(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6963592
(24)【登録日】2021年10月19日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】増強された汚れ保持容量を有するフィルタ構造
(51)【国際特許分類】
B01D 39/16 20060101AFI20211028BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20211028BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20211028BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20211028BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20211028BHJP
B01D 71/48 20060101ALI20211028BHJP
B01D 71/64 20060101ALI20211028BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20211028BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20211028BHJP
B01D 71/10 20060101ALI20211028BHJP
B01D 71/16 20060101ALI20211028BHJP
B01D 71/54 20060101ALI20211028BHJP
B01D 71/62 20060101ALI20211028BHJP
B01D 71/42 20060101ALI20211028BHJP
B01D 71/28 20060101ALI20211028BHJP
B01D 71/30 20060101ALI20211028BHJP
B01D 71/34 20060101ALI20211028BHJP
B01D 71/38 20060101ALI20211028BHJP
B01D 63/08 20060101ALI20211028BHJP
B01D 63/14 20060101ALI20211028BHJP
B01D 71/52 20060101ALI20211028BHJP
B01D 71/60 20060101ALI20211028BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20211028BHJP
C12M 1/12 20060101ALN20211028BHJP
【FI】
B01D39/16 A
B01D39/16 E
B01D69/12
B01D69/10
B01D69/00
B01D71/26
B01D71/48
B01D71/64
B01D71/56
B01D71/68
B01D71/10
B01D71/16
B01D71/54
B01D71/62
B01D71/42
B01D71/28
B01D71/30
B01D71/34
B01D71/38
B01D63/08
B01D63/14
B01D71/52
B01D71/60
B32B5/24 101
!C12M1/12
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-141958(P2019-141958)
(22)【出願日】2019年8月1日
(62)【分割の表示】特願2016-571207(P2016-571207)の分割
【原出願日】2015年6月23日
(65)【公開番号】特開2019-217501(P2019-217501A)
(43)【公開日】2019年12月26日
【審査請求日】2019年8月30日
(31)【優先権主張番号】62/017,463
(32)【優先日】2014年6月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サル・ジリャ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・ニエム
(72)【発明者】
【氏名】シェリー・アシュビー・レオン
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・タシック
【審査官】
▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−006272(JP,A)
【文献】
特開2010−000407(JP,A)
【文献】
特開2013−236985(JP,A)
【文献】
特開昭62−181797(JP,A)
【文献】
特開2005−065647(JP,A)
【文献】
特開2005−333886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
B32B 1/00−43/00
D04H 1/00−18/04
B01D 39/00−41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)入口および濾液出口を有するホルダー;および
(b)前記ホルダー内に配置され、当該ホルダーを上流区画と下流区画とに分離する複合媒体を含む液体濾過装置であって、前記複合媒体が
(i)対向する第1および第2の面を有する多孔質中間層、
(ii)中間層の第1の面上に配置された第1の繊維含有フィルタ層、および
(iii)中間層の第2の面上に配置された第2の繊維含有フィルタ層
を含み、第1および第2の繊維含有フィルタ層の繊維は異なる繊維径を有し、各繊維含有フィルタ層は異なる細孔径を有し、中間層は第1または第2の繊維含有フィルタ層のいずれよりも粗い細孔径を有し、前記繊維がナノ繊維である、液体濾過装置。
【請求項2】
第1および第2の繊維含有フィルタ層の繊維は、熱可塑性ポリマーおよび熱硬化性ポリマーからなる群から選択されるポリマー材料である請求項1に記載の液体濾過装置。
