(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の素子を形成するステップは、複数のトランジスタを形成するステップを含み、前記複数のトランジスタの各々は、活性領域と、前記活性領域上に形成されたソースコンタクトとドレインコンタクトとゲートとを有する、請求項1に記載の方法。
前記複数のトランジスタを形成するステップは、前記複数のトランジスタの各々をフィンガ構成を有するように形成するステップを含み、前記ゲートは、複数の矩形状のゲートフィンガを含み、各ゲートフィンガは、前記ソースコンタクトの矩形状ソースフィンガと、前記ドレインコンタクトの矩形状ドレインフィンガとの間にある、請求項2に記載の方法。
前記複数の素子を形成するステップは、前記第1端部素子の前記パラメータ値が、前記第2端部素子の前記パラメータ値よりも大きくなるように調整される、請求項1に記載の方法。
前記複数の素子を形成するステップは、前記第1端部素子の前記パラメータ値が、前記第2端部素子の前記パラメータ値と等しくなるように調整される、請求項1に記載の方法。
前記複数の素子を形成するステップは、複数のトランジスタのそれぞれ、複数のダイオードのそれぞれ、または、微小電気機械システム(MEMS)のそれぞれを、前記シリコンオンインシュレータ基板に形成するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
いくつかの実施の形態の詳細な説明
本明細書では見出しがあったとしてもそれは便宜のためにすぎず特許請求される発明の範囲または意味には必ずしも影響しない。
【0023】
いくつかの高周波(RF)用途において、RFスイッチは、スタック構成になるように配置された複数の電界効果トランジスタ(FET)等のスイッチング素子を含み得る。このようなスタック構成は、たとえば電力の適切な扱いを容易にすることができる。たとえば、FETスタックはその高さが大きいほどたとえば不整合状態においてより大きい電力に耐えることができる。このようなRFスイッチを利用するRF用途は、たとえば、アンテナ同調または(たとえば整合ネットワークにおける)受動素子を必要とするその他のスイッチング用途を含み得る。
【0024】
FETスタックの素子は、そのオンまたはオフ状態それぞれにおいて、その固有の受動容量または抵抗挙動を示すことができ、このような挙動は一般的に、変化する入力電力に対して比較的良く維持される。しかしながら、FETスタック全体の電圧分布が不均一であると、スイッチの高調波ピーク、圧密点(compression point)の悪化および/または
相互変調歪(intermodulation distortion)(IMD)等の望ましくない結果につながる可能性がある。このような結果は、シリコンオンインシュレータ(SOI)技術を利用するスイッチ設計において現われる可能性がある。たとえば、FETスタックを接地すると、結果として、スタック内における、電力入力側から出力側へのRF電流が減少する可能性がある。このようにスタック内の各FETの中での電流が不均一である場合、大抵はこのスタック内のFETの電圧降下が不均一になる。このような不均一な電流はまた、スタックそのものの電源電圧取扱機能の低下につながり、最大電圧を扱う個々のFETが何らかの電力レベルで破壊される。
【0025】
本明細書では、FETスタック全体の不均一な電圧分布を減じるように実現できる装置および方法について説明する。本開示の1つ以上の特徴は、FETスタックとの関連で説明するが、その他の種類のスイッチング素子を利用するスイッチングスタックにおいても実現できることが理解されるであろう。たとえば、ダイオードまたは微小電気機械システム(MEMS)装置(たとえばMEMSキャパシタまたはMEMSスイッチ)をスイッチング素子として有するスイッチングスタックも、本明細書に記載の1つ以上の特徴の実現から利益を享受することができる。
【0026】
図1は、可変寸法スイッチング素子(まとめて200で示す)を有するRFスイッチ100を模式的に示す。説明のために、スイッチング素子のうちのいくつかまたはすべてが異なる寸法を有し得ることが理解されるであろう。また、本明細書の説明において可変寸法と可変形状は区別なく使用できることが理解されるであろう。この可変寸法/可変形状は、たとえば、スイッチング素子に関係する1つ以上の部分の、異なる大きさ、異なる形状、異なる構成、またはその組合わせを含み得る。いくつかの実装例において、このような、スイッチング素子に関係する1つ以上の部分は、スイッチング素子固有の1つ以上の部分(またはその組合わせ)を含み得る。このような実装例では、追加の外部構成要素が必ずしも必要ではないので、上記のようにスイッチング素子固有の部分の寸法が可変であることによって得られる好都合な特徴が有利であることがわかる。
【0027】
図2A〜
図2Cは、本開示の1つ以上の特徴を有するスイッチング素子200の非限定
的な例を示す。
図2Aは、いくつかの実施の形態において、スイッチング素子またはスタック素子200が可変寸法電界効果トランジスタ(FET)210を含み得ることを示す。説明のために、このようなFETは、たとえばSOI MOSFET等の金属酸化物半導体FET(MOSFET)を含み得ることが、理解されるであろう。また、本明細書に記載のFETは、HEMT、SOI、シリコンオンサファイア(silicon-on-sapphire)
(SOS)、およびCMOS技術を含むがこれらに限定されないその他のプロセス技術で実現し得ることが、理解されるであろう。
【0028】
図2Bは、いくつかの実施の形態において、スイッチング素子またはスタック素子200が可変寸法ダイオード220を含み得ることを示す。説明のために、このようなダイオードはたとえばFETに基づくダイオードを含み得ることが理解されるであろう。
【0029】
図2Cは、いくつかの実施の形態において、スイッチング素子またはスタック素子200が可変寸法MEMS装置230を含み得ることを示す。説明のために、このようなMEMS装置は、たとえば本明細書に記載の同様の金属ルーティングレイアウトを利用するMEMSキャパシタおよびその他のMEMS装置を含み得る。この例におけるMEMSキャパシタの場合、このようなキャパシタはたとえば、ハイパワーバラクタ装置におけるキャパシタスタックで利用できる。
【0030】
図3は、電気的に直列接続された複数のFETを有する典型的なスタック210を示す。2つの典型的なFET(300a、300b)が示されているが、このようなスタックはその他の数のFETを含み得ることが理解されるであろう。この例において、第1の典型的なFET300aは長さL1および幅Wg1という寸法を有する活性領域302aを含むことが示されている。この例で説明されているのは矩形であるが、活性領域のその他の形状も可能であることが理解されるであろう。さらに、本明細書にはフィンガ構成のさまざまな例が記載されているが、ソース、ドレインおよび/またはゲートのその他の構成も実現できることが理解されるであろう。
【0031】
