【課題を解決するための手段】
【0018】
本明細書において、両親媒性ブロック共重合体とは、少なくとも1つのブロックが親水性で、少なくとも1つのブロックが疎水性である、任意のブロック共重合体を意味する。
【0019】
本発明の意味の範囲内において、「ブロック共重合体」という表現は、厳密な意味のブロック共重合体を包含する。つまり、共重合体は直鎖状に連結した様々な組成物のブロックを含むが、少なくとも1つのブロックが主鎖に横方向に連結し、その組成がこの主鎖のものとは異なり、共重合体の別のブロックを構成するグラフト共重合体も含む。
【0020】
これらの特定の構造のため、両親媒性ブロック共重合体は、溶解した特異的形態、特にミセル形態をとる。
【0021】
従来、本明細書において、ブロック共重合体は、
・水に溶解する共重合体のブロックである親水性ブロックであって、親水性ホモポリマー、又は1つもしくは複数の親水性モノマーを含むランダム共重合体からなり得る親水性ブロックと;
・水に不溶性であるか、わずかに溶解する共重合体のブロックである疎水性ブロックであって、疎水性ホモポリマー、又は1つもしくは複数の疎水性モノマーを含むランダム共重合体からなり得る疎水性ブロックと、
により表される。
【0022】
非対称膜は、両面、つまり所謂内側面及び所謂外側面に、異なる化学的性質であるブロックの共重合体を有する膜を意味する。
【0023】
本発明の発端として、本来の場所で実施することができる2段階の方法により、両親媒性ブロック共重合体から固体支持体に支持された極薄膜を調製することができることが本発明者により発見された。第1段階は支持体と共重合体の1つのブロックとの間の相互作用を制御/調節することからなり、固体支持体の表面に強い相互作用で固定された共重合体の第1単層を作製し、第2段階は使用する溶媒の極性を転換することにより、第1単層に共重合体の第2単層を自己集合させることからなり、固体支持体に堅く固定された2重層の膜構造を形成する。
【0024】
このように、本発明者は、第1両親媒性ブロック共重合体と呼ばれ、少なくとも1つの親水性ブロック及び少なくとも1つの疎水性ブロックを含む少なくとも1つの両親媒性ブロック共重合体から、少なくとも2層を含む膜を製造する方法を提案する。
【0025】
この方法は連続的な、
a)該親水性ブロック及び該疎水性ブロックが溶解でき、該第1両親媒性ブロック共重合体に非選択的な有機溶媒に該第1両親媒性ブロック共重合体が溶解された第1浴液に、第1両親媒性ブロック共重合体の親水性ブロックとの結合、特に非共有結合性結合を形成することができる官能基を含む支持体を、該親水性ブロック及び支持体間の結合を形成することができる十分な期間浸漬し、第1両親媒性ブロック共重合体の第1層を支持体の表面に固定する工程と;
b)適宜、非対称構造を有する膜を形成するとき、少なくとも1つの親水性ブロック及び少なくとも1つの疎水性ブロックを含む第2両親媒性ブロック共重合体が、第2両親媒性ブロック共重合体の親水性ブロック及び疎水性ブロックが溶解でき、該第2両親媒性ブロック共重合体に非選択的な有機溶媒に溶解された第2浴液で第1浴液を交換する工程と;
c)表面に該第1層を固定した支持体を含む浴液に水を添加し、疎水性効果により、該第1層に両親媒性ブロック共重合体の第2層を自己集合させる工程と、を含む。中間工程b)が実施されているか、いないかに応じて、この第2層は、それぞれ第2両親媒性ブロック共重合体又は第1両親媒性ブロック共重合体により形成される。
【0026】
ここで、共重合体に非選択的な溶媒とは、従来本質的に、この共重合体を構成するすべてのブロックが溶解する溶媒を意味する。
【0027】
このような方法は、多様な両親媒性ブロック共重合体、及びすべての種類の支持体に有利に適用できる。これらの支持体は任意の形、特に曲面、中空、球状、巨視的、多孔質及び/又は分割状、例えばナノ粒子状又はコロイド状等を有することができる。
【0028】
本発明にかかる方法は、特に水溶液中でミセルを形成する任意の両親媒性ブロック共重合体によく適用される。
