(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来のはんだ付け技術では、はんだペーストの内部に含有されたはんだ用フラックスが、はんだ付け品質への悪影響などの様々な問題を引き起こす。そのため、はんだ付けの技術分野では、はんだ用フラックスの代わりにギ酸ガスが適用されるはんだ付け技術が発明されている。
【0003】
図13を参照すれば、従来のギ酸供給装置は、密閉タンク91と、空気入口管92と、空気出口管93とを備えている。タンク91は、液体のギ酸を収容するのに用いられる。空気入口管92は、タンク91を貫通して設けられ、液体のギ酸の中へ延びている。空気出口管93は、タンク91を貫通して設けられ、液体のギ酸の液面よりも上方に位置している。
【0004】
これにより、空気入口管92を介して窒素をギ酸へ注入することによる曝気によってギ酸と窒素との混合ガスを生成することができ、空気出口管93によってギ酸−窒素混合ガスを供給することができる。
【0005】
しかしながら、前述のギ酸ガスの供給方法では、ギ酸ガスの分圧が低く、40〜50torrにしか達しない一方(混合ガス中の約5%)、窒素の分圧は高く、710〜720torr(混合ガスの約95%)に達する。そのため、ギ酸ガスの反応性は窒素に強い影響を受け、これによりはんだ付けのサイクル時間が長くなり、はんだ付け効率に悪影響を与える。それに加えて、前述のギ酸ガスの供給方法では供給される混合ガス中のギ酸の濃度を正確に制御することができず、そのためはんだ付けの歩留まりに悪影響を与え、ギ酸の消費量の増大を招き、それらは両方とも最終的にはんだ付けのコストを増大させる。
【0006】
言い換えると、前述のギ酸ガスの供給方法の不利な点は、
1.ギ酸の分圧及び濃度が低く、処理時間が長い。
【0007】
2.反応に寄与しない窒素がギ酸と金属酸化物との接触を妨害するので反応レートが低下する。例えば、ギ酸ガスと窒素との分圧比率が40:270の条件下では、各ギ酸分子が平均として18個の窒素分子に囲まれている。そのため、ギ酸分子は、金属酸化物と接触して反応するために、18個の窒素分子を横切って通過しなければならない。
【0008】
3.ギ酸ガスは、はんだ粉末中に浅く拡散し、これはギ酸ガスがはんだ粉末の中心へ拡散できないことを意味する。そのため、はんだ付けの品質及び信頼性が低下する。特に、はんだ粉末中へのギ酸の拡散速度が低いので、はんだ粉末の端縁付近に位置するはんだ微粒だけが酸化還元(レドックス)を受け、溶解し、その一方で、はんだ粉末の中心近くのはんだ微粒は、レドックス無しに残り、端縁の溶解したはんだは、液状金属となっており、ギ酸ガスがはんだ粉末のさらに中心へ拡散するのを防ぐ。要するに、ギ酸ガスの遅い反応送度のために端縁近くのはんだがまず溶解し、完全には酸化還元していないはんだ粉末は、はんだ付け後の構造的強度を低下させる。
【0009】
この欠点を解消するために、本発明は、前述の問題を軽減又は防止する純ギ酸ガス供給装置、純ギ酸ガスが供給されるはんだ付けシステム及び純ギ酸ガス供給方法を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の主な目的は、ギ酸ガスの分圧及び反応性を向上させ且つギ酸ガスの消費量を低減させるように純ギ酸ガスを供給することができる純ギ酸ガス供給装置、純ギ酸ガスが供給されるはんだ付けシステム及び純ギ酸ガスを供給する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