【請求項3】
中間層が不織布を含む請求項1に記載の液体濾過装置。
【請求項4】
不織布がポリマーナノ繊維を含む請求項3に記載の液体濾過装置。
【請求項5】
ポリマーナノ繊維がポリプロピレンから作られる請求項4に記載の液体濾過装置。
【請求項6】
第1の繊維含有フィルタ層のナノ繊維は、約10nmから約1,000nmの繊維直径を有し、第2の繊維含有フィルタ層のナノ繊維は、約10nmから約1,000nmの繊維直径を有する請求項1に記載の液体濾過装置。
【請求項7】
第1および第2の繊維含有フィルタ層が、電界紡糸されたナノ繊維マットを含む請求項1に記載の液体濾過装置。
【請求項8】
ナノ繊維が、熱可塑性ポリマーおよび熱硬化性ポリマーからなる群から選択されるポリマー材料である請求項7に記載の液体濾過装置。
【請求項9】
ナノ繊維が、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、ナイロン、ポリイミド、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリスルホン、セルロース、酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、ポリ(尿素ウレタン)、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、ポリアニリン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(ビニルブチレン)、それらのコポリマーおよび組み合わせからなる群から選択されるポリマー材料である請求項7に記載の液体濾過装置。
【請求項10】
ナノ繊維が、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン6,6−6,10、ナイロン−6コポリマー、ナイロン−6,6コポリマー、ナイロン−6,6−6,10コポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択されるポリマー材料である請求項7に記載の液体濾過装置。
【請求項11】
請求項1に記載の液体濾過媒体を通して細胞培養培地を濾過することを含む、細胞培養培地から細菌を除去する方法。
【請求項12】
細菌は細胞培養培地から除去される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年6月26日に出願された米国仮出願第62/017,463号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、流体濾過装置に関し、より詳細には、複合媒体フィルタ構造を組み込んだ流体濾過装置、ならびにそのような装置および構造を使用および作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
望ましくない微粒子および汚染物質を除去するように設計された流体フィルタは、粒子および汚染物質がフィルタ媒体に捕捉されるにつれて、流体経路が閉鎖または制限されるという事実に起因して目詰まりを受けやすい。フィルタの容量または耐用年数は、最小値を上回る速度で流体を流動させる能力、または最大値未満の圧力で所望の流量を維持する能力に関連する。
【0004】
フィルタの必要な汚れ保持容量または耐用年数を増加させるための1つのアプローチは、より粗い構造を有するプレフィルタで最終フィルタを保護することである。プレフィルタは、一般に、最終フィルタの粒径除去等級よりも大きな粒径除去等級を有する。プレフィルタのより粗い構造は、それがなければ最終フィルタを詰まらせるであろう比較的大きな粒子を除去するので、最終フィルタの耐用年数が増加する。さらに、そのより粗い構造のために、プレフィルタは、同じ粒子のチャレンジに対して最終フィルタ程容易に詰まることはない。従って、組み合わされたプレフィルタおよび最終フィルタは、最終フィルタ単独と比較してより長いフィルタ耐用年数を可能にする。
【0005】
しかし、より粗い構造のプレフィルタをフィルタ装置に追加することは、装置内に追加のプレフィルタ材料を支持し収容することに関連するコストのような欠点を有する。プレフィルタの追加は、濾過システムによって占有される全空間を増加させ得る。コンパクトさは濾過システムの所望の特性であるので、フィルタ容積のこの増加は欠点と考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、それがなければ最終的なフィルタを詰まらせるであろう比較的大きな汚染物質および粒子を除去することができる、増加した耐用年数および必要な汚れ保持容量を有する流体濾過構造を開発することが望ましい。これらの有利な特性を有する流体濾過構造を組み込むことによって、流体濾過装置の製造コストを下げ、およびそのような装置の全体的なサイズ要件を低減することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
プレフィルタおよび最終フィルタのアセンブリに関連する上記の必要性および問題に対応して、本発明は、少なくとも2つの繊維含有多孔質フィルタ層の間に配置された粗い多孔質中間層を有する複合フィルタ媒体を含む流体濾過構造を提供する。特定の実施形態では、少なくとも2つの多孔質フィルタ層は、それぞれが異なる繊維径を有する電界紡糸ポリマーナノ繊維から作製される。
【0008】
本発明の別の実施形態は、少なくとも2つのポリマー繊維含有フィルタ層またはマットの間に配置された1つ以上のポリマー不織粗中間層を含む複合フィルタ媒体を含む。
【0009】
本発明の他の実施形態は、(i)第1の繊維径を有する第1のポリマー繊維を含む第1のフィルタマット、(ii)第2の繊維径を有する第2のポリマー繊維を含む第2のフィルタマット、および(iii)第1および第2のフィルタマットの間に配置された粗い中間層を有し、第1の繊維径が第2の繊維径とは異なり、各フィルタマットが実際の細孔径によって決定される異なる細孔径等級を有する複合フィルタ媒体を含む。