【0029】
さらに、工業規模を含む実施が容易で安価であり、先行技術の方法より環境に配慮されている。特に、必要なエネルギーが少なく、様々な工程に温度の制約が無く、好ましくは周囲温度、大気圧で行われる。さらに、原料として、有利には膜1m
2当たり1リットル未満の量の水、有機溶媒、及びあまり多くない両親媒性ブロック共重合体、最も一般的には30mg/膜m
2を超えない両親媒性ブロック共重合体のみが必要である。さらに、この有機溶媒は本方法の終わりに容易に回収でき、再生し、再利用できる。
【0030】
本発明にかかる方法の最後に得られる膜は、液体溶液中又は空気中で用いることができる。これに関して、本発明にかかる方法は、膜を乾燥する工程を含む場合があるが、このような工程は必須ではない。
【0031】
さらに、本発明にかかる方法の様々な工程は、本来の場所で行うことができる。1層ずつ膜を構成することができ、その結果各層の構造、特にその厚み、及びその分子配向、特に膜における共重合体ブロックのナノメートル配向等を微細に制御できる。
【0032】
特に1つ又は複数の両親媒性ブロック共重合体、特に疎水性ブロックの性質(ガラス質もしくはゴム)、親水性ブロック及び疎水性ブロックの分子量、並びに/あるいは疎水性ブロックの疎水性を好適に選択すること、固体支持体及び使用する溶媒を好適に選択することにより、その適用に照らして形成することが意図される次の相互作用を目的として、膜の支持体への接着、凝集、膜、特に膜が形成する疎水性リザーバの厚み及び化学親和力、並びにその表面機能性を制御できる。
【0033】
第1の工程a)において、使用する溶媒の性質によって、有利には浴液で第1両親媒性ブロック共重合体の自己集合が起こらない。共重合体の分子の親水性ブロックは支持体と共に結合を形成し、支持体の表面に広がって、単層をその上に形成する。その特性は、有利には操作パラメータの好適な選択により、正確に制御できることである。この単層は支持体に固定される。次に、疎水性ブロックは、この単層の表面で露出される。
【0034】
第1両親媒性ブロック共重合体の分子の親水性ブロック及び支持体間に形成される結合は、共有結合性又は非共有結合性でよい。
【0035】
2層が類似の構成を有する対称膜を得ることが望まれる場合、第1浴液を異なる両親媒性ブロック共重合体を含有する第2浴液で交換する中間工程b)は実施されない。水を添加することにより、媒体の極性を変更する工程c)は、第1浴液でそのまま行われる。
【0036】
第1層及び第2層が異なる構成を有する非対称膜を得ることが望まれる場合、中間工程b)は実施される。本発明の特定の実施形態において、第2浴液に浸漬される前に、その表面に第1層が固定された支持体の中間すすぎを行う。
【0037】
工程c)において、共重合体分子の疎水性ブロック間の疎水性相互作用は、有機媒体中に水を制御して添加することにより生じ、この媒体の極性を変更する効果を有する。有利には、支持体にすでに固定された第1層に、疎水性効果により共重合体の第2層を自己集合させ、これにより固体支持体に支持された2重層膜を形成する。
【0038】
本発明にかかる方法は、このように極薄2重層有機膜を形成することができ、100nmまで、さらに20nm未満の厚みを有する。例として、本発明にかかる方法は、5から30nmの厚みを有する2重層膜を形成することができる。
【0039】
有利には、これらの膜は電子工学;光電子工学;マイクロ流体工学;振動、画像、医療用、熱ソーラー等のセンサなどのセンサ分野;フォトニクス;光起電力学;プラズモニクス;触媒作用;繊維、塗料及びセラミクス分野;化粧品;特に薬剤を投与するため、又は2重層に抗原もしくは抗体を固定するための医薬品;医療診断等の様々な分野に応用される。
【0040】
このような分野において、本発明にかかる方法により得られる膜は、例えば以下の任意の機能の1つのために用いることができる。これらの機能は、膜を形成する1つ又は複数の両親媒性ブロック共重合体の構造、より具体的にはその表面に存在する機能性に関連する。つまり、濡れ、腐食抑制、抗UV放射線、両親媒性、不透過性、防汚、防塵、疎水性自己洗浄、潤滑、接着、電気絶縁性又は電気伝導性、生体分子の固定、細胞膜の模倣、バイオセンサ、化学センサ、表面にナノ粒子を固定する能力(プラズモン材料、触媒作用を調製するため)等である。