複数のソース(S1)およびドレイン(D1)コンタクトはこれらの間にゲートフィンガ(304a、ゲート長g1)が介在するフィンガ構成で実装されることが示されている。いくつかの実施の形態において、ソースおよびドレインコンタクト(S1、D1)は各々活性領域302aとオーミックメタルコンタクトを形成することができ、ゲートフィンガ304aは各々ゲート酸化物層を通して活性領域302aと結合されたメタルコンタクトを含み得る。ソースコンタクトS1は各々第1の入力ノードIn1と電気的に接続することができ、ドレインコンタクトD1は各々第1の出力ノードOut1と電気的に接続することができる。所与のレイアウトに応じてS1およびD1は各々入力であっても出力であってもよいことが理解されるであろう。ゲート304aは各々ゲートノードGと電気的に接続することができる。このようなFETのスイッチ素子としての動作(たとえば適切なゲート信号の印加によるオンまたはオフ)は周知のやり方で実現できる。
【0032】
第2の典型的なFET300bは長さL2および幅Wg2という寸法を有する活性領域302bを含むことが示されている。複数のソース(S2)およびドレイン(D2)コンタクトはこれらの間にゲートフィンガ(304b、ゲート長g2)が介在するフィンガ構成で実装されることが示されている。いくつかの実施の形態において、ソースおよびドレインコンタクト(S2、D2)は各々活性領域302bとオーミックメタルコンタクトを形成することができ、ゲートフィンガ304bは各々ゲート酸化物層を通して活性領域302bと結合されたメタルコンタクトを含み得る。ソースコンタクトS2は各々第2の入力ノードIn2と電気的に接続することができ、ドレインコンタクトD2は各々第1の出力ノードOut2と電気的に接続することができる。所与のレイアウトに応じてS2およびD2は各々入力であっても出力であってもよいことが理解されるであろう。ゲート30
4bは各々ゲートノードGと電気的に接続することができる。このようなFETのスイッチ素子としての動作(たとえば適切なゲート信号の印加によるオンまたはオフ)は周知のやり方で実現できる。
【0033】
典型的なスタック210において、第1のFET300aの出力(Out1)は第2のFET300bの入力(In2)と電気的に接続することができる。したがって、第1のFET300aの入力(In1)はスタック210の入力(IN)として機能することができ、第2のFET300bの出力(Out2)はスタック210の出力(OUT)として機能することができる。いくつかの実施の形態において、第1および第2のFET300a、300bのゲートノードは、共に制御することができ、独立して制御することができ、その任意の組合せであってもよい。
【0034】
説明のために、ゲート幅は、ゲートとその対応する活性領域とが重なる部分に関連する寸法を含み得る。したがって、
図3に示される例において、このようなゲート幅は、第1のFET300aについてはWg1、第2のFET300bについてはWg2で表わすことができる。
【0035】
いくつかの実施の形態において、活性領域の長さ(たとえばL1、L2)、ゲート幅(たとえばWg1、Wg2)、ゲート長(たとえばg1、g2)等の典型的なFETパラメータのうちの1つ以上は、1つのスタック内のFETのうちの少なくともいくつかの間で異なっていてもよい。活性領域の長さについては、このようなFETパラメータの違いを、たとえばソース−ゲート−ドレイン単位の数の違い、ソース、ドレインおよび/またはゲートフィンガの長さ寸法(
図3に示される例では水平方向)の違い、またはこれらの任意の組合せによって、実現することができる。このようなFETパラメータの違いの非限定的な例を、本明細書においてより詳細に説明する。
【0036】
図4は、
図3の典型的なスタック210の回路図を示す。より具体的には、第1および第2のFET300a、300bを直列接続してスタック210の入力(IN)と出力(OUT)を設けることができる。このような入力と出力の例について述べているが、いくつかの実施の形態では、FET300a、300b各々、したがってスタック210を逆に、すなわちソースコンタクトがドレインコンタクトとして機能しドレインコンタクトがソースコンタクトとして機能するように、動作させることができる。また、本明細書に記載のように1つのFETスタックは3つ以上のFETを含み得る。
【0037】
いくつかの実施の形態において、2つ以上のFETを有するFETスタックをRFスイッチとして実現することができる。
図5は、複数のFET(たとえばN個のこのようなFET300a〜300n)のスタック210を有するRFスイッチ100の一例を示す。このようなスイッチは、単極単投(SPST)スイッチとして構成できる。このような例について述べているが、1つ以上のスタック210をその他のスイッチ構成で実現できることが理解されるであろう。
【0038】
図5の例において、FET(300a〜300n)は各々、それぞれのゲートバイアスネットワーク310およびボディバイアスネットワーク312によって制御できる。いくつかの実装例において、このような制御動作は周知のやり方で実行できる。
【0039】
本明細書に記載の、
図5の例のようなRFスイッチは、可変寸法FETを含み得る。
図6は、このような寸法の違いを異なるゲート幅で実現できる典型的なRFスイッチ100を示す。この例において、FETスタック210はそれぞれゲート幅(Wg1〜Wgn)を有するFET(300a〜300n)を含むことが示されている。このようなゲート幅のうちのいくつかまたはすべてが異なるようにされたものを選択してRFスイッチ100
の所望の性能改善を行なってもよい。このような性能改善の一例を本明細書においてより詳細に説明する。
【0040】
図7は、約10μmである概ね一定のゲート幅Wgを有する10個のFETの典型的なスタックを示す。
図7の10個のFETは各々100個のゲートフィンガを有する。明確にするためにFET間の電気的接続は示されていない。
【0041】
このような均一寸法FETについて、
図8は、シミュレートされたデータの一例を示し、FET各々における相対電圧降下がスタックに沿うFETの番号に対して示されている。たとえば、FET1の入力電圧(この例では5V)の電圧降下は約0.135、FET2の入力電圧の電圧降下は約0.118、等である。
【0042】
図8において、スタックに沿う電圧降下の値が著しく不均衡であることが容易にわかる。ゲート幅が一定であるその他の構成およびアーキテクチャの場合も、電圧の不均衡は
図8の例に近いかまたは類似することが理解されるはずである。このような電圧の不均衡は、
図8の例に忠実に従う場合もそうでない場合もあるが、全体的な傾向は一般的に同様であり、(電力が入力される)第1のFETは一般的に最大電圧降下の制限因子である。本明細書に記載のように、スタックに沿うこのような不均一な電圧分布は、結果として、たとえば高調波ピーク、圧密点、および/または相互変調歪(IMD)についてのスイッチ性能の低下につながり得る。また、より高い電力レベルでは、第1のFETがその他のFETの前に破壊されてスイッチの全体の性能を制限する可能性がある。
【0043】