【0010】
本発明の別の実施形態では、複合フィルタ媒体中の第1および第2のポリマー繊維はナノ繊維である。
【0011】
本発明の別の実施形態では、第1および第2のポリマーナノ繊維は、電界紡糸されたナノ繊維である。
【0012】
特定の実施形態では、本発明は、第1または第2のフィルタ層のいずれかと比較したときに、より粗い細孔径を有する中間層を含む複合フィルタ媒体であって、中間層の平均細孔径は、中間層のいずれかの側にある第1または第2の繊維含有フィルタ層の平均細孔径よりも約2から100倍大きく、得られる複合フィルタ媒体が、その間により粗い中間層の存在なしに互いに直接重ねられたフィルタ層と比較して、増加した汚れ保持容量を有する該複合フィルタ媒体を提供する。
【0013】
さらに他の実施形態では、本発明は、少なくとも2つのポリマー繊維含有フィルタマットの間に配置された1つ以上のポリマー不織粗中間層から製造された複合媒体を含む流体濾過構造を収容する流体濾過装置を提供する。
【0014】
本発明の別の実施形態では、複合フィルタ媒体中の少なくとも2つのポリマー繊維はナノ繊維である。
【0015】
本発明の別の実施形態において、ナノ繊維は電界紡糸されたナノ繊維である。
【0016】
さらに他の実施形態では、本発明は、少なくとも2つのポリマー繊維含有フィルタマットの間に配置された1つ以上のポリマー不織粗中間層から製造された複合媒体を含む流体濾過構造を収容する流体濾過装置の使用方法および製造方法を提供する。
【0017】
本発明の別の実施形態は、ポリマー繊維がナノ繊維である複合媒体の使用方法および製造方法を提供する。
【0018】
本発明の別の実施形態は、ポリマーナノ繊維が電界紡糸されたナノ繊維である複合媒体の使用方法および製造方法を提供する。
【0019】
本発明の実施形態のさらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明、特許請求の範囲および図面に記載される。本明細書に記載の特定の実施形態は、単なる例示として提供され、決して限定することを意味しない。当業者には明らかであるように、その精神および範囲から逸脱することなく、この発明の多くの修正および変形を行うことができる。本発明のさらなる態様および利点は、以下の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】
図1Aは、本発明の特定の実施形態に従った複合媒体構造の断面図を示す。
【
図1B】
図1Bは、本発明の特定の実施形態に従った複合媒体構造の断面図を示す。
【
図1C】
図1Cは、本発明の特定の実施形態に従った複合媒体構造の断面図を示す。
【
図1D】
図1Dは、各フィルタ層の間に中間層が配置されていない従来技術の多層フィルタ媒体の断面図である。
【
図2】特定の実施形態に従ったフィルタ装置の処理能力に対するフィルタ層構成および中間層の有無の影響を示す棒グラフである。
【
図3】特定の実施形態に従ったフィルタ装置の処理能力に対するフィルタ層構成および中間層の有無の影響を示す棒グラフである。
【
図4】特定の実施形態に従ったフィルタ装置の処理能力に対するフィルタ層構成および中間層の有無の影響を示す棒グラフである。
【
図5】特定の実施形態に従ったフィルタ装置の処理能力に対するフィルタ層構成および中間層の存在の影響を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
特に断らない限り、本明細書(特許請求の範囲を含む)で使用される成分の量、細胞培養、処理条件等を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。従って、それとは反対に示されない限り、数値パラメータは近似値であり、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。
【0022】
本明細書および添付の特許請求の範囲の目的に対し、他に指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、材料のパーセンテージまたは割合、反応条件、および他の数値を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語で修飾されると理解されるべきである。
【0023】
従って、それとは反対に示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも報告された有効数字の数の観点から、および通常の丸め技法を適用して解釈されるべきである。
【0024】
本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示された数値は可能な限り正確に報告される。しかし、いずれの数値も、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。さらに、本明細書に開示される全ての範囲は、その中に包含される全ての部分範囲を包含するものと理解されるべきである。
【0025】
本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中に別段の指示がない限り、単に範囲内の各別個の値を個別に指す簡略な方法として役立つことを意図し、各別個の値は本明細書に個別に列挙されているかのように明細書に組み込まれる。
【0026】
本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中で別段指示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。
【0027】