【0041】
このような機能は、独力で1つ又は複数の両親媒性ブロック共重合体により膜に与えることができる。例えば、共重合体がポリエチレングリコール型の疎水性ブロックを含む場合、膜の表面で曝されるこのブロックは、膜に抗接着機能を与える。
【0042】
そうでなければ、このような機能は、本発明にかかる方法の最後に、又は最後の工程で膜の表面を修飾することにより付与してもよい。任意の修飾方法、特に当業者にとって従来本質的な化学的方法を、この目的のために用いることができる。
【0043】
膜の製造中、第1浴液に支持体を浸漬する工程a)について、第1層に第2層を自己集合させる間、膜に捕捉される1つ又は複数の活性剤を第1浴液に導入することにより、特定の機能を提供することができる。従って、膜は活性剤用の疎水性リザーバの役割を果たす。その性質は、多数の用途に有利に利用することができる。例として、香料、精油、例えばフォトニック/プラズモニク用途のための金ナノ粒子等のナノ粒子は、この方法で膜に含ませることができる。
【0044】
本発明に関して用いられる各両親媒性ブロック共重合体は、2ブロック型、つまり2ブロック共重合体、あるいは3ブロック型、つまり3ブロック共重合体(疎水性ブロックが同一であるか、もしくは異なる、疎水性ブロック−親水性ブロック−疎水性ブロック;又は親水性ブロックが同一であるか、もしくは異なる、親水性ブロック−疎水性ブロック−親水性ブロック)でよく、あるいはさらに別のものでよい。直線、星形、又はグラフト構造を有してよい。
【0045】
異なるブロックとは、異なる性質のブロック、又は同じ性質及び異なるモル質量のブロックのいずれかを意味する。
【0046】
第1両親媒性ブロック共重合体の構造、及び該当する場合、第2両親媒性ブロック共重合体の構造は、好ましくは2ブロック型、つまり親水性ブロック及び疎水性ブロックを含み、又は3ブロック型である。
【0047】
優先的に、1つ又は複数の両親媒性ブロック共重合体は、疎水性ブロックと比較して、比較的短い親水性ブロックを含む。例えば、1つ又は複数の両親媒性ブロック共重合体は、5から50の重合度を有する親水性ブロック、及び50から500の重合度を有する疎水性ブロックを含んでよい。
【0048】
何ら限定するものではないが、本発明の特定の実施形態において、中間工程b)が実施される場合、第2両親媒性ブロック共重合体における少なくとも1つの疎水性ブロックは、第1両親媒性ブロック共重合体の少なくとも1つの疎水性ブロックと同一である。親水性及び疎水性の他のブロックは、同一でも異なっていてもよい。使用する様々な両親媒性ブロック共重合体は、同じ数のブロック又は異なる数のブロック、及び同じ構造又は異なる構造を含んでよい。
【0049】
本発明の他の特定の実施形態において、中間工程b)が実施される場合、第2両親媒性ブロック共重合体及び第1両親媒性ブロック共重合体は異なる疎水性ブロックを含む。
【0050】
より一般的に、第1浴液は、単一の両親媒性ブロック共重合体、又は固体支持体と結合することができる複数の該共重合体を含んでよい。第2浴液も、単一の両親媒性ブロック共重合体、又は複数の該共重合体を含んでよい。
【0051】
すべての既存のポリマーのうち、本発明にかかる両親媒性ブロック共重合体の親水性ブロック、及び疎水性ブロックを構成するポリマーは、当業者の能力の範囲内で決定される。
【0052】