純ギ酸ガス供給装置は、タンクと、液体配管と、加熱組立品と、液位検出組立品と、少なくとも1つのガス配管とを備える。タンクは、底ベース、天井カバー、周壁及び内部空間を有する。周壁は、底ベースの周縁に連結され且つ天井カバーの周縁に連結されている。内部空間は、底ベースと天井カバーと周壁とによって囲まれて密閉されている。液体配管は、タンクに連結されて、タンクの内部空間と連通している。液体配管は、液体のギ酸をタンクの内部空間へ供給するように構成されている。加熱組立品は、タンクの底ベースに連結され、底ベースが液体のギ酸を加熱して、液体のギ酸を蒸発させて液体のギ酸をギ酸ガスに変化させることができるように底ベースを加熱することができる。液位検出組立品は、タンクの内部に設けられ、タンク内の液体のギ酸の液位を検出することができる。少なくとも1つのガス配管は、液体のギ酸の液位よりも高い位置でタンクに連結され、タンクの内部空間と連通している。少なくとも1つのガス配管は、純ギ酸ガスを放出するように構成されている。
【0012】
純ギ酸ガスが供給されるはんだ付けシステムは、前記純ギ酸ガス供給装置と、複真空室はんだ付け炉と、真空ポンプと、ギ酸排出処理装置とを備えている。複真空室はんだ付け炉は、部品をはんだ付けするように構成され、プラットフォームと上部カバーと複数の加熱ベースと複数の真空カバーと複数の駆動機構と複数の真空配管と少なとも1つの搬送機構とを有している。プラットフォームの2つの両端部はそれぞれ、入口端及び出口端である。上部カバーは、プラットフォームを選択的に覆う。加熱ベースは、プラットフォームに設けられ、入口端から出口端へ向かう方向に沿って配列されている。真空カバーは、上部カバーに設けられ、上部カバーがプラットフォームを覆うときに、真空カバーのそれぞれは加熱ベースのそれぞれと並んでおり、真空カバーは、上部カバーに対して上下に移動でき、対応する加熱ベースを覆って密閉して、真空室を形成する。少なくとも1つのガス配管は、真空室と連通し、真空室へ純ギ酸ガスを供給するように構成されている。駆動機構は、上部カバーに設けられ、それぞれ真空カバーに連結されている。駆動機構は、上部カバーに対して真空カバーを移動させることができる。真空配管は、真空カバーによって形成された真空室にそれぞれ連結されている。少なくとも1つの搬送機構は、プラットフォームに連結され、部品を入口端から出口端へ加熱ベースのそれぞれに順次搬送することができる。真空ポンプは、複真空室はんだ付け炉の真空配管と連通し、真空室から空気を吸引して真空室の内部を真空にすることができる。ギ酸排出処理装置は、吸気端と大気プラズマ発生器と触媒担体と排気端とを有している。吸気端は、真空ポンプと連通している。真空ポンプは、真空室からギ酸排出処理装置へ吸気端を介して空気を引き込むことができる。大気プラズマ発生器は、吸気端と連通し、大気プラズマを発生させることができる。触媒担体は、大気プラズマ発生器と連通し、ギ酸を酸化させるための触媒を包含している。排気端は、触媒担体と連通しており、吸気端、大気プラズマ発生器、触媒担体及び排気端は、順番に配列されている。
【0013】
純ギ酸ガス供給方法は、以下の複数のステップを含んでいる。
【0014】
ステップ1では、前記純ギ酸ガス供給装置を準備する。
【0015】
ステップ2では、タンク内の空気を吸引してタンク内を真空にする。
【0016】
ステップ3では、液体配管を介してタンク内に液体のギ酸を供給する。
【0017】
ステップ4では、加熱組立品を使ってタンクの底ベースを加熱して、液体のギ酸を間接的に加熱し、液体のギ酸を蒸発させて液体のギ酸をギ酸ガスに変化させる。
【0018】
ステップ5では、ギ酸ガスの分圧が40torrから700torrに達した後にガス配管を介して純ギ酸ガスを放出する。
【0019】
純ギ酸ガスを供給するために、まずタンク内が真空にされる。それから、液体のギ酸は、タンクに充填され、加熱され、蒸発し、ギ酸ガスに変化する。これにより、タンクは、他の気体を含まずに純ギ酸ガスだけを収容する。そのため、本発明は純ギ酸ガスを供給し、反応に寄与しないガスによってギ酸ガスがブロックされることを防止し、それにより、効率を向上させる。
【0020】
