)を参照されたい。
【0053】
本発明の抗体の「機能断片」は、インタクト抗体の抗原結合もしくは可変領域を一般に含むインタクト抗体の部分、または修飾されたFcR結合能を保持もしくは有する抗体のFv領域を含む。抗体断片の例として、抗体断片から形成された線状抗体、単鎖抗体分子および多特異性抗体が挙げられる。
【0054】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、重および/または軽鎖の部分が、特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における相当する配列と同一または相同であるが、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における相当する配列と同一または相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)と共に、所望の生物学的活性を呈する限りにおいて、斯かる抗体の断片を特に含む(米国特許第4,816,567号;Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81巻:6851〜6855頁(1984年))。本明細書における目的のキメラ抗体は、PRIMATIZED(登録商標)抗体を含み、この抗体の抗原結合領域は、例えば、目的の抗原でマカクザルを免疫化することによって産生された抗体に由来する。本明細書において、「ヒト化抗体」は、「キメラ抗体」のサブセットとして使用される。
【0055】
「ヒト化」型の非ヒト(例えば、マウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態において、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR由来の残基が、所望の特異性、親和性および/または能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)のHVR由来の残基に置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の事例において、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、相当する非ヒト残基に置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体に存在しない残基を含むことができる。これらの修飾を為して、結合親和性等、抗体性能をさらに精緻化することができる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1、典型的には2個の可変ドメインのうち実質的に全てを含み、それによると、高頻度可変性ループの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリン配列のものに相当し、FR領域の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のものであるが、FR領域は、結合親和性、異性化、免疫原性等、抗体性能を改善する1個または複数の個々のFR残基置換を含むことができるであろう。一部の実施形態において、FRにおけるこれらのアミノ酸置換の数は、H鎖において6個以下であり、L鎖においては、3個以下である。ヒト化抗体は、典型的にはヒト免疫グロブリンの、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも部分も任意選択で含むであろう。さらなる詳細に関して、例えば、Jonesら、Nature 321巻:522〜525頁(1986年);Riechmannら、Nature 332巻:323〜329頁(1988年);およびPresta、Curr. Op. Struct. Biol.2巻:593〜596頁(1992年)を参照されたい。例えば、VaswaniおよびHamilton、Ann. Allergy, Asthma & Immunol.1巻:105〜115頁(1998年);Harris、Biochem. Soc. Transactions 23巻:1035〜1038頁(1995年);HurleおよびGross、Curr. Op. Biotech.5巻:428〜433頁(1994年);ならびに米国特許第6,982,321号および同第7,087,409号も参照されたい。一部の実施形態において、ヒト化抗体は、単一の抗原部位に向けられている。一部の実施形態において、ヒト化抗体は、複数の抗原部位に向けられている。代替的ヒト化方法は、米国特許第7,981,843号および米国特許出願公開第2006/0134098号に記載されている。
【0056】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖および軽鎖の可変ドメインは、それぞれ「VH」および「VL」と称することができる。これらのドメインは一般に、抗体の最も可変的な部分であり(同じクラスの他の抗体と比べて)、抗原結合部位を含有する。
【0057】
用語「高頻度可変領域」、「HVR」または「HV」は、本明細書において使用される場合、配列が高頻度可変性であるおよび/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、6個のHVRを含む;VHにおける3個(H1、H2、H3)およびVLにおける3個(L1、L2、L3)。ネイティブ抗体において、H3およびL3は、6個のHVRのうち最大の多様性を表示し、H3は特に、抗体への優れた特異性の付与において特有の役割を果たすと考えられる。例えば、Xuら、Immunity 13巻:37〜45頁(2000年);JohnsonおよびWu、Methods in Molecular Biology 248巻:1〜25頁(Lo編、Human Press、Totowa、NJ、2003年))を参照されたい。実際に、重鎖のみからなる天然起源のラクダ科動物(camelid)抗体は、軽鎖の非存在下で機能的かつ安定的である。例えば、Hamers−Castermanら、Nature 363巻:446〜448頁(1993年)およびSheriffら、Nature Struct. Biol.3巻:733〜736頁(1996年)を参照されたい。
【0058】
多数のHVRの図解が使用されており、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)であるHVRは、配列可変性に基づき、最も一般的に使用されている(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institute of Health、Bethesda、MD(1991年))。Chothia HVRは、その代わりに、構造ループの位置を指す(ChothiaおよびLesk、J. Mol. Biol.196巻:901〜917頁(1987年))。「Contact」HVRは、利用できる複雑な結晶構造の解析に基づく。これらのHVRのそれぞれに由来する残基を下に記す。
【表A】
【0059】
他に断りがなければ、可変ドメイン残基(HVR残基およびフレームワーク領域残基)は、Kabatら(上掲)に従ってナンバリングする。
【0060】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書に定義されているHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0061】
表現「Kabatにおける通りの可変ドメイン残基ナンバリング」または「Kabatにおける通りのアミノ酸位置ナンバリング」およびこれらの変種は、Kabatら(上掲)における抗体の編集の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用されるナンバリング方式を指す。このナンバリング方式を使用して、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはHVRの短縮またはそれへの挿入に相当する、より少ないまたは追加的なアミノ酸を含有することができる。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatによる残基52a)を、また、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82bおよび82c等)を含むことができる。残基のKabatナンバリングは、「標準」Kabatナンバリングされた配列との抗体配列の相同性領域におけるアライメントにより、所定の抗体に対して決定することができる。
【0062】
本明細書における目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来するVLまたはVHフレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含むことができる、あるいは先在するアミノ酸配列変化を含有することができる。一部の実施形態において、先在するアミノ酸変化の数は、10個もしくはそれに満たない、9個もしくはそれに満たない、8個もしくはそれに満たない、7個もしくはそれに満たない、6個もしくはそれに満たない、5個もしくはそれに満たない、4個もしくはそれに満たない、3個もしくはそれに満たないまたは2個もしくはそれに満たない。
【0063】
参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列し、必要であればギャップを導入して、配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮することなく、最大パーセント配列同一性を達成した後に、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアライメントは、当業者の技能範囲内の様々な仕方で、例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア等、公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者であれば、比較されている配列の全長にわたる最大アライメントの達成に必要とされるいずれかのアルゴリズムを含む、配列の整列に適切なパラメータを決定することができる。例えば、所定のアミノ酸配列Bとの、これに関するまたはこれに対する所定のアミノ酸配列Aの%アミノ酸配列同一性(あるいは、所定のアミノ酸配列Bと、これに関しまたはこれに対し、ある特定の%アミノ酸配列同一性を有するまたは含む所定のアミノ酸配列Aと表現することができる)は、次の通りに計算される:
100×分数X/Y
(式中、Xは、AおよびBの該プログラムのアライメントにおける配列により同一マッチとしてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である)。アミノ酸配列Aの長さが、アミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、Bに対するAの%アミノ酸配列同一性が、Aに対するBの%アミノ酸配列同一性に等しくならないことが認められよう。
【0064】
特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチドにおけるエピトープ「に結合する」、「に特異的に結合する」または「に特異的な」抗体は、他のいかなるポリペプチドまたはポリペプチドエピトープにも実質的に結合することなく、この特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチドにおけるエピトープに結合する抗体である。一部の実施形態において、無関係の非シグレック−8ポリペプチドへの本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体の結合は、本技術分野で公知の方法(例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA))によって測定されるシグレック−8への抗体結合の約10%未満である。一部の実施形態において、シグレック−8(例えば、二量体型のシグレック−8 Fc融合タンパク質(配列番号74))に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦2nM、≦1nM、≦0.7nM、≦0.6nM、≦0.5nM、≦0.1nM、≦0.01nMまたは≦0.001nM(例えば、10
−8Mまたはそれに満たない、例えば、10
−8M〜10
−13M、例えば、10
−9M〜10
−13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0065】
用語「シグレック−8」は、本明細書において、ヒトシグレック−8タンパク質を指す。この用語は、スプライスバリアントまたはアレルバリアントを含むシグレック−8の天然起源のバリアントも含む。例示的なヒトシグレック−8のアミノ酸配列を配列番号72に示す。別の例示的なヒトシグレック−8のアミノ酸配列を配列番号73に示す。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8タンパク質は、免疫グロブリンFc領域に融合されたヒトシグレック−8細胞外ドメインを含む。免疫グロブリンFc領域に融合された例示的なヒトシグレック−8細胞外ドメインのアミノ酸配列を配列番号74に示す。配列番号74における下線を引いたアミノ酸配列は、シグレック−8 Fc融合タンパク質アミノ酸配列のFc領域を示す。
【化1】
【化2】
【化3】
【0066】
「アポトーシスを誘導する」または「アポトーシス性」である抗体は、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化および/または膜小胞の形成(アポトーシス小体と呼ばれる)等、標準アポトーシスアッセイによって決定されるプログラム細胞死を誘導する抗体である。例えば、本発明の抗シグレック−8抗体のアポトーシス活性は、アネキシンVで細胞を染色することにより示すことができる。
【0067】
抗体「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(ネイティブ配列Fc領域またはアミノ酸配列バリアントFc領域)に起因し得る生物学的活性を指し、抗体アイソタイプにより変動する。抗体エフェクター機能の例として:C1q結合および補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節;およびB細胞活性化が挙げられる。
【0068】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」または「ADCC」は、ある特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合した分泌されたIgが、これらの細胞傷害性エフェクター細胞を、抗原を有する標的細胞に特異的に結合させ、その後、細胞毒で標的細胞を死滅させることができる細胞傷害の形態を指す。抗体は、細胞傷害性細胞を「武装(arm)」させ、この機構による標的細胞の死滅に必要とされる。ADCCを媒介するための主な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現する一方、単球は、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFc発現は、RavetchおよびKinet、Annu. Rev. Immunol.9巻:457〜92頁(1991年)の464頁の表3に要約されている。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、ADCCを増強する。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されているもの等、in vitro ADCCアッセイを行うことができる。斯かるアッセイに有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞を含む。その代わりにまたはその上、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、Clynesら、PNAS USA 95巻:652〜656頁(1998年)に開示されているもの等、動物モデルにおいて評価することができる。ADCC活性および他の抗体特性を変更する他のFcバリアントは、Ghetieら、Nat Biotech.15巻:637〜40頁、1997年;Duncanら、Nature 332巻:563〜564頁、1988年;Lundら、J. Immunol 147巻:2657〜2662頁、1991年;Lundら、Mol Immunol 29巻:53〜59頁、1992年;Alegreら、Transplantation 57巻:1537〜1543頁、1994年;Hutchinsら、Proc Natl. Acad Sci USA 92巻:11980〜11984頁、1995年;Jefferisら、Immunol Lett.44巻:111〜117頁、1995年;Lundら、FASEB J 9巻:115〜119頁、1995年;Jefferisら、Immunol Lett 54巻:101〜104頁、1996年;Lundら、J Immunol 157巻:4963〜4969頁、1996年;Armourら、Eur J Immunol 29巻:2613〜2624頁、1999年;Idusogieら、J Immunol 164巻:4178〜4184頁、200;Reddyら、J Immunol 164巻:1925〜1933頁、2000年;Xuら、Cell Immunol 200巻:16〜26頁、2000年;Idusogieら、J Immunol 166巻:2571〜2575頁、2001年;Shieldsら、J Biol Chem 276巻:6591〜6604頁、2001年;Jefferisら、Immunol Lett 82巻:57〜65頁.2002年;Prestaら、Biochem Soc Trans 30巻:487〜490頁、2002年;Lazarら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103巻:4005〜4010頁、2006年;米国特許第5,624,821号;同第5,885,573号;同第5,677,425号;同第6,165,745号;同第6,277,375号;同第5,869,046号;同第6,121,022号;同第5,624,821号;同第5,648,260号;同第6,194,551号;同第6,737,056号;同第6,821,505号;同第6,277,375号;同第7,335,742号;および同第7,317,091号に開示されているものを含む。
【0069】
本明細書における用語「Fc領域」は、ネイティブ配列Fc領域およびバリアントFc領域を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するように使用されている。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、Cys226またはPro230の位置のアミノ酸残基からそのカルボキシル末端に伸びるものと定義される。本発明の抗体における使用に適したネイティブ配列Fc領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む。単一のアミノ酸置換(KabatナンバリングによるS228P;IgG4Proと命名)を導入して、組換えIgG4抗体において観察される異質性を消失させることができる。Angal, S.ら(1993年)Mol Immunol 30巻、105〜108頁を参照されたい。
【0070】
「非フコシル化」または「フコース欠損」抗体は、Fc領域を含むグリコシル化抗体バリアントを指し、このFc領域に付着した糖質構造は、低下したフコースを有するまたはフコースを欠如する。一部の実施形態において、フコースが低下したまたはフコースを欠如する抗体は、改善されたADCC機能を有する。非フコシル化またはフコース欠損抗体は、細胞株において産生される同じ抗体におけるフコースの量と比べて低下したフコースを有する。本明細書において企図される非フコシル化またはフコース欠損抗体組成物は、組成物における抗体のFc領域に付着したN結合型グリカンの約50%未満が、フコースを含む組成物である。
【0071】
用語「フコシル化」または「フコシル化された」は、抗体のペプチド骨格に付着したオリゴ糖内のフコース残基の存在を指す。特に、フコシル化抗体は、例えば、ヒトIgG1 FcドメインのAsn297位における(Fc領域残基のEUナンバリング)、抗体Fc領域に付着したN結合型オリゴ糖の一方または両方における最内側N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基にα(1,6)結合型フコースを含む。Asn297は、免疫グロブリンにおける軽微な配列変種により、297位の上流または下流の約+3アミノ酸に、すなわち、294〜300位の間に位置することもできる。
【0072】
「フコシル化の程度」は、本技術分野で公知の方法によって、例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI TOF MS)によって評価されるN−グリコシダーゼF処理抗体組成物において同定された、全オリゴ糖と比べたフコシル化オリゴ糖のパーセンテージである。「完全にフコシル化された抗体」の組成物において、基本的に全オリゴ糖が、フコース残基を含む、すなわち、フコシル化されている。一部の実施形態において、完全にフコシル化された抗体の組成物は、少なくとも約90%のフコシル化の程度を有する。したがって、斯かる組成物における個々の抗体は、典型的に、Fc領域における2個のN結合型オリゴ糖のそれぞれにフコース残基を含む。逆に、「完全非フコシル化」抗体の組成物において、基本的にいかなるオリゴ糖もフコシル化されておらず、斯かる組成物における個々の抗体は、Fc領域における2個のN結合型オリゴ糖のいずれにもフコース残基を含有しない。一部の実施形態において、完全非フコシル化抗体の組成物は、約10%未満のフコシル化の程度を有する。「部分的にフコシル化された抗体」の組成物において、オリゴ糖の一部のみが、フコースを含む。組成物が、Fc領域におけるN結合型オリゴ糖にフコース残基を欠如する基本的にあらゆる個々の抗体も、Fc領域におけるN結合型オリゴ糖の両方にフコース残基を含有する基本的にあらゆる個々の抗体も含まないのであれば、斯かる組成物における個々の抗体は、Fc領域におけるN結合型オリゴ糖の一方または両方にフコース残基を含むことができるまたはどちらにも含まない。一実施形態において、部分的にフコシル化された抗体の組成物は、約10%〜約80%(例えば、約50%〜約80%、約60%〜約80%または約70%〜約80%)のフコシル化の程度を有する。
【0073】
本明細書における「結合親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位およびその結合パートナー(例えば、抗原)の間の非共有結合性相互作用の強度を指す。一部の実施形態において、シグレック−8(本明細書に記載されているシグレック−8−Fc融合タンパク質等、二量体の場合がある)に対する抗体の親和性は、一般に、解離定数(Kd)により表すことができる。親和性は、本明細書に記載されている方法を含む、本技術分野で公知の一般的方法により測定することができる。
【0074】
本明細書における「結合アビディティー」は、分子(例えば、抗体)の複数の結合部位およびその結合パートナー(例えば、抗原)の結合強度を指す。
【0075】
本明細書における抗体をコードする「単離された」核酸分子は、同定され、これが産生された環境においてこれが通常関連する少なくとも1種の夾雑核酸分子から分離された核酸分子である。一部の実施形態において、単離された核酸は、産生環境と関連するあらゆる構成成分との関連を含まない。本明細書におけるポリペプチドおよび抗体をコードする単離された核酸分子は、これが天然に見出される形態または設定以外の形態である。したがって、単離された核酸分子は、本明細書において細胞中に天然に存在するポリペプチドおよび抗体をコードする核酸から区別される。
【0076】
用語「医薬製剤」は、活性成分の生物学的活性が有効となることを可能にするような形態の、この製剤が投与される対象にとって容認し難い毒性がある追加的な構成成分を含有しない調製物を指す。斯かる製剤は無菌である。
【0077】
本明細書における「担体」は、用いられている投薬量および濃度でこれに曝露される細胞または哺乳動物にとって無毒性の、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤を含む。多くの場合、生理的に許容される担体は、水性pH緩衝溶液である。生理的に許容される担体の例として、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む単糖、二糖および他の糖質;EDTA等のキレート剤;マンニトールまたはソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;および/またはTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)およびPLURONICS(商標)等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0078】
本明細書において、用語「処置」は、臨床病理学の経過において処置されている個体または細胞の天然の経過を変更するように設計された臨床介入を指す。処置の望ましい効果は、疾患進行速度の減少、疾患状態の回復または緩和、および寛解または改善された予後を含む。例えば、障害(例えば、好酸球媒介性疾患)に関連する1種または複数の症状が、軽減または排除される場合、個体はうまく「処置」される。例えば、処置が、疾患に罹った個体のクオリティ・オブ・ライフの増加、疾患処置に必要とされる他の薬物療法の用量の減少、疾患再発の頻度の低下、疾患の重症度の低減、疾患の発症もしくは進行の遅延および/または個体の生存の延長をもたらす場合、個体はうまく「処置」される。
【0079】
本明細書において、「と併せて」は、ある処置様式に加えた、別の処置様式の投与を指す。このようなものとして、「と併せて」は、個体へのある処置様式の投与の前、最中または後における、他の処置様式の投与を指す。
【0080】
本明細書において、用語「予防」は、個体における疾患の発生または再発に関する予防法の提供を含む。個体は、障害の素因がある、障害になりやすいまたは障害発症リスクがある可能性があるが、未だ障害と診断されていない。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、障害の発症を遅延させるために使用される。
【0081】
本明細書において、障害発症「リスクがある」個体は、検出可能な疾患または疾患症状を有していても有していなくてもよく、本明細書に記載されている処置方法に先立ち検出可能な疾患または疾患症状を呈していてもいなくてもよい。「リスクがある」は、個体が、本技術分野で公知の好酸球媒介性障害および/または肥満細胞媒介性障害の発症と相関する測定可能なパラメータである1種または複数のリスク因子を有することを意味する。これらのリスク因子のうち1種または複数を有する個体は、これらのリスク因子の1種または複数がない個体よりも高い障害発症確率を有する。
【0082】
「有効量」は、治療的または予防的結果を含む、所望のまたは表示の効果の達成に必要な投薬量および期間で、少なくとも有効な量を指す。有効量は、1回または複数の投与でもたらすことができる。「治療有効量」は、特定の障害の測定可能な改善をもたらすために要求される少なくとも最小濃度である。本明細書における治療有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別および体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する抗体の能力等の因子に応じて変動し得る。治療有効量は、治療的に有益な効果が、抗体のいかなる毒性または有害効果も上回る量となることもできる。「予防有効量」は、所望の予防的結果の達成に必要な投薬量および期間で有効な量を指す。典型的には、ただし必然的にではなく、予防的用量は、疾患のより早期ステージにおいてまたはそれに先立ち対象において使用されるため、予防有効量は、治療有効量未満となり得る。
【0083】
「慢性」投与は、延長された期間で初期治療効果(活性)を維持するために、急性様式とは対照的に継続的な様式での医薬(複数可)の投与を指す。「間欠的」投与は、中断することなく連続的に為されないが、周期性の性質の処置である。
【0084】
本明細書において、「個体」または「対象」は、哺乳動物である。処置目的のための「哺乳動物」は、イヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、スナネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコ等、ヒト、飼育動物および家畜、ならびに動物園、スポーツまたは愛玩動物を含む。一部の実施形態において、個体または対象は、ヒトである。
【0085】
II.抗シグレック−8抗体および組成物