第1両親媒性ブロック共重合体、該当する場合、第2両親媒性ブロック共重合体の疎水性ブロックは、例えば以下の疎水性物質、つまり疎水性ポリスチレン類、特に非置換ポリスチレン類又はアルキル基で置換されたポリスチレン類(ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)等、ポリアクリラート類(エチルポリアクリラート、n−ブチルポリアクリラート、tert−ブチルポリアクリラート、メチルポリメタクリラート、アルキルポリシアノアクリラート等)、ポリジエン類(ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(1−4−シクロヘキサジエン)等)、ポリラクトン類(ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(δ−バレロラクトン)等、ポリラクチド類、及びポリグリコリド類(ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)等)、ポリオレフィン類(ポリエチレン、ポリ(イソブチレン)等)、ポリオキシラン類(ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等)、ポリシロキサン類(ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(ジエチルシロキサン)、ポリ(メチルシロキサン)、ポリ(エチルメチルシロキサン)、ポリ(フェロセニルジメチルシラン)等)、ポリアクリロニトリル類、ポリ酢酸ビニル類、ポリ(テトラヒドロフラン)、ポリヒドロキシアルカノアート類、ポリチオフェン類、疎水性ポリペプチド類(ポリ(γ−ベンジル−L−グルタマート)、ポリバリン、ポリイソロイシン、ポリメチオニン等)並びにポリカルボナート類(ポリ(トリメチレンカルボナート)等)からなる群から選択される。このような一覧は本発明を何ら限定するものではない。
【0053】
優先的に、本発明で用いられる1つ又は複数の両親媒性ブロック共重合体は、スチレン又はアクリラート型の少なくとも1つの疎水性ブロックを含む。このような疎水性ブロックは、例えばアタクチックポリスチレン(多分散指数PDI<1.2)、イソタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリ(4−アセトキシ−スチレン)、ポリ(3−ブロモスチレン)、ポリ(4−ブロモスチレン)、ポリ(2−クロロスチレン)、ポリ(3−クロロスチレン)、ポリ(4−クロロスチレン)、ポリ(ペンタフルオロスチレン)、ポリ(4−ジメチルシリル−スチレン)、ポリ(4−ヒドロキシ−スチレン)、ポリ(4−メトキシ−スチレン)、ポリ(4−メチル−スチレン)、ポリ(4−t−ブチル−スチレン)、ポリ(4−(tert−ブトキシカルボニル)オキシ−スチレン)、ポリ(3−(ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロピル)−スチレン)、ポリ(ベンジルビニルクロライド)、ポリ(4−ビニル安息香酸)、ポリ(4−ビニル安息香酸tert−ブチルエステル)、ポリ(4−シアノ−スチレン)、ポリ(4−[N,N−ビス(トリメチルシリル−アミノ−メチル]スチレン)、ポリ(メチル4−ビニルベンゾアート)などの疎水性ポリスチレン類から;あるいはポリ(ベンジルα−エチルアクリラート)、ポリ(ベンジルα−プロピルアクリラート)、ポリ(シクロヘキシルアクリラート)、ポリ(シクロヘキシルメタクリラート)、ポリ(イソプロピルアクリラート)、ポリ(エチルメタクリラート)、ポリ(エチルα−エチルアクリラート)、ポリ(エチルα−プロピルアクリラート)、ポリ(グリシジルメタクリラート)、ポリ(ヒドロキシプロピルアクリラート)、ポリ(イソボルニルメタクリラート)、ポリ(イソブチルメタクリラート)、ポリ(ラウリルメタクリラート)、ポリ(メチルアクリラート)、ポリ(メチルα−ブロモアクリラート)、ポリ(N,N−ジメチルアミノエチルメタクリラート)、ポリ(2,2,2−トリフルオロエチルメタクリラート)、ポリ(n−ブチルメタクリラート)、ポリ(ネオペンチルメタクリラート)、ポリ(ネオペンチルアクリラート)、ポリ(n−ヘキシルメタクリラート)、ポリ(n−ノニルアクリラート)、ポリ(n−ノニルメタクリラート)、ポリ(n−オクチルアクリラート)、ポリ(n−プロピルメタクリラート)、ポリ(オクタデシルメタクリラート)、ポリ(sec−ブチルメタクリラート)、ポリ(tert−ブチルα−エチルアクリラート)、ポリ(α−プロピルtert−ブチルアクリラート)、ポリ(テトラヒドロフルファニルメタクリラート)、ポリ(メチル2,4−ジメチルペンタ−2,4−ジエノアート)、ポリ(2−エチルヘキシルアクリラート)、ポリ(1−アダマンチルメタクリラート)、ポリ(2−ヒドロキシプロピルメタクリラート)などのポリアクリラート類等の中から選択することができる。