使用時には、液体のギ酸は、タンクの密閉された内部空間に液体配管を介して充填され、タンクの底ベースが加熱組立品によって加熱され、液体のギ酸が間接的に加熱されて蒸発する。そして、純ギ酸ガスが得られ、純ギ酸ガスは、ガス配管を介してはんだ付け機へ供給されることができる。要するに、本発明は、純ギ酸ガスを供給して、ギ酸ガスの分圧を高め、ギ酸の濃度を正確に制御し、他のガスの妨害が生じないのでギ酸の反応性を向上させる。
【発明の効果】
【0021】
このように、本発明は、はんだ付け処理のサイクル時間を著しく短縮させて生産性を向上させ、ギ酸の濃度を正確かつ安定的に制御することによってギ酸の消費量も著しく低減させ、それによりコストを低減する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の他の目的、利点及び新規な特徴は、添付図面と合わせて、以下の詳細な説明からより明確になるだろう。
【0024】
図1,2に関し、本発明の純ギ酸ガス供給装置10は、液体のギ酸を加熱し、純ギ酸ガスを供給するように構成されている。純ギ酸ガス供給装置10は、タンク11と、液体配管12と、加熱組立品13と、液位検出組立品と、少なくとも1つのガス配管16とを備えている。
【0025】
図3に関し、タンク11は、底ベース111と、天井カバー112と、周壁113と、内部空間114とを有している。周壁113は、底ベース111の周縁に連結され、天井カバー112の周縁に連結されている。内部空間114は、底ベース111、天井カバー112及び周壁113によって囲まれ、密閉されている。言い換えると、底ベース111、天井カバー112及び周壁113は共に、内部空間113を形成し且つ取り囲んでいる。
【0026】
液体配管12は、タンク11に連結され、タンク11の内部空間114と連通している。詳しくは、この実施形態では、液体配管12は、タンク11の底ベース111に連結され、底ベース111を貫通して内部空間114と連通しているが、別の実施形態では、液体配管12は、周壁113に連結されてもよい。これにより、液体配管12は、液体のギ酸を内部空間114へ供給するように構成されている。
【0027】
図4に関し、加熱組立品13は、タンク11の底ベース111に連結され、底ベース111が液体のギ酸を加熱して蒸発させ、液体のギ酸をギ酸ガスに変化させることができるように底ベース111を加熱することができる。詳しくは、この実施形態では、加熱組立品13は、少なくとも1つのヒータ131と、加熱温度センサ132とを有している。ヒータ131は、タンク11の底ベース111に組み込まれている。ヒータ131は、熱を発生させ、接触及び熱伝導によって底ベース111を加熱することができる。尚、この実施形態では、加熱組立品13は、2つのヒータ131を有しているが、ヒータ131の個数は2つに限定されない。加熱温度センサ132は、タンク11の底ベース111に組み込まれ、底ベース111の温度を検出する。
【0028】
図2,3に関し、液位検出組立品は、タンク11の内部に設けられ、タンク11内の液体のギ酸の液位を検出することができる。詳しくは、この実施形態では、液位検出組立品は、高液位センサ14と低液位センサ15とを有している。
【0029】
高液位センサ14は、タンク11内に設けられている。それに加えて、高液位センサ14は、この実施形態では、天井カバー112に取り付けられているが、別の実施形態では、高液位センサ14は、周壁113又は底ベース111に取り付けられてもよい。高液位センサ14は、液体のギ酸の液面が高液位センサ14よりも高いか否かを検出することができる。詳しくは、この実施形態では、通常は、高液位センサ14は、液体のギ酸の液面の上方に位置している。そのため、液体のギ酸を供給する際に、ユーザは、液体のギ酸の液面が高液位センサ14に接触するときに、液体配管12を介して供給される液体のギ酸が上限に達したことを知ることができる。
【0030】