本明細書で提供される任意のおよび全ての例、または例示的な用語(例えば、「等」)の使用は、単に本発明をよりよく示すことを意図しており、特に断らない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言葉も、請求されていないいかなる要素を本発明の実施に必須であると示すものとして解釈されるべきではない。
【0028】
当業者には明らかであるように、その精神および範囲から逸脱することなく、本発明の多くの修正および変形を行うことができる。本明細書に記載の特定の実施形態は、単なる例示として提供され、決して限定することを意味しない。本明細書および実施例は、例示のみとして考えられ、本発明の真の範囲および精神は、添付の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【0029】
本発明をさらに詳細に説明する前に、いくつかの用語を定義する。これらの用語の使用は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の説明を容易にするために役立つだけである。追加の定義は、詳細な説明を通じて説明されることもある。
【0030】
I.定義
本発明を説明する文脈における(特に添付の特許請求の範囲の文脈における)用語「a」および「an」および「the」ならびに同様の指示対象の使用は、本明細書に別段に示されていない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を包含するものと解釈されるべきである。
【0031】
別段の指示がない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の要素の各々を指すと理解されるべきである。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「ナノ繊維」は、数ナノメートルから1,000ナノメートルまで変化する直径を有する繊維を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「流体濾過構造」、「複合媒体(複数)」、「複合媒体(単数)」、「フィルタ媒体(単数)」または「フィルタ媒体(複数)」は、目的の生成物ならびに粒子および汚染物質を運ぶ流体が通過し、粒子および汚染物質が媒体内または媒体上に堆積する材料の集まりを指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「透過率」とは、ある体積の流体が、フィルタを横切って所与の圧力降下で所与の面積の濾過媒体を通過する速度を指す。透過率の一般的な単位は、LMH/psiと略される圧力降下の各psiに対する毎時平方メートル当たりのリットルである。
【0035】
本明細書で使用する「電界紡糸」または「電界紡糸された」という用語は、ポリマー溶液または溶融物から、そのような溶液に電位を印加することによってナノ繊維を製造する静電紡糸法を指す。静電紡糸法を実施するのに適した装置をはじめとする、濾過媒体のための電界紡糸ナノ繊維マットを作製するための静電紡糸法は、国際公開第2005/024101号、国際公開第2006/131081号および国際公開第2008/106903号(各々チェコ共和国リベレツのElmarco SROに譲渡されている)に開示されており、各々は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0036】
本明細書で使用される用語「ナノ繊維マット」は、複数のナノ繊維のアセンブリを指し、マットの厚さが典型的にはマット中の単一繊維の直径よりも少なくとも約10倍大きい。ナノ繊維は、マット内にランダムに配置されてもよく、または1つまたは複数の軸に沿って整列されてもよい。
【0037】
本明細書で使用される「生物医薬品調製物」または「試料」という用語は、目的の生成物(例えば、治療用タンパク質または抗体)ならびに望ましくない成分、粒子、および汚染物質または粒子、例えば、タンパク質凝集体(例えば、目的の生成物の高分子量凝集体)を含む任意の液体組成物を指す。
【0038】
II.例示的流体濾過構造
図1Aは、第1(26)および第2(28)の電界紡糸されたポリマー繊維含有フィルタマットの間に配置された少なくとも1つの粗い多孔質不織中間層(25)を含む複合媒体を含む流体濾過構造(20)の例示的実施形態を示す。
【0039】
図1Bは、第1(32)および第2(36)の電界紡糸されたポリマー繊維含有フィルタマットの間に配置された少なくとも1つの粗い多孔質不織中間層(35)、および第1および第2の繊維含有マットと比較して異なる細孔径等級をそれぞれ有する追加の電界紡糸されたポリマー繊維含有マット(34、38)を含む複合媒体を含む流体濾過構造(30)の例示的実施形態を示す。マット(36、38)および(32、34)は、それぞれ互いに重ねられて非対称構造を形成する。このようなマット構造に非対照性を作成することにより、複合媒体フィルタの汚れ保持容量が向上する。実際、チャレンジストリームに面する流体濾過構造のより粗い部分は、特定されたサイズよりも大きな粒子の通過を防止するように設計されたこの構造のより細かい部分(「保持性」の層)に対するプレフィルタとして機能する。
【0040】
図1Cは、第1(42)および第2(44)の電界紡糸されたポリマー繊維含有フィルタマットの間、第3(46)および第2(44)の電界紡糸されたポリマー繊維含有フィルタマットの間、ならびに第4(48)および第3(46)の電界紡糸されたポリマー繊維含有フィルタマットの間に配置された少なくとも1つの粗い多孔質不織中間層(45)を含む複合媒体を含む流体濾過構造(40)の例示的な実施形態を示す。
【0041】
III.例示的なナノ繊維ポリマー材料