さらに、このような不均一な電圧分布は、スタックの降伏電圧性能に影響する可能性がある。たとえば、10個のFETを有するスタックの入力に対して入力電圧5Vが与えられ、各FETの電圧降下が実質的に一定(10個のFETの例で、入力電圧の0.1、または0.5V)でありスタック内での電圧不均衡がないものとする。また、各FETは破壊されることなく少なくとも5Vを扱うことができると想定する。各FETが5Vを扱うことが可能でありかつ電圧の不均衡がないので、この例のスタックは全体として10×5Vすなわち50Vを扱うことが可能であると予測できる。
【0044】
電圧分布が不均一であるスタックの場合、入力電圧が増すと、相対電圧降下が最も大きいFETが最初に破壊されてスタック内の弱いリンクが生じると予測できる。
図8の例では、このような弱いリンクは約0.135という最大の相対電圧降下値を有する第1のFETである。よって、
図7および
図8の典型的なスタックの、劣化した降伏電圧Vbは、入力電圧(たとえば5V)を最大相対電圧降下値(0.135)で割ることによって、5/0.135、すなわち約37Vと予測できる。(FETの間で)電圧降下が一定である上記の例の50Vと比較して、37Vというのは、
図7および
図8の典型的なスタックの電圧取扱能力の著しい低下である。
【0045】
図9は、それぞれのゲート幅がWg1〜Wg10である10個のFET(300a〜300j)を有する典型的なスタック210を示す。ゲート幅Wg1〜Wg10の典型的な値が表1に示されている。
図9における10個のFET(300a〜300j)は各々100個のゲートフィンガを有する。明確にするためにFET間の電気的接続は示されていない。
【0047】
このような可変寸法FETについて、
図10は、シミュレートされたデータの一例を示し、FET各々における相対電圧降下がスタックに沿うFETの番号に対して示されている。たとえば、FET1の入力電圧(たとえば5V)の電圧降下は約0.103、FET2の入力電圧の電圧降下は約0.101、等である。
図7および
図8に関連する典型的な電圧分布(
図10にも示されている)と比較すると、電圧の不均衡は大幅に減じられてほぼ均等な電圧分布となっている。スタックに沿うこのような均等な電圧分布は、結果として、たとえば高調波ピーク、圧密点、および/または相互変調歪(IMD)についてのスイッチ性能の向上につながり得る。
【0048】
さらに、この均一的な電圧分布において最大の値は(第1のFETの)入力電圧の約0.103であることが注目される。したがって、
図8を参照して説明したように、
図9の典型的なスタックの降伏電圧は、入力電圧(たとえば5V)を相対電圧降下が最大(たとえば第1のFETの約0.103)の弱いリンクで割ることによって予測できる。このような予測により望ましくは5/0.103すなわち約48Vという値が得られ、これは電圧の不均衡がない理想的な構成の予測値に非常に近いことがわかる。また、周辺構成が異なればこれらの電圧値は変化し得るものの、それでもなお比較的平均的に分布した電圧プロファイルが得られることが理解されるはずである。
【0049】
図11は、寸法の違いをゲートフィンガの数の相違として実現できる、別の典型的なFETスタック210を示す。この典型的なスタック210は、約10μmである均一のゲート幅を有する10個のFET(300a〜300j)を含む。FETのゲートフィンガの数の相違は、FETの長さ(
図11においてFETの水平方向の寸法)の相違として示されている。
【0050】
いくつかの実施の形態において、ゲートフィンガの数の値Ng1〜Ng10を、補償しようとしている電圧分布プロファイルに基づいて選択することができる。たとえば、所与のスタックが
図8の例と同様の電圧分布プロファイルを有すると想定する。
図11の例のような修正されたスタックは、所与のスタックの不均一な分布(たとえば
図8)を補償するために選択された、選択されたFETパラメータの値(たとえばゲートフィンガの数)を有し得る。
図9の例では、表1の典型的な値を参照すると、ゲート幅パラメータを変化させることによって、
図8の典型的なスタックの不均一な分布を補償できることがわかる。
【0051】
図9および
図11の例の、ゲート幅およびフィンガの数についてのグラフはそれぞれ、(
図8の)補償しようとしている電圧分布と概ね同様のプロファイルを有してもよい。より具体的には、これら3つのプロファイルすべてにおいて、最大値がFET1にあり、これが減少してFET9で最小値になり、FET10でわずかに増加する。保障しようとしているプロファイルと相関関係があってもなくてもよいその他のFETパラメータプロファイルも可能であることが、理解されるであろう。たとえば、補償しようとしている典型的な電圧分布とは形状が逆の分布のFETパラメータがあってもよい。その他のFETパラメータおよび/または分布の形状も可能である。
【0052】
上記の例において、FETパラメータ(たとえばゲート幅またはフィンガの数)のプロファイルは、既存の電圧分布プロファイルを補償するという観点で説明している。このような既存の電圧分布プロファイルは、たとえば既存のスイッチ装置の測定もしくはモデル化、新規のスイッチ設計のモデル化、またはその組合わせから得られる。いくつかの実装例では、このような既存の電圧分布プロファイルは(得られるとしても)必ずしも必要条件ではないことが理解されるであろう。たとえば、本開示の1つ以上の特徴は、補償または訂正技術として利用されるのではなく新しい設計パラメータとして実現できる。
【0053】
図9および
図11を参照して本明細書で述べた例に関し、変化するパラメータ(たとえばゲート幅およびゲートフィンガの数)は、FETのうちのいくつかまたは全てについて概ね単調に一方向に変化する勾配を有すると説明している。しかしながら、これ以外の勾配構成も可能であることが理解されるであろう。たとえば、(たとえばスタックの中間またはその近くの)スイッチング素子で最大または最小となる勾配方式であってもよく、このような分布は対称形であってもなくてもよい。別の例において、勾配方式に2つ以上の局所的極値があってもよい。さらに他の例において、スタックに沿って1つ以上のステップ関数分布があってもよい。
【0054】
いくつかの実施の形態において、スタックパラメータの所望の分布が得られるように勾配方式を実現することができる。たとえば、スタック内のスイッチング素子の電圧降下の概ね均一の分布が得られるように勾配方式を設定することができる。
【0055】
図12〜
図14は、異なる勾配方式を如何にして実現してFETスタックの異なる方向性機能を得ることができるかについての例を示す。
図12Aは、いくつかの実施の形態において、可変寸法FETスタック210を、好ましくは一方端に入力(IN)を有ししたがって他方端に出力(OUT)を有するように構成できることを示す。
図9〜
図11を参照しながら本明細書で述べたFETスタック210は各々、入力を好ましくは第1のFET300a(FET1)側に設けて第1のFETが最大電圧降下に対応するようにした例である。
【0056】
図12Bは、いくつかの実施の形態において、本明細書に記載の1つ以上の特徴を有する可変寸法FETスタック210を双方向に構成し得ることを示す。このようなスタック210は、入力信号がスタック210のどちらの端部に与えられても本明細書に記載の電圧補償特性の利益を享受できる。
図13は、可変ゲート幅によるこのような双方向スタックの一例を示す。