一態様において、本発明は、ヒトシグレック−8に結合する単離された抗体を提供する。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、次の特徴のうち1種または複数を有する:(1)ヒトシグレック−8に結合する;(2)ヒトシグレック−8の細胞外ドメインに結合する;(3)マウス抗体2E2および/またはマウス抗体2C4よりも高い親和性でヒトシグレック−8に結合する;(4)マウス抗体2E2および/またはマウス抗体2C4よりも高いアビディティーでヒトシグレック−8に結合する;(5)熱シフトアッセイにおいて約70℃〜72℃またはそれより高いT
mを有する;(6)低下した程度のフコシル化を有するかまたはフコシル化されていない;(7)好酸球上に発現されたヒトシグレック−8に結合し、好酸球のアポトーシスを誘導する;(8)肥満細胞上に発現されたヒトシグレック−8に結合し、肥満細胞を枯渇させる;(9)肥満細胞上に発現されたヒトシグレック−8に結合し、肥満細胞のFcεRI依存性活性(例えば、ヒスタミン放出、PGD
2放出、Ca
2+フラックスおよび/またはβ−ヘキソサミニダーゼ放出等)を阻害する;(10)ADCC活性を改善するように操作された;(11)肥満細胞上に発現されたヒトシグレック−8に結合し、ADCC活性により肥満細胞を死滅させる(in vitroおよび/またはin vivoで);(12)ヒトおよび非ヒト霊長類のシグレック−8に結合する;(13)ヒトシグレック−8のドメイン1、ドメイン2および/またはドメイン3に結合する、またはヒトシグレック−8のドメイン1、ドメイン2および/またはドメイン3を含むシグレック−8ポリペプチド(例えば、本明細書に記載されている融合タンパク質)に結合する;ならびに(14)マウス抗体2E2または2C4のEC
50に満たないEC
50で活性化された好酸球を枯渇させる。
【0086】
一態様において、本発明は、ヒトシグレック−8に結合する抗体を提供する。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8は、配列番号72のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8は、配列番号73のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、ヒトシグレック−8のドメイン1におけるエピトープに結合し、ドメイン1は、配列番号112のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、ヒトシグレック−8のドメイン2におけるエピトープに結合し、ドメイン2は、配列番号113のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、ヒトシグレック−8のドメイン3におけるエピトープに結合し、ドメイン3は、配列番号114のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、配列番号116のアミノ酸を含む融合タンパク質に結合するが、配列番号115のアミノ酸を含む融合タンパク質には結合しない。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、配列番号117のアミノ酸を含む融合タンパク質に結合するが、配列番号115のアミノ酸を含む融合タンパク質には結合しない。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、配列番号117のアミノ酸を含む融合タンパク質に結合するが、配列番号116のアミノ酸を含む融合タンパク質には結合しない。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、ヒトシグレック−8の細胞外ドメインにおける線状エピトープに結合する。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、ヒトシグレック−8の細胞外ドメインにおける立体構造エピトープに結合する。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、好酸球上に発現されるヒトシグレック−8に結合し、好酸球のアポトーシスを誘導する。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、肥満細胞上に発現されるヒトシグレック−8に結合し、肥満細胞を枯渇させる。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、肥満細胞上に発現されるヒトシグレック−8に結合し、肥満細胞媒介性活性を阻害する。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、肥満細胞上に発現されるヒトシグレック−8に結合し、ADCC活性により肥満細胞を死滅させる。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、肥満細胞を枯渇させ、肥満細胞活性化を阻害する。一部の実施形態において、本明細書における抗体は、活性化された好酸球を枯渇させ、肥満細胞活性化を阻害する。
【0087】
ヒトシグレック−8および非ヒト霊長類シグレック−8に結合する、単離された抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。霊長類交差反応性を有する抗体の同定は、非ヒト霊長類における抗シグレック−8抗体の前臨床検査に有用となるであろう。一態様において、本発明は、非ヒト霊長類シグレック−8に結合する抗体を提供する。一態様において、本発明は、ヒトシグレック−8および非ヒト霊長類シグレック−8に結合する抗体を提供する。一部の実施形態において、非ヒト霊長類シグレック−8は、配列番号118のアミノ酸配列またはその部分を含む。一部の実施形態において、非ヒト霊長類シグレック−8は、配列番号119のアミノ酸配列またはその部分を含む。一部の実施形態において、非ヒト霊長類は、ヒヒ(例えば、Papio Anubis)である。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8および非ヒト霊長類シグレック−8に結合する抗体は、ヒトシグレック−8のドメイン1におけるエピトープに結合する。さらなる実施形態において、ヒトシグレック−8のドメイン1は、配列番号112のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8および非ヒト霊長類シグレック−8に結合する抗体は、ヒトシグレック−8のドメイン3におけるエピトープに結合する。さらなる実施形態において、ヒトシグレック−8のドメイン3は、配列番号114のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8および非ヒト霊長類シグレック−8に結合する抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体またはヒト抗体である。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8および非ヒト霊長類シグレック−8に結合する抗体は、マウス抗体である。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8および非ヒト霊長類シグレック−8に結合する抗体は、ヒトIgG1抗体である。
【0088】
一態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、モノクローナル抗体である。一態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、抗体断片(抗原結合性断片を含む)、例えば、Fab、Fab’−SH、Fv、scFvまたは(Fab’)
2断片である。一態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、キメラ、ヒト化またはヒト抗体である。一態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体のいずれかは、精製されている。
【0089】
一態様において、シグレック−8に結合するマウス2E2抗体およびマウス2C4抗体と競合する抗シグレック−8抗体が提供される。マウス2E2抗体およびマウス2C4抗体と同じエピトープに結合する抗シグレック−8抗体も提供される。一態様において、シグレック−8への結合に関して本明細書に記載されているいずれかの抗シグレック−8抗体(例えば、HEKA、HEKF、1C3、1H10、4F11)と競合する抗シグレック−8抗体が提供される。本明細書に記載されているいずれかの抗シグレック−8抗体(例えば、HEKA、HEKF、1C3、1H10、4F11)と同じエピトープに結合する抗シグレック−8抗体も提供される。
【0090】
本発明の一態様において、抗シグレック−8抗体をコードするポリヌクレオチドが提供される。ある特定の実施形態において、抗シグレック−8抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。ある特定の実施形態において、斯かるベクターを含む宿主細胞が提供される。本発明の別の態様において、抗シグレック−8抗体または抗シグレック−8抗体をコードするポリヌクレオチドを含む組成物が提供される。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に列挙されているもの等、好酸球媒介性障害および/または肥満細胞媒介性障害の処置のための医薬製剤である。
【0091】
一態様において、マウス抗体2C4のHVR配列のうち1、2、3、4、5または6個を含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一態様において、マウス抗体2E2のHVR配列のうち1、2、3、4、5または6個を含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、HVRは、Kabat CDRまたはChothia CDRである。
【0092】
一態様において、マウス抗体1C3のHVR配列のうち1、2、3、4、5または6個を含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一態様において、マウス抗体4F11のHVR配列のうち1、2、3、4、5または6個を含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一態様において、マウス抗体1H10のHVR配列のうち1、2、3、4、5または6個を含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、HVRは、Kabat CDRまたはChothia CDRである。
【0093】
一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、ヒトシグレック−8のドメイン1におけるエピトープに結合し、ドメイン1は、配列番号112のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、ヒトシグレック−8のドメイン2におけるエピトープに結合し、ドメイン2は、配列番号113のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、ヒトシグレック−8のドメイン3におけるエピトープに結合し、ドメイン3は、配列番号114のアミノ酸配列を含む。
【0094】
一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、配列番号116のアミノ酸を含む融合タンパク質に結合するが、配列番号115のアミノ酸を含む融合タンパク質には結合しない。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、配列番号117のアミノ酸を含む融合タンパク質に結合するが、配列番号115のアミノ酸を含む融合タンパク質には結合しない。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、配列番号117のアミノ酸を含む融合タンパク質に結合するが、配列番号116のアミノ酸を含む融合タンパク質には結合しない。
【0095】
一態様において、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗シグレック−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体が本明細書において提供される。
【0096】
一態様において、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗シグレック−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号67〜70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体が本明細書において提供される。
【0097】
一態様において、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗シグレック−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体が本明細書において提供される。
【0098】
別の態様において、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗シグレック−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号67〜70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体が本明細書において提供される。
【0099】
別の態様において、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗シグレック−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号97のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号103のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、ヒトシグレック−8のドメイン2におけるエピトープに結合し、ドメイン2は、配列番号113のアミノ酸配列を含む。
【0100】
別の態様において、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗シグレック−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号101のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、ヒトシグレック−8のドメイン3におけるエピトープに結合し、ドメイン3は、配列番号114のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、ヒトシグレック−8および非ヒト霊長類シグレック−8に結合する。
【0101】
別の態様において、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗シグレック−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、ヒトシグレック−8のドメイン1におけるエピトープに結合し、ドメイン1は、配列番号112のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、ヒトシグレック−8および非ヒト霊長類シグレック−8に結合する。
【0102】
本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、この抗体が、ヒトシグレック−8に結合する能力を保持するのであれば、いかなる適したフレームワーク可変ドメイン配列を含むこともできる。本明細書において、重鎖フレームワーク領域は、「HC−FR1〜FR4」と命名され、軽鎖フレームワーク領域は、「LC−FR1〜FR4」と命名される。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、配列番号26、34、38および45の重鎖可変ドメインフレームワーク配列(それぞれHC−FR1、HC−FR2、HC−FR3およびHC−FR4)を含む。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、配列番号48、51、55および60の軽鎖可変ドメインフレームワーク配列(それぞれLC−FR1、LC−FR2、LC−FR3およびLC−FR4)を含む。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、配列番号48、51、58および60の軽鎖可変ドメインフレームワーク配列(それぞれLC−FR1、LC−FR2、LC−FR3およびLC−FR4)を含む。
【0103】
一実施形態において、抗シグレック−8抗体は、フレームワーク配列および高頻度可変領域を含む重鎖可変ドメインを含み、フレームワーク配列は、HC−FR1〜HC−FR4配列、それぞれ配列番号26〜29(HC−FR1)、配列番号31〜36(HC−FR2)、配列番号38〜43(HC−FR3)および配列番号45または46(HC−FR4)を含み、HVR−H1は、配列番号61のアミノ酸配列を含み、HVR−H2は、配列番号62のアミノ酸配列を含み、HVR−H3は、配列番号63のアミノ酸配列を含む。一実施形態において、抗シグレック−8抗体は、フレームワーク配列および高頻度可変領域を含む重鎖可変ドメインを含み、フレームワーク配列は、HC−FR1〜HC−FR4配列、それぞれ配列番号26〜29(HC−FR1)、配列番号31〜36(HC−FR2)、配列番号38〜43(HC−FR3)および配列番号45または46(HC−FR4)を含み、HVR−H1は、配列番号61のアミノ酸配列を含み、HVR−H2は、配列番号62のアミノ酸配列を含み、HVR−H3は、配列番号67〜70から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、抗シグレック−8抗体は、フレームワーク配列および高頻度可変領域を含む軽鎖可変ドメインを含み、フレームワーク配列は、LC−FR1〜LC−FR4配列、それぞれ配列番号48または49(LC−FR1)、配列番号51〜53(LC−FR2)、配列番号55〜58(LC−FR3)および配列番号60(LC−FR4)を含み、HVR−L1は、配列番号64のアミノ酸配列を含み、HVR−L2は、配列番号65のアミノ酸配列を含み、HVR−L3は、配列番号66のアミノ酸配列を含む。一実施形態において、抗シグレック−8抗体は、フレームワーク配列および高頻度可変領域を含む軽鎖可変ドメインを含み、フレームワーク配列は、LC−FR1〜LC−FR4配列、それぞれ配列番号48または49(LC−FR1)、配列番号51〜53(LC−FR2)、配列番号55〜58(LC−FR3)および配列番号60(LC−FR4)を含み、HVR−L1は、配列番号64のアミノ酸配列を含み、HVR−L2は、配列番号65のアミノ酸配列を含み、HVR−L3は、配列番号71のアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号2〜10から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号16〜22から選択されるアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号2〜10から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号23または24から選択されるアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号11〜14から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号16〜22から選択されるアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号11〜14から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号23または24から選択されるアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号6のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号16のアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号6のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号21のアミノ酸配列を含む。
【0104】
一部の実施形態において、重鎖HVR配列は、次のものを含む:
【化4】
【0105】
一部の実施形態において、重鎖HVR配列は、次のものを含む:
【化5】
【0106】
一部の実施形態において、重鎖FR配列は、次のものを含む:
【化6】
【0107】
一部の実施形態において、軽鎖HVR配列は、次のものを含む:
【化7】
【0108】
一部の実施形態において、軽鎖HVR配列は、次のものを含む:
【化8】
【0109】
一部の実施形態において、軽鎖FR配列は、次のものを含む:
【化9】
【0110】
一部の実施形態において、ヒトシグレック−8に特異的に結合する抗シグレック−8抗体(例えば、ヒト化抗シグレック−8抗体)であって、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗体であり、
(a)
(1)配列番号26〜29から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR1、
(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、
(3)配列番号31〜36から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR2、
(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2、
(5)配列番号38〜43から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR3、
(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3および
(7)配列番号45〜46から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR4
を含む重鎖可変ドメイン
および/または
(b)
(1)配列番号48〜49から選択されるアミノ酸配列を含むLC−FR1、
(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、
(3)配列番号51〜53から選択されるアミノ酸配列を含むLC−FR2、
(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2、
(5)配列番号55〜58から選択されるアミノ酸配列を含むLC−FR3、
(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3および
(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC−FR4
を含む軽鎖可変ドメイン
を含む抗体が本明細書において提供される。
【0111】
一態様において、配列番号2〜10から選択される重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号16〜22から選択される軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一態様において、配列番号2〜10から選択される重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号23もしくは24から選択される軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一態様において、配列番号11〜14から選択される重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号16〜22から選択される軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一態様において、配列番号11〜14から選択される重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号23もしくは24から選択される軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一態様において、配列番号6の重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号16もしくは21から選択される軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。
【0112】
一態様において、配列番号106〜108から選択される重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号109〜111から選択される軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一態様において、配列番号106の重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号109の軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一態様において、配列番号107の重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号110の軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一態様において、配列番号108の重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号111の軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。
【0113】
一部の実施形態において、配列番号2〜14から選択されるアミノ酸配列に対し少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、配列番号106〜108から選択されるアミノ酸配列に対し少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するアミノ酸配列は、参照配列と比べて置換、挿入または欠失を含有するが、このアミノ酸配列を含む抗体は、ヒトシグレック−8に結合する能力を保持する。一部の実施形態において、置換、挿入または欠失(例えば、1、2、3、4または5アミノ酸)は、HVRの外側の領域(すなわち、FR)において生じる。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、配列番号106〜108から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0114】
一部の実施形態において、配列番号16〜24から選択されるアミノ酸配列に対し少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、配列番号109〜111から選択されるアミノ酸配列に対し少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するアミノ酸配列は、参照配列と比べて置換、挿入または欠失を含有するが、このアミノ酸配列を含む抗体は、ヒトシグレック−8に結合する能力を保持する。一部の実施形態において、置換、挿入または欠失(例えば、1、2、3、4または5アミノ酸)は、HVRの外側の領域(すなわち、FR)において生じる。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、配列番号16または21のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、配列番号109〜111から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0115】
一部の実施形態において、
図1または
図3に表される重鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。
【0116】
一部の実施形態において、
図2または
図3に表される軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。
【0117】
一態様において、本発明は、(a)
図1もしくは
図3に示すVH HVRから選択される1、2もしくは3個のVH HVRおよび/または(b)
図2もしくは
図3に示すVL HVRから選択される1、2もしくは3個のVL HVRを含む抗シグレック−8抗体を提供する。一態様において、本発明は、
図1または
図3に示す重鎖可変ドメインから選択される重鎖可変ドメインおよび、
図2または
図3に示す軽鎖可変ドメインから選択される軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体を提供する。