【0054】
第1両親媒性ブロック共重合体の親水性ブロック、該当する場合、第2両親媒性ブロック共重合体の親水性ブロックは、例えば以下の親水性物質、つまりポリアクリル酸類(ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチルアクリル酸等)、ポリアクリルアミド類(ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)等)、ポリエーテル類(ポリエチレンオキシド又はポリエチレングリコール、ポリ(メチルビニルエーテル)等)、ポリスチレンスルホン酸類、ポリビニルアルコール類、ポリ(2−ビニルN−メチルピリジニウム)、ポリ(4−ビニルN−メチルピリジニウム)、ポリアミン類、親水性ポリペプチド類(ポリリシン、ポリヒスチジン、ポリアルギニン、ポリ(グルタミン酸)、ポリ(アスパラギン酸)等)、ポリオキサゾリン類(ポリ(2−メチル−2−オキサゾリン)等)、多糖類(キトサン、アルギナート、ヒアルロナン、カラギーナン、ペクチン、デキストラン、硫酸デキストラン、アミロース、キシラン、キシログルカン、ベータグルカン類、フカン類、ポリシアル酸、セルロースオリゴマー類等)、ポリウレア類、双性イオンポリマー類(ポリ(スルホベタイン)類及びポリ(カルボキシベタイン)類等)、あるいはその塩のいずれかからなる群から選択される。このような一覧は本発明を何ら限定するものではない。
【0055】
上記で一覧した疎水性ブロック及び上記で一覧した親水性ブロックを用いて形成された両親媒性ブロック共重合体は、水溶液中でミセルを形成する。
【0056】
使用する支持体は固体支持体であり、本発明にかかる方法の工程a)において、第1層を形成するために用いられる第1両親媒性ブロック共重合体の親水性ブロックと、共有結合性又は非共有結合性の結合を形成することができる官能基を含む。このような非共有結合性の結合は、任意のタイプでよい。特に、水素結合、静電相互作用、ファンデルワールス相互作用、電荷移動相互作用、又は、例えばDNAの相補的塩基間の相互作用などの特定の相互作用でよい。
【0057】
支持体は、第1浴液、該当する場合、第2浴液の一部を形成する1つ又は複数の有機溶媒で溶解することができない任意の材料から形成することができる。
【0058】
例えば、支持体は、セラミクス、ガラス、ケイ酸塩、ポリマー、グラファイト及び金属から選択される材料から形成することができる。
【0059】
支持体は、特に平面状、粒子、ナノ粒子、管、又は葉状などの分散状、中空又はメソ多孔質状など、任意の形でよい。
【0060】
例えば、適宜事前に表面を機能化した場合、支持体は平面又は中空状、好ましくは平面状を有してよく、シリカ、ケイ素、マイカ、金、銀、又はポリエチレン、ポリエチレンテレフタラートもしくはポリメチルメタクリラートなどのポリマー材料から形成することができる。そうでなければ、有機マイクロ又はナノ粒子状、例えばラテックス又はカーボンナノチューブ、あるいは無機物質、例えば二酸化ケイ素SiO
2、酸化セリウムCeO
2、四酸化三鉄Fe
3O
4、酸化鉄Fe
2O
3、銀、金等でよい。また、本発明にかかる方法は、デンドリマーなどの大型分子を固体支持体として用いてもよい。
【0061】
本発明にかかる方法は、第1両親媒性ブロック共重合体の親水性ブロックと共有結合性又は非共有結合性の結合を形成することができる官能基をその表面に形成するため、支持体の表面を修飾する事前工程を含んでよい。
【0062】