図14は、ゲートフィンガの数によるこのような双方向スタックの一例を示す。可変寸法FETスタックの双方向機能は他の変動値によって実現することもできることが、理解されるであろう。
【0057】
図13の例を参照して、可変寸法FETスタック210は、10個のFET300a〜300j(FET1〜FET10)を含むことが示されている。端にある2つのFET(FET1、FET10)は各々ゲート幅Wg1を有することが示されている。端から二番
目のFET(FET2,FET9)は各々ゲート幅Wg2を有することが示されている。同様に、端から三番目のFET(FET3、FET8)、四番目のFET(FET4、FET7)、および五番目のFET(FET5、FET6)はそれぞれ、ゲート幅Wg3、Wg4、およびWg5を有することが示されている。
図13の例において、ゲート幅は、Wg1>Wg2>Wg3>Wg4>Wg5となるように選択することができる。このように、FETスタックの二分の一の部分各々においてFETのゲート幅を連続的に減少させることにより、この二分の一の部分の電圧降下プロファイルを、本明細書に記載のように好都合に補償することができる。
【0058】
図13の例では、10個の典型的なFETが、端のFETのゲート幅の値が最大であり中央のFETのゲート幅の値が最小である対称的なゲート幅プロファイルを有することが示されている。しかしながら、非対称のプロファイルでも双方向機能を実現できることが理解されるであろう。
【0059】
図14の例を参照して、可変寸法FETスタック210は、10個のFET300a〜300j(FET1〜FET10)を含むことが示されている。端にある2つのFET(FET1、FET10)は各々Ng1のゲートフィンガを有することが示されている。端から二番目のFET(FET2、FET9)は各々Ng2のゲートフィンガを有することが示されている。同様に、端から三番目のFET(FET3、FET8)、四番目のFET(FET4、FET7)、および五番目のFET(FET5、FET6)はそれぞれ、ゲートフィンガの数がNg3、Ng4、およびNg5であることが示されている。
図14の例において、ゲートフィンガの数は、Ng1>Ng2>Ng3>Ng4>Ng5となるように選択することができる。このように、FETスタックの二分の一の部分各々においてFETのゲートフィンガの数を連続的に減少させることにより、この二分の一の部分の電圧降下プロファイルを、本明細書に記載のように好都合に補償することができる。
【0060】
図14の例では、10個の典型的なFETが、端のFETのゲートフィンガの数が最も多く中央のFETのゲートフィンガの数が最も少ない、ゲートフィンガ数の対称的なプロファイルを有することが、示されている。しかしながら、非対称のプロファイルでも双方向機能を実現できることが理解されるであろう。
【0061】
本明細書に記載の、スイッチング素子の相違は、必ずしもFETに限定されない。たとえば、ダイオードのスタックの相違を実現して所望の性能結果を得ることができる。ダイオードに関しては、このような相違を、たとえば、接合面積および/またはスイッチング素子としての並列の複数のダイオードによって実現することができる。
【0062】
別の例では、MEMS装置(たとえばMEMSキャパシタまたはMEMSスイッチ)のスタックの相違を実現して所望の性能結果を得ることができる。このような装置に関しては、相違を、たとえば、コンタクト面積および/またはスイッチング素子としての並列の複数の装置によって実現することができる。
【0063】
図15は、いくつかの実施の形態において、本明細書に記載の1つ以上の特徴を有するスタック400を、N個の素子が電気的に直列接続されたものとして実現できることを示す。説明のために、Nは1よりも大きい整数でもよい。この代表的なスタックにおいて、所与の素子(i番目の素子)は容量C(i)を有することが示される。したがって、素子1は容量C(1)、素子2は容量C(2)を有するといったようになる。
【0064】
図16は、いくつかの実施の形態において、
図15の典型的な素子を有するスタック400を、これらの素子の容量値のプロファイルが所望のプロファイルになるように構成できることを示す。たとえば、これらの素子の容量値は、C(1)≒C(2)≒…≒C(N
−1)≒C(N)のように、ほぼ同一であってもよい。
【0065】
容量に関して特徴付けと調整を行なう上記の例、ならびに
図9および
図11のゲートパラメータの調整を行なう例において、各FETを、ゲートの横方向の寸法に関連する容量によって特徴付けることができる。このようなキャパシタ構成を平行板キャパシタに近付ける場合、容量はゲートの横方向の面積に比例し得るものであり対応する電圧はゲートの横方向の面積に反比例し得る。よって、ゲート幅が減少する(
図9)と、横方向の面積が減少し、したがって容量によって表される電圧は増大する。同様に、ゲートフィンガ数が減少する(
図11)と、横方向の面積が減少し、したがって容量によって表される電圧は増大する。このように、所与の電圧分布(たとえば
図8)を、素子(たとえばFET)に関連する容量の調整によって補償することができる。
【0066】
図17〜
図22は、本開示の1つ以上の特徴を実現できるスイッチング用途の非限定的な例を示す。
図23および
図24は、本開示の1つ以上の特徴をたとえばSOI装置において実現できる例を示す。
図25〜
図28は、本開示の1つ以上の特徴を、異なる製品において実現できる方法の例を示す。
【0067】
スイッチング装置の典型的な構成要素:
図17は、1つ以上の極102と1つ以上の接点104との間で1つ以上の信号を切替えるように構成された高周波(RF)スイッチ100を概略的に示す。いくつかの実施の形態において、このようなスイッチは、1つ以上のシリコンオンインシュレータ(SOI)FET等の電界効果トランジスタ(FET)に基づくものであってもよい。特定の極を特定の接点に接続したとき、このような経路は一般的に閉じているまたはON状態と呼ばれる。ある極とある接点との間の所与の経路が接続されていないとき、このような経路は一般的に開いているまたはOFF状態と呼ばれる。
【0068】
図18は、いくつかの実装例において、
図17のRFスイッチ100がRFコア110とエネルギ管理(EM)コア112とを含み得ることを示す。RFコア110は、第1のポートと第2のポートとの間でRF信号をルーティングするように構成できる。
図18に示される典型的な単極双投(SPDT)構成において、このような第1および第2のポートは、極102aおよび第1の接点104a、または、極102aおよび第2の接点104aを含み得る。
【0069】
いくつかの実施の形態において、EMコア112は、たとえば電圧制御信号をRFコアに与えるように構成できる。EMコア112はさらに、RFスイッチ100に論理デコードおよび/または電源調整機能を与えるように構成できる。
【0070】
いくつかの実施の形態において、RFコア110は、スイッチ100の1つ以上の入力と1つ以上の出力との間でRF信号を送ることができるようにする1つ以上の極と1つ以上の接点とを含み得る。たとえば、RFコア110は、
図18に示される単極双投(SPDTまたはSP2T)構成を含み得る。