本発明の電界紡糸されたナノ繊維としての使用に適したポリマーの特定の例示的な実施形態は、熱可塑性ポリマーおよび熱硬化性ポリマーを含む。適切なポリマーの非限定的例としては、ナイロン、ポリイミド、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリスルホン、セルロース、酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、ポリ(尿素ウレタン)、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、ポリアニリン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(ビニルブチレン)、それらのコポリマー、誘導体化合物、ブレンドおよび組み合わせが挙げられる。適切なポリアミド縮合ポリマーには、ナイロン−6;ナイロン−4,6;ナイロン−6,6;ナイロン6,6−6,10;そのコポリマー、および他の線状の一般的に脂肪族のナイロン組成物等が挙げられる。
【0042】
本明細書で使用される「ナイロン」という用語は、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン6,6−6,10、ならびにそれらのコポリマー、誘導体化合物、ブレンドおよび組み合わせを含む。
【0043】
IV.多孔質繊維マットを形成する例示的な方法
繊維状多孔質マットの特定の例示的な実施形態は、ナイロン溶液からナノ繊維を堆積させることによって作製される。そのようなナノ繊維フィルタマットは、乾燥基準で測定して(即ち、残留溶媒が蒸発した、または他の方法で除去された後の)約0.1g/m
2から約10g/m
2の間の好ましい坪量を有する。
【0044】
他の例示的な実施形態では、ナイロンは、ギ酸、硫酸、酢酸、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパノールおよび水を含むが、これらに限定されない溶媒の混合物に溶解される。
【0045】
他の例示的な実施形態では、ナイロン溶液は、乾燥ナイロンポリマーを1つの群の溶媒に溶解し(即ち、最初に原液を調製し)、次にこの溶液を電界紡糸のために準備するために他の溶媒を添加することによって調製される。
【0046】
他の例示的な実施形態では、ナイロンポリマー(即ち、出発)は溶液調製の過程で部分的に加水分解され、部分的に加水分解されたナイロンポリマー(即ち、終了)の平均分子量は出発ナイロンポリマーの平均分子量未満である。
【0047】
特定の例示的な実施形態では、単一または多層の多孔質粗不織中間層基材または支持体は、動力収集ベルト上に配置されて、電界紡糸されたナノ繊維フィルタ層を収集し、これと組み合わせ、複合濾過媒体構造を形成する。
【0048】
微粒子除去のための多孔質フィルタ膜を生成する1つの好ましい方法は、繊維間の空間がフィルタ細孔を構成するように、多孔質マット基材上に制御されたサイズの繊維を配置することである。平均細孔直径は、以下の式1に従って繊維直径に関連する:
【0050】
式1(式中、dは平均細孔直径であり、
【0051】
【数2】
は繊維の直径であり、εはマットの多孔度である)
【0052】
複合勾配(graded)繊維フィルタ構造は、互いに異なる制御された繊維サイズのフィルタマットを積層することによって形成することができる。このようにして、本質的に非対称な多孔質構造を形成することができる。上述したように、この非対称多孔質構造は、対称構造よりも高い汚れ保持容量を可能にする。
【0053】
図1Dは、繊維含有フィルタマット層が典型的には互いに直接的に置かれる従来の勾配繊維フィルタマット構成(50)を示す。(52、54、56、58)
【0054】
しかし、驚くべきことに、いずれの繊維フィルタマット層よりもずっと粗い細孔径を有する多孔質中間層を有する繊維フィルタマット層を分離することにより、このような繊維濾過構造における目詰まり抵抗は、繊維フィルタマット層が互いに直接接触している(即ち、各濾過マット層の間に配置された多孔質支持中間層がない)濾過構造と比べて、大幅に改善されることが見出された。(
図1A)
【0055】
個々の繊維マット層を分離する粗い中間層に関連するより高い目詰まり抵抗を可能にする機構は十分に理解されていないが、粒子が、異なる繊維サイズの繊維マット層間の界面に捕捉される、増加した傾向を有することが推測される。実際の機構にかかわらず、多孔質の粗い中間層を追加すると、フィルタの詰まりが減少し、そのためフィルタの耐用年数が長くなる。
【0056】
多層濾過構造を選択するための他の考慮事項としては、媒体および装置の製造の経済性および利便性、ならびに滅菌および検証の容易さが挙げられる。濾過媒体の好ましいフィルタ層構成は、しばしば実用的な考慮事項に基づいて選択される。
【0057】
V.ナノ繊維を収集するための例示的な中間層基材
粗い中間層上に集められたまたは堆積された流体フィルタ層は、単層または多層構成のいずれかである。
【0058】
単一または多層の多孔質粗中間層の例は、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、湿式不織布、樹脂結合不織布およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0059】
多孔質粗中間層の例示的な実施形態は、合成または天然ポリマー材料から作製される。熱可塑性樹脂は、この用途に有用な種類のポリマーである。熱可塑性樹脂には、超高分子量ポリエチレンをはじめとするポリエチレン、ポリプロピレン、被覆ポリエチレン/ポリプロピレン繊維のようなポリオレフィン、PVDF、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル、ポリアミド、ポリメチルメタクリレートのようなアクリレート、スチレン系ポリマーおよび上記の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。他の合成材料には、セルロース、エポキシ、ウレタン等が挙げられる。
【0060】
好適な多孔質粗中間層基材には、多孔質不織基材(即ち、約(1)μmから約(100μmの細孔径を有するもの)が挙げられる。
【0061】