【0118】
一部の実施形態において、表3に示す抗体、例えば、HAKA抗体、HAKB抗体、HAKC抗体等の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。
【0119】
それぞれα、δ、ε、γおよびμと命名された重鎖を有する5クラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在する。γおよびαクラスは、サブクラスにさらに分けられ、例えば、ヒトは、次のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2。IgG1抗体は、アロタイプと命名される複数の多型バリアントで存在することができ(JefferisおよびLefranc 2009年、mAbs 1巻、4号1〜7頁において概説)、そのうちいずれかが、本明細書における実施形態の一部における使用に適する。ヒト集団における共通アロタイプバリアントは、文字a、f、n、zまたはこれらの組合せによって命名されるバリアントである。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、ヒトIgG Fc領域を含む重鎖Fc領域を含むことができる。さらなる実施形態において、ヒトIgG Fc領域は、ヒトIgG1またはIgG4を含む。一部の実施形態において、ヒトIgG4は、アミノ酸置換S228Pを含み、このアミノ酸残基は、Kabatにおける通りのEUインデックスに従ってナンバリングされる。一部の実施形態において、ヒトIgG1は、配列番号78のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ヒトIgG4は、配列番号79のアミノ酸配列を含む。
【0120】
一部の実施形態において、配列番号75のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76もしくは77から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、抗体は、配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができる。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、肥満細胞を枯渇させ、肥満細胞活性化を阻害する。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、活性化された好酸球を枯渇させ、肥満細胞活性化を阻害する。
【0121】
1.抗体親和性
一部の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、マウス抗体2E2および/またはマウス抗体2C4と比較した場合に、ほぼ同じもしくはより高い親和性および/またはより高いアビディティーでヒトシグレック−8に結合する。ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗シグレック−8抗体は、≦1μM、≦150nM、≦100nM、≦50nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nMまたは≦0.001nM(例えば、10
−8Mまたはそれに満たない、例えば、10
−8M〜10
−13M、例えば、10
−9M〜10
−13M)の解離定数(Kd)を有する。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、マウス抗体2E2および/またはマウス抗体2C4よりも約1.5倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍または約10倍高い親和性で、ヒトシグレック−8に結合する。本明細書における一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および/または配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0122】
一実施形態において、抗シグレック−8抗体の結合親和性は、表面プラズモン共鳴アッセイにより決定することができる。例えば、KdまたはKd値は、固定化された抗原CM5チップにより約10の応答単位(RU)で25℃にてBIAcore(商標)−2000またはBIAcore(商標)−3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、N.J.)を使用することにより測定することができる。簡潔に説明すると、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore(登録商標)Inc.)は、供給元の説明書に従ってN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)により活性化される。捕捉抗体(例えば、抗ヒト−Fc)は、10mM酢酸ナトリウム、pH4.8で希釈され、その後、流速30μl/分で注射し、抗シグレック−8抗体でさらに固定化する。動態測定のため、二量体シグレック−8の2倍系列希釈を、0.05%Tween20含有PBS(PBST)において25℃、流速およそ25μl/分で注射する。会合および解離センサーグラムを同時に適合することにより、単純1対1ラングミュア結合モデル(BIAcore(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を使用して、会合速度(kon)および解離速度(koff)を計算する。平衡解離定数(Kd)は、比koff/konとして計算する。例えば、Chen, Y.ら(1999年)J. Mol. Biol.293巻:865〜881頁を参照されたい。
【0123】
別の実施形態において、バイオレイヤーインターフェロメトリーを使用して、シグレック−8に対する抗シグレック−8抗体の親和性を決定することができる。例示的なアッセイにおいて、シグレック−8−Fcタグ付けタンパク質は、抗ヒト捕捉センサー上に固定化され、増加濃度のマウス、キメラまたはヒト化抗シグレック−8 Fab断片と共にインキュベートされて、例えば、Octet Red 384 System(ForteBio)等の機器を使用して親和性測定値を得る。
【0124】
抗シグレック−8抗体の結合親和性は、例えば、関連技術分野において周知の標準技法を使用して、Munsonら、Anal. Biochem.、107巻:220頁(1980年)に記載されているScatchard解析によって決定することもできる。Scatchard, G.、Ann. N.Y. Acad. Sci.51巻:660頁(1947年)も参照されたい。
【0125】
2.抗体アビディティー
一実施形態において、抗シグレック−8抗体の結合アビディティーは、表面プラズモン共鳴アッセイにより決定することができる。例えば、KdまたはKd値は、BIAcore T100を使用することにより測定することができる。捕捉抗体(例えば、ヤギ−抗ヒト−Fcおよびヤギ−抗マウス−Fc)は、CM5チップ上に固定化される。フローセルは、抗ヒトまたは抗マウス抗体により固定化することができる。ある温度および流速、例えば、25℃、流速30μl/分でアッセイを行う。二量体シグレック−8は、アッセイバッファーにおいて様々な濃度で、例えば、15nM〜1.88pMに及ぶ濃度で希釈する。抗体を捕捉し、高速注射、続いて解離を行う。バッファー、例えば、50mMグリシンpH1.5でフローセルを再生する。空の参照セルおよび複数のアッセイバッファー注射により結果をブランク作成し、1:1グローバルフィットパラメータにより解析する。
【0126】
3.競合アッセイ
競合アッセイを使用して、2種の抗体が、同一もしくは立体的に重複するエピトープを認識することにより、同じエピトープに結合するか、または一方の抗体が、抗原への別の抗体の結合を競合的に阻害するか決定することができる。このようなアッセイは、本技術分野で公知である。典型的には、抗原または抗原発現細胞が、マルチウェルプレートに固定化され、標識抗体の結合を遮断する非標識抗体の能力が測定される。斯かる競合アッセイに一般的な標識は、放射性標識または酵素標識である。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、細胞(例えば、好酸球)の細胞表面に存在するエピトープへの結合に関して、本明細書に記載されている2E2抗体と競合する。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、細胞(例えば、好酸球)の細胞表面に存在するエピトープへの結合に関して、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよび配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、細胞(例えば、好酸球)の細胞表面に存在するエピトープへの結合に関して、本明細書に記載されている2C4抗体と競合する。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、細胞(例えば、好酸球)の細胞表面に存在するエピトープへの結合に関して、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(米国特許第8,207,305号に見出されるものと同様に)および配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(米国特許第8,207,305号に見出されるものと同様に)を含む抗体と競合する。
【0127】
4.熱的安定性
一部の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8は、熱シフトアッセイにおいて少なくとも約70℃、少なくとも約71℃または少なくとも約72℃の融解温度(Tm)を有する。例示的な熱シフトアッセイにおいて、ヒト化抗シグレック−8抗体を含む試料を、qPCRサーマルサイクラーにおいて1サイクル毎に1℃増加させつつ71サイクルにわたり蛍光色素(Sypro Orange)と共にインキュベートして、Tmを決定する。本明細書における一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、マウス2E2抗体および/またはマウス2C4抗体と比較した場合に、同様のまたはより高いTmを有する。本明細書における一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、キメラ2C4抗体と比較した場合に同じまたはより高いTmを有する。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、配列番号84のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号85のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する抗体と比較した場合に同じまたはより高いTmを有する。
【0128】
5.生物学的活性アッセイ
一部の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8は、好酸球のアポトーシスを誘導する。一部の他の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8は、肥満細胞を枯渇させる。細胞のアポトーシスを評価するためのアッセイは、本技術分野において周知であり、例えば、アネキシンVによる染色およびTUNNELアッセイが挙げられる。例示的な細胞アポトーシスアッセイにおいて、血液試料由来の新鮮バフィーコートを培地に再懸濁し、96ウェルU字底プレートで平板培養する。抗シグレック−8抗体の一連の系列5倍希釈を各ウェルに添加し、このプレートを37℃、5%CO
2で4時間より長くインキュベートする。PBSに希釈したパラホルムアルデヒドで細胞を固定し、顕微鏡を使用した検出のための好酸球に特異的なコンジュゲートされた抗体で染色する。バフィーコートが抗シグレック−8抗体の存在下でインキュベートされないときと比較した場合に、バフィーコートが抗シグレック−8抗体の存在下でインキュベートされたときの総末梢血白血球における好酸球集団を評価する。別の例示的なアッセイにおいて、血液試料から精製された好酸球(例えば、Miltenyi好酸球単離キット)を培地に再懸濁し、IL−5の存在または非存在下で一晩培養する。培養した好酸球をその後、遠心分離によって収集し、培地に再懸濁し、96ウェルU字底プレートで平板培養する。抗シグレック−8抗体の一連の系列5倍希釈を各ウェルに添加し、このプレートを37℃、5%CO
2で4時間より長くインキュベートする。本技術分野において周知の標準技法を使用して細胞を固定し、アネキシン−Vで染色し、顕微鏡を使用して好酸球の数を検出する。精製された細胞が抗シグレック−8抗体の存在下でインキュベートされないときと比較した場合に、精製された細胞が抗シグレック−8抗体の存在下でインキュベートされたときの試料における好酸球集団を評価する。
【0129】
一部の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、ADCC活性を誘導する。一部の他の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、ADCC活性によりシグレック−8を発現する肥満細胞を死滅させる。一部の実施形態において、組成物は、非フコシル化(すなわち、アフコシル化(afucosylated))抗シグレック−8抗体を含む。一部の実施形態において、本明細書に記載されている非フコシル化抗シグレック−8抗体を含む組成物は、部分的にフコシル化された抗シグレック−8抗体を含む組成物と比較した場合に、ADCC活性を増強する。ADCC活性を評価するためのアッセイは、本技術分野において周知であり、本明細書に記載されている。例示的なアッセイにおいて、ADCC活性を測定するために、エフェクター細胞および標的細胞が使用される。エフェクター細胞の例として、ナチュラルキラー(NK)細胞、大型顆粒リンパ球(LGL)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞ならびにNKおよびLGLを含むPBMC、または好中球、好酸球およびマクロファージ等、細胞表面にFc受容体を有する白血球が挙げられる。標的細胞は、評価しようとする抗体が認識できる抗原を細胞表面に発現するいずれかの細胞である。斯かる標的細胞の例は、細胞表面にシグレック−8を発現する好酸球である。斯かる標的細胞の別の例は、細胞表面にシグレック−8を発現する肥満細胞である。標的細胞は、細胞溶解の検出を可能にする試薬で標識される。標識のための試薬の例として、クロム酸ナトリウム(Na
2 51CrO
4)等、放射性物質が挙げられる。例えば、Immunology、14巻、181頁(1968年);J. Immunol. Methods、172巻、227頁(1994年);およびJ. Immunol. Methods、184巻、29頁(1995年)を参照されたい。
【0130】
一部の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、肥満細胞媒介性活性を阻害する。肥満細胞トリプターゼは、総肥満細胞数および活性化のバイオマーカーとして使用されてきた。例えば、血液または尿中の総および活性トリプターゼならびにヒスタミン、N−メチルヒスタミンおよび11−ベータ−プロスタグランジンF2を測定して、肥満細胞の低下を評価することができる。例えば、例示的な肥満細胞活性アッセイに関して、米国特許出願公開第20110293631号を参照されたい。本明細書における実施例2に記載されているアッセイを使用して、肥満細胞における抗シグレック−8抗体のADCCおよびアポトーシス活性を評価することもできる。
【0131】
6.融合タンパク質結合アッセイ
融合タンパク質による結合アッセイを使用して、抗体によって認識されるエピトープを決定することができる。エピトープマッピングのために融合タンパク質を使用したアッセイは、本技術分野で公知である。例えば、ヒトIg−Fcに融合されたシグレック−8タンパク質の部分を含む融合タンパク質を、マルチウェルプレートに固定化し、融合タンパク質に結合する抗体の能力を測定する。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、配列番号115のアミノ酸配列を含む融合タンパク質に結合する。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、配列番号116のアミノ酸配列を含む融合タンパク質に結合する。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、配列番号117のアミノ酸配列を含む融合タンパク質に結合する。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、配列番号118のアミノ酸配列を含む融合タンパク質に結合する。
【0132】
III.抗体調製
本明細書に記載されている抗体は、抗体を作製するための本技術分野において利用できる技法を使用して調製されるが、そのうち例示的な方法について次のセクションでより詳細に記載する。
【0133】
1.抗体断片
本発明は、抗体断片を包含する。抗体断片は、酵素消化等の伝統的な手段または組換え技法によって作製することができる。ある特定の状況下で、全抗体ではなく抗体断片を使用する利点がある。ある特定の抗体断片の概説に関しては、Hudsonら(2003年)Nat. Med.9巻:129〜134頁を参照されたい。
【0134】
抗体断片の産生のための様々な技法が開発された。伝統的には、このような断片は、インタクト抗体のタンパク質分解的消化により得られた(例えば、Morimotoら、Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24巻:107〜117頁(1992年);およびBrennanら、Science、229巻:81頁(1985年)を参照)。しかし、このような断片は現在、組換え宿主細胞によって直接的に産生することができる。Fab、FvおよびScFv抗体断片は全て、E.coliにおいて発現させ、それから分泌させることができ、よって、大量のこのような断片の手軽な産生を可能にする。抗体断片は、上述の抗体ファージライブラリーから単離することができる。あるいは、Fab’−SH断片をE.coliから直接的に回収し、化学的にカップリングして、F(ab’)
2断片を形成することができる(Carterら、Bio/Technology 10巻:163〜167頁(1992年))。別のアプローチによると、F(ab’)
2断片は、組換え宿主細胞培養物から直接的に単離することができる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含む、in vivo半減期が増加したFabおよびF(ab’)
2断片が、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体断片の産生のための他の技法は、当業者には明らかとなろう。ある特定の実施形態において、抗体は、単鎖Fv断片(scFv)である。WO93/16185;米国特許第5,571,894号;および同第5,587,458号を参照されたい。FvおよびscFvは、定常領域を欠くインタクトな組み合わせ部位を有する唯一の種である;よって、これらは、in vivo使用における非特異的結合低下に適する可能性がある。scFv融合タンパク質を構築して、scFvのアミノまたはカルボキシ末端のいずれかにおけるエフェクタータンパク質の融合体を生じることができる。Antibody Engineering、Borrebaeck編(上掲)を参照されたい。例えば抗体断片は、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されている「線状抗体」となることもできる。斯かる線状抗体は、単一特異性または二重特異性となり得る。
【0135】
2.ヒト化抗体
本発明は、ヒト化抗体を包含する。非ヒト抗体をヒト化するための様々な方法が、本技術分野で公知である。例えば、ヒト化抗体は、非ヒト供給源から導入された1個または複数のアミノ酸残基を有することができる。このような非ヒトアミノ酸残基は多くの場合、「移入」残基と称され、これは典型的には、「移入」可変ドメインから得られる。ヒト化は基本的に、高頻度可変領域配列をヒト抗体の相当する配列の代わりに置換することにより、Winterの方法に従って行うことができる(Jonesら(1986年)Nature 321巻:522〜525頁;Riechmannら(1988年)Nature 332巻:323〜327頁;Verhoeyenら(1988年)Science 239巻:1534〜1536頁)。したがって、斯かる「ヒト化」抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、インタクトなヒト可変ドメインに実質的に満たないものが、非ヒト種由来の相当する配列によって置換されている。実際には、ヒト化抗体は典型的には、いくつかの高頻度可変領域残基およびおそらくいくつかのFR残基が、齧歯類抗体における類似性部位由来の残基によって置換されたヒト抗体である。
【0136】
ヒト化抗体の作成において使用するべき軽および重両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性の低下に重要となり得る。いわゆる「ベストフィット(best−fit)」方法によると、齧歯類(例えば、マウス)抗体の可変ドメインの配列が、公知ヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対しスクリーニングされる。続いて、齧歯類の配列に最も近縁のヒト配列が、ヒト化抗体のヒトフレームワークとして受け入れられる(Simsら(1993年)J. Immunol.151巻:2296頁;Chothiaら(1987年)J. Mol. Biol.196巻:901頁)。別の方法は、軽または重鎖の特定のサブグループのあらゆるヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを使用する。いくつかの異なるヒト化抗体に同じフレームワークを使用することができる(Carterら(1992年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻:4285頁;Prestaら(1993年)J. Immunol.、151巻:2623頁)。
【0137】
抗体が、抗原に対する高い親和性および他の好ましい生物学的特性を保持しつつヒト化されることがさらに一般に望ましい。この目標を達成するため、一方法に従って、ヒト化抗体は、親およびヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列および様々な概念的ヒト化産物の解析のプロセスにより調製される。三次元免疫グロブリンモデルは、一般的に利用でき、当業者には馴染み深い。選択された候補免疫グロブリン配列の可能な三次元立体構造を図解および表示するコンピュータプログラムを利用できる。このような表示の点検は、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性の高い役割の解析、すなわち、その抗原に結合する候補免疫グロブリンの能力に影響を与える残基の解析を可能にする。このようにして、標的抗原(複数可)に対する親和性増加等、所望の抗体特徴が達成できるように、レシピエントおよび移入配列からFR残基を選択し、組み合わせることができる。一般に、高頻度可変領域残基は、直接的におよび最も実質的に、抗原結合への影響に関与する。
【0138】
3.ヒト抗体
本発明のヒト抗シグレック−8抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列(複数可)と公知ヒト定常ドメイン配列(複数可)を組み合わせることにより構築することができる。あるいは、本発明のヒトモノクローナル抗シグレック−8抗体は、ハイブリドーマ方法によって作成することができる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒトミエローマおよびマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞株は、例えば、Kozbor、J. Immunol.、133巻:3001頁(1984年);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、51〜63頁(Marcel Dekker, Inc.、New York、1987年);およびBoernerら、J. Immunol.、147巻:86頁(1991年)によって記載されている。
【0139】
免疫化により、内在性免疫グロブリン産生の非存在下でヒト抗体の完全レパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を産生することが可能である。例えば、キメラおよび生殖系列変異体マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合型欠失が、内在性抗体産生の完全阻害をもたらすことが記載されている。斯かる生殖系列変異体マウスへのヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移行は、抗原負荷によるヒト抗体の産生をもたらすであろう。例えば、Jakobovitsら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻:2551頁(1993年);Jakobovitsら、Nature、362巻:255頁(1993年);Bruggermannら、Year in Immunol.、7巻:33頁(1993年)を参照されたい。
【0140】
遺伝子シャッフリングを使用して、非ヒト(例えば、齧歯類)抗体からヒト抗体を得ることもでき、このヒト抗体は、出発非ヒト抗体と同様の親和性および特異性を有する。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法に従い、本明細書に記載されているファージディスプレイ技法によって得られる非ヒト抗体断片の重または軽鎖可変領域のいずれかを、ヒトVドメイン遺伝子のレパートリーと置き換え、非ヒト鎖/ヒト鎖scFvまたはFabキメラの集団を作り出す。抗原による選択は、非ヒト鎖/ヒト鎖キメラscFvまたはFabの単離をもたらし、ヒト鎖は、一次ファージディスプレイクローンにおける相当する非ヒト鎖の除去により破壊された抗原結合部位を修復する、すなわち、エピトープは、ヒト鎖パートナーの選択を支配する。残存非ヒト鎖を置き換えるために、このプロセスを反復すると、ヒト抗体が得られる(PCT WO93/06213、1993年4月1日公開を参照)。CDRグラフトによる非ヒト抗体の伝統的なヒト化とは異なり、この技法は、非ヒト起源のFR残基もCDR残基も持たない完全なヒト抗体を提供する。
【0141】
4.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2種の異なる抗原に対し結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある特定の実施形態において、二重特異性抗体は、ヒトまたはヒト化抗体である。ある特定の実施形態において、結合特異性のうち一方は、シグレック−8に対するものであり、他方は、他のいずれかの抗原に向けられている。ある特定の実施形態において、二重特異性抗体は、シグレック−8の2種の異なるエピトープに結合することができる。二重特異性抗体を使用して、シグレック−8を発現する細胞に細胞傷害性薬剤を局在化させることもできる。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)
2二重特異性抗体)として調製することができる。
【0142】
二重特異性抗体を作成するための方法は、本技術分野で公知である。MilsteinおよびCuello、Nature、305巻:537頁(1983年)、WO93/08829、1993年5月13日公開およびTrauneckerら、EMBO J.、10巻:3655頁(1991年)を参照されたい。二重特異性抗体作製のさらなる詳細に関しては、例えば、Sureshら、Methods in Enzymology、121巻:210頁(1986年)を参照されたい。二重特異性抗体は、架橋されたまたは「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲートにおける抗体の一方は、アビジンにカップリングすることができ、他方はビオチンにカップリングすることができる。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋方法を使用して作成することができる。適した架橋剤は、本技術分野において周知であり、多数の架橋技法と共に米国特許第4,676,980号に開示されている。
【0143】
5.シングルドメイン抗体
一部の実施形態において、本発明の抗体は、シングルドメイン抗体である。シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全体もしくは部分または軽鎖可変ドメインの全体もしくは部分を含む単一のポリペプチド(polyeptide)鎖である。ある特定の実施形態において、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体である(Domantis,Inc.、Waltham、Mass.;例えば、米国特許第6,248,516(B1)号を参照)。一実施形態において、シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全体または部分からなる。