【0071】
典型的なSPDTに関して、
図19は、RFコア110のより詳細な典型的構成を示す。RFコア110は、第1および第2のトランジスタ(たとえばFET)120a、120bを介して第1および第2の接点ノード104a、104bに結合される1つの極102aを含むことが、示されている。第1の接点ノード104aは、FET122aを介してRF接地に結合されてノード104aに対して分路機能を与えることが、示されている。同様に、第2の接点ノード104bは、FET122bを介してRF接地に結合されてノード104bに対して分路機能を与えることが、示されている。
【0072】
ある典型的な動作において、RFコア110が、RF信号が極102aと第1の接点104aとの間で送られる状態のとき、極102aと第1の接点ノード104aとの間のFET120aはオン状態で極102aと第2の接点ノード104bとの間のFET120bはオフ状態であってもよい。分路FET122a、122bについて、分路FET122aをオフ状態にすることによって、RF信号が極102aから第1の接点ノード104aに進むときに接地に分路しないようにすることができる。第2の接点ノード104bと関連する分路FET122bをオン状態にすることによって、第2の接点ノード104bを通ってRFコア110に到達したRF信号または雑音を接地に分路させ、極から第1の接点への動作に対する望ましくない干渉の影響を減じるようにすることができる。
【0073】
上記の例は単極双投構成に関して説明しているが、RFコアをその他の極および接点の数で構成できることが理解されるであろう。たとえば、極の数は2以上であってもよく、接点の数はこの例における2より少なくても多くてもよい。
【0074】
図19の例において、極102aと2つの接点ノード104a、104bとの間のトランジスタは、単一トランジスタとして示されている。いくつかの実装例において、このような極と接点との間のスイッチング機能を、スイッチアームセグメントによって与えてもよく、各スイッチアームセグメントは、複数のFET等のトランジスタを含む。
【0075】
このようなスイッチアームセグメントを有するRFコアの典型的なRFコア構成130が、
図20に示される。この例において、極102aおよび第1の接点ノード104aは第1のスイッチアームセグメント140aを介して結合されることが示されている。同様に、極102aおよび第2の接点ノード104bは第2のスイッチアームセグメント140bを介して結合されることが示されている。第1の接点ノード104aは第1の分路アームセグメント142aを介してRF接地に分路できることが示されている。同様に、第2の接点ノード104bは第2の分路アームセグメント142bを介してRF接地に分路できることが示されている。
【0076】
ある典型的な動作において、RFコア130が、RF信号が極102aと第1の接点ノード104aとの間で送られる状態のとき、第1のスイッチアームセグメント140aのすべてのFETをオン状態としてもよく、第2のスイッチアームセグメント104bのすべてのFETをオフ状態としてもよい。第1の接点ノード104aに対する第1の分路アーム142aのすべてのFETをオフ状態にすることによって、RF信号が極102aから第1の接点ノード104aに進むときに接地に分路しないようにすることができる。第2の接点ノード104bと関連する第2の分路アーム142bのすべてのFETをオン状態にすることによって、第2の接点ノード104bを通ってRFコア130に到達したRF信号または雑音を接地に分路させ、極から第1の接点への動作に対する望ましくない干渉の影響を減じるようにすることができる。
【0077】
また、SP2T構成について説明しているが、他の数の極と接点を有するRFコアを実現することもできることが理解されるであろう。
【0078】
いくつかの実装例において、スイッチアームセグメント(たとえば140a、140b、142a、142b)は、1つ以上のFET等の半導体トランジスタを含み得る。いくつかの実施の形態において、FETは、第1の状態または第2の状態が可能なものであってもよく、ゲートとドレインとソースとボディ(基板と呼ばれることもある)とを含み得る。いくつかの実施の形態において、FETは金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を含み得る。いくつかの実施の形態において、1つ以上のFETを直列接続して第1の端部と第2の端部を形成しFETが第1の状態(たとえばオン状態)のときに第1の端部と第2の端部との間でRF信号をルーティングできるようにしてもよい。
【0079】
本開示の少なくとも一部は、如何にしてFETまたは一群のFETを制御してスイッチング機能を所望のやり方で提供することができるかに関している。
図21は、いくつかの実装例において、このようなFET120の制御を、FET120の1つ以上の部分をバイアスおよび/または結合するように構成された回路150によって容易にできることを概略的に示す。いくつかの実施の形態において、このような回路150は、FET120のゲートをバイアスおよび/または結合する、FET120のボディをバイアスおよび/または結合する、および/またはFET120のソース/ドレインを結合するように構成された、1つ以上の回路を含み得る。
【0080】
如何にして1つ以上のFETの異なる部分をバイアスおよび/または結合するかについての概略的な例を
図22を参照しながら説明する。
図22において、ノード144と146との間のスイッチアームセグメント140(すなわちたとえば
図20の例の典型的なスイッチアームセグメント140a、140b、142a、142b)は複数のFET120を含むことが示されている。このようなFETの動作を、ゲートバイアス/結合回路150a、およびボディバイアス/結合回路150c、および/またはソース/ドレイン結合回路150bによって、制御するおよび/または容易にすることができる。
【0081】
ゲートバイアス/結合回路
図22に示される例において、FET120各々のゲートをゲートバイアス/結合回路150aに接続することにより、ゲートバイアス信号を受ける、および/またはゲートをFET120またはスイッチアーム140の別の部分に結合することができる。いくつかの実装例において、ゲートバイアス/結合回路150aの設計または特徴によってスイッチアーム140の性能を改善することができる。このような性能の改善は、装置の挿入損失、アイソレーション性能、電力取扱機能および/またはスイッチング装置の線形性を含み得るがこれに限定されない。
【0082】
ボディバイアス/結合回路
図22に示されるように、各FET120のボディをボディバイアス/結合回路150cに接続することにより、ボディバイアス信号を受ける、および/またはボディをFET120またはスイッチアーム140の別の部分に結合することができる。いくつかの実装例において、ボディバイアス/結合回路150cの設計または特徴によってスイッチアーム140の性能を改善することができる。このような性能の改善は、装置の挿入損失、アイソレーション性能、電力取扱機能および/またはスイッチング装置の線形性を含み得るがこれに限定されない。
【0083】