このような表面修飾は、当業者にとって従来本質的に任意の種類でよい。例えば、プラズマ処理等の物理処理、高分子電解質等の荷電ポリマーの吸収、又はアルコール、酸、アミン、シラン、チオール等の反応性官能基を導入する化学グラフトからなり得る。
【0063】
例えば、本発明にかかる方法は、ポリリシン、ポリ(アリルアミン)又はポリエチレンイミンなどのポリアミンの静電吸着により、好ましくはそのpKaより低いpHで、シリカ支持体の表面をアミノ化する事前工程を含んでよい。次に、アミン基により表面修飾されたシリカ支持体は、例えばテトラヒドロフランで、強力に相互作用するイオン対(−COO
-、−NH
3+)を生じる単純な酸/塩基中和反応により、ポリ酸ブロックと相互作用できる。
【0064】
水素結合等の他の分子間力を、固体支持体に膜の第1層を固定するために用いてよく、例えばシリカ支持体の表面に形成されたシラノール基とブロック(ポリエチレンオキシド)を結合させる。
【0065】
本発明において使用できる親水性ブロック/固体支持体対の例は、例えば、ポリエチレングリコールブロック/シリカ支持体;ポリアクリル酸ブロック/アミノ化シリカ支持体;ポリ(2−ビニルN−メチルピリジニウム)ブロック/カルボキシル化シリカ支持体;ポリ(3−ヘキシルチオフェン)ブロック/金支持体であるが、これに限定されない。
【0066】
第1浴液の有機溶媒、該当する場合、第2浴液の有機溶媒は、浴液で用いる特定の両親媒性ブロック共重合体に基づいて選択され、この共重合体を確実に可溶化する。
【0067】
この溶媒は、関連する親水性ブロック共重合体に非選択的であり、つまりブロック共重合体のすべてのブロックは、この溶媒に優れた溶解性を有する。
【0068】
第1浴液の有機溶媒、該当する場合、第2浴液の有機溶媒は、優先的にテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジオキサン、アセトン、エチレングリコール、メタノール、ピリジン、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、ヘキサフルオロイソプロパノール又はそれらの混合物の任意の1つからなる群から選択される。
【0069】
一般的には、本明細書において、溶媒という用語は単一の溶媒及び溶媒の混合物の両方を意味する。
【0070】
第1浴液、該当する場合、第2浴液で用いられる有機溶媒は、好ましくは水混和性溶媒である。
【0071】
工程a)、該当する場合、工程b)の実施について、第1浴液、該当する場合、第2浴液は当然水を含まない。
【0072】
さらに、本発明にかかる方法は、単独で又は技術的に機能する各組み合わせにおいて実施される下記の1つ又は複数の特徴を満たすことができる。
【0073】
本発明の特定の実施形態において、浴液に水を添加して、制御された構造の第2両親媒性ブロック共重合体層に応じた自己集合を該第1層で行う工程c)後、本方法は、支持体及び両親媒性ブロック共重合体層を水溶液ですすぐ工程d)を含む。有利には、このようなすすぎ工程は、本発明にかかる方法の実施中に両親媒性ブロック共重合体により形成されるミセル又はベシクルを除去することができ、これらは浴液に含まれない。この工程中、膜を形成する2つの両親媒性ブロック共重合体層は、支持体に固定されたままである。
【0074】
好ましくは、すすぎ工程d)は、浴液に含まれる有機溶媒を水で徐々に交換することを含む。
【0075】
このような交換は特に、有機溶媒がすべて水で交換されるまで、液状の水を浴液に導入し、同時に支持体に固定された膜の上側の浴液に含まれる液体を吸引することにより達成することができる。次に、浴液を含むリザーバに水/空気界面を作り、これにより、有利には膜を浴液から除く時に、空気と接触して膜の構造が破壊されることを避ける。
【0076】
このすすぎ工程の様々な操作パラメータ、特にすすぎ水の浴液への導入速度、及び液体の吸引速度は、好ましくは、特に使用される浴液の容量に応じて選択され、その結果、水を用いた有機溶媒の完全な交換が、数分から数時間で行われる。