【0144】
6.抗体バリアント
一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体のアミノ酸配列修飾(複数可)が企図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましくなり得る。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な変化を導入することにより、あるいはペプチド合成により調製することができる。斯かる修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失および/またはそれへの挿入および/またはその置換を含む。欠失、挿入および置換のいずれかの組合せを為して、最終構築物に到達することができるが、この最終構築物が、所望の特徴を保有することを条件とする。アミノ酸変更は、配列が作成されるときに対象抗体アミノ酸配列に導入することができる。
【0145】
変異誘発に好まれる位置である、抗体のある特定の残基または領域の同定に有用な方法は、CunninghamおよびWells(1989年)Science、244巻:1081〜1085頁によって記載されている「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。それによると、残基または標的残基の群が同定され(例えば、arg、asp、his、lysおよびglu等、荷電残基)、中性または負電荷アミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられて、抗原とアミノ酸との相互作用に影響を与える。置換に対する機能的感受性を実証するアミノ酸位置は続いて、置換部位にまたはそれに代えてさらに別のまたは他のバリアントを導入することにより精緻化される。よって、アミノ酸配列変種を導入するための部位は既定であるが、変異の性質それ自体は既定である必要はない。例えば、所定の部位における変異の性能を解析するために、alaスキャニングまたはランダム変異誘発が、標的コドンまたは領域において行われ、発現された免疫グロブリンが、所望の活性に関してスクリーニングされる。
【0146】
アミノ酸配列挿入は、1残基から100またはそれを超える残基を含有するポリペプチドの長さに及ぶアミノおよび/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例として、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントは、抗体の血清半減期を増加させる酵素またはポリペプチドへの抗体のNまたはC末端の融合を含む。
【0147】
ある特定の実施形態において、本発明の抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように変更される。ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合型またはO結合型のいずれかである。N結合型は、アスパラギン残基の側鎖への糖質部分の付着を指す。トリペプチド配列、アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−スレオニン(式中、Xは、プロリンを除くいずれかのアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への糖質部分の酵素による付着の認識配列である。よって、ポリペプチドにおけるこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的グリコシル化部位を生じる。O結合型グリコシル化は、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリシンを使用してもよいが、最も一般的にはセリンまたはスレオニンであるヒドロキシアミノ酸への糖、N−アセチルガラクトサミン(aceylgalactosamine)、ガラクトースまたはキシロースのうち1種の付着を指す。
【0148】
抗体に対するグリコシル化部位の付加または欠失は、上述のトリペプチド配列(N結合型グリコシル化部位のための)のうち1種または複数が作出または除去されるように、アミノ酸配列を変更することにより簡便に達成される。変更は、本来の抗体の配列に対する1個または複数のセリンまたはスレオニン残基の付加、欠失または置換によって為すこともできる(O結合型グリコシル化部位のため)。
【0149】
抗体が、Fc領域を含む場合、それに付着した糖質を変更することができる。例えば、抗体のFc領域に付着したフコースを欠如する、成熟糖質構造を有する抗体が、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta, L.)に記載されている。US2004/0093621(Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd)も参照されたい。抗体のFc領域に付着した糖質において二分(bisecting)N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)を有する抗体は、WO2003/011878、Jean−Mairetらおよび米国特許第6,602,684号、Umanaらにおいて参照される。抗体のFc領域に付着したオリゴ糖において少なくとも1個のガラクトース残基を有する抗体は、WO1997/30087、Patelらに報告されている。そのFc領域に付着した変更された糖質を有する抗体に関して、WO1998/58964(Raju, S.)およびWO1999/22764(Raju, S.)も参照されたい。修飾されたグリコシル化を有する抗原結合分子に関して、US2005/0123546(Umanaら)も参照されたい。
【0150】
ある特定の実施形態において、グリコシル化バリアントは、Fc領域に付着した糖質構造が、フコースを欠如するまたは低下したフコースを有するFc領域を含む。斯かるバリアントは、改善されたADCC機能を有する。任意選択で、Fc領域は、ADCCをさらに改善する1個または複数のアミノ酸置換をそこにさらに含み、例えば、Fc領域の298、333および/または334位(残基のEuナンバリング)における置換が挙げられる。「脱フコシル化(defucosylated)」または「フコース欠損」抗体に関する刊行物の例として:US2003/0157108;WO2000/61739;WO2001/29246;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;WO2003/085119;WO2003/084570;WO2005/035586;WO2005/035778;WO2005/053742;Okazakiら、J. Mol. Biol.336巻:1239〜1249頁(2004年);Yamane−Ohnukiら、Biotech. Bioeng.87巻:614頁(2004年)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生する細胞株の例として、タンパク質フコシル化を欠損するLec13 CHO細胞(Ripkaら、Arch. Biochem. Biophys.249巻:533〜545頁(1986年);米国特許出願公開第2003/0157108(A1)号、Presta, L;およびWO2004/056312(A1)、Adamsら、特に、実施例11)と、アルファ−1,6−フコシル基転移酵素遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(Yamane−Ohnukiら、Biotech. Bioeng.87巻:614頁(2004年))等のノックアウト細胞株と、β1,4−N−アセチルグルコサミン転移酵素III(GnT−III)およびゴルジμ−マンノシダーゼII(ManII)を過剰発現する細胞が挙げられる。
【0151】
野生型CHO細胞において産生された同じ抗体におけるフコースの量と比べて低下したフコースを有する抗体が、本明細書において企図される。例えば、抗体は、ネイティブCHO細胞(例えば、ネイティブFUT8遺伝子を含有するCHO細胞等、ネイティブグリコシル化パターンを産生するCHO細胞)によって産生された場合よりも少量のフコースを有する。ある特定の実施形態において、本明細書において提供される抗シグレック−8抗体は、そのN結合型グリカンの約50%、40%、30%、20%、10%、5%または1%未満がフコースを含む抗体である。ある特定の実施形態において、本明細書において提供される抗シグレック−8抗体は、そのN結合型グリカンのいずれもフコースを含まない抗体である、すなわち、抗体は、完全にフコースを含有しない、またはフコースを持たない、またはフコシル化されていない、またはアフコシル化されている。フコースの量は、例えばWO2008/077546に記載されているMALDI−TOF質量分析によって測定される、Asn297に付着したあらゆる糖構造の和と比べて(例えば、複合的、ハイブリッドおよび高マンノース構造)、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することにより決定することができる。Asn297は、Fc領域における約297位に位置するアスパラギン残基を指す(Fc領域残基のEuナンバリング);しかし、Asn297は、抗体における軽微な配列変種により、297位の約±3アミノ酸上流または下流に、すなわち、294〜300位の間に位置することもできる。一部の実施形態において、抗体の重鎖の少なくとも1または2つは、フコシル化されていない。
【0152】
一実施形態において、抗体は、その血清半減期を改善するように変更される。抗体の血清半減期を増加させるために、例えば、米国特許第5,739,277号に記載されている通り、サルベージ受容体結合エピトープを抗体(特に、抗体断片)に取り込ませることができる。本明細書において、用語「サルベージ受容体結合エピトープ」は、IgG分子のin vivo血清半減期の増加の原因となる、IgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)のFc領域のエピトープを指す(US2003/0190311、米国特許第6,821,505号;米国特許第6,165,745号;米国特許第5,624,821号;米国特許第5,648,260号;米国特許第6,165,745号;米国特許第5,834,597号)。
【0153】
別の種類のバリアントは、アミノ酸置換バリアントである。このようなバリアントは、異なる残基によって置き換えられた少なくとも1個のアミノ酸残基を抗体分子に有する。置換変異誘発のための目的の部位は、高頻度可変領域を含むが、FR変更も企図される。保存的置換は、表1の見出し「好まれる置換」に示す。斯かる置換が、生物学的活性に望ましい変化をもたらす場合、表1において「例示的な置換」と命名される、またはアミノ酸クラスを参照しつつさらに後述する、より実質的な変化を導入し、その産物をスクリーニングすることができる。
【表1】
【0154】
抗体の生物学的特性における実質的な修飾は、(a)例えば、シートもしくはヘリックス立体構造としての、置換の区域におけるポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、またはc)側鎖の嵩の維持におけるその効果が有意に異なる置換を選択することにより達成される。アミノ酸は、その側鎖の特性の類似性に従ってグループ化することができる(A. L. Lehninger、Biochemistry、第2版、73〜75頁、Worth Publishers、New York(1975年)):
(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)
(2)無電荷極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)
【0155】
あるいは、天然起源の残基は、共通側鎖特性に基づき群に分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向性に影響を与える残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0156】
非保存的置換は、これらのクラスのうちあるクラスから別のクラスへのメンバーの交換を必要とするであろう。斯かる置換された残基は、保存的置換部位または残存(非保存)部位へと導入することもできる。
【0157】
1種類の置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)のうち1個または複数の高頻度可変領域残基の置換に関与する。一般に、さらなる開発のために選択されるその結果得られたバリアント(複数可)は、これを作製する元になった親抗体と比べて修飾された(例えば、改善された)生物学的特性を有するであろう。斯かる置換バリアントを作製するための簡便な仕方は、ファージディスプレイを使用した親和性成熟化に関与する。簡潔に説明すると、いくつかの高頻度可変領域部位(例えば、6〜7部位)を変異させて、各部位にあらゆる可能なアミノ酸置換を作製する。このように作製された抗体は、各粒子内にパッケージされたファージコートタンパク質(例えば、M13の遺伝子III産物)の少なくとも一部への融合体として繊維状ファージ粒子からディスプレイされる。次に、ファージディスプレイされたバリアントは、その生物学的活性(例えば、結合親和性)に関してスクリーニングされる。修飾のための候補高頻度可変領域部位を同定するために、スキャニング変異誘発(例えば、アラニンスキャニング)を行って、抗原結合に有意に寄与する高頻度可変領域残基を同定することができる。その代わりにまたはその上、抗原−抗体複合体の結晶構造を解析して、抗体および抗原の間の接触点を同定することが有益となり得る。斯かる接触残基および隣接する残基は、本明細書に詳述されている技法を含む、本技術分野で公知の技法に従った置換の候補である。斯かるバリアントが作製されたら、バリアントのパネルを、本明細書に記載されている技法を含む本技術分野で公知の技法を使用したスクリーニングに付し、1種または複数の関連アッセイにおいて優れた特性を有する抗体をさらなる開発のために選択することができる。
【0158】
抗体のアミノ酸配列バリアントをコードする核酸分子は、本技術分野で公知の種々の方法によって調製される。このような方法として、天然供給源からの単離(天然起源のアミノ酸配列バリアントの場合)、または先に調製されたバリアントもしくは非バリアントバージョンの抗体のオリゴヌクレオチド媒介性(または部位特異的)変異誘発、PCR変異誘発およびカセット変異誘発による調製が挙げられるがこれらに限定されない。
【0159】
本発明の抗体のFc領域に1個または複数のアミノ酸修飾を導入し、これにより、Fc領域バリアントを作製することが望ましくなり得る。Fc領域バリアントは、ヒンジシステインの位置を含む1個または複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4 Fc領域)を含むことができる。一部の実施形態において、Fc領域バリアントは、ヒトIgG4 Fc領域を含む。さらなる実施形態において、ヒトIgG4 Fc領域は、アミノ酸置換S228Pを含み、このアミノ酸残基は、Kabatにおける通りのEUインデックスに従ってナンバリングされる。
【0160】
本明細書および本技術分野が教示するところに従って、一部の実施形態において、本発明の抗体が、野生型カウンターパート抗体と比較して1個または複数の変更を、例えば、Fc領域に含むことができることが企図される。それにもかかわらず、このような抗体は、その野生型カウンターパートと比較した場合に、治療的有用性に必要とされる実質的に同じ特徴を保持するであろう。例えば、WO99/51642に記載されている通り、例えば、変更された(すなわち、改善または縮小された)C1q結合および/または補体依存性細胞傷害(CDC)をもたらすであろう、ある特定の変更をFc領域に為すことができることが考えられる。Fc領域バリアントの他の例に関して、DuncanおよびWinter、Nature 322巻:738〜40頁(1988年);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;およびWO94/29351も参照されたい。WO00/42072(Presta)およびWO2004/056312(Lowman)は、FcRに対し改善または縮小された結合を有する抗体バリアントについて記載する。これらの特許公報の内容は、特に参照により本明細書に組み入れられる。Shieldsら、J. Biol. Chem.9巻(2号):6591〜6604頁(2001年)も参照されたい。増加された半減期および胎児への母系IgGの移行の原因となる、新生児Fc受容体(FcRn)への改善された結合を有する抗体(Guyerら、J. Immunol.117巻:587頁(1976年)およびKimら、J. Immunol.24巻:249頁(1994年))は、US2005/0014934A1(Hintonら)に記載されている。このような抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する、1個または複数の置換をその中に有するFc領域を含む。変更されたFc領域アミノ酸配列および増加または減少されたC1q結合能を有するポリペプチドバリアントは、米国特許第6,194,551B1号、WO99/51642に記載されている。これらの特許公報の内容は、特に参照により本明細書に組み入れられる。Idusogieら、J. Immunol.164巻:4178〜4184頁(2000年)も参照されたい。
【0161】
7.ベクター、宿主細胞および組換え方法
本発明の抗体の組換え産生のため、これをコードする核酸を単離し、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入する。抗体をコードするDNAは、従来手順を使用して(例えば、抗体の重および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)容易に単離および配列決定される。多くのベクターを利用できる。ベクターの選択は、一部には、使用するべき宿主細胞に依存する。一般に、宿主細胞は、原核生物または真核生物(一般には哺乳動物)起源のいずれかである。IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE定常領域を含むいかなるアイソタイプの定常領域をこの目的のために使用してもよく、いかなるヒトまたは動物種から斯かる定常領域を得てもよいことが認められよう。
【0162】
原核生物(Prokarvotic)宿主細胞を使用した抗体の作製:
a)ベクター構築
本発明の抗体のポリペプチド構成成分をコードするポリヌクレオチド配列は、標準組換え技法を使用して得ることができる。所望のポリヌクレオチド配列は、ハイブリドーマ細胞等、抗体産生細胞から単離および配列決定することができる。あるいは、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド合成機またはPCR技法を使用して合成することができる。得られた後に、ポリペプチドをコードする配列は、原核生物宿主において異種ポリヌクレオチドを複製および発現することができる組換えベクターに挿入する。利用できる本技術分野で公知の多くのベクターを本発明の目的のために使用することができる。適切なベクターの選択は、主に、ベクターに挿入されるべき核酸のサイズおよびベクターで形質転換されるべき特定の宿主細胞に依存するであろう。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅もしくは発現またはその両方)およびこれが存在する特定の宿主細胞との適合性に応じて様々な構成成分を含有する。ベクター構成成分として、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸挿入物および転写終結配列が一般に挙げられるがこれらに限定されない。
【0163】
一般に、宿主細胞と適合性の種に由来するレプリコンおよび対照配列を含有するプラスミドベクターは、このような宿主に関連して使用される。ベクターは通常、複製部位と共に、形質転換細胞における表現型選択をもたらすことができるマーキング配列を保有する。例えば、E.coliは典型的に、E.coli種に由来するプラスミドであるpBR322を使用して形質転換される。pBR322は、アンピシリン(Amp)およびテトラサイクリン(Tet)抵抗性をコードする遺伝子を含有し、これにより、形質転換細胞を同定するための容易な手段を提供する。pBR322、その派生体または他の微生物プラスミドまたはバクテリオファージは、内在性タンパク質の発現のために微生物によって使用され得るプロモーターを含有することもできるまたは含有するように修飾することもできる。特定の抗体の発現のために使用されるpBR322派生体の例は、Carterら、米国特許第5,648,237号に詳細に記載されている。
【0164】
加えて、宿主微生物と適合性であるレプリコンおよび対照配列を含有するファージベクターは、このような宿主に関連した形質転換ベクターとして使用することができる。例えば、λGEM.TM.−11等、バクテリオファージは、E.coli LE392等、感受性宿主細胞の形質転換に使用することができる組換えベクターの作成において利用することができる。
【0165】
本発明の発現ベクターは、ポリペプチド構成成分のそれぞれをコードする2個またはそれを超えるプロモーター−シストロンペアを含むことができる。プロモーターは、その発現をモジュレートするシストロンの上流(5’)に位置する非翻訳調節配列である。原核生物プロモーターは、典型的には、2種のクラス、誘導性および構成的に分類される。誘導性プロモーターは、培養条件の変化、例えば、栄養素の存在もしくは非存在または温度変化に応答して、その制御下でシストロンの転写のレベル増加を開始するプロモーターである。
【0166】
種々の潜在的宿主細胞によって認識される多数のプロモーターが周知である。制限酵素消化により供給源DNAからプロモーターを除去し、本発明のベクターへと単離されたプロモーター配列を挿入することにより、選択されたプロモーターは、軽または重鎖をコードするシストロンDNAに作動可能に連結することができる。ネイティブプロモーター配列および多くの異種プロモーターの両方を使用して、標的遺伝子の増幅および/または発現を方向付けることができる。一部の実施形態において、一般に、ネイティブ標的ポリペプチドプロモーターと比較した場合に、より優れた転写および発現された標的遺伝子のより高い収量を可能にするため、異種プロモーターが利用される。
【0167】
原核生物宿主による使用に適したプロモーターは、PhoAプロモーター、β−ガラクタマーゼ(galactamase)およびラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系ならびにtacまたはtrcプロモーター等のハイブリッドプロモーターを含む。しかし、細菌において機能的な他のプロモーター(他の公知細菌またはファージプロモーター等)も同様に適する。これらのヌクレオチド配列は発表されているため、当業者であれば、任意の必要とされる制限部位を供給するためのリンカーまたはアダプターを使用して、操作可能にこれらを標的の軽および重鎖をコードするシストロンにライゲーションすることができる(Siebenlistら(1980年)Cell 20巻:269頁)。
【0168】
本発明の一態様において、組換えベクター内の各シストロンは、膜を横切っての発現されたポリペプチドのトランスロケーションを方向付ける分泌シグナル配列構成成分を含む。一般に、シグナル配列は、ベクターの構成成分となり得る、あるいはベクターに挿入される標的ポリペプチドDNAの一部となり得る。本発明の目的のために選択されるシグナル配列は、宿主細胞によって認識およびプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)配列となるべきである。異種ポリペプチドにとってネイティブなシグナル配列を認識およびプロセシングしない原核生物宿主細胞のため、シグナル配列は、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ippまたは熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpAおよびMBPからなる群から例えば選択される原核生物シグナル配列によって置換される。本発明の一実施形態において、発現系の両方のシストロンで使用されるシグナル配列は、STIIシグナル配列またはそのバリアントである。
【0169】
別の態様において、本発明に係る免疫グロブリンの産生は、宿主細胞の細胞質において起こることができ、したがって、各シストロン内に分泌シグナル配列の存在を必要としない。これに関して、免疫グロブリン軽および重鎖は、細胞質内で発現され、フォールドされ、アセンブルされて、機能的免疫グロブリンを形成する。ある特定の宿主系統(例えば、E.coli trxB−系統)は、ジスルフィド結合形成に好ましい細胞質条件を提供し、これにより、発現されたタンパク質サブユニットの適切なフォールディングおよびアセンブリを可能にする。ProbaおよびPluckthun、Gene、159巻:203頁(1995年)。
【0170】
本発明の抗体は、分泌され適切にアセンブルされた本発明の抗体の収量を最大化するために、発現されたポリペプチド構成成分の定量的な比をモジュレートすることができる発現系を使用することにより産生することもできる。斯かるモジュレーションは、少なくとも一部には、ポリペプチド構成成分の翻訳強度を同時にモジュレートすることにより達成される。
【0171】
翻訳強度をモジュレートするための一技法は、Simmonsら、米国特許第5,840,523号に開示されている。これは、シストロン内の翻訳開始領域(TIR)のバリアントを利用する。所定のTIRのため、一連のアミノ酸または核酸配列バリアントをある範囲の翻訳強度で作り出し、これにより、特異的な鎖の所望の発現レベルにこの因子を調整するための簡便な手段を提供することができる。TIRバリアントは、アミノ酸配列を変更し得るコドン変化をもたらす従来の変異誘発技法によって作製することができる。ある特定の実施形態において、ヌクレオチド配列の変化は、サイレントである。TIRにおける変更は、例えば、シグナル配列における変更と共に、シャインダルガーノ配列の数またはスペーシングの変更を含むことができる。変異体シグナル配列を作製するための一方法は、シグナル配列のアミノ酸配列を変化させない(すなわち、変化がサイレントである)、コード配列の開始における「コドンバンク」の作製である。これは、各コドンの第3のヌクレオチド位置を変化させることにより達成することができる;その上、ロイシン、セリンおよびアルギニン等、一部のアミノ酸は、バンクの作成において複雑さを加えることができる複数の第1および第2の位置を有する。この変異誘発方法は、Yansuraら(1992年)METHODS: A Companion to Methods in Enzymol.4巻:151〜158頁に詳細に記載されている。
【0172】
一実施形態において、ベクターのセットが、その中のシストロン毎にある範囲のTIR強度で作製される。この限定されたセットは、各鎖の発現レベルの比較と共に、様々なTIR強度組合せ下における所望の抗体産物の収量をもたらす。TIR強度は、Simmonsら、米国特許第5,840,523号に詳細に記載されている通り、レポーター遺伝子の発現レベルを定量化することにより決定することができる。翻訳強度比較に基づき、所望の個々のTIRが選択されて、本発明の発現ベクター構築物において組み合わされる。
【0173】
本発明の抗体の発現に適した原核生物宿主細胞は、グラム陰性またはグラム陽性生物等、古細菌および真正細菌を含む。有用な細菌の例として、Escherichia(例えば、E.coli)、Bacilli(例えば、B.subtilis)、Enterobacteria、Pseudomonas種(例えば、P.aeruginosa)、Salmonella typhimurium、Serratia marcescans、Klebsiella、Proteus、Shigella、Rhizobia、VitreoscillaまたはParacoccusが挙げられる。一実施形態において、グラム陰性細胞が使用される。一実施形態において、E.coli細胞が、本発明のための宿主として使用される。E.coli系統の例として、系統W3110(Bachmann、Cellular and Molecular Biology、2巻(Washington, D.C.:American Society for Microbiology、1987年)、1190〜1219頁;ATCC寄託番号27,325)および遺伝子型W3110 ΔfhuA(ΔtonA)ptr3 lac Iq lacL8 ΔompTΔ(nmpc−fepE)degP41 kanRを有する系統33D3を含むその派生体(米国特許第5,639,635号)が挙げられる。E.coli 294(ATCC31,446)、E.coli B、E.coliλ 1776(ATCC31,537)およびE.coli RV308(ATCC31,608)等、他の系統およびその派生体も適している。これらの例は、限定的ではなく説明的である。定義された遺伝子型を有する上述の細菌のうちいずれかの派生体を構築するための方法は、本技術分野で公知であり、例えば、Bassら、Proteins、8巻:309〜314頁(1990年)に記載されている。細菌の細胞におけるレプリコンの複製能(replicability)を考慮に入れて適切な細菌を選択することが一般に必要である。pBR322、pBR325、pACYC177またはpKN410等、周知のプラスミドが、レプリコンの供給に使用される場合、例えば、E.coli、SerratiaまたはSalmonella種は、宿主として適切に使用することができる。典型的には、宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素を分泌するべきであり、望ましくは、追加的なプロテアーゼ阻害剤を細胞培養において取り込むことができる。