ソース/ドレイン結合回路
図22に示されるように、各FET120のソース/ドレインを結合回路150bに接続することにより、ソース/ドレインをFET120またはスイッチアーム140の別の部分に結合することができる。いくつかの実装例において、結合回路150bの設計または特徴によってスイッチアーム140の性能を改善することができる。このような性能の改善は、装置の挿入損失、アイソレーション性能、電力取扱機能および/またはスイッチング装置の線形性を含み得るがこれに限定されない。
【0084】
スイッチング性能パラメータの例:
挿入損失
スイッチング装置の性能パラメータは、挿入損失の量を含み得る。スイッチング装置の挿入損失は、RFスイッチング装置を通してルーティングされるRF信号の減衰の量であってもよい。たとえば、スイッチング装置の出力ポートにおけるRF信号の大きさは、スイッチング装置の入力ポートにおけるRF信号の大きさよりも小さい場合がある。いくつ
かの実施の形態において、スイッチング装置は、スイッチング装置の挿入損失の増大に寄与する、寄生容量、インダクタンス、抵抗、またはコンダクタンスを装置に導入する装置構成要素を含み得る。いくつかの実施の形態において、スイッチング装置の挿入損失は、スイッチング装置の出力ポートのRF信号の電力または電圧に対する、入力ポートのRF信号の電力または電圧の比として測定し得る。スイッチング装置の挿入損失の減少は、RF信号送信の改善を可能にするために望ましいものであり得る。
【0085】
アイソレーション
スイッチング装置の性能パラメータはまた、アイソレーションの量を含み得る。スイッチング装置のアイソレーションは、RFスイッチング装置の入力ポートと出力ポートの間のRFアイソレーションの量であってもよい。いくつかの実施の形態において、これは、スイッチング装置が入力ポートと出力ポートが電気的に分離されている状態のとき、たとえばスイッチング装置がオフ状態のときの、スイッチング装置のRFアイソレーションの量であってもよい。スイッチング装置のアイソレーションの増大によってRF信号の完全性を改善することができる。特定の実施の形態において、アイソレーションの増大によって無線通信装置の性能を改善することができる。
【0086】
相互変調歪
スイッチング装置の性能パラメータはさらに、相互変調歪(IMD)性能の程度を含み得る。相互変調歪(IMD)は、RFスイッチング装置の非線形性の程度であってもよい。
【0087】
IMDは、2つ以上の信号が混合されて高調波周波数ではない周波数が生じることによって起こり得る。たとえば、2つの信号が、周波数空間において互いに比較的近い基本周波数f
1およびf
2(f
2>f
1)を有すると仮定する。これらの信号を混合すると、結果として、これら2つの信号の基本周波数と高調波周波数の異なる積に相当する周波数で、周波数スペクトルのピークが発生する。たとえば、二次相互変調歪(IMD2とも呼ばれる)は一般的に、周波数f
1+f
2 f
2−f
1、2f
1、および2f
2を含むと考えられる。三次IMD(IMD3とも呼ばれる)は一般的に、2f
1+f
2、2f
1−f
2、f
1+2f
2、f
1−2f
2を含むと考えられる。より高次の積を同じようなやり方で形成することができる。
【0088】
一般的には、IMDの次数が大きいほど電力レベルは下がる。したがって、二次および三次は、特に注目される望ましくない影響である可能性がある。四次および五次等のより高い次数も状況によっては注目される可能性がある。
【0089】
いくつかのRF用途では、RFシステム内での干渉の受け易さを減じることが望ましい場合がある。RFシステム内の非線形性は結果としてスプリアス信号をシステムに導入する可能性がある。RFシステム内のスプリアス信号は結果としてシステム内の干渉を引起しRF信号によって伝えられる情報を劣化させる可能性がある。非線形性が増したRFシステムは、干渉をより受け易くなる可能性がある。システムの構成要素、たとえばスイッチング装置における非線形性は、RFシステムへのスプリアス信号の導入に寄与することによって、RFシステム全体の線形性およびIMD性能の劣化に寄与する可能性がある。
【0090】
いくつかの実施の形態において、RFスイッチング装置を、無線通信システムを含むRFシステムの一部として実現してもよい。このシステムのIMD性能を、RFスイッチング装置の線形性等のシステム構成要素の線形性を高めることによって改善することができる。いくつかの実施の形態において、無線通信システムはマルチバンドおよび/またはマルチモード環境で動作することができる。相互変調歪(IMD)性能の改善は、マルチバンドおよび/またはマルチモード環境で動作する無線通信システムにおいて望ましい可能
性がある。いくつかの実施の形態において、スイッチング装置のIMD性能の改善によって、マルチモードおよび/またはマルチバンド環境で動作する無線通信システムのIMD性能を改善することができる。
【0091】
スイッチング装置のIMD性能の改善は、さまざまな無線通信基準で動作する無線通信装置、たとえばLTE通信基準で動作する無線通信装置にとって望ましい可能性がある。いくつかのRF用途では、データおよび音声通信の同時送信が可能な無線通信装置において動作するスイッチング装置の線形性を改善することが望ましい可能性がある。たとえば、スイッチング装置の改善されたIMD性能は、LTE通信基準で動作し音声およびデータ通信の同時送信を実行する無線通信装置(たとえばSVLTE)にとって望ましい可能性がある。
【0092】
高電力取扱機能
いくつかのRF用途では、RFスイッチング装置が高電力下で動作する一方でその他の装置性能パラメータの劣化を減じることが望ましい場合がある。いくつかの実施の形態において、RFスイッチング装置が、相互変調歪、挿入損失、および/またはアイソレーション性能が改善された状態で、高電力下で動作することが望ましい場合がある。
【0093】
いくつかの実施の形態において、スイッチング装置の1つのスイッチアームセグメントにおけるトランジスタの数を増すことにより、スイッチング装置の電力取扱機能を改善することができる。たとえば、1つのスイッチングアームセグメントにおいて直列接続されるFETの数を増しFETスタック高さを大きくすることにより、高電力下での装置性能を改善することができる。しかしながら、いくつかの実施の形態では、FETスタック高さを増すとスイッチング装置の挿入損失性能が低下することがある。
【0094】
FETの構造および製造プロセス技術の例:
スイッチング装置は、オンチップ、オフチップ、またはその組合わせで実現することができる。また、スイッチング装置はさまざまな技術を用いて製造することができる。いくつかの実施の形態において、RFスイッチング装置はシリコンまたはシリコンオンインシュレータ(SOI)技術を用いて製造することができる。
【0095】
本明細書に記載のように、RFスイッチング装置はシリコンオンインシュレータ(SOI)技術を用いて実現することができる。いくつかの実施の形態において、SOI技術は、シリコン装置層の下の埋込み酸化物層等の、絶縁性材料の埋込み層を有する半導体基板を含み得る。たとえば、SOI基板はシリコン層の下方の酸化物層を含み得る。当該技術では周知のその他の絶縁材料を使用してもよい。