【0077】
本発明の特定の実施形態において、すすぎ水の浴液への導入速度、及び液体の吸引速度は、浴液の液体容量がすすぎ工程d)を通して一定であるように選択される。
【0078】
溶液すべてが水で交換されると、膜及びその支持体は浴液から除かれる。
【0079】
次に、本発明にかかる方法は、任意で、このようにして得られる膜をすすぐ最終工程を含んでよい。
【0080】
徐々に水で交換することにより、浴液から除去される有機溶媒は、有利には、従来本質的に任意の方法により、回収、再生できる。
【0081】
優先的に、浴液に水を添加する工程c)を実施する浴液の容量は小さいが、それにも関わらず表面に第1層が固定された支持体が完全に浴液に浸漬するようにする。このような特徴は、溶解した両親媒性ブロック共重合体の自己集合現象を最小限にし、固体支持体に固定された第1層に第2層が自己集合するのに有利である。
【0082】
より具体的に、浴液に水を添加する工程c)を実施するため、表面に第1共重合体層が固定された支持体上の液体の高さは、優先的に小さく、特に5mm未満、例えば約1mmである。このような特徴は、第1にこの方法の試薬コスト、第2に溶液における自己集合現象を最小限にできる。
【0083】
本発明の特定の実施形態において、浴液に水を添加する工程c)は、該浴液に液体水溶液を徐々に導入することを含む。このような実施形態は、第1両親媒性ブロック共重合体層を保持する支持体を浸漬する浴液が、水混和性溶媒を含む場合に特に適当であることが判明している。これは浴液の極性を徐々に変化させる。
【0084】
水溶液は、水、希酸性溶液、希塩基性溶液、あるいは酸又はアルカリ緩衝液でよい。さらに、塩を含んでよい。
【0085】
本発明にかかる方法は、同時に浴液中の二酸化炭素をバブリングする工程を含んでよい。特に親水性ブロックがポリアミンである場合、浴液のpHを低下させ、膜の第1層への第2層の自己集合をより細かく調節する。
【0086】
優先的に、水溶液を支持体から距離を置いて浴液に添加し、その結果、対流よりむしろ拡散することにより、水溶液が支持体に固定された第1層に達する。次に、第1層上に第2層の自己集合が擬平衡状態で起こり、その結果、第2層が特に均質となる。
【0087】
本発明の特定の実施形態において、工程c)で、1分当たり浴液の全容量に対して50容量%以下、好ましくは20容量%以下で浴液の水量を増加することができる速度で、浴液に液体水溶液を徐々に導入する。より具体的には、自己集合のための熱力学平衡の条件下、つまり溶解した共重合体分子、及び膜の第2層に集合する共重合体分子間が平衡である条件下にあるように、この速度は選択される。この平衡状態により、膜のより優れた構造的構成を得られる。
【0088】
浴液中の水量が浴液の全容量に対して5から50容量%、好ましくは3から30容量%、好ましくは浴液の全容量に対して約10容量%となるまで、浴液に液体水溶液を徐々に導入するのが好ましい。
【0089】
次に、膜をすすぐ工程d)を上述のように実施できる。
【0090】
浴液に水を添加する工程c)が、浴液に液体水溶液を徐々に導入することを含む本発明の特定の実施形態において、浴液に水を添加する工程c)及びすすぎ工程d)は、実際には単一の工程を形成し、最初に少量の水を浴液に添加し、浴液における水の割合を増加させ、同時に浴液に含まれる液体を吸引する。
【0091】
浴液に水を添加する工程c)で、浴液に用いられる有機溶媒が、水と混和しないか、わずかに混和する溶媒である場合に特に好適である本発明の別の実施形態において、この工程c)は浴液を飽和水蒸気に接触させることを含む。
【0092】
好ましくは、水蒸気で浴液の上側の雰囲気を飽和させることにより、優先的に10から180分、例えば10から90分間、この接触が行われる。
【0093】
次に、水分子は部分的に溶媒に溶解し、浴液の溶媒/水の交換、及び浴液の極性変化を引き起こす。これが、浴液に存在する両親媒性ブロック共重合体、及び支持体に固定された第1層を形成する両親媒性ブロック共重合体を自己集合させる(これらの共重合体は同一でも異なってもよい)。