低液位センサ15は、タンク11内に配置され、高液位センサ14に比べて低い位置に配置されている。言い換えると、低液位センサ15の高さ位置は、高液位センサ14の高さ位置よりも低い。それに加えて、この実施形態では、低液位センサ15は、天井カバー112に取り付けられているが、別の実施形態では、低液位センサ15は、周壁113又は底ベース111に取り付けられてもよい。低液位センサ15は、液体のギ酸の液面が低液位センサ15よりも低いか否かを検出することができる。詳しくは、この実施形態では、通常は、低液位センサ15は、液体のギ酸の液面の下方に配置されている。言い換えると、低液位センサ15は、液体のギ酸の中へ延び、ギ酸内に浸かっている。そのため、液体のギ酸を加熱して蒸発させて、液体のギ酸の液位が徐々に低下していく際に、ユーザは、液面が低液位センサ15よりも下方に位置したとき(これは、低液位センサ15が液体のギ酸に浸からなくなる瞬間を意味する)に、タンク11内の液体のギ酸が不十分となり補充が必要であることを知ることができる。
【0031】
このように、液位検出組立品は、高液位センサ14及び低液位センサ15を介して液面が高液位センサ14と低液位センサ15との間に位置するかを検出することによって、液位が特定の範囲内にあるか否かを検出することができる。そのため、高液位センサ14と低液位センサ15との相対的な位置を設定することによって、液体のギ酸の量を特定の範囲に制御することができる。しかし、別の実施形態では、高液位センサ14及び低液位センサ15無しで液位検出組立品を設けることができるように、液位検出組立品の構造は、前述のものに限定されない。その場合、液位検出組立品は、液位の正確な値を検出するための1つだけのセンサを備えて組み込まれてもよい。
【0032】
少なくとも1つのガス配管16は、液体のギ酸の液位よりも高い位置でタンク11に連結され、内部空間114と連通している。詳しくは、この実施形態では、ガス配管16は、タンク11の周壁113に設けられ、周壁113を通過して内部空間114と連通している。しかし、別の実施形態では、ガス配管16は、天井カバー112に設けられ、天井カバー112を貫通して内部空間114と連通していてもよい。タンク11の内部における高液位センサ14よりも上方の空間は、液体のギ酸の蒸発により生成されたギ酸ガスで満たされているので、ガス配管16は、純ギ酸ガスを放出するように構成される。
【0033】
尚、少なくとも1つのガス配管16の個数は、限定されない。例えば、この実施形態では、少なくとも1つのガス配管16の個数は2つであるが、別の実施形態では、少なくとも1つのガス配管16の個数は、1つだけでもよいし、2以上であってもよい。さらに、ガス配管16は、純ギ酸ガスを40〜700torrの圧力で供給するように構成されている。
【0034】
それに加えて、この実施形態では、純ギ酸ガス供給装置10は、液温センサ17をさらに備えている。液温センサ17は、タンク11の天井カバー112を貫通して設けられ、内部空間114内へ延び、液体のギ酸の中へ延びており、これにより、液温センサ17は、液体のギ酸の温度を検出することができる。さらに、上述の液温センサ17は、補助液位センサによって(図示省略)置き換えられることができる。補助液位センサは、タンク11の天井カバー112を貫通して設けられ、内部空間114内へ延び、液体のギ酸の中へ延びており、これにより、補助液位センサは、液体のギ酸の液面の正確な位置を検出することができる。
【0035】
図5に関し、本発明の純ギ酸ガスが供給されるはんだ付けシステムは、前述のものと同じ純ギ酸ガス供給装置10を備え、複真空室はんだ付け炉20と真空ポンプ30とギ酸排出処理装置40とをさらに備えている。
【0036】
図6,7に関し、複真空室はんだ付け炉20は、部品Aをはんだ付けするように構成され、プラットフォーム21と、上部カバー22と、複数の加熱ベース23と、複数の真空カバー24と、複数の駆動機構25と、複数の真空配管26と、少なくとも1つの搬送機構27とを有している。
【0037】
プラットフォーム21の両端部は、それぞれ入口端211と出口端212となっている。
【0038】
上部カバー22は、プラットフォーム21を選択的に覆う。