【0096】
SOI技術を用いるRFスイッチング装置等のRF用途の実現によって、スイッチング装置の性能を改善することができる。いくつかの実施の形態において、SOI技術によって消費電力を削減することができる。削減された消費電力は、無線通信装置に関連するものを含めてRF用途において望ましい可能性がある。SOI技術は、減少させたトランジスタの寄生容量およびシリコン基板への配線メタライゼーションにより、装置回路の消費電力を削減することができる。埋込み酸化物層の存在もまた、接合容量の減少または高抵抗基板の使用により、基板に関連するRF損失を減じることができる。電気的に分離されたSOIトランジスタは、積層を容易にし、チップサイズの減少に寄与する。
【0097】
いくつかのSOI FET構成において、各トランジスタを、ソースおよびドレインが(平面視で)矩形でありゲート構造が矩形の指のようにソースとドレインの間に延びるフィンガベースの装置として構成することができる。
図23Aおよび
図23Bは、SOI上に実装された典型的なフィンガベースのFET装置の平面図および側面断面図を示す。示
されているように、本明細書に記載のFET装置は、p型FETまたはn型FETを含み得る。したがって、本明細書ではいくつかのFET装置をp型装置として説明しているが、このようなp型装置に関連するさまざまな概念はn型装置にも適用できることが理解されるであろう。
【0098】
図23Aおよび
図23Bに示されるように、pMOSFETは、半導体基板上に形成された絶縁体層を含み得る。絶縁体層は、二酸化シリコンまたはサファイア等の材料から形成することができる。絶縁体内にnウェルが、露出した面が矩形領域を概ね定めるように形成されることが示されている。ソース(S)およびドレイン(D)は、pドープ領域であり、その露出した表面が概ね矩形を定めることが示されている。示されているS/D領域を、ソース機能とドレイン機能が逆になるように構成してもよい。
【0099】
図23Aおよび
図23Bはさらに、ゲート(G)をnウェル上においてソースとドレインの間に位置するように形成できることを示している。この例におけるゲートはソースおよびドレインとともに延びる矩形形状を有するものとして示されている。n型ボディコンタクトも示されている。矩形のウェル、ソース、およびドレイン領域、ならびにボディコンタクトは、多数の周知の技術によって形成することができる。
【0100】
図24Aおよび
図24Bは、SOI上に実装されたマルチフィンガFET装置の一例の平面図および側面断面図を示す。矩形のnウェル、矩形のpドープ領域、矩形のゲート、およびn型ボディコンタクトは、
図23Aおよび
図23Bを参照しながら説明したやり方と同様のやり方で形成することができる。
【0101】
図24Aおよび
図24Bの例のマルチフィンガFET装置は、ソース領域がともにソースノードに電気的に接続されドレイン領域がともにドレインノードに接続されるように構成することができる。ゲートもともにゲートノードに接続することができる。このような例の構成において、共通ゲートバイアス信号をゲートノードを通して与えることにより、ソースノードとドレインノードの間の電流の流れを制御することができる。
【0102】
いくつかの実装例において、複数の上記マルチフィンガFET装置をスイッチとして直列接続することにより、高電力RF信号を扱うことができる。各FET装置は、接続されたFETにおける電力散逸に関連する全体的な電圧降下を分割することができる。たとえばスイッチの電力取扱要求に基づいて、いくつかのこのようなマルチフィンガFET装置を選択してもよい。
【0103】
製品での実装の例:
本明細書に記載のFETに基づくスイッチ回路のさまざまな例は、いくつかの異なる方法および異なる製品レベルで実装することができる。このような製品実装のうちのいくつかを、具体例として説明する。
【0104】
半導体チップ実装
図25A〜
図25Dは、1つ以上の半導体チップ上でのこのような実装の非限定的な例を概略的に示す。
図25Aは、いくつかの実施の形態において、本明細書に記載の1つ以上の特徴を有するスイッチ回路120およびバイアス/結合回路150をチップ800上に実装できることを示している。
図25Bは、いくつかの実施の形態において、バイアス/結合回路150のうちの少なくとも一部を
図25Aのチップ800の外側に実装できることを示している。
【0105】
図25Cは、いくつかの実施の形態において、本明細書に記載の1つ以上の特徴を有するスイッチ回路120を第1のチップ800a上に実装することができ、本明細書に記載
の1つ以上の特徴を有するバイアス/結合回路150を第2のチップ800b上に実装できることを示す。
図25Dは、いくつかの実施の形態において、バイアス/結合回路150のうちの少なくとも一部を
図25Cの第1のチップ800aの外側に実装できることを示す。
【0106】
パッケージングモジュール実装
いくつかの実施の形態において、本明細書に記載の1つ以上の特徴を有する1つ以上のチップをパッケージングされたモジュール内に実装することができる。このようなモジュールの一例を
図26A(平面図)および
図26B(側面図)に示す。スイッチ回路およびバイアス/結合回路双方が同一チップ上にあるという前提で説明されている(
図25Aの構成例)が、パッケージングされたモジュールはその他の構成に基づいていてもよいことが理解されるであろう。
【0107】
モジュール810はパッケージング基板812を含むことが示されている。このようなパッケージング基板は、複数の構成要素を受けるように構成することができ、たとえば積層基板を含み得る。パッケージング基板812上に搭載された構成要素は、1つ以上のチップを含み得る。示されている例では、スイッチング回路120とバイアス/結合回路150とを有するチップ800がパッケージング基板812上に搭載されていることが示されている。チップ800は、接続ワイヤボンド816等の接続を通してモジュールのその他の部分に(および2つ以上のチップを利用する場合は互いに)電気的に接続することができる。このような接続ワイヤボンドは、チップ800上に形成されたコンタクトパッド818とパッケージング基板812上に形成されたコンタクトパッド814の間に形成することができる。いくつかの実施の形態において、1つ以上の表面実装装置(surface mounted device)(SMD)822をパッケージング基板812上に搭載することにより、モジュール810のさまざまな機能を容易にすることができる。
【0108】
いくつかの実施の形態において、パッケージング基板812は、さまざまな構成要素を互いに接続するため、および/または外部接続のためにコンタクトパッドと相互接続するための、電気的接続経路を含み得る。たとえば、接続経路832は典型的なSMD822とチップ800を相互接続するものとして示される。別の例では、接続経路832はSMD822と外部接続コンタクトパッド834を相互接続するものとして示される。さらに他の例では、接続経路832はチップ800を接地接続コンタクトパッド836と相互接続するものとして示される。
【0109】