多孔質粗中間層材料は、親水性の不織布または疎水性の不織布でよく、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
多孔質粗中間層は、中間層の幾何学的および/または物理的構造および/または形状に関連する2つの主要な対向する表面または面(即ち、対向する第1および第2の面)を有する。複合媒体が試料濾過に使用されているとき、流体は一方の面(表面)から中間層基材を通り、反対側の他の面(表面)を通って流れる。
【0063】
中間層の2つの対向する表面間の厚さ寸法は多孔質である。この多孔質領域は、細孔に関連する表面積を有する。用語「表面(単数)」、「表面(複数)」または「表面積」または類似の用途に関連する混乱を防止するために、幾何学的表面を外面または表面または面と呼ぶ。細孔に関連する表面積は、内部または多孔性表面積と呼ばれる。
【0064】
中間層の多孔質材料は、空隙である細孔、および中間層材料の物理的実施形態を構成する固体マトリックスまたは骨格を含む。例えば、不織中間層では、ランダムに配向された繊維がマトリックスを構成し、中間層にその形態を与える。
【0065】
複合媒体が、複合媒体の表面上にコーティングまたは被覆を含む場合、内部および外部表面が、孔を完全に塞がないように、即ち、対流のために多孔質構造のかなりの割合を保持するようにコーティングされることを意味する。特に、内部表面積について、コーティングまたは被覆は、多孔質マトリックスがコーティングまたは被覆され、細孔のかなりの割合が開いたままであることを意味する。
【0066】
VI.実行される例示的な試験方法
「坪量」はASTM D−3776により決定され、これは参照により本明細書に組み込まれ、g/m
2で報告される。
【0067】
「多孔度」は、g/m
2で表される試料の坪量をg/m
3で表されるポリマー密度、マイクロメートルで表される試料の厚さで割って、100を掛け、得られた数を100から引く、即ち、多孔度=100−[坪量/(密度×厚さ)×100]によって計算された。
【0068】
繊維直径は以下のように決定した:ナノ繊維マット試料の各面の60,000倍の倍率で走査型電子顕微鏡(SEM)画像を撮った。10個の明確に識別可能なナノ繊維の直径を各SEM画像から測定し、記録した。欠陥は含まれていなかった(即ち、ナノ繊維の塊、ポリマードロップ、ナノ繊維の交差)。ナノ繊維マット試料の各面の平均繊維直径を計算した。測定された直径はまた、SEM用の試料調製中に塗布される金属コーティングを含む。そのようなコーティングにより、測定された直径に約4から5nmが加えられることが確立された。ここで報告された直径は、測定された直径から5nmを差し引くことによってこの差に対して補正された。
【0069】
厚さは、参照により本明細書に組み込まれるASTM D1777−64によって決定され、マイクロメートル(またはミクロン)で報告され、記号「μm」によって表される。
【0070】
「透過率」は、所与の圧力降下で所与の面積の複合フィルタ媒体試料を流体が通過する速度であり、脱イオン水を直径25mmを有する複合フィルタ媒体試料(3.5cm
2の濾過面積)に通すことによって測定する。水を、水圧(水頭圧)または空気圧(水上の空気圧)を使用して、複合フィルタ媒体試料に通した。
【0071】
電界紡糸されたマットの「有効細孔径」は、バブルポイント、液体−液体ポロメトリー、および特定のサイズの粒子によるチャレンジ試験等の従来の膜技術を用いて測定することができる。繊維状マットの有効細孔径は、一般に繊維の直径により増加し、多孔度により減少することが知られている。
【0072】
膜製造者は、市販のメンブレンフィルタに公称細孔径等級を割り当て、このことは通常、実際の細孔の幾何学的サイズではなく、粒子または微生物に対する特定の保持基準を満たすことを示す。
【0073】
本発明は、本発明の例示であると意図される例示的な実施形態の以下の実施例によってさらに明らかになるであろう。
【実施例】
【0074】
電界紡糸のためのナイロン原液の調製
実施例1は、この発明の特定の実施形態に従った電界紡糸のためのナイロン溶液を調製するための例示的な手順を提供する。
【0075】
ナイロン6は、米国ニュージャージー州フローハムパークのBASF Corp.から商標Ultramid B24の下で供給された。ナイロン6の溶液を、2:1の重量比で存在する酢酸およびギ酸の2つの溶媒の混合物中で調製した。約120nmの直径の繊維を生成するために、ナイロン6の11重量%溶液を調製し、約160nmの直径の繊維を生成するために、ナイロン6の12.4重量%溶液を調製し、約200nmの直径の繊維を生成するために、ナイロン6の13.7重量%溶液を調製した。溶液は、溶媒およびポリマーの各混合物を80℃で5から6時間ガラス反応器中で激しく撹拌することによって調製した。その後、溶液を室温まで冷却した。
【0076】
実施例1では、ナイロンナノ繊維マットは、電界紡糸により製造された2つの異なる繊維直径サイズを有するナノ繊維から製造され、(1)第1のマットは約20μmの厚さであり、約120nmの繊維直径を有するナノ繊維を含有し、細菌bディミヌータ(b.diminuta)を保持するように設計され、(2)第2のマットも約20μmの厚さであり、約200nmの繊維直径を有するナノ繊維を含み、第2のマットは第1のマットよりも比例的に高い細孔径を有する。
【0077】
第2のマットは、120nmの直径の繊維を含む第1のマットのためのプレフィルタ層として機能することができる。
【0078】
OptiScale 25カプセルフォーマット(マサチューセッツ州ビレリカのEMD Millipore Corporation)において、200nmの繊維直径を有する第2のマットを120nmの直径の繊維を含有する第1マットの上に直接積層するように、1組の濾過装置を調製した。OptiScale 25カプセル装置は、公称25mmの直径を有する膜ディスクを含み、3.5cm
2の正面表面積を含む。
【0079】