【0039】
加熱ベース23は、プラットフォーム21に設けられ、入口端211から出口端212へ向かう方向に沿って配列されている。各加熱ベース23は、異なる温度を有している。加熱ベース23は、入口端211から出口端212へ向かって低温から順次高温になるように配列されている。
【0040】
真空カバー24は、上部カバー22に設けられている。上部カバー22がプラットフォーム21を覆うときに、各真空カバー24は、各加熱ベース23と並んでいる。真空カバー24は、対応する加熱ベースを覆ってシールして、真空室28を形成するように、上部カバー22に対して上方又は下方へ移動することができる。純ギ酸ガス供給装置10のガス配管16は、真空室28と連通し、純ギ酸ガスを真空室28へ供給するように構成されている。
【0041】
駆動機構25は、上部カバー22内に設けられ、それぞれ真空カバー24に連結されている。駆動機構25は、真空カバー24を上部カバー22に対して相対的に動かすことができる。
【0042】
真空配管26は、真空カバー24によって形成される真空室28にそれぞれ連結されている。
【0043】
搬送装置27は、プラットフォーム21に連結され、部品Aを入口端211から出口端212へ向かって各加熱ベース23へ順次搬送することができる。
【0044】
真空ポンプ30は、複真空室はんだ付け炉20の真空配管26に連通しており、真空室28から空気を吸引して真空室28内を真空にすることができる。
【0045】
図8に関し、ギ酸排出処理装置40は、吸気端41と、大気プラズマ発生器42と、触媒担体43と、排気端44を有し、これらは順番に配列されている。吸気端41は、真空ポンプ30と連通しており、真空ポンプ30は、真空室28から吸引された空気を吸気端41を介してギ酸排出処理装置40へ引き込むことができる。大気プラズマ発生器42は、吸気端41と連通し、大気プラズマを発生させることができる。触媒担体43は、大気プラズマ発生器42と連通し、ギ酸を酸化させるための触媒を有している。排気端44は、触媒担体43と連通している。
【0046】
はんだ付けが行われる際、部品Aは、入口端211を介して複真空室はんだ付け炉20内に挿入され、全ての加熱ベース23の中で最も低温の加熱ベース23上に載置される。それから、搬送機構27は、部品Aを徐々に加熱するために、直前の加熱ベース23よりも高温の次の加熱ベース23へ部品Aを順次搬送していく。真空カバー24と並んでいる加熱ベース23まで部品Aが搬送されると、真空カバー24が上部カバー22に対して下方へ移動して、加熱ベース23及び部品Aを覆い、真空カバー24は、真空室28を形成して、加熱ベース23及び部品Aを真空室28内に封じ込める。その後、真空ポンプ30は、真空配管26を介して真空室28内の空気を吸引して、真空室28内を真空にする。真空室28内が真空にされた後、純ギ酸ガス供給装置10は、液体のギ酸を加熱及び蒸発させて得られた純ギ酸ガスを真空室28へ供給する。純ギ酸ガスが反応を完了した後、真空ポンプ30は、真空室28内の空気を再び吸引し、ギ酸の排気ガスを吸気端41を介してギ酸排出処理装置40へ引き入れる。最後に、ギ酸の排気ガスは、大気プラズマ発生器42と触媒担体43とを順番に通過し、熱分解によってCO
2とH
2Oに変わる。一方、部品Aは、はんだ付け処理が完了するまで、次の加熱ベース23へ連続的に搬送される。
【0047】
図9に関し、本発明における純ギ酸ガスを供給する方法は、以下の複数のステップを有している。
【0048】
ステップ1:上述の純ギ酸ガス供給装置10を準備する。
【0049】
ステップ2:タンク11の内部の空気を吸引して、タンク11内を真空にする。このステップでは、気圧装置が空気を吸引するためにタンク11に連結されるが、任意の装置又は方法によって真空が形成される限り、それに限定されない。
【0050】
ステップ3:真空となっているタンク11の内部空間114へ液体配管12を介して液体のギ酸を供給する。