【0174】
b)抗体産生
宿主細胞は、上述の発現ベクターで形質転換され、プロモーターを誘導するため、形質転換体を選択するため、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するための、必要に応じて修飾された従来の栄養培地において培養される。
【0175】
形質転換は、DNAが、染色体外エレメントとしてまたは染色体組み込み体により複製可能となるような、原核生物宿主へのDNAの導入を意味する。使用する宿主細胞に応じて、形質転換は、斯かる細胞に適切な標準技法を使用して行われる。塩化カルシウムを用いたカルシウム処理は、実質的な細胞壁障壁を含有する細菌細胞のために一般に使用される。形質転換のための別の方法は、ポリエチレングリコール/DMSOを用いる。使用されるさらに別の技法は、エレクトロポレーションである。
【0176】
本発明のポリペプチドの産生に使用される原核細胞は、本技術分野で公知の、選択された宿主細胞の培養に適した培地において育成される。適した培地の例として、ルリアブロス(LB)に必要な栄養素補充物質を加えたものが挙げられる。一部の実施形態において、培地は、発現ベクターの構築に基づき選ばれる選択用薬剤も含有して、この発現ベクターを含有する原核細胞の成長を選択的に可能にする。例えば、アンピシリン抵抗性遺伝子を発現する細胞の成長のために、培地にアンピシリンが添加される。
【0177】
炭素、窒素および無機リン酸塩源に加えて任意の必要な補充物質が、単独でまたは複合的窒素源等の別の補充物質もしくは培地との混合物として導入されて、適切な濃度で含まれていてもよい。任意選択で、培養培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリトリトールおよびジチオスレイトールからなる群から選択される1種または複数の還元剤を含有することができる。
【0178】
原核生物宿主細胞は、適した温度で培養される。ある特定の実施形態において、E.coliの成長のため、成長温度は、約20℃から約39℃、約25℃から約37℃の範囲であるか、または約30℃である。培地のpHは、主に宿主生物に応じて、約5〜約9に及ぶいずれかのpHとなり得る。ある特定の実施形態において、E.coliのため、pHは、約6.8〜約7.4または約7.0である。
【0179】
誘導性プロモーターが、本発明の発現ベクターにおいて使用される場合、タンパク質発現は、プロモーターの活性化に適した条件下で誘導される。本発明の一態様において、PhoAプロモーターが、ポリペプチドの転写を制御するために使用される。したがって、形質転換された宿主細胞は、誘導のためのリン酸塩制限培地において培養される。ある特定の実施形態において、リン酸塩制限培地は、C.R.A.P.培地である(例えば、Simmonsら、J. Immunol. Methods(2002年)263巻:133〜147頁を参照)。本技術分野で公知の通り、用いられているベクター構築物に従って、種々の他の誘導因子を使用することができる。
【0180】
一実施形態において、本発明の発現されたポリペプチドは、宿主細胞の周辺質に分泌され、そこから回収される。タンパク質回収は、典型的には、一般に、浸透圧ショック、超音波処理または溶解等の手段による微生物の崩壊に関与する。細胞が崩壊されたら、細胞デブリまたは細胞全体は、遠心分離または濾過によって除去することができる。タンパク質は、例えば、親和性樹脂クロマトグラフィーによってさらに精製することができる。あるいは、タンパク質は、培養培地へと輸送され、そこに単離されてもよい。細胞をこの培養物から除去し、産生されたタンパク質のさらなる精製のために培養上清を濾過および濃縮することができる。発現されたポリペプチドは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)およびウエスタンブロットアッセイ等、一般的に公知の方法を使用してさらに単離および同定することができる。
【0181】
本発明の一態様において、抗体産生は、発酵プロセスにより大量に行われる。様々な大規模フェドバッチ(fed−batch)発酵手順が、組換えタンパク質の産生のために利用できる。大規模発酵は、少なくとも1000リットルの容量、ある特定の実施形態において、約1,000〜100,000リットルの容量を有する。このような発酵槽は、酸素および栄養素、特にグルコースを分布させるための撹拌機羽根車を使用する。小規模発酵は一般に、およそ100リットル以下の容積測定的容量の発酵槽における発酵を指し、約1リットル〜約100リットルに及び得る。
【0182】
発酵プロセスにおいて、タンパク質発現の誘導は、典型的には、細胞が適した条件下で所望の密度、例えば、約180〜220のOD550まで成長した後に開始され、このステージにおいて、細胞は定常期初期にある。本技術分野で公知かつ上述の通り、用いられているベクター構築物に従って、種々の誘導因子を使用することができる。誘導に先立ちより短い期間、細胞を育成することができる。細胞は通常、約12〜50時間誘導されるが、より長いまたはより短い誘導時間を使用してもよい。
【0183】
本発明のポリペプチドの産生収量および質を改善するために、様々な発酵条件を修飾することができる。例えば、分泌された抗体ポリペプチドの適切なアセンブリおよびフォールディングを改善するために、Dsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbDおよび/またはDsbG)またはFkpA(シャペロン活性を有するペプチジルプロリルcis,trans−イソメラーゼ)等、シャペロンタンパク質を過剰発現する追加的なベクターを使用して、宿主原核細胞を同時形質転換することができる。シャペロンタンパク質は、細菌宿主細胞において産生された異種タンパク質の適切なフォールディングおよび溶解度を容易にすることが実証された。Chenら(1999年)J. Biol. Chem.274巻:19601〜19605頁;Georgiouら、米国特許第6,083,715号;Georgiouら、米国特許第6,027,888号;BothmannおよびPluckthun(2000年)J. Biol. Chem.275巻:17100〜17105頁;RammおよびPluckthun(2000年)J. Biol. Chem.275巻:17106〜17113頁;Arieら(2001年)Mol. Microbiol.39巻:199〜210頁。
【0184】
発現された異種タンパク質(特に、タンパク質分解に感受性のタンパク質)のタンパク質分解を最小化するために、タンパク質分解酵素を欠損したある特定の宿主系統を本発明のために使用することができる。例えば、宿主細胞系統を修飾して、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVIおよびこれらの組合せ等、公知の細菌プロテアーゼをコードする遺伝子に遺伝的変異(複数可)を生じることができる。いくつかのE.coliプロテアーゼ欠損系統を利用することができ、例えば、Jolyら(1998年)(上掲);Georgiouら、米国特許第5,264,365号;Georgiouら、米国特許第5,508,192号;Haraら、Microbial Drug Resistance、2巻:63〜72頁(1996年)に記載されている。
【0185】
一実施形態において、タンパク質分解酵素を欠損し、1種または複数のシャペロンタンパク質を過剰発現するプラスミドにより形質転換されたE.coli系統が、本発明の発現系における宿主細胞として使用される。
【0186】
c)抗体精製
一実施形態において、本明細書における産生された抗体タンパク質は、さらに精製されて、さらなるアッセイおよび使用のために実質的に均一な調製物を得る。本技術分野で公知の標準タンパク質精製方法を用いることができる。次の手順は、適した精製手順に例示的である:免疫親和性またはイオン交換カラムにおける分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、DEAE等、シリカまたはカチオン交換樹脂におけるクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈殿および例えば、Sephadex G−75を使用したゲル濾過。
【0187】
一態様において、固相に固定化されたプロテインAが、本発明の抗体産物の免疫親和性精製のために使用される。プロテインAは、抗体のFc領域に高親和性で結合する、Staphylococcus aureas由来の41kDの細胞壁タンパク質である。Lindmarkら(1983年)J. Immunol. Meth.62巻:1〜13頁。プロテインAが固定化される固相は、ガラスもしくはシリカ表面を含むカラム、またはポア制御(controlled pore)ガラスカラムまたはケイ酸カラムであり得る。一部の適用において、カラムは、グリセロール等の試薬でコーティングされて、夾雑物の非特異的接着性を予防する可能性がある。
【0188】
精製の第1のステップとして、上述の細胞培養物に由来する調製物をプロテインA固定化固相にアプライして、プロテインAへの目的の抗体の特異的結合を可能にすることができる。続いて、固相を洗浄して、固相に非特異的に結合した夾雑物を除去する。最後に、溶出により固相から目的の抗体を回収する。
【0189】
真核生物宿主細胞を使用した抗体の作製:
真核生物宿主細胞における使用のためのベクターは一般に、次の非限定的構成成分のうち1種または複数を含む:シグナル配列、複製起点、1種または複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーターおよび転写終結配列。
【0190】
a)シグナル配列構成成分
真核生物宿主細胞における使用のためのベクターは、目的の成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端に特異的な切断部位を有する、シグナル配列または他のポリペプチドを含有することもできる。選択された異種シグナル配列は、宿主細胞により認識およびプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)配列となり得る。哺乳動物細胞発現において、哺乳動物シグナル配列およびウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルが利用できる。斯かる前駆体領域のためのDNAは、抗体をコードするDNAに読み取り枠でライゲーションされる。
【0191】
b)複製起点
一般に、複製起点構成成分は、哺乳動物発現ベクターには必要とされない。例えば、SV40起点は、典型的には、初期プロモーターを含有するという理由でのみ使用することができる。
【0192】
c)選択遺伝子構成成分
発現およびクローニングベクターは、選択可能マーカーとも命名される選択遺伝子を含有することができる。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質もしくは他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートもしくはテトラサイクリンに対する抵抗性を付与する、(b)関連する場合、栄養要求性欠乏を補完する、または(c)複合培地から得ることができない重大な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
【0193】
選択スキームの一例は、宿主細胞の成長を停止させるための薬物を利用する。異種遺伝子による形質転換が成功した細胞は、薬物抵抗性を付与するタンパク質を産生し、これにより、この選択レジメンを生き残る。斯かる優性選択の例は、薬物、ネオマイシン、ミコフェノール酸およびハイグロマイシンを使用する。
【0194】
哺乳動物細胞に適した選択可能マーカーの別の例は、DHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン−Iおよび−II、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等、抗体核酸を取り込む能力のある細胞の同定を可能にするマーカーである。
【0195】
例えば、一部の実施形態において、DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞は先ず、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトレキセート(Mtx)を含有する培養培地において全形質転換体を培養することにより同定される。一部の実施形態において、野生型DHFRが用いられる場合に適切な宿主細胞は、DHFR活性を欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株である(例えば、ATCC CRL−9096)。
【0196】
あるいは、抗体、野生型DHFRタンパク質およびアミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH)等の別の選択可能マーカーをコードするDNA配列で形質転換または同時形質転換された宿主細胞(特に、内在性DHFRを含有する野生型宿主)は、アミノグリコシド系抗生物質、例えば、カナマイシン、ネオマイシンまたはG418等、この選択可能マーカーのための選択用薬剤を含有する培地における細胞成長により選択することができる。米国特許第4,965,199号を参照されたい。宿主細胞は、グルタミンシンテターゼ(GS)を欠損した細胞株を含む、NS0、CHOK1、CHOK1SVまたは派生体を含むことができる。哺乳動物細胞のための選択可能マーカーとしてのGSの使用のための方法は、米国特許第5,122,464号および米国特許第5,891,693号に記載されている。
【0197】
d)プロモーター構成成分
発現およびクローニングベクターは通常、宿主生物によって認識され、目的のポリペプチド(例えば、抗体)をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含有する。プロモーター配列は、真核生物で公知である。例えば、実際ではあらゆる真核生物遺伝子は、転写が開始される部位からおよそ25〜30塩基上流に位置するATリッチ領域を有する。多くの遺伝子の転写開始から70〜80塩基上流に見出された別の配列は、CNCAAT領域であり、Nは、いかなるヌクレオチドでもよい。大部分の真核生物遺伝子の3’端には、コード配列の3’端へのポリAテイルの付加のためのシグナルとなり得るAATAAA配列がある。ある特定の実施形態において、これらの配列のいずれかまたは全てを、真核生物発現ベクターに適切に挿入することができる。
【0198】
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2等)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよびサルウイルス40(SV40)等、ウイルスのゲノムから、あるいは異種哺乳動物プロモーター、例えば、アクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーターから、熱ショックプロモーターから得られるプロモーターによって制御される、ただし、斯かるプロモーターは、宿主細胞系と適合性であること。
【0199】
SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点も含有するSV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIII E制限断片として簡便に得られる。ベクターとしてウシパピローマウイルスを使用して哺乳動物宿主においてDNAを発現するための系は、米国特許第4,419,446号に開示されている。この系の修飾は、米国特許第4,601,978号に記載されている。単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの制御下でのマウス細胞におけるヒトβ−インターフェロンcDNAの発現について記載するReyesら、Nature 297巻:598〜601頁(1982年)も参照されたい。あるいは、ラウス肉腫ウイルス末端反復配列をプロモーターとして使用することができる。
【0200】
e)エンハンサーエレメント構成成分
高等真核生物による本発明の抗体をコードするDNAの転写は、多くの場合、ベクターにエンハンサー配列を挿入することにより増加される。多くのエンハンサー配列が、哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテインおよびインスリン)から現在公知である。しかし典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーが使用されるであろう。例として、複製起点の後方(late side)(bp100〜270)のSV40エンハンサー、ヒトサイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、マウスサイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後方のポリオーマエンハンサーおよびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。真核生物プロモーターの活性化のためのエンハンサーエレメントについて記載するYaniv、Nature 297巻:17〜18頁(1982年)も参照されたい。エンハンサーは、抗体ポリペプチドコード配列に対し5’位または3’位においてベクターにスプライスすることができるが、一般に、プロモーターから5’の部位に位置する。
【0201】
f)転写終結構成成分
真核生物宿主細胞において使用される発現ベクターは、転写の終結およびmRNAの安定化に必要な配列を含有することもできる。斯かる配列は、真核生物またはウイルスDNAまたはcDNAの5’および場合により3’非翻訳領域から一般的に利用できる。このような領域は、抗体をコードするmRNAの非翻訳部分におけるポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含有する。有用な転写終結構成成分の1種は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026およびそこに開示されている発現ベクターを参照されたい。
【0202】
g)宿主細胞の選択および形質転換
本明細書におけるベクターにおけるDNAのクローニングまたは発現に適した宿主細胞は、脊椎動物宿主細胞を含む、本明細書に記載されている高等真核生物細胞を含む。培養(組織培養)における脊椎動物細胞の繁殖は、ルーチン手順となった。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1系列(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胚性腎臓系列(懸濁培養における育成のためにサブクローニングされた293または293細胞、Grahamら、J. Gen Virol.36巻:59頁(1977年));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlaubら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77巻:4216頁(1980年));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol. Reprod.23巻:243〜251頁(1980年));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット(buffalo rat)肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y. Acad. Sci.383巻:44〜68頁(1982年));MRC5細胞;FS4細胞;CHOK1細胞、CHOK1SV細胞または派生体およびヒトヘパトーマ系列(Hep G2)である。
【0203】
宿主細胞は、抗体産生のために上述の発現またはクローニングベクターにより形質転換され、プロモーターを誘導するため、形質転換体を選択するため、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために、必要に応じて修飾された従来の栄養培地において培養される。
【0204】
h)宿主細胞の培養
本発明の抗体の産生に使用される宿主細胞は、種々の培地において培養することができる。HamのF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI−1640(Sigma)およびダルベッコ変法イーグル培地((DMEM)、Sigma)等、市販の培地は、宿主細胞の培養に適する。加えて、Hamら、Meth. Enz.58巻:44頁(1979年)、Barnesら、Anal. Biochem.102巻:255頁(1980年)、米国特許第4,767,704号;同第4,657,866号;同第4,927,762号;同第4,560,655号;もしくは同第5,122,469号;WO90/03430;WO87/00195;または米国再発行特許(U.S. Pat. Re.)30,985に記載されている培地のいずれかを宿主細胞のための培養培地として使用することができる。これらの培地のいずれも、ホルモンおよび/または他の増殖因子(インスリン、トランスフェリンまたは上皮増殖因子等)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸塩等)、バッファー(HEPES等)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジン等)、抗生物質(GENTAMYCIN(商標)薬物等)、微量元素(マイクロモル濃度範囲内の最終濃度で通常存在する無機化合物として定義)ならびにグルコースまたは等価なエネルギー源を必要に応じて補充することができる。他のいずれかの補充物質が、当業者に公知の適切な濃度で含まれていてもよい。温度、pHその他等、培養条件は、発現のために選択された宿主細胞により以前に使用された条件であり、当業者には明らかとなろう。
【0205】
i)抗体の精製
組換え技法を使用する場合、抗体は、細胞内に産生することができる、あるいは培地に直接的に分泌することができる。抗体が、細胞内に産生される場合、第1のステップとして、宿主細胞または溶解された断片のあらゆる粒子状デブリは、例えば、遠心分離または限外濾過により除去することができる。抗体が、培地に分泌される場合、斯かる発現系から得た上清は、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して先ず濃縮することができる。PMSF等、プロテアーゼ阻害剤が、タンパク質分解を阻害するために前述ステップのいずれかに含まれていてよく、抗生物質が、偶発的な夾雑物の成長を予防するために含まれていてよい。
【0206】
細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析および親和性クロマトグラフィーを使用して精製することができ、親和性クロマトグラフィーが、簡便な技法である。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体に存在するいずれかの免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAを使用して、ヒトγ1、γ2またはγ4重鎖に基づく抗体を精製することができる(Lindmarkら、J. Immunol. Methods 62巻:1〜13頁(1983年))。プロテインGは、全マウスアイソタイプおよびヒトγ3に推奨される(Gussら、EMBO J.5巻:1567 1575頁(1986年))。親和性リガンドが付着するマトリックスは、アガロースであってよいが、他のマトリックスも利用できる。ポア制御ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等、機械的に安定的なマトリックスは、アガロースにより達成され得るものよりも速い流速およびより短い処理時間を可能にする。抗体が、CH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker、Phillipsburg、N.J.)が、精製に有用である。イオン交換カラムにおける分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカにおけるクロマトグラフィー、ヘパリンにおけるクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラム等)におけるSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGEおよび硫酸アンモニウム沈殿等、タンパク質精製のための他の技法も、回収しようとする抗体に応じて利用できる。
【0207】
任意の予備的精製ステップ(複数可)の後に、目的の抗体および夾雑物を含む混合物は、例えば、低塩濃度(例えば、約0〜0.25M塩)で行われる約2.5〜4.5の間のpHの溶出バッファーを使用した低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーにより、さらなる精製に付すことができる。
【0208】
一般に、研究、検査および臨床用途における使用のための抗体を調製するための様々な方法論は、本技術分野において十分に確立されており、上述の方法論と一貫しており、および/または当業者によって特定の目的の抗体に適切であると考慮される。
【0209】
非フコシル化抗体の産生
フコシル化の程度が低下した抗体を調製するための方法が本明細書に提供されている。例えば、本明細書において企図される方法として、タンパク質フコシル化が欠損した細胞株の使用(例えば、Lec13 CHO細胞、アルファ−1,6−フコシル基転移酵素遺伝子ノックアウトCHO細胞、β1,4−N−アセチルグルコサミン転移酵素IIIを過剰発現する細胞およびゴルジμ−マンノシダーゼIIをさらに過剰発現する細胞等)および抗体の産生に使用される細胞培養培地におけるフコースアナログ(複数可)の添加が挙げられるがこれらに限定されない。Ripkaら、Arch. Biochem. Biophys.249巻:533〜545頁(1986年);米国特許出願公開第2003/0157108(A1)号、Presta, L;WO2004/056312(A1);Yamane−Ohnukiら、Biotech. Bioeng.87巻:614頁(2004年);および米国特許第8,574,907号を参照されたい。抗体のフコース含量を低下させるための追加的な技法は、米国特許出願公開第2012/0214975号に記載されているGlymaxx技術を含む。抗体のフコース含量を低下させるための追加的な技法は、抗体の産生に使用される細胞培養培地における1種または複数のグリコシダーゼ阻害剤の添加も含む。グリコシダーゼ阻害剤は、α−グルコシダーゼI、α−グルコシダーゼIIおよびα−マンノシダーゼIを含む。一部の実施形態において、グリコシダーゼ阻害剤は、α−マンノシダーゼIの阻害剤である(例えば、キフネンシン)。
【0210】
本明細書において、「コアのフコシル化」は、N結合型グリカンの還元末端におけるN−アセチルグルコサミン(「GlcNAc」)へのフコースの付加(「フコシル化」)を指す。斯かる方法によって産生された抗体およびその組成物も提供される。
【0211】
一部の実施形態において、Fc領域(またはドメイン)に結合した複合N−グリコシド結合型糖鎖のフコシル化が低下される。本明細書において、「複合N−グリコシド結合型糖鎖」は、典型的に、アスパラギン297(Kabatの番号に従う)に結合されるが、複合N−グリコシド結合型糖鎖は、他のアスパラギン残基に連結されてもよい。「複合N−グリコシド結合型糖鎖」は、コア構造の非還元末端にマンノースのみが取り込まれた高マンノース型の糖鎖を除外するが、1)コア構造の非還元末端側が、ガラクトース−N−アセチルグルコサミン(「gal−GlcNAc」とも称される)の1個または複数の分枝を有し、Gal−GlcNAcの非還元末端側が、シアル酸、二分N−アセチルグルコサミンその他を任意選択で有する複合型;または2)コア構造の非還元末端側が、高マンノースN−グリコシド結合型糖鎖および複合N−グリコシド結合型糖鎖の両方の分枝を有するハイブリッド型を含む。
【0212】
一部の実施形態において、「複合N−グリコシド結合型糖鎖」は、コア構造の非還元末端側が、ガラクトース−N−アセチルグルコサミン(「gal−GlcNAc」とも称される)の0、1個または複数の分枝を有し、Gal−GlcNAcの非還元末端側が、シアル酸、二分N−アセチルグルコサミンその他等の構造を任意選択でさらに有する複合型を含む。