いくつかの実施の形態において、パッケージング基板812およびその上に搭載されたさまざまな構成要素の上の空間を、オーバモールド(overmold)構造830で充填することができる。このようなオーバモールド構造は、構成要素とワイヤボンドを外部要素から保護することおよびパッケージングされたモジュール810のより簡単な取扱いを含めて、多数の所望の機能を提供することができる。
【0110】
図27は、
図26Aおよび
図26Bを参照しながら述べたモジュール810内に実装できるスイッチング構成の例の概略図を示す。この例において、スイッチ回路120は、極はアンテナに接続可能で接点はさまざまなRxおよびTx経路に接続可能なSP9Tスイッチとして示されている。このような構成により、たとえば無線装置におけるマルチモードマルチバンド動作を容易にすることができる。
【0111】
モジュール810はさらに、電力(たとえば電源電圧VDD)を受けかつスイッチ回路120および/またはバイアス/結合回路150の動作を容易にする制御信号を受けるためのインターフェイスを含み得る。いくつかの実装例において、電源電圧および制御信号をバイアス/結合回路150を介してスイッチ回路120に与えてもよい。
【0112】
無線装置実装
いくつかの実装例において、本明細書に記載の1つ以上の特徴を有する装置および/または回路を、無線装置等のRF装置に含めることができる。このような装置および/または回路は、無線装置に直接、本明細書に記載のモジュール形式で、またはそれを組合わせた形式で、実装することができる。いくつかの実施の形態において、このような無線装置は、たとえば、携帯電話、スマートフォン、電話機能を備えたまたは備えていないハンドヘルド無線装置、無線タブレット等を含み得る。
【0113】
図28は、本明細書に記載の1つ以上の好都合な特徴を有する典型的な無線装置900を概略的に示す。本明細書に記載のさまざまなスイッチおよびさまざまなバイアス/結合構成に照らして、スイッチ120およびバイアス/結合回路150は、モジュール810の一部であってもよい。いくつかの実施の形態において、このようなスイッチモジュールは、たとえば、無線装置900のマルチバンドマルチモード動作を容易にすることができる。
【0114】
この典型的な無線装置900において、複数の電力増幅器(power amplifier)(PA
)を有するPAモジュール916は、増幅されたRF信号を(デュプレクサ920を介して)スイッチ120に与えることができ、スイッチ120は、増幅されたRF信号をアンテナにルーティングすることができる。PAモジュール916は、増幅されていないRF信号を、周知の方法で構成し動作させることができるトランシーバ914から受けることができる。トランシーバは、受けた信号を処理するように構成することもできる。トランシーバ914は、ユーザに適したデータおよび/または音声信号とトランシーバ914に適したRF信号の間の変換のために構成されたベースバンドサブシステム910と対話することが示されている。トランシーバ914はまた、無線装置900の動作のための電力を管理するように構成された電力管理要素906に接続されることが示される。このような電力管理要素は、ベースバンドサブシステム910およびモジュール810の動作を制御することもできる。
【0115】
ベースバンドサブシステム910は、ユーザインターフェイス902に接続されて、ユーザに与えユーザから受ける音声および/またはデータのさまざまな入力および出力を容易にすることが、示されている。ベースバンドサブシステム910はまた、データおよび/または命令を格納して無線装置の動作を容易にしおよび/またはユーザに対する情報の格納場所を提供するメモリ904に接続されることが、示されている。
【0116】
いくつかの実施の形態において、デュプレクサ920により、共通アンテナ(たとえば924)を用いて送信動作と受信動作を同時に実行することができる。
図28では、受信した信号が、たとえば低雑音増幅器(LNA)を含み得る「Rx」経路(図示せず)にルーティングされることが示されている。
【0117】
その他いくつかの無線装置構成は、本明細書に記載の1つ以上の特徴を利用することができる。たとえば、無線装置はマルチバンド装置である必要はない。別の例において、無線装置は、ダイバーシティアンテナ等の追加のアンテナ、ならびにWi−Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、およびGPS等の追加の接続性の特徴を含み得る。
【0118】
文脈から明らかに別段の要求がある場合を除き、明細書および請求項を通して「備える」等の用語は、排他的または網羅的という意味とは逆に、包括的という意味で、すなわち「含むがそれに限定されない」という意味で解釈されるべきものである。本明細書において一般的に使用される「結合される」という用語は、2つ以上の要素が直接接続されるかまたは1つ以上の中間要素を介して接続されることを意味する。加えて、「本明細書」、
「上記」、「下記」という用語および同様の趣旨の用語は、本願において使用する場合、この出願全体を指しておりこの出願の特定の部分を指しているのではない。文脈によっては、上記詳細な説明において単数形または複数形を用いた用語はそれぞれ複数または単数の場合を含み得る。2つ以上のアイテムのリストに関する「または」という用語は、このリスト内のアイテムのうちのいずれか、このリスト内のアイテムすべて、およびこのリスト内のアイテムの任意の組合せという解釈すべてを含む。
【0119】
本発明の実施の形態の上記詳細な説明は、網羅的であることまたは本発明を上記の形態そのものに限定することを意図したものではない。例示のために本発明の特定の実施の形態および実施例について説明しているが、本発明の範囲の中で均等のさまざまな変形が可能であることを当業者は理解するであろう。たとえば、プロセスまたはブロックは所与の順序で示されているものの、代替の実施の形態ではそれとは異なる順序のステップを含むルーチンを実行してもよくまたはそれとは異なるブロックを含むシステムを採用してもよい。また、いくつかのプロセスまたはブロックを、削除、移動、追加、分割、結合、および/または変形してもよい。これらのプロセスまたはブロックは各々、多様な異なるやり方で実現し得る。また、プロセスまたはブロックは、連続して実行されるものとして示されている場合があるが、そうではなくこれらのプロセスまたはブロックを並列に実行してもよくまたは異なる時間に実行してもよい。
【0120】
本明細書に示す本発明の教示は、必ずしも上記システムに適用される訳ではなく、その他のシステムに適用することができる。上記さまざまな実施の形態の要素および動作を組合わせてさらに他の実施の形態を示すことができる。
【0121】
本発明のいくつかの実施の形態について述べてきたが、これらの実施の形態は専ら例示を目的として示したものであり本開示の範囲を制限することを意図したものでなはい。実際、本明細書に記載の新しい方法およびシステムは、他のさまざまな形態で実現し得る。さらに、本明細書に記載の方法およびシステムの形態についてのさまざまな省略、置換え、および変更は、本開示の精神から逸脱することなく行ない得る。以下の請求項およびその均等物は、本開示の範囲および精神に属するこのような形態または変形を包含することを意図している。