【0051】
ステップ4:液体のギ酸を間接的に加熱して、蒸発させ、液体のギ酸をギ酸ガスに変化させるために、加熱組立品13によってタンク11の底ベース111を加熱する。このステップの間、内部空間114は真空なので、液体のギ酸が蒸発すると、内部空間114の上部(これは、液体のギ酸の液面の上方の空間を意味する)は、他の気体が混入することなく純ギ酸ガスで満たされる。
【0052】
ステップ5:ギ酸ガスの分圧が40〜700torr(はんだ付けの種々の条件によって決定される)に達した後、純ギ酸ガスをガス配管16を介して放出して、純ギ酸ガス供給処理を完了する。
【0053】
本願の実際の効果を証明するために、3つの試験が以下に示される。
【0054】
第1の試験は、はんだ溶融模擬実験である。はんだは、鉛、スズ及び銀で構成され、それらの比は、それぞれ92.5:5:2.5である。はんだ粉末の微粒の直径は、38μmである。試験は、以下のステップで行われる。
【0055】
はんだ溶融模擬実験の始めに、サンプルが酸化することを防ぐために、サンプルが窒素で満たされた環境に晒される。試験が始まった後、サンプルは、真空室28へ搬送され、上部カバー22が閉じられ、温度が320℃まで上げられる。それから、真空室28の窒素が除去され、真空室28内が真空にされる。その後、真空室28へ適切なギ酸ガスが供給され、その状態が適切な時間、維持される。はんだ処理が完了した後、真空室28内の空気が再び吸引され、残留するギ酸ガスが除去される。そして、真空室28内の真空が窒素で解放され、上部カバーが開けられる。最後に、サンプルが真空室28から外へ搬送され、冷却される。
【0056】
純ギ酸ガスが試験グループにおいて使用される一方、ギ酸と窒素の混合ガスが比較グループにおいて使用され、はんだ溶融模擬実験は、
図10A〜10Eに関し、種々の分圧及び種々の供給時間において2つのグループのはんだ溶融結果を比較する。
【0057】
図10A〜10Eは、全てのはんだ溶融結果の概略図であり、現実のはんだ付けの模擬実験を行うために、キャリアとガラス板がはんだ粉末を留めておくのに用いられ、はんだ溶融後のはんだ接合部の断面がガラス板の透明な特性によって観測され得る。上述の図に示されたはんだ溶融結果について以下に述べる。
図10Aは、はんだ溶融結果1であり、はんだ粉末Bのうち端縁の非常にわずかな部分だけが溶融していることを示している。
図10Bは、はんだ溶融結果2であり、はんだ粉末Bのうち端縁のわずかな部分が溶融していることを示している。
図10Cは、はんだ溶融結果3であり、はんだ粉末Bの大部分が溶融しているが、はんだ粉末Bのうち中心近くの少しの部分が溶融していないことを示している。
図10Dは、はんだ溶融結果4であり、はんだ粉末Bの大部分が溶融し、はんだ粉末Bのうち中心近くのとても小さな部分だけが溶融していないことを示している。
図10Eは、はんだ溶融結果5であり、はんだ粉末Bが完全に溶融していることを示している。
【0058】
はんだ溶融模擬実験の結果は、以下の表に示される。
【0059】
【表1】
表によれば、グループ2とグループ6との比較は、ギ酸ガスの同じ分圧で且つ同じ供給時間の下で、純ギ酸ガスの供給によりはんだ溶融結果5(完全に溶融している)が得られている一方、ギ酸と窒素の混合ガスの供給によりはんだ溶融結果1(はんだ粉末Bのうち端縁のわずかな部分だけが溶融している)が得られることを示している。そのうえ、グループ2とグループ8との比較は、2つのグループが共にはんだ溶融結果5(完全に溶融している)が得られている場合、純ギ酸ガス供給の場合の反応速度は、ギ酸と窒素の混合ガス供給の場合の反応速度よりも5倍速いことを示している。これら2つの比較は、本発明は、はんだ付け品質及びはんだ付け効率を改善できることを立証している。
【0060】
第2の試験は、