【0213】
本方法によると、典型的には、ごく微量のフコースが、複合N−グリコシド結合型糖鎖(複数可)に取り込まれる。例えば、様々な実施形態において、組成物中、抗体の約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満または約1%未満が、フコースによりコアがフコシル化されている。一部の実施形態において、組成物中、抗体の実質的に全てが、フコースによりコアがフコシル化されていない(すなわち、約0.5%未満が、フコシル化されている)。一部の実施形態において、組成物中、抗体の約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、約91%超、約92%超、約93%超、約94%超、約95%超、約96%超、約97%超、約98%超または約99%超が、フコシル化されていない。
【0214】
一部の実施形態において、N−グリコシド結合型炭水化物鎖の実質的に全てが、フコース残基を含有しない(すなわち、約0.5%未満が、フコース残基を含有する)抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、抗体重鎖の少なくとも1または2つがフコシル化されていない抗体が本明細書において提供される。
【0215】
上述の通り、種々の哺乳動物宿主−発現ベクター系を利用して、抗体を発現させることができる。一部の実施形態において、培養培地は、フコースを補充されない。一部の実施形態において、有効量のフコースアナログが、培養培地に添加される。この文脈において、「有効量」は、抗体の複合N−グリコシド結合型糖鎖へのフコース取り込みを、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%または少なくとも約50%減少させるのに十分なアナログの量を指す。一部の実施形態において、本方法によって産生された抗体は、フコースアナログの非存在下で培養された宿主細胞から産生された抗体と比較した場合に、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%または少なくとも約50%のコアがフコシル化されていないタンパク質(例えば、コアのフコシル化が欠如している)を含む。
【0216】
フコースが糖鎖の還元端におけるN−アセチルグルコサミンに結合されていない糖鎖、対、フコースが糖鎖の還元端におけるN−アセチルグルコサミンに結合されている糖鎖の含量(例えば、比)は、例えば、実施例に記載されている通りに決定することができる。他の方法は、ヒドラジン分解または酵素消化(例えば、Biochemical Experimentation Methods 23巻:Method for Studying Glycoprotein Sugar Chain(Japan Scientific Societies Press)、Reiko Takahashi編集(1989年)を参照)、放出された糖鎖の蛍光標識または放射性同位元素標識と、続くクロマトグラフィーによる標識された糖鎖の分離を含む。また、放出された糖鎖の組成は、HPAEC−PAD方法によって鎖を解析することにより決定することができる(例えば、J. Liq Chromatogr.6巻:1557頁(1983年)を参照)(全般的には、米国特許出願公開第2004/0110282号を参照)。
【0217】
IV.組成物
一部の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体のいずれかを含む組成物(例えば、医薬組成物)も本明細書に提供される。一部の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体を含む組成物であって、抗体が、Fc領域と、Fc領域に連結されたN−グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、N−グリコシド結合型炭水化物鎖の約50%未満が、フコース残基を含有する組成物が本明細書において提供される。一部の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体を含む組成物であって、抗体が、Fc領域と、Fc領域に連結されたN−グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、N−グリコシド結合型炭水化物鎖の実質的に全てが、フコース残基を含有しない組成物が本明細書において提供される。
【0218】
任意選択の薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤と、所望の程度の純度を有する活性成分とを混合することにより、貯蔵のための治療用製剤が調製される(Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Lippincott Williams & Wiklins, Pub.、Gennaro編、Philadelphia、Pa.2000年)。許容される担体、賦形剤または安定剤は、用いられている投薬量および濃度ではレシピエントに対し無毒性であり、バッファー、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE、二亜硫酸ナトリウム含む抗酸化剤;保存料、等張化剤(isotonicifier)、安定剤、金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);EDTA等のキレート剤および/または非イオン性界面活性剤を含む。
【0219】
特に、安定性がpH依存性である場合、バッファーを使用して、治療上の有効性を最適化する範囲にpHを制御することができる。バッファーは、約50mM〜約250mMに及ぶ濃度で存在することができる。本発明による使用に適した緩衝剤は、有機および無機酸ならびにこれらの塩の両方を含む。例えば、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酢酸塩である。その上、バッファーは、ヒスチジンおよびTris等のトリメチルアミン塩で構成され得る。
【0220】
保存料を添加して微生物の成長を予防することができ、これは典型的には、約0.2%〜1.0%(w/v)の範囲内で存在する。本発明による使用に適した保存料は、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;ハロゲン化ベンザルコニウム(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、塩化ベンゼトニウム;チメロサール、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール、3−ペンタノールおよびm−クレゾールを含む。
【0221】
「安定剤」として公知の場合もある等張化剤は、組成物における液体の張度を調整または維持するために存在することができる。タンパク質および抗体等、大型の荷電生体分子と共に使用される場合、これは、アミノ酸側鎖の荷電基と相互作用し、これにより、分子間および分子内相互作用の可能性を減らすことができるため、多くの場合「安定剤」と命名される。等張化剤は、他の成分の相対量を考慮に入れつつ、約0.1%〜約25重量%の間または約1〜約5重量%の間のいずれかの量で存在することができる。一部の実施形態において、等張化剤は、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトール等、多価糖アルコール、三価またはより高次の糖アルコールを含む。
【0222】
追加的な賦形剤は、次のうち1種または複数として機能し得る薬剤を含む:(1)増量剤、(2)溶解促進剤(solubility enhancer)、(3)安定剤および(4)変性または容器壁への接着を予防する薬剤。斯かる賦形剤は、次のものを含む:多価糖アルコール(上に列挙);アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リシン、オルニチン、ロイシン、2−フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニン等、アミノ酸;スクロース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース(myoinisitose)、ミオイノシトール(myoinisitol)、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコール等、有機糖または糖アルコール;尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α−モノチオグリセロールおよびチオ硫酸ナトリウム等、含硫還元剤;ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチンまたは他の免疫グロブリン等、低分子量タンパク質;ポリビニルピロリドン等、親水性ポリマー;単糖(例えば、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース);二糖(例えば、ラクトース、マルトース、スクロース);ラフィノース等、三糖;ならびにデキストリンまたはデキストラン等、多糖。
【0223】
非イオン性界面活性剤または洗剤(「湿潤剤」としても公知)は、治療剤の可溶化を助けると共に、撹拌誘導性凝集から治療タンパク質を保護するために存在することができ、これは、活性治療タンパク質または抗体の変性を引き起こすことなく、製剤をせん断表面応力に曝露させることもできる。非イオン性界面活性剤は、約0.05mg/ml〜約1.0mg/mlまたは約0.07mg/ml〜約0.2mg/mlの範囲内で存在する。一部の実施形態において、非イオン性界面活性剤は、約0.001%〜約0.1%w/vまたは約0.01%〜約0.1%w/vまたは約0.01%〜約0.025%w/vの範囲内で存在する。
【0224】
適した非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート(20、40、60、65、80等)、ポロクサマー(polyoxamer)(184、188等)、PLURONIC(登録商標)ポリオール、TRITON(登録商標)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)−20、TWEEN(登録商標)−80等)、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン水素付加ヒマシ油10、50および60、グリセロールモノステアレート、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース(celluose)ならびにカルボキシメチルセルロースを含む。使用することができるアニオン性洗剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムおよびスルホン酸ジオクチルナトリウムを含む。カチオン性洗剤は、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムを含む。
【0225】
製剤は、in vivo投与に使用するためには、無菌でなければならない。製剤は、滅菌濾過膜を通した濾過により滅菌することができる。本明細書における治療用組成物は一般に、無菌アクセスポートを有する容器、例えば、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針により穿刺可能な共栓を有するバイアルに入れられる。
【0226】
投与の経路は、適した方式での長期間に及ぶ単一または複数のボーラスまたは注入、例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、病巣内もしくは関節内経路による注射または注入、局所的投与、吸入または徐放もしくは延長放出手段による等、公知かつ受け入れられた方法に従う。
【0227】
本明細書における製剤は、処置されている特定の適応症の必要に応じて、1種より多くの活性化合物、好ましくは、互いに有害な影響を与えない相補的な活性を有する化合物を含有することもできる。その代わりにまたはそれに加えて、組成物は、細胞傷害性薬剤、サイトカインまたは成長阻害薬剤を含むことができる。斯かる分子は、意図される目的に有効な量で、組み合わせて適切に存在する。
【0228】
V.処置方法
対象においてシグレック−8を発現する細胞によって媒介される疾患を処置または予防するための方法であって、対象に有効量の本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体(例えば、ヒト化抗シグレック−8抗体)またはその組成物を投与するステップを含む方法が、本明細書に提供される。一部の実施形態において、対象(例えば、ヒト患者)は、好酸球媒介性障害と診断された、または好酸球媒介性障害の発症リスクがある。一部の実施形態において、対象(例えば、ヒト患者)は、肥満細胞媒介性障害と診断された、または肥満細胞媒介性障害の発症リスクがある。一部の実施形態において、対象は、好酸球媒介性障害または肥満細胞媒介性障害を有する。
【0229】
好酸球を枯渇または低下させる方法であって、対象に有効量の本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体(例えば、ヒト化抗シグレック−8抗体)を投与するステップを含む方法が、本明細書に提供される。一部の実施形態において、好酸球の枯渇または低下は、抗体による処置後の対象由来の試料(例えば、組織試料)における好酸球集団数を、抗体による処置前の対象由来の試料における好酸球集団数と比較することにより測定される。一部の実施形態において、好酸球の枯渇または低下は、抗体による処置後の対象由来の試料(例えば、組織試料)における好酸球集団数を、抗体処置なしの別の対象由来の試料における好酸球集団数または抗体処置なしの対象由来の試料における平均好酸球集団数と比較することにより測定される。一部の実施形態において、試料は、組織試料(例えば、肺試料、鼻ポリポーシス試料等)である。一部の実施形態において、好酸球の枯渇または低下は、活性化された好酸球のアポトーシスによるものである。好酸球は、IL−5、GM−CSF、IL−33、IFN−γ、TNF−αおよびレプチン等が挙げられるがこれらに限定されない、サイトカインまたはホルモンにより活性化または感作することができる。一部の実施形態において、好酸球の枯渇または低下は、休止した好酸球のアポトーシスによるものである。一部の実施形態において、好酸球の枯渇または低下は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)によるものである。一部の実施形態において、炎症性メディエーターの好酸球産生が、予防または低下される。例示的な炎症性メディエーターとして、活性酸素種、顆粒タンパク質(例えば、好酸球カチオン性タンパク質、主要塩基性タンパク質、好酸球由来神経毒、好酸球ペルオキシダーゼ等)、脂質メディエーター(例えば、PAF、PGE1、PGE2等)、酵素(例えば、エラスターゼ)、増殖因子(例えば、VEGF、PDGF、TGF−α、TGF−β等)、ケモカイン(例えば、RANTES、MCP−1、MCP−3、MCP4、エオタキシン等)およびサイトカイン(例えば、IL−3、IL−5、IL−10、IL−13、IL−15、IL−33、TNF−α等)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0230】
肥満細胞を枯渇または低下させる方法であって、対象に有効量の本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体(例えば、ヒト化抗シグレック−8抗体)を投与するステップを含む方法も、本明細書に提供される。一部の実施形態において、肥満細胞の枯渇または低下は、抗体による処置後の対象由来の試料(例えば、組織試料または生体液試料)における肥満細胞集団数を、抗体による処置前の対象由来の試料における肥満細胞集団数と比較することにより測定される。一部の実施形態において、肥満細胞の枯渇または低下は、抗体による処置後の対象由来の試料(例えば、組織試料または生体液試料)における肥満細胞集団数を、抗体処置なしの別の対象由来の試料における肥満細胞集団数または抗体処置なしの対象由来の試料における平均肥満細胞集団数と比較することにより測定される。一部の実施形態において、試料は、組織試料(例えば、皮膚試料、肺試料、骨髄試料、鼻ポリポーシス試料等)である。一部の実施形態において、試料は、生体液試料(例えば、血液試料、気管支肺胞洗浄液試料および鼻洗浄液試料)である。一部の実施形態において、肥満細胞の枯渇または低下は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)によるものである。一部の実施形態において、肥満細胞の枯渇または低下は、肥満細胞から産生される予め形成または新たに形成された炎症性メディエーターの低下または予防である。例示的な炎症性メディエーターとして、ヒスタミン、N−メチルヒスタミン、酵素(例えば、トリプターゼ、キマーゼ、カテプシン(cathespin)G、カルボキシペプチダーゼ等)、脂質メディエーター(例えば、プロスタグランジンD2、プロスタグランジンE2、ロイコトリエンB4、ロイコトリエンC4、血小板活性化因子、11−ベータ−プロスタグランジンF2等)、ケモカイン(例えば、CCL2、CCL3、CCL4、CCL11(すなわち、エオタキシン)、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL10等)およびサイトカイン(例えば、IL−3、IL−4、IL−5、IL−15、IL−33、GM−CSF、TNF等)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0231】
対象においてシグレック−8を発現する肥満細胞を枯渇させる方法であって、対象に有効量の本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体(例えば、ヒト化抗シグレック−8抗体)を投与するステップを含み、抗シグレック−8抗体が、ADCC活性によりシグレック−8を発現する肥満細胞を死滅させる方法も、本明細書に提供される。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、処置前のベースラインレベルと比較した場合に、対象から得られる試料におけるシグレック−8を発現する肥満細胞の少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%を枯渇させる。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、処置前のベースラインレベルと比較した場合に、対象から得られる試料におけるシグレック−8を発現する肥満細胞の少なくとも約20%を枯渇させる。一部の実施形態において、肥満細胞の枯渇または死滅は、抗体による処置後の対象由来の試料(例えば、組織試料または生体液試料)における肥満細胞集団数を、抗体による処置前の対象由来の試料における肥満細胞集団数と比較することにより測定される。一部の実施形態において、肥満細胞の枯渇または死滅は、抗体による処置後の対象由来の試料(例えば、組織試料または生体液試料)における肥満細胞集団数を、抗体処置なしの別の対象由来の試料における肥満細胞集団数または抗体処置なしの対象由来の試料における平均肥満細胞集団数と比較することにより測定される。一部の実施形態において、試料は、組織試料(例えば、皮膚試料、肺試料、骨髄試料、鼻ポリポーシス試料等)である。一部の実施形態において、試料は、生体液試料(例えば、血液試料、気管支肺胞洗浄液試料および鼻洗浄液試料)である。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、ADCC活性を改善するように操作された。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、ADCC活性を改善するFc領域における少なくとも1個のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、抗体の重鎖の少なくとも1または2つは、フコシル化されていない。一部の実施形態において、肥満細胞の枯渇または死滅は、肥満細胞から産生される予め形成または新たに形成された炎症性メディエーターの低下または予防である。例示的な炎症性メディエーターとして、ヒスタミン、N−メチルヒスタミン、酵素(例えば、トリプターゼ、キマーゼ、カテプシンG、カルボキシペプチダーゼ等)、脂質メディエーター(例えば、プロスタグランジンD2、プロスタグランジンE2、ロイコトリエンB4、ロイコトリエンC4、血小板活性化因子、11−ベータ−プロスタグランジンF2等)、ケモカイン(例えば、CCL2、CCL3、CCL4、CCL11(すなわち、エオタキシン)、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL10等)およびサイトカイン(例えば、IL−3、IL−4、IL−5、IL−13、IL−15、IL−33、GM−CSF、TNF等)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0232】
肥満細胞媒介性活性を阻害する方法であって、対象に有効量の本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体(例えば、ヒト化抗シグレック−8抗体)を投与するステップを含む方法も、本明細書に提供される。一部の実施形態において、肥満細胞媒介性活性の阻害は、抗体による処置後の対象由来の試料(例えば、組織試料または血液試料)における肥満細胞媒介性活性を、抗体による処置前の対象由来の試料における肥満細胞媒介性活性と比較することにより測定される。一部の実施形態において、肥満細胞媒介性活性の阻害は、抗体による処置後の対象由来の試料(例えば、組織試料または生物学的試料)における肥満細胞媒介性活性を、抗体処置なしの別の対象由来の試料における肥満細胞媒介性活性または抗体処置なしの対象由来の試料における平均肥満細胞媒介性活性と比較することにより測定される。一部の実施形態において、試料は、組織試料(例えば、皮膚試料、肺試料、骨髄試料、鼻ポリポーシス試料等)である。一部の実施形態において、試料は、生体液試料(例えば、血液試料、気管支肺胞洗浄液試料および鼻洗浄液試料)である。一部の実施形態において、肥満細胞媒介性活性の阻害は、肥満細胞脱顆粒の阻害である。一部の実施形態において、肥満細胞媒介性活性の阻害は、気道平滑筋収縮の阻害である。一部の実施形態において、肥満細胞媒介性活性の阻害は、肥満細胞におけるカルシウムフラックスの阻害である。一部の実施形態において、肥満細胞媒介性活性の阻害は、肥満細胞からの予め形成または新たに形成された炎症性メディエーターの放出の阻害である。例示的な炎症性メディエーターとして、ヒスタミン、N−メチルヒスタミン、酵素(例えば、トリプターゼ、キマーゼ、カテプシンG、カルボキシペプチダーゼ等)、脂質メディエーター(例えば、プロスタグランジンD2、プロスタグランジンE2、ロイコトリエンB4、ロイコトリエンC4、血小板活性化因子、11−ベータ−プロスタグランジンF2等)、ケモカイン(例えば、CCL2、CCL3、CCL4、CCL11(すなわち、エオタキシン)、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL10等)およびサイトカイン(例えば、IL−3、IL−4、IL−5、IL−13、IL−15、IL−33、GM−CSF、TNF等)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0233】
疾患の予防または処置のため、活性薬剤の適切な投薬量は、上に定義されている通り、処置しようとする疾患の種類、疾患の重症度および経過、薬剤が予防または治療目的のいずれで投与されるか、以前の治療法、対象の臨床歴および薬剤に対する応答、ならびに担当医の裁量に依存するであろう。薬剤は、一度に、または一連の処置にわたって対象に適切に投与される。本明細書に記載されている方法の一部の実施形態において、記載されている抗シグレック−8抗体の投与間の間隔は、約1ヶ月間またはそれより長い。一部の実施形態において、投与間の間隔は、約2ヶ月間、約3ヶ月間、約4ヶ月間、約5ヶ月間、約6ヶ月間またはそれより長い。本明細書において、投与間の間隔は、ある抗体投与と次の抗体投与との間の期間を指す。本明細書において、約1ヶ月間の間隔は、4週間を含む。したがって、一部の実施形態において、投与間の間隔は、約4週間、約8週間、約12週間、約16週間、約20週間、約24週間またはそれより長い。一部の実施形態において、処置は、複数の抗体投与を含み、投与間の間隔は変動し得る。例えば、第1の投与と第2の投与との間の間隔は、約1ヶ月間であり、その後の投与間の間隔は、約3ヶ月間である。一部の実施形態において、第1の投与と第2の投与との間の間隔は、約1ヶ月間であり、第2の投与と第3の投与との間の間隔は、約2ヶ月間であり、その後の投与間の間隔は、約3ヶ月間である。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、平坦な(flat)用量で投与される。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、用量当たり約150〜約450mgの投薬量で対象に投与される。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、用量当たり約150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mgおよび450mgのいずれかの投薬量で対象に投与される。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、約0.1mg/kg〜約10mg/kgまたは約1.0mg/kg〜約10mg/kgの投薬量で対象に投与される。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、約0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3.0mg/kg、3.5mg/kg、4.0mg/kg、4.5mg/kg、5.0mg/kg、5.5mg/kg、6.0mg/kg、6.5mg/kg、7.0mg/kg、7.5mg/kg、8.0mg/kg、8.5mg/kg、9.0mg/kg、9.5mg/kgまたは10.0mg/kgのいずれかの投薬量で対象に投与される。上述の投薬頻度のいずれを使用してもよい。
【0234】
本明細書において企図される処置方法は、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体による、好酸球媒介性障害および/または肥満細胞媒介性障害の処置である。好酸球媒介性障害は、好酸球遊走、走化性、発生または顆粒化に関連する障害または疾患を含む。同様に、肥満細胞媒介性障害は、肥満細胞遊走、走化性、作製または顆粒化に関連する障害または疾患を含む。本発明の製剤で処置可能な好酸球媒介性障害および/または肥満細胞媒介性障害は、喘息、アレルギー性鼻炎、鼻ポリポーシス、アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹(例えば、慢性特発性蕁麻疹および慢性自発性蕁麻疹)、肥満細胞症、好酸球性白血病および好酸球増加症候群を含む。本発明の製剤で処置可能な好酸球媒介性障害および/または肥満細胞媒介性障害は、乏顆粒球型喘息、急性または慢性気道過敏症、好酸球性食道炎、チャーグ・ストラウス症候群、サイトカインに関連する炎症、シグレック−8を発現する細胞に関連する炎症、シグレック−8を発現する細胞に関連する悪性病変、物理的蕁麻疹、寒冷蕁麻疹、圧迫性蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、食物アレルギーおよびアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)も含む。
【0235】
本明細書における方法の一部の実施形態において、本明細書に提供される抗シグレック−8抗体は、アレルギー反応の1種または複数の症状を阻害する。一部の実施形態において、アレルギー反応は、I型過敏症反応である。
【0236】
アレルギー性鼻炎結膜炎または枯草熱としても公知のアレルギー性鼻炎は、吸入性アレルゲンに対するアトピー性反応の最も一般的な症状発現であり、その重症度および持続時間は多くの場合、アレルゲンへの曝露の強度および長さと相関する。これは慢性疾患であり、いかなる年齢で最初に出現することもできるが、発病は通常、小児期または青年期の間である。典型的な発作は、大量の水様鼻漏、発作的なくしゃみ、鼻閉塞ならびに鼻部および口蓋のそう痒からなる。後鼻腔粘液ドレナージも、咽頭炎、咳払いおよび咳を引き起こす。結膜および眼瞼の激しいそう痒、発赤、流涙ならびに羞明を伴うアレルギー性眼瞼結膜炎の症状も存在し得る。重度の発作は、多くの場合、全身性倦怠感、脱力感、疲労、場合によっては、激しいくしゃみ期間の後の筋痛を伴う。
【0237】