【0094】
本発明の特定の実施形態において、工程a)では、10から180分、例えば約2時間、第1浴液に支持体を浸漬する。有利には、このような期間により、浴液において、支持体の表面に第1両親媒性ブロック共重合体の分子を固定する結合を、より正確には親水性ブロックによる結合を確実に形成する。
【0095】
本発明の特定の実施形態において、第1浴液は有機溶媒に0.01から10g/l、好ましくは0.1から1g/lの濃度で第1両親媒性ブロック共重合体を含む。
【0096】
優先的に、この第1浴液を用い、非対称膜を形成することが望まれるのであれば、第2浴液は有機溶媒に0.01から10g/l、好ましくは0.1から1g/lの濃度で第2両親媒性ブロック共重合体を含む。
【0097】
さらに、工程a)を実施するための第1浴液の容量は、優先的に小さい。例えば、固体支持体表面の上側の液体高さは1から5mmである。
【0098】
さらに、工程a)は、不活性雰囲気下、例えば窒素又はアルゴン下で行ってよい。
【0099】
支持体に第1層を形成する工程a)、適当な場合、浴液を交換する工程b)、及び自己集合により第1層に第2層を形成する工程c)を含む、上述のような本発明にかかる方法により2重層膜を得られる。
【0100】
支持体にすでに固定された2層に追加の層を形成するため、工程a)、適宜工程b)、及び任意に工程c)を繰り返してよく、2層超の層を含む多層膜が得られる。次に、この方法は、浴液に支持体を浸漬する工程a)を繰り返す前に、例えば、その表面を保護することができるポリマー又は粒子でこの2重層を覆うことにより、あるいはその疎水性ブロックを架橋することにより、形成される第1の2重層を安定させる工程を含み、次の工程a)の第1浴液に浸漬する際に、この第1の2重層が解離するのを防止する。
【0101】
この方法は、浴液にこの支持体を浸漬する工程a)を繰り返す前に、任意に支持体をすすぐ工程、及び/又は第1の2重層を機能化する工程も含んでよい。これにより、無極性環境において、次の層を構成することを目的とする両親媒性ブロック共重合体との共有結合又は非共有結合性相互作用を形成できる官能基をその表面に導入する。
【0102】
新しい工程a)、b)及びc)は、最初の工程a)、b)及びc)と同じ両親媒性ブロック共重合体、又は異なる両親媒性ブロック共重合体を用いて行ってよい。
【0103】
このように、本発明にかかる方法の工程は、有利には、必要とされる合計層数を含む膜を調製するのに必要なだけ何度でも繰り返してよい。
【0104】
本発明の別の態様は、本発明にかかる方法により得られる膜に関する。この膜はその厚み方向に構造化され、特に非共有結合性結合により支持体に固定された両親媒性ブロック共重合体の第1層、及び疎水性相互作用により第1層に固定された両親媒性ブロック共重合体の第2層を含む。
【0105】
この膜において、第2層の表面は、支持体に固定された第1層より親水性である。このような特徴は、特に当業者にとって従来本質的である技術により、接触角の大きさから確認できる。
【0106】
第1層の両親媒性ブロック共重合体、及び第2層の両親媒性ブロック共重合体は、同一でも異なっていてもよい。異なる場合、少なくとも1つの同一の疎水性ブロックを含んでよい。
【0107】
1つ又は複数の両親媒性ブロック共重合体及び支持体は、本発明にかかる膜を製造する方法に関して、上述した1つ又は複数の特徴を満たすことができる。
【0108】
特に、膜は100nm以下、例えば50nm以下、又は20nm以下の厚みを有し、例えば5から30nmの厚みを有する。この厚みは制御することができ、膜を作製する両親媒性ブロック共重合体のブロックの大きさに直接関係する。これらのブロックは、互いに組織的に配置される。
【0109】
膜は2層以上を含んでよい。
【0110】
本発明の特徴及び利点は、
図1から7を用い、以下の例示的実施形態に照らしてより明らかになるであろう。これらは、説明のためにのみ提示され、本発明を何ら限定するものではない。