200nmの直径の繊維を含む第2のマットおよび120nmの直径の繊維を含む第1のマットの間に、5μmから10μmの範囲の繊維直径を有するポリプロピレン不織中間層を挿入するように、第2のセットの濾過装置を調製した。
【0080】
次いで、これらのフィルタ構成の各々に、2psigで操作して、0.45μmの定格膜で濾過した水中の2g/l EMD大豆(細胞培養培地)からなるストリームを用いてチャレンジ試験した。
【0081】
図2は、約120nmの繊維直径を有するナノ繊維を含有する多孔質の第1のマット上に直接積層された約200nmの繊維直径を有するナノ繊維を含有する多孔質の第2のマットを有するフィルタ構成が、約120nmの繊維直径を有するナノ繊維を含有する単一の多孔質マットを有するフィルタ構成と比べてより高い処理能力を達成したことを示す。しかし、驚くべきことに、約200nmの直径を有する繊維を含む多孔質ナノ繊維マットと、約120nmの直径を有する繊維を含む多孔質ナノ繊維マットの間に配置された粗い不織中間層を含む濾過構造が、最初の2つのフィルタ構成のいずれ1つよりも高い処理能力を示すことが発見された。
【0082】
実施例2は、実施例1の約120nmおよび200nmの直径を有する繊維を含有するマットに加えて、2つのフィルタ層の間の粗い多孔質中間層を含む利点をさらに示すものであり、追加のナノ繊維含有マットが、約160nmの直径を有する繊維を含有する20ミクロンの厚さで生成された。この追加のナノ繊維含有マットを、120nmの繊維含有マットと200nmの繊維含有マットの間に配置した。
【0083】
図2は、ナノ繊維含有マットが互いに直接重ねられた第1のセットの濾過装置を示す。第2のセットの濾過装置については、約5μmから10μmのおおよその繊維直径を有する粗いポリプロピレン不織層を、120nm繊維含有マットと160nm繊維含有マットの間および160nm繊維含有マットと200nmの繊維含有マットの間に配置した。実施例1と同様に、全てのフィルタ構造をOptiScale 25カプセルに入れた。
【0084】
実施例1と同様に、勾配繊維構造が単層構造より優れていた。さらに、不織の粗い中間層を含む構造は、ナノ繊維マットが互いに直接的に積層された構造より優れていた。
【0085】
非対称または勾配の細孔構造フィルタは、対称構造と比較して改善された処理能力を可能にする。異なる繊維サイズのナノ繊維層の間に多孔性支持体を添加することにより、非対称構造の能力利益がさらに高まることは驚くべきことであった。
【0086】
また、実施例3は、2つの濾過層の間に粗い多孔質中間層を含む利点を実証する。実施例2に記載された3つのナノ繊維層を、厚さ約75μmの、約15μmから20μmの繊維直径を有する繊維からなるナイロン不織中間層が160nmのナノ繊維層に隣接して配置されるように配置する。別の変形例では、ナイロン不織中間層を160nmと120nmのナノ繊維層の間にのみ配置し、200nmのナノ繊維層を160nmのナノ繊維層に隣接して配置した。
【0087】
これら2つの濾過構造の処理能力を実施例1に記載のように測定し、不織中間層が存在しない(即ち、3つのナノ繊維層が互いに隣接している)濾過構造、および160nmおよび120nmのナノ繊維層の間に含み、配置された濾過構造と比較した。
【0088】
図4は、最高性能の複合媒体フィルタ構造が、200nmと160nmのナノ繊維含有層の間および160nmと120nmのナノ繊維含有層の間の両方に配置された不織中間層を有したことを示す。200nmと160nmのナノ繊維含有層の間にのみ配置された不織中間層を有する複合媒体フィルタ構造は、不織層を有さないフィルタ構造および2つの不織層を有する構造に対し中間の能力性能を示した。ナイロン不織中間層が160nmと120nmのナノ繊維含有層の間にのみ配置されたフィルタ構造の汚れ保持容量性能は、不織中間層を含まないフィルタ構造と有意に異ならなかった。
【0089】
実施例4は、マイコプラズマおよびレトロウイルスの保持のために設計された2つの濾過層の間に粗い多孔質中間層を含む利点を実証する。70nmのナノ繊維からなるナノ繊維マットは、マイコプラズマを保持することができる細孔径を有し、40nmの繊維からなるナノ繊維マットは、レトロウィルスを保持することができる細孔径を有する。70nmおよび40nmのナノ繊維マットを、実施例3に記載の3つのナノ繊維層構造に接合した。1つの変形例では、約75μmの厚さを有し、約15μmから20μmの繊維直径を有する繊維からなるナイロン不織中間層を70nmと40nmのナノ繊維層の間に配置した。第2の変形例では、70nmおよび40nmの繊維層はそれらの間に中間層を有さなかった。
【0090】
これらの2つの濾過構造の処理能力を、実施例1に記載したように測定した。
図5は、70nmおよび40nmの両方のナノ繊維含有層の間に配置された不織中間層を含む複合媒体フィルタ構造が、70から40nmのナノ繊維層の間に不織層を有さないフィルタ構造よりも優れた能力性能を示したことを示す。
【0091】
使用方法
特定の実施形態では、本発明は、液体試料から目的の液体生物医薬品調製物試料を濾過、分離、調製、同定、検出および/または精製するために使用することができる。
【0092】
他の実施形態では、本発明は、クロマトグラフィー;高圧液体クロマトグラフィー(HPLC);電気泳動;ゲル濾過;試料遠心分離;オンライン試料調製;診断キットの試験;診断試験;化学物質の輸送;生体分子の輸送;ハイスループットスクリーニング;親和性結合アッセイ;液体試料の精製;流体試料の成分のサイズに基づく分離;流体試料の成分の物理的性質に基づく分離;流体試料の成分の化学的性質に基づく分離;流体試料の成分の生物学的性質に基づく分離;流体試料の成分の静電特性に基づく分離;およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない試料調製方法と共に使用することができる。
【0093】