図10A〜10Eに関し、はんだ接合強度試験である。試験サンプルは、プリント回路基板(PCB)及び抵抗器を有し、抵抗器は0.4cmの長さと0.2cmの幅を有している。力計の型式は、SH−200である。はんだ接合強度試験の前に、抵抗器は、はんだ溶融模擬実験の工程でPCB上にはんだ付けされ、11の条件における11の試験グループが設定され、それらははんだ溶融模擬実験と同じである。はんだ接合強度試験の11の試験グループの結果は、以下の表に示される。
【0061】
【表2】
前記の表によれば、はんだ接合強度試験のデータは、はんだ溶融模擬実験におけるはんだ接合部の断面構造と合致している。例えば、グループ2とグループ6との比較は、ギ酸ガスの同じ分圧で且つ同じ供給時間の下で、はんだ溶融結果はそれぞれ、はんだ溶融結果5(完全に溶融している)とはんだ溶融結果1(はんだ粉末Bのうち端縁のわずかな部分だけが溶融している)であり、はんだ接合強度はそれぞれ、610gwと50gwである。2つの試験の合致は、はんだ溶融結果が良いほど、はんだ接合強度が高いことを示している。
【0062】
それに加えて、グループ2,4,5,8の比較は、はんだ溶融結果5(完全に溶融している)が得られる条件下で、純ギ酸ガスが供給されるグループのはんだ接合強度は、ギ酸と窒素の混合ガスが供給されるグループのはんだ接合強度よりも約20gw〜30gw高いことを示している。
【0063】
そのうえ、グループ2とグループ6との比較はさらに、ギ酸ガスの同じ分圧で且つ同じ供給時間の下で、純ギ酸ガスが供給されるグループでのはんだ接合強度は、ギ酸と窒素の混合ガスが供給されるグループよりも560gw高いことを示している。
【0064】
さらに、グループ2とグループ11との比較は、同じはんだ溶融結果が得られる条件下で、純ギ酸ガスが供給されるグループでのギ酸ガスの消費量がギ酸と窒素の混合ガスが供給されるグループよりも2倍多く、純ギ酸ガスが供給されるグループの反応時間がギ酸と窒素の混合ガスが供給されるグループよりも3倍長いことを示している。
【0065】
前記のすべての結果は、本発明がはんだ接合を強化できることを証明している。
【0066】
第3の試験は、ギ酸浸透性試験である。以下は、ギ酸浸透性試験の基本条件の紹介である。
【0067】
ギ酸は、はんだの表面の金属酸化物を還元させるために用いられる。そのため、ギ酸ガスは、はんだ粉末内に浸透し、各はんだ微粒の表面に完全に接触する必要があり、それにより、より良いはんだ溶融結果が得られる。
【0068】
はんだ付けの間、はんだ粉末は、2つの部品又はチップの間に留められている。そのため、ギ酸ガスは、2つの部品又はチップの隙間を通ってはんだ粉末内に浸透していく必要があり、その後にはんだ粉末の端縁からのみはんだ粉末の中心へ浸透していくことができる。
【0069】
しかしながら、はんだ微粒の間の隙間は狭いので、はんだ付けの領域が増加するほど(これは、ギ酸ガスがはんだ粉末の端縁から浸透する深さがより小さくなることを意味する)、ギ酸ガスがはんだ粉末の中心へ浸透することは難しい。ギ酸ガスが浸透する深さが小さい場合、はんだ粉末の中心におけるギ酸ガスの量は少なく、そのため、はんだ粉末の中心において微粒の表面の酸化物を低減する効果が悪くなり、はんだ付けの効果の悪化及びはんだ接合強度の低下を招く。言い換えると、はんだ付けの信頼性が低下する。
【0070】
例えば、
図10Aに関し、はんだ粉末をガラス板で覆って、温度をはんだの融点よりも高くした後にギ酸を供給した後は、端縁近くのはんだ粉末Bだけが溶融する一方、中心近くの大部分のはんだ粉末Bは溶融せず、これは、はんだ粉末の中心近くの微粒の表面の酸化物が還元されないことを意味する。
【0071】
そのため、ギ酸浸透性試験は、本発明がギ酸の浸透性を向上させることができ、これにより、はんだ付けの効果及びはんだ接合強度が強化されることを証明するために行われる。
図11,12に関し、ギ酸浸透性試験の構成は、以下のように説明される。
【0072】