可逆性閉塞性気道疾患としても公知の喘息は、呼吸刺激物質および気管支収縮剤化学物質に対する気管気管支樹の応答性亢進によって特徴付けられ、自発的にまたは処置により可逆性である喘鳴、呼吸困難、胸部絞扼感および咳の発作を生じる。これは、気道全体に関与する慢性疾患であるが、時折の軽度一過性エピソードから重度慢性の生命に関わる気管支閉塞へと重症度が変動する。喘息発作の身体的兆候は、頻呼吸、聞き取れる喘鳴および呼吸副筋の使用を含む。末梢血および鼻分泌物における好酸球のレベル上昇と同様に、速い脈拍および血圧上昇も典型的に存在する。喘息およびアトピーは共存し得るが、喘息患者の約半数のみが、同様にアトピー性であり、さらにより少ないパーセンテージのアトピー患者が喘息も有する。しかし、喘息は、特に小児期において、非アトピー性個体よりも頻繁にアトピー性個体の間で起こるという点において、アトピーおよび喘息は、完全に無関係とは限らない。喘息はさらに、2種のサブグループ、外因性喘息および内因性喘息へと歴史的に分類されている。加えて、喘息は、気道の慢性炎症、異なる患者間の頻度で環境的トリガーに応答して変動する急性増悪に関与する。重症例において、気道の慢性再造形が起こり得る。
【0238】
アレルギー性、アトピー性または免疫性喘息としても公知の外因性喘息は、通常、乳児期または小児期である年少期に喘息を一般に発症する患者の説明である。湿疹またはアレルギー性鼻炎を含むアトピーの他の症状発現が多くの場合共存する。喘息性発作は、花粉の季節において、動物の存在下で、またはハウスダスト、羽毛枕もしくは他のアレルゲンへの曝露下で起こり得る。皮膚検査は、原因となるアレルゲンに対する陽性膨疹・紅斑反応を示す。興味深いことに、血清総IgE濃度は頻繁に上昇するが、正常の場合もある。非アレルギー性または特発性(idopathic)喘息としても公知の内因性喘息は、典型的には、顕性呼吸感染後に成人期において最初に起こる。症状は、花粉の季節または他のアレルゲンへの曝露とは無関係な慢性または再発性気管支閉塞を含む。皮膚検査は、通常のアトピー性アレルゲンに対し陰性であり、血清IgE濃度は正常である。追加的な症状は、痰血液および好酸球増加症を含む。本特許出願の目的のため、「好酸球媒介性障害」は、アレルギー性および非アレルギー性喘息の両方を含む。一部の実施形態において、好酸球媒介性障害(複数可)および/または肥満細胞媒介性障害(複数可)の対象は、吸入コルチコステロイド、短時間作用型β2アゴニスト、長時間作用型β2アゴニストまたはこれらの組合せによって適切に制御されていない喘息を患う。
【0239】
湿疹、神経皮膚炎、アトピー性湿疹またはベニエ痒疹としても公知のアトピー性皮膚炎は、アトピーの家族性および免疫性特色を有する患者のサブセットに特異的な一般的な慢性皮膚障害である。本質的特色は、ある特定の部位に偏向した特徴的な対称的に分布した皮膚噴出物を誘導する、そう痒性皮膚炎症性応答である。アトピー性皮膚炎は、アレルギー性鼻炎および喘息ならびに高IgEレベル、皮膚炎の重症度と関連するため、皮膚型のアトピーとして分類されるが、しかし、皮膚検査におけるアレルゲンへの曝露と必ずしも相関するとは限らず、脱感作(他のアレルギー性疾患とは異なり)は、有効な処置ではない。高血清IgEは、アレルギー性喘息の診断にとって確証的であるが、正常レベルは、これを排除しない。疾患の発病は、いかなる年齢で起こることもでき、病変は、紅斑性浮腫性丘疹またはプラークと鱗屑と共に急性的に始まる。そう痒は、水疱(weeping)および痂皮、続いて慢性苔癬化をもたらす。細胞レベルでは、急性病変は、浮腫性(edemous)であり、真皮に単核細胞、CD4リンパ球が浸潤する。好中球、好酸球、形質細胞および好塩基球は稀であるが、脱顆粒肥満細胞が存在する。慢性病変は、上皮肥厚化、角化症および不全角化を特色とし、真皮に単核細胞、ランゲルハンス細胞および肥満細胞が浸潤する。小神経の神経周膜の関与を含む、線維症の病巣部分も存在し得る。
【0240】
蕁麻疹および血管浮腫は、表在性皮膚血管におけるヒスタミン刺激された受容体に起因する身体的腫脹、紅斑およびそう痒を指し、全身性アナフィラキシーの特質的皮膚特色である。全身性アナフィラキシーは、薬物、昆虫毒または食物に起因する、複数の臓器で同時に起こるIgE媒介性反応の発生である。これは、アレルゲン誘導性肥満細胞負荷IgEによって突然に引き起こされ、様々な生体臓器の機能における深刻な生命に関わる変更をもたらす。血管崩壊、急性気道閉塞、皮膚血管拡張および浮腫ならびに胃腸管および尿生殖器筋痙攣が、ほぼ同時に起こるが、必ずしも同じ程度で起こるとは限らない。アナフィラキシーの病態は、血管浮腫および過膨脹した肺を含み、粘膜が気道を塞ぎ、限局的無気肺となる。細胞レベルでは、肺は、急性喘息発作のときと同様と思われ、気管支粘膜下腺の過分泌、粘膜および粘膜下浮腫、気管支周囲血管性うっ血ならびに気管支壁における好酸球増加症を伴う。肺浮腫および出血が存在し得る。気管支筋痙攣、過膨脹、さらには肺胞の破裂も存在し得る。ヒトアナフィラキシーの重要な特色は、喉頭、気管、喉頭蓋および下咽頭の粘膜固有層における浮腫、血管性うっ血および好酸球増加症を含む。アレルゲンへの曝露は、経口摂取、注射、吸入または皮膚もしくは粘膜との接触によるものとなり得る。反応は、アレルゲンへの曝露後の数秒または数分以内に始まる。最初に恐怖または切迫した破滅の感覚、続いて急速に、1種または複数の標的臓器系:心血管、呼吸、皮膚または胃腸管における症状が生じ得る。アナフィラキシーの原因となるアレルゲンは、アトピーと一般的に関連するアレルゲンとは異なる。食物、薬物、昆虫毒またはラテックスは、一般的な供給源である。食物アレルゲンは、甲殻類、軟体動物(例えば、ロブスター、エビ、カニ)、魚類、マメ科植物(例えば、ピーナッツ、エンドウマメ、豆、甘草)、種子(例えば、ゴマ、綿実、キャラウェイ、マスタード、亜麻仁、ヒマワリ)、堅果、液果、卵白、ソバおよびミルクに存在するアレルゲンを含む。薬物アレルゲンは、異種タンパク質およびポリペプチド、多糖ならびにハプテン薬に存在するアレルゲンを含む。昆虫アレルゲンは、ミツバチ、イエロー・ジャケット(yellow jacket)、スズメバチ(hornet)、カリバチ(wasp)およびアカヒアリを含むHymenoptera昆虫を含む。エピネフリンは、アナフィラキシーのための典型的な処置であるが、抗ヒスタミン薬または他のヒスタミン遮断薬が、典型的に、重症度の低い蕁麻疹または血管浮腫(angioedemic)反応のために処方される。
【0241】
鼻ポリポーシスは、鼻腔へと成長して飛び出す炎症組織によって特徴付けられる、上気道の慢性炎症性疾患であり、正確な病因は不明であるが、成人の1〜5%の間の有病率を有することが公知である(Settipane G A:Epidemiology of nasal polyps.、Allergy Asthma Proc、1996年、17巻:231〜236頁)。鼻ポリポーシスは、典型的には、20歳またはそれより年上の男性において呈し、鼻閉塞、嗅覚鈍麻および再発性感染を引き起こし、通年性アレルギー性鼻炎よりも有意に大きい影響をクオリティ・オブ・ライフに与える(Liら、Characterizing T−Cell Phenotypes in Nasal Polyposis in Chinese Patients、J Investig Allergol Clin Immunol、2009年;19巻(4号):276〜282頁)。鼻ポリポーシスの全患者の最大3分の1が、喘息であると報告されるが、喘息患者の7%のみが、鼻ポリポーシスを有する。鼻ポリポーシスに関係付けられる優勢である細胞型は、好酸球および肥満細胞を含む。
【0242】
VI.製造品またはキット
別の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体を含む、製造品またはキットが提供される。製造品またはキットは、本発明の方法における抗体の使用のための説明書をさらに含むことができる。よって、ある特定の実施形態において、製造品またはキットは、個体における好酸球媒介性障害および/または肥満細胞媒介性障害を処置または予防するための方法であって、有効量の抗シグレック−8抗体を個体に投与するステップを含む方法における抗シグレック−8抗体の使用のための説明書を含む。ある特定の実施形態において、個体は、ヒトである。一部の実施形態において、個体は、喘息、アレルギー性鼻炎、鼻ポリポーシス、アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹、肥満細胞症、好酸球性白血病および好酸球増加症候群からなる群から選択される疾患を有する。ある特定の実施形態において、個体は、乏顆粒球型喘息、急性または慢性気道過敏症、好酸球性食道炎、チャーグ・ストラウス症候群、サイトカインに関連する炎症、シグレック−8を発現する細胞に関連する炎症、シグレック−8を発現する細胞に関連する悪性病変、物理的蕁麻疹、寒冷蕁麻疹、圧迫性蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、食物アレルギーおよびアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)からなる群から選択される疾患を有する。
【0243】
製造品またはキットは、容器をさらに含むことができる。適した容器は、例えば、ボトル、バイアル(例えば、デュアルチャンバーバイアル)、シリンジ(シングルまたはデュアルチャンバーシリンジ等)および試験管を含む。容器は、ガラスまたはプラスチック等、種々の材料でできていてよい。容器は、製剤を保持する。
【0244】
製造品またはキットは、容器に貼られたまたは付随する、製剤の再構成および/または使用に関する指示を示すことができるラベルまたは添付文書をさらに含むことができる。ラベルまたは添付文書は、製剤が、個体における好酸球媒介性障害および/または肥満細胞媒介性障害を処置または予防するための、皮下、静脈内または他の様式の投与に有用であるまたは意図されることをさらに示すことができる。製剤を保持する容器は、使い捨てバイアルであっても多重使用バイアルであってもよく、これは、再構成された製剤の反復投与を可能にする。製造品またはキットは、適した希釈液を含む第2の容器をさらに含むことができる。製造品またはキットは、他のバッファー、希釈液、フィルター、針、シリンジおよび添付文書と使用説明書を含む、商業的、治療的および使用者の見地から望ましい他の材料をさらに含むことができる。
【0245】
具体的な実施形態において、本発明は、単一用量投与単位のためのキットを提供する。斯かるキットは、シングルまたはマルチチャンバーの両方の予め充填されたシリンジを含む、治療抗体の水性製剤の容器を含む。例示的な予め充填されたシリンジは、Vetter GmbH、ドイツ、ラーフェンスブルクから入手できる。
【0246】
本明細書における製造品またはキットは、第2の医薬を含む容器を任意選択でさらに含み、この場合、抗シグレック−8抗体が、第1の医薬であり、この物品またはキットは、有効量で第2の医薬で対象を処置するための、ラベルまたは添付文書における説明書をさらに含む。例示的な第2の医薬は、抗IgE抗体、抗ヒスタミン薬、気管支拡張薬、グルココルチコイド、NSAID、うっ血除去薬、咳止め薬、鎮痛薬、TNF−アンタゴニスト、インテグリンアンタゴニスト、免疫抑制剤、IL−4アンタゴニスト、IL−13アンタゴニスト、二重IL−4/IL−13アンタゴニスト、DMARD、B細胞表面マーカーに結合する抗体および/またはBAFFアンタゴニストとなり得る。
【0247】
別の実施形態において、自動注射装置における投与のための、本明細書に記載されている製剤を含む製造品またはキットが本明細書において提供される。自動注射器は、起動すると、患者または管理者の追加的な必要な動作なしでその内容物を送達する注射装置として説明することができる。送達速度が一定でなければならず、送達時間が僅かな間よりも長い場合、これは、治療用製剤のセルフメディケーションに特に適する。
【0248】
本発明は、次の実施例を参照することによって、より十分に理解されるであろう。しかし、実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈するべきではない。本明細書に記載されている実施例および実施形態が、単なる説明目的であり、これを踏まえた様々な修正または変更が、当業者に示唆され、本願および添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれるべきであることが理解される。
【実施例】
【0249】
シグレック(シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン)は、主に白血球上に存在する1回膜貫通細胞表面タンパク質である。シグレックファミリーのメンバーであるシグレック−8は、新規ヒト好酸球タンパク質を同定する試みの一環として最初に発見された。ヒト好酸球による発現に加えて、これは、肥満細胞によっても発現される。シグレック−8は、硫酸化グリカン、6’−スルホ−シアリルルイスXを認識し、肥満細胞機能を阻害することが示された細胞内免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)ドメインを含有する。シグレック−8に対するマウス抗体、2E2および2C4抗体は、米国特許第8,207,305号;米国特許第8,197,811号、米国特許第7,871,612号および米国特許第7,557,191号に記載されている。マウス抗シグレック−8 2C4抗体の重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列は、例えば、米国特許第8,207,305号においてそれぞれ配列番号2および配列番号4として見出すことができる。
【0250】
(実施例1)
キメラ抗シグレック−8抗体の作製および特徴付け
マウス2E2抗体およびマウス2C4抗体からキメラ抗体を作製し、その後、ヒトシグレック−8への結合活性に関して解析した。
【0251】
方法および結果
キメラ2E2抗体(ch2E2)およびキメラ2C4抗体(ch2C4)の作製
キメラ2E2抗体(ch2E2)の作製のため、RNeasy Miniキット(Qiagen)を使用して、急速凍結したマウスハイブリドーマ2E2細胞ライセートを処理して、製造元のプロトコールに従って全RNAを単離した。製造元のプロトコールに従って第1鎖cDNA合成キット(GE Life Sciences)を使用して、単離されたRNAの3μg試料を逆転写して2E2 cDNAを産生した。2E2 cDNAをその後、Phusion Flash High−Fidelity PCRマスターミックス(Thermo Scientific)を使用したPCRにより増幅し、PCR反応物における配列を確認した。免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)cDNAおよびカッパ軽鎖可変領域(VL)を、Phusion High−Fidelity PCRマスターミックスを使用してPCR増幅した。各PCR反応の結果は、単一の増幅産物であり、製造元のプロトコールに従ってQIAquick PCR精製キット(Qiagen)を使用してこれを精製し、免疫グロブリン鎖毎の配列を得た。カッパ軽鎖可変領域のコンセンサス配列を2E2 VKと命名し、重軽鎖可変領域のコンセンサス配列を2E2 VHと命名した。2E2 VKタンパク質配列は、GlnがGluに置き換えられた第1の残基を除いて、マウス2C4 IgG1抗体(Kiklyら、J. Allergy Clin Immunol.、2000年;105巻:1093〜1100頁を参照)と同一であったが、2E2 VHタンパク質配列は、2C4と完全に同一であった。
【0252】
キメラ発現ベクターの構築は、リガーゼ非依存的クローニングを使用した、IgG/カッパ定常領域ベクターへの増幅された可変領域のクローニングを必要とした。簡潔に説明すると、pCMVベクターをBfuA1(BsPM1)で消化し、消化されたベクターをゲル電気泳動によって精製し、T4 DNAポリメラーゼおよび100mM dATPとのインキュベーションにより、ベクターにおける適合性オーバーハングを作製した。挿入物のため、リーダー配列の3’端、すなわち、フォワードプライマーまたは定常領域(IgG1またはカッパ)の開始、すなわち、リバースプライマーと、続く可変領域(各方向における)の開始を含有するプライマーを用いて、2E2 cDNAから抗体配列をPCRにより増幅した。PCR精製キット(Qiagen)を使用して、増幅された挿入物を精製し、T4 DNAポリメラーゼおよび100mM dTTPとのインキュベーションにより、挿入物における相補的オーバーハングを作製した。ベクターおよび挿入物を室温でインキュベートし、化学的にコンピテントなTOP10細菌(Invitrogen)の形質転換に使用し、この細菌をその後、カナマイシンを含有する培養プレートで平板培養した。数個のクローンを単離し、PCRによってコロニーをスクリーニングした。正確なサイズのPCR産物を含有するクローンを選択し、ミニプレップキット(Qiagen)を使用してDNAを単離し、DNAを配列決定した。
【0253】
キメラ2C4抗体(ch2C4)の作製のため、2C4重鎖可変領域(VH)およびカッパ軽鎖可変領域(VK)を合成し(GeneScript)、キメラ2E2抗体のクローニングに使用した同じ方法を適用した。Expi293発現系キット(Invitrogen)に提供されるExpiFectamine 293試薬を使用して、製造元のプロトコールに従い、Expi293トランスフェクション培地(Invitrogen)および抗生物質において成長するExpi293懸濁細胞(ヒト胚性腎臓細胞)を、ch2E2重鎖およびch2E2カッパ軽鎖をコードする構築物またはch2C4重鎖およびch2C4カッパ軽鎖をコードする構築物(各1μg DNA)でコトランスフェクトした。6ウェルプレート内の2ml成長培地において細胞を7日間育成し、その後、培地を収集し、ELISAにより組換えタンパク質発現に関してアッセイした。
【0254】
キメラ抗体のシグレック−8結合活性
キメラ2E2およびキメラ2C4 IgG1K抗体による組換えヒトシグレック−8細胞外ドメイン(ECD)の結合をELISAにより測定した。シグレック−8結合アッセイのため、ウェル当たり30μLの0.4μg/mLシグレック−8 ECDで一晩4℃にてコーティングし、続いて洗浄バッファー(0.1%Tween20)におけるウェル洗浄によりコーティング溶液を除去し、90μLの5%BSA/TBS溶液で2時間室温にてブロッキングすることにより、384ウェルSpectraPlate(Perkin Elmer)を調製した。0.2%BSA/TBSにおけるキメラ抗体(ch2E2またはch2C4)またはマウス抗体(m2E2またはm2C4)の3倍系列希釈(出発濃度は5000ng/mL)を、各コーティングされたウェルに添加した。このプレートを2時間室温でインキュベートし、ウェルをその後洗浄し、続いて、0.2%BSA/TBS溶液に希釈したヤギ抗ヒトFcペルオキシダーゼコンジュゲート(1:10000希釈)または抗マウスFcペルオキシダーゼコンジュゲート(1:30000希釈)を添加した。プレートを45分間室温でインキュベートし、続いて洗浄し、各ウェルに30μL K−blue HRP基質(SkyBio Ltd)を添加した。室温15分間のインキュベーション後に、各ウェルへの10μLのRed Stop溶液(SkyBio Ltd)の添加により反応を停止させた。ELISAリーダーPHERAStar FS(BMG Labtech)を使用して、650nmにおける実験試料の光学密度を読み取った。
【0255】
両方のキメラ抗体が、匹敵するEC
50値で完全シグレック−8 ECDに結合した。キメラ抗体ch2E2は、マウス抗体m2E2と比較した場合に、より低いEC
50値でシグレック−8 ECDに結合した(表2)。
【表2】
【0256】
(実施例2)
ヒト化抗シグレック−8抗体の作製および特徴付け
キメラ抗体2E2およびキメラ抗体2C4の配列を使用して、マウス2E2抗体のヒト化バージョンを設計した。
【0257】
方法および結果
ヒト化抗シグレック−8抗体の設計
International Immunogenetics Database 2009(Lefranc, MP.、Nucleic Acid Res.、2003年、31巻(1号):307〜10頁)およびKabat Database Release 5 of Sequences of Proteins of Immunological Interest(最終アップデート1999年11月17日)(Kabatら、NIH National Technical Information Service、1991年、1〜3242頁)から得たヒトおよびマウス免疫グロブリンのタンパク質配列を使用して、Kabatアライメントにおけるヒト免疫グロブリン配列のデータベースを編集した。編集されたデータベースは、10,906種のVHおよび2,912種のVK配列を含有した。
【0258】
Discovery Studioパッケージ(Accelrys,Inc.)に含まれるModellerプログラム(Eswarら、Curr. Protoc. Bioinformatics、2006年、第5章:第5.6節)を使用して、マウス抗体2C4可変領域の相同性モデルが計算された。抗体pdb構造データベース(Accelrys,Inc.)のBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)解析によって決定される通り、1a7O.pdb、1dqd.pdbおよび1ORS.pdbの原子座標は、それぞれVH、VLおよび骨格/界面のための最高フレームワーク同一性配列鋳型であった。これらの鋳型を使用して、フレームワークの30種の初期モデルを作製し、最低エネルギーモデルを使用して、20種のループモデル(全CDRループが含まれる)を作製し、Kabat定義を使用してその5種の最良のループ鋳型により、最終マウス2C4モデルを最終的に作製した。
【0259】
ヒト化は、適したヒトV領域の同定を必要とした。Gibbs配列解析プログラム(MRCT)を使用して、様々な選択判断基準を使用して、2C4 VHおよびVKタンパク質配列によりヒトVHおよびVKデータベースを照合した。Discovery Studioプログラム(Accelrys)を使用して、マウス抗体2C4の最終相同性モデルにおけるCDR残基の4Å内のフレームワーク(FW)残基(Kabat定義)を同定し、「4Å CDRエンベロープ」と命名した。2C4 VHに対し高い4Å CDRエンベロープおよび/またはVCI同一性を保有した、2C4とCDR1、2および3長さ同一性を共有するヒトVH配列は存在しなかった。AF471521は、鍵となるフレームワーク残基(19/24 4Åエンベロープおよび18/22 VCI)の最高同一性スコアを有する、14残基のCDR3サイズを有する次善の候補であったが、他の配列は、追加的な差を有し、そのためより低い優先順位になった。しかし、AF471521は、その生殖系列VH遺伝子X92218から11個の体細胞変異を有した。体細胞変異を軽減するため、生殖系列とは異なるおよび/またはマウスにおいて保存されていない、いずれかのフレームワーク残基をヒト生殖系列配列に復帰変異させた。したがって、6個のフレームワーク残基を生殖系列に復帰変異させ、生殖系列と異なる残る5残基は、鍵となるフレームワーク残基であり、マウス配列と同一であった。
【0260】
適したアクセプターヒトフレームワークは、2C4抗体の相同性モデルを使用して同定されたため、2E2抗体のCDRをアクセプターヒトフレームワークにグラフトすることにより、合成タンパク質およびDNA配列を設計した。2E2RHAの初期設計は、2E2 VH由来のCDR1、2および3をAF471521のアクセプターFWにグラフトすることであった。AF471521のFW配列への2E2 VH CDRのインターカレーション(灰色の陰)は、初期ヒト化バリアントの2E2RHAの設計をもたらした(
図1)。Kabatの24、48、49、67および68位における5個の4ÅのCDRエンベロープ/VCI残基は、2E2RHAにおいて保存されておらず、これらをヒト化バージョン2E2RHBにおいてマウスの等価な残基に復帰変異させた、または次のバリアントにおいて一度に1種を変異させた:配列をin silicoでアセンブルし、2E2RHA〜2E2RHGと命名した(
図1)。
【0261】
軽鎖をヒト化するために、重鎖と同様のプロセスでヒトカッパ鎖を同定した。AY867246は、4Å CDRエンベロープ/VCIにおいて2E2 VKに対し最高の同一性を有する配列であったが、6個の体細胞変異を有していた。21/25 4Åエンベロープおよび15/17 VCIならびに最も近い生殖系列VK遺伝子、X01668からの唯一の体細胞変異を含有したX93721を支持して、AY867246を廃棄した。X93721由来のフレームワークを使用して、ヒト化構築物のためのDNAおよびタンパク質を設計した。2E2 VK由来のCDR1、2および3(灰色の陰)を、X93721のアクセプターFWにグラフトして、2E2RKAを作製した(
図2)。バリアント2E2RKBにおけるまたは個々に次のバリアントにおける等価なマウス残基に復帰変異された、2E2RKAにおける4個のマッチしない4Å CDRエンベロープ残基、3、47、58および71が存在した:配列をin silicoでアセンブルし、2E2RKA〜2E2RKGと命名した(
図2)。
【0262】
ヒト化抗シグレック−8抗体の作製
2E2RHAおよび2E2RKAの遺伝子を合成し(GenScript)、ヒト配列にコドン最適化した。天然ヒトフレームワーク配列AF471521およびX93721、それぞれ重および軽鎖、ならびに天然マウスCDR配列をin silicoでアセンブルし、2E2RHA〜2E2RHGおよび2E2RKA〜2E2RKGと命名した。ソフトウェアアルゴリズム(GenScript)を使用して、ヒト細胞によって優先的に利用されるコドンを使用するようにサイレント変異誘発により配列を最適化し、合成した。RHA/BおよびRKA/B構築物を、キメラ抗体のPCR増幅に関する実施例1の上述の通り、発現ベクターおよび挿入物に対する特異的プライマーによりPCR増幅し、キメラ抗体の作製に関して実施例1に記載されている通り、リガーゼ非依存的クローニング反応によりIgG/カッパ定常領域ベクターへと挿入し、TOP10細菌の形質転換に使用した。RKAおよびRHAをその後、製造元のプロトコールに従って、QuickChange Lightning部位特異的変異誘発キット(Stratagene)を使用したPCR変異誘発により修飾して、全ヒト抗体バリアントを得た(
図1、
図2、表3、表4および表5)。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表4-1】
【表4-2】
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【0263】
クローンを配列決定し、製造元のプロトコールに従ってプラスミドミニプレップキット(Qiagen)またはPureYieldプラスミドマキシプレップシステム(Promega)を使用して、発現プラスミドDNAを調製した。ヒト化またはキメラVHおよびVKをコードする発現プラスミド調製物を使用して、実施例1における上述の通り、Expi293細胞(Invitrogen)をトランスフェクトした。細胞を無血清培地において7日間培養し、その上で、細胞由来の馴化培地を収集し、ELISAによりアッセイして、抗体の産生を確認した。
【0264】
ヒト化VHおよびVK構築物にコードされる抗体によるシグレック−8結合
ヒト化設計に伴う何らかの著しい問題を同定する試みにおいて、基本のヒト化重および軽鎖を、そのキメラカウンターパートとペアにした。シグレック−8抗原を使用して、実施例1に記載されている通り、ELISAにより抗体結合を測定した。2E2RHBは、キメラ軽鎖とペアになった場合、RHA重鎖よりも強力であると思われたが、重鎖キメラ構築物(cVH)に会合したRKB構築物は、ペア化cVK構築物の両方よりも高い効力でシグレック−8抗原に結合した。これらの結果は、重および軽鎖両方のためのヒト化設計が、おおよそ正確であり、全てシグレック−8に結合したが、さらなる研究が、より優れた結合特徴を有する追加的なヒト化抗体の同定に必要とされることを確認した。
【0265】
キメラカウンターパートと組み合わせた完全ヒト化抗体によるシグレック−8結合
完全ヒト化抗体重および軽鎖を組み合わせ、キメラ抗体と比較して、4Åおよびカノニカルフレームワーク残基ならびに界面残基の置き換えが、2E2のヒト化成功に十分であるか決定した。Expi293細胞を、異なるヒト化重鎖ベクターに会合した異なるヒト化軽鎖ベクターの組合せでコトランスフェクトした。シグレック−8抗原を使用して、実施例1に記載されている通り、ELISAにより抗体結合を測定した。キメラ対照と比較した、シグレック8へのこれらの抗体の結合は、HBKAおよびHBKBが、HAKAおよびHAKBよりも優れた組合せであると思われることを示した(表6)。
【0266】
完全ヒト化抗体によるシグレック−8結合
重鎖における単一アミノ酸置換の相対的な重要性を決定するために、ヒト化重鎖RHC(A24V)、RHD(V48L)、RHE(S49G)、RHF(F67L)およびRHG(T68S)を全軽鎖バリアントと組み合わせて発現させ、RHAおよびRHBバージョンならびにキメラ抗体対照と比較した。シグレック−8 ECDに結合するこれらの抗体の結果は、これらのヒト化抗体組合せが全て、ファミリーRHA、RHFおよびRHG(全軽鎖バリアントと)を除いて、同じ効力でシグレック−8に結合したことを示唆した(表6)。
【0267】
次に、単一アミノ酸置換により、RKAからRKBに軽鎖を変化させると、抗体結合に影響を与えるか決定した。キメラ抗体ならびにRKAおよびRKBバージョンと比較した場合に、軽鎖RKC(V3I)、RKD(V48L)、RKE(L47W)およびRKF(E58V)と全重鎖バリアントとの組合せからなる抗体の結合を評価した。結合のパターンに有意に影響を与えた軽鎖バリアントが存在するようには思われなかった(表6)。加えて、全重鎖バリアントと組み合わせて、軽鎖生殖系列残基F71Y(RKG)の関連性も試験したところ、結果は、この残基が概して、大幅な結合減退を引き起こしたことを実証した。