タンパク質産生のための従来の方法は、しばしば、哺乳動物細胞株または細菌細胞株が目的のタンパク質を産生するように組換え操作される細胞培養法を含む。フィルタは、細菌、真菌、マイコプラズマ、およびウイルス等の微生物によるバイオリアクター汚染を低減するために使用することができる。例えば、直径120nmのナノ繊維のマットを含むナノ繊維膜は、ブレベンドゥモナス・ディミヌタ(Brevendumonas diminuta)属細菌の除去に適している。直径70nmのナノ繊維のマットを含むナノ繊維膜は、マイコプラズマ、主にアコレプラズマ・レイドロウイ(Acholeplasma laidlawii)属の除去に適している。
【0094】
バイオリアクターにおける細胞の増殖は、タンパク質、アミノ酸および添加物のプールを含む細胞培養培地の使用によって助長される。これらの添加物は、それらがフィルタ媒体に捕捉されるにつれてフィルタを詰まらせ、流体経路を詰まらせ、それによりフィルタの寿命を制限する可能性がある。実施例1に記載されているように、EMD大豆は、ナノ繊維フィルタ中の細菌保持層を詰まらせる可能性がある細胞培養培地である。従って、細菌またはマイコプラズマを除去するフィルタを使用して培地を濾過することができるが、それらは記載された目詰まり現象のために限られた寿命を有し得る。プレフィルタ層および不織中間層が、例えば、細菌保持性ナノ繊維層の上流に配置される、この発明の実施形態を用いるフィルタを、この培地を濾過するために使用することができ、従来技術を使用して作られたフィルタと比較してより長い寿命を有するであろう。
【0095】
本明細書中に引用された刊行物、特許出願および特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれると個別におよび具体的に示され、その全体が本明細書に記載されているのと同じ程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0096】
この発明の好ましい実施形態が本明細書に記載され、本発明を実施するために本発明者らに知られている最良の形態を含む。当然のことながら、好ましい実施形態の変形例は、前述の説明を読むことによって当業者には明らかになるであろう。本発明者らは、当業者がこのような変形例を適切に使用することを期待しており、本発明者らは本発明が本明細書に具体的に記載された以外のものとして実施されることを意図する。従って、この発明は、適用法によって許容されるように、添付の特許請求の範囲に記載された主題の全ての改変および均等物を含む。さらに、本明細書中で別段の指示がされない限り、または文脈によって明らかに否定されない限り、それらの全ての可能な変形例における上述の要素の任意の組み合わせが本発明に包含される。上述の開示は、独立した有用性を有する複数の異なる発明を包含することができる。これらの発明の各々は好ましい形態で開示されているが、本明細書に開示され例示されたその特定の実施形態は、多くの変形例が可能であるため、限定的な意味で考慮されるべきではない。
なお、本発明は以下の態様を含む。
(1)対向する第1および第2の面を有する多孔質中間層、
中間層の第1の面上に配置された第1の繊維含有フィルタ層、および
中間層の第2の面上に配置された第2の繊維含有フィルタ層
を含み、第1および第2の繊維含有フィルタ層の繊維は異なる繊維径を有し、各繊維含有フィルタ層は異なる細孔径等級を有し、中間層は第1または第2の繊維含有フィルタ層のいずれかよりも粗い細孔径を有する複合媒体。
(2)第1および第2の繊維含有フィルタ層の繊維は、熱可塑性ポリマーおよび熱硬化性ポリマーからなる群から選択されるポリマー材料である(1)に記載の媒体。
(3)繊維がナノ繊維である(2)に記載の媒体。
(4)中間層が不織布を含む(1)に記載の媒体。
(5)不織布がポリマーナノ繊維を含む(4)に記載の媒体。
(6)ポリマーナノ繊維がポリプロピレンから作られる(5)に記載の媒体。
(7)第1の繊維含有フィルタ層のナノ繊維は、約10nmから約1,000nmの繊維直径を有し、第2の繊維含有フィルタ層のナノ繊維は、約10nmから約1,000nmの繊維直径を有する(3)に記載の媒体。
(8)第1および第2の繊維含有フィルタ層が、電界紡糸されたナノ繊維マットを含む(1)に記載の媒体。
(9)ナノ繊維が、熱可塑性ポリマーおよび熱硬化性ポリマーからなる群から選択されるポリマー材料である(8)に記載の媒体。
(10)ナノ繊維が、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、ナイロン、ポリイミド、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリスルホン、セルロース、酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、ポリ(尿素ウレタン)、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、ポリアニリン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(ビニルブチレン)、それらのコポリマーおよび組み合わせからなる群から選択されるポリマー材料である(8)に記載の媒体。
(11)ナノ繊維が、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン6,6−6,10、ナイロン−6コポリマー、ナイロン−6,6コポリマー、ナイロン−6,6−6,10コポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択されるポリマー材料である(8)に記載の媒体。
(12)入口、濾液出口、残留物出口、および(1)に記載の複合媒体を有するホルダーを含み、複合媒体はホルダー内に配置され、ホルダーを上流区画と下流区画とに分離する流体濾過装置。
(13)プラスチックホルダー、実験装置、シリンジ、マイクロタイタープレート、金属ホルダー、フィルターカートリッジ、およびカートリッジからなる群から選択される、(12)に記載の流体濾過装置。