まず、深さ300μm、幅6mm及び長さ100mm以上の溝がキャリープレートCに形成され、溝がはんだ粉末Bで満たされる(鉛、スズ及び銀の比率は、92.5:5:2.5)。それから、ガラス板Dが溝の上に載置され、溝を覆う。ガラス板Dは、75mmの長さと6mmを超える幅を有する。ガラス板Dの2つの側部は、キャリープレートCに取り付けられ、気密且つ耐熱性のテープでシールされ、これにより、ギ酸ガスは溝の2つの開口端からのみはんだ粉末Bへ浸透する。組み立てられたサンプルの平面図及び正面図がそれぞれ
図11,12に示される。
【0073】
組立後、サンプルは真空室に配置され、空気の吸引により真空室の圧力が1torrよりも低くまで下げられる。温度が融点(320℃よりも高い)よりも高くまで上げられると、適切な分圧のギ酸ガスが試験グループに供給され、適切な分圧のギ酸と窒素の混合ガスが比較グループに供給される。5分間の反応の後、空気が再び吸引され、ギ酸ガスが取り除かれる。それから、真空が解放され、サンプルが取り出され、冷却後に溶融したスズの深さが測定される。
【0074】
ギ酸ガス浸透性試験の結果が以下の表に示される。はんだがより深くまで溶融しているほど、浸透性が高く且つギ酸ガスの反応性が高く、そのため、より大きなチップのはんだ付けに適用できる。
【0075】
【表3】
表によれば、グループ1とグループ3との比較及びグループ2とグループ4との比較は、ギ酸ガスの同じ分圧の下で、ギ酸ガスが供給されるグループにおけるはんだの溶融深さはより深く、純ギ酸ガスが供給されるグループにおけるはんだの溶融深さは、ギ酸と窒素の混合ガスが供給されるグループよりも5倍深いことを示している。
【0076】
そのうえ、グループ5では、ギ酸ガスの分圧は400torr以上であり、はんだ粉末Bの全てが完全に溶融し、溶融深さは38mmを超えている。
【0077】
それに加えて、グループ6及びグループ7では、溝の一方の開口がさらに塞がれており、このため、ギ酸ガスは、残りの開口を介してのみ、はんだ粉末Bに浸透することができる。グループ6及びグループ7の結果によれば、ギ酸ガスの分圧が400torr又は700torrであるが、はんだは完全に溶融し、溶融深さは75mmを超えている。
【0078】
前記の比較は、本発明は、はんだ付けの効果及びはんだ接合強度を改善することができ、はんだ付けの処理時間を低減することができ、それにより、効率及び生産性を向上させることができることを証明している。
【0079】
要するに、本発明の有利な点は、純ギ酸ガスを供給することから得られる。純ギ酸ガスを供給するために、まずタンク11内に真空が形成される。それから、液体のギ酸がタンク11に充填され、加熱され、蒸発し、ギ酸ガスに変わる。これにより、タンク11は、他の気体を含まずに純ギ酸ガスを収容する。そのため、本発明は、反応に寄与しない気体によってギ酸ガスが金属酸化物に接触するのを妨害されることを防ぐために、純ギ酸ガスを供給し、これにより効率が向上する。
【0080】
純ギ酸ガス供給装置10が使用される場合、液体のギ酸がタンク11の密閉された内部空間114に充填され、タンク11の底ベース111が加熱組立品13によって加熱されて液体のギ酸が間接的に加熱されて蒸発する。そして、純ギ酸ガスが得られ、ガス配管16を介して複真空室はんだ付け炉20へ供給されることができる。
【0081】
よって、本発明は、純ギ酸ガスを供給して、ギ酸ガスの分圧を高め、ギ酸の濃度を正確に制御し、ギ酸の反応性を向上させることができる(他の気体からの妨害がないため)。このように、本発明は、はんだ付け処理のサイクル時間を著しく短縮し、これにより生産性を向上させ、ギ酸の濃度を正確かつ安定的に制御することによってギ酸の消費量も著しく低減し、そのためコストを低減する。
【0082】
本発明の多数の特性及び利点を本発明の詳細な構造及び特徴と共に上述の説明で明らかにしてきたが、本開示は例示に過ぎない。細部、特に、各部の形状、大きさ及び配置における変更が、添付の請求項が表現される文言の広い通常の意味によって示される限りの本発明の原理の範囲でなされ得る。