【0268】
HEKAおよびHEKFが、シグレック−8に対する最良の候補抗体であると思われた。したがって、ELISAを行って、対照としてのキメラ抗体ならびにHEKAおよびHEKFの両方と比較した場合に、抗原に最高の効力で結合した抗体を再検査した。結果は、ヒト化重およびヒト化軽鎖の異なる組合せが、RHAとの組合せは別として、シグレック−8と同様の仕方で結合したことを示した(表6)。結果は、HEKAおよびHEKFが、非常に優れた候補であり、キメラ陽性対照と有利に比較され、フレームワークに最小マウス残基を有したことを強調した。
【0269】
2E2RHバージョン2およびCDR変異バリアントの作製
その後のヒト化重鎖は、最も近縁の生殖系列遺伝子に基づき作製した。2E2VHと最も類似の生殖系列であるIGHV4−59生殖系列配列(
図1)を使用して、マウスCDRのグラフトを設計し、上述の他の構築物と同じ方式で合成(GenScript)および調製して、第1のバージョンのRHAおよびRHB鎖との比較のためのヒト化抗体を作製した。加えて、抗体が、生殖系列に変化されたある特定のCDR3残基に耐容性を示し得るか決定するために、部位特異的変異誘発により、RHEバリアント重鎖のCDR3に3個の変異を導入し(単一およびトリプル変異)、RKAおよびRKF軽鎖のCDR3に1個の変異(
図3)を導入した。上述の同じ方法を使用して、RHE変異またはRKA/RKF変異を含有する抗体を発現させ、相補鎖の完全パネルと組み合わせた。
【0270】
ヒト生殖系列にグラフトされた重鎖CDRを、他の重鎖バージョンと比較した。ストレートグラフト(RHA2)は、抗原への結合を完全に崩壊し、マウスに復帰変異した4Å/VCI残基を有する生殖系列フレームワーク(RHB2)は、第1のRHBバリアントと非常に同様に挙動したが、RHBの5個と比較して10個のマウス残基を含有した。結合データは、両方の鎖のCDR3における変異の導入の影響を図解し、重鎖における変異が、シグレック−8への結合に有害な効果を有した一方、軽鎖変異も、単独では、さらなる改善をもたらさなかったが、最良の抗体が、RHB(全マウス復帰変異)およびRHE、重鎖候補を含有する抗体であったことを示唆した(表6)。
【表6-1】
【表6-2】
注記:各段は、1つの実験を表す;NAは、入手不可能を示す。
【0271】
高温に対するヒト化候補抗体の熱安定性
ヒト化抗体の熱安定性を比較した。抗体を、−20〜85℃に変動する、より高い温度に10分間付し、室温へと冷却し、各候補のEC80濃度におけるELISAアッセイにおいて評価した。リード抗体候補は、安定的に思われた(
図4)。HEKA/KFとCDRL3(すなわち、軽鎖のCDR3)変異抗体は、68℃において完全に不活性であったが、キメラは、70℃で不活性であり、この温度において、リード候補HEKAおよびHEKFは、依然として25〜50%活性を有し、75℃でようやく完全不活性を示した。
【0272】
ヒト化候補抗体Tmの決定
リード抗体の融解温度を決定するために、キメラ、HEKA、HEKFおよびCDRL3(すなわち、軽鎖のCDR3)変異を有する同じヒト化候補を、2ステップ親和性クロマトグラフィーおよびゲル濾過システムにおいて精製し、熱シフトアッセイにおいて検査した。2種の異なる濃度で抗体を蛍光色素(Sypro Orange)と共に、qPCRサーマルサイクラーにおいてサイクル毎に1℃増加させつつ71サイクルインキュベートした。Tmは、50%最大蛍光の温度として定義された。キメラおよび5種のヒト化抗体のTmは、熱安定性アッセイで得られた結果を確認した:最も安定的な抗体は、検査した他のヒト化抗体よりも高いTmを有するHEKAおよびHEKFであった。HEKAは、キメラ抗体よりも高いTmを有する(
図5および表7)。
【表7】
【0273】
ヒト化候補抗体の親和性およびアビディティー
Biacore T200を使用したSPR解析により、抗体アビディティー決定を行った。マウス、キメラおよびヒト化抗シグレック−8抗体へのヒトシグレック−8 ECDタンパク質の結合をBiacore T100において測定した。捕捉抗体(ヤギ−抗ヒト−Fcおよびヤギ−抗マウス−Fc、Jackson Immunoresearch製)を製造元のプロトコール(Biacore、GE)に従ってCM5チップに固定化した。フローセル1、2および3を抗ヒトで、フローセル4を抗マウス抗体で固定化した。アッセイを25℃、流速30μl/分で行った。アッセイバッファーは、超純水において作成した20mM Tris−HCl pH8.3、150mM塩化ナトリウム、0.05%ポリソルベート20、10%グリセロール、0.1%BSAであった。二量体シグレック−8(単量体および多量体シグレック−8の不純物は、分子ふるいクロマトグラフィーにより除去した)を、アッセイバッファーにおいて15nMから1.88pMへと2倍希釈で希釈した。およそ120RUの変化まで抗体を捕捉した。6分間高速注射、続いて120分間解離を行った。フローセルを50mMグリシンpH1.5で再生した。結果は、空の参照セルおよび複数のアッセイバッファー注射により二重にブランク作成し、1:1グローバルフィットパラメータにより解析した。
【0274】
マウス2E2およびキメラ2E2抗体のアビディティーは、それぞれ28pMおよび16pMであると決定された(表8)。ヒト化抗体のアビディティーは、HEKAが17pM、HEKFが21pMであり、この結果は、ヒト化が、結合活性の保持および増強に成功したことを示した。
【表8】
【0275】
バイオレイヤーインターフェロメトリー(ForteBio)により抗体親和性決定も行った。ヒトシグレック−8タンパク質へのマウス、キメラおよびヒト化抗シグレック−8抗体Fab断片の結合をForteBio Octet Red 384において測定した。アッセイバッファーにおいて25℃で1000のRPMにてアッセイを行った。HBSバッファーと1×ForteBio Kineticsバッファーを、ストック溶液(それぞれBiacore BR−10670、ForteBio18−132)から超純水において作成した。Fab断片(製造元の仕様書に従いThermo−Pierce固定化パパインで抗体を消化した)を、アッセイバッファーにおいて50nMから1.56nMへと2倍希釈で希釈した。シグレック−8−Fcタグ付けタンパク質を、およそ1.2のnm変化まで、アッセイバッファーにおいて100nMで抗ヒト捕捉センサーに3分間固定化した。2分間会合と、続く10分間解離を行った。結果は、空の参照AHCセンサーによりブランク作成し、ForteBio解析ソフトウェアにおいて1:1グローバルフィットパラメータにより解析した。
【0276】
マウス2E2およびキメラ2E2 Fab断片の親和性は、それぞれ536pMおよび585pMであると決定された(表9)。ヒト化抗体の親和性は、HEKAが464pM、HEKFが592pMであり、この結果は、ヒト化が、これら2種のヒト化抗体の結合活性の保持に成功したことを示した。HEKAは、このアッセイにおいてマウスおよびキメラ2E2よりも高いシグレック−8に対する一価親和性を有した。ヒト化抗体バリアント、HEKAmutおよびHEKFmutの親和性は、それぞれ902pMおよび1160pMのKDによるピコモル濃度範囲でもあった。
【表9】
【0277】
ヒト化候補抗体の溶解度
遠心分離フィルター装置(Amicon 30K 4mL、4000g、5分間 − 最初の濃縮;Amicon Ultra 0.5mL 3K、14000g − 次の濃縮)を使用して、精製されたキメラおよび候補抗体を逐次的に濃縮し、各ステップで濃度を測定した。全試料を沈殿することなく総計で最大21〜24倍に濃縮し、ELISAにより検査したところ、シグレック−8に対する結合効力を失ったものはないことが示された。抗体は、少なくとも25mg/mLまでの濃度で沈殿する傾向がなかった。特に、ch2E2の溶解度は、少なくとも18mg/mLであり、HEKAは、少なくとも25mg/mL、HEKFは、少なくとも8mg/mL、HEKAmutは、少なくとも29mg/mL、HEKFmutは、少なくとも17mg/mLであった。
【0278】
ヒト化候補抗体の凝集
解析に先立ち試料を濾過し、いかなる塩またはタンパク質沈殿も除去し、濃度を再度測定した。続いて、これを0.4mL/分で、HPLCシステムにおける分子ふるいカラムへと注射し、多角度光散乱により解析して、絶対モル質量を決定し、凝集をチェックした。全バリアントが、134.9〜138.2kDaに及ぶ平均分子量による凝集の徴候を示さなかったが、この結果は、この解析におけるIgG単量体の予想の範囲であった(表10)。
【0279】
全試料は、単分散(Mw/Mn<1.05)であった。しかし、分布解析プロットは、グリコシル化バリアント(ch2C4、HEKAおよびHEKFMut)の存在を示した。分布解析プロットは、全試料における約105〜120kDa種の存在も示し、これは、崩壊した抗体または低グリコシル化バリアントである可能性がある。質量回収は、82.9〜102.8%(計算された質量を注射された質量で割る)の間であり、この結果は、優れたタンパク質回収を示し、試料は、カラムに固着したりまたは不溶性の凝集体を含有したりしなかったようであり、このような凝集体はガードカラムによって保持されたものと予想される。全体的に見て、データは、解析した抗シグレック−8抗体試料のいずれにも有意な凝集が存在しないことを示した(表10)。
【表10】
【0280】
ヒト化候補抗体の凍結融解安定性
精製されたキメラch2C4抗体、ヒト化HEKAおよびHEKF抗体ならびにヒト化HEKAmutおよびHEKFmut抗体バリアントを、60分間−20℃に付し、室温で解凍し、候補毎にEC80濃度におけるELISAアッセイにおいて使用した。HEKAが、このアッセイにおいて最高の安定性を示した(
図6)。
【0281】
非フコシル化抗体のADCC活性
材料
RBC溶解バッファー(10×RBC溶解バッファー):製造元の指示通りに1×へと希釈(eBioscience、00−4300−54)。
【0282】
PBS:DPBS、Ca
2+/Mg
2+不含(Hyclone、SH30028.02)。
【0283】
完全RPMI:滅菌濾過したRPMI−1640(Invitrogen)、10%FBS含有。
【0284】
96ウェルU字底プレート(Falcon、353077)。
【0285】
LDHアッセイ:CytoTox 96非放射性細胞傷害アッセイ(Promega、G1780)。
【0286】
固定バッファー:PBSにおける1〜4%パラホルムアルデヒド。PBS(Electron Microscopy Diatom、50−980−488)において希釈することにより16%パラホルムアルデヒド(EMグレード、メタノール不含)から調製。
【0287】
方法
好酸球における抗シグレック−8抗体のADCCおよびアポトーシス活性を検査するために、新鮮末梢血白血球(PBL)を、キメラおよびマウス2E2抗体と共にインキュベートした。低フコースキメラ2E2 IgG1抗体は、好酸球の最も強力な死滅を示し、フコシル化キメラ2E2 IgG1よりも有意に高い効力を有し、低フコース型の抗体のより高いADCC活性と一貫した(
図7)。
【0288】
総末梢血白血球における抗シグレック−8抗体活性の評価のため、収集から24時間未満の採取されたドナー血液から標準方法によってPBLを得て、完全RPMI培地に再懸濁する。細胞を計数し、完全RPMI培地において10×10
6/mLとなるよう調整し、無菌96ウェルU字底プレートで100μL/ウェルにて平板培養する。抗シグレック−8抗体を0.0001ng/mL〜10μg/mLの間の濃度で添加する。プレートを200gで1分間遠心分離し、加湿37℃インキュベーター内で5%CO
2にて>4時間インキュベートする。フローサイトメトリーによって細胞集団を評価して、例えば、表11に示す試薬を使用し、フローサイトメトリーによって評価して、好酸球および好塩基球の枯渇を査定する。CCR3陽性、CD16陰性顆粒細胞(高い側方散乱)の細胞の除去を使用して、好酸球の枯渇を検出することができる。好塩基球数は、例えば、CCR3陽性低側方散乱細胞の解析により決定することができる。
【表11-1】
【表11-2】
【0289】
精製された好酸球におけるアポトーシスを誘導する抗シグレック−8抗体の能力の評価のため、血液試料からの収集から24時間未満に採取した新鮮バフィーコートまたは等価な血液製剤を使用する。製造元の説明書(Miltenyi好酸球単離キット、130−092−010)に従って好酸球の精製を行う。精製された好酸球を1×10
6/mLで完全RPMI培地に再懸濁し、IL−5(約1ng/mL〜約50ng/mLの濃度で)の存在または非存在下で一晩培養する。翌日、プレートまたはフラスコの反復した洗浄により、培養された好酸球を収集する。細胞を200〜400gで10分間未満遠心分離し、1×10
6/mLで完全RPMI培地に再懸濁する。好酸球を100μL/ウェルで無菌96ウェルU字底プレートで平板培養する。完全RPMI培地に調製した100uLの2×試薬を各ウェルに添加し、上述通りに希釈物を調製する。プレートを200gで1分間遠心分離し、加湿37℃インキュベーター内で5%CO
2にて≧4時間インキュベートする。製造元の説明書に従ってアネキシン−V染色を行い、アポトーシスおよび壊死細胞をフローサイトメトリーによって解析する。
【0290】
単離された肥満細胞における抗シグレック−8抗体のADCCおよびアポトーシス活性の評価のため、ヒト肥満細胞は、公開されたプロトコール(Guhlら、Biosci. Biotechnol. Biochem.、2011年、75巻:382〜384頁;Kulkaら、In Current Protocols in Immunology、2001年(John Wiley & Sons, Inc.))に従ってヒト組織から単離する、または例えばYokoiら、J Allergy Clin Immunol.、2008年、121巻:499〜505頁に記載されている通りに、ヒト造血幹細胞から分化させる。精製された肥満細胞を1×10
6/mLで無菌96ウェルU字底プレートにおける完全RPMI培地に再懸濁し、0.0001ng/ml〜10μg/mlの間に及ぶ濃度の抗シグレック−8抗体の存在または非存在下で30分間インキュベートする。精製されたナチュラルキラー(NK)細胞または新鮮PBLありまたはなしで、試料をさらに4〜16時間インキュベートして、ADCCを誘導する。肥満細胞を検出するための蛍光コンジュゲート抗体(CD117およびFcεR1)ならびに生きているおよび死んでいるまたは瀕死の細胞を識別するためのアネキシン−Vおよび7AADを使用したフローサイトメトリーにより、アポトーシスまたはADCCによる細胞死滅を解析する。製造元の説明書に従ってアネキシン−Vおよび7AAD染色を行う。
【0291】
in vitroにおけるヒト化抗体の好酸球枯渇活性の評価
マウス2E2抗体と比較した場合の正常ヒト血液由来の好酸球のシグレック−8媒介性枯渇を誘導するその能力に関してヒト化抗体をin vitroで評価した。
【0292】
収集後24時間未満に採取されたヒトドナー血液から得た末梢血白血球(PBL)を、完全RPMI培地[(10%胎仔ウシ血清を補充したRPMI−1640培地(Invitrogen、カタログ番号A10491−01))]に再懸濁した。50ng/ml組換えヒトIL−5(R&D Systems、カタログ番号205−IL−025)を補充した完全RPMI培地に、1mL当たり10
7となるよう細胞を調整し、100μL/ウェルで無菌96ウェルU字底プレートで平板培養した。0.1pg/mL〜10μg/mL(すなわち、1pg/mL、10pg/mL、0.1ng/mL、1ng/mL、10ng/mL、0.1μg/mL、1μg/mLおよび10μg/mL)に及ぶ濃度で抗シグレック−8抗体を添加して、用量応答および50%最大好酸球枯渇(EC
50)をもたらす濃度を決定した。プレートを200gで1分間遠心分離し、加湿37℃インキュベーター内で5%CO
2にて16時間インキュベートした。IL−5の存在下における抗シグレック−8抗体によるPBLの16時間インキュベーションは、シグレック−8媒介性アポトーシスに対し好酸球を感作した。フローサイトメトリーにより細胞集団を評価して、好酸球の枯渇を査定した。CCR3陽性顆粒(高い側方散乱)細胞の除去により好酸球枯渇を検出した。
【0293】
HEKAmut IgG1抗体を除く被験ヒト化抗体のそれぞれは、ヒト好酸球の枯渇に関して、マウス2E2抗体と比較した場合に等価なまたは増加した効力(すなわち、より低いEC
50)を示した(表12)。HEKA IgG1抗体およびHEKA IgG4抗体は、同様の効力を示したため、ヒト好酸球の枯渇に関する抗体効力は、アイソタイプに依存しなかった。
【表12】
平均EC50は、2回の独立的アッセイの好酸球枯渇に必要とされる平均最大半量抗体濃度を示す。
【0294】
活性アイソタイプを有する抗シグレック−8抗体は、in vitroおよびin vivoにおいてヒト肥満細胞のADCC媒介性死滅を誘導することができる
強力なFc受容体媒介性ADCC活性を有するヒト化抗シグレック−8抗体を作製するために、フコシル基転移酵素8を欠損するCHO細胞株(Lonza、ポテリジェント(Potelligent)CHOK1SV細胞)からHEKA IgG1抗体を発現させて、α1,6フコースを欠如する糖質を有する抗体(すなわち、非フコシル化抗体)を作製した。HEKA IgG1抗体とは異なるシグレック−8の細胞外領域を認識する、マウスIgG2aアイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体(すなわち、1C3抗体)を実施例3に記載されている通りに作製した。キメラ1H10抗体は、マウスモノクローナル抗体1H10のV−領域およびヒトIgG1カッパ定常領域を含有する。10μMキフネンシンの存在下で培養したヒト293TS細胞株からキメラ1H10抗体を発現させて、低フコース抗体を作製し、プロテインA親和性クロマトグラフィーにより精製した。
【0295】
ヒト肥満細胞に対しNK細胞媒介性ADCC活性を誘導する非フコシル化HEKA IgG1およびキメラ1H10低フコース抗体の能力をin vitroで評価した。ヒト造血幹細胞を生着した免疫不全NSGSマウスの腹膜腔の洗浄により、初代ヒト肥満細胞を単離した。10μg/mlの非フコシル化HEKA IgG1抗体、キメラ1H10低フコース抗体、HEKA IgG4抗体またはアイソタイプ対照ヒトIgG1抗体と、精製したヒトCD56
+CD16
+NKエフェクター細胞と共に、エフェクター対標的細胞(E:T)比10.75:1で肥満細胞を48時間インキュベートした。CytoTox 96細胞傷害アッセイキット(Promega、カタログ番号G1780)を使用して、LDH放出によりADCC活性を決定した。非フコシル化HEKA IgG1抗体およびキメラ1H10低フコース抗体は、48時間後にヒト肥満細胞の顕著なADCC媒介性死滅を誘導した(
図8A)。非フコシル化または低フコース抗シグレック−8抗体によって誘導されたLDH放出は、溶解溶液(Promega、カタログ番号G1821)を使用して誘導された最大LDH放出の38〜53%であった。
【0296】
肥満細胞、好酸球および好塩基球の表面においてヒトシグレック−8が選択的に発現されるトランスジェニックマウスモデルにおいて、in vivoでシグレック−8陽性肥満細胞を枯渇させる抗シグレック−8抗体の能力を評価した。腹腔内注射により100μgのHEKA IgG4抗体、HEKA IgG1非フコシル化ヒト化抗体、マウス1C3抗体(マウスIgG2aアイソタイプ)またはヒトIgG1アイソタイプ対照抗体でマウスを2回処置した。2回の腹腔内注射を48時間置いて投与し、第2の注射の48時間後に、腹膜の洗浄により腹膜肥満細胞を単離した。非フコシル化HEKA IgG1抗体およびマウス1C3抗体投与は、腹膜肥満細胞の有意な枯渇をもたらした。対照的に、HEKA IgG4抗体は、有意な肥満細胞枯渇を示さず、活性アイソタイプが、肥満細胞のin vivo枯渇に必要とされることを示す(
図8B)。これらの結果は、シグレック−8の細胞外ドメインの異なる領域に対し指向された、活性アイソタイプ、マウスIgG2aアイソタイプまたはヒトIgG1非フコシル化アイソタイプを有する2種の異なる抗シグレック−8抗体が、in vivoでシグレック−8陽性肥満細胞を枯渇させることができることを実証する。
【0297】
シグレック−8は、急速に内部移行され、したがって、ADCC活性の誘導に適さないと記載されているため、これらの結果は予想外であった。O’Reillyら、Trends Pharmacol Sci.、2009年、30巻(5号):240〜248頁を参照されたい。
【0298】
ヒト化抗シグレック−8は、in vivoでヒト肥満細胞によって媒介されるIgE誘導性受動皮膚アナフィラキシー反応を阻害する
ヒト造血幹細胞(HSC)の生着後に大量のヒト肥満細胞を作製することができる免疫不全マウスが記載されている(Tanakaら、J Immunol.、2012年、188巻(12号):6145〜55頁)。NSGSと命名されたマウス系統(Jackson Laboratory)は、IL−2受容体ガンマ鎖遺伝子の欠失を有する非肥満糖尿病/重度複合免疫不全(NOD SCID)マウスの派生体である(NSGマウス)。NSGSマウスはその上、ヒト造血幹細胞の生着を容易にするため、3種のヒトサイトカイン(幹細胞因子[SCF]、IL−3およびGM−CSF)についてトランスジェニックである。NSGSマウスの生着後に、ヒトCD34
+細胞は、ヒト好酸球および増強された数のヒト肥満細胞を作製する。生着NSGSマウスにおける両方の細胞型は、ヒト末梢血および組織から単離される相当する細胞型におけるレベルに匹敵するレベルでシグレック−8を発現する。よって、このようなマウスは、in vivoでのヒト細胞における抗シグレック−8抗体の活性の評価のための魅力的なモデルを提供する。
【0299】
肥満細胞活性における抗シグレック−8抗体の効果をin vivoで評価するために、ヒト化NSGSマウスにおけるIgE媒介性耳腫脹モデルを確立した。このモデルにおいて、ハプテンコンジュゲートウシ血清アルブミン(NP−BSA)の全身性注射の24時間前の、片耳への特異的モノクローナル抗ハプテンIgE(抗NP IgE)の注射により、受動皮膚アナフィラキシー(PCA)、I型過敏症反応を誘導した。ヒトイプシロン定常領域を有するキメラ抗NP IgEを使用して、ハプテンに対するヒト肥満細胞特異的応答が生じることを確実にし、耳の厚さの変化により、即時型および後期浮腫性応答を測定した。
【0300】
アッセイの8〜12週間前に、NSGSマウスにヒトCD34
+HSCを生着した。ヒト定常領域を有するキメラモノクローナル抗NP IgEを、100ngの用量でマウスの右耳に皮内注射して、マウス皮膚肥満細胞ではなくヒト肥満細胞を感作し、PBSを左耳に皮内注射した。24時間後、0.5mg NP−BSAの静脈内注射によりPCAを誘導した。抗NP IgEによる感作24時間前または感作2時間後に、静脈内注射により、0.1mg抗シグレック−8抗体(すなわち、HEKA IgG4抗体)またはヒトIgG4アイソタイプ対照抗体をマウスに投薬した。誘導後最大4時間目および誘導後24時間目の時点で耳の厚さを測定して、それぞれ初期および後期耳腫脹応答を決定した。
【0301】
HEKA IgG4抗体は、in vivoモデルにおけるこのPCAにおける初期および後期皮膚性アレルギー反応の両方を予防または阻害した(
図9)。このモデルにおいて、初期反応は、肥満細胞脱顆粒およびヒスタミン放出に依存するが、後期反応は、サイトカインを含むde novo合成されたメディエーターの肥満細胞分泌ならびに好酸球および好塩基球浸潤に依存する。HEKA IgG4抗体は、抗NP IgEを感作24時間前または感作2時間後のいずれかに投薬した場合、ヒト化NSGSマウスにおけるPCA応答も予防または阻害した(
図9)。抗体処置の有害効果は、これらの実験経過において観察されなかった。
【0302】
(実施例3)
マウス抗シグレック−8抗体の作製および特徴付け
シグレック−8の細胞外領域は、3個の免疫グロブリン様ドメインで構成される:リガンドに結合する特有のN末端V−セットドメイン(ドメイン1)と、続く2個のC−セットドメイン(ドメイン2および3)。抗体1C3は、ヒトシグレック−8の組換え細胞外ドメイン(配列番号74)に対して産生されたIgG2a重鎖およびカッパ軽鎖を有するマウスモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体1H10および4F11は、ヒトシグレック−8の組換え細胞外ドメイン(配列番号74)に対して産生されたマウスIgG1重鎖およびカッパ軽鎖抗体である。表13を参照されたい。これらの抗体は、ヒト(配列番号74)および非ヒト霊長類(配列番号118)由来の組換えシグレック−8配列に結合した抗体のハイブリドーマスクリーニングから同定された。
【表13】
【0303】
抗シグレック−8抗体のエピトープを含む領域を同定するために、ヒトIg−Fcに融合されたシグレック−8細胞外ドメインのそれぞれを含有する融合タンパク質を発現させ、CHO細胞から精製した。抗体結合の決定のためのELISAアッセイにおいて、ヒトドメイン1(配列番号115)、ドメイン1および2(配列番号116);またはドメイン1、2および3(配列番号117)を含有する融合タンパク質を使用した。一部の実験において、アヌビスヒヒ(Papio anubis)由来のシグレック−8(国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)参照配列XP_009193370.1)の細胞外ドメイン1、2および3(配列番号118)を含有する融合タンパク質と比較した場合の、ヒトシグレック−8に対する抗体の特異性を評価した。
【0304】
抗体結合アッセイのため、ELISAプレート(MaxiSorp;Nunc)を0.2μg/mlの融合タンパク質で一晩4℃にてコーティングし、PBSに溶解した2%BSAで1時間室温にてブロッキングした。1μg/mlの抗体を添加し、プレートを2時間室温にてインキュベートした。プレートの洗浄後に、西洋わさびペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体を添加し、プレートを1時間インキュベートした。二次抗体は、ヒト化抗体に対しては抗ヒトH+L HRP(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号709−035−149)、またはマウス抗体に対しては抗マウスH+L HRP(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号715−035−151)であった。プレートをTMB基質(Sigma、カタログ番号T0440−1L)で発色させた。
【0305】
マウス2E2抗体およびHEKA IgG1抗体は、ドメイン1融合タンパク質に結合し、これら2種の抗体のエピトープが、N末端リガンド結合ドメインに存在することを示す(表14)。対照的に、マウス1C3抗体は、ドメイン1およびドメイン2融合タンパク質に結合したが、ドメイン1融合タンパク質への検出可能な結合を実証せず、この抗体のエピトープが、ドメイン2にあることを示す(表14)。
【表14】
【0306】
マウス4F11および1H10抗体は、ヒトシグレック−8およびアヌビスヒヒ(Papio anubis)由来の予測されるシグレック−8タンパク質配列(国立バイオテクノロジー情報センター参照配列XP_009193370.1)に結合した。ドメイン融合タンパク質のELISAスクリーニングにおいて、また、還元SDS−PAGEゲルのウエスタンブロットにおいて、4F11は、ヒトシグレック−8ドメイン1における線状エピトープを認識し、1H10は、ヒトシグレック−8ドメイン3における配列を含む線状エピトープを認識した。1C3は、ヒトシグレック−8ドメイン2における変性した配列を認識せず、これが、立体構造エピトープを認識したことを示す。抗体4F11および1H10は、それぞれ5.9および41ng/mlのEC
50で、50ng/ml IL−5の存在下でヒト末梢血白血球からの強力な好酸球枯渇を示す(表15)。ヒトシグレック−8に特異的なマウス1C3抗体およびマウス2E2抗体は、ヒヒシグレック−8と交差反応しなかった。
【表15】
平均EC50は、2回の独立的アッセイの好酸球枯渇に必要とされる平均最大半量抗体濃度を示す。
【0307】
ヒトおよびヒヒ好酸球への抗体の結合をフローサイトメトリーにより決定した。ヒトまたはヒヒ末梢血白血球調製物を、飽和量の抗シグレック−8モノクローナル抗体2E2、1C3および1H10またはマウスIgG1アイソタイプ対照抗体で標識した。抗シグレック−8抗体を二次抗マウスIgG H+L AlexaFluor 647により可視化した。高粒度散乱と共にCD49dおよびCD16に対する霊長類交差反応性モノクローナル抗体を使用して、好酸球を同定した。マウス1H10抗体は、ヒヒおよびヒト好酸球に結合した一方、マウス2E2および1C3抗体は、ヒト好酸球に結合したが、ヒヒ好酸球と交差反応しなかった(
図10)。ヒトシグレック−8に結合する他のモノクローナルマウス抗シグレック−8抗体は、非ヒト霊長類シグレック−8を認識しないことが示されていたため、これらの結果は予想外であった。Hudsonら、J. Clin. Immunol.、2011年、31巻(6号):1045〜53頁を参照されたい。
配列
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